第一部【企業情報】

第1【企業の概況】

1【主要な経営指標等の推移】

(1)連結経営指標等

回次

第33期

第34期

第35期

第36期

第37期

決算年月

2019年6月

2020年6月

2021年6月

2022年6月

2023年6月

売上高

(千円)

3,591,228

3,230,299

3,039,041

2,604,674

2,489,362

経常利益

(千円)

49,207

26,731

109,438

149,666

138,790

親会社株主に帰属する当期純利益

(千円)

44,633

28,948

108,305

142,243

110,353

包括利益

(千円)

44,313

28,749

108,696

142,195

110,353

純資産額

(千円)

439,777

468,527

577,179

719,374

787,717

総資産額

(千円)

1,030,435

970,616

974,949

1,081,368

1,108,040

1株当たり純資産額

(円)

577.30

615.04

757.71

944.38

1,034.18

1株当たり当期純利益

(円)

58.59

38.00

142.17

186.73

144.88

潜在株式調整後1株当たり当期純利益

(円)

自己資本比率

(%)

42.7

48.3

59.2

66.5

71.1

自己資本利益率

(%)

10.7

6.4

20.7

21.9

14.6

株価収益率

(倍)

14.0

23.6

6.7

7.0

12.5

営業活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

12,918

97,307

352,435

128,618

122,758

投資活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

4,895

17,332

16,048

17,670

4,076

財務活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

86,987

86,992

193,052

13,712

45,798

現金及び現金同等物の期末残高

(千円)

292,107

264,460

407,794

505,030

577,913

従業員数

(名)

47

44

42

42

43

(外、平均臨時雇用者数)

(22)

(26)

(21)

(21)

(17)

 (注)1 潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式が存在しないため記載しておりません。

2 収益認識に関する会計基準(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第36期の期首から適用しており第36期以降に係る主要な経営指標等については当該会計基準等を適用した後の指標等となっております

3 従業員数は、就業人員数を記載しております。

4 従業員数欄の( )外書きは、臨時従業員の年間平均雇用人員数を記載しております。

(2)提出会社の経営指標等

回次

第33期

第34期

第35期

第36期

第37期

決算年月

2019年6月

2020年6月

2021年6月

2022年6月

2023年6月

売上高

(千円)

3,506,610

3,141,043

2,947,570

2,508,585

2,365,787

経常利益

(千円)

42,298

19,228

100,975

139,281

135,811

当期純利益

(千円)

39,369

22,901

102,296

134,641

108,527

資本金

(千円)

421,250

421,250

421,250

421,250

421,250

発行済株式総数

(株)

762,000

762,000

762,000

762,000

762,000

純資産額

(千円)

406,465

429,168

531,810

666,404

732,921

総資産額

(千円)

976,908

906,685

905,864

1,000,253

1,026,658

1株当たり純資産額

(円)

533.57

563.37

698.15

874.84

962.24

1株当たり配当額

(円)

55

50

(うち1株当たり中間配当額)

-)

-)

-)

-)

-)

1株当たり当期純利益

(円)

51.68

30.06

134.29

176.76

142.48

潜在株式調整後1株当たり当期純利益

(円)

自己資本比率

(%)

41.6

47.3

58.7

66.6

71.4

自己資本利益率

(%)

10.2

5.5

21.3

22.5

15.5

株価収益率

(倍)

15.9

29.8

7.1

7.4

12.7

配当性向

(%)

31.1

35.1

従業員数

(名)

29

25

25

25

25

(外、平均臨時雇用者数)

(22)

(26)

(21)

(21)

(17)

株主総利回り

(%)

85.7

93.2

99.0

142.4

199.9

(比較指標:配当込みTOPIX)

(%)

(91.8)

(94.6)

(120.5)

(118.8)

(149.3)

最高株価

(円)

992

2,324

1,139

1,312

4,515

最低株価

(円)

805

570

873

870

1,573

 (注)1 潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式が存在しないため記載しておりません。

2 第33期、第34期及び第35期の配当性向については、無配であるため記載しておりません。

3 第36期の1株当たり配当額には、創業35周年記念配当5円を含んでおります。

4 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第36期の期首から適用しており、第36期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。

5 従業員数は、就業人員数を記載しております。

6 従業員数欄の( )外書きは、臨時従業員の年間平均雇用人員数を記載しております。

7 最高株価及び最低株価は、2022年4月4日より東京証券取引所スタンダード市場におけるものであり、それ以前は東京証券取引所JASDAQにおけるものであります。

 

2【沿革】

年月

事項

1987年6月

現代表取締役会長 髙橋巖が北海道上川郡東神楽町において株式会社ホーブを設立

1987年10月

寒冷地作物研究所(北海道上川郡東神楽町、現生産事業部)を開設し、各地の農業協同組合等からの組織培養技術を使った研究の受託開始

1989年6月

北海道網走市に網走事業所(後の網走物流センター)を開設、併設研究農場においていちご栽培開始(奈良県品種:「サマーベリー」)

1993年11月

四季成性いちご「セリーヌ」が種苗法品種登録される (登録番号第3754号)

1995年3月

四季成性いちご「ペチカ」が種苗法品種登録される (登録番号第4293号)

1997年9月

業務用いちご卸の株式会社西村(千葉県四街道市)を子会社化(全株取得)し、首都圏における業務用いちごの通年供給を開始〔同社の事業内容…いちご果実・青果の卸売、青果物の一次加工、洋菓子小売〕

1998年7月

北海道産業務用夏秋いちごの物流基地といちご苗の保管冷蔵庫として東神楽物流センター(北海道上川郡東神楽町)を新設

1998年7月

ペチカ生産産地の本格的な全国拡大へ向けて東北地方へ苗の供給開始

1998年11月

夏秋いちご栽培の研究開発を目的として中富良野研究農場(北海道空知郡中富良野町)を開設

1999年7月

夏秋いちご栽培の研究開発を目的として東神楽研究圃場(北海道上川郡東神楽町)を開設

2000年11月

事業拡大にともない、いちご苗の保管量拡大をはかるため東神楽物流センターの冷蔵・冷凍保管庫を増設

2001年7月

クールコンテナを利用することで、低温管理が可能な振動の少ない輸送システムを確立

2001年10月

業務用いちごの製販一体化を目的に株式会社西村を吸収合併し、同社葛西事務所を東京本部(東京都江戸川区)として開設、洋菓子小売店舗2店舗を継承

2001年11月

業務用いちごの首都圏販売における物流基地として新木場物流センター(東京都江東区)を開設

2003年4月

関西圏への販売体制の強化を目的として大阪出張所(大阪府豊中市)を開設

2003年4月

網走地区におけるペチカ栽培の研究目的達成により、網走研究農場設備を売却

2005年8月

株式会社ジャスダック証券取引所に株式を上場

2006年4月

関西以西への営業展開拠点として明確にするため「大阪出張所」を「大阪事業所」へと格上

2006年12月

四季成性いちご「エスポ」が種苗法品種登録される(登録番号第14538号)

2007年5月

「大阪事業所」を兵庫県(神戸市)へ移転し、「関西事業所」と名称を変更

2008年4月

物流子会社「株式会社エス・ロジスティックス」を設立

2008年5月

洋菓子小売店1店舗を閉鎖(江戸川台店)

2008年8月

洋菓子小売店1店舗を閉鎖(夏見店)

2010年3月

四季成性いちご「ペチカサンタ」が種苗法品種登録される。(登録番号第19206号)

2010年5月

 

四季成性いちご「ペチカプライム(品種登録名ペチカピュア)」が種苗法品種登録される。(登録番号第19528号)

2010年5月

関西以西への販売供給体制を整えるために鳥栖営業所(佐賀県鳥栖市)を開設

2012年5月

輸入青果物を扱う子会社「株式会社ホーブ21」を設立

2013年5月

鳥栖営業所(佐賀県鳥栖市)を閉鎖

2013年6月

網走物流センターを売却

2013年7月

東京証券取引所と大阪証券取引所の統合に伴い、東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)に上場

2013年12月

株式会社ジャパンポテトの全株式を取得し子会社化

2016年10月

子会社の「株式会社ホーブ21」と「株式会社ジャパンポテト」を吸収合併する

2017年3月

東京本部及び新木場物流センターを東京都江戸川区小松川に移転

2017年6月

四季成性いちご「ペチカエバー」及び「ペチカほのか」がそれぞれ種苗法品種登録される(登録番号第26015号、第26016号)

2018年1月

営業拠点の集約による業務の効率化を図るため、関西事業所を閉鎖

2019年5月

東京農業大学、極東連邦大学(ロシア)との共同研究プロジェクトに参画し、ロシア・ウラジオストクにおいて、自社開発いちご品種(品種名:ペチカほのか)の苗供給及び栽培技術の指導を実施

2019年12月

いちご種苗事業の海外展開を図り中国市場に参入すべく、ベルグアース株式会社(愛媛県宇和島市)との業務提携契約を締結

2020年11月

高温環境下での栽培に適するいちご新品種の開発に向け、協和化学工業株式会社といちご品種の共同開発契約を締結

2022年4月

東京証券取引所の市場区分の見直しにより、東京証券取引所のJASDAQ(スタンダード)からスタンダード市場に移行

 

3【事業の内容】

 

(1)当社グループの事業内容

当社は、「いちご」という農産物において、新しい品種の研究開発から始まり、苗の生産販売から収穫した果実の販売までの全てを行っており、1年365日、洋菓子メーカー等に対して国産いちごを供給しております。

国内で広く一般的に販売されている「とちおとめ」等のほとんどのいちごは、いちごの中でも一季成性といわれる品種であり、品種特性により収穫時期は主に冬から春に限られます。そのため、夏秋期には一部国産いちごの収穫はあるものの、現在夏秋期に販売されているいちごの大部分はアメリカ合衆国から輸入されたものであり、ケーキにのっているいちごにも輸入品が使用されております。

当社では、四季成性いちご※1「ペチカサンタ」(2010年3月 品種登録)「ペチカプライム」(2010年5月品種登録 品種登録名ペチカピュア)、「コア」(2017年6月品種登録 品種登録名ペチカエバー)、「夏瑞/なつみずき」(2017年6月品種登録 品種登録名ペチカほのか)の自社品種を有しており、苗の生産及び農家への販売、生産農家で収穫したいちごの仕入及び洋菓子メーカーへの販売までの全てを行うというビジネスモデルを構築しております。この自社品種により、洋菓子メーカーの「夏秋期にも国産いちごを使いたい」という要望にこたえ、1年を通して安定した国産いちごを供給できる体制を構築しております。

この体制を支えているのは、夏秋期に収穫できる自社品種であり、その自社品種苗を均一無病苗※2として量産化できるバイオテクノロジー技術であります。

当社では、いちご以外にも、これまでに構築してきたバイオテクノロジー技術を用いて、その他の苗の研究開発や生産・販売も行っており、また、自社品種の栽培に必要な機器や資材及び収穫した果実の梱包用資材の販売も行っております。さらに、洋菓子メーカー等へケーキ素材となるいちご以外の果物等の販売も行っております。

 

※1 いちごには、花芽形成(花となる芽のもとが作られること)に一定の条件を必要とする一季成性いちごと条件を必要としない四季成性いちごがあります。一般に知られているいちごの多くは一季成性いちご(とちおとめ等)であり、一定の条件が整ってはじめて花芽が形成され、果実ができます。一方、四季成性いちごは花芽形成に条件を必要としないため、一年中栽培が可能であります。

※2 親苗と同じ遺伝子情報をもち、ウイルスや病原菌に汚染されていない苗のことであります。

当社グループは、当社(株式会社ホーブ)と連結子会社1社(株式会社エス・ロジスティックス)で構成されております。報告セグメントは、いちご果実・青果事業、種苗事業、馬鈴薯事業及び運送事業の4つのセグメントとなります。

当社グループの事業内容及び当社と連結子会社の当該事業に係る位置付けは次のとおりであります。

(いちご果実・青果事業 当社)

当社がいちご果実(自社品種いちご果実・その他いちご果実)、青果及び農業用生産・出荷資材の仕入販売を行っております。

(種苗事業 当社)

当社が自社品種のいちご苗を生産し、生産農家へ販売しております。また、いちご以外の種苗についても、食用ユリなどの生産を受託し販売を行っております。

(馬鈴薯事業 当社)

当社が種馬鈴薯の生産販売及び仕入販売と、青果馬鈴薯の仕入販売を行っております。

(運送事業 株式会社エス・ロジスティックス)

株式会社エス・ロジスティックスが、当社の商品等を中心とした配送業務を行っております。

   以上に記載した事項を事業系統図によって示すと次のとおりであります。

  [事業系統図]

 

0101010_001.png

 

 

(2)四季成性いちご

①一季成性と四季成性

一般に知られている「いちご」は、秋になって日照時間が短くなり、気温が低下してくると花芽形成(花となる芽のもとが作られること)されます。その後、冬になってさらに気温が下がると休眠状態となり、春になり気温の上昇とともに休眠から覚めて、成長し、花が咲き、果実となります。八百屋あるいはスーパーマーケット等で広く一般的に販売されている「とちおとめ」等のほとんどのいちごが、この花芽形成の条件(夜の長さが12時間以上となる日が連続するという短日条件、あるいは温度の低下という低温条件)を必要とする一季成性品種のいちごであります。そのため、国産いちごの主な収穫時期は、概ね12月(クリスマスの需要にあわせて人工的に必要な条件を作って収穫時期を早めたもの)から5月頃までとなっております。

一方、四季成性品種は、花芽形成に日照時間の長短や低温であるという条件を必要としないため、一季成性品種と違い一年中栽培収穫が可能であります。

当社の自社品種「ペチカピュア」「ペチカエバー」「ペチカほのか」は、この四季成性品種のいちごであり、一年中栽培収穫が可能であります。しかしながら、当社では一季成性いちごが収穫できず国産いちごの端境期となる5月から11月の夏秋期に自社品種の収穫時期を設定しております。

業務用※1に使われる国産いちごの出荷量が少ない夏から秋にかけて、当社の品種は、国産夏秋いちごとして付加価値を高めております。

 

※1 洋菓子メーカー等でケーキのトッピング用あるいはスポンジのサンド用として使用されるいちごのことであります。スーパーマーケット等で販売されているいちご(生食用いちご)と同じものですが、ケーキの上を飾るため、食味・食感だけでなく、大きさ、形状、色艶、スレ・あたり(手で触れたり、いちご同士あるいは他のものと擦れたりあたったりすることによって、いちごの表面にできる小さなピンクに変色した部分)などの傷の有無等、各メーカーごとに厳しい規格があります。

 

②自社品種の特徴

いちごに関して重要なことは、生産農家にとっては病虫害に対する耐性があり、作りやすく、収穫量・生産性に優れていることであり、消費者にとっては、安心・安全であり、なおかつ、食味・食感、甘みと酸味のバランス、香り、円錐形の形状、色艶のどれもが水準以上であることであります。また、洋菓子メーカーは、消費者のニーズに合わせながら、必要なサイズ(大きさ)のものを必要な量だけ安定的に供給されることを望んでおります。当社の品種は、こうしたどの要望にも応えうる品種であると考えております。

自社品種は、四季成性が強く季節を問わず安定して花芽を形成するため、安定的に連続して果実を収穫することができます。さらに、苗の定植時期によって収穫時期をコントロールしやすく多様な作型で栽培できるため、生産農家にとって生産作物の計画に組込みやすい品種です。

また、食味・食感の良さ、豊かな香り、鮮やかな果色、きれいな円錐形をした果形、輸送性に問題がない程度の適度な果皮の硬さ等高い水準の果実品質を有しております。

 

(3)事業の特徴

当社の事業の特徴は、「いちご」という農産物において、育種※1から苗の生産・販売、栽培指導、果実の仕入・販売までのそれぞれの事業において特徴、優位性を持っているだけではなく、川上から川下までの事業を行うことで、それらが有機的に結びついて、当社の総合力として発揮されていることにあります。

また、この総合力は、生産農家や洋菓子メーカー等とのつながりによって補強され、いちご果実の生産者側及び消費者側それぞれの情報を的確に吸収し、ニーズに合った情報をそれぞれに還元できることにもつながっております。

当社は、自社品種を作り上げた培養技術、さらに自社品種を基盤に展開してきたトータルサービスが当社の特徴であると考えております。

 

※1 交配などにより新しい形質を持つ品種を作り出すことであります。

 

①育種(種苗の研究開発)

当社は、研究開発の結果、2010年3月に「ペチカサンタ」(品種登録番号 第19206号)、2010年5月に「ペチカプライム」(品種登録名ペチカピュア 品種登録番号 第19528号)、さらに2017年6月に「コア」(品種登録名ペチカエバー 品種登録番号 第26015号)、「夏瑞/なつみずき」(品種登録名ペチカほのか 品種登録番号 第26016号)の品種登録をそれぞれ行いました。

これらの育種過程で培われた技術を駆使し、中富良野研究農場及び東神楽研究圃場の研究農場においてさらなる新品種の開発を鋭意進めております。

②種苗生産(組織培養※1

・組織培養技術

当社は、バイオテクノロジーのひとつである植物組織培養技術を使い、優良な均一無病苗※2を短期間で大量に作り出す技術を有しております。この苗増殖技術によって、当社の自社品種苗を生産し、販売しております。組織培養による増殖技術は、近年実験室段階では急速に進歩しましたが、変異が多発しやすくまた馴化※3の効率が低い等の問題から、商業的技術として確立されたものは多くはなく、商業ベースにのっているものは限られております。当社では、いちごはもとよりアルストロメリア、ユリ、クロユリ、アヤメ、胡蝶蘭、カトレア、ジャガイモ、ヤマイモ、アスパラガス、ニンニク、ニラ等の多様な植物についての増殖技術を確立しており、ユリについては、現在も苗生産を受託しており、組織培養技術を使って苗を増殖し、生産販売しております。

 

・苗生産の分業システム

国内のいちごの主要産地では、原苗を生産する段階から圃場増殖を繰り返しているため、ウイルス等への感染など病虫害が発生する可能性が高くなり、苗質劣化の問題が年々増大しております。

また、いちごの生産に限らず、農作業の軽減化及び効率化が強く求められておりますが、国内のいちご生産農家の多くは、都道府県等の地方公共団体あるいは農業協同組合から病虫害に罹患していない健康な苗を親苗として購入し、自前の農場施設内で栽培しながら増殖させ、これを2年繰り返し、増えた子苗を果実生産用の苗として使用しております。いちご生産農家は、果実生産だけではなく苗生産の期間も合わせると1年365日毎日いちごの栽培に係わっていることになります。

欧米諸国では、いちご生産農家が苗を購入し、増殖することなくそのまま果実生産用に使用する苗生産分業システムが広く一般的に普及しております。当社の自社品種苗においても、果実生産用の苗として、優良な均一無病苗を生産農家が必要とするときに、必要な数量だけ提供する苗生産分業システムを確立しており、生産農家の作業負担軽減に大きく貢献しております。

 

※1 植物の細胞あるいは葉、茎、根や芽などの器官を無菌的に培養することであります。

※2 親苗と同じ遺伝子情報をもち、ウイルスや病原菌に汚染されていない苗のことであります。

※3 環境に馴れ、順応することであります。組織培養の苗は培養容器の中で生育したため、容器から出した際に温度や湿度の変化に対応できず、枯死する場合が多くなります。そこで、温度や湿度の変動をできるだけ抑えた条件で外気に触れさせる必要があります。

 

0101010_002.png

③いちごの栽培研究及び栽培指導

当社は、夏秋期におけるいちごの栽培生産技術の向上をはかるために、中富良野研究農場及び東神楽研究圃場において、自社品種の栽培研究を継続して行ってきております。

自社品種の生産の主力は全国各産地の生産農家であります。

当社では、いちご栽培のプロフェッショナルである従業員が中心となって、全国各地の自社品種生産産地に出向き、各生産農家の栽培・生育状況を実際に目で確認して、きめ細かく的確に助言、指導を行っております。この指導により、生産農家の収穫実績は上がっており、信頼も得られ、当社にとっても規格の統一された優良ないちごが安定的に入荷されるようになってきております。

④いちご果実・青果の販売

・通年安定供給

当社は、国産業務用いちごの販売に関して、自社品種を販売する夏秋期だけではなく、夏秋期以外の時期も含め最高の品質のものを1年間安定して供給すること、1年365日対応することを原則としております。そのため、当社は、夏秋期以外の冬から春にかけてのシーズンには全国のいちご産地からその時期における最高品質のいちご(とちおとめなど)を買付け、販売しております。

冬から春にかけてのシーズンには生食用いちごが豊富に生産出荷されているため、当社としても業務用いちごを確保することは比較的容易でありますが、夏秋期においてはいちごの生産自体が少なくなるため、自社品種の生産出荷量を夏秋期を通じて安定して確保することが重要となっております。

当社の特色は、自社品種の苗を販売して終わるのではなく、その成果である果実を買付け販売することで、国産いちごの流通量が少なくなる夏秋期に国産いちごを安定供給でき、冬から春にかけてのいちごのシーズンと合わせ、業務用国産いちごの通年安定供給ができることであります。

 

・輸送技術

一般にいちご果実は、30℃を超える高温に弱く、また果皮がやわらかいため衝撃にも弱く、夏秋期の栽培、輸送にはあまり適しておりません。しかし当社は、夏秋期の業務用国産いちごがほとんどなかった十数年前から、この夏秋期に生産、販売を行っており、夏秋期において特に顕著に現れる諸問題を解決するため、輸送技術の研究に力を注いでまいりました。

その結果、生産農家から洋菓子メーカー等までの物流を簡素化し、また、クールコンテナ等を利用することで、低温管理され、なおかつ振動の少ない輸送システムを実現いたしました。さらに、スレ・あたり※1を防ぐ一段トレーソフトパック※2の採用により、高品質を保持した長距離流通を実現しております。当社では、全産地の自社品種について一段トレーソフトパックを採用しており、自社品種以外のいちごについても、産地の協力を得て一段トレーソフトパックに切替えております。

こうした研究、努力により、当社は、業務用としての国産いちごを冬から春にかけてだけではなく、一年中安定して供給できるような産地・流通・販売のシステム構築に成功しております。

 

・その他の果実、青果の販売

当社は、いちご以外にもブルーベリー、バナナ、キウイ、メロン等の洋菓子の材料となる果物や野菜の卸売りも手がけております。これらの青果は、いちご果実の販売先と重複するため、新たな輸送手段及び輸送ルートを構築する必要がなく、販売先数の増加とともに、今後も当社の収益拡大に期待ができます。

 

※1 手で触れたり、いちご同士あるいは他のものと擦れたりあたったりすることによって、いちごの表面にできる小さなピンク色に変色した部分のことであります。

※2 やわらかい材質のトレーにそれぞれのいちごの規格に合わせた窪みをつけた梱包用資材であります。この窪みの中にいちごを並べて輸送することでスレ・あたりを防ぐことができます。

⑤種馬鈴薯等の生産販売

日本国内に一般流通している品種「男爵」「メークイン」等の種馬鈴薯、青果馬鈴薯の仕入販売はもとより「シンシア」「アローワ」「サッシー」等の海外オリジナル品種の国内販売権を有し、種馬鈴薯を委託生産し、販売しております。

4【関係会社の状況】

名称

住所

資本金

(千円)

主要な事業の内容

議決権の所有割合(%)

関係内容

(連結子会社)

 

 

 

 

 

 株式会社

 エス・ロジスティックス

埼玉県川口市

40,000

運送事業

100

当社商品の運送業務

役員の兼任あり

 (注)1 主要な事業の内容欄には、セグメントの名称を記載しております。

2 株式会社エス・ロジスティックスの登記上の所在地は北海道上川郡東神楽町であります。

 

5【従業員の状況】

(1)連結会社の状況

 

(2023年6月30日現在)

セグメントの名称

従業員数(名)

いちご果実・青果

11

(10)

種苗

7

(6)

馬鈴薯

1

(-)

運送

18

(-)

全社(共通)

6

(1)

合計

43

(17)

(注)1 従業員数は就業人員であります。

2 従業員数欄の( )外書きは、臨時従業員の年間平均雇用人員であります。

3 全社(共通)として記載されている従業員数は、特定のセグメントに区分できない管理部門及び研究開発部門に所属しているものであります。

 

(2)提出会社の状況

 

 

 

 

(2023年6月30日現在)

従業員数(名)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(円)

25

(17)

41.5

12.5

4,218,516

 

セグメントの名称

従業員数(名)

いちご果実・青果

11

(10)

種苗

7

(6)

馬鈴薯

1

(-)

全社(共通)

6

(1)

合計

25

(17)

 (注)1 従業員数は就業人員(当社から社外への出向者を除く)であります。

2 平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

3 従業員数欄の( )外書きは、臨時従業員の年間平均雇用人員であります。

4 全社(共通)として記載されている従業員数は、特定のセグメントに区分できない管理部門及び研究開発部に所属しているものであります。

 

(3)労働組合の状況

当社に労働組合はありませんが、労使関係は円満に推移しております。

 

(4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

提出会社及び連結子会社は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定による公表義務の対象ではないため、記載を省略しております。