文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2025年3月31日)現在において当社グループが判断したものです。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは企業理念として、人間尊重を経営の基本に、健康で心豊かな生活と食文化に貢献し、社会とともに成長することを目指しております。その実現のため、魚を中心とした総合食品会社として成長するとともに、安心・安全な食品の供給と環境保全を経営の重点課題に掲げております。また、内部統制システムを整備し企業倫理の徹底、法令の遵守、情報の共有化を進めるとともに、的確な情報開示による透明度の高い事業運営を行うことにより企業価値を高め、社会に貢献してまいります。
国内経済は、エネルギーや原材料価格、物流費の高騰を反映した物価上昇により、消費減退が懸念されるなど、厳しい状況が続いています。また、長年続いたデフレからインフレに転換する中で、「金利のある世界」へ移行しており、新たな局面への適応が必要となっています。世界的には、地政学リスクの増大や米国の相互関税が与える影響など、不透明感が継続すると予測されます。その中にあって、水産物の需要は国内では漸減傾向にあるものの、世界では大きく伸長しており、ビジネスチャンスが拡大する一方で、資源アクセスの重要性が増しています。こうした経済・世界の変化に対応できる、企業の成長性、継続性を含めた企業力の強化が求められています。
中期経営計画『Gear Up Kyokuyo 2027』の概要
企業パーパスのもと、「事業基盤」の拡充、「財務基盤」と「ステークホルダーとのパートナーシップ」の強化を図りながら、「人財・組織」、「4つの事業」、「グローバル化」の3つの視座で施策を実行してまいります。詳細は当社ウェブサイトをご参照ください。
(https://www.kyokuyo.co.jp/files/gearupkyokuyo2027.pdf)

各セグメントの施策は次のとおりであります。
水産事業セグメントでは、取引先開拓などにより水産物取扱量を拡大するとともに、インフレ下での水産相場変動への対応力の向上を図ります。また、海外では引き続きM&Aを進めるとともに、現地法人各社の連携強化による相乗効果で、海外売上高の拡大を目指します。
生鮮事業セグメントでは、海外工場を含む自社工場製品の販売強化により、収益性の向上に努めるとともに、和食需要の高まりを背景に店舗数が拡大する、海外の日系外食産業向けの販売に注力します。並行して、商品開発段階からの取引先との取り組み強化により、国内外での加工品の拡販を推し進めます。
食品事業セグメントでは、冷凍食品は自社工場商品中心の販売体制の構築を進める中で、業務用については、市場ニーズを捉えた新規商材の投入や、既存商品のブラッシュアップで商品競争力を強化し、販売量の底上げを図ります。市販用は、新工場稼働による能力増強に加えて、極洋の強みが発揮される水産素材の新商品の提案などにより、販売量を増加させます。常温食品はおつまみ製品を含め、新規カテゴリの開拓に取り組む一方で、缶詰は主力魚種での新しい商品開発により、売上拡大を目指します。
物流サービスセグメントでは、倉庫保管・配送のセット営業強化のため運送会社との連携を強化し、売上拡大を図るとともに、管理システムの導入により事業効率性を向上させます。
財務基盤強化策としては、利益の積み上げによる資本増強のほか、資金調達手段の多様化を図ることで、積極的な成長投資に対応できる体制を整えてまいります。また、ステークホルダーとのパートナーシップ強化策として、積極的にコミュニケーションを行い、お客様には安心・安全でおいしい食の提供を、取引先には有効な販売戦略や商品開発を通じて、株主・投資家には情報開示と安定的な配当の実施を通じて、信頼関係の構築を図ってまいります。
業績予想や将来の予測等に関する記述は、当連結会計年度末現在で入手している情報に基づき合理的に判断する予想であり、米国のトランプ政権による関税等の政策転換によっては、サプライチェーンに影響を与える可能性があります。従って、期中において将来の予測等を変更する場合が生じることをご承知おきください。
(3) 目標とする経営指標
当社グループにおける中期的な連結経営指標の目標は海外売上高比率15%以上、ROIC(投下資本利益率)6%以上、DOE(株主資本配当率)3%以上としております。なお当期(2025年3月期)実績は、海外売上高比率10.8%、ROIC(投下資本利益率)5.8%、DOE(株主資本配当率)2.5%でした。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループでは、環境保全、気候変動、責任ある調達、人権尊重など様々なサステナビリティ課題解決へ向けた取り組み活動を推進するため、「サステナビリティ推進委員会」を設置しています。㈱極洋の代表取締役を委員長とするサステナビリティ推進委員会は、委員である取締役、本部長、部署長、支社長、関係会社社長の出席のもと年1回以上開催し、社会課題の解決に向けた対応について審議・決定、推進するとともに、取締役会に重要事項や取組みの進捗状況を報告しています。取締役会は報告を受け、サステナビリティ活動を監督する役割を担っています。
また、持続的成長と中長期的な企業の価値向上において、重要な経営課題であるサステナビリティの取組みを当社グループ全体で推進するため、2021年に策定した「キョクヨーグループサステナビリティ基本方針」に基づいた事業活動を展開しております。
<キョクヨーグループサステナビリティ基本方針>
1.価値の創出と共有
安心・安全な商品・サービスの提供を通じて社会に価値を創出し共有することで、さまざまな社会課題を解決し、健康で心豊かな生活と食文化に貢献します。
2.社会とのコミュニケーション
さまざまなステークホルダーとの積極的なコミュニケーションを推進し、社会の要請や期待に応え社会的責任を果たすことで、豊かな社会づくりに貢献します。
3.多様な人材が活躍できる環境
新たな価値の創出の源泉である人材の多様性を尊重し、一人ひとりが活躍できる環境づくりに努めます。
4.環境との調和
地球環境への負荷低減や気候変動の緩和、生物多様性と生態系の保全などに配慮した、環境と調和した事業活動に努めます。
5.コーポレートガバナンスの充実
迅速かつ透明性の高い経営のもと、公正な事業活動を行うとともに、コンプライアンスの徹底とリスクマネジメントの強化に努めます。
キョクヨーグループサステナビリティ基本方針の「4.環境との調和」の考えのもと、サステナビリティ推進委員会において、リスクのインパクトの大きさおよび発生する可能性の高さ・頻度から重要リスクの特定・評価を行い、未然防止・回避・低減・最小化等の対応策を検討し、進捗状況をモニタリングしています。
キョクヨーグループサステナビリティ基本方針の「3.多様な人材が活躍できる環境」の考えのもと、会社と従業員の双方向での丁寧なコミュニケーションを重視し、提出会社の社員を対象に、毎年、人事部による個別面談を実施することで、様々な声を聞き取っています。また、ハラスメントのない、全ての従業員が互いに尊重し合える、職場づくりのため、毎年事業年度の初めに、従業員へハラスメント防止に関する通達を行うとともに、万が一に備えた対策として、臨床心理士や精神保健福祉士等の資格を持つ専門家と契約し、ハラスメント全般に関する外部の相談窓口を設置しています。
当社グループでは、気候変動は事業基盤である海洋環境の変化や異常気象を引き起こし、当社グループや社会にさまざまな影響を及ぼすことから、重要な経営課題として認識しています。一方で、当社グループの事業は多様であるため、新たな事業機会の獲得にもつながると考えています。
2022年5月に「気候関連情報開示タスクフォース(TCFD)による提言」への賛同を表明した当社では、TCFD提言に沿って今後起こりうるさまざまな事象を想定し、対策を検討しています。その対象範囲は当社グループの事業全般であり、国際エネルギー機関(IEA)や国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による複数のシナリオを参照し、気温上昇によるリスクおよび機会への対応策(緩和策・適応策)を検討しています。リスクおよび機会への対応策について、定期的に見直しを継続していきます。
<主なリスクと機会、対応策>
(注)1 移行リスク:脱炭素社会への移行に伴う、法律や市場の変化に起因するリスク
2 物理的リスク:気候変動自体により発生する物理的事象が資産に損害を及ぼすリスク
3 影響時期:短期(2年以内)、中期(3-5年以内)、長期(6-20年)としました。
4 インパクトの程度:大(事業へのインパクト及び発生する可能性・頻度が大きいと想定)、
中(中程度と想定)、小(小さいと想定)としました。
当社グループにおける、人材の多様性を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下のとおりです。
当社グループでは、働きやすい職場環境づくりを進めることが仕事に対するモチベーションを高め、従業員が能力を発揮し、結果として生産性の向上や効率的な経営の実現、メンタルヘルスの不調の予防などにもつながると考えています。そのために、企業理念である「人間尊重」に基づいた施策や法令に則った制度の導入・整備を進めています。
主な戦略は以下のとおりです。
なお、連結グループに属する全ての会社についての記載が困難であるため、提出会社のものを記載しております。
ア.若手社員の育成
各階層別の教育・研修を実施し、将来を担う若手社員の育成に力を入れています。
特に、新入社員に対しては入社後、当社グループの複数の国内主力工場において約8ヵ月間の現場
研修を実施しています。
生産現場を体験しながら、様々な製造に関するプログラムを履行することで、製造への知見を深め
るだけでなく、原料を加工し付加価値を生み出す力を持てる社員を養成しています。
イ.主体的な学びのサポート
社員が自発的に学び、成長することをサポートするための通信教育講座を充実させています。
各講座の修了時に奨励金を支給するなどの支援制度を設け、積極的な受講を促す体制を整えていま
す。
また、海外事業の拡大を見据え、社員が自身の語学力を客観的に把握し、スキル向上への意欲を高
めることを目的として英語力試験の団体受験を社内で実施しています。
ウ.女性活躍の推進
女性活躍の推進については、「女性管理職比率の向上」、「女性が働きやすい環境の整備」、「人材育成」を目指し、将来の女性リーダー候補を対象とした研修や座談会の実施、ジョブローテーションによる幅広いキャリアの蓄積とモチベーションの向上、育児等で一時退職した従業員を再雇用するキャリアリターン制度の導入等、様々な施策に取り組んでいます。
また、産休・育休中の社員に対しては、社内報を送付するほか、社内規則や組織の改正などの社内情報をスマートフォンで手軽に確認できるイントラネットを設置し、スムーズな職場復帰に向けた支援を行っています。
エ.男性の家事・育児への積極的な参画
男性の家事・育児への積極的な参画に向け、社内報等での啓発を通じて、男性が育休を取得しやすい職場環境づくりにも取り組んでいます。
当社グループは、中期経営計画『Gear Up Kyokuyo 2027』で、サステナビリティを意識した経営のもと、カーボンニュートラルへの貢献など事業を通じた社会課題に積極的に取り組む方針を掲げています。
この方針のもと、エネルギーの効率的な利用等による、CO2排出量削減に取り組むとともに、日々の点検、管理を通じて、フロンの漏洩防止に努めています。
また、プラスチック使用量の削減にも積極的に取組んでいます。プラスチックは、原材料である石油の採掘・輸送から、精製、生産に係る過程だけでなく、焼却時にもCO2を排出することから、ライフサイクル全体を通じて気候変動の一因になっているとの考えのもと、当社グループ製品の包材等に使用するプラスチック使用量を減らす取組を行っています。
気候変動に関するリスクの緩和・評価・管理をするために定めた指標と目標は以下のとおりです。
(注)1.Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼など)
2.Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出(電力会社からの買電など)
3.工場:極洋食品(株)(塩釜工場、ひたちなか工場、八戸工場)、
極洋水産(株)(大井川工場、惣右衛門工場)、キョクヨーフーズ(株)、
極洋フレッシュ(株)、指宿食品(株)、海洋フーズ(株)、(株)ジョッキ
(株)エィペックス・キョクヨー
4.冷蔵庫:キョクヨー秋津冷蔵(株)(東京事業所、城南島事業所、福岡事業所)、極洋水産(株)冷蔵課
当社では、上記「(3)戦略 ②人的資本について」において記載した、人材の多様性を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は次のとおりであります。
※連結グループに属する全ての会社についての記載が困難であるため、提出会社のものを記載しております。
経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2025年3月31日)現在において当社グループが判断したものです。
当社グループは、総合食品グループとして安心・安全な商品およびサービスを提供し、消費者・ユーザーの信頼を獲得することを最重要課題としております。当社では品質保証部を設置し、当社及び当社グループ全体を対象として品質保証体制の構築と維持管理を行い、継続的に見直しを図っております。
また社内規則を整備するなどして食品事故を未然に防ぐとともに、問題が発生した場合でも速やかに対応できる体制を構築しております。しかしながら、当社の管理体制でカバーしきれない不測の製品クレームなどが発生した場合、製品の回収など想定外の費用の発生やグループ信用力の低下により、当社グループの業績と財政状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。
また原材料の調達や当社製品の加工・製造を行っている国や地域における食品の安全性に係わる問題の発生により、出荷制限や輸入禁止措置が発令された場合に原材料の調達及び製品の供給に支障をきたし、当社グループの業績と財政状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、中国・東南アジアでの海外加工をはじめとして、欧州、北米などで海外事業を営んでおり、調達リスクに応じた適正在庫を保有しております。しかしながら、海外における物流システムの不備、ALPS処理水への対応など予期しない法律または規制の変更、紛争、テロ、暴動、世界的感染症拡大などの要因による社会的混乱が、当社グループの業績とそれらの国々における在庫資産や人材確保に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは国内外から水産物をはじめとする原材料を買付しており、将来の原材料市況を想定したうえで在庫を保有しております。しかしながら、漁獲規制の強化や水揚げ数量の変動など予想以上に原材料市況に影響を与える事象が生じた場合、当社グループの業績と財政状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、漁獲規制などが年々厳しくなる中、原料の確保を目的に養殖事業を行っております。施設管理に細心の注意を払い、歩留まりの向上に努めておりますが、予防困難な魚病、台風や津波など自然災害によって魚の大量斃死や養殖設備が破損する場合には、当社グループの業績と財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、水産物を中心に原材料・製品の輸出入など為替変動の影響を受ける事業を行っております。円建て決済、為替予約などによるリスクヘッジで、為替レートの急激な変動による影響を最小限にとどめる対応を行っておりますが、当該リスクを完全に回避する方策はなく、当社グループの業績と財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
一般的には、水産物の外貨建て輸入代金決済において円安はコスト高に、外貨建て輸出代金決済において円高は売上収入の減少になります。
当社グループは、海外まき網船の操業など重油を燃料とした事業を行っております。効率的な事業運営を図っておりますが、原油価格の高騰はコストの上昇につながり、当社グループの業績と財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、有形固定資産等の固定資産を保有しておりますが、これらの資産については減損会計を適用し、当該資産から得られる将来キャッシュ・フローによって資産の帳簿価額を回収できるかどうかを検証しており、減損処理が必要な資産については適切に処理を行っています。しかし、将来の経営環境の変化等により将来キャッシュ・フロー見込額が減少した場合には、追加の減損処理により、当社グループの業績と財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、大規模な地震をはじめとする自然災害が発生した場合に備え、事業継続計画(BCP)の策定、社員安否確認システムの整備などの対策を講じておりますが、被害が発生した場合には、当社グループの業績と財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、コンピューターウィルス感染などによるシステム障害や情報漏洩に対し、適切な対策を講じておりますが、予測不能のウィルスの進入や情報への不正アクセスなどにより、事業運営に支障をきたす場合や内部情報が漏洩するおそれがあり、その結果、当社グループの業績と財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
(10) サステナビリティに関するリスク
「第一部 企業情報 第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2025年3月31日)現在において判断したものであります。
当連結会計年度におけるわが国経済は、企業収益の増加傾向が見られ、雇用・所得環境の改善などにより緩やかな回復基調が続きました。一方、混迷を深める国際情勢など、依然として先行き不透明な状況が続きました。
水産・食品業界におきましては、インバウンド需要の増加により外食・観光産業は堅調に推移したものの、原材料価格、人件費、物流費など製造コストの上昇や、物価高騰による消費意欲の低下など、厳しい経営環境が続きました。
このような状況の中で、当社グループは当期より中期経営計画『Gear Up Kyokuyo 2027』をスタートさせました。「魚を中心に、食で人と暮らしと地球によりそう サステナブルな世界へ」という企業パーパスのもと、「事業基盤」の拡充、「財務基盤」と「ステークホルダーとのパートナーシップ」の強化を進め、目標達成に向け取り組んでおります。
当連結会計年度における当社グループの売上高は3,026億81百万円(前年比15.7%増)、営業利益は110億79百万円(前期比25.8%増)、経常利益は108億57百万円(前期比22.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は67億40百万円(前比13.5%増)となりました。
なお、当連結会計年度より、当社グループ内の管理区分を見直したことに伴い、従来「生鮮事業」に属しておりましたKYOKUYO GLOBAL SEAFOODS CO., LTD.の事業の一部を「水産事業」に変更するなど、一部連結子会社の区分を変更しております。このため、前期との比較については、セグメント変更後の数値に組み替えて比較を行っております。
水産事業セグメント
国内販売については、1月以降にサケ、カニが相場高による消費減退を招き、荷動きが鈍化しましたが、年末商戦までの好調さに支えられ、通期では主要魚種のサケマス、エビのほか、高額商材のカニ、魚卵、ホタテの販売が増加し、増収増益となりました。
海外事業については、輸出事業は飼料用水産物の世界的な高騰により、日本産青物の販売が増加するとともに、新規取引先の開拓によるマグロの拡販などにより、販売が回復しました。海外現地販売は、欧米は前期の急激なインフレによる消費減退から回復したことに加えて、連結子会社化した海外企業2社が売上に寄与しました。中国においては、内需の低調が続いたものの、輸出用加工原料の需要回復により販売が伸長しました。また、アジアでの出店が加速している日系外食チェーンへの販売が伸長しました。
この結果、売上・利益とも前期を上回りました。水産事業セグメントの売上高は1,686億68百万円(前期比29.7%増)、営業利益は61億9百万円(前期比17.6%増)
となりました。
マグロは前期比で相場が回復した冷凍クロマグロの販売が好調に推移し、増収増益に寄与しました。また、豊漁で割安感のあったカツオや、前期比で値ごろ感があった冷凍メバチマグロ、マグロタタキなどの加工品の売上が伸長し、回転寿司などの外食や量販店向けを中心に売上が拡大しました。海外まき網事業は、水揚げ量は増加しましたが、単価下落により売上、利益とも減少しました。養殖事業については、国産養殖クロマグロは取引先との取り組み強化により、販売が拡大しました。収益面では、飼料費の高騰があったものの、完全養殖マグロの事業会社の解散やマダイなどの生産性向上により、改善しました。
寿司種を中心とした生食商材は、海外自社工場製品を中心に拡販を進めましたが、相場の急騰によりウナギなど高価格帯商材の販売が落ち込んだほか、前期に実施した価格改定の影響が続き、回転寿司ルート向けを中心に売上は減少しましたが、収益は改善しました。
この結果、売上・利益とも前期を上回りました。生鮮事業セグメントの売上高は658億50百万円(前期比3.2%増)、営業利益は36億15百万円(前期比60.8%増)となりました。
業務用冷凍食品は、新商品の投入などにより、カニ風味かまぼこ「オーシャンキング」やエビフリッターなどの販売は伸長したものの、物価高騰の影響で安価な海外製品との競合が激しくなり、水産フライなどの減少が響き、全体の売上が減少しました。収益は価格改定が浸透したことで、改善しました。市販用冷凍食品については、煮魚・焼魚製品、弁当商材とも販売は前期並みとなりましたが、原材料高により収益は減少しました。缶詰は、サバ缶の改善に加え、注力したツナ缶、サンマ缶の販売が増加しましたが、資材高騰のコストアップなどにより収益が圧迫されました。食品事業セグメントの売上高は659億40百万円(前期比0.5%増)、営業利益は24億46百万円(前期比8.0%減)となりました。
物流サービスセグメント
冷蔵倉庫事業においては、庫腹率の高水準が継続したことで保管料収入が増加するとともに、コスト上昇に伴って前期に実施した価格改定の効果もあり、売上・利益とも拡大しました。利用運送事業は、外部取引先への営業強化により、売上が拡大しました。
この結果、売上・利益とも前期を上回りました。物流サービスセグメントの売上高は16億67百万円(前期比4.2%増)、営業利益は2億94百万円(前期比1.8%増)となりました。
生産・仕入、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
当連結会計年度における生産・仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
受注生産は行っておりません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
総資産は、前連結会計年度末に比べ214億5百万円増加し、1,821億25百万円となりました。
流動資産は、棚卸資産が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ99億63百万円増加し、1,342億60百万円となりました。固定資産は、有形固定資産が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ114億42百万円増加し、478億65百万円となりました。
負債合計は、長期借入金が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ119億10百万円増加し、1,137億69百万円となりました。
純資産は、前連結会計年度末に比べ94億95百万円増加し、683億55百万円となりました。
この結果、自己資本比率は36.5%(前連結会計年度末比0.2ポイント減)となりました。
(単位:百万円)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の計上などにより、58億43百万円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の取得による支出などにより、90億36百万円の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の増加などにより、21億49百万円の収入となりました。
この結果、現金及び現金同等物の期末残高は期首残高より9億38百万円減少し、75億14百万円となりました。
当社グループは、事業活動に適切な流動性の維持と十分な資金を確保すると共に、グループ内でキャッシュマネージメントシステムを活用するなど運転資金の効率的な管理により、事業活動における資本効率の最適化を目指しております。また、営業活動によるキャッシュ・フロー並びに現金及び現金同等物を資金の主な源泉と考え、さらに金融機関からの借入、コマーシャル・ペーパーの発行などによる資金調達を必要に応じて行い、十分な流動性の確保と財務体質の向上を図っております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
該当事項はありません。
当社グループは、食生活にとって大切な動物性蛋白質資源及びその他の食料資源をより有効に活用し、生物多様性の保全に努めながら、安心・安全で豊かな食生活を実現することを使命とし、以下の取り組みを行っております。
(1) 魚肉蛋白質や脂質などの水産化学分野の基礎的研究。
(2) 食品衛生及び安全性の確認に関する研究。
(3) 冷凍食品、缶詰、健康食品等の新製品開発。
(4) 国内外工場と協力した製造ラインの設計や改善。
(5) 生産性向上活動およびDX活用工場の拡大・拡充。
(6) 大学や研究機関と連携した、新規性を持つ技術や装置の開発。
(7) 生産現場のあらゆるロス低減に努め、ローコストオペレーションの確立と、その指導。
(8) 養殖場の効率化と魚の品質向上に関する研究。
当連結会計年度の研究開発活動はそのほとんどが食品事業に関するものであり、研究開発費の総額は