<ミッションと長期ビジョン>
企業を取り巻く環境はさまざま変化しておりますが、中でも「気候変動への対応と海洋環境の保全」「資源の持続可能な調達」「健康課題の解決」「多様な人財が活躍できる社会の実現」は、当社が特に取り組むべき重要な社会課題と認識しております。このような課題に対応するべく、昨年、当社はミッション(存在意義)をあらためて定義した上で、長期ビジョン「人にも地球にもやさしい食を世界にお届けするリーディングカンパニー」として「2030年のありたい姿」を明確にしました。

当社がこれまで110余年かけて培った資源アクセス力、研究開発力、生産技術、品質保証力、世界各国に張り巡らせたグローバルリンクス・ローカルリンクスで構成される*バリューチェーンの強みと特長を活かし、「心と体を豊かにする新しい食」、「社会課題を解決する新しい食」を提供してまいります。
*「バリューチェーンの強みと特長」の詳細は「統合報告書」P.27~34をご覧ください。
https://www.nissui.co.jp/ir/download/integrated_report/2022_integrated_report_a3all.pdf
<長期ビジョン「2030年のありたい姿」>
人にも地球にもやさしい食を世界にお届けするリーディングカンパニー 「Good Foods 2030」

長期ビジョン「Good Foods 2030」の達成に向け、マルチステークホルダーへ配慮しながら持続可能な社会への価値を創造する“サステナビリティ経営”を推進するとともに、ROIC活用により成長分野へ経営資源を集中する“事業ポートフォリオマネジメント”を強化し、企業価値向上に努めます。
海外マーケットでの伸長、養殖事業・ファインケミカル事業の成長と差別化を加速し、2030年には、海外所在地売上高比率を50%、売上高1兆円、営業利益500億円を稼げる企業を目指します。


<中期経営計画と6つの基本戦略>
2030年の長期ビジョンを実現するため、当社は2022年度~2024年度までの3ヶ年を対象とする中期経営計画「Good Foods Recipe1」を策定し、以下6つの基本戦略で取り組んでいます。

<中期経営計画における投資と財務戦略>
成長と財務安全性の両立を図り、株主還元は配当性向30%以上を目指す。

(基本戦略の進捗状況)
<設備投資計画の進捗状況>
資源アクセスの強化や海外事業などの成長分野に積極的に投資。

(1)サステナビリティ全般
<ニッスイグループのサステナビリティ>
ニッスイグループは創業以来、様々な自然の恵みを活用して事業を行ってきました。創業の理念、ミッションに掲げるサステナブルな事業活動は私たちの重要な使命です。私たちはニッスイの5つの遺伝子(お客様を大切にする、現場主義、グローバル、イノベーション、使命感)、サステナビリティ行動宣言に基づき、ステークホルダーの皆さまとの連携・協働のもと、事業を通じて重要課題(マテリアリティ)に取り組み、社会課題の解決を目指します。

<ガバナンス>
ニッスイグループでは、持続的な成長と企業価値向上の実現に向けてサステナビリティ経営を進めており、その推進組織として、全執行役員と社外取締役で構成し、CEOを委員長とするサステナビリティ委員会を設置しています。サステナビリティを巡る各課題については、サステナビリティ委員会傘下のテーマ別の8つの部会において、委員長が指名した部会長(執行役員)と、部会長により任命されたメンバーで部門横断的に対応を行っています。また、年6回開催するサステナビリティ委員会では、各部会からの報告や提案を受けてサステナビリティを巡る課題に係る具体的な目標や方針、施策を検討しており、取締役会への定期的な報告を通じて、取締役会からの意見や助言をその取り組みに反映しています。
また2030年ビジョン、経営計画達成に向けて役員報酬体系を2022年度より改定し、業務執行取締役の変動報酬部分の評価指標に、水産物の持続可能性や自社グループ拠点のCO2排出量削減等のサステナビリティ目標の達成度を加えています。

<戦略>
長期ビジョンでは、社会価値、人財価値、環境価値、経済価値の4つの価値創出を目指しており、サステナビリティ経営をビジョン達成のための柱の一つとして位置付けています。サステナビリティ課題をリスクと機会の両面から捉え、社会価値、人財価値、環境価値の創出に取り組むことで非財務資本を強化し、経済価値の創出につなげます。
<リスク管理>
当社グループは、事業活動の妨げとなるリスクを未然に防止し損失発生を最小限に抑え、経営資源の保全と事業の継続に最善を尽くすため、「リスクマネジメント方針」を制定しています。全執行役員で構成され、社長が委員長を務めるリスクマネジメント委員会がリスクマネジメントシステムの構築と運用と定期的な取締役会への報告を行っております。サステナビリティ課題を含む重要リスクについては、サステナビリティ委員会を中心に対応しています。リスクの詳細は「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご覧ください。
<指標と目標>
2022年4月に策定した長期ビジョン、中期経営計画では、経済価値、環境価値、社会価値および人財価値の創出に向け、サステナビリティ目標として7つのKPIを定めました。サステナビリティ委員会により各指標の進捗状況がモニタリングされ、結果に基づき取り組みに反映しています。
(注)対象範囲はニッスイ個別
(2)テーマ別課題
≪人的資本への対応≫
<戦略>
人財育成方針および社内環境整備方針
当社グループは、昨年発表した長期ビジョンGood Foods 2030に掲げているとおり、企業価値向上に最も重要な要素の一つは「人財」であると考えており、事業活動を通じて性別・国籍・年齢等異なる多様な人財の能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションや組織の活性化を生み出し、価値創造に繋げるとともに、互いに磨き合いながらグローバルやローカルの社会課題に積極的に取り組む人財の育成を目指しています。また、あわせてグループの社員が安心して気持ちよく活躍できる職場や制度等の環境整備にも努めています。
当社グループの取り組み
①人財育成の基本枠組み
当社グループの正社員は国内外あわせて約10,000人、その約半数は海外グループ会社に所属しています。“食”はそれぞれの地域に根差すことが重要であることから、海外のグループ会社は原則マネジメントを現地に任せており、世界中で経営から社員まで様々な国籍の方が多く勤務しております。国内外とも社員の道標となるものはミッションであり「健やかな生活とサステナブルな未来を実現する新しい"食"を創造する」という考えに共鳴・共感し行動できる人財の育成に向け、グループ各社と取り組んでまいります。
当社においては「新しい食」を創造する人財を育成すべく、その基本方針を『社員一人ひとりが「求める人財像」を念頭に置き、仕事を通じて成長する「自立して自律できる人財」の育成を進める』ことと定めています。
②教育体系
当社においては、その役割や職掌・年齢等に応じ、入社から退職まで一貫した教育研修プログラムを整備しています。新入社員研修以降複数回に渡るフォローアップ研修に加え、役割等級制度で定義する上位等級に必要な知識やスキルの取得にあたり、上長や教育担当者によるOJTとともに、階層別研修・通信教育等を整備しています。また、管理職試験では外部の専門業者を活用したアセスメントにより厳正な審査を行うことで、評価の透明性・公平性を担保しています。
サクセッションを踏まえた選抜型教育や各年齢層に応じて設定するキャリア研修、また専門性を高めるための職掌別研修等も実施しており、2023年度からはDX研修にも注力していきます。
③戦略的な人財確保・配置転換
当社グループでは、各社内部での異動に加えグループ内の出向も人財育成の手段として活用しており、当社から海外を含むグループ会社へ積極的に派遣し、責任あるポジションを経験させることで、将来当社またはグループ会社におけるトップマネジメントを担う人財を早くから育成しています。また、グループ会社から当社に出向することでグループ会社の人財育成にもつなげています。
当社では、事業ごとに次世代課長候補の要件/必要スキルを明確にし、その候補者が常にプールされている状態を目指し、役員と人事部とで人財プールおよびその育成計画を審議するサクセッション会議を毎年実施しており、管理職試験を通過する新たな課長層が毎年生まれています。2023年度からは執行役員や部長のサクセッションについても議論することとしています。
また、若手社員については、2022年度から複数の事業・職種を経験することで、視座を高め、仕事の幅を広げ、変化対応力を高めることを狙いとして「育成ローテーション」をスタートしました。
具体的には、対象者全員との人事部・所属上長との面談、対象30部署と人事部とのキャリア開発会議を行い、対象社員一人一人のキャリア志向を丁寧に把握するとともに、強み・成長課題・適性を判断し、取締役以上で構成する「人財育成会議」にて異動を決定しました。更に各部署長から対象者全員に、目的や期待する事、今後の育成方針について丁寧に説明するとともに人事部によるフォロー面談も行いました。これにより、対象者がそれぞれ前向きに受け止めるとともに、他の社員も含めて全社的なキャリア意識の向上にも繋がっています。
④ダイバーシティ&インクルージョン
(イ)グローバル人財
2030年売上高の50%を海外とする事業ポートフォリオの実現には、グループ全体でミッションである「健やかな生活とサステナブルな未来を実現する新しい"食"を創造する」に共鳴・共感し行動に移すことができる人財育成がポイントで、これを国内外で徹底し各社に適した形で育成していきます。
当社では2016年度から将来海外で活躍するグローバル人財候補をあらかじめ登録し、登録者については、海外赴任および研修等について優先的に対象とする「グローバル人財登録制度」を運営し、グローバル人財の母集団形成を図っています。現在登録者数は2022年末時点77名を数えています。
登録者に対して2023年度は海外グループ会社への複数名の短期派遣を予定しているほか、前年に引き続き将来の海外赴任を視野に入れた全編英語によるマネジメント・異文化理解研修等を実施していきます。
(ロ)女性活躍推進
当社では女性職員の母集団を増やす取り組みに加え、入社後幅広い領域で女性が活躍できる環境を作っていくため、女性職員比率が低い営業・生産職種に毎年継続的に複数名配置するなど職種の偏りを是正する取り組みを行っています。
2018年度以降、管理職や女性自身の意識改革にも取り組んでおり、2021年度には女性活躍推進の障壁となる性別無意識バイアスをテーマに、女性職員全員及び役員、部長、課長を対象としたIAT診断を実施、各階層からアプローチを行うことで、無意識バイアスに関する理解を深めるだけでなく、自身の無意識バイアスに気づき、コントロールできるようになることで人的資源の最大活用に繋げました。
また、女性職員に対する意識改革やキャリア支援の一環として、2019年度より社外研修への派遣も実施、社外ロールモデルとの接点創出を通じて、今後のキャリア形成へのヒントを得るだけでなく、同世代の活躍する女性との交流を通じモチベーション向上やネットワーク構築を行いました。
2021年1月からは「30% Club Japan」に参画し女性の採用および登用に関する数値目標を定め、社内制度の整備を進めながら女性がより一層活躍できる風土の醸成に取り組み、2022年3月には、経済産業省と東京証券取引所が共同で実施している、女性活躍推進に優れた上場企業を選定する「なでしこ銘柄」に準じる「準なでしこ銘柄」に初めて選定されました。
2022年度も女性候補者に対する選抜研修や育成異動を行うとともにチーム制やメンター制度導入も行う中、大卒新卒採用者に占める女性割合を41%に、営業及び生産職種の女性比率も平均20%以上に引き上げる(2018年度比)など、徐々に取り組みの成果が数値として表れるとともに社内の意識の向上も見られています。
(ハ)障害者雇用
当社グループにおいては、法定雇用率の遵守はもとより、障害のある方も一人ひとりの特性や強みを活かしていけるよう、安心して働き活躍できる環境づくりに取り組んでいます。雇用のあり方についても、社内で同じ職場において一緒に働くことによりインクルージョンを図っています。
当社においても管理部門、工場、営業など約30の幅広い職場において障害のある社員が働いています。社内では専門知識・資格を持つスタッフの配置を進め各職場の担当者、産業保健スタッフとの協働で、多面的なサポートを行っています。さらに、各地域の行政や支援機関との連携を強化することで、採用から就労継続はもとより、一人ひとりの体調・生活面までカバーできる体制が整ってきました。
また、障害のある社員で構成する「人事部ビジネストラストチーム」は発足8年目を迎え、社内の多数部署から業務を受託し、障害者雇用の推進と業務の効率化に貢献しています。個人のスキルアップに伴い、各部門に常駐するスタイルで働くメンバーも増えてきました。今後も、障害に関する理解促進のために、職場研修の実施、合理的配慮セミナーなどを通して、お互いより良く働くための組織風土づくりを進めていきます。
2023年度からは障害者雇用を促進する組織を設置しました。教育研修の更なる充実、将来を見据えたステップアップ等の課題に取り組み、安心の障害者雇用をさらに促進していきます。
(ニ)中途採用(経験者採用)
当社では10年以上前から中途採用を「経験者採用」と位置づけ採用を続けていることから、その経験・専門性を尊重し柔軟に受け入れ活躍してもらう風土が醸成されており、現在では正社員に占める中途採用(経験者採用)比率は約30%に至り、10年で約5%増加しています。また、新卒採用者との間に差を設けず優秀な人財を積極的にプロモートしており、管理職も既に中途採用(経験者採用)が約25%を占め、執行役員に就任している者もおります。
今後も優秀な人財を確保するとともに、入社時期が異なる経験者が入社後に円滑なスタートを切り、ギャップなく能力を最大限に発揮できるよう、ミッションの共有を継続するとともにフォロー面談や集合研修等を行っていきます。
⑤社内環境整備
(イ)エンゲージメント
当社では、従業員エンゲージメント向上のため2021年度初めて会社と従業員の間における「信頼と貢献」を測定しました。全体スコアとしては概ね標準レベルではありましたが、2022年度はその結果について改善が必要な部門に対し個別の説明会を実施、アクションプランをたて7月から実行しました。
2022年度に実施した2回目の調査結果では、初回より僅かながら改善が見られたものの、「全社的な連帯感」「階層間の意思疎通」が課題とされました。2023年度は、改めてミッションの社内浸透を図るとともに全社員が「新しい食」について考え、意見交換を行う「GOOD FOODS Talk」を全職場で実施し、インナーブランディングを進めるとともに、エンゲージメントの向上に繋げていきます。
今後は国内グループ会社にも展開し、各社において自発的貢献意欲の向上と組織風土や職場状況を改善する施策を実施するよう進めていきます。
(ロ)健康経営の推進
健康経営をグループ全体で推進するため、まずは2022年9月国内グループ会社を対象に健康経営キックオフミーティングを実施しました。現在、当社を含め既に12社が健康経営宣言をしており、2022年度は各社で目標設定を実施、2023年度から各社協力・連携しながら健康経営の取り組みを推進し、多様な人財が健康で能力を発揮できる環境を整えグループ全体の成長を後押しします。
当社は「健康経営銘柄2023」に選定されました。2019年に水産・農林業で初めて選定されて以来5年連続となっています。EPAや速筋タンパクなどの海産物の機能に着目した健康づくりを推進していること、時間単位の有給休暇など柔軟な働き方制度の拡充、禁煙対策による着実な喫煙率の低減などが評価されており、引き続き活動を深化し従業員のQOLを高めていきます。
<指標と目標>
上記方針を踏まえ、当社では人的資本に関するKPIを以下の通り定めています。
≪気候変動への対応(TCFD提言への取組)≫
<ガバナンス>
気候変動問題については、CFOがプロジェクトオーナーを務める部門横断型プロジェクト「TCFD対応プロジェクト」において、リスク・機会の分析と財務インパクト対応策の検討を行っています。検討結果はサステナビリティ委員会での審議を経て取締役会に報告し、取締役会からの意見や助言を反映しています。TCFD対応プロジェクトは2022年度に5回開催しました。CO2排出量削減などの気候変動緩和策については、サステナビリティ委員会傘下の環境部会がグループ全体の取り組みを推進しています。

<戦略>
2021年度に水産事業と食品事業を対象とし、2022年度は対象にFC事業を対象に加え、TCFD提言に基づく気候変動のシナリオ分析を2つのシナリオで実施しました。気候変動リスクと機会の特定、財務インパクトの評価を行い、その対応策を検討しました。明確化された重要なリスクと機会に対して、対応策を講じることで、リスクの低減と機会の確実な獲得につなげ、気候変動に対してレジリエントな状態を目指します。
①戦略におけるシナリオ分析の概要
TCFDの提言に従い、気候変動シナリオ分析を実施しました。分析対象は水産事業と食品事業に2022年度はFC事業を加え、バリューチェーン全体を幅広く分析しました。1.5℃/2℃および4℃の気温上昇時の世界を想定し、リスク・機会の抽出と2030年における財務インパクトの評価、および対応策を検討しました。
その結果、1.5℃/2℃シナリオでは炭素税の導入による操業コストが事業成長の阻害要因となり、積極的なGHG削減とともに生産活動の効率化に取り組み、新たな顧客需要を捉えることにより、事業成長につなげることが可能であることがわかりました。また、4℃シナリオでは自然災害の激甚化に伴う物理リスクが事業成長の阻害要因となり、養殖事業の高度化に取り組みこれらのリスクに対応することで収益への影響を最小化することが必要であることがわかりました。
1.5℃/2℃シナリオ
影響時期は、短期(3年以内)、中期(3-10年以内)、長期(10-20年程度)とした。
(注1)ICP:インターナルカーボンプライシング
(注2)LCA:ライフサイクルアセスメント
4℃シナリオ
影響時期は、短期(3年以内)、中期(3-10年以内)、長期(10-20年程度)とした。
②カーボンプライシングの影響
財務インパクトの中でも特に影響が大きかったカーボンプライシングについては、将来CO2排出量(Scope 1、2)を2030年売上予測に基づいて算出し、2℃シナリオ、4℃シナリオごとのIEAの予測(注1)による炭素価格を掛け合わせて運営コストの影響金額を算出しました。2030年目標であるCO2排出量を総量で30%削減することにより、グループ全体で2℃シナリオでは44.1億円、4℃シナリオでは17.6億円の削減につながることがわかりました。
炭素税:2℃シナリオ時 135ドル/t‐CO2、4℃シナリオ時 54ドル/t‐CO2と仮定、為替レートはいずれのシナリオも1ドル=118円と仮定
(注1)IEA World Energy Outlook 2022
(注2)対応策なし:Scope 1、2を対象とし、基準年度である2018年度と同様の原単位でCO2が排出されると仮定
(注3)対応策あり:Scope 1、2を対象とし、2030年目標を達成することでCO2排出量が2018年度から30%削減されると仮定
③天然水産資源(カタクチイワシ・スケソウダラ)の影響評価
2022年度は、調達量が多く重要な魚種であるカタクチイワシとスケソウダラについて、FAOのモデルを使用して2種類のシナリオで2030年、2050年の漁獲可能量の変化を評価しました。その結果、1.5℃シナリオにおいては両魚種ともに微減が予想されました。4℃シナリオにおいては、カタクチイワシは2030年、2050年ともに減少となり、スケソウダラは2030年は微増、2050年は増加が予想されました。2030年時点での漁獲可能量の変化率は大きくないため、財務への影響は軽微であることが確認されました。しかし、2050年の漁獲可能量の変化率は比較的大きいため、特に減少が予想されるカタクチイワシについては、対応策を確実に進めていく必要があります。
漁獲可能量の変化率 (%)

出所:FAO (国連食糧農業機関)「Impacts of climate change on fisheries and aquaculture(2018)」
④水リスクの評価
水リスク評価のグローバルスタンダードのうち、2021年度は世界自然保護基金(WWF)のWater Risk Filterを用いて国内の製造・物流拠点全体の評価を行いましたが、Water Risk Filterに比べ分析粒度が細かくより精緻なデータ収集が可能である点、水リスク評価の際に拠点別の影響額を試算するために浸水深のデータが必要であるため、2022年度は世界資源研究所(WRI)のAqueduct(アキダクト)を用いて、国内・海外の生産・物流拠点別に評価を行いました。
水害による生産中断による機会損失については、各拠点の所在地に示されるAqueductの浸水深により拠点別に運転停止日数・在庫毀損率を特定し、財務影響金額を算定しました。その結果、財務へ影響は中程度であることを確認しました。また、水ストレス(渇水)については、最も高いリスクレベルに該当する拠点はありませんでしたが、日本、タイ、北米、南米の生産拠点の一部が、水ストレス下にある地域に所在していることがわかりました。今後は継続的に使用水の削減に取り組むとともに、水リスク評価方法の精緻化についても検討を進めていきます。
■Aquiductによる洪水リスク評価結果(拠点数)
■Aquiductによる渇水リスク評価結果(拠点数)
⑤戦略への反映
シナリオ分析の結果を受けて、中期経営計画「Good Foods Recipe1」では、優先度の高い対応策から事業計画に反映し、戦略との整合を図っています。
<リスク管理>
事業活動の妨げとなるリスクを未然に防止し、損失発生を最小限に抑え、経営資源の保全と事業の継続に最善を尽くすため、リスクマネジメント規程を制定し、社長が委員長を務めるリスクマネジメント委員会がリスクマネジメントシステムの構築と運用、定期的な取締役会への報告を行っています。気候変動(世界的な気温上昇)による影響を含む事業上の重要リスクは、取締役会で毎年審議し、更新しています。
<指標と目標>
長期ビジョン「Good Foods 2030」において、2018年度比で、2030年にCO2排出量を総量で30%削減し、2050年までにカーボンニュートラルを実現することを掲げています。グループグローバルでの目標達成に向け、各事業所における省エネ施策の実施やエネルギー使用量の少ない高効率設備への更新、再生可能エネルギーの使用など、CO2削減計画を策定し、積極的に取り組んでいきます。
Scope 3についてはGHGプロトコルに整合した環境省のガイドラインに従い、15のカテゴリーに分け算定しました。今後はデータの精度向上を図り、排出量の多いカテゴリー1の削減方法の検討などを行い、ニッスイグループにおけるCO2排出量の削減をさらに推進します。また、調達する天然水産物、プラスチック、フードロス、水などについても、持続可能な利用を実現するための目標と施策をそれぞれ掲げ、取り組みを推進していきます。
①CO2排出量の推移

②目標
○ CO2排出量(Scope 1、2)削減目標 2018年度対比・総量
2024年までに10%削減、2030年までに30%削減、2050年までにカーボンニュートラル実現を目指します。
○ 持続可能な利用を実現するための目標と施策
サステナビリティの目標
https://nissui.disclosure.site/ja/themes/150
環境負荷低減の取組
https://nissui.disclosure.site/ja/themes/88
サプライチェーン全体のCO2排出量を算出(Scope 3)
https://nissui.disclosure.site/ja/themes/119#225
≪生物多様性への対応(水産資源の持続的な利用)≫
<ガバナンス>
サステナビリティ委員会傘下の「水産資源持続部会」において、当社グループで取り扱う水産物の資源状態把握と資源の持続的利用の推進について議論しています。SeaBOS(持続可能な水産ビジネスを目指すイニシアティブ)(注1)をはじめNGOや大学等の研究機関など各種団体とも連携しながら、水産資源の持続性向上の取り組みを行っています。検討内容についてはサステナビリティ委員会での審議を経て取締役会に報告し、取締役会からの意見や助言を反映しています。
(注1)SeaBOS:Seafood Business for Ocean Stewardshipの略。日本、ノルウェー、タイ、米国、韓国など世界各国から水産業界のリーダー企業が参画し、海洋環境および海洋資源の保全と持続的な資源利用を進め、持続的な水産ビジネスを目指すイニシアティブ。科学者と水産業界の主要企業が協力し、科学的根拠に基づき持続可能性向上に取り組んでいる。

<戦略>
世界の水産資源は枯渇化が進んでおり、2022年の国連食糧農業機関(FAO)の報告書によると、世界の海洋水産資源は資源安定状態が7%、満限利用の状態が57%、過剰漁獲状態が36%とされています。水産資源の状態は、自然資本に依存し、また影響を与えながら事業を営む当社グループにとって、中長期的な事業のリスクやチャンスに関わる非常に重要なものであると考えています。そのため、調達品の資源状況の把握と、対応すべき課題の特定を目的に、グループ全体で調達した水産資源状態について調査を行っているほか、グループ全体で持続的な水産資源の利用のための取り組みを推進しています。
①取り扱い水産物の資源状態調査の概要
当社では3年ごとに取り扱い水産物の資源状態調査を行っており、直近では2020年に2019年度の調達水産物を対象に調査を行いました。当社グループが2019年に取り扱った天然魚は、世界21海域471系群あると確認され、原魚換算重量として271万トンとなりました。個々の資源の分析は第三者性の確保のため外部団体(SFP(注1))に委託し、管理状態について評価を得ています。
(注1)SFP(Sustainable Fisheries Partnaership)サプライチェーンを通じた漁業の改善を推進している米国のNGO

②資源管理状態の評価結果
SFPによる分析の結果、調達品の約71%が管理できている資源(「優れた管理」および「管理」)であることがわかりました。一方、改善を要する資源が8%となるほか、スコア欠損により判定不能な資源も21%あり、今後の課題と位置付けています。

③今後の対応策
認証品や資源状態の良好な魚種・産地など、持続性が確認できるものの選択に努めます。代替が困難な資源については、サプライヤーラウンドテーブルへの参画やFIP(注1)の支援などを通じ、資源の持続可能性の確保を目指します。また、産地までのトレースが困難な品目については、サプライヤーへの協力を求めるなどにより改善に取り組みます。
(注1)FIP(Fishery Improvement Project)漁業者、企業、流通、NGOなど関係者が協力し、漁業の持続可能性の向上に取り組むプロジェクト
<リスク管理>
事業活動の妨げとなるリスクを未然に防止し、損失発生を最小限に抑え、経営資源の保全と事業の継続に最善を尽くすため、リスクマネジメント規程を制定し、社長が委員長を務めるリスクマネジメント委員会がリスクマネジメントシステムの構築と運用、定期的な取締役会への報告を行っています。水産資源アクセスに与える影響を含む事業上の重要リスクは、取締役会で毎年審議し、更新しています。
<指標と目標>
2024年までに持続可能な調達比率80%、2030年までに持続可能な調達比率100%を目指します。
本項目に記載する当社グループの事業等のリスクは、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクを有価証券報告書提出日現在において判断し記載しております。本項目は、当社取締役会で審議した事項であり、毎年、取締役会において審議し更新してまいります。
<当社グループのリスクマネジメント体制>
当社グループは、水産物をはじめとする資源から様々な食品や医薬品原料などを製造し、世界の人々に対して供給することを使命としており、その責務を果たすべく安定した生産・販売の継続に努めております。そのような観点から、当社グループは、事業活動の妨げとなるリスクを未然に防止し損失発生を最小限に抑え、経営資源の保全と事業の継続に最善を尽くすため、「リスクマネジメント規程」を制定し、リスクマネジメント委員会(注1)がリスクマネジメントシステムの構築と運用と定期的な取締役会への報告を行っております。影響の大きいリスク群については重要リスク(注2)として専門部会を設置し、リスク対応を行っております。
(注1)リスクマネジメント委員会:全執行役員で構成され、社長が委員長を務めております。
(注2)重要リスク:「品質保証」「環境」「労務・安全」「コンプライアンス」「情報セキュリティ」「災害BCP(事業継続計画)」等
1.気候変動(世界的な気温上昇)による影響
近年、世界中で気候変動が深刻化し、その影響はますます顕著になっています。温暖化による異常気象や自然災害は、当社グループの原材料調達、生産、物流、販売など様々な事業活動に深刻な影響を及ぼす可能性があります。さらに、気候変動に対応する新たな規制や市場動向の変化によって、当社のビジネスモデルが脅かされる可能性もあります。当社グループは、気候変動によるリスクを認識し、CO2排出量の削減をはじめとした積極的な対策に取り組んでいきます。
当社は2021年11月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明するとともに、TCFDコンソーシアムに加入しました。また、気候変動に係るリスク及び機会を特定し、シナリオ分析を通じて事業インパクトと財務影響を評価した上で、TCFD提言で推奨される「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4つの開示項目に沿って情報を開示しております。
詳細については「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)テーマ別課題 気候変動への対応(TCFD提言への取組)」をご参照ください。
2.原料調達等に関するリスク
当社グループが主要な原料としている水産物は、従来より、漁獲量・養殖生産量の増減などによる水産物市況の変動の影響を度々受けておりましたが、さらに、前出の気候変動がもたらす海洋・陸上環境の変化が水産物や農畜産物等の原料の収量を減少させ、原料価格が高騰するおそれがあります。気候変動以外でも、水産資源の乱獲や違法操業、農業における乱開発や環境破壊、畜産物における動物福祉の規制強化等が、当社グループの調達のリスクにつながる可能性があります。
また、政治・経済情勢、テロ・紛争による治安の悪化や社会的混乱などの外的要因によっても、原料価格や調達・生産に係るエネルギーコスト等が高騰するリスクがあります。
2022年の国際連合の発表では、世界人口は2050年に97億人を超えることが見込まれております。当社グループの事業にとっては、人口増による食料需要の増加が市場拡大をもたらし、チャンスにつながる可能性がありますが、一方で、資源獲得競争が熾烈になり、安定的な原料等の調達が困難となるおそれもあります。このような外部環境の変化による調達のリスクは、各事業の収支に影響するおそれがあります。
当社グループは、従前より安定的な原料確保と製品供給の重要性を認識し、グローバルな調達先との提携やM&A、養殖事業における研究・技術開発による資源アクセスの安定的確保に努めてまいりました。今後も安定的な原料確保と商品供給のための施策を推進してまいります。
3.人為的な海洋汚染によるリスク
近年、日常生活に欠かせない飲料・食品の容器包装や、事業活動に使用されているプラスチックの海洋環境への影響が社会課題として取り上げられています。当社グループは、食品や水産事業を中心に事業活動を行っており、この問題の深刻さが増すと事業の継続に影響を及ぼす可能性があります。
プラスチックごみによる海洋汚染は、海洋の生態系破壊や海洋生物の減少につながるおそれがあり、食品や水産事業での原料調達や、食の安全性に影響を及ぼす重要な問題であると認識し、事業全般でのプラスチック使用に対する対策を進めており、2019年度よりサステナビリティ委員会の下に部会を設置し活動を行っています。
(1)海洋環境部会
海洋環境へのプラスチックの流出ゼロにつながる活動を推進しており、プラスチック製の漁具の素材変更、漁具の流出防止に向けた管理ルールの策定と運用、外部団体における海洋へのプラスチック流出調査の支援などを行っております。
(2)プラスチック部会
プラスチック資源の3R(リデュース、リユース、リサイクル)+R(リニューアブル(再生材の利用))の推進、プラスチック削減実績の進捗管理などを進めています。具体的な活動内容としては、生産事業所からの廃プラスチック発生量の削減、容器包装の減容化、バイオマスプラスチックや紙素材等への変更に加え、物流資材のプラスチック使用削減の検討を行っています。
4.海外事業展開におけるリスク
当社グループ主要戦略のひとつとして、海外展開の加速を目指し、水産・食品事業における欧州での更なる拡大とアジアでの事業基盤構築、ファインケミカル事業における医薬品原料の海外展開を掲げております。事業展開する国において政治的な問題から生じる紛争、法規制の変更等のリスクが顕在化した場合、事業の基本的戦略や収支に影響を与える可能性があります。また海外市場における情勢の変化について早期の情報収集に努めるとともに迅速な対応を心掛けておりますが、想定を超える情勢の変化が生じた場合には、事業収支に影響を与える可能性があります。
考えられる主なリスクは以下のとおりです。
・各国の法令変更 ・為替リスク ・カントリーリスク(政治、紛争、テロ等の発生) ・訴訟 ・各国の保護主義台頭 ・サステナビリティ課題への対応 ・環境保護政策の変化や保護団体の活動
5.知的財産に関するリスク
当社グループは、養殖事業における養殖魚の成熟制御や育種ノウハウ、ファインケミカル事業におけるオメガ3系の必須脂肪酸EPA(エイコサペンタエン酸)の高度精製技術等、当社グループの事業に重要な知的財産を所有しております。当社グループが目指す海外進出や各事業の技術革新により、知的財産の重要性が高まる中、当社グループのノウハウとすべき知的財産が漏洩した場合は、事業収支に影響を与える可能性があります。また、当社グループが開発した技術を特許化・ノウハウ化しなかった場合、事業の競争優位性の低下を招き、当社グループの事業戦略・収支に影響を及ぼす可能性があります。さらに、当社グループが第三者の知的財産権を侵害したと訴訟等により認定された場合は製商品販売・事業活動の差止、損害賠償等の請求を受け、当社グループの事業戦略・収支に影響を及ぼす可能性があります。当社では開発した技術の特許化・ノウハウ化を推進するとともに、後述の情報管理の徹底に加え、守秘義務契約の徹底はもとより、研究・開発部門の従業員への知的財産に関する教育に取り組んでおります。
6.人権侵害に関するリスク
グローバルに事業を展開する企業には、国連や国際労働機関(ILO)等が策定している国際的な基準に沿った人権尊重の実現が求められ、当社グループもそれに従い、人権に関する法令や社会的な期待に沿った事業活動を行っています。また当社グループでは、バリューチェーンにおける潜在的な人権リスクを把握し、そのリスクに対処することで、ライツホルダー(企業が尊重すべき人権の主体)への負の影響を最小化することを重視しています。
近年、ESG 投資の普及・拡大が進み、企業活動のグローバル化が引き起こす人権侵害には特に厳しい目が注がれるようになっております。自社のみならず、バリューチェーンを含めて企業が引き起こす人権侵害は、ブランドの毀損、さらには、ダイベストメントにつながるなど、企業にとってもリスクを生じさせるものと認識し、以下の取り組みを推進しております。
(1)人権尊重推進体制の整備
国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠した「ニッスイグループ人権方針」を2020年9月に策定し、人権尊重を経営課題として位置づけました。2021年度よりサステナビリティ委員会の下に新たに人権部会を設置して体制を整備し、人権デューデリジェンスに取り組むとともに、ステークホルダーとの対話や人権尊重の重要性についての従業員への理解促進にも努め、あらゆるライツホルダーの人権に配慮した企業活動を推進しています。
(2)サステナブル調達
サステナビリティ委員会の下にサステナブル調達部会を設置し、ニッスイグループ調達基本方針に沿った取り組みを推進しています。サプライヤー向けに「法令順守」「人権の尊重」「安全と健康」「環境への配慮」の4項目で構成するサプライヤーガイドラインを策定し、説明会を実施した上でセルフチェックシートに回答いただいています。回答結果は集計しグラフ化するだけでなく、「人権配慮」と「環境配慮」への認識・取り組みに焦点を当てたコメント付きのフィードバックシートを返却し、各社へ今後取り組みを強化いただきたい点をお伝えしています。また、回答の意図と実態を確認するために、サプライヤーへの訪問やオンラインでのヒアリングも実施し、各サプライヤーの課題確認とそれに対する改善アドバイス、他サプライヤーの好事例共有なども行っています。
(3)ハラスメントの撲滅
当社グループでは、倫理憲章を制定・周知しており、その中で個人の尊重と差別・ハラスメントの禁止を定めております。また当社の人事部にハラスメントデスクを設置し全従業員を対象に集合研修やEラーニングを実施し意識向上を進めるとともに、国内各グループ会社にもハラスメント相談窓口を設置し、専任担当者の集合研修を実施するなど、グループ各社の認識を高めています。2022年4月よりパワハラ防止法が中小企業にも拡大適用されることを受けて、2022年3月には社長より国内外グループの全従業員に向けたメッセージとして、改めてハラスメント撲滅を強く呼びかけました。また、2022年度はハラスメントの行為者となる可能性が高い課長職全員を対象としてハラスメント傾向チェックを行って自身の気づきを促し、その上でハラスメント防止研修を実施しました。
7.人財の確保と育成に関するリスク
当社グループでは、海外事業展開を含めた中長期における当社グループの経営計画達成のために、事業創出・企画運営の能力のある経営を担う人財、海外国内を問わず活躍できるグローバル人財やプロフェッショナル人財、各生産拠点で成果を上げる人財の確保と育成が必要であると考えています。しかし、日本国内の少子高齢化と人口減少が進むにつれ、国内での優秀な人財確保が難しくなりつつあることから、多様な人財が働けるダイバーシティ対応に後れをとると、必要な人財確保が困難になると想定されます。
国内での人財の確保については、経営や事業関連のスキルを持つ経験者や新卒者の採用を行うとともに、「カムバック制度」により、退職した社員が再び当社での就労を希望する場合に、再入社の機会を提供することで優秀な人財の再確保を図っています。また、長年経験を重ねてきた従業員にそのスキルを生かし活躍する場を提供するため、60歳の定年退職後の継続雇用希望者を対象としたシニア職員制度を設けています。障害者雇用についても、法定雇用率を遵守しながら障害に関する社内の相互理解を深め、更なる活躍を促進します。
さらに人財確保のためには適正処遇の観点も不可欠であり、当社では評価制度に基づく毎年の定期昇給に加えて2022年・2023年と2年連続でベースアップを行うとともに、近年の業績向上を反映し賞与テーブルの改定を行いました。今後もその能力や活躍に報いる賃金制度運用および改定を行っていきます。
そして、これらの多様な人財がそれぞれの能力を十分に発揮し、また更に成長していくことができるように、先述「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)テーマ別課題 人的資本への対応」に記載の通り、人財育成方針に基づき役割や職掌・年齢等に応じ、入社から退職まで一貫した教育研修プログラムを整備し運営していくとともに、健康経営推進、働き方改革、女性活躍推進等を通じて働きやすい環境整備を図っていきます。
8.製商品の品質・安全性リスク
当社グループは、製商品の品質事故や、表示偽装などの品質不正が発生すると、お客様からの当社グループ全体への信用を損ない、ブランドが棄損され、事業に多大な影響が生じると認識しており、品質保証憲章の理念において「お客様一人一人に安全・安心で価値ある品質の商品をお届けする」ことを謳っております。
このリスクに対応するため、「品質保証憲章」の中に品質方針、行動指針を定め、従業員への品質教育や、生産工場における予防管理強化の基準・仕組みの構築、商品設計時の品質確認、使用原材料の品質確認、表示確認の仕組みを構築しています。
2023年4月に当社グループの品質保証力を強化すべく、品質保証憲章を改定し、全ての役職員がお客様起点で食品安全・品質のリスクを考え行動する風土を作る(食品安全文化の醸成)ため、従業員教育とその浸透を図ることを新たに加えています。
(1)品質保証委員会、お客様満足推進部会
社長を委員長とする「品質保証委員会」を毎月開催し、お客様から寄せられた声を共有し、必要とされる社内基準やルールの策定・徹底を図っております。また、同委員会の下にお客様サービスセンター所長を部会長とする「お客様満足推進部会」を設置し、お客様から寄せられた声をもとに、商品設計やパッケージ表示の改善などに取り組んでいます。
(2)ニッスイ品質保証基準と認定工場制度
製商品の品質の安全性を確保する基準として、関連法規より厳格な当社独自の様々な「ニッスイ品質保証基準」を設けております。同基準には、HACCP(注)の考え方を基本としたニッスイ工場認定基準を核に、使用水基準、薬剤管理基準、防虫管理基準、樹脂部品基準、原材料基準、包材基準、アレルギー物質のコンタミ防止基準、フードディフェンス基準などがあります。ニッスイブランド商品はニッスイ工場認定基準により認定した工場のみで生産しており、認定後も品質保証部による定期的な監査を実施、工場指導を行っております。また工場間の情報共有や課題解決を目的とし、工場経営者会議、工場品質管理担当者会議などを定期的に開催しております。
(注)HACCP :Hazard Analysis and Critical Control Pointの略。食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去または低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保する衛生管理の手法。国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関である食品規格(コーデックス) 委員会が発表し,各国にその採用を推奨しております。
(3)生産工場におけるFSSC22000(注)認証取得の推進
国内の直営工場・関係会社工場の16拠点で、国際的な食品安全マネジメントシステム規格であるFSSC22000(注)認証を取得しております。
(注)FSSC22000:Food Safety System Certificationの略。FSSC22000財団(Foundation FSSC22000)により開発された食品安全のためのマネジメントシステム規格。食品小売業界が中心の非営利団体、国際食品安全イニシアティブ(GFSI:Global Food Safety Initiative)により、食品安全の認証スキームの一つとして承認された規格です。
(4)原材料情報の一元管理体制
当社では、全ての原材料について、配合、由来原料、産地、遺伝子組み換え情報、アレルゲン、規格、食品添加物、農薬・動物用医薬品・飼料添加物情報等を記載した当社所定の「原材料規格保証書」を仕入れ先から入手し、「原材料管理システム」に登録・一元管理しており、新しい原材料を使用する場合は、現地確認することを基本に、原材料の製造現場の情報を収集しながら安全性を確認しております。
(5)検査体制とエクセレントラボによる検査精度の向上
原材料から製品まで、安全性を確認する検査体制を確立するため、ニッスイ認定工場に検査室を設置し、加えて食品分析部(東京イノベーションセンター)、青島日水食品研究開発有限公司(青島)、タイ品質管理課(サムットサコーン)の3拠点で検査を行える体制を構築しています。
食品分析部では、ニッスイ認定工場の検査室の検査精度の維持と検査レベル向上を目指した取り組み「エクセレントラボ」活動を展開しております。具体的には、検査マニュアルを定期的に更新して配布、エクセレントラボ専用培地を全検査室で共通使用するとともに、全検査員を対象として精度管理試験を年1回実施し、検査精度を確認しています。さらに各検査員の検査技術向上のため、OJTプログラムによる教育や、レベル別の認定講習会、エクセレントラボ推進会議の定期開催による検査員のレベルアップを図っています。
(6)青島日水食品研究開発有限公司、タイ品質管理課による海外工場の管理
青島日水食品研究開発有限公司ならびにタイ品質管理課では、中国、東南アジアのニッスイ認定工場で生産する当社製商品の品質管理を行っており、生産工場への品質指導に加え、製商品のサンプリング検査や輸出時検査を実施、各工場の品質管理責任者の集合研修を年1回開催しています。
(7)品質事故時の対応
万が一品質事故が生じた際には、製品回収、状況把握と原因究明、お客様への対応等、迅速かつ適切な対応をとるための体制を整備しております。
9.消費者意識とニーズの変化に対応した新しい技術開発への後れによるリスク
前出の気候変動や自然災害の頻度増・激甚化、人為的な海洋汚染による地球環境の保全への消費者の意識の高まりや、世界人口の増加と国内の人口減・少子高齢化など、消費者の生活ニーズとライフスタイルは刻々と変化し、即食・簡便ニーズや健康志向に対応した商品に対する需要が高まってきています。また、世界では代替タンパク製品の市場の出現などへの新しい技術も日々更新されております。これらの消費者意識・ニーズの変化への対応や、先端技術の開発に後れをとると、当社グループの成長に影響をおよぼすリスクがあると考えています。
当社グループは、常に消費者の生活ニーズを考えながら、研究開発投資を行い、地球環境の持続可能性と人々の健やかな生活を“食”のイノベーションで解決することを研究開発の基本方針としています。2011年には、事業展開の礎である研究開発力の強化を目指し、約75億円を投じて東京都八王子市に東京イノベーションセンターを建設し、中央研究所、食品機能科学研究所、商品開発部、技術開発部、食品分析部を集約しました。最先端の基礎研究からそれを応用した製商品化まで、さらには安全性の確認まで、部署間の連携を円滑に進め、消費者意識とニーズの変化に迅速に幅広くお応えできる体制を構築しています。また1994年設立の中央研究所大分海洋研究センター(大分県)も、東京イノベーションセンターと連携を取りながら、水産資源の持続可能性につながる養殖に特化した基礎研究から事業レベルの応用研究まで幅広く取り組んでいます。
水産事業においては、水産加工技術と養殖の研究投資を行っています。養殖では中長期的な視点による養殖魚の育種や陸上養殖の拡大、新規魚種の開拓、データサイエンスによる養殖技術の先端化など水産事業の成長・拡大や新規事業の創出につながる研究に取り組んでいます。
食品事業においては、食品加工技術、農産品や鶏肉の研究開発、植物タンパク質の利用研究、味・香りに関する基礎研究等を行っています。また、スケソウダラは食べるだけで、特別な運動をしなくても除脂肪量(筋肉量の目安となる)が優位に増加することが研究成果として発表されており、「速筋タンパク」シリーズとしてスケソウダラすり身100%を使用した商品を展開しています。食品事業全般において、従来の開発体制に加え、「人間起点」を主眼に考えて発想する「デザイン思考」による新しい開発手法を取り入れる「未来型創造開発会議」を設置し、5~10年先の生活ニーズに応える取り組みを進めております。
10.情報セキュリティリスク
当社グループでは、通信販売事業などにおいてお客様の個人情報を保有しており、このような個人情報や経営、事業、研究などに関する重要な情報の漏洩・紛失を防止するため、リスクマネジメント委員会の傘下に「情報セキュリティ部会」を設置し、「情報セキュリティ基本方針」などの規程やルールの整備、システムの管理体制の強化、定期的な従業員に対する教育や訓練を実施し、情報セキュリティ管理を徹底しております。
また、グループ経営を進める中、当社グループ内でデータ漏洩、システム破壊が起きると、グループ全体の事業に大きく影響することが考えられます。そこで、当社国内グループ会社の情報セキュリティ基本方針や利用者ルールの徹底、技術的対策、教育や訓練を含めた人的対策の領域において、各到達点を具体的に策定し、ニッスイグループIT部門会議を定期的に開催するなどの取り組みにより均質化を進めてまいりました。今後はグループ会社の情報セキュリティ対策が有効に機能しているか定期的に確認し、情報セキュリティ確保への継続的な改善・向上に努めてまいります。
今後、各拠点の省人化や、生産、物流、販売でのシステム連携による効率化が進むにつれ、自然災害などによる物理的なシステム破壊や、長期停電、外部からの攻撃などの要因を問わず、そのシステムの停止による事業活動への影響が増加すると考えられ、システム停止を想定した対策や有事対応の体制づくりを進めております。
11.感染症の拡大によるリスク
感染症については、新型コロナウイルス(COVID-19)は病原性が一定程度低いとされるオミクロン株が主流となり、感染法上の位置付けの変更等、経済活動を再開させる動きが進んでいます。しかしながら、未知のウイルスや、感染力の高い新型コロナウイルスの変異株の出現等により、感染急拡大や重症者が多数発生するような新たなパンデミックが発生する可能性があります。
新たなパンデミックが発生した場合、当社への影響は予想が困難ではありますが、漁撈・養殖や食品の生産拠点においては生産の停止や縮小、調達先や物流の過程では原料の調達が難しくなるなど、安定的な製商品の供給に支障が生じる可能性があります。また、需要減による水産市況の悪化や、安定生産を継続するための人員確保に伴うコスト増等が発生した場合、収支に影響を及ぼす可能性があり、渡航規制により事業の海外展開の遅れや、海外グループ会社とのコミュニケーション不足によるガバナンスの低下を招くおそれがあります。
新型コロナウイルスの拡大に対し当社グループでは、当社製商品を継続的・安定的に世界の人々に供給する使命を全うするため、代表取締役社長執行役員(社長)を本部長とする対策本部を立ち上げ、感染対策の徹底、在宅でのテレワークの推進、罹患者が多数発生した拠点機能の速やかな回復等、各種の対策を講じてきました。新たなパンデミックが発生した場合にも、事業の継続への影響が最小限となるよう、迅速かつ柔軟に同様の対策を講じてまいります。
12.資金調達に関するリスク
当社グループでは事業活動を円滑に行うため、コストを抑えた安定資金の調達を目指し、直接金融を含めた多様な手段の中から最適な資金調達方法を選択しておりますが、金融市場の急激な変動や各種リスク要因による事業計画未達により、資金調達が制限され運転資金が不足する可能性があります。これに対し当社および国内外のグループ会社においては、円・米ドル・ユーロを基本に各国の事業規模に応じ、金融機関から資金調達を行っておりますが、その調達方法と調達先、期間は適度に分散させており、国内では複数の金融機関から円建てのコミットメントラインを設定しております。また国内・北米ではそれぞれのエリアでキャッシュマネジメントシステム(CMS)を導入し、さらに他エリアでのグループ会社内余剰資金をグループ会社間で融通しております。
さらに急激な金利変動により資金調達コストが増減し、特に金利高上昇局面では支払利息が増加する可能性がありますが、これに対しては、金利スワップを利用した長期固定資金と変動の短期資金のバランスを1:1とすることを基本として、経済情勢等に応じ長期固定資金の比率を上げるなど、機動的に対応することで金利変動リスクを低減しております。
各リスク間の関係図

(1)経営成績
当連結会計年度におけるわが国経済は、オミクロン変異株の感染拡大(第7波・第8波)が繰り返されたものの、行動制限の解除や全国旅行支援などにより人流が回復し、外食などサービス業を中心に改善傾向がみられました。一方で、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に起因する資源価格の高騰など、インフレ圧力の高まりや急激な為替変動が企業活動の重しとなりました。
世界経済(連結対象期間1-12月)につきましては、1月に欧米でオミクロン変異株の感染が急拡大したものの、行動制限の解除に伴って人流が回復し個人消費は堅調に推移しましたが、国内同様、2月末からのロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けた資源の供給不安、エネルギーや人件費などの上昇による急激なインフレや利上げによる影響がありました。
当社および当社グループにつきましては、水産事業は前期に引き続き国内外の販売が堅調に推移するとともに、国内養殖事業の改善が継続、北米加工事業のコスト削減も進んだことから大幅増益となりました。一方、食品事業では国内外とも販売は概ね堅調ながら、原材料や円安を始めとしたコストアップの影響を大きく受けました。ファイン事業については、連結上場子会社の日水製薬株式会社の全株式を売却したことに加え、医薬原料の米国向け輸出の中断などがあり苦戦する結果となりました。
このような状況下で当連結会計年度の営業成績は、売上高は7,681億81百万円(前期比744億99百万円増)、営業利益は244億88百万円(前期比25億88百万円減)、経常利益は277億76百万円(前期比45億95百万円減)、親会社株主に帰属する当期純利益は日水製薬株式会社の株式売却益24億2百万円、政策保有株式の株式売却益19億38百万円などを特別利益として計上した一方、Empresa de Desarrollo Pesquero de Chile S.A.(EMDEPES)の固定資産について減損損失18億10百万円を特別損失として計上しましたので212億33百万円(前期比39億58百万円増)となりました。
配当金につきましては、期末配当金を1株当たり10円と致しました。これにより実施済みの中間配当金1株当たり8円とあわせ、年間配当金は1株当たり18円(前期14円)となりました。
(単位:百万円)
セグメント別の経営成績は次のとおりであります。
(単位:百万円)
① 水産事業
水産事業につきましては、漁撈事業、養殖事業、加工・商事事業を営んでおります。
<当連結会計年度の概況>
水産事業では売上高は3,283億35百万円(前期比405億66百万円増)となり、営業利益は185億79百万円(前期比58億57百万円増)となりました。
漁撈事業:前期比で増収、増益
<日本>
・燃油価格上昇があったものの、かつお、いわしなどの漁獲や販売価格が堅調に推移し増収・増益となりました。
<南米>
・ほき、南だらの漁獲が低調に推移したことや燃油価格上昇などもあり減益となりました。
養殖事業:前期比で増収、増益
<日本>
・昨年の稚魚(もじゃこ)不漁により市場全体の養殖ぶりの供給が少ない中、完全養殖ぶりの強みを活かし安定供給を行いました。また、銀鮭の養殖場拡大による販売数量増に加え、グループの漁撈会社と連携した畜養大型まぐろの強化、養殖会社間で飼料の共同購入や重複するオペレーションの見直しなどを進め収益改善に努めたこともあり増収・増益となりました。
<南米>
・銀鮭の生残率改善に加え販売価格上昇もあり、生簀繰りによる生産数量の減少や飼料などのコスト上昇をカバーし増収・増益となりました。
加工・商事事業:前期比で増収、増益
<日本>
・主力の鮭鱒のみならず、各魚種も総じて販売価格が堅調に推移したことから、外食・産業給食向けの一部食材化商品において値上げが遅れたものの、増収・増益となりました。
<北米>
・すけそうだらの漁獲枠減少の影響がありましたが販売価格の上昇で増収、前期の固定資産減損による償却費負担やコロナ対策費用の減少もあり、人件費の上昇などのコスト上昇を吸収し増益となりました。
<欧州>
・年後半には経済環境の悪化を受け水産物市況に影響が出始めましたが、年間を通して外食やクルーズ船向けの販売は概ね堅調に推移し増収・増益となりました。

② 食品事業
食品事業につきましては、加工事業およびチルド事業を営んでおります。
<当連結会計年度の概況>
食品事業では売上高は3,820億48百万円(前期比534億46百万円増)となり、営業利益は114億26百万円(前期比39億73百万円減)となりました。
加工事業:前期比で増収、減益
<日本>
・健康意識の高まりに対応し、良質なたんぱく質が含まれる「速筋タンパク」商品の拡売に努めたことに加え、人流回復の効果で業務用食品の外食・量販店惣菜向け商品の販売が堅調に推移しました。一方、家庭用食品・業務用食品ともに値上げ効果もあり増収となりましたが、原材料やエネルギーコストに加え急激な円安などコスト上昇に値上げが追いつかず大幅な減益となりました。
<北米>
・家庭用食品は値上げ後も販売数量を維持し堅調に推移しました。業務用食品は昨年にあったクイックサービスレストラン向けの商品導入がかなわず苦戦したうえ、値上げを実施したものの原材料や人件費などのコスト上昇が先行し減益となりました。
<欧州>
・英国の改善に加え、スペインなどへエリア拡大を進めたことにより販売が堅調に推移しましたが、電気・ガス代などエネルギーコストの急激な上昇に値上げが追いつかず減益となりました。
チルド事業:前期比で増収、減益
・行動制限が無くなり人流に回復傾向がみられたことから、コンビニエンスストア向けおにぎりの販売が増加するなどベンダー事業は好調に推移したものの、今年度からスタートしたキューディッシュ事業(注1)が償却費負担に加え、立ち上げ時のトラブルもあり減益となりました。

③ ファイン事業
ファイン事業につきましては、医薬原料、機能性原料(注2)および機能性食品(注3)などの生産・販売を行っております。
<当連結会計年度の概況>
ファイン事業では売上高は251億16百万円(前期比89億58百万円減)となり、営業利益は17億25百万円(前期比23億26百万円減)となりました。
・9月に連結子会社の日水製薬株式会社の全株式を売却したことに加え、医薬原料の米国向け輸出の中断、巣ごもり需要の減速(反動減)により健康食品向けEPA・DHA原料の販売や通信販売の減少などがあり減収・減益となりました。

④ 物流事業
物流事業については、冷蔵倉庫事業、配送事業、通関事業を営んでおります。
<当連結会計年度の概況>
物流事業では売上高は154億88百万円(前期比2億89百万円減)となり、営業利益は15億94百万円(前期比4億46百万円減)となりました。
・輸出入の増加により通関事業は堅調に推移したものの、国内貨物の荷動きが低調に推移し入出庫料収入が減少しました。電力料・人件費のコストアップに対して保管料の値上げを進めていますが、値上げ浸透に時間を要し減益となりました。
(注1) 冷凍とチルドのノウハウを活かしたフローズンチルド惣菜、煮魚やエビチリなど和洋中さまざまなメニューを食べ切りの個食パックで提供。電子レンジで温めるだけの手軽な調理で内食需要に対応、通常のチルド品に比べて添加物を削減しおいしさを向上、賞味期限も長く設定できフードロスも削減。
(注2) サプリメントの原料や乳児用粉ミルク等に添加する素材として使用されるEPA・DHAなど。
(注3) 主に通信販売している機能性表示食品「ごま豆乳仕立てのみんなのみかたDHA」、特定保健用食品「イマークS」などの健康食品。
生産、受注及び販売の実績は、次の通りであります。
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと次の通りであります。
(注) 1.金額は、販売価格によります。
② 受注実績
受注生産は行っておりません。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次の通りであります。
(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
外部顧客への売上高のうち、連結損益計算書の売上高の10%以上を占める相手先がいないため、記載を省略しております。
(単位:百万円)
資産合計は前連結会計年度末に比べて432億82百万円増の5,490億13百万円(8.6%増)となりました。
流動資産は392億58百万円増の3,043億49百万円(14.8%増)となりました。売上増加などにより受取手形及び売掛金が53億65百万円増加したこと、棚卸資産が318億円増加したことが主な要因です。
固定資産は40億23百万円増の2,446億64百万円(1.7%増)となりました。
負債合計は前連結会計年度末に比べて312億44百万円増の3,283億77百万円(10.5%増)となりました。
流動負債は209億42百万円増の1,987億71百万円(11.8%増)となりました。運転資金需要増などにより短期借入金が174億24百万円増加したことが主な要因です。
固定負債は103億2百万円増の1,296億6百万円(8.6%増)となりました。長期借入金が99億74百万円増加したことが主な要因です。
純資産合計は前連結会計年度末に比べて120億37百万円増の2,206億35百万円(5.8%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益を212億33百万円計上したこと、剰余金の配当を49億85百万円行ったこと、円安の影響により為替換算調整勘定が128億49百万円増加したこと、連結子会社の売却などにより非支配株主持分が150億6百万円減少したことなどによります。
① キャッシュ・フローの状況
(単位:百万円)
営業活動によるキャッシュ・フローは、33億96百万円の収入(前期比257億21百万円の収入減)となりました。税金等調整前当期純利益および減価償却費の合計で497億16百万円の資金を創出した一方で、売上債権をはじめ運転資本の増加による資金の減少が355億10百万円、法人税等の支払額が124億98百万円あったことによるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、225億71百万円の支出(前期比53億10百万円の支出増)となりました。主として、国内における生産設備への投資等に伴う有形固定資産の取得による支出が209億10百万円あったことによるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、174億13百万円の収入(前期は112億65百万円の支出)となりました。長期借入金の返済による支出が200億61百万円、配当金の支払額が49億76百万円あった一方で、短期借入金の増加が163億59百万円、長期借入による収入271億96百万円があったことが主な要因です。
② 資金調達方針
当社は、事業活動を円滑に行うため、コストを抑えた安定資金の調達を目指し、直接金融を含めた多様な手段の中から最適な資金調達方法を選択しています。
間接金融については、スワップ等を利用した長期固定資金と変動の短期資金のバランスを概ね1:1を基本に、経済情勢等に応じ長期固定資金の比率を上げるなど、機動的に対応することで金利変動リスクを低減し安定資金を確保しています。調達通貨は円・米ドル・ユーロを基本に各国の事業規模に応じた調達とすることで為替リスクを軽減しています。また、複数の金融機関とコミットメントラインを設定しており、経済環境の急激な変化による資金調達難等の流動性リスクに備えております。
資金の効率性の側面では、国内はキャッシュ・マネジメント・システム(CMS)を活用、海外は各国の税制等を考慮のうえ、海外グループ間の資金融通等を本社で一元管理しています。なお、北米は日本同様、統括会社でCMSを導入し北米における資金を管理しています。
③ 調達方法
四半期ごとにグループの資金需要を予想し市場環境を考慮したうえで、最適な資金調達方法を策定、取締役会で審議しています。
長期資金については、毎期の償還額にも配慮しつつ、長期間に亘り構築してきた幅広くかつ良好な関係にある複数の金融機関から借入を行っています。また、相対借入に加え、市場性の高いシンジケート・ローンや健康経営・環境対応などESG関連の格付けを活用した調達も行っています。短期資金については、借入枠を締結し資金需要に応じて機動的に調達しています。
今後もコストを抑えた安定資金を調達するため調達方法の多様化を図ってまいります。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。連結財務諸表を作成するにあたって、棚卸資産の評価、固定資産等の減損、繰延税金資産の回収可能性などの資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いております。過去の実績等を踏まえ合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。なお、特にIFRSを適用している在外子会社で保有する生物資産の評価(在池魚評価)については、生物資産を販売費用等の追加コスト控除後の公正価値で測定し、取得原価との差額の変動額を純損益として認識しており、その測定には生物資産の正味売却価額や生残率等を見積もる必要があることから、市場動向や養殖成績などによって公正価値評価額が大きく変動する可能性があります。海外及び国内養殖会社の仕掛魚の評価、国内養殖会社の固定資産の減損に関する見積りや前提条件については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
子会社の経営統合に係る経営統合契約書等の締結
当社は、2023年3月31日に三菱商事株式会社(以下「三菱商事」という。)及び株式会社ローソンとの間で、当社の連結子会社である日本クッカリー株式会社及び三菱商事の子会社である株式会社グルメデリカを、共同株式移転により経営統合し、両社の完全親会社となるNC・GDホールディングス株式会社を設立すること等を定めた経営統合契約書を締結いたしました。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」の(追加情報)をご参照ください。
当社グループは、水産品、食品、医薬品および養殖技術において「食」と「健康」に関する研究開発を行っています。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は
当社は、東京イノベーションセンターを中心に水産・食品・ファイン事業に関連する技術開発、商品開発活動を展開しております。水産に関しては自然な外観と食感を維持する「シーフードプロ技術」の適応拡大、食品に関しては味・香りの基礎研究から独自の加工技術のような応用研究まで行っています。また、タンパク質摂取の在り方の多様化に対応するために、植物タンパク質の利用研究も行っています。機能性素材に関しては、高純度EPAの研究を深化させるとともに新しい医薬・機能性脂質の研究、スケソウダラのタンパク質「速筋タンパク」の研究開発を行っています。養殖に関しては、大分海洋研究センターを中心に、ブリをはじめとした養殖魚の育種、陸上養殖、データサイエンスなどの研究を行っています。