第2【事業の状況】

 

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

  当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

  なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社グループは、「私たちは誠実を旨とし、本物・安心・健康な『食』の提供を通じて、人々の豊かなくらしとしあわせに貢献します」をグループ理念と定め、グループ理念の実践により、社会への責任を果たしてまいります。

また、当社グループは、グループ理念を通じて以下のグループビジョンの実現を目指します。

・地球環境に配慮し、世界の『食』に貢献する21世紀のエクセレントカンパニーを目指します。

・お客様の立場に立ち、お客様にご満足いただける価値創造企業を目指します。

・持続可能な『食』の資源調達力と技術開発力を高め、グローバルに成長を続ける企業を目指します。

 

(2)経営戦略等

安全で高品質な商品を、お客様のもとにお届けすることが当社グループの使命であり、食品安全を含めた品質保証体制、危機管理体制及びグループガバナンス体制の構築に、継続して取り組んでまいります。

また、2022年度から2024年度までの3ヵ年を対象とする、グループ中期経営計画「海といのちの未来をつくる MNV 2024」を策定いたしました。計画の策定にあたりましては、企業価値向上と持続的成長の実現に向け、長期経営ビジョンを次の3つに再定義しております。

 

① 事業活動を通じた経済価値、社会価値、環境価値の創造により、持続可能な地球・社会づくりに貢献する

② 総合食品企業として、グローバルに「マルハニチロブランド」の提供価値を高め、お客様の健康価値創造に貢献する

③ 水産資源調達力と食品加工技術力にもとづく持続可能なバリューチェーンを強化し、企業価値の最大化を実現する

 

  以上の長期経営ビジョンの実現に向けて、非連続な成長のロードマップをバックキャストで描き、中期経営計画では、「経営戦略とサステナビリティの統合」「価値創造経営の実践」「持続的成長のための経営基盤強化」の3つのコンセプトに取り組んでまいります。

 

① 経営戦略とサステナビリティの統合

 ・ 経営戦略とサステナビリティを一体として実現する、当社グループの価値創造のあり方として、Maruha Nichiro Value(MNV)を定義

 

② 価値創造経営の実践

 ・ 価値創造経営を推進するガバナンス体制の構築

 ・ マテリアリティの特定、財務・非財務KGIの設定

 ・ 事業ポートフォリオに基づく資源配分

 ・ 成長ドライバー領域への戦略投資

 ・ 水産・食品の枠組みを超えたバリューチェーンの価値最大化

 

③ 持続的成長のための経営基盤強化

 ・ 多様化する消費者のニーズに対応した健康価値の創造と提供

 ・ イノベーションエコシステムの構築

 ・ 人財への積極的な投資

 ・ コーポレートブランドの発信強化

 ・ 知財リスク対応と無形資産の活用・強化推進

 ・ DX推進基盤の構築とデジタル技術の活用

 

  「海といのちの未来をつくる」というブランドステートメントのもと、人々の豊かなくらしとしあわせに貢献するというグループ理念の実現に向けて、変化の激しい経営環境の中にあっても、「経済価値」「社会価値」「環境価値」の創造に引き続き取り組み、企業価値の更なる向上、持続的な成長を目指してまいります。

 

(3)経営環境

2023年5月より、新型コロナウイルスの感染症法上の区分が2類相当から季節性インフルエンザ等と同等の5類に移行となり、ウィズコロナの生活様式定着がより一層加速し、社会経済活動の正常化も一段と進むことで、個人消費の回復が継続すると想定しております。また、水際対策の緩和も行われることで、インバウンド需要が本格的に拡大し、外食・旅行等のサービス消費への追い風となることが見込まれております。

その一方で、ウクライナ情勢長期化等の影響を受けた原材料・エネルギーコストの高騰による消費マインド低下や、世界主要各国の金融引き締めに伴う急激な金利上昇・金融不安を発端とした、世界経済の減速リスクも想定されており、予断を許さない状況が継続すると考えております。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループは2022年度から2024年度までの3ヵ年を対象とするグループ中期経営計画「海といのちの未来をつくる MNV 2024」の2年目を迎えます。

 

当社グループは、「魚」をコアにした水産食品企業グループであり、製品・サービスの特性、市場及び顧客の種類などの要素で多面的にとらえて編成した複数の事業ユニットを、主に事業類似性の観点から、分割・集約したうえで、「水産資源」、「加工食品」、「食材流通」及び「物流」の4つを報告セグメントとしております。

 

  各事業の次期における対処すべき課題は次のとおりであります。

 

水産資源事業

漁業ユニットは、燃油代を中心に原価上昇が予想されますが、事業環境の変化に対応し、安定した漁業オペレーションを実施するとともに、自社加工度を高めるなど販売ルートを多様化することにより、収益の向上に努めてまいります。

養殖ユニットは、燃料代、飼料代等の高騰による原価上昇が予想されますが、国内におけるマグロ・ブリ・カンパチの養殖を主軸として、技術改善とコスト削減、輸出拡大に取り組み、収益確保に努めてまいります。

水産商事ユニットは、資源国の漁獲・生産状況と主要な需要国の変化の激しい消費動向を把握し効率的な調達と販売を行うことにより、収益の拡大に努めてまいります。

海外ユニットは、海外事業拠点における収益基盤の強化、販売促進を進めてまいります。北米では人件費、燃油等のコスト上昇に対し、工場の生産効率化や生販一体となった事業運営により収益の向上に努めます。欧州ではM&Aにより強化された販売網を連携させて売上拡大を目指します。タイのペットフードについては、商品開発により競争優位性を高めて販路拡大に取り組んでまいります。

 

加工食品事業

加工食品ユニットは、マーケティングや研究開発部門との連携を強化し、商品開発力を向上させるとともに、積極的な販促活動を展開し、売上の拡大とブランド認知の向上を図ります。

広島工場焼失後における家庭用冷凍食品事業では、事業構造の見直しと転換、拡大を進めてまいります。また、外部環境に応じた価格改定や商品の差別化に努め、収益性を更に高めてまいります。

ファインケミカルユニットでは、機能性取得による既存商品の拡販を行い、更に医薬原薬(EPA、ヘパリン)の拡大、「予防食・未病食」分野への取り組みなどにより、事業規模拡大に努めてまいります。

 

食材流通事業

食材流通ユニットは、量販店・外食・コンビニエンスストア・宅配生協・介護食など顧客起点による販売活動を更に強化し、食品・水産・畜産の枠組みを超えた提案を推進してまいります。また、アイテム集約等による業務効率の向上及び工場生産性改善を実行し、収益率の向上を目指してまいります。

畜産ユニットは、飼料、エネルギーコストの上昇から世界的な畜肉相場の高値継続など厳しい事業環境が見込まれますが、国内外に渡る多様な調達網を活用して市場のニーズに対応し、グループ内連携を強化することで収益力の向上を図ってまいります。

 

物流事業

物流ユニットは、大都市圏を中心とした物流拠点を最大限に活用し、保管需要の取り込みを図るとともに、全国レベルで輸配送・通関等を含めた総合物流サービスをお客様に提供することにより、収益拡大を目指します。また、電気料金の上昇に伴う動力費の増加や荷役ほか人件費等の増加によるコスト上昇分を適切に価格へ転嫁することにより、持続可能な物流体制を構築します。

 

(5)目標とする経営指標

中期経営計画「海といのちの未来をつくる MNV 2024」における財務KGIは次のとおりであります。

 

24年度計画

(A)

27年度目標

(B)

22年度実績

(C)

差異

(A)-(C)

差異

(B)-(C)

MNEV(億円) ※

95~

110~

140

△45

△30

売上高(億円)

9,600~

10,000~

10,205

△605

△205

営業利益(億円)

270~

310~

296

△26

14

EBITDA(億円)

465~

500~

474

△9

26

ROIC

4.3%~

5%~

4.8%

△0.5pt

0.2pt

ROE

9%~

9%~

11.0%

△2.0pt

△2.0pt

ネットD/Eレシオ

~1.2倍

~1.0倍

1.5倍

△0.3pt

△0.5pt

※MNEV(Maruha Nichiro Economic Value):事業活動の成果に伴う経済付加価値額として、投下資本利益率(ROIC)と加重平均資本コスト(WACC)の差(MNEVスプレッド)に、投下資本を乗じ算出しております。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

  文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。

 

  近年、社会や地球環境などのサステナビリティ課題への関心が世界的にますます高まり、事業を取り巻く外部環境も日々変化しております。当社グループは、変化への対応、社内への重点課題の浸透、社内外のステークホルダーの意見を経営に反映していくことを重視し、2022年度より開始した中期経営計画「海といのちの未来をつくる MNV 2024」に伴い、前中期経営計画で取り組んでいたマテリアリティを見直しました。マテリアリティの見直しに際しては、社外有識者、社内従業員へのアンケートを通して社内外ステークホルダーの意見を取り込み、経営陣による議論、検討を重ね、下表に示す9つのマテリアリティを特定しました。

  マテリアリティそれぞれで抽出した機会とリスク、主要な取り組みは次のとおりであり、「環境価値の創造に関するマテリアリティ項目」と「社会価値の創造に関するマテリアリティ項目」に分類して記載しております。

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環境価値の創造に関する

マテリアリティ項目

関連する機会とリスク(○機会 ●リスク)

主要な取り組み

気候変動問題への対応

○天然水産物の漁獲量減少を補う養殖水産物の販売機会の拡大

●CO₂排出量削減対策による生産コストの増加

●気候変動への対応遅延による企業価値毀損

●気候変動による原材料の調達不全リスクの増大

・CO₂排出量削減ロードマップの策定

・CO₂排出量削減施策の実施(太陽光パネル設置、再生可能エネルギーへの切替え)

・省エネルギー設備の増強

・エネルギー効率の改善

・ノンフロン冷凍機への転換

・電気使用量の削減

・重油・ガス使用量の削減

循環型社会実現への貢献

○容器包装プラスチック使用量削減によるコスト削減

○フードロス削減によるコスト削減

○廃棄物削減の取り組みによるコスト削減

●容器包装プラスチックの環境配慮型素材切替えによるコスト増加

●廃棄物削減、リサイクルへの取り組み遅延による企業価値毀損

・容器包装のプラスチック使用量削減と環境配慮型素材への切替え促進

・フードロス削減活動の推進

・製造トラブルの削減

・原材料・資材・商品の廃棄削減

・廃棄物の有価物化

海洋プラスチック問題への対応

○漁具管理強化、紛失減によるコスト減少

○海洋プラスチック問題へ積極的に取り組む企業としてイメージ向上

●海洋に流出しづらい漁具への切替えによるコスト増加

・漁具管理ルールの策定と運用

・海洋に流出しづらい漁具への切替え

・海岸クリーンアップ活動への従業員参加

生物多様性と生態系の保全

○持続可能な水産資源の提供による企業価値向上

○自社養殖場の認証レベル管理による環境保全

●サプライチェーンにおける社会・環境問題への対応によるコスト増加

●認証取得・維持にかかるコストの上昇

・生物多様性リスク評価の実施

・定期的な水産資源調査の実施と不明魚種、資源に心配のある魚種への対応

・持続可能な漁業・養殖認証(MSC・ASC等)取得水産物の取り扱いの推進

・持続可能な養殖認証の取得の推進

・輸入水産物のトレーサビリティ確認の強

・国内外ダイアローグへの参加

・自社養殖場における認証レベル管理

 

 

社会価値の創造に関する

マテリアリティ項目

関連する機会とリスク(○機会 ●リスク)

主要な取り組み

安全・安心な食の提供

○品質事故、品質クレーム減少によるコスト削減

○お客様の満足度向上によるブランドへの信用獲得

○ステークホルダーへの適切な情報公開による信頼獲得

●製品の品質クレーム・トラブルによるお客様の信頼低下による収益力の低下

・グループ品質保証規程に基づく品質保証活動の徹底

・品質に関する人財育成

・サプライヤ-との協働による食品安全・食品防御レベルの向上

・パッケージ、WEBサイト、業者間での適切な製品品質情報の開示

健康価値創造と持続可能性に貢献する食の提供

○お客様の満足度向上によるブランド価値向上

○ステークホルダーへの適切な情報公開による信頼獲得

○お客様の健康価値創造と持続可能性に配慮した食を提供する企業ブランドの向上

●製品基準を満たす製品開発コストの増加

・健康価値創造と持続可能性に貢献する食の製品基準の策定

・「消費者志向経営」(未来次世代のために取り組む企業)に関する社内啓発研修の実施

・健康価値創造と持続可能性に貢献する企業という社外評価方法の構築

多様な人財が安心して活躍できる職場環境の構築

○性別・年齢・国籍等にとらわれない人財登用による社内モチベーションの向上

○イノベーションが起きやすい環境づくり

○人財獲得競争での優位性獲得

●人財開発及び職場環境改善コストの発生

・新卒採用比率男性50%・女性50%の継続

・取締役会・管理職の女性登用の推進

・仕事と介護・育児・治療の両立支援

・従業員の健康維持及び増進

・従業員エンゲージメントの評価方法の確立と向上

・グローバル人財育成の推進、等級別研修の拡充

・選抜研修の推進等を含めた人財育成プログラムの確立

事業活動における人権の尊重

○ステークホルダーへの適切な情報公開による信頼獲得

○グループ内、サプライチェーン上での人権リスク軽減

●人権問題への対応遅延による企業価値毀損

・社内人権啓発研修の開催

・国内グループ製造拠点での外国人技能実習生調査と改善対応

・サプライチェーン上での人権調査と改善対応

持続可能なサプライチェーンの構築

○サプライチェーン上での社会・環境課題へのリスク低減

●サプライチェーン上における社会・環境問題対応によるコスト増加

●サプライチェーンにおける社会・環境問題への対応遅延による原材料調達不全リスクの増大

・「調達基本方針」「サプライヤーガイドライン」「腐敗防止宣言」のサプライヤーへの周知徹底

・システムを利用したサプライヤーの登録、モニタリングの実施、リスクの有無確認とフィードバック

 

 

(1)ガバナンス

  当社グループにおける「サステナビリティ推進委員会」は、代表取締役社長が委員長を務め、マルハニチロ㈱取締役を兼務する役付執行役員、関連部署担当役員、関連部署長を委員、社外取締役、監査役をオブザーバーとし、構成されております。

  「サステナビリティ推進委員会」では、グループサステナビリティ戦略全般の企画立案や目標設定及びグループ各社の活動評価をしており、中期経営計画のマテリアリティ見直しのプロセスにおいても積極的に討議を行いました。また、見直し後の各マテリアリティの推進体制では、マテリアリティ“循環型社会実現への貢献”のプラスチック使用量削減とフードロス削減及び“健康価値創造と持続可能性に貢献する食の提供”において、プロジェクトを立ち上げ、プロジェクトオーナーを管掌役員、プロジェクトリーダーを関連部署長として、部署横断的な取り組みを推進しております。

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 <マルハニチログループサステナビリティ推進体制図>

 

(2)リスク管理

  当社グループでは、法務・リスク管理部を中心に、マルハニチロ㈱各部署やグループ各社のリスク管理責任者、リスク管理担当者が連携してリスク管理業務に取り組む体制を整えております。法務・リスク管理部は、マルハニチロ㈱の各部署及びグループ各社より抽出されたリスクの評価・分析にもとづきリスクマトリクスを作成し、当社グループとしてのリスクの仕分けとリスクの大きさの優先順位を決定することで、事業活動に潜むさまざまなリスクを日常的に管理し、業務改善に繋げております。また、法務・リスク管理部は、リスクの拡大やクライシスを未然に防ぐ業務のほか、企業の存続が危ぶまれるような重大な事件・事故、大規模自然災害などの有事においては、非常事態に対応するクライシスマネジメントの中心的な役割を担っております。

 

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(3)重要な戦略・指標及び目標(気候変動)

  <戦略>

    気候変動リスクに対する戦略は、TCFDフレームワークに基づき策定しましたが、当社グループの事業は多岐にわたるため、まずバリューチェーン上の重要性から川上に位置する養殖ユニットを気候変動リスクに対する戦略の対象事業に選定しました。TCFDフレームワークを参照し気候変動のシナリオ分析を実施し、気候変動リスクと機会の特定、財務インパクトの評価を行い、その対応策を検討しました。明確化された重要なリスクと機会に対して対応策を講じることで、リスクの低減と機会の確実な獲得につなげ、気候変動に対してレジリエントな状態を目指してまいります。

 

A)リスク重要度評価

    対象となる養殖事業におけるリスク・機会項目を一覧化、その上で特に対象事業へのインパクトの大きいとみられる項目を特定しました。その結果、「移行リスク」では気候変動による生育環境の変化(売上の減少)についてのリスク、「物理的リスク」では海洋環境の変化によるコスト増(操業コストの増加)についてのリスク、激甚災害による操業へのダメージ(操業コストの増加)のリスクと合計で3つのリスクが特定され、これらのリスクについてシナリオ分析を実行しました。

 

B)シナリオ群/対応策の定義

    国際エネルギー機構(IEA:International Energy Agency)、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)、その他国際機関が発行する資料などを参照し、4℃及び2℃の2つのシナリオを設定しました。シナリオ分析の時間的範囲は、2050年までの中長期を設定しました。

    4℃シナリオにおいては、物理的リスクの顕在化による操業コストの増加、魚類の生育環境の悪化による生産量の低下が発生し、物理的リスクへの対応が求められました。今後は養殖技術における改良技術の開発/各拠点の防災対策にも注力してまいります。

    2℃シナリオにおいては、脱炭素の拡大により規制に伴う養殖事業の低炭素化と高付加価値商品・代替品の開発がリスク及び機会として特定、更に自家消費発電源の確保・再生可能エネルギーへの投資が求められることが想定されました。今後は脱炭素に向けた省エネルギーやオンサイト太陽光、オフサイト太陽光をはじめとした再生可能エネルギーの導入を進めてまいります。また、当社グループでは、他社と共同研究中の「細胞培養魚肉」について、世界最速商業化を目指しているほか、人工種苗の増産(クロマグロ完全養殖・孵化ブリ・孵化カンパチ)についても、配合飼料のコスト・品質安定、育成に最適な栄養素の設計・添加の技術開発により一層尽力してまいります。

 

  <指標及び目標>

    指標と目標については、CO排出量を指標とし、2030年度までにCO排出量の2017年度比30%以上削減、2050年度までのカーボンニュートラル達成を達成目標としております。目標達成に向けて、2030年度までの期間を、更に3つの段階に分け、より細かい目標を設定しております。フェーズ1(2022~2024年度)ではCO削減率10%、フェーズ2(2025~2027年度)にはCO削減率20%、フェーズ3(2028~2030年度)はCO削減率30%以上を目標にしており、最終的には2050年度末までにカーボンニュートラルを目指してまいります。

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(4)人的資本に係る戦略・指標及び目標

  以下人的資本に関する記載は、マルハニチロ㈱に限定した内容であります。グループ全体としての人的資本戦略は今後推進していく予定であります。

 

  <戦略>

①人財育成戦略

    企業価値の最大化に向けた経営戦略の一環として、グループ全体での海外市場への展開拡大や資源アクセスの強化を重点テーマとして取り組んでおります。そのテーマの実現に向けて「グローバル人財育成プログラム」を、2018年度からリニューアルして運営・推進しております。

    参加者の選抜は自己申告による応募で、応募できるのは入社2年目以上、35歳以下の総合職社員とし、TOEIC、TSST(英語のスピーキングテスト)の結果を基に選抜しております。研修プログラムの内容は「異文化対応」「リーダーシップ」「マネジメント」「レジリエンス」などの必須研修と、「グローバルワークセミナー」や「海外トレーニー制度」などの当社独自の選択研修で構成されております。「グローバルワークセミナー」は、海外勤務を経験した社員による講義形式、「海外トレーニー制度」は、1年間海外の関連会社への出向などを経験させる制度であります。

      <これまでの受講人数>

2018年度

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

33名

43名

44名

48名

58名

 

    このプログラムの修了認定を得るためには、育成期間の3年半以内に「必須研修の受講」「TOEICやTSSTの社内基準クリア」など4つの基準及び経営者に対する最終プレゼンをクリアする必要があり、これまでの修了認定者は9名であります。今後については2023年度、2024年度それぞれ4名程度の修了を見込んでおります。

    このように当社では、グローバル人財プール作りを土台としながら、その中から計画的に海外現地法人の管理や事業運営の中核を担わせて経験を積ませることにより、海外で当社のガバナンスを利かすことができる経営人財を育成しております。

 

    この他にも、部長層、課長層、非管理職層それぞれから人財を選抜して、階層別に実施している「経営リーダー人財育成プログラム」などを組み合わせて、2024年度の海外売上高2,150億円、海外売上高比率22.4%の達成に寄与する人財を輩出していく考えであります。

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    そして次期中期経営計画の最終年度である2027年度までに、グローバルにマルハニチロブランドの提供価値を高め、お客様の健康価値創造に貢献する「総合食品企業」となることを目指しております。そのようなことからも、従業員のキャリア自立やリテンション、サクセッションプログラムの増強などを目指して課長級の職務定義(ジョブディスクリプション:JD)作成に取り組むなど、今後も継続して人財育成に注力してまいります。

    具体的には、2023年度中に課長級のJDを完成させ、そのJDの社内開示とサクセッションプログラムのリニューアルを実施してまいります。キャリア自立やリテンションに繋がる施策は2024年度中に策定する予定であります。

 

②社内環境整備戦略

A)女性活躍

採用比率

    2023年4月入社の新卒新入社員における男女比は男性47.7%(41名)、女性52.3%(45名)でありました。これは実力重視で採用を継続している結果であり、2022年入社の比率は、男性50%、女性50%、2021年入社は男性60.3%、女性39.7%と、直近2年間の男女比はほぼ半々であります。

      <過去3年間の新卒入社の男女比(男性:女性)>

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

62.7:37.3

60.3:39.7

50:50

47.7:52.3

 

    また、非正規社員の正規社員登用にも積極的に取り組んでおり、直近3年間の登用者数における女性比率は97.1%(男性1名:女性34名)となっております。

    更には、女性の育児休業取得率は100%台を継続しております。これらにより、従業員における女性比率は年々高まる傾向にあり、2023年4月1日時点の女性比率は28.1%となりました。また、以前は開発部門や管理部門への配置割合が高かった実態がありましたが、10年程度以前からは販売部門への女性従業員の登用も進んでおり、女性目線での開発・販売を強化することで、顧客起点による価値の最大化に寄与しております。今後については、海外現地への配置も含め、様々な分野で女性がより一層活躍できるよう取り組んでまいります。

  <女性従業員比率の推移(各年度4月1日時点)>

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

23.7%

24.6%

26.2%

28.1%

 

「えるぼし(2段階目)」認定の取得

    2017年度、厚生労働省「えるぼし」を取得し、5つの評価項目のうち「継続就業」「労働時間等の働き方」「多様なキャリアコース」の3つの基準を満たしております。また、女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画(2021-2025)を2021年3月に策定しております。

 

B)多様な人財の活躍促進

D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の推進

    性別・国籍・障がいの有無などの様々な違いを尊重し、従業員一人ひとりの能力を最大限に発揮することが、当社の持続的な成長には重要なことであり、そのようなことから当社は「ダイバーシティ&インクルージョン宣言」を策定しております。そして従業員の意識啓発及び行動変容につなげるため組織的な取り組みとして、2022年度よりD&I担当者を各部署に設置し、定期的に実施しているミーティングにおいて、組織の課題やありたい姿に関する議論、改善活動を行っております。

    障がい者雇用に関しては、「障がいのある方たちと共に働く」の方針のもと、本社においては、障がい者が活躍できる部署を新設し、本社内の一部の業務を担える体制を整えました。2022年度は、15以上の部署から約500件/月の業務を受管し、業務改善にも繋がりました。工場では定着支援のための「キーチーム」を設立し、全社として障がい者の方々がより多くの職場で活躍できるよう、業務の選択と集中を行って障がい者の方々が担える業務を増やしており、今後も継続して雇用者数も増やしてまいります。

 

健康経営・ウェルビーイングの推進

    当社は「本物・安心・健康な食の提供を通じて、人々の豊かなくらしと幸せに貢献する」ことをグループ理念として掲げており、様々な事業活動を通じて世の中の健康づくりに貢献していくことが当社の存在意義であります。このことを実現するには従業員が健康な状態であることが重要なファクターであると考え、健康経営の推進やウェルビーイングに取り組んでおります。具体的には、水産由来栄養素の摂取推奨と塩分制限、野菜・果物の摂取、更には運動イベントの要素を組み合わせた「well-Bチャレンジ」と称する社内イベントを毎年開催し、生活習慣病の改善に取り組んでおります。また、臨床心理士と保健師をそれぞれ2名、本社地区には常駐させております。

    また、健康リテラシーの向上を目指し、女性自身の健康意識や職場周囲の理解を深めるため、「働く社員の健康セミナー(女性の健康編)」を実施しております。

    また、従業員のストレスケアとして、関係性の質の向上にも寄与する1on1ミーティング(上司と部下の定期的な対話)や、ストレスチェックにおける高ストレス者が多い職場の従業員や新入社員などを対象とした臨床心理士との面談を実施しております。これらの活動を今後も継続して、世の中の健康づくりに貢献する健康価値創造のリーディングカンパニーを目指してまいります。

    上記の取り組みを通し、「健康経営銘柄2022」「健康経営優良法人(ホワイト500)2022」「MSCI日本株女性活躍指数(WIN)」「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」「DBJ健康経営格付最高ランク」「スポーツエールカンパニー(スポーツ庁)」「東京都スポーツ推進企業」に選定されております。

 

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男性の育児休業取得促進

   男性がより育児休業を取得しやすい企業風土の醸成を後押しするため、「男性育休100%宣言」への賛同ならびに「イクボス企業同盟」へ加盟しました。更には部長・副部長・課長を対象とした「男性の育児休業促進に向けたマネジメントセミナー」を開催し、約350名が参加しました。これらの取り組みを今後も継続して、当社中期経営計画の社会価値創造に関するマテリアリティのひとつ「男性の育児休業+休暇取得率 2024年度 50%、2030年度 100%」を達成させてまいります。

 

C)人財の見える化と活用

    人財の有効的な活用を目指し、2022年にタレントマネジメントシステムを導入しました。2023年度に策定予定のJDで、社内で不足している能力の可視化に活用することを目指すとともに、リスキリング(人財育成)や重要ポジション選定などに活用することを目指してまいります。

 

D)従業員エンゲージメント

    当社では従業員のエンゲージメントを、企業価値を高める重要な要素と位置づけており、2021年度から従業員のエンゲージメントレベルを図るパルスサーベイを月に1回実施しております。直近1年間において全社のエンゲージメントレベルに大きな変化は見られませんでしたが、結果は課長級自らが自身のマネジメントを顧みるツールとして活用するとともに、全社目線でのエンゲージメントを都度把握することに活用しております。

    今後は、2023年度にこのサーベイをグループ全体に展開し、2024年度にはグループ従業員エンゲージメント評価方法を確立するとともに、2030年度までの目標を設定いたします。

    なお、当社では、全社員がエンゲージメントを高め、個々の強みを存分に発揮して活躍するためには、以下の風土を醸成していくことが最も重要だと考えております。

 

・「様々なライフイベントなどを含む個人のキャリアや人生を尊重する風土」

・「個人のWILLを伝え合い、会社のパーパスとすり合わせることができる自立的キャリア思考風土」

・「挑戦、失敗ができ、的確なフィードバックが行われる心理的安全性の高い風土」

・「多様性を理解し、尊重する風土」

 

    そのようなことから、2021年に「心理的安全性の向上」や「上司と部下の関係の質向上」「部下の成長支援」などを目的に、上司部下間での1on1ミーティングを導入し、それに合わせる形でティーチングとコーチングを学ぶ管理職向けの研修を実施しました。

    また、2022年度には、所属組織を超えた人間関係の構築や人財育成意識の早期醸成に寄与させることを目的として、入社3年目以上35歳未満をメンター、新入社員をメンティとするメンター制度を導入しました。

 

E)柔軟な働き方の実現

    2018年度から本社・支社部門のフレックスタイム勤務化に取り組み、2021年度には全部署コアタイムなしのフレックスタイム勤務となっております。在宅勤務については2019年度までテスト運用の形でしたが、2020年度からは制度化し、2022年度からは自宅だけでなく、実家での勤務も認めております。これらの制度が子育てに関わる従業員の前向きな「仕事と育児の両立」の実現支援にも寄与し、女性社員はもちろんのこと、男性社員の育児休業取得率(短期含む)等が評価された結果、2023年に4つめの「くるみん」認定を取得しました。

    これからも従業員のライフイベントにも柔軟に対応しながら働くことが可能な体制づくりを行ってまいります。

    これらの社内環境整備をイノベーションやコラボレーションが生まれやすい組織文化への改革に繋げ、従業員エンゲージメントを高めてまいります。そして従業員が活躍できる環境を維持向上させ、会社と従業員のwin-win関係を継続させて、企業価値の向上と持続的な成長を実現させてまいります。

 

  <指標及び目標>

    現在の中期経営計画は、最終年度を2024年度として策定しております。その内容は前中期経営計画がコロナ禍で経営環境が大きく変わって数値目標が未達になったため、改めて取り組むこととしたものであり、2025年度からスタートする次期中期経営計画に向けた、いわゆる「経営基盤構築」の期間としての位置づけであります。次期中期経営計画の最終年度である2027年度までに、グローバルにマルハニチロブランドの提供価値を高め、お客様の健康価値創造に貢献する「総合食品企業」を目指すこととしております。

    経営基盤構築の期間である2024年度末までに、次期中期経営計画の達成に必要な人財を輩出する仕組みの礎構築を目指してまいります。具体的には、各事業が生み出す価値の拡大に必要な能力定義の策定と、それを活用したタレントマネジメントができる体制としております。同時に不足している能力については、外部から積極的な採用活動によって補うとともに、教育プログラムの補強を実施します。

    また、当社の持続的な成長を実現させるため、サステナビリティ戦略(マテリアリティ)に貢献する人財もあわせて育成してまいります。特にマテリアリティのひとつである「生物多様性と生態系の保全」は、ブランドステートメント、現中期経営計画の3つの価値の最大化とも合致しており、生物多様性と生態系を適切に保全し、持続的な利用を図っていくことが、当社の競争力を更に強化する重要な取り組みであると考えております。

    このような背景から、水産資源の保全や水産業界の未来に対する人財戦略として、国際的な漁業・養殖認証規格制度や、国内外の水産行政等に精通した人財の育成・確保を積極的に進めてまいります。

    それらを実現させ次期中期経営計画がスタートする2025年4月には、経営戦略に応じた人財の採用・配置・育成が可能となる体制となることを目指してまいります。

 

3【事業等のリスク】

 

  有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

  なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

リスク

当該リスクが顕在化した場合に連結会社の経営成績等の状況に与える影響の程度

当該リスクが顕在化する可能性の程度

・市場ニーズの変化

・債権管理

・為替・金利変動

・カントリーリスク

・原材料価格の変動

・原油価格の高騰

・自然災害・感染症及び事故等

・労働力の確保

・税務

・知的財産

・固定資産の減損

・投資有価証券の減損

・情報管理

・コンプライアンス

・資金調達

 

リスク項目

影響度

発生

可能性

関連する機会とリスク(○機会 ●リスク)

主要な取り組み

原材料価格の

変動

●原材料の需要動向、為替や漁獲高の変動などによる仕入価格の高騰等

●棚卸資産の評価損

・取扱品目、調達先、調達時期の分散化

・仕入価格、販売価格の適正維持

・在庫水準の適正化

原油価格の

高騰

●動燃料コストの上昇

●発送配達費等の上昇

・設備の省エネ化や効率的な操業

・カートンモジュール化等による保管配送の効率化

・在庫水準の適正化

自然災害・感染症及び事故等

●生産設備の破損及び操業停止、物流機能の麻痺等による商品供給不能

●養殖事業における予防困難な魚病等の発生による養殖魚の斃死

●台風、赤潮等による養殖魚の斃死

・生産、保管拠点の分散化

・事業継続計画(BCP)の策定

・衛生管理の徹底、フレックスタイム勤務による時差出勤、在宅勤務等による従業員感染防止

・共済、保険制度への加入

・病気に強い魚、養殖方法の研究

労働力の確保

○DX推進による、ビジネスモデルの変革、企業風土の改革

●労働力不足による操業停止、生産性の低下

・業務プロセスの標準化、変革による生産性の向上

・適正な賃金体系の構築

・労働力確保に視点をおいた操業エリアの選択

・機械化の更なる促進

・人員募集方法への工夫

・デジタル技術の有効活用

情報管理

●個人情報・機密情報の漏洩等

●重要な情報の盗難、紛失、誤用、改鼠等

●情報システムの停止等

●サイバー攻撃による対応費用の発生

●情報漏洩等による社会的信用の低下

・規程、マニュアル等の整備

・従業員に対する教育の継続

・システム管理体制の構築、運用

・サイバー攻撃への対処(インフラの整備、インシデント対応訓練)

コンプライアンス

●食品衛生法、倉庫業法、独占禁止法等の法的規制違反による対応コストの発生

●お客様からの信頼低下

・規程、マニュアル等の整備

・従業員に対する教育の継続

・内部通報制度、内部監査

資金調達

●金融危機等による資金の枯渇

●各種リスク要因により計画未達による追加の資金調達等

・資金調達先及び期間の適度な分散

・財務体質の維持・強化

・各種リスク要因の適時の分析と対応

・最新の情報に基づく適時の計画の見直し

・CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)の適正化による資金効率向上

・資金調達方法多様化の検討

市場ニーズの変化

○適切な市場マーケティングによる顧客層の拡大

●国内の少子高齢化、人口減少に伴う需要減

・冷凍食品・介護食領域等での研究開発力・技術力強化と商品ラインナップ拡充

・グループ全体での海外市場展開拡大

債権管理

●予期せぬ得意先の経営破綻の発生

●追加的な貸倒損失や貸倒引当金の計上

・情報収集、与信管理及び債権保全等

為替・金利変動

●輸入製商品の仕入価格への影響

●借入金の調達金利への影響

○●為替による海外子会社業績の円貨への換算への影響

●金利の変動による海外子会社業績への影響

・為替予約及び変動金利から固定金利へのスワップ等

・財務体質の維持・強化

・資金調達方法多様化の検討

・CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)の適正化による資金効率向上

カントリーリスク

●海外事業において進出国の政治、経済、社会、法制度等の変化による経済活動の制約

●テロ、暴動及び戦争の発生による経済活動の制約、サプライチェーンや流通網の遮断等

・進出国の適度な分散

・進出国に関する情報収集

・資源アクセス強化による調達先の適度な分散

・加工食品事業における、外国産原料から国産原料への変更可否を検討

税務

●各国における租税制度の改正、税務行政の変更や税務申告における税務当局との見解の相違等による追加的な税務負担等

○●将来課税所得の見積り変更等による税金費用の減少又は増加

・各国における税法の遵守

・各国における税制や税務行政の変更への対応策の実行

・税金及び税金関連費用を踏まえた事業計画又は仕組みの計画・実行

知的財産

○競合他社に対する優位性の確保

○●使用許諾料等

●損害賠償、使用差止等

・適切な出願戦略の推進

・ブランド・商標保護体制の整備

・知財教育及び啓発による知財人材の育成

・職務発明報奨制度

・社内担当者や弁理士事務所等を通じた日常的な調査・確認

固定資産の減損

●物流事業の物流センター及び加工食品事業の生産拠点等の立地条件の悪化、設備の老朽化・陳腐化及び販売不振等による収益悪化による減損

●金利の急激な上昇

・投資審議会・経営会議等における投資計画及び投資金額の適切性に関する審議

・投資後の定期的なモニタリング及びフォローアップ

投資有価証券の減損

●急激な株価変動や投資先の業績不振等による資産価値の下落及び減損等

・個別銘柄による投資価値の定期的な検証

・継続保有の意味合いが薄れた銘柄の売却等

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

    文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営成績等の状況の概況

① 経営成績の状況

  当期におけるわが国経済は、新型コロナウイルス新規感染者数の増加局面が引き続きあったものの、行動制限が緩和されたことや、全国旅行支援等の政府による需要喚起策、インバウンド需要の回復を受けた、外食・旅行等のサービス消費が牽引役となり、個人消費を中心に緩やかな持ち直しが見られました。

  その一方で、当社グループ関連業界を取り巻く環境につきましては、ウクライナ情勢長期化等の影響を受けた原材料・エネルギーコストの高騰に加え、日米金利差や世界景気の動向を受けた為替相場の乱高下等もあり、不安定な環境が継続いたしました。

  このような状況のもと、当社グループにおいては、中期経営計画「海といのちの未来をつくる MNV 2024」の策定にあたり再定義した長期経営ビジョンの実現に向けて、「経営戦略とサステナビリティの統合」「価値創造経営の実践」「持続的成長のための経営基盤強化」に取り組んでまいりました。

(長期経営ビジョン)

  ①事業活動を通じた経済価値、社会価値、環境価値の創造により、持続可能な地域・社会づくりに貢献する

  ②総合食品企業として、グローバルに「マルハニチロブランド」の提供価値を高め、お客様の健康価値創造に貢

    献する

  ③水産資源調達力と食品加工技術力に基づく持続可能なバリューチェーンを強化し、企業価値の最大化を実現す

    る

  その結果、売上高は1,020,456百万円(前期比17.7%増)、営業利益は29,575百万円(前期比24.2%増)、経常利益は33,500百万円(前期比21.4%増)となりました。また、2022年9月24日に当社広島工場で発生した火災による火災損失の計上等により、親会社株主に帰属する当期純利益は18,596百万円(前期比10.0%増)となりました。

 

  各セグメントの経営成績は次のとおりであります。

  なお、従来、報告セグメントについては「水産資源」、「加工」及び「物流」の3区分としておりましたが、水産資源調達力と食品加工技術を生かしたバリューチェーンの更なる強化拡充を図るため、当期より「水産資源」、「加工食品」、「食材流通」及び「物流」の4区分に変更しており、以下の前期比較については、前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。

 

水産資源事業

  水産資源事業は、国内外で漁業を行う漁業ユニット、国内において主にブリ、カンパチ、マグロの養殖を行う養殖ユニット、国内外にわたり水産物の調達・市場流通も含む販売ネットワークを持つ水産商事ユニット、中国・東南アジア・北米・欧州において水産物・加工食品の生産・販売を行う海外ユニットから構成され、新型コロナウイルスの影響により大きく変化する事業環境に対応し、収益の確保に努めました。

  漁業ユニットは、メロを始め主要魚種の販売好調により増収となり、魚価の回復により増益となりました。

  養殖ユニットは、量販店や外食向けを中心としたブリ、カンパチの販売数量増加とコロナ禍で下落した売価の回復に加えて、マグロを始め主要魚種相場の更なる上昇により増収増益となりました。

  水産商事ユニットは、外食・業務用向け販売の回復に加えて、水産物全般の堅調な魚価に支えられ、増収増益となりました。

  海外ユニットは、北米では生産効率の向上や新たに獲得したアラスカのスケソウダラ資源が生産増に寄与し、加えて堅調なマーケットの中で販売価格が上昇したことにより増収増益となりました。欧州では水産物需要拡大に対応した仕入・販売やイギリス水産加工販売会社の買収及びオランダの食品卸会社への追加出資による子会社化により増収増益、アジアではタイのペットフードが北米向けの販売好調やドル高バーツ安により増収増益となり、全体においても増収増益となりました。

  以上の結果、水産資源事業の売上高は598,481百万円(前期比23.8%増)、営業利益は21,376百万円(前期比60.2%増)となりました。

 

 

加工食品事業

  加工食品事業は、家庭用冷凍食品・缶詰・フィッシュソーセージ・ちくわ・デザート・調味料・フリーズドライ製品等の製造・販売を行う加工食品ユニット及び化成品の製造・販売を行うファインケミカルユニットから構成され、お客様のニーズにお応えする商品の開発・製造・販売を通じて収益の確保に努めました。

  加工食品ユニットは、食品全体の値上げによる消費心理の冷え込みや節約志向が見られ、数量面では苦戦しましたが、継続する簡便食ニーズに加え、値上げ効果や販売拡大に向けた施策が奏功し、増収となりました。一方、秋に再値上げを実施したものの、引き続き原材料・資材、エネルギーコストの高騰及び為替変動の影響を受け、減益となりました。

  ファインケミカルユニットは、今期より新規参入したヘパリンの販売や既存の健康食品向けの販売が底堅く推移し、増収増益となりました。

  以上の結果、加工食品事業の売上高は106,637百万円(前期比2.3%増)、営業利益は3,115百万円(前期比38.4%減)となりました。

 

食材流通事業

  食材流通事業は、多様な業態に対して水産商材や業務用商材の製造・販売を行う食材流通ユニット、国内外の畜産物を取り扱う畜産ユニットから構成され、グループにおける原料調達力、商品開発力、加工技術力を結集して業態ニーズにお応えする商品を提案し、収益の確保に努めました。

  食材流通ユニットは、外食向けを中心に販売が回復したこと、介護食・給食が堅調に推移したこと、価格改定に努めたことなどにより増収となりました。しかしながら、業務効率化・生産性向上等に努めましたが、更なる原材料・エネルギーコストの高騰及び円安によるコストアップのカバーまでには至らず、減益となりました。

  畜産ユニットは、全般的な輸入畜肉相場高騰による販売価格の上昇、欧州産豚肉の取り扱い増加に加え、国産牛肉の販売が堅調に推移したことから、増収増益となりました。

  以上の結果、食材流通事業の売上高は297,316百万円(前期比13.5%増)、営業利益は3,087百万円(前期比21.4%減)となりました。

 

物流事業

  物流事業は、電気料金の値上げに伴い動力費が大幅に増加となったものの、大都市圏を中心に保管需要を着実に取り込んだことにより、売上高は17,620百万円(前期比6.1%増)、営業利益は1,583百万円(前期比43.7%増)となりました。

 

② 財政状態の状況

総資産は637,227百万円となり、前期に比べ88,623百万円増加いたしました。これは、主として棚卸資産及び売上債権の増加によるものであります。

負債は424,704百万円となり、前期に比べ63,996百万円増加いたしました。これは、主として借入金及び社債による有利子負債の増加によるものであります。

  非支配株主持分を含めた純資産は212,522百万円となり、前期に比べ24,627百万円増加いたしました。

 

  各セグメントの資産は次のとおりであります。

 なお、当期より、一部の事業につき、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前期比較については、前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。

 

  水産資源事業の総資産は354,414百万円となり、前期に比べ68,658百万円増加いたしました。これは、主として棚卸資産及び有形・無形固定資産の増加によるものであります。

  加工食品事業の総資産は77,025百万円となり、前期に比べ1,895百万円減少いたしました。これは、主として有形固定資産の減少によるものであります。

  食材流通事業の総資産は116,787百万円となり、前期に比べ18,180百万円増加いたしました。これは、主として

棚卸資産の増加によるものであります。

  物流事業の総資産は47,304百万円となり、前期に比べ13百万円増加いたしました。これは、主として売上債権の増加によるものであります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

  当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、借入金の増加によって得た資金を、主として棚卸資産の取得及び設備投資等により使用した結果、当連結会計年度末には33,360百万円と前連結会計年度末に比べ8,929百万円増加いたしました。

営業活動によるキャッシュ・フロー

  営業活動の結果使用した資金は24百万円(前連結会計年度は19,249百万円の収入)となりました。これは、主として棚卸資産及び売上債権の増加によるものであります。

投資活動によるキャッシュ・フロー

  投資活動の結果使用した資金は23,860百万円(前連結会計年度は10,258百万円の支出)となりました。これは、主として設備投資によるものであります。

財務活動によるキャッシュ・フロー

  財務活動の結果得られた資金は30,288百万円(前連結会計年度は17,200百万円の支出)となりました。これは、主として借入金によるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

  当期より、一部事業につき、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前年同期比較については、前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。

(ⅰ) 生産・仕入実績

  当連結会計年度における生産・仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 セグメントの名称

  当連結会計年度

(自  2022年4月1日

    至  2023年3月31日)

 前年同期比(%)

水産資源事業(百万円)

554,126

118.0

加工食品事業(百万円)

78,532

100.3

食材流通事業(百万円)

222,863

123.7

物流事業(百万円)

15,234

103.0

報告セグメント計(百万円)

870,757

117.2

その他(百万円)

3,895

216.0

合計(百万円)

874,652

117.5

  (注)セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

(ⅱ) 受注実績

  当社グループは見込み生産を行っているため、該当事項はありません。

 

(ⅲ) 販売実績

  当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 セグメントの名称

  当連結会計年度

(自  2022年4月1日

    至  2023年3月31日)

 前年同期比(%)

水産資源事業(百万円)

598,481

123.8

加工食品事業(百万円)

106,637

102.3

食材流通事業(百万円)

297,316

113.5

物流事業(百万円)

17,620

106.1

報告セグメント計(百万円)

1,020,056

117.7

その他(百万円)

400

97.9

合計(百万円)

1,020,456

117.7

  (注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合については、販売実績額が総販売実績額の100分の10

以上となる販売先がないため省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

  経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(売上高)

  売上高は前連結会計年度を153,754百万円上回る1,020,456百万円となりました。主な増減の内訳は、海外ユニットにおけるタイでの北米向けペットフードの販売好調に加え、欧州でのイギリス水産加工販売会社の買収及びオランダでの食品卸会社への追加出資による子会社化に伴う販売増加、水産商事ユニットにおける外食・業務用向け販売回復及び水産物全般の堅調な魚価に支えられたことによる水産資源事業の増収114,879百万円、食材流通ユニットにおける外食向けを中心とした販売回復及び介護食・給食向けも堅調に推移したことに加え、畜産ユニットにおける全般的な輸入畜肉相場の上昇及び欧州産豚肉の取り扱い増加等による食材流通事業の増収35,417百万円となります。

 

連結会計年度のセグメント別売上高

 

 

 

(単位:百万円)

セグメントの名称

  前連結会計年度

(自  2021年4月1日

    至  2022年3月31日)

  当連結会計年度

(自  2022年4月1日

    至  2023年3月31日)

前期比

増減率

(%)

水産資源事業

483,601

598,481

114,879

23.8

加工食品事業

104,192

106,637

2,444

2.3

食材流通事業

261,899

297,316

35,417

13.5

物流事業

16,600

17,620

1,020

6.1

その他

408

400

△8

△2.1

合計

866,702

1,020,456

153,754

17.7

(注)当期より、一部の事業につき、報告セグメントの区分を変更しており、前期の数値は変更後のセグメント区分に組み替えた数値となります。

 

(売上原価、販売費及び一般管理費)

  売上原価は、売上高の増加に伴い、前連結会計年度から138,996百万円増加し、885,201百万円(前期比18.6%増)となりました。売上原価の売上高に対する比率は、0.6ポイント悪化し、86.7%となりました。販売費及び一般管理費は、労務費や発送配達費等の物流費等の経費増加により、前連結会計年度から9,001百万円増加し、105,678百万円(前期比9.3%増)となりました。販売費及び一般管理費の売上高に対する比率は、0.8ポイント好転し、10.4%となりました。研究開発費は、前連結会計年度から5百万円増加し、1,652百万円(前期比0.3%増)となりました。

 

(営業利益)

  営業利益は前連結会計年度を5,756百万円上回る29,575百万円(前期比24.2%増)となりました。主な増減の内訳は、海外ユニットにおけるタイでの北米向けペットフードの販売好調、北米での販売価格の上昇、養殖ユニットにおける量販店や外食向けを中心としたブリ、カンパチの販売数量の増加及び販売価格の回復に加え、マグロを始めとした主要魚種相場の上昇による水産資源事業の増益8,031百万円、大都市圏を中心に保管需要を着実に取り込んだことによる物流事業の増益482百万円、一方で、原材料、エネルギーコストの高騰及び為替変動の影響等による加工食品事業の減益1,946百万円、食材流通事業の減益839百万円となります。

  なお、営業利益の売上高に対する比率は、2.9%(前連結会計年度は2.7%)となりました。

 

連結会計年度のセグメント別営業利益

 

 

 

(単位:百万円)

セグメントの名称

  前連結会計年度

(自  2021年4月1日

    至  2022年3月31日)

  当連結会計年度

(自  2022年4月1日

    至  2023年3月31日)

前期比

増減率

(%)

水産資源事業

13,345

21,376

8,031

60.2

加工食品事業

5,061

3,115

△1,946

△38.4

食材流通事業

3,926

3,087

△839

△21.4

物流事業

1,101

1,583

482

43.7

その他

165

278

112

68.0

調整額

218

134

△83

△38.5

合計

23,819

29,575

5,756

24.2

(注)当期より、一部の事業につき、報告セグメントの区分を変更しており、前期の数値は変更後のセグメント区分に組み替えた数値となります。

 

(経常利益)

  経常利益は前連結会計年度を5,903百万円上回る33,500百万円(前期比21.4%増)となりました。主な増減の内訳は、営業利益の増加5,756百万円、為替差益の増加1,581百万円、支払利息の増加878百万円、貸倒引当金繰入額の増加421百万円となります。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

  親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度を1,697百万円上回る18,596百万円(前期比10.0%増)となり、1株当たり当期純利益は363円68銭(前連結会計年度は321円13銭)となりました。増減の内訳は、経常利益の増加5,903百万円、特別利益の増加2,213百万円、特別損失の増加4,090百万円、法人税等の減少138百万円、非支配株主に帰属する当期純利益の増加2,467百万円となります。

  なお、特別損益は、前連結会計年度に比べ1,876百万円の損益悪化となりました。これは主に、特別利益が固定資産売却益及び投資有価証券売却益の増加等により前連結会計年度に比べ2,213百万円増加した一方で、特別損失が火災損失の計上に加え、固定資産処分損の増加等により前連結会計年度に比べ4,090百万円増加したことによるものであります。

  法人税等合計は前連結会計年度に比べ138百万円減少しており、法人税等合計の税金等調整前当期純利益に対する比率が3.8ポイント減の22.4%となっております。これは主に、貸倒引当金の認容等によるものであります。

 

② 財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容

(総資産)

  総資産は前連結会計年度末に比べ88,623百万円増加し、637,227百万円(前期比16.2%増)となりました。総資産のうち、流動資産は前連結会計年度末に比べ68,334百万円増加し、392,639百万円(前期比21.1%増)となり、固定資産は前連結会計年度末に比べ20,289百万円増加し、244,587百万円(前期比9.0%増)となりました。

  主な増減の内訳は、棚卸資産の増加44,006百万円並びに売上債権の増加16,377百万円となります。

  売上債権及び棚卸資産は前連結会計年度末に比べ増加しておりますが、販売好調による売上債権の増加及び必要な在庫の手当て、魚種全体にわたる単価上昇や外貨換算の円安影響等によるものであり、正常な範囲内と考えております。

  また、売上債権回転日数については47.1日(前期比1.5日減)、棚卸資産回転日数については89.4日(前期比4.9日増)となっており、いずれも正常な水準の範囲内と判断しております。

 

売上債権回転日数及び棚卸資産回転日数

 

 

 

(単位:百万円)

 

  前連結会計年度

(自  2021年4月1日

    至  2022年3月31日)

  当連結会計年度

(自  2022年4月1日

    至  2023年3月31日)

前期比

増減率

(%)

売上高(a)

866,702

1,020,456

153,754

17.7

売上原価(b)

746,205

885,201

138,996

18.6

受取手形、売掛金

及び契約資産(c)

115,391

131,769

16,377

14.2

棚卸資産(d)

172,691

216,698

44,006

25.5

売上債権回転日数(日)

48.6

47.1

△1.5

△3.0

(c)÷(a)×365

棚卸資産回転日数(日)

84.5

89.4

4.9

5.8

(d)÷(b)×365

 

 

なお、セグメント別資産の内訳は、次のとおりであります。

連結会計年度のセグメント別資産

 

 

 

(単位:百万円)

セグメントの名称

前連結会計年度

(2022年3月31日)

当連結会計年度

(2023年3月31日)

前期比

増減率

(%)

水産資源事業

285,756

354,414

68,658

24.0

加工食品事業

78,920

77,025

△1,895

△2.4

食材流通事業

98,606

116,787

18,180

18.4

物流事業

47,290

47,304

13

0.0

その他

9,627

9,998

370

3.9

調整額

28,401

31,696

3,295

11.6

合計

548,603

637,227

88,623

16.2

(注)当期より、一部の事業につき、報告セグメントの区分を変更しており、前期の数値は変更後のセグメント区分に組み替えた数値となります。

 

(負債)

  負債は前連結会計年度末に比べ63,996百万円増加し、424,704百万円(前期比17.7%増)となりました。負債のうち、流動負債は前連結会計年度末に比べ43,903百万円増加し、265,448百万円(前期比19.8%増)となり、固定負債は前連結会計年度末に比べ20,092百万円増加し、159,255百万円(前期比14.4%増)となりました。

  主な増減の内訳は、仕入債務の増加5,474百万円、未払法人税等の増加1,329百万円、借入金及び社債による有利子負債の増加50,535百万円となります。

  また、有利子負債残高は、前連結会計年度末に比べ50,535百万円増加し、301,139百万円となりました。

 

(純資産)

  非支配株主持分を含めた純資産は前連結会計年度末に比べ24,627百万円増加し、212,522百万円(前期比13.1%増)となりました。

  主な増減の内訳は、当期純利益等による利益剰余金の増加15,702百万円、為替換算調整勘定の増加7,054百万円、非支配株主持分の増加6,489百万円及び自己株式の消却等による資本剰余金の減少5,132百万円となります。

  なお、自己資本比率は売上債権及び棚卸資産等の増加に伴う総資産の増加により、28.0%となり、前連結会計年度末(29.2%)に比べ、1.2ポイント悪化いたしました。

  また、1株当たり純資産は自己株式の消却等により、前連結会計年度末の3,043円95銭から3,534円39銭となりました。

 

自己資本比率及び1株当たり純資産

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(2022年3月31日)

当連結会計年度

(2023年3月31日)

前期比

自己資本(a)

160,174

178,312

18,138

総資産(b)

548,603

637,227

88,623

自己資本比率(%)(a)÷(b)

29.2

28.0

△1.2

1株当たり純資産

3,043円95銭

3,534円39銭

490円44銭

 

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

連結キャッシュ・フローの状況

 

 

(単位:百万円)

 

  前連結会計年度

(自  2021年4月1日

    至  2022年3月31日)

  当連結会計年度

(自  2022年4月1日

    至  2023年3月31日)

前期比

営業活動によるキャッシュ・フロー

19,249

△24

△19,273

投資活動によるキャッシュ・フロー

△10,258

△23,860

△13,601

財務活動によるキャッシュ・フロー

△17,200

30,288

47,489

現金及び現金同等物に係る換算差額

1,483

2,131

648

現金及び現金同等物の増減額

△6,726

8,535

15,261

新規連結に伴う現金及び現金同等物

の増加額

394

394

現金及び現金同等物の期末残高

24,430

33,360

8,929

 

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

  営業活動によるキャッシュ・フローは、24百万円の支出(前連結会計年度は19,249百万円の収入)となりました。税金等調整前当期純利益31,545百万円及び減価償却費15,083百万円等により資金を創出した一方、棚卸資産の増減額の増加35,235百万円、売上債権の増加額の増加9,836百万円及び法人税等の支払額5,545百万円があったこと等によるものであります。

 前連結会計年度に比べて営業活動の結果得られた資金が19,273百万円減少いたしましたが、主な増減の内訳は、棚卸資産の増減額による減少20,588百万円、法人税等の支払額による減少2,042百万円、税金等調整前当期純利益の増加4,026百万円となります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

  投資活動によるキャッシュ・フローは、23,860百万円の支出(前連結会計年度は10,258百万円の支出)となりました。水産資源事業における北米でのスケソウダラの加工施設の取得及び加工食品事業における生産拠点を中心に、有形固定資産の取得による支出20,359百万円、水産資源事業における漁業許可権利金等の無形固定資産の取得による支出9,384百万円、有形固定資産の売却による収入4,647百万円等によるものであります。

  前連結会計年度に比べて投資活動の結果使用した資金が13,601百万円増加いたしましたが、主な増減の内訳は、無形固定資産の取得による支出の増加7,172百万円、有形固定資産の取得による支出の増加5,540百万円となります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

  財務活動によるキャッシュ・フローは、30,288百万円の収入(前連結会計年度は17,200百万円の支出)となりました。借入金による収入38,444百万円、社債の発行による収入4,965百万円、自己株式の取得による支出5,381百万円によるものであります。

  前連結会計年度に比べて財務活動の結果得られた資金が47,489百万円増加いたしましたが、主な増減の内訳は、借入金による収入の増加50,054百万円、社債の発行による収入の増加4,965百万円、自己株式の取得による支出の増加5,377百万円等となります。

 

(資金の流動性)

  当連結会計年度末における現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ8,929百万円増加し、33,360百万円となりました。

  手元流動性確保のため、主要な金融機関との関係維持・強化を図るほか、当座貸越枠等の調達手段を備えております。

  また、当社グループは各社が月次に資金繰り計画を作成するなどの方法により流動性リスクを管理しております。

 

(財務政策)

  当社グループは、中期経営計画「海といのちの未来をつくる MNV 2024」において、再定義した長期経営ビジョンの実現に向けて、基本的な考え方である「経営戦略とサステナビリティの統合」「価値創造経営の実践」「持続的成長のための経営基盤強化」に取り組んでまいりました。

  引き続き、成長への投資を最優先としながらも、財務基盤の強化を図ってまいります。運転資本の効率的な運用にも取り組み、より強固な財務体質を目指してまいります。

  また、当社グループは国内連結子会社を含めたキャッシュマネジメントシステム(CMS)を導入しており、運転資金及び設備投資資金の調達は、主に当社の借入及びグループ各社の事業活動から生じるキャッシュ・フローを資金集中することによる自己資金によっております。

 

(資金調達の方法及び状況)

  短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。

  また、当社は2022年11月2日、環境持続型の漁業・養殖事業等に資金使途を限定した本邦初となる債券「ブルーボンド」(第1回無担保社債)の発行により、5,000百万円を調達いたしました。

  今後も資金調達の多様化・安定化に努めるとともに、調達した資金を通じた環境課題解決への貢献にも取り組んでまいります。

 

(資金需要の動向)

  当社グループでは、設備投資、運転資金、借入金の返済及び利息の支払い並びに配当及び法人税の支払い等に資金を充当しております。

 また、中期経営計画「海といのちの未来をつくる MNV 2024」における成長及びインフラへの投資として、既存領域での海外資源アクセスへの増強、海外生産拠点の生産設備の更新、家庭用冷凍食品に係る生産設備の更新、冷蔵庫のスクラップ&ビルド等への投資のため、並びに成長ドライバー領域への戦略投資として、海外市場への展開拡大、冷凍食品事業、介護事業、ファインケミカル事業、ペットフード事業領域の強化に向けた投資のため資金を充当してまいります。

 

  設備投資を目的とした資金需要のうち主なものは、食品生産拠点、漁船等の購入費用、物流センターの増設費用等であり、運転資金需要のうち主なものは、商品及び原材料の仕入、製造費用、生産拠点及び物流センターの運営費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。

 

  各セグメントの資金需要の動向は次のとおりであります。

 

水産資源事業

  漁船、漁業許可権利金、食品生産拠点、養殖設備等の購入・建設費用並びに商品及び原材料の仕入、養殖魚や養殖のために必要なエサ代、製造費用、生産拠点の運営費等の運転資金が必要となります。

 

加工食品事業

  食品生産拠点の購入・建設費用並びに商品及び原材料の仕入、製造費用、生産拠点の運営費等の運転資金が必要となります。

 

食材流通事業

  食品生産拠点の購入・建設費用並びに商品及び原材料の仕入、製造費用、生産拠点の運営費等の運転資金が必要となります。

 

物流事業

物流センターの増設費用及び物流センターの運営費等の運転資金が必要となります。

 

④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

  当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、当社の経営者は、重要な判断と見積りや計画の策定に対し、過去の実績や現状を勘案し合理的に判断しておりますが、これらは不確実性を伴うため、将来生じる実際の結果と大きく異なる可能性があります。

  連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、下記については、重要なものとして、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

(ⅰ)固定資産の減損

(ⅱ)棚卸資産の評価

(ⅲ)繰延税金資産の回収可能性

 

  その他の重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は以下のとおりであります。

(ⅳ)貸倒引当金

  当社グループは、売上債権、貸付金等の貸倒損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しております。

  個別の回収可能性の検討にあたっては、取引先の財政状態、担保物の見積回収可能価額などの見積り・前提を使用しております。

  当連結会計年度においては、流動資産で△410百万円、固定資産で△1,522百万円の貸倒引当金を計上しております。

  取引先の財政状態、担保物の見積回収可能価額には不確実性を伴い、これらに対する経営者による判断が売上債権、貸付金等の貸借対照表価額に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(ⅴ)投資有価証券の減損

  当社グループは、その他有価証券のうち、市場価格のない株式等以外のものについては、期末日における時価が取得原価に比べ50%以上下落した場合に原則として減損処理を行い、30~50%程度下落した場合に、回復可能性を判断して減損処理を行うこととしております。市場価格のない株式等については、当該有価証券の発行会社の1株当たり純資産額が、取得価額を50%程度以上下回った場合には回復可能性がないものとして判断し、30%~50%程度下落した場合には当該有価証券の発行会社の財政状態及び将来の展望などを総合的に勘案して回復可能性を判断しております。

  個別の回収可能性の検討にあたっては、当該有価証券の発行会社の財政状態、将来の展望などの見積り・前提を使用しております。

  当連結会計年度においては、投資有価証券として39,029百万円計上しております。

  有価証券の発行会社の財政状態、将来の展望などには不確実性を伴い、これらに対する経営者による判断が連結貸借対照表価額に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(ⅵ)退職給付会計

  当社グループは、確定給付型の制度として、確定給付企業年金制度及び退職一時金制度を採用しております。また、一部連結子会社では、確定拠出制度を採用しております。

  当社においては、退職給付信託を設定しております。

  退職給付型の制度において、退職給付債務及び関連する勤務費用は、数理計算上の仮定を用いて退職給付見込額を見積り、割り引くことにより算定しております。数理計算上の仮定には、割引率、退職率及び死亡率など年金数理計算上の見積り・前提を用いております。

  割引率については、デュレーション法(加重平均期間アプローチ)により算出した期間に対応する国債のイールド・カーブから抜粋した利回りを加重平均割引率とする方法を採用しております。

  当連結会計年度においては、退職給付に係る負債として19,091百万円を計上しております。

  これらの見積り・前提に用いる割引率、退職率及び死亡率などについては、現時点で妥当と判断したデータその他の要因に基づき設定しておりますが、実際の結果がこれらの見積り・前提と異なる場合には、将来の退職給付費用及び退職給付債務に重要な影響を及ぼす可能性があります。

  なお、退職給付関係に関する事項は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (退職給付関係)に記載のとおりであります。

 

⑤経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

  中期経営計画「海といのちの未来をつくる MNV 2024」において掲げております「価値創造経営の実践」における「財務KGI」の進捗状況は次のとおりであります。

  当社グループでは、中期経営計画の最終年度となる2024年度計画において、MNEV9,500百万円以上、売上高960,000百万円以上、営業利益27,000百万円以上、EBITDA46,500百万円以上、ROIC4.3%以上、ROE9.0%以上及びネットD/Eレシオ1.2倍以下を目標にしております。

  売上高は前連結会計年度を153,754百万円上回る1,020,456百万円となり、営業利益は前連結会計年度を5,756百万円上回る29,575百万円となり、EBITDAは営業利益の増加等により前連結会計年度を4,856百万円上回る47,449百万円となりました。また、ROICは運転資本等の増加はあったものの経常利益の増加等により前連結会計年度の4.3%から0.5ポイント好転し、4.8%となりました。一方で、ROEは前連結会計年度の11.2%から0.2ポイント悪化し、11.0%となり、また、ネットD/Eレシオは借入金及び社債の有利子負債が増加したことにより前連結会計年度の1.4倍から0.1ポイント上昇し、1.5倍となりました。

  この結果、MNEVは前連結会計年度を3,527百万円上回る13,981百万円となりました。投下資本利益率を意識した効率的な事業運営により、当社グループ全体の企業価値の向上に繋げてまいります。

 

 

2021年度

2022年度

2024年度計画

(最終年度)

前期比

計画比

MNEV(百万円)

10,453

13,981

9,500

3,527

4,481

売上高(百万円)

866,702

1,020,456

960,000

153,754

60,456

営業利益(百万円)

23,819

29,575

27,000

5,756

2,575

EBITDA(百万円)

42,593

47,449

46,500

4,856

949

ROIC(%)

4.3

4.8

4.3

0.5

0.5

ROE(%)

11.2

11.0

9.0

△0.2

2.0

ネットD/Eレシオ(倍)

1.4

1.5

1.2

0.1

0.3

(注)MNEV(Maruha Nichiro Economic Value):事業活動の成果に伴う経済付加価値額として、投下資本利益率(ROIC)と加重平均資本コスト(WACC)の差(MNEVスプレッド)に、投下資本を乗じ算出しております。

5【経営上の重要な契約等】

 特記すべき事項はありません。

 

6【研究開発活動】

  当社グループでは、お客様の生涯の健康に役立つ商品をご提案するための研究開発、技術蓄積を旨として、研究活動を進めております。

  特に、中期経営計画に掲げている、「イノベーション・エコシステム」を効率的に推進するために、①フードテック領域、②マリンテック領域、③バイオテック領域、などの領域に注力いたしました。

  当連結会計年度における研究開発費の総額は1,652百万円であり、特定のセグメントに区分できない研究開発費の各セグメントへの配賦額を含めたセグメント別の内訳は、水産資源事業1,008百万円、加工食品事業295百万円、食材流通事業332百万円、物流事業50百万円、全社費用配賦差額△34百万円であります。

 

  主なセグメント別の研究の目的、主要課題、研究成果は次のとおりであります。

 

水産資源事業

 世界的な人口増加と新興国の経済成長により、良質かつヘルシーなたんぱく源である魚の需要が世界規模で急増しているなか、水産、養殖分野での取り組みの重要性が高まっております。特にSDGs目標14「海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する」に貢献することを目指して、養殖魚のエサとなる天然魚や魚粉原料をできる限り使用しない低魚粉、低魚油飼料を開発すべく、昆虫ミールに着目した研究開発を行っております。また、ブリやカンパチは、血合肉が変色しやすく改善が求められているため、これまでに血合肉の変色を抑制できる養殖用飼料の開発・実用化を手掛け、おいしさの部分においても、呈味成分等を詳細に分析することで客観的な指標を見出し、更に高いレベルの品位を目指して改良を進めております。

 沿岸域での海面養殖だけではなく、台風や赤潮などの自然環境に影響されにくく、残餌や糞により海洋環境を汚すことのない閉鎖循環型陸上養殖については、研究助成を受けて産官学と連携を取りながら、山形県遊佐町において、サクラマス陸上養殖実証試験に係る研究開発を進めておりました。助成研究は2020年度で終了となりましたが、事業化に向けた研究を継続中であり、更に飼育設備を拡充し、遺伝子情報を活用した高成長種苗の育種や高密度飼育技術の開発・検討に取り組んでまいります。この陸上養殖研究の知見を生かし、2022年10月、三菱商事株式会社との合弁により、富山県入善町でサーモンの陸上養殖事業を行う「アトランド株式会社」の設立に至りました。デジタル技術も活用した陸上におけるサーモンの持続可能で安定的かつ効率的な生産体制の構築、地産地消型ビジネスモデルの実現、低・脱炭素化への貢献を目指し、2025年度の稼働開始、2027年度の初出荷に向け、サクラマスと並行してアトランティックサーモンの飼育試験を山形県遊佐町にてスタートしております。

 種苗生産研究では、2020年4月に、増養殖事業部傘下の「南さつま種苗センター」を、中央研究所管轄の新会社として組織変更した「㈱マルハニチロ養殖技術開発センター」の本格稼働により、2022年度はブリ140万尾とカンパチ6.1万尾を生産し、順調に安定生産技術を積み重ねております。ブリでは、これまで天然親魚からの採卵でしたが、より養殖に適した人工孵化第一世代の親魚から採卵して完全養殖を達成しており、高成長系統の選抜育種も併用し、養殖の生産性をさらに上げていく予定であります。また、2021年3月に、完全養殖クロマグロ育種改良のための基盤・応用技術の開発に関して、国立研究開発法人の水産研究・教育機構と協働していくことで合意し、共同研究を進めております。この取り組みによって、人工種苗を用いたクロマグロ養殖の体質強化と持続的発展に資する技術開発を推進してまいります。

 水産・養殖現場では、AI(人工知能)やIoT(Internet of things)を活用して、生産性向上や省力化を目指した取り組みを進めております。ICT(情報通信技術)に関する先端技術と水産・養殖現場の課題を適切にマッチングさせ、費用対効果が出るような技術開発、例えば、AIの画像認識技術を活用した魚の尾数をカウントするシステム「かうんとと」の開発、養殖向けの環境データモニタリングシステムの開発など様々な課題に取り組んでいます。また、養殖現場の省力化のために以前より人手で行ってきた養殖魚へのワクチン接種の自動化の検討を進め、ワクチン自動接種機の運用試験を開始しました。さらに、東京海洋大学が主催する「海洋AIコンソーシアム」に協力機関として参加し、東京海洋大学の行う卓越大学院プログラム、その他の海洋AIに関する教育及び研修に関する支援を進めております。

 エビは調理後の食感や味を向上させるために浸漬剤による処理を行っており、エビの加工現場で用いる独自配合の浸漬剤の開発・実用化を進めております。これら浸漬剤を用いた処理により、素材が持つ美味しさを保ちつつ、品質を向上させることができ、特に食感や色の改良が認められております。これらエビの浸漬に関する技術は、特許を出願、取得しております。さらに、浸漬処理の技術は、エビだけではなく、その他の水産物への応用にも取り組んでおります。

 魚介類の国内での消費量が減少し続ける中、魚介類の価値を高めるための一つの取り組みとして、魚由来の成分の健康に及ぼす影響、さらに、日常の食生活の中で魚を中心とする食事の健康への効果を実証するための各種検討を進めております。

 水産加工現場から排出される未利用資源の有効利用に関する技術開発を行い、環境負荷低減の取り組みを進めております。

 

加工食品事業

 食品の見た目、香り、味や食感などの特徴を官能評価で数値化し、プロファイリングを行い、栄養成分や物性などの美味しさに関わる科学的な要素を分析し比較することで、理論的に食品の特徴をコントロールする取り組みを行っております。

 食塩を控えるなど健康志向の強い消費者に対応できるよう、減塩しても美味しさが変わらない技術や噛みやすく飲み込みやすい食感(物性)が必要な介護食を安定して製造するための技術開発に取り組み、当社商品への応用展開を進めております。

 機能性表示食品とは、健康の維持や増進など、科学的な根拠に基づいた機能が事業者の責任でわかりやすく表示されているため消費者が正しく選ぶことができ、さらに、安全性も確保されているものであります。当社では、長年続けてきた魚油由来の健康成分であるDHAとEPAに関する研究成果をもとに、機能性表示食品の開発にいち早く取り組んでまいりました。その結果、業界初やカテゴリー初となる機能性表示食品を次々に開発し、これまでに、DHA・EPAを関与成分とした中性脂肪を低下させる機能がある食品、DHAを関与成分とした情報の記憶をサポートする機能がある食品として、多数の品目について消費者庁で届出を受理されております。また、多様な生理活性を有する脂質研究を基に多くの医薬品を創製してきた小野薬品工業株式会社と当社が協業し、エビデンスに基づく機能性脂質製品の商品開発に共同で取り組んでおります。具体的には、当社水産加工現場から排出される未利用資源よりDHAが結合したリン脂質を含むイクラ油を基にしたサプリメントを共同で開発しました。これには睡眠の質を向上させ、あるいは一時的な活気・活力の向上と日中の眠気の軽減に役立つ機能があることを臨床試験で確認し、機能性表示食品として受理され、2022年3月より「レムウェル」(小野薬品ヘルスケア)の販売に至りました。両社は、信頼できるパートナーとして、お互いの知見や事業ノウハウを有効活用し、引き続き脂質のもつ有用な生理活性に着目して、食品と医薬品の間に位置する予防・未病の分野を開拓し、より多くの方へ生涯にわたる健康をお届けしてまいります。

 DHA以外にも、当社が原料調達などでの優位性を有する他の素材についても検討を進めており、サケ白子に含まれるプロタミンの抗菌性を活用した口腔ケア等への応用研究、スケソウダラ由来魚肉タンパク質の機能性研究など、水産物由来の機能性成分に関する研究を推進しております。

 自然解凍冷凍食品、フローズンチルド商品など、多様なカテゴリーからなる当社商品に関して、商品の安全性担保のための基盤となる微生物制御技術の研究を進めております。独立行政法人製品評価技術基盤機構との共同研究では、近年注目を浴びているマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF MS)を用いた、食中毒原因菌であるセレウス菌(Bacillus cereus)の迅速かつ精密な識別・同定(菌種特定)法を2018年に確立いたしました。さらに、当該分析法を用いた同定精度向上とともに、食中毒菌等の迅速検出技術、増殖予測技術についても研究を進めており、「MALDI-TOF MSを用いた食品希釈液からの直接同定方法の開発」について日本農芸化学会2022年度大会で発表し、「トピックス賞」を受賞しました。

 また、新たな取り組みとして、持続可能な“次世代の魚タンパク”の商業化生産を目指し、2021年8月に細胞培養スタートアップのインテグリカルチャー株式会社と「魚類」の細胞培養技術の確立に向けた共同研究を開始しました。同社は、細胞農業(細胞培養)が普及する世界の実現に向けて、培養コストの低価格化と、細胞培養の大規模化技術の開発を行う革新的なスタートアップ企業です。同社が独自に展開する食品グレード培養液と汎用大規模細胞培養システム “CulNet System™”は、これまで牛と家禽の細胞で有効性が確認されており、本研究ではこれらを新たに魚類の細胞にも拡張してまいります。検証に必要な生きた魚(細胞)の提供を当社が担って、研究を推進してまいります。2023年1月からは、細胞性食品(いわゆる「培養肉」)のルール形成を行う団体である一般社団法人日本細胞農業研究機構に参画して活動を進めております。当社は創業以来、良質な魚タンパクの供給を通じて人々の食と健康に貢献して参りました。魚類細胞性食品の生産技術が実現できれば、世界中で高まる魚需要に対して、持続可能な次世代の魚タンパク質の提供が可能になると考えております。

 

食材流通事業

 2015年4月の制度化で誕生した「機能性表示食品制度」は、科学的根拠の提示と適切な品質管理のもと、事業者責任において食品に機能性を表示することを可能とした制度であります。この制度は、加工食品のみならず、農水産物などの生鮮食品も対象としておりますが、生鮮食品の各種栄養成分や機能性関与成分の含量は加工食品と比べて安定しにくいため、規格管理が難しいことが障壁となっておりました。当社ではこのハードルを越えるべく、代表的な養殖魚として知られる「カンパチ」の機能性関与成分であるDHA(ドコサヘキサエン酸)・EPA(エイコサペンタエン酸)量について、年間を通じた調査を行い、規格管理を実施することで2018年1月に生鮮食品区分の水産品として初の機能性表示食品の届出が受理され、2018年8月より販売を開始しております。さらに、株式会社ベイシアとの取り組みで、水産売場において中性脂肪を低下させる効果がある機能性表示食品として販売することを検討し、届出が受理され、2021年4月よりベイシア各店での販売に至っております。続く第2弾として、マグロのたたきに含まれるDHA・EPAが規定量以上含まれるように当社の精製魚油を添加した商品設計を行い、2023年4月より中性脂肪を低下させる効果を謳った「新鮮プレミアム 鮪たたき」の販売を開始いたしました。現在、更なる魚種拡大の可能性についても検討を進めており、機能性をもつ生鮮食品の販売拡大を目指しております。

 

 さらに、水産・食品分野のリーディングカンパニーとして、関連学会での発表はもとより、関連セミナーにおける講師、理科授業の実施など、成果や技術力の情報発信に加え、社会に対する貢献活動に継続して取り組んでまいりました。