当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりであります。なお、本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は有価証券報告書提出日(2025年6月24日)現在において判断したものであります。
<中期経営戦略>
今後の世界経済は、関税政策をはじめとする米国の政策動向の影響等により、不透明感が拡がり、景気の下振れや資本市場の変動等が懸念されます。日本経済についても、世界経済の動向に加えて、物価上昇の継続を通じた個人消費マインドへの影響による景気の下押しリスクが懸念されます。当社グループを取り巻く事業環境につきましても、為替の変動、TC/RCの低下や自動車及び半導体関連の需要動向の変化等、厳しい環境が続くことが見込まれます。
こうしたなか、当社グループは、企業価値の向上に向けて、2023年度から2030年度までを対象とする中期経営戦略(以下「中経2030」といいます。)に基づく諸施策を実施してまいります。中経2030においては、「人と社会と地球のために」という企業理念のもと、「循環をデザインする」というビジョンを掲げ、「持続可能な社会(豊かな社会、循環型社会、脱炭素社会)を実現する」ことをミッションとしております。中経2030の概要は以下のとおりです。なお、中経2030策定時に想定していた外部環境から大きく変化しており、外部環境の悪化時にも収益性を確保できるよう、「抜本的構造改革」に着手するとともに、2026年度以降を対象とした中期経営戦略の練り直しを開始しております。
①目指す姿
(イ)私たちの目指す姿
当社グループは、「人と社会と地球のために、循環をデザインし、持続可能な社会を実現する」ことを私たちの目指す姿とし、自社の持つ強みをもとに金属資源の循環を強化し、対象範囲、展開地域、規模の拡大によりバリューチェーン全体での成長実現に取り組んでまいります。
(ロ)戦略ロードマップ
中経2030においては、2023年度から2025年度までの3年間をPhase1、2026年度から2030年度までの5年間をPhase2とし、私たちの目指す姿の実現を図ります。Phase1においては、プロダクト型事業を中心にコスト競争力強化に基づく利益成長・収益性改善を進めるとともに、資源循環などの中長期の成長領域への投資を実行します。
(ハ)財務目標
Phase1の最終年度である2025年度では、売上高1兆9,400億円、営業利益700億円、経常利益870億円、ROIC 5.5%、ROE 10.0%、EBITDA 1,500億円、ネットD/Eレシオ 0.7倍、ネット有利子負債/EBITDA倍率 3.5倍を計画しています。
(ニ)キャピタルアロケーション
Phase1においては、対象期間累計キャッシュイン4,200億円に対して、成長投資2,300億円、維持更新投資1,300億円、配当など600億円のキャッシュアウトを計画しております。
(ホ)株主還元
当社は、株主に対する利益還元が経営の最重要目的の一つであるという認識のもと、利益配分については、期間収益、内部留保、財務体質等の経営全般にわたる諸要素を総合的に判断の上、決定する方針としております。
中経2030期間中の利益配分については、2023年度から2025年度の期間において、配当性向30%を目途に利益還元を行います。なお、自己株式取得については、キャッシュ・フローの状況、株価、及びネットD/Eレシオ等の財務規律を踏まえ、引き続き、機動的に行うことを検討してまいります。
②企業価値向上に向けた取り組み
(イ)事業ポートフォリオ経営
Phase1ではコスト削減・プロセス最適化などの施策を実施し、ROIC改善による収益性の向上を目指してまいります。事業ポートフォリオ経営の方針は次のとおりです。
・成長性と収益性の2軸で事業ポートフォリオを管理、経営資源の配分を最適化
・事業の成長性をEBITDA成長率で評価し、市場の成長率で補完
・企業価値向上に向け、ROICスプレッドの維持・向上を図りつつ、エコノミックプロフィット(=ROICスプレッド×投下資本)の増加を目指す
・金属事業カンパニーと環境リサイクル事業の統合(製錬・資源循環)による効率化を図り、事業価値向上を加速
(ロ)投資配分と利益貢献
2030年度までの成長投資総額5,600億円のうち、鉱山投資やタングステン事業への投資など循環型社会貢献に2,500億円、高機能製品カンパニー及び加工事業カンパニーの競争力強化に2,800億円、地熱発電事業強化など脱炭素社会への貢献に300億円の投資を計画しています。投資配分の考え方は次のとおりです。
・ミッションへの適合及び維持更新と成長投資のバランスを考慮し投資対象を選定
・事業特性に応じたリターンを評価し、事業間で適正に配分
・事業毎の財務健全性を保ちつつ、全体のネットD/Eレシオ1倍以下の財務規律を維持
(ハ)コスト競争力強化
中経2030では、コスト競争力強化にも取り組み、Phase1で約90億円のコスト削減をいたします。
営業利益に対するコスト削減累計額の比率は、2025年度で約13%を見込んでいます。
③事業戦略
中経2030における事業別の目標及び事業戦略は次のとおりです。
・金属事業カンパニー
目標:非鉄金属の資源循環におけるリーダー
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事業戦略 |
資源事業 |
●銅鉱床に含まれる希少資源の確保・回収に向けた技術開発の推進 ●継続的な鉱山投資による権益の獲得と銅精鉱の安定確保 ●銅鉱山でのSX-EW(※)による銅供給量の拡大 |
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製錬・資源循環 事業 |
●資源循環の推進に向けたネットワーク強化・規模拡大 ●電気銅生産能力の拡大 ●E-Scrap類の処理拡大によるリサイクル率アップ ●レアアース、レアメタルリサイクル事業の創出 ●国内及び海外展開の加速(E-Scrap、家電、自動車リサイクル) |
※SX-EW:Solvent extraction and electrowinning 溶媒抽出と電解採取の2段階からなる
湿式製錬プロセス
・高機能製品カンパニー
目標:グローバル・ファースト・サプライヤー
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事業戦略 |
銅加工 事業 |
●伸銅品リサイクル率を向上し、スクラップのプラットフォーム基盤を確立 ●海外(ルバタ社):成長市場(xEV、医療、環境)への迅速な参入 ●国内工場をマザー工場と位置づけ、海外に新たな川下工場を検討し、海外顧客への拡販、サービスを強化 |
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電子材料 事業 |
●事業ポートフォリオの継続的な組み換えによる高資本効率経営 ●成長領域の注力製品への戦略投資 ●新規事業創出や事業提携の推進及びそのための人材育成と確保 ●ものづくり力とDXの強化による生産高度化、稼ぐ力の追求 ●カーボンニュートラルに向けた事業、社会的価値(SDGs)の提供 |
・加工事業カンパニー
目標:グローバルで顧客が認めるタングステン製品のリーディングカンパニー
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事業戦略 |
加工事業 |
戦略市場で自律した事業展開を目指し、真のグローバル企業へ変革する <超硬工具事業> ●素材とコーティング技術の強みを活かした高効率製品を世界No.1品質で安定的に提供 <タングステン事業> ●超硬工具向けに加え、二次電池向け等に事業規模を拡大 ●環境対応力の強化 <ソリューション事業> ●ものづくり現場へのコト売りを事業化 |
・再生可能エネルギー事業
目標:再エネ電力自給率100%に向けた再エネ発電の拡大
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事業戦略 |
再生可能 エネルギー 事業 |
再生可能エネルギー事業を全社的な取り組みとして戦略本社に集約し、長期的な視野で事業の拡大を推進 ●地熱事業の拡大に向け、3年に1箇所のペースで新規開発を実施 ●将来的に発電コスト低下が見込まれる風力発電への新規参入 |
④カーボンニュートラル(※1)
当社グループの温室効果ガス排出量のうち、事業者自らによる直接排出であるScope1及び供給されたエネルギー利用に伴う間接排出であるScope2について、資源循環の取り組みにより排出されるGHGを除き、2030年度までに2020年度比で47%削減することを目指します。また、資源循環の取り組みにより排出されるGHGを含めて2045年度までにカーボンニュートラル実現を目指します。また、Scope1とScope2以外の事業者の活動に関連する他社の排出であるScope3のうちカテゴリ1、3、15(※2)についても、2030年度に22%以上(2020年度比)削減します。さらに、2050年度までに当社の再生可能エネルギー由来の電力自給率100%を目指します。
※1 2024年7月に温室効果ガス排出量削減目標を見直ししており、見直し後の目標を基に記載しています。
※2 当社グループのScope3排出量のうち8割以上を占めるカテゴリ
カテゴリ1:購入した製品・サービス
カテゴリ3:Scope1、2に含まれない燃料及びエネルギー活動
カテゴリ15:投資
⑤経営基盤強化
次のとおり、グループ共通の課題に対する取り組みを強化するとともに、経営基盤の強化も引き続き行い、企業価値向上を図ってまいります。
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ものづくり戦略 |
●中経2030に基づく工場ビジョンの策定、及び工場実力評価と課題設定・解決を追求 ●ボトムアップ活動、ものづくり基盤強化、技術開発・改善による「ものづくり力の別格化」 |
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研究開発戦略 |
●新製品・新技術・新事業創出を通して、持続的な企業価値向上を実現 |
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人事戦略 |
●人材の価値最大化と「勝ち」にこだわる組織づくり ●共創と成長を生み出す基盤の構築 |
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DX戦略 |
●データとデジタル技術を活用し、ビジネス付加価値向上、オペレーション競争力向上、経営スピード向上の3本柱を推進 ●開始から2年以上が経過する中で、ものづくりの強化と従来テーマの着実な実行を行うべく、テーマ再編成、体制強化等を行い、「MMDX2.0」として新たなフェーズへ |
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IT戦略 |
●MMCグループIT WAYを実現するため、データ活用・働き方・セキュリティの観点から事業を支えるITモダナイゼーションの推進 ●100億円規模の投資を行い、2030年度におけるITコストは売上高比率1.0%以下 |
<重要課題(マテリアリティ)>
当社グループは、社会全体の持続可能性(サステナビリティ)が企業活動の将来に重大な影響を与えるとの認識に立ち、企業活動を通じて解決していく重要な社会課題のうち、重要度の高いものをマテリアリティとして特定しています。中経2030の策定に際して、当社は、さまざまな観点から課題要素を抽出し、それぞれのステークホルダーにとっての重要度と当社グループの「私たちの目指す姿」に照らした重要度の2軸からマテリアリティを整理し、マテリアリティごとの重点テーマ、重点テーマに対する取り組み内容及び目標を再設定しました。
また、当社では、経営環境等の変化を適時適切に捉えて必要な対応を図るべく、マテリアリティ等については、毎年見直すこととしています。今般は、最新の社会・環境・経済動向等を踏まえて、次のとおり重点テーマを一部見直しました。
●重点テーマの追加
・「資源循環の推進」に「資源循環地域戦略の立案と実行」を追加
・「持続可能なサプライチェーンマネジメントの強化」に「パンデミックや自然災害への対応」を追加
・「価値創造の追求」に「収益に結び付く競争優位性の構築」を追加
●重点テーマの削除
・「SCQ課題への対応強化」から「感染症予防」を削除
●重点テーマの変更
・「情報セキュリティの強化」の「ITグローバルガバナンスの強化」を「ITグローバルガバナンスの強化(ITリテラシー含む)」に変更
・「SCQ課題への対応強化」の「重大な品質不適合の撲滅」を「規格外品を発生させないための仕組みの構築と実行」に変更
・「価値創造の追求」の「ものづくり力の強化」を「マーケティング力、ものづくり力、販売力の強化」に変更
・「財務リスク」の「債務保証引き受け関連会社等の経営・財務状態のモニタリング」を「金属価格上昇による運転資本増加及び資本効率悪化への対応」に変更
有価証券報告書提出日時点のマテリアリティ及び重点テーマは次のとおりです。
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マテリアリティ |
重点テーマ |
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資源循環の推進 |
高度なリサイクル技術による資源循環のデザイン推進 |
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リサイクル可能な製品の開発・提供 |
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資源循環地域戦略の立案と実行 |
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地球環境問題対応の強化 |
カーボンニュートラル実現に向けた取り組み強化 |
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生物多様性の確保/環境負荷低減 |
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再生可能エネルギーの開発・利用促進 |
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人的資本の強化 |
労働力不足への対応 |
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人材確保と育成の強化 |
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DE&I推進 |
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柔軟な働き方の推進 |
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個の尊厳と基本的人権の尊重 |
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コミュニケーションの活性化 |
ステークホルダーとのエンゲージメント強化 |
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顧客満足度の向上 |
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地域社会との対話、共生の推進 |
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情報セキュリティの強化 |
ITグローバルガバナンスの強化(ITリテラシー含む) |
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情報漏洩防止 |
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IT資産管理の強化 |
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SCQ(※)課題への対応強化 ※Safety & Health(安全・健康最優先)、 Compliance & Environment(法令遵守、公正な活動、環境保全)、Quality(『顧客』に提供する製品・サービス等の品質) |
労働災害の未然防止 |
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心身ともに働きやすい職場づくり |
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コンプライアンスの徹底 |
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グループガバナンスによる内部統制の拡充 |
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コーポレート・ガバナンスの強化 |
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有害物質の敷地外漏洩防止、環境法令違反撲滅 |
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規格外品を発生させないための仕組みの構築と実行 |
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持続可能なサプライチェーンマネジメントの強化 |
原材料の調達多様化 |
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サプライチェーンにおける人権への配慮 |
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パンデミックや自然災害への対応 |
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DXの深化 |
業務プロセスの変革 |
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オペレーション強化 |
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顧客接点高度化、ビジネスモデル変革 |
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価値創造の追求 |
収益に結び付く競争優位性の構築 |
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新規事業創出プロセスの構築と実行 |
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マーケティング力、ものづくり力、販売力の強化 |
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地政学・地経学リスク |
投資戦略の定期的な見直し |
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海外拠点との連携によるカントリーリスクを含む海外リスクに関する情報収集・共有 |
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海外事業におけるリスク低減・回避策やBCP策定・定期的な見直し |
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銅精鉱、E-Scrap、その他原材料の調達ポートフォリオの形成 |
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財務リスク |
グループ最適なキャッシュマネジメントシステムの導入・運用 |
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保有資産の時価の把握および固定資産減損の兆候の有無の確認 |
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金属価格上昇による運転資本増加および資本効率悪化への対応 |
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年金資産運用における安全性・収益性を考慮した投資配分 |
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は以下のとおりであります。なお、本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は有価証券報告書提出日(2025年6月24日)現在において判断したものであります。
(1)ガバナンス及びリスク管理に関する事項
①ガバナンス
当社は、コーポレート・ガバナンス基本方針において、当社グループの中長期的な企業価値の向上を実現するためには、サステナビリティを巡る課題への対応が必要不可欠と認識し、グローバルな事業活動のなかで廃棄物や資源のリサイクル及び省エネルギーの推進を行うなど、社会的課題の解決に積極的に取組むことにより、持続可能な社会の構築への貢献と中長期的な企業価値の向上の両立を目指すこと、及び「サステナビリティ基本方針」に基づき、サステナビリティを巡る課題に対し、適切に対応していくことを定めています。
2021年12月1日付で策定したサステナビリティ基本方針は、当社グループのサステナビリティに関連する規定・方針類を束ねる上位方針として位置付けており、関連する方針として、人権方針、環境方針、調達方針等を定めています。これらの方針等に基づき、取組を進めてまいります。
URL:https://www.mmc.co.jp/corporate/ja/sustainability/
取締役会がサステナビリティに関する取組のモニタリングに留まらず、異なる視点からサステナビリティへ取組む方向性を能動的に検討し、社内に示していくべく、取締役会の下に「サステナビリティ委員会」を設置しております。また、執行役社長(本部長)、コーポレート部門の担当執行役(副本部長)、関係部署の部長等によって構成される「SCQ推進本部」を設置し、サステナビリティを巡る経営課題のうち企業活動を継続していく上での根幹としているSCQ(安全・環境・コンプライアンス・品質等)に関する一元的な対応を推進しております。加えて、サステナビリティ審議会及びサステナビリティレビューを実施しております。これらの会議は執行役及び関係部署の部長等によって構成されており、地球環境問題対応と人的資本経営の経営課題も含めたサステナビリティ関係事項を取り扱うテーマとしております。なお、当社グループのサステナビリティ課題のうち、「資源循環の推進」、「地球環境問題対応の強化」、「人的資本の強化」については、サステナビリティ委員会でも取り扱い、テーマを共有して対応を図ることとしています。
これらを含めた当社のコーポレート・ガバナンスの概要は、「
②リスク管理
当社グループは、サステナビリティ課題に適切に対応していくことが当社グループにおける様々なリスクの低減につながると考えております。また、当社グループでは、重大リスクをグループ全体のリスク、事業固有のリスク(事業全体の運営に重大な影響を及ぼすリスク)、及び事業拠点固有のリスク(拠点運営に重大な影響を及ぼすリスク)として、各階層が担うべき役割(計画の策定、実行、支援、モニタリング/レビュー)を明確にしています。特に本社の管理部門/事業部門は、事業拠点で確実に対策が実行されるよう、半期毎に事業拠点とリスクコミュニケーションを図り、実施状況や課題を共有し必要な支援を協議のうえ実施しています。
リスクマネジメントに関する活動状況については半期毎にモニタリング/レビューし、結果はSCQ推進本部、戦略経営会議、及び取締役会等に報告され、リスクの状況を経営層でモニタリング/レビューしています。
(2)戦略及び指標・目標に関する事項
当社は、2023年度から2030年度までを対象とする中期経営戦略(以下「中経2030」)において、2050年度の再生可能エネルギー電力自給率100%に向けて、再生可能エネルギー事業を全社的な取組として戦略本社(※)に集約し、長期的な視野で事業の拡大を推進することとしております。加えて、当社グループの温室効果ガス(以下「GHG」)排出量について2030年度までの削減目標を定め、2045年度までのカーボンニュートラル実現を目指すこととしております。また、人事戦略については、「人こそが新しい価値を創造し、当社グループの持続的成長の源泉である」という考えのもと、人材の価値最大化と「勝ち」にこだわる組織づくり、及び共創と成長を生み出す基盤の構築に取組むこととしております。
※2024年4月1日付で、戦略本社とプロフェッショナルCoEを統合する等のコーポレート部門の再編を行いました。
(3)気候変動への対応
1)ガバナンス及びリスク管理に関する事項
①ガバナンス
当社は、サステナビリティ推進を分掌するCSuOのもとで気候変動への対応を含むサステナビリティ課題への対応を行っています。また、コーポレート部門に専門部署である「安全環境品質室」を設置し、気候変動に関連するリスクと機会への戦略的取組を含め、当社グループにおける気候変動対応を企画・推進しています。また、安全環境品質室が事務局を務める地球環境委員会では、気候関連財務情報開示タスクフォース提言に基づいたシナリオ分析、気候関連リスク及び機会の評価・管理、GHG削減のための実行計画の策定・管理、及びその他気候変動に関する協議及び情報共有を推進しています。同委員会の取組については、戦略経営会議、取締役会に報告され、適切にモニタリングされています。
②リスク管理
当社グループでは、気候変動に関するリスクを当社グループの業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性がある主要なリスクの1つとして認識しており、当社グループのリスクマネジメント活動の中で取組を進めています。
2)戦略に関する事項
気候変動に関する機会については、気候変動に関する政策等の強化により、省エネ・GHG排出削減に貢献する技術や製品・サービスの需要が拡大すると想定しています。当社グループは、脱炭素化に貢献する素材・製品の製造、非鉄金属資源リサイクル、地熱発電等の再生可能エネルギーの開発・利用促進、CO2回収・有効利用に関する技術開発、保有する山林の保全活動等に取組むことで、経済的価値と社会的価値の両立を目指していきます。
①シナリオ分析
当社グループは、2021年3月、気候変動が当社グループの事業に与える影響(リスクと機会)について把握し、リスクの低減及び機会の獲得に向けた対策を検討するため、シナリオを設定し、その分析を実施しました。移行リスクと機会については、2023年2月に中経2030との整合性を取りながら、シナリオ分析の更新、指標・目標の設定を行いました(全事業共通で1テーマ、3つの大テーマについて事業毎に計9テーマを設定、それぞれ1.5℃シナリオと4℃シナリオを設定し分析を実施)。これらの指標・目標に基づいたモニタリングを実施しています。
②物理的リスク(水)
当社グループにおける水使用量の大部分(約87%)は冷却水としての海水であり、淡水(工業用水や地下水等)の使用量は相対的に少ないものとなっています。しかし、淡水の不足は事業活動に影響を及ぼすおそれがあるため、当社グループの事業運営では、必要な水量及び水質を確保することが不可欠です。また、気候変動に関連すると考えられる激甚化した豪雨・洪水や高潮・渇水等の急性及び慢性リスクによる被害等の水リスクを含めて全社リスクマネジメント活動において管理しています。
事業所では水リスクの低減策をそれぞれ進めており、水資源確保への対策については水の循環利用や水使用量の少ない設備の導入・更新等による節水に取組み、洪水対策については建屋・ポンプ・電気設備等の嵩上げや排水ポンプの設置、増水を想定した訓練等に取組んでいます。また、事業所からの排水水質異常や水質事故の防止のため、法規制を上回る独自の排水基準の設定による管理、水質異常時に検知できるセンサー・自動排水停止システムの導入等に取組んでいます。
3)指標・目標に関する事項
当社は、「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーの転換等に関する法律」ならびに「地球温暖化対策の推進に関する法律」(以下、「温対法」)の運用変更に基づく定期報告が2024年度から適用されたことに伴い、2024年7月に当社の温室効果ガス(以下「GHG」)排出量及び目標を見直しました。
具体的には、これまで算定・報告の対象外であったE-Scrapに含まれるプラスチックの燃焼に伴い生じるCO2や、銅の製錬工程で使用する石灰石の化学反応に伴い生じるCO2などのGHG排出量を法令報告の対象として追加しました。
この変更に併せ、当社グループのGHG排出量の削減目標について見直し、資源循環の取組により排出されるGHGを除くGHG排出量を2030年度までに2020年度比で47%削減することを目標としました。また、引き続き2045年度までにGHG排出量を実質ゼロとするカーボンニュートラルの実現を目指します。なお、このたびの見直しに伴って、従来設定していたSBT(Science Based Targets)は指標から外し、認定を取り下げております。
中長期目標の達成に向け、2030年度までに主に製造拠点の省エネ、設備改善等へ105億円の投資を行い、GHG排出量削減に取組みます。また、2045年度のカーボンニュートラル実現のため、当社が強みを持つ地熱発電等の再生可能エネルギーの開発、利用拡大を進め、目標値として2035年度に自社使用電力の再生可能エネルギー利用率を100%とすることを定めています。これに伴い、2030年度までに再生可能エネルギー事業へ300億円の投資を行います。
また、当社の事業活動に伴うサプライチェーン等のGHG排出量であるScope3の削減目標として、2030年までに22%削減(Scope3全体の約90%を占めるカテゴリ1、3及び15について2020年度比)と設定しました。目標達成に向け、サプライヤー等とのエンゲージメントを進め、当社Scope3排出量の長期的な削減を目指して参ります。
2023年度におけるScope1・2排出量内訳[千t-CO2e]
(実績については、2024年3月31日現在における、当社及び連結子会社84社のデータを反映しています。)
|
分類 |
単体 |
国内グループ |
海外グループ |
計 |
|
|
Scope1 |
エネルギー起源(燃料等) |
108 |
181 |
117 |
406 |
|
非エネルギー起源 |
47 |
66 |
21 |
134 |
|
|
資源循環の取り組みにより排出されるGHG |
170 |
252 |
0 |
422 |
|
|
小計 |
324 |
499 |
138 |
|
|
|
Scope2 |
エネルギー起源(電力等) |
221 |
176 |
312 |
|
|
合計 |
545 |
675 |
450 |
|
|
2023年度におけるScope3排出量内訳[千t-CO2e]
(実績については、2024年3月31日現在における、当社及び連結子会社46社のデータを反映しています。)
|
項目 |
単体 |
グループ |
計 |
|
|
カテゴリ1 |
購入した製品・サービス |
921 |
2,402 |
3,323 |
|
カテゴリ2 |
資本財 |
102 |
204 |
305 |
|
カテゴリ3 |
Scope1,2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動 |
54 |
108 |
162 |
|
カテゴリ4 |
輸送、配送(上流) |
231 |
512 |
743 |
|
カテゴリ5 |
事業から出る廃棄物 |
4 |
18 |
22 |
|
カテゴリ6 |
出張 |
0 |
2 |
2 |
|
カテゴリ7 |
雇用者の通勤 |
2 |
5 |
7 |
|
カテゴリ8 |
リース資産(上流) |
- |
- |
- |
|
カテゴリ9 |
輸送、配送(下流) |
42 |
134 |
176 |
|
カテゴリ10 |
販売した製品の加工 |
107 |
415 |
522 |
|
カテゴリ11 |
販売した製品の使用 |
- |
- |
- |
|
カテゴリ12 |
販売した製品の廃棄 |
2 |
5 |
8 |
|
カテゴリ13 |
リース資産(下流) |
- |
- |
- |
|
カテゴリ14 |
フランチャイズ |
- |
- |
- |
|
カテゴリ15 |
投資 |
5,465 |
0 |
5,465 |
|
合計 |
6,931 |
3,803 |
|
|
(4)人的資本に関する取組(人材の多様性確保を含む)
当社グループは、「人と社会と地球のために、循環をデザインし、持続可能な社会を実現する」ことを「私たちの目指す姿」として掲げています。事業活動を通じてこの目指す姿を推進していくのは人であり、「人こそが新しい価値を創造し、当社グループの持続的成長の源泉である」と考えています。
人材を資源やコストではなく「資本」として捉え、Human Resources Transformation、略してHRXを通じて、人材育成の加速、キャリア自律の促進、タレントマネジメントシステムによる人材情報の見える化と各種人事施策への活用など、投資を通じて人材の成長に取組んでいます。今後もHRXの取組を更に深化させながら、人事戦略「人材の価値最大化と『勝ち』にこだわる組織づくり」、「共創と成長を生み出す基盤の構築」を通じて、個人と会社がともに成長し、企業価値の向上を実現させていくための人的資本への投資を進めてまいります。
①ガバナンス
当社は、当社グループの人事戦略を分掌する執行役(CHRO、Chief Human Resources Officer)を置き、また人事戦略(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを含む)担当部署を設置し、当社グループの人的資本に関する取組を推進しております。また、執行役をメンバーとする「人材委員会」での人事課題の審議・共有、次世代経営人材育成プログラムへの執行役の関与等により、当社グループの人的資本への取組、経営戦略・事業戦略と人事戦略とを連動させる取組を推進するとともに、定期的に取締役への報告も行っております。
②戦略
当社グループでは、これまで取組んできたHRXを発展させ、中経2030を実現するための人事戦略を以下のとおり定めています。
<2024年度までの取組事例>
・執行役とHRBP(Human Resources Business Partner)で構成される「人材委員会」を設置。人材の採用、育成、異動・配置、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンをはじめとする各種主要人事施策に関する審議、実効性の検証及び改良に向けた検討を実施
・管理職層に対する「職務型人事制度」の適用による役割・責任に応じた評価・処遇・配置の実現
・非管理職層に対して従来の職能資格から役割を基準とした仕組みを導入するための人事制度改定を検討
・1-on-1の実施、社内公募によるキャリアチャレンジ、オンライン学習サポートを通じたリスキリング環境の提供、1年間のトライアル期間を経て本格導入した副業・兼業制度による自律的キャリア形成の支援
・在宅勤務制度、遠隔地リモート勤務制度による多様な働き方の実現
・タレントマネジメントシステムを通じた人材情報の見える化とスキル管理等への活用
・執行役社長をトップとする推進体制のもと、従業員の健康を最優先にすることを目的とした、健康経営の推進(「健康経営銘柄2025」の初選定、「健康経営優良法人2025(大規模法人部門(ホワイト500))」の認定を継続取得、グループ全体で健康経営優良法人2025:9社認定)
・執行役と従業員との対話機会の設定(執行役とのコミュニケーションワークやタウンホールミーティング、リバースメンタリング等を実施)
③指標と目標
経営戦略達成のための重要な人的資本に係る指標と目標として、以下3点を設定しています。
a)経営リーダー候補の継続的確保育成
当社グループが中長期的に成長していくためには、それを牽引する経営リーダーを育成する必要があることから、次世代経営人材育成プログラムに沿い、将来の経営リーダーになり得る人材を選抜し、育成を進めています。このプログラムを通じて育成される経営リーダー候補者を順次増加させていき、執行役後継候補者に占める次世代経営人材育成プログラム選抜者比2022年度実績51%を、2030年度までに80%とする目標を設定しています(2024年度実績は69.7%)。
b)意思決定層における多様性の確保
当社グループの持続的な成長のためには、既存の枠組みにとらわれないイノベーションの創出が必要であると考えています。そのためには、多様な人材を確保・育成し、多様な個性を認め合い、異なる意見から新たな価値を創出する意識・風土醸成が欠かせません。このことから、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンに関する方針の下、当社の管理職層における多様な属性(女性、外国人、経験者採用、障がい者)の割合2020年度実績16%を、2030年度までに30%(※1)とする目標を設定しています(2024年度実績は27.0%)。
c)エンゲージメントの継続的向上
当社グループの経営戦略・事業戦略を実行するのは人です。一人ひとりが持つ個性を受け入れ、尊重し、最大の組織パフォーマンスを発揮しながら、働きがいを感じることのできる企業を目指し、働きがい向上に向けた各種施策を進めています。2022年度より、年に1度、当社の全従業員を対象としたエンゲージメントサーベイを開始し、施策の効果を測ることとしております。今後も各施策をさらに推進していくことにより、エンゲージメントサーベイ全設問における肯定的回答率2022年度実績71%を、2030年度までに80%(※2)とする目標を設定しています(2024年度実績は74.9%)。
とりわけ、会社の持続的成長に影響を及ぼす「意思決定層における多様性の確保」に向けた取組については、その属性別にも以下の指標と目標(※1)を設定しています。
〇女性
2020年度末時点における当社の全管理職に占める女性管理職の割合は2.1%でした。当社では、近年における総合職の新卒採用に占める女性比率は従来の目標である「25%以上」を概ね達成していますが、今後はこの水準を更に向上させるとともに、経験者採用の強化、キャリア加速や人脈形成の支援、多様な経験蓄積による実力の養成等により、2025年度末までに、女性管理職の人数を2020年度末比約2.5倍、全管理職に占める割合を5%以上にすることを目指しています(2024年度末時点における女性管理職の人数は68名で、全管理職に占める割合は3.9%)。
〇外国人
2020年度末時点における当社の全管理職に占める外国人管理職の割合は約1%でした。今後も積極的な新卒・経験者採用を継続するとともに、キャリア支援や職場環境の整備等により、2025年度末までに、全管理職における外国人の人数を2020年度末比約2.5倍にすることを目指しています(2024年度末時点における外国人管理職数は2020年度末比約1.5倍)。
〇経験者採用
2020年度末時点における当社の全管理職に占める経験者採用の割合は約12%でした。近年、当社では経験者採用に注力しており、最近3年間の管理職層及び総合職の新規採用においては、年間採用者に占める経験者採用比率は約44%です。今後も研修や社内人脈形成等の入社後サポート体制強化やキャリア支援等により、2025年度末までに、全管理職における経験者採用の人数を2020年度末比約1.5倍にすることを目指しています(2024年度末時点における経験者採用管理職数は2020年度末比約1.6倍)。
※1:対象は当社正社員(当社からの出向者を含み、当社への出向者は含みません)
※2:対象は当社正社員(当社への出向者を含み、当社からの出向者は含みません)
1.重大リスクの選定プロセス
当社グループでは、経営上、事業運営上の重大なリスクを、社会情勢や経営環境及びグループの経営課題等を踏まえ、執行役及び本社管理部門にて毎年度網羅的に洗い出し評価しています。また、事業固有の重大なリスクについても、本社事業部門にて毎年度、洗い出し評価したうえで、全執行役が参加するサステナビリティ審議会を経て決定しています。
2.当社グループのリスクマネジメント体制及び運用状況
上記の重大リスクに、拠点で事業拠点固有のリスクを洗い出し、評価したものを加え、各拠点で実施計画を策定のうえ、リスクマネジメント活動を行っています。活動状況については、サステナビリティ審議会等において半期ごとにモニタリング/レビューし、その結果はSCQ推進本部及び戦略経営会議に報告され、リスクの状況を経営層でモニタリング/レビューしています。また、重大リスクは取締役会に報告され、取締役会はリスクマネジメントを含むリスクの状況を監督しています(図1参照)。
重大リスクをグループ全体のリスク、事業固有のリスク(事業全体の運営に重大な影響を及ぼすリスク)、及び事業拠点固有のリスク(拠点運営に重大な影響を及ぼすリスク)として、各階層が担うべき役割(計画の策定、実行、支援、モニタリング/レビュー)を明確にしています(図2参照)。特に本社の管理部門/事業部門は、事業拠点で確実に対策が実行されるよう、半期ごとに事業拠点とリスクコミュニケーションを図り、実施状況や課題を共有し必要な支援を協議のうえ実施しています(図3参照)。
また、個々の重大リスクのシナリオを策定し、統一化した評価基準に基づく、影響度と発生可能性の定量的/定性的な評価を行い、リスク発現時のイメージを具体化し、共有しています(図4参照)。
図1:リスクマネジメント体制
図2:重大リスクの位置づけ
図3:リスクマネジメントサイクル
図4:リスクの評価基準
3.事業等のリスク
当社グループは、当社グループそのものが持続可能であり続けるという「自社のサステナビリティ」とともに、事業活動を通して環境や社会を持続可能なものにしていくという「環境・社会のサステナビリティ」の両面を実現するために、サステナビリティ課題を特定しています。サステナビリティ課題に適切に対応していくことで、経済的価値と社会的価値の両立による企業価値の向上、及び当社グループにおける様々なリスクの低減につながると考えています。
これを踏まえて、当社グループの経営陣が、当社グループのサステナビリティ課題及びそれに関連する主要なリスクとして認識している事項は、以下のとおりです。
なお、以下の内容は、当社グループの全てのリスクを網羅するものではありません。本項においては、将来に関する事項が含まれていますが、当該事項は2025年6月24日現在において判断したものです。
また、当社グループのサステナビリティに関するガバナンスやリスク管理の考え方等については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1)ガバナンス及びリスク管理に関する事項」をご参照下さい。
(1)資源循環の推進 (発生可能性:高、影響度:大)
世界的な人口増加・経済成長に伴い、資源・エネルギー消費量等の増大や廃棄物量の増加、地球温暖化をはじめとする環境問題は深刻度を増しています。今後、大量生産・大量消費・大量廃棄型の線形経済モデルは立ち行かなくなる可能性があり、資源枯渇を含む原材料の調達リスク、廃棄物処理の困難性が増大することが考えられます。
限りある資源を消費し続ける社会から、廃棄物の発生を抑制するとともに、資源を循環させて有効活用する社会への移行が求められるなか、当社グループの各事業においても資源循環を推進していかなければ、成長機会の逸失や産業界からの排除のリスクにつながりかねません。
こうした状況を踏まえ、当社グループは、2023年度から2030年度までを対象とする中期経営戦略において、強みをもとに金属資源の循環を強化し、対象範囲、展開地域、規模の拡大によりバリューチェーン全体での成長実現に取り組むこととしています。強みである、E-Scrap、家電、超硬工具等の高度なリサイクル技術による資源循環の推進と、リサイクル可能な製品の開発・提供により、資源循環を実践するとともに、欧州を中心とした地域軸での資源循環戦略を立案・実行することで、中長期的な競争力の強化につなげていきます。
(2)地球環境問題対応の強化 (発生可能性:高、影響度:中)
気候変動に関しては、全世界的にカーボンニュートラルに向けた動きが加速しており、日本を含む多くの国で2050年のカーボンニュートラル実現への取り組みが宣言されています。気候変動に対する政策及び法規制が強化され、炭素価格制度(排出権取引制度や炭素税)が導入、強化された場合など、温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)排出量に応じたコストが発生することにより当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、カーボンニュートラルに向けた取り組みにおいて、エネルギー分野では、再生可能エネルギーの積極的な活用も求められており、このような事業拡大の機会を逃すことで、当社グループの成長機会を逸失する可能性があります。
これらに加えて、自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させるネイチャーポジティブの取り組みへの注目も高まっており、自然環境に配慮した事業活動が求められています。
当社グループでは、2045年度のカーボンニュートラル実現という目標を掲げ、2030年度に向けたGHG削減目標においては、省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの使用を拡大することにより、当社グループの事業活動により排出されるGHGの削減に取り組んでいます。また、当社グループ製品の市場競争力を向上するため、製造プロセスの改善や環境配慮型製品の開発、CO2回収・有効利用・貯留(CCUS:Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)など環境負荷を低減する技術開発を推進しています。
一方、気候変動に関する政策等の強化により、省エネ・GHG排出削減に貢献する技術や製品・サービスの需要が拡大することが予想され、ビジネス機会が増大すると想定しています。当社グループでは、脱炭素化に貢献する素材・製品・技術の開発、地熱発電等の再生可能エネルギーの開発・利用促進、CO2回収・利用に関する実証試験・技術開発の推進、保有する山林の保全活動等に取り組んでいます。
(3)人的資本の強化 (発生可能性:中、影響度:大)
少子高齢化に伴う労働人口の減少や個人のキャリア・働き方に対するニーズの多様化により、人材の確保や中長期的な専門人材の育成が困難になってきています。海外への事業展開を強化するにあたっては、公平性を担保し、文化や価値観の多様性を認めながら個々の個性を尊重し、協働することが求められています。
このようななか、柔軟な働き方を支援する施策や人事制度等の設計・運用が不十分である場合、従業員エンゲージメントの低下や企業成長に必要な人材を確保することが困難となる可能性があります。
当社では、「人こそが新しい価値を創造し、当社グループの持続的成長の源泉である」という考えのもと、人材を資源やコストではなく資本として捉え、一人ひとりの従業員の価値の最大化と、多様な人材による共創と成長を生み出す基盤構築につながる人事施策を通じて人的資本の強化を行っています。
また、当社は国内外に事業拠点を持ち、原材料や資材を調達するサプライヤーも多数の国や地域に及びます。自らの事業またはサプライチェーンにおいて、人権侵害(強制労働や児童労働、ハラスメント、差別的行為等)が発生した場合、生産や調達への影響に加え、当社グループの社会的信用・レピュテーションの棄損につながる可能性があります。
このため、当社グループでは、「サステナビリティ基本方針」を制定し、人権尊重は事業活動の基盤となるという考えのもと、国際的に宣言されている人権の原則を尊重することを明確にするとともに、「人権方針」を制定し、こうしたリスクの低減に向けた取り組みを推進しています。
(4)コミュニケーションの活性化 (発生可能性:中、影響度:中)
株主、従業員、顧客、サプライヤー、地域住民、NGO、政府機関等のステークホルダーとのコミュニケーションや対話等を通じて、信頼関係を構築すること、要望や問題を理解し、企業活動に活かしていくことは、企業価値向上に欠かせない重要な取り組みです。ステークホルダーとのエンゲージメントが低下することで、適正な株価形成の妨げになるだけでなく、従業員のモチベーションやコンプライアンス意識の低下、顧客ロイヤルティの低下、ブランドの毀損などにつながる可能性があります。
当社では、株主、投資家との建設的な対話に関する方針を策定し、対話を充実させるだけではなく、各種の説明会を開催し、株主、投資家から得られた意見等は集約・分析の上、取締役会及び経営陣に対してフィードバックを行うこととしています。
従業員のエンゲージメントの向上は、従業員がその能力を最大限に発揮することにつながり、当社グループの企業価値向上につながるものと考えています。また、自由闊達なコミュニケーションができる風通しの良い組織風土を構築することがガバナンス強化、コンプライアンス違反の防止につながるという認識のもと、経営陣と従業員の直接対話の場や研修等を通じたコミュニケーションの深化を図っています。
また、顧客の多様な要望にお応えするため、当社グループでは、品質マネジメント活動の一環として、クレーム情報の分析や、顧客満足度調査を実施しています。顧客の声を真摯に受け止め、経営陣とも共有し、より良い製品とサービスの提供に向けた改善に反映しています。
加えて、当社は、「地域社会貢献活動方針」を制定し、地域での自然保護、次世代教育支援やマイノリティ支援を含むダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン等の社会における課題を解決するための貢献活動を積極的に行い、地域社会との共生に取り組んでいます。
(5)情報セキュリティの強化 (発生可能性:高、影響度:中)
当社グループは、情報セキュリティをリスクマネジメント上の重要課題の一つに位置付けており、特に顧客及び取引先の個人情報については最重要情報資産の一つと認識して、情報漏えいや滅失、破損のリスク低減に取り組んでいます。重要な情報インフラとネットワークの故障、サイバー攻撃(サイバーテロ)等の不測の事態、また、情報の不正持ち出し、コンピュータシステムの不備や管理不十分、コンピュータウイルスや不正ソフトの関与による個人情報等の漏えいが発生した場合は、社会的信用の失墜等につながる可能性があります。
このため、ITリテラシーを含むITグローバルガバナンスの強化として、重要な情報インフラとネットワークに関しては、適切な設備投資等を行い、機器の更新や冗長化等を適宜実施しています。更に、情報漏洩防止のためにIT資産管理を強化するとともに、セキュリティ対策を効果的に実施していくために、ガバナンス、セキュリティ向上、予兆検知・早期発見、迅速な対処の4領域毎に対策・強化を進めることでリスク低減を図っています。
(6)SCQ課題への対応強化 (発生可能性:高、影響度:大)
利益(E)だけを追求し、製造現場の安全・健康(S)を軽視し、法令遵守・環境保全(C)を怠り、基準に満たない品質の製品(Q)の供給を行った場合、法的な制裁だけでなく、社会的な信用の低下により、企業価値の低下につながる可能性があります。
当社グループは、SCQ課題への対応強化のために、「SCQ推進本部」(本部長:執行役社長)を設置し、関係部署の部長等で構成する部会を設け、「安全・健康」「コンプライアンス遵守」「品質」などの企業活動の根幹となる部分に集中して取り組みを進めています。
S:Safety & Health(安全・健康最優先)については、グループ内の労働災害の発生状況等の分析、重点的に取り組むべき課題の抽出、具体的な施策の立案を行い、各施策の進捗の定期的な情報共有や解決策の協議等も行っています。また、安全責任者会議、安全担当者・安全指導員会議を定期的に開催し、幅広い業種を抱える当社グループ内での多様な災害情報や安全衛生活動に関する情報交換を行い、安全衛生水準の向上に取り組んでいます。さらに、従業員の健康管理を重要な経営課題と位置付け、SCQ推進本部下に健康経営推進部会を設置し、健康保持・増進に関するさまざまな取り組みを全社で実施しています。
C:Compliance & Environment (法令遵守、公正な活動、環境保全)については、コンプライアンスを、法令遵守はもとより企業倫理や社会規範を含む広い概念として捉え、ステークホルダーの期待に誠実に応えていくことと考えています。当社グループ全体のコンプライアンス体制強化に向け、国内外での研修等、さまざまな施策を通じ、グループの従業員一人ひとりのコンプライアンス意識を向上させる取り組みを継続しています。また、当社グループ内で発生したコンプライアンス違反に関する情報を、的確且つ迅速に収集・共有することにより、違反案件への適切な対応やリスクマネジメント活動及び教育・研修等への反映を通じた再発防止に繋げています。環境については、関連法令に基づき、大気、水質、土壌等の汚染防止に努め、また、気候変動、大気汚染、水質汚染、有害物質、廃棄物リサイクル及び土壌・地下水の汚染などに関する種々の環境関連法令及び規制等を遵守した事業活動を行っています。また、国内外での環境法令の厳格化が進む中、法令改正・環境基準の変更への対応のために、適用される法令の改正情報の共有、研修・教育等の徹底のほか、設備強化も含めリスクの回避・低減・移転を全社グループで進める等の施策を推進しています。
Q:Quality(「顧客」に提供する製品・サービス等の品質)については、2017年11月以降の一連の品質問題の再発防止を徹底するため、品質問題に係る再発防止策の継続実施、品質振り返りの日の設定等による品質問題の風化防止、及び「攻めの品質」による規格外品を発生させない仕組みづくりを行っています。
(7)持続可能なサプライチェーンマネジメントの強化 (発生可能性:中、影響度:大)
近年は、パンデミックや自然災害を含め、世界規模でサプライチェーンの混乱・途絶を招く事象が頻発しています。また、国家による希少鉱物への各種規制が、サプライチェーンを脅かすリスクとして懸念されています。銅製錬の主原料である銅精鉱は地球上での産出地域が限られており、近年では、資源保有国における自国資源保護の政策や環境意識の高まりによる開発反対運動等が増加しています。新規に開発される銅鉱山は高所や深部での採掘の必要性が高まり、品位も低下し、不純物も増加しています。そのため、クリーンな銅精鉱の安定した調達ができなければ、銅製錬所の操業に大きな支障をきたすことにつながりかねません。
さらに、資源循環の重要性が高まっており、特に、銅・金・銀・白金・パラジウムなどの有価金属を高濃度に含有するE-Scrap(各種電子機器類の廃基板)をはじめとしたリサイクル原料の集荷についても競争激化が見込まれます。当社は、独自の銅製錬プロセス「三菱連続製銅法」の技術的な優位性と高度な操業ノウハウを有し、グローバルなE-Scrap集荷体制を構築するとともに処理能力の強化を進めていますが、E-Scrapの安定した調達基盤の強化ができなければ、中経2030で掲げている資源循環の拡大が停滞する恐れがあります。製錬マージンであるTC/RCが足もとで大きく低下し、製錬事業の収益性悪化が見込まれるなかで、リサイクル原料を中心とした製錬ビジネスへのシフトや資源循環ループの早期構築を実現することは、当社グループの収益性向上にもつながります。
当社グループにおけるクリーンな銅精鉱の安定調達に向けては、30%の権益を保有するマントベルデ銅鉱山が2024年に硫化鉱の商業生産を開始したほか、20%の権益を保有するサフラナル銅鉱山は投資判断に向けた調査・分析等が進行しています。さらに、次の新規投資候補として、2023年4月にWestern Copper and Gold Corporation社への資本参加を通じてカジノ銅鉱山プロジェクトに参画しています。
また、E-Scrapビジネスの拡大を目指し、2023年3月に米国インディアナ州において新規リサイクルプラントの建設を予定している英国Exurban社へ出資しました。同社は、E-Scrapをはじめとするリサイクル原料に特化した世界初の廃棄物ゼロのリサイクルプラントの実現に取り組んでいます。これを足掛かりに米国における金属資源循環事業拡大の機会を創出し、将来的にはアジア・欧州など世界に向けた拡大も目指します。
グローバル化による経済発展の一方で、サプライチェーンが複雑化しており、調達先において、劣悪な労働環境や児童労働、強制的な立ち退きなどの人権を侵害するような行為が行われていることが把握できない可能性もあります。また、国際連合人権理事会の「ビジネスと人権に関する指導原則」や英国の現代奴隷法など、欧州各国でも人権デューデリジェンスを義務付ける法制化が進むなど、企業は人権に関するリスクマネジメントや取り組みを求められており、人権リスクは非常に重要な課題となっています。
当社グループは、原材料調達から素材・製品の開発、生産、流通、消費、廃棄そして再資源化を含むすべての事業活動領域において、当社グループのビジネスが直接または間接的に人権に影響を及ぼす可能性があることを理解し、当社グループの「人権方針」「調達方針」等の実効性確保に向けた啓発活動、デューデリジェンス、救済措置の確保等の多層的な取り組みの展開や責任ある鉱物調達の認証維持(金、銀、錫、タングステン)や実践(銅、鉛)等、サプライチェーンでの人権尊重の取り組みを進めています。
加えて、予測不可能なリスクを伴うパンデミックや自然災害に対しても、オールハザード型BCPの整備等、事前の備えを進めています。
(8)DXの深化 (発生可能性:中、影響度:大)
IT、通信、エネルギーなどの分野で大きく技術が発達し、世界規模での経済環境は大きく変化し、また、デジタル化の急速な進展により、社会が大きく変わっています。このような中で事業活動を行い、企業価値を向上するにはデジタル技術の活用が必須となっています。アナログ業務をIT化するだけでなく、ビジネス変革につなげることができなければ、企業としての競争力が損なわれる可能性があります。
当社グループは、グローバル競争に勝ち抜くための基盤づくりとして、DX戦略(MMDX)に取り組んでおり、データとデジタル技術の活用を通じたビジネス付加価値向上、オペレーション競争力向上、経営スピード向上の3本柱を強力に推進しています。
(9)価値創造の追求 (発生可能性:中、影響度:大)
持続的な企業価値向上にむけた競争力を高めるためには、コスト削減や人件費削減などによる一時的な利益率の向上ではなく、長期目線で競争力のある事業に経営資源を集中させることや技術革新による事業・製品を生み出していくことが必要となります。中長期的な成長投資を含む価値創造の追求を推進していかなければ、企業としての競争力が損なわれる可能性があります。
当社グループは価値創造の追求に向け、収益に結び付く競争優位性を構築するべく、ものづくり力、マーケティング力と販売力を強化することで、厳しい外部環境の中においても収益を上げられるように取り組んでいます。また、社外リソースを活用した事業開発の加速、M&Aや出資等の投融資戦略を組み合わせる等、新規事業のアイデアをより早く確実に実現するための施策を展開しています。
(10)地政学、地経学リスク (発生可能性:高、影響度:大)
当社グループは、海外32の国・地域に生産及び販売拠点等を有し、海外事業は当社グループの事業成長の重要な基盤と位置付けています。
当社グループが進出する国、地域等において、政情不安、国家間の紛争や一方的な侵攻、政変等の地政学リスクが顕在化した場合、当社グループの事業活動に支障が生じる可能性があります。
また、上記リスクのほか、グローバルな事業展開に関するリスクとして、各国・地域の経済情勢、予期しない政策や規制、取引先の事業戦略や商品展開の変更等も想定されます。
これらのリスクに対しては、常に情勢を注視・モニタリングし、事業戦略、海外投資等の見直しを行います。また、現地拠点からの情報共有や各事業間の連携により、これら情勢の変化に適切に対応しています。さらに、海外における法的規制等個別のカントリーリスクに関する情報収集とグループ内の共有、周知に努めています。そのうえで、従来からのリスク低減回避策やBCPを策定し、定期的に見直していくこととしています。
特に、金属事業においては、銅生産国における国家や地方政府による資源事業への介入、銅精鉱の世界的な需給バランスの変動、銅精鉱の品位低下等、当社グループの管理が及ばない事象による影響を受けるリスクがあります。これらに対しては、持続可能な原料調達のポートフォリオの形成の一環として、銅精鉱買鉱先の国・地域の分散、効果的な優良鉱山プロジェクトへの投資を推進しつつ、一方でE-Scrap(各種電子機器類の廃基板)をはじめとするリサイクル原料を積極的に利用することで、原料を安定的に確保しています。
(11)財務リスク (発生可能性:中、影響度:大)
1)有利子負債
当社グループの有利子負債(短期借入金、コマーシャル・ペーパー、社債、長期借入金の合計額。注記なき場合は以下同様)は、2025年3月期においては5,930億円、総資産に対する割合は25.0%となっています。棚卸資産圧縮、資産売却等により財務体質改善に努めていますが、今後の金融情勢の変化により資金調達コストが上昇した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
このため、有利子負債残高及びネットD/Eレシオを適切な水準に維持し、多様な資金調達方法の確保、適時適切な資金調達を実施し、調達コストの低減に努めています。また、グループ各社における余剰資金の一元管理を図るためのキャッシュマネジメントシステムの導入等により、資金効率の向上に努めています。
2)保有資産の時価の変動
当社グループが保有する有価証券、土地、その他資産の時価の変動等が、その業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
このため、有価証券に関しては、定期的に時価や発行体の財務状況等を把握し、発行体との関係を勘案して保有状況を継続的に見直しています。また、固定資産の減損に関しては、遊休地の売却を進めるとともに、事業用資産については、適宜不動産鑑定を取得するなどし、減損の兆候の有無について確認しています。
3)金属価格上昇による運転資本増加及び資本効率悪化への対応
銅をはじめとした金属価格の上昇は、鉱山配当の増加等の恩恵につながる一方で当社グループの運転資本の増加及び資本効率の悪化につながる可能性があります。
このため、棚卸資産の圧縮等による資本効率の向上に取り組んでいます。
4)退職給付費用及び債務
従業員の退職給付費用及び債務は主に数理計算上で設定される前提条件に基づき算出しています。これらの前提条件は、従業員の平均残存勤務期間や日本国債の長期利回り、更に信託拠出株式を含む年金資産運用状況を勘案したものですが、割引率の低下や年金資産運用によって発生した損失が、将来の当社グループの費用及び計上される債務に影響を及ぼす可能性があります。
このため、確定給付型と確定拠出型を組み合わせた退職給付制度の導入や、年金資産の運用において安全性と収益性を考慮した適切な投資配分などを行っています。
1.経営成績等の状況の概要
(1) 経営成績
当連結会計年度における世界経済は、米国や欧州等において政策金利が引き下げられるなかで、米国では景気の持ち直しが続いたものの、中国や欧州では景気回復に足踏みがみられました。
日本経済は、物価が上昇するなかで、個人消費の持ち直し等に足踏みがみられましたが、景気は緩やかな回復基調で推移しました。
当社グループを取り巻く事業環境につきましては、自動車関連の需要が低調に推移した一方で、半導体関連の需要には回復の兆しがみられました。また、前年度と比べて銅や金の価格上昇や為替水準が円安基調で推移した影響がありました。
このような状況のもと、当社グループは、2023年度から2030年度までを対象とした中期経営戦略に基づき、企業価値の向上に向けた諸施策を実施してまいりました。
この結果、当連結会計年度は、連結売上高は1兆9,620億76百万円(前年度比27.4%増)、連結営業利益は371億18百万円(同59.5%増)となりました。連結経常利益は、鉱山からの受取配当金が減少したものの、持分法による投資利益が増加したことなどから、602億35百万円(同11.3%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、インドネシア・カパー・スメルティング社の持分法適用関連会社化に伴う持分変動利益を計上した一方、減損損失を計上したことなどから、340億76百万円(同14.4%増)となりました。
セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。
なお、前連結会計年度及び当連結会計年度の報告セグメントごとの営業利益は、有限責任監査法人トーマツの監査を受けておりません。
(金属事業)
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(単位:億円) |
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前期 |
当期 |
増減(増減率) |
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売上高 |
10,380 |
14,336 |
3,956 |
(38.1%) |
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営業利益 |
98 |
231 |
132 |
(134.5%) |
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経常利益 |
310 |
411 |
101 |
(32.6%) |
金属事業は、為替が円安基調で推移した影響に加えて、銅や金の価格が大幅に上昇したことなどから、前年度と比べて、売上高及び営業利益は増加しました。経常利益は、鉱山からの受取配当金が減少したものの、営業利益が増加したことに加えて、持分法による投資損益が改善したことなどから、増加しました。
(高機能製品)
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(単位:億円) |
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前期 |
当期 |
増減(増減率) |
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売上高 |
4,887 |
5,103 |
216 |
(4.4%) |
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営業利益 |
40 |
56 |
15 |
(38.0%) |
|
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経常利益 |
18 |
31 |
13 |
(73.6%) |
高機能製品は、銅加工事業において、銅価格及び為替の変動による影響がありました。また、電子材料事業において、半導体関連製品の一部の需要に回復の兆しがみられました。
以上により、前年度と比べて売上高及び営業利益は増加しました。経常利益は営業利益が増加したことなどから、増加しました。
(加工事業)
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(単位:億円) |
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前期 |
当期 |
増減(増減率) |
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売上高 |
1,400 |
1,488 |
87 |
(6.3%) |
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営業利益 |
108 |
88 |
△19 |
(△17.7%) |
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経常利益 |
122 |
85 |
△37 |
(△30.4%) |
加工事業は、主要製品である超硬製品において、為替が円安基調で推移した影響や値上げ効果等により、前年度と比べて売上高は増加したものの、自動車向けの需要が低調であったことや原材料コストの上昇等により、営業利益は減少しました。経常利益は、営業利益が減少したことに加えて、為替差損が発生したことなどから、減少しました。
(再生可能エネルギー事業)
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|
|
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(単位:億円) |
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前期 |
当期 |
増減(増減率) |
|
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|
売上高 |
46 |
83 |
36 |
(79.5%) |
|
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営業利益 |
8 |
23 |
15 |
(182.6%) |
|
|
経常利益 |
8 |
26 |
17 |
(204.3%) |
再生可能エネルギー事業は、2024年4月より安比地熱㈱が連結子会社となったことから、前年度と比べて、売上高及び営業利益は増加しました。経常利益は、営業利益が増加したことに加えて、持分法による投資利益が増加したことから、増加しました。
(その他の事業)
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|
|
|
|
(単位:億円) |
|
|
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前期 |
当期 |
増減(増減率) |
|
|
|
売上高 |
1,606 |
1,576 |
△29 |
(△1.8%) |
|
|
営業利益 |
78 |
54 |
△23 |
(△30.1%) |
|
|
経常利益 |
221 |
185 |
△35 |
(△16.2%) |
その他の事業は、原子力事業からの撤退等により、売上高及び営業利益は減少しました。経常利益は、営業利益が減少したことなどから、減少しました。
最近2連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||
|
売上高(百万円) |
割合(%) |
売上高(百万円) |
割合(%) |
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|
住友商事株式会社 |
229,297 |
14.9 |
428,349 |
21.8 |
(2) キャッシュ・フローの状況
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益及び非資金損益項目である減価償却費の計上、棚卸資産の増加等により、588億円の収入(前期比75億円の収入増加)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資による支出等により、793億円の支出(前期比236億円の支出減少)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払等により132億円の支出(前期比461億円の支出増加)となりました。
以上により、換算差額等による増減を加えた結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、886億円(前期末比425億円の減少)となりました。
(3) 生産、受注及び販売の実績
「(1) 経営成績」において、各事業のセグメント情報に関連付けて記載しております。
2.経営者の視点による財政状態、経営成績等の状況に関する分析・検討内容
当社グループに関する財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容は、原則として連結財務諸表に基づいて分析した内容であります。
本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は有価証券報告書提出日(2025年6月24日)現在において判断したものであります。
(1) 当連結会計年度の経営成績及び財政状態の分析
① 経営成績
当連結会計年度における経営成績の概況については、「1.経営成績等の状況の概要」に記載しております。
② 財政状態
当連結会計年度末の総資産残高は、前期末比 2,077億円(9.6%)増加し、2兆3,753億円となりました。流動資産は、貸付け金地金の増加等により、前期末比 1,812億円(14.1%)増加の 1兆4,643億円となりました。固定資産は、投資有価証券の増加等により、前期末比 255億円(2.9%)増加の 9,101億円となりました。
負債残高は、前期末比 2,000億円(13.5%)増加し、1兆6,820億円となりました。流動負債は、預り金地金の増加等により、前期末比 3,032億円(30.5%)増加の 1兆2,973億円となりました。固定負債は、長期借入金の減少等により、前期末比 1,031億円(21.1%)減少の 3,847億円となりました。なお、借入金に社債、コマーシャル・ペーパーを加えた有利子負債残高については、前期末比 100億円(1.7%)減少の 5,930億円となりました。
純資産残高は、利益剰余金の増加等により、前期末比 76億円(1.1%)増加の 6,932億円となりました。
この結果、連結ベースの自己資本比率は、前期末の30.2%から28.5%となり、期末発行済株式総数に基づく1株当たり純資産額は 5,003.75円から 5,183.34円に増加しました。
(2) 経営成績に重要な影響を与える要因について
「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
(3) 事業戦略と見通し
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
(4) 資本の財源及び流動性の管理方針
当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針とし、内部資金、銀行借入、社債発行等により資金調達を行っております。また、キャッシュマネジメントシステムの導入等によるグループ各社における余剰資金の一元管理を図り、資金効率の向上に努めております。この一環として、第3四半期連結会計期間より、一部の海外子会社を対象としたグローバルキャッシュマネジメントシステム(ノーショナルプーリング)の運用を開始し、グローバルベースでの更なる資金効率向上にも取り組んでおります。なお、当連結会計年度末のノーショナルプーリングシステムにおける預入額275億円を現金及び預金、借入額274億円を短期借入金に含めて表示しております。
当社グループの資金の状況については、「1.経営成績等の状況の概要 (2) キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
(5) 経営者の問題意識と今後の方針について
当社グループの経営陣は、収益力、有利子負債等グループの財政状況を認識し、現在の事業規模及び入手可能な情報に基づき経営資源の最も効率的な運用を行い、企業価値を最大限に高めるべく努めております。
(6) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しておりますが、その作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用等、開示に影響を与える判断と見積りが必要となります。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りとは異なる場合があります。
特に次の会計方針が連結財務諸表作成における見積りの判断に大きな影響を及ぼす事項であると考えております。
① 貸倒引当金、関係会社事業損失引当金の計上
当社グループの保有する債権または関係会社への投資に係る損失が見込まれる場合、その損失に充てる必要額を見積もり、引当金を計上しておりますが、将来、債務者や被出資者の財務状況が悪化した場合、引当金の追加計上等による損失が発生する可能性があります。
② 有価証券の減損処理
当社グループの保有する株式については、市場価格のない株式等以外のもの、市場価格のない株式等ともに、合理的な判断基準を設定の上、減損処理の要否を検討しております。従って、将来、保有する株式の時価や投資先の財務状況が悪化した場合には、有価証券評価損を計上する可能性があります。なお、翌事業年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目につきましては、「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
③ のれんを含む固定資産の減損処理
当社グループは、「固定資産の減損に係る会計基準」(「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書」(企業会計審議会 2002年8月9日))及び「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第6号 2003年10月31日)を適用しております。将来、経済環境の著しい悪化や市場価格の著しい下落等の発生如何によっては、減損損失を計上する可能性があります。なお、翌連結会計年度の連結財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
④ 繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、繰延税金資産の回収可能性を評価するに際して将来の課税所得を合理的に見積もっております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、課税所得がその見積り額を下回る場合、繰延税金資産が取崩され、税金費用が計上される可能性があります。なお、翌連結会計年度の連結財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
なお、当社グループが採用している重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
当連結会計年度において、重要な契約等の決定又は締結等はありません。
当連結会計年度の研究開発活動は、基本的には各事業の基幹となる分野の研究開発を当社単独あるいはグループ会社と連携をとりながら行い、各社固有の事業及びユーザーニーズに応える研究開発についてはそれぞれが単独で行っております。研究開発戦略としては、各セグメントとものづくり・R&D戦略部が協力して、新製品・新技術・新事業創出を通して、持続的な企業価値向上を実現してまいります。その中で、中期経営戦略2030では、未来を見据えた素材・材料開発、事業競争力強化に向けた新製品・新技術の創出、産官学連携による研究開発成果の早期実現を基本方針として、資源循環、脱炭素、半導体関連、モビリティの4つの注力分野を中心に、循環をデザインするサステナブルなマテリアルを提供して行きます。
なお、研究開発費の総額は、
セグメントごとの研究開発活動は、次のとおりであります。
(1)金属事業
金属事業の研究開発は、ディビジョンラボである鉱業技術研究所とグループ会社を含む各拠点との緊密な連携が主体となって、イノベーションセンターから分析技術などの支援を受けつつ、時間価値を重視して取り組んでおります。既存技術の改良とともに新技術の工業化を目指して、資源技術と製錬技術の融合によって環境にやさしいプロセスの研究開発を行っており、主な内容は次の通りであります。
・鉱山投資案件参画機会拡大のための有価金属の副産回収をはじめとする技術開発
・製錬・リサイクルプロセスにおけるマテリアルフロー最適化のための各種技術開発
・資源・製錬プロセスの基盤強化のための各種技術開発
・銅資源の循環を増進するための新プロセスの開発
研究開発費の金額は、
(2)高機能製品
銅加工事業の研究開発は、当社のイノベーションセンター及び銅加工事業部技術開発部銅加工開発センターを中心として、堺工場や若松製作所、三宝製作所と連携のもと、基盤技術の強化や製造プロセスの改善、新規銅合金の開発等をテーマに研究開発を行っており、主な内容は次のとおりであります。
・端子コネクター用銅合金および高性能無酸素銅の開発と量産化
・各種シミュレーション技術の開発と応用(鋳造/加工/組織制御)
・環境調和型新合金の開発と量産化
・ROX素材を生かしたプロセスと商品開発
(※ROX:SCR法により製造される無酸素銅荒引銅線)
・リサイクル技術の確立
・高機能めっきの開発
電子材料事業の研究開発は、当社のイノベーションセンター、半導体新事業開発センター、三田工場、セラミックス工場、三菱電線工業株式会社、三菱マテリアル電子化成株式会社において機能材料、電子デバイス、シール、化成品各分野の開発を行っており、主な内容は次のとおりであります。
・自動車及び次世代自動車向け電子材料部材・部品の開発
・エレクトロニクス向け電子材料部材・部品の開発
・半導体向け電子材料部材・部品の開発
研究開発費の金額は、
(3)加工事業
当社のイノベーションセンター、筑波製作所、岐阜製作所、明石製作所、及びグループ会社である日本新金属株式会社、MMCリョウテック株式会社、株式会社MOLDINOを中心に研究開発を行っており、主な内容は次のとおりであります。
・工具用基材の超硬合金・サーメット・CBN焼結体等と工具用硬質皮膜の材料・技術開発
・刃先交換式切削工具、超硬ドリル・エンドミル工具の設計および開発
・ヘリカルブローチ、微細加工用工具の開発、IT市場向け超精密耐摩耗工具、鉱山・都市開発工具の開発
・超硬工具の主原料であるタングステンカーバイド粉の開発
・廃超硬工具スクラップからタングステンを回収・分離するリサイクル技術の研究開発
研究開発費の金額は、
(4)再生可能エネルギー事業
当社の再生可能エネルギー事業においては、特に記載すべき事項はございません。
(5)その他の事業
また、各セグメントにおける研究開発以外に、ものづくり・R&D戦略部は、当社グループの事業競争力強化・新事業創出のため、顧客から信頼される研究開発から量産化(事業化)まで、完結できる組織を目指しています。その研究開発に取り組むイノベーションセンターでは、4つの注力分野を中心に、当社Gの事業開発へ貢献するプロジェクトテーマを推進しています。また、それらを支える材料、プロセス、コンピュータ解析、分析評価、生産技術、ものづくり、システムまでの基盤技術強化・革新を図っています。主なテーマは以下のとおりであります。
・xEV用全固体電池向け材料の製造技術
・半導体関連用途の柔らかい伝熱パテ製品
・耐熱性と柔軟性を併せ持つ金属ゴム材料
・耐火プラスチック製品
研究開発費の金額は、