第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 

(1) 住友の事業精神

 当社グループは430余年にわたり「ものづくり」の会社として必要とされる製品を安定的にお客様に供給することを社会的責務とし、時代の変化に臨機応変に対応しながら事業を継続してきました。こうした思想、理念は「住友の事業精神」として創業から長きにわたり受け継いできました。当社グループは、この先人達が築き上げてきた「住友の事業精神」の持つ価値観、倫理観の重要性を今一度十分に認識し、当社グループの事業と事業に対する社会からの信頼を確固たるものにするべく、これからも努力を重ねてまいります。

 

第1条

わが住友の営業は信用を重んじ、確実を旨とし、もってその鞏固(きょうこ)隆盛を期すべし

第2条

わが住友の営業は時勢の変遷理財の得失を計り、弛張(しちょう)興廃することあるべしといえども、いやしくも浮利に趨(はし)り軽進すべからず

(1928年 住友合資会社社則「営業の要旨」より抜粋)

 

(2) 経営理念と経営ビジョン

 当社グループは、住友の事業精神に基づき、当社が社会的な使命と責任を果たしていく指針として、次のとおりグループ経営理念とグループ経営ビジョンを定め、事業を進めています。

 

「SMMグループ経営理念」

・住友の事業精神に基づき、地球および社会との共存を図り、健全な企業活動を通じて社会への貢献とステーク

 ホルダーへの責任を果たし、より信頼される企業をめざします

・人間尊重を基本とし、その尊厳と価値を認め、明るく活力ある企業をめざします

 

「SMMグループ経営ビジョン」

・技術力を高め、ものづくり企業としての社会的な使命と責任を果たします

・コンプライアンス、環境保全および安全確保を基本としたグローバルでの企業活動により、資源を確保し、

 非鉄金属、機能性材料などの高品質な材料を提供し、企業価値の最大化をめざします

 

(3) 長期ビジョン

 当社グループは、上記の経営理念や経営ビジョンを受け、その到達すべき目標として長期ビジョン「世界の非鉄リーダー」とそのターゲットを定めています。当社グループは、経営理念や経営ビジョンを基盤とし、資源を確保し、非鉄金属や電池・機能性材料など高品質な商品の提供を通じて、成長性と持続性を拡大させ、当社の企業価値を高めていきます。

 

「世界の非鉄リーダー」とは

・資源権益やメタル生産量において、グローバルでの存在感(=世界Top5に入るメタル)がある

・資源メジャーでも容易に模倣できない、卓越した技術や独自のビジネスモデルを有している

・持続的成長を実現し、安定して一定規模の利益をあげている

・SDGs等の社会課題に積極的に取り組んでいる

・従業員がいきいきと働いている

 

長期ビジョンのターゲット

・ニッケル:生産量15万トン/年

・   銅:権益分生産量30万トン/年

・   金:優良権益獲得による鉱山オペレーションへの新規参画

・材料事業:ポートフォリオ経営による税引前当期利益250億円/年の実現

・  利益:親会社の所有者に帰属する当期利益 1,500億円/年

 

 

(4) 2030年のありたい姿

 当社グループは、経営理念や経営ビジョンを基盤とし、資源の確保、非鉄金属や電池・機能性材料など高品質な材料の提供を通じ、成長性と持続性を拡大させ、当社の企業価値を高め、長期ビジョンである「世界の非鉄リーダー」を実現していきます。また、これは持続可能な社会形成に貢献する取り組みであり、その実現のためのマイルストーンとして「2030年のありたい姿」を策定しました。

 策定にあたり、私たちが2030年に向けて達成すべき取り組みを11個の「重要課題」として設定しました。持続可能な開発目標(以下、「SDGs」という。)との関連については、それぞれに結びつきの強いSDGsを「成長性」、「持続性」の観点から整理し、各課題に共通する当社グループのアプローチであること、当社経営ビジョンに直結することから、「つくる責任 つかう責任」を最重要の課題と定めています。

 なお、11個の「重要課題」の詳細については、「2.サステナビリティに関する考え方及び取組」の(2) 戦略を参照ください。

 

(5) 2021年中期経営計画

 当社グループは、長期ビジョンとターゲットの達成に向け中期経営計画を3年ごとに策定しています。2022年2月に2022年度から2024年度を対象とする「2021年中期経営計画」(以下、「21中計」という。)を公表し、企業価値の一層の向上と新たな成長への挑戦を進めています。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。

 

①2018年中期経営計画の総括

 2019年度からの3年間を対象期間とした2018年中期経営計画(以下、「18中計」という。)は2021年度をもって終了しましたが、「18中計」の戦略遂行は新型コロナウイルス感染症の影響を色濃く受けたものとなりました。

 「18中計」で長期的な成長戦略の核となる3大プロジェクトとして掲げていたケブラダ・ブランカ2プロジェクトは、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、一時的な建設中断による稼働時期の遅れと建設コストの上昇が発生しました。また、ポマラプロジェクトは許認可の取得に時間を要し、その結果、プロジェクト推進に関する時間軸についてビジネスパートナーと相違が生じたため、「18中計」終了後の2022年4月に事業化検討を中止しました。一方、車載用二次電池正極材事業の拡大については、月産5,000トンの生産能力を2,000トン増強し、月産7,000トンとする設備投資を決定し建設に着手しました。長期ビジョンや「2030年のありたい姿」の実現に向けて、今後も3事業連携を基軸に、着実に成長戦略を推し進めてまいります。

 

②当社を取り巻く経営環境

 「21中計」の策定に際して考慮すべき中期的な経営環境として以下を挙げております。

「当社をとりまく経営環境」

〇非鉄金属需給は一時的に緩む見通し

・銅・ニッケルともに供給増で一時的に需給は緩む見込み

・中長期的には電気自動車(EV)・再生可能エネルギー等を中心に需要増を見込む

〇資源開発・製錬操業をめぐる事業環境はより厳しく

・資源ナショナリズムの高揚

・鉱山の高地・奥地・深部・低品位化等 開発難度の上昇

・地域社会との良好な関係性構築の難度上昇

・環境規制強化

・投資及び電力・資材代などのランニングコスト上昇

〇“素材”の活躍の場は拡大

・エネルギー供給網の構築やEV化により、銅やニッケルの需要増加

・カーボンニュートラル(CN)やデジタルトランスフォーメーション(DX)の加速により

各分野での技術革新・市場拡大が促され、 材料事業にとって事業拡大の好機

〇加速するCN対応

・2050年温室効果ガス(GHG)排出量ネットゼロが共通認識に

〇DXへの対応

・デジタル化、IT化への対応を今後加速化

〇人材確保の難化

・働き方の多様化と従業員の意識変化(人材の流動化)

 

 

a)「21中計」の基本戦略

 「21中計」では、『変革への新たな挑戦』をテーマに、長期ビジョン・ターゲットの実現に向けて引き続き邁進するとともにCNに向けた動きや、DX化などの社会環境変化に的確に対応するべく、チャレンジを続けていく当社の姿勢・戦略を『4つの挑戦』として以下のとおりまとめました。

 

挑戦1:企業価値拡大-大型プロジェクトの推進

・電池材料(正極材)の生産能力増強

・ケブラダ・ブランカ2銅鉱山開発プロジェクト推進(チリ)

・コテ金開発プロジェクト推進(カナダ)

 

挑戦2:コアビジネスの持続可能性向上

・3事業連携(ニッケル-電池)のバリューチェーン強化

・菱刈鉱山のサステナビリティ重視の操業への転換

・銅製錬事業の競争力強化

・機能性材料事業の拡大戦略

 

挑戦3:社会環境変化への適応

・温室効果ガス排出量削減

・カーボンニュートラルに貢献する製品・新技術・プロセスの開発推進

・DXへの対応

・人材確保/育成/活用への取り組み

 

挑戦4:経営基盤強化

・安全への取り組みの強化

・サステナビリティ施策の推進加速

・コーポレートガバナンス

 

「21中計」の初年度となった本年度は、世界的なインフレーションと各国による政策金利の引き上げ、金融不安と急激な為替変動、終結の見えないロシアによるウクライナ侵攻などの地政学的緊張の高まりなど、当社をとりまく経営環境は不透明さを増しています。当社は世界情勢や経営環境の変化を見極め、また社会的要請にしっかりと応えながら、着実に「21中計」の基本戦略を進めてまいります。

 

b)目標とする経営指標

「世界の非鉄リーダー」実現に向けては、健全な財務体質に裏打ちされた大型プロジェクトやM&Aへの機動的な対応が欠かせません。当社グループは「21中計」において、財務体質の財務健全性を示す指標として連結自己資本比率50%超の維持を掲げております。

 

(6) その他

 ㈱ジェー・シー・オーは、施設の維持管理、低レベル放射性廃棄物の保管管理、施設の廃止措置に向けた準備のため、施設の解体や除染等を推進するための諸施策を進めております。当社は、同社がこれらに万全の態勢で取り組むことができるよう引き続き支援を行ってまいります。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組の状況は、次のとおりです。

 

(1) ガバナンス及びリスク管理

①サステナビリティ推進体制

 当社グループは、サステナビリティ委員会を中心にサステナビリティ活動を推進しています。サステナビリティ委員会は、社長を委員長とし、副委員長にサステナビリティ担当役員(経営企画部所管執行役員)、委員として事業本部長、事業室長、技術本部長、技術本部技術企画部長、工務本部長、工務本部生産技術部長、本社部室長が参加し、サステナビリティ推進部・経営企画部が事務局を務め、年2回以上開催しています。

 本委員会における主な審議項目は以下のとおりであり、サステナビリティ活動の進捗・各パフォーマンスの評価・次年度の活動計画のレビュー・見直しが行われ、PDCAを回しています。

・サステナビリティ方針、重要課題、「2030年のありたい姿」の改廃案の審議

・サステナビリティ活動の年次計画など、サステナビリティ活動に関する重要事項及び「2030年のありたい姿」への

 達成度を評価するための指標の審議・決定

・サステナビリティ活動に関する定期的な評価及び是正措置の発動

・サステナビリティ活動推進に関する情報提供、情報交換、重要な施策の説明、認識の共有化

・その他サステナビリティ活動に関する重要テーマの審議

 なお、サステナビリティ活動の統制として、取締役会において、サステナビリティ活動について定期的に又は都度、審議を行っています。

 

②サステナビリティ個別課題の検討組織

 サステナビリティ委員会の下部組織として、サステナビリティ7部会、マネジメントシステム4分科会、企業価値向上戦略会議、DX推進委員会、カーボンニュートラル推進委員会があります。これらの各組織は、該当する所管部門が事務局となり、重要課題ごとに定められたKPI及びテーマに沿った年間目標と計画を立てて実行しています。

・サステナビリティ7部会

 資源有効活用部会、環境保全部会、地域社会貢献部会、ダイバーシティ部会、人権部会、安全・衛生部会、コミュニケーション部会のサステナビリティ7部会は、「2030年のありたい姿」の推進、「2030年のありたい姿」の検討・制定など、事業部門及びコーポレート部門からメンバーが参加する社内横断的組織を構成しており、事業と一体となったサステナビリティ活動を推進しています。

・マネジメントシステム4分科会

 当社グループの主要なマネジメントシステムを組織横断的に推進し、経営基盤を強化する役割として、リスクマネジメント分科会、コンプライアンス分科会、品質分科会、「責任ある鉱物調達」分科会があります。関連する事業部門及びコーポレート部門長が参加し、それぞれのテーマに則って方針を策定し、活動計画の進捗を確認しています。

・企業価値向上戦略会議

 当社グループ事業の持続的成長を実現し企業価値を向上させることを目的として、企業価値向上戦略会議を設けています。この目的の達成をより確実にするために、下部組織として非鉄リーダー実現部会、全社人材部会、式年改革部会を設置しています。議長を経営企画部所管執行役員とし、各事業本部長及び関係部門長を構成員として、年2回以上の定例会議を開催しています。また、成長戦略を持続的に実現するため、大型プロジェクトのパイプライン管理を行い、企業価値向上の実現に向けて発現した課題に柔軟に対応し環境適応を図っています。大型プロジェクトについては進捗を確認し、その場で適切な助言・指示を行っています。

・DX推進委員会

 当社グループが目指すべきDXの将来像を明確にして、DXの全社的な推進による経営への寄与を最大化することを目的として、DX推進委員会を設置しています。DX推進担当役員(技術本部所管執行役員)を委員長とし、各事業本部長及び関係部門長を委員として、年2回以上の定例委員会を開催しています。

・カーボンニュートラル推進委員会

 当社グループが目指すべきカーボンニュートラル実現に向けた方針、道筋を明確にして、より迅速により強力に全社的に推進することを目的としてカーボンニュートラル推進委員会を設置しています。当社グループ全体として、各事業本部及びカーボンニュートラルに関係する組織が一体となって活動していくことを基本とし、すべての関係者が役割に応じて積極的に取り組むことを目指しています。委員長はカーボンニュートラル推進担当役員(技術本部所管執行役員)、副委員長として安全環境部所管執行役員、委員として各事業本部長及び関係部門長が担当し、定例委員会を開催しています。

 

 

 

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③リスク管理

 当社グループは、次の「④重要課題の特定プロセス」で示す、サステナビリティに関するリスク及び機会を識別し、評価しました。この特定された重要課題は、先の②「サステナビリティ個別課題の検討組織」に従って管理しています。

 

④重要課題の特定プロセス

a)「サステナビリティ課題」の抽出

 国際金属・鉱業評議会(ICMM)の「10の基本原則」やGlobal Reporting Initiative(GRI)スタンダードなどの国際的なガイドラインや、OECDなどが予想する2030年の状況などを整理し、89の「サステナビリティ課題」を抽出しました。

b)「サステナビリティ課題」重要性評価による重要課題案の特定

 抽出された89の課題について、以下の3つの視点に基づき社会的側面、事業側面の2軸にて評価を実施、両側面に共通して重要度が高い11の課題を重要課題案として特定しました。この評価、特定はサステナビリティ7部会、事業部門、当社グループ若手従業員、サステナビリティに関する有識者による議論を経て行われました。

・社会に与えるインパクトの程度

・積極的に取り組まないことで増大するリスク

・積極的に取り組むことで得られる機会

c)KPI案の作成

 特定された重要課題ごとの「2030年のありたい姿」及びKPI案をサステナビリティ7部会にて検討しました。

d)経営層による議論と取締役会決議

 重要課題、「2030年のありたい姿」、KPIの各案について、全執行役員及び監査役により議論を実施し、最終案についてサステナビリティ委員会にて承認を経て、取締役会で決議されました。

 

 

重要課題

検討組織

非鉄金属資源の有効活用

資源有効活用部会

気候変動

カーボンニュートラル推進委員会

重大環境事故

環境保全部会

生物多様性

環境保全部会

従業員の安全・衛生

安全・衛生部会

多様な人材

ダイバーシティ部会

人材の育成と活躍

ダイバーシティ部会

ステークホルダーとの対話

コミュニケーション部会

地域社会との共存共栄

地域社会貢献部会

先住民の権利

人権部会

サプライチェーンにおける人権

人権部会

 

(2) 戦略

 特定された重要課題ごとの「2030年のありたい姿」実現にむけ、以下の方針及び考え方で取り組みを進めています。

①非鉄金属資源の有効活用

a)2030年のありたい姿

高い技術力で資源を生み出す企業

 1.非鉄金属を安定して社会へ供給する企業

 2.産学官と連携したオープンな技術開発で、不純物を有効活用して社会に貢献する企業

 3.非鉄金属の循環システムの構築と維持に貢献する企業

 4.社会課題の解決に貢献する高機能材料の開発・供給を行う企業

b)方針・考え方

 持続可能な社会に貢献するため、「ものづくり力」を基本に、社外との連携も含めた研究開発を行い、製品を作る技術力を向上させ、非鉄金属資源の安定供給・未利用資源の有用化・難処理資源からの回収・リサイクル技術の活用などに取り組みます。

 

②気候変動

a)2030年のありたい姿

 GHG排出量ゼロに向け、排出量削減とともに低炭素負荷製品の安定供給を含めた気候変動対策に積極的に取り組んでいる企業

b)方針・考え方

 当社グループはGHGを多量に排出する企業の一つであるため、操業改善や技術イノベーションによりGHG排出量や排出原単位を削減するとともに、電池材料や近赤外線吸収材料といった低炭素負荷製品を開発し事業を拡大することにより地球全体でのGHG排出量を削減し、気候変動抑制に貢献していきます。

c)TCFDへの取り組み

 当社は、TCFD(Task Force on Climate related Financial Disclosures 気候関連財務情報開示タスクフォース)へ賛同しています。当社の「気候変動シナリオ分析」においては、①キードライバー選定、②シナリオを「1.5」と「4」に設定、③ビジネスインパクトの検討、④リスクと機会の評価・特定、⑤アプローチの検討の観点で取り進めています。

 

 

シナ

リオ

区分

ドライバー

想定状況(2050年)

ビジネスインパクト

リスクと

機会

(中長期)

1.5℃

気候変動政策

カーボンプライシング(炭素税、排出量取引など)

・全体的な金額の上昇(国や地域による)

税負担などの増加

リスク:大

低炭素化設備投資・研究開発費の増加

リスク:

短期~長期 大

気候変動政策

自動車規制の強化、LEVs促進政策

・燃費規制強化、移動規制導入

・EVやLEVsへの政策的支援

・内燃車はLEVsに置換

・EVの普及に伴う電池、ニッケル需要の拡大による売上増加

・水素社会、FCVの普及による酸化ニッケル粉、リチウムイオン電池の売上増加

・その他の低炭素負荷製品の売上増加

機会:大

社会・

イン

フラ

自動車関連DXの進展、価値観の変化

・自動運転、MaaS、カーシェアリングの普及

・自家用車の減少

技術

水素利用技術、燃料電池

・FCVの普及

・EV、PHEVの普及

気候変動政策

エネルギーの電力へのシフト

・最終エネルギー消費に占める電力比率の増加

・送電線の強化に伴う銅需要の増加(アルミニウムなどとの競合あり)

機会:大

技術

車載用蓄電池の技術シフト

・車載用蓄電池の市場シェアのシフト

・コバルトフリーに伴うニッケル比率の上昇とニッケル売上増加

・次世代電池として当社の技術が活かせる全固体電池が普及

機会:中

・コバルトフリーに伴い鉄、マンガン系電池が普及

・次世代電池として当社の技術が活かせない新しい電池が普及

リスク:中

社会・

イン

フラ

Sustainable Procurement、環境フットプリント、事業の社会的インパクトなどへの関心

・持続可能性に対する意識向上

・ESG投資の主流化

・代替材料やリサイクル金属の利用の可能性拡大

・原料確保の制約、原料コストや製造コストの上昇、自山鉱のメリット拡大

・車載用二次電池のリサイクル事業の拡大

・ESG投資によるファイナンスへの影響

・当社取り組みが不十分と評価される場合のレピュテーションリスク

機会:中

リスク:

中~大

4℃

気温・

降雨

平均気温・海水温・海水面上昇

・海面上昇

・高潮発生頻度の増加

港湾機能の低下や高潮リスクが上昇し、沿岸部の一部の事業場で設備的対策を要する可能性

リスク:大

熱波、洪水、水不足などの異常気象の増加

・大雨、台風の頻度増加

・地域によっては洪水や水不足リスクの増加

一部地域の事業場で洪水や水不足のリスクが増大し、設備的対策を要する可能性

リスク:大

キーサプライヤーの操業低下、調達、出荷ルート途絶による工場操業低下

リスク:大

尾鉱ダム損壊リスクの上昇に伴う設備的対策を要する可能性

リスク:大

 

 

③重大環境事故、④生物多様性

a)2030年のありたい姿

 水資源や生物多様性を大切にして海や陸の豊かさを守っている企業

b)方針・考え方

 重大環境事故は、環境や社会への影響が大きく事業継続の前提となる信頼を失うことにもなりかねません。激甚化する自然災害にも対応できるよう設備や管理の改善を図り、重大環境事故の予防と万一発生した場合の影響緩和に取り組んでいます。また、水資源利用の合理化にも取り組みながら有害物質の大気・水域への排出量低減にも取り組み、生物多様性を大切にする環境保全活動を展開しています。

c)環境マネジメントシステムの運用

 環境リスクや貢献の機会を考慮した上で最高責任者である社長が毎年、方針・目標・方策から構成される「SMMグループ環境目標」を設定しています。この目標をもとに、各事業部門(各事業場、各関係会社)においてISO14001に基づいた環境マネジメントシステムを運用し、取り組みを展開しています。環境マネジメントシステムは、本社、支社、支店や当社グループのすべての製造拠点において認証を取得しています。

 

⑤従業員の安全・衛生

a)2030年のありたい姿

 快適な職場環境、安全化された設備と作業のもと、すべての従業員が、ともに安全を最優先して仕事をしている企業

b)方針・考え方

 当社グループは、協力会社も含めて快適で安全な職場を形成することを目指しています。安全で安心して働ける環境は、従業員と会社の信頼関係向上や従業員のモチベーションにつながる経営の重要な要素の一つです。こうした課題に対し、以前から行ってきた設備安全化対策をさらに進化させて、IoTやAI(人工知能)など先端技術導入も開始しています。

 

⑥多様な人材、⑦人材の育成と活躍

a)2030年のありたい姿

 すべての従業員が活き活きと働く企業

1.従業員一人ひとりの人間性を尊重し、従業員が誇り・やりがい・働く喜びを持てる企業

2.従業員一人ひとりに能力向上の機会を提供し、従業員とともに成長する企業

b)方針・考え方

 当社グループでは、多様な人材及び人材の育成と活躍を重要課題と捉え、「すべての従業員が活き活きと働く企業」を目指しています。当社グループを取り巻く事業環境は大きく変化しており、その変化に対応できる企業として成長戦略を展開し企業価値を高め、確固たる経営基盤が必要です。その中心は人材であり、多様な人材がお互いの考え方を尊重し、同じ目標に向けて最大限の力を発揮できる組織として成長戦略を実現していきます。

 当社グループでは多様な人材が活躍できる組織であるために女性、外国人、障がい者及びキャリア採用者の人数を拡大し、組織を強化していく方針です。

1.女性管理社員(マネージャークラス)

 当社は、「2030年のありたい姿」の実現に向け、女性活躍推進に努めており、管理社員への登用、生産現場や鉱山現場などにおける勤務のほか、国内拠点のみならず海外拠点への駐在等、女性の活躍の場を拡大しております。また、「2030年のありたい姿」では、女性管理社員数を50名、女性従業員比率を20%以上とすることを目標としており、当たり前に女性が活躍する環境づくりを進め、成長戦略を推進するべく中長期的な視点から必要な施策を講じていきます。

2.キャリア採用(中途採用)

 当社は積極的にキャリア採用を推進しており、特定の専門性やスキルを持った人材を確保することに加え、異なる環境で培われた多様な知見や視点が加わることで自由闊達な組織風土の醸成がさらに促進されるよう取り組んでいます。成長戦略に伴う事業拡大に合わせ、2030年度までに積極的にキャリア採用を現状より増加させるべく進めていきます。

3.外国人採用

 国籍を問わない多国籍な人材採用を実施しています。事業領域の拡大、海外新規事業の機会創出に伴い新卒、キャリア採用を問わず、グローバルに活躍できる人材を現状より増加させるべく進めていきます。なお、海外拠点(特に当社がオペレーターシップをもって操業している拠点)では、外国人を当該拠点の中核人材として登用しています。

 

4.障がい者採用

 障がいのある方が誇り・やりがい・働く喜びを持つことができるよう全社を挙げて環境整備に取り組んでいます。具体的な取組みとして、障がいのある学生のインターンシップを毎年継続的に受け入れており、就業体験を通じて職場や仕事の理解を深めることにより、安心して当社に入社する学生を増やすよう努めています。「2030年のありたい姿」では法定雇用率(2.3%)を上回る3%以上とすることを目標としています。

5.健康経営

 従業員の心身の健康を重要な経営基盤であると認識し、健康経営を推進するため、2022年8月に「住友金属鉱山グループ健康経営方針」を制定しました。従業員が心身ともに健康に、それぞれがもっている能力を存分に発揮できる職場環境の整備を進め、人材の確保・育成・活用に取り組みます。

 

⑧ステークホルダーとの対話

a)2030年のありたい姿

 「世界の非鉄リーダー」であると理解され、共感される企業

b)方針・考え方

 多様なステークホルダーに当社グループを等身大に正しく理解いただき、さらに、目指している「世界の非鉄リーダー」として共感されるよう取り組んでいきます。また、当社グループでは、影響を与え、あるいは影響を受けるステークホルダーを「顧客」「株主」「従業員」「地域住民」「債権者」「ビジネスパートナー」「NGO、NPO」及び「行政」と定義し、ステークホルダーごとにあるべき姿の目標を定め、その実現に向けて様々な取り組みを進めています。

 

⑨地域社会との共存共栄

a)2030年のありたい姿

 地域社会の一員として地域の発展に貢献し信頼を得る企業

b)方針・考え方

 当社グループは、事業進出している地域において、コミュニティとの対話をもとに、そこにどのような課題があるのか、その解決にどう貢献できるのかを考えていくことが重要だと捉えています。また、雇用や現地サプライヤーからの調達などにより地域経済の活性化に寄与していくとともに、地震や台風といった大規模災害の現地支援を継続して行っていきます。

 

⑩先住民の権利

a)2030年のありたい姿

 先住民の伝統と文化を理解し尊重する企業

b)方針・考え方

 特に鉱山開発においてはその土地で暮らす先住民の理解を得ながら事業を進めることが重要です。「先住民族の権利に関する国際連合宣言」などの国際スタンダードを参考に地元行政などとも協力しながら、先住民の伝統と文化を理解した上で対話を続けていきます。

 

⑪サプライチェーンにおける人権

a)2030年のありたい姿

 サプライチェーン全体でサステナビリティ調達に取り組んでいる企業

b)方針・考え方

 国際スタンダードに基づく当社グループの「サステナビリティ調達方針」に則り、サプライチェーンにおける「人権・労働」「コンプライアンス」「品質保証」「環境・地域社会」に関するリスクを把握し問題があれば是正していきます。特に鉱物調達においては、当社グループの「責任ある鉱物調達に関する方針」に則り、OECDのガイダンスを尊重し取り組みます。

 

(3) 指標及び目標

①非鉄金属資源の有効活用

指標

目標

銅鉱山プロジェクトの推進

・銅権益生産量30万トン/年の達成と維持に向けJV鉱山の生産体制を強化

・JV鉱山における鉱山周辺及び深部探鉱の強化、選鉱能力の拡張、IoT・AIを活用した操業改善等による着実な銅生産量の達成

・ケブラダ・ブランカ銅鉱山Phase2以降のプロジェクト推進

新規優良銅金資源の獲得

・オペレーターシップを持つ新規鉱山の開発

新技術導入による生産性改善

・菱刈鉱山における坑内外の情報インフラ設備、重機の無人化、リモート化の推進

Ni鉱プロジェクトの推進と生産性の改善

・Ni生産量 15万トン/年

・実収率対2018年度比 +2%

・副産物スカンジウムの回収

・副産物クロマイトの回収

鉱山や製錬工程で発生する不純物を分離、固定、有用化する技術の開発

・不純物を固定する技術開発:プロセスの開発と実証

未利用非鉄金属資源の有用化技術の開発

・既存(海洋資源開発等)・新規の開発プロジェクトへの貢献

難処理資源からの非鉄金属回収

・高不純物塩湖水からのリチウム回収技術と回収ビジネスへの参画

車載二次電池リサイクル技術の実証と事業化

・コバルト回収が可能な車載リチウムイオン電池リサイクル技術実証並びに事業化及び規模拡大

 プレ商業プラントの試運転と操業開始:2024年度

自社の強みを活かし社会に貢献する新製品・新事業の創出

・エネルギー、自動車、情報通信分野での新規機能性材料の研究開発、事業化

自社原料保有による有利・安定調達

・燃料電池用NiOの実証試験を経て事業化

有利な自社ニッケル原料の安定調達による低コスト電池正極材の販売拡大

・拡大する正極材料市場で、世界シェアトップクラスを維持

 

②気候変動

指標

目標

GHG排出量の削減

・GHG総排出量を2013年度以下に抑え、“2050年までにGHG排出量ネットゼロ”に向けた計画を策定し、諸施策を推進する

・GHG排出原単位を2013年度比26%以上削減

・低炭素負荷製品GHG削減貢献量の拡大:60万トン-CO2以上

 

③重大環境事故、④生物多様性

指標

目標

重大環境事故 ゼロ

・リスク・環境マネジメントシステムの活用による改善の推進

・自然危険源の増大に対応した設備やインフラの強化・改善

有害物質排出量低減(対前年)

・水使用の合理化、大気・水域への有害物資の排出量の低減

・計画的植林ほか、多様な環境保全・生物多様性保全活動の推進

 

⑤従業員の安全・衛生

指標

目標

労働災害の発生防止

・重篤災害:ゼロ(国内外、協力会社含む)

・全災害:対前年減少、最終的にゼロを目指す

業務上疾病の発生防止

・健康リスクの高い作業場数:対前年削減

・業務上疾病の発生:ゼロ

 

 

⑥多様な人材、⑦人材の育成と活躍

指標

目標

働き方改革の推進とデジタルテクノロジー等を活用した、多様な人材が活躍できる職場づくり

・従業員意識調査の「経営者・上司のマネジメント」「仕事の魅力」「職場環境」に関する各スコアの向上

・女性管理社員数50人(当社)

・女性従業員比率20%以上(当社)

・総合職外国籍従業員の拡充

・障がい者雇用率3%以上(当社)

・従業員のライフステージに対応した配置と支援

従業員の心身の健康づくりの支援

・長期休業者の減少

・健康診断結果の「有所見者率」50%以下

従業員ニーズ・業務ニーズを考慮した能力向上、機会の多様化

・上司と部下との定期的な対話を通じて、従業員一人ひとりのやる気や可能性を引き出し、部下の成長をさらに促進する「1on1ミーティング」の活用

・役割に応じた人材育成体系の再構築によって、より良い従業員への能力向上機会の提供

・個々人のライフプランや従業員ニーズに合わせた自己啓発機会の提供

 

⑧ステークホルダーとの対話

指標

目標

従業員への当社グループブランドの浸透

・従業員意識調査の改善(会社で働くことに誇りを感じる従業員割合の向上)

「世界の非鉄リーダー」レベルの情報発信及び対話の質と量の確保

・メディア、投資家との対話機会の拡充

・統合報告書の外部評価での高評価獲得

目指している「世界の非鉄リーダー」としての認知・理解の向上及び共感を得ている

・社外機関調査結果の改善(認知度・理解度など)

 

⑨地域社会との共存共栄

指標

目標

従業員参加型の地域支援

・従業員参加プログラムの実施(2023年~)

現地雇用・現地調達

・継続実施と実績把握

次世代育成への支援

・行政や地域団体・NPOなどと連携した次世代育成プログラムの実施(1回/年以上)

・国内奨学金の設立と給付(既存の海外奨学金維持)(2023年~)

障がい者・高齢者への支援

・行政や地域団体・NPOなどと連携した障がい者・高齢者支援プログラムの実施(1回/年以上)

災害時支援

・大規模災害地域への支援

 

⑩先住民の権利

指標

目標

先住民や先住民の伝統と文化の理解

・社内教育を実施したSMMグループ拠点の割合:2023年度末までに100%

先住民の伝統と文化の尊重につながる 取り組みへの支援

・先住民を対象とする奨学金の実施(既存の取り組みの継続実施)

・NGO、学会等が実施する先住民に関連する取り組みへの支援:年1件以上の支援

 

 

⑪サプライチェーンにおける人権

指標

目標

サステナビリティ調達、特に責任ある鉱物調達の推進

1.責任ある鉱物調達

・国際基準に合致した責任ある鉱物調達マネジメントシステムの確立:2021年度末まで

・サプライチェーン上での、児童労働等人権侵害に加担する鉱山及び製錬所ゼロの維持

2.サステナビリティ調達

・「住友金属鉱山 グループサステナビリティ調達方針」を受領し同意した取引先企業:2030年度末までに100%

・国際基準に合致したサステナビリティ調達マネジメントシステムの確立:2024年度末まで

・デュー・ディリジェンスの継続実施

 

 11の重要課題に係る指標及び目標の2021年度実績の詳細は、当社ウェブサイトに掲載している「統合報告書2022」の76~117ページ「2030年のありたい姿(実績と2030年度までの達成基準・行動計画)」をご参照ください。

 

3【事業等のリスク】

(1) リスクマネジメント

①リスクの考え方

 当社グループでは、リスクには目的に対して「好ましいもの」と「好ましくないもの」の両方が有ると捉え、事業及び組織における目的の達成に影響を及ぼし、価値の保護及び創造を不確かにする事象をリスクと定義しています。リスクマネジメントによって「好ましいもの」を最大化するよう目標及び施策などを見直し、「好ましくないもの」を最小化するようプロセスを点検し改善して、「中期経営計画」の達成、さらに「2030年のありたい姿」や「長期ビジョン」の実現をより確実にしています。

 

②リスクマネジメント(RM)の体制・枠組

 1999年に株式会社ジェー・シー・オーが起こした臨界事故を厳粛に受けとめ、社長を最高責任者とするリスクマネジメントシステム(下図参照)によって各種リスクを管理しています。成長戦略・事業戦略の遂行に伴う経営・事業リスクについては、社長をはじめとする執行役員により経営諸会議で議論し、そこで抽出された特に重要なリスクについては取締役会で審議した上で対応方針及び責任部門を定め取り組み、主に産業事故、コンプライアンス違反、品質問題及び環境事故など、当社の経営基盤の安定を損なう個々の拠点に潜在する固有のリスクには拠点長が責任者となって取り組むことにしています。リスクマネジメント方針及び重点施策の全社的取組などリスクマネジメントの推進及び監視を行う機関として「リスクマネジメント分科会」を設置し、当社グループを取り巻くリスク及びその変化に対応する体制を整えています。なお、震災や感染症、社会的に影響が大きい産業事故などの緊急事態に対しては、全社危機管理体制で対処する枠組を整えています。

 

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(2) 事業等のリスク

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものです。

 

①事業環境の変動

a. 非鉄金属価格の変動

 銅、ニッケル、金などの非鉄金属の価格は、ロンドン金属取引所(LME:London Metal Exchange)、その他の国際市場において決定されます(以下、それらの市場において決定された価格を、LME相場等という)。LME相場等は、国際的な需給バランス、為替の状況、政治の状況、投機的取引、さらには代替素材の競争力などの影響を受けて変動し、それらの影響による変動の状況及び期間しだいで、当社グループの経営成績にプラスもしくはマイナスの影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、資源事業及び製錬事業のコスト低減を図るとともに、非鉄金属価格の変動の影響を比較的受けにくい材料事業の収益安定化をめざし、また必要に応じて、非鉄金属価格のリスクヘッジを目的とした商品先物取引、商品オプション取引を利用しています。

 

b. 為替レートの変動

 銅精鉱、ニッケルマットなどの輸入原料だけでなく、非鉄金属地金の国内価格も米ドル建てのLME相場等を基準に決定されることから、当社が製錬事業から得る製錬マージンは実質的に米ドル建てであり、海外への鉱山投資や製品等の輸出から得られる収入も外国通貨建てになります。したがって、為替レートの変動の状況及び期間しだいで、当社グループの経営成績にプラスもしくはマイナスの影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、為替レートの変動に対し、必要に応じて為替予約取引、通貨オプション取引、外国通貨建て口座の活用などにより対応しています。

 

 2023年度の業績予想において、非鉄金属価格及び為替レートの変動が連結税引前利益に与える影響は、以下のとおり試算しております。

変動要素

変動幅

連結税引前利益に与える影響

±100$/t

27億円

ニッケル

±10¢/lb

17億円

±10$/TOZ

2億円

為替レート(米ドル)

±1円/$

14億円

(注)上記の為替レート変動の影響額は国内の製錬収入及び海外換算為替差の合計となります。

 

c. 法規制の変化

 当社グループは、製品の製造拠点及び販売の市場を海外に求め、国際的に事業を展開しています。海外における事業活動については、政情不安、環境・労働・課税・通貨管理・貿易・防諜対策等の法令及び規制の変化、知的財産権等の法的権利の限定的保護あるいは不十分な強制力、外国為替の変動、あるいは資源ナショナリズムを背景とした国有化や当社権益の制約など、個々の国ごとに政治的リスクが存在しており、それらのリスクの顕在化により鉱石の輸出禁止による原料供給障害の発生や工場の操業停止などによる当社の事業運営や収益への影響のみならず、ひいては当該投下資金の回収も達成しえなくなる可能性が考えられます。

 当社グループは、事業のグローバル展開に伴い、カントリーリスクを十分に検討し、投資の意思決定を行っています。また進出後も海外現地パートナーと協力し、進出状況をモニタリングし、変化に応じて適宜対策を講じています。

 

d. 非鉄金属原料及び資機材調達の不安定化

 銅精鉱、ニッケルマットなどの非鉄金属原料には、当社が権益を保有する鉱山からの調達のみならず、当社が権益を保有しない鉱山会社との長期買鉱契約によるものもあります。この長期買鉱契約に基づく毎年の原料購入条件の改定交渉においては、さまざまな市場や操業鉱山の要因により想定した購入条件を確保できるとは限らず、さらには製品価格がLME相場等で決まることから、製品価格に原料購入条件の悪化を転嫁することが難しい場合があります。また、異常気象、大規模災害、供給者の操業上の事故、労働争議、人権侵害及び法令違反など、当社の管理が及ばない事態により原料の供給が停止する可能性があります。これらにより当社グループの工場で操業が停止するなどして、財政状態及び経営成績の悪化につながる可能性もあります。

 これらに対し当社グループは、優良な海外鉱山等への投資を進め、その経営に関与することを通して安定した原料ソース(自山鉱)とコンフリクトフリーの原料の確保を進めています。

 また、資機材の調達においても国際紛争など地政学的リスクの発現や異常気象、大規模災害、供給者の操業上の事故、労働争議、人権侵害及び法令違反など、当社の管理が及ばない事態により製造元の稼働停止やサプライチェーンの途絶など、調達困難及びそれら価格の高騰が生じる可能性があります。

 当社グループは、これら資機材の供給困難や価格高騰に対し、原単位の向上を図りつつ、資材調達部門において複数購買や代替材の検討など行い、変化に応じて適宜対策を講じています。

 

②優良鉱山の減少及び鉱山投資の不確実性増大

 原料の安定確保に向けた鉱山投資を行っていく方針を進めていく中、資源ナショナリズムの高揚や資源メジャーによる寡占化、鉱山開発の難度上昇に伴い優良案件の権益獲得競争が激化するとともに参入コストは増大しています。また、環境行政上の手続き及び地域住民の反対運動、感染症のまん延など様々な事態により生産開始が遅延し、開発費用の負担が増加する可能性もあります。これら鉱山投資の不確実性に起因する追加投資あるいは採鉱コスト上昇の負担が、当社グループの財政状態及び経営成績の悪化につながる可能性があります。

 これらに対し当社グループは、地域社会との共存を中心としたソーシャルライセンスの獲得を重視するとともに地道に探査活動を続け、また新規のプロジェクトにおいては海外各地のビジネスパートナーと連携し、長年にわたる探鉱経験及び鉱山評価ノウハウの蓄積に基づく慎重な採算性判断により厳選した投資を実行、開発の準備段階よりかかる不確実性リスクの軽減・回避に努めています。

 

③市場要求の急速な変化及び新商品開発の長期化

 材料事業が対象とする市場では、顧客要求、利用技術、商品寿命が急速に変化する一方で、新商品の開発が長期化し、多くの資金及び人材投入を要することがあります。また、新商品の開発中あるいは市場投入準備段階で、技術進歩や顧客ニーズの変化により当該商品が陳腐化し、開発資金の回収が計画通りに進まないこともあり、その場合当社グループの財政状態及び経営成績へ影響を及ぼすことが考えられます。

 当社グループでは、顧客との関係を深め、顧客及び市場ニーズを的確に把握し、それに基づく新商品開発を進めるために十分な営業及び開発体制を敷き、影響の軽減を図っています。また国の支援制度の活用や社外との共同開発、産学連携等を通じて、開発を加速させていきます。

 

④製造物責任及び請求訴訟

 製造・販売する製品・サービスにおいて、厳しい品質管理のもと、顧客からの要求事項をクリアした品質の確保に努めていますが、車載製品においては、その欠陥によって搭載されている最終商品のリコールや、それに基づく当社への損害賠償の発生、また製造物賠償責任保険でカバーできない賠償額の負担を求められることで、当社の信頼失墜のみならず巨額の財務負担が生じる可能性があります。

 当社グループでは、顧客の満足を得られる製品・サービスを提供するため、国際標準であるISO9001に基づいた品質マネジメントシステム(QMS)を確立し、品質方針・全社品質目標を定めて、当社グループが求めるQMSのあるべき姿をまとめたSMM品質標準を基準にして改善に取り組んでいます。また、当社グループの品質保証の推進及び品質管理の改善を図るため、品質分科会を運営し、施策の審議と実施状況の確認を行っています。このような組織・仕組みのもとで、当社グループのQMSを有効に機能させ、更なる品質の向上やトレーサビリティの強化に努めています。

 

⑤人材の確保と働き方の多様化

 当社グループは安定操業の継続と新規プロジェクト参入などの事業拡大を進めていくために必要な人材の確保・育成・活用を適宜行っていますが、国内においては少子高齢化により労働人口が減少、また働き方改革の流れの中、それぞれの社員のライフスタイルに見合った働き方の推進、各種ハラスメント防止、従業員のメンタル不調に対する丁寧な対応など、多様な選択肢の用意が十分ではないと、人材不足が顕在化する可能性があります。

 このような社会的な変化に対応するため、当社グループではDXなどの導入により合理化・省力化を進めることで必要とされる労働時間の低減を進めてまいります。また働き方改革や自由闊達な組織風土の再構築などに取り組み、従業員に安全かつ健全な労働機会を設け、人材育成、長期的課題への取り組みを奨励・評価し 、継続的に「挑戦」・「変革」・「成長」ができる企業風土を築き、多様かつ優れた人材の確保・育成と活用を進めていきます。

 

⑥気候変動への社会的責任

 気候変動や地球温暖化の原因とされるGHGの削減を目的とした取組が世界的に進められ、環境対策に必要な設備投資の実施やカーボンフットプリントへの対応、炭素税などの負担を排出責任者として果たしていくことになりますが、脱炭素社会の対応に基づく企業としての社会的責任が今まで以上に高まることが考えられます。

 当社グループは2050年までのGHG排出量ネットゼロの実現に向けて、GXリーグへの参画や生産拠点においてクリーンエネルギーの活用や省エネ設備を導入することでGHG排出量の削減を進めるとともに、カーボンニュートラル社会の実現に資する製品の研究開発などの取組を進めていきます。

 

⑦激甚化する自然災害

 当社グループの製造拠点は、顧客との関係、原料調達上の有利性、グループ内関連事業との連携、経営資源の有効活用などの点を考慮し立地していますが、それら地域での大規模な地震、風水害等不測の災害や派生事故による操業停止や生産性の大幅な低下、生産設備等への多大な損害が発生する可能性があります。

 これら激甚化した自然災害や派生事故に対し当社グループでは、建屋の耐震補強や津波発生時における浸水対策工事等を進めると同時に可能かつ妥当な範囲で保険を付し、二次的な影響を抑えるための体制の整備及び対応を図っています。

 

⑧感染症の流行

 ここ数年、世界的に流行した新型コロナウイルス感染症では操業の停止となるなどの大きな影響はなかったものの、今後新たな感染症の発生・流行により、従業員の感染、急激な需要収縮やサプライチェーンの途絶による操業停止など、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。

 従業員の感染防止を優先し、当社グループとしては業績への影響を最小化するため、原料などの代替調達先の確保などに取り組み、生産縮小・停止による供給障害を極小化させる体制を整えていきます。また取引先や従業員の安全を最優先に、テレワークによる接触機会の低減、フレックスタイムや時差出勤等の通勤手段の柔軟な対応、BCP(Business Continuity Plan)の見直しや訓練実施等の対策を引き続き展開していきます。

 

⑨サイバーセキュリティ

 経営基盤の一部であるITにおいて、内部者の故意、過失による機密情報の流失のほか、テレワーク・クラウド利用等の増加といった環境変化により、第3者による意図的又は無差別な情報システムへの侵入・攻撃などのサイバーセキュリティリスクが増加・増大しており、それらの弊害により、工場の操業や製品品質への影響、さらには社会的な影響が大きい産業事故の発生、またステークホルダーの当社に対する信用が失われる可能性があります。

 これらに対し、当社グループでは、従業員に対する情報セキュリティ教育のほか、利用環境を問わず社内外のシステムを安全に利用できる仕組み(ゼロトラストネットワーク)や高度なセキュリティ機能を持つクラウドサービスへの移行に取り組んでいます。

 

⑩知的財産保護の遅れ又は他社への侵害

 当社グループは、知的財産権の獲得と管理の重要性を認識し、法令に従って取得保全手続きを行っていますが、知的財産権の保全手続きにつきましては必ずしも確実に取得できるものではなく、第三者との係争、第三者による違法な行使などにより当社の研究開発成果の享受が脅かされる可能性が考えられます。

 当社グループでは、知的財産権管理の専門部署を設け、確実な取得及び保全に努めています。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要及び経営者の視点による分析・検討内容

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要及び経営者の視点による分析・検討内容は次のとおりであります。

(注)「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載している金額のうち、「(1) 経営成績等の状況の概要及び経営者の視点による分析・検討内容 ⑤ キャッシュ・フロー」は、消費税等を含んだ金額であります。

 

① 経営成績

(単位:百万円)

 

売上高

税引前当期利益

親会社の所有者に

帰属する当期利益

当連結会計年度

1,422,989

229,910

160,585

前連結会計年度

1,259,091

357,434

281,037

増減

163,898

△127,524

△120,452

増減率(%)

13.0

△35.7

△42.9

 

(年間平均海外相場、年間平均為替相場)

 

単位

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

(△は減少)

$/t

9,691

8,551

△1,140

$/TOZ

1,818.4

1,804.8

△13.6

ニッケル

$/lb

9.35

11.63

2.28

為替(TTM)

円/$

112.39

135.48

23.09

 

 当連結会計年度の世界経済は、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化、世界的なインフレーションと金融引き締め、中国における新型コロナウイルス感染症に対する厳格な防疫措置及び措置解除に伴う一時的な感染急拡大などにより、成長が減速しました。

 為替相場につきましては、日米の金融政策の相違による金利差拡大や日本の貿易赤字拡大などにより、急速に円

安が進行しました。その後、米国における利上げ幅の縮小及び日本における長期金利の変動許容幅拡大による金

利差縮小、欧米の銀行破綻による金融システム不安の高まりなどにより円高傾向となったものの、米国の利上げ継

続見込みなどから当連結会計年度末にかけて再び円安傾向となり、平均為替レートは前期と比べ大幅な円安となりました。

 主要非鉄金属価格につきましては、銅価格は、中国の経済活動の停滞による需要減少への懸念などにより下落

し、その後上昇に転じたものの、平均価格は前連結会計年度を下回りました。ニッケル価格は、前連結会計年度末にかけて上昇した後、景気回復に懸念が生じたことなどにより急落したものの、脱炭素化を背景に電気自動車の需要が堅調であったことなどから一時的に持ち直しました。その後供給増加の見込みなどにより下落傾向に転じたものの、平均価格は前連結会計年度を上回りました。金価格は、米国の相次ぐ政策金利引き上げなどにより下落した後、利上げ幅縮小などにより上昇したものの、平均価格は前連結会計年度を若干下回りました。

 材料事業の関連業界におきましては、電気自動車の需要が増加しており、車載用電池向け部材の需要は堅調に推

移しました。一方、景気減速などに伴い中国をはじめとした世界におけるスマートフォンの需要が減少したことな

どにより、電子部品向け部材の需要は縮小しました。

 このような状況のなか、当連結会計年度の連結売上高は、大幅な円安、ニッケル価格の上昇、車載用電池向け部材の販売が好調なことなどにより、前連結会計年度に比べ1,638億98百万円増加し、1兆4,229億89百万円となりました。

 連結税引前当期利益は、前連結会計年度に計上したシエラゴルダ銅鉱山の全保有持分の譲渡に伴う売却益及び同鉱山に係る持分法による投資利益が当連結会計年度はなかったことなどにより、前連結会計年度に比べ1,275億24百万円減少し、2,299億10百万円となりました。

 親会社の所有者に帰属する当期利益は、連結税引前当期利益が減少したことなどにより、前連結会計年度に比べ1,204億52百万円減少し、1,605億85百万円となりました。

 セグメントの業績は、次のとおりであります。

 

(資源セグメント)

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

増減率(%)

売上高

157,315

172,427

15,112

9.6

セグメント利益

208,548

76,443

△132,105

△63.3

 

 セグメント利益は、為替相場が大幅な円安となったものの、銅価格の下落、菱刈鉱山のサステイナブルな生

産体制への移行に伴う出荷金量の抑制、前連結会計年度に計上したシエラゴルダ銅鉱山に係る全保有持分の譲渡に伴う売却益及び同鉱山に係る持分法による投資利益が当連結会計年度はなかったことなどにより、前連結会計年度を下回りました。

 主要鉱山の概況は以下のとおりであります。

 菱刈鉱山は順調な操業を継続し、販売金量は計画通りの4.4tとなりました。

 モレンシー銅鉱山(米国)の生産量は、新型コロナウイルス感染症対策として実施していたミル(鉱石粉砕

装置)の操業度低下策の終了などにより前連結会計年度を上回り、400千tとなりました(うち非支配持分を除く当社持分は25.0%)。

 セロ・ベルデ銅鉱山(ペルー)の生産量は、給鉱品位の上昇や選鉱場の稼働率上昇などにより前連結会計年度を上回り、442千tとなりました(うち非支配持分を除く当社持分は16.8%)。

 

(製錬セグメント)

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

増減率(%)

売上高

942,341

1,073,038

130,697

13.9

セグメント利益

114,753

117,866

3,113

2.7

 

(当社の主な製品別生産量)

製品

単位

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

(△は減少)

t

418,847

447,163

28,316

kg

16,662

17,869

1,207

電気ニッケル

t

52,450

52,817

367

フェロニッケル

t

12,330

10,143

△2,187

(注)生産量には、受委託分を含めて表示しております。

 

 セグメント利益は、銅価格が下落したものの、大幅な円安やニッケル価格の上昇などにより前連結会計年度を上回りました。

 電気銅の生産量及び販売量はともに前連結会計年度を上回りました。電気ニッケルの生産量及び販売量は原料不足などの影響を被りましたが、年度末にかけ増産を図ったことで前連結会計年度並みとなりました。フェロニッケルの生産量及び販売量は前連結会計年度を下回りました。

 Coral Bay Nickel Corporation(フィリピン)の生産量は前連結会計年度並みとなりました。Taganito HPAL Nickel Corporation(フィリピン)の生産量は、設備トラブルなどによる減産のあった前連結会計年度を上回りました。

 

(材料セグメント)

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

増減率(%)

売上高

277,962

317,425

39,463

14.2

セグメント利益

27,625

17,323

△10,302

△37.3

 

 セグメント利益は、脱炭素化を背景に需要が堅調である車載用電池材料向け部材の販売が好調であったもの

の、中国をはじめとした世界におけるスマートフォンなどの需要減少に伴う電子部品向け部材の減販などの影

響により、前連結会計年度を下回りました。

 

② 経営成績に重要な影響を与える要因について

 主な要因として、資源・製錬セグメントは、非鉄金属価格及び為替レートの変動、材料セグメントは、市場動向の変化が挙げられます。詳細及び他の要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

③ 財政状態

(単位:百万円)

 

前連結会計年度末

当連結会計年度末

増減

資産合計

2,268,756

2,707,899

439,143

負債合計

711,338

918,603

207,265

資本合計

1,557,418

1,789,296

231,878

 

 当連結会計年度末の資産合計は、棚卸資産、有形固定資産、持分法で会計処理されている投資及び非流動資産のその他の金融資産などがそれぞれ増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ増加しました。そのうち、持分法で会計処理されている投資は円安などにより増加したものであり、また、非流動資産のその他の金融資産は主に長期貸付金が増えたことで増加しました。

 負債合計は、営業債務及びその他の債務、流動負債及び非流動負債の社債及び借入金、繰延税金負債等が増加し

たことなどから、前連結会計年度末に比べ増加しました。

 資本合計は、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上により利益剰余金が増加し、その他の資本の構成要素の

うち在外営業活動体の換算差額が円安の影響により増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ増加しました。

 

④ 財務指標

 当連結会計年度は2022年度から2024年度までの3年間を対象とする「21中計」の初年度であります。21中計においては財務体質の健全性を示す指標として連結自己資本比率50%以上の維持、株主還元の指標として連結配当性向原則35%以上といたしました当連結会計年度の連結自己資本比率(親会社所有者帰属持分比率)は、60.3%となり、連結配当性向は35.1%となりました

 

⑤ キャッシュ・フロー

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

営業活動によるキャッシュ・フロー

159,489

120,382

△39,107

投資活動によるキャッシュ・フロー

9,796

△185,503

△195,299

財務活動によるキャッシュ・フロー

△129,618

49,336

178,954

換算差額

15,937

16,815

878

現金及び現金同等物の期首残高

158,373

213,977

55,604

現金及び現金同等物の期末残高

213,977

215,007

1,030

 

 当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、営業債権及びその他の債権が減少したものの、税引前当期利益が減少し、非鉄金属価格の上昇などの影響により棚卸資産が増加したことなどから、前連結会計年度に比べ収入が減少しました。

 投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の払戻による収入が増加したものの、前連結会計年度に計上したシエラゴルダ銅鉱山を譲渡したことによる連結の範囲の変更を伴う子会社持分等の売却による収入が当連結会計年度はなかったこと、有形固定資産の取得による支出や長期貸付けによる支出が増加したことなどから、前連結会計年度は収入だったものの当連結会計年度は支出となりました。

 財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額が増加したものの、短期借入金及び長期借入れによる収入が増加したことなどから、前連結会計年度は支出だったものの当連結会計年度は収入となりました。

 

⑥ 資本の財源及び資金の流動性

a)財務戦略の基本的な考え方

 当社グループでは、減耗する資源を取り扱っており、常に新たな資源権益獲得のための大型開発プロジェクト参画やM&Aに備える必要があります。また、新たな製錬所建設も含め、資源・製錬の開発プロジェクトは、投資を実行してから回収するまでに、比較的長期間を要します。従い一時的な大きなキャッシュ・アウトフローに耐えうる健全な財務体質を維持していくことが重要であり、当社はこのような考え方のもと、具体的には連結自己資本比率を50%超に保つことを財務戦略の基本としております。

 

b)資金調達と流動性マネジメント

 当社は事業活動を支える資金調達に際して、低コストでかつ安定的に資金を確保することを目標として取り組んでいます。資金調達にあたっては、社債等の直接金融と銀行借入等の間接金融のバランスを見極めつつ、その時々のマーケット状況での有利手段を追求しています。資源・製錬事業における海外大型プロジェクトでは、現地のカントリーリスクにさらされることも多く、政府系金融機関による各種支援メニューや複数の金融機関による協調型融資の活用、プロジェクトファイナンスの組成など、その都度最適な資金調達方法を検討しております。

 また、当社はそのような大型プロジェクトや材料事業における戦略的増強対応など将来の投資計画を含めた全体の資金需要に対応しつつ、経営の安定化の観点から一定の手元流動性を維持することも必要であると考えています。

 当社は、手元流動性の水準を考えるにあたり、流動性リスクとして連結売上高1.5ヶ月分と半年以内返済予定の借入金等の合計額を想定し、これに対し、現金・預金及び現金同等物(以下「手元現預金」)及びコマーシャル・ペーパー発行可能枠の未使用額を合わせた金額で賄うことで対応することとしています。また、金融市場の動向によりコマーシャル・ペーパーによる調達が一時的に困難になるリスクも想定し、発行に際してはコミットメントライン契約に基づく借入限度額の範囲内にとどめることを原則としています。

 さらに、手元現預金が中長期にわたり必要額に満たなくなると想定される場合には、社債の発行や金融機関からの借入金等を通じて、必要な現預金残高を確保することを考えております。

 なお、当社は、日本国内の市場において株式会社日本格付研究所(JCR)から「ダブルAマイナス」の長期発行体格付及び「J-ワンプラス」の国内CP格付を取得しており、資金調達にあたっては十分な信用力を保持しております。また、主要な国内金融機関と円貨及び外貨でのコミットメントライン契約を締結しており、金融・資本市場の流動性が逼迫した状況下でも、コミットメントラインを使用することによって十分な流動性を確保することができると考えております。

 

⑦ 重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(1976年大蔵省令第

28号)第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。連結財務諸表の作成にあたり、必要と思われる見積りは合理的な基準に基づいて実施しております。重要な会計方針及び見積りの詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 及び 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりであります。

 

(2) 生産、受注及び販売の実績

① 生産実績及び受注実績

 当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、また連結会社間の取引が複雑で、報告セグメントごとの生産実績及び受注実績を正確に把握することは困難なため、当社の主要な品目等についてのみ「(1) 経営成績等の状況の概要及び経営者の視点による分析・検討内容」において、各報告セグメントの業績に関連付けて記載しております。

 

② 販売実績

 当連結会計年度における販売実績を報告セグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度(百万円)

前連結会計年度比(%)

資源

172,427

9.6

製錬

1,073,038

13.9

材料

317,425

14.2

報告セグメント計

1,562,890

13.4

その他

10,211

3.7

調整額

△150,112

連結財務諸表計上額

1,422,989

13.0

 (注)1.セグメント間の販売実績は、各セグメントに含めて表示しております。

2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

パナソニックホールディングス㈱

193,909

15.4

245,706

17.3

住友電気工業㈱

130,739

10.4

132,700

9.3

 

 

5【経営上の重要な契約等】

(1)モレンシー銅鉱山の共同運営契約

 当社の連結子会社でありますSumitomo Metal Mining Arizona Inc.及びSMM Morenci Inc.は、米国モレンシー銅鉱山を共同保有し、同鉱山の共同運営を行う契約を米国フリーポート・マクモラン社の関係会社と締結しております。これにより、Sumitomo Metal Mining Arizona Inc.は、同鉱山の生産物の権益見合いの15%を、SMM Morenci Inc.は13%を引き取る権利・義務を保有しております。

 

(2)Compania Contractual Minera Candelariaの共同運営契約

 当社の連結子会社でありますSMMA Candelaria Inc.は、チリ共和国Compania Contractual Minera Candelariaの株式の20%を保有し、同社の共同運営を行う契約をカナダ国ルンディン・マイニング社と締結しております。これにより、SMMA Candelaria Inc.は、Compania Contractual Minera Candelariaの生産物の20%を購入する権利・義務を保有しております。

 

(3)Sociedad Minera Cerro Verde S.A.A.の共同運営契約

 当社の連結子会社でありますSMM Cerro Verde Netherlands B.V.は、ペルー共和国のSociedad Minera Cerro Verde S.A.A.の株式の21%を保有し、当社はSociedad Minera Cerro Verde S.A.A.の共同運営を行う契約を、米国フリーポート・マクモラン社及び同社の関係会社並びにペルー共和国ブエナベンチューラ社と締結しております。これにより、当社は、Sociedad Minera Cerro Verde S.A.A.で生産された銅精鉱につき、生産量の21%を購入する権利・義務を保有しております。

 

(4)PT Vale Indonesia Tbkの共同運営契約

 当社は、インドネシア共和国のPT Vale Indonesia Tbkの株式の15%を保有し、同社の共同運営を行う株主間契約を、カナダ国のヴァーレ・カナダ社及びインドネシア国営企業であるPT Indonesia Asahan Aluminium(Persero)と締結しております。またこの3社にPT Vale Indonesia Tbkを加えた4社による生産物を購入する権利・義務に関する契約を締結しております。これにより、当社は、PT Vale Indonesia Tbkのソロワコ鉱山の合意した年間生産量についてその20%を購入する権利・義務を保有しております。

 

(5)Coral Bay Nickel Corporationの共同運営契約

 当社の連結子会社でありますCoral Bay Nickel Corporationは、フィリピン共和国Nickel Asia Corporationより16%の出資を受け、当社は、同社とCoral Bay Nickel Corporationを共同運営する契約を締結しております。これにより、Coral Bay Nickel Corporationは、Nickel Asia Corporationの子会社であるリオツバ・ニッケル・マイニング社が操業するリオツバ鉱山のニッケル鉱のうち、HPAL法に適した鉱石を全量購入する権利を保有し、当社はCoral Bay Nickel Corporationの生産物を全量購入する権利・義務を保有しております。

 

(6)Taganito HPAL Nickel Corporationの共同運営契約

 当社の連結子会社でありますTaganito HPAL Nickel Corporationは、三井物産㈱及びNickel Asia Corporationより合計25%の出資を受け、当社は、同二社とTaganito HPAL Nickel Corporationを共同運営する契約を締結しております。これにより、Taganito HPAL Nickel Corporationは、Nickel Asia Corporationの子会社であるタガニート・マイニング社が操業するタガニート鉱山のニッケル鉱のうち、HPAL法に適した鉱石を全量購入する権利を保有し、当社はTaganito HPAL Nickel Corporationの生産物を全量購入する権利・義務を保有しております。

 

(7) ケブラダ・ブランカ銅鉱山の株主間契約について

 当社の連結子会社でありますSMM Quebrada Blanca SpAは、チリ共和国ケブラダ・ブランカ銅鉱山に90%を出資するQuebrada Blanca Holdings SpAに33%の出資をしており、住友商事㈱及びカナダ国Teck Resources Ltd.のチリ国子会社Teck Resources Chile Ltd.と株主間契約を締結しております。これにより、当社は、ケブラダ・ブランカ銅鉱山における開発計画(ケブラダ・ブランカ2プロジェクト)をTeck Resources Ltd.等と共同で推進しております。

 

6【研究開発活動】

当社グループでは資源、製錬及び材料をコアビジネスとして選択と集中を進めるなか、研究開発においても研究開発費の重点配分を行い、「製錬プロセス技術」、「粉体合成・表面処理技術」、「結晶育成・加工技術」、「探鉱・採鉱・選鉱技術」をコア技術と位置付けています。また、「評価解析技術」、「数理解析技術」を基盤技術と定め、技術ドメインを明確にして重点的な開発を実行しております。

具体的には、資源開発及び非鉄製錬分野における新規プロセス・技術開発、また、材料分野では、社会的ニーズの高い環境・エネルギー分野及び情報通信分野の高機能材料・新技術開発を中心に、国家プロジェクトへの参画や産学連携を含め取り組んでおります。さらに、将来を見据えた粉体材料に関する新規技術獲得のために、粉体基礎研究にも取り組んでおります。

また、「2030年ありたい姿」実現に向け、資源、製錬、材料の3部門連携を推進し、リチウム精製、電池リサイクル、新製錬技術等のプロセス開発を継続するとともに、温室効果ガス(GHG)排出を抑制できる製品として電池正極材、当社独自技術による近赤外線吸収材料の開発も継続し取り組んでおります。

 なお、当連結会計年度に投入した研究開発費は9,216百万円であり、研究所の費用を管理上、各報告セグメントに配分した後の調整額等893百万円が含まれております。

報告セグメントごとの研究開発活動の状況は次のとおりであります。

 

(1) 資源セグメント

鉱床を探す探鉱技術、鉱床から最大限に鉱石を取り出す採鉱技術、鉱石中の有価金属を分離濃縮する選鉱技術に関する技術開発を進めております。資源系人材育成の教育システムを強化・充実させるため、北海道大学大学院工学院と九州大学大学院工学府が民間企業及び公的機関と連携して2022年に設立した「資源系教育コンソーシアム」に参画しました。非鉄金属原料鉱石の処理に関して、精鉱の品質及び実収率の改善のためのパイロット設備を利用した浮遊選鉱等の選鉱技術開発や探鉱技術及び鉱石採掘法の効率化の技術開発等を行っております。

当セグメントに係る研究開発費は148百万円であります。

 

(2) 製錬セグメント

非鉄金属事業において、原料対応力、コスト競争力強化、GHG排出量削減に繋がる製錬技術の開発や新プロセス技術の開発を行っております。また、ハイブリッド自動車や電気自動車の廃リチウムイオン二次電池からニッケル、コバルト、リチウム等のメタルを回収し、電池材料に再資源化するリサイクルプロセスの開発も進めております。本プロセスは、乾式製錬工程と湿式製錬工程とを組み合わせるもので、関東電化工業株式会社との共同開発により、乾式製錬工程にて回収されたスラグから電池材料として再利用可能なレベルの高純度リチウム化合物として再資源化する技術を世界で初めて確立しております。電池リサイクルプロセス開発につきましては「蓄電池リサイクルプロセスの開発と実証」とのテーマで国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金助成事業として採択され、早期事業化に向け実証試験を進めております。なお、リチウムについては、塩湖かん水からの直接回収技術の確立も進めております。

九州大学と組織対応型連携契約を締結し、共同研究と人材育成を継続してきております。革新的な湿式製錬技術や排水処理技術の開発などに取り組んでいるほか、九州大学全体のシーズを活用して資源・製錬分野を中心にさまざまなテーマでの連携を進めております。

また、国内非鉄金属製錬業の持続的発展のための研究を目的とし、2023年4月から2028年3月の5ヶ年にわたり、東北大学多元物質科学研究所に共同研究部門(第二期)を設置いたしました。引き続き、国内の非鉄製錬企業等とも連携を深め、非鉄金属製錬講座の維持・拡大を支援するとともに、技術者の育成と確保に貢献していくことを目指します。

当セグメントに係る研究開発費は3,430百万円であります。

 

(3) 材料セグメント

カーボンニュートラル実現に貢献する新技術・プロセスの研究を推進しております。二次電池関連では、リチウムイオン二次電池の正極材料であるニッケル酸リチウムについて、コスト・容量・出力及び安全性確保などの機能向上を図り、ハイブリッド自動車、電気自動車用電池への積極的な展開に取り組んでおり、開発した新規材料の量産移行を進めております。また、次世代の高性能ニッケル正極材や全固体電池用正極材の開発を目的に進めていた電池研究所(愛媛県新居浜市)の拡張整備は2022年7月に完工し、運用を開始しております。さらに、電池材料事業の拡大に資する高性能かつ低コストの正極材料及びその製造プロセスを開発する研究開発基盤を強化するため、パイロット設備の導入とそれらの設備を収容する建屋(電池研究所第2開発棟)の建設を行うことを決定しました。建設開始は2023年12月、完成は 2025年12月を見込んでおります。なお、全固体電池を含む高性能正極材料とGHG排出量低減プロセスの開発につきましては、「次世代蓄電池用高性能正極材料の開発と実証」とのテーマでNEDOのグリーンイノベーション基金助成事業として採択され、実用化を目指し活動を進めております。

また、GHG削減に貢献する新材料として、人工光合成光触媒材料の研究に取り組んでおり、水分解による水素製造や二酸化炭素の再資源化など、太陽光エネルギーを利用し化学反応を促進する高性能光触媒材料の創出に取り組んでおります。なお、二酸化炭素を一酸化炭素に変換する二酸化炭素還元光触媒の研究開発を加速させるべく、2022年6月に二酸化炭素有効利用に関する産学共同講座を京都大学内に開設しました。

産学連携による研究開発推進のため、東北大学と包括的な共同研究と人材教育を進める組織的連携協力協定を締結し、同大学の広範囲にわたる研究機能を活用して、機能性材料や評価技術の開発及び人材育成を進める体制を整備しております。また同大学とは、2050年に向けたビジョン共創型パートナーシップに基づく取り組みも行っております。この取り組みでは、2050年をターゲットとした「ありたい姿」と「ビジョン」を策定し、そこからバックキャストした具体的なステップとして、材料系素材の共同研究・開発に取り組み、事業化・社会実装を実現することで、新たな価値の創造を目指します。なお、ビジョン達成に向け取り組むべきテーマの探索活動を促進すべく、2022年10月にGX材料科学(注)に関する研究開発テーマの企画・計画立案を目的とした共創研究所を設置しました。今後、2050年の循環型社会を見据えた水素活用材料などに関する共創研究テーマを探索し、新規共同研究課題やその成果の創出を目指します。

なお、2022年10月にドイツのメッセ・デュッセルドルフで開催された国際展示会「K2022」に、開発中の鉄・ガリウム磁歪合金単結晶を出展し、脱炭素社会に貢献する機能性材料として紹介いたしました。

当セグメントに係る研究開発費は4,735百万円であります。

(注)2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、GHGを発生させない再生可能なクリーンエネルギーに転換し、経済社会システムや産業構造を変革させて成長に繋げるための新材料開発に資する材料科学。