将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月27日)現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)会社経営の基本方針
当社グループは以下の基本理念と経営理念を事業運営の基本方針として今後も堅持してまいります。
基本理念
当社グループは、環境と安全そして成長を最重要課題と認識し、社会との共存を図り、より豊かで快適な生活環境を創るために必要な物づくりの一翼を担うことに誇りを持って、たゆむことなく挑み続けることを基本理念とします。
経営理念
1.お取引先様の立場に立ったサービスを提供します。
私たちは、お取引先様の信頼にお応えすることを絶えず念頭に置いて、その多様なご要望に、的確かつ迅速に対応いたします。
2.法令・規則を遵守します。
私たちは、法令・規則を遵守し、適時・適切な企業情報の開示を心がけ、公明正大で透明性の高い経営を推進することで、お取引先様や株主様の信用を得られるようにたゆむことなく努力いたします。
3.環境をたいせつにします。
私たちは、環境に配慮した企業活動を通じ、社会の発展に寄与すると共に、次の世代に豊かな地球環境を引き継ぐことを目指します。
4.魅力ある職場を創ります。
私たちは、グループ社員が安全で衛生的な労働環境のもと、いきいきと活動し、自らの能力と使命を存分に発揮することができる機会と職場を創ることを心がけます。
5.安定した収益を確保し、成長戦略を続けます。
私たちは、優れた品質とサービスを提供することで安定した収益を確保しつつ、常に高い目標に向かって成長を続けるように、全員で取り組みます。
(2)目標とする経営指標
前中期経営計画の振り返り
当社グループは、2022年4月より始動した3カ年の中期経営計画において、「グループ力を発揮し、持続可能な 事業の成長に向けて、チャレンジし続けるChallenge for Sustainable Growth」をスローガンとし、「グループ連 携の強化」、「収益力の改善」、「新たな価値を生み出す事業の創出」、「魅力ある会社づくり」という基本方針 のもと、企業価値の向上をめざし、取り組みを進めてまいりました。
アンチモン事業においては、中国当局によるアンチモン製品の輸出管理の実施、さらには対米輸出の原則禁止の 発表により、アンチモン地金の供給が不足し、需給の逼迫が続き、価格が高騰いたしました。当社は原料となるア ンチモン地金のグローバル調達を進めてきたことにより、安定調達に一定の目途を付けることができましたが、地 金供給元のさらなる多様化は今後の課題です。
金属粉末事業においては、子会社の日本アトマイズ加工㈱つくば工場において、工場棟の増築と鉄系合金粉の生産能力増強が完了しました。電子部品向けについては、日々多様化・高度化する市場環境や取引先ニーズに的確に 対応する製品開発が重要な課題となっております。
最終年度である2024年度の連結営業利益は、生産効率の改善や在庫の影響等により、35億98百万円と過去最高を記録し、連結ROEについては23%となりました。これにより、当初設定した経営指標の目標である連結営業利益 24億円以上、連結ROE10%以上を超過達成いたしました。
長期ビジョンと中期経営戦略
当社グループは、日本精鉱創立100周年となる2035年時点の「ありたい姿」を想定し、次の通り長期ビジョンを設定いたしました。
本長期ビジョンの実現に向けて、2025年度からの3カ年中期経営戦略を以下の通り策定し、企業価値の更なる向上をめざしてまいります。
<期間>
2025年4月~2028年3月
<テーマ>
第2の創生(創立100周年)に向けた基盤づくりのための挑戦と変革
<基本方針>
1.グループ連携の更なる強化
2.既存事業の競争力強化とグローバル展開への挑戦
3.最適な事業ポートフォリオの構築と新規事業の創出
4.人的資本の充実とESGへの取り組み
<目標とする経営指標>
同戦略の最終年度である2027年度において、連結営業利益(3年間平均)30億円以上、ROE(3年間平
均)10%以上と設定しております。
(3)経営環境と優先的に対処すべき課題
当連結会計年度における、当社グループを取り巻く経営環境につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載のとおりです。
世界の景気の先行きは、全体として緩やかな回復が続くと思われますが、通商政策などアメリカの政策動向による下振れリスク、ウクライナや中東の情勢など地政学リスクの高まり、物価上昇の継続、金融資本市場の変動の影響などにより、不透明な状況となっております。このような状況の中、当社グループは上記の中期経営戦略の基本方針のもと、次の施策を実施し、持続的成長と中長期的な企業価値向上を図ってまいります。
アンチモン事業につきましては、安定生産と収益性の改善、高付加価値製品の販売と製品販売のグローバル化の推進により収益の拡大を図ります。中国当局の規制が続く原料アンチモン地金の調達については、供給元のさらなる多様化を進めます。生産プロセスのDX化、省人化などを加速することで原価低減を実行いたします。また、2025年4月より技術開発部を新設し、電池材料向け金属硫化物など、新製品の開発や高付加価値製品の製造技術の確立などを推進いたします。
金属粉末事業につきましては、つくば工場で増設した鉄系合金粉製造ラインの本格稼働を行うなど、電子部品向け金属粉末の生産と販売の拡大を進めます。サーキュラーエコノミーを実現するための金属粉末のリサイクル率向上と再生処理技術の確立や製造工程の改善による製品収率の向上などで、原価低減を促進します。また、MLCC・インダクタ向けに、より微細な粉末、アモルファス合金粉末、粉末の表面改質など、粉末の機能性を高めることや新たな機能性を付与する新製品の開発に取り組んでまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
(1)気候変動
<ガバナンス>
当社では、ISO14001に則った品質環境マネジメントシステムを構築し、代表取締役社長が気候変動対応を含む環境問題改善に向けた活動の最高責任者として統括しています。
リスク及び機会の分析と各組織の活動を取りまとめるISO事務局を品質保証課内に設置し、各事業年度において、前年度の活動方針のレビューを行い、有効性を確認し、改善すべき点を検証した内容に基づき、「品質環境方針」を策定し、取締役、部長クラスの社員などを構成員とする経営委員会での審議を経た上で、代表取締役社長が承認しております。
<リスク管理>
当社は気候変動のリスクと機会への対応について、ISO14001のプロセスアプローチの考え方に基づき、管理しています。
各部署において、特定されたリスクについては、望ましくない結果を防止する目標を作成し、機会については、望ましい結果を得る目標を作成し、計画通りに実行されているか、評価を行っています。この評価については、目標達成率や達成状況総括と共に、年2回、経営委員会に報告されています。また、ISO審査における資料にもなっております。
<戦略>
当社グループでは、GHG(温室効果ガス)の排出量削減のために、エネルギー使用量を削減する取り組みや一部再生可能エネルギーの使用を行っております。また、金属を原料とすることから、リサイクルの促進による廃棄物の低減を進めております。上述のように、当社グループでは、豊かな地球環境を次世代に引き継ぐことを経営理念に掲げておりますので、さらなる取り組みを行ってまいります。
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リスク・機会の概要 |
対応 |
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リスク |
台風・大雨等の災害による操業への影響 |
BCPの策定 |
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GHG排出規制の義務化 |
再生可能エネルギーの使用、 化石燃料の電気エネルギーへの転換 |
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環境負荷物質・廃棄物の管理 |
環境負荷物質・廃棄物の管理の徹底、 リサイクルによる廃棄物の低減 |
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機会 |
生産効率化によるエネルギーコストの削減 |
エネルギー原単位の低減 |
<指標及び目標>
当社における気候変動への対応に係る指標及び目標については、これまで行ってきているエネルギー原単位の低減や再生可能エネルギーの使用に加え、化石燃料の電気エネルギーへの転換に取り組み、2018年度を基準として、2030年までに中瀬製錬所のGHG排出量を30%削減することを目標といたします。
(2)人的資本
<戦略>
当社グループは、人的資本への取り組みとして、基本理念に掲げる「社会との共存を図り、より豊かで快適な生活環境を創るために必要な物づくりの一翼を担うことに誇りを持って、たゆむことなく挑み続ける」ことができる人財を育成することと、多様な人財が活躍できる働きやすい環境をつくることで、魅力のある会社であり続けることを目標としております。
当社グループの経営理念では、お取引先様の立場に立ったサービスの提供、法令・規則の遵守、環境をたいせつにすること、魅力ある職場をつくること、安定した収益を確保し成長戦略を継続することをうたっております。
また、中期経営戦略の基本方針の中に「グループ連携の更なる強化」「人的資本の充実とESGへの取り組み」を掲げております。これに基づき、グループ会社間での共同研修の継続、人財育成方針や社内環境整備方針の整備・運用、ならびに関連規則の制定・改定といった具体的な施策を通じて、働きがいのある職場づくりの実現を目指します。さらに、より高い目標に挑戦する人財の育成とその成長を力強く支援し、企業価値の持続的な向上に貢献してまいります。
<主な取り組み>
当社における人的資本に関する戦略に基づく、主な取り組みは以下の通りであります。
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分類 |
取り組み・内容 |
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1.人財育成
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e-learningの提供 社員の自発的な学習機会を支えるため、勤務事業所に左右されないe-learning環境を整備しています。 |
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1on1ミーティングの実施 社員の相互理解をより深くすると共に、中長期的な視点での成長の促進を目的として1on1ミーティングを実施しています。 |
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資格取得奨励制度 社員のスキルアップのさらなるモチベーションアップのため、資格取得奨励制度を設けています。 |
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グループ合同研修 グループ合同での研修を行い、グループ横断的な人財の育成を目指しています。 |
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2.多様性と働きやすさの実現
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多様性の確保 採用は常に複数チャネルを通じて行う他、性別や年齢などにかかわらず、公平な人財の登用や活用を積極的に推進しています。 |
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時差出勤制度(事業所別) 事業所別に時差出勤制度を導入し、柔軟な勤務が可能となっています。 |
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在宅勤務制度 多様な働き方を実現する方法の一つとして、在宅勤務制度を導入しています。 |
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労組との定期的な意見交換 よりよい環境実現のため、会社と労働組合による定期的な意見交換の場を設けています。 |
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3.安全・健康 |
安全教育 職場環境のさらなる安全の向上を目的に、継続的に安全教育を行っています。 |
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健診費用一部会社負担(法令以上のもの) 社員が健康的に働き続けられる機会の実現を目的に、法令を上回る健診項目の費用に対して一部を会社負担としています。 |
<指標及び目標>
当社グループでは、人的資本に関する戦略について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。
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指標 |
実績(当連結会計年度) |
目標( |
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注1:「有給休暇取得率」は次の式により計算しております。算定期間中の取得日数合計÷算定期間中の付与日数合計×100
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、各セグメントにおいて以下のようなものがあります。(アンチモン事業は提出会社である当社と連結子会社である日テイ精礦(上海)商貿有限公司が、金属粉末事業は連結子会社である日本アトマイズ加工㈱が、それぞれ営んでおります。)
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月27日)現在において当社グループが判断したものであります。
[アンチモン事業]
1.経済活動の状況
同事業のアンチモン製品はプラスチック製品や繊維製品などの難燃剤をはじめ、触媒や顔料、ブレーキ材料、ガラス清澄剤など、様々な用途を持っており、最終需要は自動車や家電製品、OA機器、繊維製品など、多種の産業分野にわたっています。そのため、同事業は各産業の生産活動状況に影響されます。従って、国内外の関連市場における経済状況の影響を受ける可能性があり、景気変動やパンデミックによる経済活動の制限などによって、同事業の経営成績に影響が及ぶ可能性があります。
2.原料地金の調達
アンチモンの主要産地である中国では、レアメタルやレアアースの輸出規制を強化しております。
レアメタルの一つ、アンチモン関連品目が2024年9月15日に中国の輸出管理の対象となって以降、アンチモン地金(以下「原料地金」)や三酸化アンチモンなどの加工品の輸出量が著しく減少しています。
当社アンチモン事業の主力製品である三酸化アンチモンは、主に海外から調達した原料地金を原料としており、主要産地の中国やその他アンチモン原産国による輸出管理の実施や資源保護政策の影響を受けて供給元からの原料調達が不足する可能性があります。
当社では、原料地金を特定の国に依存することのない安定的な供給元の確保に努めておりますが、供給元のさらなる多様化を進めて調達リスクを低減させることが今後の重要な課題と認識しております。
3.原料地金価格及び為替の変動
原料地金はドル建てで輸入しており、原料地金価格および為替の変動リスクを有しており、同事業の経営成績に影響が及ぶ可能性があります。これらのリスクに対しては、在庫数量の適正化やリードタイムの短縮などの施策を行うことや為替予約を行うことで、影響の低減を図ってまいります。
4.競合
中国は、原料である原料地金の最大の供給国であるとともに、製品である三酸化アンチモンの競合先でもあります。これまで、日本における三酸化アンチモン市場の約半量は輸入品が占め、その内の約80%は中国製品でした。中国のアンチモン製品に対する輸出管理の実施により、中国製品の輸入量は漸減しているものの、ヨーロッパ製品などの輸入が増加し、競争を強いられております。それに対抗するため、当社では生産プロセスのDX化、省人化など原価低減を実行するとともに、顧客の求めるニーズにあった特殊仕様や高品質など付加価値の高い製品の製造・販売に注力してまいります。
5.三酸化アンチモンの特定化学物質障害予防規則適用
同事業の主要製品である三酸化アンチモンが、2017年6月1日から特定化学物質障害予防規則(以下「特化則」)の管理第2類物質に追加されました。これにより、当社事業所において、発散抑制措置や作業環境測定・特殊健康診断の実施等が必要となる他、同製品を使用しているお客様にも同様の対応が新たに必要な場合があります。それらに対応するため、当社では施設面での措置や社員教育等を行い、法令遵守の体制を整え、今後も必要に応じ見直してまいります。また、お客様に対しては、法令対応に必要な措置についてのフォローを実施する他、同製品の品質を維持しながら、特化則の適用除外となる特殊加工を施した製品提供の提案を行うなど、事業への影響を最小限にすべく対応を進めてまいります。
6.環境保全
同事業の製品の一部には、前述の特化則管理第2類物質の他、毒物及び劇物取締法の劇物、或いは化学物質排出把握管理促進法の第一種指定化学物質があります。万一、保管・輸送途上等での不測の事態により、紛失、落下飛散等が発生した場合、環境汚染を引き起こす可能性があります。その管理については、法令を遵守するとともに当社の品質環境マネジメントマニュアルに基づき策定された標準書・手順書に従い万全を期してまいります。
7.人財の確保
国内において少子高齢化などによる労働力人口の減少に伴い、人財不足の深刻化および採用競争が激化している環境下、同事業において人財の確保が十分に行えない場合、生産力・技術力・サービスなどの低下により、同事業の経営成績に影響が及ぶ可能性があります。同事業では、採用活動の多様化、人的資本への取り組み強化、魅力ある会社づくりなどの各種施策により、人財の確保に係るリスクの低減に努めてまいります。
[金属粉末事業]
1.経済活動の状況
同事業の金属粉末は主に自動車部品、家電部品、電子機器部品の素材として使用されており、同事業は最終需要である自動車や電機・電子機器等の各業界の設備投資および生産動向に影響を受けます。従って、国内外の関連市場における経済状況の影響を受ける可能性があり、景気変動やパンデミックによる経済活動の制限などによって、同事業の経営成績に影響が及ぶ可能性があります。
2.事業継続計画(BCP)
大地震等の自然災害や、火災、設備故障などにより、長期に亘り工場の操業が停止し、顧客への製品納入に支障をきたすような事態に陥ることを避けるために、生産拠点を野田本社工場(千葉県野田市)・つくば工場(茨城県牛久市)の2拠点体制としております。
事業継続計画に沿って定期的な教育・訓練を行い、さらに改善を加えることにより、事業継続マネジメントの有効性を高めるための適切な施策を実施しています。
今後は大型化している台風や集中豪雨などの風水害や未知の感染症に対する事業継続計画の立案・策定を行ってまいります。
3.粉末微細化や新合金製品化の収益性
電子部品の小型化、軽量化、高性能化が進み、より微細な金属粉末が求められています。また、新機能付加により製品差別化を目指す顧客ニーズもあり、同事業の新たな合金粉末製品の要求も高まっています。
しかしながら、技術上の要因等によりこのような製品は製品歩留まりが低下して、コストが高くなる傾向がありますが、適正な加工費単価の確保などで収益性の向上に努めてまいります。
独自の水アトマイズ法の技術力の向上を図り、従来よりもさらに効率の良い製造方法を確立することで、顧客ニーズに対応できるように努めてまいります。
4.原料価格および為替相場の変動
同事業の製品販売価格は、原料である鉄、銅、銀、ニッケルなどをベースにしていますが、特に銀や銅、ニッケルは原料の仕入から販売までの期間、相場の変動に伴い収益が大きく左右されます。
したがって、在庫数量の適正化やリードタイムの短縮などの施策を実施することで、これを最小限に留めるように努めております。また為替変動による収益へのリスクを回避するために、輸出製品価格を円建てといたしております。
5.人財の確保
国内において少子高齢化などによる労働力人口の減少に伴い、人財不足の深刻化および採用競争が激化している環境下、同事業では電子部品需要の拡大に対応して、つくば工場での増築・生産能力の増強を行い、生産活動を強化しておりますが、人財の確保が十分に行えない場合、生産力・技術力・サービスなどの低下により、同事業の経営成績に影響が及ぶ可能性があります。
同事業では、採用活動の多様化、従業員満足度の向上、人財育成、省力化・自動化の推進などの各種施策により、人財の確保に係るリスクの低減に努めてまいります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、経済活動の正常化に向けた取り組みが進み、一部に足踏みが残るものの、緩やかに回復の動きが続いています。一方、世界的な物価上昇と欧米の金融引き締めによる金利の高止まり、原材料やエネルギー価格の高止まりと円安に伴う国内物価の上昇が消費に影響を及ぼしており、加えて中国経済の先行き懸念、ウクライナや中東の情勢など地政学リスクの高まり、米国新政権の関税政策など、依然として先行きは不透明な状況が続いております。
このような環境下、当社グループは、2022年4月よりスタートした「グループ力を発揮し、持続可能な事業の成長に向けて、チャレンジし続ける Challenge for Sustainable Growth」をスローガンとする3カ年の中期経営計画において、「グループ連携の強化」、「収益力の改善」、「新たな価値を生み出す事業の創出」、「魅力ある会社づくり」という基本方針のもと、高付加価値製品の生産能力の拡充、オープンイノベーション推進による新規事業創出、車載向け製品の取り組み強化、デジタル化による業務プロセスの効率化、サステナビリティ事業への取組み、多様な人財が活躍できる環境づくり、SDGs活動の推進などに取り組んでまいりました。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
当連結会計年度の資産合計は、前連結会計年度に比べ5,063百万円増加の20,937百万円となりました。
当連結会計年度の負債合計は、前連結会計年度に比べ2,831百万円増加の9,004百万円となりました。
当連結会計年度の純資産合計は、前連結会計年度に比べ2,231百万円増加の11,932百万円となりました。
b.経営成績
当連結会計年度の経営成績は、売上高25,179百万円(前年同期比61.5%増収)、営業利益3,598百万円(同433.4%増益)、経常利益3,531百万円(同400.0%増益)、親会社株主に帰属する当期純利益2,456百万円(同388.5%増益)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
アンチモン事業は、売上高15,807百万円(同91.0%増収)、セグメント利益3,059百万円(同951.3%増益)となりました。
金属粉末事業は、売上高9,336百万円(同28.2%増収)、セグメント利益502百万円(同49.0%増益)となりました。
その他は、売上高35百万円(同12.9%増収)、セグメント利益4百万円(同79.5%減益)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度に比べて894百万円減少し、当連結会計年度には2,128百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により使用した資金は919百万円(前年度は1,546百万円の収入)となりました。
これは主に、税金等調整前当期純利益3,530百万円、減価償却費671百万円及び仕入債務の増加額1,067百万円等による増加があったものの、棚卸資産の増加額3,777百万円、売上債権の増加額2,240百万円及び法人税等の支払額196百万円等による減少があったためであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は628百万円(同59.9%減少)となりました。
これは主に、有形固定資産の取得による支出624百万円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により得られた資金は645百万円(同15.7%減少)となりました。
これは主に、長期借入金の返済による支出279百万円及び配当金の支払額244百万円等があったものの、短期借入金の増加額1,200百万円があったためであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
金額(千円) |
前年同期比(%) |
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アンチモン事業 |
15,755,413 |
191.0 |
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金属粉末事業 |
9,266,882 |
123.5 |
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報告セグメント計 |
25,022,296 |
158.9 |
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その他 |
- |
- |
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合計 |
25,022,296 |
158.9 |
(注)金額は、販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
b.受注実績
当社グループは見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
金額(千円) |
前年同期比(%) |
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アンチモン事業 |
15,807,418 |
191.0 |
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金属粉末事業 |
9,336,247 |
128.2 |
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報告セグメント計 |
25,143,665 |
161.5 |
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その他 |
35,846 |
112.9 |
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合計 |
25,179,512 |
161.5 |
(注)1.総販売実績に対し、10%以上に該当する販売先はありません。
2.セグメント間の取引については、相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月27日)現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
この連結財務諸表作成にあたって重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりです。
また、この連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
1)財政状態
(資産合計)
当連結会計年度の資産合計は、前連結会計年度に比べ5,063百万円増加の20,937百万円となりました。
流動資産は前連結会計年度に比べ5,266百万円増加の14,972百万円となりました。これは主に、現金及び預金が894百万円減少したものの、受取手形及び売掛金が2,241百万円、商品及び製品が1,910百万円、原材料及び貯蔵品が1,842百万円増加したことによるものであります。
固定資産は前連結会計年度に比べ203百万円減少の5,964百万円となりました。これは主に、有形固定資産が285百万円減少したことによるものであります。
(負債合計)
当連結会計年度の負債合計は、前連結会計年度に比べ2,831百万円増加の9,004百万円となりました。
流動負債は前連結会計年度に比べ3,312百万円増加の7,542百万円となりました。これは主に、短期借入金が1,385百万円、支払手形及び買掛金が1,072百万円、未払法人税等が1,005百万円増加したことによるものであります。
固定負債は前連結会計年度に比べ480百万円減少の1,462百万円となりました。これは主に、長期借入金が465百万円減少したことによるものであります。
(純資産合計)
当連結会計年度の純資産合計は、前連結会計年度に比べ2,231百万円増加の11,932百万円となりました。
これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益2,456百万円及び剰余金の配当244百万円によるものであります。
この結果、自己資本比率は57.0%(4.1ポイント減少)となりました。
2)経営成績
(売上高)
売上高は、前連結会計年度に比べ9,590百万円増収(61.5%増収)の25,179百万円となりました。
(売上原価、売上総利益)
売上原価は、前連結会計年度に比べ6,426百万円増加(46.6%増加)の20,227百万円となりました。
その結果、売上総利益は、前連結会計年度に比べ3,163百万円増益(176.8%増益)の4,952百万円となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ239百万円増加(21.5%増加)の1,354百万円となりました。
その結果、営業利益は、前連結会計年度に比べ2,923百万円増益(433.4%増益)の3,598百万円となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常利益)
営業外収益は、前連結会計年度と比べて32百万円減少の29百万円となり、営業外費用は、前連結会計年度と比べて65百万円増加の96百万円となりました。
その結果、経常利益は、前連結会計年度と比べて2,824百万円増益(400.0%増益)の3,531百万円となりました。
(特別損益、法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額)
特別利益0百万円、特別損失1百万円、法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額として1,074百万円を計上しました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度と比べて1,953百万円増益(388.5%増益)の2,456百万円となりました。1株当たりの当期純利益は1,004円01銭であります。
b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容等
当社グループのセグメントごとの経営成績に重要な影響を与える要因については、以下のとおりです。
[アンチモン事業]
同事業は自動車、家電製品、OA機器、繊維製品など、多岐に亘る産業分野の動向や国内外の関連市場における経済活動の状況や景気変動などの影響を受けています。
同事業の原料であるアンチモン地金の主要生産国である中国における、環境政策、資源政策の変更、輸出管理の動向並びに他の非鉄金属と同様、投機資金の動き等により、原料価格が急騰、急落することがあります。
これらの変動に対して、相場の上昇局面においては、若干の時間差が生じるものの原料価格のアップ分は製品販売価格に転嫁が可能となりますが、一方、下落局面においては、高値の在庫の影響により在庫の価格はすぐには下がりませんが、販売価格は下落していくこと、また、棚卸資産の低価法の影響を受けることになり、大幅な収益性の低下があった場合、並びに原料・中間品・製品の在庫数量を多く抱えた場合には経営成績に重要な影響を与えることになります。製品販売とアンチモン地金などの原料仕入の情報の連携を密にしながら、在庫水準を常に一定に保つことで相場変動リスクをミニマイズするように努めてまいります。
[金属粉末事業]
同事業は、主に自動車及び電子部品業界の動向や国内外の関連市場における経済活動の状況や景気変動などの影響を受けております。
電子部品需要は自動車の環境対応や安全性の向上による電装品の搭載数の増加が進み、従来のスマートフォンを始めとする情報通信機器の高機能化による1台あたりの電子部品点数増も相まって、市場の中長期的な拡大が期待されます。一方で、電子部品のコモディティ化による価格競争が進行し、同事業のような原材料メーカーへの価格協力要請も厳しくなっております。
また、機器の軽薄短小化の動きに伴い電子部品材料用金属粉もそれに応じた微細なものが要求されています。この動向により同事業の製品販売数量が減少する懸念がある一方で、付加価値の高い製品の販売数量は増加することが期待できます。
既存製品の歩留りの向上・改善を行い更なるコスト削減を継続し、付加価値の高い製品の提案及び適正な加工費単価を確保することで、収益の維持・向上に努めております。
併せて、主力市場と位置付ける“車載用市場”に対応するため、製品品質・機能の向上、品質環境マネジメントシステムの維持・改善に加え、生産能力増強を進めることで、更に信頼性を高め、販売拡大につなげてまいります。
c.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
1)キャッシュ・フローの状況の分析及び検討内容
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析及び検討内容につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
2)資金需要
当社グループの運転資金需要の主なものは、当社グループ製品製造のための原材料の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等による営業費用に充当するためのものです。営業費用の主なものは、運賃・保管料、人件費であります。
その他に生産設備の新設・拡充のための設備資金需要があります。
3)資本の財源及び資金の流動性並びに財務政策
当社グループは、運転資金及び設備資金につきましては、内部留保資金の他、借入金により資金調達しております。借入金による資金調達に関しましては、短期借入金のほか、長期安定資金調達の為に一部は長期借入金にて対応しております。
2025年3月31日現在の短期借入金残高は2,965百万円となっております。
生産設備などの長期資金は長期借入金で調達しております。長期借入金の金利は固定と変動金利があります。
2025年3月31日現在の長期借入金残高は726百万円となっております。
なお、2025年3月期においては、安定した事業運営の為に、借入金の一部を現預金にて保有しており、当社グループの成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備投資資金を確保しております。
d.経営方針、経営戦力、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループの経営方針、経営戦力、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)目標とする経営指標」に記載のとおりであります。
e.財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
[アンチモン事業]
同事業の原料であり、製品販売価格の基準ともなるアンチモン地金の国際相場は、主産地である中国において、国内外のアンチモン鉱石不足や環境監査などによる地金生産の減少、太陽光パネル向け需要の拡大などにより急速に需給が逼迫し、相場が急上昇しました。また中国当局が2024年9月15日よりアンチモン地金の輸出管理を実施するとの公告を発表し、同年12月3日には対米輸出は原則として許可しないと発表したことを受けて、市場では最高値の更新が相次いでいます。アンチモン地金価格は、当連結会計年度初頭のトン当たり約13,000ドルから、当連結会計年度末にはトン当たり50,000ドル台後半まで高騰しました。この結果、当連結会計年度の平均価格は、トン当たり約31,690ドルとなり、前年度比約160%の大幅な上昇となりました。円建てでは、同約174%上昇しました。
同事業の主製品である三酸化アンチモンには様々な用途があります。主たる用途は、プラスチック材料の難燃剤です。プラスチックは、自動車、家電、産業機械、住宅などに用いられる電化製品の電気絶縁材料として広く用いられていますが、一般に燃えやすい性質を持っています。そのようなプラスチックにハロゲン系難燃剤と共に三酸化アンチモンを添加することで、高い難燃性を付与して電気機器の短絡や劣化による発火のリスクを減らし、火災による人的被害や経済的損失を防止することに大きく貢献しています。
同事業の販売状況につきましては、中国などからのOEM品の調達に滞りがありましたが、増産対応により全体としては堅調に推移しました。販売数量は前年度比14トン増加(0.3%増加)の4,541トンとなりました。
その結果、同事業の当連結会計年度の売上高は、販売価格の上昇から、前年度比7,532百万円増収(91.0%増収)の15,807百万円となりました。セグメント利益は、生産効率の改善や在庫の影響もあり、同2,768百万円増益(951.3%増益)の3,059百万円となりました。
セグメント資産は、前連結会計年度に比べ5,539百万円増加の12,289百万円となっております。
[金属粉末事業]
同事業の主原料である銅の国内建値は、当連結会計年度平均でトン当たり約1,478千円となり、前年度17.2%の上昇となりました。
同事業の主製品は、電子部品の導電材料向け銅およびその他の金属粉末、パワーインダクタ向けの鉄系合金粉、自動車部品や産業機械部品などの粉末冶金製品向けの焼結材料としての金属粉末で、各種製品の高機能化や利便性に貢献しています。
また、DXの推進、IoTやAIの活用、5G対応端末の普及、自動車のEV化やエレクトロニクス化の流れなどを背景に電子部品のニーズは高まっています。
電子部品向け金属粉末の販売状況につきましては、需要が低迷していたスマートフォンやパソコン市場が回復し、また生成AIの普及や自動車エレクトロニクス市場の拡大が電子部品需要を押し上げたため、販売数量は前年度比118トン増加(13.9%増加)の966トンとなりました。
粉末冶金向け金属粉末の販売状況につきましては、自動車部品向けが堅調に推移したことから、販売数量は前年度比94トン増加(7.4%増加)の1,367トンとなりました。
全体の販売数量は前年度比212トン増加(10.0%増加)の2,333トンとなりました。
その結果、同事業の当連結会計年度の売上高は、販売数量の増加等により、前年度比2,053百万円増収(28.2%増収)の9,336百万円となりました。セグメント利益は、受注回復による操業度上昇等から同165百万円増益(49.0%増益)の502百万円となりました。
セグメント資産は、前連結会計年度に比べ474百万円減少の8,613百万円となっております。
[その他]
不動産賃貸事業等の当連結会計年度の売上高は35百万円、セグメント利益は4百万円となりました。
セグメント資産は、前連結会計年度に比べ1百万円減少の34百万円となっております。
該当事項はありません。
当社グループは、顧客の立場に立ち、そのニーズに合致した製品とサービスを提供するために、グループ会社との技術・営業両面で交流及び相互情報交換を有効に活用し、相乗効果による技術力の向上を図っております。
新規商品、新規製品の市場開拓については、これまで取り組んできたグループ会社及び大学との産学連携の中で、新たな商品開発の為の基礎研究及び新規技術の開発を国内外にて進めております。
なお、当社グループの当連結会計年度における研究開発費の総額は
[アンチモン事業]
当社既存アンチモン製品については、お客様の要望する、より付加価値の高い製品の開発を進めている他、より多様な原料の調達を通じて安定した供給の実現を目指し、関連技術の深化にも取り組んでおります。
また、2025年4月に技術開発部を新設し、新製品開発のための市場調査、高付加価値製品の製造技術確立、電池材料など成長分野向け金属硫化物の新製品開発に取り組んでまいります。このほか、SDGsの観点から、新しい技術によるエネルギー使用量やCO2排出量の削減についても取り組んでおります。
なお、当連結会計年度における研究開発費は
[金属粉末事業]
当事業の製品については、生産性の向上及び原価低減を目的に取り組んでおります。また、鉄系合金粉のアモルファス化や表面加工により磁気特性向上への新たな製法の確立に取り組んでおります。
なお、当連結会計年度における研究開発費は