当連結会計年度におけるわが国の経済は、個人消費は消費税増税後の反動減は一巡したものの力強い回復までには至らなかった一方、企業業績の改善など緩やかな回復基調にありました。世界経済は、米国をはじめ全体としては緩やかな成長が継続しましたが、中国や東南アジアでは景気減速が進み、また原油をはじめとする商品価格の下落が続くなど、依然として先行きは不透明な状況でした。
当社グループの事業環境については、自動車関連製品の需要の一部で国内やアジアにおいて自動車生産が減少した影響を受けました。また、多機能携帯端末向けは一部製品で顧客での在庫調整の影響を受けました。新エネルギー関連製品は引き続き堅調に推移しました。相場環境については、金属価格は、需要の減退懸念や米国の利上げを背景に、総じて下落傾向が続きましたが、第4四半期には上昇に転じる局面もありました。一方、為替相場は、米国の堅調な経済情勢を背景に概ね1ドル120円台で推移しましたが、第4四半期には急速に円高が進行しました。
当社グループは、このような状況の中、平成27年度から始まった新たな中期計画の基本方針に沿って、海外事業の更なる拡大、成長市場・周辺分野への展開による事業拡大、事業競争力の継続的強化に向けた施策を実施していきました。
これらの結果、当期の連結売上高は前期比12%減の406,598百万円となり、連結営業利益は同10%減の35,067百万円、連結経常利益は同17%減の35,056百万円、親会社株主に帰属する連結当期純利益は同18%減の21,826百万円となりました。
なお、当社は、株主の皆様への配当を経営における最重要課題の一つと位置付けており、企業体質強化と将来の事業展開に備えた内部留保の充実を勘案のうえ、業績に応じて配当を行う方針としています。
当期の配当金につきましては、当期の業績、今後の事業展開、財務体質の強化などを総合的に勘案し、前期と同額の1株当たり18円としています。
主要セグメントの状況は、次のとおりです。
環境・リサイクル部門
廃棄物処理は、国内の産業廃棄物発生量が横這いの中、集荷ネットワークの強化を進め堅調に受注を拡大しました。土壌浄化は、新たな浄化法を開発するなど、受注の拡大を図りましたが、売り上げは伸び悩みました。リサイクルは、電子部品スクラップの国内外での集荷拡大に努めたものの、国内の廃家電の減少や貴金属価格下落による影響を受けました。海外事業では、東南アジアにおける廃棄物処理事業の拡大に努めたものの、インドネシアやタイにおいて、石油・天然ガス開発が停滞した影響を受けました。
これらの結果、当部門の売上高は前期比5%減の98,306百万円、営業利益は同14%減の6,314百万円となりました。
製錬部門
金属価格は、銅や亜鉛などのベースメタル、金や銀などの貴金属及びインジウムなどのレアメタルについて、総じて下落傾向が続きましたが、第4四半期には上昇に転じる局面もありました。為替相場は、前期より円安水準の概ね1ドル120円台で推移しましたが、第4四半期には急速に円高が進行しました。このような状況の中、各製錬所の稼動は引き続き順調に推移し、副産金属や自動車排ガス浄化触媒から回収されるプラチナなどの白金族類を含め、生産量を確保しました。コスト面では電力原単位や物品費の削減に努めるとともに、原油価格下落による電力価格引き下げの影響も受けました。
これらの結果、当部門の売上高は前期比10%減の214,941百万円、営業利益は同2%減の13,325百万円となりました。
電子材料部門
半導体材料製品は、第3四半期以降、多機能携帯端末向けが顧客での在庫調整の影響を受け、前年度に比べ販売量が減少しました。導電材料製品は新エネルギー向けの銀粉の拡販に努め、機能材料製品はデータテープ用次世代記録材料の拡販を進めました。また、市場ニーズに応える新規製品開発に引き続き取り組みました。
これらの結果、当部門の売上高は、銀粉において原料代を含まない受託加工の取引へ一部変更した影響により、前期比34%減の48,335百万円となりましたが、売上原価に含まれる原料代も同様に減少し、営業利益は同9%減の8,026百万円となりました。
金属加工部門
端子やコネクタに使われる伸銅品は、自動車向けや多機能携帯端末関連向け用途を中心に拡販を図りましたが、国内やアジアで一部生産調整の影響を受けました。一方、貴金属めっき加工は、自動車向けの拡販を図り、堅調に推移しました。回路基板は、海外を中心に産業機械や鉄道向けの販売に注力しましたが、中国をはじめとした設備投資減退の影響を受けました。
これらの結果、当部門の売上高は前期比12%減の77,412百万円、営業利益は同15%減の4,911百万円となりました。
熱処理部門
熱処理加工は、海外の自動車市場の成長に合わせて海外拠点の設備増強を進め、インドやタイ、中国において受注拡大を図りました。工業炉は、国内の製造拠点集約による生産性向上を進めるとともに、海外向けの設備拡販やメンテナンス受注の拡大に努めましたが、国内やアジアでの自動車生産の調整などの影響を受けました。
これらの結果、当部門の売上高は前期比12%減の24,187百万円、営業利益は同43%減の1,352百万円となりました。
その他部門
その他部門では、売上高は前期比6%増の11,263百万円、営業利益は同44%増の503百万円となりました。
(注) 当該項目に記載の売上高には消費税等を含めていません。
| 前連結会計年度 |
| 当連結会計年度 |
| 比較増減 |
| 百万円 |
| 百万円 |
| 百万円 |
営業活動によるキャッシュ・フロー | 38,345 |
| 45,751 |
| 7,406 |
投資活動によるキャッシュ・フロー | △20,321 |
| △23,486 |
| △3,165 |
財務活動によるキャッシュ・フロー | △16,905 |
| △11,159 |
| 5,746 |
換算差額 | 855 |
| △248 |
| △1,103 |
増減 | 1,973 |
| 10,857 |
| 8,883 |
現金及び現金同等物の期首残高 | 5,823 |
| 8,044 |
| 2,221 |
新規連結による現金及び現金同等物の増加 | 450 |
| ― |
| △450 |
連結除外に伴う現金及び現金同等物の減少 | △202 |
| ― |
| 202 |
現金及び現金同等物の期末残高 | 8,044 |
| 18,902 |
| 10,857 |
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末より10,857百万円増加し、18,902百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金の増加は45,751百万円(前年度比7,406百万円増)となりました。これは、税金等調整前当期純利益31,822百万円(前年度比9,993百万円減)や非資金的費用である減価償却費の計上15,145百万円に加え、棚卸資産の減少11,860百万円や売上債権の減少10,609百万円などがあった一方で、法人税等の支払い16,980百万円などがあったことによります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金は23,486百万円の支出(前年度比3,165百万円支出増)となりました。これは、環境・リサイクル事業を中心とした設備投資20,664百万円があったことなどによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金は11,159百万円の支出(前年度比5,746百万円支出減)となりました。これは、有利子負債の返済5,438百万円や、配当金の支払い5,556百万円によるものです。
当連結会計年度におけるセグメントごとの生産実績は、次のとおりです。
セグメントの名称 | 生産高(百万円) | 前年同期比(%) |
製錬部門 | 217,314 | △9.5 |
電子材料部門 | 48,369 | △34.5 |
金属加工部門 | 76,380 | △13.8 |
合計 | 342,063 | △15.0 |
(注) 1 金額は、販売価格によっています。
2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
3 電子材料部門は、銀粉において原料代を含まない受託加工の取引へ一部変更された影響等により、減少して
います。
4 環境・リサイクル部門は、廃棄物処理、金属リサイクル、土壌浄化処理受託及び運輸事業を行っており、売上高が処理高であるため、記載を省略しています。
5 熱処理部門は、金属熱処理加工、表面処理加工、熱処理加工設備・その付属設備の受託生産事業を行っており、売上高が生産高であるため記載を省略しています。
6 その他の部門は、工事の請負、不動産の賃貸及び見込生産を行っているため、記載を省略しています。
当連結会計年度におけるセグメントごとの受注状況は、次のとおりです。
セグメントの名称 | 受注高(百万円) | 前年同期比(%) | 受注残高(百万円) | 前年同期比(%) |
熱処理部門(熱処理炉) | 3,163 | △31.0 | 2,231 | △23.1 |
その他部門(工事の請負) | 1,169 | △26.5 | 52 | △35.1 |
合計 | 4,332 | △29.9 | 2,283 | △23.4 |
(注) 1 その他主要な製品に関しては、受注生産を行っていません。
2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
3 受注高及び受注残高の前年同期比増減の理由については、「第2 事業の状況 1 業績等の概要」に記載しています。
当連結会計年度におけるセグメントごとの販売実績は、次のとおりです。
セグメントの名称 | 販売高(百万円) | 前年同期比(%) |
環境・リサイクル部門 | 62,357 | △5.0 |
製錬部門 | 194,664 | △7.2 |
電子材料部門 | 46,317 | △35.3 |
金属加工部門 | 77,401 | △11.7 |
熱処理部門 | 24,186 | △11.5 |
その他部門 | 1,670 | △22.6 |
合計 | 406,598 | △12.4 |
(注) 1 金額は販売価格によっています。
2 セグメント間の取引については相殺消去しています。
3 電子材料部門は、銀粉において原料代を含まない受託加工の取引へ一部変更された影響等により、減少して
います。
4 最近2連結会計年度の主な相手先の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりです。
相手先 | 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | ||
販売高(百万円) | 割合(%) | 販売高(百万円) | 割合(%) | |
田中貴金属工業㈱ | 64,656 | 13.9 | 64,853 | 16.0 |
5 上記の金額には消費税等は含まれていません。
平成28年度は中期計画の2年目に当たる重要な年であり、市場動向を見極めながら、海外事業の更なる拡大や成長市場・周辺分野への展開による事業拡大、事業競争力の継続的強化に向けた諸施策を推し進めていきます。
なお、具体的には、各事業部門で次のような取り組みを行います。
環境・リサイクル部門
廃棄物処理事業では、エコシステム秋田㈱に新設した焼却炉の立ち上げなどにより低濃度PCB廃棄物の処理を拡大するとともに、一般廃棄物の処理拡大に向けてメルテックいわき㈱において新規施設の建設を進めます。土壌浄化事業では、新たな浄化工法による現地浄化案件の受注に努めるなど、大型公共投資関連の需要取り込みを図ります。リサイクル事業では、米国やアジアを中心に海外からのリサイクル原料集荷を進め、金属リサイクルを強化します。東南アジアでは、インドネシアやタイなどにおいて新たな廃棄物処理施設の建設に向けた取り組みを進めていきます。
製錬部門
貴金属銅事業では、小坂製錬㈱において不純物対応力を高めるとともに、リサイクル原料の積極処理を進め収益力向上を図ります。白金族回収事業では、㈱日本ピージーエムの新設備の立ち上げや欧州、東南アジア、米国などにおける原料集荷の拡大に取り組みます。亜鉛事業では、秋田製錬㈱において焙焼炉など重要設備の新設や更新を進め、リサイクル原料の増処理などにより亜鉛を増産します。また、アメリカ・アラスカ州のパルマー亜鉛・銅プロジェクトとメキシコ・チワワ州のロス・ガトス亜鉛プロジェクトを更に推進し、自山鉱比率の向上に取り組んでいきます。
電子材料部門
半導体事業では、人体検知用や医療用などセンサー向けLEDの更なる特性向上とヘルスケア機器向けなどの新規製品開発を進めます。電子材料事業では、銀粉の堅調な需要への対応を進めるとともに、さまざまな電極材料用途への拡販に取り組みます。機能材料事業では、データテープ用次世代材料などにおいて需要に応じた生産体制の強化を進めます。また、新規開発では、今後市場拡大が見込まれる滅菌・殺菌機器向け深紫外LEDや新規導電材料、燃料電池向け電極材料などの特性向上やサンプルワークの拡大を進め、早期事業化を図ります。
金属加工部門
金属加工事業では、耐熱性や導電性、強度などの特性を高めた銅合金の開発や拡販を進め、次世代自動車向けや情報通信端末向けの需要拡大を取り込みます。国内では生産性改善などに引き続き取り組み、海外では中国やタイ、台湾において加工を強化し、アジアでの事業拡大を進めます。めっき事業では、日本やタイでの増産及び新たに進出したメキシコでのめっき工場の建設など、自動車向けを中心にグローバル供給体制の強化に取り組みます。回路基板事業では、新規製品の用途拡大やコスト削減に取り組み、収益力を強化します。
熱処理部門
工業炉事業では、需要が拡大するインドや米国、メキシコにおいて拡販に取り組むとともに、タイやインドネシアにおいて部品の現地調達化などを進め東南アジア向けのメンテナンス対応力を強化します。熱処理事業では、インドやメキシコにおいて新規拠点の建設を進めるなど海外の生産能力増強に取り組みます。また、国内において新規受注の拡大を図るとともに、市場動向に対応した生産工程の統合を進めます。
当社は、上記方針を定めておりませんが、基本的な考え方として、次のとおり「情報と時間ルール」を定めております。
当社取締役会は、議決権割合が20%以上となる当社株式の買付行為(以下、大規模買付といいます)を受け入れるかどうかは、最終的には、株主の皆様の判断に委ねられるべきものであると認識しております。その判断にあたっては、当社の事業規模や事業領域に照らして、大規模買付を行おうとする者(以下、大規模買付者といいます)と当社取締役会の双方からの「適切な情報提供」と「十分な検討期間の確保」が必要であると考えます。
このような基本的な考え方に基づき、当社取締役会は、大規模買付を認識したときは、大規模買付者に対し、次の情報(以下、大規模買付情報といいます)を他の株主及び取締役会に提供することを求めます。
① 大規模買付の目的及び内容
② 買付価格の算定根拠及び買付資金の裏付け
③ 大規模買付完了後に意図する当社経営方針及び事業計画
④ その他株主価値に影響する重要な事項に関する情報
当社取締役会は、大規模買付情報を検討したうえで、当該大規模買付に対する評価意見を公表します。その際には、取締役会から独立した第三者により構成される委員会の意見を求めます。
また、当社取締役会は、当社株式の取引や異動状況を常に注視し、大規模買付がなされた場合に迅速かつ適切な対応をとり得る社内体制を整備いたします。
当社グループの経営成績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには次のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
①経済情勢
日本、北米、アジア、欧州など当社グループの主要市場における景気後退、及びそれに伴う需要の縮小は、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
②非鉄金属相場、為替相場
当社グループが取扱う製品には、金、銀、銅、亜鉛など国際的な相場により価格が決定されるものがあります。また、これら主要地金の原料鉱石は海外から調達しており、国際的市況の変動、為替相場の変動によるリスクを負っています。これに対し、当社グループは非鉄金属先渡取引や為替予約などを通じてヘッジするなど、リスクの軽減に取り組んでいます。
③公的規制
当社グループは、国内においては環境・リサイクル関連法、独占禁止法等の法的規制の適用を受けているとともに、海外においても各国の法的規制、たとえば関税・輸出入規制や外国為替管理法の規制を受けています。このような中、当社グループとしては、法的手続きによる権利の保全にも万全を期しています。しかしながら、将来において、現在予測し得ない法的規制が設けられる可能性があり、これらの法的規制に係る指摘を受けた場合、当社グループの事業活動が制限される可能性があり、業績に影響を及ぼす可能性があります。
④株価の変動
当社グループは、当連結会計年度末時点で取引先を中心に約249億円の市場性のある株式を保有しており、これらの株価変動リスクを負っています。
⑤金利の変動
当社グループの当連結会計年度末の有利子負債残高は811億円で、総資産の22%を外部調達しており、急激な金利上昇によって業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥災害や停電
当社グループは、製造ラインの中断による潜在的なマイナス影響を最小化するために、全ての設備における定期的な災害防止検査と設備点検を行っています。しかし、生産施設で発生する災害、停電又はその他の中断が発生した場合、当社グループの生産能力が著しく低下する可能性があります。
該当事項はありません。
各セグメントでは、常に現行商品の改良・改善に努めていますが、これに加え、お客様のご要望を先取りした次期商品の開発、及び事業の基盤となる製造プロセス技術、設備技術の改善・改良を進めました。また、グループ全体として有望な新規商品については、社内インキュベーションセンターによって、開発・事業化を加速させました。更に、近未来を見据えた新しいコンセプトの商品や革新的新技術に関する基礎研究領域については、大学等との交流を大幅に拡大し、数多くの共同研究を実施することによって、将来有望な開発テーマを着実に創出して来ています。これらの研究開発活動により、現在から近未来に渡る広範囲のフェイズにおける「技術立社」を推進しています。
当連結会計年度における研究開発費の総額は4,552百万円です。
なお、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 ② 連結損益計算書」の当連結会計年度における「開発研究費」は5,594百万円ですが、これには研究開発費のほか、新鉱床探鉱費等1,041百万円が含まれています。
各セグメントの研究開発活動、主な成果及び研究開発費は次のとおりです。
環境・リサイクル部門
環境リサイクル事業の競争力強化に向けて、環境技術研究所が関連事業所と連携して「リサイクル技術の開発」「廃棄物処理技術の開発」「土壌・地下水汚染の浄化技術開発」等に取り組みました。
主な成果としては、次のようなものが挙げられます。
リサイクル技術では、小型家電リサイクルなどに有効な選別技術によってリサイクル産物の品質を向上させ、事業収益に貢献しています。
廃棄物処理技術では、有害廃棄物の管理技術向上とともに、低濃度PCB廃棄物処理事業での新拠点の立ち上げにおいて技術的支援を行いました。
土壌・地下水汚染の浄化技術では、当社が開発した自然由来重金属含有土壌の浄化技術であるDME(乾式磁力選別処理)工法の信頼性評価を進め、処理業の手法として正式に認められました。
また、ブランドビジョン「motivate our planet」のもとに、将来事業、グリーンビジネスの可能性について、事業・技術の両面から検討を行っています。
なお、当部門における研究開発費は324百万円です。
製錬部門
今後の製錬事業を発展させるために抱えている課題を着実に解決すべく、製錬技術研究所を中心とし各事業所及び大学、研究機関更には民間研究施設を利用することによって「電気亜鉛の生産性向上」「電力使用量の削減」「有価金属の高効率回収技術の確立」「環境負荷低減技術の構築」に精力的に取り組みました。
主な成果としては、次のようなものが挙げられます。
電気亜鉛の生産性向上では、秋田ジンクリサイクリング㈱における精製液の直接電解を可能とさせるべく、実機試験を実施し、従来の電着荒れの改善は出来ました。ただ電流効率低下を克服できなかったことや夏期休転限定という条件により事業化までに更なる検討を進めます。
電力使用量の削減に関しては、当年度3年目に入った経済産業省/独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の委託試験事業「高不純物銅アノードによる電解精製の実現」を計画的に遂行し、実機設備での鋳造及び電解を行い、実機試験での120時間以上の連続電解を可能としました。最終年度は精製に際してのロスをいかに低減させるか精力的に取り組んで成果に繋げていきます。
有価金属の高効率回収技術の確立に関しては、鉛銀残渣からのインジウム、ガリウム、ゲルマニウムの回収率を向上させるべく、処理方法改良に取り組んでおり、技術的なハードル及びメタル価格の下落を鑑み、ゲルマニウムに特化しました。硫化の条件を調整することによって目標の回収率を得ることを見出しており、細かい条件を詰めて実生産に反映していきます。
半製品からのアンチモン回収については、これまで検討したプロセスを実機で確認したところ、脱Sb速度に改善の余地が残っていることが判明し、反応容器内での拡散を促進させることにより、課題は解決できました。また高純度化に関しても一定のプロセスを提案できるに至り、経済状況などを踏まえて事業化を判断する段階まで到達できました。
環境負荷低減技術の構築に関しては、スコロダイト製造に関する安全性、経済性、環境性を総合的に捉えた有益性を向上させました。神戸で開催される国際学会COPPER2016においてPRする予定です。
なお、当部門における研究開発費は309百万円です。
電子材料部門
グローバルな競争、流動的な経済情勢の中で、更に成長・発展し、変化に対応するための技術力強化とトップ商品の拡充を目的として、足元並びに将来の市場動向を見据えた戦略的な研究開発に取り組みました。
具体的には、半導体材料研究所、電子材料研究所、機能材料研究所並びに各事業所の技術開発部門において、化合物半導体、オプトデバイス、導電性材料、磁性材料、各種機能性粉体などで、新たな市場開拓・用途展開を見据えての新製品の開発・現行製品の品質改善・生産性の向上に取り組みました。
再生可能エネルギー関連の電極材料に使用される導電粉及びヘルスケア向け赤外LEDは、重点テーマとして継続的に取り組んでいます。
また、新たな分野・用途開発として民生、医療の分析・殺菌等向けに深紫外LED、電子部品等への低温焼結・接合用途に金属ナノ粒子、フィラー及び燃料電池用材料等の開発にも引き続き積極的に取り組んでいます。
主な成果として、導電性フィラーでは市場課題の技術的な改善及び新規用途での良好な評価を得る事が出来ました。また、燃料電池用材料は、増販・販路拡大への目途が立ち今後の収益への貢献が期待されます。
なお、当部門における研究開発費は2,900百万円です。
金属加工部門
金属加工事業分野では、車載用標準材である「NB-109」「NB-105」といった銅合金のお客様使用特性の改善、及びめっき技術開発などを行い、世界標準材としての位置付けを固めていきます。また、スマートフォン用など小型コネクタ材として必須の高強度材「YCuTシリーズ」に新たなプロセスを開発し、ばね性の高い新商品「YCuT-GM」をラインナップしました。並行してこれらの生産性向上にも取り組んでいます。
めっき事業分野では、エコカー向け貴金属めっき材の機能特性向上及び省資源化に貢献する、部分めっきの高精度化・高効率化に取り組んでいます。
サーマルデバイス事業分野では、主力製品である金属セラミックス接合基板の信頼性・生産性向上に引き続き取り組んでおり、改良品をリリースしていく予定です。
新エネルギーや鉄道、エコカー向けに新製品である新構造基板の市場投入を開始しており、引き続き製造プロセスの改善、生産性向上、コストダウンに取り組んでいます。
なお、当部門における研究開発費は558百万円です。
熱処理部門
顧客ニーズを的確に捉えた新商品開発を目指し、既存技術と要素技術を融合させた新たな次世代商品を顧客と一緒に創出することで、熱処理・工業炉両事業部門に貢献するとともに世界No.1の熱処理メーカーをめざして商品開発に取り組みました。
工業炉事業分野では、顧客の環境変化を的確に捉え、今後益々加速する海外現地化や生産規模が縮小する国内生産に対応し、小規模かつ低コストな熱処理設備の開発を進めました。小ロットで汎用性のある真空浸炭や真空焼結向け小規模真空熱処理設備を開発導入し、要素技術の検証に着手しました。また、小型MIM・CIM装置も導入し、顧客からの試作対応及び装置導入における検証を開始しました。
熱処理事業分野では、自動車部品の高強度化を目的として開発した新窒化工法を更に進化させ、複雑で高精度の雰囲気制御が不要な新工法の開発目途付けが完了しました。平成28年度は進化版窒化の量産設備開発に取り組みます。また摺動部品や電子材、生体材など多岐用途への適用を目指しているDLC膜開発では、量産化試験を実施し商品化と適用拡大を進めています。
この他に既存設備のQCD改善技術開発も継続的に行っており、両事業部門の売上拡大に寄与するとともに、顧客とのパートナーシップ強化に貢献しました。
なお、当部門における研究開発費は460百万円です。
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されており、この連結財務諸表の作成にあたっては、決算日における財政状態、経営成績に影響を与えるような見積り・予測を必要としています。当社グループは、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り・予測を実施しています。
① 貸倒引当金
当社グループは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については過去の一定期間における貸倒実績から算出した貸倒実績率により計上し、貸倒懸念債権については個別に債権の回収可能性を検討し回収不能見込額を計上しています。
② 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について、将来の課税所得及び継続的な税務計画をもって検討し、全部又は一部を将来実現できないと判断した場合、当該判断を行った期間に調整額を費用として計上しています。
③ 退職給付に係る負債
従業員の退職給付費用及び債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されています。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率及び年金資産の期待運用収益率などが含まれます。当社グループは、割引率を主に日本国債の金利により決定しているほか、報酬水準の増加率及び従業員の平均勤務期間については当社グループの過去の実績値に基づいて決定しています。
④ 環境対策引当金
「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」(平成13年6月22日 法律第65号)及び「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法施行令の一部を改正する政令」(平成24年 政令第298号)の規定により、ポリ塩化ビフェニル廃棄物を保有している事業者は適切な保管と届出が要求され、平成39年3月31日までに処分することが義務付けられました。
当社グループは、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の処理に係るコストが、当連結会計年度以前の事象により起因して将来発生するものであること、及び金額を合理的に見積ることが可能であることなどにより、当連結会計年度末における処分費用の見積額を計上しています。
⑤ 固定資産の減損
当社グループは、主として事業グループ単位を資産グループとし、遊休資産は個々の資産グループとしています。
減損の兆候がある資産グループについては、当該資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額がこれらの帳簿価額を下回る場合には、減損損失を特別損失に計上しています。なお、資産グループの回収可能価額は、正味売却価額により測定しており、時価については不動産鑑定評価額等合理的に算定された評価額に基づいて算定しています。
⑥ その他有価証券等の減損
当社グループは、長期的な取引関係の維持のために、特定の顧客及び金融機関に対する持分を所有しています。これらの株式には価格変動性が高い公開会社の株式と、株価の決定が困難である非公開会社の株式が含まれます。
当社グループは投資価値が著しく下落しかつ回復可能性がないと判断した場合、これら有価証券の減損を実施しています。公開会社の株式は、期末月平均の株価が取得原価の50%を下回った場合、また非公開会社の株式は、原則として当該会社の実質価額が取得原価の50%を下回った場合に、回復する見込が合理的に予測できる場合を除き減損処理を行うこととしています。
(2) 当連結会計年度の財政状態の分析
① 資産の部
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比較して14,772百万円減少し364,420百万円となりました。流動資産11,552百万円の減少、固定資産3,220百万円の減少となります。
流動資産の減少は、現金及び預金が10,847百万円増加した一方で、原材料及び貯蔵品が11,036百万円、受取手形及び売掛金が10,924百万円減少したことなどによるものです。
固定資産の減少は、建設仮勘定が4,392百万円増加した一方で、投資有価証券が5,991百万円、機械装置及び運搬具が1,491百万円減少したことなどによるものです。
② 負債の部
負債については、前連結会計年度末と比較して22,493百万円減少しました。これは、未払法人税等が6,117百万円、有利子負債が5,532百万円、その他流動負債が4,437百万円減少したことなどによるものです。
③ 純資産の部
純資産については、親会社株主に帰属する当期純利益が21,826百万円となり、配当金の支払いなどを行った結果、株主資本が16,480百万円増加しました。また、その他の包括利益累計額がその他有価証券評価差額や為替換算調整勘定の減少などにより8,681百万円減少しましたが、純資産合計では前連結会計年度末に比較し7,720百万円増加しました。この結果、自己資本比率は53.5%となりました。
(3) 当連結会計年度の経営成績の分析
① 売上高
当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度と比較し、金属価格が総じて下落したことや自動車関連製品の販売が減少したことなどから、製錬部門や電子材料部門などで減収となりました。この結果、前連結会計年度の464,219百万円に対し12.4%減少し406,598百万円となりました。
② 売上原価、販売費及び一般管理費
当連結会計年度の売上原価は、売上高の減少に伴い前連結会計年度の391,509百万円に対し13.8%減少し337,314百万円となりました。
これらの結果、売上高に対する売上原価率は前連結会計年度の84.3%に対し、83.0%となりました。
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、開発研究費の増加などにより、前連結会計年度の33,616百万円に対して1.8%増加し、34,216百万円となりました。
③ 営業利益
当連結会計年度の営業利益は前述の要因により、前連結会計年度の39,094百万円に対し10.3%減少し、35,067百万円となりました。
④ 営業外収益(費用)
当連結会計年度は、持分法による投資利益の減少などにより、前連結会計年度の2,942百万円の収益(純額)に対し、11百万円の費用(純額)となりました。
⑤ 特別利益(損失)
当連結会計年度は、特別利益で投資有価証券売却益など2,053百万円を計上しましたが、特別損失では、減損損失及び投資有価証券評価損など5,287百万円を計上しました。
これにより、当連結会計年度の特別利益から特別損失を差引いた純額は、前連結会計年度の221百万円の損失に対し、3,233百万円の損失となりました。
⑥ 税金等調整前当期純利益
当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度の41,816百万円に対し、23.9%減少し31,822百万円となりました。
⑦ 法人税等
当連結会計年度の法人税等は10,099百万円となりました。税効果を適用した当連結会計年度の税金等調整前当期純利益に対する法人税等の比率は、法定実効税率の33.5%より1.8ポイント低い31.7%となりました。
⑧ 非支配株主に帰属する当期純利益(損失)
非支配株主に帰属する当期純利益は、主に㈱日本ピージーエム、DOWA IPクリエイション㈱などの非支配株主に帰属する利益からなり、当連結会計年度は、前連結会計年度の非支配株主に帰属する当期純利益158百万円に対し、262百万円減少し非支配株主に帰属する当期純損失103百万円となりました。
⑨ 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度の26,543百万円に対し、17.8%減少し21,826百万円となりました。
(4) 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループは、コアビジネスである環境・リサイクル部門、製錬部門、電子材料部門、金属加工部門、熱処理部門を中心に事業を行っており、このうち、当連結会計年度の売上高の52.9%を占める製錬部門は、非鉄金属相場及び為替相場の変動の影響を受けやすいため、状況に応じて非鉄金属先渡取引及び為替予約取引などによりリスク軽減に努めています。
当社グループでは、今後も収益性の向上及び財務体質の改善に努めていきますが、非鉄金属相場及び為替相場の急激な変動、景気動向などの外的要因により業績に影響を受ける可能性があります。
(5) 戦略的現状と見通し
当年度の主な施策等は次のとおりです。
環境・リサイクル部門
○ 廃棄物処理事業では、低濃度PCB廃棄物の処理拡大に向けて、エコシステム山陽㈱において増処理を進め、エコシステム秋田㈱において新炉を竣工し、許認可を取得しました。また、エコシステム秋田㈱、エコシステム千葉㈱、エコシステム山陽㈱の各工場において、引き続き難処理廃棄物の集荷拡大を進めるなど、収益力強化に取り組みました。
○ 土壌浄化事業では、増加が見込まれる大型公共投資関連の需要に向けて、エコシステム花岡㈱において新たな浄化技術を採用した施設を竣工し、営業を開始しました。
○ リサイクル事業では、人員増強などによりアジアなどからの金属リサイクル原料集荷体制の強化に取り組みました。また、自動車リサイクルや家電リサイクルにおいて有価物の分別・回収強化などに取り組みました。
○ 東南アジアでは、ミャンマーにおいて最終処理施設を立ち上げ、廃棄物の受け入れを開始しました。また、インドネシアやタイにおいて拠点拡充に向けた取り組みを進めました。
製錬部門
○ 貴金属銅事業では、小坂製錬㈱においてより多様なリサイクル原料の処理と貴金属やスズなど金属回収の拡充を図るため、不純物処理能力向上に着手しました。
○ 白金族回収事業では、使用済み自動車触媒の海外での集荷体制の強化を図りました。また、㈱日本ピージーエムにおいて設備増強を進めました。
○ 亜鉛事業では、秋田製錬㈱においてエネルギーコストの削減や生産性向上による亜鉛の増産に継続して取り組みました。また、タイの拠点を活用し、東南アジア市場への拡販に取り組みました。
○ 自社製錬所向け原料の長期的な安定確保を図るため、アメリカ・アラスカ州のパルマー亜鉛・銅プロジェクトにおける探鉱活動や、メキシコ・チワワ州のロス・ガトス亜鉛プロジェクトにおける開発に向けたフィージビリティー・スタディーを継続しました。
電子材料部門
○ 半導体事業では、DOWAセミコンダクター秋田㈱においてセンサー用高出力LEDの生産性向上に取り組みました。また、ヘルスケア機器向けなど新規用途への製品開発を進めました。
○ 電子材料事業では、銀粉の生産体制の強化に取り組むとともに、堅調な電極材料向けへの拡販を進めました。
○ 機能材料事業では、DOWAエレクトロニクス岡山㈱においてデータテープ用次世代材料の生産能力増強に取り組み、拡販を進めました。
○ 滅菌・殺菌機器向け深紫外LEDや接合材料向けナノ銀、燃料電池向け電極材など新規開発品の更なる特性改善やサンプルワーク拡大などに取り組みました。
金属加工部門
○ 伸銅品事業では、自動車向けや情報通信端末向けに導電性や強度などの特性を高めた銅合金を開発・拡販しました。国内では、DOWAメタル㈱及びDOWAメタニクス㈱において生産性改善などに取り組みました。また、アジアでの事業拡大に向けて、台湾においてプレス加工工場の建設を進めました。
○ めっき事業では、国内での生産性向上やタイでの増産により自動車向けに拡販を進めるとともに、新たにメキシコに拠点を設立しました。また、次世代自動車向けに耐摩耗性を高めためっき品の生産を開始しました。
○ 回路基板事業では、コスト競争力強化を図るとともに、鉄道向けなどの新規ユーザーへの拡販に取り組みました。また、次世代自動車向けに小型軽量・高放熱などの特長を有する新規製品の量産を進めました。
熱処理部門
○ 工業炉事業では、新たに拠点進出したメキシコにおいて拡販を進めるとともに、インドや米国においても販路拡大に取り組みました。また、国内において浜松北工場への設計・製造・メンテナンス拠点の統合を進めました。
○ 熱処理事業では、インドにおいて新規拠点の建設に着手するなど、海外の生産能力増強に取り組みました。国内では市場動向に対応した生産工程の統合を進めました。また、更なる生産性向上のため、コスト競争力のある小型熱処理設備の開発に取り組みました。
(6) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローについては、「第2 事業の状況 1 業績等の概要 (2) キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
当社は、金融情勢を勘案して保有現預金残高を決定するとともに、短期流動性確保の手段として、複数の金融機関とコミットメントライン契約を締結しているほか、短期社債(電子CP)の発行枠250億円を設けています。長期性資金については、機動的な調達手段として、社債300億円の募集に関する発行登録(発行予定期間:平成27年3月27日~平成29年3月26日)を行っています。
また、当社グループは、グループファイナンスを行うことで、グループ各社の資金の一元管理を行い資金効率の向上を図っています。
(7) 経営者の問題認識と今後の方針について
本項目については、「第2 事業の状況 3 対処すべき課題 (1) 対処すべき課題の内容及び具体的取組状況」に記載のとおりです。