当社グループは、1884年(明治17年)の創業以来、時代の変化とともに事業内容を様々に進化させてきました。現在では、5つのコアビジネス(環境・リサイクル、製錬、電子材料、金属加工、熱処理)からなる独自の「循環型ビジネスモデル」を形成し、企業理念の実現を目指しています。
当社グループの「循環型ビジネスモデル」を構成する製品・サービスは、いずれも社会の根幹を支えているとともに、経済活動に伴う環境負荷の低減に寄与しています。そのため、これらの製品・サービスを発展的に進化させ続け、様々な社会課題の解決に取り組むことが重要であると考えています。
これからも社会の変化に適応しながら、5つのコアビジネスをそれぞれに進化させ、サステナブルな社会の実現に貢献する製品・サービスを提供し続けることにより、当社の企業価値の最大化を目指していきます。
≪価値創造ドライバー:循環型ビジネスモデル≫
DOWAグループは、5つの事業領域を組み合わせた独自の循環型ビジネスモデルを構築しています。
世界中から廃棄物やリサイクル資源を集めるネットワークを保有し、多種多様な金属のリサイクルをするとともに、リサイクルできない廃棄物を適正に処理し環境負荷の低減を図っています。また、世界を変える技術革新に貢献する素材の生産や、製品の寿命を伸ばす技術・サービスを提供しています。
循環型ビジネスモデルを通じた社外との連携により新たな価値を創出することで、循環のクオリティを追求し、本質的な循環を実現します。

(2) 経営環境及び対処すべき課題等
当社は2022年度より、「循環型ビジネスモデルの進化」と「サステナビリティ・マネジメントの強化」を基本方針とする「中期計画2024」(対象期間:2022年度~2024年度)を推進してきました。また、その進捗を踏まえ、2025年5月に2025年度~2027年度を対象期間とする「中期計画2027」を公表しました。
なお、「中期計画2027」の詳細につきましては、当社ウェブサイトをご参照ください。
https://hd.dowa.co.jp/ja/ir/strategy/plan.html
<中期計画2024のレビュー>
施策につきましては概ね計画通りに実行し、「循環型ビジネスモデルの進化」では新製品・新技術の実用化が進みました。また、「サステナビリティ・マネジメントの強化」では、活動の効率化を図り事業貢献に直結させるフェーズへと移行しました。事業投資は計画に基づいて実施し、一部は収益貢献を果たしました。加えて、事業ポートフォリオの見直しにより、収益性や経営効率の向上を進めました。一方で、金属価格の下落やエネルギー価格の上昇といった外部環境の変化に加え、販売面では一部の製品・サービスで市場や競争環境の変化が生じた結果、最終年度の財務数値は目標未達となりました。
今後は、これまでの施策や投資成果の刈り取りに注力するとともに、新たな変化への対応を進めていきます。
《注力テーマのレビュー》


《財務目標の達成状況》

<中期計画2027(対象期間:2025年度~2027年度)>
① DOWAグループが目指すもの
近年、日本は大量生産・大量消費・大量廃棄型の「線形経済(リニアエコノミー)」から、あらゆる段階で資源を効率的かつ循環的に利用し、ストックを有効活用しながら、サービス化等を通じて付加価値の最大化を図る「循環経済(サーキュラーエコノミー)」への移行を目指しています。そのため、これからは環境を守り、限りある資源を有効活用しながら、経済を発展させることが一層求められます。
当社グループは5つの事業領域を組み合わせた独自の「循環型ビジネスモデル」を推進しており、循環経済への移行はグループにとって大きな追い風となります。複合的かつ長期的である本質的な循環を目指し、140年にわたり積み上げてきた技術や「循環型ビジネスモデル」をドライバーとしてクオリティの高い循環の実現を目指します。
循環のクオリティを追求し続けることにより、持続可能な社会の実現に貢献するとともに、企業価値のさらなる向上を図っていきます。

② 基本戦略
「中期計画2027」においては、企業価値の向上に向けて、「価値の創出」・「変動の抑制・期待の醸成」を基本戦略とし、成長事業の強化、新規事業・製品の開発、資本効率の向上、リスクの低減等の施策を推進します。
各取り組みの詳細は「中期計画2027」の公表資料をご参照ください。

③ 経営目標
「中期計画2027」の経営目標及び前提条件は、次のとおりです。
《財務目標》
※ROA:総資産経常利益率(経常利益/期首・期末平均総資産)
ROE:自己資本当期純利益率(親会社株主に帰属する当期純利益/期首・期末平均自己資本)

《前提条件・感応度(営業利益/年)》
④ 資本政策・資本配分方針
「中期計画2027」の資本政策は、事業から生み出す資金で資金需要を賄うことを基本とし、健全な財務基盤を前提に、事業投資による利益向上や段階的な株主還元の拡充を行うこととしています。
《株主還元方針》
当社は、株主の皆様への利益還元を経営における最重要課題の一つと位置付けています。「中期計画2027」の資本政策は、事業から生み出す資金で資金需要を賄うことを基本とし、健全な財務基盤を前提に、事業投資による利益向上や段階的な株主還元の拡充を行うこととしています。
本方針を踏まえ、「中期計画2027」の期間(2025年度~2027年度)の株主還元方針は、次のとおりとします。

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 全般
a サステナビリティ関連方針
当社グループは、サステナビリティ基本方針を制定しています。また、サステナビリティ基本方針を頂点とするサステナビリティ方針体系を整備し、企業理念やビジョンの実現へとつながる、各サステナビリティ分野における方向性を明確にしています。

b サステナビリティ推進体制
当社グループは、企業理念及びサステナビリティ基本方針に基づき、サステナビリティの取り組みをグループ一体で推進していくため、代表取締役社長を議長とする「サステナビリティ推進会議」と、その傘下に経営企画担当役員を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置しています。

《サステナビリティ推進会議》
サステナビリティ推進会議では、サステナビリティに関する重要な方針や施策及びその進捗等について審議・決定を行います。重要な事項につきましては取締役会へ報告し、定期的に監督を受けています。
サステナビリティ推進会議は、「DOWAグループのマテリアリティ」等当社グループのサステナビリティに関する重要課題を検討テーマとしています。
《サステナビリティ委員会》
サステナビリティ委員会は、経営企画担当役員を委員長とし、DOWAホールディングス㈱(以下、HDという。)各部長、事業会社企画室長等で構成されています。関連部署が連携しながらグループ全体で各種の取り組みを推進しています。
本委員会は毎月開催し、「DOWAグループのマテリアリティ」に関して、方針や対応策の検討、取り組みの進捗確認等を行っています。特に重要度の高い案件につきましては「サステナビリティ推進会議」に報告し、審議する仕組みとしています。
「中期計画2027」においては、「中期計画2024」の活動実績や各項目の重要性を踏まえて「DOWAグループのマテリアリティ」を設定しています。
a 基本的な考え方
当社グループは、経営に重大な影響を及ぼす危機を未然に防止し、万一発生した場合の被害を極小化するため、リスクマネジメントの高度化に取り組んでいます。また、各事業活動における顕在的・潜在的リスクの洗い出し、対応策の実施、レビュー、監査という一連のリスクマネジメントフローの強化・充実を進めています。
b リスクマネジメント体制
当社グループは、下図のとおり、3線ディフェンスをモデルとした内部統制上の「Ⅳ線ディフェンス体制」を基軸とするリスクマネジメント体制を構築しています。
生産等の操業を担う事業子会社(第Ⅰ線)及びそれらを統括する5つの事業会社(第Ⅱ線)が定期的なリスク評価を含むリスクマネジメントサイクルを実施し、持株会社である当社各部(第Ⅲ線)が必要な指示・監督・サポートを行います。また、当社監査部(第Ⅳ線)が監査を実施し、これらの有効性を評価します。
リスクは、「戦略リスク」、「経済リスク」、「オペレーションリスク」、「ハザードリスク」の4つを大区分とし、それぞれにリスクシナリオ詳細を設け、COSO及びJISQ2001を参照した統合的なリスクマネジメントを図っています。「戦略リスク」、「経済リスク」は主に経営戦略会議及び経営執行会議にて、「オペレーションリスク」、「ハザードリスク」は主にサステナビリティ推進会議にて、リスクマネジメントの状況を監督します。更に、各会議の審議において重要とされた事項は、取締役会へ報告し、監督を受けます。

a 「中期計画2024」におけるマテリアリティの指標及び目標
DOWAグループのマテリアリティの指標及び目標は次のとおりです。
(注) 1 本項目の「リサイクル原料」には、小坂製錬向けリサイクル原料以外の2次製錬原料等を含みます。
2 取組の詳細につきましては、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2) 気候変動対応」に記載しています。
3 HD籍と記載があるのは、当社から社外への出向者を含み、社外から当社への出向者を除いた人員です。
b 「中期計画2027」におけるマテリアリティの指標及び目標
DOWAグループのマテリアリティの指標及び目標は次のとおりです。
《環境》
《社会》
《ガバナンス》
(2) 気候変動対応
① ガバナンス
気候変動に関するガバナンスは、グループ全体のガバナンスに統合されています。詳細は「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1) 全般 ① ガバナンス」をご参照ください。
また、「気候変動対応ワーキンググループ」を設置し、実行計画のモニタリング等の事業競争力の強化を両立した気候変動対策を推進しています。
② 戦略
「中期計画2027」において、気候変動対応を重要課題(マテリアリティ)の一つとし、全社の推進体制を整え、2050年までのカーボンニュートラル実現を目指した活動を推進しています。
これまでは、TCFD提言のフレームワークに基づいた「TCFDレポート」や、当社グループの気候変動に対する活動状況と新たな目標等を示した「カーボンニュートラル社会の実現に向けて ~2030年度に向けた取組みと2050年カーボンニュートラル実現に向けたロードマップ~」を公表しています。
なお、「気候変動対応」の詳細につきましては、
https://hd.dowa.co.jp/ja/csr/environment/climate-change.html
「
https://hd.dowa.co.jp/ja/csr/environment/climate-change/main/01/teaserItems1/00/linkList/0/link/DOWA_TCFD_report_2205.pdf
「
https://hd.dowa.co.jp/ja/csr/environment/climate-change/main/010/teaserItems1/01/linkList/0/link/DOWA_2050CN_roadmap_ja.pdf
③ リスク管理
気候変動に関するリスク管理は、グループ全体のリスク管理に統合されています。詳細は「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1) 全般 ③ リスク管理」をご参照ください。
《物理リスク対策の推進》
近年、豪雨や台風等の気象災害の激甚化、頻発化により気象災害への備えの重要性が拡大しています。当社は気候変動の物理リスクへの対応として、国内すべての生産拠点を対象として立地する地域の自然災害に対する脆弱性についてのリスク調査を行っています。洪水、浸水、高潮、土砂崩れ等に加え、地震や津波、火山などの幅広い災害を対象としてリスク評価を行い、評価結果を事象ごとに整理したうえで、特に優先度の高い災害や地域については、各拠点のBCPや防災計画に反映し対策を進めています。
④ 指標及び目標
a 2050年のカーボンニュートラル実現に向けて
b 2030年度のGHG排出削減目標
当社グループの日本国内で排出するスコープ1及び2の2030年度のGHG排出目標は、1,200千t-CO2です。今後、社会動向や技術革新等の変化を注視し、中長期の視点でさらなる削減に取り組んでいきます。なお、スコープ3のGHG排出量は2024年度より公表を開始しましたが、引き続き目標への取り入れについて検討を行っていきます。

上記のGHG排出目標は、日本政府が掲げる「2030年度において温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指す」ために策定された『地球温暖化対策計画』の区分ごとに設定した削減目標に基づいています。
当社グループのGHG排出量の実績(スコープ1、スコープ2、スコープ3)につきましては、
https://hd.dowa.co.jp/ja/csr/esg/data/environment.html#environment_08
c 2030年度の製品・サービスによる貢献目標
当社グループは、社会の気候変動対策に貢献する幅広い製品・サービスを提供しています。再生可能エネルギーに欠かせない太陽光パネル用銀粉や燃料電池・EV向けの金属材料、また使用済みリチウムイオン電池や太陽光パネルのリサイクル等、サプライチェーンを通じてGHG排出削減に貢献する製品・サービスが数多くあります。また、今後の脱炭素社会に向けて欠かせない非鉄金属を、リサイクルをはじめとする持続可能な資源循環プロセスを組み入れた循環型ビジネスモデルによって社会に提供しています。
このような当社グループならではの貢献を「DOWAグリーンアクション(略称:DGA)」と名付けるとともに、2030年度の目標を設定し、取り組みを推進しています。DGAは、対象とする製品・サービスがサプライチェーンのどの段階でどのような効果をもたらすか等の複数の軸で分類し、環境・社会貢献及び利益貢献等の評価基準に基づいて選定しています。当社グループは、今後もDGAの拡充・拡販並びにその創出を支える技術開発を推進していきます。
なお、「DGA」の詳細につきましては、
https://hd.dowa.co.jp/ja/csr/environment/climate-change.html
(3) 人的資本
当社グループは、人材がすべての企業活動の基本と考えています。長い歴史の中で多くの困難を乗り越えられたのは、その時々に顕在化した課題に正しく向き合って、課題解決に取り組むために開発、製造、販売、管理等当社グループ各職場の最前線で働く一人ひとりの力が結集したからです。
グループの永続的な発展のためにも、更には世の中から求められる企業グループであり続けるためにも、私たちは企業理念に共感した一人ひとりの力を結集させて「成長し続ける組織」を目指します。
① ガバナンス
② 戦略
《人材育成の環境整備に向けた取組》
・現場の最前線で働く社員を対象とした研修プログラムを充実させます
・学びたいという意欲さえあれば、日程や時間帯や地域等縛られずに受講できる、充実したオンライン研修プログラムを用意します
・個人の能力に留まらず一人ひとりの力を結集させるために、メンバーの長所を活かしてチーム力を高める組織運営プログラムを導入します
人的資本に関する2030年のありたい姿を、「経済的価値と社会的価値との両立を図り、成長し続ける人と組織をつくる」と定め、「成長し続ける人と組織」の状態につきましては、次のとおり3つに分けて定義しました。
・様々な社会課題の解決に貢献する当社事業の価値と役割に社員それぞれが共感している
・社内外への情報開示の結果、社員エンゲージメントが高まり、DOWA全体で成果発揮できている
・多様な人材や価値観を尊重し、能力を発揮できる環境下で変化とチャレンジが促進されている
ありたい姿の達成に向けた取り組みは次のとおりです。
ⅰ 勝ち抜ける人材層の拡充
a グループ全体での採用力の強化
日本は少子高齢化が進行しており、総務省の労働力調査によると日本の2024年度平均の就業者数は6,793万人と、前年度に比べ37万人増加していますが、近年の出生率低下もあり、今後の労働力は加速度的に減少していく見通しです。2030年を過ぎたところで労働供給制約社会に入るという予測もあり、社会全体で人手が不足する状態であり、各方面で人の取り合いとなり、転職の増加や人の流動化が進む見込です。
当社にとっても人材確保は喫緊の課題であり、グループ全体での採用力を強化していく必要があるため、新卒採用・キャリア採用を更に強化し、採用及び人員の定着を図ること、また、グループ全体の認知度向上を図ることを基本方針として、施策を推進します。
また、当社では、若手社員に対する定期的な面談を継続して実施しており、仕事への動機づけや上司部下間のコミュニケーション向上に努めています。職場全体での計画的な育成を通じて新入社員の着実な成長を促進し、HD社員の新卒入社3年後の定着率100%を目指します。
b 中核人材の育成
当社は、これまで社員の自ら「学びたい」という意欲をより尊重し、自律的に学ぶ風土の醸成を目指すため、より自由度の高い選択型教育制度のシステムを導入し、運用を改定して受講を促進しています。外部環境の変化が激しく正解を見出しづらい時代においては、社員一人ひとりが自己の能力を最大限発揮できる組織とすることが組織力強化につながると考え、今後も意欲ある社員の成長促進の支援として、学びたいときに学べる環境を整備します。
一方で、これまでと同様に階層別教育も重要な教育機会と捉え、研修内容のブラッシュアップに取り組むほか、選択型教育と階層別教育を組み合わせたメニューも整備し、グループ全体で育成強化を目指します。
ⅱ 働きたいと思う組織づくり
日本において人口の減少が見込まれる中、出産・育児そして介護といったライフステージの変化を経ながらも、長く働くことができ、そしてそれぞれの社員が自己実現に向け取り組めるような環境づくりが必要です。当社では働き方や価値観が多様化する現代において、社員が安心して働き続けられる制度の整備に加え、やりがいを持って働ける環境を提供し、社員自らが働き続けたいと思える組織づくりを進めていきます。
具体的な取り組みとしては、処遇制度の見直し・改定による多様な働き方の支援や健康経営の更なる促進、また、働き方改革・ダイバーシティーの推進や社員エンゲージメント向上のための施策を推進します。これらの施策を通じて、社員が安心して働き続けられる魅力的な職場を実現し、組織全体のエンゲージメントと生産性の向上を図ります。
ⅲ 社内外に開かれた会社
現代社会においては、情報の透明性とデータ活用がますます重要視されています。各社が持つ人的資本の価値を対外的に明示することが、企業の信頼性と競争力を高める要素となります。当社でもデータ活用による人材活用を推進し、人的資本の対外開示を進めます。また、社員に対しても会社の動きや制度に関する情報を提供することで、社内外の認知度を向上させ、外部からの評価及び社員の会社に対するエンゲージメントの向上を目指します。
具体的には、情報共有・人的コミュニケーションの促進として、DXを活用して人材を発掘し、社員のキャリア計画を強化し、社内の流動性を促進します。社員が自身の能力を最大限に発揮できる環境を整えることで、会社全体の活力を高めます。
ⅳ 人事のDX推進
当社は、2022年7月にDX認定を取得し、全社の取り組みとしてDXを推進することを社内外に宣言しました。人事部においては、過去から蓄積してきた膨大な人事関連データの統合・解析・活用を進めています。
情報を的確かつ適時に引き出せる体制づくりを進め、人材の発掘、効果的な育成、公平な処遇を目指します。
③ リスク管理
人的資本に関するリスク管理は、グループ全体のリスク管理に統合されています。詳細は「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1) 全般 ③ リスク管理」をご参照ください。
④ 指標及び目標
当社グループは、「DOWAグループのマテリアリティ」それぞれに指標及び目標を設定しています。人的資本に関する指標及び目標は、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1) 全般 ④ 指標及び目標」に記載していますので、ご参照ください。
1 基本的な考え方及びリスクマネジメント体制
「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1) 全般 ③ リスク管理」をご参照ください。
2 具体的なリスクの内容
当社グループの経営成績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには次のようなものがあります。また、当該リスクが顕在化する時期につきましては、合理的に予見することが困難であるため記載していません。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
戦略リスク
経済リスク
オペレーションリスク
ハザードリスク
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
当連結会計年度における当社グループの事業の状況につきましては、自動車の生産が低調であったことから、当社の自動車関連製品及びサービスの受注は減少しました。情報通信関連製品の販売は堅調に推移しました。また、新エネルギー関連製品の販売は第2四半期以降、調整局面が継続しています。環境・リサイクル関連サービスは廃棄物処理の受注が堅調でした。相場環境につきましては、前期と比較して平均為替レートは円安ドル高となりました。また、金、銀、銅及び亜鉛の平均価格は上昇しました。電力代等のエネルギーコストは前期と比較して減少しました。
このような状況の中、当社は企業価値の向上と持続可能な社会の実現への貢献に向け、「循環型ビジネスモデルの進化」と「サステナビリティ・マネジメントの強化」を「中期計画2024」の基本戦略とし、5つのコアビジネスのさらなる強化と経営基盤の充実化のための諸施策を着実に推進しました。
これらの結果、当期の連結売上高は前期比5.4%減の678,672百万円、連結営業利益は同7.4%増の32,226百万円、連結経常利益は同2.6%減の43,598百万円となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は同2.6%減の27,128百万円となりました。
主要セグメントごとの経営成績は次のとおりです。
環境・リサイクル部門
売上高、営業利益、経常利益の状況
(単位:百万円)
廃棄物処理事業では焼却の処理量及び処理単価は堅調に推移しました。また、溶融・再資源化の処理量は増加しました。土壌浄化事業では土壌浄化の受注が堅調に推移しました。また、不燃性廃棄物の再資源化の処理量は増加しました。リサイクル事業では当社製錬所向けのリサイクル原料の集荷量は増加し、家電リサイクルの処理量は減少しました。また、平均為替レートが前期比で円安ドル高となり、金、銀及び銅の平均価格が上昇したことが業績に寄与しました。東南アジア事業では廃棄物処理の受注が増加しました。
これらの結果、当部門の売上高は前期比19.8%増の180,142百万円、営業利益は同32.0%増の13,909百万円、経常利益は同33.9%増の14,967百万円となりました。
主要製品・主要サービスの状況
(2024年3月期第1四半期連結期間を100として指数化)
製錬部門
売上高、営業利益、経常利益の状況
(単位:百万円)
貴金属銅事業では金、銀及び銅の生産量は減少しました。PGM(白金族)事業では白金族金属価格低迷の影響を受け、使用済み自動車排ガス浄化触媒の集荷量が減少しました。亜鉛事業では亜鉛の生産量は減少しました。また、電力代等のエネルギーコストは減少しました。加えて、ヘッジコストが改善しました。一方で、亜鉛の棚卸資産の簿価切下げによる損失幅は拡大しました。製錬部門全体では、平均為替レートが前期比で円安ドル高となり、金、銀、銅及び亜鉛の平均価格が上昇したことが業績に寄与しました。営業外損益では海外鉱山にかかる収益は減少しました。
これらの結果、当部門の売上高は前期比16.2%減の266,355百万円、営業利益は同18.1%増の10,561百万円、経常利益は同5.8%減の17,142百万円となりました。
主要製品・主要サービスの状況
(2024年3月期第1四半期連結期間を100として指数化)
電子材料部門
売上高、営業損益、経常利益の状況
(単位:百万円)
半導体事業ではウェアラブル機器向け近赤外LED及び受光素子(PD)の販売は低調に推移しました。電子材料事業では太陽光パネル向けの需要が第2四半期以降、調整局面となったことに加え、競合他社との競争激化により、銀粉の販売は減少しました。一方で、半導体事業と電子材料事業では、平均為替レートが前期比で円安ドル高となったことが業績に寄与しました。機能材料事業では磁性粉の販売が低調に推移しました。営業外損益ではサンプル収入が減少しました。
これらの結果、当部門の売上高は前期比10.0%減の164,861百万円、営業損益は同2,245百万円減の592百万円の損失、経常利益は同91.2%減の310百万円となりました。
主要製品・主要サービスの状況
(2024年3月期第1四半期連結期間を100として指数化)
金属加工部門
売上高、営業利益、経常利益の状況
(単位:百万円)
伸銅品事業では自動車の生産が低調であったことから、自動車関連製品の販売は前期を下回りました。情報通信関連製品の販売は増加しました。また、銅の価格が第1四半期末にかけて上昇したことが業績に寄与しました。めっき事業では自動車向けの需要が低調に推移しました。回路基板事業では原材料費等が上昇しました。
これらの結果、当部門の売上高は前期比10.6%増の128,798百万円、営業利益は同7.1%増の5,291百万円、経常利益は同14.5%増の5,939百万円となりました。
主要製品・主要サービスの状況
(2024年3月期第1四半期連結期間を100として指数化)
熱処理部門
売上高、営業利益、経常利益の状況
(単位:百万円)
熱処理事業では国内の自動車生産が低調であったことから、熱処理受託加工の受注は減少しました。また、販売費及び一般管理費等のコストが増加しました。加えて、前期比で一時金収入が減少しました。工業炉事業ではメンテナンスの受注が増加しました。営業外損益では、為替相場が連結会計年度末にかけて円高に推移したことを受けて、為替評価損を計上しました。
これらの結果、当部門の売上高は前期比4.8%増の33,780百万円、営業利益は同13.1%減の2,110百万円、経常利益は同31.8%減の2,194百万円となりました。
主要製品・主要サービスの状況
(2024年3月期第1四半期連結期間を100として指数化)
a キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末より31,800百万円減少し、41,249百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金は12,827百万円の収入(前期比105,802百万円支出増)となりました。主に、税金等調整前当期純利益38,604百万円、棚卸資産の増加52,658百万円、及び減価償却費28,787百万円等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金は41,418百万円の支出(前期比15,156百万円支出増)となりました。主に、有形固定資産の取得による支出45,855百万円、関係会社の有償減資による収入4,847百万円、及び投資有価証券の売却による収入3,138百万円等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金は4,120百万円の支出(前期比55,084百万円収入増)となりました。主に、有利子負債の増加14,736百万円、社債の償還による支出10,000百万円、及び配当金の支払7,976百万円等によるものです。
b 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社の資金需要は運転資金及び成長分野を中心とした設備投資、研究開発投資、株主への利益配分等によるものです。当社は、これらの資金需要に対しては内部資金からの充当を主としており、グループファイナンスを通じて内部資金の効率向上に努めています。また、必要に応じて外部からの資金調達を実施しており、実施にあたっては、金融機関からの借入又は社債等の多様な手段の中から、その時々の市場環境も考慮したうえで当社にとって有利な手段を選択しています。
また、金融情勢を勘案して保有現預金残高を決定するとともに、短期流動性確保の手段として、複数の金融機関とコミットメントライン契約を締結しているほか、短期社債(電子コマーシャル・ペーパー)の発行枠450億円を設けています。長期性資金につきましては、機動的な調達手段として、社債300億円の募集に関する発行登録(発行予定期間:2025年5月3日~2027年5月2日)を行っています。
③ 生産、受注及び販売の実績
当連結会計年度におけるセグメントごとの生産実績は、次のとおりです。
(注) 1 金額は、販売価格によっています。
2 環境・リサイクル部門は、廃棄物処理、金属リサイクル、土壌浄化処理受託及び運輸事業を行っており、生産実績がないため、記載を省略しています。
3 熱処理部門は、金属熱処理加工、表面処理加工及び熱処理加工設備・その付属設備の受託生産事業を行っており、売上高が生産高であるため記載を省略しています。
4 その他は、工事の請負及び不動産の賃貸を行っており、生産実績がないため、記載を省略しています。
当連結会計年度におけるセグメントごとの受注実績は、次のとおりです。
(注) 上記以外のその他主要な製品に関しては、概ね受注から役務提供までの期間が短いため、受注状況にする記載
を省略しています。
当連結会計年度におけるセグメントごとの販売実績は、次のとおりです。
(注) 1 金額は販売価格によっています。
2 セグメント間の取引につきましては相殺消去しています。
3 最近2連結会計年度の主な相手先の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりです。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
① 当連結会計年度の財政状態の分析
a 資産の部
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比較して40,766百万円増加し673,537百万円となりました。流動資産で25,187百万円の増加、固定資産で15,578百万円の増加となります。
流動資産の増加は、棚卸資産の増加53,437百万円、受取手形、売掛金及び契約資産の増加6,695百万円、及び現金及び預金の減少31,488百万円等によるものです。
固定資産の増加は、有形固定資産の増加14,516百万円、及び繰延税金資産の増加1,912百万円等によるものです。
b 負債の部
負債につきましては、前連結会計年度末と比較して13,520百万円増加しました。これは、コマーシャル・ペーパーの増加20,000百万円、借入地金の増加14,666百万円、1年内償還予定の社債の減少10,000百万円、及び長期借入金の減少8,247百万円等によるものです。
c 純資産の部
純資産につきましては、親会社株主に帰属する当期純利益が27,128百万円となり、配当金の支払い等を行った結果、株主資本が18,402百万円増加しました。また、為替換算調整勘定の増加等により、その他の包括利益累計額が7,008百万円増加し、純資産合計では前連結会計年度末に比較し27,245百万円増加しました。この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末と比較して0.2ポイント高い59.2%となりました。
② 当連結会計年度の経営成績の分析
a 売上高
当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度と比較し、白金族金属価格低迷の影響を受け、使用済み自動車排ガス浄化触媒の集荷量が減少したこと等から、製錬部門等で減収となりました。この結果、前連結会計年度の717,194百万円に対し、5.4%減の678,672百万円となりました。
b 売上原価、販売費及び一般管理費
当連結会計年度の売上原価は、売上数量の減少に伴う原料代が減少したこと等により、前連結会計年度の635,748百万円に対し、6.9%減の592,043百万円となりました。
これらの結果、売上高に対する売上原価率は前連結会計年度の88.6%に対し、87.2%となりました。
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、給料及び手当の増加等により、前連結会計年度の51,443百万円に対し、5.8%増の54,403百万円となりました。
c 営業利益
当連結会計年度の営業利益は前述の要因により、前連結会計年度の30,003百万円に対し、7.4%増の32,226百万円となりました。
d 営業外収益(費用)
当連結会計年度は、為替差益の減少等により、前連結会計年度の14,742百万円の収益(純額)に対し、11,372百万円の収益(純額)となりました。
e 特別利益(損失)
当連結会計年度は、特別利益で投資有価証券売却益等3,370百万円を計上しましたが、特別損失では、減損損失等8,363百万円を計上しました。
これにより、当連結会計年度の特別利益から特別損失を差引いた純額は、前連結会計年度の977百万円の損失に対し、4,993百万円の損失となりました。
f 税金等調整前当期純利益
当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度の43,768百万円に対し、11.8%減の38,604百万円となりました。
g 法人税等
当連結会計年度の法人税等は10,565百万円となりました。税効果を適用した当連結会計年度の税金等調整前当期純利益に対する法人税等の比率は、法定実効税率の31.3%より3.9ポイント低い27.4%となりました。
h 非支配株主に帰属する当期純利益
非支配株主に帰属する当期純利益は、主に㈱日本ピージーエム、CONSTANTINE MINING LLC.等の非支配株主に帰属する利益からなり、当連結会計年度は、前連結会計年度の1,680百万円に対し、45.8%減の911百万円となりました。
i 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度の27,853百万円に対し、2.6%減の27,128百万円となりました。
③ 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づき作成されており、この連結財務諸表の作成にあたっては、決算日における財政状態、経営成績に影響を与えるような見積り・予測を必要としています。当社グループは、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り・予測を実施しています。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しています。
a 貸倒引当金
当社グループは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権につきましては過去の一定期間における貸倒実績から算出した貸倒実績率により計上し、貸倒懸念債権につきましては個別に債権の回収可能性を検討し回収不能見込額を計上しています。
b 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産につきまして、将来の課税所得及び継続的な税務計画をもって検討し、全部又は一部を将来実現できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産を取り崩しています。
c 退職給付に係る負債
従業員の退職給付費用及び債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されています。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準及び退職率等が含まれます。当社グループは、割引率を主に日本国債の金利により決定しているほか、報酬水準の増加率及び従業員の平均勤務期間につきましては当社グループの過去の実績値に基づいて決定しています。
d 環境対策引当金
「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」(平成13年6月22日 法律第65号)及び「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法施行令の一部を改正する政令」(平成24年 政令第298号)の規定により、ポリ塩化ビフェニル廃棄物を保有している事業者は適切な保管と届出が要求され、2027年3月31日までに処分することが義務付けられました。
当社グループは、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の処理に係るコストが、当連結会計年度以前の事象により起因して将来発生するものであること、及び金額を合理的に見積ることが可能であること等により、当連結会計年度末において、処分費用を見積計上しています。
e 固定資産の減損
当社グループは、主として事業グループ単位を資産グループとし、遊休資産は個々の資産グループとしています。
減損の兆候がある資産グループにつきましては、当該資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額がこれらの帳簿価額を下回る場合には、正味売却価額及び使用価値により減損損失を測定し、計上しています。
f その他有価証券等の減損
当社グループは、長期的な取引関係の維持のために、特定の顧客及び金融機関に対する持分を所有しています。これらの株式には価格変動性が高い市場価格のある株式と、株価の決定が困難である市場価格のない株式が含まれます。
当社グループにおいて、市場価格のある株式は期末月平均の株価が取得原価の50%を下回った場合、また市場価格のない株式は当該会社の実質価額が取得原価の50%を下回り、かつ回復する見込があると認められない場合に、減損処理を行うこととしています。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループは、コアビジネスである環境・リサイクル部門、製錬部門、電子材料部門、金属加工部門、熱処理部門を中心に事業を行っており、このうち、当連結会計年度の売上高の39.2%を占める製錬部門は、非鉄金属相場及び為替相場の変動の影響を受けやすいため、状況に応じて非鉄金属先渡取引及び為替予約取引等によりリスク軽減に努めています。
当社グループでは、今後も収益性の向上及び財務体質の改善に努めていきますが、非鉄金属相場及び為替相場の急激な変動、景気動向等の外的要因により業績に影響を受ける可能性があります。
該当事項はありません。
当連結会計年度における「開発研究費」は
各セグメントの研究開発活動、主な成果及び開発研究費は次のとおりです。
《開発研究費》
(単位:百万円)
(1) 研究開発目標
当社グループは、社会課題の解決に貢献する次世代の製品やサービスの実現に向けて、研究開発に注力しています。各事業会社はディビジョンラボ等を活用し、現行製品・サービスの改良・改善を行うとともに、当社事業開発部を中心とするグループ内及び社外との連携促進活動により、近未来のニーズに対応する新しいコンセプトの製品・サービスや革新的新技術の開発を推進しています。
また、「自動車」「情報通信」「環境・エネルギー」「医療・ヘルスケア」の4分野を高い成長が見込める市場と位置付け、独自の循環型ビジネスモデルで培ってきた、優れた素材・技術の社会実装を通じて、社会課題の解決と新たな価値創造に取り組んでいます。

(2) 各セグメントにおける研究開発テーマ及び主な成果
① 環境・リサイクル部門
② 製錬部門
③ 電子材料部門
④ 金属加工部門
⑤ 熱処理部門
⑥ 全社・その他