第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、資源事業を社業の柱とし、社会のニーズに応じた良質な資源の安定供給を図ることにより、発展・拡大してまいりました。今後とも、資源の開発・安定供給に努めてまいります。

機械・環境事業につきましては、社会のニーズに応じた良質な商品を提供するとともに、事業フィールドの拡大を図ってまいります。さらに、不動産事業や再生可能エネルギー事業につきましても、総合資源会社としてグループの総合力を発揮し、持続的成長を実現することにより、株主、取引先及び地域社会に貢献してまいります。

 

(2) 第3次中期経営計画の概要と実現に向けた取り組み

当社グループは、2024年度から2026年度の3ヶ年を対象とする第3次中期経営計画を策定し、2024年5月に公表しております。当該計画の概要は、以下のとおりであります。

 

① 長期ビジョン(2033年度のありたい姿)

資源の開発・安定供給を通じて社会に貢献するとともに、「総合資源会社」としてグループの総合力を発揮し、持続的成長を実現する。

≪2033年度の経営管理目標≫

 ROIC(投下資本利益率) 7%以上

 

当該計画期間では、第1次中期経営計画より掲げてきた長期ビジョン『資源の開発・安定供給を通じて社会に貢献するとともに、「総合資源会社」としてグループの総合力を発揮し、持続的成長を実現する。』を2033年度のありたい姿として明示し、2033年度の経営管理目標をROIC7%以上に設定しております。

ありたい姿とは、当社事業の基軸である資源事業では、資源の安定供給に努めるとともに、長年培った技術力を最大限に活かして、新規資源の確保・開発並びに鉱物資源の価値向上を図っていくこと、さらに地質コンサルティングなど鉱山周辺技術の開発に取り組み、「総合資源会社」としての事業基盤の更なる強化を目指しつつ、機械・環境事業、不動産事業、再生可能エネルギー事業など当社グループの総合力を発揮して、企業の持続的成長を実現するというものです。

その実現に向けた定量目標として、今回新たに定めたものがROIC7%以上の達成であり、これは当社が想定する資本コストであるWACC6%を上回る水準となります。

当該計画期間においては、2033年度のありたい姿からバックキャストすることで策定した成長戦略のもと、具体的な取り組みを実行してまいります。

 

② 基本方針

  ・ROIC経営を導入し管理にあたるとともに、全社から各セグメント、各セグメントから各事業所単位への浸透・定着と資本効率の向上を図る

  ・アルケロス鉱山の開発を着実に進め、操業開始を実現する

  ・鳥形山を中心とする石灰石供給体制の最適化に取り組む

  ・新市場開拓(石灰石・ポリテツ)に向けた取り組みを推進する

  ・権益(Major/Minor)やアプローチ(Green Field/Brown Field)にこだわらず、新規資源の確保と開発に取り組む

 

③ 各セグメントの戦略

イ.資源事業(鉱石部門)の取り組み

鉱物資源の価値向上に継続して取り組むだけでなく、高品位の石灰石を生産し、かつ生産量は国内最大規模を誇る鳥形山鉱山の強みをさらに活用し、国内石灰石鉱山の生産・販売体制の最適化に取り組み、鳥形山における生産量及び販売量13,500千トン/年の確保、生産効率の向上、さらにはBCPの強化を図ってまいります。

また、太平洋に面し、6万トンクラスの大型船舶への対応が可能な船積施設を有している鳥形山の強みを活かし、石灰石の海外市場開拓にも注力するなど、国内の供給体制はより堅固にしつつ、海外向け販売の拡大と新市場の開拓に柔軟に対応してまいります。

ロ.資源事業(金属部門)の取り組み

引き続きアタカマ鉱山周辺地域の探鉱を進めることで新規鉱量の獲得と収益向上を図るとともに、アルケロス鉱山の開発を着実に進め、当該計画期間の最終年度となる2026年度の操業開始と収益貢献の実現を目指してまいります。

また、今後は従来のGreen Field案件だけでなく、有望な案件にマイナーで参入することで初期段階の探鉱リスクを軽減し、かつ開発までのリードタイムが比較的短いBrown Field案件もターゲットに加え、銅をはじめとする新規鉱物資源の確保と開発に取り組んでまいります。

ハ.機械・環境事業の取り組み

環境部門の主力製品であるポリテツは、新規顧客の獲得に加え、原料の多様化に注力し、安定供給体制の構築を図ってまいります。また、台湾及びベトナムをターゲットにして現地に工場を建設し、東アジア、東南アジアから海外市場の開拓を図ってまいります。

機械部門においては、シンターラメラーフィルタの競争力強化による国内バグフィルタ市場への参入及び輸出拡大、プラズマ脱臭機の販路拡大、1人用BOX型喫煙ブース「COCOPA」の拡販に注力してまいります。

 

④ 財務指標と中長期経営目標

当該計画期間では営業利益の水準が低下する一方で、投下資本となる有利子負債と自己資本が増加する計画であることから、ROICは3~4%とWACCを下回る計画となっております。2026年度は、アルケロス鉱山の操業開始に伴う収益貢献によりROICに改善が見られ、第4次中期経営計画にはなりますが、操業2年目以降は更なる改善が図られる計画となります。

当該計画においては、長期ビジョンである2033年度ROIC7%以上の達成に向けて、現状と目標とのギャップを解消するための各施策の着実な実行と達成を目標としております。

 

(3) 第3次中期経営計画の進捗について

主な進捗状況は以下のとおりであります。

 

① 財務指標と利益計画

2024年度のROICは4.3%となり、計画に対して1.3%の上昇となりました。主な要因は、営業利益の増加に加え、有利子負債が計画を下回ったことによるものであります。

2024年度の売上高は1,967億円となり、計画に対しては153億円の増収となりました。主な要因は、金属部門の製錬における販売価格が想定を上回って推移したことによるものであります。営業利益は102億円となり、計画に対しては28億円の増益となりました。主な要因は、鉱石部門における販売価格の上昇、金属部門における想定以上の銅価格の上昇や円安の進行、機械・環境事業における環境商品の販売価格の上昇と仕入れコスト増の発現が後ずれしたことなどによるものであります。

 

② ROIC経営の導入及び推進

第3次中期経営計画の初年度となる2024年度は、ROIC経営の導入と浸透を重点施策として取り組んでおります。

ROICは、各セグメントだけでなく、各事業所並びに関係会社別に算出し、各責任者に現状把握を促すとともに、課題の洗い出しと対応策の検討・実行を進めております。短期間で一定の効果が見込まれるものには機動的に対応するとともに、中長期的な取り組みを要するものは、経営会議や関係会社中期経営計画審議会などの社内の重要な会議で、長期ビジョンの経営管理目標であるROIC7%以上の達成を意識した計画を審議・策定するなど、実効性及び影響度を判断しながら取り組みを進めております。

資本コストや株価を意識した経営への取り組みでは、2024年7月に広報・IR課を新設し、専任の担当者を置くなど、IR・SR面談などに積極的に取り組んでおります。また、資本市場の動向や株主・投資家との対話を踏まえ、自己株式の取得や、新しい株主還元方針と政策保有株式の縮減方針を策定し公表しております。

 

 

③ アルケロス鉱山の開発

2023年4月に開発工事の着手を決議したアルケロス鉱山では、主に鉱山・プラントエリアなどを造成する大規模土木工事をはじめ、坑道掘進などの鉱山建設工事や事務所・工場などの建屋建設工事を実施しており、2026年度中の操業開始を目指して開発工事を進めております。

 

④ 新市場開拓に向けた取り組み

機械・環境事業における成長戦略の施策の一つとして、台湾でのポリテツ拡販を目的とした合弁会社の設立手続きを進めております。ポテンシャルがあると判断した台湾市場において、当社及び合弁パートナーが持つ原料調達網などの強みを活かした競争力のあるポリテツの製造・販売を目指しており、2026年度中の事業開始を予定しております。

 

⑤ 権益やアプローチにこだわらない新規資源の確保と開発の取り組み

ペルー共和国における銅探鉱プロジェクト「Los Chapitosプロジェクト」は、2023年6月にCamino Minerals Corporationと参入契約を締結しており、ボーリング等の調査を実施しております。

チリ共和国における銅鉱山開発プロジェクト「Puquiosプロジェクト」は、2024年10月にCamino Minerals Corporationと、本プロジェクトの権益を50:50の割合で取得する契約を締結しております。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

当社グループは、「日鉄鉱業グループは、豊かな未来社会づくりに貢献するとともに、社員一人一人が生き生きと誇りを持って働ける企業を目指します」を経営理念としております。この理念のもと、社会課題や気候変動に対する取り組みをさらに強化し、持続可能な社会の実現と持続的な企業価値向上を図るため、社長を委員長、社内取締役と執行役員を委員とするサステナビリティ委員会を設置し、同委員会が中心となってサステナビリティ推進に取り組んでおります。

サステナビリティ委員会では、特定したマテリアリティ(重要課題)を中心とするサステナビリティ課題に関する方針や目標及び実行計画の策定、リスク及び機会の識別、対応施策の審議を行っており、定期的(年2回以上)に目標に対する進捗や施策の対応状況の評価と再検討を行っております。サステナビリティ委員会での審議事項は都度、取締役会に報告しており、取締役会がそれらの状況等を的確に捉え、各取締役の専門的知識に基づいた指示・助言を各施策に反映するなど、適切に監督できる体制を整備しております。

 


 

(2) 重要なサステナビリティ項目

上記、ガバナンス及びリスク管理を通して識別された、当社グループにおける重要なサステナビリティ項目に関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

① 気候変動に関する取り組み

イ.戦略

当社グループでは、気候変動への対応は重要な経営課題の一つであるとの認識のもと、脱炭素社会の実現へ向けた取り組みを推進し、持続的な事業活動と中長期的な企業価値の向上を目指しております。気候変動が当社グループの各事業に与える影響について、1.5℃及び4℃シナリオを想定し、リスク及び機会に関するシナリオ分析を実施しております。今後も継続的にシナリオ分析を深化させ、リスク低減や機会獲得に向けた取り組みを進めてまいります。

 

<抽出したリスク及び機会と関連した取り組み>


 

ロ.指標と目標

当社グループは、気候変動に対する取り組みとして、日本国内におけるグループ会社の直接排出量(Scope1)と他社から購入する電気等のエネルギー使用に伴う間接排出量(Scope2)を合わせた国内CO総排出量のうち、化石燃料や電気の消費に伴うエネルギー起源のCO排出量について、2030年度までに日本政府のCO排出区分別の目標※1である2013年度比38%以上の削減※2を目指してまいります。なお、生石灰製造に伴い発生する非エネルギー起源COについては、社有林のCO吸収によるカーボンオフセットの取り組みや、CCUS等の新技術が社会実装可能となった際に導入を推進することで、より一層のCO排出削減に取り組んでまいります。

また、長期目標として2050年度における当社グループの非エネルギー起源COも含めた直接、間接排出量(Scope1+Scope2)について、新技術の導入やカーボンオフセット等の対策も取り入れ、カーボンニュートラルの実現を目指してまいります。

上記の目標に対し、エネルギー使用量の削減、自家消費用再エネ発電設備の新規稼働、非化石証書による購入電力の実質再エネ化などの取り組みや、生石灰焼成炉の定期修繕に伴う燃料使用量減少などにより、2024年度の国内エネルギー起源CO排出量実績は137千t-CO(2013年度比約26%削減)でありました。

目標達成に向けた取り組みを一層推進するため、当社グループの設備投資を対象に、社内炭素価格を20,000円/t-COとするインターナルカーボンプライシング(社内炭素価格)制度を導入しております。この制度の適用により、自家消費用の再生可能エネルギー発電設備や省エネ設備などの導入を積極的に実行し、CO排出量削減に取り組んでまいります。

 

 

当社国内グループにおけるCO排出量削減目標と実績


 

※1 2030年度までの日本政府のCO排出区分別の目標

地球温暖化対策計画における「地球温暖化対策推進法に基づく政府の総合計画」(2025年2月18日閣議決定)において示されたCO排出区分ごとの削減率

※2 2013年度比38%以上の削減

※1の排出区分のうち「産業部門」である工場、事業所で消費する燃料や電力由来のCOの削減率

 

Scope1・2の実績と推移(海外含む連結範囲)(単位:千t-CO

 

2024年度

Scope1

184

Scope2

64

合計

248

 

※ 2024年度のCO排出量につきましては、信頼性、正確性、透明性等を確保するため、第三者保証機関による検証作業を行う予定であります。そのため2024年度のCO排出量は、検証結果により今後変更となる可能性がございます。なお、最新のCO排出量は当社WEBサイトのESGデータ集に掲載予定であります。

https://www.nittetsukou.co.jp/sustainability/library/esgdata.pdf

 

② 人的資本・多様性に関する取り組み

イ.戦略

当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下のとおりであります。

 

<日鉄鉱業グループ人材育成方針>

日鉄鉱業グループは、総合資源会社として持続的成長を実現していくために、人材育成制度に基づく専門人材の開発と、個々の能力を発揮できる職場環境づくりを通じて、社員一人一人が自ら考え主体的に行動する人材の育成に取り組みます。

1.自主的な学びを通じて、社員一人一人の成長を促します。

2.学びの多様化を実現し、意欲ある社員が学びたいときに学べる環境をつくります。

3.世界で活躍できるグローバルな人材を育成します。

 

当社グループはグループの持続的成長を実現していくために、上記方針に基づき人材育成に取り組んでおります。社員個々の成長の要素として「日常業務を通した経験とそこからの学び」、「上司・同僚の指導、協働」、「自己啓発・自己学習」、「階層別研修などの会社主催研修」などの育成体系を整備し、これらをシンクロさせることにより、社員個々の能力を発揮できる職場環境づくりに取り組んでまいります。

多様性確保のための社内環境整備に関する施策として、テレワーク勤務制度の制定や時差出勤制度、フレックスタイム制度などの柔軟な働き方を実現する各種制度の導入、退職した社員の再雇用のためのジョブリターン制度、配偶者の転勤に伴う休職制度など、社員一人一人が仕事と生活の調和のとれた働き方ができる環境整備に取り組んでおります。女性活躍推進については従来から課題意識を持ち、2014年より女性総合職を積極的に採用し始め、総合職社員の採用者数に占める女性比率を30%以上とする目標を掲げ採用活動を継続しているものの、総合職における女性の各種指標は男性に比べて低い状況となっております。今後も入社後のミスマッチがないように、慎重に選考を行いながら、女性社員の採用を強化した上で、特に女性社員の定着を促進するための育成や長期的に働ける環境の整備推進、管理職への登用にも積極的に取り組んでまいります。

また豊かな未来社会づくりへの貢献として、人材の多様化に向けた障がい者雇用推進にも取り組んでおります。障がいによるハンディキャップを個性と捉えて多様な才能を開花させ、長期的に就業できる環境を整備し、高い定着率を実現できる組織づくりを推進してまいります。

 

ロ.指標と目標

当社グループでは、上記「イ.戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

指標

目標

実績(当事業年度)

管理職に占める女性比率

2030年度まで5以上

3.6

管理職に占める外国人比率

2030年度まで5以上

0.0

管理職に占めるキャリア採用者比率

2030年度まで15以上

12.7

総合職社員の採用者数に占める女性比率

30以上

28.9

平均勤続年数の男女差

2以内

5.4

障がい者雇用率

2.8以上

2.55

 

(注) 当社グループでは、グループ各社の事業特性を踏まえた各々の取り組みを実施しており、当社グループとしての目標設定を実施していないことから、上記指標における目標及び実績は、提出会社単体の記載としています。

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの経営成績、株価及び財政状態等に影響を及ぼす可能性のあるリスク要因については以下のものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2025年3月31日)現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 主要事業拠点に関するリスク

① 鳥形山鉱業所(高知県)

当社グループの売上高の17.6%(当連結会計年度実績)を占める石灰石の約半量は、鳥形山鉱業所で生産されております。

鳥形山鉱業所からの出荷の大部分は海上輸送によっているため、台風の襲来等に伴う荷役作業の滞留により、生産・販売に支障を来すことがあります。また、鳥形山鉱山は、直近10年間の年間平均降水量が約4,000mmと多雨地域に位置することから、集中豪雨による生産設備への浸水等により、生産・販売に支障を来す可能性があります。

また、南海トラフ巨大地震が発生した場合、大きな揺れや津波の影響により、甚大な被害が生じることが予測されており、その被害規模によっては、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

これらのリスクが顕在化することにより、当社グループの経営方針に掲げる「社会のニーズに応じた良質な資源の安定供給を図る」ことが困難になるため、最も重大なリスクの一つであると認識しております。

このようなリスクに対し、当社グループではBCM推進室主導のもと、年間複数回、関係部署を交えた定期的な会議を実施、主要設備の見直しを含むリスク対策に係る意見交換を行い、情報の共有化を図るとともに、適宜BCPを改正するなどの対策を講じております。

鳥形山鉱山から海岸選鉱場へ石灰石を輸送する長距離ベルトコンベア(全長23.3㎞)などの主要設備において重大な事故が発生した場合、事故の規模によっては長期間にわたり石灰石の生産・輸送・出荷が停止することから、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

このようなリスクに対し、当社グループでは設備点検や監視体制の強化などのインシデント対策を図るとともに、難燃性コンベアベルトへの変更といった事故発生による被害軽減対策などを進めております。さらに、石灰石出荷基地である袖ヶ浦物流センター(千葉県)をはじめ、各事業拠点からの応援出荷などの安定供給体制の強化・見直しに努めております。

 

② 操業及び開発中の銅鉱山(チリ共和国)

当社グループの主要品目の一つである銅精鉱(生産品)は、アタカマ鉱山で生産・販売されております。

アタカマ鉱山は、チリ共和国北部のアタカマ州に位置しておりますが、当該地域は乾燥帯であり、年間平均降水量が10mm未満と極めて少ないことから降雨対策用のインフラ整備が遅れております。そのため、まとまった降雨が発生すると大規模な洪水となりやすく、洪水被害により生産・販売に支障を来す可能性があります。

このようなリスクに対し、アタカマ鉱山では土盛設置による溢水の浸入防止、バリケード設置によるプラント敷地周辺への流入水防止、変電所用地の嵩上げ、作業員区域事務所等の高台化などの対策を講じております。

チリ共和国において銅のロイヤルティ課税を引き上げる新鉱業ロイヤルティ法は2023年8月に施行され、2024年1月から適用が開始されておりますが、アタカマ鉱山及び開発中のアルケロス鉱山は主な増税対象から外れていることから、現時点での影響は軽微であります。しかしながら、法改正の内容によっては、チリ共和国での銅鉱山の操業・開発計画等に変更が生じ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

このようなリスクに対し、当社グループでは最新情報を把握するよう努めるとともに、同業社団体を通じて本邦の関係省庁と緊密に連携し対応を協議することや連絡体制を構築するなどの対策を講じております。

一般的に、金属鉱山では採掘及び開発対象の奥地化、深部化、鉱石品位の低下、不純物の増加などの問題が生じ、生産コストや初期開発費用が上昇しています。チリ共和国における銅鉱山においても同様に生産コストや初期開発費用が上昇傾向にあることから、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

このようなリスクに対し、操業体制の最適化、銅精鉱の実収率改善や選鉱プロセスの最適化を進めることで、生産コストを抑制し収益性の向上を目指しております。さらに、戦略的パートナーシップにより、資金調達コストを削減しリスクを分散するなどの対策を講じております。

 

(2) 災害等に関するリスク

① 休廃止鉱山の管理に関するリスク

当社グループは、長年の事業活動の結果、全国各地に多数の休廃止鉱山を所有しております。集中豪雨や地震等の自然災害の影響等により、当社グループの休廃止鉱山において鉱害が発生した場合、鉱業法により最終鉱業権者が賠償義務を負うことから、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

このようなリスクに対し、当社グループでは鉱山保安法に基づく定期的な巡視や点検を実施し、また、堆積場の保全や坑廃水による水質汚濁を防止するため、必要に応じて鉱山施設の維持保全工事を実施しております。

 

② 労働災害・事故に関するリスク

当社グループにおいて重篤な労働災害や設備トラブルなどの不測の事態が発生し、生産活動が停止した場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

このようなリスクに対し、当社グループでは当社保安環境部による当社及び関係会社の事業所や工場施設等の保安巡視に加え、全国各地で保安研修会を開催するなど、全社的な労働安全衛生管理活動の展開により、労働災害・事故の発生防止に努めるなどの対策を講じております。

 

(3) 銅価・為替・金利水準等の変動に関するリスク

① 銅価の変動に関するリスク

当社グループでは、国内において電気銅を生産しているほか、チリ共和国のアタカマ鉱山において銅精鉱を生産しており、銅の国際市況により業績が大きく変動します。今後の銅価の状況によっては、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

銅価の変動が当社グループの経営成績に与える影響額は、翌連結会計年度において1ポンドあたりの価格が10セント変動(上昇)すると、連結売上高で年間19億円、連結営業利益で年間3億円の変動(増加)をもたらすと試算しております。

当社金属部門の事業に係る銅価等の価格変動リスクに対しては、商品先渡取引によるリスクヘッジを実施するなどの対策を講じております。

 

② 為替の変動に関するリスク

当社グループは、電気銅の生産にあたり外貨建の銅鉱石の仕入取引があるほか、連結財務諸表を作成するにあたり海外連結子会社の財務諸表を円換算していることなどから、為替相場の変動により業績が大きく変動します。今後の為替相場の推移によっては、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

為替の変動が当社グループの経営成績に与える影響額は、翌連結会計年度において1米ドルあたりの価格が5円変動(円安方向へ推移)すると、連結売上高で年間27億円、連結営業利益で年間1億円の変動(増加)をもたらすと試算しております。

当社金属部門の事業に係る為替変動リスクに対しては、通貨オプション取引によるリスクヘッジを実施するなどの対策を講じております。

 

③ 金利水準等の変動に関するリスク

当社グループの当連結会計年度末における有利子負債残高は243億円であり、今後の市中金利の動向次第では収益を圧迫する可能性があります。また、チリ共和国でのアルケロス鉱山開発のための資金調達により、開発期間においては有利子負債残高が大幅に増加することから、金利水準の変動によるリスクは従来以上に大きくなります。

このようなリスクに対し、当社グループでは金利動向を注視し、柔軟に資金調達手段を検討するとともに、長期借入金において、固定金利又は金利スワップ契約の締結により金利変動リスクを回避するなどの対策を講じております。

 

 

(4) 経営環境に関するリスク

 ① 鉄鋼・セメント需要への依存に関するリスク

当社グループの主力生産品である石灰石は、主に国内の鉄鋼メーカーやセメントメーカーに向けて販売しており、今後、公共投資や民間設備投資の減少、自動車などの工業製品の減産、得意先の生産設備におけるトラブル、製鉄所の組織再編や製造方法における技術革新により、主要取引先の鉄鋼・セメント等の生産量が減少した場合や製鉄の原材料が変更された場合などは、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

このようなリスクに対し、当社グループでは随時業界全体や個別の取引先などの動向について情報収集に努めるとともに、国内外において新規顧客の開拓を検討するなどの対策を講じております。

 

 ② 資源開発に関するリスク

当社グループが取り組んでいる銅などの非鉄金属の探鉱や鉱山開発並びに地熱資源の調査・開発には、多額の調査費や開発費(坑道掘削、坑井掘削、生産設備建設等)を要します。鉱物の価格水準や資源量が想定を下回った場合をはじめ、政府及び行政機関からの許認可取得や金融機関からの資金調達などが難航した場合における計画の大幅な見直しにより、投資回収が困難となったときには、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

このようなリスクに対し、当社グループでは定期的に鉱物の価格水準や資源量を確認のうえ適宜計画を見直し、政府及び行政機関と適切な関係を維持し許認可取得手続を円滑に進めるほか、政府系金融機関及び主要な借入先であるメガバンクへの緊密な情報提供を通じてコミュニケーションを強化し、柔軟な資金調達を図るなどの対策を講じております。

 

 ③ 事業の国際展開に関するリスク

当社グループは、チリ共和国で銅鉱山を運営しているほか、世界の国・地域においても事業活動を展開しており、現地において、テロや紛争などの政情悪化、感染症の流行、災害やストライキなどの事象が発生し、事業活動に波及した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

このようなリスクに対し、当社グループでは事業活動を行っている国・地域について最新情報を把握するよう努めるとともに、同業社団体を通じて本邦の関係省庁と緊密に連携し対応を協議することや緊急連絡体制を構築するなどの対策を講じております。

なお、ウクライナ情勢につきましては、経済制裁、各国規制等の影響や物流の混乱及びエネルギー価格の高騰等に伴い、世界経済が不安定となり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

 ④ 環境規制に関するリスク

今後の関連法令の改正によっては、当社グループにおいて新たな環境対策費用や設備投資等の負担が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。また、国内外における環境規制の強化やSDGsなどの社会的要請の高まりにより、当社グループの本業である鉱山業の稼行や鉱山開発が制限された場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

このようなリスクに対し、当社グループでは環境に関わる規制や社会の動向を注視するとともに、国際環境管理規格ISO14001の認証取得、社有林の森林認証取得、鉱山跡地や堆積場の緑化等を行い、国内外の各拠点で環境保全に努めております。

他方、環境規制の強化等は、当社グループの機械・環境事業における主力商品である集じん機や水処理剤の需要拡大に繋がる機会であり、規制強化が見込まれる国・地域や産業において、新規顧客の開拓に注力してまいります。

 

 ⑤ 原材料調達に関するリスク

原材料等の調達が長期化することで、設備投資プロジェクトや設備修繕計画に遅延が生じる場合、また、調達価格の高騰や原料供給先の事業縮小・撤退に伴う代替原料調達などにより生産コストが上昇する場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

このようなリスクに対し、原材料の調達先の多様化や在庫管理の強化、代替原料の研究・開発などの対策を講じております。

 

(5) 企業統治に関するリスク

 ① コンプライアンス・内部統制に関するリスク

役員又は従業員が、事業に関連する法令や規制、様々な利害関係者との関係において、社会的な要請や期待に応えられなかった場合、事業活動の制限や信用の低下などにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

このようなリスクに対し、当社グループでは業務執行部門から独立した当社内部監査部が中心となり、国内の当社本社・事業所・支店及び関係会社並びに海外の関係会社の内部監査を実施しております。また、継続的に開催している階層別コンプライアンス研修の実施、財務報告に係る内部統制の整備・運用などにより、コンプライアンス・内部統制の強化・拡充に努めております。

 

 ② 品質保証・管理に関するリスク

契約不適合や欠陥等のある製商品・サービスを顧客に提供した結果、顧客の生命や身体に危害を与えることやクレーム等が発生することにより、製商品の回収費用をはじめ、顧客に対する補償や訴訟関連費用等が発生した場合、また、当社グループに対する信用が低下した場合において、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

このようなリスクに対し、当社グループでは契約不適合や欠陥等のある製商品・サービスを顧客に提供することのないよう品質保証・管理に努めております。

当社では、品質保証委員会を定期的に開催し、当社グループにおいて顧客へ提供する製商品・サービスの品質に関するリスクを把握・評価し、当該リスクに対応した取り組みの検討を行っております。

当連結会計年度における具体的な取り組みとして、品質保証委員会を2回開催し、各事業所における品質管理状況の調査報告及び品質リスク管理小委員会の活動報告などを行っております。

 

 ③ 情報セキュリティに関するリスク

インターネットを利用する業務などの情報セキュリティには、悪質なメールの受信や不正なアクセス、また、パソコンや電子記憶媒体の盗難等により、重要な企業情報が漏洩、改ざんされることやパソコン等を踏み台にマルウェアを拡散される脅威が存在します。

当社グループは、基幹システムの運用や電子データの管理・伝達において、IT機器やそれらを含む社内外のネットワークを利用して業務を行っているため、前述の脅威によりセキュリティリスクが顕在化する可能性があります。また、テレワーク勤務制度の導入に伴い、マルウェアの感染リスクや端末の紛失・盗難リスク等の情報セキュリティに関するリスクが増大しております。

仮に重大インシデントが発生した場合に当社グループだけでなく、ネットワークやシステム等で通信・接続されるサプライチェーンを含むステークホルダーの業務に支障が生じ、復旧費用の発生や当社グループの信用低下により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

このようなリスクに対し、当社情報システム部が中心となり、当社グループで利用しているソフトウエア等の更新管理やマルウェア対策ソフトウエアの導入、ネットワーク内の多層防御の構築、社外で使用するパソコンに保存するデータや通信データの暗号化設定に加え、情報セキュリティリテラシーを高め、標的型サイバー攻撃のリスク低減を目的に、eラーニング等によるセキュリティアウェアネストレーニングを実施しております。また、内部監査において監査対象部署に対し、情報セキュリティの重要性やIT管理に関する規程の周知徹底を行うなどの対策を講じております。

 

(6) 感染症に関するリスク

未知なる病原体による感染症の拡大は、国内外の政治経済や企業活動に多大な影響を与える事象であり、感染の広がり方や収束時期を予想することは困難であります。

当社グループは、全国各地に鉱山をはじめとする事業拠点や関係会社を有しており、海外には営業拠点を置くほか、チリ共和国においては銅鉱山を操業・開発しております。これら国内外の各拠点において集団感染が発生した場合、営業活動や操業の中断による生産・販売、製商品・サービスの提供に支障を来すことになります。また、新型コロナウイルス感染症の世界的流行時のように、緊急事態宣言の発出や各国政府による都市封鎖や国境封鎖、外出禁止令等の措置がなされた場合には、各拠点の活動そのものが制限され、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

このようなリスクに対し、当社グループではテレワーク勤務や時差出勤等の柔軟な勤務体制の導入や各拠点において最良と思われる防疫環境を整備しながら、国・地域の感染状況や防疫措置等の最新情報を把握するなど、事業活動への影響を最小限に留める対策に努めてまいります。

 

(7) 訴訟に関するリスク

当社の連結子会社である日鉄鉱コンサルタント㈱(以下、「コンサル社」という。)は、2023年6月、北海道磯谷郡蘭越町において発生した蒸気噴出事故(以下、「本件事故」という。)に関し、工事発注者である三井石油開発㈱(現・三井エネルギー資源開発㈱、以下、「MOECO社」という。)に対し、本件事故発生までコンサル社が実施した工事の出来高、本件事故発生に伴いコンサル社が実施した現場作業費及びコンサル社が被った損害等21億2千9百万円の支払いを求めて、2024年9月に訴訟を提起いたしました。一方、MOECO社においても本件事故発生はコンサル社の安全施工義務違反に起因するものとして、コンサル社に対し、本件事故発生に伴いMOECO社が被ったとされる損害等34億6千4百万円の支払いを求める訴訟を2024年10月に提起し、2024年11月に訴状を受領しました。

両訴訟は、東京地方裁判所において併合審理されることとなり、現在も係争中であります。

これらの訴訟等において、当社グループに不利な結果が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国の経済は、資源・エネルギー価格や人件費の高騰による物価の上昇、金融資本市場の変動等の影響を受けつつも、企業収益の増加を背景とした雇用・所得環境の改善やインバウンド需要の拡大等により下支えられ、景気は緩やかな回復基調をたどりました。

このような経済情勢のもと、当社グループにおきましては、資源事業及び機械・環境事業における増収により、売上高は1,967億6千6百万円(前連結会計年度比17.9%増)と前期に比べ増加いたしました。

損益につきましては、金属部門等における減益により、営業利益は102億5千7百万円(前連結会計年度比8.2%減)と前期に比べ減少いたしました。

経常利益は、持分法による投資利益が増加しましたものの、営業利益の減少により、114億3千7百万円(前連結会計年度比5.1%減)と前期に比べ減少いたしました。

親会社株主に帰属する当期純利益は、保有株式の売却益が増加したことに加え、火災に係る保険金を受領しましたことから90億1千9百万円(前連結会計年度比36.6%増)と前期に比べ増加いたしました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

[資源事業]

(鉱石部門)

主力生産品である石灰石等の販売価格上昇により、売上高は633億6千5百万円と前連結会計年度に比べ26億7千5百万円(4.4%)増加し、営業利益は72億5千5百万円と前連結会計年度に比べ12億8千1百万円(21.5%)増加いたしました。

 

(金属部門)

電気銅及び電気金の国内販売価格が高水準で推移しましたことから、売上高は1,139億9千4百万円と前連結会計年度に比べ256億7千6百万円(29.1%)増加しましたものの、為替変動の影響、買鉱条件の悪化及びアタカマ銅鉱山の減販等により、営業利益は9億4千5百万円と前連結会計年度に比べ20億4千6百万円(68.4%)減少いたしました。

 

[機械・環境事業]

機械部門の販売は前期なみに推移し、環境部門の販売が好調でありましたことから、売上高は147億6千8百万円と前連結会計年度に比べ15億4千4百万円(11.7%)増加し、営業利益は20億6千6百万円と前連結会計年度に比べ5億7千2百万円(38.4%)増加いたしました。

 

[不動産事業]

売上高は28億7千4百万円と前連結会計年度に比べ7百万円(0.3%)減少しましたものの、修繕費の減少により、営業利益は16億7千8百万円と前連結会計年度に比べ5百万円(0.3%)増加いたしました。

 

[再生可能エネルギー事業]

地熱部門は蒸気販売価格の上昇により増収となりましたものの、太陽光発電部門における減収により、売上高は17億6千3百万円と前連結会計年度に比べ6百万円(0.4%)減少いたしました。営業利益は、地熱部門において定期修繕工事を実施したことに加え、太陽光発電部門の減収により、4億7千7百万円と前連結会計年度に比べ7千6百万円(13.8%)減少いたしました。

 

② 財政状態の状況

[資産の部]

当連結会計年度末における資産の部の合計は、前連結会計年度末に比べ106億1百万円(4.6%)増加し、2,401億7千9百万円となりました。

流動資産につきましては、売掛金及び製品が増加しましたものの、仕掛品の減少等により、前連結会計年度末に比べ31億1千9百万円(3.0%)減少し、1,019億7千万円となりました。

固定資産につきましては、設備投資による有形固定資産の増加等により、前連結会計年度末に比べ137億2千1百万円(11.0%)増加し、1,382億8百万円となりました。

 

[負債の部]

当連結会計年度末における負債の部の合計は、前連結会計年度末に比べ93億5千2百万円(11.9%)増加し、882億7百万円となりました。

流動負債につきましては、買掛金及び短期借入金が減少しましたものの、未払金、未払消費税等及びデリバティブ債務の増加等により、前連結会計年度末に比べ13億7千6百万円(2.5%)増加し、556億6百万円となりました。

固定負債につきましては、長期借入金の増加等により、前連結会計年度末に比べ79億7千6百万円(32.4%)増加し、326億1百万円となりました。

 

[純資産の部]

当連結会計年度末における純資産の部の合計は、自己株式を取得したものの、利益剰余金の増加等により、前連結会計年度末に比べ12億4千9百万円(0.8%)増加し、1,519億7千1百万円となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ7億3千3百万円(2.0%)増加し、377億8千9百万円となりました。

 

[営業活動によるキャッシュ・フロー]

当連結会計年度においては、税金等調整前当期純利益139億8千6百万円、減価償却費84億4百万円の計上等により、177億1千3百万円の収入(前連結会計年度に比べ87億6千1百万円(97.9%)の収入増加)となりました。

 

[投資活動によるキャッシュ・フロー]

当連結会計年度においては、有形固定資産の取得による支出等により、122億5千9百万円の支出(前連結会計年度に比べ59億3千3百万円(93.8%)の支出増加)となりました。

 

[財務活動によるキャッシュ・フロー]

当連結会計年度においては、長期借入れによる収入はありましたが、自己株式の取得及び配当金の支払による支出等により、64億7千7百万円の支出(前連結会計年度に比べ6億3千6百万円(10.9%)の支出増加)となりました。

 

④ 生産、受注及び販売の状況

イ.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前連結会計年度比(%)

資源事業

 

 

 (鉱石部門)

28,410

+9.3

 (金属部門)

103,648

+28.7

機械・環境事業

3,528

+4.4

不動産事業

再生可能エネルギー事業

1,113

+7.1

合計

136,701

+23.2

 

(注) 1 金額は、製造原価によっております。

2 上記の金額は、生産品銘柄(委託分を含む)に限定し、役務工事等の金額は除いております。

 

ロ.受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。 

セグメントの名称

受注高
(百万円)

前連結会計
年度比(%)

受注残高
(百万円)

前連結会計
年度比(%)

資源事業

 

 

 

 

 (鉱石部門)

3,288

△22.0

612

△62.4

 (金属部門)

機械・環境事業

4,249

△1.1

1,548

+3.3

不動産事業

再生可能エネルギー事業

合計

7,537

△11.5

2,161

△30.9

 

(注) 1 セグメント間取引につきましては、相殺消去しております。

2 上記の金額以外の生産は、見込生産を行っております。

 

ハ.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前連結会計年度比(%)

資源事業

 

 

 (鉱石部門)

63,365

+4.4

 (金属部門)

113,994

+29.1

機械・環境事業

14,768

+11.7

不動産事業

2,874

△0.3

再生可能エネルギー事業

1,763

△0.4

合計

196,766

+17.9

 

(注) 1 セグメント間取引につきましては、相殺消去しております。

2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合につきましては、その割合が100分の10未満のため、記載を省略しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2025年3月31日)現在において当社グループが判断したものであります。

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

イ.当連結会計年度の経営成績等の分析

当連結会計年度の経営成績等の分析については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 第3次中期経営計画の概要と実現に向けた取り組み」及び「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。

ロ.当連結会計年度の経営成績等に重要な影響を与える要因

当連結会計年度の経営成績等に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

ハ.資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループの運転資金需要の主なものは、生産事業所等における操業費、仕入商品の購入のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用、法人税等の支払いによるものであります。また、設備資金需要の主なものは、資源事業を中心とした老朽設備の更新工事に加え、アルケロス鉱山開発工事の設備投資等を目的としたものであります。

当社グループの運転資金及び設備資金については、主に自己資金及び借入金により調達しております。

なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債残高は243億円であります。

今後、アルケロス鉱山開発工事等の設備投資の実施により、設備資金の需要が増加してまいりますが、投資内容を精査し、投資額を抑制することに加え、運転資金の必要額を見直すことで、借入額の圧縮に努めてまいります。

また、手許資金については、各部署からの報告に基づき当社経理部が随時、資金繰計画を作成・更新しております。その上で、複数の金融機関における短期借入金(当座貸越)の信用枠の設定やコミットメントライン契約の維持により借入余力を確保するとともに、公募普通社債の発行登録を維持し、臨機応変な資金調達に対応できる準備を行っております。それらの施策により大型投資を着実に実行しつつ、万が一営業キャッシュ・フローが悪化した場合にも対応できる十分な流動性を確保しております。

② 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5 【重要な契約等】

金融機関とのコミットメント付タームローン契約

契約締結先

政府系金融機関

都市銀行3行

契約会社

アルケロス鉱山㈱

日鉄鉱業㈱

日鉄鉱業㈱

日鉄鉱業㈱

借入限度額

248百万米ドル

62億円

62億円

27百万米ドル

契約日

2024年4月25日

2024年4月24日

2024年4月26日

2024年4月30日

最終弁済日

2034年1月15日

2034年1月15日

2034年1月15日

2034年1月15日

期末債務残高

20百万米ドル

15億円

15億円

6百万米ドル

担保の有無

無し

無し

無し

無し

 

(1) 政府系金融機関からの借入については、提出会社が債務保証を行っており、債務保証契約の締結日は2024年4月

25日です。

(2) アルケロス鉱山㈱は、Avenida Juan Cisternas 2497, Local 101-B, La Serena, Región de Coquimbo,Chileに

所在しており、代表者は津嘉山 良治です。

(3) 政府系金融機関からの借入は2024年12月末現在の金額となっております。

(4) 借入契約については、下記のとおり財務制限条項が付されております。

① 借入期間中、各年度の決算期の末日及び半期の末日における提出会社単体の貸借対照表における株主資本合計

の金額を778億円以上に維持すること。

② 借入期間中、各年度の決算期における提出会社単体の損益計算書に示される経常損益が、2024年3月期以降

決算期につき2期連続して損失とならないようにすること。

③ 借入期間中、担保を提供する場合は貸主の了承を事前に得ること。

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、開発テーマを選別することにより、これまで以上に独自技術の優位な分野に資源を集中して研究・商品開発を行い、市場ニーズに合致した商品の早期市場投入を推進してまいりました。また、新テーマの発掘及び戦略的特許管理も重点課題と位置付けており、当社研究開発部を中心に資源事業関連商品、新規素材商品の開発、各種機械装置及び水処理剤の改良や開発に加え、SDGs関係としてカーボンニュートラル技術の研究を行っております。

これらの業務に携わる人員は73名であります。

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、969百万円であります。

(1) 資源事業

資源事業関連商品、新規素材商品の開発を行っており、特に粉体への薄膜被覆技術の研究や、その技術を応用した商品の開発を行っており、粉体への機能性付与をキーワードとした研究開発を進めてまいりました。また、当社が関連する金属鉱山における浮遊選鉱などの選鉱プロセスの研究開発を進めてまいりました。

加えて、カーボンニュートラルに関する技術開発を行っております。石灰質材料への炭酸ガス固定化の研究として、石灰炉等から発生する炭酸ガスの回収及び固定化技術の開発を行っております。また、カーボンニュートラルのためのストラティファイド光触媒の応用研究も行っており、ストラティファイド光触媒にて下水処理場等から排出される硫化水素を分解し、水素を回収するシステムの開発を進めており、併せてGHG削減全般に寄与してまいります。

当該研究開発の費用は、423百万円であります。

 

(2) 機械・環境事業

当社研究開発部機械・環境開発課は、水処理剤や各種機械装置に関する研究開発を行っております。ポリテツについては、原料の多様化、製法の効率化を目的としたプロセス開発や、競合他社製品と性能面で差別化をするための高機能化の研究を行いました。シンターラメラーフィルタは、高性能なフィルターエレメントの開発や現行装置の更なる高性能化に取り組みました。タバコ分煙機は、需要の掘り起こしのため、一人用喫煙ブースを新たに開発しました。機械・環境関連の開発は、営業部門とベクトルを合わせ、市場のニーズに応えた研究開発を進めてまいりました。

当事業に係る研究開発費は、514百万円であります。

 

(3) その他

当社研究開発部開発管理課は、当社研究開発部各課の運営、管理、方針の総括及び産業財産権の管理等を行っております。

開発管理課の費用は、31百万円であります。

 

(注) 「資源事業」につきましては、研究開発の内容及び費用を「鉱石部門」と「金属部門」の各セグメントに区分することができないため、事業全体として記載しております。