第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。

 

<CEOメッセージ>

 


 

代表取締役会長/CEO 芳井 敬一

 


 

 

創業100周年に売上高10兆円の実現に向けて

新しい事業と次代を担う人財を育む

 

 創業者精神のもと歩んできた70年


 

大和ハウスグループは、2025年4月5日に創業70周年を迎えました。ここまでの歩みは、協力会社や取引先・サプライヤーの皆さま、諸先輩方をはじめとした当社グループの従業員のおかげです。人に恵まれなければ、ここまでの成長は実現できなかったことでしょう。私たちを信頼し、ご支援、ご協力をいただいたすべての方々に心より感謝申し上げます。

ここまでの歩みは、創業者をはじめとする歴代経営者の時代に応じたスピード感のある大きな決断の繰り返しでしたが、当社グループが今なお成長し続けているのは、「儲かるからではなく、世の中の役に立つからやる」という創業者精神のもと事業を推進しているからだと思います。私たちは常にこの原点に立ち返り、社会のニーズに応えるために挑戦し、新しい商品・サービスを提供してきました。そこには、時代の先の先を読み、経営を推進してきた先人たちの想いが息づいています。それらを積み重ねてきたことで、今では600社を超えるグループ会社を有し、グループ内で一気通貫のまちづくりができるようになりました。それを可能にしているのは、さまざまなステークホルダーの方々との強固な信頼関係があってこそです。全国各地で“まち”を創りながら、地域に根差した事業展開により、その地域の賑わいや文化の発展に貢献し続けてきたことは、間違いなく当社グループの魅力につながっているのではないかと思います。

個人のお客さまや各企業さまとの関係を築いてきたその中心には、私たちが大切にしてきた「住宅の心」があります。当社グループが展開するすべての事業において、建物・商品をお渡ししたら終わりではなく、その後もお客さまやご入居者さま、利用者さまに寄り添い、お困りごとがあればお応えする姿勢を貫いてきました。

また、創業者はマンネリ化を許しませんでした。「停滞は後退だ」というその言葉は、私たちの心に深く刻まれており、売上高5兆円を突破した今でも、ベンチャー精神が息づいていることも成長を続ける理由の1つであると思っております。

一方、2022年12月に、創業者が育ててきたリゾートホテル事業の譲渡を決断しました。ホテルで働く方々や地域社会のため、我々がベストオーナーであるか、という観点から苦渋の決断に至りましたが、事業ポートフォリオの最適化に対して本気で取り組んでいることを、投資家や株主の皆さまにはお示しすることができたのではないかと考えています。

 

 

 

 当社グループの強みである幅広い事業領域を活かし、地域密着型で事業を展開


 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 


 

今回、社長交代のタイミングで、私が海外事業を管掌することとなりました。海外事業の売上高は、2010年度は10億円程度でしたが、現在は1兆円を見通せるまでに成長しています。海外事業をさらに成長させるためにできることは、まだまだあります。創業理念である建築の工業化を軸に、これまで国内で培ってきた技術やノウハウを活かして、海外での事業領域を広げていきます。

米国事業においては、2017年にグループ入りしたStanley Martin社をはじめ、Trumark社、CastleRock社という戸建住宅を提供している3社が、安定的な市場成長が見込める東部・南部・西部を結ぶスマイルゾーンを中心に事業拡大を進めています。米国戸建住宅事業の売上高は、2018年度の847億円から、2024年度は6,000億円を超えるほどに成長しました。3社がお互い切磋琢磨しながら順調に事業拡大していることから、私たちの方向性は間違っていなかったと確信しています。

米国3社の経営陣には日本の自社工場や分譲地を見学してもらい、そのなかで良いと思ったアイデアを現地で採用してもらっています。加えて、3社のトップとは半年に1回程度、今後の経営に向けた議論を行っています。2024年11月には、米国の大手マルチファミリー(賃貸住宅)デベロッパーであるAlliance Residential社をグループに迎えました。今後は、複合開発での協業や戸建住宅事業3社のマルチファミリー事業への進出も見据えています。

欧州は人口増加の継続に伴い慢性的に住宅が不足しているエリアが多いため、今後事業拡大を見込んでいますが、戦略の進捗は想定より遅れているため強化する必要があると考えています。Daiwa House Modular Europe社は現在オランダ、ドイツを中心にモジュラー建築で事業を推進していますが、いずれは国や地域によって異なる法律や習慣に合わせた体制を整えつつ、欧州全域さらには近隣諸国での事業拡大も加速させていきたいと考えています。

そのほか中国マンション事業においては、日本で培った品質とサービスを提供し、好評をいただいています。ASEANについては、インドネシア、マレーシア、ベトナムを中心に冷凍冷蔵設備を備えた物流施設等を開発し、食の安全性に資するとともに、安定的な物流網の構築に向けて強化を図っています。次の注力エリアとして、アフリカも視野に入れていますが、いずれの地域においても、当社グループの強みである幅広い事業領域を活かし、地域密着型での事業展開を考えています。

なお、海外事業の課題である人財確保に関しては、社内人財の育成と外部人財の登用の両面で考えています。今後経営の中心を担う、あるいは海外に携わる従業員には、積極的に英語を学んでほしいと思っています。

 

 

 

 売上高10兆円の実現に向けて次代を担う人財を育成


 

 

創業100周年に売上高10兆円を実現するためには、役員には最低でも3年先を見据えて経営に参画するよう指導しています。企業が存続し続けるために、将来的に新たな柱となる事業は何か、その時に中心となる従業員は誰かを考え続ける必要があるからです。目標を実現するメンバーは徐々に育ってきています。多様な職種を経験させ、横のつながりも深くなっており、今後の活躍が期待されます。

私は以前から従業員に対して我が子のように接し、従業員の成長を見続けてきました。近年では、全国の支店長が集まる会議などにおいて、私と同様に従業員の成長を喜びながら話をする支店長が増えてきたことを大変嬉しく感じています。全員の顔と名前を覚えるのはさすがに難しいですが、従業員からの質問には真摯に向き合い答えていくことで、育成の機会を作っていくことが大切だと考えています。

社是に「事業を通じて人を育てること」「企業の前進は先ず従業員の生活環境の確立に直結すること」とあるように、何よりも人財育成を重んじてきたことが当社の最大の強みです。まずやらせてみる、やらせてできなかったらヒントを与えてみる、最後は一緒にやってみる。一人ひとりの可能性を見極めることが大切です。学歴や前職などの過去にとらわれず、一人一人の特性を活かし、未来の大和ハウスグループを担う人財を育てていきたいと思っています。

 

 

 今年の一文字「心」に込めた想い


 

 

年初に掲げる一文字を、今年は「心」としました。従業員に「心」と「笑顔」を持っていてほしいという想いを込めています。社内外の方々と会話する時、想いをきちんと伝えるためには、言葉に「真心」が込められているか、相手に伝わっているかを考えてほしいと思います。上に「士」を作ると「心」は「志」になる。「愛」という字には真ん中に「心」がありますが、社内では上司や後輩と愛のある接し方をしたいと思いますし、何よりも、お客さまに満面の笑みを届けたい。自らが率先して、「大和ハウスグループは、いつも心を込めておそばにいます」と伝えていきたいと思います。

 

 

 株主・投資家の皆さまへ

 

 

株価について申し上げると、2025年の5月に上場来高値を更新しました。日頃からのご支援に感謝申し上げます。しかしながら、私は現在の株価水準について決して満足していません。私は創業100周年に売上高10兆円の企業グループを見据えていますので、株主・投資家の皆さまにおかれましては、目の前の数字だけでなく、これからの成長投資についてもご理解いただきたいと思っています。目標達成に向かって歩み続ける大和ハウスグループを信じて見守っていただきますよう、引き続きよろしくお願い申し上げます。

 

 

 

<CEO×COO対談>

 


 

 

代表取締役会長/CEO 芳井 敬一

代表取締役社長/COO 大友 浩嗣

 

 

 

 

 

 

 

創業100周年とその先の未来に向けて

経営体制を新たに経営判断のスピードアップを図る

 

 経営体制の変更にあたって

芳井

売上高5兆円を超える企業となっても、私たちは創業70年のベンチャー企業だと思っています。そうした会社において社長の在任が長く続くことは、必ずしも良いとは限らないだろうと考えていました。

また、私自身、各種業界団体の代表を務めるなど、社外における責務の比重も大きくなってきているなかで、経営判断のスピードアップを図るために、社長としての役割を大友さんに担ってもらい、私と大友さんで海外事業と国内事業をそれぞれ担当することにしました。自らの領域に注力すると同時に、トップ2人が考える方向性を同じくして意見を交わしながら二人三脚で進めていきます。

なお、このタイミングでの社長交代になった理由は、第7次中期経営計画を前倒しで終わらせる見込みになったためです。次期中計の検討については新社長の体制のもとで進めることがベストと考えていました。

 

 

 新社長への期待、そして挑戦

芳井

大友さんは長年、住宅事業本部のトップを務め、数々の課題にも対応してきました。その姿をずっと見てきて、非常に実直な人物だと感じています。従業員を育てる気持ちがなければ事業を育むことは難しいということをよく理解し、周りにもそう接しています。私たちが立ち返る創業の精神とは、事業を通じて人を育て、事業で得た利益を従業員に返すことです。従業員を育てることなく事業をしてはいけないという思いは、私も同じです。大友さんには、これまでの経験を活かして、国内事業においても自分のやりたいことを貫いてほしいと思います。

 

大友

私のミッションは、国内事業を更に成長させることだと捉えています。既存事業に加えて、経営戦略本部長を務めていた時に種を蒔いたCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)ファンドやFuture100を通じた新規事業への挑戦、Future with Woodなど建築の木質化にも積極的に取り組んでいきます。そのためには、現場をもう一度回って従業員に光を当てたいと考えています。それは、現場の従業員との会話によって浮かび上がる課題について自分も一緒に考え、当社グループの全国展開の強化に向けた知恵を生み出していきたいと思っているからです。知恵とは、悩み苦しんで初めて生まれてくるもの。本を読んで知識を得るだけでなく、そのうえで考えを尽くしてようやく獲得できるものだと考えています。従業員やお客さま、サプライヤー、さまざまなステークホルダーとの関係性においてどこに課題があるかを追求し、その課題に対峙するなかで事業をどう成長させていくか、目標と言えば数字で表してしまいがちですが、数字だけではなく地域や社会への貢献をもう一度初めから考えていきたい。自分の強みである現場に立ち返りたいと思っています。

 

 

 第7次中期経営計画から第8次中期経営計画に向けて、全社で取り組む

芳井

第7次中期経営計画は、概ね順調に進んでいます。最終年度の目標である売上高5兆5,000億円、営業利益5,000億円が届く範囲に入ってきました。従業員が頑張ってくれたことの成果にほかなりません。すべての従業員に大きな拍手を送りたいです。特に海外事業は、コロナ禍などさまざまな困難があったなかで、よく業績を伸ばしてくれたと思います。米国事業においては戸建住宅の土地の仕入れと拡大戦略が機能しており、海外事業の目標数値として掲げていた売上高1兆円、営業利益1,000億円の達成も見えてきました。国内においても新たな取り組みや、新たなアセットへの挑戦などが順調に進み、賃貸住宅、商業施設、事業施設を中心に、堅実に成長している状況です。

 

 

 

大友

7次中計については、経営戦略本部長として、当初より計画の進捗状況をモニタリングして、海外やグループ会社を含めて成長の度合いを見てきました。2024年頃から、前倒し達成が見えてきたため、8次中計の概略は既に頭のなかで組み立てていました。今は、社長という立場で再度現状の検証をして、7次中計の振り返りをしたうえで、10年後の2035年を見据えて8次中計を検討していきたいと考えています。8次中計は当社グループにとって非常に重要な位置付けとなるでしょう。今年一年をかけてしっかりと練り上げていきます。

 

芳井

8次中計については、議論を進めている段階ですが、データセンター事業は、4月の組織再編で新たに設けたデータセンター事業本部準備室を中心に成長させていきたいと考えています。海外事業では、米国で戸建住宅事業を展開する3社がそれぞれ大和ハウス工業のように積極的に事業領域を広げる動きをしていくことを期待していますし、欧州の事業拡大も期待していただきたいです。

またグループ会社の更なる成長に向けては、給与体系の見直しも課題の1つと考えています。売上高の半分以上はグループの従業員の頑張りによる数字ですから、グループ全体の従業員もきちんと評価すべきと考えています。グループの結束を高めるためにも全体を俯瞰して評価をし、彼らの生活を変えていかなければなりません。

 

大友

大和ハウス工業の従業員は約16,000人、グループ全体で約50,000人。つまりグループ全体では単体の倍以上の従業員がいるということです。だからこそ、真剣に考えていく必要がありますね。

 

 

 7事業本部から2大本部への再編により、「稼ぐ力」を強化する

芳井

「稼ぐ力」を強化し、国内外で成長戦略を描いていくために、2025年4月1日から7事業本部制から2大本部制に移行しました。戸建住宅や賃貸住宅などの部門を統合したハウジング・ソリューション本部と、商業施設や物流施設などを統括するビジネス・ソリューション本部を新設して、傘下に事業本部を置きました。これは、各事業本部の機能集約・合理化を図りながら、横軸の連携強化を実現するものです。2つの事業本部にまとめて横軸をつくることで、顧客情報を共有し、事業本部を超えてお客さまとの接点を設けることで、たとえトップが変わっても機能する状態にしたい。組織再編により、今後はよりダイナミックに動ける体制へと進化していくと考えています。

 

大友

成長を実現している他社はどのように改革したのかについても勉強し、当社グループに合わせて組織を再編しました。今回の最大のポイントは、二大本部長に一定の権限を移譲したことで意思決定や実行のスピードを上げられる点です。

また、従業員が現場と向き合う時間をいかに増やすかが課題と捉えています。少子高齢化が進み、将来的に従業員がこれまでのように事業機会を獲得できなくなるリスクを鑑み、業績が好調な今、現場に人財を多く配置できるようにし、またリスキリングを進めることで社員の能力を向上させるなど、時代の変化に合わせた体制を今後も整備していきます。

 


 

 

 

 

創業100周年、そしてその先の未来に向けて臆せず挑戦する

大友

創業者が掲げた2055年の100周年に売上高10兆円という目標は、夢物語のようでしたが、5兆円を超えて現実味を帯びてきました。しかし現状のままでは、実現は難しいと思っています。社会の変化は非常に速く、我々の予測を超えています。“先の先”を読み、そこに生まれるビジネスチャンスを的確にとらえていくことで、その先に未来が見えてきます。また、目標実現に向けて海外事業の成長は欠かせません。国内で新規事業の種を育て、それを海外に移植していくことも考えています。

大和ハウスグループはそれぞれの時代や事業環境にあわせて組織体系を変化させながら成長してきました。それぞれの事業が影響し合い、シナジーを生むことで変化を起こす土壌を残しつつ、そこから生まれたものが新たな種になり、柱になっていくという企業体に育つことを期待しています。多様な事業によるシナジーは、チャンスを掴むためにも必要です。今回の組織再編で、グループ会社も含めたバリューチェーンの拡大を実現できると思います。大きく変革していくためには、今後2~3年が勝負でしょう。世界に目を向ければ、開拓する場所はまだまだあります。

 

芳井

今後、売上高10兆円を達成していくにあたっては、「技術力」もカギになります。今や、当社グループは数百億円規模のデータセンター、半導体関連工場を建設できる技術力があります。今後の成長に向けては技術力においてもトップを取ることが重要と考えています。デベロッパーに建設会社の機能が加われば、営業力に加えて難易度の高いニーズに応える技術力が備わります。そうすれば、扱うものも自ずと変わり、ビジネスチャンスも変わってくるはずです。大友さんの構想を裏打ちするものは技術力になります。技術的な裏打ちがあれば営業も案件を取りに行くことができます。さらにはそれに挑戦する従業員も増え、それが成功すれば国内にとどまらず海外に挑戦する従業員も出てくるかもしれません。未来の大和ハウスグループを担う人財には、臆せず挑戦することを期待したいですね。

 

 

 

 

 

<COOメッセージ>

 


 

代表取締役社長/COO 大友 浩嗣

 


 

 

創業70年のベンチャー企業として

共創共生を原点に新たな夢に挑み続ける

 

 まちづくりで身に着けた「現場力」と「一隅を照らす」を信念に社会に貢献する

今年の4月に代表取締役社長に就任しました。芳井会長の社長在任期間には良い時ばかりでなく厳しい時もありましたが、そうしたなかでも会長があらゆる問題に“正対”する姿を間近で見てきたことはかけがえのない経験であり、私自身の糧となっていると感じています。今後は芳井会長と共に、大和ハウスグループの持続的成長に向けて力を尽くしてまいります。

学生時代から建設業界を志望しており、当時大和ハウス工業が新たに流通店舗事業部を作り、モータリゼーションの進展に合わせてロードサイドの店舗づくりに着手するというニュースを聞き、一般的な建築にとどまらないまちづくりに携わることができると考え、入社を希望しました。大学を卒業する前から営業職として入社し、卒業前にお客様から受注できたことは今でも忘れられません。新入社員にここまで任せる大和ハウス工業には、既成概念にとらわれず挑戦を後押しする企業風土があるのだと感じました。

私の流通店舗事業部時代に、ファーストリテイリングの前身である小郡商事への提案を一担当者として手がけました。一度は提案を却下されたのですが、埼玉県から山口県宇部市まで駆けつけて出店会議でプレゼンの機会をいただき、最終的には現在ファーストリテイリングで代表取締役会長兼社長を務められている柳井さんから承諾をいただきました。当時のユニクロはまだ関東エリアに出店されていませんでしたが、いずれは世界を目指すと宣言する柳井さんのパッションに、他の経営者にはないものを感じました。柳井さんとの出会いは、最も印象深い出来事の一つです。

また、これまで経験した事業のなかでも、つくば支店長時代に大型複合商業施設のプロジェクトマネージャーとして従業員の声を取り入れて成功に導いたことや、住宅事業本部長時代の「名もなき家事」を家族で共有する「家事シェアハウス」の事業化、そしてお客さまや協力会社さま、サプライヤーの方々との対話からニーズをつかみ、高級商品や木造商品など新たな住宅のラインアップをご提供できたことは心に残っています。

このような経験の中で、今まで数々の現場でお客さまやテナントさま、行政、金融機関、不動産会社などの方々に教えていただいたことが知識として積み重なり、現場力が身に着きました。それが私自身の強みとなっているのではないかと考えています。現場を大切にして、現場から変えていくという考え方と行動は今でも変わりません。

私は、常に「一隅を照らす」という言葉を信念として業務にあたることを心がけています。「一隅を照らす」とは、自分を磨くことです。自分を磨けばその光で周りが明るくなり、周りが明るくなれば会社が良くなり、自分が良くなり、そして社会も良くなる。当社グループの従業員にも、さまざまなことが起きる日々において「何のために仕事をするのか」を理解してもらいたいという思いを込めています。また、経営判断に迷う時には、会津藩の言葉「ならぬものはならぬ」を心に留めています。最初の判断を間違うと、大きな失敗につながるということ。何かを始める時には肝に銘じるようにしています。

 

 

 社会課題があるところに事業機会を見出し、国内事業の成長を加速する


 

 

社長就任にあたり、私は国内事業を担当しますが、この国内事業にはまだ伸びしろがあると考えています。少子高齢化が進む中、これから新築物件の大きな増加は見込めないでしょう。しかし、現在さまざまな地域で起きているインフラの老朽化などの問題、あるいは自然環境やライフスタイルの変化による社会課題があるところにビジネスチャンスは必ずあります。そこに、創業来70年にわたって全国で事業を展開し、各地に営業所をもつ当社グループの強み、すなわち地域密着型の情報量が生きてくると考えています。今やインターネットでも情報を得ることはできますが、最も大切な情報は現場でしか知り得ないと確信しています。その最たるものは、お客さまの顔。顔が見えない仕事は信頼できません。地域に根差した情報を重視することで、当社グループの価値をさらに向上することができると考えています。

 

 


 

 

まず注力すべき分野として、ハウジング領域の請負・分譲事業、管理事業、リブネス事業の展開を強化していきます。ビジネス領域についても、土地情報力やテナント企業さまとのリレーションという当社グループの強みを活かして更なる成長を目指していきます。

今後の成長分野の一つとなるデータセンターの強化に向けては、2025年4月1日にデータセンター事業本部準備室を設置しました。データセンターの一番の課題は、熱の問題を将来的にどのようにコントロールしていくか。そうしたハード面の課題もあり、データの量や質、施設の安全性、BPOなどソフト面の課題もあり、建物を建築したら終わりではなく、その後の対応策の検討が必要です。

リブネス事業の強化も進めています。元々、リブネス事業を立ち上げたのは芳井会長と私です。名前、ロゴの色も自分たちで決めて大切に育ててきました。当社グループにはストック事業のブランドがなかったため認知度が低く、まずはブランディングをしました。そして個人向けの住まいの仲介、リフォーム、買取再販、賃貸管理に至るまでお客さまの課題を解決する部署を作り、システムを整え、ノウハウを積み重ねてきました。その後相続税対策に関連する集合住宅についてもソリューションを提供し、着実に伸長しています。更に、2024年には事業用施設を対象にしたBIZ Livnessを立ち上げました。工場、倉庫、商業施設、ビルなどの建物を壊さずに、耐震性能や環境対応などの付加価値をつけて再活用するためのコンバージョンやリフォームをする事業です。リブネス事業は2030年代には売上高1兆円規模を目指しています。

一方、サプライチェーンにおいて国産材の活用を図ることを目的に私が名称を決めたFuture with Woodプロジェクトも進めています。非住宅の木造・木質化を推進しながら、約10年後には非住宅木造事業において業界トップの規模を目指していきます。

 

 

 社内起業、他社との協働への投資により、新たな挑戦や働き方を後押しする


※ CVCファンド投資先

  「Oishii Farm Corporation」

 

2024年より新たな試みとしてスタートした社内起業制度「Daiwa Future

100」については、初年度の2024年は896件の応募があり、最終選考では条件付きも含め5件が通過、2025年4月より4件の事業化検証を開始しています。この制度は当社グループにおける新たな挑戦や働き方を後押しする取り組みの一つであると同時に、社員のモチベーションアップにも貢献します。経営人財育成への投資として300億円を確保、失敗した場合にも戻れるよう帰りのチケットも用意して挑戦する土壌を整えています。

また、2024年4月に、CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)ファンドの運用を本格的に開始しました。この「大和ハウスグループ“将来の夢”ファンド」は、最大300億円の運用額を確保し、基本的に「ア(安全・安心)ス(スピード・ストック)フ(福祉)カ(環境)ケ(健康)ツ(通信)ノ(農業)」の領域において、既存事業を深化させる事業と将来の新規事業という観点で成長領域を探索しています。

人的資本については人的資本ROIという明確な指標を定め、「人的資本 ROI=数理差異除く営業利益÷人的資本投資額」と定義づけました。今後は人的資本投資額を増やしながら、営業利益と比較して生産性の向上を目指していきます。女性の管理職比率などを含めた多様性に関する目標指標や、従業員エンゲージメントサーベイの結果など非財務の部分をしっかりモニタリングし、課題の把握とその解決に向き合いながら、人的資本の価値向上にも取り組んでいきます。

 

 

 

 経済価値と環境・社会価値は両立するものとして、

 事業を通じて私たちがお客さまにできることを考え、提案する


 

 

 

サステナビリティ経営を推進するにあたり、財務価値と非財務価値とのつながりを、どのように社会と共有し、持続的成長につなげていくかを重視しています。社会にコミットすべき指標が数多くあるなかで、ZEH率、ZEB率などの環境指標の目標は、戦略の中心に必ず置き、その進捗をモニタリングしながら成果を挙げ、脱炭素社会に向けて貢献していきます。

住宅分野だけ見れば他社との大きな差別化は難しいかもしれません。しかし、大和ハウスグループには幅広い事業領域があります。非住宅分野も含めた総合的なまちづくりに、ゼネコンとして、あるいはデベロッパーとして関わることができます。さらには、環境エネルギー事業という独立した事業もありますので、建物を引き渡した後の電力小売事業も含め、長きにわたってお客さまに寄り添いながら、共に環境課題に向き合うことができる点は、当社グループの強みだと考えています。

また、当社では不動産開発投資のハードルレートとしてIRRを採用していますが、日本で初めてICP(インターナルカーボンプライシング)を導入しました。日本国内だけでなくヨーロッパの数字を見たりしながら社内で協議して、CO₂1トン2万円と評価しました。挑戦的な数字ではありますが、投資を検討する際に環境価値も考慮してもらうという、現場サイドの意識付けにも重要な役割を果たすと考えています。環境対応にはコストがかかります。経済と環境を両軸で回すために、ICPの導入で社員が積極的にカーボンニュートラルに向けた投資に取り組み、財務価値の向上にもつなげていきます。

一方で、お客さまの意識も変化しつつあり、流通、建築のZEB率、住宅のZEH率は向上しています。集合住宅もZEH-M標準対応商品のTORISIA(トリシア)などの発売が功を奏し、カーボンニュートラル戦略は順調に進捗しています。

近年、夏場の異常気象など地球環境への対応は待ったなしの状態です。当社グループの事業規模や業界で注目される立場であることを鑑みると、率先して環境問題に対応していかねばなりません。

東日本大震災の後、戸建住宅「xevo」の断熱性能を上げ、太陽光パネル、エネファーム、リチウムイオン蓄電池を搭載して、インフラの課題が起きた時も雨天でも約8日間自立できる住宅を商品化しました。災害発生時に、スマホの充電やテレビ、ラジオ、冷蔵庫、扇風機といった最低限の生活インフラを維持するレジリエンス機能のある家を最初に作ったのは当社グループです。自然災害などの問題があった時、まず人を守ることは我々のベースであるDNAに組み込まれています。経済価値と環境価値・社会価値は相反するのではなく、両立しなければなりません。これからも私たちの事業を通じて何ができるのかしっかり考え、お客さまに提案していきます。

環境省が主催する「ESGファイナンス・アワード・ジャパン」の環境サステナブル企業部門においても、2023年度は銀賞、2024年度は金賞をいただきました。そういう部分でも我々の取り組みは一定の評価をいただいていると感じています。

 

 

 

 創業100周年の2055年に向けて

 社会から必要とされる会社として持続的成長を実現する

 

 

大和ハウスグループは、「儲かるからではなく、世の中の役に立つからやる」という創業者精神を原点に、自社の利益だけを追求するのではなく、共創共生の精神のもと企業活動を推進してきました。現在、当社グループが売上高5兆円を超える企業に成長したのは、従業員やさまざまなステークホルダーの皆さまのおかげだと感じています。

当社グループは他社にないもの、社会にないものを作り続けて成長してきました。この先も既成のポジションを守るのではなく、常にベンチャースピリットを抱いて歩み続けようとしています。今年で創業70周年を迎えましたが、70年目のベンチャー企業としてこれからも新しい芽を育て、社員を育むとともにスピード感をもって新規事業を創出し、事業を通じて社会から必要とされる会社として持続的成長を実現していきます。

 

 

 

 

マテリアリティと第7次中期経営計画

大和ハウスグループでは、2030年頃のメガトレンドをふまえ、機会とリスクを認識し、“将来の夢”を実現するために取り組むべきマテリアリティ(最重要課題)を設定しています。マテリアリティをふまえ、第7次中期経営計画では、第8次中期経営計画以降の成長も見据えた企業価値の最大化に向けて、「収益モデルの進化」「経営効率の向上」「経営基盤の強化」の3つの経営方針に基づく8つの重点テーマに取り組み、持続的成長モデルの構築を目指します。


 

       ※ 大和ハウスグループへの影響(リスクと機会)の詳細については、統合報告書2025(2025年8月発行予定)をご覧ください。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

当社グループでは、“将来の夢”(パーパス)を起点とした世の中の役に立つ「事業の推進」によるキャッシュ・フローの創出と、世の中の変化に対応した「基盤の強化」によるサステナビリティの向上を両立するビジネスモデルによって、事業を通じて社会課題を解決し、ステークホルダーからの信頼・共感を得ることで、次の事業機会・事業投資へ繋げる[価値創造プロセス]を実現しております。この価値創造プロセスの好循環により、持続的な企業の成長と社会課題の解決に取組むことで、企業価値の向上と“将来の夢”の実現を目指しております。

当社グループにおいて、サステナビリティ課題に取組むことは、企業の価値創造の源泉や強み、ビジネスモデルを強化することであり、将来キャッシュ・フローひいては事業の持続的成長並びに企業価値の維持・向上につながるものと捉えており、環境・社会の観点から世の中の変化に対応した取組みを進めております。

 

[価値創造プロセス]


1.サステナビリティ全般

(1)ガバナンス

当社グループは長期視点での経営課題をマテリアリティ(最重要課題)として特定し、短・中期においては中期経営計画の方針に落とし込み、企業のサステナビリティのための課題解決に取組んでおります。マテリアリティ並びに中期経営計画の進捗は、定期的に取締役会へ報告しております。

特に、SDGs・ESGへの取組みについては、全社環境推進委員会及びサステナビリティ委員会(※)から重要な情報の提供を受けたうえで、コーポレートガバナンス委員会において意見交換を行い、必要に応じて取締役会に提言しております。

全社環境推進委員会は、当社グループが取組むべき環境活動の基本的事項について審議・決定し、全社の環境活動を指示・統括しております。

サステナビリティ委員会は、ESG課題のうち、従業員や取引先との関係性等、特に「社会」の分野を中心とした重要課題の現状を把握したうえで、改善内容について審議・決定し、当該決定に関する全社の取組みを指示・統括しております。

※ 2025年4月1日より、ガバナンス体制を見直しております。全社環境推進委員会とサステナビリティ委員会を統合し、サステナビリティ委員会として、環境・社会に関するテーマの監督・意思決定を行っております。

 

 

(2)リスク管理

中長期的に大きな影響を与えるリスクとしては、環境に関する(気候変動・生物多様性保全等)リスクや、人財基盤に関するリスク、人権に関するリスク、情報セキュリティに関するリスク、コンプライアンスリスク等を認識しており、全社的なリスク管理プロセスに統合してマネジメントしております。リスク・機会の特定・評価は、中期経営計画や環境行動計画の策定に合わせて、詳細分析を行い、同計画の重要課題の特定や主要施策、目標水準に反映しております。

 

2.環境の取組み

当社グループでは、大和ハウス工業の創業100周年にあたる2055年を見据えた環境長期ビジョン「Challenge ZERO 2055」を策定しております(※)。サステナブルな社会の実現を目指し、4つの環境重点テーマ(気候変動の緩和と適応、自然環境との調和、資源循環・水環境保全、化学物質による汚染の防止)に関して3つの段階(調達、事業活動、商品・サービス)を通じ、環境負荷“ゼロ”に挑戦いたします。なかでも、特に重要な7つの目標を「チャレンジ・ゼロ」として2030年のマイルストーンを明確にし、取組みを加速させております。

※ 気候変動に関しては、社会的要請をふまえ2050年としております。

 

<気候変動への対応>

気候変動の緩和と適応は、環境重点テーマのうち、当社グループが取組むべき最も重要なテーマの一つであり、なおかつマテリアリティの一つとして「サーキュラーエコノミー&カーボンニュートラル」を掲げております。加えて、気候変動への着実な対応を進めるために、第7次中期経営計画では重点テーマの一つに「すべての建物の脱炭素化によるカーボンニュートラルの実現(カーボンニュートラル戦略)」を設定し、より詳細な目標を設けている環境行動計画「エンドレス グリーン プログラム 2026」と並行して、取組みを推進しております。

 

 

(1)ガバナンス

当社グループでは、委員長を当社サステナビリティ統括部長とする「全社環境推進委員会」を設置しております。年2回実施する当委員会は、当社グループの環境活動に関する基本的事項及び環境に関するリスクや機会について審議・決定し、全グループの環境活動を統括しております。さらに、事業本部ごとに事業本部長を環境委員長とする自律的なマネジメント体制を構築し、環境目標の達成度を、年2回の「事業本部環境委員会」で確認しております。また、主要グループ会社においては、各社の環境担当役員で構成する「グループ環境経営会議」を年2回実施し、全社環境推進委員会で決議された事項を共有しております。

中期経営計画に合わせて策定している環境行動計画「エンドレス グリーン プログラム」(気候変動・生物多様性保全を含む)は、環境経営に関する重要な事項であるため、取締役会への報告事項としており、年に一度、全社環境推進委員長が取締役会に進捗状況を報告し、適宜、戦略や目標、計画等の見直しを行っております。

2024年度は、「エンドレス グリーン プログラム 2026」の2023年度の全社実績及び2024年度の目標見直しについて取締役会でレビューを実施いたしました。事業活動、商品・サービスに加えて調達(サプライチェーン)におけるGHG排出量の削減活動を重要視するよう指示を受け、サプライヤーとの対話を実施するなど、取組みを強化いたしました。

 

 


 

 

会議体

主なメンバー

気候変動に関する主な役割

開催頻度

取締役会

取締役、

社外取締役

戦略の監督

月1回程度

コーポレートガバナンス委員会

代表取締役、社外取締役、

監査役、社外監査役

戦略に関する重要事項について討議のうえ、取締役会に提言

年2回程度

全社環境推進委員会

サステナビリティ統括部長、

事業本部環境統括責任者、

本社機能部門長

戦略の立案・審議・決定、全社管理

指標の進捗管理

年2回程度

グループ環境経営会議

グループ会社環境担当役員

戦略のグループ展開

年2回程度

事業本部環境委員会

事業本部長、環境統括責任者、

環境推進責任者

戦略の実行、個別管理指標の進捗管理

年2回程度

 

※ 2025年4月1日より、ガバナンス体制を見直しております。全社環境推進委員会とサステナビリティ委員会を統合し、サステナビリティ委員会として、環境・社会に関するテーマの監督・意思決定を行っております。

 

 

(2)戦略

気候変動に伴うリスクと機会には、脱炭素社会に向かうなかで生じる規制の強化や技術の進展、市場の変化といった「移行」に起因するものと、地球温暖化の結果として生じる急性的な異常気象や慢性的な気温上昇といった「物理的変化」に起因するものが考えられます。また、その影響は短期のみならず、中長期的に顕在化する可能性もあります。そこで当社グループでは、気候変動に伴うさまざまな外部環境の変化について、その要因を「移行」と「物理的変化」に分類のうえ、発生しうる時間軸を想定し、影響度を評価し、重要なリスクと機会を特定しております。

また、当社グループでは特定したリスクと機会をふまえ、将来の外部環境の変化に柔軟に対応した事業戦略を立案するため、複数のシナリオを用いて、事業への影響評価を実施しております。シナリオ分析にあたっては、「移行」が進むシナリオとして1.5℃シナリオを参照、極端な「物理的変化」が進むシナリオとして4℃シナリオを参照し、事業戦略の妥当性を検証しております。

その結果、いずれのシナリオにおいても、2030年時点における将来シナリオを想定し、当社グループの提供するネット・ゼロ・エネルギー住宅や建築物の需要、環境エネルギー事業等の拡大が見込まれ、その収益増は負の財務影響を上回る見込みであることを確認し、リスク対応の妥当性とより積極的な事業機会獲得の重要性を再認識いたしました。これらの分析を踏まえ、2030年までに「原則全棟ZEH・ZEB化、原則すべての新築建物の屋根に太陽光発電を搭載する」との方針を決定し、ZEH率・ZEH-M率・ZEB率を第7次中期経営計画における重要管理指標に設定いたしました。

なお、分析の対象は当社グループのコア事業である戸建住宅・賃貸住宅・マンション・商業施設・事業施設・環境エネルギー事業を対象に、重要なリスク・機会に限っての簡易分析としております。今後は対象となる事業の更なる拡大を図るとともに、リスク・機会の網羅性の向上や、シナリオ分析の精緻化等にも取組んでまいります。

 


 

[気候変動に関する主なリスクと機会]

発生しうる時間軸:短期(1年未満)、中期(~2030年ごろ)、長期(~2050年ごろ)

影響度:小(100億円未満)、中(100億円以上1,000億円未満)、大(1,000億円以上)

種類

内容

発生しうる時間軸

影響度

リスク

移行

政策・法規制

建築物省エネ法の規制強化に伴う仕様変更による原価増

短期

カーボンプライシングの導入に伴う運用コストの増加

中期

物理的変化

慢性

夏季の最高気温上昇に伴う施工現場での熱中症発症リスクの増大

短期

急性

気象災害による自社施設の損害発生及び保険料の増加

短期

気象災害によるサプライチェーンにおける資材調達及び工事遅延の影響

短期

機会

移行

製品/サービス

温室効果ガス排出量の少ない住宅・建物の需要増

短期

再生可能エネルギーの需要増による環境エネルギー事業の拡大

短期

物理的変化

製品/サービス

気象災害に備えた住宅・建物の需要増

中期

 

 

 

[カーボンニュートラル実現のための移行計画]

当社グループは、「気候変動の緩和と適応」を重要な経営課題と位置づけ、環境長期ビジョンに掲げる「2050年カーボンニュートラルの実現」に向けた挑戦を続けております。

2022年度からスタートした第7次中期経営計画の「カーボンニュートラル戦略」では、バリューチェーンを通じた温室効果ガス排出量(スコープ1・2・3)を2030年までに40%削減(2015年度比)することをマイルストーンに設定し、全事業、全方位で取組みを加速させております。なかでも、当社グループが直接関与する事業活動におけるGHG排出量(スコープ1・2)については、「自社発電由来の再生可能エネルギーによる電力の再エネ化」等を通じて、2030年までに70%削減(2015年度比)することを目指しております。また、最も排出量の多い販売建物の使用によるGHG排出量(スコープ3/カテゴリ11)については、すべての事業において原則として、「全棟ZEH・ZEB化、全棟太陽光発電搭載」を推進し、2030年までに63%削減(2015年度比)することを目指しております。

 


 

(3)リスク管理

気候変動リスクは、中長期的に大きな影響を与えるリスクの一つと認識し、全社的なリスク管理プロセスに統合してマネジメントを実施しております。リスク・機会の特定・評価は、中期経営計画や環境行動計画の策定に合わせて、概ね3~5年おきに詳細分析を行うとともに、毎年見直しを行い、同計画の重要課題の特定や主要施策、目標水準に反映しております。

具体的にはサステナビリティ部門において、脱炭素社会への移行に伴う「外部環境の変化」と地球温暖化の進展に伴う「物理的変化」を特定し、その発生しうる時間軸とこれらが現実化した場合の影響度から重要なリスクと機会を評価しております。こうして特定した重要なリスクと機会については、各部門別に具体的な対策を検討し、環境行動計画において、グループ全体・部門別・事業所別に重要管理指標と目標を設定し取組みを推進しております。そのうえで、グループ全体として年2回の全社環境推進委員会、部門別には年2回の事業本部環境委員会、事業所別には年2回の事業所ECO診断/研修にて進捗管理を行っております。

 

 

[主なリスクへの対応]

・事業活動|事業活動におけるCO₂の“ チャレンジ・ゼロ”

当社グループでは、温室効果ガスの排出量削減に向けた国際的な取組みとして、科学的根拠に基づく排出削減目標「SBT(Science Based Targets)」の認定を取得し、「パリ協定」との整合性を確保しております。加えて、エネルギー効率の向上を目的とする「EP100」、再生可能エネルギーの利用拡大を目指す「RE100」の両国際イニシアティブにも、建設業として世界で初めて加盟いたしました。これらの取組みは、環境行動計画「エンドレス グリーン プログラム 2026」に短期・中期の目標及び対策を落とし込み、全社的に推進しております。自社施設の省エネルギーについては、新築する自社施設を原則ZEBとする方針を掲げ、取組みを進めております。既存施設には、毎年エネルギーコストの5%に相当する省エネ投資を実施する「省エネ投資ガイドライン」に基づき計画的な設備改善を進めるとともに、独自の「省エネチェックシート」を活用した運用改善を進めております。再生可能エネルギーの利用拡大については、全国の事務所、住宅展示場、施工現場、工場等において、当社グループが運営する再生可能エネルギー発電所で発電された電力の再エネ価値を証書化した「トラッキング付非化石証書」を付加した「実質再エネ100%電気」の利用を進めており、グループ全体での導入を拡大しております。

 

[主な機会への対応]

・商品 | まちづくりにおけるCO₂の“ チャレンジ・ゼロ”

当社グループでは、第7次中期経営計画及び環境行動計画「エンドレス グリーン プログラム 2026」において、ZEH率及びZEB率を商品における重要な管理指標(KPI)に位置付け、取組みを推進しており。ZEHについては、ZEH標準対応商品の拡充と提案強化に取組んでおります。ZEBについては、認知度の向上を目的として、継続的にZEBセミナーや相談会を開催しております。また、営業担当者及び設計担当者向けに、ZEB提案に関する社内研修を実施するとともに、ZEB設計に必要な技術や手法を用途別に整理したケーススタディ資料を作成し、社内に公開しております。さらに、ZEH率及びZEB率の進捗を四半期ごとに集計し、事業所単位での目標達成度を確認するとともに、業績評価に反映することで、社内全体の取組みを加速させております。

 

(4)指標及び目標

気候変動に伴うリスクの最小化と機会の最大化を目指し、短・中・長期の目標を設定して、取組みを推進しております。なお、これらの目標は中期経営計画の指標の一つとして設定するとともに、同計画の対象期間と合わせて策定している環境行動計画「エンドレス グリーン プログラム 2026」においては、さらに詳しい管理指標と目標を設定し、「環境と企業収益の両立」を目指して、取組みを加速させております。

 

主な指標

2024年度実績(注)

2026年度目標

2030年マイルストーン

(環境長期ビジョン)

バリューチェーン全体のGHG排出量削減率

(2015年度比)

46.2%

35%

40%

事業活動におけるGHG排出量削減率

(2015年度比)

57.6%

55%

70%

販売建物の使用によるGHG排出量削減率

(2015年度比)

59.9%

58%

63%

 

(注) 2024年度実績は暫定値です。確定値及びその他の指標については、2025年7月末発行予定の「サステナビリティレポート2025」にてご確認ください。(https://www.daiwahouse.co.jp/sustainable/library/csr_report/index.html)

 

 

<生物多様性保全への対応>

当社では、環境長期ビジョン「Challenge ZERO 2055」において「自然環境との調和」を環境重点テーマの一つに掲げており、自然資本の保全・向上に向けた姿勢を明確にしております。また、環境行動計画「エンドレス グリーン プログラム 2026」において、具体的な指標・目標を設定し、取組みを推進しております。

さらに、自然資本との関わりをより的確に把握し、経営戦略への反映を図るため、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の最終提言v1.0及び「LEAPアプローチ」を参考に、事業活動における自然への影響と依存を把握し、自然関連のリスクと機会を評価いたしました。また、2024年6月にTNFDフォーラム(※1)に参画し、TNFD Adopter(※2)への登録を行いました。積極的な情報開示を通じて、事業上のリスク低減や機会の創出に取組み、生物多様性保全の課題解決を目指してまいります。

※1.TNFDでの議論を、専門知識を提供するステークホルダーとしてサポートする国際組織。

※2.TNFD提言を採用した開示を行う意向をTNFD のWebサイトで登録した企業のこと。登録した企業は2025年会計年度までの企業報告においてTNFD提言に沿った開示が求められる。

 

(1)ガバナンス

「<気候変動への対応> (1)ガバナンス」をご参照ください。

 

(2)戦略

UNEP-WCSC(国連環境計画 世界自然保全モニタリングセンター)らが開発した企業の自然への影響や依存度の大きさを把握するツール「ENCORE」を使用し、当社グループの事業活動が自然資本に与える影響及び依存関係を確認いたしました。事業及びバリューチェーンの各段階における影響・依存の程度をヒートマップ形式で整理し、これに関連する社会動向等の外部環境の情報も参照したうえで、想定されるリスク・機会を抽出いたしました。さらに、当社グループの事業にとっての重要性も考慮し、リスク・機会を特定いたしました。生物多様性保全に関する主なリスク・機会は下記の通りです。

 

[生物多様性保全に関する主なリスクと機会]

発生しうる時間軸:短期(1年未満)、中期(~2030年ごろ)、長期(~2050年ごろ)

影響度:小(100億円未満)、中(100億円以上1,000億円未満)、大(1,000億円以上)

種類

内容

発生しうる時間軸

影響度

自然衰退シナリオ

NP

シナリオ

自然衰退シナリオ

NP

シナリオ

リスク

移行

政策・

法規制

自然保護のための開発規制強化に伴う事業機会の減少

中期

評判

資源調達を通じた自然への悪影響の懸念に伴う評判の低下

短期

短期

物理的変化

慢性

気候の変化や森林火災の増加、水不足等に伴う木材供給量の低下

短期

短期

ビジネス

機会

移行

製品/

サービス

緑化ニーズの高まりによる一棟単価向上と緑化事業の需要増/緑化によるポジティブインパクト

中期

市場

非住宅における木造建築市場の創出

中期

自然保護
機会

生態系の

保護

事業活動

社有地・自社施設における生物多様性保全

自然保護機会は、企業のビジネスに直接影響するものではありませんが、生態系サービスの持続可能性にとって重要と考え、機会として特定し戦略を策定しております。

 

(注)1.自然衰退シナリオ:ネイチャーポジティブに向けたグローバル・協調的な動きがうまく進まず、自然・生物多様性、生態系の劣化が深刻化するシナリオ。

2.NP(ネイチャーポジティブ)シナリオ:昆明・モントリオール生物多様性枠組が目指している2050年ビジョン「自然と共生する社会」が達成されるよう、グローバルにネイチャーポジティブに向けた移行が進むシナリオ。

 

 

(3)リスク管理

自然関連リスクは、中長期的に事業へ影響を及ぼす重要なリスクの一つであると認識しており、全社的なリスク管理プロセスに統合してマネジメントを実施しております。

当社は、環境重点テーマの一つとして「自然環境との調和(生物多様性保全)」を掲げ、環境長期ビジョン及び環境行動計画「エンドレス グリーン プログラム 2026」を策定し、年2回の全社環境推進委員会において進捗を評価しております。また、「エンドレス グリーン プログラム 2026」は環境経営に関する重要事項と位置付け、年に一度、取締役会へ進捗状況を報告するとともに、適宜、戦略や目標の見直しを行っております。また、事業投資委員会では、当社の重要な不動産開発事業及びその他の事業投資について、事業性とあわせて環境関連リスクの評価・審議を行っております。

さらに、自然関連リスクの評価にあたっては、TNFDに対応し、直接操業拠点における優先地域の特定、水及び木材調達のリスク評価を実施し、低リスクエリアへの転換などの対策を進めております。

 

[主なリスクへの対応]

・サプライチェーン | 木材調達評価

当社グループでは、年に一度、独自の評価基準をもとに木材調達調査を実施し、調達木材をSSS・SS・S・Cにランク分けしております。調達先各国のリスク(法令遵守・生物多様性・人権など)については、リスク評価ツールを活用し状況を把握しております。森林破壊リスクのおそれがあるCランク木材比率の削減については、数値目標を設定して取組みを進めております。また、Cランク木材を供給したサプライヤーに対しては、持続可能な木材に向けた改善計画書の提出を求め、公的書類の確認徹底や、低リスクエリアへの調達先切り替えなどを進めております。

 

・当社グループ施設 | 生物多様性の影響評価

当社グループが保有する敷地のサイト(評価地域)において、一次スクリーニングを行い、生物多様性の影響評価を行うべきサイトを把握し、重要サイト(要注意地域)を特定しております。今後、すべての重要サイトにおいて事業運営と生物多様性保全を両立した管理計画の策定を進め、管理計画に基づいたモニタリングを行ってまいります。

 

[主な機会への対応]

・商品 | 生態系に配慮した緑被面積の拡大

当社グループでは、「みどりをつなごう」を合言葉に新たに植栽する樹木(高木・低木)の半数以上を各地域の自然に合った在来種にすることを推奨しております。全事業を通じて、2030年までに生態系に配慮した緑被面積を200万㎡増やす(2021年度以降の累積)ことを目標に掲げ、物件単位で在来種が50%以上となった件数割合について事業本部ごとに目標を設定のうえ、四半期ごとに実績をモニタリングし、取組みを推進しております。

 

(4)指標及び目標

生物多様性保全に関するリスクの最小化と機会の最大化を目指し、短・中・長期の目標を設定して、取組みを推進しております。なお、これらの目標は中期経営計画の対象期間と合わせて策定している環境行動計画「エンドレス グリーン プログラム」において、管理指標と目標を設定し、「環境と企業収益の両立」を目指して、取組みを加速させております。

 

段階

主な指標

2024年度実績(注)

2026年度目標

2030年マイルストーン

(環境長期ビジョン)

調達

調達木材におけるCランク木材比率

0.5%

0%

0%

事業活動

自社施設の重要サイトにおける管理保全計画の策定・実施率

14.7%

100%

100%

商品・

サービス

生態系に配慮した緑被面積(累積)

(2021年度以降)

71.1万㎡

100万㎡

200万㎡

 

(注) 2024年度実績は暫定値です。確定値及びその他の指標については、2025年7月末発行予定の「サステナビリティレポート2025」にてご確認ください。(https://www.daiwahouse.co.jp/sustainable/library/csr_report/index.html)

 

 

3.人的資本・多様性への取組み

当社グループでは社是に掲げる「事業を通じて人を育てる」に基づき、人財(人的資本)の価値向上が企業価値の源泉であると捉え、創業以来、人財の成長を第一に考えた経営を行ってまいりました。また、創業100周年に向けた当社グループの羅針盤となる“将来の夢”(パーパス)の策定に伴い、2024年4月より新たな理念体系に変更いたしました。新しい理念体系は、“いつの時代も変わらない”「社是」「社員憲章」と、“時代に合わせて変化していく”「将来の夢」「大切にしたい価値観(従業員が大切にする共通の価値観として新設)」の2軸で構成しており、「“将来の夢”が人や企業を成長させる」という考えのもと、更なる人財の成長への取組みを行ってまいります。

第7次中期経営計画では、人的資本への積極的な投資と従業員の成長の場・機会の創出を通じて、「個」と「組織」の価値を最大化し、イノベーションの基盤づくりを進めております。多彩な事業ポートフォリオを持つ当社グループにおいて多様な人財の確保は最も重要な課題の一つであり、事業戦略に連動した多様な人財を確保するとともに、一人ひとりの個性や価値観に寄り添った成長機会を提供することで、自律的なキャリア形成を支援しております。2025年度は、より安心して意欲的に能力が発揮できる環境を整備するとともに、中長期的に事業の成長を担う人財を確保するため、月例給与水準の大幅な改定を行いました。今後も、多様な「個」が健康かつ心理的安全な職場環境の中で自分らしさを発揮し、対話を通じてつながり合うことで「組織」として新たな価値が創出される、その様な組織風土・文化を醸成してまいります。

 

(1)戦略

人財育成方針

当社グループは、人財(人的資本)が最大の財産であるとの信念のもと、「創業者精神」を基本軸に、中長期的な視点をもって人財の育成に取組んでおります。変化し続ける社会や価値観の多様化に柔軟に対応し、潜在的な市場を発掘・創出するためには、一人ひとりの人財が自分の基盤を確立したうえで「強み・らしさ」を発揮して輝き合い、新しい価値を共創していくことが欠かせません。当社では、「Keep Learning, Growing, and Dreaming.」をコンセプトに、従業員それぞれがお客様や社会から信頼され、愛される真のプロフェッショナル人財として成長するための3つの基盤づくり(機会づくり、仲間づくり、職場づくり)を実践。複線的な成長機会の提供を通じて、従業員の自律的かつ持続的なキャリア形成を支援しております。そして、「個」と「組織」の成長による人的資本の価値向上が知的資本と財務資本の強化へとつながり、更なる人的資本の最大化につながるという好循環を持続的に生み出すとともに、一人ひとりの人財にとってその成長が「生きる歓び」となり、より豊かな人生へとつながることを目指してまいります。

 

[人財育成ポリシー]


 

 

[人財育成のエコシステム]


 

 

社内環境整備方針

当社グループでは多様な人財が持つ「知」や「経験」のダイバーシティがイノベーションを生み出す源泉であると考え、従業員が働きがいを実感しながら、「自分らしさ」を存分に発揮できる健全で公平な職場環境の整備に取組んでおります。技術革新(AIやICT)の積極活用により従業員の働き方に変化を起こし、生産性の向上と従業員の健康保持並びに改善を進めてまいります。また、従業員が持つ多様な価値観、性別、障がいの有無、性自認、性的指向、性表現、年齢、国籍、言語、文化、ライフスタイル等が尊重され、それぞれが持つ視点や発想を認め合い、活かしあい、輝きあう職場風土を、経営層及び従業員相互の交流・対話を通じて醸成してまいります。

これらの取組みを通じて、従業員の自分らしい生き方や働き方の選択肢を広げ、エンゲージメントの向上につなげていくとともに、定期的なサーベイを通じてその効果を検証してまいります。

 

人的資本の拡充、多様性の推進

当社では多様性の一つである「女性」社員の活躍推進をダイバーシティ推進の試金石として積極的に取組んでまいりました。2005年に女性活躍推進プロジェクトを立ち上げ、2007年には専任組織である「Waveはあと推進室」を設置。業域拡大に合わせて2015年4月には同推進室を「ダイバーシティ推進室」に名称変更、2019年10月から「DE&I推進」組織として組織改編いたしました。

当社においてダイバーシティ&インクルージョンを経営に活かし、商品やサービス等のプロダクト及びプロセスにおける新しい発想を生み出すため、また多様な視点での意思決定を強化するため、多様性を促進しております。

 

 

(2)指標及び目標

当社グループでは、社是に掲げる「事業を通じて人を育てる」に基づき人財(人的資本)の価値向上に取組んでおりますが、係る具体的な取組み、指標のデータ管理については連結グループに属する全ての会社で共通ではないため、指標及び目標については当社を対象として記載しております。

 

人財育成のための教育プログラム

当社は、従業員一人ひとりが「人財育成ポリシー」で定義した「成長Story」に沿って成長することを積極的な教育投資を通じて実現いたします。あらゆる階層・職種の従業員がプロフェッショナルとして自律的にキャリアを開発し、成長し続けるための「機会・仲間・職場」づくりを、多様な研修プログラムや越境体験機会の提供により支援いたします。

 

[当社の教育体系]


 

[当社の2024年度教育投資実績]

総投資額

のべ受講時間

(従業員一人当たり)
受講費用

(従業員一人当たり)
受講時間

2,322,209千円

574,097時間(※1)

143,417円

35.5時間

 

※1.2024年度から、本社本部が主管する教育プログラムの受講時間に加え、各職場における研修・勉強会の参加時間も含めるように集計方法を見直しました。

 

 

[当社の2024年度の主な教育プログラム受講実績]

成長Storyの段階

教育プログラム

目的

受講

人数

(人)

(一人当たり)

受講時間

(時間)

 

基盤の

確立

階層別

教育

新入社員

教育

集合

研修

学生から社会人にモードチェンジし、基礎力を習得する

『集合研修』みらい価値共創センター「コトクリエ」にて創業者精神や当社社員として大切にしたい価値観を学ぶ

『実習』現場実習:職種を問わず施工現場での実習を経験し、ものづくりの真髄に触れる

住宅営業実習:配属先を問わず住宅営業職の仕事を経験し「住宅の心」を学ぶ

611

52.0

 

実習

602

(※1)

654.3

 

 

新任主任職教育

新たな役割に求められるマインド・知識・スキルを習得する

『主任職』後輩育成力、チームビルディング力の強化

『管理職』業績が上がるマネジメントとヒトが活きるマネジメントの両立

424

18.0

 

新任責任者教育

163

30.5

 

人財・組織マネジメント力強化プログラム

全ライン管理職が最新のマネジメント理論を学び直す

230

27.0

 

職種・部門別専門教育

業務上必要となるビジネススキル・技術力を習得・アップデートする

(※2)

153,742

(※3)

12.6

 

自律学習

学習プラットフォーム上の動画学習講座にて、全従業員が「深める学び」(業務に直結する学習)と「広げる学び」(キャリアの幅を広げる学習)の両面から、自律的な学習を行う

8,008

5.7

 

個性

の確立

 

大和ハウス版サクセッションプラン「D-Succeed」育成プログラム

選抜された経営リーダー後継候補者が、経営人財に求められるものの見方・考え方、経営リテラシーを習得し、リーダーシップを開発する

230

64.4

 

他流試合/越境型プログラム

他社・他団体のメンバーとの交流やプログラム活動を通し、自律型人財となり、リーダーシップやチームマネジメント力を開発する

25

39.8

 

新価値の

共創

 

経営リーダー向け

社外交流講座

さまざまな企業の経営人財候補生が集う社外講座にて、社会や地域課題に目を向け、将来の事業を創造するプロセス・考え方を習得する

18

73.4

 

 

※1.[当社の2024年度の主な教育プログラム受講実績]の内、新入社員教育の「実習」の受講時間数は、[当社の2024年度教育投資実績]の「のべ受講時間」(574,097時間)には含んでおりません。

※2.職種・部門別専門教育の受講人数は「のべ人数」。

※3.職種・部門別専門教育の一人当たり受講時間は、のべ受講時間を全従業員数(16,192名)で除した時間。

 

 

女性活躍推進

組織の意思決定に影響を与える分岐点とされる30%(クリティカル・マス)の確保に向けて、当社では「女性管理職比率」、「女性主任職比率」、「新卒採用女性比率」の3指標をKPIとして定めております。当社の女性社員比率は21.7%(2025年4月1日現在)であるため、絶対数の確保と育成を並行して進めております。

女性管理職については、第7次中期経営計画(2022~2026年度)において、初年度(2022年4月1日)に比べ約2倍となる500名登用(女性管理職比率8%)を目標として掲げております。その前段階として新卒採用女性比率30%を目標とし、会社説明会等において出産・育児等のライフイベントを支える人事制度の説明や、当社で活躍する女性社員の事例紹介等、入社後の働き方をイメージしやすい仕掛けづくりをしております。また、女性社員はもとより上司等、周りの社員に対してもマインドセットを図り、能力と意欲のある女性がキャリアを積み重ね持続的に働くことのできる環境と成長の機会を整備しております。その結果、管理職候補となる主任職層における女性比率が徐々に高まり、女性管理職比率も年々高まっております。

 

男性の家事・育児参画の推進

お客様の住まいと暮らしに寄り添う企業グループとして、従業員が性別に関わらず家事や育児に参画し新たな学びや気づきを得ることを支援しております。当社では2016年4月に育児休業制度の見直しを行い、育児休業の当初5日間を有給化し、男性も育児休業に踏み出しやすい環境を整えております。また、育児休業期間中だけではなく日常的に家事や育児に関われるように休暇制度やフレックスタイム制度等、柔軟な働き方を拡充してまいりました。

日本においてはまだまだ女性が担うことの多い家事や育児を、男性が単にサポートするのではなく主体的に関わることを後押ししております。男性が家事や育児を実体験として経験できる新たな機会を生み出すとともに、女性の精神的・肉体的負担を軽減することで、誰もが活躍できる社会を創ることを目指しております。

 

指標

実績

目標

2022年度

2023年度

2024年度

管理職における女性比率
(女性管理職比率)

2023/4/1

5.2%

2024/4/1

5.8%

2025/4/1

6.1

2027/4/1

8

主任職における女性比率
(女性主任職比率)

2023/4/1

21.3%

2024/4/1

23.5%

2025/4/1

24.0

2027/4/1

25

新卒採用女性比率

2023/4/1

24.9%

2024/4/1

27.6%

2025/4/1

24.7

30

男性の育児休業取得率(※1)

2022年度

62.2%

2023年度

66.5%

2024年度

68.9

2026年度

80

男性の育児休業平均取得日数

2022年度

13.7日

2023年度

27.1日

2024年度

31.3

2026年度

30

障がい者雇用率

2023/4/1

2.50%

2024/4/1

2.48%

2025/4/1

2.51

2026/4/1

2.70

若年層(入社3年後)
の定着率(※2)

2023/4/1

2020/4/1入社

76.6%

2024/4/1

2021/4/1入社

77.6%

2025/4/1

2022/4/1入社

81.4

85

 

※1.2020年及び2024年に実施した社内アンケートにて、育児休業を「取得したい(取得したかった)」と回答した男性社員比率が80%であったことから、第7次中期経営計画終了時(2026年度)の目標を「80%」に設定しております。

※2.各年度における入社3年後の定期採用者の定着率。

 

 

ダイバーシティスコアの事業所評価への組み入れ

会社全体でのダイバーシティを推進するために、事業所単位での状況を可視化することで、各職場におけるダイバーシティの推進度を測り促進することを目的とし、2019年度より事業所における経営健全度を評価する項目に「事業所ダイバーシティスコア」を導入いたしました。具体的には、「管理職・主任職における女性比率」、「男性の育児休業取得率」、「障がい者雇用率」、「若年層の定着率」の4項目にて評価することで、会社全体で人財の多様化を進めております。

 

シニア活躍推進

当社は高齢化・人口減少社会の到来を見据え、同業他社に先駆けて2013年に65歳定年制を導入いたしました。その後もシニア社員の処遇体系を継続的に見直し、2025年から定年年齢を従業員自身が選択する選択定年制を導入してまいりました。またキャリア採用においても50歳以上を積極的に採用するなど、高度な経験やスキルを持つ人財を確保し長く活躍できる制度を整備しております。

 


 

指標

実績

2022年度

2023年度

2024年度

60歳到達後の雇用継続率(※1)

98.4%

92.7%

97.4

65歳定年到達後の雇用継続率(※2)

49.4%

55.2%

57.7

50歳以上キャリア採用者数

12名

42名

43

 

※1.前年度満60歳を迎えた社員が当年度継続雇用される率。

※2.前年度末で定年退職した社員(65歳到達社員)が当年度嘱託として再雇用される率。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)リスクマネジメント体制について

当社は、「リスクマネジメント規程」を制定し、リスクを「大和ハウスグループに損失を与えるおそれのある事象」と定義した上で、リスクについての平時・有事の対応体制を明文化しております。具体的な体制は、以下のとおりです。

1.平時の体制

経営管理本部長をリスクマネジメント統括責任者に選任して、同責任者が当社グループ全体のリスクマネジメント体制の構築・運用・監督を実施する体制としております。そして、同責任者の監督の下、当社の各事業におけるリスクの顕在化の予防、顕在化したリスクへの対応を推進するための組織として、事業単位のリスク管理委員会(事業本部リスク管理委員会)を設置しております。

これらの体制を含む当社グループ全体の内部統制システムを監督する組織として内部統制委員会を設置しております。同委員会の委員長は社長が、副委員長は経営管理本部長(リスクマネジメント統括責任者)が務めております。

また、リスクをはじめとする当社グループの持続的成長を阻害するおそれのある事実を早期に発見・是正することを目的として、「大和ハウスグループ内部通報規程」を制定し、複数の内部通報窓口を設置・運用しております。運用にあたっては、公益通報者保護法の趣旨を踏まえて通報者氏名・通報内容の厳秘や、不利益な取り扱いを禁止する旨を同規程に定めるとともに、「社内リーニエンシー制度」の導入や、利益相反する関係者を排除して通報に対応する仕組みの構築等、より実効性を高めるための取組みを実施しております。

 


 

 

2.有事の体制

重大リスクが顕在化した場合には、緊急対策本部を立ち上げて対応し、業績等への悪影響の最小化に努めております。具体的には「リスクマネジメント規程」において、顕在化したリスクのうち当社グループ又はそのステークホルダーに特に重大な影響を及ぼすおそれのあるものについて、緊急対策本部を設置して、当該重大リスクへの対応・再発防止策の検討・推進を行うことを定めております。その上で、リスクマネジメント規程の下位規範である「緊急対策本部設置・運営細則」において、緊急対策本部の設置基準・メンバー・運営手順・業務等を明文化することで、速やかに緊急対策本部を立ち上げて適正な対応を執ることができる体制としております。

 

(2)当社グループの事業等に関するリスクについて、連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を与える可能性がある事項には、以下のようなものがあります。なお、本項において将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

<当社グループのリスク一覧>

分類

具体的内容

外部要因

1)法令・政策

① 法的規制

② 海外事業

③ 住宅関連政策・税制の変更

2)事業環境

④ 特定の取引先・製品・技術等への依存

⑤ 原材料・資材価格・人件費等の高騰

⑥ 競合

⑦ 建設技能労働者の減少

3)不動産市場

⑧ 不動産を含む資産の価値下落

⑨ 不動産開発事業

4)ファイナンス

⑩ 金利の上昇

⑪ 退職給付費用

⑫ 賃貸用不動産における空室及び賃下げ

5)ハザード・突発的事象

⑬ 情報セキュリティ

⑭ 自然災害・気候変動

⑮ 感染症

内部要因

 

⑯ 事業戦略・グループ戦略

⑰ 品質保証等

⑱ 安全・環境

 

 

 

1.外部要因

  1)法令・政策

① 法的規制に関するリスク

リスク内容

国内、海外を問わず、法的規制が改廃されたり、新たな法的規制が設けられたりした場合には、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。当社は、国内、海外における建設・不動産事業を行っており、国内においては会社法、金融商品取引法、建築・不動産関連法令、環境関連法令、各種業法等、海外においてはそれぞれの国や地域の法的規制の適用を受けます。また、グループ会社においては、ホテル事業、物流事業、保険事業、スポーツクラブ運営事業、クレジットカード事業等の多種多様な事業を行っており、各事業の業法その他の関連法令がそれぞれの会社に適用されます。このように、当社グループの事業に関連する法令は広範にわたっており、法的規制の改廃や新設によっての影響を受ける場面は少なからず存在しているものと考えられます。

また、法的規制に違反した場合、処罰、処分その他の制裁を受けたり、当社グループの社会的信用やイメージが毀損されたりすることで、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

対応策

当社グループの事業に関連する法的規制の改廃や新設に関する情報については、その動向を常にモニタリングしており、当社グループの事業内容や業績等に影響を及ぼすリスクがある情報を入手した場合は、リスクを最小化するために、事前に対策を講じる体制としております。

また、当社グループにおいては、経営管理本部長をリスクマネジメント統括責任者に選任し、当社グループ全体のリスクマネジメント体制の構築・運用・監督を実施する体制とするとともに、その監督の下、リスクの顕在化の予防、顕在化したリスクへの対応を推進するための組織として、事業ごとにリスクマネジメントを行う体制を構築・運用しております。さらに、従業員に対する積極的な法令知識の研修・啓蒙や、各種マニュアル・チェックリストの作成を推進するなどの対策を講じております。

万一、重大なリスクが顕在化した場合には、緊急対策本部を立ち上げて対応し、業績等への悪影響の最小化に努めるとともに、再発防止を徹底しております。

 

 

② 海外事業に関するリスク

リスク内容

海外事業では、進出国における急激なインフレーション、為替相場の変動による事業収益の低下、政治・経済情勢の不確実性、紛争(内乱・暴動・戦争)の発生や日本との外交関係の悪化等に伴い実施される外貨規制による事業遂行・代金回収の遅延・不能(海外送金規制含む)等の発生、不動産事業の引き締め等を目的とする政策変更や法改正による購買意欲減退等、国際取引特有の外的要因に基づく様々なリスクを負っており、これらのリスクが顕在化した場合には、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

対応策

投資管理ガイドラインを当社グループとして定め、投資方針や具体事案の検討の基準の可視化と当該基準に従った事案のリスク精査徹底に注力しております。また、フィルター機能として海外案件を諮問する専門委員会を設置し、事業毎の事前のリスク精査と対策の状況を確認の上で諮問し、適切な投資判断の担保を図っております。

また、事業推進中の経営状況の管理のため、海外を5つのエリアに分け、ガバナンス体制の構築を目的としてRegional Corporate機能(以下RC機能)を担う地域統括会社をエリア毎に決め、本社管理部門より責任者を派遣しております。エリア、各国の特性を習得することがリスク回避に重要と言え、現地に根付いて文化・習慣、税務・法律解釈、労務問題等の情報収集によるノウハウの蓄積を進め、リスクの未然防止や対処力の向上を図っております。各RC機能人員がそれぞれの専門能力を発揮しエリア毎の経営基盤の強化を図ると共に、海外本部・経営管理本部を中心とした本社部門との情報共有を密にし、当社グループの経営方針に即した事業遂行と事業管理の実現に注力しております。

 

 

 

③ 住宅関連政策・税制の変更に関するリスク

リスク内容

住宅ローンの金利優遇措置、住宅取得やリフォーム工事に対する補助金・助成金・給付金制度等の住宅需要刺激策の変更もしくは廃止により、住宅需要が減退し、当社グループの住宅関連事業に影響を与える可能性があります。また、消費税率の引き上げや住宅ローン減税等の税制の変更・廃止等により、住宅取得にかかるお客様の資金負担が増加した場合には、戸建住宅やマンション等の購買需要が減退する可能性があり、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

対応策

各種補助金・助成金・給付金制度等については、制度内容の改変・廃止・受付終了等の情報を常にモニタリングし、制度の変更に応じた施策を講じております。

また、住宅事業では良質な住宅をお値打ちな価格で提供することを方針としており、特に分譲住宅の拡販を図っております。お客様の需要を喚起し、住宅需要の減退が業績に与える影響を軽減する対応に努めております。

 

 

  2)事業環境

④ 特定の取引先・製品・技術等への依存に関するリスク

リスク内容

当社グループは、商品・サービスの提供や、商品の原材料の製造等の一部について、一定の技術を保有する事業者に委託しておりますが、世界の地政学的リスクの発生や感染症、自然災害等に起因する資材高騰、材料逼迫、納期遅延により、突発的に商材・部品・素材の供給不安が発生するリスクや、取引先の倒産による供給停止が起こるリスクがあります。これらのリスクが顕在化した場合には、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

対応策

当社グループは、上記のようなリスクが顕在化する事態を防止すべく、集中的に調達する物品については、一部の特別な仕様・性能・機能を持つ物品を除き、同一仕様の物品を2社以上のサプライヤーからエリアを分けて調達(複数購買)、または同等仕様の物品について複数のサプライヤーと基本契約を締結しておく方法等により、一つの企業において物品供給ができないなどの不測の事態が発生した場合にも、代替品の供給が行えるような体制としております。

昨年度より、特に重要度の高い物品(構造に関する物品、大臣認定品等)の69物品(45社)については、取引先に対し、不測の事態における対応計画(BCP計画書)の整備を依頼し、有事の際に対する供給不安を未然に防止する対策を取っております。

また、顧客に対し訴求力のある製品を除いては、オリジナル品からカタログ品への移行を推進し、調達難易度を下げる取組みを行っております。さらに、外部調査機関のデータを活用し、取引先に対する与信管理体制の強化を図っております。

 

 

 

⑤ 原材料・資材価格・人件費等の高騰に関するリスク

リスク内容

当社グループでは建物の建築やサービスの提供にあたり、多くの原材料や資材の調達を下請事業者へ発注することで賄っております。資材価格は近年の地球規模の気候変動、ロシア・ウクライナ情勢によるエネルギー価格の高騰、円安の進行による海外からの輸入コストの増加等により急激な上昇が続いております。また、最近ではトランプ米大統領が発表した相互関税に伴い、輸入建設資材のコスト上昇が懸念されております。また、少子高齢化による労働人口の減少や最低賃金の引き上げなどが原因で人件費の増加は避けることができず、そのしわ寄せは建設業に限らず国内の生産労働人口の減少や人手不足による倒産が増加する要因となっております。

対応策

原材料・資材価格等が高騰するリスクに対しては、以下の内容で対応を図っております。

① 代替品の採用

② 複数の取引先から材料を調達することによる価格競争力の維持

③ 輸送方法の見直し

④ 調達リードタイム見直しによる配送リードタイムの確保

⑤ 山積表の活用による、建設現場の施工者の労働力の確保及び適正な労務費による発注

⑥ グループ会社と連携し、手配数量を集約し一括購入するなどスケールメリットの追求

⑦ 施工予定情報を早期に入手し、必要な数量を事前に取引先へ提示し価格上昇前における材料等の確保

上記に挙げた複数の施策を実施することで、コスト上昇の抑制に努めております。

加えて、工場においては、作業環境の改善により従業員の定着・確保を進めながら、製造ラインの効率改善のための設備投資により原価抑制を図っております。

人件費(労務単価)等が高騰するリスクに対しては、図面等のデジタル化や、ものづくりの見直しにより、現場施工の省人化・省力化を推進し、生産性の向上を図るなどして原価を抑えるように努めております。さらに、一部の地域では、協力会の施工会社が、地元の学校等に対し、当社の現場での具体的な仕事内容を説明し、建設業に興味を持っていただき、入職を促す活動を行っております。

 

 

⑥ 競合に関するリスク

リスク内容

当社グループは、建設・不動産事業をはじめとする様々な事業を行っており、これらの各事業において、競合会社との間で競争状態にあります。当社グループが、商品の品質や価格、サービスの内容、営業力等の観点から、これらの競合会社との競争において優位に立てない場合には、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

対応策

当社グループでは、事業本部制のもと、業界に属する他社動向に関する情報を収集・分析し、必要に応じて自社事業の戦略に反映しております。

また当社独自の土地を起点とした情報力や開発力、顧客目線に立った課題解決力等の強みを活かし、競合他社との過度な競争に巻き込まれないよう努めております。

 

 

 

⑦ 建設技能労働者の減少に関するリスク

リスク内容

当社グループの主たる事業である建設工事事業には多くの建設技能者が必要ですが、日本の建設業就業者数は右肩下がりであり、今後もさらに減少することが明確となっております。また、建設業界に入職される若年層も減少し、その分、高齢化が加速しております。

この影響により、人件費の高騰や工程が伸びる傾向がより顕著になります。

対応策

当社はこのような技能者不足に陥ることを予測し、技能者の処遇改善や現場における作業の効率化、省力化、下請事業者の事務作業の負荷軽減及び工事代金の支払いに関する改善等を図り、以下に示すような施策を講じております。

①  工事代金の支払いにおける手形の廃止

②  建設現場における優秀な技能者への手当支給

③  施工店の技能者育成に対する補助金支給

④  当社が独自に定めたルールでの建退共証紙の支給

⑤  技能者キャリアアップ制度加入者及び当社への貢献度の対価に対する手当の支給

⑥  DXを採用した建設現場における作業の省力化や効率化の推進

⑦  現場での作業量を削減するための更なるプレハブ化や標準化の推進

⑧  現場作業の省力化と品質確保のための作業ロボット等の導入と展開

⑨  建設現場にカメラを設置するなど遠隔地でも現場の状態がリアルタイムで見える仕組みを構築

⑩  電子受発注システム(EDI)の環境を整備し、工事下請負契約の電子化等、事務作業の効率化と時短化を推進

⑪  現場4週8閉所を推進し、技能者の労務負荷を軽減

 

 

  3)不動産市場

⑧ 不動産を含む資産の価値下落に関するリスク

リスク内容

当社グループは、国内及び海外において不動産の取得、開発、販売等の事業を行っており、不動産市況が悪化し地価の下落、賃貸価格の下落が生じた場合には、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、その場合には、当社グループが保有する不動産の帳簿価額の引き下げを行う必要が生じる可能性があります。

さらに、当社グループが所有する不動産以外の棚卸資産や有形固定資産、のれん等の無形固定資産、投資有価証券等の投資その他の資産についても、市場動向に応じて帳簿価額の引き下げを行う必要が生じる可能性があり、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

対応策

当社グループは多岐にわたる事業展開を行っており、その中で所有する不動産に適した事業を選択することで資産価値向上に努めております。なお、自社所有の不動産については定期的に鑑定評価をとるなどモニタリングを行い、価値下落の兆候が認められるものについては適正に対処しております。また、不動産以外の市場価額の変動リスクがある資産は、事業上の必要性がある場合を除き、原則として保有しない方針としており、保有している資産の価格変動リスクについては定期的にモニタリングを行っております。

 

 

 

⑨ 不動産開発事業に関するリスク

リスク内容

当社グループは、中長期的な戦略として不動産開発事業に重点を置き、住宅団地、分譲マンション、賃貸住宅、商業施設、物流施設、ホテル等、様々な用途の不動産開発を行っております。これらのプロジェクトは完了までに多額の費用と長い期間を要する不動産開発事業であり、プロジェクト進行中において、様々な事由により、想定外の費用発生、プロジェクトの遅延もしくは中止を余儀なくされる場合があり、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

対応策

当社グループでは、不動産を含む重要な投資の実行にあたっては、事業投資委員会で事業性やリスクを評価し審議しております。不動産開発事業の場合はIRRを主要な指標としておりますが、同時に、その事業が当社グループの経営理念・経営戦略・ブランドイメージと合致しているか、また、法的リスク、土壌・地下水汚染、地盤リスク、災害リスク(洪水等)、環境問題、建築費の妥当性等、ESGを含む多面的なリスク評価(16部門、27項目)を行い審議しており、経済的な観点からは基準を満たす投資案件であっても、当該投資実行が当社の目指すべき姿・ビジョンと大きく相違する場合や、環境への影響が大きい場合等には、当該投資は実施いたしません。なお、リスク評価項目の見直しは定期的に行っております。そのほか事業投資についても不動産開発と同様にリスク評価を行い、審議しております。

 

 

  4)ファイナンス

⑩ 金利の上昇に関するリスク

リスク内容

当社グループは、不動産開発を中心とした資金需要に対応するため、資本効率を考慮しながら、自己資本と共に有利子負債による資金調達を行っております。そのため、市場金利の上昇や当社格付の低下等により、資金調達コストが上昇し、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、市場金利の上昇によって、融資を利用して土地や建物を取得するお客様の支払総額が増加し、購買意欲が減退する事で業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

対応策

当社では、運転資金について、調達コストの低い短期借入金やコマーシャル・ペーパー等を中心に調達しております。一方、不動産開発等の回収に時間がかかる投資については、長期調達により流動性リスクを低減しております。長期調達については、不動産の売却期間に合わせ期間5年程度を中心に調達しておりますが、有利子負債が増加する中、リファイナンスリスクを減らすため、さらに期間が長い超長期の調達も実施しております。また、金利環境の変化に合わせて、固定金利での調達と変動金利による調達をバランスよく組み合わせております。

加えて、金融機関との良好な関係構築に努め、社債による直接金融での調達とともに、間接金融でも調達することで、安定的な資金調達を行っております。格付の維持については、目標とする財務規律を設定し、財務規律を意識した経営を行っております。

更に、融資を利用されるお客様に対しては、常に各金融機関における最新の融資商品等を把握し、お客様のニーズに即した融資のご提案を行うとともに、国や自治体等が実施する各種支援策を積極的に提案すること、また税理士やファイナンシャルプランナー等の外部専門家と連携することで、お客様のトータル的なファイナンスサポートを行い、最適な土地建物計画のご提案ができるように努めております。

 

 

 

⑪ 退職給付費用に関するリスク

リスク内容

当社グループは、確定給付型の制度として企業年金基金制度及び退職一時金制度、また、確定拠出型の制度として確定拠出年金制度を設けております。確定給付型の制度においては、株式市場や為替市場等の金融市場が変動した場合等に、割引率をはじめとした基礎率の変動による退職給付債務の多額の増減や、多額の年金資産運用損益が発生し、退職給付にかかる費用が大幅に変動する可能性があります。なお、当社グループでは退職給付会計における数理計算上の差異について、発生年度に一括して費用処理しているため、年金資産の運用環境が大幅に変動した場合や、退職給付債務の計算に用いる基礎率が変動した場合、当該事象が発生した事業年度の業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

対応策

年金資産の変動リスクに対する対応策として、大和ハウス工業企業年金基金では資産運用委員会を設置し政策的資産構成割合の策定・見直し、運用受託機関の選任・評価等を実施しており、年金資産の運用は、許容可能なリスクの範囲内で、リスクリターン特性の異なる複数の投資対象に分散投資することを基本としております。

しかしながら、当社グループの当期末退職給付債務残高は、5,622億円となっており、金融市場の影響を大きく受け、2025年3月期においては、主に退職給付債務の算定に用いる割引率の変更に起因する退職給付会計における数理計算上の差異等が1,012億円(費用の減少)発生いたしました。「退職給付に関する会計基準」(企業会計基準第26号)においては、数理計算上の差異は平均残存勤務期間以内の一定の年数で按分した額を毎期費用処理すると定められており、その中でいわゆる「遅延認識」を行う事で発生期の業績への影響を緩和する事が認められておりますが、当社グループは2003年3月期以降、発生年度に一括して費用処理しており、この費用処理方法を変更することは「会計方針の変更」に該当いたしますが、年金資産残高の増加や業績への影響が高まっていることは、会計方針変更の正当な理由に当てはまらない事から、現在の会計制度では変更が認められておりません。なお、当期の営業利益5,462億円から数理差異等を除いた営業利益は4,450億円となります。

 

 

⑫ 賃貸用不動産における空室及び賃下げに関するリスク

リスク内容

当社グループは、多くの賃貸目的の不動産を所有・管理しておりますが、入居者・テナント獲得の競争の激化等により、入居者や賃料が計画通りに確保できなくなる可能性があります。また、入居後も賃借人との協議等により賃料が減額される可能性があるほか、既存テナントが退去した場合、代替テナントが入居するまでの空室期間が長期化し、不動産の稼働率が大きく低下する場合もあります。その場合、代替テナント確保のため賃料水準を下げることもあり、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。加えて、既存テナントが倒産した場合、賃料の支払遅延や回収不能となる可能性もあります。

対応策

賃貸目的の不動産を管理する事業毎に、エリアの特性や社会情勢等を踏まえ、入居者やテナント企業のニーズを的確に捉えた競争力の高い施設を提供することで、空室及び賃下げリスクを最小限にとどめるよう努めております。また、環境に配慮した開発を行うことで物件価値を向上させ、社会的意義のある建物を建設するよう努めております。

 

 

 

  5)ハザード・突発的事象

⑬ 情報セキュリティに関するリスク

リスク内容

当社グループは、DXによる新たな価値創造・事業の円滑・効率的な運用等を目的として、ITシステムの利活用を推進しておりますが、サイバー攻撃等により、ITシステムが長期間にわたり正常に作動しなくなった場合、当社グループの業務が著しく停滞し、業績等への悪影響が生じる可能性があります。また、個人情報や法人の秘密情報等が外部に漏えいした場合には、当社グループの社会的信用に影響を与え、損害賠償等を行う必要が生じることにより、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

対応策

当社では、ファイアウォール等のいわゆる入口対策・出口対策のほかにもエンドポイントの監視等、あらゆるアクセスを検証対象として情報保護対策を行っており、セキュリティ専門組織であるCSIRT(Computer Security Incident Response Team)・SOC(Security Operation Center)を設置して、セキュリティ・インシデントに対応しております。また、情報セキュリティに関する規程(「個人情報保護規程」・「情報管理規程」等)を整備し、加えて情報セキュリティに関するeラーニングや標的型攻撃メール訓練を役職員等に対して実施するなど教育・研修の徹底を図っております。加えて、グループ会社に対しても、海外を含むグループ全体のセキュリティポリシー・基準(「グループIT基本規程」・「グループITセキュリティ基準」・「グループIT事業継続管理基準」)を整備し、セキュリティレベルの実態把握、セキュリティ施策導入の推進、問題解決の指導、脆弱性情報等セキュリティトピックの共有等を実施しております。

 

 

⑭ 自然災害・気候変動に関するリスク

リスク内容

当社グループは、国内及び海外に事務所・工場・研究開発等の施設を展開しており、地震や火山の噴火、台風や水害等の大規模な自然災害の発生により、従業員や施設・設備等への直接的な被害のほか、情報システムや通信ネットワーク、流通・供給網の遮断・混乱等による間接的な被害を受ける可能性があります。また、地震・台風・水害の際には、当社が過去に建築した建物に被害が生じる可能性があり、これらの場合には、被害回復のための費用や事業活動の中断等による損失、お客様の所有建物に対する点検・応急処置の実施やその他社会的な支援活動を行うための費用等が発生し、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、近年の地球温暖化がもたらす気温上昇が要因とされる熱中症の多発についても、特に生産・施工現場においては健康面や安全面、そして労働生産性の面からも看過できない事象となっております。

対応策

当社グループでは、気候変動の緩和策に取組むとともに、いわゆるBCMについての規程・マニュアルを策定することで、自然災害発生時の対応を適正・迅速に行うことができるよう事前の対策を講じております。食料の備蓄、蓄電池設備の配備、IP無線や衛星電話の導入等の通信環境の整備、自社使用施設での止水板設置等の水害対策展開、サプライチェーンにおける事業継続計画の策定を行うなど、リスクが顕在化した場合の業績等への悪影響を最小化するための取組みを行っております。また、熱中症対策についても、生産・施工現場での屋外休憩所(日除け)の設置や空調の新増設のほか、協力会社への熱中症対策備品補助など対策を行っております。

 

 

⑮ 感染症に関するリスク

リスク内容

当社グループでは、各営業拠点、工場のほか、建設現場や商業施設等の人が集まる施設を保有しており、重大な健康被害をもたらす感染症が大規模に蔓延した場合、感染拡大を防止する観点から、営業活動や工事現場の操業を停止せざるを得なくなる可能性があり、また不動産市況の悪化により、不動産の取得・開発等の事業に悪影響が出る可能性があります。特にホテル事業やスポーツクラブ運営事業等においては、稼働率の低下や単価の引下げにより、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

対応策

上記のリスクは、外的要因に起因するものであるため、リスクが顕在化する可能性の程度や、業績等への悪影響の程度を合理的に見積もることは困難です。しかしながら、リスクが顕在化した場合には、まずは当社グループのステークホルダーの健康被害を最小化することを最優先に取組む方針であり、感染拡大を防ぐため、各保有施設等において感染予防対策措置を講ずるとともに、従業員には感染リスクの高い国・地域への渡航の禁止、テレワーク(在宅勤務)等の対策を実施しております。

 

 

2.内部要因

⑯ 事業戦略・グループ戦略に関するリスク

リスク内容

当社グループは、事業戦略上、中長期的観点に立ち、必要に応じて企業や事業の買収、組織再編又は売却等を行っております。しかしながら、企業や事業の買収、組織再編及びこれらの実行後の統合手続等が想定どおりに進行せず、グループ内におけるシナジー効果が期待通りの成果をもたらさないことや、事業環境の前提条件の大幅かつ急激な変化等により、事業戦略上想定した利益が達成できない場合には、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

対応策

事業環境は常に変化することから、上記のリスクが顕在化する可能性の程度や、業績等への悪影響の程度を見積もることは困難です。しかしながら、当該リスクへの対策として、買収等検討の際は、買収目的を明確にし、買収前に各種専門家を交えてデューデリジェンスや株式価値評価を行うことで、買収先の企業価値、事業計画の実現可能性等を適正に評価し、買収の是非の判断を行う体制としております。さらに、買収実施後、一定のPMI期間を設けており、専門の部署と買収主体(事業本部又はグループ会社等)が連携してPMIを推進することにより、企図した目的を達成しシナジーの最大化を図っております。また、PMI期間終了後には、主管部門の移管を行い、事業本部制によるグループ経営に移行し、事業本部主導でシナジーを追求し、グループ全体での企業価値向上と中長期的成長を実現できるよう取組んでおります。

 

 

⑰ 品質保証等に関するリスク

リスク内容

当社グループの住宅関連事業は、お客様の満足度を高めるために長期保証システムを提供しております。品質管理には万全を期しておりますが、長期にわたるサポート期間の中で、予期せぬ事情により重大な品質問題が発生した場合には、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

対応策

設計時には建築関係法令への適合状況をダブルチェックすることで、法的規制の遵守状況を確認し、施工時においては、施工者、工事管理者による自主検査を実施し、更に施工部門と異なる第三者的立場の部門における品質検査を実施しております。お引渡し後は、建物の定期的な点検・診断を行い、劣化診断・メンテナンス提案等の長期サポートを通じて建物の品質状況についてのモニタリングを行い、重大な品質問題が生じていないことを確認し、万一発生が確認、懸念される場合は、ソリューション部門、コーポレート部門の関係部門で情報共有し、業績等に悪影響を及ぼす可能性を最小化するための活動を行う体制を構築しております。

 

 

⑱ 安全・環境に関するリスク

リスク内容

当社グループは、工場、建設現場等を多数有しているため、特に安全、環境面を最優先に配慮、対策のうえ事業を行っております。しかしながら、これらの配慮、対策にもかかわらず現場災害、環境汚染等の事故等が発生した場合には、人的・物的な被害等により業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

対応策

安全面でのリスクに対しては、施工現場の定期・特別パトロール、安全衛生協議会を通じて、当社及び施工会社の従業員に対する指導・教育を行い、リスクを低減しております。

また、環境面でのリスクに対しては、有害化学物質を代替・削減する取組みを推進するとともに、教育や訓練を実施しており、建設業において重要度の高い土壌汚染問題に対しては、専門部署を設置するなどの方法によりリスクを低減しております。

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

 

1.財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、企業収益の改善、雇用・所得環境の改善による個人消費の持ち直し、好調なインバウンド需要により、緩やかな回復基調となりました。しかしながら、エネルギーや原材料価格の高騰、慢性的な人材不足に加え、不動産市場の停滞により景気の足踏みが続く中国経済や米国の政策動向等による海外景気の下振れがわが国の景気を下押しするリスクは継続しております。

国内の住宅市場における、2024年4月から2025年3月の累計新設住宅着工戸数は、分譲住宅が前年比マイナスとなったものの、持家及び貸家が増加したことにより全体では前年比でプラスとなりました。一般建設市場では、建築着工床面積において、店舗が増加したものの事務所、工場及び倉庫が減少し全体で前年比マイナスとなりました。

このような事業環境の中で当社グループは、2022年度よりスタートした5ヵ年計画「第7次中期経営計画」において、「収益モデルの進化」・「経営効率の向上」・「経営基盤の強化」の3つの経営方針を掲げ、持続的な成長モデルの実現に向け、海外事業とストック事業の拡大やDXによる顧客体験価値向上等、様々な高付加価値提案や施策を積極的に推進してまいりました。「収益モデルの進化」では、「再生と循環」をキーワードに、地域・お客様の視点で、「創る・育む・再生する」の循環型バリューチェーンの拡充に努めております。

以上の結果、当連結会計年度における売上高は5,434,819百万円前連結会計年度比4.5%増)、営業利益は546,279百万円前連結会計年度比24.1%増)、経常利益は515,985百万円前連結会計年度比20.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は325,058百万円前連結会計年度比8.8%増)となりました。

なお、上記の営業利益には退職給付数理差異等償却益101,238百万円を含んでおり、数理差異等を除いた営業利益は445,041百万円(前連結会計年度比13.0%増)となりました。

 

 

セグメント別の概況は次のとおりです。


 

 

戸建住宅事業では、住まいのあり方が多様化する中、省エネ性とレジリエンス性能に優れた良質な住宅を提供してまいりました。加えて、住まう方の人生や変化する価値観に寄り添い、暮らしを豊かにするライフスタイル提案も行ってまいりました。

国内の住宅事業では、新しい分譲住宅「Ready Made Housing.(レディ メイド ハウジング)」という考え方のもと、人件費や住宅建築資材等の物価高騰の中でも注文住宅と変わらない高い設計力と品質、安心の長期保証、そしてアフターサポートを叶え、価格以上の価値を目指した良質な分譲住宅を提供しております。

注文住宅では、「自由設計と規格住宅のいいとこどり」が可能な注文住宅「Smart Made Housing.(スマートメイドハウジング)」の考え方のもと、事業を推進しております。2025年1月に当社オリジナルの「内外ダブル断熱」と太陽光発電システムを標準搭載することで、軽量鉄骨造3階建ての戸建住宅商品では初めてZEHに標準対応となる「xevo M3(ジーヴォ・エムスリー)」を発売いたしました。

また、ストック型社会の到来を見据え、既存建物の再生・循環にも注力しております。特に、かつて当社が開発した各地の住宅団地において、地域活性化や空き家問題等の社会課題に向き合い、まちを再生・再耕する「リブネスタウンプロジェクト」に取組んでおります。そこに暮らす人々と共に考え、まちと暮らしに寄り添い、未来に向かって輝き続けるまちの価値構築を進めております。

海外では、米国の東部・南部・西部を結ぶスマイルゾーンにおいて、東部のStanley Martin、南部のCastleRock、西部のTrumarkのグループ3社を軸とした事業拡大を進めております。2024年度は高止まりする住宅ローン金利の影響がある中、モーゲージバイダウン等のインセンティブ施策の活用による販売戸数の拡大や、工期短縮によるコスト削減等に取組みました。また各エリアにおいて、スプリングセールス期間に合わせた戦略的な販売中分譲地数の拡大により、足元の受注は堅調に推移しております。

以上の結果、当事業の売上高は1,144,505百万円前連結会計年度比20.3%増)、営業利益は69,826百万円前連結会計年度比98.6%増)となりました。

 

 


 

 

賃貸住宅事業では、ご入居者様、地球環境、街への3つの視点から持続的な価値を提供し、オーナー様の資産価値の最大化につながる賃貸住宅経営の提案とサポートを行ってまいりました。加えて、環境負荷を低減し、省エネ・創エネ対応のZEH-M物件の普及に努めております。

2025年3月には、創業70周年を記念してZEH-M(※)に対応した重量鉄骨ラーメン構造3・4階建て賃貸住宅商品「THE STATELY(ザ ステイトリー)」の販売を全国(北海道、沖縄県、一部エリアを除く)で開始いたしました。耐震等級の中で最も高い耐震性能である耐震等級3を実現した重量鉄骨ラーメン構造3・4階建て賃貸住宅商品となっており、1階部分は物販店舗や事務所等の用途にも対応できるため、建設地エリアのニーズに合わせた提案を可能としております。今後もオーナー様への幅広い土地活用の提案と、ご入居者様から選ばれる賃貸住宅を提供してまいります。

大和リビング株式会社では、多様なご入居者様に選ばれる、高品質で住み心地の良い賃貸住宅「D-ROOM」の提供に加え、管理物件の競争力ある部屋づくりも奏功し、管理戸数の増加及び高い入居率の維持につながっております。

大和ハウス賃貸リフォーム株式会社では、当社施工の賃貸住宅における定期点検や診断を通じたリレーションの強化を図り、保証延長工事やリノベーション提案を推進してまいりました。

海外では、賃貸住宅開発事業を展開している米国において、シアトル近郊で開発したエステラパーク・プロジェクトにおけるパークサイドを2024年11月に売却いたしました。また、同月には米国で賃貸住宅事業を行うAlliance Residential Companyを持分法適用関連会社といたしました。米国における当社グループのネットワークや提案力の強化により不動産開発プラットフォームの拡大を目指してまいります。

以上の結果、当事業の売上高は1,376,089百万円前連結会計年度比10.1%増)、営業利益は129,960百万円前連結会計年度比12.2%増)となりました。

※ ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス・マンションの略称。断熱性・省エネ性能を高め、再生可能エネルギーなどにより、エネルギー収支ゼロを目指す集合住宅のこと。

 

 


 

 

マンション事業では、お住まいになる方々の多彩なライフスタイルに応えるため、ハウスメーカーとして培ってきたノウハウを駆使し、長寿命の住まいに欠かせない基本性能や快適性、安全性、管理体制の提供を追求してまいりました。

2025年3月には、摂津市がJR東海道本線「千里丘駅」西側で進めている「千里丘駅西地区第一種市街地再開発事業」地内に、当社を含む4社共同企業体が開発する地上36階建て分譲マンション「プレミストタワー千里丘」(大阪府)が販売開始いたしました。駅直結の歩行者専用通路や隣接する商業施設等、再開発事業での整備による充実した周辺環境に加え、多彩な共用施設や設備による快適な住環境が評価され販売が順調に進捗しております。

大和ライフネクスト株式会社では、2025年1月に株式会社Octa Robotics及び綜合警備保障株式会社と共同で、ロボットとセキュリティシステムの連携についての実証実験に成功いたしました。経済産業省による「令和6年度革新的ロボット研究開発等基盤構築事業」に採択された本実験では、無人環境下においてロボットがセキュリティシステムの稼動を維持しながら警備・清掃業務を自律的に遂行できることを確認いたしました。これにより、ロボットが単独で建物内を自由に動くことができる環境を実現することが可能となりました。今後はロボット運用における各種セキュリティの強化や、複数のロボットの同時稼働を実現するためのシステム開発をパートナー会社と共に進め、管理品質の向上につながる新たな建物管理サービスの開発・販売に向けた取組みを加速させてまいります。

海外では、米国及び英国ロンドンにおける分譲マンション開発は順調に進捗しております。

しかしながら、前連結会計年度において株式会社コスモスイニシアが連結子会社から持分法適用関連会社となったことなどにより、当事業の売上高は269,427百万円前連結会計年度比39.0%減)、営業利益は10,908百万円前連結会計年度比70.8%減)となりました。

 

 


 

 

商業施設事業では、テナント企業様の事業戦略やエリアの特性を活かし、ニーズに応じた多様な企画提案を行ってまいりました。特に、大型物件への取組みの強化や、当社で土地を取得し、開発企画・テナントリーシング・設計施工まで行った物件を投資家様に販売する分譲事業、及び事業用施設の売買仲介・買取再販事業等にも注力してまいりました。

ホームセンター事業では、ロイヤルホームセンター株式会社において、2025年3月末の総店舗数は64店舗となっております。同年2月には、「ロイヤルホームセンター戸田公園」(埼玉県)で改装工事を実施し、ペットや通常店舗では取扱いのない高品質なペットフード等を展開することで、ペット売場の強化を実施いたしました。

都市型ホテル事業では、大和ハウスリアルティマネジメント株式会社にて運営しておりますダイワロイネットホテルズにおいて、インバウンド需要も好調に推移しており、当期累計平均稼働率は88.5%となっております。また、2025年2月に「ダイワロイネットホテル秋田駅前」、同年3月に同社初のリゾート型ホテル「BATON SUITE 沖縄古宇利島」が開業いたしました。

スポーツ施設事業では、スポーツクラブNAS株式会社において、販促強化を実施した結果、当連結会計年度のクラブ入会者数が前年比約150%を達成いたしました。引き続きセールス担当者への研修を強化し、更なる売上の向上を図ります。

大和リース株式会社では、2025年1月に東京都江戸川区で「総合レクリエーション公園」、「新左近川親水公園」をリニューアルオープンいたしました。当施設は、江戸川区南部の葛西地区にある公園をリニューアルするもので、区が公募を行い、当社を代表とするグループが事業協力者に選定されました。遊具や園路・ベンチ・トイレなどの公園施設の整備、カフェやレストラン・バーベキュー場等の運営等を行い、多くの利用者に親しまれる施設を目指してまいります。

海外では、台湾・高雄市において、2020年1月より開発を進めておりましたホテル・分譲マンションからなる複合開発プロジェクト「台湾高雄プロジェクト」(※)のホテル棟が完成し、2024年11月に「ホテル・ニッコー高雄」が開業いたしました。

以上の結果、当事業の売上高は1,227,145百万円前連結会計年度比3.9%増)、営業利益は145,928百万円前連結会計年度比1.6%増)となりました。

※ 台湾の大手不動産開発会社である大陸建設株式会社が設立した汎陸建設實業(はんりくけんせつじつぎょう)株式会社に、当社が出資し当プロジェクトに参画。

 

 


 

 

事業施設事業では、法人のお客様の様々なニーズに応じた施設建設のプロデュースや不動産の有効活用を総合的にサポートし、業容の拡大を図ってまいりました。

物流施設関連では、2025年1月から3月の3ヶ月間において、需要が堅調な九州地区での大型賃貸施設「DPL福岡東」を着工いたしました。リーシングも堅調に進んでおり、「DPL札幌南Ⅲ・Ⅳ」、「DPL沖縄豊見城Ⅰ」、「DPL岩手花巻」、「DPL小田原」(神奈川県)で賃貸借契約を締結いたしました。

リブネス事業では、2025年1月から3月の3ヶ月間において、「リブネスひたちなか市山崎」、「沼津市西島町介護施設」、「Dプロリブネス名古屋市昭和区御器所」、「古河市茶屋新田リブネス計画」の4物件の買取販売を行いました。

食品関連事業では、中食の需要増加に伴い、冷凍食品の製造工場及び保管用の冷凍冷蔵倉庫の引合いが増えております。また、医薬品や健康食品の分野では高品質な物流センターの需要も増加しております。

主に当社が開発した物流施設を管理・運営する大和ハウスプロパティマネジメント株式会社では、2025年1月からの3ヶ月間において「DPL小牧」(愛知県)をはじめとする物流施設等6棟について新規プロパティマネジメント契約を締結し、2025年3月末時点の管理棟数は258棟、管理面積は約1,070万㎡となりました。

ロジスティクスサービス業を展開するダイワロジテックグループでは、IT事業において顧客企業のDX推進における投資拡大が続く中、受注も堅調に推移しIT事業における業績は計画を達成いたしました。引き続き物流業務の省人化・自動化案件を中心に取組み、更なる新規顧客獲得へつなげてまいります。一方、物流事業においては、主要顧客との契約見直しの影響もあり収益が伸び悩んでおりますが、全拠点における原価改善に取組むと同時に新規顧客獲得による未利用スペースの充足等により業績改善を進めてまいります。

株式会社フジタでは、大型建築工事として集合住宅や工場等、土木事業として区画整理事業の造成工事や風力発電所の建設工事等を受注し、業績は堅調に推移いたしました。

海外事業では、当社がベトナム北部で初めて開発したマルチテナント型物流施設「DPL Vietnam Minh Quang(ベトナムミンクアン)」が2025年2月に開所しました。当施設はタイ王国で物流施設や工場の開発等を展開する最大手のWHA Corporation PCLとの共同事業で進めていたものです。今後も米国及びASEAN等において事業施設の開発を加速してまいります。

以上の結果、当事業の売上高は1,369,730百万円前連結会計年度比5.8%増)、営業利益は159,655百万円前連結会計年度比29.5%増)となりました。

 

 


 

 

環境エネルギー事業では、脱炭素への流れが加速し、再生可能エネルギー導入のニーズが高まる中、EPC事業(再生可能エネルギー発電所の設計・施工)、PPS事業(電力小売事業)、IPP事業(発電事業)の3つの事業を推進してまいりました。

EPC事業では、太陽光発電所から離れた需要家に供給する「オフサイトPPA(※)」、屋根上や隣接地に設置した太陽光発電所から直接電力を供給する「オンサイトPPA」の2つのPPA事業の拡大に取組んでまいりました。再生可能エネルギーの需要は着実に増加しております。今後も当社が創業以来積み重ねてまいりました用地開発のノウハウを活かした太陽光発電所用地の確保と、大手エネルギー会社との協業による需要家の開拓を行い、主力事業として引き続き注力してまいります。

PPS事業では、電源調達調整費(独自燃調)の導入等の取組みとともに、電力卸売市場のスポット価格が安定したことにより、過去最高の収益となりました。電力業界における事業環境動向の予見は困難なため、今後も事業リスクの対策を継続しPPS事業の安定化に取組んでまいります。

IPP事業では、太陽光発電を中心に、風力発電、水力発電を全国677ヶ所で運営しており、発電量は894MWとなります。

また、蓄電池事業を開始するほか、海外での事業展開に向けた取組みとして、タイ王国において、物流施設や工場の開発等を展開するWHA Corporation PCLと合弁契約を締結し、当事業海外初となる「PPAモデル自家消費型太陽光発電設備(オンサイトPPA)」の展開を2025年2月より開始いたしました。これまでの事業で培ったノウハウを活かし、更なる再生可能エネルギーの普及拡大を目指してまいります。

以上の結果、当事業の売上高は131,180百万円前連結会計年度比5.9%減)、営業利益は12,420百万円前連結会計年度比36.0%増)となりました。

※ Power Purchase Agreement(パワー・パーチェス・アグリーメント)の略。電力購入契約

 

(注) 各セグメント別の売上高は、外部顧客への売上高にセグメント間の内部売上高又は振替高を加算したものです。(「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (セグメント情報等)」を参照。)

 

 

2.キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動による資金の増加420,561百万円、投資活動による資金の減少493,370百万円、財務活動による資金の減少44,682百万円等により、あわせて112,617百万円減少いたしました。この結果、当連結会計年度末には326,954百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において営業活動による資金の増加は420,561百万円前連結会計年度比39.1%増)となりました。これは、主に法人税等の支払いや販売用不動産の取得を行ったものの、税金等調整前当期純利益を488,783百万円計上したことによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において投資活動による資金の減少は493,370百万円(前連結会計年度は310,419百万円の減少)となりました。これは、主に大規模物流施設や商業施設等の有形固定資産の取得を行ったことによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において財務活動による資金の減少は44,682百万円(前連結会計年度は97,399百万円の増加)となりました。これは、主に借入による資金調達を行ったものの、自己株式の取得や社債の償還、株主配当金の支払いなどを行ったことによるものです。

 

3.生産、受注及び販売の実績

① 生産実績

当社グループの生産・販売品目は、広範囲かつ多種多様であり、生産実績を定義することが困難であるため「生産の実績」は記載しておりません。

 

② 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

受注高

(百万円)

前期増減率 (%)

受注残高

(百万円)

前期増減率 (%)

戸建住宅

1,129,330

22.0

295,551

43.2

賃貸住宅

1,391,774

10.3

205,585

9.5

マンション

260,026

△33.7

83,922

△0.9

商業施設

1,268,508

10.0

255,039

22.6

事業施設

1,135,968

△14.2

834,038

△19.0

環境エネルギー

83,444

△8.0

1,011

△71.3

その他

25,191

△37.2

0

△89.8

合計

5,294,244

2.0

1,675,150

△2.6

 

(注) 各セグメントの金額は外部顧客への受注高・受注残高を表示しております。

 

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額 (百万円)

前期増減率 (%)

戸建住宅

1,135,306

20.2

賃貸住宅

1,373,970

10.0

マンション

260,791

△39.8

商業施設

1,221,417

3.9

事業施設

1,332,175

5.8

環境エネルギー

85,958

△15.5

その他

25,200

△37.2

合計

5,434,819

4.5

 

(注) 1.各セグメントの金額は外部顧客への売上高を表示しております。(「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (セグメント情報等)」を参照。)

2.総販売実績に対する割合が10%以上の相手先はありません。

 

(参考)提出会社個別の事業の状況は次のとおりです。

受注高、売上高及び繰越高

期別

部門別

前期

繰越高

(百万円)

当期

受注高

(百万円)

(百万円)

当期

売上高

(百万円)

次期

繰越高

(百万円)

第85期

自 2023年

4月1日

至 2024年

3月31日

建築請負部門

482,397

1,184,356

1,666,753

1,144,087

522,666

不動産事業部門

172,434

917,697

1,090,131

929,249

160,882

その他事業部門

76,377

76,377

76,377

654,831

2,178,431

2,833,262

2,149,713

683,548

第86期

自 2024年

4月1日

至 2025年

3月31日

建築請負部門

522,666

1,043,701

1,566,367

1,056,628

509,739

不動産事業部門

160,882

1,041,030

1,201,912

1,015,938

185,974

その他事業部門

77,407

77,407

77,407

683,548

2,162,138

2,845,687

2,149,973

695,713

 

(注) 1.損益計算書においては、建築請負部門は「完成工事高」、不動産事業部門は「不動産事業売上高」、その他事業部門は「その他の売上高」として表示しております。

2.前期以前に受注したもので契約の更改により金額に変更あるものについては、当期受注高及び当期売上高にその増減を含めております。

3.次期繰越高は(前期繰越高+当期受注高-当期売上高)です。

 

4.重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであり、その達成を保証
するものではありません。

 

 <CFOメッセージ>

 


持続的な成長と企業価値の向上を追求する企業として、

事業環境やビジネスモデルの変革に応じた最適な資本戦略を追究する

 

代表取締役副社長/CFO 香曽我部 武


 

 

大和ハウスグループは、時代に応じてビジネスモデルを進化させながら成長してきました。創業当初は請負事業が中心でしたが、その後、分譲事業へも事業を拡大してきました。そして事業用定期借地権制度ができたことによる土地所有者の「土地を売らずに貸して収益を得たい」というニーズに応えるための事業を手掛けるようになり、さらには、当社が購入した土地に商業施設や物流施設などを開発する不動産開発事業も展開するなど、私たちは多くの土地情報と様々なテナントさまのニーズをつなぐ事業を拡大してきました。特別なことをしてきたわけではなく、「儲かるからではなく、世の中の役に立つからやる」という創業者精神のもと、お客様のニーズに真摯に向き合い、事業を行ってきた結果であり、当社グループらしい進化の形として、これからも変革は続くと考えています。

持続的な成長と企業価値の向上を追求する企業として、足元では、金利の変動をはじめとした多岐にわたる事業環境の変化や課題に直面しながら、ビジネスモデルを変革し、状況に応じて資本戦略の見直しを行っています。

 

変動する世界経済・金利のある世界への対応

日本では、長らく低金利の時代が続いていましたが、徐々に「金利のある世界」へと移行が進みつつあります。足元では、大きな影響を受けている状況ではありませんが、金利上昇が事業に及ぼす影響は決して軽微なものではないと考えています。

例えば、多くの方が住宅を購入する際には住宅ローンを利用されますが、住宅ローン金利が上昇すると、お客さまが負担するコスト(支払総額)は増加するので、購買意欲の減退に繋がり、住宅販売に影響を及ぼす可能性があります。また、不動産開発事業における収益性も金利の影響を受けます。建物が完成し、安定稼働した後に、物件を売却することで、利益を得るわけですが、売却の際のキャップレート(投資家の期待利回り)が上昇すれば、売却が予定通りに進まなくなる可能性があります。さらには、有利子負債に対する支払利息が増加することで費用が増えます。当社では金利上昇のリスク等を鑑み固定金利と変動金利のバランスをとりながら資金調達をしていますが、変動金利の部分はもちろんのこと、将来的には固定金利による調達コストにも影響が出ることが想定されます。これらのリスクを鑑み、今後の事業展開に向けた対応策を講じています。

 

変動する金利への打ち手

2023年2月に将来の金利上昇を見越して、不動産開発におけるハードルレートであるIRR(内部収益率)の基準を引き上げました。ハードルレートの引き上げについては、当初、積極的に投資を行いたい現場からネガティブな反応もありましたが、不動産開発の規模が拡大していく中、金利上昇へのリスク対応は重要であり、実施しました。今後想定される利上げの範囲であれば現在のハードルレートの水準で対応は可能だと見ています。

直近では、従業員に対して「金利が発生する世界への対応」という内容のメッセージを発信しました。私自身が大和ハウス工業に入社した1980年代の高金利時代の経験を踏まえながら、業績に与える影響額や、創業者の「金利は眠っている間にも働く」といった言葉を用いて、変革に対する意識の醸成を行っています。長らく低金利の環境が続いてきましたが、従業員一人ひとりが金利上昇のリスクを認識し、今後の営業活動、投資判断ができるようマインドチェンジすることが大切であると考えています。

また当社では、現場への意識づけ、資産の回転率向上につなげることを目的に「社内金利制度」を設けています。管理会計の仕組みの1つですが、各セグメント、各事業所で保有する資産に対して金利を賦課させることで、現場に金利を認識させる制度です。この制度があることで、現場はよりキャッシュフローを意識し棚卸資産を回転させること、お客さまとの契約の回収条件の改善に動かなければならなくなります。金利への意識は現場にも浸透していると感じています。今後も、現場の金利への意識、資産回転率向上への意識が薄れないように、効果的な策を検討していきたいと考えています。

 

 

変わりゆくビジネスモデルと今後の成長戦略

私が総資産回転率の改善は不可欠であると考えている背景には、以前は0.95倍から1.05倍の範囲内に収まっていた総資産回転率が、2020年のコロナ禍を経て、現在は0.8倍程度にまで下がっているからです。これは、投資が回収を上回っているということを意味しています。事業拡大に伴い、成長投資が回収より先行している部分はありますが、仮にこの状態が続くと、環境が変化した際の財務運営の舵取りが難しくなるリスクがあると認識しています。CFOとしては、当初第7次中期経営計画の最終年度としていた2026年度までに、万難を排して改善していきたい思いです。

 

海外事業における成長の方向性

現在、海外事業の構成比が徐々に高まり、なかでも米国事業への投資(M&Aや不動産投資)が増えています。海外への投資については、国内での投資と比較してリスク管理がより重要であると考え、海外でのプロジェクトについては、日本国内における投資ハードルレートより投資エリアのリスクに応じた高い水準を設定しています。またモニタリング機能の強化や現地子会社との連携の機会を増やすなど、慎重に海外事業を推進しています。

米国政府が導入を進めている関税については、米国の戸建住宅3社がカナダから輸入する木材が影響を受ける可能性がありますが、2025年4月にカナダ産木材は追加関税の対象外との発表もあり、現状は業績への影響は限定的であると見ています。米国の経済全体が急激な物価上昇やスタグフレーションに直面するリスクは考えられますが、人口が増加するエリアでの住宅需要は依然として強く、事業機会は多いと見ています。当社グループの成長において米国市場は引き続き重要な位置付けであり、今後も注力していきます。

 

国内事業の課題と対応策

日本国内では、人口減少に伴う世帯数の減少などによる住宅市場の縮小や建設業界における従事者の激減は大きな課題です。当社では初任給の改定などの人財確保に向けた施策や、現場の業務効率化と生産性の向上を目指す「建設DX」の取り組みを進めています。また、事業機会としては、老朽化した建物の建替え需要などのニーズはまだまだあると考えており、中でもBIZ Livness(事業施設・商業施設など非住宅分野の売買仲介、リノベーション・リフォームなどの不動産ストック事業)をより伸ばしていく必要性があります。

財務面では、戸建住宅のみならず、賃貸住宅、商業施設、事業施設でも積極的に展開している分譲事業により棚卸資産は増加傾向にあります。計画通りに進んでいない土地などに対しては、各事業部門に対応を任せるのではなく、コーポレート部門も一緒になって、全体最適を考えながら積極的に資金化を進めています。

 

資本戦略とROE13.0%へのストーリー

資本効率としてROE13%以上と財務規律としてD/Eレシオ0.6倍程度は優先順位をつけず両立したいと考えています。ROEは株主さまやエクイティ投資家の皆さまにお約束している指標ですが、一方でD/Eレシオは、金融機関や債券保有者をはじめとするデッド投資家の皆さまに対しての責務であると考えています。ROE目標を達成するために自己資本を抑えると共に、D/Eレシオの水準も見なければならないため、そのバランスは非常に難しいと考えています。

持続的な成長のための資金調達が必要な当社にとって、現在AA格である信用格付の維持は重要です。昨今の金利上昇や、特に2008年のリーマンショックの際にAA格以上でなければ社債発行ができなかったという経験などを踏まえると、今が重要な局面だと認識しております。D/Eレシオ0.6倍程度に向け資産の回転率向上、グループ内資金融通なども活用した有利子負債の圧縮を着実に進めていきます。投資が先行しているということはいずれ回収をしなければならないため、不動産売却による資金の回収、売却益の計上等、中期経営計画の期間中に様々な手を尽くしてROEとD/Eレシオの目標に向けて努力したいと考えています。

 

次期中期経営計画においては、どれだけの成長資金が必要であるか、また利益の積み上げによる自己資本の状況を鑑み、改めてD/Eレシオの水準を検討していきます。当社グループの成長のためには、アクセルとブレーキのバランスを考えながら、ビジネスチャンスをつかんでいくことが重要ですので、格付会社の方々を含めたステークホルダーと、丁寧なコミュニケーションをとっていく必要があると認識しています。

また、2027年度からは新しいリース会計基準が適用となり、従来オペレーティング・リースとして扱われていた取引がバランスシートにも影響を与えることが想定されます。既存のD/Eレシオについても、基準が変更された時に見え方が大きく変わりますが、キャッシュフローは変わらない為、影響はないと考えています。システム変更などの社内準備は進めていますが、会計監査人とも綿密なコミュニケーションを取りながら、会計基準変更により影響を受ける取引について、より詳細な検証を行っていきます。

 

株主還元等により自己資本をコントロール

当社グループは成長投資、株主還元ともに重要だと捉え、第7次中期経営計画では配当性向を35%以上、配当下限額も設定し、その基準を守りつつ成長投資を進めています。株価や投資案件の状況を鑑み、自社株買いについても機動的に実行することで、自己資本をコントロールし、ROE目標の達成を目指していきます。

また、当社株式への投資魅力をさらに高めるとともに、当社グループのサービスをご利用いただくことによって事業内容をより深く知っていただくことを目的として、2025年3月より株主優待制度を拡充しました。株主構成を見ると、個人株主の比率は約12%に留まっており、東京証券取引所平均と比べると低い水準です。当社グループの売上高の半分は戸建住宅やマンション、賃貸住宅など、個人のお客さま向けの事業ですから、より多くの方に当社の株式を保有していただくきっかけになればと考えています。個人株主の比率が増えることで、資本コストの低減にもつながると考えています。

 

資本コストと株価を意識した経営の推進

企業価値のさらなる向上への取り組み

2025年5月に、上場来高値を更新したことを大変嬉しく思います。2025年2月に発表した第3四半期決算発表の内容が良かったことに加えて、同日にリリースした株主優待の拡充も影響したのではないかと考えています。しかし、私たちは現在の株価水準に満足していません。PERは11~12倍程度ですが、これはプライム市場上場企業の平均(16.5倍)や建設・不動産セクターの平均(建設:14.9倍、不動産:14.0倍)よりも下回っています。将来に向けた成長ストーリーをしっかりと投資家にお伝えし、最適な資本政策を追求することでさらなる株価の向上を目指していきます。

※PERの数値は日本取引所グループ公開の2025年4月末時点加重平均を参照。

 

資本コストの改善に向けて

当社グループの資本コストは約7%(CAPM理論より算出)であると認識していますが、十分なエクイティスプレッドも意識しながらROEの目標値を設定しています。成長戦略の推進の途中経過をしっかりとお見せするなどの適時適切な情報開示に加え、サステナビリティ経営の推進や強固なガバナンス体制の構築など、資本コストの低減に向けて取り組んでいきます。また、これまでの実績も含めて、当社の今後の成長性についての理解を更に深めていただけるよう、持続的な成長と企業価値の向上を追求する企業として、多様な投資家の皆さまとの建設的な対話を今後も継続していきます。

 

 

 


 

 

 

Ⅰ.財政状態

 

 

財務の状況

 

 

2024年度末の総資産は、2023年度末比で5,156億円増加し、7兆493億円となりました。その主な要因は、各事業で分譲事業を推進するため販売用不動産の仕入れを強化し、特に戸建住宅事業及び商業施設事業において棚卸資産が増加したことによるものです。

負債合計については、2023年度末比で3,226億円の増加となり、4兆3,325億円となりました。その主な要因は、販売用不動産や投資用不動産の取得等のために借入金による資金調達を行ったことによるものです。

純資産合計については、2023年度末比で1,929億円増加し、2兆7,167億円となりました。その主な要因は、株主配当金956億円の支払いや自己株式1,000億円の取得を行ったものの、3,250億円の親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことによるものです。

リース債務等を除く有利子負債残高は、2023年度末比で2,212億円増加し、2兆3,090億円となりました。D/Eレシオについては、0.80倍(※1)となり、0.6倍程度としている財務規律を上回っておりますが、これは成長のための積極的な投資を進めたことによるものであり、当初第7次中期経営計画の最終年度としていた2026年度(※2)において掲げた財務規律を遵守すべく、資本政策を検討してまいります。

資産内訳については、棚卸資産の残高が2兆5,716億円となり、大きな割合を占める状況となっております。今後も棚卸資産や投資用不動産の取得等により、資産が増加することが見込まれますが、最適資本構成の検証により財務の健全性維持に努めてまいります。

※1.公募ハイブリッド社債(劣後特約付社債)及びハイブリッドローン(劣後特約付ローン)のうち合計2,500億円について、格付上の資本性50%を考慮して算出しております。

※2.第7次中期経営計画は、当初2026年度を最終年度とした5ヶ年計画としておりましたが、1年前倒しで終了し、2026年度を初年度とする第8次中期経営計画の公表を2026年5月に予定しております。

 

[ 図1 ]


 

第5次中期経営計画の最終年度(2018年度)との比較を行っております。

 

①流動比率は137%から212%へと上昇

②固定比率は151%から121%へと低下

③固定長期適合率は84%から62%へと低下

④自己資本は1兆5,959億円から2兆6,142億円へと成長

 

 

[ 図2 ]


 

①棚卸資産は9,556億円から2兆5,716億円へ増加(図3参照)

②賃貸等不動産は1兆560億円から1兆3,902億円へ増加

③リース債務等を除く有利子負債は7,785億円から2兆3,090億円へ増加、また自己資本に対する比率(D/Eレシオ)も0.49倍から0.80倍へ上昇
(ハイブリッドファイナンスの資本性考慮後)

 

 

 

 

資産増加の分析

 

 

2024年度末の棚卸資産は2兆5,716億円となり、2018年度対比で169%の増加となりました。主な増加要因は、各事業
で当社の強みの一つである「土地を起点とした複合的な事業提案力」の強化を図り、投資不動産の購入を検討されてい
るお客様に向けた販売用不動産の仕入を増加させたことにより、特に賃貸住宅や商業施設事業において残高が増加した
ものです。また米国戸建住宅3社(Stanley Martin社、Trumark社、CastleRock社)において、米国住宅市場の進出エリ
アが順調に拡大していることも棚卸資産の増加につながっております。

投資不動産は1兆5,720億円となり、2018年度対比で46%の増加となっております。内訳としては流動化不動産(※3)が1兆2,200億円66%の増加、収益不動産(※4)が3,520億円3%の増加となっており、流動化不動産の増加
が投資不動産の増加につながっております。主な増加要因は収益ドライバーの一つである物流施設の開発投資を拡大し
てきたことによるものです。

資産の増加は棚卸資産や投資不動産の増加によるところが大きくなっていますが、これは成長のための投資を積極的に行っていることによるものです。投資に際しては、IRRを重要な指標として意思決定しており、売却時には資金回収及び収益獲得に寄与するものと考えております。今後も、市場の環境等を踏まえながら最適なタイミングで売却を実施し、資本効率の向上に努めてまいります。

※3.流動化不動産:値上がり益を得る目的で投資後、早期に売却可能な不動産。

※4.収益不動産:賃貸収益を得る目的で投資・開発した不動産。

 

[ 図3 ]


 

[ 図4 ]


 

 

 

 

Ⅱ.キャッシュ・フロー(CF)

 

 

基本的な考え方

 

キャッシュ・マネジメントについては、事業活動によるキャッシュ創出額を基準として投資を行うことを基本的な考え方としております。第7次中期経営計画において、財務規律としてD/Eレシオを0.6倍程度に設定しておりますが、優良な投資機会に対しては、積極的な投資を行う必要があり、成長のための投資が先行し一時的に規律を上回ることがあります。中長期的には、0.6倍程度に有利子負債の水準をコントロールするため、社内の投資判断基準を設定、厳格に運用し、成長投資と財務健全性の維持の均衡を図っております。

 

キャッシュ・フローの状況

 

 

2024年度における営業活動CF(休日調整後)は4,300億円となり、2023年度に比べ1,372億円増加し、自己資本を1とした場合の営業活動CF比率は、2023年度の0.12から0.04ポイント上昇し0.16となりました。その主な要因は、法人税等の支払いや販売用不動産の取得を行ったものの、4,887億円の税金等調整前当期純利益を計上したことによるものです。

投資活動CFについては、第7次中期経営計画における投資計画に基づき、賃貸等不動産等の取得や、不動産開発事業への投資を3,117億円実行したことなどにより、△4,933億円となりました。その結果、フリー・キャッシュ・フロー(営業活動CF+投資活動CF)は△633億円となりました。

財務活動CFについては、主に借入による資金調達を行ったものの、自己株式の取得や社債の償還、株主配当金の支払いなどを行ったことにより△446億円となりました。

これらの結果、現金及び現金同等物の2024年度末残高は2023年度末から1,126億円減少し、3,269億円となりました。

 

[ 図5 ]


 

[ 図6 ]


 

 

Ⅲ.損益の状況

 

 

自己資本利益率(ROE)

 

 

当期の自己資本利益率(ROE)は12.9%となりました。当社は、当初第7次中期経営計画の最終年度としていた2026年度(※2)において、ROE13%以上を経営目標に掲げております。収益性の改善を図りながら業績を拡大することが重要であると考えており、事業ポートフォリオの最適化による成長分野への投資や、非効率資産の圧縮等、さまざまな観点から資本効率の改善に向けて取組んでまいります。また、自己株式の取得についても機動的に実行し、ROEの目標達成を目指してまいります。

 

[ 図7 ]


 

※2.第7次中期経営計画は、当初2026年度を最終年度とした5ヶ年計画としておりましたが、1年前倒しで終了し、2026年度を初年度とする第8次中期経営計画の公表を2026年5月に予定しております。

 

 

 

(ROE分解)売上高当期純利益率

 

 

 

親会社株主に帰属する当期純利益は3,250億円となり、2018年度からの7年間の年平均成長率は5.4%となりました。退職給付会計における数理計算上の差異の影響もありますが、当期純利益率については6.0%となりました。

依然として資材価格や労務費の高騰による影響を受けておりますが、各事業において価格転嫁等の取組みを進めており利益率の改善につながっております。

 

[ 図8 ]


 

 

(ROE分解)総資産回転率

 

 

 

売上高は5兆4,348億円となり、2018年度からの7年間の年平均成長率は4.6%となりました。総資産回転率(※5)については、前期の0.82回より0.02回低下し0.80回となりました。当社グループの事業は、投資が不要な建設請負事業から、不動産開発事業のように先行投資が必要な事業の割合が増加してきており、売上高に占める開発物件売却の割合も増加してきております(図10参照)。さらに土地建物を販売する分譲事業を強化しており、このビジネスモデルの変革により回転率は低下することが見込まれますが、ストックとフローのバランスを取りながら棚卸資産の販売促進や投資不動産の売却、政策保有株式の売却等、資産の効率的な活用の徹底に引き続き取組み、改善を図ってまいります。

※5.総資産は期中平均で算出。

 

[ 図9 ]


 

[ 図10 ]


 

 

(ROE分解)財務レバレッジ

 

 

 

自己資本は2兆6,142億円となり、2018年度からの7年間の年平均成長率は8.6%となりました。財務レバレッジ(※6)は、前期と比べて0.5ポイント上昇し、268.9%となりました。D/Eレシオを財務規律として設定することで、財務レバレッジをコントロールしながら、成長投資への資金を確保し、財務基盤の強化に努めます。

※6.総資産及び自己資本は期中平均で算出。

 

[ 図11 ]


 

 

投下資本利益率(ROIC)

 

 

 

税引後営業利益(NOPAT)(※7)は、3,792億円となり、投下資本(自己資本+有利子負債)(※8)4兆7,245億円に対する利益率(ROIC)は8.0%となりました。株主資本コストを上回る資本効率でリターンに結び付けるために、現場においては図13に示すような通常業務の改善に「凡事徹底」で取組み、ROICの向上に努めてまいります。

※7.税引後営業利益(NOPAT):
営業利益×(1-実効法人税率)

※8.投下資本は期中平均で算出。

 

[ 図12 ]


 

 

[ 図13 ]


 

 

海外業績

 

 

 

海外事業における売上高は9,050億円、営業利益は517億円となり、2018年度からの7年間における年平均成長率は売上高21.7%、営業利益26.0%となりました。当社業績に占める海外事業の割合も上昇傾向にあり、売上高については2024年度では16.7%と、2018年度より10ポイント上昇しております。当社は米国の住宅会社のM&Aや海外での不動産開発等、海外事業に積極的に取組んでおります。第7次中期経営計画においては、地域密着型の海外事業による成長の加速を重点テーマの一つとしており、当初最終年度としていた2026年度(※2)には、海外売上高1兆円・営業利益1,000億円を目指しております。

※2.第7次中期経営計画は、当初2026年度を最終年度とした5ヶ年計画としておりましたが、1年前倒しで終了し、2026年度を初年度とする第8次中期経営計画の公表を2026年5月に予定しております。

 

[ 図14 ]


 

 

[ 図15 ]


 

 

Ⅳ.事業別経営成績

 

 

収益性分析

 

 

 

営業利益においては、賃貸住宅、商業施設、事業施設事業の3つのセグメントで全体の約80%近くを占めております。

戸建住宅事業においては、米国で引渡戸数が堅調に増加、収益性も改善しております。国内では新設住宅着工戸数の減少が見込まれるものの、請負住宅と分譲住宅それぞれの特性を活かした販売を進め、利益率の改善を図っております。

 

[ 図16 ]


 

 

セグメント資産に対する営業利益率

 

 

 

セグメント資産に対する営業利益率については、分譲事業の推進により棚卸資産残高は増えているものの、請負事業や賃貸管理事業の利益貢献度の高い賃貸住宅事業が特に高い数値を示しております。

事業施設事業については、物流施設やデータセンター等の市場の成長に対応し、長期大型開発へ積極的な投資を行っております。現在は取得済みの土地に係る建設投資を進めていることから、現時点における資産利益率は低い水準となっておりますが、今後の投資回収期にはキャッシュ・フローに大きく寄与してくることを見込んでおります。

 

[ 図17 ]


 

 

事業投資の状況

 

 

 

事業投資の状況としては、持続的成長を見据え積極投資を維持し、収益ドライバーである物流施設を中心とした事業施設事業と地域ポテンシャルを引き出し雇用創出や賑わいに貢献する商業施設事業への開発投資を拡大しております。また、これらの事業によって創出された資金を活用し、新たな収益の柱として育成すべく新規事業や海外事業等への投資も併せて実施しております。

 

[ 図18 ]


 

 

 

Ⅴ.株主還元及び株価の状況

 

 

株主還元

 

 

 

当社は、第7次中期経営計画においては、配当性向を35%以上として業績に連動した利益還元を行うこととしております。2024年度は、年間配当金額150円、配当性向29.2%とし、15期連続の増配を実現いたしました。配当性向は29.2%となりましたが、退職給付会計における数理計算上の差異の影響を除くと37.1%となります。また、21百万株(取得価額1,000億円)の自己株式の取得を行いました。

加えて2025年2月には株主優待制度の拡充として、株主優待券の贈呈枚数増加と、長期保有インセンティブの新設を決定しております。
今後も安定的な配当の維持に努めるとともに、機動的な自己株式の取得を検討してまいります。

 

[ 図19 ]


 

注 退職給付会計の数理計算上の差異の影響を除いて配当金額を決定しております。

 

 

株価純資産倍率(PBR)

 

 

 

1株当たり純資産(BPS)は4,226.17円となり、2018年度からの7年間の年平均成長率は9.9%、また株価純資産倍率(PBR)は、1.17倍となりました。

現状の株価には満足せず、継続してROEの向上と事業ポートフォリオの最適化による資本効率の向上への取組みを進め、加えて財務健全性やガバナンスの強化、IR活動を通じた投資家の皆様との対話により、今後も企業価値の最大化を図ってまいります。

 

 

[ 図20 ]


 

[ 図21 ]


 

 

2015

2016

2017

2018

2019

2020

2021

2022

2023

2024

時価総額(億円)

21,016

21,206

27,254

23,359

17,779

21,203

20,987

20,517

28,971

30,545

最高株価(円)

3,654

3,367

4,594

4,293

3,819

3,552

3,900

3,320

4,718

5,175

最低株価(円)

2,326.0

2,500.5

3,096

3,119

2,230.5

2,332.0

3,037

2,907.5

3,080

3,633

 

注 最高・最低株価は、2022年4月3日以前は東京証券取引所市場第一部におけるものであり、2022年4月4日以降は東京証券取引所プライム市場におけるものです。なお、時価総額は期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)としております。

 

Ⅵ.中期経営計画進捗

 

 

当社は、2022年度を初年度とする5ヵ年計画「第7次中期経営計画(※2)」を推進しております。3年目となる2024年度は、売上高は5兆4,348億円と4期連続の増収、退職給付会計における数理計算上の差異等の影響を除く営業利益は4,450億円と4期連続の増益となっており、ともに過去最高を更新することができました。原材料・エネルギー価格の高騰や金融資本市場の変動等の影響により厳しい事業環境が続きますが、計画達成に向けて、「収益モデルの進化」「経営効率の向上」「経営基盤の強化」の3つの経営方針を掲げ、持続的な成長モデルの実現に向け、海外事業の更なる進展や、地域を活性化させる複合再開発の推進、カーボンニュートラルの実現に向けた取組み等、各施策を実施してまいります。

※2.第7次中期経営計画は、当初2026年度を最終年度とした5ヶ年計画としておりましたが、1年前倒しで終了し、2026年度を初年度とする第8次中期経営計画の公表を2026年5月に予定しております。

 

財務目標

 

 

 

[ 図22 ]


注 営業利益・当期純利益・配当性向は退職給付会計における数理計算上の差異等の影響を除く。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。D/Eレシオは、ハイブリッドファイナンスの資本性考慮後。

 

 

事業別業績目標

 

 

 

[ 図23 ]


注 営業利益は退職給付会計における数理計算上の差異等の影響を除く。

 

 

 

5 【重要な契約等】

重要な契約等の決定または締結等はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループでは、「人・街・暮らしの価値共創グループ」として、社会に役立つ価値の創造を目指し、官公庁、国内外の大学、異業種企業とも密接に連携を図りながら、基礎・応用研究から新技術・新商品開発、これらの新技術の建築物や街づくりへの活用・検証まで多岐にわたる研究開発活動を行っております。

なお、当連結会計年度の研究開発費は10,816百万円となっております。

当連結会計年度の主な活動は次のとおりです。

 

(1) 戸建住宅事業、賃貸住宅事業、マンション事業

・2024年7月、富裕層をターゲットとした鉄骨戸建住宅商品「xevoΣ PREMIUM SMILE Edition(ジーヴォシグマプレミアム スマイルエディション)」並びに木造戸建住宅商品「PREMIUM GranWood SMILE Edition(プレミアムグランウッド スマイルエディション)」を創業70周年記念商品として発売いたしました。「全天候型3電池連携システム」とV2H(※1)を組み合わせ、住宅のレジリエンス(強靭性)をさらに強化しております。新たに開発した業界最高水準(※2)の熱交換型第1種換気システム「風なびRXⅢ」を標準採用いたしました。さらにZEH基準を上回る高断熱仕様(断熱等級6(※3))を標準仕様とするなど、最先端の技術をパッケージした当社住宅のフラッグシップ商品となります。今後もこの商品を起点に当社住宅の性能・技術の高さを訴求してまいります。

※1.Vehicle to Homeの略。電気自動車等に蓄えられた電力を住宅内で活用するシステム。

※2. 熱交換効率が最大で86%で業界最高水準。

※3. 省エネ地域区分5~7地域が対象。なお、プランや採用アイテム等の条件により、断熱等級6に適合しない場合があります。

・2025年1月、軽量鉄骨造3階建て戸建住宅商品「xevo M3(ジーヴォ・エムスリー)」を発売いたしました。当商品は、「都市に“ちょうどいい”3階建て」をコンセプトに、当社オリジナルの「内外ダブル断熱」と太陽光発電システムを標準搭載したZEH(※4)標準対応商品です。柱型が室内に出ない軽量鉄骨軸組構法は、都市部に多い重量鉄骨造に比べ、延べ面積126㎡(※5)の3階建ての建物で比較すると、各階約1帖(約2㎡)分(建物全体で約3帖分)のゆとりを生みだします。また、ファサード(※6)には質感を重視したタイル外壁を標準で採用するなど、高い意匠性を実現いたしました。当社重量鉄骨ラーメン構造3階建て商品「skye3(スカイエスリー)」に加え、軽量鉄骨商品「xevo M3」をラインアップしたことで、都市に住むお客様の幅広いニーズに応えることが可能となりました。

※4. 『ZEH』、Nearly ZEH、ZEH Oriented含む。

※5. 各階の床面積が42㎡の3階建ての場合。

※6. 建物を正面から見たときの外観。

・2025年3月、ZEH-M(※7)に対応した重量鉄骨ラーメン構造3・4階建て賃貸住宅商品「THE STATELY(ザ ステイトリー)」を発売いたしました。座屈拘束ブレース(※8)耐力壁を採用することで、最も高い耐震性能である耐震等級3(※9)を当社の賃貸住宅商品において初めて標準仕様といたしました。また、遮音性能の高い界壁や界床を採用することで、ご入居者様に快適な住空間を提供いたします。あわせて、構造躯体・防水の初期保証を30年といたしました。さらに、1階部分は物販店舗や事務所等の用途にも対応できるため、建設地エリアのニーズに合わせた提案が可能です。今後も当社は、オーナー様への幅広い土地活用の提案と、ご入居者様から選ばれる賃貸住宅を提供してまいります。

※7.ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス・マンションの略称。断熱性・省エネ性能を高め、再生可能エネルギーなどにより、エネルギー収支ゼロを目指す集合住宅のこと。

※8.心材となる鋼材(ブレース)を2つの拘束材(鋼管)で挟み込み一体化することで、高い耐震性能を実現した構造部材。

※9.「構造躯体の倒壊等防止」に対応。提案内容や一部エリアにおいては対応できない場合があります。

 

・大和ライフネクスト株式会社は、株式会社Octa Robotics及び綜合警備保障株式会社と共同で、「ロボットとセキュリティシステムの連携」についての実証実験を2025年1月に実施いたしました。経済産業省による「令和6年度革新的ロボット研究開発等基盤構築事業」に採択された本実験では、夜間等無人環境下においてもロボットがセキュリティシステムの稼働を維持しながら警備・清掃業務を自律的に遂行できることを確認いたしました。今後は、ロボット運用における各種セキュリティの強化や、複数のロボットの同時稼働を実現するためのシステム開発をパートナー会社とともに進め、管理品質の向上につながる新たな建物管理サービスの開発・販売に向けた取組みを加速させてまいります。

なお、当事業に係る研究開発費は4,653百万円です。

 

(2) 商業施設事業、事業施設事業、環境エネルギー事業、その他の事業

・当社とキヤノンマーケティングジャパン株式会社は、共同で物流施設におけるトラックドライバーの荷待ち・荷役時間を可視化し、改善を支援するシステムを開発し、2024年11月より当社開発のマルチテナント型物流施設(※10)「DPL平塚」(神奈川県)において、当システムの効果を検証する実証実験を開始いたしました。トラックドライバーの人手不足により懸念される物流の2024年問題に対応するため、当システムでは、AIカメラがトラックの物流施設への入場、入出荷バース(※11)への移動から退場までの動きを把握し、荷待ち・荷役時間を自動計測いたします。これにより事業者のドライバーの負荷軽減と物流効率化を支援いたします。

※10.複数の企業テナントが入居可能な物流施設。

※11.荷積み・荷下ろしを行うためにトラックを停車させる場所。

・当社は、物流施設の床の夏型結露を抑制する「結露予測制御システム」を開発し、2024年6月竣工の当社が開発したマルチテナント型物流施設「DPL小田原」(神奈川県)に搭載いたしました。本システムは、施設に設置した各種センサー(温度・湿度)と気象予報のデータをもとに、翌日に床表面で結露が発生する可能性を予測し、可能性が高い場合はシステム利用者への通知やアラーム表示器の点灯、換気機器の自動停止を行います。これにより、結露の発生頻度を抑えるとともに、施設利用者に事前対処の猶予が生まれ、結露による保管物への悪影響や作業上の支障といったリスクを回避することが可能となります。今後も当社が開発する物流施設に順次導入し、地球温暖化に伴う高湿化への対応を行ってまいります。

・当社は、気象や地震の情報を一元管理できる総合災害モニタリングシステム「DoKo-moni(ドコモニ)」(※12)を開発し、2024年12月からお客様への提案を開始いたしました。本システムは、気象や地震に関する最大6種類のデータ(気温・湿度・風速・雨量・加速度・映像)をリアルタイムで取得し、被害の恐れがある際には、施設管理者に即時アラートが発信されるため、近年頻発する大地震や異常気象等の大規模自然災害に備えたBCP対策に有効です。また、複数の建物のモニタリングデータをクラウド上で一元管理でき、大地震時には発生後1分程度で建物の推定被害状況の把握が可能となるため、建物の点検に活用することでより早い初動対応が可能となり、効率的な補修点検や速やかな事業再開に貢献いたします。

※12.商標登録出願済み。

・当社は、工場等において電気では代替が困難な熱や燃料の早期脱炭素化を目指し、国立大学法人大阪大学先導的学際研究機構との共同研究において、常温・常圧下で、バイオガス(※13)に含まれるメタンガス(※14)からバイオメタノール(※15)を高い変換率で合成する方法を開発いたしました。同大学大久保教授らの研究グループは、2017年に世界で初めて常温・常圧で空気とメタンガスからメタノールを作り出すことに成功しておりましたが、今回の共同研究で、2017年に開発された変換技術によるメタノール変換率(14%)を大きく上回る変換率89%を達成いたしました。今後は更なる効率化を図り、当技術の実用化に向けて、様々なパートナーとの協業も踏まえた可能性を検討し、当社グループをはじめ社会全体の脱炭素化に貢献してまいります。

※13.バイオ燃料の一種で、生物の排泄物、有機質肥料、生分解性物質、汚泥、汚水、ゴミ、エネルギー作物等の発酵、嫌気性消化により発生するガス。メタンガス約60%、二酸化炭素約40%を含みます。

※14.天然ガスの主成分。地球温暖化係数が二酸化炭素の25倍であり国連等で削減目標が決められております(グラスゴー気候合意)。

※15.バイオマス由来のガス(バイオガス)中のメタンガスから合成したメタノール。

 

・当社は、カーボンニュートラル実現に向けた非住宅の木造・木質化の取組み「Future with Wood」の一環として、木材を鉄骨の被覆材に使用し、事務所等9階建てまでの建築物に採用できる木鋼ハイブリッド耐火柱「Dkitto-Column(ディキットコラム)」を開発し、1.5時間耐火の大臣認定を取得いたしました。「Dkitto-Column」は、木材や網入強化せっこうボードを被覆材として使用することで、1.5時間耐火を実現した耐火柱で、鉄骨柱の耐火被覆材に使用する木材の樹種に制限はありません。また、高強度の鋼材と炭素固定効果がある木材を採用しているため、従来の柱材(※16)と比較(※17)して、1本あたりの部材製造時に生じる二酸化炭素排出量を117kg削減(※18)することが可能であり、CO₂排出量削減に貢献いたします。

※16. 構造躯体「鉄骨造柱」と耐火被覆材「吹付けロックウール」、下地材「軽量鉄骨並びに石膏ボード」、仕上げ材「ビニルクロス」で構成する柱材のこと。

※17. 9階建ての1階に使用する柱に要求される1.5時間耐火性能を満たすための従来の柱材と、「Dkitto-Column」による比較。従来の柱は柱高さ3m、柱外角寸法815mmで、「Dkitto-Column」は柱高さ3m、柱外角寸法710mmのもの。

※18. 設計仕様により削減量は異なります。

・株式会社フジタ(以下「フジタ」)は株式会社トクヤマと共同で、セメントなど材料由来の温室効果ガス排出量を実質ゼロとした環境配慮型の歩道用舗装材「バイオ炭インターロッキングブロック」を開発いたしました。本製品は木質バイオマスガス化発電の副産物であるバイオ炭を有効利用し、歩道用舗装材に必要な曲げ強度は確保しつつ、炭素を貯留することでカーボンニュートラルを実現いたしました。今後も曲げ強度及び保水性等の性能向上と安定供給体制の構築を進めてまいります。

・フジタと、2024年4月に大和ハウスグループ投資事業有限責任組合(※19)による出資を受けた株式会社Synspective(以下「Synspective」)は、国立大学法人広島大学と共同で、Synspectiveが運用する小型SAR衛星StriXの撮像データを用いて、能登地震災害復旧工事における広域地盤変位評価の実証実験に着手いたしました。近年、気候変動に伴う豪雨災害の激甚化等により、防災、国土強靭化においてはハード対策に加えてソフト対策の充実が求められております。実証実験を通じて、リモートセンシング技術を活用した災害復旧現場の安全監視等の建設技術の高度化を目指すとともに、小型SAR衛星活用の可能性探索に取組んでまいります。

※19.大和ハウスベンチャーズ株式会社が運営するコーポレートベンチャーキャピタルファンド。

・当社とフジタは、株式会社芳賀沼製作と共同で、間伐材を利用できる外壁「カンタイパネル」(※20)を開発し、カーテンウォール(※21)形式の木質外壁として、日本で初めて(※22)60分耐火の大臣認定を取得いたしました。今後、高いデザイン性と設計自由度をもつ木質カーテンウォールにより、建物の外壁にも木材を採用したいお客様からの需要に応えつつ、脱炭素化や森林資源の循環利用に貢献し、カーボンニュートラルはもとより、自然環境と調和した社会の実現を目指します。

※20.名前の由来:「間(カン)」伐材を主とした国産木材を用いた「耐(タイ)」火「パネル」であること。

※21.建物の荷重を負担しない非耐力壁のこと。

※22.3社調べ。(2025年3月28日時点)

・大和リース株式会社(以下「大和リース」)は、1階部分に大型車専用駐車スペース、2階以上に普通乗用車専用駐車スペースを設けた「物流課題対応型 自走式立体駐車場」を開発し、2024年11月に販売を開始いたしました。近年、EC(電子商取引)市場の普及に伴い、宅配便の取扱い個数が増加し続けているなか、物流の2024年問題としてトラックドライバーの労働環境改善が求められております。その結果、運転時間制限等により高速道路のサービスエリアでは、大型車の長時間駐車による駐車スペース不足といった新たな問題が発生しております。「物流課題対応型 自走式立体駐車場」は限られた敷地のなかで、駐車スペースの拡充と効率的な利用を実現いたします。

・大和リースは、大阪城公園で廃棄処分していたクスノキの剪定枝から、100%植物由来の生体水(クスノキのアロマ)を開発し、公園事業におけるサーキュラーエコノミーを展開しております。この生体水は、大和リースが管理・運営に参画する大阪城公園の植栽剪定作業によって発生する年間約8tのクスノキ剪定枝を活用し、低温真空抽出法という特別な技術により水や溶剤を使用せずに生成した100%植物由来のアロマです。また、この生体水は、外部機関によって安全性の他に蚊の忌避効果も確認されております。

 

・株式会社フレームワークスは、物流の2024年問題への対応としてのトラックドライバーの待機時間削減や、人手不足等日々の改善に必要なデータ活用のニーズが高まる中、倉庫管理システム「Logistics Station iWMS G5(ロジスティクスステーション・アイダブリューエムエス・ジーファイブ)」(※23)に新たに2つの機能を追加いたしました。一つは、株式会社Hacobuの「MOVO Berth(ムーボ・バース)」との連携により、トラック到着情報や作業状況をリアルタイムで共有し、効率的な入出荷作業を支援いたします。2つ目は、KPI管理機能で、倉庫内の実績データを活用して業務効率の向上をサポートし、運用の効率化を支援いたします。

※23.物流施設の運営や在庫管理等をサポートするパッケージシステム。

・当社とAutodesk, Inc.は、BIMデータを活用したCO₂排出量算定ツール「Integrated Carbon Tool(インテグレーティド カーボン ツール)」(以下、ICT)を共同開発いたしました。このツールは、建物のBIMデータをもとに、設計初期段階から建物の資材製造段階(資材調達や工場への輸送、製造)に関わるCO₂排出量を可視化するもので、設計初期段階からCO₂の削減を検討することが可能です。ICTは、柱や梁(はり)等の部材、鉄や木材等の材料を選択することで、BIMデータでは再現されない接合部材等も含めたCO₂排出量を自動で算定いたします。これにより、設計者は効率的にCO₂の削減効果を検討することが可能です。両社は今後も2050年カーボンニュートラルの実現やBIMを活用した技術開発、業務効率化等で連携を図り、建設業界のDX化を推進いたします。

・当社は、環境行動計画「エンドレスグリーンプログラム2026」の一環として、「ネイチャー・ポジティブ」(※24)実現に向け、グループ共通の緑化コンセプト「みどりをつなごう!」を合言葉に、在来種を50%以上採用する緑化活動を進めております。生物多様性のビッグデータ分析を行う株式会社シンク・ネイチャーと共同で、都市部で行った緑化活動の生物多様性保全効果を定量的に評価検証(※25)した結果、在来種による緑化をしなかった場合と比較して約3倍の生物多様性保全効果があることを確認いたしました。また、当社、旭化成ホームズ株式会社及び積水ハウス株式会社の3社協働による都市緑化については、植栽樹種データに基づいた分析によると、在来樹種に着目した3社それぞれの特性のある取組みが、個社別での貢献を生態学的に補完し合い、ネイチャー・ポジティブの実効性におけるシナジーが明示されました。

※24.生物多様性の損失を止め、反転させ、回復軌道に乗せること。

※25.検証期間は2024年5月1日~2024年7月30日。

なお、当事業に係る研究開発費は6,162百万円です。