以下「第2 事業の状況」に記載している金額には,消費税等は含まれていない。
文中の将来に関する事項は,当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
(1) シミズグループの経営方針
当社は,1887年に相談役としてお迎えした渋沢栄一翁の教えである道徳と経済の合一を旨とする「論語と算盤」を「社是」とし,この考え方を基に,「真摯な姿勢と絶えざる革新志向により,社会の期待を超える価値を創造し,持続可能な未来づくりに貢献する」ことを「経営理念」として定めた。
また,2019年5月に,2030年を見据えたシミズグループの長期ビジョン「SHIMZ VISION 2030」と,当面5年間の基本方針と重点戦略を取りまとめた「中期経営計画〈2019‐2023〉」を策定した。
「SHIMZ VISION 2030」
■目指す姿『スマート イノベーション カンパニー』
建設事業の枠を超えた不断の自己変革と挑戦,多様なパートナーとの共創を通じて,時代を先取りする価値を創造(スマート イノベーション)し,人々が豊かさと幸福を実感できる,持続可能な未来社会の実現に貢献する。
■シミズグループが社会に提供する価値
イノベーションを通じた価値の提供により,SDGsの達成に貢献する。
①安全・安心でレジリエント※1な社会の実現
地震や巨大台風,豪雨などの自然災害リスクが高まる中,生活と事業を災害から守ることが求められている。強靭な建物・インフラの構築を通じて,安全・安心でレジリエントな社会の実現に貢献していく。
・強靭な社会インフラの構築
・建物・インフラの長寿命化
・防災・減災技術の普及
・ecoBCP※2の普及
※1 レジリエント:強くしなやかで復元力がある
※2 ecoBCP:平常時の節電・省エネ(eco)対策と非常時の事業継続(BCP)
対策を両立する施設・まちづくり
②健康・快適に暮らせるインクルーシブ※な社会の実現
高齢化や人口減少,都市化などの急速な社会変化が進む中,誰もが安心して快適に暮らせる社会が求められている。人に優しい施設やまちづくりを通じて,健康・快適に暮らせるインクルーシブな社会の実現に貢献していく。
・ICTを活用したまちづくり
・ユニバーサルデザインの普及
・well-beingの提供
・人類の活躍フィールドの拡大(海洋,宇宙へ)
※ インクルーシブ:すべての人が社会の一員として参加できる
③地球環境に配慮したサステナブル※な社会の実現
地球温暖化や森林破壊,海洋汚染などが深刻化する中,次世代に豊かな地球を残すことが
求められている。環境負荷低減を目指す企業活動を通じて,地球環境に配慮したサステナブ
ルな社会の実現に貢献していく。
・再生可能エネルギーの普及
・省エネ・創エネ,ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)化の推進
・事業活動におけるCO2排出量削減
・自然環境と生物多様性の保全
※ サステナブル:地球環境を保全しつつ持続的発展が可能な
■ビジョンの達成に向けて
3つのイノベーションの融合により,新たな価値を創造するスマート イノベーション カンパ
ニーを目指す。
①事業構造のイノベーション
ビジネスモデルの多様化とグローバル展開の加速,及び,グループ経営力の向上
②技術のイノベーション
建設事業の一層の強化に向けた生産技術の革新と未来社会のメガトレンドに応える先端技術
の開発
③人財のイノベーション
多様な人財が活躍できる“働き方改革”の推進と社外人財との“共創”による「知」の集積
■目指す収益構造
スマート イノベーション カンパニーへの進化により,2030年度に連結経常利益2,000億円以上を目指す。
連結売上利益の構成は,事業別では,建設65%,非建設35%,地域別では,国内75%,海外25%を想定している。
「中期経営計画〈2019‐2023〉」
■中期経営計画の位置付け
企業価値の持続的成長を目指し,外部環境の変化に機敏に対応しつつ,利益水準を維持するとともに,この5年間を新たな収益基盤の確立に向けた先行投資期間として位置付けている。
■基本方針
建設事業の深耕・進化と,非建設事業の収益基盤確立及び成長を支える経営基盤の強化を図り,グローバル展開の加速とESG経営の推進により,シミズグループの企業価値向上を実現し,SDGsの達成に貢献する。
■経営数値目標(連結ベース)
建設事業での安定的な収益基盤を維持しつつ,非建設事業の着実な収益力向上により中長期的に収益構造を強化し,グループの持続的成長を実現する。
非建設事業の成長に資する投資を着実に実施しつつ,財務体質の健全性を維持する。
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|
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(単位:億円) |
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中期経営方針2014 |
|
中期経営計画〈2019‐2023〉 |
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2018年度 目標 |
2018年度 実績 |
|
2023年度 目標 |
財務KPI |
|
総売上高 |
16,300 |
16,649 |
|
18,800 |
ROE 10%以上 自己資本比率 40%以上 負債資本倍率 0.7倍以下 (D/Eレシオ) 配当性向 30%程度 |
|
建設事業 |
14,900 |
15,046 |
|
15,500 |
|
|
非建設事業 |
1,400 |
1,603 |
|
3,300 |
|
|
売上利益 |
1,750 |
2,166 |
|
2,350 |
|
|
建設事業 |
1,560 |
1,968 |
|
1,850 |
|
|
非建設事業 |
190 |
198 |
|
500 |
|
|
経常利益 |
1,020 |
1,339 |
|
1,400 |
|
■資本政策
①政策保有株式の縮減
・政策保有株式の縮減を段階的に進め,資本の有効活用を図る。
・売却代金の一部を原資として自己株式を取得し,成長戦略の実現に向けた機動的な資本政策を実施する。
②株主還元の拡充
・長期的発展の礎となる財務体質の強化と安定配当(普通配当)の維持を基本方針としつつ,成長により稼得した利益を,連結配当性向30%を目安に還元する。
■投資計画
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項目 |
投資額(5ヶ年) |
|
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生産性向上・研究開発投資 |
1,000億円 |
・建設生産システムの進化(ロボット等) ・研究開発拠点の拡充 ・デジタル関連投資 他 |
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不動産開発事業 |
5,000億円 |
・国内開発事業・賃貸資産の拡充 ・海外事業の拡大(ASEAN・北米等)他 新規投資額 5,000億円 売却による回収 ▲1,000億円 NET投資額 4,000億円 |
|
インフラ・再生可能エネルギー 新規事業(フロンティア事業他) |
1,300億円 |
・インフラ運営・BSP事業 ・再生可能エネルギー関連事業 ・宇宙・海洋・自然共生事業 ・次世代ベンチャー投資 他 |
|
人財関連 |
200億円 |
・高度プロフェッショナル人財 ・グローバル化・制度改革 他 |
|
5ヶ年投資額 合計 |
7,500億円 |
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■非財務KPI
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主要KPI |
2023年度目標 |
|
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生産性向上 |
建設事業における生産性(2016年度比) 向上率 |
20%以上 |
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環境(E) |
建設事業におけるCO2排出量(2017年度比)削減率※1 |
10%以上 |
|
社会(S) |
働きがい指標※2 |
4.0以上 |
|
ガバナンス(G) |
重大な法令違反件数 |
0件 |
※1 当社エコロジー・ミッション2030‐2050活動に対応する目標
※2 当社従業員意識調査による指標(5段階評価の平均)
(2) シミズのSDGs・ESGへの取組み
■SDGsの達成に向けて
2015年9月に国連の「持続可能な開発サミット」において,人間,地球及び繁栄のための行動計画として「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択された。
SDGsには,2030年までに地球規模で解決すべき17の目標が掲げられ,すべての国連加盟国に,目標達成に寄与することが求められている。
シミズグループでは,SDGsを社会的要請として受け身で捉えるのではなく,事業を通じて主体的にSDGsの達成に貢献していきたいと考えている。
■ESG経営の推進
シミズグループは,ESG経営を推進し,事業活動を通じた社会的責任を果たすことで,ステークホルダーからの信頼を高めるとともに,中長期的な企業価値向上と持続的な成長を目指す。
E(環境):持続可能な地球環境への貢献
・CO2削減の中長期目標「エコロジー・ミッション2030‐2050」の着実な推進
・生物多様性の保全・指標化に向けた取組み
・限りある地球資源の有効活用と廃棄物削減に向けた取組み
S(社会):すべてのステークホルダーとの「共生」
・自然災害に対し,サプライチェーンと一体のBCP対応で,顧客・社会へ“安全・安心”を提供
・お客様の期待を超える価値の提供による顧客満足の獲得
・人権尊重の徹底と「働き方改革」によるサプライチェーンを含む労働環境の整備
・良き企業市民として地域社会と共生し,社会課題の解決に貢献
G(ガバナンス):コンプライアンスの徹底とリスクマネジメントの強化
・社是「論語と算盤」に基づく企業倫理の浸透とコンプライアンスの徹底
・リスクマネジメントの徹底(投資リスク,地政学的リスク,自然災害リスク 等)
・公正で透明な企業活動の実践
・すべてのステークホルダーへの的確な情報開示と対話の促進によるガバナンスの向上
(3) 独占禁止法違反事件に対する再発防止策の実施状況について
当社は,1991年の「独占禁止法順守プログラム」の制定以来,「独占禁止法順守マニュアル」及び「入札に係る役員・従業員の行動規準」等を整備し,コンプライアンス・ホットライン(相談・通報制度)も設置した。更に定期的に全従業員にコンプライアンス研修を行うこととし,法務部が継続的に支店・事業部門を巡回することにより,制度の確実な実施を図る等,コンプライアンスの徹底に努めてきた。
それにもかかわらず発生した中央新幹線建設工事における独占禁止法違反事件(以下,本事案という。)を受け,上記のコンプライアンス徹底を図るための諸施策を見直し,追加の再発防止策を定め,実施してきた。当該再発防止策の実施状況は,以下のとおりである。
2018年3月に新たに追加した再発防止策と実施状況
①経営トップが率先して倫理意識の涵養とコンプライアンスの徹底を図る
あらゆる機会をとらえて,社長から役員・従業員に対してコンプライアンスの徹底を指示する
とともに,以下のとおり継続して教育・啓発に努めている。
a.経営幹部向け企業倫理研修
2018年4月以降4回実施・各回社長以下約300名の役員・幹部社員,延べ約1,200名が受講
・斯文会 石川忠久 理事長「論語に学ぶ」
・渋沢史料館 井上潤 館長「“論語と算盤”に学ぶ渋沢栄一の事業・経営理念」
・安岡定子氏「論語に学ぶ」
・一橋大学 村上政博 名誉教授「独占禁止法 - 国際標準の競争法へ」
b.全国の支店における企業倫理研修
・全国14支店で渋沢史料館 井上館長による講義とグループ討議を実施し,役職者を中心に約2,400名が受講
・弁護士による独占禁止法に関する研修・ヒアリングを土木部門の全役員に対して実施
c.営業部門を中心とした社長講話
社長によるコンプライアンス講話を全国で14回実施
d.社内報及び社内イントラネットによる啓発
社内報に「シリーズ論語と算盤」の連載を開始。企業倫理室長メッセージや企業倫理研修の講演録,渋沢栄一翁の意志を活動理念とされている団体の紹介等を掲載。社内イントラネットに,企業倫理ポータルサイトを新設し,企業倫理に関する資料・映像やコンプライアンス主要規程類を掲載
②コンプライアンス推進組織の強化等
a.企業倫理委員会:委員長を社長とし,メンバーに外部有識者(弁護士)を加え,全社のコン
プライアンス関連事項の審議を行い,2018年度は3回開催
b.企業倫理室:2018年4月に新設し,全社のコンプライアンスの徹底に係る施策を立案・推進
c.独占禁止法違反再発防止外部会議:
目 的 本事案の発生原因分析及び当社が2018年3月に立案・発表した再発防止策の妥当
性に関する客観的な評価
構 成 員 弁護士3名
経 過 ・2018年4月から7月にかけて資料の検討,関係者へのヒアリングを実施し,全
6回の集中討議を経て,報告書を作成
・同年7月末に報告書を受領。取締役会に報告
評価結果 ・「再発防止策は,原因分析を踏まえた適切な内容である」と,妥当性を評価
・会議において同有識者より出された様々な意見は,2018年7月の再発防止策の
改定に反映
③営業体制の刷新によるコンプライアンスの強化
従来,建築事業部門と土木事業部門のそれぞれに置かれていた営業部門について,2018年4月に営業総本部を新設し一元化。営業担当副社長が建築・土木の営業組織を一体的に統轄する体制とし,更にコンプライアンス担当役員を専任配置
2018年6月には営業総本部及び土木総本部内にコンプライアンス推進部を新設
④監査部を拡充し,全社土木入札案件の臨時監査を実施
約1,800案件を対象に臨時監査を実施 ⇒ 法令違反を疑われる事案はなし
⑤行動規準の改定
行動規準の改定について,独占禁止法違反再発防止外部会議からの意見も反映し,2018年6月の企業倫理委員会,取締役会付議を経て,同年7月から運用を開始した。
行動規準の主な改定点
a.通報義務の明確化
他の役員・従業員から違反の指示を受けた場合及び他の役員・従業員による違反に気付いた場合の通報義務等について明確化
b.同業他社との接触に関するルールの明確・厳格化
同業他社は競争者であり,受注調整は勿論のこと,世間の疑惑を招きかねない接触は行わない
c.違反者に対する処分の強化
懲戒処分の対象を広げることを含め,懲戒処分を厳格化
⑥特定プロジェクトに対するコンプライアンスチェックの強化
a.リスクの高い案件の抽出と指定
企業倫理室,営業総本部及び法務部が,難易度が高い等の理由で競争者が限定される,公益性が高い又は発注方式が特殊である等の事情を総合的に考慮し,競争制限行為を誘引するリスクが高いと判断する案件を特定(建築・土木合わせて70案件程度が指定され,毎月案件の進捗に従い見直しを実施)
b.上記aの指定案件に関し,企業倫理室,法務部,外部弁護士等により,担当の営業役員,部署長,担当者等を対象にヒアリングチェックを実施(2019年4月までに累計約260案件を実施)
⑦2019年度以降の取組み
・2018年度に改定された行動規準をはじめとする再発防止策の実施状況につき,この1年間の独占禁止法をめぐる外部環境の変化を踏まえた更なる改善・補充の必要性を確認するため,2019年4月に専門弁護士による評価を行った結果,「現時点で必要かつ可能な諸施策をほぼ網羅するもので十分に評価に値する」との結論を得た。この評価は今後も定期的に行う。
・倫理意識の涵養とコンプライアンスの徹底には施策の継続が不可欠であると考えており,「独占禁止法」や「論語と算盤」に係る講演やeラーニングを含む教育施策の拡充も行いながら,2019年度以降も再発防止策を引き続き実施する。
有価証券報告書に記載した事業の状況,経理の状況等に関する事項のうち,投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には,次のようなものがある。
なお,文中の将来に関する事項は,当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
(1) 建設市場の縮小リスク
国内外の景気後退等により民間設備投資が縮小した場合や,財政健全化等を目的として公共投資が減少した場合には,今後の受注動向に影響を及ぼす可能性がある。
(2) 建設資材価格及び労務単価の変動リスク
建設資材価格や労務単価等が,請負契約締結後に予想を超えて大幅に上昇し,それを請負金額に反映することが困難な場合には,建設コストの増加につながり,利益が悪化する可能性がある。
(3) 取引先の信用リスク
景気の減速や建設市場の縮小などにより,発注者,協力業者,共同施工会社などの取引先が信用不安に陥った場合には,資金の回収不能や施工遅延などの事態が発生する可能性がある。
(4) 重大事故や不具合などによる瑕疵等のリスク
設計,施工段階における技術・品質面での重大事故・不具合や人身事故が発生し,その修復に多大な費用負担や施工遅延が生じたり,重大な瑕疵となった場合には,業績や企業評価に影響を及ぼす可能性がある。
(5) 海外事業リスク
海外での事業を展開するうえで,進出国での政治・経済情勢,為替や法的規制等に著しい変化が生じた場合や,テロ・暴動等の発生,資材価格の高騰及び労務単価の著しい上昇や労務需給のひっ迫があった場合には,工事の進捗や工事利益の確保に影響を及ぼす可能性がある。
(6) 投資開発事業リスク
景気の減速による不動産市況の低迷や不動産ファンド等の破綻など,投資開発分野の事業環境に著しい変化が生じた場合には,業績に影響を及ぼす可能性がある。
(7) 長期にわたる事業におけるリスク
PFI事業,再生可能エネルギー事業等の長期にわたる事業において,諸物価や人件費,金利等の上昇など,事業環境に著しい変化が生じた場合には,業績に影響を及ぼす可能性がある。
(8) 保有資産の価格・収益性の変動リスク
保有資産の時価が著しく下落した場合又は収益性が著しく低下した場合には,業績に影響を及ぼす可能性がある。
(9) 自然災害リスク
地震,津波,風水害等の自然災害や,感染症の世界的流行が発生した場合は,当社グループが保有する資産や当社グループの従業員に直接被害が及び,損害が発生する可能性がある。
災害規模が大きな場合には,受注動向の変化・建設資材価格の高騰・電力エネルギー供給能力の低下等で事業環境が変化し,業績に影響を及ぼす可能性がある。
(10) 個人情報・機密情報漏洩リスク
事業活動において取得した個人情報,機密情報が漏洩した場合には,業績や企業評価に影響を及ぼす可能性がある。
(11) 法令等に係るリスク
当社グループの主な事業分野である建設業界は,建設業法,建築基準法,宅地建物取引業法,国土利用計画法,都市計画法,独占禁止法,さらには環境,労働関連の法令等,さまざまな法的規制を受けており,当社グループにおいて違法な行為があった場合には,業績や企業評価に影響を及ぼす可能性がある。
加えて,社会や時代の変化により,新たな法規制の制定や法令の改廃等があった場合には,業績や企業評価に影響を及ぼす可能性がある。
(1) 経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況
当連結会計年度の売上高は,前連結会計年度に比べ9.6%増加し1兆6,649億円となった。
利益については,営業利益は前連結会計年度に比べ6.9%増加し1,297億円,経常利益は7.9%増加し1,339億円,親会社株主に帰属する当期純利益は17.3%増加し996億円となった。
セグメントの業績は,以下のとおりである。(セグメントの業績については,セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載している。また,報告セグメントの利益は,連結財務諸表の作成にあたって計上した引当金の繰入額及び取崩額を含んでいない。なお,セグメント利益は,連結損益計算書の営業利益と調整を行っている。)
(当社建設事業)
当社建設事業の売上高は,前連結会計年度に比べ14.2%増加し1兆3,793億円となり,セグメント利益は,前連結会計年度に比べ26.4%増加し1,339億円となった。
(当社投資開発事業)
当社投資開発事業の売上高は,前連結会計年度に比べ36.6%減少し253億円となり,セグメント利益は,前連結会計年度に比べ20.2%減少し87億円となった。
(その他)
当社が営んでいるエンジニアリング事業,LCV事業及び子会社が営んでいる各種事業の売上高は,前連結会計年度に比べ7.8%増加し5,054億円となり,セグメント利益は,前連結会計年度に比べ11.1%増加し200億円となった。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度の連結キャッシュ・フローの状況については,営業活動により149億円資金が減少し(前連結会計年度は828億円の資金増加),投資活動により526億円資金が減少し(前連結会計年度は309億円の資金減少),財務活動により424億円の資金を使用した結果(前連結会計年度は261億円の資金減少),現金及び現金同等物の当連結会計年度末の残高は,前連結会計年度末に比べ1,111億円減少し,2,299億円となった。
③ 生産,受注及び販売の状況
当社グループが営んでいる事業の大部分を占める建設事業及び開発事業では,「生産」を定義することが困難であり,また,子会社が営んでいる事業には,「受注」生産形態をとっていない事業もあるため,当該事業においては生産実績及び受注実績を示すことはできない。
また,当社グループの主な事業である建設事業では,請負形態をとっているので,「販売」という概念には適合しないため,販売実績を示すことはできない。
このため,「生産、受注及び販売の状況」については,記載可能な項目を「① 経営成績の状況」においてセグメントの業績に関連付けて記載している。
なお,参考のため当社単体の事業の状況は次のとおりである。
a. 受注(契約)高,売上高,及び次期繰越高
|
期別 |
種類別 |
前期 繰越高 (百万円) |
当期 受注(契約)高 (百万円) |
計 (百万円) |
当期 売上高 (百万円) |
次期 繰越高 (百万円) |
||||||
|
第116期
|
建設事業 |
|
|
|
|
|
||||||
|
建築工事 |
1,048,078 |
1,151,999 |
2,200,078 |
912,655 |
1,287,422 |
|||||||
|
土木工事 |
487,950 |
289,842 |
777,793 |
284,751 |
493,041 |
|||||||
|
計 |
1,536,028 |
1,441,842 |
2,977,871 |
1,197,406 |
1,780,464 |
|||||||
|
開発事業等 |
40,694 |
63,735 |
104,429 |
65,147 |
39,281 |
|||||||
|
合計 |
1,576,722 |
1,505,577 |
3,082,300 |
1,262,554 |
1,819,746 |
|||||||
|
第117期
|
建設事業 |
|
|
|
|
|
||||||
|
建築工事 |
1,287,422 |
1,342,071 |
2,629,494 |
1,047,964 |
1,581,530 |
|||||||
|
土木工事 |
493,041 |
286,140 |
779,181 |
300,157 |
479,023 |
|||||||
|
計 |
1,780,464 |
1,628,211 |
3,408,675 |
1,348,122 |
2,060,553 |
|||||||
|
開発事業等 |
39,281 |
97,245 |
136,526 |
58,607 |
77,918 |
|||||||
|
合計 |
1,819,746 |
1,725,456 |
3,545,202 |
1,406,730 |
2,138,472 |
(注) 1 前期以前に受注したもので,契約の更改により請負金額に変更のあるものについては,当期受注(契約)
高にその増減額を含む。したがって当期売上高にもかかる増減額が含まれる。
2 開発事業等は,投資開発事業,エンジニアリング事業及びLCV事業等である。
b. 受注工事高の受注方法別比率
工事の受注方法は,特命と競争に大別される。
|
期別 |
区分 |
特命(%) |
競争(%) |
計(%) |
|
|
第116期 |
(自 2017年4月1日 至 2018年3月31日) |
建築工事 |
37.1 |
62.9 |
100 |
|
土木工事 |
10.5 |
89.5 |
100 |
||
|
第117期 |
(自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) |
建築工事 |
32.5 |
67.5 |
100 |
|
土木工事 |
20.0 |
80.0 |
100 |
||
(注) 百分比は請負金額比である。
c. 売上高
|
期別 |
区分 |
官公庁(百万円) |
民間(百万円) |
合計(百万円) |
||||||
|
第116期
|
建設事業 |
|
|
|
||||||
|
建築工事 |
113,968 |
798,686 |
912,655 |
|||||||
|
土木工事 |
195,459 |
89,292 |
284,751 |
|||||||
|
計 |
309,428 |
887,978 |
1,197,406 |
|||||||
|
開発事業等 |
122 |
65,024 |
65,147 |
|||||||
|
合計 |
309,551 |
953,003 |
1,262,554 |
|||||||
|
第117期
|
建設事業 |
|
|
|
||||||
|
建築工事 |
130,016 |
917,947 |
1,047,964 |
|||||||
|
土木工事 |
198,177 |
101,980 |
300,157 |
|||||||
|
計 |
328,193 |
1,019,928 |
1,348,122 |
|||||||
|
開発事業等 |
378 |
58,229 |
58,607 |
|||||||
|
合計 |
328,572 |
1,078,157 |
1,406,730 |
(注) 完成工事のうち主なものは,次のとおりである。
第116期
|
メープルツリー・ビジネス・シティ社 |
メープルツリー・ビジネス・シティ新築工事第2期 (シンガポール) |
|
|
|
|
東京団地冷蔵(株) |
東京団地冷蔵株式会社再整備事業 |
|
|
|
|
東急不動産(株) |
OCEAN GATE MINATO MIRAI 新築工事 |
|
|
|
|
松戸市 |
松戸市立総合医療センター |
|
|
|
|
国土交通省 |
宮古盛岡横断道路 手代森トンネル工事 |
第117期
|
浜松町一丁目地区市街地再開発組合 |
浜松町一丁目地区第一種市街地再開発事業に伴う 施設建築物新築工事 |
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ファナック(株) |
ファナック(株)筑波第1ロボット工場建設工事 |
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セイコーエプソン(株) |
エプソン広丘事業所 9号館新築工事 |
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国土交通省 |
宮古盛岡横断道路 平津戸トンネル工事 |
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東洋エンジニアリング(株) |
瀬戸内Kirei太陽光発電所建設工事 |
d. 次期繰越高(2019年3月31日現在)
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区分 |
官公庁(百万円) |
民間(百万円) |
合計(百万円) |
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建設事業 |
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建築工事 |
178,172 |
1,403,357 |
1,581,530 |
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土木工事 |
301,690 |
177,332 |
479,023 |
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計 |
479,863 |
1,580,690 |
2,060,553 |
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開発事業等 |
87 |
77,831 |
77,918 |
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合計 |
479,950 |
1,658,521 |
2,138,472 |
(注) 次期繰越工事のうち主なものは,次のとおりである。
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森トラスト(株) |
東京ワールドゲート新築工事 |
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東京ガス(株) |
(仮称)TGMM芝浦プロジェクトB棟Ⅱ期新築工事 |
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東日本旅客鉄道(株) |
竹芝ウォーターフロント開発計画本体工事 |
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東日本高速道路(株) |
東京外かく環状道路本線トンネル(南行)大泉南工事 |
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国土交通省 |
八ッ場ダム本体建設工事 |
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 経営成績の分析
2018年度の日本経済は,企業収益や雇用・所得環境の着実な改善を背景に,設備投資は増加基調をたどり,個人消費も底堅さを維持するなど,緩やかな回復傾向が続いた。
建設業界においては,官公庁工事で前年度に大型案件の受注があった反動がみられたが,民間建設投資は製造業を中心として堅調に推移し,業界全体の受注高は,前年度を上回る結果となった。
このような状況のもと,当社グループの売上高は,完成工事高の増加などにより,前連結会計年度に比べ9.6%増加し1兆6,649億円となった。
利益については,完成工事高の増加により完成工事総利益が増加したことから,営業利益は前連結会計年度に比べ6.9%増加し1,297億円,経常利益は7.9%増加し1,339億円,親会社株主に帰属する当期純利益は17.3%増加し996億円となった。
セグメントの業績は,以下のとおりである。(セグメントの業績については,セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載している。また,報告セグメントの利益は,連結財務諸表の作成にあたって計上した引当金の繰入額及び取崩額を含んでいない。なお,セグメント利益は,連結損益計算書の営業利益と調整を行っている。)
(当社建設事業)
当社建設事業の売上高は,前連結会計年度に比べ14.2%増加し1兆3,793億円となり,セグメント利益は,売上高の増加などにより,前連結会計年度に比べ26.4%増加し1,339億円となった。
(当社投資開発事業)
当社投資開発事業の売上高は,前連結会計年度に大型開発物件を売上計上したことの反動などにより,前連結会計年度に比べ36.6%減少し253億円となり,セグメント利益は,前連結会計年度に比べ20.2%減少し87億円となった。
(その他)
当社が営んでいるエンジニアリング事業,LCV事業及び子会社が営んでいる各種事業の売上高は,前連結会計年度に比べ7.8%増加し5,054億円となり,セグメント利益は,前連結会計年度に比べ11.1%増加し200億円となった。
② 財政状態の分析
当連結会計年度末の資産の部は,現金同等物(現金預金及び有価証券に含まれる譲渡性預金)は減少したものの,受取手形・完成工事未収入金等の増加などにより1兆8,607億円となり,前連結会計年度末に比べ798億円増加した。
当連結会計年度末の負債の部は,支払手形・工事未払金等は減少したものの,未成工事受入金の増加などにより1兆1,255億円となり,前連結会計年度末に比べ9億円増加した。連結有利子負債の残高は3,194億円となり,前連結会計年度末に比べ188億円減少した。
当連結会計年度末の純資産の部は,親会社株主に帰属する当期純利益の計上に伴う利益剰余金の増加などにより7,352億円となり,前連結会計年度末に比べ789億円増加した。また,自己資本比率は39.2%となり,前連結会計年度末に比べ2.7ポイント増加した。
③ キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度の連結キャッシュ・フローの状況については,営業活動により149億円,投資活動により526億円資金が減少し,財務活動により424億円の資金を使用した結果,現金及び現金同等物の当連結会計年度末の残高は,前連結会計年度末に比べ1,111億円減少し2,299億円となった。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは,税金等調整前当期純利益1,432億円を計上したが,売上債権の増加や仕入債務の減少などにより,149億円の資金減少となった。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは,当社における賃貸事業用資産の取得などにより526億円の資金減少となった。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは,配当金の支払や借入金の返済などにより424億円の資金減少となった。
④ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの資金需要の主なものは,建設事業における工事代金の立替金や販売費及び一般管理費などの営業活動に伴う支出,不動産開発事業における賃貸事業用資産の取得などの設備投資に伴う支出である。また,当社グループは,2019年5月に策定した「中期経営計画〈2019‐2023〉」において,建設事業での安定的な収益基盤を維持しつつ,非建設事業の着実な収益力向上を図ることを目的とし,今後5年間で生産性向上・研究開発,不動産開発事業,新規事業などに7,500億円の投資を計画している。
これらの資金需要に対し,自己資金に加え,金融機関からの借入金やノンリコース借入金などの有利子負債を活用することにより,必要資金の調達を行う方針である。
なお,財務体質の健全性を維持するため,自己資本比率を40%以上,負債資本倍率(D/Eレシオ)を0.7倍以下とすることを財務上のKPIとして設定している。
⑤ 経営方針・経営戦略,経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは,2019年5月に長期ビジョン「SHIMZ VISION 2030」及び「中期経営計画<2019‐2023>」を策定した。これらにおける経営数値目標は,「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりである。
特記事項なし。
当社グループの当連結会計年度における研究開発費は
当社は,建築・土木分野の生産性向上や品質確保のための新工法・新技術の研究開発はもとより,多様化する社会ニーズに対応するための新分野・先端技術分野や,さらに地球環境問題に寄与するための研究開発にも,幅広く積極的に取り組んでいる。技術研究所を中心とした研究開発活動は,基礎・応用研究から商品開発まで多岐にわたっており,異業種企業,公的研究機関,国内外の大学との技術交流,共同開発も積極的に推進している。
当連結会計年度における研究開発活動の主な成果は次のとおりである。
(1)生産技術・i-Construction
①「シミズ・スマート・サイト」の導入
人とロボットが協働して建設作業を行う次世代型生産システム「Shimz Smart Site(シミズ・スマート・サイト)」の建設現場への適用を開始した。初適用した新大阪の現場では,水平スライドクレーン「Exter」で資材を搬入し,水平搬送ロボット「Robo-Carrier」によって,天井ボードとエアコンユニットを20フロア分,各階50~60パレット,計1,000~1,200パレットを搬送した。また,多能工ロボット「Robo-Buddy」が,ロビーや一部の客室天井を施工した。今後,首都圏の大規模現場へ水平展開するとともに,ロボット開発を加速し,導入現場の拡大を図る。
②IoT,AI技術によるトンネル構築システム「シミズ・スマート・トンネル」の開発に着手
今後想定される熟練技能労働者の大量離職を見据え,生産性の向上と一層の安全性確保を目的として,ICT,IoT,人工知能(AI)などの最新技術を活用した次世代型トンネル構築システム「シミズ・スマート・トンネル」の開発に着手した。本システムは,ヒューマンエラーをセンシング技術でカバーする「支援的保護システム」,AI等を組み込んだ建設機械と相番作業者が協調しながら安全な協働作業を実現する「Safety2.0」のコンセプトを導入する。また,熟練工が持つ経験知を定量化し,AIによる建設機械の自動運転等を実現することで,大幅な省人化・省力化を図る。
③AIにより掘進計画を最適化する「シールド掘進計画支援システム」を開発
シールドトンネル工事の掘進計画をAIで最適化する「シールド掘進計画支援システム」を名古屋工業大学と共同で開発した。AIが試行錯誤しながら自己学習することで最適解を導く強化学習手法により,トンネル線形に応じたシールド機操作の計画値,セグメントの配置計画を導き出すことができる。トンネル掘進開始前の計画段階のみならず,施工段階における日々の掘進管理への活用も可能となる。
④振動を可視化し切羽を監視する「切羽崩落振動監視レーダーシステム」を開発
ミリ波レーダーを用いて,切羽全面をモニタリングする切羽崩落振動監視レーダーシステムを開発した。物体表面を面的に探査しながら目視では確認できない微細な振動挙動を捉えることができるミリ波レーダーによって,崩落の予兆検知が可能となる。本システムの現場適用を進めるとともに,崩落・落石現象が発生する以前の予兆条件をデジタルデータとして蓄積し,将来の無人化施工技術の構築につなげていく。
⑤山岳トンネル工事の業務を効率化する「リアルタイム遠隔立会システム」を開発
山岳トンネル工事における検査・管理業務の合理化を目指し,タブレット端末を用いたリアルタイム遠隔立会システムを開発し,現場に適用した。本システムは,建設現場の働き方改革が官民を挙げて進められている中,ICTを活用して物理的な距離を克服し,発注者・施工者双方の検査・管理業務の生産性向上を図るツールであり,発注者の検査員が現場に赴くことなく,遠隔地の端末上で施工状況の確認から記録写真・帳票類の承認に至る一連の検査プロセスを完結できる。
⑥騒音下におけるコミュニケーションツール「骨伝導ヘッドセット」を開発
トンネル内の騒音下においても,入坑者が防じんマスクや防音耳栓を着用したままの状態で円滑にコミュニケーションできる通話システム「骨伝導ヘッドセット(仮称)」を開発した。骨伝導は音声をこめかみの骨を介して聴覚神経に伝える仕組みであり,通話時に保護具の脱着が不要であるうえ,通話がトンネル内の騒音の影響を受けることがない。使用者は,マスクを着用したまま通信相手の名前を声にするだけで,音声認識AIアプリが自動的に通話相手を選定し,通話を開始できる。
⑦ICTにより工事を自動化する「ダムコンクリート自動打設システム」を開発
軌索式ケーブルクレーンを利用するダムコンクリートの打設工事を対象とした「ダムコンクリート自動打設システム」を開発した。ダム工事において総工費の約6割を占めるコンクリート打設工事における,コンクリートの製造から運搬・打設に至る一連の繰り返し作業を完全自動化できる。施工監理者が事前に作成した打設計画を入力するだけで使い始められ,リアルタイムの打設状況をタブレット端末から確認することができる。
(2)品質管理技術
①物理特性の化学的評価手法「CW-QUIC」を開発
既製杭の先端部を支持層と一体化するソイルセメントの強度を化学的に評価する技術「CW-QUIC」を開発・実用化した。ソイルセメントの強度を,セメントと水の混合比率並びにセメント含有量から求める技術であり,従来の圧縮強度試験では数日を要していた判定時間がわずか1時間程度,費用も従来試験同等であるうえ,現場で即座に確認できる。今後は既製杭を採用する全現場に展開するとともに,本技術の外部へのライセンス供与を予定している。
②既存杭の活用に不可欠な杭長診断法「コンピタ」を開発
地中に打設された基礎杭の頭部を打撃するだけで杭の全長を正確に推定できる杭長診断法「コンピタ」を開発した。近年,市街地等の建替工事においてニーズが高まっている既存杭の再利用に向けて,杭の先端が支持層に到達していることの確認は不可欠である。コンピタは,周辺地盤における表層から支持層に至る各地層の土質の影響を考慮したモデルを構築し,三次元有限要素解析で弾性波伝播速度の変化を評価することで,杭長を精度よく推定する。日本建築センターより杭長診断法として初の技術評定を取得した。
③基礎梁開孔部補強工法により基礎を合理化する「大開孔基礎梁工法」を開発
鉄筋コンクリート造の基礎梁に貫通孔を設けるための工法「大開孔基礎梁工法」を㈱鴻池組,㈱錢高組,東急建設㈱,コーリョー建販㈱と共同開発した。これまでの工法に比べて基礎梁せいを抑えることができるため,基礎部の掘削土量やコンクリート量を削減でき,コスト削減や工期短縮も見込める。日本建築総合試験所より,本工法の信頼性を認証する建築技術性能証明を取得している。
④ICTによる品質検査システム「遮水シート施工検査支援システム」を開発
廃棄物処分場などに敷設する遮水シートの品質検査結果を管理する「遮水シート施工検査支援システム」を㈱菱友システムズと共同開発・実用化した。タブレット端末とGNSS衛星測位システムによって,クラウドサーバに保存した遮水シート図面上に色別した検査済箇所と不具合箇所を見える化し,リアルタイム確認を可能とした。検査箇所の重複や検査漏れを防止するとともに,手作業で行っていた検査記録作業の効率化を図ることができる。
⑤触媒添加型ポリウレタン系止水材「NLクイック」を開発
地下のコンクリート構造物に生じた漏水を短時間かつ確実に抑える止水材「NLクイック」を,ピングラウト協議会とともに開発・実用化した。NLクイックは,加水反応型ポリウレタン樹脂に専用触媒を添加した止水材で,触媒量で反応時間を制御することができるため,漏水状況に応じた使い分けが可能となり,止水工事の生産性向上が期待できる。今後,ピングラウト協議会会員企業への展開・普及を進め,インフラ構造物の長寿命化への貢献を目指す。
(3)環境・設備技術
①CO2フリー水素の利用実証「ゼロエミッション・水素タウン連携研究室」を設立
建物や街区の低炭素化,災害に強いまちづくりを目指して,産業技術総合研究所とともに「清水建設‐産総研 ゼロエミッション・水素タウン連携研究室」を設立した。産総研の水素吸蔵合金を核とした水素貯蔵技術と当社のエネルギーマネジメント技術の融合によるイノベーションを推進し,CO2フリー水素の地産地消を狙った水素エネルギー利用システムの実証を通じて,ゼロエミッション・水素タウンの構築を目指す。
②AIによるサーバ室管理システム「SMTクラウド」を開発・事業化
サーバ室の温度環境制御をクラウドからリアルタイムで行うサービス「SMT(Smart Management Technology)クラウド」を,三谷産業㈱と共同で開発した。本サービス導入によって最大25%程度の省エネ効果が見込まれるとともに,温度環境を遠隔から見える化することで管理業務の大幅削減を実現した。また,空調制御機能の大部分をクラウドに集約しAIを活用することで,サーバ室の運用変更や空調機器更新に伴うシステム調整にも速やかに対応することができる。
③3DモデルによるZEBシミュレーションツール「ZEB Visualizer」を開発
ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)実現に向けて,施設の省エネルギー性能をシミュレーションするコンピュテーショナル・デザインツール「ZEB Visualizer」を開発・実用化した。本ツールを使うことで,従来手法では困難であった設計初期段階における性能評価指標の算出を迅速に行うことができる。設計建築物の一次エネルギー消費量を計算し,ZEBの達成度合いを確認しながら,複数のデザイン案を繰り返しシミュレーションすることで提案の最適化が可能となる。
④病院物流動線計画支援システム「サプライくん」を開発
病院内の複雑な物流動線をわかりやすく見える化する病院物流動線計画支援システム「サプライくん」を開発・実用化した。当社が培ってきた病院運営経験に基づくノウハウを活かし,医療材料,薬剤,リネンなどの物品カテゴリー別に,搬送の時間帯や頻度などをデータベース化し,標準的な院内物流方式をモデルとして初期設定することで,簡単な操作で短時間に物流動線を評価・見える化できる。今後,本技術とBIMとの連動を目指すとともに,コンサルティング業務を積極的に展開していく。
(4)新領域技術
①次世代の素材「ロジックス構造材」の産学共同研究開始
鉄筋コンクリートに代わる新素材「ロジックス構造材」の開発を目的に,北海道大学と次世代高性能材料に関する産学共同研究に着手した。コンクリートに生じるひび割れや鉄筋の腐食など,これまで解決が困難であった鉄筋コンクリート構造物の問題点を克服する新素材を開発する。2021年3月末までの第1フェーズでは,コンクリートの分子(ナノ)レベルから構造体(マクロ)レベルにいたる各レベルで生じる化学・物理現象を統合して,時間の経過とともに変化する鉄筋コンクリートの物性をシミュレーションする技術を構築し,続く第2フェーズではロジックス構造材の開発を具体化させる予定である。
②自動運転車両の安全・効率的な走行を支援する施設側システムの実証開始
完全自動運転技術を導入した施設・街区内移動システムの構築を目指し,自動運転車両の安全かつスムーズな走行を施設側からサポートする管制・監視システムを構築,システムの実効性を検証する実証実験に着手した。敷地内での自動運転の鍵となる高精度三次元マップを整備するとともに,構内建物群のBIMデータの施設情報と自動運転車両の位置,走行状態などの情報を一元管理する。今後は,車両とエレベーターの統合制御技術や,歩行者ナビゲーションシステムとの連携技術などの開発・実証実験にも取り組む。
③スリム耐火ウッドの高性能化と適用
優れた耐火性能を備えたスリムな木質柱「スリム耐火ウッド」の2時間耐火仕様について,国土交通大臣認定を取得した。スリム耐火ウッドは,競合製品より20%以上細いことを特長として菊水化学工業㈱と共同開発した。2時間耐火認定取得により,最大14階建ての建築物の木質柱として使用可能となる。あわせて,スリム耐火ウッド柱と鉄骨梁を接合した木質ハイブリッド架構「シミズハイウッド」の2時間の耐火性能も独自に実施した耐火実験により確認し,名古屋市内に建設する中層集合住宅に初適用した。
④木目調打放しコンクリートへのアート型枠の適用
1,000㎡を超える杉板型枠による木目調打放しコンクリートの施工に,東洋アルミニウム㈱と共同開発した超撥水型枠「アート型枠」を適用した。近年,ニーズが高まっている木目調コンクリートにおける施工上の課題である,コンクリート表面の気泡痕や型枠付着を,蓮の葉の表面機構を模した超撥水層によって抑制する。アート型枠の製作コストは通常に比べて増加するものの,表面仕上げ工程の大幅削減により吸収し,トータルコストは同等以下となることを確認した。