以下「第2 事業の状況」に記載している金額には,消費税等は含まれていない。
文中の将来に関する事項は,当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
(1) シミズグループの中長期的な経営方針
当社は,1887年に相談役としてお迎えした渋沢栄一翁の教えである道徳と経済の合一を旨とする「論語と算盤」を「社是」とし,この考え方を基に,「真摯な姿勢と絶えざる革新志向により,社会の期待を超える価値を創造し,持続可能な未来づくりに貢献する」ことを「経営理念」として定めている。
2019年5月,当社は,2030年を見据えたシミズグループの長期ビジョン「SHIMZ VISION 2030」と,当面5年間の基本方針と重点戦略を取りまとめた「中期経営計画〈2019‐2023〉」を策定した。
「SHIMZ VISION 2030」
■目指す姿『スマート イノベーション カンパニー』
建設事業の枠を超えた不断の自己変革と挑戦,多様なパートナーとの共創を通じて,時代を先取りする価値を創造(スマート イノベーション)し,人々が豊かさと幸福を実感できる,持続可能な未来社会の実現に貢献する。
■シミズグループが社会に提供する価値
イノベーションを通じた価値の提供により,SDGsの達成に貢献する。
①安全・安心でレジリエント※1な社会の実現
地震や巨大台風,豪雨などの自然災害リスクが高まる中,生活と事業を災害から守ることが求められている。強靭な建物・インフラの構築を通じて,安全・安心でレジリエントな社会の実現に貢献していく。
・強靭な社会インフラの構築
・建物・インフラの長寿命化
・防災・減災技術の普及
・ecoBCP※2の普及
※1 レジリエント:強くしなやかで復元力がある
※2 ecoBCP:平常時の節電・省エネ(eco)対策と非常時の事業継続(BCP)
対策を両立する施設・まちづくり
②健康・快適に暮らせるインクルーシブ※な社会の実現
高齢化や人口減少,都市化などの急速な社会変化が進む中,誰もが安心して快適に暮らせる社会が求められている。人に優しい施設やまちづくりを通じて,健康・快適に暮らせるインクルーシブな社会の実現に貢献していく。
・ICTを活用したまちづくり
・ユニバーサルデザインの普及
・well-beingの提供
・人類の活躍フィールドの拡大(海洋,宇宙へ)
※ インクルーシブ:すべての人が社会の一員として参加できる
③地球環境に配慮したサステナブル※な社会の実現
地球温暖化や森林破壊,海洋汚染などが深刻化する中,次世代に豊かな地球を残すことが求められている。環境負荷低減を目指す企業活動を通じて,地球環境に配慮したサステナブルな社会の実現に貢献していく。
・再生可能エネルギーの普及
・省エネ・創エネ,ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)化の推進
・事業活動におけるCO2排出量削減
・自然環境と生物多様性の保全
※ サステナブル:地球環境を保全しつつ持続的発展が可能な
■ビジョンの達成に向けて
3つのイノベーションの融合により,新たな価値を創造するスマート イノベーション カンパニーを目指す。
①事業構造のイノベーション
ビジネスモデルの多様化とグローバル展開の加速,及び,グループ経営力の向上
②技術のイノベーション
建設事業の一層の強化に向けた生産技術の革新と未来社会のメガトレンドに応える先端技術の開発
③人財のイノベーション
多様な人財が活躍できる“働き方改革”の推進と社外人財との“共創”による「知」の集積
■目指す収益構造
スマート イノベーション カンパニーへの進化により,2030年度に連結経常利益2,000億円以上を目指す。
連結売上利益の構成は,事業別では,建設65%,非建設35%,地域別では,国内75%,海外25%を想定している。
「中期経営計画〈2019‐2023〉」
■中期経営計画の位置付け
企業価値の持続的成長を目指し,外部環境の変化に機敏に対応しつつ,利益水準を維持するとともに,この5年間を新たな収益基盤の確立に向けた先行投資期間として位置付けている。
■基本方針
建設事業の深耕・進化と,非建設事業の収益基盤確立及び成長を支える経営基盤の強化を図り,グローバル展開の加速とESG経営の推進により,シミズグループの企業価値向上を実現し,SDGsの達成に貢献する。
■経営数値目標(連結ベース)
建設事業での安定的な収益基盤を維持しつつ,非建設事業の着実な収益力向上により中長期的に収益構造を強化し,グループの持続的成長を実現する。
非建設事業の成長に資する投資を着実に実施しつつ,財務体質の健全性を維持する。
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(単位:億円) |
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中期経営計画〈2019‐2023〉 |
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2023年度 目標 |
財務KPI |
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総売上高 |
18,800 |
ROE 10%以上 自己資本比率 40%以上 負債資本倍率 0.7倍以下 (D/Eレシオ) 配当性向 30%程度 |
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建設事業 |
15,500 |
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非建設事業 |
3,300 |
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売上利益 |
2,350 |
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建設事業 |
1,850 |
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非建設事業 |
500 |
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経常利益 |
1,400 |
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■資本政策
①政策保有株式の縮減
・政策保有株式の縮減を段階的に進め,資本の有効活用を図る。
・売却代金の一部を原資として自己株式を取得し,成長戦略の実現に向けた機動的な資本政策を実施する。
②株主還元の拡充
・長期的発展の礎となる財務体質の強化と安定配当(普通配当)の維持を基本方針としつつ,成長により稼得した利益を,連結配当性向30%を目安に還元する。
■投資計画
長期ビジョン達成に向けた新たな収益基盤確立のため,5年間で7,500億円の投資を実施する。
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項目 |
投資額(5ヶ年) |
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生産性向上・研究開発投資 |
1,000億円 |
・建設生産システムの進化(ロボット等) ・研究開発拠点の拡充 ・デジタル関連投資 他 |
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不動産開発事業 |
5,000億円 |
・国内開発事業・賃貸資産の拡充 ・海外事業の拡大(ASEAN・北米等)他 新規投資額 5,000億円 売却による回収 ▲1,000億円 NET投資額 4,000億円 |
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インフラ・再生可能エネルギー 新規事業(フロンティア事業他) |
1,300億円 |
・インフラ運営・BSP事業 ・再生可能エネルギー関連事業 ・宇宙・海洋・自然共生事業 ・次世代ベンチャー投資 他 |
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人財関連 |
200億円 |
・高度プロフェッショナル人財 ・グローバル化・制度改革 他 |
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5ヶ年投資額 合計 |
7,500億円 |
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■非財務KPI
建設事業における労働生産性を向上させるとともに,ESGの観点から企業価値の向上を図り,SDGsの達成に貢献する。
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主要KPI |
2023年度目標 |
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生産性向上 |
建設事業における生産性(2016年度比) 向上率 |
20%以上 |
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環境(E) |
建設事業におけるCO2排出量(2017年度比)削減率※1 |
10%以上 |
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社会(S) |
働きがい指標※2 |
4.0以上 |
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ガバナンス(G) |
重大な法令違反件数 |
0件 |
※1 当社エコロジー・ミッション2030‐2050活動に対応する目標
※2 当社従業員意識調査による指標(5段階評価の平均)
■ESG経営の推進
シミズグループは,ESG経営を推進し,事業活動を通じた社会的責任を果たすことで,ステークホルダーからの信頼を高めるとともに,中長期的な企業価値向上と持続的な成長を目指す。
E(環境):持続可能な地球環境への貢献
・CO2削減の中長期目標「エコロジー・ミッション2030‐2050」の着実な推進
・生物多様性の保全・指標化に向けた取組み
・限りある地球資源の有効活用と廃棄物削減に向けた取組み
S(社会):すべてのステークホルダーとの「共生」
・自然災害に対し,サプライチェーンと一体のBCP対応で,顧客・社会へ“安全・安心”を提供
・お客様の期待を超える価値の提供による顧客満足の獲得
・人権尊重の徹底と「働き方改革」によるサプライチェーンを含む労働環境の整備
・良き企業市民として地域社会と共生し,社会課題の解決に貢献
G(ガバナンス):コンプライアンスの徹底とリスクマネジメントの強化
・社是「論語と算盤」に基づく企業倫理の浸透とコンプライアンスの徹底
・リスクマネジメントの徹底(投資リスク,地政学的リスク,自然災害リスク 等)
・公正で透明な企業活動の実践
・すべてのステークホルダーへの的確な情報開示と対話の促進によるガバナンスの向上
具体的な取組み
E(環境)
[持続可能性に配慮した調達]
有明体操競技場に国産木材を約2,300㎥使用
森林の持続可能性を確保するためには,原材料調達,製造,流通,使用,廃棄に至るまでのライフサイクル全体を通じて,環境負荷の最小化を図るとともに,人権・労働など社会問題にも配慮することが必要である。
当社が施工を担当した東京都江東区の有明体操競技場では「持続可能性に配慮した調達コード」に基づき,大屋根に国産のカラマツ,外装と観客席に国産のスギを合計約2,300㎥使用している。東京2020オリンピック・パラリンピックのために新設された競技施設としては,最大の国産木材使用量である。
E(環境)
[気候変動への対応]
TCFD※提言への賛同表明と気候関連情報の開示
気候変動対策は,持続可能な地球環境のため最優先で取り組むべき事項のひとつである。シミズグループでは,地球温暖化防止に向けて,CО2排出量削減の中長期目標「エコロジー・ミッション2030‐2050」を推進している。また,気候変動を重要な経営課題と捉えて,事業に及ぼすリスクと機会の分析を行い,経営に反映させている。
当社は,2019年10月にはTCFD提言への賛同を表明,「TCFDコンソーシアム」にも参画している。取締役会において,気候変動への対応を報告するとともに,TCFD提言に沿った気候関連の情報の開示を行っている。
※TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース):
2015年に金融安定理事会により設置された組織。金融市場の安定化を図ることを目的に,企業等に対して気候変動リスク及び機会の財務的影響の把握と情報開示を促している。
S(社会)
[地方創生の取組み]
岐阜県立森林文化アカデミーと連携協定を締結
地域社会が持続的な社会を創生することを目指す「地方創生」の達成のためには,企業との連携が有効な手段である。当社では,地域社会が抱える社会的課題解決に向けて,地域社会と連携した様々な取組みを進めている。
2019年8月,当社は,地域循環型社会の実現を目的に岐阜県立森林文化アカデミーと連携協定を締結し,森林と木に関する人財の育成,森林・林業・木材産業の振興及び社会基盤としての森林の公益的機能維持等に協力している。
G(ガバナンス)
[ステークホルダーへの情報開示]
ESGアナリストを対象とした「SDGs・ESG説明会」を開催
当社では,企業の持続的成長と価値向上のため,株主,機関投資家,金融アナリストとの対話及び情報開示を重要視している。
2019年10月に,ESGアナリストを対象とした「SDGs・ESG説明会」を初めて開催し,シミズグループのイノベーションを通じた価値の提供によるSDGsの達成に向けた事業について説明を行った。今後も当社の事業戦略や経営環境について,様々な対話及び情報開示を積極的に行っていく。
(2) 対処すべき課題
■新型コロナウイルス感染拡大を受けた当社グループの対応について
当社では,2020年1月下旬以降の新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大を受けて,社長を本部長とする対策組織を立ち上げ,全社を挙げて感染拡大防止策を推進している。作業所においては関係省庁の要請を勘案し,除菌消毒と「三つの密」回避の徹底を図り,また内勤においてもテレワークの励行による出社人数の絞り込みや出張自粛などにより,人と人との接触を極力減らす施策に全力で取り組んでいる。
当社は,2020年4月に政府から発出された緊急事態宣言を受けて,当社グループ及び協力会社社員の生命・安全を最優先事項と考え,またこの感染症の拡大防止策の一層の強化を図るため,当初対象となった7都府県及び追加で指定された6道府県を加えた13の特定警戒都道府県に所在する当社作業所について,原則として閉所する方針とした。
2020年5月,政府による緊急事態宣言は解除されたものの,新型コロナウイルス感染症の沈静化の時期は見通せない状況にある中で,当社は,建設業における雇用の確保など経済活動の維持のために工事を進めることも重要であると判断し,工事を再開することとした。作業所においては,感染防止対策を一層強化・徹底するための,関係省庁のガイドライン及び当社が設定した安全ルールを順守し,関係先と協議のうえ,管理体制が整った作業所から,順次工事を再開している。
新型コロナウイルス感染症は収束まで長期間を要することが想定されており,将来に対する不確実性が世界的に拡がる中で,建設事業においては,感染防止対策に伴う建設コストの増加や工期遅延等による工事損益の悪化,不動産市況・設備投資動向等の外部環境の変化による受注高の減少等が懸念されるなど,当社グループを取り巻く経営環境は非常に厳しい状況となることが想定される。当社は,新型コロナウイルスに関する状況の推移を注視しながら,感染防止対策に最善を尽くすとともに,事業の継続及び業績に与える影響を最小限度に留めるべく,グループを挙げて,着実に事業活動を遂行していく。
■独占禁止法違反事件に対する再発防止策の実施状況について
当社は,東海旅客鉄道㈱発注の中央新幹線建設工事における独占禁止法違反事件に関し,2018年10月に有罪判決を受け,建設業法の規定に基づき,2019年2月2日~同年6月1日の間,営業停止処分を受けた。再発防止策については,2018年3月から継続して実施している。
当事業年度における再発防止策の実施状況は,以下のとおりである。
再発防止策の実施状況
①経営トップが率先して倫理意識の涵養とコンプライアンスの徹底を図る
a.経営幹部向け企業倫理研修(各回約300名の役員・幹部社員,延べ約900名が受講)
・守屋淳氏「ビジネスにおける 論語と算盤の実践」
・田口佳史氏「渋沢栄一と論語」
・川合竜太弁護士「近時の独占禁止法等の実務」
b.「論語と算盤」eラーニング研修
・全従業員約10,000名及び子会社の役職員4,200名が受講
c.社内報及び社内イントラネットによる啓発
・渋沢史料館 館長による「論語と算盤」についての連載コラム(7回)
②行動規準の周知徹底
・外部弁護士による研修と意見交換(土木担当役員,営業担当役員及び支店幹部を対象)
・法務部による研修・支店幹部ヒアリング
③特定プロジェクトに対するコンプライアンスチェックの強化
・競争制限行為を誘引するリスクが高いと判断する案件を特定(建築・土木合わせて約70案件が指定され,毎月案件の進捗に従い見直しを実施)
・同案件に関する営業役員,部署長,営業担当者へのヒアリング・チェック(2019年度は累計約280案件を実施)
・必要に応じて,外部弁護士によるヒアリングも実施(2019年度 7案件)
④再発防止策の実施状況についての弁護士による評価
・2020年4月に,外部弁護士による評価を行った結果,「独占禁止法の順守に真摯に取り組んでいることが窺え,その姿勢は十分な評価に値する。」との結論を得た。
この評価は今後も定期的に行う。
当社グループは,事業活動の遂行において直面し,あるいは事業活動の中で発生し得るさまざまなリスクを認識し,的確な管理を行うことによって,その発生の可能性を低下させるとともに,発生した場合の損失を最小限にとどめることにより,事業の継続的・安定的発展の確保に努めている。中期経営計画〈2019‐2023〉においても,基本方針において「ESG経営の推進」を掲げ,「コンプライアンスの徹底とリスクマネジメントの強化」を重要施策の一つとしている。
なお,リスクとは,以下の観点から,当社グループの経営において経営目標の達成を阻害する要因すべてを指す。
・当社グループに直接又は間接に経済的損失をもたらす可能性のあるもの
・当社グループ事業の継続を中断・停止させる可能性のあるもの
・当社グループの信用を毀損し,ブランドイメージを失墜させる可能性のあるもの
当社は,リスク管理規程に基づき,社長が委員長を務めるリスク管理委員会において,毎年度,全社の「重点リスク管理項目」を定めて各部門の運営計画に反映させており,当該項目には,法令違反リスクや安全・環境・品質に関するリスク等のESG要素も含まれている。同委員会は,本社部門,各事業部門及びグループ会社における機能別のリスク管理状況を定期的(年2回)にモニタリングし,必要に応じて是正・改善措置を指示するとともに,新たなリスクへの対応を図り,その対応状況を取締役会に定期的(年2回)に報告している。
有価証券報告書に記載した事業の状況,経理の状況等に関する事項のうち,経営者が当社グループの財政状態,経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクには,次のようなものがある。但し,当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく,現時点で予見しがたいリスクが顕在化し,投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある。
なお,文中の将来に関する事項は,当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
当社グループは,こうしたリスク管理体制のもと,下記に掲げる対応策を適宜実施することにより,リスクの回避又は軽減を図ることで,経営への影響の低減に努めている。
(1)主に外部環境の変化に伴うリスク
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主なリスクの概要 |
主な対応策・取り組み |
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① |
建設市場の縮小リスク 国内外の景気後退等により民間設備投資が縮小した場合や,財政健全化等を目的として公共投資が減少した場合には,今後の受注動向に影響を及ぼす可能性がある。 |
取締役会で,建設事業の受注見通し,案件量を毎月フォローし,執行役員会議・事業部門長会議等において適宜必要な対策を指示している。 2030年を見据えた長期ビジョン「SHIMZ VISION 2030」において非建設事業の拡充による収益構造の転換を掲げ,中期経営計画〈2019‐2023〉によって事業推進している。 |
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② |
建設資材価格及び労務単価の変動リスク 建設資材価格や労務単価等が,請負契約締結後に予想を超えて大幅に上昇し,それを請負金額に反映することが困難な場合には,建設コストの増加につながり,損益が悪化する可能性がある。 |
工事請負契約の締結にあたって,原則として労務賃金・建設物価の変動に基づく請負代金の変更に関する規定(スライド条項等)を採用するよう,発注者との協議に努めている。 |
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③ |
取引先の信用リスク 発注者,協力会社,共同施工会社などの取引先が信用不安に陥った場合には,資金の回収不能や施工遅延などの事態が発生する可能性がある。 |
取引先の与信審査体制の強化と継続的なモニタリングを行うとともに,当社グループの債権保全が可能な契約の締結に努めている。 |
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④ |
海外事業リスク 海外での事業を展開するうえで,進出国での政治・経済情勢,為替,租税制度や法的規制等に著しい変化が生じた場合や,テロ・戦争・暴動等の発生,資材価格の高騰及び労務単価の著しい上昇や労務需給のひっ迫があった場合には,工事の進捗や工事利益の確保に影響を及ぼす可能性がある。 |
海外事業展開にあたって,事業機会とともにカントリーリスク等も踏まえて地域や国を絞り込み,必要な対策を図っている。 (主な取り組み) ・海外大型案件取り組み時の審査体制の強化 ・契約リスク管理部署の設置 ・コンサルの活用等によるテロ対策の実施 ・腐敗防止の取り組み |
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⑤ |
投資開発事業リスク 景気の減速による不動産市況の低迷や不動産ファンド等の破綻など,投資開発分野の事業環境に著しい変化が生じた場合には,業績に影響を及ぼす可能性がある。 |
企業体力に見合ったリスクの範囲内で事業を行うよう投資枠を設定し,個別案件の取り組みにおいては,投資取組基準に基づき,出口戦略(投資の回収計画)も含めて計画的に投資を行っている。 取締役会で投資開発事業の進捗状況,投資残高,事業ポートフォリオ,時価評価を定期的にフォローし,必要な対策を図っている。 |
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主なリスクの概要 |
主な対応策・取り組み |
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⑥ |
長期にわたる事業におけるリスク PFI事業,再生可能エネルギー事業等の長期にわたる事業において,諸物価や人件費,金利等の上昇など,事業環境に著しい変化が生じた場合には,業績に影響を及ぼす可能性がある。 |
取締役会でPFI事業,再生可能エネルギー事業等の進捗状況を定期的にフォローし,必要な対策を図っている。
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⑦ |
投資有価証券の価格変動リスク 投資有価証券の時価が著しく下落した場合には,業績に影響を及ぼす可能性がある。 |
毎年,個別銘柄ごとに,株式保有に伴うコストやリスク,営業上の便益等の経済合理性を総合的に勘案のうえ,保有意義を見直し,取締役会にて,保有の適否を検証している。 |
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⑧ |
金利水準・為替相場の変動リスク 金利水準の急激な上昇,為替相場の大幅な変動等が生じた場合には,業績に影響を及ぼす可能性がある。 |
金融相場変動リスク管理規程に従い,リスク管理を行っている。 (主な取り組み) ・固定金利による資金調達,金利スワップによる金利固定化による金利変動リスクの低減 ・為替予約,通貨スワップ,現地通貨による資金調達,外貨持高の調整による為替相場変動リスクの低減 |
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⑨ |
自然災害・感染症リスク 地震,津波,風水害等の自然災害や,感染症の世界的流行が発生した場合は,当社グループが保有する資産や従業員に直接被害が及び,事業活動に影響を及ぼす可能性がある。 災害規模が大きな場合には,受注動向の変化・建設資材価格の高騰・電力エネルギー供給能力の低下等で事業環境が変化し,業績に影響を及ぼす可能性がある。 |
BCP推進委員会を設置し,BCPの継続的見直しや訓練計画の決定及び実施状況のフォローを行っている。 (主な取り組み) ・首都直下地震,南海トラフ地震等の巨大地震を想定した震災訓練,BCP訓練の定期的な実施(本社機能不全を想定した訓練を含む) ・災害時情報共有システムの整備 ・非常用備蓄品の拡充 ・データセンターのバックアップ体制の構築 ・新型コロナウイルス感染拡大に伴う感染予防・拡大防止策として,全従業員の体調確認(検温実施),テレワーク・スライド勤務の励行,出張自粛,社会的距離を確保した執務環境の整備等,人と人との接触を極力減らす施策を実施している。 ・加えて感染症が蔓延する中で,地震等災害が発生した場合の対応訓練を計画中 |
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主なリスクの概要 |
主な対応策・取り組み |
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⑩ |
サイバーリスク 標的型メールやマルウェアによるウイルス感染,不正アクセス等のサイバー攻撃の被害にあった場合,事業活動や企業評価に影響を及ぼす可能性がある。 |
(主な取り組み) ・従業員対象の標的型メール訓練の実施 ・社外公開サーバーの脆弱性診断 ・外部委託によるウイルスの常時監視 ・未知のマルウェア対策の実施 |
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⑪ |
法令の新設・改廃等に係るリスク 社会や時代の変化により,新たな法規制の制定や法令の改廃等があった場合には,業績や企業評価に影響を及ぼす可能性がある。 |
事業活動に影響を及ぼす法令の新設・改廃等について適切に対応するため,関連規程・規則を整備し,各種会議体・イントラネット等を用いた社内周知,社内教育・研修(eラーニングを含む)を実施している。 |
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⑫ |
長期的な気候変動リスク 低炭素・脱炭素社会への移行に向けて,住宅・建築物の新築時の各種規制や炭素税の導入がなされた場合,また気候変動の物理的影響として,平均気温の上昇や気象災害が頻発・激甚化した場合,事業活動及び業績に影響を及ぼす可能性がある。 |
2019年10月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明し,気候変動に関するリスクと機会を分析するとともに,気候変動への対策を図っている。 (主な取り組み) ・2030年を見据えた長期ビジョン「SHIMZ VISION 2030」において「地球環境に配慮したサステナブルな社会の実現」への貢献を目指す。 ・地球温暖化防止を含む「環境基本方針」を制定 ・2018年に,企業が環境大臣に対し自らの環境保全に対する取り組みを約束する「エコ・ファースト制度」の認定を取得(地球温暖化対策を含む) ・CO2排出量削減の中長期目標「エコロジー・ミッション2030‐2050」の推進 ・SDGs・ESG推進委員会(委員長:社長)を設置し,地球環境問題に関する基本的な方針の策定及び施策を審議・決定 ・取締役会による気候変動関連のリスクと機会の認識と事業戦略との整合性確認 |
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⑬ |
退職給付債務に関わるリスク 年金資産の時価の下落及び割引率など退職給付債務の数理計算上の前提を変更する必要が生じた場合,業績に影響を及ぼす可能性がある。 |
年金資産運用委員会を設置し,資産運用実績や財政決算シミュレーション等について審議を行い,年金資産運用に関する基本方針並びに政策的資産構成割合の見直し・改定を実施するとともに,委託先の運用機関による運用状況について適切なモニタリングを行い,毎年,取締役会に報告している。 |
(2)主に業界特性・組織内部に起因するリスク
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主なリスクの概要 |
主な対応策・取り組み |
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① |
重大事故や契約不適合等のリスク 設計,施工段階における技術・品質面での重大事故・不具合や人身事故が発生し,その修復に多大な費用負担や施工遅延が生じたり,重大な契約不適合となった場合には,業績や企業評価に影響を及ぼす可能性がある。 |
「安全第一」「人命尊重」「顧客第一」「品質確保」の事業姿勢を社内で共有し,安全と品質への意識向上を図っている。 (主な取り組み) ・技術・品質委員会,安全委員会の設置 ・建設業労働安全衛生マネジメントシステム(COHSMS)の運用,安全衛生管理基本方針の制定,全社安全衛生計画の策定 ・QMS(品質マネジメントシステム)の実施,品質方針の策定,CS(顧客満足)推進活動の実施 ・事故・不具合事例のフィードバック,全社水平展開,PDCAの実施 |
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② |
個人情報・機密情報漏洩リスク 事業活動において取得した個人情報,機密情報が漏洩した場合には,業績や企業評価に影響を及ぼす可能性がある。 |
「プライバシー・ポリシー」の制定や個人情報保護規程等の整備,全社個人情報保護管理責任者の設置により,個人情報の適切な管理を実施するとともに,情報セキュリティリスクに対応するため,各種取り組みを実施している。 (主な取り組み) ・「情報セキュリティガイドライン」の適宜見直し ・「情報セキュリティハンドブック」の配布,ポスター掲載による啓発 ・情報セキュリティeラーニング,情報セキュリティ監査の定期的実施 ・日本シーサート協議会への加盟とCSIRT体制によるインシデント対応 |
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主なリスクの概要 |
主な対応策・取り組み |
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③ |
法令違反リスク 当社グループの主な事業分野である建設業界は,建設業法,建築基準法,宅地建物取引業法,国土利用計画法,都市計画法,独占禁止法,さらには安全・環境,労働,ハラスメント関連の法令等,さまざまな法的規制を受けており,当社グループにおいて違法な行為があった場合には,業績や企業評価に影響を及ぼす可能性がある。 |
社是「論語と算盤」を拳拳服膺し,グループ全体で倫理意識の涵養とコンプライアンスの徹底を図っている。 (主な取り組み) ・「企業倫理行動規範」の制定 ・各種法令等に適切に対応するための関連規程類・社内体制の整備 ・企業倫理委員会(委員長:社長),企業倫理室の設置,内部通報制度(相談連絡先:企業倫理相談室,カウンセラー,外部相談窓口),内部監査体制の整備等,コンプライアンス推進体制の構築 ・経営幹部向け企業倫理研修の定期的実施 (グループ会社幹部含む) ・全従業員へのコンプライアンス研修(eラーニング含む)を毎年実施 ・独占禁止法順守プログラムや行動規準等の整備,独占禁止法違反行為に対する再発防止策の継続実施 ・社内媒体(社内報・法務ニュース等)を通じた啓発 ・グループ会社も当社に準じてこれらの取り組みを実施 |
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④ |
中長期的な担い手不足リスク 建設業の担い手である技能労働者の高齢化が進んでおり,団塊世代が大量離職するまでに,新規入職者の増加による世代交代が進まない場合,生産体制に支障をきたし,事業活動や業績に影響を及ぼす可能性がある。 |
官民連携のうえ,担い手の処遇改善,建設業界の魅力向上等に取り組んでいる。 (主な取り組み) ・適正な利益と工期の確保 ・協力会社を通じた技能労働者の賃金水準の向上,社会保険加入促進 ・週休二日推進 ・協力会社への入職支援,優良技能者の表彰・手当支給,多能工化支援 ・女性の活躍推進 ・建設業の魅力をPRする広報活動 ・建設キャリアアップシステムの展開 ・省人化工法・建設ロボットの開発・採用,ICTの活用を含む生産性向上の取り組み |
(1) 経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況
当連結会計年度の売上高は,前連結会計年度に比べ2.0%増加し1兆6,982億円となった。
利益については,営業利益は前連結会計年度に比べ3.2%増加し1,338億円,経常利益は3.0%増加し1,379億円,親会社株主に帰属する当期純利益は0.7%減少し989億円となった。
セグメントの業績は,以下のとおりである。(セグメントの業績については,セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載している。また,報告セグメントの利益は,連結財務諸表の作成にあたって計上した引当金の繰入額及び取崩額を含んでいない。なお,セグメント利益は,連結損益計算書の営業利益と調整を行っている。)
(当社建設事業)
当社建設事業の売上高は,前連結会計年度に比べ2.1%増加し1兆4,080億円となり,セグメント利益は,前連結会計年度に比べ8.4%増加し1,451億円となった。
(当社投資開発事業)
当社投資開発事業の売上高は,前連結会計年度に比べ33.7%増加し338億円となり,セグメント利益は,前連結会計年度に比べ17.8%増加し103億円となった。
(その他)
当社が営んでいるエンジニアリング事業,LCV事業及び子会社が営んでいる各種事業の売上高は,前連結会計年度に比べ2.9%増加し5,201億円となり,セグメント利益は,前連結会計年度に比べ11.3%増加し223億円となった。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度の連結キャッシュ・フローの状況については,投資活動により1,157億円資金が減少したが(前連結会計年度は526億円の資金減少),営業活動により1,705億円資金が増加し(前連結会計年度は149億円の資金減少),財務活動により687億円の資金が増加した結果(前連結会計年度は424億円の資金減少),現金及び現金同等物の当連結会計年度末の残高は,前連結会計年度末に比べ1,227億円増加し,3,527億円となった。
③ 生産,受注及び販売の状況
当社グループが営んでいる事業の大部分を占める建設事業及び開発事業では,「生産」を定義することが困難であり,また,子会社が営んでいる事業には,「受注」生産形態をとっていない事業もあるため,当該事業においては生産実績及び受注実績を示すことはできない。
また,当社グループの主な事業である建設事業では,請負形態をとっているので,「販売」という概念には適合しないため,販売実績を示すことはできない。
このため,「生産,受注及び販売の状況」については,記載可能な項目を「① 経営成績の状況」においてセグメントの業績に関連付けて記載している。
なお,参考のため当社単体の事業の状況は次のとおりである。
a. 受注(契約)高,売上高,及び次期繰越高
|
期別 |
種類別 |
前期 繰越高 (百万円) |
当期 受注(契約)高 (百万円) |
計 (百万円) |
当期 売上高 (百万円) |
次期 繰越高 (百万円) |
||||||
|
第117期
|
建設事業 |
|
|
|
|
|
||||||
|
建築工事 |
1,287,422 |
1,342,071 |
2,629,494 |
1,047,964 |
1,581,530 |
|||||||
|
土木工事 |
493,041 |
286,140 |
779,181 |
300,157 |
479,023 |
|||||||
|
計 |
1,780,464 |
1,628,211 |
3,408,675 |
1,348,122 |
2,060,553 |
|||||||
|
開発事業等 |
39,281 |
97,245 |
136,526 |
58,607 |
77,918 |
|||||||
|
合計 |
1,819,746 |
1,725,456 |
3,545,202 |
1,406,730 |
2,138,472 |
|||||||
|
第118期
|
建設事業 |
|
|
|
|
|
||||||
|
建築工事 |
1,581,530 |
907,799 |
2,489,330 |
1,073,463 |
1,415,866 |
|||||||
|
土木工事 |
479,023 |
286,981 |
766,005 |
283,251 |
482,753 |
|||||||
|
計 |
2,060,553 |
1,194,781 |
3,255,335 |
1,356,715 |
1,898,620 |
|||||||
|
開発事業等 |
77,918 |
79,622 |
157,541 |
60,889 |
96,651 |
|||||||
|
合計 |
2,138,472 |
1,274,404 |
3,412,876 |
1,417,604 |
1,995,272 |
(注) 1 前期以前に受注したもので,契約の更改により請負金額に変更のあるものについては,当期受注(契約)
高にその増減額を含む。したがって当期売上高にもかかる増減額が含まれる。
2 開発事業等は,投資開発事業,エンジニアリング事業及びLCV事業等である。
b. 受注工事高の受注方法別比率
工事の受注方法は,特命と競争に大別される。
|
期別 |
区分 |
特命(%) |
競争(%) |
計(%) |
|
|
第117期 |
(自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) |
建築工事 |
32.5 |
67.5 |
100 |
|
土木工事 |
20.0 |
80.0 |
100 |
||
|
第118期 |
(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) |
建築工事 |
50.9 |
49.1 |
100 |
|
土木工事 |
14.9 |
85.1 |
100 |
||
(注) 百分比は請負金額比である。
c. 売上高
|
期別 |
区分 |
官公庁(百万円) |
民間(百万円) |
合計(百万円) |
||||||
|
第117期
|
建設事業 |
|
|
|
||||||
|
建築工事 |
130,016 |
917,947 |
1,047,964 |
|||||||
|
土木工事 |
198,177 |
101,980 |
300,157 |
|||||||
|
計 |
328,193 |
1,019,928 |
1,348,122 |
|||||||
|
開発事業等 |
378 |
58,229 |
58,607 |
|||||||
|
合計 |
328,572 |
1,078,157 |
1,406,730 |
|||||||
|
第118期
|
建設事業 |
|
|
|
||||||
|
建築工事 |
130,307 |
943,156 |
1,073,463 |
|||||||
|
土木工事 |
182,237 |
101,014 |
283,251 |
|||||||
|
計 |
312,544 |
1,044,170 |
1,356,715 |
|||||||
|
開発事業等 |
300 |
60,588 |
60,889 |
|||||||
|
合計 |
312,845 |
1,104,759 |
1,417,604 |
(注) 完成工事のうち主なものは,次のとおりである。
第117期
|
浜松町一丁目地区市街地再開発組合 |
浜松町一丁目地区第一種市街地再開発事業に伴う 施設建築物新築工事 |
|
|
|
|
ファナック(株) |
ファナック(株)筑波第1ロボット工場建設工事 |
|
|
|
|
セイコーエプソン(株) |
エプソン広丘事業所 9号館新築工事 |
|
|
|
|
国土交通省 |
宮古盛岡横断道路 平津戸トンネル工事 |
|
|
|
|
東洋エンジニアリング(株) |
瀬戸内Kirei太陽光発電所建設工事 |
第118期
|
森トラスト(株) |
東京ワールドゲート 神谷町トラストタワー 新築工事 |
|
|
|
|
キオクシア(株) |
キオクシア岩手株式会社 510棟(CR棟) 新築建築工事 |
|
|
|
|
道玄坂一丁目駅前地区市街地 再開発組合 |
道玄坂一丁目駅前地区第一種市街地再開発事業 施設建築物新築工事(渋谷フクラス) |
|
|
|
|
東日本高速道路(株) |
東京外環自動車道 大和田工事 |
|
|
|
|
国土交通省 |
八ッ場ダム本体建設工事 |
d. 次期繰越高(2020年3月31日現在)
|
区分 |
官公庁(百万円) |
民間(百万円) |
合計(百万円) |
|
建設事業 |
|
|
|
|
建築工事 |
200,871 |
1,214,995 |
1,415,866 |
|
土木工事 |
311,544 |
171,209 |
482,753 |
|
計 |
512,416 |
1,386,204 |
1,898,620 |
|
開発事業等 |
14 |
96,636 |
96,651 |
|
合計 |
512,431 |
1,482,841 |
1,995,272 |
(注) 次期繰越工事のうち主なものは,次のとおりである。
|
虎ノ門・麻布台地区市街地 再開発組合 |
虎ノ門・麻布台地区第一種市街地再開発事業に係る A街区・B-2街区施設建築物等新築建築工事 |
|
|
|
|
東京ガス(株) |
(仮称)TGMM芝浦プロジェクトB棟Ⅱ期新築工事 |
|
|
|
|
勝どき東地区市街地再開発組合 |
勝どき東地区第一種市街地再開発事業施設建築物 A2地区新築工事 |
|
|
|
|
東日本高速道路(株) |
東京外かく環状道路本線トンネル(南行)大泉南工事 |
|
|
|
|
国土交通省 |
東京国際空港際内トンネル他築造等工事 |
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 経営成績の分析
2019年度の日本経済は,企業収益や雇用・所得環境の着実な改善を背景に緩やかな回復傾向が続いたものの,2020年1月下旬以降は新型コロナウイルス感染症の世界経済への影響が懸念されるなど,先行きが不透明な状況となった。
建設業界においては,官公庁工事で前年度に大型案件の受注があった反動や,民間工事で消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられ,業界全体の受注高は前年度を下回る水準で推移した。
このような状況のもと,当社グループの売上高は,完成工事高及び開発事業等売上高の増加により,前連結会計年度に比べ2.0%増加し1兆6,982億円となった。
利益については,国内建築及び国内土木工事の工事採算の改善などにより完成工事総利益が増加したことに加え,開発物件の売却による開発事業等総利益の増加などにより,営業利益は前連結会計年度に比べ3.2%増加し1,338億円,経常利益は前連結会計年度に比べ3.0%増加し1,379億円となった。親会社株主に帰属する当期純利益は,固定資産の減損損失などを特別損失に計上したことから,0.7%減少し989億円となった。
セグメントの業績は,以下のとおりである。(セグメントの業績については,セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載している。また,報告セグメントの利益は,連結財務諸表の作成にあたって計上した引当金の繰入額及び取崩額を含んでいない。なお,セグメント利益は,連結損益計算書の営業利益と調整を行っている。)
(当社建設事業)
当社建設事業の売上高は,前連結会計年度に比べ2.1%増加し1兆4,080億円となり,セグメント利益は,前連結会計年度に比べ8.4%増加し1,451億円となった。
(当社投資開発事業)
当社投資開発事業の売上高は,大型開発物件を売上計上したことなどにより,前連結会計年度に比べ33.7%増加し338億円となり,セグメント利益は,前連結会計年度に比べ17.8%増加し103億円となった。
(その他)
当社が営んでいるエンジニアリング事業,LCV事業及び子会社が営んでいる各種事業の売上高は,前連結会計年度に比べ2.9%増加し5,201億円となり,セグメント利益は,前連結会計年度に比べ11.3%増加し223億円となった。
② 財政状態の分析
当連結会計年度末の資産の部は,受取手形・完成工事未収入金等は減少したものの,現金同等物(現金預金及び有価証券に含まれる譲渡性預金)の増加などにより,1兆9,049億円となり,前連結会計年度末に比べ441億円増加した。
当連結会計年度末の負債の部は,支払手形・工事未払金等は減少したものの,コマーシャル・ペーパーを発行したことなどにより1兆1,685億円となり,前連結会計年度末に比べ429億円増加した。
連結有利子負債の残高は4,413億円となり,前連結会計年度末に比べ1,219億円増加した。
当連結会計年度末の純資産の部は,保有株式の時価の下落や売却に伴い,その他有価証券評価差額金が減少したことに加え,自己株式の取得を実施したものの,親会社株主に帰属する当期純利益の計上に伴う利益剰余金の増加などにより7,364億円となり,前連結会計年度末に比べ11億円増加した。また,自己資本比率は38.3%となり,前連結会計年度末に比べ0.9%ポイント減少した。
③ キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度の連結キャッシュ・フローの状況については,投資活動により1,157億円資金が減少したが,営業活動により1,705億円,財務活動により687億円それぞれ資金が増加した結果,現金及び現金同等物の当連結会計年度末の残高は,前連結会計年度末に比べ1,227億円増加し3,527億円となった。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは,税金等調整前当期純利益1,413億円の計上などにより,1,705億円の資金増加となった。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは,賃貸事業をはじめとする事業用固定資産の取得などにより1,157億円の資金減少となった。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは,コマーシャル・ペーパーの発行などにより687億円の資金増加となった。
④ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの資金需要の主なものは,建設事業における工事代金の立替金や販売費及び一般管理費などの営業活動に伴う支出,不動産開発事業における賃貸事業用資産の取得などの設備投資に伴う支出である。また,当社グループは,2019年5月に策定した「中期経営計画〈2019‐2023〉」において,建設事業での安定的な収益基盤を維持しつつ,非建設事業の着実な収益力向上を図ることを目的とし,2019年度から5年間で生産性向上・研究開発,不動産開発事業,新規事業などに7,500億円の投資を計画している。
これらの資金需要に対し,自己資金に加え,金融機関からの借入金やノンリコース借入金などの有利子負債を活用することにより,必要資金の調達を行う方針である。
なお,財務体質の健全性を維持するため,自己資本比率を40%以上,負債資本倍率(D/Eレシオ)を0.7倍以下とすることを財務上のKPIとして設定している。
当連結会計年度においては,新型コロナウイルス感染症拡大の影響による工事代金の入金遅延等の不測の事態に備えるため,2020年3月にコマーシャル・ペーパーの発行800億円を行ったことなどから,当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は3,527億円となった。
⑤ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は,我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。この連結財務諸表の作成にあたっては,期末日時点の状況をもとに種々の見積りを行っているが,これらの見積りには不確実性が伴うため,実際の結果と異なることがある。
当社グループが連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち,重要なものは以下のとおりである。
なお,新型コロナウイルス感染症の拡大による影響に係る会計上の見積りの前提は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 (追加情報)」に記載している。
(工事進行基準による収益認識)
当社グループは,完成工事高及び完成工事原価の計上にあたり,期末日までの進捗部分について,成果の確実性が認められる工事については工事進行基準を適用している。
工事進行基準の適用にあたっては,工事収益総額,工事原価総額及び期末日における工事進捗度を合理的に見積る必要があるが,建設資材単価や労務単価等が,請負契約締結後に予想を超えて大幅に上昇する場合など,工事原価総額の見積りには不確実性を伴うため,当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。
(固定資産の減損)
当社グループは,固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり,資産のグルーピングを行い,収益性が著しく低下した資産グループについて,固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減損し,当該減少額を減損損失として計上している。
固定資産の回収可能価額については,将来キャッシュ・フロー,割引率,正味売却価額等の前提条件に基づき算出しているが,市況の変動などにより前提条件に変更があった場合には,当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。
⑥ 経営方針・経営戦略,経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
2019年5月に策定した「中期経営計画〈2019‐2023〉」の初年度である2019年度の経営数値目標(連結ベース)に対する実績は以下のとおりである。
(単位:億円)
|
中期経営計画〈2019‐2023〉 |
||||||
|
|
2019年度実績 |
2023年度目標 |
|
財務KPI |
2019年度実績 |
2023年度目標 |
|
総売上高 |
16,982 |
18,800 |
|
RОE |
13.6% |
10%以上 |
|
建設事業 |
15,178 |
15,500 |
|
自己資本比率 |
38.3% |
40%以上 |
|
非建設事業 |
1,804 |
3,300 |
|
負債資本倍率 (D/Eレシオ) |
0.6倍 |
0.7倍以下 |
|
売上利益 |
2,256 |
2,350 |
|
|||
|
建設事業 |
1,987 |
1,850 |
|
配当性向 |
29.6% |
30%程度 |
|
非建設事業 |
269 |
500 |
|
|
|
|
|
経常利益 |
1,379 |
1,400 |
|
|
|
|
特記事項なし。
当社グループの当連結会計年度における研究開発費は
当社は,建築・土木分野の生産性向上や品質確保のための新工法・新技術の研究開発はもとより,多様化する社会ニーズに対応するための新分野・先端技術分野や,さらに地球環境問題に寄与するための研究開発にも,幅広く積極的に取り組んでいる。技術研究所を中心とした研究開発活動は,基礎・応用研究から商品開発まで多岐にわたっており,異業種企業,公的研究機関,国内外の大学との技術交流,共同開発も積極的に推進している。
これら研究開発の成果として,今年度も学会賞をはじめさまざまな学協会からの賞を受賞した。また,i-Constructionが実用の段階へと進み,新領域技術の展開も進行・深化している。
当連結会計年度における研究開発活動の主な成果は次のとおりである。
(1)生産技術・i-Construction
①次世代型トンネル構築システム「シミズ・スマート・トンネル」要素技術の開発・実用化
山岳トンネル工事の生産性向上と品質管理の高度化を目的に,ICTの最新技術を活用した次世代型トンネル構築システム「シミズ・スマート・トンネル」の要素技術を開発・実用化した。実証実験の継続・実用化を進め,技術提案で一層効率的な施工提案を行うことで,案件受注に結びつけていく。開発した要素技術は以下である。
a.山岳トンネルの切羽前方の三次元的な地山状況を予測する前方探査システム「S-BEAT」を改良した新システムを開発
b.発破掘削の効率化に向けデータ活用を自動化した余掘り量低減システム「ブラストマスタ」をサンドビック㈱と共同開発・実用化
c.覆工コンクリートの自動打込み・締固めシステムを岐阜工業㈱と共同開発
d.二次覆工のPCa化推進に向け,(一社)日本建設機械施工協会施工技術総合研究所,㈱IHI建材工業と共同で「分割型PCa覆工システム」を開発・実証
②重機接触災害リスク低減システムが技術認証「Safety2.0」取得
山岳トンネル工事において展開している「重機接触災害リスク低減システム」について,(一社)セーフティグローバル推進機構(IGSAP:The Institute of Global Safety Promotion)が発行する,人と機械の協調作業によって安全を確保する技術的方策に与えられる技術認証「Safety2.0 適合基準レベルⅠ」を取得した。当社は,ロボット技術や建設機械・重機の自動運転技術,人(作業員)・モノ(建機・重機)・作業環境に関する情報を共有するICT技術の融合により,トンネル施工の生産性と安全性を飛躍的に向上させる「シミズ・スマート・トンネル」の構築を進めており,関連する技術開発にSafety2.0の概念を導入する。
③簗川ダム堤体コンクリート打設にダムコンクリート自動打設システムを初適用
簗川ダム建設工事において,ダムの堤体を構築するコンクリート打設工事に「ダムコンクリート自動打設システム」を初適用した。本システムは,バッチャープラント(コンクリート製造設備)への材料供給から軌索式ケーブルクレーンによるコンクリート運搬・打設までの一連の作業を完全自動化するものであり,当該工事において,打設作業サイクルタイムの約10%短縮を実現した。本システムは,土木学会技術開発賞,日本建設機械施工大賞最優秀賞を受賞した。
④人と環境に優しい紙素材の仮設利用技術「KAMIWAZA」を土木現場で適用
土木現場の仮設資材に軽量かつ加工性の高い紙素材を活用する取り組みを進めている。鋼材や木材に代わり,取り扱いが容易な紙素材を使用することで,作業員の負担が軽減され,仮設施工の生産性が向上する。これまでに,山岳トンネルの坑内に設置するトンネル風門,防音壁等の仮設防音設備,骨材貯蔵設備の温度上昇を抑制する遮熱シート等に適用している。
⑤施工性を向上する薄肉型巻付け耐火被覆材を共同開発
鉄骨大梁の耐火被覆工事の施工性を向上させる2時間耐火の薄肉型巻付け耐火被覆材をニチアス㈱と共同で開発し,ニチアス㈱より同社製品マキベエ®の「高密度仕様 25㎜品」として商品化した。従来製品と同等の耐火性能を維持しつつ,巻付け耐火被覆材のスリム化を図り,鉄骨大梁を対象に一重巻で耐火2時間,二重巻で耐火3時間の国土交通大臣認定を取得した。従来製品に比べ施工性が10%程度向上することを確認している。
⑥「3眼カメラ配筋検査システム」を開発,国土交通省のPRISMで性能を実証
現場で行う鉄筋配筋検査の一層の信頼性向上と省力化を目的に,三角測量の原理を応用した「3眼カメラ配筋検査システム」をシャープ㈱と共同開発し,国土交通省のPRISM(建設現場の生産性を飛躍的に向上させるための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト)を含む13現場に試験適用し,有効性を検証した。このシステムは3眼カメラで画像データの三次元情報を取得,画像から鉄筋を抽出・計測し,帳票を作成する。撮影から7秒で検査結果が自動表示され,配筋検査業務の効率化と現場の働き方改革に貢献する技術として,全国の土木現場に水平展開する。
⑦軽量で優れた施工性を備えたPCa合成床版「SLaT-FaB床版」を開発
高速道路の大規模更新に伴う床版取替え工事向けに,軽量で優れた施工性を備えたPCa合成床版「SLaT-FaB床版」を日本ファブテック㈱と共同開発した。既設床版と同等の厚さを確保し重量を抑えたため,既設桁の補強工事が不要となるうえ,配筋にはTヘッド工法鉄筋を採用したことから施工性にも優れる。今後,高速道路の更新や修繕工事の改善提案に積極展開し,適用拡大に結びつける。
(2)設計・管理技術
①コンピュテーショナルデザイン手法を展開するプラットフォーム「Shimz DDE」を構築
企画・基本設計段階における設計提案の一層の高付加価値化を目的に,高度なコンピュテーショナルデザイン手法を展開するためのプラットフォーム「Shimz DDE(Digital Design Enhancement platform)」を構築,本格的な組織的運用を開始した。設計者が3Dモデルをベースとした多様な設計検討を「直観的な操作」で行い,設計提案の高付加価値化に加え,発注者等との合意形成の期間の大幅な短縮などが可能となる。また,3Dデータは次工程の設計・施工BIMへの連動に加え,当社の設計ノウハウとして蓄積され,「組織の共有知」として次世代へ継承される。今後,AIをはじめとする最新技術を取り込みながら,プラットフォームとしての一層の機能充実を図る。
②業務を効率化するBIMツール「Shimz One BIM(設計施工連携BIM)」の開発
設計BIMデータを施工から製作(発注),運用に至る段階まで連携し,業務を効率化するシステム「Shimz One BIM」の構築を進めている。このうち,設計者が作成する鉄骨造のRevit 構造データを鉄骨の積算や製作(発注)に必要なデータに変換する「KAP for Revit(K4R)」を開発,運用を開始した。鉄骨積算体制の強化,業務の効率化ならびに鉄骨造のコストダウンを図るとともに,引き続き基盤整備を進め,鉄筋工事や型枠工事,設備工事等の効率化を進める。
このほか,将来のBIMモデルによる建築確認申請・自動審査を先取りした新たな建築確認システムを,指定確認検査機関の(一財)日本建築センターと協議・検討を重ね,開発・整備し,今後確認業務の効率化に向け展開する。
③未来のオフィス空間づくりに向けた実証実験オフィスの共創プロジェクトに参画
㈱point 0(ポイントゼロ)運営の会員型コワーキングスペース「point 0 marunouchi」における,未来のオフィス空間づくりに向けた実証実験プロジェクトに参画した。実際にオフィスで働く人の動きや生体情報,設置機器等の運転データを収集・分析し,オフィス内のコミュニケーションやワークスタイルの現状評価手法の検証を進める。また音制御システムなど音環境の改善技術の検証にも着手し,空間コンテンツの高度化や新しいサービスの創出に取り組む。
(3)環境・設備技術
①建物に伝播する環境振動の影響を評価する「環境振動評価システム」を開発
道路や鉄道,機械,設備機器等に起因する環境振動の影響を客観的に評価する「環境振動評価システム」を開発・実用化した。設計の初期段階において建物への環境振動の影響を容易に予測・評価でき,それに基づき適切な設計を行うことが可能となる。今後,全社設計部門で有効活用し,より優れた品質の建築設計を追求する。
②高性能・低価格な屋外遮音部材「しずかルーバー」を開発
建築物の屋上や地上部に設置された設備機器に起因する騒音問題の解決を目的に,高い遮音性能と通気性を備えた低価格のアルミ製ルーバー「しずかルーバー」を開発・製品化した。羽板部分に反射,吸音,共鳴の3つの音響要素を組み合わせた独自の遮音機構を付与し,高音域から低音域まで幅広い周波数帯に対して騒音低減効果を発揮する。製造はアルミ押し出し成形でほぼ完結するため,既存製品の50%~80%程度のコストで採用が可能となる。今後,製造委託先の㈱成和を通じた外販を予定している。
③省エネ型クリーン空調制御システム「クリーンEYE(アイ)」を開発
クリーンルーム内作業者の滞在情報や粒子濃度を検知し,要求清浄度に適した循環風量を維持する省エネ型の空調制御システム「クリーンEYE(アイ)」を開発・実用化した。対象とする清浄度は,主な電子デバイス製造装置の組立工場等で要求される水準で,複数の電子デバイス装置メーカーの生産ラインで本システムが採用され,高い評価を得ている。実証実験では,従来システムに比べ,循環風量を50%,ランニングコストを30%削減できることを確認している。設計提案に織り込み,積極的に展開し,案件受注に結び付ける。
④2方向気流の新型手術室空調システム「クリーンコンポ デュアルエアー」を商品化
手術室内の温熱環境と清浄度を向上させる新型手術室空調システム「クリーンコンポ デュアルエアー」を商品化した。建築系技術商品を扱う100%子会社の㈱テクネットを通じ医療機関向けに提供する。術野をカバーする下降流と周囲をカバーする水平旋回流の2方向の気流を組み合わせ,術野の執刀医と周囲の医療スタッフ,それぞれに適した快適・清浄な手術室環境を創出する。高度急性期医療に対応する医療機関の手術室の大型化に対応が可能で,今後技術提案に織り込み,医療施設の新築・大規模改修工事の受注に結び付ける。
(4)新領域技術
①AIを用いた早期火災検知システムなどを「S・LOGI(エス・ロジ)新座」に実装
天井が高く,かつ大空間となる物流施設での火災を早期発見し延焼防止する「早期火災検知システム」を開発した。ガスセンサ,炎センサ,レーザーセンサなどから得られる情報を学習し,AIによって初期火災を高い精度で検出できるシステムを構築,当社が開発した先進的物流施設「S・LOGI(エス・ロジ)新座」に実装した。その他にも,画像解析からトラックバースの空き状況や日々の混雑予想時間帯を情報提供する「車両管理・誘導システム」など,AIを活用したソリューションの開発を加速している。
②自動運転技術と歩行者ナビを連携した施設内移動サービスを構築
建物と自動運転車両やロボット間の連携基盤(自動運転プラットフォーム)を活用し,自動運転車両の配車リクエスト機能と歩行者ナビゲーションシステム(歩行者ナビ)の経路案内機能を組み合わせた新たな施設内移動サービスを構築した。当社が開発した自動運転プラットフォームのプロトタイプに,歩行者ナビと,㈱ティアフォーの自動運転技術を組み合わせたもので,引き続き,自動運転技術を活用した移動・搬送サービスの実証実験を通じて,車両・ロボットと施設の連携技術の高度化を図り,自動運転プラットフォームの2021年度内の実用化を目指す。
③AIを活用した次世代移動を支援する統合技術ソリューション「AIスーツケース」開発プロジェクトに参画
視覚障がい者のアクセシビリティと生活の質向上を目指し,アルプスアルパイン㈱,オムロン㈱,日本アイ・ビー・エム㈱,三菱自動車工業㈱,当社の5社は,「(一社)次世代移動支援技術開発コンソーシアム」を設立,視覚障がい者が自立して街を移動することを助ける統合ソリューション「AIスーツケース」の開発に取り組む。業種を超えた複数の企業が技術や知見を持ち寄り,「AIスーツケース」の開発とともに,実証実験を通じて社会実装に必要な要件を特定し,視覚障がい者の移動とコミュニケーションの課題を解決するソリューションの実現を目指す。
④建物付帯型水素エネルギー利用システム「Hydro Q-BiC」の実用化
国立研究開発法人産業技術総合研究所と共同開発した建物付帯型水素エネルギー利用システム「Hydro Q-BiC」を,郡山市総合地方卸売市場内の管理棟にて運用を開始した。郡山市総合地方卸売市場内の管理棟におけるCO2排出量は導入前と比較して約40%削減を見込んでいる。また当社北陸支店新社屋でも採用することとしており,水素エネルギー使用ビルとしては,国内最大級の水素蓄電設備(容量2,000kWh)を採用する。今後は,工場やホテル,病院に対して本システムを提案することで普及を推進し,建物の省エネルギー化やCO2排出量の削減に努める。
⑤中層マンションに木質耐火構造技術「スリム耐火ウッド」「シミズ ハイウッド」を適用
木質耐火構造の中層マンションに,木質耐火部材「スリム耐火ウッド」を初適用した。また,木質耐火部材の接合方法として木質構造架構技術「シミズ ハイウッド」を開発し,柱・梁の接合に耐震性,耐火性,施工性に優れた接合部材(PCa接合部材)を適用した。本計画は木造とRC造の最適な組み合わせを追求した取り組みが評価され,国土交通省から2018年度の「サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)」に採択された。今後,構造体に木材を用いる建築物の増加が見込まれており,付加価値の高い建築物を提供する一つの手法として,中・大規模の耐火建築の発注者に対して木質構造の提案を進める。