第一部 【企業情報】

第1 【企業の概況】

1 【主要な経営指標等の推移】

(1) 最近5連結会計年度に係る主要な経営指標等の推移

 

回次

第119期

第120期

第121期

第122期

第123期

決算年月

2021年3月

2022年3月

2023年3月

2024年3月

2025年3月

売上高

(百万円)

1,456,473

1,482,961

1,933,814

2,005,518

1,944,360

経常利益又は

経常損失(△)

(百万円)

105,465

50,419

56,546

19,834

71,664

親会社株主に帰属する

当期純利益

(百万円)

77,176

47,761

49,057

17,163

66,015

包括利益

(百万円)

109,354

49,336

44,956

83,067

28,028

純資産

(百万円)

821,446

875,172

907,277

948,059

923,809

総資産

(百万円)

1,908,674

2,128,356

2,448,010

2,538,769

2,523,771

1株当たり純資産

(円)

1,068.74

1,116.89

1,150.70

1,243.88

1,260.48

1株当たり当期純利益

(円)

101.17

64.09

66.29

23.57

94.80

潜在株式調整後

1株当たり当期純利益

(円)

101.17

自己資本比率

(%)

42.7

38.7

34.8

35.0

34.1

自己資本利益率

(%)

10.0

5.8

5.9

2.0

7.6

株価収益率

(倍)

8.9

11.5

11.3

42.4

14.0

営業活動による

キャッシュ・フロー

(百万円)

80,674

77,772

83,842

21,253

159,094

投資活動による

キャッシュ・フロー

(百万円)

113,954

89,308

52,434

5,358

7,813

財務活動による

キャッシュ・フロー

(百万円)

42,710

19,634

65,635

23,972

71,102

現金及び現金同等物

の期末残高

(百万円)

276,321

287,134

386,750

339,240

438,144

従業員数

(人)

16,586

19,661

19,869

20,515

21,286

(うち、契約社員数)

2,308

2,625

2,640

2,388

2,129

(注)1 第120期以降の潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、希薄化効果を有している潜在株式が存在しないため記載しておりません。

2 契約社員数には、再雇用社員数、嘱託社員数を含めております。

3 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第120期の期首から適用しており、第120期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。

 

(2) 提出会社の最近5事業年度に係る主要な経営指標等の推移

 

回次

第119期

第120期

第121期

第122期

第123期

決算年月

2021年3月

2022年3月

2023年3月

2024年3月

2025年3月

売上高

(百万円)

1,249,985

1,287,352

1,557,325

1,577,909

1,501,519

経常利益又は

経常損失(△)

(百万円)

98,613

43,926

41,389

37,467

51,674

当期純利益

(百万円)

72,370

45,735

41,754

11,606

62,139

資本金

(百万円)

74,365

74,365

74,365

74,365

74,365

発行済株式総数

(株)

788,514,613

788,514,613

788,514,613

743,676,313

716,689,413

純資産

(百万円)

697,042

699,210

714,361

725,047

690,629

総資産

(百万円)

1,632,972

1,749,528

2,016,732

2,091,072

2,074,174

1株当たり純資産

(円)

912.13

943.72

964.18

1,015.01

1,012.14

1株当たり配当額

(円)

30.00

23.00

21.00

20.00

38.00

(うち1株当たり中間配当額)

(12.00)

(11.50)

(10.50)

(13.50)

(17.50)

1株当たり当期純利益

(円)

94.70

61.26

56.36

15.94

89.24

潜在株式調整後

1株当たり当期純利益

(円)

自己資本比率

(%)

42.7

40.0

35.4

34.7

33.3

自己資本利益率

(%)

11.0

6.6

5.9

1.6

8.8

株価収益率

(倍)

9.5

12.0

13.3

62.8

14.8

配当性向

(%)

31.7

37.5

37.3

125.5

42.6

従業員数

(人)

10,494

10,688

10,845

10,949

11,163

(うち、契約社員数)

842

748

639

459

329

株主総利回り

(%)

109.6

93.3

97.5

129.5

172.2

(比較指標:配当込みTOPIX)

(%)

(142.1)

(145.0)

(153.4)

(216.8)

(213.4)

最高株価

(円)

965

953

790

1,121.5

1,491.0

最低株価

(円)

711

707

661

750.0

797.3

(注)1 潜在株式調整後1株当たり当期純利益は、潜在株式がないため記載しておりません。

2 契約社員数には、再雇用社員数、嘱託社員数を含めております。

3 最高株価及び最低株価は、2022年4月4日より東京証券取引所プライム市場におけるものであり、それ以前については東京証券取引所市場第一部におけるものであります。

4 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第120期の期首から適用しており、第120期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。

 

 

2 【沿革】

 1804年(文化元年)、清水喜助が江戸神田鍛冶町に大工業を開業したのが、当社の起源であります。

以来、個人営業の時代が続きましたが、明治中期には近代建設業者としての基礎を確立しました。

 その後の当社グループの主な変遷は次のとおりであります。

 

1915年10月

資本金100万円をもって合資会社清水組を設立し、会社組織に変更した。

1928年2月

本店芝浦鐵工所を、合資会社東京鐵骨橋梁製作所(現 日本ファブテック株式会社)として設立

1937年8月

株式会社清水組設立

1937年11月

合資会社清水組を合併

名古屋支店・大阪支店(現 関西支店)・九州支店開設

1939年5月

北海道支店開設

1945年5月

広島支店開設

1946年4月

仙台支店開設(現 東北支店)

1946年7月

北陸支店・四国支店開設

1946年8月

建設資材等の販売会社の丸喜産業株式会社(現 株式会社ミルックス)を設立

1947年3月

総合設備会社の第一設備工業株式会社を設立

1948年2月

清水建設株式会社と社名変更

1961年4月

当社株式を東京店頭市場に公開

1961年10月

当社株式を東京証券取引所市場第二部に上場

1962年2月

当社株式を東京証券取引所市場第一部に上場

1962年10月

当社株式を名古屋・大阪両証券取引所市場第一部に上場

1971年5月

不動産取引に関する業務を事業目的に追加した。

1980年4月

横浜支店開設

1982年6月

EC(エンジニアリング・コンストラクター)化に備えるため、定款の事業目的を追加した。

1986年4月

当社リフォームセンターを株式会社シミズリフォーム(現 株式会社シミズ・ビルライフケア)として設立

1987年4月

千葉支店開設

1988年4月

当社機械事業部を株式会社エスシー・リース・マシーナリ(現 株式会社エスシー・マシーナリ)として設立

1990年6月

資源エネルギー開発、環境整備等への業容拡大と、情報通信システム分野、医療用機械器具の販売、損害保険代理業等新規事業分野への展開に備えるため、定款の事業目的を追加した。

1991年4月

本店を東京都中央区から港区に移転

1992年4月

東京支店・土木東京支店開設

2000年6月

エネルギー供給事業、公共施設の企画・建設・保有などPFI事業等の展開に備えるため、定款の事業目的を追加した。

2000年11月

不動産会社の清水総合開発株式会社を設立

2006年6月

土壌浄化事業、温室効果ガス排出権の取引に関する事業等の展開に備えるため、定款の事業目的を追加するとともに、当面事業展開を予定しない事業目的を削除した。

 

2009年4月

国際支店開設

2012年8月

本店を東京都港区から中央区に移転

2014年6月

自然共生事業の拡大を目指し、農林水産関連分野の事業展開に備えるため、定款の事業目的を追加した。

2020年3月

北米における事業拡大を目的に、北米事業の事業統括法人であるシミズ・アメリカ社を設立

2021年4月

土木国際支店開設

2022年3月

日本道路株式会社を株式公開買付けにより連結子会社化

2022年4月

市場区分の見直しにより、東京証券取引所プライム市場、名古屋証券取引所プレミア市場に移行

2023年4月

海外で事業活動を行うすべての事業部門を包括的に管理し、海外建設の事業責任を担うグローバル事業本部を設立

2023年5月

丸彦渡辺建設株式会社を株式取得により連結子会社化

 

3 【事業の内容】

 当社グループは、当社、子会社136社及び関連会社22社で構成され、建設事業、開発事業及び各事業に附帯関連する事業を営んでおります。

建設事業……… 当社及び日本道路㈱、日本ファブテック㈱、丸彦渡辺建設㈱、第一設備工業㈱、㈱シミズ・ビルライフケア等が営んでおり、当社は工事の一部を関係会社に発注しております。

開発事業……… 当社及び清水総合開発㈱等が営んでおり、当社は一部の関係会社と土地・建物の賃貸借を行い、また建設工事を受注しております。

その他の事業… 建設資機材の販売及びリース事業を㈱ミルックスが営んでおり、当社は建設資機材の一部を購入・賃借しております。建設機械のレンタル事業を㈱エスシー・マシーナリが営んでおり、当社は一部の建設機械を賃借しております。当社及び関係会社等への資金貸付事業をシミズ・ファイナンス㈱等が営んでおります。公共施設等の建設・維持管理・運営等のPFI事業を多摩医療PFⅠ㈱等が営んでおります。
 このほか、北米における当社グループの事業活動の統括をシミズ・アメリカ社が行っております。

 

 各事業と報告セグメントとの関連は、次のとおりであります。

 当社グループは、当社における建設事業、投資開発事業及び日本道路㈱が営む事業を主要な事業としており、報告セグメントは、当社の建設事業を「当社建設事業」、当社の投資開発事業を「当社投資開発事業」、日本道路㈱が営む事業を「道路舗装事業」としております。また、当社が営んでいるエンジニアリング事業、グリーンエネルギー開発事業、建物ライフサイクル事業及び日本道路㈱を除く子会社が営んでいる各種事業は、報告セグメントに含まれない事業セグメントであり、「セグメント情報」において「その他」に含めております。

 

 事業の系統図は次のとおりであります。なお、関係会社の一部は、複数の事業を行っております。

 

0101010_001.png

 

4 【関係会社の状況】

(1)連結子会社

(2025年3月31日現在)

 

名称

住所

資本金
又は出資金

(百万円)

主要な事業

の内容

議決権の
所有割合

(%)

関係内容

日本道路㈱ ※

東京都港区

12,290

建設事業

50.2

当社施工工事の一部を受注しております。

清水総合開発㈱

東京都中央区

3,000

開発事業

100

当社に工事を発注しております。

当社から施設の管理を受託しております。

当社に建物を賃貸しております。

役員の兼任10人

日本ファブテック㈱

東京都港区

2,437

建設事業

84.6

当社施工工事の一部を受注しております。

役員の兼任5人

丸彦渡辺建設㈱

札幌市豊平区

476

建設事業

57.6

役員の兼任3人

第一設備工業㈱

東京都港区

400

建設事業

100

当社施工工事の一部を受注しております。

役員の兼任6人

㈱ミルックス

東京都中央区

372

建設資機材販売・リース及び保険代理業

100

当社施工工事の一部を受注しております。

当社に建設資機材の販売・リース等を行って

おります。

当社から建物・構築物等を賃借しております。

役員の兼任5人

㈱エスシー・マシーナリ

横浜市瀬谷区

200

建設機械の

レンタル

100

当社に建設機械のレンタルを行っております。

当社から建物・構築物等を賃借しております。

役員の兼任9人

㈱シミズ・ビルライフケア

東京都中央区

100

ビルマネジメント事業

100

当社施工工事の一部を受注しております。
役員の兼任11人

日本建設㈱

東京都千代田区

100

建設事業

95.0

当社施工工事の一部を受注しております。

役員の兼任6人

㈱エスシー・プレコン

千葉県流山市

100

建設事業

100

当社にPC板等を製造・納入しております。

当社から建物・構築物等を賃借しております。

役員の兼任9人

シミズ・ファイナンス㈱

東京都中央区

2,000

当社関係会社

への融資

100

当社と資金の貸借等の取引を行っております。

役員の兼任4人

多摩医療PFI㈱

東京都中央区

500

医療センターの運営

95.0

当社に工事を発注しております。

役員の兼任6人

つくば営農型太陽光発電㈱

東京都中央区

450

売電事業

100

役員の兼任5人

シミズ・USA・

ホールディングス社 ※

アメリカ合衆国

デラウェア州

千US$

200,000

北米における

持株会社

100

役員の兼任3人

シミズ・アメリカ社

アメリカ合衆国

デラウェア州

US$

1

北米における

事業の統括

100

 (100)

役員の兼任4人

シミズ・ノースアメリカLLC

アメリカ合衆国

デラウェア州

千US$

3,000

建設事業

100

 (100)

役員の兼任2人

シミズ・リアルティ・デベロップメント(U.S.A.)社

アメリカ合衆国

デラウェア州

US$

1

開発事業

100

 (100)

役員の兼任4人

シミズ・インターナショナル・ファイナンス(U.S.A.)社

アメリカ合衆国

デラウェア州

千US$

30,000

 

当社関係会社

への融資

100

 (100)

役員の兼任3人

SCB Boylston PO, LLC ※

アメリカ合衆国

デラウェア州

千US$

79,065

開発事業

97.0

 (97.0)

SCB Boylston Holding, LLC ※

アメリカ合衆国

デラウェア州

千US$

79,066

開発事業

97.0

 (97.0)

SC Boylston Investment, LLC ※

アメリカ合衆国

デラウェア州

千US$

77,800

開発事業

99.5

 (99.5)

清水建設(中国)有限公司

中華人民共和国

上海市

千元

80,000

建設事業

100

役員の兼任3人

シミズ・インベストメント(アジア)社

シンガポール

共和国

千シンガ
ポールドル

84,000

開発事業

100

役員の兼任5人

シミズ・インターナショナル・キャピタル(シンガポール)社

シンガポール

共和国

千シンガ
ポールドル

10,000

当社関係会社

への融資

100

役員の兼任4人

その他105社

 (注)1 議決権の所有割合の( )内は、間接所有割合で内数であります。

   2 日本道路㈱は、有価証券報告書を提出している会社であります。

   3 ※ 特定子会社であります。

   4 当社は、2025年5月14日に開催された取締役会において、日本道路㈱の完全子会社化を目的として、同社の普通株式を、金融商品取引法に基づく公開買付けにより取得することを決議しました。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 (重要な後発事象)」に記載しております。

 

(2)持分法適用関連会社

(2025年3月31日現在)

 

名称

住所

資本金
又は出資金

(百万円)

主要な事業

の内容

議決権の
所有割合

(%)

関係内容

東京コンクリート㈱

東京都江東区

150

建設事業

33.3

役員の兼任2人

㈱幕張テクノガーデン

千葉市美浜区

1,500

開発事業

26.7

役員の兼任1人

プロパティデータバンク㈱

東京都港区

332

不動産関連情報の運用管理

24.0

その他7社

 (注) プロパティデータバンク㈱は、有価証券報告書を提出している会社であります。

 

5 【従業員の状況】

(1) 連結会社の状況

 

(2025年3月31日現在)

セグメントの名称

従業員数(人)

当社建設事業

9,557

(247)

当社投資開発事業

105

(1)

道路舗装事業

2,827

(534)

その他

8,797

(1,347)

合計

21,286

(2,129)

  (注) 従業員数は、( )内に内書きで記載した期末の契約社員数を含む合計人数を記載しております。

    なお、契約社員数には再雇用社員数、嘱託社員数を含めて記載しております。

 

(2) 提出会社の状況

 

 

 

(2025年3月31日現在)

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

11,163

43.7

16.0

10,116

(329)

 

セグメントの名称

従業員数(人)

当社建設事業

9,557

(247)

当社投資開発事業

105

(1)

その他

1,501

(81)

合計

11,163

(329)

 (注)1 従業員数は、( )内に内書きで記載した期末の契約社員数を含む合計人数を記載しております。

     なお、契約社員数には再雇用社員数、嘱託社員数を含めて記載しております。

      2 平均年齢、平均勤続年数、平均年間給与は、契約社員329人を除く従業員10,834人の状況を記載しており

          ます。

      3 平均年間給与は、期末手当及び諸手当を含んでおります。

 

(3) 労働組合の状況

 特記事項はありません。

 

 

(4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

 ①提出会社

当事業年度

管理職に占める女性労働者の割合(%)(注1、2)

男性労働者の育児休業取得率(%)(注3)

労働者の男女の賃金の差異(%)(注1、4)

全労働者

うち

正規雇用労働者

うち

有期労働者

4.9

89.3

63.6

63.5

63.1

(注)1 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(2015年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。

2 「管理職に占める女性労働者の割合」については、男女別の雇用人数などによるものであり、適用する登用要件に男女の差異はありません。

3 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(1991年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(1991年労働省令第25号)第71条の6第2号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。

4 「労働者の男女の賃金の差異」については、職種や等級別の人員構成などによるものであり、適用する給与体系に男女の差異はありません。

 

 ②連結子会社

当事業年度

名称

管理職に占める

女性労働者の割合(%)(注1、2)

男性労働者の

育児休業取得率

(%)(注3)

労働者の男女の賃金の差異(%)(注1、4)

全労働者

うち

正規雇用労働者

うち

有期労働者

日本道路㈱

1.2

36.4

55.5

54.3

58.0

㈱シミズ・ビルライフケア

3.4

62.5

76.7

76.8

58.6

日本ファブテック㈱

6.7

18.2

79.8

79.4

63.5

㈱ミルックス

9.8

50.0

65.8

72.3

48.7

清水総合開発㈱

3.3

100.0

73.8

72.4

89.4

㈱ピーディーシステム

17.1

-(対象者なし)

74.0

72.6

60.2

丸彦渡辺建設㈱

5.3

28.6

75.4

77.7

47.0

第一設備工業㈱

3.4

0.0

73.7

71.3

66.5

㈱エスシー・マシーナリ

13.8

0.0

㈱トータルオフィスパートナー

46.5

日本建設㈱

1.4

㈱ダイヤビルサービス

12.0

(注)1 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(2015年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。

2 「管理職に占める女性労働者の割合」については、男女別の雇用人数などによるものであり、適用する登用要件に男女の差異はありません。

3 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(1991年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(1991年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。

4 「労働者の男女の賃金の差異」については、職種や等級別の人員構成などによるものであり、適用する給与体系に男女の差異はありません。

 

 

第2 【事業の状況】

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) シミズグループの中長期的な経営方針

当社は、1887年に相談役としてお迎えした渋沢栄一翁の教えである道徳と経済の合一を旨とする「論語と算盤」を「社是」とし、この考え方を基に、「真摯な姿勢と絶えざる革新志向により 社会の期待を超える価値を創造し 持続可能な未来づくりに貢献する」ことを「経営理念」として定めております。

当社は、2030年を見据えたシミズグループの長期ビジョン「SHIMZ VISION 2030」を定めるとともに、その実現に向けて、2024年5月に、当社は、「中期経営計画〈2024‐2026〉」を策定しました。

 

「SHIMZ VISION 2030」

■目指す姿『スマート イノベーション カンパニー』

建設事業の枠を超えた不断の自己変革と挑戦、多様なパートナーとの共創を通じて、時代を先取りする価値を創造(スマート イノベーション)し、人々が豊かさと幸福を実感できる、持続可能な未来社会の実現に貢献します。

 

■シミズグループが社会に提供する価値

イノベーションを通じた価値の提供により、SDGsの達成に貢献します。

①安全・安心でレジリエント※1な社会の実現

地震や巨大台風、豪雨などの自然災害リスクが高まる中、生活と事業を災害から守ることが求められております。強靭な建物・インフラの構築を通じて、安全・安心でレジリエントな社会の実現に貢献していきます。

・強靭な社会インフラの構築

・建物・インフラの長寿命化

・防災・減災技術の普及

・ecoBCP※2の普及

※1 レジリエント:強くしなやかで復元力がある

※2 ecoBCP:平常時の節電・省エネ(eco)対策と非常時の事業継続(BCP)対策を両立する施設・まちづくり

 

②健康・快適に暮らせるインクルーシブな社会の実現

高齢化や人口減少、都市化などの急速な社会変化が進む中、誰もが安心して快適に暮らせる社会が求められております。人に優しい施設やまちづくりを通じて、健康・快適に暮らせるインクルーシブな社会の実現に貢献していきます。

・ICTを活用したまちづくり

・ユニバーサルデザインの普及

・Well-beingの提供

・人類の活躍フィールドの拡大(海洋、宇宙へ)

※インクルーシブ:すべての人が社会の一員として参加できる

 

③地球環境に配慮したサステナブルな社会の実現

地球温暖化や森林破壊、海洋汚染などが深刻化する中、次世代に豊かな地球を残すことが求められております。環境負荷低減を目指す企業活動を通じて、地球環境に配慮したサステナブルな社会の実現に貢献していきます。

・再生可能エネルギーの普及

 

 

・省エネ・創エネ、ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)化の推進

・事業活動におけるCO排出量削減

・自然環境と生物多様性の保全

※サステナブル:地球環境を保全しつつ持続的発展が可能な

 

■ビジョンの達成に向けて

3つのイノベーションの融合により、新たな価値を創造するスマート イノベーション カンパニーを目指します。

①事業構造のイノベーション

ビジネスモデルの多様化とグローバル展開の加速、及び、グループ経営力の向上

 

②技術のイノベーション

建設事業の一層の強化に向けた生産技術の革新と未来社会のメガトレンドに応える先端技術の開発

 

③人財のイノベーション

多様な人財が活躍できる“働き方改革”の推進と社外人財との“共創”による「知」の集積

 

■目指す収益構造

スマート イノベーション カンパニーへの進化により、2030年度に連結経常利益2,000億円以上を目指します。

連結売上利益の構成は、事業別では、建設65%、非建設35%、地域別では、国内75%、海外25%を想定しております。

 

 

「中期経営計画〈2024‐2026〉」

■位置付け及び基本方針

社是「論語と算盤」及び経営理念を体現し、長期ビジョン「SHIMZ VISION 2030」で示した目指す姿を実現するための実行計画として中期経営計画〈2024‐2026〉を位置付けるとともに、役員・従業員一人ひとりが新たなマインドセット「超建設」を共有し、本中期経営計画を実践することとしました。

中期経営計画〈2024‐2026〉の基本方針は、前中期経営計画〈2019‐2023〉の振返りにより浮き彫りとなった諸課題をふまえ、「持続的成長に向けた経営基盤の強化」としました。この基本方針及びそれに基づく事業展開は、「超建設」のマインドセットの下、レジリエント・インクルーシブ・サステナブルな社会の実現に象徴される「お客様・社会への提供価値」を常に念頭において実践してまいります。

※超建設:当社グループにおいて大切にしてきた価値を基礎とし、既存の事業や組織の枠を超えて、お客様や社会の本質的なニーズや課題を積極的に探究しつつ、建設をはじめとするあらゆる事業を通じて、お客様や社会に新しい価値を提供し、その結果、当社グループも共に成長していくという考え方

 

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■経営基盤の強化

中期経営計画〈2024‐2026〉を構成する第一の柱として「経営基盤の強化」を挙げております。経営基盤のコアである人財と組織力の成長と、当社グループ内の諸機能の連携を強化することによりサステナビリティ経営の進化を図ることを通じ、戦略実行力の向上を目指します。

 

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①人財と組織力の成長

当社グループは、人財の成長を支援する仕組みを整備することによって「挑戦し共創する多様な人財」を育成し、そうした人財が経営戦略・事業戦略の実現に貢献するとともに、経営が更なる人財の成長機会・基盤を提供することで、従業員の自己実現と自律的なキャリア形成を可能にします。それらが好循環の原動力となり、経営基盤のコアである「人財の力・組織カルチャー・マネジメント力」を強化することで、経営戦略・事業戦略の実現と、人財・従業員の自己実現・自律的なキャリア形成を推進していきます。

 

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②機能連携の強化によるサステナビリティ経営の進化

企業の社会的責任と事業機会の探究を両立しながら環境・社会・経済の全てで持続可能性を実現するサステナビリティ経営を体現します。これに向けて、重要視する機能としてマーケティング、技術開発・知的財産、デジタル、グローバル化、サプライチェーン、グループ経営の6つを特定し、全社横断でそれらの連携を強めて戦略実行力を強化することにより、企業の社会的責任と事業機会探究の両面でサステナビリティ経営の進化を目指します。

 

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■非財務KPI

中期経営計画〈2024‐2026〉では、経営基盤の強化で掲げた「人財と組織力の成長」及び「機能連携の強化によるサステナビリティの進化」をふまえ、従業員のエンゲージメント・多様性・専門性に加え、ESGの観点で選定した合計9つの指標を設定し、PDCAサイクルによるモニタリングを実施します。

 

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■事業戦略

中期経営計画〈2024‐2026〉における事業戦略では、各事業セグメントの成長段階と位置付けの整理に基づき、各事業に応じた戦略の方向性を策定し、事業ポートフォリオの充実を図ってまいります。

 

①更なる収益力向上を目指す事業:建設事業(建築・土木)

当社グループの建設事業は、「高収益な事業体質への転換」及び「ものづくりの魅力を追求できる生産体制の再構築」の2つの方向性を目指して重点施策を構成し、技術・品質の追求と収益力向上に取り組みます。同時に、建設業界が共通に抱える課題にも挑戦を続け、持続可能な建設業の実現を目指します。

また、社会ニーズに照らし、建築・土木事業における今後の有望マーケットとしてリニューアル、環境、防災・減災、原子力発電関連、伝統・最先端の木質建築、スマートシティ、国土強靭化、インフラ更新、再生可能エネルギー関連施設等を見定め、着実に対応力強化を図っていきます。

 

②収益拡大と安定化を目指す事業:不動産開発事業、エンジニアリング事業

両事業は事業規模拡大のフェーズにあり、成長と同時に収益の安定化を目指し、技術・ノウハウの蓄積と深化による成長軌道の維持及び発展領域への挑戦に努めます。

不動産開発事業では取組みアセットの多様化、既存ビルのバリューアップ事業、アイマーク、S・LOGI、VIEQU等のグループ不動産ブランド価値の向上、グループ内連携による不動産バリューチェーン拡大等に注力してまいります。

エンジニアリング事業では、再生可能エネルギー・GX、先端・戦略製品の生産施設、DX、環境浄化等の成長分野における受注拡大に注力するとともに、洋上風力のトップランナーとして、発電施設EPC事業とSEP船運用事業で収益安定化・受注拡大を目指します。

 

③スケール化を目指す事業:グリーンエネルギー開発事業、建物ライフサイクル事業

これらの事業が手掛ける市場は、今後サステナビリティの観点で拡大・多様化が期待されることから、成長ドライブ加速のための投資を継続します。

グリーンエネルギー開発事業では、再エネの電源開発と電力小売、そしてHydro Q-BiC等の水素活用技術の開発・実装に注力してまいります。

建物ライフサイクル事業では、建物のライフサイクルを通じ、当社グループ全体で一貫したサービス提供と、DX、GXニーズに対応した付加価値の向上を図り、お客様の大切な不動産の価値を高め、長寿命化を実現するソリューションパートナーを目指します。

 

④ビジネスモデルの確立を目指す事業:フロンティア事業

フロンティア領域として、宇宙開発、海洋開発、自然共生の3分野で、それぞれ技術開発と事業モデルの確立・収益化を目指し、成長投資を継続します。

宇宙開発においては、小型ロケット打上げ事業をはじめとした宇宙輸送関連事業の収益化、高精度衛星測位サービス QuartetS(カルテットエス)の事業化及び月資源利用・月面構造物建設等の研究開発を推進します。

海洋開発では、浮体構造物やその係留に関する設計・施工技術の確立を進めるとともに、浮体式建築の市場創出に向けた活動を推進します。

自然共生については、北海道の大規模ハウスによるイチゴ栽培をはじめとした地域農業の再生・地方創生への貢献に努めます。

 

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■グローバル展開

海外拠点の経営自立化を重点的に推進し、エリアごとの事業機会・リスク・収益性を見究め、進出国に根差した持続的・安定的な事業展開を図る中で収益力強化を目指すとともに、拠点経営を支える人財、ガバナンス、国内外の連携及びローカルパートナーとの連携促進・M&Aを含むグローバルなプラットフォームを進化させ、東アジア・東南アジア、西南アジア・アフリカ、北米の主要エリアで、更なる飛躍を目指します。

 

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■業績目標及び財務KPI

経営基盤強化と事業戦略・グローバル展開の着実な取組みにより、収益力向上と持続的成長に向けた堅固な足場を再構築します。

 

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■キャッシュアロケーション

3年間で稼得する営業キャッシュフローに加え、賃貸用不動産や政策保有株式の着実な売却を通して得たキャッシュを、持続的成長に向けた投資と、積極的・継続的な株主還元に振り向け、更なる企業価値の向上に努めてまいります。

 

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■資本コストや株価を意識した経営の実現

資本コストや株価を意識した経営の実現に向け、中期経営計画〈2024‐2026〉に定めた事業戦略、成長投資、資本政策、株主還元などを着実に実行することにより、株主資本コストを上回る収益力の確保・維持に加え、持続的成長期待の創出を推進することで、企業価値向上とPBRの早期改善を目指してまいります。

 

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「中期経営計画〈2024‐2026〉」の詳細については、下記URLよりご参照ください。

https://www.shimz.co.jp/company/about/strategy/index.html#sec4

 

(2) 経営環境

2024年度の当社グループの経営環境については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ①経営成績の分析」に記載のとおりであります。

2025年度の日本経済は、雇用・所得環境の改善や、堅調な企業収益等を背景とした緩やかな回復が期待されますが、通商政策など米国の政策動向や金融資本市場の変動等の影響を受けるおそれがあります。

建設業界においては、公共投資は堅調な推移が見込まれますが、海外経済の不確実性が民間設備投資に与える影響や建設コストの上昇傾向の継続に加え、担い手不足の一層の進行等の懸念材料もあり、動向を引き続き注視する必要があります。

 

(3) 対処すべき課題

■中期経営計画〈2024‐2026〉の達成に向けた取組み

「経営基盤の強化に向けた新たなスタートの年」と位置付けた2024年度は、収益力向上や品質確保などの経営課題に全社を挙げて取り組んでまいりました。2025年度も、新たな経営体制の下、引き続き中期経営計画〈2024‐2026〉の4つの柱である①経営基盤の強化、②事業戦略、③グローバル展開、④資本政策・成長投資を着実に実行し、当社グループの企業価値向上と持続的成長の実現に結び付けてまいります。

 

①経営基盤の強化

経営基盤の強化のうち「人財と組織力の成長」においては、経営戦略・事業戦略と連動した人財マネジメント体系の再構築を目指して、人事制度の改正やスキル、適性等の可視化・一元管理システムの導入、人財育成施策の整備などを進めております。従業員が成長する機会・体験とそのための制度や仕組みを提供することで、「挑戦し共創する多様な人財」を育成し、経営基盤のコアである「人財の力」、「組織カルチャー」、「マネジメント力」の強化を実現してまいります。

また、中期経営計画で重要視する6つの機能(マーケティング、技術開発・知的財産、デジタル、グローバル化、サプライチェーン、グループ経営)の連携強化に向けた取組みとして、部門単独では解決できない課題に対する部門横断の対話や深堀りを推進しております。今後も柔軟かつスピード感ある機能連携を目指し、企業の社会的責任の遂行と事業機会の探究を両立したサステナビリティ経営を実践してまいります。

 

②事業戦略

事業戦略については、事業ごとの重要課題・重点取組み事項への確実な対処、実行により、事業ポートフォリオの最適化を図ってまいります。

 

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③グローバル展開

グローバル展開においては、拠点経営の自立化による進出国に根差した持続的・安定的な事業展開の実現に向けて、海外直轄拠点を会社組織とみなすカンパニー制を導入しました。海外拠点のガバナンス強化と拠点の力量に応じた権限移譲を進めることで、拠点経営を支えるグローバルプラットフォームの進化を図ってまいります。

なお、2024年11月にシンガポールの内装工事会社「Grandwork Interior Pte Ltd」を子会社化、2025年2月に米国の改修・内装工事会社「Cross Management Corp.」をグループ会社化しました。引き続き、グローバル事業の成長戦略の一環として、事業の強化・拡大に資するアライアンスやM&Aを進めていく方針であります。

 

 

④資本政策・成長投資

業績、財務KPI、非財務KPIの目標に対する2024年度の実績は以下のとおりであります。

 

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成長投資については、中期経営計画〈2024-2026〉の期間中における計画値3,600億円に対し、2025年3月末時点で698億円の実績となりました。事業の着実な推進により営業キャッシュフローを増加させるとともに、賃貸不動産等の売却や政策保有株式の縮減を継続し、創出したキャッシュを持続的成長に向けた投資、株主のみなさまへの還元に配分してまいります。

 

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引き続き、資本コストや株価を意識した経営の実現に向け、成長戦略、資本政策、株主還元を柱として、株主資本コストを上回る収益力の確保・維持に加え、持続的成長期待の創出を推進することで、企業価値とPBRの向上に取り組んでまいります。

 

■政策保有株式に関する方針・縮減状況

 

①政策保有株式に関する方針

当社は、営業政策上の必要性がある場合、主に「取引先との信頼関係の維持・強化」の目的で、政策保有株式として取引先の株式を保有しております。主要な政策保有株式については、取締役会が保有によって得られる当社の利益と取得額、株価変動リスク等を総合的に勘案して取得の可否を判断しております。また、保有株式については、毎年、個別銘柄毎に、保有に伴うコストやリスク、営業上の便益等の経済合理性を総合的に勘案のうえ、取締役会にて保有の必要性を検証しており、検証の結果、保有意義が希薄化した株式については、取引先との信頼関係を確認しながら、売却を進めております。

 

②政策保有株式の縮減状況

当社は、2024年11月12日開催の取締役会において、「資本コストや株価を意識した経営」を一層推進するため、政策保有株式の残高について、従来の目標(2027年3月末までに連結純資産の20%以下)については1年前倒しの2026年3月末までに達成するとともに、2027年3月末までに連結純資産の10%以下とする目標を新たに設定しております。

2024年度に売却した上場株式の銘柄数は31銘柄(一部売却を含む)、売却額は586億円となり、2018年度から2024年度までに売却した上場株式の銘柄数は91銘柄(一部売却を含む)、売却額は2,086億円となりました。その結果、上場株式の銘柄数は、2018年3月末時点の187銘柄から、2025年3月末時点では123銘柄へと減少しております。

なお、2025年3月末時点における政策保有株式残高の連結純資産に対する割合は27.0%となっております。

 

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2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

当社は「論語と算盤」を社是とし、その考え方を基に、「真摯な姿勢と絶えざる革新志向により 社会の期待を超える価値を創造し 持続可能な未来づくりに貢献する」ことを、経営理念として定め、サステナビリティを強く意識し、事業活動を行っております。

2024年5月に策定した中期経営計画〈2024‐2026〉では、企業の社会的責任と事業機会の探究を両立し、環境・社会・経済の全てにおいて持続可能性を実現するサステナビリティ経営の推進を掲げております。

 

(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

当社では、社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置し、当社グループのサステナビリティに関する方針と重点施策並びにサステナビリティに関する情報開示の審議・決定を行っております。なお、気候変動や人権等に関わるリスク情報などの重要事項については、サステナビリティ委員会から取締役会に報告を行い、監督する体制を構築しております。併せて、社長を委員長とする「リスク管理委員会」にてリスク情報の共有を行っております。

 

<サステナビリティ推進に関するガバナンス体制図>

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(注)体制図は2025年3月31日時点のもの

 

(2)マテリアリティの特定

当社は、SDGsをはじめとするさまざまな社会課題や当社の社是、経営理念、長期ビジョン等を勘案し、「社会への影響度」と「自社にとっての影響度」の2つの側面から重要度を検討のうえマテリアリティ(重要課題)を特定し、サステナビリティを強く意識した事業活動を推進しております。

 

<当社のマテリアリティ(7つのカテゴリーに分類して整理)>

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「マテリアリティ」の詳細については、下記URLよりご参照ください。

https://www.shimz.co.jp/company/csr/materiality/

 

(3)環境に関する取組み

グループ環境ビジョン「SHIMZ Beyond Zero 2050」において、当社グループが目指す持続可能な社会を「脱炭素社会」「資源循環社会」「自然共生社会」と定めております。2050年までに自社活動が環境に与える負の影響をゼロにするだけでなく、お客様や社会にプラスの環境価値を提供し、SDGsが目指す持続可能な社会の実現に貢献していきます。

 

<SHIMZ Beyond Zero 2050>

 

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「SHIMZ Beyond Zero 2050」の詳細については、下記URLよりご参照ください。

https://www.shimz.co.jp/beyondzero/

 

 

①気候変動(TCFD提言に基づく気候関連財務情報開示)

当社グループは、気候変動による事業への影響を重要な経営課題と捉え、TCFD提言に基づく、気候関連のガバナンス体制を整え、リスクと機会を分析のうえ、戦略の立案及びリスク管理を行い、指標と目標を定めて取り組んでおります。2020年からTCFD提言に沿った気候関連の財務情報を開示するとともに、毎年更新しております。

※TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures(気候関連財務情報開示タスクフォース)

 

a.ガバナンス

長期ビジョン「SHIMZ VISION 2030」と「中期経営計画〈2024‐2026〉」において、気候変動を含む環境問題を経営に重要な影響を与える課題の一つと位置付けております。

「(1) サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理」で示すサステナビリティガバナンス体制に基づき、気候関連の方針、重点施策及び情報開示内容は、サステナビリティ委員会で審議を行い、そのうち重要事項は取締役会に報告され、監督する体制を構築しております。また、本委員会での審議に基づく施策等は、全社及びグループ会社に伝達され、主要サプライヤーも含めた環境に関するガバナンス体系を構築しております。

 

b.戦略

当社グループの事業に影響を与える気候関連のリスクと機会は、脱炭素社会の構築に必要な政策や規制の強化及び市場の変化等の「移行」に関するものと、地球温暖化による急性的・慢性的な「物理的変化」が考えられます。2024年度は、これまで採用していたシナリオの一部追加を行うとともに、分析結果及び最新の国内外情勢等も踏まえ、事業への影響度、影響時期及び当社の対応の一部見直しを行いました。

<主な変更点>

・採用シナリオ

移行シナリオ :産業革命前から今世紀末の気温上昇を2℃を十分に下回る水準に抑えるシナリオ(IEA-SDS)に加え、同気温上昇を1.5℃未満に抑えるシナリオ(IEA-NZE2050)を追加

物理的シナリオ:同気温上昇が4℃を超えるシナリオ(RCP8.5)(変更なし)

 

・移行リスク

要因:脱炭素社会に向けた各種規制の強化

国土交通省を中心にCO₂の情報開示制度化が議論されていることを踏まえ、影響度と影響時期を変更

 影響度:「中」→「大」、影響時期:「中期~長期」→「中期」

要因:炭素価格付(カーボンプライシング)の導入

GX-ETS制度や炭素賦課金制度の進捗を踏まえ、影響時期を変更

 影響時期:「中期~長期」→「短期~中期」

 

・移行機会

要因:省エネルギービルのニーズ拡大

国土交通省を中心にCO₂の情報開示制度化が議論されていること、特に建築物のライフサイクルカーボン算定・評価の制度化に向けた検討状況が推進されていることを踏まえ、影響時期を変更

 影響時期:「中期」→「短期~中期」

 

・物理的リスク

要因:気象災害の頻発・激甚化

気候変動対策への政治的二極化、気候変動が一層進行する可能性を踏まえ、影響度を変更

 影響度:「中」→「大」

 

<気候関連の主な機会とリスクのうち、当社グループの事業に与える影響度が「大」となる要因と対応>

 

 

要因

事業への影響

影響

時期※1

当社の主な対応(抜粋)

移行

リスク

脱炭素社会に向けた各種規制の強化

・高環境負荷に対する新築ビル規制が導入され、新築ビル建設コストが上昇し、需要が減少する。一方でリニューアル等の需要が増加するため、それに対応する組織体制が必要となる。

中期

・施設運用サービスを担当するBSP事業を組織

・リニューアル営業を強化

・ビルマネジメントの人材育成(グループ会社の技術研修センターを活用)

・コストパフォーマンスを考慮した高い環境性能ビルを提供

機会

省エネルギービルのニーズ拡大

・ZEBの新規案件や省エネルギーリニューアル案件の需要が増加する。

短期

~中期

・ZEBの設計施工を推進

・サステナブル・リノベーションの実績を基に、既存施設のバリューアップを推進

再生可能エネルギーのニーズ拡大

・再生可能エネルギー関連の事業が拡大する。

・再生可能エネルギー施設建設の需要が増加する。

短期

~中期

・太陽光、風力、バイオマス、地熱、小水力等の再生可能エネルギー事業を推進

・電力小売り事業による低炭素電力の供給

・大型洋上風力発電施設建設のため、自社保有SEP船「BLUE WIND※2」を活用

・大型陸上風車建設用タワークレーンの開発・稼働

物理的

リスク

夏季の平均気温上昇

・技能労働者不足の課題が、屋外労働環境の悪化により、さらに深刻化する。

・屋外での作業者を中心に、熱中症等の健康被害が増加する。

中期

・ロボット、ICT、AI等を活用し、現場の省人化と生産性の向上を推進

・働き方改革や熱中症対策など、労働環境を改善

気象災害の頻発・激甚化

・サプライヤーの被災により、資材や労務等の調達が困難になる。

・現場の操業が困難になる他、第三者被害を与えるリスクも高まる。

短期

~中期

・グループ会社や協力会社を中心に、サプライヤーとの連携を強化

・施工時の仮設計画で、第三者を含む防災対策を検討

機会

国土強靭化政策の強化

・洪水や暴風雨対策のためのインフラ建設やメンテナンス、建物リニューアル工事が増加する。

短期

~中期

・インフラ整備事業の受注活動強化

・災害が多発した場合の復興需要への対応に向けた機動的な体制づくり

※1 短期:3年以内、中期:3年超~10年以内、長期:10年超と設定

※2 洋上風力発電施設の建設工事において、世界最大級の搭載能力及びクレーン能力を備えた当社保有の自航式SEP船

 

 

 

c.リスク管理

当社グループは、全社的なリスク管理体制及び管理プロセスを通じて、「気候変動リスク」を主なリスクの一つとして捉えたうえで、グループ環境ビジョン「SHIMZ Beyond Zero 2050」の下、気候変動をはじめとする環境に関連する事業リスクの最小化と、機会の最大化を目指しております。

サステナビリティ委員会において、気候関連のリスクについて審議され、重要事項は取締役会に報告、リスク対応の施策等は、全社及びグループ会社に伝達されております。また、本委員会では、地球温暖化に対するリスク管理の一環として、事業によるCO₂排出量の削減目標を設定し、目標を達成するための具体的な施策(建設作業所における使用エネルギーの軽油から電力へのシフト、再生可能エネルギー由来電力の使用拡大等)を決定するとともに、CO₂排出量の定期的監視を実施しております。

これらのリスク管理を通じて、今後、多様化・広域化・激甚化する気候変動に関するリスクに対処していきます。

 

d.指標と目標

当社グループでは、気候関連のリスクが経営に及ぼす影響を評価・管理するため、CO₂総排出量を指標とし、SBTに基づいた中長期のCO₂削減目標(SBTイニシアティブから認証を取得)を設定しております。現在の目標がWB2.0℃目標(2℃を十分に下回る水準)に基づいたものであるため、現在、1.5℃目標に基づき見直すとともに、SBTの再認証取得手続きを行っております。

※SBT:Science Based Targets(科学的根拠に基づく目標)。世界の平均気温の上昇を「1.5℃未満」に抑えるための、企業の科学的な知見と整合した温室効果ガスの排出量削減目標

 

<CO₂削減目標と実績(国内外連結)>                (単位:t-CO₂)

対象Scope

基準排出量

排出量実績

目標年排出量

2023年度

2024年度実績

2024年度

2035年度

2050年度

Scope1※1

Scope2※2

325,340

算定中

310,328

(△4%)

127,696

(△61%)

0※5

(△100%)

Scope3※3

(Category1+11※4)

9,451,379

算定中

5,818,505

(△38%)

0※5

(△100%)

※1 重機等の燃料使用に伴う排出(直接排出)

※2 購入した電力・熱の使用に伴う排出(電力会社等による間接排出)

※3 サプライチェーンにおけるその他の間接排出

※4 Category1(購入した製品・サービス)建設資材の製造工場等でのCO₂排出量

Category11(販売した製品の使用)施工したビルの運用時CO₂排出量

※5 SBT目標は△90%。残余排出量はCDR(Carbon Dioxide Removal:二酸化炭素除去)技術等で相殺予定

「TCFD提言に基づく気候関連の情報開示」の詳細については、下記URLよりご参照ください。

https://www.shimz.co.jp/company/csr/environment/tcfd/

 

 

②自然関連課題(TNFD提言に基づく自然関連財務情報開示)

当社グループは、気候変動と同様に、自然関連の事業への影響を重要な経営課題と捉え、TNFD提言に基づく自然関連のガバナンス体制を整え、リスクと機会を分析のうえ、戦略の立案及びリスク管理を行い、指標と目標を定めて取り組んでおります。2024年からTNFD提言に沿った自然関連の財務情報を開示するとともに毎年更新しております。

※TNFD:Taskforce on Nature-related Financial Disclosures(自然関連財務情報開示タスクフォース)

 

a.ガバナンス

長期ビジョン「SHIMZ VISION 2030」と「中期経営計画<2024-2026>」において、気候変動が事業に与える影響と同様に自然関連の影響が経営に重要な影響を与える課題の一つと位置付けております。

「(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理」で示すサステナビリティガバナンス体制に基づき、自然関連の方針、重点施策及び情報開示内容は、サステナビリティ委員会で審議を行い、そのうち重要事項は取締役会に報告され、監督する体制を構築しております。また、本委員会での審議に基づく施策等は、全社及びグループ会社に伝達され、主要サプライヤーも含めた環境に関するガバナンス体系を構築しております。

 

b.戦略

建設事業、不動産開発事業、洋上風力の施工などを担うエンジニアリング事業及び太陽光発電事業の4事業におけるバリューチェーン上の自然への依存及び影響について、TNFDが推奨するENCORE※12024更新版を使用して分析を行いました。その結果、「バリューチェーン上流における木材への依存と影響」を4事業全てで確認しました。ENCORE2024更新版では「建設工事による土地利用の変化に起因する陸域生態系への影響」は低く評価されることとなりましたが、建設事業を担う企業として、陸域生態系への影響を低減し、ネイチャーポジティブ実現に貢献できるよう当社の対応を継続しております。また、シナリオ分析を用いたリスクと機会の評価については、2024年度に実施した分析結果に対し、IPBES※2「ネクサス評価報告書」に掲載されている6種類のシナリオ群の活用や、TCFDでのシナリオ分析の見直しを反映して更新を行っております。こうしたリスクと機会の定期的な評価や管理により、当社グループのレジリエンス向上を図っております。

木材への依存・影響については、持続可能なコンクリート型枠利用の戦略の下、協力会社へのアンケート調査や勉強会の実施に加え、国産材を中心とする代替材のトライアルを現場で実施するなど、移行に向けた本格的な準備を進めて、建材における気候変動・自然再興・資源循環の統合的解決に向けた取組みをリードする重点施策としております。

また、陸域生態系への影響に対しては、「自然KY※3」を社内ウェブアプリとすることで、誰もが利用可能な状態としております。ミティゲーションヒエラルキー(回避、低減、再生、オフセット)の考えに基づく営業段階からの取組みは実施率を管理値として推進中であります。自然KYを起点とし、重要な自然の毀損を回避するリスク管理や、自然再生の機会を発見することで、グリーンインフラの活用等による自然再興に貢献することを目指します。

※1 ENCORE:Exploring Nature Capital Opportunities, Risks and Exposure(セクター別の自然資本への依存と影響を評価するツール)

※2 IPBES :Intergovernmental Science-Policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム)

※3 自然KY  :ある土地における自然の状態を周辺の植生自然度などを基に評価する自社開発技術

 

 

<自然関連の主な機会とリスクのうち、当社グループの事業に与える影響度が「大」となる事象と対応>

 

事象

  R:リスク

  O:機会

影響

時期※1

当社の対応

上流

トレーサビリティや環境認証への要求

新技術による優位性の確保

短期

~中期

・リサイクル、新建材の技術開発

建設資材の入手困難・不安定化(災害、資源枯渇)

サプライチェーンの再構築・強化、新技術による優位性の確保

短期

~中期

・サプライヤーとの関係構築(CSR調達アンケート)

・リサイクル、新建材の技術開発

直接操業

土地改変への強い規制や土地利用の抜本的な見直し

新規建設需要の減少

長期

・新たな建設領域への投資(「BLUE WIND」など)

・土地利用高度化に対応する技術力向上

下流

総量規制を含む再資源化への強い要請

設計段階からの強い制約

長期

・「新Kanたす※2」による副産物管理

・設計施工から建物解体撤去を見据えた4R活動の徹底

解体技術が施工能力に直結

長期

・リサイクルルートの開拓、積極採用

※1 短期:3年以内、中期:3年超~10年以内、長期:10年超と設定

※2 当社が開発した建設副産物総合管理システム

 

c.リスク管理

上流段階の原材料調達では、調達先企業に「シミズグループCSR調達ガイドライン」に基づいたアンケート調査を実施することで、状況の把握と働きかけを行っております。

直接操業における取組みでは、「自然KY」を活用し周辺の自然度が高い建設現場を網羅的に把握しております。その中で一定の事業規模以上である「建設所」を「優先地域」として特定し、自然環境に関する配慮の状況や事故等の有無を個別にヒアリングしております。

下流段階にあたる建設施設の運営及び解体については、建設副産物の管理システム「新Kanたす」を軸に、法令遵守と建設副産物のより一層の発生抑制と再資源化に取り組んでいきます。

 

d.指標と目標

自然への依存と影響に関する指標と目標は以下のとおりです。

 

<自然への依存と影響に関する指標と目標>

自然の変化の要因

指標

測定項目

実績

目標

陸・淡水・海洋の

利用の変化

総空間フットプリント

工事範囲の面積

工事範囲の集計

陸・淡水・海洋の利用変化の範囲

工事による土地利用変化範囲の面積

工事による土地利用変化範囲の集計

資源の利用

陸・淡水・海洋から調達する高リスク天然一次産品の量

木材

型枠合板の種別内訳

2030年、外国産合板(非認証材)ゼロ

 

「TNFD提言に基づく自然関連財務情報開示」の詳細については、下記URLよりご参照ください。

https://www.shimz.co.jp/company/csr/environment/tnfd/

 

 

 

(4)人財育成・社内環境整備に関する取組み

当社グループでは、サステナビリティ経営の実現に向けて人財や社内環境の観点から課題を整理し、マテリアリティに定める「働きがいと魅力あふれる職場づくり」「挑戦し共創する多様な人財の育成」「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(以下、「DE&I」という。)及び「人権の尊重」並びに社是「論語と算盤」を基本とした「倫理意識の涵養」を主要テーマとして、人財育成及び社内環境整備に取り組んでおります。

 

①ガバナンス及びリスク管理

「働きがいと魅力あふれる職場づくり」「DE&I」及び「人権の尊重」についてはサステナビリティ委員会を、「挑戦し共創する多様な人財の育成」については人財開発委員会を、また「倫理意識の涵養」については企業倫理委員会を、それぞれ所管委員会とし、重要な戦略や方針の審議及び重要施策のモニタリングを実施する体制を構築しております。

また、各主要テーマに関するリスクについては、所管の各委員会において、対応策、再発防止策などの処置を講じております。さらに、当社グループの事業遂行上、重大な脅威となりうる事象については、上記に加えて、社長を委員長とするリスク管理委員会においてモニタリングするとともに、取締役会に報告するリスク管理体制を整えております。

 

②戦略並びに指標と目標

各主要テーマに基づき、以下の人財や社内環境に関する施策を推進しております。

 

a.働きがいと魅力あふれる職場づくり

当社は、個人の行動変容や職場内・組織間の連携強化による生産性の向上を通じて、企業価値(業績)の創出を行うべく、「働きがい」の継続的な向上に取り組んでおります。当社が目指す姿について従業員の理解を深め、ベクトルを合わせるために「働きがいと魅力あふれる職場づくり」に向けたグランドデザインを策定し、パルスサーベイやエンゲージメント調査を活用した課題の見える化を行うとともに、1on1ミーティングや職場内対話会といった対話施策による意識・行動変革を進めております。

 

<「働きがいと魅力あふれる職場づくり」に向けたグランドデザイン>

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中期経営計画〈2024‐2026〉では、個人の働きがいに加え、職場内・組織間の連携強化にも着目した「エンゲージメントスコア」を新たな管理指標として設定し、全従業員を対象としたエンゲージメント調査を通じて定量的に把握しております。

2026年度までに4.0の達成という高い目標を継続して掲げ、全社一体となって組織風土改革に取り組んだ結果、2024年度の結果は3.6となりました。

 

<主な取組み>

・働きがいやエンゲージメント等の定量的な把握を目的とした各種サーベイの実施(2018年10月~)

・部下の成長支援や成果創出を促す1on1ミーティングの実施(2022年10月~)

・職場の信頼関係を高め、個人やチームとしての成長を促す職場内対話会の実施(2024年10月~)

 

<エンゲージメントスコアの状況>

 

2026年度目標

2024年度実績

エンゲージメントスコア

4.0以上

3.6

 

また、従業員の健康増進に向けて、全社的な推進体制を整備し、必要な施策を継続的に実行しております。

<主な取組み>

・勤務時間中の喫煙禁止と本社の喫煙所の廃止(2021年10月~)

・多様な相談窓口の設置、各拠点への常勤産業保健スタッフの配置などメンタルヘルスの向上をサポートする体制の強化(2022年4月~)

・職場環境改善に向けたフォローの強化(職場巡回、希望者との面談など)(2022年4月~)

・食事・睡眠の質向上に向けた施策の全社展開(2022年10月~)

・自身の健康診断結果等を閲覧できるシステムの導入(2025年3月~)

・健康理解(月経、更年期、不妊治療等)の向上を目的とした社内教育(eラーニング)の実施(2025年3月~)

 

b.挑戦し共創する多様な人財の育成

当社は、デジタル化・グローバル化といったダイナミックな環境変化に迅速に対応し、変化をビジネスチャンスとして企業の持続的成長に繋げるためには、自律性とチャレンジ精神が重要と考え、優秀な人財の確保・育成に向けて、人財管理の仕組みづくりや計画的かつ継続的な人財投資を行っております。加えて、グローバルに通用し、改革を率先するリーダー人財の育成の場を拡充するとともに、チャレンジする機会を創出し、事業家マインドを持った人財の育成と活用を進めております。

2023年には、イノベーションと人財育成の拠点「温故創新の森 NOVARE」を開設しました。当該施設を活用して、多様なパートナーとの共創、建設事業の枠を超えた活動を実践し、レジリエント・インクルーシブ・サステナブルな社会の実現に向け、50年先・100年先を見据えて、当社と社会の発展に貢献できる人財の育成を目指します。

また、中期経営計画〈2024‐2026〉で掲げる建設事業における技術・品質の追求、収益力向上に向け、挑戦し共創する多様な人財を育成するべく、DXコア人財の育成と建設基幹資格取得率を新たな管理指標として掲げ、デジタル技術とデータを俯瞰的に活かせる人財の増強を図るとともに、当社の事業継続に必要な基幹資格の取得支援に取り組んでおります。

 

<主な取組み>

・内定期間も含めた新入社員への一級建築士取得支援施策の導入(2020年10月~)

・従業員の起業を支援するコーポレートベンチャリング制度の開始(2022年5月~)

・公募留学制度の開始(2022年5月~)

・公募職務に対して希望者が自ら手を挙げるジョブチャレンジ制度の開始(2022年11月~)

・手上げ式研修(公募型ビジネススキル研修)の実施(2023年7月~)

・シミズ・デジタル・アカデミー「DXコア人財育成プログラム」の開講(2024年10月~)

 

<建設基幹資格取得率の状況>

 

2026年度目標

2024年度実績

建設基幹資格取得率

80%以上維持

81.6

 

<DXコア人財の育成の状況>

 

2026年度目標

2024年度実績

DXコア人財の育成

120名育成

・全部門配置

47

 

c.DE&I、人権の尊重

当社は、性別・国籍・障がいの有無といった外面的な多様性のみならず、個々の専門性や価値観、キャリアなど内面的な多様性を尊重することで、自由な発想や新しい挑戦をより一層促進しながら、誰もがいきいきと能力を発揮できる風土の醸成を目指しております。

2024年度はLGBTQ+に関する取組みを実践している企業を顕彰するPRIDE指標において、最高評価であるゴールドを受賞しました。

また、中期経営計画〈2024-2026〉では、女性管理職比率と障がい者雇用率を管理指標として設定し、更なるDE&Iの推進に取り組むことで、企業文化を含む、企業変革を計画的に進めていきます。

 

<主な取組み>

・障がいのある従業員の活躍推進と全従業員の意識啓発を目的とした「チャレンジフォーラム」の開催(2018年~)

・人権デュー・ディリジェンスの取組み(2019年~)

・LGBTQ+理解促進施策の実施(2019年~)

・改正育児・介護休業法の施行に先駆けた男性版産休制度「パタニティ休業制度」の導入(2021年10月~)

・自身又は配偶者の妊娠がわかった段階で上職者と休業前後の働き方等のすり合わせを行い、対象者が安心して休めることを目的とした「育児とキャリアの面談」の導入(2021年10月~)

・多様な人財確保のための通年採用の実施(2022年4月~)

・社内のジェンダーギャップ解消を目的とした「シン・ダイバーシティ」活動の展開(2022年5月~)

・不妊治療支援金制度の導入(2023年11月~)

 

<女性管理職比率の状況(2025年3月末時点)>

 

2026年度目標

(2030年度目標)

2024年度実績

女性管理職比率

6%以上

(10%以上)

4.9

※2025年4月1日時点の比率は5.6%であります。

 

<障がい者雇用率の状況(2025年3月末時点)>

 

2026年度目標

2024年度実績

障がい者雇用率

2.7%以上

2.5

 

 

3 【事業等のリスク】

 当社グループは、事業活動の遂行において直面し、あるいは事業活動の中で発生し得るさまざまなリスクを認識し、的確な管理を行うことによって、その発生の可能性を低下させるとともに、発現した場合の損失を最小限にとどめることにより、事業の継続的・安定的発展に努めております。中期経営計画〈2024‐2026〉においても「サステナビリティ経営の進化」を掲げ、「リスクヘッジとリスクテイクの徹底」を図っております。

 なお、リスクとは、以下の観点から、当社グループの経営において経営目標の達成を阻害する要因すべてを指します。

・当社グループに直接又は間接に経済的損失をもたらす可能性のあるもの

・当社グループ事業の継続を中断・停止させる可能性のあるもの

・当社グループの信用を毀損し、ブランドイメージを失墜させる可能性のあるもの

 

リスク管理体制及び管理プロセス

 当社グループは、リスク管理規程に基づき、社長が委員長を務めるリスク管理委員会の主導の下、以下に示すリスク管理プロセスを毎年度実行し、管理体制の更なる改善・強化を図っております。また、関連するリスクや課題が広範囲に及び、かつ流動的で変化が激しいことを認識した上で、必要に応じてリスクの追加や、管理体制・対応方針等の見直しを実施しております。

・リスク管理計画の策定(Plan)

a.リスクの評価とリスクマップへの反映:すべてのリスクに対し、経営への影響度及び事象の発生頻度を評価し、リスクマップを作成・更新しております。

b.「主なリスク」の抽出:リスクマップに基づき、当社グループの経営及び事業活動に特に重要な影響を及ぼす可能性があると判断されたリスクを「主なリスク」として抽出しております。

c.「重点リスク管理項目」の選定:「主なリスク」の中から、日常的に管理・モニタリングすべき項目として、全社の「重点リスク管理項目」を定めて各部門の運営計画に反映させております。

・リスク対応の実施(Do)

リスクが発現した場合、当該リスクの主管部門・部署へ伝達し、迅速かつ的確に対応するとともに、必要に応じて機能別会議・委員会を招集して対応策・再発防止策を審議・決定しております。

・リスクの管理状況のモニタリングと是正・改善措置(Check・Act)

リスク管理委員会において、「重点リスク管理項目」をはじめとする、本社部門、各事業部門及びグループ会社における機能別のリスク管理状況を定期的(年2回)にモニタリングし、必要に応じて是正・改善措置を指示するとともに、新たなリスクへの対応を図り、その対応状況を取締役会に定期的(年2回)に報告しております。

 

 

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リスクの影響度と発生頻度の評価

当社グループでは、「経営への影響度」と「事象の発生頻度」の二軸で構成される「リスクマップ」を、主管部門・部署の評価に基づき作成・更新しております。

「経営への影響度」は、人的被害、財物損害、信用失墜、利益損失、賠償責任の観点で、各リスクが発現した場合に、当社の経営、事業活動に与える損失の大きさを、定量的な要素だけでなく、定性的な要素も加味し、総合的に評価しております。

「発生頻度」は、各リスクが発現する可能性を、毎年起こる恐れがある事象、数年ごとに起こる恐れがある事象、10年に一度起こる恐れがある、もしくは当社が未だ経験していない事象に分けて評価しております。

なお、当該リスクを評価する際には、過去の事例を考慮し、当社に与え得る最も大きな事象を対象としております。

 

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主なリスク

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクには、次のようなものがあります。ただし、当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、現時点で予見しがたいリスクが顕在化し、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

当社グループは、こうしたリスク管理体制の下、下記に掲げる対応策を適宜実施することにより、リスクの回避又は軽減を図ることで、経営への影響の低減に努めております。

 

 

主なリスクの概要

主な対応策・取組み

頻度

影響度

倫理・法令違反リスク

当社グループの主な事業分野である建設業界は、建設業法、建築基準法、宅地建物取引業法、国土利用計画法、都市計画法、独占禁止法、さらには安全・環境、労働、ハラスメント関連の法令等、さまざまな法的規制を受けており、当社グループにおいて違法な行為があった場合には、業績や企業評価に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

社是「論語と算盤」を拳々服膺し、グループ全体で倫理意識の涵養とコンプライアンスの徹底を図っております。

(主な取組み)

・「企業倫理行動規範」の制定

・各種法令等に適切に対応するための関連規程類・社内体制の整備

・企業倫理委員会(委員長:社長)、企業倫理室の設置、内部通報制度(相談連絡先:企業倫理相談室、ハラスメント相談窓口、外部相談窓口、グループ会社相談窓口等)、内部監査体制の整備等、コンプライアンス推進体制の構築

・経営幹部向け企業倫理研修の定期的実施(グループ会社幹部含む)

・全従業員へのコンプライアンス研修(eラーニング含む)を毎年実施

・独占禁止法順守プログラムや行動規準等の整備、独占禁止法違反行為に対する再発防止策の継続実施

・社内媒体(社内報・法務ニュース等)を通じた啓発

・グループ会社も当社に準じてこれらの取組みを実施

低~中

中~大

 

 

 

主なリスクの概要

主な対応策・取組み

頻度

影響度

安全・環境事故リスク

施工段階における人身事故、環境事故・不具合、環境関連法令等違反が発生した場合には、その修復に多大な費用負担や工程遅延の発生、刑事・行政処分等による事業上の制約を受けることにより、業績や企業評価に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

「安全第一」「人命尊重」「環境汚染の防止」「生物多様性保全」の基本姿勢を社内で共有し、安全と環境への意識向上を図っております。

(主な取組み)

・安全・環境委員会の設置

・建設業労働安全衛生マネジメントシステム(COHSMS)の運用、安全衛生管理基本方針の制定、全社安全衛生計画の策定

・EMS(環境マネジメントシステム)の適切な運用、環境基本方針の策定

・事故・不具合事例のフィードバック、全社水平展開、PDCAの実施

低~中

中~大

技術・品質リスク

技術・品質面での重大事故・不具合が発生し、重大な契約不適合となった場合には、その修復に多大な費用負担や施工遅延の発生、信用の毀損等により、業績や企業評価に影響を及ぼす可能性があります。

 

「顧客第一」「品質確保」の事業姿勢を社内で共有し、品質管理の更なる強化を図っております。

(主な取組み)

・技術・品質委員会の設置

・品質管理を所掌する組織の設置

・QMS(品質マネジメントシステム)の適切な運用

・品質不具合事例のフィードバック、全社水平展開、PDCAの実施

低~中

中~大

建設市場の縮小リスク

国内外の景気後退等により民間設備投資が縮小した場合や、財政健全化等を目的として公共投資が減少した場合には、今後の受注動向に影響を及ぼす可能性があります。

 

取締役会で建設事業の受注見通し、案件量を毎月フォローし、執行役員会議・事業部門長会議等において適宜必要な対策を指示しております。

2030年を見据えた長期ビジョン「SHIMZ VISION 2030」において収益構造の転換を掲げ、中期経営計画〈2024‐2026〉によって各事業に応じた成長戦略を実行しております。

 

 

 

主なリスクの概要

主な対応策・取組み

頻度

影響度

担い手不足リスク

建設業の担い手である技能労働者の高齢化が進んでおり、団塊世代が大量離職するまでに、新規入職者の増加による世代交代が進まない場合、生産体制に支障をきたし、事業活動や業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

官民連携のうえ、担い手の確保・育成、処遇改善、建設業界の魅力向上等に取り組んでおります。

(主な取組み)

・適正な請負代金と工期の確保

・協力会社を通じた技能労働者の賃金水準の向上、社会保険加入促進

・週休二日推進

・協力会社への入職支援、優良技能者の表彰・手当支給、多能工化支援

・技能者訓練施設(清水匠技塾)を活用した、技能者の適応・定着教育の実施

・女性の活躍推進

・建設業の魅力をPRする広報活動

・外国人材の適正な活躍推進

・建設キャリアアップシステムの普及・推進

・省人化工法・建設ロボットの開発・採用、ICTの活用を含む生産性向上の取組み

建設資材価格及び労務単価の変動リスク

建設資材価格や労務単価等が、請負契約締結後に予想を超えて大幅に上昇し、それを請負金額に反映することが困難な場合には、建設コストの増加につながり、損益が悪化する可能性があります。

 

 

厳格な受注前審査の実施、見積提出時における業務範囲の明確化等により、リスクの低減に努めております。

工事請負契約の締結にあたっては、契約条件に労務賃金・建設物価の変動に基づく請負代金の変更に関する規定(スライド条項等)を含めた契約の徹底に努めております。

長時間労働リスク

建設業界全体においては、慢性的な人手不足が課題となっており、特に繁忙期においては、作業負荷が特定の従業員に集中することで、長時間労働が発生するリスクがあります。こうした状況が継続する場合には、従業員の安全や健康に悪影響を及ぼすだけでなく、モチベーションや生産性の低下、人財の流出等、当社の事業運営に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

確実な労務・勤怠実態の把握と改善を目的に、システムの導入等、労務管理体制を整備するとともに、産業保健スタッフの充実、作業所への巡回面談の実施等、従業員一人ひとりに対してのきめ細やかなメンタルヘルスのフォロー体制を構築しております。また、過重労働を回避するため、フロントローディング活動やワークシェア、アウトソーシング等により、業務の効率化と平準化に取り組んでおります。さらに、エンゲージメントの定期的な評価、4週8閉所・休暇取得状況等をモニタリングし、職場環境を適正に把握したうえで、更なる改善を進めております。

中~高

中~大

 

 

 

主なリスクの概要

主な対応策・取組み

頻度

影響度

受注・契約に係るリスク

請負契約に著しく厳しい条件、又は不明確な条項が含まれる場合、当社が想定する収益を下回る結果となる可能性があります。

 

国内外の建設事業において全社会議体を通じて案件取組方針や契約条件の精査を行い、適切な条件での請負契約締結に努めております。

また、改正建設業法に則った発注者への情報提示方法等の社内周知と対応の徹底に努めております。

(主な取組み)

・受注戦略に関する全社会議体での審議

・大型案件取組み時の審査体制の強化

・契約リスク管理部署の設置

中~高

中~大

保有資産に係るリスク

当社グループでは不動産開発事業、PFI事業、再生可能エネルギー事業等への投資や、自社使用の固定資産・DX関連投資等の戦略的な設備投資を進めております。

市況の低迷や金融市場の変動、諸物価や人件費の上昇等、関連する事業環境に著しい変化が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

事業投資については、企業体力に見合ったリスクの範囲内で事業を行うよう毎年度投資計画を策定するとともに、個別案件の取組みにおいては、投資取組基準に基づき、出口戦略(投資の回収計画)も含めて計画的に投資を行っております。また、取締役会で各事業の進捗状況、投資残高、事業ポートフォリオ、時価評価を定期的にフォローし、必要な対策を図っております。

国際情勢の変化等に伴うリスク

諸外国における政治・経済情勢、為替、租税制度や法的規制等に著しい変化が生じた場合や、テロ・戦争・暴動等の発生、資材価格の高騰及び労務単価の著しい上昇や労務需給のひっ迫があった場合には、国内外の事業や経営状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

海外事業展開にあたって、事業機会とともにカントリーリスク等も踏まえて地域や国を絞り込み、必要な対策を図っております。

また国内の建設事業等においても、特定の国・地域へのサプライチェーンの過度な依存を見直し、リスクの分散と最適化を図っております。

(主な取組み)

・コンサルの活用等によるテロ対策の実施

・腐敗防止の取組み

・サプライチェーン体制の見直し

 

 

 

主なリスクの概要

主な対応策・取組み

頻度

影響度

機密情報等漏洩リスク

事業活動において取得した機密情報等が漏洩した場合には、業績や企業評価に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

「プライバシー・ポリシー」の制定や個人情報保護規程等の整備、全社個人情報保護管理者の設置により、個人情報の適切な管理を実施するとともに、情報セキュリティリスクに対応するため、各種取組みを実施しております。

(主な取組み)

・「情報セキュリティガイドライン」の適宜見直し

・「情報セキュリティハンドブック」の配布、デジタルサイネージを利用した啓発

・情報セキュリティeラーニング、情報セキュリティ監査の定期的実施

・日本シーサート協議会への加盟とCSIRT体制によるインシデント対応

中~大

サイバーリスク

標的型メールやマルウェアによるウイルス感染、不正アクセス等のサイバー攻撃の被害にあった場合、事業活動や企業評価に影響を及ぼす可能性があります。

 

DX委員会を設置し、情報セキュリティに関する事項を審議し、必要な対策を図っております。

(主な取組み)

・従業員対象の標的型メール訓練の実施

・社外公開サーバーの脆弱性診断

・外部委託によるウイルスの常時監視

・未知のマルウェア対策の実施

自然災害・感染症リスク

地震、津波、風水害等の自然災害や、感染症の世界的流行が発生した場合は、当社グループが保有する資産や従業員に直接被害が及び、事業活動に影響を及ぼす可能性があります。災害規模が大きな場合には、受注動向の変化・建設資材価格の高騰・電力エネルギー供給能力の低下等で事業環境が変化し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

BCP委員会を設置し、BCPの継続的見直しや訓練計画の決定及び実施状況のフォローを行っております。

(主な取組み)

・首都直下地震、南海トラフ地震等の巨大地震を想定した震災訓練の定期的な実施

・風水害発生時の行動基準の策定、風水害に関する従業員向け研修(eラーニング)の実施及び風水害を想定した訓練の実施

・災害時情報共有システムの整備

・非常用電源の確保、備蓄品の拡充

・データセンターのバックアップ体制の構築

 

 

 

主なリスクの概要

主な対応策・取組み

頻度

影響度

気候変動リスク

気候変動の物理的影響として、平均気温の上昇や気象災害が頻発・激甚化した場合、事業の根幹である建設現場の操業に影響を及ぼす可能性があります。

脱炭素社会・自然共生社会への移行に向けて、建築物の新築時や土地改変、自然資源由来の材料使用等に対する各種規制が強化された場合、新規建設需要が縮小する可能性があります。

また、カーボンプライシングやネイチャーポジティブ(自然再興)達成に向けたオフセット取引市場の創設等がなされた場合、コスト増によって財務的影響を及ぼす可能性があります。

 

2020年よりTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言、2024年よりTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づく財務情報開示を行うにあたり、気候変動や自然関連のリスクと機会を分析し、対応を検討しております。それらは、サステナビリティ委員会(委員長:社長)で審議・決定し、取締役会で事業戦略との整合性を確認しております。

(主な取組み)

・新規着工する国内工事現場の使用電力の100%グリーン電力化を開始

・環境、人権に配慮した木材利用のため、2030年に外国産合板(非認証材)型枠使用ゼロを目標として掲げ、協力会社と協働

法令の新設・改廃等に係るリスク

社会や時代の変化により、新たな法規制の制定や法令の改廃等があった場合には、業績や企業評価に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

事業活動に影響を及ぼす法令の新設・改廃等について適切に対応するため、関連規程・規則を整備し、各種会議体・イントラネット等を用いた社内周知、社内教育・研修(eラーニングを含む)を実施しております。

金融市場の変動によるリスク

国内外の金融情勢・経済情勢の悪化により、金融市場が機能不全に陥った場合、資金調達の制約や調達コストの上昇を招く可能性があります。

また、金利水準の急激な上昇、為替相場の大幅な変動等が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

主要取引金融機関に対する適宜必要な情報開示等を通じ、当社事業への理解を深めてもらい、緊密な関係を維持・強化しております。また、コミットメントライン枠やスポット借入枠を設定し、緊急時の流動性を確保しております。

投資有価証券の価格変動リスク

投資有価証券の時価が著しく下落した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

毎年、個別銘柄毎に、株式保有に伴うコストやリスク、営業上の便益等の経済合理性を総合的に勘案のうえ、取締役会にて、保有の必要性を検証しており、検証の結果、保有意義が希薄化した株式については、取引先との信頼関係を確認しながら、売却を進めております。

 

2025年度の重点リスク管理項目

「主なリスク」の中から、日常的に管理・モニタリングすべき項目として、下記の6項目を2025年度の「重点リスク管理項目」と定め、各部門の運営計画に反映し、管理状況を定期的にモニタリングしております。

1. 倫理・法令違反リスク

2. 安全・環境事故リスク

3. 技術・品質リスク

4. 長時間労働リスク

5. 受注・契約に係るリスク

6. 機密情報等漏洩リスク

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

① 経営成績の状況

  当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ3.0%減少し1兆9,443億円となりました。

  利益については、営業利益は710億円(前連結会計年度は246億円の損失)、経常利益は716億円(前連結会計年度は198億円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ284.6%増加し660億円となりました

 

  セグメントの業績は、以下のとおりであります。(セグメントの業績については、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載しております。また、報告セグメントの利益は、連結財務諸表の作成にあたって計上した引当金の繰入額及び取崩額を含んでおりません。なお、セグメント利益は、連結損益計算書の営業利益と調整を行っております。)

 

(当社建設事業)

  売上高は、前連結会計年度に比べ5.6%減少し1兆3,808億円となりましたが、セグメント利益は、前連結会計年度に比べ171.4%増加し564億円となりました。

 

(当社投資開発事業)

  売上高は、前連結会計年度に比べ35.2%減少し535億円となり、セグメント利益は、前連結会計年度に比べ38.9%減少し168億円となりました。

 

(道路舗装事業)

  売上高は、前連結会計年度に比べ2.4%増加し1,642億円となり、セグメント利益は、前連結会計年度に比べ26.3%増加し98億円となりました。

 

(その他)

  当社が営んでいるエンジニアリング事業、グリーンエネルギー開発事業、建物ライフサイクル事業及び子会社(日本道路㈱を除く)が営んでいる各種事業の売上高は、前連結会計年度に比べ4.2%増加し4,965億円となり、セグメント利益は、前連結会計年度に比べ10.7%減少し249億円となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

  当連結会計年度の連結キャッシュ・フローの状況については、財務活動により711億円資金が減少しましたが(前連結会計年度は239億円の資金減少)、営業活動により1,590億円資金が増加し(前連結会計年度は212億円の資金減少)、投資活動により78億円資金が増加した結果(前連結会計年度は53億円の資金減少)、現金及び現金同等物の当連結会計年度末の残高は、前連結会計年度末に比べ989億円増加し4,381億円となりました。

 

 

③ 生産、受注及び販売の状況

  当社グループが営んでいる事業の大部分を占める建設事業及び開発事業では、「生産」を定義することが困難であり、また、子会社が営んでいる事業には、「受注」生産形態をとっていない事業もあるため、当該事業においては生産実績及び受注実績を示すことはできません。

  また、当社グループの主な事業である建設事業では、請負形態をとっているので、「販売」という概念には適合しないため、販売実績を示すことはできません。

  このため、「生産、受注及び販売の状況」については、記載可能な項目を「① 経営成績の状況」においてセグメントの業績に関連付けて記載しております。

  なお、参考のため当社単体の事業の状況は次のとおりであります。

 a. 受注(契約)高、売上高、及び次期繰越高

期別

種類別

前期

繰越高

(百万円)

当期

受注(契約)高

(百万円)

(百万円)

当期

売上高

(百万円)

次期

繰越高

(百万円)

 

第122期

 

 

2023

 

 

2024

31

 

建設事業

 

 

 

 

 

建築工事

1,473,741

1,385,820

2,859,561

1,174,972

1,684,589

土木工事

599,014

335,177

934,191

260,007

674,183

2,072,755

1,720,997

3,793,753

1,434,980

2,358,772

開発事業等

78,610

131,183

209,793

142,928

66,864

合計

2,151,365

1,852,181

4,003,547

1,577,909

2,425,637

 

第123期

 

 

2024

 

 

2025

31

 

建設事業

 

 

 

 

 

建築工事

1,684,589

1,048,314

2,732,904

1,099,290

1,633,614

土木工事

674,183

228,689

902,873

282,673

620,200

2,358,772

1,277,004

3,635,777

1,381,963

2,253,814

開発事業等

66,864

127,215

194,080

119,556

74,523

合計

2,425,637

1,404,220

3,829,857

1,501,519

2,328,337

 (注) 1 前期以前に受注したもので、契約の更改により請負金額に変更のあるものについては、当期受注(契約)

      高にその増減額を含んでおります。したがって当期売上高にもかかる増減額が含まれております。

    2 開発事業等は、投資開発事業、エンジニアリング事業、グリーンエネルギー開発事業及び建物ライフサイクル事業等であります。

 

 b. 受注工事高の受注方法別比率

  工事の受注方法は、特命と競争に大別されます。

期別

区分

特命(%)

競争(%)

計(%)

第122期

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

建築工事

34.5

65.5

100

土木工事

6.2

93.8

100

第123期

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

建築工事

62.0

38.0

100

土木工事

14.3

85.7

100

 (注) 百分比は請負金額比であります。

 

 

 c. 売上高

期別

区分

官公庁(百万円)

民間(百万円)

合計(百万円)

第122期

 

2023

 

 

2024

31

 

建設事業

 

 

 

建築工事

108,326

1,066,646

1,174,972

土木工事

151,549

108,458

260,007

259,875

1,175,105

1,434,980

開発事業等

1,542

141,386

142,928

合計

261,418

1,316,491

1,577,909

第123期

 

2024

 

 

2025

31

 

建設事業

 

 

 

建築工事

108,853

990,436

1,099,290

土木工事

165,372

117,300

282,673

274,226

1,107,737

1,381,963

開発事業等

772

118,784

119,556

合計

274,998

1,226,521

1,501,519

 (注) 完成工事のうち主なものは、次のとおりであります。

 

    第122期

森ビル㈱

虎ノ門・麻布台地区第一種市街地再開発事業に係る

A街区・B-2街区施設建築物等新築建築工事

 

 

勝どき東地区市街地再開発組合

パークタワー勝どきミッド

 

 

名古屋プロパティー特定目的会社

ロジポート名古屋

 

 

環境省

令和2年度中間貯蔵施設(大熊2・4工区)の受入

分別処理・貯蔵工事

 

 

国土交通省

東京外環中央JCT北側A・Hランプシールド工事

 

    第123期

野村不動産㈱

BLUE FRONT SHIBAURA TOWER S

 

 

キオクシア㈱

キオクシア岩手第2製造棟工事

 

 

㈱西武リアルティソリューションズ

SMFLみらいパートナーズ㈱

エミテラス所沢

 

 

PT PLN

(インドネシア 国有電力会社)

アサハン第3水力発電所Lot-Ⅰ

 

 

(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構

相鉄・東急直通線、新横浜駅他

 

 d. 次期繰越高(2025年3月31日現在)

区分

官公庁(百万円)

民間(百万円)

合計(百万円)

建設事業

 

 

 

建築工事

164,094

1,469,519

1,633,614

土木工事

410,226

209,973

620,200

574,321

1,679,493

2,253,814

開発事業等

1,942

72,580

74,523

合計

576,263

1,752,073

2,328,337

 (注) 次期繰越工事のうち主なものは、次のとおりであります。

三菱地所㈱

大手町二丁目常盤橋地区第一種市街地再開発事業

(TOKYO TORCH)Torch Tower

(B棟)新築工事

 

 

日本橋一丁目中地区市街地再開発組合

日本橋一丁目中地区第一種市街地再開発事業C街区新築工事

 

 

豊海地区市街地再開発組合

豊海地区第一種市街地再開発事業施設建築物新築工事

 

 

フィリピン共和国政府

マニラ地下鉄 CP101工区建設工事

 

 

東日本高速道路㈱

東京外かく環状道路本線トンネル(南行)大泉南工事

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

① 経営成績の分析

  2024年度の日本経済は、雇用・所得環境の改善の下、インバウンド需要の拡大等により景気の緩やかな回復が継続しましたが、国内の物価上昇の継続や国際情勢の不安定化に伴う景気の下押しリスクが、企業活動と国民生活に広く影響を及ぼしました。

  建設業界においては、公共投資の底堅い推移と民間設備投資の持ち直しの動きが見られましたが、供給面では、建設資材やエネルギー価格、労務費をはじめとする建設コストの上昇等による影響があり、厳しい経営環境が続きました。

  このような状況の下、当社グループの売上高は、完成工事高及び開発事業等売上高が減少したことにより、前連結会計年度に比べ3.0%減少し1兆9,443億円となりました。

  利益については、開発事業等総利益が減少したものの、国内建築工事の工事採算が持ち直したことなどにより、完成工事総利益が増加したことなどから、営業利益は710億円(前連結会計年度は246億円の損失)、経常利益は716億円(前連結会計年度は198億円の損失)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、特別利益に保有株式の売却に伴う固定資産売却益などを計上した結果、前連結会計年度に比べ284.6%増加し660億円となりました。

 

  セグメントの業績は、以下のとおりであります。(セグメントの業績については、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載しております。また、報告セグメントの利益は、連結財務諸表の作成にあたって計上した引当金の繰入額及び取崩額を含んでおりません。なお、セグメント利益は、連結損益計算書の営業利益と調整を行っております。)

 

(当社建設事業)

  売上高は、前連結会計年度に比べ5.6%減少し1兆3,808億円となりましたが、セグメント利益は、工事採算の改善により前連結会計年度に比べ171.4%増加し564億円となりました。

  なお、セグメント情報の当社建設事業における完成工事総利益に、引当金の繰入額及び取崩額を含めるなどの調整を行った当社個別の完成工事総利益は、前連結会計年度に比べ1,165億円増加し1,091億円となりました。

 

(当社投資開発事業)

  開発物件の売却が減少したことなどにより、売上高は、前連結会計年度に比べ35.2%減少し535億円となり、セグメント利益は、前連結会計年度に比べ38.9%減少し168億円となりました。

 

(道路舗装事業)

  売上高は、前連結会計年度に比べ2.4%増加し1,642億円となり、セグメント利益は、前連結会計年度に比べ26.3%増加し98億円となりました。

 

(その他)

  当社が営んでいるエンジニアリング事業、グリーンエネルギー開発事業、建物ライフサイクル事業及び子会社(日本道路㈱を除く)が営んでいる各種事業の売上高は、前連結会計年度に比べ4.2%増加し4,965億円となり、セグメント利益は、前連結会計年度に比べ10.7%減少し249億円となりました。

 

 

② 財政状態の分析

  当連結会計年度末の資産の部は、現金同等物(現金預金及び有価証券に含まれる譲渡性預金)は増加したものの、受取手形・完成工事未収入金等及び保有株式の売却に伴う投資有価証券の減少などにより、前連結会計年度末に比べ149億円減少し2兆5,237億円となりました。

  当連結会計年度末の負債の部は、工事損失引当金は減少しましたが、支払手形・工事未払金等や預り金の増加などにより、前連結会計年度末に比べ92億円増加し1兆5,999億円となりました。

  連結有利子負債の残高は5,913億円となり、前連結会計年度末に比べ118億円減少しました。

  当連結会計年度末の純資産の部は、保有株式の売却や保有株式の時価の下落に伴うその他有価証券評価差額金の減少などにより、前連結会計年度末に比べ242億円減少し9,238億円となりました。なお、自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ0.9ポイント低下し34.1%となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析

  当連結会計年度の連結キャッシュ・フローの状況については、財務活動により711億円資金が減少しましたが、営業活動により1,590億円、投資活動により78億円それぞれ資金が増加した結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末の残高は、前連結会計年度末に比べ989億円増加し4,381億円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

  営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益1,083億円の計上や売上債権の減少などにより1,590億円の資金増加となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

  投資活動によるキャッシュ・フローは、賃貸事業をはじめとする事業用固定資産の取得や連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得を行いましたが、保有株式の売却などにより78億円の資金増加となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

  財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得や借入金の返済などにより711億円の資金減少となりました。

 

④ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報

  当社グループの資金需要の主なものは、建設事業における工事代金の立替金や販売費及び一般管理費などの営業活動に伴う支出、不動産開発事業における賃貸事業用資産の取得などの設備投資に伴う支出であります。これらの資金需要に対し、自己資金に加え、金融機関からの借入金やノンリコース借入金などの有利子負債を活用することにより、必要資金の調達を行う方針であります。

  また、当社グループは、2024年5月に策定した「中期経営計画〈2024‐2026〉」において、持続的成長に向けた投資として、2024年度から3年間で人財、生産性向上・研究開発、不動産開発、グリーンエネルギー開発、新規事業などに3,600億円の投資を計画しており、加えて、M&Aなどの更なる企業価値向上に向けた投資も計画しております。これらの資金需要に対しては、事業の着実な推進により営業キャッシュフローを増加させるとともに、賃貸不動産等の売却や政策保有株式の縮減を継続し、創出したキャッシュにより、必要資金の調達を行う方針であります。

  なお、財務体質の健全性を維持するため「中期経営計画〈2024‐2026〉」では、自己資本比率を35%以上、負債資本倍率(D/Eレシオ)を1.0倍以内、また、中長期的(次期中期経営計画期間中)には、自己資本比率40%以上、負債資本倍率(D/Eレシオ)を0.7倍程度とすることを財務上のKPIとして設定しております。

 

⑤ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、期末日時点の状況をもとに種々の見積りを行っておりますが、これらの見積りには不確実性が伴うため、実際の結果と異なることがあります。

当社グループが連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

 

(工事契約における収益認識)

当社グループは、工事契約について、期間がごく短い工事を除き、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗度に基づき、一定の期間にわたり収益を認識しており、履行義務の充足に係る進捗度の見積りは、工事原価総額に対する発生原価の割合に基づき算定しております。

収益の認識にあたり、工事原価総額の変動は、履行義務の充足に係る進捗度の算定に影響を与えるため、期末日における工事原価総額を合理的に見積る必要がありますが、工事は一般に長期にわたることから、建設資材単価や労務単価等が請負契約締結後に想定を超えて大幅に上昇する場合など、工事原価総額の見積りには不確実性を伴うため、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(固定資産の減損)

当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、資産のグルーピングを行い、収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。

固定資産の回収可能価額については、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しておりますが、市況の変動などにより前提条件に変更があった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

  2024年5月に策定した「中期経営計画〈2024‐2026〉」の初年度である2024年度の実績は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

5 【重要な契約等】

 特記事項はありません。

6 【研究開発活動】

 当社グループの当連結会計年度における研究開発費は212億円であり、うち当社の研究開発費は203億円であります。研究開発活動は当社の技術研究所と建築総本部、土木総本部等の技術開発部署で行われており、その内容は主に当社建設事業に係るものであります。

 当社は、建築・土木分野の生産性向上や品質確保のための新工法・新技術の研究開発はもとより、多様化する社会ニーズに対応するための新分野・先端技術分野や、さらに地球環境問題に寄与するための研究開発にも、幅広く積極的に取り組んでおります。技術研究所を中心とした研究開発活動は、基礎・応用研究から商品開発まで多岐にわたっており、異業種企業、公的研究機関、国内外の大学との技術交流、共同開発も積極的に推進しております。

 研究開発の成果の一部は、2025年日本国際博覧会(以下、大阪・関西万博という。)に展開しており、視覚障がい者向けナビゲーションロボット「AIスーツケース」の実証運用や、水産系廃棄物のホタテの貝殻を再利用し、当社の3Dプリンティング技術で製造したベンチ「HOTABENCH(ホタベンチ)」の展示を行っております。また、省スペース型の建築物向け水素エネルギーシステム「Hydro Q-BiC Lite」によるパビリオンへの水素エネルギーの供給も行っております。

 その他、研究開発の成果として、今年度も日本建築学会、土木学会、日本コンクリート工学会、空気調和・衛生工学会をはじめ、さまざまな学協会からの賞を受賞しております。

 当連結会計年度における研究開発活動の主な成果は次のとおりであります。

 

(1)建築・土木に関する技術開発

建築・土木分野における品質・安全性の向上、生産性の向上、環境負荷軽減に向けた多角的な研究開発を進めております。

 

①外装デザインの自由度を飛躍的に向上させる3次元自由曲面ガラスファサードを初実装

 技術研究所本館エントランスのガラスファサードに、自由曲面の「3Dガラススクリーン構法」を採用しました。この構法は、近年の建築ファサードデザインの複雑化を踏まえていち早く研究開発に着手し、実現したものです。化学強化ガラスを使い、従来必要だったリブガラスを排除しました。形状そのものが剛性を担保し、ガラスファサードデザインの自由度を飛躍的に向上させ、耐震・耐風圧性や施工性の課題もクリアしました。設計にはコンピュテーショナルデザインを活用し、最適なパターンを選定しました。最大300mmの起伏(凹凸)を持つガラスファサードは国内初です。今後は各種大規模施設のエントランスや商業施設のファサード等への展開を目指し、提案を進めていきます。

 

②材料噴射型3Dプリンティング技術を実工事に初適用し有筋構造部材をオンサイト施工

 プリント材料を圧縮空気でロボットアーム先端のノズルから噴射するモバイルプリンタと自動材料製造装置を開発し、実工事に初めて適用して有筋構造部材の現場施工を実施しました。鉄筋の外周から材料を噴射する新技術により、従来困難だった有筋構造部材の直接施工が可能となり、従来工法より工期を約4割短縮しました。また、本技術による造形体は、鉄筋コンクリート部材と同等以上の構造耐力と靱性を有し、鉄筋コンクリート構造物より木製型枠の使用量を削減可能で、環境負荷低減にも寄与します。今後は、造形精度や複雑形状への対応強化に加え、既設構造物の補修や災害時の応急復旧への応用も視野に開発を続ける方針です。

 

③設計の初期段階から施設のデザイン検討、人流・音響の性能評価を同時実施可能なシステムを開発

 企画・基本設計の高度化を図るデジタルプラットフォーム「Shimz DDE」に、3Dモデルの中で数万人の群集行動を評価・可視化できる「Pedex」と、コンサートホールや劇場などの反射音や残響等の音響性能を評価・可視化できる「Audix」を追加しました。両システムは、専門家でなくても一目で性能を把握できる視覚的な出力を提供でき、すでに複数の設計施工物件で信頼性も検証済みです。1日足らずで数千パターンの性能を評価し、最適案を選択することができます。従来、設計案が固まった時点で専門家に依頼していた人流・音響の性能評価を、不確定要素が多い設計の初期段階で、設計者が自らデザイン検討と同時に実行することが可能になりました。今後、両システムを活用し、最適な人流・音響性能を備えた施設の設計・提案力の高度化を図ります。

 

④画像解析AIでトンネル坑内の作業状況を自動判定し関係者にリアルタイム通知

 山岳トンネル工事の施工管理を効率化するため、これまで把握が難しかったトンネル内の作業状況をAIで自動判定し、リアルタイムで関係者に通知する「AIサイクル自動判定システム」を開発しました。AIがネットワークカメラの映像を解析して作業内容を即時に判断し、チャットツールを通じて現場全体に情報共有します。これにより、経験や勘に頼っていた工程調整の精度が向上し、不要な待機時間を大幅に削減できます。実際の工事現場への試験導入では、職員の待機時間を約40%削減するなど、現場の生産性向上に大きく貢献しております。

 

その他、建築・土木に関する技術開発の主な成果は以下のとおりです。

 

⑤超高層ビル建設を効率化する国内最高の速度と最大積載量を備えた工事用エレベータを開発・実用化

⑥GNSS(Global Navigation Satellite System:全地球測位衛星システム)によりクレーンのブームの位置と向きをリアルタイムで検出し、衝突事故を防ぐ衝突危険警報システム「クレーンアシスト」を開発・実用化

⑦最大3トンの天井工事用ステージ足場をそのまま移設可能な電動台車を開発し、天井工事の効率化と作業負担の軽減を実現

⑧杉板型枠に塗布することで美しい木目調コンクリートの仕上がりと良好な施工性、型枠再利用を実現する「超撥水剤」の外販を開始

⑨高速道路高架橋の支承交換工事において、重量約1~2tの支承を水平移動できる装置で狭あいな橋桁下での支承交換作業を大幅に効率化し、作業員の安全性向上と負担軽減を実現

⑩高速道路高架橋の床版のはく離撤去と新設を1台の自走式装置で安全に効率よく行う「グラビングエレクター工法」を開発

⑪穿孔のパターン・順序の修正計算を瞬時に行い山岳トンネルの発破掘削を効率化する、穿孔差し角自動制御システム「ブラストマスタII」を開発

⑫Starlink活用によるトンネル建設現場の通信エリア化と3D点群データのリアルタイム伝送を実現し、現場の定期巡回・施工管理にかかる時間を大幅に短縮

⑬従来比2.8倍のコンクリート運搬が可能な密閉・吊下げ構造のベルトコンベヤ「SCプレミアムベルコン」を開発し、ダム工事を大幅に効率化

⑭大型風車施工の工期を大幅に短縮する国内最大の移動式タワークレーンを開発し、国内最大の陸上風力発電所に適用

⑮腰をかがめず足元の鉄筋を結束できる「鉄筋結束アシスト装置」を開発し、作業者の身体的負担軽減と作業効率向上を実現

 

(2)脱炭素・資源循環・自然共生社会の実現に資する技術開発

脱炭素、資源循環、自然共生により持続可能な社会を実現するため、多方面にわたる研究開発を行っております。

 

①バイオ炭を活用した環境配慮型施工技術「SUSMICS」シリーズの拡充と第三者機関によるCO₂排出量の定量評価・検証を実施

 CO₂固定効果のあるバイオ炭を活用した環境配慮型施工技術「SUSMICS」シリーズを開発し、CO₂排出削減に取り組んでおります。新たに「SUSMICS-S」を開発し、流動化処理土にバイオ炭を混ぜることで、セメント使用時のCO₂排出削減と施工品質の向上を実現し、約8tのCO₂固定効果を達成しました。「SUSMICS-S」の大きな特徴は、既存の流動化処理土製造設備で容易に製造可能な点です。広範な現場での適用が期待され、今後は、山留めソイルセメント壁や建物基礎下の地盤改良などにも適用領域を拡大していく予定です。そのほか、日本道路㈱と共同でバイオ炭を添加した環境配慮型アスファルト「SUSMICS-A(日本道路㈱での呼称は「バイオ炭アスコン」)」も開発・製品化しております。

環境配慮型コンクリート「SUSMICS-C」については、施工実績に基づくCO₂排出量の定量評価を実施し、第三者機関による確認も得ております。当社はこれらの技術の適用拡大を進め、建設業界の脱炭素化と持続可能な社会実現に貢献します。

 

②再生可能エネルギーで水素を製造・貯蔵・利用可能な建築物向け水素エネルギーシステム「Hydro Q-BiC」シリーズを拡充

 太陽光発電による再生可能エネルギーで水素を製造、貯蔵、利用し、CO₂排出削減とエネルギーの地産地消を実現することが可能で、都市部への展開を進めております。中核技術の「水素吸蔵合金タンク」は、常温・低中圧で水素を安全に貯蔵可能なため都市部に設置でき、かつ、コスト削減と効率向上を実現しております。また、省スペース型システム「Hydro Q-BiC Lite」を開発し、水素製造から利用までを1台のコンテナで完結することを可能にしました。設置工事の簡素化とコスト低減も実現し、大阪・関西万博のパビリオンに採用されました。このほか、「Hydro Q-BiC Storage」は、外部から搬入された水素の効率的な貯蔵・供給が可能です。これらの水素の製造、貯蔵、供給を一体的に担うシステムにより、再生可能エネルギー設備の設置が難しい都市部における熱供給の脱炭素化に貢献します。

 

その他、脱炭素・資源循環・自然共生社会の実現に向けた技術開発の主な成果は以下のとおりです。

 

③「温故創新の森 NOVARE」で、エネルギー損失とCO₂排出を抑えた再エネ電力の利用や非常時の電源確保が可能な直流配電システムを実証

④ジオポリマーコンクリートで産業副産物の最大使用率96%(重量比)を実現し、コストとCO₂排出量を削減

⑤セメントの約80%を高炉スラグ微粉末に置換した環境配慮型コンクリートを共同開発し、製造時のCO₂排出量を約8割削減

⑥プラットフォーム「Civil-CO₂」により膨大な資機材とCO₂排出原単位の情報参照を自動化し、土木工事のCO₂排出量の算出業務を大幅に省力化

⑦超高層ビルの解体現場から排出される廃板ガラスをさまざまな製品にリサイクルし、従来の廃棄処理と比べCO₂排出量を削減

⑧建設現場から排出された廃プラスチックのマテリアルリサイクルを開始し、100%リサイクル材由来のカラーコーンを作成・利用開始

⑨米国内で当社独自技術による実汚染土壌の浄化試験に成功し、有機フッ素化合物(PFAS)含有量の約99%を従来と比べ低コストで除去

⑩従来浄化が困難だった汽水・海水環境下の土壌・地下水を、低コスト・低CO₂排出量で浄化可能な微生物であるデハロゲニモナス属細菌を発見し、単離することに成功

 

(3)デジタルサービスに関する技術開発

デジタルゼネコンとして先端デジタル技術を活かした各種サービスにも力を入れております。

 

①デジタル技術により首里城正殿復元整備工事の現場や大本山永平寺のデジタルツインを構築

 首里城正殿復元整備工事において、360°カメラで撮影した施工記録データを加工してデジタルツインを構築し、今しか見られない復元工事の現場をバーチャルツアーできるようにしました。また、曹洞宗の大本山永平寺と共同で、3次元点群測量により重要文化財19棟の精緻なデジタルツインを作成し、歴史的建造物をその骨組から彫刻等の細部に至るまで、ありのままの姿でデジタル空間上に保存することを可能にしました。伽藍内全棟、大小100余棟についても、当社開発アプリ「デジトリ360」を使ったデジタル空間とオンライン参拝するための各コンテンツを、先行して製作しております。このような、歴史的建造物を合理的な費用と工期で確実に後世に残す取組みを、今後各方面に提案していきます。

 

 

その他、デジタルサービスに関する技術開発の主な成果は以下のとおりです。

 

②3次元仮想空間上の固定資産管理台帳「Shimz One BIM+(プラス)」で固定資産の所在確認や維持保全情報の入力等の棚卸し業務を大幅に効率化

③医療施設DXシステム「eye MIRU」で建物設備の稼働状況やヒト位置データを電子カルテや会計情報と連携し外来診療業務を効率化

④各種デジタルサービスを導入してビル運営の生産性向上や利用者の利便性向上を目指すDX実証実験を開始

 

第3 【設備の状況】

1 【設備投資等の概要】

 当社グループの当連結会計年度の設備投資額は328億円であり、うち当社の設備投資額は198億円であります。

 なお、当社グループでは資産を事業セグメントに配分していないため、セグメント別の記載を省略しております。

 当連結会計年度の設備投資の主なものは、当社及び開発事業を営む子会社における賃貸事業用固定資産の取得、日本道路㈱における事務所・製造拠点の拡充更新、㈱エスシー・マシーナリにおけるレンタル事業用の建設機械の取得であります。

 

 

2 【主要な設備の状況】

 当社グループにおける主要な設備は、次のとおりであります。

(1) 提出会社

(2025年3月31日現在)

 

事業所名

(所在地)

帳簿価額(百万円)

従業員数

(人)

建物・構築物

機械、運搬具及び

工具器具備品

土地

合計

面積(㎡)

金額

本社

(東京都中央区)

14,138

2,717

(244)

258,175

32,071

48,928

738

技術研究所

(東京都江東区)

3,441

2,268

(-)

20,976

4,214

9,924

252

NOVARE

(東京都江東区)

26,495

580

(-)

32,233

20,181

47,257

56

建築総本部

(東京都中央区)

4,223

741

(1,650)

10,257

1,931

6,896

1,283

名古屋支店

(名古屋市中区)

2,695

391

(1,630)

101,811

4,216

7,303

765

関西支店

(大阪市中央区)

511

90

(-)

19,735

1,773

2,375

811

九州支店

(福岡市中央区)

610

58

(-)

38,402

4,383

5,053

502

投資開発本部

(東京都中央区)

118,913

838

(86,178)

243,095

119,923

239,675

100

エンジニアリング事業本部

(東京都中央区)

0

35,299

(-)

35,299

265

グリーンエネルギー事業本部

(東京都中央区)

32

8,791

(285,752)

1,046,575

1,584

10,408

81

 

(2) 国内子会社

(2025年3月31日現在)

 

会社名

事業所名

(所在地)

帳簿価額(百万円)

従業員数

(人)

建物・

構築物

機械、運搬具

及び工具器具

備品

土地

合計

面積(㎡)

金額

日本道路㈱

本社他

(東京都港区他)

11,086

4,440

(541,447)

667,186

17,958

33,484

1,978

日本ファブテック㈱

取手工場他

(茨城県取手市他)

2,952

1,805

(41,096)

404,376

5,388

10,147

623

㈱ミルックス

本店他

(東京都中央区他)

2,204

333

(-)

217,298

8,645

11,183

432

 

(3) 在外子会社

 記載すべき主要な設備はありません。

 (注) 1 帳簿価額に建設仮勘定は含めておりません。

2 提出会社は、資産を事業セグメントに配分していないため、主要な事業所ごとに一括して記載しております。

3 土地の面積の( )内は、賃借中のものを外書きで記載しております。

4 当社グループの設備の内容は、主として研究所、事務所ビル、工場及び工事用船舶等であります。

5 土地、建物のうち賃貸中の主なもの

名称

土地(㎡)

建物(㎡)

投資開発本部

138,598

709,868

6 従業員数は、期末の契約社員数を含む合計人数を記載しております。

3 【設備の新設、除却等の計画】

 当社グループの当連結会計年度後1年間の設備投資計画額は560億円であり、うち当社の設備投資計画額は420億円であります。

 設備投資計画の主なものは、当社及び開発事業を営む子会社における賃貸事業用固定資産の取得、当社のグリーンエネルギー開発事業における再生可能エネルギー事業用固定資産の取得、日本道路㈱における事務所・製造拠点の拡充更新、㈱エスシー・マシーナリにおけるレンタル事業用の建設機械の取得であります。