第2【事業の状況】

 以下、第2 事業の状況に記載している金額は消費税等抜きの額である。

 

1【業績等の概要】

(1)業績

 当連結会計年度におけるわが国経済は、企業収益の改善等により民間設備投資に持ち直しの動きが見られるなど、景気は緩やかな回復基調が続いた。

 国内の建設市場においては、公共工事の発注が前年に比べ減少しているものの、民間工事の発注は堅調に推移しており、総じて良好な受注環境にある。

 こうした情勢下にあって、当連結会計年度における業績については、売上高は建設事業売上高が増加したことなどから、前連結会計年度比0.2%増の約1兆7,778億円となった。損益の面では、主として当社の国内工事における工事利益率の改善に伴い完成工事総利益が増加したことなどから、営業利益は前連結会計年度比119.8%増の約1,063億円、経常利益は前連結会計年度比85.6%増の約1,112億円、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比121.1%増の約634億円となった。

 

セグメント情報

① 建設事業

  グループ全体の売上高は、当社の建築事業で減少したものの、当社の国内土木事業のほか、子会社の建築事業、土木事業でともに増加したことなどから、前連結会計年度比約227億円(1.4%)増の約1兆6,957億円となった。また、営業利益については、主として当社の国内工事における工事利益率の改善に伴い完成工事総利益が増加したことなどから、前連結会計年度比約658億円(235.2%)増の約938億円となった。内訳は以下のとおり。

(国内建築事業)   売上高は前連結会計年度比約200億円(2.1%)減の約9,329億円、営業利益は前連結会計年度比約427億円(475.2%)増の約516億円となった。

(海外建築事業)   売上高は前連結会計年度比約72億円(2.2%)増の約3,379億円、営業利益は前連結会計年度比約3億円(10.7%)減の約26億円となった。

(国内土木事業)   売上高は前連結会計年度比約275億円(8.4%)増の約3,539億円、営業利益は前連結会計年度比約176億円(92.0%)増の約368億円となった。

(海外土木事業)   売上高は前連結会計年度比約80億円(12.7%)増の約708億円、営業損益は約26億円の利益(前連結会計年度は約31億円の損失)となった。

 

② 不動産事業

 前連結会計年度に当社において大型不動産の売却があった反動減などから、グループ全体の売上高は前連結会計年度比約168億円(26.4%)減の約470億円、営業利益は前連結会計年度比約81億円(43.8%)減の約104億円となった。

 

③ その他

 グループ全体の売上高は前連結会計年度比約20億円(5.5%)減の約350億円、営業利益は前連結会計年度比約2億円(16.2%)増の約20億円となった。

 

(2)キャッシュ・フローの状況

営業活動によるキャッシュ・フローは、主に国内の建設事業収支が改善したことから約1,249億円のプラス(前連結会計年度は約746億円のプラス)となった。投資活動によるキャッシュ・フローは、事業用不動産の取得等により約480億円のマイナス(前連結会計年度は約74億円のマイナス)となった。また、財務活動によるキャッシュ・フローは、社債及びコマーシャル・ペーパーの償還や借入金の返済等により約689億円のマイナス(前連結会計年度は約345億円のマイナス)となった。

この結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べて約21億円増加し、約1,648億円となった。

2【生産、受注及び販売の状況】

(1) 受注実績

セグメントの名称

前連結会計年度

(自 平成26年4月1日

至 平成27年3月31日)

(百万円)

当連結会計年度

(自 平成27年4月1日

至 平成28年3月31日)

(百万円)

前連結会計年度比

(%)

国内建築事業

983,706

1,076,367

9.4

海外建築事業

377,139

320,380

△15.0

国内土木事業

404,489

374,529

△7.4

海外土木事業

32,105

90,862

183.0

建設事業 計

1,797,441

1,862,140

3.6

不動産事業

76,711

39,031

△49.1

その他

26,364

50,771

92.6

合 計

1,900,517

1,951,943

2.7

(注)セグメント間取引については相殺消去している。

 

(2) 売上実績

セグメントの名称

前連結会計年度

(自 平成26年4月1日

至 平成27年3月31日)

(百万円)

当連結会計年度

(自 平成27年4月1日

至 平成28年3月31日)

(百万円)

前連結会計年度比

(%)

国内建築事業

953,097

932,997

△2.1

海外建築事業

330,702

337,956

2.2

国内土木事業

326,353

353,909

8.4

海外土木事業

62,886

70,889

12.7

建設事業 計

1,673,040

1,695,752

1.4

不動産事業

63,858

47,020

△26.4

その他

37,082

35,061

△5.5

合 計

1,773,981

1,777,834

0.2

(注)1 セグメント間取引については相殺消去している。

2 前連結会計年度及び当連結会計年度ともに総売上高に占める売上高の割合が100分の10以上の相手先はない。

 

なお、当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の状況」は記載していない。

 なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりである。

受注高(契約高)及び売上高の状況

(1)受注高、売上高及び繰越高

期 別

種類別

前期繰越高

(百万円)

当期受注高

(百万円)

(百万円)

当期売上高

(百万円)

次期繰越高

(百万円)

第111期

(自 平成26年
   4月1日
 至 平成27年
    3月31日)

建設事業

建 築

1,091,026

956,030

2,047,057

958,646

1,031,129

土 木

372,237

322,227

694,464

267,923

426,540

1,463,264

1,278,257

2,741,521

1,226,570

1,457,670

不動産事業等

33,286

33,286

33,236

50

合 計

1,463,264

1,311,543

2,774,808

1,259,806

1,457,720

第112期

(自 平成27年
   4月1日
 至 平成28年
    3月31日)

建設事業

建 築

1,031,129

1,069,697

2,100,827

908,468

1,192,358

土 木

426,540

330,584

757,124

297,907

459,217

1,457,670

1,400,281

2,857,952

1,206,375

1,651,576

不動産事業等

50

28,673

28,723

28,723

合 計

1,457,720

1,428,954

2,886,675

1,235,098

1,651,576

 (注)1 前期以前に受注したもので、契約の変更により契約金額に増減のあるものについては、当期受注高にその増減額を含む。また、前期以前に外貨建で受注したもので、当期中の為替相場の変動により契約金額に変更のあるものについても同様に処理している。

2 第111期の建築において、当社は前期に受注した一部の工事を当期に海外子会社に譲渡した(譲渡額計57,281百万円)。前期繰越高(1,091,026百万円)に当期受注高(956,030百万円)を加算し、当期売上高(958,646百万円)を減算すると次期繰越高は1,088,411百万円となるが、当該譲渡については当社グループ内の取引であることから、次期繰越高を直接57,281百万円減額し、1,031,129百万円としている。

 

(2)受注工事高

期 別

区 分

国 内

海 外

官公庁

(百万円)

民  間

(百万円)

(A)

(百万円)

(A)/(B)

(%)

(B)

(百万円)

第111期

(自 平成26年4月1日

  至 平成27年3月31日)

建 築

61,407

887,451

7,171

0.8

956,030

土 木

216,314

95,877

10,035

3.1

322,227

277,721

983,328

17,207

1.3

1,278,257

第112期

(自 平成27年4月1日

  至 平成28年3月31日)

建 築

143,717

908,842

17,137

1.6

1,069,697

土 木

157,467

131,182

41,933

12.7

330,584

301,185

1,040,024

59,071

4.2

1,400,281

 

(注)工事の受注方法は特命と競争に大別され、受注金額の割合は次のとおりである。

期 別

区 分

特命(%)

競争(%)

計(%)

第111期

(自 平成26年4月1日

 至 平成27年3月31日)

建 築

40.4

59.6

100

土 木

20.9

79.1

100

35.5

64.5

100

第112期

(自 平成27年4月1日

 至 平成28年3月31日)

建 築

45.0

55.0

100

土 木

26.5

73.5

100

40.6

59.4

100

 

(3)売上高

(イ)完成工事高

期 別

区 分

国 内

海 外

官公庁

(百万円)

民  間

(百万円)

(A)

(百万円)

(A)/(B)

(%)

(B)

(百万円)

第111期

(自 平成26年4月1日

  至 平成27年3月31日)

建 築

95,264

827,607

35,774

3.7

958,646

土 木

141,034

94,831

32,057

12.0

267,923

236,299

922,439

67,831

5.5

1,226,570

第112期

(自 平成27年4月1日

  至 平成28年3月31日)

建 築

82,997

809,298

16,172

1.8

908,468

土 木

155,820

112,289

29,796

10.0

297,907

238,818

921,588

45,968

3.8

1,206,375

 

 (注)1 海外工事の地域別割合は、次のとおりである。

地 域

第111期(%)

第112期(%)

アジア

66.5

49.8

北 米

25.2

38.7

その他

8.3

11.5

100

100

 

2 第111期に完成した工事のうち主なもの

発注者

工事名称

森ビル㈱

虎ノ門ヒルズ、環状第二号線 築地虎ノ門トンネル建設工事

㈱IHI
豊洲三丁目開発特定目的会社

豊洲フォレシア新築工事

ダイビル㈱

新ダイビル新築工事

イオンモール㈱

イオンモール名古屋茶屋新築工事

ペンシルバニアアルゲーニー郡港湾局

ピッツバーグLRTトンネル及び地下駅構築工事(米国)

 

第112期に完成した工事のうち主なもの

発注者

工事名称

住友不動産㈱

新宿ガーデンタワー新築工事

キヤノン㈱

キヤノン川崎事業所高層棟新築工事

日野特定目的会社

三井不動産ロジスティクスパーク日野新築工事

九州旅客鉄道㈱

JRおおいたシティ新築工事

中日本高速道路㈱

新東名高速道路 稲木トンネル他1トンネル工事

 

3 第111期及び第112期ともに総完成工事高に占める完成工事高の割合が100分の10以上の相手先はない。

(ロ)不動産事業等売上高

期 別

区 分

売上高(百万円)

第111期

(自 平成26年4月1日

  至 平成27年3月31日)

不動産販売

15,867

不動産賃貸

7,341

そ の 他

10,027

33,236

第112期

(自 平成27年4月1日

  至 平成28年3月31日)

不動産販売

9,604

不動産賃貸

7,572

そ の 他

11,545

28,723

 

(4)繰越工事高(平成28年3月31日現在)

区 分

国 内

海 外

官公庁

(百万円)

民 間

(百万円)

(A)

(百万円)

(A)/(B)

(%)

(B)

(百万円)

建 築

144,636

1,025,401

22,321

1.9

1,192,358

土 木

283,426

107,806

67,984

14.8

459,217

428,062

1,133,207

90,306

5.5

1,651,576

 

 (注)繰越工事のうち主なもの

発注者

工事名称

中日本高速道路㈱

東京外かく環状道路 本線トンネル(北行)東名北工事

独立行政法人 都市再生機構東日本賃貸住宅本部

大手町二丁目地区再開発施設建築物B棟工区建設工事

赤坂一丁目地区市街地再開発組合

赤坂一丁目地区第一種市街地再開発事業
施設建築物等新築工事及び既存建築物等解体・除却工事

日本生命保険相互会社
㈱大林組

ニッセイ浜松町クレアタワー新築工事

㈱三菱東京UFJ銀行

㈱三菱東京UFJ銀行大阪ビル建替工事

 

3【対処すべき課題】

 国内建設市場は、当面は一定の水準で建設投資が続くと考えられるが、中長期的には市場の大きな成長は見込みにくい状況である。一方、建設業界においては、人材の確保と育成、省力化・短工期化を実現する工法の開発、生産システムのイノベーションなど、生産力の向上が急務となっている

 海外建設市場においては、当社グループが進出している東南アジア、北米及びオセアニア等において、インフラ整備や都市開発をはじめとする建設投資の拡大が見込まれる。

 こうした事業環境を踏まえ、当社グループは平成27年度を初年度とする3ヵ年計画「大林組グループ中期経営計画2015(Evolution 2015)」を推進しており、社会の安全、安心及び経営の更なる安定に向けて取り組んでいる。

(「Evolution 2015」における当社グループの取組み方針)

・切迫する巨大災害への備えや環境・エネルギー対策等の多様なニーズに応え、社会の安全、安心、快適を実現する

・建築、土木、開発の3事業に加え、新たな収益源を創出する「新領域事業」を第4の柱に、収益基盤の多様化を推進する

・当社の技術力、財務力を活かした強固なグループ経営の実践により、グループ各社の収益力を向上させる

主な経営指標目標(連結)

 収益力強化の指標として営業利益を重視し、中期経営計画期間中に安定的に450億円程度を計上することを経営目標としている。また、ROE(自己資本利益率)については、中長期的に8%程度に引き上げることを目指している。一方、収益基盤の多様化の推進により、連結営業利益に占める国内建設事業以外の営業利益の割合を約45%に高めていく目標としている。

(事業別戦略)

建 築

・首都圏やリニューアル分野等の成長市場における競争力の強化

高度なエンジニアリング技術を活用した高付加価値サービスの提供

・省力化・短工期化工法の開発・展開、BIMなどICTの積極的な活用

・技術や施工管理、現場組織編成のノウハウなどの社内継承による品質・安全管理の徹底

土 木

・大規模道路整備工事や中央新幹線など、高い技術力が必要な新規インフラ整備・既存インフラリニューアルを中心とした計画的受注の推進

・防災・減災対策への取組みを通じた安全・安心な社会インフラの実現

・プレキャスト化の推進による省力化、CIMなどICTの活用、施工計画の工夫による生産力の向上

開 発

・保有不動産の収益性向上と競争力強化に向けた、オフィス賃貸事業(重点エリア:東京都心部)における更なる新規投資、既存ビルのリニューアル・BCP対応の推進

・住宅・物流施設の新規開発による賃貸事業ポートフォリオの多様化

・大林新星和不動産による首都圏・関西圏の都市部における戸建分譲・マンション分譲事業の継続的な展開

新領域

・風力、木質バイオマスなど、太陽光に次ぐ再生可能エネルギー発電事業の拡充

・農業など、保有技術やノウハウ等を活用した新たなビジネスモデルの確立

・PPPプロジェクトへの取組み強化による収益の確保

 

 当社グループは、「大林組グループ中期経営計画2015(Evolution 2015)」に全力で取り組むことで企業価値を向上させ、株主をはじめとしたステークホルダーの期待に応えていく。また、生活・社会・産業基盤の整備を通じて、人々の暮らしに安全・安心を提供し、経済発展に寄与するという社会的使命を果たしていく。

4【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがある。
 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

 

(1) 事業に対する法的規制

 建設業法、建築基準法、宅地建物取引業法、独占禁止法、労働安全衛生法等の法令の改廃や新設、適用基準の変更があった場合等、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

(2) 建設市場の動向

 国内外の景気後退等により、建設市場が著しく縮小した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

(3) 施工物等の不具合や重大事故

 設計、施工などの各面で重大な瑕疵があった場合や、人身、施工物などに関わる重大な事故が発生した場合、当社グループの業績や企業評価に影響を及ぼす可能性がある。

(4) 取引先の信用リスク

 発注者、協力会社、共同施工会社の信用不安などが顕在化した場合、資金の回収不能や施工遅延を惹起し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

(5) 建設資材価格及び労務単価の変動

 建設資材の急激な価格高騰や調達難または労務単価の高騰や技能労働者の不足が生じた場合、工事原価の上昇による利益率の低下や工期遅延による損害賠償のおそれなど、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

(6) 保有資産の価格変動

 保有する販売用不動産、事業用不動産、有価証券等の時価が著しく下落した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

(7) 長期にわたる事業のリスク

 事業期間が長期にわたるPFI事業や再生可能エネルギー事業等において、その期間中に事業環境に著しい変化が生じた場合や業務遂行上重大な事故等が発生した場合、当社グループの業績や企業評価に影響を及ぼす可能性がある。

(8) 海外事業におけるリスク

①  アジア、米国をはじめとする進出国において、テロ・紛争等による政情の不安定化、経済情勢の変動、為替レートの急激な変動、法制度の変更など事業環境に著しい変化が生じた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

 

② 当社が他社と共同で施工し、平成23年8月に竣工したドバイ都市交通システム建設工事の残工事代金の支払いについては、一定の金利を付し、平成23年10月から平成30年9月にわたる84ヶ月の毎月均等分割払いとすることで発注者のドバイ道路交通局との間で合意している。当該合意においては、この残工事代金の回収リスクを回避するため、ドバイ政府と支払保証契約を締結するなど債権保全策を講じているが、ドバイにおける政治及び経済状況等に著しい情勢の変化が生じた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

  なお、ドバイ道路交通局による工事代金の支払いは、合意した内容に基づき予定どおり行われており、同局に対する平成28年3月末時点での当社分の完成工事未収入金(分割払い相当額)残高は、202百万米ドル(円換算値 約228億円)である。

(9) 繰延税金資産に関わるリスク

 将来の課税所得等の見積りの変動や税率変更等の税制改正によって、繰延税金資産の取崩しが必要となった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

5【経営上の重要な契約等】

 当連結会計年度において、経営上の重要な契約等はない。

6【研究開発活動】

(建設事業)

 当社グループは、社会及び顧客の多様なニーズに応えるため、環境保全、エネルギー対策等の社会に貢献する技術や、生産性向上、品質確保、コストダウン等に資する工法や技術の開発を行うなど、主に建設事業に関して多岐にわたる研究開発活動を実施している。

 また、研究開発活動の幅を広げ、効率化を図るため、国内外の大学、公的研究機関、異業種企業との技術交流、共同開発も積極的に推進している。

 当社グループの当連結会計年度における研究開発に要した費用の総額は約100億円であり、主な研究開発成果は次のとおりである。

 なお、当社は研究開発活動を国内建築、海外建築、国内土木及び海外土木の各セグメントには区分していない。

 

(1) 当社

① 建設現場で複数点のWBGT(暑さ指数)を連続測定・一括管理できる「暑さ指数ウォッチャー」を開発

建設現場で働く作業員や従業員の安全な作業環境を整備するため、現場内の複数箇所で暑さ指数(人体に影響する湿度、日射・輻射、気温などを取り入れた指標)を分単位で連続測定し、その情報を工事事務所で一元管理できるシステム「暑さ指数ウォッチャー」を開発した。

測定値のグラフ表示や帳票出力、危険度通知のメール配信などの機能があり、作業員の作業強度や着衣量、暑さへの慣れなどを考慮した基準値を自動設定できる機能も有する。既存の計測機に比べコンパクト化と低コスト化を実現した。

 

② 自動搬送システムの機能向上に向けて新たに「低床式AGV(無人搬送車)」を開発

 建設現場の生産性向上を図るため、資機材を自動で運搬する「低床式AGV(無人搬送車)」を開発した。

 当社が平成25年に開発した無人搬送車による自動搬送システムの機能を向上させ、磁気テープ上での自動走行だけでなく、無線コントローラーを使った自在な走行や段差やスロープを乗り越える走行を可能にした。さらに、運搬する資機材の下に車体全体が収まるコンパクトな形状になったことに加えて、資機材を積載したまま工事用の仮設エレベーターに乗り込むことが可能となった。これにより、資機材を上層階へ搬送する際に搬送車への積み込み、積み降ろし作業がなくなり、生産性が大幅に向上する。

 

③ 生コンクリートの鮮度を保ちコールドジョイントを防止する「フレッシュキープ工法」を開発

生コンクリートの流動性を最大3時間延長し、コールドジョイント(打継ぎ部の不連続面)や充填不良を防止する「フレッシュキープ工法」を開発した。

コンクリートの許容打重ね時間の間隔は、コンクリート標準示方書では2.5時間以内とされているが、竹本油脂㈱と共同開発した特殊混和剤を製造後のコンクリートに混入するだけで、最大3時間延長できる。流動化剤を使用するより長時間流動性を保持でき、強度発現時期は従来のコンクリートと変わらない工法である。

 

④ 2液混合型注入止水工法「ミクストグラウト™」を開発

コンクリートのひび割れ部からの漏水を確実に遮断する工法「ミクストグラウト」を㈱MASUDAと共同開発した。ポリウレタン樹脂と特殊水性エマルションを混合させる2液混合型注入止水工法である。

ポリウレタン樹脂は特殊水性エマルションと混合させることで速やかに硬化し、止水性能を発揮する。本工法の止水材は乾燥した際の収縮が小さいことも特長である。コンクリートのひび割れ部の漏水量や乾湿状態を問わず施工できる。

 

⑤ 鉄道ラーメン高架橋の新プレキャスト工法を開発・実用化

モルタルスリーブ継手を用いて柱と梁の接合部も含めてフルプレキャスト化する鉄道ラーメン高架橋工法を公益財団法人鉄道総合技術研究所と共同で開発した。

当社が多くの高層ビル建築に適用してきたプレキャスト工法を鉄道ラーメン高架橋の施工に応用し、シース管とモルタルスリーブ継手を用いることで、仕口部を含めてフルプレキャスト化したものである。これまで鉄道ラーメン高架橋に適用してきたハーフプレキャスト工法に比べて省力化でき、工期を最大30%短縮できる。また、部材を工場製作することで、安定した品質を確保できる。

 

⑥ メタル調の仕上がりを実現したプレキャストコンクリート用塗装技術「エココート工法®」を開発・適用

建物の外壁カーテンウォールなどに使用されるプレキャストコンクリート板をメタル調に仕上げる、意匠性の高い塗装技術「エココート工法®」を開発した。

新たに開発した水系塗装材料を適用することで、塗装仕上げが難しい軽量コンクリート製のプレキャストコンクリート板も、メタル調の美しい鏡面仕上げができるようになった。「エココート工法®」は、既に複合ビルの外壁などに適用している。

⑦ 洋上風車の基礎及びアンカーに適用する「スカートサクション」を開発

洋上風車を海底地盤に固定する海洋構造物「スカートサクション」を開発した。

スカートサクションは頂版及び頂版から下方に伸びた円筒形の鉛直壁(スカート)で構成され、スカートを海底地盤に貫入させることで、従来の基礎やアンカーに比べ強固に洋上風車を海底地盤に固定する。引き抜き抵抗は通常の着床式の基礎に比べ約3倍、浮体式のアンカーに比べ約5~8倍である。また、海底地盤へ設置する際に大型の機械などを使用しないため、従来に比べ大幅なコスト低減と工期短縮を可能にする。

 

⑧ スマートシティエネルギーシステムの設計支援ツール「エコナビ®(シティ版)」を開発

スマートシティにおけるエネルギーシステムの設計支援ツール「エコナビ®(シティ版)」を開発した。

近年、各地で計画されているスマートシティでは、個々の建物の省エネ・低炭素化に加え、エリア内の複数の建物群をネットワーク化し、分散型電源システムの導入、建物間で電気・熱を融通するエネルギーの共同利用等により、さらに大きな省エネルギー効果が期待されている。今回開発した「エコナビ®(シティ版)」は、複数の建物や施設からなるエリアの省エネ・低炭素化を図るとともに、エリア内のエネルギー消費量や電力自給率等を簡単に評価できる最適なシステム設計ツールである。

 

(2) 大林道路㈱

アスファルト合材温度の遠隔測定装置「温度はかり隊」を東海電気工業㈱と共同で開発し、実用化した。

ダンプトラックに測定装置を取り付け、アスファルト合材の中に温度センサーを挿入することで、工場出荷時と現場到着時の温度だけではなく、ダンプでの輸送中や、アスファルトフィニッシャーへの投入時の温度の自動測定・記録が可能となり、安定した品質管理に役立てることができる。

また、長大橋や都市部の高速道路などで今後需要が見込まれる舗装の全層打ち換えに対応して、鋼床版の防水層と舗装の基層を兼ねて施されるグース舗装の耐久性と汎用性を改善し、環境負荷を低減した「改質グース」を開発した。

 

(3) ㈱内外テクノス

不燃木材の薬剤溶出を抑制できる塗料を当社、大谷塗料㈱と共同開発し、実用化した。

不燃木材に塗布する薬剤は、高湿度の環境下で溶けやすいため、溶け出した薬剤が乾いて固着し白くなる白華現象が発生しやすい。今回共同開発した塗料は、主成分に標準的なウレタン樹脂を用いながら添加剤を加えることで、既存の不燃認定の仕様を変えることなく薬剤が溶け出すことを防ぎ、白華現象を抑制することが可能となった。

 

(不動産事業及びその他)

 研究開発活動は特段行っていない。

 

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)財政状態

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末比約442億円(2.2%)減の約1兆9,519億円となった。これは、「受取手形・完成工事未収入金等」が増加したことや賃貸事業用不動産の取得に伴い「建物・構築物」及び「土地」が増加した一方で、保有株式の時価の下落に伴い「投資有価証券」が減少したことなどによるものである。

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末比約564億円(3.9%)減の約1兆3,902億円となった。これは、「長期借入金」や「社債」などの有利子負債が減少したことなどによるものであり、有利子負債残高は前連結会計年度末比約644億円(15.7%)減の約3,463億円となった。

当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末比約121億円(2.2%)増の約5,616億円となった。これは、「その他有価証券評価差額金」が減少した一方で、親会社株主に帰属する当期純利益の計上に伴い「利益剰余金」が増加したことなどによるものである。

この結果、当連結会計年度末の自己資本比率は26.4%となり、前連結会計年度末より1.0ポイント上昇した。

 

(2)経営成績

 当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ、建設事業において約227億円(1.4%)増の約1兆6,957億円、不動産事業において約168億円(26.4%)減の約470億円、その他において約20億円(5.5%)減の約350億円となった。全体としては、前連結会計年度に比べ約38億円(0.2%)増の約1兆7,778億円となった。

 損益の面では、主として当社の国内工事における工事利益率の改善に伴い完成工事総利益が増加したことなどから、営業利益は前連結会計年度比119.8%増の約1,063億円、経常利益は前連結会計年度比85.6%増の約1,112億円、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比121.1%増の約634億円となった。

 

(3)キャッシュ・フローの状況

 キャッシュ・フローの状況については、「第2 事業の状況 1 業績等の概要」に記載している。