第2【事業の状況】

 以下、第2 事業の状況に記載している金額は消費税等抜きの額である。

 

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

(1)経営の基本方針

長期的な視点に立った会社経営を基本に、経営の効率化と収益力の向上によって、企業価値をより高めていくことを目標としており、その実現を通じて、株主、顧客、取引先、従業員、地域社会など、すべてのステークホルダーの信頼と期待に応えられる経営を目指している。

 

(2)経営環境及び対処すべき課題

① 経営環境

 当社グループの経営環境については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績」に記載のとおりである。

 

② 対処すべき課題

ア 新型コロナウイルス感染症への対応

 当社は、業界団体が策定したガイドラインに準拠して、2020年5月に当社としての「新型コロナウイルス感染拡大予防のための基本行動プログラム」を策定するとともに、工事事務所版として、同年6月に「工事現場における新型コロナウイルス感染予防行動ガイドライン」を策定した。

 これらのプログラムに基づき、3密を回避する執務・作業環境を整備するなど、新型コロナウイルス感染症への感染予防及び感染者発生時の影響を最小化するための対策を取りつつ、従前と同様の事業活動、成果達成等を維持していくこととしている。

 また、2008年に開発した新型インフルエンザ対応緊急病棟「パンデミック®エマージェンシーセンター(PEC)」を新型コロナウイルス感染症対応病棟として改良し、スピーディかつ柔軟に医療機関をサポートできる体制を整備するなど、喫緊の社会課題の解決にも取り組んでいる。

 当社グループは、今後も関係者の身体、生命及び生活の安全の確保を最優先に、その時々に応じて必要な安全対策を講じたうえで、公共インフラの整備や民間事業者の事業継続のために必要な建設需要及びデータセンターや新しい生活様式に対応するためのリニューアル工事などWithコロナ、Afterコロナの時代に必要とされる新たな建設需要などに対し、真摯に取り組んでいく。

 

 

イ 「中期経営計画2017」及び「企業変革プログラム」の推進

(ア)中期経営計画2017

 当社グループは、創業150周年(2042年)の「目指す将来像」の実現に向けて、短期的な景気動向に左右されない「強固な経営基盤の構築」及び戦略的な投資による「将来への布石」を基本方針とする「大林組グループ中期経営計画2017」を策定し、2017年度から2021年度の5ヵ年計画として、事業領域の深化・拡大、グローバル化を推進してきた。

 

   a 中期経営計画2017の進捗状況

・主な経営指標目標

 

 

 

中期経営計画2017に

掲げる経営指標目標

B/S(連結)

2017年度(初年度)末

実績

2020年度末実績

(2021年度末)

自己資本額

6,848億円

9,310億円

9,000億円

(利益剰余金)

(4,048億円)

(6,615億円)

(7,000億円)

自己資本比率

32.2%

41.0%

40%

ネット有利子負債

866億円

74億円

ゼロ

(有利子負債)

(2,767億円)

(2,659億円)

(2,500億円)

(現預金)

(1,900億円)

(2,585億円)

(2,500億円)

P/L(連結)

2017年度(初年度)実績

2020年度実績

(2021年度)

売上高

19,006億円

17,668億円

2兆円程度

営業利益

1,378億円

1,231億円

1,500億円程度

親会社株主に帰属する当期純利益

926億円

987億円

1,000億円程度

1株当たり当期純利益(EPS)

129.09円

137.64円

150円程度

自己資本利益率(ROE)

14.5%

11.3%

10%超の水準

 

   ・投資計画

 

 

中期経営計画2017の計画値

(2017~2021計画)

 

2017~2020年度の

実績累計(4年度分)

5年間合計

建設技術の研究開発

907億円

1,000億円

工事機械・事業用施設

443億円

500億円

不動産賃貸事業

1,530億円

1,000億円

再生可能エネルギー事業ほか

505億円

1,000億円

M&Aほか

322億円

500億円

合計

3,710億円

4,000億円

 

 

 「中期経営計画2017」について2021年度に最終年度を迎えるにあたり、これまでの進捗状況は上表のとおりであり、B/S項目に関しては、自己資本額等は目標水準に到達しているが、P/L項目に関しては、目標とする営業利益や当期純利益の達成は難しい状況となっている。これを踏まえ、当社グループは以下(イ)に記載のとおり、「企業変革プログラム」を策定し、推進することとした。

 

(イ)「企業変革プログラム」の策定・推進

 新型コロナウイルスの感染拡大は世界の社会・経済に大きな変容をもたらし、当社グループを取り巻く事業環境は急激に変化している。

 当社グループの現状に目を向けると、「目指す将来像」の実現に向けては、生産性向上や安全・品質管理の強化、事業領域の深化・拡大など継続して取り組むべき経営課題があり、これらの課題の解決に、より一層力を入れて取り組む必要がある。

 このため、次期中期経営計画の策定を待たず、「中期経営計画2017」の総仕上げとして、事業環境の変化や当社グループの現状を踏まえ、特に重点的かつ横断的に取り組む経営課題への対応指針を「企業変革プログラム」として策定した。同プログラムの推進により、目下の経営課題や次の成長フェーズに向けた基盤変革にも取り組んでいる。

 

事業環境の変化

新型コロナウイルスの感染拡大

・感染拡大によりリーマンショックを超える世界的な経済悪化が引き起こされており、今後の収束も未だ不透明

・個人の働き方や価値観から社会システムに至るまであらゆる常態が激変

デジタル化(DX)の推進

・ビッグデータ、IoT、ロボティクスなどのデジタル情報・技術の活用により、ビジネスモデルや業務プロセスを変革する「デジタル変革」の取り組みがあらゆる産業で加速

 

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「企業変革プログラム」の策定・実施

①「中期経営計画2017」の総仕上げとして課題解決への取り組みを加速する

②次の成長フェーズでの飛躍を支える「人財・組織」「業務プロセス」「デジタル」「技術」の各基盤の変革に着手

 

a 課題解決への取り組み

安全・品質の確保

安全・品質の確保は当社グループの事業における根幹であり、事故及び品質不具合発生の未然防止に向けた安全・品質管理を徹底する

業績

事業領域の深化・拡大への取り組みを継続し、厳しい事業環境下でも成長を続けられるよう収益力を向上させる

働き方改革

生産性向上

時間外労働時間の削減や生産性向上に資する技術の開発及び現場への適用に向けた取り組みを加速させる

 

b 基盤変革への取り組み

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(ウ)具体的な取り組み事例

・スマートシティ、スマートファクトリー等の成長が見込まれる分野での異業種協働の加速

・DXによる生産性向上:配筋自動判定システム、複数重機連携の自律施工、クレーン自動運転の適用拡大

・木造建築市場への取り組み強化:当社研修施設(木造高層建築)でのノウハウ蓄積や135年超の歴史を持つ木造

 作専門工事会社「㈱築柴」の買収

・エネルギー関連案件の受注促進:グリーンエネルギー本部の新設

・サプライチェーンとの新たな共創関係の構築:デジタル化支援や生産性向上に向けた協働の加速

 

ウ ESG経営の進化

 当社は基本理念に「持続可能な社会の実現」を掲げており、この目標に向かって、2050年の「あるべき姿」を「地球・社会・人」のサステナビリティが実現された状態であると定義し、ESGの取り組みとSDGs達成への貢献を視野に入れた、「Obayashi Sustainability Vision 2050」を2019年6月に策定している。このビジョンを実現する最初のステップが「大林組グループ中期経営計画2017」であり、同計画の経営基盤戦略の1つにESGへの取り組みを掲げている。

 2020年7月にはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明し、気候変動が事業に及ぼすリスク・機会を評価しシナリオ分析を実施するとともに、分析結果に基づいた対応策に取り組むなど、ESGへの取り組みを更に強化している。

 今後もESG経営を「進化」させることにより、「環境・社会・経済の統合的向上」と「当社グループの永続的な企業価値の向上」を実現していく。

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2【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりである。
 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

 

(1) 事業に対する法的規制

 建設業法、建築基準法、宅地建物取引業法、独占禁止法、労働安全衛生法等の当社の事業に対する法的規制の改廃や新設、適用基準の変更等があった場合、これに伴う対応費用等が事業収支に反映され、経営成績に影響を及ぼす可能性がある。

 当社グループは当該リスクへの対応策として、各事業部門や法務部等において、常に法的規制の制定改廃動向を予め把握し、これに伴う対応費用を見積原価や事業性判断のための収支予測に正しく反映することとしている。

 

(2) 建設市場の動向

 当社グループの主要事業である建設事業において、国内外の景気後退等により建設市場が著しく縮小した場合、工事受注量の減少等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

 当社グループは当該リスクへの対応策として、中長期的な市場動向を見越した要員計画の立案に加え、営業力、調達力の更なる強化、次世代生産システムの技術開発による生産性向上や施工能力の拡大に取り組んでいる。さらに、事業領域の拡大を通じた収益源の多様化に取り組むとともに、強固な財務体質の構築に取り組んでいる。

 

(3) 施工物等の不具合や重大事故

 当社グループの主要事業である建設事業において、設計、施工などの各面で重大な瑕疵があった場合や、人身、施工物などに関わる重大な事故が発生した場合、多額の補償等の費用が発生することなどにより当社グループの業績や企業評価に影響を及ぼす可能性がある。

 当社グループは当該リスクへの対応策として、品質マネジメントシステムの国際認証であるISO9001を取得して厳格な品質マネジメント体制を構築するとともに、安全品質管理本部を設置して、安全と品質の徹底的な管理体制を敷いている。さらに、建設工事保険、賠償責任保険等の付保によるリスクヘッジも行っている。

 

(4) 取引先の信用リスク

 発注者、協力会社、共同施工会社及びその他取引先の信用不安などが顕在化した場合、資金の回収不能や事業遅延を惹起し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

 当社グループは当該リスクへの対応策として、取引前・取引中の与信確認を徹底するとともに、主要事業である建設事業においては、出来高に応じた工事代金の受領・支払などの取引条件確保に取り組んでいる。

 

(5) 建設資材価格及び労務単価の変動

 当社グループの主要事業である建設事業において、建設資材の急激な価格高騰や調達難または労務単価の高騰や技能労働者の不足が生じた場合、工事原価の上昇による利益率の低下や工期遅延による損害賠償のおそれなど、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

 当社グループは当該リスクへの対応策として、協力会社の施工余力の把握等に基づいて当社グループの将来の施工キャパシティを常に把握し、これに応じた受注水準の維持に努めている。また、早期購買を徹底するとともに、将来予測を含めた正確な原価把握を徹底し、適切な見積原価を算出することとしている。さらに、地域ごとに協力会社の互助組織である「林友会」を組織するなど、安定的なサプライチェーンの構築に取り組むとともに、省人化に向けた自動化技術・機械の開発等を進めている。

 

(6) 保有資産の価格変動

  当社グループが保有する販売用不動産、賃貸等不動産などの事業用不動産、投資有価証券等の時価が著しく低下した場合、評価損や減損損失の計上等により当社グループの業績及び財務基盤に影響を及ぼす可能性がある。

  当社グループは当該リスクへの対応策として、中長期的な経営計画において財務基盤とのバランスを勘案した投資計画を立案するとともに、個別投資においては決裁・審査基準を設けて投資委員会等による事前の審査を厳格に行うこととしている。取得後についても、投資先の運営・経営状況や時価を定期的に確認することとしている。

 

(7) 長期にわたる事業のリスク

 事業期間が長期にわたるPPP事業や再生可能エネルギー事業等において、その期間中に事業環境に著しい変化が生じた場合や業務遂行上重大な事故等が発生した場合、当該事業の収支悪化や対応費用の損失計上などにより、当社グループの業績や企業評価に影響を及ぼす可能性がある。

 当社グループは当該リスクへの対応策として、事前の取り組みにあたっては上記(6)と同様、財務基盤とのバランスを勘案した中長期の投資計画の立案及び個別投資の厳格審査を行うとともに、事業スキームに応じた、事業パートナーや業務委託先との適切なリスク分担、保険付保等によるリスクヘッジを行っている。また、事業開始後においては、投資委員会や関連部門等による運営状況のモニタリングを随時行っており、収支状況によっては事業撤退を行い、損失の拡大を防止することとしている。

 

(8) 海外事業におけるリスク

 当社グループは主にアジア、米国等において事業展開を行っているが、それら進出国におけるテロ・紛争等による政情の不安定化、経済情勢の変動、為替レートの急激な変動、法制度の変更など事業環境に著しい変化が生じた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

 当社グループは当該リスクへの対応策として、比較的政情の安定した国・地域で事業展開するとともに、アジア支店及び北米支店(それぞれシンガポール及び米国に設置)において、所管地域の適時的確な情勢の把握及びそれに応じた即時の対応に努めることとしている。また、為替リスクに関しては、原則として現地通貨で請負代金を受領し、現地通貨で下請負代金を支払うことで、売り上げと原価の通貨を一致させるとともに、国内工事に関して海外調達を行う場合は、必要に応じて為替予約取引を行い、リスクヘッジを図っている。

 

(9) 機密情報漏洩

 外部からの攻撃や、従業員の不正等により個人情報、機密情報が漏洩した場合、社会的な信用の失墜、損害賠償の発生等により、当社グループの業績や企業評価に影響を及ぼす可能性がある。

 当社グループは当該リスクへの対応策として、「個人情報保護規程」や「情報セキュリティポリシー」を制定して、情報管理体制を確立している。また、テレワークの常態化による業務システムへの外部からのアクセス機会やパソコンの社外持ち出し機会の増加、サイバー攻撃の多様化、巧妙化などに伴う新たなリスクに対応するため、定期的にリスク評価を行い、リスクの変化に応じた技術的な対策及び教育・啓発等の人的マネジメント対策を継続的に実施し、個人情報、機密情報を適正に管理している。

 

(10)新型コロナウイルス感染症の感染拡大に関わるリスク

 新型コロナウイルス感染症の影響により、国内外の景気が後退し建設市場の著しい縮小などが起こった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

 当社グループは当該リスクへの対応策として、「新型コロナウイルス感染拡大予防のための行動プログラム」(柔軟な働き方の定め、執務環境の整備方針など全社共通の指針を規定)を策定し、これを実践することで、感染予防及び感染者発生時の影響を最小化するための対策を行っている。また、同感染症に関する最新の動向や景気動向を注視し、Withコロナ・Afterコロナの社会でも成長が期待される分野における建設需要や、社会課題の解決に資する技術開発などへ経営資源を柔軟に配分することによって、収益源の確保に努めることとしている。

 なお、景気後退に伴う建設市場縮小のリスク及びその対応策については、上記(2)に記載のとおりである。

 

(11)大規模災害に関するリスク

地震、津波、風水害等の大規模災害が発生した場合、施工中の工事への被害や本社・本支店機能の麻痺等により、当社グループの事業活動や業績に影響を及ぼす可能性がある。

当社グループは当該リスクへの対応策として、災害種別ごとにBCP(事業継続計画)を策定し、発災時に速やかに従業員等の安否や施工中の現場の被害状況を確認するとともに、復旧要員や対応拠点、物資及び物流ルートの確保などを行い、現場の復旧だけでなく、顧客事業施設やインフラ・地域社会の復旧、復興支援に迅速に取り組める体制を構築している。また、定期的にBCPの見直しを実施するとともに、教育・訓練を継続して実施し、有事の際の備えとしている。

 

(12)気候変動に関するリスク

 脱炭素社会への移行に向けて、炭素税の導入等がなされた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。また、物理的リスクとして、夏季の気温が上昇した場合や自然災害が激甚化した場合、当社グループの事業活動や業績に影響を及ぼす可能性がある。

 当社グループは当該リスクへの対応策として、2019年6月に改訂した「Obayashi Sustainability Vision 2050」において、2040~2050年の目標の一つとして「脱炭素」を掲げ、CO2排出量の削減など「環境に配慮した社会の形成」をESG重要課題に設定し、当社グループ及びサプライチェーン全体で環境負荷低減への取り組みを進めている。また、2020年7月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明し、気候変動関連のリスク・機会を特定・評価しシナリオ分析を実施するとともに、分析結果に基づいた対応策を進めている。

 なお、自然災害に関するリスク及びその対応策については上記(11)に記載のとおりである。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びに経営者の視点による分析・検討内容は次のとおりである。

 

(1)経営成績

当連結会計年度におけるわが国経済は、期末にかけて一部で企業収益改善の動きが見られたものの、新型コロナウイルスの感染拡大による世界経済への影響を受けて、民間設備投資が減少するなど、景気は総じて先行き不透明な厳しい状況が続いている。

国内の建設市場においては、公共工事の発注は堅調に推移しているものの、民間工事の発注は新型コロナウイルス感染症による企業収益悪化の影響を受けて減少していることから、受注環境は引き続き予断を許さない状況にある。

こうした情勢下にあって、当連結会計年度における当社グループの連結業績については、国内建築事業において当連結会計年度は着工直後の工事が多く工事進捗に伴う売上計上が減少したこと並びに海外建築事業において前連結会計年度に大型工事が竣工した反動減及び新型コロナウイルス感染拡大に伴う工事中断の影響があったことなどから、売上高は前連結会計年度比約3,061億円(14.8%)減の約1兆7,668億円となった。これに伴い、営業利益は前連結会計年度比約297億円(19.4%)減の約1,231億円、経常利益は前連結会計年度比約302億円(19.0%)減の約1,287億円、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比約143億円(12.7%)減の約987億円となった。

 

セグメント情報

① 建設事業

 グループ全体の売上高は、当連結会計年度は当社の国内建築事業着工直後の工事が多く工事進捗に伴う売上計上が減少したことや海外建築事業で新型コロナウイルスの影響があったことなどから、前連結会計年度比約2,691億円(13.8%)減の約1兆6,832億円となった。また、営業利益については、国内・海外建築事業における売上高の減少により完成工事総利益が減少したことなどから、前連結会計年度比約286億円(20.9%)減の約1,085億円となった。内訳は以下のとおり。

(国内建築事業)   売上高は前連結会計年度比約1,742億円(15.3%)減の約9,646億円、営業利益は前連結会計年度比約227億円(27.5%)減の約599億円となった。

(海外建築事業)   売上高は前連結会計年度比約941億円(23.6%)減の約3,043億円、営業利益は前連結会計年度比約73億円(68.0%)減の約34億円となった。

(国内土木事業)   売上高は前連結会計年度比約5億円(0.1%)減の約3,422億円、営業利益は前連結会計年度比約57億円(14.6%)増の約453億円となった。

(海外土木事業)   売上高は前連結会計年度比約2億円(0.3%)減の約720億円、営業損益は約2億円の損失(前連結会計年度は約42億円の利益)となった。

 

② 不動産事業

 前連結会計年度に子会社における分譲物件の売上計上が多かった反動減などから、グループ全体の売上高は前連結会計年度比約126億円(22.9%)減の約424億円、営業利益は前連結会計年度比約13億円(9.9%)減の約119億円となった。

 

③ その他

 前連結会計年度にPFI事業に係る大型案件の売上計上があった反動減などから、グループ全体の売上高は前連結会計年度比約243億円(37.2%)減の約411億円、営業利益は前連結会計年度比約3億円(13.0%)増の約26億円となった。

 

(2)財政状態

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末比約423億円(1.9%)増の約2兆2,726億円となった。これは、「現金預金」が減少した一方で、保有株式の時価の上昇等に伴い「投資有価証券」が増加したことや事業用不動産の取得等により「土地」及び「建設仮勘定」が増加したことなどによるものである。

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末比約691億円(5.0%)減の約1兆3,106億円となった。これは、「長期借入金」が増加した一方で、工事代金の支払に係る債務(「支払手形・工事未払金等」及び「電子記録債務」の合計)が減少したことなどによるものであり、有利子負債残高は前連結会計年度末比約174億円(7.0%)増の約2,659億円となった。

当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末比約1,114億円(13.1%)増の約9,619億円となった。これは、親会社株主に帰属する当期純利益の計上に伴い「利益剰余金」が増加したことや「その他有価証券評価差額金」が増加したことなどによるものである。

この結果、当連結会計年度末の自己資本比率は41.0%となり、前連結会計年度末より4.3ポイント上昇した。

 

(3)キャッシュ・フローの状況

営業活動によるキャッシュ・フローは、国内の建設事業収支が前連結会計年度に比べて低水準にとどまったことなどから約248億円のプラス(前連結会計年度は約2,376億円のプラス)となった。投資活動によるキャッシュ・フローは、事業用不動産の取得等により約790億円のマイナス(前連結会計年度は約473億円のマイナス)となった。また、財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金が増加したものの配当金の支払等により約84億円のマイナス(前連結会計年度は約493億円のマイナス)となった。

この結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べて約624億円減少し、約2,364億円となった。

 

(4)資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、建設事業に係る工事費、販売費及び一般管理費等の営業費用である。投資を目的とした資金需要のうち主なものは、建設事業に係る研究開発費用や工事機械の取得費用、不動産賃貸事業や再生可能エネルギー事業に係る施設購入費用等によるものである。

 当社グループは、事業運営上必要な資金を安定的に確保することを基本方針としている。

 短期運転資金は、自己資金、金融機関からの短期借入金やコマーシャル・ペーパーの発行により確保することを基本としており、長期運転資金や設備投資資金の調達については、自己資金、金融機関からの長期借入金及びノンリコース借入金や、社債の発行等により確保することを基本としている。

 また、新型コロナウイルス感染拡大による資金需要に備え、手許流動性を通常時より厚く維持するとともに、コミットメントラインの追加設定により資金調達力を強化している。

 なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は約2,659億円となっている。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は約2,364億円となっている。

 

(5)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりである。

 

(6)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。

 詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」及び「同 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載している。

(7)生産、受注及び販売の状況

  ① 受注実績

セグメントの名称

連結会計年度

(自 2019年4月1日

至 2020年3月31日)

(百万円)

当連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

(百万円)

前連結会計年度比

(%)

国内建築事業

1,250,996

1,174,985

△6.1

海外建築事業

426,034

203,794

△52.2

国内土木事業

327,825

419,366

27.9

海外土木事業

144,932

59,543

△58.9

建設事業 計

2,149,788

1,857,688

△13.6

不動産事業

42,505

48,695

14.6

その他

47,707

42,297

△11.3

合 計

2,240,001

1,948,682

△13.0

(注)セグメント間取引については相殺消去している。

 

  ② 売上実績

セグメントの名称

連結会計年度

(自 2019年4月1日

至 2020年3月31日)

(百万円)

当連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

(百万円)

前連結会計年度比

(%)

国内建築事業

1,138,934

964,683

△15.3

海外建築事業

398,564

304,388

△23.6

国内土木事業

342,704

342,203

△0.1

海外土木事業

72,215

72,004

△0.3

建設事業 計

1,952,419

1,683,280

△13.8

不動産事業

55,043

42,426

△22.9

その他

65,580

41,186

△37.2

合 計

2,073,043

1,766,893

△14.8

(注)1 セグメント間取引については相殺消去している。

2 前連結会計年度及び当連結会計年度ともに総売上高に占める売上高の割合が100分の10以上の相手先はない。

 

なお、当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の状況」は記載していない。

 なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりである。

受注高(契約高)及び売上高の状況

① 受注高、売上高及び繰越高

期 別

種類別

前期繰越高

(百万円)

当期受注高

(百万円)

(百万円)

当期売上高

(百万円)

次期繰越高

(百万円)

第116期

(自 2019年
   4月1日
 至 2020年
    3月31日)

建設事業

建 築

1,219,049

1,205,607

2,424,656

1,111,845

1,312,811

土 木

451,000

326,827

777,827

280,979

496,847

1,670,049

1,532,434

3,202,484

1,392,825

1,809,658

不動産事業等

44

23,491

23,536

23,536

合 計

1,670,093

1,555,926

3,226,020

1,416,361

1,809,658

第117期

(自 2020年
   4月1日
 至 2021年
    3月31日)

建設事業

建 築

1,312,811

1,164,086

2,476,897

926,711

1,550,186

土 木

496,847

345,074

841,922

282,878

559,044

1,809,658

1,509,161

3,318,820

1,209,589

2,109,230

不動産事業等

20,828

20,828

20,828

合 計

1,809,658

1,529,989

3,339,648

1,230,418

2,109,230

 (注) 前期以前に受注したもので、契約の変更により契約金額に増減のあるものについては、当期受注高にその増減額を含む。また、前期以前に外貨建で受注したもので、当期中の為替相場の変動により契約金額に変更のあるものについても同様に処理している。

 

② 受注工事高

期 別

区 分

国 内

海 外

官公庁

(百万円)

民  間

(百万円)

(A)

(百万円)

(A)/(B)

(%)

(B)

(百万円)

第116期

(自 2019年4月1日

  至 2020年3月31日)

建 築

141,590

1,051,865

12,151

1.0

1,205,607

土 木

110,135

137,178

79,513

24.3

326,827

251,726

1,189,044

91,664

6.0

1,532,434

第117期

(自 2020年4月1日

  至 2021年3月31日)

建 築

68,495

1,093,668

1,922

0.2

1,164,086

土 木

221,893

115,040

8,140

2.4

345,074

290,388

1,208,709

10,063

0.7

1,509,161

 

(注)工事の受注方法は特命と競争に大別され、受注金額の割合は次のとおりである。

期 別

区 分

特命(%)

競争(%)

計(%)

第116期

(自 2019年4月1日

 至 2020年3月31日)

建 築

38.6

61.4

100

土 木

25.9

74.1

100

35.9

64.1

100

第117期

(自 2020年4月1日

 至 2021年3月31日)

建 築

51.6

48.4

100

土 木

24.5

75.5

100

45.4

54.6

100

 

③ 売上高

   (イ)完成工事高

期 別

区 分

国 内

海 外

官公庁

(百万円)

民  間

(百万円)

(A)

(百万円)

(A)/(B)

(%)

(B)

(百万円)

第116期

(自 2019年4月1日

  至 2020年3月31日)

建 築

76,180

1,023,334

12,329

1.1

1,111,845

土 木

160,570

101,599

18,810

6.7

280,979

236,751

1,124,934

31,139

2.2

1,392,825

第117期

(自 2020年4月1日

  至 2021年3月31日)

建 築

65,480

854,899

6,331

0.7

926,711

土 木

157,568

105,117

20,192

7.1

282,878

223,049

960,016

26,523

2.2

1,209,589

 

 (注)1 海外工事の地域別割合は、次のとおりである。

地 域

第116期(%)

第117期(%)

アジア

33.8

40.1

北 米

33.0

38.2

その他

33.2

21.7

100

100

 

2 第116期に完成した工事のうち主なもの

発注者

工事名称

虎ノ門一丁目地区市街地再開発組合

虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー新築工事

バングラデシュ人民共和国

道路交通・橋梁省 道路局国道部

カチプール・メグナ・グムティ第2橋建設工事及び既存橋改修事業(バングラデシュ)

新千歳空港ターミナルビルディング㈱

新千歳空港国際線旅客ターミナルビル施設再整備工事

東京都

東京アクアティクスセンター新築工事

東日本旅客鉄道㈱

高輪ゲートウェイ駅新築工事

 

第117期に完成した工事のうち主なもの

発注者

工事名称

㈱みずほフィナンシャルグループ
一般社団法人 全国銀行協会
三菱地所㈱

みずほ丸の内タワー、銀行会館、丸の内テラス新築工事

東日本高速道路㈱

東京外環自動車道 市川中工事

SMFLみらいパートナーズ㈱
H.U.グループホールディングス㈱

H.U.グループHDあきる野プロジェクト

ラボ棟、R&D棟新築工事

近鉄不動産㈱

ウェスティン都ホテル京都耐震改修およびリニューアル

工事

熊本市

熊本城天守閣復旧整備工事

 

3 第116期及び第117期ともに総完成工事高に占める完成工事高の割合が100分の10以上の相手先はない。

   (ロ)不動産事業等売上高

期 別

区 分

売上高(百万円)

第116期

(自 2019年4月1日

  至 2020年3月31日)

不動産販売

416

不動産賃貸

10,160

そ の 他

12,959

23,536

第117期

(自 2020年4月1日

  至 2021年3月31日)

不動産販売

2,185

不動産賃貸

8,866

そ の 他

9,776

20,828

 

④ 繰越工事高(2021年3月31日現在)

区 分

国 内

海 外

官公庁

(百万円)

民 間

(百万円)

(A)

(百万円)

(A)/(B)

(%)

(B)

(百万円)

建 築

162,740

1,380,759

6,686

0.4

1,550,186

土 木

287,972

192,860

78,211

14.0

559,044

450,712

1,573,620

84,897

4.0

2,109,230

 

 (注)繰越工事のうち主なもの

発注者

工事名称

三田三・四丁目地区市街地再開発組合

三田三・四丁目地区第一種市街地再開発事業

複合棟1施設建築物新築工事

白金一丁目東部北地区市街地再開発組合

白金一丁目東部北地区第一種市街地再開発事業

施設建築物新築他工事

㈱ファイターズ スポーツ&エンターテイメント

ES CON FIELD HOKKAIDO建設工事

三井不動産㈱

三井不動産ロジスティクスパーク船橋Ⅲ新築工事

環境省

平成29年度中間貯蔵(大熊3工区)土壌貯蔵施設等

工事

 

4【経営上の重要な契約等】

 当連結会計年度において、経営上の重要な契約等はない。

5【研究開発活動】

 当社グループは、社会及び顧客の多様なニーズに応えるため、環境保全、エネルギー対策等の社会に貢献する技術や、生産性向上、品質確保、コストダウン等に資する工法や技術のほか、事業領域の拡大を図るための技術開発など多岐にわたる分野の研究開発活動を実施している。

 また、研究開発活動の幅を広げ、効率化を図るため、国内外の大学、公的研究機関、異業種企業との技術交流、共同開発も積極的に推進している。

 当社グループの当連結会計年度における研究開発に要した費用の総額は約136億円であり、主な研究開発成果は次のとおりである。

 なお、当社は研究開発活動を国内建築、海外建築、国内土木、海外土木、不動産及びその他の各セグメントには区分していない。

 

(1) 当社

① 山岳トンネル統合システム「OTISM™(Obayashi Tunnel Integrated System)」の構成技術として覆工コンクリ

 ート打設用に「ホース伸縮式連続打設システム」を開発

ホースを用いることで打ち込み時のコンクリートの落下高を最小限にできる「ホース伸縮式連続打設システム」を、北陸興産㈱と共同で開発した。

従来の山岳トンネル施工における覆工コンクリート打設作業では、限られた打設口からコンクリートを流し込む特有の打設方法を採っていたため筒先からの落下高が大きくなり、コンクリートの材料分離(硬化前のコンクリートの構成材料が不均一となる現象)や余剰空気を巻き込むリスクに加え、重量物である鋼製配管の切り替え作業や清掃作業が遅延した場合、所定の時間内に打ち重ねが終わらずにコールドジョイント(コンクリートを打ち重ねる際、先に打設したコンクリートが上の層のコンクリートと一体化しない状態)が発生するリスクがあった。

今回開発した「ホース伸縮式連続打設システム」は、打ち上がりの高さに応じてホースを引き上げるため、最小限の落下高での打ち込みが可能となり、前述のリスクが解消されることから、覆工コンクリートの品質向上及び打設作業に要する人員の削減が可能となった。

 

② 渋滞を抑制する新たな床版取替工法「DAYFREE™」を開発

 橋梁リニューアル工事での工事渋滞を抑制するため、交通量の少ない夜間の車線規制のみで工事が可能な床版取替工法「DAYFREE」を、中日本高速道路㈱と共同で開発した。

 高速道路のリニューアル工事では、上下線のいずれかを通行止めのうえ対面通行にするといった規制を行うことが多く、特に都市部ではう回路を設置する土地の確保が困難なことから交通規制が避けられないため、規制期間をできる限り短くすることが求められている。

 「DAYFREE™」は、トレーラーで運搬できる半断面(2車線道路の1車線)用の移動式床版架設機「ハイウェイストライダー™」や、プレキャスト板を床版同士の接合部に設置する「スリムNEOプレート™」を活用することで、限られた時間内で既設床版の撤去から新たな床版の架設、路面復旧を行えることから、交通量の多い昼間に規制を解除することができ、1日数万台という交通量がある都市部におけるリニューアル工事においても、渋滞発生の抑制が可能となった。

 

③ 既製コンクリート杭の支持層到達確認支援システム「杭番人™」を開発

 既製コンクリート杭工事の支持層到達確認指標を遠隔地からもウェブ上でリアルタイムに確認できる支持層到達確認支援システム「杭番人™」を開発した。

 従来、杭工事管理者や元請技術者は現場の施工管理装置モニター画面を見て施工管理に必要なデータを確認していたが、「杭番人™」は、支持層到達の判定に用いる掘削時における電流値などの各種指標をウェブ上でリアルタイムに表示することで、施工現場の情報を遠隔地からでも確認することを可能とした。これにより、効率的に支持層到達の確認ができ、作業時間を最大で50%程度低減することが可能になった。

 また、杭打ち機の振動を定量化した振動指標や当社独自の新しい指標を複数加えたことにより、地盤の状況に応じた最適な支持層到達判定が可能となり、杭施工の信頼性が向上した。

 

④ 「パンデミック®エマージェンシーセンター(PEC)」に新たなラインナップとして新型コロナ対応病棟を追加

 新型コロナウイルス感染拡大防止と医療スタッフのための安全・安心な医療環境の実現という社会の要請に応えるため、新型コロナウイルス感染症対応病棟として患者の症状ごとに求められる機能別にユニット化した3タイプを新たにPECシリーズとして追加した。

 新たなタイプの中等症患者対応の「PEC Ⅱ」、重症患者対応の「PEC/ICU」、さらに2008年に開発した「PEC original」と同じ平面図ながら部材を既製品にすることでより短工期での設置を可能とした「PEC quick」は、すべて約500m²のプレハブユニットを基本としているため、医療機関ごとに異なるニーズに合わせた組み合わせや、患者の増加に伴う増築にも対応できる。また、内部間仕切りもアレンジが可能であり、建築や設備の仕様によって柔軟に対応することで、医療機関のさまざまな要請に応えることができる。

 

⑤ 持ち運びサイズの除菌装置「カセットミスト™」を開発し「マルチミスト®」の新たなラインナップとしてシリー

 ズ化

 利用者の不在時に環境表面を自動で除菌する設備「マルチミスト®」の新たなラインナップとして持ち運び可能な「カセットミスト™」を開発した。

 「マルチミスト®」は、次亜塩素酸水溶液と圧縮空気を混合させた微細なミストを噴射し、室内の手すりや家具の表面まで細部にわたって自動で効率的に除菌する設備で、配管型やカート型は既に病院や教育施設等に採用され高い評価を得ている。

 今回新たに、小型で持ち運び可能な「カセットミスト™」を開発し、従来型と併せてシリーズ化した。「カセットミスト™」は、圧縮空気の配管が設けられた部屋に適用できる軽量コンパクトなタイプで、タイマーによる自動運転機能を備えている。

 これにより、マルチミストシリーズは、建物の用途や規模に応じた幅広いニーズに対応することが可能となった。

 

⑥ 排水が少なく環境に優しい「アワビの循環式陸上養殖技術」を開発

 海水を浄化しながら再利用することで、排水による海への環境負荷をかけることなく、アワビを育成できる循環式陸上養殖技術を開発した。

 昨今、水産物の安定供給を実現する養殖技術が注目される一方で、フンや残餌を含む養殖排水の海への環境負荷が問題となっている。これに対し、微生物の力で水槽の飼育水に含まれる有機物や窒素化合物などを分解除去することで清浄な水質を保つことができる、環境負荷が少ない循環式陸上養殖技術を開発した。

 特に清浄な海水を好み水質など成育環境を適切に管理することが求められ、かつ近年漁獲量の低下によって養殖への期待が高まっているアワビについて、技術研究所(東京都清瀬市)において1年間実証を行い、アワビを育成するのに適切な温度管理や水槽の衛生管理手法を確立した。

 

⑦ 免震建物へのフェイルセーフ機構「免震フェンダー®」を改良し、初めて中間層免震建物に適用

 当社が2017年に開発した「免震フェンダー®」において、今回、中間層免震建物にも適用できるように改良した。

 「免震フェンダー®」は免震建物において想定以上の地震が発生した場合に、建物利用者の安全性を向上させるフェイルセーフ機構であり、開発以来複数の基礎免震建物に採用されてきたが、免震層を1階床より上に設ける中間層免震建物においては、免震層が擁壁に囲まれていないため適用できなかった。今回、建物内側にバランス良く配置した束材(つかざい)を免震層上部の建物側から下向きに伸ばし、周囲に構築したストッパー(内側に「免震フェンダー®」を配置)をリング状に配置することで中間層免震建物にも適用できるように改良した。

 これにより、想定以上の地震時に免震層上部の建物がどの方向に動いた場合でも、束材が「免震フェンダー®」に接触して可動変形量に制限をかけるため、免震装置及び建物の損傷や家具の転倒といったリスクを抑制して、建物利用者の安全性を向上させ、かつ建物の近隣への越境を防ぐことが可能になった。

 

⑧ シールド自動運転「OGENTS/DRIVE®」の基幹となる「シールドAI自動方向制御システム」を開発

 AIが掘進実績を学習することで、シールド機の進む方向を制御できる「シールドAI自動方向制御システム」を開発した。

 シールド工法では、周辺地盤の硬さなどさまざまな要因が進む方向に影響を与えるため、状況に応じて適宜力点を調整する必要がある。また、方向を誤ることで壁面に無理な力がかかり、ひび割れが発生してしまうため、力点の調整作業には、オペレーターがシールド機の向きや位置、機械負荷など、多くのデータを総合的に評価しながら判定している。

 今回開発した「シールドAI自動方向制御システム」は、オペレーターが評価に用いる多種多様なデータをAIが学習することで、シールド機の方向修正に必要な力点を自動で判定するシステムである。力点を的確に判定することで、オペレーターの技能に大きく左右されることなく、計画線に沿ったトンネルを構築することができ、また、壁面に無理な力をかけることなく施工できるため、品質の確保を図ることができる。

(2) 大林道路㈱

  耐流動性・耐油性に優れた高耐久アスファルト混合物「タフアスコンTM」の開発

重荷重の車両の往来が多い箇所や油漏れが懸念される箇所の舗装に用いるアスファルト混合物「タフアスコンTM」を開発した。

「タフアスコンTM」は、ポリマー改質アスファルトⅡ型バインダに特殊添加剤を加えた高耐久アスファルト混合物で、耐流動性・耐油性が高い特徴があり、半たわみ性舗装に近い性能を有している。アスファルトプラントでの混合時に特殊添加剤をミキサ投入するだけで容易に製造することができ、運搬や施工も一般的なアスファルト混合物と同様に扱うことができる。

また、従来重交通道路で適用されている半たわみ性舗装と比較すると、施工時のミルク注入工が不要となったため、約50%の工期短縮が可能となり、コスト縮減を図ることができる。

 

(3) ㈱内外テクノス

金属箔を用いた展示施設でのガスバリア技術の開発

展示施設における展示ケース内を良好な状態に保つ空気質対策技術の一つとして、ガス放散抑制アルミ合金箔を壁紙の下に張り付けることで、下地合板から発生するガスを簡易的に抑制する技術を、当社と共同で開発した。

 ガス放散抑制技術としては2018年に当社と「ピクチャープロテクト®」を共同開発し、販売を開始しているが、壁紙だけを更新する既設の展示ケースや展示台の改修には、ガス吸着層とバリア層を一体化して接着する必要があり、施工期間や費用面で採用できないケースがあった。

 今回共同開発したガスバリア技術は、「ピクチャープロテクト®」で開発したガス放散の少ない接着剤を用いてアルミ合金箔を既存の合板下地に接着し、新しい壁紙も同じ接着剤で施工することで、簡易的にガス放散を抑制し、展示ケース内に収蔵されている文化財などの劣化を防ぐことができる。