第2【事業の状況】

 「第2 事業の状況」における各事項の記載金額には、消費税等は含まれていない。

1【業績等の概要】

(1) 業績

 当連結会計年度におけるわが国経済は、新興国や資源国の景気減速の影響等から生産や輸出に一部低調な動きがみられたものの、企業収益の改善が進むなかで設備投資は持ち直し基調にあり、雇用・所得環境の着実な改善を背景に個人消費も底堅く推移し、景気は足踏みを交えながらも緩やかな回復を続けた。

 建設業界においては、企業の建設投資が一定水準を維持するとともに住宅投資も増加しているが、公共投資は高水準ながら緩やかに減少しており、受注環境は総じて弱含みとなった。また、コスト面では、建設技術者・技能者不足や労務費高止まりは一部沈静化しているが、依然としてリスクが内在する事業環境が続いている。

 当社グループはこのような状況のもと、平成27年5月に策定した「中期経営計画(平成27~29年度)」に基づき、将来に向けた収益基盤の整備に総力を挙げて取り組んできた。

 当社グループの当連結会計年度における業績は、売上高(完成工事高)は受注高の減少等により、前連結会計年度比5.1%減の3,436億円となった。営業利益は売上総利益(完成工事総利益)の増加により、同52.4%増の245億円となった。経常利益は営業利益の増加及び貸倒引当金戻入額の増加等により、同64.6%増の257億円となった。親会社株主に帰属する当期純利益は投資有価証券売却益等で特別利益9億円、偶発損失引当金繰入額等で特別損失97億円を計上し、加えて法人税等49億円を計上した結果、同121.5%増の120億円となった。

 

セグメントの業績(セグメント間取引消去前)は、次のとおりである。

① 土木事業

受注高は、前連結会計年度比5.4%減の1,094億円であった。
売上高は、同7.4%減の901億円、営業利益は、同15.0%減の72億円となった。

② 建築事業

受注高は、前連結会計年度比13.9%減の1,840億円であった。
売上高は、同7.1%減の1,773億円、営業利益は、同181.5%増の126億円となった。

③ 子会社

 売上高は、前連結会計年度比2.2%増の862億円、営業利益は、同48.5%増の45億円となった。
 なお、当該セグメントにおいては、受注生産形態をとっていない子会社もあるため受注実績を示すことはできない。

 

 なお、当連結会計年度より、「企業結合に関する会計基準」(企業会計基準第21号 平成25年9月13日)等を適用し、「当期純利益」を「親会社株主に帰属する当期純利益」としている。

(2) キャッシュ・フローの状況

  営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の増加等により、42億円のプラス(前連結会計年度は182億円のプラス)となった。
 投資活動によるキャッシュ・フローは、設備の取得更新等により、4億円のマイナス(前連結会計年度は30億円のマイナス)となった。
 財務活動によるキャッシュ・フローは、約定による借入金の返済等により、29億円のマイナス(前連結会計年度は13億円のマイナス)となった。
 為替換算による減少を含め、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は前連結会計年度末に比べ7億円(前連結会計年度末比1.0%)増加し、724億円となった。

2【生産、受注及び販売の状況】

 当社グループが営んでいる事業の大部分を占める建設事業では「生産」を定義することが困難であり、子会社が営んでいる事業には「受注」生産形態をとっていない事業もあるため、グループとしての生産実績及び受注実績を示すことはできない。また、建設事業では請負形態を取っているため「販売」という定義は実態にそぐわない。このため、生産、受注及び販売の状況については、可能な限り「1 業績等の概要」において報告セグメントの種類に関連付けて記載している。

 なお、参考のため、提出会社個別の事業の状況は次のとおりである。

(1) 受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高

期別

区分

前期繰越工事高(百万円)

当期受注工事高

(百万円)

(百万円)

当期完成工事高

(百万円)

次期繰越工事高

(百万円)

第78期

 

(自 平成26年4月1日

至 平成27年3月31日)

土木工事

101,100

115,764

216,865

97,257

(119,607)

119,604

建築工事

156,771

213,730

370,502

190,900

(179,601)

179,592

257,871

329,495

587,367

288,158

(299,208)

299,197

第79期

 

(自 平成27年4月1日

至 平成28年3月31日)

土木工事

119,604

109,463

229,068

90,106

(138,962)

138,957

建築工事

179,592

184,094

363,687

177,391

(186,295)

186,304

299,197

293,558

592,755

267,497

(325,258)

325,262

(注) 1 前期以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含む。

2 次期繰越工事高の下段表示額は、当事業年度末の外国為替相場に基づき海外工事の繰越工事高を修正したものであり、上段( )内は修正前である。

(2) 受注工事高の受注方法別比率

 工事の受注方法は、特命と競争に大別される。

期別

区分

特命(%)

競争(%)

計(%)

第78期

(自 平成26年4月1日

至 平成27年3月31日)

土木工事

27.6

72.4

100

建築工事

31.0

69.0

100

第79期

(自 平成27年4月1日

至 平成28年3月31日)

土木工事

38.7

61.3

100

建築工事

35.7

64.3

100

(注) 百分比は請負金額比である。

 

(3) 完成工事高

期別

区分

官公庁

(百万円)

民間

(百万円)

合計

(百万円)

第78期

(自 平成26年4月1日

至 平成27年3月31日)

土木工事

54,951

42,306

97,257

建築工事

24,458

166,442

190,900

79,410

208,748

288,158

第79期

(自 平成27年4月1日

至 平成28年3月31日)

土木工事

58,837

31,268

90,106

建築工事

46,390

131,000

177,391

105,228

162,268

267,497

(注) 1 完成工事のうち主なものは、次のとおりである。

第78期請負金額65億円以上の主なもの

首都高速道路株式会社

中央環状品川線シールドトンネル(北行)工事

北海道電力株式会社

京極発電所新設工事のうち土木本工事(第3工区)

三井不動産株式会社

(仮称)ららぽーと和泉新築工事

SGリアルティ株式会社

(仮称)SGリアルティ舞洲 新築工事

兵庫県

県立尼崎・塚口統合新病院第1期建築工事

第79期請負金額55億円以上の主なもの

国土交通省

田尻地区函渠その5工事

三菱地所レジデンス株式会社

新子安1丁目18番計画新築工事

国土交通省

仙台第1地方合同庁舎増築棟(11)建築工事

社会医療法人鹿児島愛心会

社会医療法人鹿児島愛心会 大隅鹿屋病院建設工事

三井不動産株式会社

(仮称)三井アウトレットパーク北陸小矢部計画

2 第78期及び第79期ともに、完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。

(4) 次期繰越工事高(平成28年3月31日現在)

区分

官公庁

(百万円)

民間

(百万円)

合計

(百万円)

土木工事

87,173

51,784

138,957

建築工事

43,944

142,360

186,304

131,117

194,145

325,262

(注) 次期繰越工事のうち請負金額65億円以上の主なものは、次のとおりである。

東日本高速道路株式会社

東京外かく環状道路 本線トンネル(南行)大泉南工事

   平成31年10月完成予定

三井不動産レジデンシャル株式会社

(仮称)柏の葉キャンパス148街区計画

   平成30年1月完成予定

イオンリテール株式会社

(仮称)イオン出雲ショッピングセンター新築工事

   平成28年4月完成予定

関西エアポート株式会社

関西国際空港2期地区新旅客ターミナルビル新築工事

   平成29年2月完成予定

国家公務員共済組合連合会

斗南病院新築工事

   平成28年7月完成予定

 

3【対処すべき課題】

 今後のわが国経済は、新興国や資源国等の景気の下振れなどがリスクとして存在するが、雇用・所得環境の改善が続くもとで各種政策の効果もあり、景気は緩やかな回復を続けていくものと思われる。

 建設業界においては、公共投資は高水準を維持しつつも緩やかな減少傾向が続くとみられるが、民間工事は企業収益の改善を背景に増加基調を持続し、住宅投資も一定水準を維持すると思われ、受注環境は徐々に回復に向かうと予想される。一方で建設技術者・技能者不足の進行やコスト高といったリスクには引き続き留意する必要がある。

 当社グループは、「再生」から「成長」に向けて将来にわたり市場環境に影響されない安定した収益力の確保を目指した「中期経営計画(平成27~29年度)」を策定し、将来に向けた収益基盤の整備に取り組んでいる。

 現下の建設市場は、東北での震災復興工事、社会インフラの強靭化・老朽化対策に加え、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に伴う関連投資及びリニア中央新幹線の新設など、中期的には一定の建設需要が見込まれる環境にある。しかし2020年以降は、社会インフラ整備も「新規」から「維持・更新」へと質的に変化しながら、建設市場は全体として縮小していくことが予想される。当社グループとしては、将来にわたり市場環境に影響されない安定した収益基盤を確立すべく、グループの協働による相乗効果を取り込んだ成長戦略に取り組んでいく。

 建造物の外形的・機能的な品質はもちろんのこと、そこに集う人、そこを使う人が満足し続けられる「しあわせ品質」を実現すべく「全員参加の経営」をスローガンに、お客様に最高の“感動”をお届けする『建設サービス業』を目指していく。

 なお当社グループは、横浜市所在のマンションの施工不良に関し、多額の損失を計上している。当該施工不良問題を厳粛に受けとめ反省するとともに、このような施工不良の再発防止に全力を挙げて取り組んでいく。

 

4【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがある。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

(1) 建設投資の動向

 当社グループは、建設市場における競争が激化する現環境下においても、安定した収益を創出、維持できる経営基盤の確立に努めているが、官公庁の建設投資や民間設備投資、住宅投資等が著しく減少した場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

(2) 建設資材価格及び労務単価の変動

 当社グループは、建設工事請負契約にあたり、建設資材及び労務単価等について、適正価格での契約に努めているが、急激な市況の高騰や労務不足が生じた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

(3) 取引先の信用リスク

 当社グループは、取引時に取引先の厳格な審査を実施するとともに債権管理に関する会議体を開催するなど、与信管理の徹底に努めている。しかしながら、発注者、施工協力業者及び共同施工業者等に信用不安が生じた場合、債権の回収不能や施工遅延等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

(4) 海外における事業展開について

 当社は、昭和30年代より海外に進出し、香港、オーストラリアにおける海底トンネルなどの大型プロジェクトをはじめ、世界各国で数多くの施工実績を残している。現在はアジア諸国を中心に建設事業を展開しているが、海外における事業には、その国の政情や経済等において予期せぬ事象が発生するリスクが内在しており、政治経済情勢の悪化が当社グループの事業展開に影響を及ぼす可能性がある。

(5) 為替レートの変動

 当社グループの海外事業は、アジア諸国を中心に数カ国にわたっており、事業拠点の現地通貨の他、米ドル等による外貨建取引を行っている。為替レートは、現地での外貨建取引及び外貨建の資産、負債、収益、費用を当社で円換算する場合に関係し、当該為替レートの変動は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

(6) 金利の変動

 当社グループは金融機関等からの借入に対し、必要に応じて金利スワップ取引等により、金利変動リスクの低減に努めている。しかしながら、金利水準の急激な上昇など将来の金利情勢は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

(7) 法的規制

 当社及び連結子会社の一部は建設事業の運営に際し、建設業法、建設リサイクル法等の法律により規制を受けている。現時点では、事業運営に支障をきたすような法的規制はないが、これらの法規制が強化された場合等には、適宜対応が必要となる。また、環境基準等においてもISO14001の認証を取得するなど、環境管理体制に万全を期しているが、万が一、施工した施設等に環境汚染等不測の事態が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

(8) 建設事業における自然条件の影響

 建設事業において、地質や地盤の状況、天候等の自然条件が工事施工に影響を及ぼす可能性があり、場合によっては、工事遅延や不測の費用が発生する虞がある。事前調査、工程管理等を徹底しこれらに対応しているが、自然環境面での予期せぬ事象等により工事収益が圧迫される可能性がある。

(9) 建設事業における労働災害及び事故

 当社は、工事施工にあたって、安全衛生マネジメントシステムを確立し、労働災害及び事故の根絶に努めている。万が一、労働災害及び事故が発生した場合、補償等に要する費用面での負担は各種保険により軽減されるものの、重大な労働災害及び事故は、信用の失墜につながり、関係諸官庁等から工事入札の指名停止となるなど、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

(10) 工事等の瑕疵

 当社は、建設物の設計・施工にあたり、品質マネジメントシステムを確立し、高品質な製品・サービスの提供に努めている。万が一、施工した建設物等に重大な瑕疵があった場合、その修復に多大な費用負担が生じる虞があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

5【経営上の重要な契約等】

 当社は、平成26年9月10日開催の取締役会決議に基づき、資金調達のより一層の安定化と金融費用の圧縮による中長期的な経営基盤強化を図ることを目的として、シンジケートローン契約を締結している。当該契約の概要は次のとおりである。

(1)契約日       平成26年9月26日

(2)契約金額      10,000百万円

(3)契約期間      3年(平成26年9月30日から平成29年9月29日)

(4)アレンジャー    株式会社三井住友銀行

(5)コ・アレンジャー  三井住友信託銀行株式会社

(6)エージェント    株式会社三井住友銀行

(7)参加金融機関    株式会社三井住友銀行、三井住友信託銀行株式会社、株式会社三菱東京UFJ銀行、

            株式会社三重銀行、三菱UFJ信託銀行株式会社、株式会社北陸銀行、株式会社群馬銀行

(8)資金使途      全額既存借入金のリファイナンス資金に充当

(9)財務制限条項    平成27年3月期末日及びそれ以降の各連結会計年度末日における連結貸借対照表に記載さ

れる純資産の部の合計金額を、平成26年3月期末日における連結貸借対照表に記載される

純資産の部の合計金額の75%に相当する金額、又は直近の連結会計年度末日における連結

貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額の75%に相当する金額のうち、いずれか高

い方の金額以上に維持する。

6【研究開発活動】

 当社グループの研究開発活動は、企業業績に対して即効性のある技術、商品の開発、各種技術提案に直結した技術の開発、中長期的市場の変化を先取りした将来技術の研究、開発技術の現業展開と技術部門の特性を生かした技術営業、総合的技術力向上のための各種施策からなっており、社会経済状況の変化に対し機動的に対応できる体制をとっている。
 当連結会計年度は、研究開発費として15億円を投入した。
  当連結会計年度における主な研究開発活動は、次のとおりである。

(1) 土木事業

 ① インフラ大更新市場に向けたコッター床版工法の開発

  供用中の橋梁の架け替え工事を行うには交通規制や迂回路を用意することが必要となるため、工事による社会的な影響が少なく、利用者の利便性をできる限り損なわない工法が求められている。このため供用路線の橋梁床版の架け替え工事では、あらかじめ工場で製作されたプレキャスト版を敷設する急速施工が可能な工法が主流となっている。現在開発を進めているコッター床版工法は、プレキャスト製品の利点に加えさらなる急速施工が可能で、将来部分的な取り替えが容易等の利点を有し、現在までに静的破壊試験、曲げ疲労試験を経て、ひび割れ抵抗性、耐力・耐疲労性能を確認している。今期は輪荷重試験の実施を計画しており、実用化に向け大きく前進する予定である。

 ② 無人化施工における高機能遠隔操作室の開発

  人の立ち入りが危険な災害現場に導入される無人化施工技術は、高度な現場施工であるほど設備が複雑化し、施工開始までの準備期間が長くなる。災害現場では時間の経過とともに状況が大きく変化するため、この設備構築の時間をいかに短縮して迅速に工事に着手するかが課題となっていた。当社では、初期の無人化施工で導入していた移動式遠隔操作室を改良し、新たにICTを搭載した高機能型の移動式遠隔操作室を開発した。操作室にはデジタル伝送対応機器を搭載し、無線LANによる第4世代の無人化施工に対応している。災害現場に導入する場合、従来であれば準備に5~10日を要していたが、この移動式操作室であれば、屋上に無線基地局を設置して運用する場合は1日で、有線LANや光ファイバケーブルを使用して別途無線基地局の設置が必要となる場合でも3日程度で稼動させることが可能である。

 ③ シールド線形3Dシミュレーションシステムの開発

  シールドトンネルを高品質に施工するためには線形管理が重要である。特にシールド機とセグメントの位置関係を把握することが「出来形精度」や「トンネル品質」を確保するために重要であり、従来は測量結果を方眼紙に手書きでプロットして管理してきた。今回、施工の高品質化と業務の効率化を目的として、3次元モデルで線形を管理するシミュレーションシステムを開発した。このシステムは、機械設計用の3次元CADにシールド機とセグメントを再現し、両者の位置関係を立体的に把握してシールド機の方向制御やセグメントの損傷防止に活用する。表計算ソフトに数値を入力・変更するだけで3次元モデルを自在に動かせることが特徴である。また、この表計算との連動機能を用いてシールドトンネルのCIMモデルを作成し、維持管理に活かすことも可能である。

 

(2) 建築事業

 ① 熊谷式基礎梁貫通孔補強工法を開発

  当社は鉄筋コンクリート造基礎梁の開孔径について、従来の制限値である梁せい(梁の上端から下端までの寸法)に対する開孔径の比を1/3以下から1/2以下に緩和し、基礎梁せいの低減を可能とする「熊谷式基礎梁貫通孔補強工法」を開発し構造性能評価を取得した。鉄筋コンクリート造建築物において、設備配管等の設置や点検のために梁に貫通孔を設けることが一般的に行われている。梁に開孔を設けると構造性能が低下することから「鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説」において、開孔が円形の場合には、開孔の直径は梁せいの1/3以下とすることが望ましいとされている。建築物の基礎梁にも床下の設備配管の点検などのために人通孔が設けられることが多くあるが、この場合においても設計用応力から定まる必要梁せいにかかわらず上記の制限が適用されるため、土工事・躯体工事のコストアップにつながっていた。今回開発した工法を使用することにより、構造性能は従来工法と同等のままでコストダウンを図ることが可能となる。本補強工法は2015年11月5日付けで日本ERI株式会社より構造性能評価を取得した。建物の用途、上部構造の構造形式に関係なく、人通孔を有する鉄筋コンクリート造基礎梁に適用が可能である。今後は多くの物件に積極的に適用していく予定である。

 

 ② 近接開孔基礎梁工法の建築技術性能証明を取得

  当社が参加する近接開孔梁研究会(注)は、鉄筋コンクリート造の基礎梁に設ける開孔について、従来よりもこれを近接して設けることを可能とした「近接開孔基礎梁工法 -大開孔と中開孔が近接するRC基礎梁の補強工法-」を開発し、建築技術性能証明(GBRC性能証明第15-04号)を一般財団法人日本建築総合試験所より取得した。鉄筋コンクリート造梁に複数の開孔を設ける場合、従来は隣り合う開孔の中心間隔は、双方の開孔径平均の3倍以上を確保する必要があった。近接開孔基礎梁工法(以下、「本工法」という。)は、これを2倍の位置まで近づけることを可能とした工法であり、近接する開孔全てに開孔補強金物製品を1箇所あたり2枚以上(両側面)配筋し、近接した開孔間にあばら筋を集中的に配筋することで実現した。また、本工法は建物用途、上部構造の構造形式に関係なく鉄筋コンクリート造基礎梁に適用できることから、人通孔をはじめ電気配線、設備配管などの貫通孔を多数基礎梁に設けたい場合に有効であり、同じ範囲でも設けられる開孔数が増えるため、電気配線、設備配管などを迂回させずにほぼ最短距離で配置することが可能になるなど、開孔配置の自由度の向上が期待できる。本工法は汎用性の高い技術であることから、今後は多くの物件に積極的に採用していく予定である。

  (注)近接開孔梁研究会:当社、株式会社錢高組、青木あすなろ建設株式会社、株式会社淺沼組、株式会社奥村組、株式会社鴻池組、東亜建設工業株式会社、飛島建設株式会社、株式会社長谷工コーポレーション、株式会社ピーエス三菱、三井住友建設株式会社及びコーリョー建販株式会社(開孔補強金物製品作製メーカー)で構成されている。

 ③ 品確法の音環境性能評価に対応した乾式遮音二重床「NSフロアー(NS-Qタイプ)」を開発

  当社は乾式遮音二重床NSフロアー(NS-Qタイプ)を開発し、住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下、「品確法」という。)に基づく国土交通大臣の特別評価方法認定を取得した。品確法に定められた住宅性能表示制度において、重量床衝撃音対策や軽量床衝撃音対策の性能評価を受ける場合には、国土交通省が告示した技術基準(評価方法基準)に記載されている仕様を満たす必要がある。しかし、告示に記載されている仕様は、施工誤差等を考慮して定められたものであり、納期及びコスト面等でお客様の負担が増加していた。そこで当社は告示に記載されている仕様以外(独自の仕様)で、環境、納期及びコスト面に配慮した乾式遮音二重床NSフロアー(NS-Qタイプ)を開発し、事業主が品確法に基づく音環境性能の評価を取得できるように、国土交通大臣の特別評価方法認定を取得した。また、これに伴い、NS-Qタイプは品確法の軽量床衝撃音対策における「床仕上げ構造区分3」を等級表記することが可能となった。NS-Qタイプは床下地材にガラス繊維不織布入りせっこう板を用いており、市場への供給と市況価格の変動により価格が安定しにくい合板にかえて、価格・品質・供給が安定し、かつ、環境に配慮したものとなっている。今後は、復興住宅を始めとする公共建築物などにおいても品確法に基づく評価認定を受けた建材の需要が増加すると予想される。当社では、この製品を環境に配慮した共同住宅の乾式二重床に関する重要なツールとして位置付け、発注者や設計事務所などに対して積極的に提案していく予定である。なお本案件は、当社、野原産業株式会社及び有限会社泰成電機工業による共同開発である。

 ④ 床衝撃音遮断性能が高く、転倒時衝撃力が小さい「乾式浮床ベースケア」を開発

  当社は高い床衝撃音遮断性能を有し、転倒時衝撃力が小さい内装用、土足用2種類のグラスウール支持方法による乾式浮床ベースケアを開発した。首都圏(特に東京)、九州圏では、共同住宅は乾式二重床で設計されることが圧倒的に多い一方で、横浜、川崎、京都では建物の高さ制限対策として階高を抑えたるために直貼り床で計画されることも多い。共同住宅に用いられる直貼り床は、厚みは乾式二重床と比べて薄いが、軽量床衝撃音低減性能を確保するために歩行感が柔らかく感じられるという課題があった。また、今後の高齢化社会を見据えた際に、車いすによる長期の繰り返し走行に十分対応できていないことが指摘されている。さらには、乾式二重床に比べて転倒時の衝撃力が大きいため、状況によっては怪我をする可能性もある。こうした課題を解決するため今回開発した「乾式浮床ベースケア」は、内装用には乾式浮床パネルに下地材として環境に配慮したガラス繊維不織布入りせっこう板を用い、その上に化粧シート貼りフローリングを施工している。土足用には乾式浮床パネルに下地材として針葉樹合板を用い、その上に突板貼りフローリングを施工している。乾式浮床パネルの上に下地材を入れることで、転倒時衝撃力を小さくし、高い床衝撃音低減性能を実現し、同時に床板が柔らかく感じられる歩行感も解消した。また、床仕上げ高さを60mm程度としたことで、高さ制限のため直貼りフローリングで計画する建物やリニューアル等で乾式二重床とすることが難しい建物にも対応できる。当社ではこの製品を高齢者に配慮した施設や共同住宅のグラスウール支持方法による乾式浮床の重要なツールとして位置付け、発注者や設計事務所などに対して積極的に提案していく予定である。なお本案件は、当社、大建工業株式会社及び野原産業株式会社との共同開発である。

 

 ⑤ 大山ダムホタルビオトープがJHEP認証を取得

  当社が施工した大山ダム(大分県日田市)に設置した「ホタルの棲める環境づくり(ホタルビオトープ技術)」において、生物多様性の保全や向上への貢献を定量評価する認証制度(以下、「JHEP認証」という。)をダムの発注者である独立行政法人水資源機構と共同取得した。これはホタルを対象としたビオトープとしては国内初の認証取得となる。大山ダムホタルビオトープは、ダム建設地の日田市が昔からゲンジボタルの里として有名であることから、地域貢献や地元の子ども達への環境教育を目的にダム上流の赤石川右岸側に設置されたものである。大山ダムホタルビオトープが完成した2008年を基準年として、生物多様性の価値(ハビタット評価値)について、過去30年間の平均値と事業実施による50年後の予測値を比較、評価された結果、評価ランクA+が得られ、ホタルが生息する湿性環境を含むビオトープとしては、国内で初めてのJHEP認証取得となった。今回JHEP認証を取得したことにより、当社の取り組みが生物多様性に貢献している「社会的証明」になるとともに、当社のホタルビオトープ技術に対する信頼性が一層向上することが期待できる。今後は広くお客様などにアピールを行い、ダムやトンネルなどの土木工事案件や、都市部ビル屋上などへの技術提案・設計案件に広く展開していく予定である。

 

(3) 子会社

 株式会社ガイアートT・K

 ① フルファンクションペーブ(FFP:多機能型排水性舗装)の改良・改善

  FFPの施工実績の増加に伴い、施工時の施工管理結果や追跡調査結果から挙がった課題を絞り込み、室内試験及び試験施工により改良・改善の検討を行った。

  その結果、施工性を保ちつつ所定の品質が得やすい配合、最適な転圧温度及び転圧回数を見出した。また、その結果を反映した技術資料改訂案を作成した。

 ② 橋面舗装工法の開発

  社会インフラの老朽化、とりわけ橋梁の掛け替えが急務となる情勢を受け、急速施工が可能なプレキャスト床版掛け替え工法が注目を集めている。その工法に適した新たな橋面舗装の開発を行った。

  その結果、プレキャスト床版ジョイント部の動きに追従できるよう開発した特殊基層混合物の疲労抵抗性が通常の混合物に比べ著しく優れていることを再確認した。

  また、ジョイント部の動きの影響を緩和できるシートの適用性についても検討を行った。

 

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当連結会計年度より、「企業結合に関する会計基準」(企業会計基準第21号 平成25年9月13日)等を適用し、「当期純利益」を「親会社株主に帰属する当期純利益」としている。

 

(1) 重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度における資産、負債並びに収益、費用の金額に影響する見積り、判断及び仮定が必要となり、これらは継続した評価、過去の実績、経済等の事象、状況及びその他の要因に基づき算定を行っているが、本質的に不確実性を内包しており、実際の結果とは異なる場合がある。

 当社グループの重要な会計方針のうち見積り、判断及び仮定による算定が含まれる主な項目は、貸倒引当金、完成工事補償引当金、工事損失引当金、偶発損失引当金、賞与引当金、退職給付費用、工事進行基準による収益認識、繰延税金資産等があり、当該見積り、判断及び仮定と実際の結果に重要な差異が生じた場合は、当社グループの連結財務諸表に影響を及ぼす可能性がある。

(2) 当連結会計年度の経営成績の分析

① 完成工事高

 完成工事高は、受注高の減少等により、前連結会計年度に比べ184億円(5.1%)減少し、3,436億円となった。

 なお、当社グループの事業内容は、建設事業とその他の事業に大別されるが、その他の事業に重要性がないため、連結損益計算書上は区分していない。

② 完成工事総利益

 完成工事総利益は、完成工事総利益率の改善により、前連結会計年度に比べ100億円(34.5%)増加し、390億円となった。完成工事総利益率は、前連結会計年度に比べ3.4ポイント増加し、11.4%となった。

③ 販売費及び一般管理費

 販売費及び一般管理費は、処遇見直しによる人件費の増加等により、前連結会計年度に比べ15億円(12.3%)増加し、145億円となった。

④ 営業利益

 営業利益は、完成工事総利益の増加により、前連結会計年度に比べ84億円(52.4%)増加し、245億円となった。

⑤ 営業外損益

 営業外収益は、貸倒引当金戻入額の増加等により、前連結会計年度に比べ13億円増加し、16億円となった。

 営業外費用は、支払利息の減少等により、前連結会計年度に比べ3億円減少し、4億円となった。

⑥ 経常利益

 経常利益は、営業利益の増加及び営業外損益の影響により、前連結会計年度に比べ101億円(64.6%)増加し、257億円となった。

⑦ 特別損益

 特別利益は、投資有価証券売却益8億円など合計9億円を計上した。

 特別損失は、偶発損失引当金繰入額93億円など合計97億円を計上した。

⑧ 法人税等

 法人税、住民税及び事業税67億円、繰延税金資産の回収可能性の見直し等により法人税等調整額マイナス18億円を計上した。

⑨ 親会社株主に帰属する当期純利益

 以上により、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ66億円(121.5%)増加し、120億円となった。

 

(3) 当連結会計年度末の財政状態の分析

① 資産

 総資産は、前連結会計年度末に比べ11百万円(0.0%)増加し、2,555億円となった。

 流動資産は、前連結会計年度末に比べ11億円(0.5%)増加し、2,150億円となった。未収入金が29億円減少した一方で、現金預金が7億円、繰延税金資産が24億円増加している。

 固定資産は、前連結会計年度末に比べ11億円(2.7%)減少し、405億円となった。長期営業外未収入金が27億円、貸倒引当金が22億円、繰延税金資産が7億円減少している。

② 負債

 負債は、前連結会計年度末に比べ113億円(5.6%)減少し、1,905億円となった。

 流動負債は、前連結会計年度末に比べ83億円(5.0%)減少し、1,576億円となった。偶発損失引当金が78億円増加した一方で、支払手形・工事未払金等、電子記録債務などの仕入債務が157億円減少している。

 固定負債は、前連結会計年度末に比べ30億円(8.5%)減少し、329億円となった。長期借入金が19億円、退職給付に係る負債が11億円減少している。

③ 純資産

 純資産は、前連結会計年度末に比べ113億円(21.3%)増加し、649億円となった。利益剰余金が、剰余金の配当により7億円減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益120億円の計上等により113億円増加している。

 なお、自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ4.4ポイント向上し、25.4%となった。

(4) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループの資金の源泉は、主として営業活動からのキャッシュ・フローと金融機関からの借入からなる

当連結会計年度においては、収支が概ね安定的に推移し、一部運転資金の返済を実行した。

なお、キャッシュ・フローの状況については、「1 業績等の概要 (2)キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりである。