「第2 事業の状況」における各事項の記載金額には、消費税等は含まれていない。
(1) 業績
当連結会計年度におけるわが国経済は、回復傾向にある海外景気を背景に輸出や生産が上向き、企業収益が改善するなかで設備投資は持ち直しの動きを持続したうえ、個人消費も総じて底堅く、景気は緩やかな回復を続けた。
建設業界においては、公共投資は引き続き高水準にあり、企業の建設投資も土木インフラ関連が牽引し緩やかながら増加したほか、住宅投資も賃貸住宅を中心に増加するなど、事業環境は良好に推移した。
当社グループはこのような状況のもと、平成27年5月に策定した「中期経営計画(平成27~29年度)」に基づき、将来に向けた収益基盤の整備に総力を挙げて取り組んできた。
当社グループの当連結会計年度における業績は、売上高(完成工事高)は前期繰越工事高の増加等により、前連結会計年度比0.3%増の3,447億円となった。営業利益は売上総利益(完成工事総利益)の増加により、同2.4%増の251億円となった。経常利益は貸倒引当金戻入額の減少などにより、同1.6%減の253億円となった。親会社株主に帰属する当期純利益は偶発損失引当金繰入額等で特別損失26億円、法人税等62億円を計上した結果、同35.9%増の164億円となった。
セグメントの業績(セグメント間取引消去前)は、次のとおりである。
① 土木事業
受注高は、前連結会計年度比5.2%減の1,037億円であった。
売上高は、同1.5%増の915億円、営業利益は、同12.6%減の63億円となった。
② 建築事業
受注高は、前連結会計年度比1.7%減の1,809億円であった。
売上高は、同2.7%増の1,822億円、営業利益は、同16.2%増の147億円となった。
③ 子会社
売上高は、前連結会計年度比3.2%減の835億円、営業利益は、同12.7%減の39億円となった。
なお、当該セグメントにおいては、受注生産形態をとっていない子会社もあるため受注実績を示すことはできない。
(2) キャッシュ・フローの状況
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の増加等により、86億円のプラス(前連結会計年度は42億円のプラス)となった。
投資活動によるキャッシュ・フローは、設備の取得更新等により、30億円のマイナス(前連結会計年度は4億円のマイナス)となった。
財務活動によるキャッシュ・フローは、約定による借入金の返済等により、40億円のマイナス(前連結会計年度は29億円のマイナス)となった。
為替換算による減少を含め、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は前連結会計年度末に比べ15億円(2.1%)増加し、739億円となった。
当社グループが営んでいる事業の大部分を占める建設事業では「生産」を定義することが困難であり、子会社が営んでいる事業には「受注」生産形態をとっていない事業もあるため、グループとしての生産実績及び受注実績を示すことはできない。また、建設事業では請負形態を取っているため「販売」という定義は実態にそぐわない。このため、生産、受注及び販売の状況については、可能な限り「1 業績等の概要」において報告セグメントの種類に関連付けて記載している。
なお、参考のため、提出会社個別の事業の状況は次のとおりである。
(1) 受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高
|
期別 |
区分 |
前期繰越 工事高 (百万円) |
当期受注 工事高 (百万円) |
計 (百万円) |
当期完成 工事高 (百万円) |
次期繰越 工事高 (百万円) |
|
第79期
(自 平成27年4月1日 至 平成28年3月31日) |
土木工事 |
119,604 |
109,463 |
229,068 |
90,106 |
(138,962) 138,957 |
|
建築工事 |
179,592 |
184,094 |
363,687 |
177,391 |
(186,295) 186,304 |
|
|
計 |
299,197 |
293,558 |
592,755 |
267,497 |
(325,258) 325,262 |
|
|
第80期
(自 平成28年4月1日 至 平成29年3月31日) |
土木工事 |
138,957 |
103,718 |
242,676 |
91,501 |
(151,175) 151,171 |
|
建築工事 |
186,304 |
180,992 |
367,297 |
182,215 |
(185,081) 185,105 |
|
|
計 |
325,262 |
284,711 |
609,973 |
273,717 |
(336,256) 336,276 |
(注) 1 前期以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含む。
2 次期繰越工事高の下段表示額は、当事業年度末の外国為替相場に基づき海外工事の繰越工事高を修正したものであり、上段( )内は修正前である。
(2) 受注工事高の受注方法別比率
工事の受注方法は、特命と競争に大別される。
|
期別 |
区分 |
特命(%) |
競争(%) |
計(%) |
|
第79期 (自 平成27年4月1日 至 平成28年3月31日) |
土木工事 |
38.7 |
61.3 |
100 |
|
建築工事 |
35.7 |
64.3 |
100 |
|
|
第80期 (自 平成28年4月1日 至 平成29年3月31日) |
土木工事 |
25.7 |
74.3 |
100 |
|
建築工事 |
38.9 |
61.1 |
100 |
(注) 百分比は請負金額比である。
(3) 完成工事高
|
期別 |
区分 |
官公庁 (百万円) |
民間 (百万円) |
合計 (百万円) |
|
第79期 (自 平成27年4月1日 至 平成28年3月31日) |
土木工事 |
58,837 |
31,268 |
90,106 |
|
建築工事 |
46,390 |
131,000 |
177,391 |
|
|
計 |
105,228 |
162,268 |
267,497 |
|
|
第80期 (自 平成28年4月1日 至 平成29年3月31日) |
土木工事 |
52,489 |
39,012 |
91,501 |
|
建築工事 |
26,753 |
155,462 |
182,215 |
|
|
計 |
79,242 |
194,475 |
273,717 |
(注) 1 完成工事のうち主なものは、次のとおりである。
第79期請負金額55億円以上の主なもの
|
国土交通省 |
田尻地区函渠その5工事 |
|
三菱地所レジデンス株式会社 |
新子安1丁目18番計画新築工事 |
|
国土交通省 |
仙台第1地方合同庁舎増築棟(11)建築工事 |
|
社会医療法人鹿児島愛心会 |
社会医療法人鹿児島愛心会 大隅鹿屋病院建設工事 |
|
三井不動産株式会社 |
(仮称)三井アウトレットパーク北陸小矢部計画 |
第80期請負金額40億円以上の主なもの
|
国土交通省 |
国道45号 山田第2トンネル工事 |
|
三井不動産レジデンシャル株式会社 |
(仮称)柏の葉キャンパス148街区計画 東棟 |
|
イオンリテール株式会社 |
(仮称)イオン出雲ショッピングセンター新築工事 |
|
関西エアポート株式会社 |
関西国際空港2期地区新旅客ターミナルビル新築工事 |
|
東京博善株式会社 |
四ツ木斎場新築工事 |
2 第79期及び第80期ともに、完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
(4) 次期繰越工事高(平成29年3月31日現在)
|
区分 |
官公庁 (百万円) |
民間 (百万円) |
合計 (百万円) |
|
土木工事 |
85,055 |
66,116 |
151,171 |
|
建築工事 |
29,138 |
155,966 |
185,105 |
|
計 |
114,194 |
222,082 |
336,276 |
(注) 次期繰越工事のうち請負金額50億円以上の主なものは、次のとおりである。
|
東日本高速道路株式会社 |
東京外かく環状道路 本線トンネル(南行)大泉南工事 |
平成31年10月完成予定 |
|
東日本高速道路株式会社 |
東北中央自動車道 やまがたざおうトンネル工事 |
平成30年5月完成予定 |
|
独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構 |
北海道新幹線、二ツ森トンネル(鹿子)他 |
平成34年4月完成予定 |
|
三井不動産株式会社 |
(仮称)柏の葉三番街西棟賃貸住宅計画新築工事 |
平成30年1月完成予定 |
|
一般社団法人巨樹の会 |
(仮称)江東リハビリテーション病院新築工事 |
平成29年8月完成予定 |
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
当社グループにおける経営の基本方針は、次のとおりである。
お客様に最高の"感動"をお届けする『建設サービス業』を目指していく。
また、広く社会に対し必要な企業情報を適時性をもって開示し「開かれた企業」を確立することによって、お客様、株主様をはじめとした関係各位からの信頼獲得に努めていく。
社員一人ひとりは、「どんなに辛くとも諦めずに最後まで挑戦する」企業風土のなかで、経営や仕事に対する高い意識を持って行動する「全員参加の経営」を実践していく。
今後のわが国経済は、米国や欧州における政治の混迷や北朝鮮情勢及び新興国の景気の下振れなどがリスクとして存在するが、雇用・所得環境の改善が続くなかで各種政策の効果もあり、景気は引き続き緩やかに回復していくことが期待される。
建設業界においては、住宅投資は当面、横ばい圏内の動きが予想されるが、設備投資は企業収益の改善を背景に持ち直しの動きを続け、公共投資も予算の執行等により高水準で推移すると見込まれるなど、事業環境は引き続き良好な状況で推移すると思われる。一方で建設技術者・技能者不足の進行やコスト高といったリスクには引き続き留意する必要がある。
このような状況のもと、当社グループは、「再生」から「成長」に向けて将来にわたり市場環境に影響されない安定した収益力の確保を目指した「中期経営計画(平成27~29年度)」を策定し、将来に向けた収益基盤の整備に取り組んでいる。なお、業績目標値は、次のとおりである。
連結業績目標値
|
回次 |
第79期 |
第80期 |
第81期 |
||
|
決算年月 |
平成28年3月 |
平成29年3月 |
平成30年3月 |
||
|
計画 |
実績 |
計画 |
実績 |
計画 |
|
|
売上高 (百万円) |
350,000 |
343,647 |
370,000 |
344,706 |
380,000 |
|
営業利益 (百万円) |
11,900 |
24,540 |
14,400 |
25,135 |
15,800 |
|
(率) |
3.4% |
7.1% |
3.9% |
7.3% |
4.2% |
|
経常利益 (百万円) |
11,500 |
25,772 |
14,000 |
25,358 |
15,400 |
|
(率) |
3.3% |
7.5% |
3.8% |
7.4% |
4.1% |
現下の建設市場は、東北での震災復興工事、社会インフラの強靭化・老朽化対策に加え、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に伴う関連投資及びリニア中央新幹線の新設など、中期的には一定の建設需要が見込まれる環境にある。しかし2020年以降は、社会インフラ整備も「新規」から「維持・更新」へと質的に変化しながら、建設市場は全体として縮小していくことが予想される。当社グループとしては、将来にわたり市場環境に影響されない安定した収益基盤を確立すべく、グループの協働による相乗効果を取り込んだ成長戦略に取り組んでいく。
建造物の外形的・機能的な品質はもちろんのこと、そこに集う人、そこを使う人が満足し続けられる「しあわせ品質」を実現すべく「全員参加の経営」をスローガンに、お客様に最高の“感動”をお届けする『建設サービス業』を目指していく。
なお、当社子会社の株式会社ガイアートは、東日本高速道路株式会社が発注した道路工事に関し、独占禁止法違反により、平成28年9月6日付で公正取引委員会から排除措置命令及び課徴金納付命令を受けた。また、平成28年9月7日付で東京地方裁判所から同社に対する罰金刑及び同社関係者に対する懲役刑(執行猶予付)の判決を受け、その刑が確定した。これを厳粛かつ真摯に受け止め、今後とも法令遵守をあらためて徹底し、早期の信頼回復に努めていく。
また、平成26年に当社の施工不良が判明した横浜市所在のマンションに関して、多額の偶発損失引当金を計上している。先般、当該マンションの管理組合臨時総会において、建替え決議がなされ、当社が建替え工事を行わせていただくことになった。工事にあたっては、安全で高い品質の住まいを早期にお引渡しできるよう、全社をあげて誠心誠意、取り組んでいく。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがある。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
(1) 建設投資の動向
当社グループは、建設市場における競争が激化する現環境下においても、安定した収益を創出、維持できる経営基盤の確立に努めているが、官公庁の建設投資や民間設備投資、住宅投資等が著しく減少した場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。
(2) 建設資材価格及び労務単価の変動
当社グループは、建設工事請負契約にあたり、建設資材及び労務単価等について、適正価格での契約に努めているが、急激な市況の高騰や労務不足が生じた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。
(3) 取引先の信用リスク
当社グループは、取引時に取引先の厳格な審査を実施するとともに債権管理に関する会議体を開催するなど、与信管理の徹底に努めている。しかしながら、発注者、施工協力業者及び共同施工業者等に信用不安が生じた場合、債権の回収不能や施工遅延等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。
(4) 海外における事業展開について
当社は、昭和30年代より海外に進出し、香港、オーストラリアにおける海底トンネルなどの大型プロジェクトをはじめ、世界各国で数多くの施工実績を残している。現在はアジア諸国を中心に建設事業を展開しているが、海外における事業には、その国の政情や経済等において予期せぬ事象が発生するリスクが内在しており、政治経済情勢の悪化が当社グループの事業展開に影響を及ぼす可能性がある。
(5) 為替レートの変動
当社グループの海外事業は、アジア諸国を中心に数カ国にわたっており、事業拠点の現地通貨の他、米ドル等による外貨建取引を行っている。為替レートは、現地での外貨建取引及び外貨建の資産、負債、収益、費用を当社で円換算する場合に関係し、当該為替レートの変動は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。
(6) 金利の変動
当社グループは金融機関等からの借入に対し、必要に応じて金利スワップ取引等により、金利変動リスクの低減に努めている。しかしながら、金利水準の急激な上昇など将来の金利情勢は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。
(7) 法的規制
当社及び連結子会社の一部は建設事業の運営に際し、建設業法、建設リサイクル法等の法律により規制を受けている。現時点では、事業運営に支障をきたすような法的規制はないが、これらの法規制が強化された場合等には、適宜対応が必要となる。また、環境基準等においてもISO14001の認証を取得するなど、環境管理体制に万全を期しているが、万が一、施工した施設等に環境汚染等不測の事態が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。
(8) 建設事業における自然条件の影響
建設事業において、地質や地盤の状況、天候等の自然条件が工事施工に影響を及ぼす可能性があり、場合によっては、工事遅延や不測の費用が発生する虞がある。事前調査、工程管理等を徹底しこれらに対応しているが、自然環境面での予期せぬ事象等により工事収益が圧迫される可能性がある。
(9) 建設事業における労働災害及び事故
当社は、工事施工にあたって、安全衛生マネジメントシステムを確立し、労働災害及び事故の根絶に努めている。万が一、労働災害及び事故が発生した場合、補償等に要する費用面での負担は各種保険により軽減されるものの、重大な労働災害及び事故は、信用の失墜につながり、関係諸官庁等から工事入札の指名停止となるなど、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。
(10) 工事等の瑕疵
当社は、建設物の設計・施工にあたり、品質マネジメントシステムを確立し、高品質な製品・サービスの提供に努めている。万が一、施工した建設物等に重大な瑕疵があった場合、その修復に多大な費用負担が生じる虞があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。
当社は、平成26年9月10日開催の取締役会決議に基づき、資金調達のより一層の安定化と金融費用の圧縮による中長期的な経営基盤強化を図ることを目的として、シンジケートローン契約を締結している。当該契約の概要は次のとおりである。
(1) 契約日 平成26年9月26日
(2) 契約金額 10,000百万円
(3) 契約期間 3年(平成26年9月30日から平成29年9月29日)
(4) アレンジャー 株式会社三井住友銀行
(5) コ・アレンジャー 三井住友信託銀行株式会社
(6) エージェント 株式会社三井住友銀行
(7) 参加金融機関 株式会社三井住友銀行、三井住友信託銀行株式会社、株式会社三菱東京UFJ銀行、
株式会社三重銀行、三菱UFJ信託銀行株式会社、株式会社北陸銀行、株式会社群馬銀行
(8) 資金使途 全額既存借入金のリファイナンス資金に充当
(9) 財務制限条項 平成27年3月期末日及びそれ以降の各連結会計年度末日における連結貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額を、平成26年3月期末日における連結貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額の75%に相当する金額、又は直近の連結会計年度末日における連結貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額の75%に相当する金額のうち、いずれか高い方の金額以上に維持する。
当社グループの研究開発活動は、企業業績に対して即効性のある技術、商品の開発、各種技術提案に直結した技術の開発、中長期的市場の変化を先取りした将来技術の研究、開発技術の現業展開と技術部門の特性を生かした技術営業、総合的技術力向上のための各種施策からなっており、社会経済状況の変化に対し機動的に対応できる体制をとっている。
当連結会計年度は、研究開発費として17億円を投入した。
当連結会計年度における主な研究開発活動は、次のとおりである。
(1) 土木事業
① 遠隔吹付け機の開発
導入後30年を経た山岳工法(NATM)では、主要な支保部材である吹付けコンクリートの高強度化、低粉塵化の技術開発が行われ、坑内環境は改善してきている。しかし、圧縮空気を利用した吹付け作業では粉塵の発生をなくすことは困難であり、作業員の健康面や労働負担が大きな課題となっている。労働負荷を大幅に低減するため、無人化施工技術を活用し、危険な切羽側での吹付け作業位置を環境の良い操作室に移動することで、安定した吹付け作業を行うことができる遠隔吹付けシステムを開発した。遠隔吹付け機にはカメラを3台設置し、切羽から離れた場所に設置した操作室のモニタを見ながら、吹付け作業を行う。実際のトンネル現場において試験施工を行い、実現性を確認した。吹付け作業時に切羽から作業員がいなくなれば、粉塵発生量が問題とならないため、大容量吹付けが可能となり、施工効率の向上も可能となる。今後は積極的に遠隔吹付けシステムを実現場に投入する。なお、この技術は西尾レントオール株式会社との共同開発である。
② 注水併用エアクーリング工法の開発
コンクリート構造物における品質確保として、ひび割れ抑制対策は重要である。特に、施工時の水和熱による温度ひび割れは、ひび割れ幅も大きく、構造物の耐久性に大きく影響を及ぼす。対策の一つとして、施工後のコンクリートのピーク温度を下げるクーリング工法があるが、今回、中規模の構造物(函渠や橋脚など)を対象として、従来のエアクーリング工法(冷却媒体として空気が主)に注水を併用した新しいクーリング工法(注水併用エアクーリング工法)を開発し、その適用性について確認した。本工法は、送風しているクーリング管中に水をミスト状にして少量滴下し、その気化熱を利用して冷媒となる空気温度を低下させ、送風による冷却効果を高めたものである。現在までに、函渠構造物や橋脚での施工事例やトンネル覆工での試験施工を実施し効果を確認済みである。今後も施工実績を増やして、データを増やすとともに実用化を図っていく予定である。
③ 高難度災害適用へのネットワーク対応型無人化施工技術
雲仙普賢岳の災害対策以来、長年、無人化施工技術の開発、高度化に取り組んできた。その成果が阿蘇大橋地区での緊急防災対策で大いに効果を発揮した。昨年、熊本地震により阿蘇大橋地区では大規模な斜面崩壊が発生し、不安定土砂除去、土留盛土築堤等の緊急対策工事を行うこととしたが、余震や降雨等によりさらなる崩壊が懸念された。このため、全工程無人化とし、そのうえで最大限の効率を追求することとした。その中核として導入したのがネットワーク対応型無人化施工システムである。これは建設機械の操作、画像、施工データを一括してIP(インターネット・プロトコル)化し、光ファイバケーブルや無線LANを使用して伝送するシステムで、現場状況に適応させて開発した。また、その技術に対応した新技術開発を並行して行い、CAN-LAN変換器を適用したICT建設機械の導入、操作映像の向上に高精細画像伝送システムを導入するなどIoT、ICTを高度に活用したシステムを現場状況に合わせて組合せることができる。また、無人化施工システムの迅速な立上げを実現するために、予め遠隔操作室のシステム機器設置と設定が完了した高機能遠隔操作室を開発し、無人化施工の早期立上げを実現した。その災害対応における総合力はその成果とともに高く評価されている。
(2) 建築事業
① コンクリートの乾燥収縮ひずみ制御を確立
コンクリートの乾燥収縮ひずみを低減することのできる材料をコンクリートに使用し、その量を調整することによって、乾燥収縮ひずみを通常より小さく(0~800μの範囲)制御できる技術を確立した。また、その効果検証のため、収縮ゼロから通常のコンクリートまでの5種類の調合を用い、壁及びデッキスラブの実大試験体実験を実施した。コンクリート打設後1年を経過しているが、対策を施した試験体については、乾燥収縮ひび割れは発生していない。コンクリートの乾燥による収縮ひび割れは、建築物の耐久性と美観に大きく影響するため、その制御については様々な取り組みが行われており、社会的要請も年々高まっている。最近では、日本建築学会からの仕様書・同解説及び指針等に従った材料・調合面での対策として、石灰石粗骨材の使用や収縮低減剤、膨張材を適用する事例が多くみられるが、収縮低減剤と膨張材の併用やセメント種類が異なる場合の影響など、不明な点が多く残されている。このような背景から、収縮低減剤と膨張材の調合見直しやセメント種類による影響の確認実験を実施することにより、「収縮ゼロコンクリート(乾燥収縮ひずみを0~100μまで低減)」の使用によるコンクリートの乾燥収縮ひずみを0~800μの範囲で制御できる技術を確立した。1㎥当たりの価格は、普通コンクリートと比較して約1.3倍から2.0倍となり、予算や要求性能レベルに応じた調合方法を選定できる。この技術により、要求性能とコストを考慮しつつ、長期にわたり性能や美観を維持した高品質のコンクリートの提供が可能であり、工場・倉庫などの床、打放し仕上げのRC造施設などの物件で展開していく。また、平成29年度まで、試験体の観察や解析を継続し、乾燥収縮ひび割れの制御技術を検証していく。なお、本案件は当社、株式会社安藤・間、佐藤工業株式会社、戸田建設株式会社、西松建設株式会社、株式会社フジタ及び前田建設工業株式会社の建設7社による共同開発である。
② 風を効果的に低減するパネルを開発
防風パネルや建物の目隠しパネルなど、屋外の風の影響を受けやすい設置物に作用する風力を低減する技術を開発した。近年、大型台風や急速に発達した低気圧に伴う強風により、工作物や建物外装材の被害が増加している。これは、建物の屋上や隅角部付近に設置される目隠しパネル、広告塔や看板、マンションのバルコニー隔て板や手摺ガラスに作用する大きな風力が原因である。対策として、パネル部材や取り付けの強度を増す方法があるが、コストアップに繋がっていた。今般シミュレーションや風洞実験を繰り返してパネルに作用する風力を詳細に把握し、パネルの形状に工夫を重ねた結果、効果的に風力を低減できるパネルを考案した。パネルに作用する風力低減方法については、敢えて風がパネルを通り抜ける構造とし、さらに部材形状を風が各部材間を滑らかに流れて部材に作用する風力が小さくなる形状とした。また、パネルの機能維持に配慮し奥の景色が透けて見えない構造にし、同時にパネル表面に文字や絵などを描けるようにした。風力低減効果については、正面風の場合、風力低減パネルに作用する風力は、平板に作用する風力に比べてほぼ半減、風力低減パネルの背後ではさらに風速が半分以下に減少するため、パネル背後に設置する物体に作用する風力は、パネルを設置しない場合に比べて1/4程度に減少すると推測できる。この技術は土木・建築分野で採用される防風パネル、目隠しパネルのほか、広告塔や看板、バルコニー手摺や隔て板など、屋外の風の影響を受けやすい設置物に幅広く適用が可能である。今後、試作品による風騒音の検討も重ねていきながら、2年後の製品化を目指す。
③ 国内メーカーでは初めて乾式浮床での「石貼り仕様」を開発 ―床衝撃音遮断性能に優れた「乾式浮床ベースケア」―
首都圏(特に東京都)や九州圏では、共同住宅は乾式二重床で設計されることが圧倒的に多い。しかしながら、京都市、川崎市及び横浜市エリアなどの高さ制限のある地域では、階高を抑えるために直貼り床で計画されることが多くなる。こうしたことを踏まえ、当社は床仕上げ高さを抑えても床衝撃音遮断性能が高く、転倒時衝撃力が小さい「乾式浮床ベースケア」を開発、商品化してきた。一般的に、共同住宅に用いられる直貼り床の厚みは13㎜程度であり、仕上げ材に天然大理石(無垢大理石)やタイルを用いると、その薄さがひび割れや欠けなどの破損の原因となる恐れがあり、直床貼りで「高級感のある石貼り仕上げ」という要望に応えられなかった。こうしたニーズに対応するため、当社は「乾式浮床ベースケア」の床衝撃音遮断性能や転倒時衝撃力性能を損なうことなく、直貼り床でも石やタイルを施工できる「乾式浮床ベースケア石貼り仕様」を開発した。乾式パネルの上に2枚の下地材(ガラス繊維不織布入りせっこう板と針葉樹合板)を用いることで、石のひび割れや欠けを防ぎながら床仕上げ高さも抑えて、優れた床衝撃音遮断性能を実現した。また、本仕様の転倒時衝撃力は、JIS規格の推奨値である100G以下を確保しており、居室内でも石貼り仕様で施工することができる。当社では、過去に発表した「乾式浮床ベースケア」の内装用・土足用に続き、新たに「石貼り仕様」を商品ラインナップに加えて発注者や設計事務所などに積極的に提案し、多様な要望に応えたいと考えている。なお、本案件は大建工業株式会社及び野原産業株式会社との共同開発である。
④ 福島産土着藻類による燃料生産実証事業を開始
当社を含む会員8社(注)が参画する一般社団法人藻類産業創成コンソーシアムは、経済産業省資源エネルギー庁の平成28年度「微細藻類燃料生産実証事業費補助金」の採択を受け、福島県の土着藻類による燃料生産実証事業を開始した。同コンソーシアムは平成25年10月より福島県震災復興事業「福島県再生可能エネルギー次世代技術開発事業」を受託し、福島県の土着藻類の大量培養から燃料化までの一連の流れを確立し、福島県南相馬市に実証実験施設「藻類バイオマス生産開発拠点」を設置している。今後は約3年間で得られたノウハウや設備を活用し、排熱・排ガス(CO₂)、下水を利用した土着藻類バイオマスの高い生産量の実現を図る。また、脱水、濃縮・抽出過程の効率化や抽出後の残渣再資源化の検討・実施実験を行い、エネルギーや生産コスト(藻類燃料単価)の削減を目指し、燃料生産を実証していく。
(注)当社、株式会社相双環境整備センター、藻バイオテクノロジーズ株式会社、高砂熱学工業株式会社、国立大学法人筑波大学、株式会社富士通システムズ・ウエスト、ヴェオリア・ジェネッツ株式会社、三菱化工機株式会社
⑤ 「シリーズ建築の音環境入門100号記念号」を刊行
当社らで構成する床衝撃音研究会(注)は、このたび山下恭弘信州大学名誉教授監修のもと「シリーズ建築の音環境入門100号記念号」を刊行した。床衝撃音研究会では、平成20年からデベロッパーや設計事務所、建設会社などの技術者向けに小冊子「建築の音環境入門」をシリーズ化して発刊してきた。本号では、これまで要望の多かった「実務者のための建築音響設計法」を取り上げた。建物の設計や施工に携わる技術者が、音環境についての疑問点のあるときに本号を見て、必要に応じてどのような音環境対策を行ったら良いかなどをわかりやすい構成で解説した。今後も引き続き共同住宅の音環境に関する重要なツールとして位置づけ、デベロッパーや設計事務所などに対して積極的に提供していく予定である。
(注)共同住宅のより良い音環境の研究を目的として、平成18年に当社、有限会社泰成電機工業、フジモリ産業株式会社、野原産業株式会社、万協株式会社及び有限会社音研が設立した組織。
(3) 子会社
株式会社ガイアート
① 橋舗装工法の開発
社会インフラの老朽化、とりわけ橋梁の掛け替えが急務となる情勢を受け、急速施工が可能なプレキャスト床版掛け替え工法が注目を集めており、その工法に適した新たな橋面舗装の開発を行っている。室内試験でプレキャスト床版ジョイント部の動きに追従できるよう開発した特殊基層混合物が、現場で施工可能かを試験施工で確認した。また、ジョイント部の動きの影響を緩和できるシートの効果を室内試験で検証した。
② 移動式たわみ測定装置の実用化に関する共同研究
舗装の効率的な管理に向けて、定期的な点検・維持修繕が求められている。構造的な舗装の健全度の調査には、FWDによるたわみ測定が一般的に用いられるが、交通規制が必要であり、定期的な点検には適さない。移動しながらたわみを測定する移動式たわみ測定装置の開発が求められるなか、主に測定精度向上の検討を実施してきた。現在、2つの公的機関、1つの大学、5つの民間企業で移動式たわみ測定装置の実用化に関する共同研究に着手している。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度における資産、負債並びに収益、費用の金額に影響する見積り、判断及び仮定が必要となり、これらは継続した評価、過去の実績、経済等の事象、状況及びその他の要因に基づき算定を行っているが、本質的に不確実性を内包しており、実際の結果とは異なる場合がある。
当社グループの重要な会計方針のうち見積り、判断及び仮定による算定が含まれる主な項目は、貸倒引当金、完成工事補償引当金、工事損失引当金、偶発損失引当金、賞与引当金、退職給付費用、工事進行基準による収益認識、繰延税金資産等があり、当該見積り、判断及び仮定と実際の結果に重要な差異が生じた場合は、当社グループの連結財務諸表に影響を及ぼす可能性がある。
(2) 当連結会計年度の経営成績の分析
① 完成工事高
完成工事高は、前期繰越工事高の増加等により、前連結会計年度に比べ10億円(0.3%)増加し、3,447億円となった。
なお、当社グループの事業内容は、建設事業とその他の事業に大別されるが、その他の事業に重要性がないため、連結損益計算書上は区分していない。
② 完成工事総利益
完成工事総利益は、完成工事総利益率の改善により、前連結会計年度に比べ20億円(5.2%)増加し、410億円となった。完成工事総利益率は、前連結会計年度に比べ0.5ポイント増加し、11.9%となった。
③ 販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費は、処遇見直しによる人件費の増加等により、前連結会計年度に比べ14億円(9.8%)増加し、159億円となった。
④ 営業利益
営業利益は、完成工事総利益の増加により、前連結会計年度に比べ5億円(2.4%)増加し、251億円となった。
⑤ 営業外損益
営業外収益は、貸倒引当金戻入額の減少等により、前連結会計年度に比べ11億円減少し、5億円となった。
営業外費用は、支払利息の減少等により、前連結会計年度に比べ1億円減少し、3億円となった。
⑥ 経常利益
経常利益は、営業外収益の減少等により、前連結会計年度に比べ4億円(1.6%)減少し、253億円となった。
⑦ 特別損益
特別利益は、会員権売却益2千万円など合計4千万円を計上した。
特別損失は、偶発損失引当金繰入額17億円など合計26億円を計上した。
⑧ 法人税等
法人税、住民税及び事業税61億円、繰延税金資産の回収可能性の見直し等により法人税等調整額1億円を計上した。
⑨ 親会社株主に帰属する当期純利益
以上により、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ43億円(35.9%)増加し、164億円となった。
(3) 当連結会計年度末の財政状態の分析
① 資産
総資産は、前連結会計年度末に比べ163億円(6.4%)増加し、2,719億円となった。
流動資産は、前連結会計年度末に比べ138億円(6.4%)増加し、2,288億円となった。受取手形・完成工事未収入金等が90億円増加している。
固定資産は、前連結会計年度末に比べ25億円(6.4%)増加し、430億円となった。有形固定資産が14億円、投資有価証券が11億円増加している。
② 負債
負債は、前連結会計年度末に比べ10億円(0.5%)増加し、1,916億円となった。
流動負債は、前連結会計年度末に比べ89億円(5.7%)増加し、1,666億円となった。電子記録債務が47億円、短期借入金が55億円増加している。
固定負債は、前連結会計年度末に比べ79億円(24.2%)減少し、250億円となった。長期借入金が79億円減少している。
③ 純資産
純資産は、前連結会計年度末に比べ153億円(23.6%)増加し、802億円となった。利益剰余金が、剰余金の配当により14億円減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益164億円の計上等により149億円増加している。
なお、自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ4.1ポイント向上し、29.5%となった。
(4) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループの資金の源泉は、主として営業活動からのキャッシュ・フローと金融機関からの借入からなる。
当連結会計年度においては、収支が概ね安定的に推移し、一部運転資金の返済を実行した。
なお、キャッシュ・フローの状況については、「1 業績等の概要 (2)キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりである。