第2【事業の状況】

 「第2 事業の状況」における各事項の記載金額には、消費税等は含まれていない。

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

 当社グループにおける経営の基本方針は次のとおりである。

 独自の現場力(優れた技術力を豊かな人間力で活かす現場力)を高め、独自の価値であるしあわせ品質(建造物の外形的・機能的な品質に加え、そこに集う人、そこを使う人が満足し続けられる品質)をつくり、時代を超えてお客様と社会を支え続ける。

 また、良質な建設サービスを市場に提供し続けるため、建設業に内在する構造的課題を克服し、建設市場の質的・量的変化に柔軟に対応できる企業体質へとさらに変化していく。そして長期的な成長を実現し、かつ持続可能な社会の形成に貢献していくために、ESGの視点を取り入れた経営を強化していく。

 

 わが国経済は、アジア新興国等の経済が緩やかに回復している一方、中国経済の減速や米国の通商問題に端を発する貿易摩擦の激化など金融資本市場の変動の影響等がリスクとして存在するが、雇用・所得環境の改善が続くなかで各種政策の効果もあり、景気は引き続き緩やかに回復していくことが期待される。

 建設業界においては、企業の建設投資は企業収益の改善や成長分野への対応等を背景に増加を続け、公共投資も2019年度予算には、消費税増税に対応した臨時・特別予算措置として「防災・減災、国土強靭化対策」等が盛り込まれるなど、事業環境は引き続き良好な状況で推移すると思われる。一方で建設技術者・技能者不足の進行やコスト高といったリスクには引き続き留意する必要がある。

 現下の建設市場は、激甚化する自然災害に備えた防災・減災対策事業や高度経済成長期に整備された社会インフラの老朽化対策事業の拡大に加え、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に伴う関連投資など、中期的には一定の需要が見込まれる環境にある。しかしながら将来的には、人口減少による国内建設需要の縮小や財政制約により公共投資の抑制が予測されることから、建設市場は新設が減少し維持更新やPPP(Public Private Partnership)/PFI(Private Finance Initiative)/コンセッションが増加するなど質的・量的に変化していくことが予想される。

 このような状況のもと、当社グループは2017年11月に、5年後の連結売上高5,000億円・連結営業利益500億円を目指した中長期経営方針を定めるとともに、本方針に基づき、2018年3月に①建設工事請負事業の維持・拡大、②新たな事業の創出、③他社との戦略的連携を戦略の柱とする『熊谷組グループ 中期経営計画(2018~2020年度)~成長への挑戦~』を策定した。当社グループ一丸となって本計画に取り組み、持続的成長と企画価値向上を目指していく。

 

 『熊谷組グループ 中期経営計画(2018~2020年度)~成長への挑戦~』(要旨)

 

■戦略① 建設工事請負事業の維持・拡大

提案力を強化して受注を拡大し、技術開発を推進して生産性を高め、中核事業である建設工事請負事業の収益力の維持・向上を図る。

 

■戦略② 新たな事業の創出

グループが保有する技術・経験・ノウハウを活用するとともに、効果的な出資・投資を行い、建設工事請負事業以外の新たな収益源を創出する。

 

■戦略③ 他社との戦略的連携

グループ連携による成長に加え、グループの枠を超えた協業を推進し、シナジー創出によるさらなる成長を目指す。

 

本計画期間中(2018~2020年度)に目指す4つの指標

  中長期経営方針で定める2022年度に連結売上高5,000億円・連結営業利益500億円の実現に向けて、本計画期間中、4つの指標について以下の水準達成を目指す。

連結売上高  4,600億円

連結営業利益  330億円 ※投資利益・受取配当金を含む

ROE       12%

配当性向      30%

 

投資計画

  競争力維持・拡大と収益源多様化のため、成長領域に計画期間3年間で600億円規模の投資を行う。

国内/海外アライアンス       230億円

再生可能エネルギー事業/PFI等  70億円

国内不動産             210億円

海外不動産             30億円

技術開発等             60億円

 

ESG課題への取り組みを強化

  建設を核とした事業活動を通して社会的課題の解決に貢献し、企業価値の向上を目指す。

 

住友林業との協業取り組み

  2017年11月に中長期経営方針の一環として、資本業務提携に関する契約を締結した住友林業株式会社と各分野で協業を促進し、シナジー創出を見込む。

協業分野 木化・緑化関連建設事業

     再生可能エネルギー事業

     海外事業

     周辺事業領域(ヘルスケア・開発商品販売他)

     共同研究開発(新工法・部材・ロボティクス他)

 

 なお、当社連結子会社の株式会社ガイアートは、全国におけるアスファルト合材の販売価格に関する独占禁止法違反の疑いで、2017年2月28日に公正取引委員会の立入調査を受け、以降、同委員会による調査に全面的に協力してきたが、2019年3月6日に同委員会から独占禁止法に基づく排除措置命令書(案)及び課徴金納付命令書(案)に係る意見聴取通知書を受領した。今後同社は同委員会の処分内容を慎重に検討し、同社として主張すべき点があれば審理を求めるなど、必要に応じて対応を決定していくとしている。

 当社グループとしてはこれを厳粛かつ真摯に受け止め、今後の推移を注視するとともに、同社のコンプライアンス体制及び当社グループの内部統制のさらなる強化に全力を挙げて取り組んでいく。

 

2【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には以下のようなものがある。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

(1) 建設投資の動向

 当社グループは、建設市場における競争が激化する現環境下においても、安定した収益を創出、維持できる経営基盤の確立に努めているが、官公庁の建設投資や民間設備投資、住宅投資等が著しく減少した場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

(2) 建設資材価格及び労務単価の変動

 当社グループは、建設工事請負契約にあたり、建設資材及び労務単価等について、適正価格での契約に努めているが、急激な市況の高騰や労務不足が生じた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

(3) 取引先の信用リスク

 当社グループは、取引時に取引先の厳格な審査を実施するとともに債権管理に関する会議体を開催するなど、与信管理の徹底に努めている。しかしながら、発注者、施工協力業者及び共同施工業者等に信用不安が生じた場合、債権の回収不能や施工遅延等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

(4) 海外における事業展開について

 当社は、1960年代より海外に進出し、香港、オーストラリアにおける海底トンネルなどの大型プロジェクトをはじめ、世界各国で数多くの施工実績を残している。現在はアジア諸国を中心に建設事業を展開しているが、海外における事業には、その国の政情や経済等において予期せぬ事象が発生するリスクが内在しており、政治経済情勢の悪化が当社グループの事業展開に影響を及ぼす可能性がある。

(5) 為替レートの変動

 当社グループの海外事業は、アジア諸国を中心に数カ国にわたっており、事業拠点の現地通貨のほか、米ドル等による外貨建取引を行っている。為替レートは、現地での外貨建取引及び外貨建の資産、負債、収益、費用を当社で円換算する場合に関係し、当該為替レートの変動は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

(6) 金利の変動

 当社グループは金融機関等からの借入に対し、必要に応じて金利スワップ取引等により、金利変動リスクの低減に努めている。しかしながら、金利水準の急激な上昇など将来の金利情勢は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

(7) 法的規制

 当社及び連結子会社の一部は建設事業の運営に際し、建設業法、独占禁止法、建設リサイクル法等の法律により規制を受けている。現時点では、事業運営に支障をきたすような法的規制はないが、これらの法規制が強化された場合等には、適宜対応が必要となる。また、環境基準等においてもISO14001の認証を取得するなど、環境管理体制に万全を期しているが、万が一、施工した施設等に環境汚染等不測の事態が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

(8) 建設事業における自然条件の影響

 建設事業において、地質や地盤の状況、天候等の自然条件が工事施工に影響を及ぼす可能性があり、場合によっては、工事遅延や不測の費用が発生する虞がある。事前調査、工程管理等を徹底しこれらに対応しているが、自然環境面での予期せぬ事象等により工事収益が圧迫される可能性がある。

(9) 建設事業における労働災害及び事故

 当社は、工事施工にあたって、安全衛生マネジメントシステムを確立し、労働災害及び事故の根絶に努めている。万が一、労働災害及び事故が発生した場合、補償等に要する費用面での負担は各種保険により軽減されるものの、重大な労働災害及び事故は、信用の失墜につながり、関係諸官庁等から工事入札の指名停止となるなど、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

(10) 工事等の瑕疵

 当社は、建設物の設計・施工にあたり、品質マネジメントシステムを確立し、高品質な製品・サービスの提供に努めている。万が一、施工した建設物等に重大な瑕疵があった場合、その修復に多大な費用負担が生じる虞があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりである。

① 財政状態及び経営成績の状況

  当連結会計年度におけるわが国経済は、高水準を維持していた企業収益に一部弱い動きがみられたが、設備投資は増加基調を続け、雇用や所得水準の着実な改善を背景に個人消費も底堅く推移するなど、景気は緩やかながら回復を続けた。

  建設業界においては、住宅建設は概ね横ばいとなったものの、企業の建設投資は増加したほか、公共投資も高い水準が保たれ、良好な事業環境が継続した。

  当社グループはこのような状況のもと、2018年3月に策定した①建設工事請負事業の維持・拡大、②新たな事業の創出、③他社との戦略的連携を戦略の柱とする『熊谷組グループ 中期経営計画(2018~2020年度)~成長への挑戦~』に熊谷組グループ一丸となって取り組み、さらなる成長に向けて挑戦してきた。

  この結果、当社グループの当連結会計年度における財政状態及び経営成績は以下のとおりとなった。

a 財政状態

 当連結会計年度末において、総資産は、前連結会計年度末比6.0%増の3,537億円となった。負債は、同5.6%増の2,188億円となった。純資産は、同6.7%増の1,348億円となった。

 

b 経営成績

 当連結会計年度において、売上高(完成工事高)は、前連結会計年度比4.0%増の3,890億円となった。営業利益は、同14.9%増の264億円となった。経常利益は、同17.1%増の265億円となった。親会社株主に帰属する当期純利益は、同15.7%減の133億円となった。

 

セグメントの業績(セグメント間取引消去前)は次のとおりである。

a 土木事業

受注高は、前連結会計年度比19.9%増の1,557億円であった。
売上高は、同4.5%増の1,116億円、営業利益は、同48.2%増の86億円となった。

 

b 建築事業

受注高は、前連結会計年度比18.4%増の2,982億円であった。
売上高は、同4.1%増の1,954億円、営業利益は、同2.7%増の124億円となった。

 

c 子会社

 売上高は、前連結会計年度比3.9%増の975億円、営業利益は、同5.0%増の53億円となった。
 なお、当該セグメントにおいては、受注生産形態をとっていない子会社もあるため受注実績を示すことはできない。

 

② キャッシュ・フローの状況

  営業活動によるキャッシュ・フローは、123億円のマイナス(前連結会計年度は176億円のプラス)となった。
 投資活動によるキャッシュ・フローは、73億円のマイナス(前連結会計年度は140億円のマイナス)となった。
 財務活動によるキャッシュ・フローは、61億円のマイナス(前連結会計年度は308億円のプラス)となった。
 為替換算による減少を含め、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は前連結会計年度末に比べ260億円(24.0%)減少し、824億円となった。

③ 生産、受注及び販売の実績

  当社グループが営んでいる事業の大部分を占める建設事業では「生産」を定義することが困難であり、子会社が営んでいる事業には「受注」生産形態をとっていない事業もあるため、グループとしての生産実績及び受注実績を示すことはできない。また、建設事業では請負形態を取っているため「販売」という定義は実態にそぐわない。このため、生産、受注及び販売の実績については、可能な限り「① 財政状態及び経営成績の状況」において報告セグメントの種類に関連付けて記載している。

  なお、参考のため、提出会社個別の事業の状況は次のとおりである。

a 受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高

期別

区分

前期繰越

工事高

(百万円)

当期受注

工事高

(百万円)

(百万円)

当期完成

工事高

(百万円)

次期繰越

工事高

(百万円)

第81期

 

(自 2017年4月1日

至 2018年3月31日)

土木工事

151,171

129,891

281,063

106,805

(174,257)

174,257

建築工事

185,105

251,892

436,997

187,773

(249,223)

249,211

336,276

381,784

718,061

294,579

(423,481)

423,469

第82期

 

(自 2018年4月1日

至 2019年3月31日)

土木工事

174,257

155,751

330,009

111,657

(218,351)

218,351

建築工事

249,211

298,255

547,467

195,432

(352,034)

352,041

423,469

454,007

877,476

307,090

(570,385)

570,393

(注) 1 前期以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含む。

2 次期繰越工事高の下段表示額は、当事業年度末の外国為替相場に基づき海外工事の繰越工事高を修正したものであり、上段( )内は修正前である。

b 受注工事高の受注方法別比率

 工事の受注方法は、特命と競争に大別される。

期別

区分

特命(%)

競争(%)

計(%)

第81期

(自 2017年4月1日

至 2018年3月31日)

土木工事

24.1

75.9

100

建築工事

38.0

62.0

100

第82期

(自 2018年4月1日

至 2019年3月31日)

土木工事

24.4

75.6

100

建築工事

19.0

81.0

100

(注) 百分比は請負金額比である。

 

c 完成工事高

期別

区分

官公庁

(百万円)

民間

(百万円)

合計

(百万円)

第81期

(自 2017年4月1日

至 2018年3月31日)

土木工事

60,360

46,444

106,805

建築工事

21,167

166,605

187,773

81,528

213,050

294,579

第82期

(自 2018年4月1日

至 2019年3月31日)

土木工事

62,520

49,137

111,657

建築工事

24,497

170,935

195,432

87,017

220,073

307,090

(注) 1 完成工事のうち主なものは次のとおりである。

第81期

東日本高速道路株式会社

東関東自動車道 鳥栖工事

西日本高速道路株式会社

高松自動車道 南唱谷トンネル他1トンネル工事

三井不動産株式会社

(仮称)柏の葉三番街西棟賃貸住宅計画新築工事

医療法人徳洲会

(仮称)大和徳洲会病院新築工事

一般社団法人巨樹の会

(仮称)江東リハビリテーション病院新築工事

第82期

東日本高速道路株式会社

東北中央自動車道 やまがたざおうトンネル工事

中日本高速道路株式会社

中部横断自動車道 高山工事

RW久喜特定目的会社

(仮称)レッドウッド久喜ディストリビューションセンター新築工事

三井不動産レジデンシャル株式会社・野村不動産株式会社・三菱地所レジデンス株式会社・伊藤忠都市開発株式会社・東方地所株式会社・株式会社富士見地所・袖ヶ浦興業株式会社

(仮称)幕張新都心若葉住宅地区計画(B7街区)

アイデン株式会社

(仮称)サカエ理研工業株式会社 伊勢崎工場 新築工事

2 第81期及び第82期ともに、完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。

d 次期繰越工事高(2019年3月31日現在)

区分

官公庁

(百万円)

民間

(百万円)

合計

(百万円)

土木工事

74,132

144,218

218,351

建築工事

38,801

313,240

352,041

112,934

457,458

570,393

(注) 次期繰越工事のうち主なものは次のとおりである。

東日本高速道路株式会社

東京外かく環状道路 本線トンネル(南行)大泉南工事

環境省

平成29年度中間貯蔵(大熊3工区)土壌貯蔵施設等工事

東急不動産株式会社・株式会社NIPPO・大成有楽不動産株式会社・JR西日本プロパティーズ株式会社

(仮称)江東区豊洲五丁目計画

三井不動産レジデンシャル株式会社・野村不動産株式会社・三菱地所レジデンス株式会社・伊藤忠都市開発株式会社・東方地所株式会社・株式会社富士見地所・袖ヶ浦興業株式会社

(仮称)幕張新都心若葉住宅地区計画(B-2街区)

医療法人徳洲会

(仮称)仙台徳洲会病院移転新築工事

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。

① 重要な会計方針及び見積り

  当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度における資産、負債並びに収益、費用の金額に影響する見積り、判断及び仮定が必要となり、これらは継続した評価、過去の実績、経済等の事象、状況及びその他の要因に基づき算定を行っているが、本質的に不確実性を内包しており、実際の結果とは異なる場合がある。

  当社グループの重要な会計方針のうち見積り、判断及び仮定による算定が含まれる主な項目は、貸倒引当金、完成工事補償引当金、工事損失引当金、偶発損失引当金、独占禁止法関連損失引当金、賞与引当金、退職給付費用、工事進行基準による収益認識、繰延税金資産の回収可能性等があり、当該見積り、判断及び仮定と実際の結果に重要な差異が生じた場合は、当社グループの連結財務諸表に影響を及ぼす可能性がある。

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a 財政状態の分析

・資産

 総資産は、前連結会計年度末に比べ200億円(6.0%)増加し、3,537億円となった。

 流動資産は、前連結会計年度末に比べ138億円(5.1%)増加し、2,879億円となった。年度末にかけて完成工事が増加したこと等により受取手形・完成工事未収入金等が364億円増加している。

 固定資産は、前連結会計年度末に比べ62億円(10.5%)増加し、656億円となった。事業用不動産の取得等により有形固定資産が53億円増加している。

・負債

 負債は、前連結会計年度末に比べ115億円(5.6%)増加し、2,188億円となった。

 流動負債は、前連結会計年度末に比べ132億円(7.5%)増加し、1,911億円となった。年度末にかけて工事出来高が増加したこと等により支払手形・工事未払金等が108億円増加したほか、独占禁止法関連損失引当金39億円を計上している。

 固定負債は、前連結会計年度末に比べ17億円(6.0%)減少し、276億円となった。

・純資産

 純資産は、前連結会計年度末に比べ85億円(6.7%)増加し、1,348億円となった。利益剰余金が、剰余金の配当42億円を行ったものの、親会社株主に帰属する当期純利益133億円の計上等により91億円増加している。

 なお、自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ0.2ポイント向上し、38.1%となった。

 

b 経営成績の分析

・売上高(完成工事高)

 売上高は、期首繰越工事の増加等により、前連結会計年度に比べ150億円(4.0%)増加し、3,890億円となった。

 なお、当社グループの事業内容は、建設事業とその他の事業に大別されるが、その他の事業に重要性がないため、連結損益計算書上は区分していない。

・売上総利益(完成工事総利益)

 売上総利益は、売上総利益率の改善により前連結会計年度に比べ53億円(13.2%)増加し、455億円となった。売上総利益率は、前連結会計年度に比べ0.9ポイント改善し、11.7%となった。

・販売費及び一般管理費

 販売費及び一般管理費は、処遇見直しによる人件費の増加等により、前連結会計年度に比べ18億円(10.9%)増加し、190億円となった。

・営業利益

 営業利益は、売上総利益の増加により、前連結会計年度に比べ34億円(14.9%)増加し、264億円となった。

・営業外損益

 営業外収益は、受取配当金の増加等により、前連結会計年度に比べ1億円増加し、6億円となった。

 営業外費用は、資本業務提携関連費用の減少等により、前連結会計年度に比べ3億円減少し、5億円となった。

・経常利益

 経常利益は、営業利益及び営業外収支の増加により、前連結会計年度に比べ38億円(17.1%)増加し、265億円となった。

 

・特別損益

 特別利益は、投資有価証券売却益7千万円など合計1億円を計上した。

 特別損失は、2014年に当社の施工不良が判明した横浜市西区所在のマンションに関する追加費用として偶発損失引当金繰入額13億円、株式会社ガイアートが受領した独占禁止法による課徴金納付命令書(案)に基づく独占禁止法関連損失引当金繰入額39億円など合計55億円を計上した。

・法人税等

 法人税、住民税及び事業税73億円、繰延税金資産の回収可能性の見直し等により法人税等調整額4億円を計上した。

・親会社株主に帰属する当期純利益

 以上により、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ24億円(15.7%)減少し、133億円となった。

 

 なお、『熊谷組グループ 中期経営計画(2018~2020年度)~成長への挑戦~』で策定した業績目標値との比較は次のとおりである。

連結業績

指標

2018年度(計画)

2018年度(実績)

差異

売上高    (百万円)

400,000

389,058

△10,941

営業利益   (百万円)

24,000

26,464

2,464

営業利益率   (%)

6.0

6.8

0.8

 

c キャッシュ・フローの状況の分析

 営業活動によるキャッシュ・フローは、年度末にかけて完成工事が増加したこと等に伴う売上債権の増加等により、123億円のマイナス(前連結会計年度は176億円のプラス)となった。
 投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得等により、73億円のマイナス(前連結会計年度は140億円のマイナス)となった。
 財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払い等により、61億円のマイナス(前連結会計年度は308億円のプラス)となった。
 為替換算による減少を含め、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は前連結会計年度末に比べ260億円(24.0%)減少し、824億円となった。

 

d 資本の財源及び資金の流動性

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、建設事業に係る工事費、販売費及び一般管理費等の営業費用である。投資を目的とした資金需要は、主に設備投資によるものである。

 当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としている。

 短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資に係る資金や長期運転資金は自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としている。

 なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は128億円となっている。

 

e セグメントごとの経営成績の分析

・土木事業

 受注高は、鉄道分野が増加し、前連結会計年度比19.9%増の1,557億円であった。
 売上高は、期首繰越工事高が増加していたことにより同4.5%増の1,116億円となり、営業利益は、売上高の増加及び売上総利益率の改善により、同48.2%増の86億円となった。

・建築事業

 受注高は、消費税増税前の駆け込み需要の発生により医療・福祉施設分野等が増加し、前連結会計年度比18.4%増の2,982億円であった。
 売上高は、期首繰越工事高が増加していたことにより同4.1%増の1,954億円となり、営業利益は、売上高の増加及び売上総利益率の改善により、同2.7%増の124億円となった。

・子会社

 売上高は、株式会社ガイアートにおいて期首繰越高及び受注高の増加の影響により売上高が増加し、全体として同3.9%増の975億円となり、営業利益は、売上総利益率の改善により売上総利益が増加し、同5.0%増の53億円となった。

4【経営上の重要な契約等】

 該当事項なし。

 

5【研究開発活動】

 当社グループの研究開発活動は、企業業績に対して即効性のある技術、商品の開発、各種技術提案に直結した技術の開発、中長期的市場の変化を先取りした将来技術の研究、開発技術の現業展開と技術部門の特性を生かした技術営業、総合的技術力向上のための各種施策からなっており、社会経済状況の変化に対し機動的に対応できる体制をとっている。
 当連結会計年度は、研究開発費として2,348百万円投入した。
  当連結会計年度における主な研究開発活動は次のとおりである。

(1) 土木事業

 ① 林業機械システムの自動化による省力化の研究

  「JAXA宇宙探査イノベーションハブ」の第4回研究提案募集で採択され、当社、住友林業株式会社、光洋機械産業株式会社及び株式会社加藤製作所は、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)と2年間(2018年12月~2020年3月)にわたり共同研究を行うこととしている。この共同研究では、当社の「無人化施工技術」と住友林業株式会社の「林業技術」、光洋機械産業株式会社の「プラント・仮設のエンジニアリング」並びに株式会社加藤製作所の「ホイールクレーン国内トップシェアのウインチ技術」を融合することで、架線集材システムの無人化・自動化を図り、林業分野での事業化を目指す。一方、この技術を応用して、月面での構造物や資材の運搬、設置等に有用な運搬システムを研究・開発する。本研究は、これまでの林業現場におけるエンジン駆動のウインチを使用した架線集材機の手動運転作業を、動力の電動駆動化によって精密な遠隔制御を可能にし、さらにこれを利用して架線集材の高度な自動運転の実現を目指すものである。また、これにより、集材作業の省力化・効率化を行い、作業環境の改善と生産性の向上を図る。集材機の概念設計が完了しており、今後は詳細設計、試作機の製作、林業現場での導入試験を行い、研究・開発を進めていく予定である。

 ② AI制御による不整地運搬車(クローラキャリア)の自動走行技術の開発

  一般的な土木工事において、土砂運搬作業は運搬経路の往復という単調な繰返し作業となる。そのため、運転者の疲労蓄積や集中力の低下による、走路逸脱や人・物への接触等の事故発生の危険性がある。当社では、運転者の労務負担の軽減を図るため、不整地運搬車の自動走行技術を開発した。当該技術は無人化施工をベースとしており、遠隔操作室からの遠隔操作による走行時の経路をGPSや傾斜計といったセンサーにより車載コンピュータに記憶させる「教示運転」を実施した後、教示運転で記憶した走行経路(教示経路)を追従しながら不整地運搬車を自動走行させる技術である。当該技術は、自動走行車両の管理者1名を配置し、複数台の車両を自動走行させることにより生産性向上に寄与するものである。当社は、さらなる効率化と安全性の向上を目指し、AIによる自動走行技術を開発した。本開発は、教示運転の実施までは先述の自動走行技術と同様であるが、その教示経路と複数車両の走行位置関係をAIが分析することによって運行計画パターンが生成され、操作盤のスタートスイッチを押すだけで、複数台の不整地運搬車は常時AIによって進行・停止の制御が行われる。これにより自動走行管理者が存在しなくとも、車両同士が衝突することなく安全かつ効率的に自動走行が実施されるようになった。今後は、AI制御技術をさらに向上させるとともに、安全面や運用方法の検討を十分に行い、本格的な実運用に向けていく。

 ③ 高速道路リニューアルプロジェクトの主力商品「コッター床版工法」

  NEXCO各社が進める高速道路リニューアルプロジェクト(総事業費約3兆円)において、橋梁床版取替工事は、その50%強(事業費約1兆6,500億円)を占める同プロジェクトの主要工事である。工事では、高耐久性に配慮した構造へ更新することはもちろん、通行規制に伴う社会的影響を軽減し、利用者の利便性をできる限り損なわない工法が求められている。これらを踏まえ、急速施工、省人化、高品質化、取替性の改善など生産性の向上を目的に、コッター式継手を用いた橋梁用プレキャストPC床版(コッター床版)を開発した。当該工法は、従来工法の約半分の工期と人員で作業が可能であるほか、現場作業が単純なため熟練工を必要とせず、さらに床版の99%をプレキャスト化することで品質向上にも寄与する、他に類を見ない床版取替工法である。また、床版の耐久性を審査する輪荷重走行疲労試験においては、100年相当の耐久性を確認済みで、当社の主力商品として今後の展開が期待されている。

 

 ④ AIによるコンクリート骨材の粒径・岩種判別技術の研究

  一般的に、コンクリートは細骨材と粗骨材を用いて作られるが、土木のコンクリート構造物、特にダムコンクリートでは、粒径の大きな粗骨材を使用するため骨材は多種に及ぶ。一方、コンクリートの製造設備では、搬入した骨材を混じることなく所定の貯蔵ビンに投入する方法が大きな課題であった。そこで、搬入時にダンプトラック上の骨材を人間の眼と同じようにステレオカメラで確認し、画像処理技術によって粒径を判別する骨材粒径判別システムを新たに開発した後、切目川ダム(和歌山県)に導入して良好な結果を得た(平成29年度ダム工学会技術開発賞を受賞)。切目川ダムで撮影した数千枚の骨材の写真画像を利用し、AIによる骨材判別技術について研究を行った。その結果、信頼性の高いDeep Learningによる学習モデルを構築することで、骨材の判別率をステレオカメラによる場合の98.6%から99.8%に向上することができた。また、カラー画像を用いて岩種の異なる細骨材、粗骨材の判別も試み、こちらも判別率99.6%の判別率を達成できた。今後は、当AI技術を実際のコンクリート製造プラントに設置し、実証実験を行う予定である。

 ⑤ 斜面対策工事に特化したのり面CIMの開発

  現在、建設生産システムの業務効率化や高度化を目指してCIMの導入が活発化している。その中で、斜面対策工事では他工種と比較するとCIMが適用されている事例が少なく、国土交通省によるCIM導入ガイドライン(案)においても斜面対策工は示されていない。しかしながら、斜面対策工においてもCIMの導入は重要であり、施工管理の情報を点検に用いるべく維持管理段階へ引き継ぐことが必要で、CIMを導入することにより、業務効率化や高度化が期待される。これまで斜面対策工でCIMの事例が少ない理由の1つとして、長大のり面の場合は、対策工の実施数量が多く、原位置の地形・地質条件等により仕様変更が生じるなど、データの入力作業が膨大かつ煩雑であることが挙げられる。そこで当社は、斜面対策工事に特化した「のり面CIM」を開発することにより、データ入力作業の効率化を図り、斜面対策工における専用システムを用いたCIMを初めて実施した。このシステムは、斜面対策工事で実施するグラウンドアンカー工や鉄筋挿入工などに対し、その設置場所や諸元、地質情報、施工日などの属性情報を付与し、3次元空間に配置させるものである。なお本システムでは、入力作業の負担を軽減させるため、表計算ソフトにて整理した施工実績のデータベースを読み取る仕様となっている。

 

(2) 建築事業

 ① 木造CLT壁でJIS最高の遮音等級を達成

  中大規模の木造建築を念頭に、CLT(Cross Laminated Timber:直交集成板)(注1)壁単体での遮音実験を行い、CLT90㎜とCLT150㎜をそれぞれ用いた2種類の複合壁において、ともにJIS最高の遮音等級となるRr(注2)-60を達成した。今後、需要が高まると考えられる中大規模の木造建築分野において、建物の主要構造部である壁に、木質系材料であるCLT壁を用いることが想定される。しかし、共同住宅などにこのCLT壁を使用する場合、遮音性能が低くなるなどの技術的に解決すべき課題があった。今回の開発では、CLT壁近傍に遮音効果を高める構成材料(石膏ボード、断熱耐火パネル、遮音シート等)を組み合わせて用い、壁全体としての遮音性能を高めた。同時に、ふかし壁で比重の異なる材料を積層させるなどして、低音域の共鳴透過を低減させた。また、木造建築における住戸間のCLT壁など主要構造部は耐火性能を確保する必要があるが、本開発では、「燃え止まり層(CLT90㎜)」と「燃え代層(CLT150㎜)」の両方の耐火仕様においても、壁単体として遮音等級Rr-60を達成した。木造であるCLT壁は、壁面以外からの音の伝搬経路も想定されるため、壁・床・梁全体での遮音性能が重要となる。今後、当社で開発を進めているCLT遮音床(乾式工法による重量床衝撃音等の対策床)と、主要構造部(床・梁・壁)の耐火構造に基づき、CLT壁をこの床と梁の上に設置し、壁の空気音遮断性能に関する大臣認定取得を目指す予定である。

  (注)1 複数枚のラミナ(ひき板)を木材の繊維方向が直交するように積層させて作った木質構造パネル。

2 住宅の品質確保の促進等に関する法律で規定されている壁単体の遮音性能値でJIS A 1419-1(空気音遮断性能)の等級値。

 

 ② 木造CLT床で高い床衝撃音遮断性能を達成

  中大規模の木造建築への採用を念頭に、CLT床及び付加材(注1)の組み合わせによる床材を開発し、遮音実験において、重量床衝撃音(標準重量衝撃源)でLr-45相当(注2)の高い遮音性能を達成した。当社では、すでにCLT壁単体でJIS最高の遮音等級Rr-60を達成し発表しているが、木造建築においては、壁面以外からの音の伝搬経路も想定されるため、壁単体だけでなく、壁・床・梁全体での遮音性能が重要であるとして、継続して開発を進めてきた。共同住宅などの床には、高い水準での重量床衝撃音の遮断性能が求められるが、比重の小さいCLT単体では十分な遮音性能が得られない。本開発では、重量床衝撃音の遮断性能の向上に重点を置きながら、施工性と軽量性にも優れた仕様にしており、1)210㎜CLT床の上に遮音シートを組み込んだALCを設置する、2)重量床衝撃音の対策として高剛性高密度(注3)の2重床(注4)を設置する、3)防振ゴムの形状を工夫した防振ハンガーによる防振天井を設置する、などの遮音対策を行っている。遮音性能の評価は、標準重量衝撃源による重量床衝撃音の測定結果をJIS A 1419-2(等級曲線)にプロットすることで、簡易的にLr相当として数値化した。今後は、CLT床を150㎜にした場合においても様々な付加材を組み合わせ、さらに高い遮音性能となる仕様の検討を予定している。同時に、床の遮音性能は、床単体だけではなく壁や梁等の納まりを考慮する必要性があることから、先に発表したCLT壁の遮音性能(Rr-60)と、現在開発を進めている主要構造部(柱・梁・床・壁)の耐火性能を組み合わせ、実際の建物に適用可能な仕様を目指していく。

  (注)1 CLT床の上に遮音シート付ALC、高剛性高密度となる2重床、CLTの下に断熱パネルと石膏ボードとの積層構造による燃え止まり層、防振天井を示す。

2 CLT床単体の測定がJISで規定されていないため、残響室で床単体の重量床衝撃音(標準重量衝撃原)の測定結果をJIS A 1419-2にプロットして数値化し、相当値として表現したもの。

3 2重床の構成としてパーティクルボードとフローリングの間の仕様を比重の高いアスファルトシートを合板で挟み込むサンドイッチ構成にすることで、高い剛性と高い密度の両方を確保したもの。

4 支持脚と防振システム根太を採用し、側面壁と巾木下部は約3㎜の隙間を設けている。

 ③ 床コンクリートのひび割れ自動計測ロボットを開発

  自動走行して建物の床面を写真撮影し、床コンクリートのひび割れ等を自動検出する「ひび割れ自動計測ロボット」を開発した。このロボットの特徴として、1)計測作業の時間短縮、2)計測員の負担軽減とコスト低減、3)広範囲を一人で計測することが可能、4)自動計測中のモニター確認が可能、5)手動(手押し)計測も可能、6)計測精度が向上、などの点がある。従来の方法では非常に多くの手間と時間を必要としていた。老朽化が進む構造物の増加に伴い、検査技術の1つとして、ひび割れ等を計測する技術の開発並びに改良は、ますます重要なものとなってきている。今回の開発も、こうした課題を踏まえて開発したものである。「ひび割れ自動計測ロボット」は、自動走行台車にカメラを搭載し、床面を連続撮影するものであり、撮影した写真は走行時に自動取得した位置データと照合し、自動で配置・結合され合成された画像データから「ひび割れ自動検出・図化システム」がひび割れ幅やひび割れ長さを自動検出し、正確な位置データを持つひび割れ図のCADデータとして出力できる。これを当該位置の構造図のCADデータと重ね合わせることにより、「ひび割れ計測図」として検査報告書へ記載することができる。当面は、当社の現場に限定して活用し、実際の現場での運用を通じてさらなる改良改造を行い、将来的には商品化の可能性も視野に入れており、床面以外への応用も検討している。

 

 ④ 「木造CLT壁の2時間耐火構造」の大臣認定取得

  中大規模の木造建築を念頭に、薄い燃え止まり層と様々な表面材が選択可能となる仕様でCLT壁の1時間及び2時間耐火構造の大臣認定を取得した。芯材(CLT)の周囲に設置する「燃え止まり層(注)」を、石膏ボードと断熱耐火パネルを積層する当社独自の仕様で、一般工法である石膏ボードだけの仕様よりもその厚さを薄くした。またこのCLT壁は、耐火構造に加え、仕上げの表面材として様々な仕様の選択が可能である。CLT壁を木造共同住宅の主要構造部となる壁に使用するには、4階までの建物が1時間耐火構造、5階建て以上の建物が2時間耐火構造であることが必要となる。主要構造部(柱・梁・床・壁)の耐火構造は、芯材となる木材の周囲に「燃え止まり層」を設けて耐火性能を確保する。一般的にはこの燃え止まり層は「石膏ボード」が使用されるが、石膏ボードは、一度加熱され性質が変化すると耐火性能の低下とともに崩壊しやすい状況となる。そこで、本開発では石膏ボードに加え、熱遮断性能が高く、崩壊防止に寄与する断熱耐火パネルを石膏ボードの間に組込むことにより、耐火性能の確保と同時に壁の厚さを薄くすることに成功した。さらに、燃え止まり層の外側(室内側)に設置する表面材は、様々な仕様の選択が可能であり、例えば、20㎜以下の天然木、壁紙、塩ビシート、塗装並びにふかし壁を念頭にした表面材を設置しない仕様などを選べるため、お客様及び設計者のニーズに対応することができる。表面材を天然木とした場合の燃え止まり層と表面材との合計厚さは、最も薄い場合、1時間耐火構造で41㎜、2時間耐火構造で63㎜までスリム化が可能となり、室内の利用可能な空間の拡大に寄与している。今後、他の主要構造部(柱、梁、床)の1~3時間耐火構造の大臣認定について、2年以内の取得を目指しており、2018年7月に発表したCLT遮音壁(Rr-60)及びCLT遮音床(Lr-45相当)と併せて、耐火と遮音の両方に優れた中大規模の木造建築を実現するために、さらなる研究開発を進めてゆく。

  (注) 燃え止まり層とは、表面材と芯材(CLT)との間にある燃焼を停止させる層。その基本性能の確認では、耐火加熱中の芯材(CLT)の表面温度が250℃未満であることや、芯材表面が炭化しない(焦げていない)ことなどが必要とされる。

 

(3) 子会社

 株式会社ガイアート

 ① 縦溝粗面コンクリート舗装の開発

  縦溝粗面アスファルトコンクリートである同社製品のFFPは、開発後、順調に施工量を増やしていることから、コンクリート舗装にも縦溝を設ける工法の開発を行ってきた。プレキャストコンクリートによる工法の研究については、縦溝の形状及び舗装厚の検討を実施した。現場打ちコンクリートによる工法の研究については、縦溝成型方法及びすべり抵抗確保の検討を実施した。

 ② 移動式たわみ測定装置の実用化に関する共同研究

  舗装の効率的な管理に向けて、定期的な点検・維持修繕が求められている。現在、構造的な舗装の健全度を調べるためには、FWDによるたわみ測定が一般的に用いられるが、交通規制が必要であり定期的な点検には適さない。そのため、2つの公的機関、1つの大学、5つの民間企業で、移動式たわみ測定装置の実用化に関する共同研究に取り組んでおり、現在、試作車によるデータ収集、解析を実施しているところである。

 ③ FFPの小粒径化

  東京都では、低騒音舗装としてマップ舗装が実施されている。しかし、施工機械が大きく信号機等のある箇所では施工が困難であることや、骨材飛散抵抗性が若干小さいことが懸念されている。そこで、これらの欠点をカバーできる低騒音舗装工法として、5mmTOPFFPの開発を開始した。室内試験での検討は終了し、今後は同社の子会社である株式会社白糸ハイランドウエイでの試験施工を予定している。

 ④ 新GRDマットの開発

  GRDマットはリフレクションクラック防止に有効で、これまでの販売は堅調であったが、芯材がありリサイクルが困難との理由から販売量が減少傾向にある。これを解消するために芯材のない新しい新GRDマットの研究開発に着手した。室内での検証はほぼ終了し、今後は株式会社白糸ハイランドウエイでの試験施工を予定している。