第2【事業の状況】

 「第2 事業の状況」における各事項の記載金額には、消費税等は含まれていない。

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

(1) 経営方針

 熊谷組グループビジョンのもと持続的成長と企業価値向上を目指し、本年5月に長期構想“2030年以降を見据えた経営方針”を定めたうえで、今後3年間の方針・戦略・目標を掲げた『熊谷組グループ 中期経営計画(2021~2023年度)~持続的成長への弛まぬ挑戦~』を策定した。社会から求められる建設サービス業の担い手として、いつの時代も社会課題と真摯に向き合い、目指す社会の実現に貢献していく。

 

■熊谷組グループビジョン〈熊谷組グループが目指す企業像〉

 「高める、つくる、そして、支える。」

 独自の現場力(優れた技術力を豊かな人間力で活かす現場力)を高め、独自の価値であるしあわせ品質(建造物の外形的・機能的な品質に加え、そこに集う人、そこを使う人が満足し続けられる品質)をつくり、時代を超えてお客様と社会を支え続ける。

 

■長期構想〈2030年以降を見据えた経営方針〉

 社会から求められる建設サービ業の担い手として、限りある資源が循環し、ひと・社会・自然が豊かであり続ける社会の実現に貢献する。

 

■中期経営計画〈2021~2023年度の方針・戦略・目標〉

 長期構想を起点に課題認識し、盤石な経営基盤のもと、コア事業である建設請負事業を深化させ、成長領域と位置づける建設周辺事業を進化させるとともに、新たな事業領域の開拓にも挑戦し、貢献の幅を拡げる。

 

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(2) 経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 現下の建設市場は、自然災害が激甚化・頻発化し、また、高度経済成長期に整備された社会インフラの老朽化が進行するなど、人々の暮らしや産業の発展を支える基盤に大きな影響を及ぼしている。加えて、新型コロナウイルス感染症の拡大は人々の価値観や行動様式を変化させるなど、まさに将来の不確実性が高まっている。

 

(3) 経営戦略

 当社グループは時代の変遷とともに顕在化している社会課題と真摯に向き合い、「持続可能な社会」「快適に暮らせる社会」「経済が成長する社会」の形成を通して、“限りある資源が循環し、ひと・社会・自然が豊かであり続ける社会”の実現に貢献することが当社グループの担う役割であると認識し、本年5月に『熊谷組グループ 中期経営計画(2021~2023年度)~持続的成長への弛まぬ挑戦~』を策定した。本計画では2017年に定めた中長期経営方針の考え方を踏襲しつつ、新たに定めた長期構想“2030年以降を見据えた経営方針”のもと、今後3年間の方針・戦略・目標を掲げている。

 

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(4) ESG課題への取組み

 熊谷組グループビジョンのもと事業活動を通じて社会課題解決に貢献するとともに持続的成長による企業価値向上を目指していくため、2019年4月に「ESG取組方針」を策定し、CO2排出抑制、再生可能エネルギー事業、都市再生事業、人財育成、ステークホルダーとの関係強化などに全社を挙げて取り組んでいる。

 

「ESG取組方針」

 ■当社は、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)の視点から解決すべき重要課題(マテリアリティ)を特定し、持続可能な事業活動を追求していく。

 

 ■当社は、グループが保有する技術・経験・ノウハウを活用して新たな価値を創造し、SDGsに代表される社会課題の解決に貢献する事業活動を展開していく。

 

 ■当社は、事業活動を通じてステークホルダーとのコミュニケーションによる信頼関係の構築に努め、企業価値の向上を目指していく。

 

ESG課題

 

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 「ESG取組方針」のもと、持続可能な社会の形成と自らの持続的な成長のため、ステークホルダーにとって重要と考えられる課題をESG視点で特定し、事業活動を通して社会課題の解決(社会価値)と事業収益の拡大(経済価値)の双方を追求する。

 

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(5) 新型コロナウイルス感染症の影響について

① 経営環境について

 新型コロナウイルスの感染終息が見通せない中で、政府の各種政策やワクチンの普及等により個人消費や企業収益が徐々に回復に向かうことが期待されるが、国内外において渡航制限や経済活動制限等の規制が続いており、景気は依然として先行き不透明な状況にある。

 建設業界においては、民間企業の建設投資は経営環境の悪化により弱い動きとなることが予想されるが、公共投資は2021年度予算において前年度とほぼ同水準が確保され、とりわけ気候変動の影響により頻発する大規模自然災害や高度経済成長期に整備された社会インフラの老朽化に対する工事への集中投資が見込まれている。また、ウィズコロナ、アフターコロナを見据えたインフラ整備の動きは、今後の民間設備投資を一定程度下支えすると考えられる。なお、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化した場合、対策コストの増大や資機材供給の停滞などのリスクに留意する必要がある。

 このような状況下において、新型コロナウイルス感染症拡大が当社グループに与える影響について以下のとおり認識している。

 

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② 感染防止対策について

 迅速な意思決定と施策の実行を目的として、社長を本部長とする新型コロナウイルス対策本部を設置し、社員及び家族並びに協力会社など、関係者の健康と生命の安全確保の観点から新型コロナウイルス感染症に対する対応指針(感染対策・行動制限・業務継続等)を従業員へ示し、感染状況・政府方針を踏まえ、テレワークや時差通勤などの促進、協力会社への指導などの感染防止対策を講じている。

 

③ 今後の業績への影響及びその前提となる仮定

 国内における新型コロナウイルス感染症の収束の動きは依然見られず、先行きも不透明ではあるが、当社グループの今後の業績を予想するにあたっては、「ワクチンの接種が今後進むことに伴い、国内経済は秋以降回復傾向に転じ、手控えられていた民間設備投資も、以前の水準に至るまでは時間を要するものの、下期より回復の兆しが見えてくる。仮にワクチン接種に遅れが生じた場合においても、民間設備投資は減速しない」と仮定している。
 受注高については、公共投資は堅調に推移することが予測され、民間投資において特定の成長分野に注力することにより受注量の確保を見込んでおり、売上高・利益面については、追加設計変更の交渉に時間を要する場合もあるが特段大きな影響はないとしている。

 

2【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりである。ただし、当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、現時点では重要性が高くないと判断したリスクもあり、予見し難いリスクも存在し得る。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

(1) 建設投資の動向

 当社グループの建設事業は、官公庁及び民間企業が主な顧客であるが、官公庁は財政状況や施策等、民間企業は経済環境や消費動向等により中長期的に建設投資の動向が変動する。我が国の建設投資は2011年度以降、増加傾向で推移しているが、縮小に向かった場合は、状況により競合他社との受注競争が激化し、受注高が減少するほか工事採算が低下する可能性がある。

 当社グループは、建設市場の質的・量的変化に柔軟に対応できる企業体質を確立すべく、長期構想“2030年以降を見据えた経営方針”を定めるとともに、本方針に基づき策定した中期経営計画における各種施策に取り組んでいる。なお、長期構想及び中期経営計画については、「第2 事業の状況」の「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりである。

 

(2) 建設資材市況及び労務単価の変動

 建設工事請負契約にあたり、建設資材及び労務単価等について適正価格での契約に努めているが、契約締結後に建設資材市況や労務単価が高騰する場合がある。当該コスト増加分について、公共工事においては契約条項により一定の工事代金の変更を請求できるが、民間工事においては発注者との協議となり、状況によりコスト増加に見合う工事代金の追加を獲得できない可能性がある。このため市況等の上昇局面では、予め単価上昇を織り込んで工事価格を見積もることや資材の調達を早期に行うなどの対応が必要となる。

 

(3) 建設技能労働者の不足

 建設業界における技能労働者は、高齢化が進むとともに若年層の入職率・定着率が伸びず、減少傾向にある。中長期的に高齢者の大量離職が見込まれるなか、技術継承へ向けた将来の担い手の確保・育成が喫緊の課題となっている。今後、技能労働者の減少がさらに進んだ場合、他社との人財獲得競争が激化し労務費が高騰するとともに、人員を確保できないことに伴う施工能力の縮小により、受注高が減少する可能性がある。

 当社グループは、専門工事会社を中心とした施工協力業者で組織された「熊栄協力会」と連携し、安定した施工体制を確立するとともに、技能労働者不足の解消及び優秀な人財の確保に向けた取組みを行っている。現在の建設業界の命題である「技能労働者給与水準の全産業労働者平均までの向上」を目指した労務単価の引上げを軸に、手当の支給を含む優良技能労務者認定制度の運用、能力や経験に応じた処遇を受けられる環境を整備するための建設キャリアアップシステムの導入などを進めているほか、施工現場における完全週休二日への移行といった処遇改善施策を推進している。

 

(4) 人財の確保

 建設業界では、建設投資が増加基調となっている一方で、建設技術者の減少が課題となっており、当社グループにおいても、収益及び品質の向上のために優れた人財の確保と育成が急務であると認識している。その対応として、新卒者に加え施工管理経験がある人財の中途採用をジョブ・リターン制度の整備等により拡大するとともに、ダイバーシティ推進の取組みもあり、高齢者、女性及び外国人等を積極的に活用している。

 また、建設工事の入札や施工管理においては、担当技術者に工種毎の施工経験や特定資格の保有を求められることがあり、適任者が不足した場合は受注機会を逸し、受注高の減少につながる可能性がある。すでに一部の工種についてその発注時期によっては担当者を確保出来ず、入札参加を断念するケースも発生している。このため将来的な案件を見据え、技術者に計画的に多様な施工経験を積ませているほか、分野別や階層別に社内研修を実施し、専門知識を修得させている。また、技術士や一級建築士等の公的資格について受験者を対象に社内講習や模試を実施するなど資格取得の支援、促進に努めている。

 

(5) 海外における事業展開

 当社グループの海外事業は、現在アジア諸国において建設事業を中心に展開している。海外における事業は、進出国において著しい政治、経済、社会情勢の混乱が生じた場合や法規制が強化された場合等は、事業が遅延する又は遂行不能に陥る可能性がある。また、未成熟な法制度、社会制度、文化や商慣習の違い等により正当な工事代金の請求及び回収が困難となる場合や想定外のコストを負担するリスクが内在している。このため、当社グループは、各々の情勢等に精通した国・地域にのみ進出することとし、当社が請け負う建設工事については、原則として我が国ODA(政府開発援助)や日系企業による事業に限定している。

 なお、海外事業においては、事業拠点の現地通貨や米ドル等による外貨建取引のほか、外貨建の資産、負債、収益、費用を一定の基準により円換算する。現在の当社グループの海外事業の規模では為替レートの変動による影響は小さいが、取引の収入と支出の通貨構成や入出金のタイミングを概ね一致させることにより為替リスクを軽減している。

 

(6) 建設事業における自然条件及び自然災害の影響

 工事施工において、地質や地盤、天候等の自然条件に特殊性がある場合、事前にそれを把握できなかったことにより工法の変更や手戻りなどが生じ工事コストが増加する可能性がある。また、事業の特性として施工現場が地震や台風・豪雨等の自然災害に見舞われた場合、工事が中断するほか復旧に多大なコストと時間を要するなど著しい損害を被るおそれがある。

 当社グループは、事前調査、工法検討等を徹底し、自然条件面における予期せぬ事象等により工事の採算が低下しないよう努めるとともに、自然災害に対しては、各種保険に加入するなど損失を極小化するよう対策を講じている。

 

(7) パンデミック

 感染症が世界的に大流行した場合、工事中断や資機材の納入が滞ること等に伴う工程遅延や感染症対策に係るコストの発生などにより採算が低下することが見込まれ、また、民間企業を中心に設備投資が停滞することにより受注高が減少する可能性がある。なお、新型コロナウイルス感染症の影響については、「第2 事業の状況」の「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりである。

 

(8) 工事の施工不良

 工事施工にあたっては、建設物の仕様や施工条件が多岐にわたり、また、想定を超えて外的要素から影響を受けることがある。このような状況のもと、施工不良の発生可能性を完全に排除することは困難であるため、是正費用に充てるべく一定金額を引当計上している。しかし、万が一、施工した建設物に重大な施工不良があった場合、引当額を上回る多大な修復費用や損害賠償責任が生じる可能性がある。また、当社グループの社会的信用が低下し、受注高の減少につながるおそれがある。

 当社グループは、建設物の設計・施工にあたり、品質マネジメントシステムの適切な運用及び継続的な改善により、高品質な製品・サービスの提供に努めている。

 

(9) 建設事業における労働災害及び事故

 建設事業は、作業内容や作業環境などの特性により、他の産業と比較して重篤度の高い労働災害が発生するおそれがあり、また、第三者に対し損害を与える事故が発生する可能性が高い。万が一、重大な労働災害もしくは事故が発生した場合、多大な補償費等の負担が生じるとともに、社会的信用が低下し、関係諸官庁等の工事入札において指名停止になるなど、受注高の減少につながる可能性がある。

 当社グループは、労働災害及び事故への対策を最優先課題と位置付け、安全教育の実施、日常的な安全点検、施工部門と安全部門との連携強化、入念な施工計画の策定といった安全衛生マネジメントシステムの厳格な運用により労働災害及び事故の撲滅に努めている。

 

(10) 固定資産及び投資有価証券の減損

 当社グループは、都市再生・再開発事業といった新事業創出への取組みの一環として不動産の取得を進めているが、経営環境の著しい悪化などにより保有資産の収益性が低下又は市場価格が下落した場合、固定資産の減損損失が発生するおそれがある。また、収益機会の獲得や関係強化を図るため顧客や提携先等の有価証券を保有しているが、投資先の業績が悪化又は市場価格が下落した場合も同様に減損損失が発生する可能性がある。

 当社は、各種資産の評価方法と投融資活動に係るリスクを定量的に管理するための投融資基準を定め、財政的影響が大きい案件については、経営会議及び取締役会において経営指標の見通しや財務規律の維持の観点を踏まえて取得の検討を行っている。取得後は、採算性検証のためのモニタリングによって採算悪化が見込まれ、将来的な収益率等が目標とする基準値を上回る可能性が極めて低いと判断された場合、また有価証券については、保有が当社グループの事業遂行上有用ではないと判断された場合は売却等を検討するなど、損失の最小化に努めている。

 

(11) 顧客及び取引先の信用

 建設事業において、工事着工後に発注者が信用不安や経営破綻などに陥った場合、売掛金や受取手形などの債権が回収不能となるおそれがある。また、施工協力業者等の取引先が同様な状況となった場合、工程が遅延し工事コストが増加する可能性がある。

 当社グループは、顧客の信用については、会議体及び専門部署により、顧客の与信判定、契約内容の審査、債権保全方法の検討等を実施している。また、債権管理規程、工事契約締結に向けた与信限度額設定基準等の社内規程を整備し、与信管理の徹底に努めている。取引先の信用については、新規に取引を開始する場合、直近の財務諸表をもとに審査を実施している。また、取引高が一定の規模以上の施工協力業者に対しては、財務面の評価に加え、ヒアリング等による経営全般の評価を年1回実施している。

 

(12) コンプライアンス違反

 建設事業の運営に際しては、建設業法、独占禁止法等、様々な法律により規制を受けている。これらの法的規制に違反した場合や社会的要請に反した行動等により、法令等による刑事罰、行政処分、損害賠償責任等が課せられるほか、顧客、株主、取引先等の会社を取り巻くステークホルダーからの信用失墜につながる。

 当社グループではこれらのリスクを払拭するため、「行動指針」「コンプライアンス行動ルール」をはじめとする各種規程を定め、内部機能を中心にコンプライアンス体制を構築するとともに、経営から独立した組織として「法遵守監査委員会」を設け、外部有識者による評価・勧告体制を執っている。また、このほかコンプライアンス研修等の教育を通じ、全役職員に対するコンプライアンス意識の向上、周知徹底を図っている。

 

(13) 環境問題

 世界的な人口増加と産業活動の急拡大によって生じる資源の枯渇や地球温暖化等の環境問題は、世界共通の解決すべき社会課題として認識されている。社会資本の整備を担う建設業においては、工事施工時等に排出されるCO2をはじめ建設廃棄物や建設発生土などによる環境への負荷を社会的責務として積極的に削減する必要があり、そのためには継続的に一定の対策費用が発生する。また、工事施工にあたっては様々な環境関連法令等の規制を受けているが、土壌汚染や水質汚染等の環境事故が発生した場合は、復旧費用や損害賠償金、補償金等の負担が生じるほか、当社グループの社会的信用が低下し、受注高の減少につながるおそれがある。

 当社では、環境マネジメントシステムの適切な運用及び継続的な改善により、環境負荷の低減及びより良い環境の創出を図っている。また、「エコファーストの約束」においてCO2排出量の削減や、工事現場における混合廃棄物排出量の削減、グリーン購入対象資機材の購入など低炭素社会の構築や循環型社会の形成を推進するとともに、環境基準遵守のもと、環境事故の防止に努めている。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりである。

① 財政状態及び経営成績の状況

  当連結会計年度における我が国経済は、昨年年明けから世界的に拡大を始めた新型コロナウイルス感染症に収束の動きが見られない中で、一部設備投資や生産、輸出に底上げの兆しが観測されたが、度重なる外出自粛要請等の影響から個人消費は低迷し、企業収益も個人消費関連の業種を中心に大幅に落ち込むこととなり、GDPはリーマンショック時以来のマイナス成長となった。

  建設業界においては、企業の建設投資は製造業を中心に手控えられたが、住宅投資は弱含みながらも概ね横ばいとなり、公共投資は関連予算の執行により堅調に推移したため、総じて底堅い事業環境が継続した。

  当社グループはこのような状況のもと、2018年3月に策定した①建設工事請負事業の維持・拡大、②新たな事業の創出、③他社との戦略的連携を戦略の柱とする『熊谷組グループ 中期経営計画(2018~2020年度)~成長への挑戦~』にグループ一丸となって取り組み、さらなる成長へ挑戦してきた。

  この結果、当社グループの当連結会計年度における財政状態及び経営成績は以下のとおりとなった。

a 財政状態

・資産

 総資産は、前連結会計年度末に比べ47億円(1.3%)増加し、3,795億円となった。

 流動資産は、前連結会計年度末に比べ11億円(0.4%)増加し、3,117億円となった。大型工事における支出先行並びに取引業者への支払条件の緩和等により現金預金が38億円減少した一方で、売上高の増加に伴い受取手形・完成工事未収入金等が65億円増加している。

 固定資産は、前連結会計年度末に比べ36億円(5.7%)増加し、678億円となった。保有株式の時価上昇等により投資有価証券が68億円増加している。

・負債

 負債は、前連結会計年度末に比べ110億円(4.9%)減少し、2,157億円となった。

 流動負債は、前連結会計年度末に比べ109億円(5.4%)減少し、1,906億円となった。偶発損失引当金が引当内容の実施に伴う取崩し等により減少したことに加え、支払手形・工事未払金等に電子記録債務を加えた仕入債務が40億円、未成工事受入金が80億円減少している。

 固定負債は、前連結会計年度末に比べ8千万円(0.3%)減少し、251億円となった。長期借入金が4億円減少している。

・純資産

 純資産は、前連結会計年度末に比べ158億円(10.7%)増加し、1,638億円となった。利益剰余金は、56億円の剰余金の配当を実施したものの、親会社株主に帰属する当期純利益179億円の計上等により123億円増加している。なお、自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ3.7ポイント向上し、43.2%となった。

 

b 経営成績

・売上高(完成工事高)

 売上高は、手持工事を順調に消化したこと等により、前連結会計年度に比べ140億円(3.2%)増加し、4,502億円となった。

 なお、当社グループの事業内容は、建設事業とその他の事業に大別されるが、その他の事業に重要性がないため、連結損益計算書上は区分していない。

・売上総利益(完成工事総利益)

 売上総利益は、売上高の増加及び売上総利益率(完成工事総利益率)の改善により、前連結会計年度に比べ25億円(5.7%)増加し、480億円となった。

・販売費及び一般管理費

 販売費及び一般管理費は、人員の増加等により人件費が増加した一方で、新型コロナウイルス感染症の影響で営業活動や役職員の移動が抑制されたこと等により、前連結会計年度に比べ4千万円(0.2%)減少し、200億円となった。

・営業利益

 営業利益は、売上総利益の増加等により、前連結会計年度に比べ26億円(10.3%)増加し、280億円となった。

・営業外損益

 営業外収益は、受取配当金の増加等により、前連結会計年度に比べ2億円増加し、9億円となった。

 営業外費用は、シンジケートローン手数料の増加等により、前連結会計年度に比べ1億円増加し、5億円となった。

・経常利益

 これにより、経常利益は、前連結会計年度に比べ26億円(10.4%)増加し、284億円となった。

・特別損益

 特別利益は、受取和解金1億円、収用補償金1千万円など合計1億円を計上した。

 特別損失は、2014年に当社の施工不良が判明した横浜市西区所在のマンションの是正工事に係る追加費用として偶発損失引当金繰入額12億円のほか、債権譲渡損4億円など合計24億円を計上した。

・法人税等

 法人税、住民税及び事業税66億円、将来減算一時差異の減少により法人税等調整額15億円を計上した。

・親会社株主に帰属する当期純利益

 以上により、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ15億円(7.8%)減少し、179億円となった。

 

セグメントごとの経営成績(セグメント間取引消去前)は次のとおりである。

a 土木事業

受注高は、前連結会計年度比8.4%増の1,001億円であった。
売上高は、同0.6%減の1,214億円、営業利益は、同1.2%増の77億円となった。

 

b 建築事業

受注高は、前連結会計年度比21.2%減の1,832億円であった。
売上高は、同3.8%増の2,387億円、営業利益は、同16.7%増の147億円となった。

 

c 子会社

 売上高は、前連結会計年度比7.2%増の1,057億円、営業利益は、同8.0%増の55億円となった。
 なお、当該セグメントにおいては、受注生産形態をとっていない子会社もあるため受注実績を示すことはできない。

 

② キャッシュ・フローの状況

  営業活動によるキャッシュ・フローは、65億円のプラス(前連結会計年度は3億円のプラス)となった。
 投資活動によるキャッシュ・フローは、43億円のマイナス(前連結会計年度は22億円のマイナス)となった。
 財務活動によるキャッシュ・フローは、61億円のマイナス(前連結会計年度は53億円のマイナス)となった。
 為替換算による増加を含め、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は前連結会計年度末に比べ38億円(5.1%)減少し、713億円となった。

③ 生産、受注及び販売の実績

  当社グループが営んでいる事業の大部分を占める建設事業では「生産」を定義することが困難であり、子会社が営んでいる事業には「受注」生産形態をとっていない事業もあるため、グループとしての生産実績及び受注実績を示すことはできない。また、建設事業では請負形態を取っているため「販売」という定義は実態にそぐわない。このため、生産、受注及び販売の実績については、可能な限り「① 財政状態及び経営成績の状況」において報告セグメントの種類に関連付けて記載している。

   なお、参考のため、提出会社個別の事業の状況は次のとおりである。

a 受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高

期別

区分

前期繰越

工事高

(百万円)

当期受注

工事高

(百万円)

(百万円)

当期完成

工事高

(百万円)

次期繰越

工事高

(百万円)

第83期

 

(自 2019年4月1日

至 2020年3月31日)

土木工事

218,351

92,371

310,723

122,236

(188,487)

188,487

建築工事

352,041

232,587

584,629

229,988

(354,640)

354,626

570,393

324,959

895,353

352,224

(543,128)

543,113

第84期

 

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

土木工事

188,487

100,106

288,593

121,446

(167,147)

167,147

建築工事

354,626

183,255

537,881

238,794

(299,087)

299,098

543,113

283,361

826,474

360,240

(466,234)

466,245

(注) 1 前期以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含む。

2 次期繰越工事高の下段表示額は、当事業年度末の外国為替相場に基づき海外工事の繰越工事高を修正したものであり、上段( )内は修正前である。

b 受注工事高の受注方法別比率

 工事の受注方法は、特命と競争に大別される。

期別

区分

特命(%)

競争(%)

計(%)

第83期

(自 2019年4月1日

至 2020年3月31日)

土木工事

32.6

67.4

100

建築工事

23.7

76.3

100

第84期

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

土木工事

20.6

79.4

100

建築工事

45.6

54.4

100

(注) 百分比は請負金額比である。

 

c 完成工事高

期別

区分

官公庁

(百万円)

民間

(百万円)

合計

(百万円)

第83期

(自 2019年4月1日

至 2020年3月31日)

土木工事

75,722

46,513

122,236

建築工事

25,015

204,973

229,988

100,737

251,487

352,224

第84期

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

土木工事

57,847

63,598

121,446

建築工事

32,389

206,405

238,794

90,237

270,003

360,240

(注) 1 完成工事のうち主なものは次のとおりである。

第83期

東日本高速道路株式会社

東京外かく環状道路 大泉ジャンクション立坑工事

国土交通省

阿蘇大橋地区斜面対策工事

豊洲6丁目4-1B開発特定目的会社

(仮称)Dタワー豊洲新築工事

嘉新琉球COLLECTIVE株式会社

(仮称)CHC那覇ホテル新築工事

アパマンション株式会社

(仮称)アパホテル&リゾート<御堂筋本町駅タワー>新築工事

第84期

国土交通省

水海川導水トンネルⅠ期工事

中日本高速道路株式会社

新東名高速道路 羽根トンネル工事

三井不動産レジデンシャル株式会社・野村不動産株式会社・三菱地所レジデンス株式会社・伊藤忠都市開発株式会社・東方地所株式会社・株式会社富士見地所・袖ヶ浦興業株式会社

(仮称)幕張新都心若葉住宅地区計画(B-2 街区)

地方独立行政法人くまもと県北病院機構

地方独立行政法人くまもと県北病院機構新病院整備事業に係る設計及び施工業務

アパ株式会社・アパホーム株式会社

(仮称)アパホテル&リゾート<両国駅タワー>新築工事

2 第83期及び第84期ともに、完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。

d 次期繰越工事高(2021年3月31日現在)

区分

官公庁

(百万円)

民間

(百万円)

合計

(百万円)

土木工事

43,482

123,664

167,147

建築工事

25,860

273,237

299,098

69,343

396,902

466,245

(注) 次期繰越工事のうち主なものは次のとおりである。

環境省

平成29年度中間貯蔵(大熊3工区)土壌貯蔵施設等工事

中国電力株式会社

三隅発電所2号機建設工事のうち石炭貯蔵設備他設置工事

医療法人沖縄徳洲会

湘南鎌倉総合病院外傷・救命救急センター先端医療センター増築工事

三井不動産レジデンシャル株式会社・野村不動産株式会社・三菱地所レジデンス株式会社・伊藤忠都市開発株式会社・東方地所株式会社・株式会社富士見地所・袖ヶ浦興業株式会社

(仮称)幕張新都心若葉住宅地区計画(B-3 街区)

日本電産株式会社

日本電産株式会社 向日町プロジェクトC棟建築工事(仮称)

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。

① 財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a 経営成績の分析

 当社グループの売上高については、新型コロナウイルス感染症の影響により一部の工事で中断があったものの土木事業・建築事業ともに工事は概ね順調に進捗し、また、連結子会社の株式会社ガイアート(以下「ガイアート」という。)と華熊営造股有限公司(以下「華熊営造」という。)において大きく売上高を伸ばしたことにより、前連結会計年度実績、期首計画値をともに上回った。

 利益については、一部の土木工事において工事原価が大きく悪化する工事が発生したが、一方で採算が大きく改善した工事が土木事業・建築事業ともに複数あり、営業利益・経常利益は前連結会計年度実績、期首計画値をともに上回る結果となった。なお、親会社株主に帰属する当期純利益については、施工不良マンションの是正工事に係る最終的な精算額を特別損失に計上したこと等により、前連結会計年度実績を下回った。

 親会社株主に帰属する当期純利益の計上により自己資本比率は43.2%、ROEは11.5%となった。なお、配当については1株当たり120円を実施し、これによる配当性向は31.2%である。ROEは前連結会計年度13.7%、当連結会計年度11.5%と中期経営計画値の12%を前後する推移となり、配当性向も計画値の30%を目途に安定的な配当を行った。

 受注高は、新型コロナウイルス感染症の影響を織り込み弱含みの計画であったが、予定していた大型案件の発注が翌期にずれ込んだことや海外工事の入札が進まなかったこと等により、期首計画値をやや下回る結果となった。

 新型コロナウイルス感染症の影響について、当連結会計年度における金額的影響の算定は困難であるが、感染症拡大により追加設計変更交渉が進展せず工事価格を上積みできなかったなどの事象があったものの、当連結会計年度の業績への影響は限定的であった。

 

   当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況」の「2 事業のリスク」に記載のとおりである。

 

b セグメントごとの経営成績の分析

・土木事業

 受注高は、官庁工事では前連結会計年度を下回ったものの、民間では電力・エネルギー、鉄道分野で受注を伸ばし、前連結会計年度比8.4%増の1,001億円となった。

 売上高は、期首繰越工事高が前連結会計年度期首より大きく下回っていたものの、工期終盤の工事が出来高を伸ばしたことで同0.6%減に留まり1,214億円となった。営業利益は、完成引渡工事において大幅なコスト削減が図れたことや追加設計変更の獲得等により同1.2%増の77億円となった。

・建築事業

 受注高は、住宅分野が増加したものの、前連結会計年度に大型案件を数件受注した倉庫・物流施設分野の反動減や期末に予定していた大型案件の発注が翌期に繰り越されたこともあり、前連結会計年度比21.2%減の1,832億円となった。
 売上高は、期首繰越工事高が前連結会計年度と同水準であったものの、大型工事が順調に出来高を伸ばしたことにより同3.8%増の2,387億円となった。営業利益は、完成引渡工事において大幅なコスト削減が図れたことや追加設計変更の獲得等により、同16.7%増の147億円となった。

・子会社

 売上高は、ガイアートと華熊営造おいて期首繰越工事高の増加により売上高が増加し、全体として同7.2%増の1,057億円となった。営業利益は、売上高の増加に伴う売上総利益の増加及びガイアートの原価価格下落を主因とする採算改善等により、同8.0%増の55億円となった。

 

c 中期経営計画の達成状況

 『熊谷組グループ 中期経営計画(2018~2020年度)~成長への挑戦~』で掲げた指標の計画値と実績値との比較及び経営戦略の達成状況は次のとおりである。

指標

2020年度(計画値)

2020年度(実績)

差異

連結売上高   (百万円)

460,000

450,232

△9,767

連結経常利益  (百万円)

33,000

28,400

△4,599

ROE      (%)

12.0

11.5

△0.5

配当性向     (%)

30.0

31.2

1.2

 

 戦略①:建設工事請負事業の維持拡大

 中期経営計画(2018~2020年)では、最終年度の業績目標を連結売上高4,600億円、経常利益330億円としていたが、2020年度は新型コロナウイルス感染症の拡大により世界が大きな変貌を遂げる中、計画期間の3年間を通じて連結売上高は概ね順調に推移したものの、経常利益は当初想定していた利益率を実現することができず、連結売上高、連結経常利益ともに計画値に届かなかった。建設工事請負事業の維持拡大の具体的取組みとして、土木事業では、高速道路リニューアル工事において、当社ほか3社で共同開発した「コッター床版工法」を用いて東北自動車道での橋梁床版取替工事を完成させたほか、再生可能エネルギー事業として水力発電所の更新工事、風力発電所、メガソーラー等の工事で受注実績を上げた。建築事業では、コロナ禍でも底堅い住宅・事務所・物流などの市場を中心に戦略的に受注し、また住友林業株式会社との協業を推進し、木質耐火部材の大臣認定を取得した「λ-WOOD(ラムダ-ウッド)」を主要構造部に用いた木造ハイブリッド構造の中高層オフィスビルを受注した。

 

 戦略②:新たな事業の創出

 再生可能エネルギー事業分野では、比較的小規模だが、2020年3月から事業主体として太陽光発電事業を開始したほか、2020年7月、当社が出資する「飯舘バイオパートナーズ株式会社」が、福島県飯舘村での木質バイオマス発電事業の実施主体として選定された。都市再生・再開発事業分野では、本社ビルが立地する飯田橋駅東口地区において地域住民による勉強会・協議会が発足し再開発事業の機運が高まる一方、2020年8月、新宿区が基盤整備ビジョンの策定に向け、「飯田橋駅前地区まちづくり勉強会」を開催したほか、2020年9月には、東京都が「飯田橋駅周辺基盤再整備構想」を策定するなど、行政による再開発推進への動きも活発になっており、当社も地域住民(地権者)として積極的に参画していく。

 

 戦略③:他社との戦略的連携

 2020年1月、海外事業分野では、住友林業株式会社とシンガポールに合弁会社を設立し、インドネシアで高層コンドミニアム及び商業複合施設開発事業に着手し、また、華熊営造が子会社(華熊建設股份有限公司)を設立し、地元デベロッパーとの協働で不動産開発事業に乗り出すなど、アジア地域における不動産開発事業への参画の動きが加速している。また、2021年2月には、ベトナムで太陽光発電事業、「CatHiepメガソーラー事業」を運営する事業会社の株式を30%取得した。今後も、現地パートナーとともに、再生可能エネルギー事業の展開を検討している。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a キャッシュ・フローの状況の分析

 営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益260億円の計上等により、65億円のプラス(前連結会計年度は3億円のプラス)となった。
 投資活動によるキャッシュ・フローは、設備の取得更新等及び関係会社株式の取得等により、43億円のマイナス(前連結会計年度は22億円のマイナス)となった。
 財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払い等により、61億円のマイナス(前連結会計年度は53億円のマイナス)となった。
 為替換算による増加を含め、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は前連結会計年度末に比べ38億円(5.1%)減少し、713億円となった。

 

b 資本の財源及び資金の流動性

・資本政策の基本方針

 当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保し、財務健全性を保つことを基本方針としている。当連結会計年度末において現金預金は713億円保有しており、自己資本比率も43.2%と一定水準を保っていることから、現状では新型コロナウイルス感染症の影響を考慮しても財務健全性に懸念はない。

 短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資に係る資金や長期運転資金は自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としている。当連結会計年度末における流動比率は163.6%、固定長期適合率は35.9%と高い安全性を保っている。

・資金需要

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、建設事業に係る外注費や資機材費等の工事費、人件費を中心とした販売費及び一般管理費の営業費用である。売上高の増加及び人員数の増加により営業費用に対する資金需要は増加傾向にある。

 成長投資を目的とした資金需要は、『熊谷組グループ 中期経営計画(2021~2023年度)~持続的成長への弛まぬ挑戦~』に掲げている4つの基本方針に基づき、持続的成長と企業価値向上を目指して今後も投資を加速していく方針である。

 なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は118億円となっている。

 

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・株主還元

 株主還元策については、安定配当の方針のもと、連結配当性向30%を目途としている。

 なお、自己株式の取得及び消却については、資本効率やキャッシュ・フローの状況等を勘案して慎重に検討する方針である。

 

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・資金調達

 当社グループは、金融機関からの借入を主な資金調達の手段としており、長期借入を中心に必要資金を調達している。なお、資金調達のより一層の安定化と金融費用の圧縮を図るため、シンジケートローン契約を締結しており、当連結会計年度末の契約総額は70億円である。

 また、運転資金の効率的な調達を行うため貸出コミットメント契約を締結しており、当連結会計年度末の契約総額は300億円(借入実行残高0円)である。

 安定的な資金調達手段を確保できており、新型コロナウイルス感染症の影響を含めた突発的な資金需要の発生にも十分対処可能な状況である。

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

  当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度における資産、負債並びに収益、費用の金額に影響する見積り、判断及び仮定が必要となり、これらは継続した評価、過去の実績、経済等の事象、状況及びその他の要因に基づき算定を行っているが、本質的に不確実性を内包しており、実際の結果とは異なる場合がある。

  当社グループの重要な会計方針のうち見積り、判断及び仮定による算定が含まれる主な項目は、貸倒引当金、完成工事補償引当金、工事損失引当金、偶発損失引当金、賞与引当金、株式給付引当金、退職給付費用、工事進行基準による収益認識、繰延税金資産の回収可能性等があり、当該見積り、判断及び仮定と実際の結果に重要な差異が生じた場合は、当社グループの連結財務諸表に影響を及ぼす可能性がある。

  連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりである。

  なお、当連結会計年度において、新型コロナウイルス感染症が会計上の見積りに及ぼす重要な影響はないとしているが、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化した場合、工事中断や資機材の納入遅れに伴う工程遅延や対策コストの増大などにより、工事進行基準による収益認識に影響を及ぼす可能性がある。

 

4【経営上の重要な契約等】

 該当事項なし。

 

5【研究開発活動】

 当社グループの研究開発活動は、企業業績に対して即効性のある技術、商品の開発、各種技術提案に直結した技術の開発、中長期的市場の変化を先取りした将来技術の研究、開発技術の現業展開と技術部門の特性を生かした技術営業、総合的技術力向上のための各種施策からなっており、社会経済状況の変化に対し機動的に対応できる体制をとっている。
 当連結会計年度は、研究開発費として2,660百万円投入した。
  当連結会計年度における主な研究開発活動は次のとおりである。

(1) 土木事業

 ① 高速道路リニューアルプロジェクトの主力商品「コッター床版工法」

  NEXCO各社が進める高速道路リニューアルプロジェクト(総事業費約3兆円)は、2015年度から2030年度までの16ヵ年の長期計画であるが、これまで5年余で事業費の執行済みは約14%に留まっており、今後は同プロジェクトを加速させるために、さらに積極的な工事発注が行われる見込みである。橋梁床版取替工事は、その50%強(事業費約1兆6,500億円)を占め、同プロジェクトの主要工事である。

  当社は、この橋梁床版取替工事において、急速施工、省人化、取替性の改善など生産性の向上を目的に、コッター式継手を用いた橋梁用プレキャストPC床版(コッター床版)を株式会社ガイアート、オリエンタル白石株式会社及びジオスター株式会社と共同で開発した。本工法は、単純作業のため熟練工が不要で、床版の99%がプレキャスト化されるため、品質向上にも大きく寄与するものである。

  当連結会計年度はNEXCO東日本発注の東北自動車道十和田管内高速道路リニューアル工事において、高速道路で初採用となる小坂川橋上り線約118m及び新遠部沢橋下り線約284mの2橋梁の施工を完了し、その有効性を実証した。今後は、現在の継手をさらに軽量・小型化した新製品を投入する。

 ② 小断面トンネル施工機械開発 ~KITプロジェクトⓇ~

  「次世代トンネル施工システムの開発」の一環として、トンネル断面積が10㎡程度の小断面NATMトンネルの施工時における生産性向上と作業環境の改善並びに安全性の確保を目的とした施工機械群の開発KITプロジェクトⓇ(Kumagai Innovative Tunnel Project)を進めている。

  当連結会計年度は土砂掘削・積込機械、土砂搬送トレンローダー、同専用鋼車が完成し、技術研究所内模擬トンネルで確認実験を行った。また、並行して掘削・積込機械の新聞発表、「KITプロジェクトⓇ」の商標登録も行った。現在は吹付機械が先日工場完成し、1ブーム式削孔機械と爆薬遠隔装填装置の製作が佳境に入っている。これらが完成してKITプロジェクトⓇの第一段階が完了する。

  今後は、完成した機械群を現場に導入し、実稼働させデータの蓄積、機械の改良・改善、遠隔化・自動化など実用化に向けたプロジェクトの第二段階が開始される。また、逐次新聞発表も行ない社外アピールも進めていく予定である。

 ③ DX(デジタルトランスフォーメーション)の取組み

  当社は、建設業就業者の高齢化が進行していく中で、どのようにして施工のノウハウや技術を伝承していくかを課題としていた。こうした課題に対し、多岐にわたる情報をデジタルデータとして収集・蓄積することから始め、デジタル技術を活用したWEBアプリケーションを構築した。

  業務支援を行う「工事情報簡易参照システム」は竣工データ、工事中のデータを共有・参照できるシステムであり、「Knowledge Explorer」はAIを搭載した検索システムとなり膨大に蓄積させたデータから必要なデータを自動的に抽出することができる。施工支援を行う「トンネル切羽AI診断システム」は技術者の経験の有無にかかわらない客観的な評価ができ、若手技術者の判断支援を行い、「CV映像公開システム」は360度映像を用いて施工の効率化を図るアプリケーションである。

 

 ④ ローカル5Gを用いた無人化施工技術の高度化

  自然災害現場での無人化施工は二次災害を防ぐために極めて有効な手段であり、施工の高度化を実現するためには、建機に取り付けられた4Kカメラの映像や、加速度センサーで取得された動きの情報を遠隔操作室へリアルタイムに伝送する必要がある。

  この課題に対して、大容量かつ低遅延を可能とするローカル5G(第5世代移動通信)を活用した自然災害現場におけるネットワーク対応型無人化施工を想定した屋内実証実験を行った。実験は株式会社日本電気と共同で行い、遠隔操作が可能な仮想現場環境を用意し、4K映像をVRヘッドマウントディスプレイに表示すると同時に、操縦席が取り付けられたモーションベースで建設機械の傾きや振動などの動きを再現した。ローカル5Gを活用して高品質かつリアルタイムに大容量の情報を伝送することにより、傾斜地などで建設機械を運用する場合でも、実際の搭乗操作に近い感覚で遠隔操作が可能となる。

 ⑤ 切羽崩落監視システムの開発

  切羽肌落ち災害は山岳トンネルの特有災害であり、2000年から10年間で肌落ちを起因とした災害の60%以上が休業4日以上の災害であり、その作業内容の70%以上が装薬・鋼製支保工建込み中に被災しており、切羽肌落ちは重篤災害につながりやすい。当社は、肌落ちの予兆を捉えるため、WEBカメラを用いた画像処理で礫塊(5~10cm程度)の落石を検出する「切羽崩落監視システム」を開発した。

  本システムは、ドリルジャンボ等の機体に設置したカメラ画像(30fps)のフレーム間差分画像を連続的に検出処理することにより落石を認識する。さらに、機体や作業員の動きを起因とした誤検出を防止するため、マスキング処理で機体等の人工物を対象から除外する機能と照明条件変化や風等による揺らぎを起因とした微小変化(ノイズ)を除去する機能を付加している。実機実験では誤検出が激減し、90%近い落石検出率を確保しており、切羽崩落の予兆監視に効果的である結果を得ている。今後も稼働現場で実証実験を継続して行い、検出率をさらに向上させて実用化を目指す。

⑥ 斜面対策工に特化したのり面CIMの実施

  現在、建設生産システムの業務効率化や高度化を目指してCIM(Construction Information Modeling/ Management)の導入が活発化している。その中で、斜面対策工事においては、トンネル工事、ダム工事、道路工事や橋梁工事等と比較すると、CIMの導入事例が少ない傾向がみられる。このような状況から、斜面対策工に特化した「のり面CIM」を開発した。本システムは、グラウンドアンカーや鉄筋挿入工などの斜面対策工の施工データを集約・三次元モデル化(可視化)し、一元管理した情報を次ブロックの施工へフィードバックすることにより、施工の効率化を図るシステムである。本システムは、斜面安定計算ソフトウェアと連係できることから、地質状況が想定と異なることが判明した場合には、早急に適切な再検討を行うことが可能となっている。斜面対策工は、激甚化する自然災害に対する備えとして重要な位置づけを担っており、今後は、施工時だけでなく、調査・設計時から維持・管理までを見据えた運用を目指す。

 

(2) 建築事業

 ① 「熊谷組鉄骨梁横座屈補剛工法」の開発 ―床スラブによる上フランジ拘束効果を考慮した横補剛―

  床スラブ付き鉄骨梁を対象に、床スラブによるH形鋼梁上フランジの水平変位及び回転拘束効果を利用して鉄骨梁の横座屈補剛を行う工法「熊谷組鉄骨梁横座屈補剛工法」を開発した。本工法は、2020年3月に日本ERI株式会社の構造性能評価を取得しており、既に2件の新築工事に適用されている。

  鋼構造建築物に使用されるH形断面梁は、大きな荷重が作用した際に水平方向(横方向)にはらみ出す横座屈現象が懸念されるため、横座屈補剛材を小梁や方杖として設置すること(保有耐力横補剛)が建築基準法で規定されている。一方で、大梁の上フランジは、床スラブなどにより連続的もしくは断続的な拘束を受けていることが多く、横座屈抑制効果として期待できることは広く知られている。これらのことから、床スラブの横座屈補剛効果を利用した設計及び施工の合理化工法の開発に至った。

  本工法では、頭付きスタッド等のシアコネクタを用いて鉄骨梁と床スラブを一体化することにより、床スラブによる鉄骨梁上フランジの水平変位及び回転への拘束効果を考慮した横座屈補剛の設計を行う。これにより、鉄骨梁は横座屈せずに全塑性モーメントに達するとともに、塑性化後の早期耐力劣化を防ぐことができる。本工法により設計された鉄骨梁は、梁端部が全塑性モーメントに達するまで横座屈が生じないものとし、かつ、保有耐力横補剛を満たした梁部材として扱うことができ、H形鋼の大梁であれば、高炉材、電炉材によらず、適用することが可能な工法となっている。

  今後もより合理的な設計、施工を目指し、物流施設、商業施設、オフィスなどの建物に加え、宿泊施設、生産施設などを含めた様々な鉄骨造の建物への適用を積極的に行っていく予定である。

 

 ② 「異種強度を打ち分けた鉄筋コンクリート梁工法の設計法及び施工方法」の構造性能評価を取得

  「異種強度を打ち分けた鉄筋コンクリート梁工法の設計法及び施工方法」を開発した。本工法は、断面の上部と下部で強度が異なるコンクリートを使用する梁の設計及び施工に関するものであり、現場打ちまたはハーフプレキャスト部材において、梁上部とスラブのコンクリートを同じ強度で打設することができる。また、異なる強度のコンクリートが同一梁断面内に存するため、「等価平均強度」(注)を用いて、許容応力度設計と終局強度設計を行う。今回この「等価平均強度」に基づき算定された梁のせん断終局強度に対し、既往実験データの安全率がより高いことが確認されたため、設計指針の取り纏めに至った。

  本工法を採用することにより、梁の上部とスラブを同じコンクリート強度で一度に打設することが可能となるため、施工手順を省くことができ、「施工の合理化と生産性の向上」が期待できる。

  本開発は、株式会社淺沼組、株式会社奥村組、五洋建設株式会社、鉄建建設株式会社及び矢作建設工業株式会社との共同開発で実施し、日本ERI株式会社の構造性能評価を取得した。

  今後は、各社において設計施工物件を主としたRC建物に適用し、施工の合理化、生産性の向上を推進していく予定である。

  (注)スラブが存することによる効果と異種強度コンクリートが混在する影響を同時に考慮した強度算出方法。

 ③ 「断熱耐火λ-WOODⓇ(柱)」の1~3時間耐火の大臣認定取得

  中大規模の木造建築への導入を念頭に、当社が開発した木質耐火部材「断熱耐火λ-WOOD(ラムダ-ウッド)」シリーズとして、柱の1~3時間における耐火構造の国土交通大臣認定を取得した。同シリーズは、これまでにCLT(直交集成板)壁とCLT床の1時間と2時間の耐火構造で国土交通大臣認定を取得している。

  今回大臣認定を取得した、1~3時間の集成材柱の特徴として、荷重支持部(柱)の周囲に設置する「燃え止まり層(注)」に、普通硬質せっこうボードと断熱耐火パネルを積層することにより、その部分の厚さを薄くした。このことは、木質感を演出しつつ居室内の有効利用面積を大きく取れる利点がある。さらに表面仕上げ材を自由に選択することが可能となったため、お客様及び設計者のニーズに対応することができる。また、今般実施工として、「断熱耐火λ-WOOD(柱)」を現在施工中の当社福井本店の建替工事に採用している。

  当社では、今後さらに需要が高まると予測される中大規模の木造建築の実現に向けて技術開発を進めている。中大規模の建築物に木造を適用するための課題として、建築基準法に規定される防・耐火性能があり、建物の規模によりそれぞれの使用箇所に応じた耐火性能を有する部材を使う必要がある。これを踏まえて、すべての建築物において木質部材が使用できるように、「断熱耐火λ-WOOD」シリーズとして木質耐火部材の開発と大臣認定の取得を目指している。今回の柱における1~3時間までの耐火構造大臣認定を取得したことにより、「断熱耐火λ-WOOD」の柱については、耐火要件上の階数による制限がなくなり、高層建築物にも使用することができるようになった。

  今後、優れた中大規模の木造建築を実現するために、様々な技術を組合せることにより、さらなる性能の向上やコストダウンに向けた技術開発を進めていく。

  (注)燃え止まり層とは、荷重支持部材(集成材柱)の外側にある燃焼を停止させる層である。

 ④ CELBIC(環境配慮型BFコンクリート)ゼネコン13社で建設材料技術性能証明を取得

  当社とゼネコン12社(注1)で構成されている「CELBIC研究会」は、生コン工場において、予め建築物の部位・部材や所定の性能に合わせて、普通ポルトランドセメントの10~70%を高炉スラグ微粉末と置換したコンクリート「CELBIC-環境配慮型BFコンクリート-」を開発し、一般財団法人日本建築総合試験所より2021年2月22日付けで、建設材料技術性能証明(GBRC 材料証明 第20-04号)を取得した(注2)。

  CELBIC(注3)は、循環型社会形成と地球環境問題改善への寄与を目的とし、コンクリート建築物の所要品質を確保しつつ、コンクリート材料に由来する二酸化炭素の排出量の約9~63%を削減する環境配慮型コンクリートである。また、JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)に適合するコンクリートとして製造・出荷が可能であり、CELBIC研究会13社において責任施工する。

  CELBICに使用される高炉スラグ微粉末は、製鉄所の高炉における製銑において副生されるスラグを微粉砕したものである。水硬性を有しており、製造時に排出される二酸化炭素はポルトランドセメントの1/20以下であることから環境負荷低減のために有効利用が望まれていたもので、JIS A 5308においては、セメントに置き換えて使用されるコンクリート混和材料の一つである。

  今後は、建築物やそれ以外の鉄筋コンクリート構造物に対しても、環境配慮性を有したCELBICを適材適所へ有効活用し、普及展開を目指していく。

  (注)1 株式会社熊谷組、株式会社長谷工コーポレーション(幹事)、青木あすなろ建設株式会社、株式会社淺沼組、株式会社安藤ハザマ、株式会社奥村組、株式会社鴻池組、五洋建設株式会社、株式会社錢高組、鉄建建設株式会社、東急建設株式会社、東洋建設株式会社、矢作建設工業株式会社

2 一般財団法人日本建築総合試験所より2020年10月5日付けで、建設材料技術性能証明(GBRC 材料証明 第20-02号)を取得し、その後データの一部を更新したため、2021年2月22日付けで、建設材料技術性能証明(GBRC 材料証明 第20-04号)を再取得した。

3 CELBIC(セルビック):Consideration for Environmental Load using Blast furnace slag In Concrete

 ⑤ 「KMLAセンサー」の開発

  鋼製の部材に設置することで、部材に閾値以上のひずみが生じた時に光のアラームを発して危険を可視化する「KMLA(Kumagai Magnet Light Alarm)センサー」を開発した。

  地盤の開削工事などで土留支保工に変状が発生した場合、仮設・本設構造物に影響を及ぼすだけでなく、作業中の人命に関わる危険性がある。特に土留支保工の変状が予測される場合は、部材に軸力計やひずみゲージなどを設置し、計測管理を行いながら施工するが、一般的には専門的な知識がある者が行うため、作業中の者へ変状の情報をリアルタイムに伝えることは容易ではない。

  本センサーは、土留支保工などの鋼材に磁石によって手軽に設置することができ、取り外しも容易であるため、設置に専門的な技能を必要としない。また、工事の進捗に合わせて、より大きな負荷が想定される部材にセンサーを設置しなおすことも容易である。部材に変状が発生したとき、周囲に危険を知らせて避難を促す機能を有する本センサーの導入は、現場の安全性の向上に寄与するものである。

  閾値は0μから900μの間において100μ刻みで設定でき、設定された閾値以上のひずみを感知した際にセンサー中央の警報LEDが点灯する仕組みとなっている。また、オプションでアラーム機能も追加することができる。

  本センサーは既に商品化されているが、IoT化して計測工にも利用できるように改良を進めている。

 ⑥ 共同住宅における重量床衝撃音の予測検討に関する手引書「インピーダンス法による重量床衝撃音レベル予測計算法(改訂3版)」を発刊

  当社は、信州大学山下恭弘名誉教授監修のもと、泰成株式会社、フジモリ産業株式会社、野原産業株式会社、万協株式会社、有限会社音研と共同で研究した成果を、床衝撃音研究会として実務的な床衝撃音レベルの予測法に関する手引書である「インピーダンス法による重量床衝撃音レベル予測計算法(改訂3版)」を発刊した。

  インピーダンス法は、床衝撃音遮断性能の予測計算法の一つであり、一般的な表計算ソフトを利用して計算ができることから、実務に広く利用されている。これまで、大脇(株式会社熊谷組)と山下名誉教授らによって1998年に提案されたインピーダンス法に基づき作成した解説書「インピーダンス法による床衝撃音レベル予測計算法の解説」を2006年2月に刊行し、併せて、表計算ソフトで簡単に床衝撃音レベルを予測計算できる「予測計算シート」を公開した。その後、2012年10月に、改訂版(大脇・山下式2012)の刊行及び予測計算シートの公開を行っているが、今般8年の経過をうけて、その後の知見を加えた全面的な見直しを行い、改訂3版として本解説書(大脇・山下式2021)を発刊した。また、この解説書に対応した予測計算シートは、床衝撃音研究会を組織する各社のウェブサイトから入手できる。

  本書は、重量床衝撃音レベルの予測精度をさらに向上させ、多様な共同住宅の予測計算に幅広く対応しているほか、専門的な内容や細かな疑問点については、コラムを設けて丁寧に説明している。

  今後も、共同住宅の重量床衝撃音レベルの予測検討を行う重要なツールとして位置付け、デベロッパーや設計事務所などに対して積極的に提案していく予定である。

 ⑦ 立ち上がり補助機能付き歩行車「フローラ・テンダー」のニューモデル発表

  かねてから開発していた、立ち上がり補助機能付き歩行車「フローラ・テンダー」の販売を2020年11月よりグループ会社の株式会社ファテックを通じて開始した。「フローラ・テンダー」は、電動による立ち上がり補助機能のある歩行車である。使用者は専用のスリング・ベルトを着け、歩行車に連結することにより、電動で楽に立ち上がれ、歩行時は転倒の心配もない。立ち上がりや座り込み時の操作は、介助者がリモコンを操作することで、周囲の確認と使用者のサポートなどが可能となるため、安全に使用することができる。しかも、立ち上がり動作が電動で補助できるため、介護者の負担軽減も期待できる。また、車イスと同等のサイズで開発されているため、車イスが使える環境であれば、使用場所の改修は必要ない。

  「フローラ・テンダー」は、立ち上がり補助と歩行補助という2つの機能を持ち、かつ、立ち上がりの補助を電動で行う製品として国内で初めて介護保険の適用対象になった。そのため、介護認定を受けた方は、1~3割の自己負担でのレンタルまたは購入が可能である。さらに、複数のJIS規格(注1)とリスクアセスメントに基づき、福祉用具として一般財団法人電気安全環境研究所(JET)のロボット安全認証(注2)を国内で初めて取得した。

  今後は、福祉用具の開発・販売を進めるとともに、当社グループの新たな事業分野として福祉介護市場を開拓していくとともに、SDGsの17の目標の一つである「すべての人に健康と福祉を」の実現に取り組んでいく予定である。

  (注)1 JIS T 9265 : 2019「福祉用具-歩行補助具-歩行車」とJIS T 9241-6 : 2015「移動・移乗支援用リフト-第6部:立ち上がり用リフト」及びその関連規程

2 認証書番号 RT002-001、認証登録日 2020年11月10日

 

(3) 子会社

  株式会社ガイアート

 ① FFP(フルファンクションペーブ:多機能型排水性舗装)のCAE路盤(セメント・アスファルト乳剤安定処理路盤)上への直接施工の可能性の確認

  FFPは、混合物一層で排水機能と防水機能を持つ縦溝粗面型ハイブリッド舗装である。従来は、防水機能に対する懸念から、強度が低く不陸も多い路盤上への直接施工は実施せず、舗装版上への施工を行ってきた。しかし、コスト削減及び省資源化に向け、路盤上への直接施工のニーズが増えてきており、これにFFPが対応することが望まれていた。今回、同社の子会社が運営する白糸ハイランドウェイにおいて、CAE路盤上へのFFP直接施工の試験施工を実施した結果、既設舗装版上への施工と同等の路面性状と防水性が得られることが確認された。

 ② G・Asシート(クラック抑制シート)の開発

  既設舗装におけるクラックやコンクリート舗装の目地に起因するリフレクションクラックを抑制するため、従来からガラス繊維等を基材とするクラック抑制シートが使用されてきた。このクラック抑制シートは、基材の引張強度がリフレクションクラックの動きを抑制して効果を得るものであったが、その基材が要因となり、当該クラック抑制シートを使用した舗装が再利用できないケースが多かった。リサイクル性を向上させるため、クラック抑制工法として実績があるじょく層工法(応力の伝達を緩和する層)を応用し、再利用を阻害する基材を用いず、アスファルトシートを利用した新たなクラック抑制シートを開発した。

  テクノス株式会社

 ① 建方精度管理システム「建方キングE」の開発

  本システムは、計測結果を計測者、建方調整者、工事管理者の全てが同時共有できることを可能にしたDX技術導入システム「建方キング」の発展版である。カメラ付自動追尾計測機器を用い画像認識技術を導入することで、計測機器側での測量管理担当者の常駐を不要とするリモート計測機能を実現した。計測機器近傍に設置したシステムPCを使用することにより、建方作業者や施工管理担当者自身による計測が実現し、工事事務所に居ながら監理技術者は修正・確定の判断をし、建方作業者に指示を出すことも可能としている。本システムを採用することにより、従来の建方作業(測量管理担当者2名・計測機器2台使用)との比較において、40%の工程短縮、50%のコスト低減が可能となった。

 ② 橋梁床版取替工事における床版と桁の切離し・結合の急速化技術の開発

  高速道路等の橋梁は、構築後50年以上経過したものが多く、老朽化した床版の取替工事は、交通規制等の社会的影響を少なくするため急速施工が求められている。工場製作のPC床版による急速取替工法は、コッター式床版等いくつかの工法が開発されているが、既存床版の急速解体工法は開発がほとんど進んでいない。この点に着目し開発した「切り方じょうず」は、交通規制前に、床版下部の水平切断と、切断した床版と桁との再結合を同時に行うことを目指した工法である。実際の道路床版と桁を再現した橋梁床版モデルによる実証実験を実施し、安全に高精度で切断が可能であることを実証済みである。桁に残置されるコンクリートも極めて少量で、撤去工事での課題であった残コンクリート撤去作業の省力化も確認できた。今後は、切り離された床版再結合化の安全性評価を行い、現場での試験施工をとおし、交通規制時間の大幅短縮を目指した橋梁床版解体工法として確立させていく予定である。