|
回次 |
第84期 |
第85期 |
第86期 |
第87期 |
第88期 |
|
|
決算年月 |
2021年3月 |
2022年3月 |
2023年3月 |
2024年3月 |
2025年3月 |
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|
売上高 |
(百万円) |
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|
|
|
|
|
経常利益 |
(百万円) |
|
|
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|
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|
親会社株主に帰属する当期純利益 |
(百万円) |
|
|
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|
包括利益 |
(百万円) |
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|
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|
純資産額 |
(百万円) |
|
|
|
|
|
|
総資産額 |
(百万円) |
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|
|
|
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|
1株当たり純資産額 |
(円) |
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|
|
|
|
1株当たり当期純利益 |
(円) |
|
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|
|
|
|
潜在株式調整後1株当たり 当期純利益 |
(円) |
|
|
|
|
|
|
自己資本比率 |
(%) |
|
|
|
|
|
|
自己資本利益率 |
(%) |
|
|
|
|
|
|
株価収益率 |
(倍) |
|
|
|
|
|
|
営業活動によるキャッシュ・フロー |
(百万円) |
|
|
△ |
|
|
|
投資活動によるキャッシュ・フロー |
(百万円) |
△ |
△ |
△ |
△ |
△ |
|
財務活動によるキャッシュ・フロー |
(百万円) |
△ |
△ |
|
|
△ |
|
現金及び現金同等物の期末 残高 |
(百万円) |
|
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|
|
従業員数 |
(人) |
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|
|
|
(注) 1 潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式が存在しないため記載していない。
2 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第85期の期首から適用しており、第85期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっている。
3 「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(企業会計基準第27号 2022年10月28日。以下「2022年改正会計基準」という。)等を当連結会計年度の期首から適用しており、前連結会計年度に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を遡って適用した後の指標等となっている。なお、2022年改正会計基準については第20-3項ただし書きに定める経過的な取扱いを適用し、「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第28号 2022年10月28日)については第65-2項(2)ただし書きに定める経過的な取扱いを適用している。この結果、当連結会計年度に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっている。
|
回次 |
第84期 |
第85期 |
第86期 |
第87期 |
第88期 |
|
|
決算年月 |
2021年3月 |
2022年3月 |
2023年3月 |
2024年3月 |
2025年3月 |
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|
売上高 |
(百万円) |
|
|
|
|
|
|
経常利益 |
(百万円) |
|
|
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当期純利益 |
(百万円) |
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資本金 |
(百万円) |
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発行済株式総数 |
(千株) |
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|
純資産額 |
(百万円) |
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総資産額 |
(百万円) |
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|
1株当たり純資産額 |
(円) |
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1株当たり配当額 |
(円) |
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|
(うち1株当たり中間配当額) |
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( |
( |
( |
( |
( |
|
1株当たり当期純利益 |
(円) |
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|
|
|
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|
潜在株式調整後1株当たり 当期純利益 |
(円) |
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|
|
|
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|
自己資本比率 |
(%) |
|
|
|
|
|
|
自己資本利益率 |
(%) |
|
|
|
|
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|
株価収益率 |
(倍) |
|
|
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|
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|
配当性向 |
(%) |
|
|
|
|
|
|
従業員数 |
(人) |
|
|
|
|
|
|
株主総利回り |
(%) |
|
|
|
|
|
|
(比較指標:配当込みTOPIX) |
(%) |
( |
( |
( |
( |
( |
|
最高株価 |
(円) |
3,295 |
3,230 |
2,936 |
4,365 |
4,280 |
|
最低株価 |
(円) |
2,156 |
2,628 |
2,432 |
2,665 |
3,000 |
(注) 1 潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式が存在しないため記載していない。
2 最高株価及び最低株価は、2022年4月4日より東京証券取引所プライム市場におけるものであり、それ以前については東京証券取引所市場第一部におけるものである。
3 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第85期の期首から適用しており、第85期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっている。
4 「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(企業会計基準第27号 2022年10月28日。以下「2022年改正会計基準」という。)等を当事業年度の期首から適用しており、前事業年度に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を遡って適用した後の指標等となっている。なお、2022年改正会計基準については第20-3項ただし書きに定める経過的な取扱いを適用している。この結果、当事業年度に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっている。
5 2025年3月期の1株当たり配当額130円については、2025年6月27日開催予定の定時株主総会の決議事項となっている。
当社は1898年1月熊谷三太郎が個人経営の土木建築請負業を開業したことに始まる。以来、各地の鉄道工事、水力発電所工事等に従事し、1938年1月資本金40万円の株式会社に組織を改め、近代経営の第一歩を踏み出した。
設立後の主な変遷は次のとおりである。
|
1945年10月 |
建築部を発足、建築部門に進出 |
|
1948年2月 |
札幌、横浜、名古屋、大阪、広島、福岡支店を開設 |
|
1949年3月 |
東京支店を開設 |
|
1949年10月 |
建設業法により、建設大臣登録(イ)第118号の登録完了 |
|
1958年10月 |
豊川工場を設置 |
|
1962年12月 |
仙台支店を開設 |
|
1963年11月 |
当社道路部を分離独立させ熊谷道路㈱(現 連結子会社)を設立 |
|
1964年1月 |
東京営業所を東京本社に改称 |
|
1964年12月 |
北関東支店を開設 |
|
1966年12月 |
四国支店を開設 |
|
1970年4月 |
東京、大阪証券取引所市場第二部に上場 |
|
1971年2月 |
東京、大阪証券取引所市場第一部に上場 |
|
1973年6月 |
建設業法の改正に伴い、建設大臣許可(特-48)第1200号を取得(以後3年毎に免許更新) |
|
1973年12月 |
北陸支店を開設 |
|
1974年3月 |
東京本社新社屋完成 |
|
1974年6月 |
宅地建物取引業法により、宅地建物取引業者として建設大臣免許(1)第1842号を取得(以後3年毎に免許更新) |
|
1988年3月 |
筑波技術研究所(現 技術研究所)を開設 |
|
1990年4月 |
仙台支店を東北支店、福岡支店を九州支店に改称 |
|
1991年4月 |
北関東支店と新潟営業所を統合し、関越支店に改称 |
|
1994年4月 |
関越支店を北関東支店に改称 |
|
|
熊谷道路㈱が㈱ガイアートクマガイに商号を変更 |
|
1995年2月 |
神戸支店を開設 |
|
1995年10月 |
東関東支店を開設 |
|
1996年4月 |
豊川工場を分社化、熊谷テクノス㈱(現 連結子会社)を設立 |
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1997年4月 |
札幌支店を北海道支店に改称 |
|
1997年6月 |
建設業法の改正に伴い、建設大臣許可(特-9)第1200号を取得(以後5年毎に免許更新) |
|
2001年2月 |
東京、横浜、北関東、東関東支店を統括する首都圏支社及び大阪、神戸、四国支店を統括する関西支社を設立 |
|
2002年3月 |
熊谷テクノス㈱が、連結子会社の三豊テクノコンストラクション㈱を吸収合併し、テクノス㈱に商号を変更 |
|
2003年7月 |
首都圏支社を首都圏支店及び関西支社を関西支店に改称 |
|
2003年10月 |
不動産事業、海外PFI等に係る投融資事業及び債権の回収事業を新設会社のニューリアルプロパティ㈱に承継させる会社分割を実施 |
|
2003年12月 |
大阪証券取引所上場廃止 |
|
2004年4月 |
㈱ガイアートクマガイが飛島道路㈱と合併し、㈱ガイアートT・Kに商号を変更 |
|
2009年4月 |
広島支店と四国支店を統合し、中四国支店に改称 |
|
2016年10月 |
㈱ガイアートT・Kが㈱ガイアートに商号を変更 |
|
2022年4月 |
東京証券取引所の市場区分の見直しにより、東京証券取引所の市場第一部からプライム市場に移行 |
|
2024年4月 |
東京建築支店を開設 |
当社グループは、建設事業及びその周辺関連事業を主たる事業としている。事業の内容及び当該事業に係わる位置づけは次のとおりである。
なお、以下は主要な事業の内容により区分しており、セグメント情報におけるセグメント区分と同一ではない。
建設事業 当社及び連結子会社である㈱ガイアート、関連会社である笹島建設㈱他が建設事業を営んでいる。
また、連結子会社であるテクノス㈱は建設事業のほか、建設用資機材の製造販売等を行っている。
その他の事業 連結子会社である㈱テクニカルサポートは保険事業及び事務代行事業を営んでおり、当社は事務業務の一部を委託している。
また、連結子会社である㈱ファテックは建設技術商品の提供事業を営んでおり、当社はその一部の提供を受けている。
事業の系統図は次のとおりである。
|
名称 |
|
住所 |
資本金 (百万円) |
主要な事業 の内容 |
議決権の所有割合又は被所有割合(%) |
関係内容 |
|
(連結子会社) |
|
|
|
|
|
|
|
㈱ガイアート |
|
東京都新宿区 |
1,000 |
建設事業 |
100 |
当社の建設事業において施工協力している。また、当社より建物を賃借し、当社に建物を賃貸している。 役員の兼務 1名 |
|
テクノス㈱ |
|
愛知県豊川市 |
470 |
建設事業 |
100 |
当社の建設事業において施工協力している。また、当社より土地を賃借している。 役員の兼務 4名 |
|
ケーアンドイー㈱ |
|
東京都千代田区 |
300 |
建設事業 |
100 |
当社の建設事業において施工協力している。また、当社より建物を賃借し、当社に建物を賃貸している。 役員の兼務 5名 |
|
㈱テクニカルサポート |
|
東京都新宿区 |
70 |
その他の事業 |
100 |
当社へのサービスを行っている。また、当社より建物を賃借している。 役員の兼務 2名 |
|
テクノスペース・ |
|
東京都豊島区 |
30 |
建設事業 |
100 |
当社の建設事業において施工協力している。また、当社より建物を賃借している。 役員の兼務 3名 |
|
㈱ファテック |
|
東京都新宿区 |
20 |
その他の事業 |
100 (10.0) |
当社と協力して技術商品の提供を行っている。また、当社より建物を賃借している。 役員の兼務 4名 |
|
華熊営造(股) |
(注)2 (注)3 |
台湾 |
百万NT$ 1,320 |
建設事業 |
100 |
当社の建設事業において施工協力している。また、当社に建物を賃貸している。 役員の兼務 2名 |
|
(持分法適用関連会社) |
|
|
|
|
|
|
|
笹島建設㈱ |
|
東京都港区 |
150 |
建設事業 |
35.0 |
当社の建設事業において施工協力している。 役員の兼務 1名 |
|
㈱前田工務店 |
|
東京都江東区 |
98 |
建設事業 |
40.0 |
当社の建設事業において施工協力している。 役員の兼務 1名 |
|
共栄機械工事㈱ |
|
神奈川県鎌倉市 |
50 |
建設事業 |
40.2 |
当社の建設事業において施工協力している。役員の兼務 1名 |
|
(その他の関係会社) |
|
|
|
|
|
|
|
住友林業㈱ |
(注)4 |
東京都千代田区 |
55,102 |
住宅事業 |
被所有 22.0 |
当社と資本業務提携契約を締結している。 役員の兼務 1名 |
(注) 1 議決権の所有割合の( )内は間接所有割合を内数で示している。
2 特定子会社に該当する。
3 売上高(連結会社相互間の内部売上高を除く。)の連結売上高に占める割合が10%を超えている。
|
主要な損益情報等 |
(1)売上高 |
45,079 |
百万円 |
|
|
(2)経常利益 |
1,884 |
|
|
|
(3)当期純利益 |
1,506 |
|
|
|
(4)純資産額 |
11,916 |
|
|
|
(5)総資産額 |
25,180 |
|
4 有価証券報告書を提出している。
(1)連結会社の状況
|
|
2025年3月31日現在 |
|
セグメントの名称 |
従業員数(人) |
|
土木事業 |
|
|
建築事業 |
|
|
子会社 |
|
|
全社(共通) |
|
|
合計 |
|
(注) 従業員数は就業人員数である。
(2)提出会社の状況
|
|
|
|
2025年3月31日現在 |
|
従業員数(人) |
平均年齢(歳) |
平均勤続年数(年) |
平均年間給与(円) |
|
|
|
|
|
|
セグメントの名称 |
従業員数(人) |
|
土木事業 |
|
|
建築事業 |
|
|
全社(共通) |
|
|
合計 |
|
(注) 1 従業員数は就業人員数である。
2 平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいる。
(3)労働組合の状況
労使関係について特に記載すべき事項はない。
(4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異
① 連結会社
|
当連結会計年度 |
||||
|
管理職に占める女性 労働者の割合(%) (注2) |
男性労働者の育児 休業取得率(%) (注3) |
労働者の男女の賃金の差異(%) (注2) |
||
|
全労働者 |
うち正規雇用労働者 |
うち非正規雇用労働者 |
||
|
6.0 |
88.1 |
71.3 |
70.4 |
53.5 |
(注) 1 「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号)第2条第5号に規定されている連結会社を対象としている。
2 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものである。
3 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第2号における育児休業等及び育児目的休暇の取得割合を算出したものである。なお、華熊営造(股)は対象外としている。
② 提出会社
a 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率
|
当事業年度 |
|
|
管理職に占める女性労働者の割合(%) (注1) |
男性労働者の育児休業取得率(%) (注2) |
|
|
|
(注) 1 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものである。
2 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第2号における育児休業等及び育児目的休暇の取得割合を算出したものである。
b 労働者の男女の賃金の差異
|
|
当事業年度 |
||||||||||
|
女性 |
男性 |
全体 |
労働者の男女の賃金の差異(%) |
||||||||
|
雇用形態 |
社員区分 |
人数 (人) |
平均 年齢 (歳) |
年間平均 給与 (円) |
人数 (人) |
平均 年齢 (歳) |
年間平均 給与 (円) |
人数 (人) |
平均 年齢 (歳) |
年間平均 給与 (円) |
|
|
全労働者 |
422 |
36.2 |
5,699,607 |
2,247 |
45.6 |
9,018,884 |
2,669 (注4) |
44.0 |
8,493,850 |
|
|
|
正規雇用 |
総合職 |
174 |
30.0 |
6,437,042 |
1,775 |
41.4 |
9,369,191 |
1,949 |
40.3 |
9,107,658 |
|
|
エリア職 (注2) |
199 |
39.0 |
5,407,993 |
9 |
39.4 |
7,186,184 |
208 |
39.0 |
5,488,207 |
|
|
|
非正規雇用 |
契約社員、 シニア 社員等 (注3) |
49 |
47.8 |
4,274,613 |
463 |
62.0 |
7,713,595 |
512 |
60.6 |
7,383,569 |
|
(注) 1 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものである。
2 住居の変更を伴う勤務地の変更がない者又は住居の変更を伴う勤務地の変更が支店管轄内に限定されている者。
3 契約社員は、1年以内の一定の期間を定めて雇い入れられた者であり、シニア社員は、会社を定年退職した者のうち、1年以内の一定期間を定めて雇い入れられた者。
4 年間の平均人数のため、「(2)提出会社の状況」の従業員数と異なっている。
5 労働者の男女の賃金の差異について、賃金制度上性別による差異はなく、階層・職位等が同等であれば男女間で賃金の差異は生じることはない。なお、差異の主な要因として、女性活躍推進の観点から女性の新卒採用強化に取り組み始めてから10年程経過しているものの、相対的に女性の勤続年数が短く、上位階層の女性の割合が低い水準にとどまっていることなどが挙げられる。
③ 連結子会社
|
当連結会計年度 |
|||||
|
名称 |
管理職に占める女性労働者の割合(%) (注1) |
男性労働者の育児休業取得率(%) (注2) |
労働者の男女の賃金の差異(%) (注1) |
||
|
全労働者 |
うち正規雇用 労働者 |
うち非正規雇用労働者 |
|||
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
(注) 1 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものである。
2 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第2号における育児休業等及び育児目的休暇の取得割合を算出したものである。
3 連結子会社のうち、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定による公表義務の対象ではない連結子会社は記載を省略している。
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
(1) 経営方針
熊谷組グループビジョンのもと持続的成長と企業価値向上を目指し、2024年5月に前「中期経営計画(2021~2023年度)」において掲げた「長期構想」を踏襲した『熊谷組グループ 中期経営計画(2024~2026年度)~持続的成長への新たな挑戦~』を策定した。「社会から求められる建設サービス業の担い手」という役割のもと、時代を問わず社会課題と真摯に向き合い、目指す社会の実現を図っていく。
■熊谷組グループビジョン〈熊谷組グループが目指す企業像〉
「高める、つくる、そして、支える。」
独自の現場力(優れた技術力を豊かな人間力で活かす現場力)を高め、独自の価値であるしあわせ品質(建造物の外形的・機能的な品質に加え、そこに集う人、そこを使う人が満足し続けられる品質)をつくり、時代を超えてお客様と社会を支え続ける。
■長期構想〈2030年以降を見据えた経営方針〉
社会から求められる建設サービス業の担い手として、限りある資源が循環し、ひと・社会・自然が豊かであり続ける社会の実現に貢献する。
■中期経営計画〈2024~2026年度の方針・戦略・目標〉
「持続的成長への新たな挑戦」をスローガンとして掲げ、これまでの取組みを継続させ「稼ぐ力」「選ばれる力」を徹底的に強化するとともに、周辺事業を加速させ、両利きの経営を目指す。
(2) 経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
我が国経済は、雇用・所得環境の改善や各種政策の効果が引き続き景気回復を支えることが期待される。しかし、米国の通商政策の影響による対米輸出依存度の高い地域における景気の下振れリスクや、ウクライナ情勢や中東地域情勢などの地政学的リスクが存在する。加えて、物価上昇の継続が消費者マインドの下振れ等を通じて個人消費に及ぼす影響なども、我が国の景気を下押しするリスクとなっている。なお、これらに端を発する金融資本市場の変動等の影響に一層注意する必要がある。
建設業界においては、民間企業の建設投資は、企業収益の改善等を背景に、増加基調が持続すると思われる。また、公共投資については、2025年度予算は前年度とほぼ同水準が確保され、自然災害の激甚化・頻発化に関する防災・減災、国土強靭化に関連する公共投資や老朽化した社会インフラの更新などの計画的な公共投資など、引き続き堅調に底堅く推移すると予想される。一方で、労働力不足が年々深刻化するなかでの労働時間規制への対応や、建設現場の安全管理の強化が求められており、また、環境に配慮した持続可能な工法や資材調達及びDXの推進など、業界全体での連携や技術革新が求められている。
なお、今般の米国の関税措置による当社グループの事業及び業績への影響については、米国との輸出入取引がないため、直接的な影響はない。間接的な影響としては、米国への輸出高が多い自動車、自動車部品、半導体製造装置等のメーカーの国内における設備投資が手控えられ、生産分野の受注高が減少することが考えられる。ただし一方で、第一次トランプ政権時から始まっていた米国と中国の関税対立を嫌った生産拠点の国内回帰の動きがさらに強まる可能性もあり、国内建設市場への影響は、現時点では予測困難な状況である。建設コスト面では、一部輸入資機材の価格上昇リスクはあるが、輸入先はアジア圏が中心であり、影響は軽微と判断している。また米国で展開している不動産投資については、市況の低迷等がリスクとなるが、現在の投資額から大きな影響はないものと考えている。何れにしても引き続き米国の関税措置による事業環境の変化を注視していく。
(3) 経営戦略
当社グループは2024年度を初年度とする「中期経営計画(2024~2026年度)」を策定した。今般策定した計画は、前「中期経営計画(2021~2023年度)」において掲げた「長期構想」を踏襲し、当社グループが目指す「限りある資源が循環し、ひと・社会・自然が豊かであり続ける社会」の実現に向けた取組みを示しており、「目指す将来の姿」として掲げていた2030年度の“連結経常利益500億円”を、改めて2035年度の長期構想上の目標とした。また、本計画のスローガンとして「持続的成長への新たな挑戦」を掲げ、①建設事業の強化、②周辺事業の加速、③経営基盤の充実を基本方針として、計画期間中の“連結経常利益300億円”を数値目標と定めた。
(4) ESG課題への取組み
熊谷組グループビジョンのもと事業活動を通じて社会課題解決に貢献するとともに持続的成長による企業価値向上を目指していくため、2019年4月に「ESG取組方針」を策定し、CO2排出抑制、再生可能エネルギー事業、都市再生事業、人財育成、ステークホルダーとの関係強化などに全社を挙げて取り組んでいる。
なお、2024年5月に重要課題(マテリアリティ)の改定と個別課題の見直しを行った。
「ESG取組方針」
■当社は、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)の視点から解決すべき重要課題(マテリアリティ)を特定し、持続可能な事業活動を追求していく。
■当社は、グループが保有する技術・経験・ノウハウを活用して新たな価値を創造し、SDGsに代表される社会課題の解決に貢献する事業活動を展開していく。
■当社は、事業活動を通じてステークホルダーとのコミュニケーションによる信頼関係の構築に努め、企業価値の向上を目指していく。
「ESG取組方針」のもと、持続可能な社会の形成と自らの持続的な成長のため、ステークホルダーにとって重要と考えられる課題をESG視点で特定し、事業活動を通して社会課題の解決(社会価値)と事業収益の拡大(経済価値)の双方を追求する。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
当社グループは長期的な成長を実現し、かつ持続可能な社会の形成に貢献していくため、ESGの視点を経営に取り入れており、事業活動を通して社会課題の解決(社会価値)と事業収益の拡大(経済価値)の双方を追求していくことをサステナビリティの基本方針としている。
(1)ガバナンス
当社は、サステナビリティ分野を含む経営上の重要事項を「経営会議」(議長:社長)にて審議している。また、経営会議を補佐する機関として「サステナビリティ推進委員会」(委員長:経営戦略本部長)を設置している。
「サステナビリティ推進委員会」は、事業本部長等により構成されており、ESG・SDGsの視点から、企業の長期的な成長・持続可能な社会形成に資する施策全般を検討する組織である。他の経営会議体と連携し、サステナビリティ分野を推進するための方針や制度の検討などを行っている。
取締役会では、上記プロセスについて報告を受け、取組状況の監督を行っている。
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(2)戦略
① 環境保全
当社グループは、限りある資源が循環し、ひと・社会・自然が豊かであり続ける社会を目指して、「持続可能な社会」の実現のために「気候変動リスクへの対応」「ゼロエミッションの達成」「ネイチャーポジティブの実現」などを個別課題に挙げ、目標を定めて取り組んでいる。
当社は、2010年に建設業界で初めて、エコ・ファースト企業に認定された。
当社グループとして2021年2月にRE100に加盟し、事業活動における使用電力を100%再生可能エネルギーとする取組みを進めており、温室効果ガス排出削減の中長期目標では、国際的な枠組みであるSBT認定を取得し、目標達成を目指している。
2023年1月には「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明し、気候関連のリスク及び機会の特定・評価と、事業活動に与える影響についてのシナリオ分析を行い、その結果を踏まえた情報を開示した。今後は、事業活動において重機や車両で使用する化石燃料をさらに削減し、再生可能エネルギーを積極的に導入するとともに、当社が提供する建物の大幅な省エネに寄与するZEBの普及促進、再エネ発電事業に取り組むなど、脱炭素化をさらに加速していく。
2024年度は、「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)」提言への賛同を表明した。TNFDv1.0を参照し、TNFDの枠組みであるLEAPアプローチを実施することで自然環境が事業活動に与えるリスク・機会を分析した。
さらに環境の取組みに注力するため、これまでの「安全衛生品質環境方針」を「環境方針」として改定し、活動指針を新たに掲げた。情報開示において国際的な環境非営利団体CDPより、気候変動部門において最高評価である「Aリスト」に選定され、同じく水セキュリティ部門でも「A-」評価を受けた。
なお、具体的な取組みとして、「カーボンニュートラル対策ワーキング」を立ち上げ、カーボンニュートラルの達成に向けた施策の検討を行い、ロードマップを策定した。
サーキュラーエコノミー分野では、「3Rの推進」「プラスチックごみの分別徹底」「グリーン購入の推進」に取り組んだ。
結果として、2024年度に重大な環境事故は発生していない。
1 気候変動リスクへの対応
気候変動に伴う「リスク」には、GHG排出に関する規制の強化等の「移行」に起因するものと、自然災害の頻発・激甚化等の「物理的」な変化に起因するものが考えられる。一方で気候変動に伴う「機会」として、新たな市場における需要の増加等が考えられる。当社では短期(概ね3年以内)・中期(概ね3年超~10年以内)・長期(概ね10年超)の3つの時間軸から気候変動関連の「リスク」(「移行」と「物理的」に分類)と「機会」を特定した。
2 生物多様性への対応
国内土木事業、国内建築事業のうち直接操業5拠点を対象にLEAPアプローチによる調査、分析を実施した。自然関連課題がある地域を特定するために、日本国内において地域に偏りがなく、かつ周辺の自然環境が異なると考えられる拠点を選定した。
Locate
LocateのフェーズではIBATとAqueductを使用し、各拠点周辺の自然との接点や水ストレスを把握した。
Evaluate
ENCOREを使用し、国内土木事業・国外建築事業のバリューチェーンのプロセスにおける自然への依存とインパクトを把握した。
その結果、依存度については、建築事業での川上における木材採取のプロセスで高く、インパクト(影響)については、土木事業、建築事業ともに直接操業における施工プロセスで大きいことが確認された。(2024年5月実施)
② 人的資本
a 基本的な考え方
当社グループは、人財を「資本」と捉え、その能力を最大限に引き出すことが中長期的な企業価値の向上につながるという考え方に基づき、持続的な成長の源泉であり、事業活動の核となる人財への投資を拡充し、量と質の両面で人財価値の最大化を図り、企業価値の向上に寄与するための人財基盤を構築する。
b 人財戦略
「熊谷組グループ 中期経営計画(2024~2026年度)」において、60億円規模の人財投資を計画している。持続可能な人員体制を構築するための採用活動、次世代を見据えた社員のスキルアップやキャリアパスの充実を支援するための人財育成、社員のモチベーションアップのための報酬水準の向上、社員が安心して働くことができる職場環境の整備などに注力し、これらの取組みを通じて、社員の意欲や誇り、自信を高め、従業員エンゲージメントの向上、組織力の向上、そして人財価値の最大化を図る。
c 人財採用について
組織の活性化を図り、世代間の人員構成のバランスを整えるとともに、社員の高齢化による離職リスクに備えるため、ダイバーシティを意識した採用活動を行っている。
事業環境の変化や業績の見通しに基づいて、5年後・10年後の人員数・職種構成・年齢分布を考慮した採用計画を策定し、技術力及び競争力の維持・向上を図っている。
新卒採用においては、入社後のミスマッチを防ぐため、インターンシップ等の就業体験や現場見学会をはじめ、社員との面談や若手社員との座談会等を積極的に行い、将来を担う人財の獲得に注力している。
また、キャリア採用においては、事業戦略に基づき、注力すべき分野に必要な専門スキルを備えている即戦力人財の確保に努めている。なお、一度退職した元社員を、本人の希望により再雇用する「ジョブリターン制度」を設けている。
d 人財育成について
社員が自らの業務に必要な知識を蓄え、技術を磨き、事業環境の変化に柔軟に対応できる能力を身につけることは、キャリア形成において不可欠である。育成指針となる人財育成計画のもと、「自らを高め、未来をつくり、人を支える」、そのような人財に成長することを目指して様々な取組みを実施している。
当社の人財育成は、自ら目標を定め、計画をたて、強い意志で自己の能力開発に努める自己啓発を前提とするものとし、社員自らの能力開発に対し、その効果を高め会社の目標と連動させるべく、会社が行う人財育成の基本方策を次の4つと定めている。
ⅰ ジョブローテーション
複数の職場や異なった職務を経験することで、幅広い知識と考え方を修得させることを目的にジョブローテーションを行っている。社員のキャリアと将来的に希望する職務や、社員一人ひとりの適性を踏まえて、計画的、段階的な異動により、キャリアパスを形成している。
ⅱ OJT
日常の業務を通して、上司及び先輩が、部下及び後輩に対し、職務遂行に必要な知識、技能、態度等を意識的、計画的、体系的、継続的に指導・育成していく。「目標設定」「達成度確認」の面談を実施するとともに、求める人財像に即したスキルの習得状況チェックを行っている。
ⅲ 集合研修
OJTの補完と専門知識の修得、自己啓発の意欲を向上させることを目的として、教育訓練や研修を計画的に行っている。社員が修得すべきスキルのガイドラインを定め、専門知識を高めるための各分野別研修と階層別研修を年次毎に実施している。目的に合わせて集合研修とオンライン研修を使い分け、高い受講率を維持しながら効果的な研修を実施している。社員が研修を受講する際には、本人への案内とは別に、あらかじめ所属の本部長・支店長及び上司に通知し、研修に参加しやすい雰囲気づくりに取り組んでいる。
ⅳ 自己啓発支援
技術士、一級建築士などの公的資格の取得を奨励し、受験者を対象に補講や模試を実施し、社員のスキルアップにつながる自己啓発を支援、促進している。
なお、社員は上司と期首に目標設定面談、中間期に進捗確認面談、期末に自己評価確認面談、さらに評価結果についてのフィードバック面談を実施する。また、将来の職場配置や能力開発の希望は「キャリアプラン申告」として、社内の申請システムからいつでも上司を通さず、人事部へ提出することが可能な仕組みがある。
e ダイバーシティ企業として
当社は、性別、年齢、国籍、性自認・性的指向(LGBTQ等)、障がいの有無等にかかわらず、全ての人が活き活きと働くことができる職場環境の実現に取組み、ダイバーシティ、働き方改革の推進による業績の向上を目指している。
当社は、管理本部長を委員長として各本部長で構成する「ダイバーシティ推進委員会」を設置し、本部・支店・グループ会社よりダイバーシティ推進担当者を選任して、推進体制を構築している。また、各部門の代表者により制度・施策を検討する「働き方改革ワーキング」を設置し、全社横断型でダイバーシティ及び働き方改革を推進している。
当社は、女性活躍推進法に基づく第四次行動計画(2023年1月~ 2026年3月)を策定した。定量的な目標として①新卒採用者に占める女性割合を25%以上、②新任女性管理職比率を新任管理職の7%以上、③子の出生に伴う男性の休暇取得率70%以上の3点を掲げている。
ダイバーシティ推進後、10年間で女性管理職数は11名から85名と7.7倍、女性技術者も63名から161名と2.6倍になった。男性の両立支援制度の利用も増加している。長時間労働は改善され、月平均時間外労働は、社員一人当たり33.3時間減少する成果を上げた。
障がい者雇用に関して、障害者基本法で定める「障害者週間」(毎年12月3日~12月9日)の期間を拡大し、2021年度から毎年12月を当社の「障がい者月間」として制定した。「障がい者月間」では、障がい者への理解を深めようというテーマでeラーニングを実施している。また、特別支援学校生徒のインターンシップ受入れの実施、本社ビルのバリアフリー化を進め、社員通用口に自動ドアやスロープを設置し、エレベーターやトイレの改修を行った。2024年度は、各本部に1名ずつ障がいを持つ社員を採用し、業務に慣れるまで専門支援機関の相談者との定期的な面談を行うなど、定着に向けたフォロー体制に力を入れた。
2024年4月に同性パートナーや事実婚の社員も社内制度を利用できるよう「ファミリーシップ制度」を導入した。「同性パートナー」及び「事実婚のパートナー」(以下、パートナー)に配偶者(法律上の婚姻関係にあるもの)と同等の福利厚生や規程を適用し、会社が認めたパートナーの子を社内制度上「家族」として認めている。また、LGBTQ等に関するガイドラインを策定し、LGBTQ等に関する基礎知識をはじめ、SOGIハラスメントやアウティング防止から相談対応等まで分かりやすくまとめ、社員に周知している。
定年再雇用については、定年退職後65歳までの継続雇用制度を運用し、働く意欲のある定年退職者の雇用維持に努めている。2025年4月現在、在籍する定年再雇用者は295名で、豊富な経験や知識、卓越した技術を活かして活躍している。
f 働き方改革の推進について
当社は、これまで働き方改革として、テレワーク・時差出勤・フレックスタイムなどの制度を導入、業務プロセスの見直し・DXの推進など生産性の向上や業務の効率化に関わる施策、また意識改革に努めてきた。2024年より建設業に時間外労働の上限規制が適用されることを受けて、当社においては、長時間労働の要因は個人だけでは対応できない事由も多いことから、会社及び組織(チーム)として取組みを強化することを盛り込んだ、「働き方改革アクションプラン2024」を制定した。
アクションプランには、土木・建築事業部門及び内勤部門の組織の取組方針を加え、さらにチーム力を高めるために各本部長・各支店長や各作業所長・各部署長の取組方針を掲げ全社員で取り組んできたが、一部の部署や社員に対して業務が集中する傾向が見られたことから、「働き方改革アクションプラン2025」では業務が集中する可能性がある場合には組織的に支援する旨を追記している。今後もさらなる時間外労働の削減と社員のワークライフバランス向上に向けて、働き方改革に取り組む。
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〈働き方改革アクションプラン2025(抜粋)〉 |
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取組みプロセス |
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社長方針→全社および事業部門の取組方針→部門(各本部・支店/部署・作業所)の取組方針→個人の行動計画 |
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<全社および事業部門の取組方針> |
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・業務量が集中する社員に対する組織的な支援とモニタリングを実施する |
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・工期がひっ迫する可能性がある現場に対し組織的な支援を実施する |
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・営業段階から週休2日の工程と工事規模に合わせた人員配置を計画し、4週8閉所相当の受注を徹底する |
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・内勤部門にて現場支援部署(担当者)を配置し、作業所業務の一部を支援部署で担うことにより業務の平準化を実施する |
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・全社的なICTツールの利用推進と活用支援を強化する |
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<個人の行動計画> |
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・週休2日・計画的な休日の取得を徹底する |
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・目標設定において、各部署で上限規制の遵守につながる業務改善・工夫等を設定する |
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・全員が自身の労働時間を確実に把握する |
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・上司は部下個人とともに部署・作業所単位での労働時間の状況についても把握する |
g 従業員エンゲージメントについて
当社は、社員の会社への愛着や仕事への情熱の度合いを測るため、2023年度よりエンゲージメント調査を開始した。2024年度においては回答率が100%となり、全社員の思いを可視化することができた。調査結果を様々な切り口で分析し、全社的に取り組む施策の立案に活かすとともに、各部門においても効果的な施策を検討し、課題の解決を継続的に行っていくことで、社員の貢献意欲を高め、組織力の向上につなげる。
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<エンゲージメント向上にむけた主な取組み> |
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・中期経営計画に関する意見交換会の開催 |
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・処遇改善に関する施策の実施 |
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・管理職と若手社員による定期的なディスカッションの実施 |
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・部署間・世代間のコミュニケーションの活性化に寄与する親睦イベントの実施 |
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・ジョブローテーションによる業務の標準化・ナレッジの共有 |
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・QCDSEパトロールを利用した現場社員との面談の実施 |
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・外部講師によるエンゲージメント向上に関する講習会の開催 |
h 健康経営について
当社は、社員の健康を何よりの経営資源と捉え、本社人事部内に健康推進室を設置し、全支店の産業医並びに健康推進担当者と連携して、社員の健康を全面的にサポートする体制を整えている。また、社員健康推進計画を年度毎に策定し、PDCAサイクルによるスパイラルアップを図った健康推進活動を行っている。当社は優良な健康経営を実践している法人として、経済産業省が創設した「健康経営優良法人」の認定を9年連続で取得している。
・ハイリスク者への取組み
社員の健康診断結果は全て産業医による入念なチェックが行われ、フォローが必要な社員には受診や面談の勧奨、継続的なサポートを行っている。また、長時間労働による脳・心臓疾患やメンタルヘルス不調を防止するため、対象者への疲労蓄積度チェックと希望者への産業医面談を毎月欠かさず行っている。その他にも特殊な労働環境下にある職場に対しては、産業保健専門職による訪問や面談など、特別なフォローアップを実施している。
・メンタルヘルスに関する取組み
ストレスチェック、社員研修(セルフケア&ラインケア)、職場復帰支援など、一次予防から三次予防まで幅広い活動を行っている。
休職においては、会社(産業医)と主治医が緊密に連携し、認識のずれを解消することで円滑な復職を支援する体制を構築している。その一環として「休業と復職に関するハンドブック」を当該社員に配付し、必要な手続きや給与等を明確に伝えている。休職中の社員へは月一度、会社(人事・上司・産業医)が連絡を取り、復職基準や期間、給与に関する情報提供と状況確認を行っている。復職に際しては、本人からの意思表示と主治医による当社指定の診断書提出を必須とし、事前に復職制度を主治医へ共有することで、復職基準への理解を促している。
さらに、経済的な不安を軽減するGLTD(団体長期障害所得補償保険)制度を導入。これにより、休職期間中の所得を補償し、社員の経済的な安定に貢献している。
③ 人権の尊重
当社グループは、全ての役職員がお互いの多様性を認め合い、事業に関わる全ての人の人権を尊重している。
当社が行動の原点としている「熊谷組行動指針(1998年4月)」を踏まえて、2023年1月に熊谷組グループ人権方針(以下、本方針)を策定した。当社グループの全ての役職員の人権を考慮するほか、ビジネスパートナー、サプライヤー及びその他の関係者に対して本方針の支持を求め、人権を尊重し、侵害しないように求めている。
熊谷組グループ人権方針(抜粋)
1.適用範囲
熊谷組グループ(熊谷組と連結子会社7社(国内6社、海外1社))を対象とし、すべての役職員に適用されます。また熊谷組グループのビジネスパートナー、サプライヤーおよびその他の関係者に対して本方針の支持を求め、人権を尊重し、侵害しないように求めます。
2.規範や法令の尊重・遵守
世界のすべての人々が享受すべき基本的人権について規定した人権に関する国際規範を支持、尊重します。また事業を行う国や地域で適用される法令を遵守し、各国や地域の法令が国際的な規範と異なる場合は、より高い基準を優先します。
3.企業活動全体を通じた人権の尊重
事業活動を通じて起こりえる人権への負の影響を防止し、人権尊重の責任を果たしていきます。
4.人権デューデリジェンスの実施
人権デューデリジェンスの仕組みを構築し、これを継続的に実施します。
5.救済、是正
人権に対する負の影響を引き起こした場合は、その是正・救済に取り組みます。
6.教育、研修
すべての役職員が本方針について十分な理解を得られるよう適切な教育、研修を実施します。
7.対話、協議
事業活動が人権に及ぼす影響について関連するステークホルダーとの対話と協議を継続して行います。
8.情報開示
人権尊重の取組について、定期的な開示を行います。
<人権デューデリジェンス>
当社では、熊谷組グループの事業領域を対象として、「ビジネスと人権に関する指導原則」や「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」などを参考に、人権課題を認識、整理した。潜在的な人権リスクが高い事業領域を特定し、整理した人権課題を、自社及びサプライチェーンにおける発生可能性と深刻度の指標によって評価・マッピングした。自社における人権リスクは、ESG取組方針において重要課題(マテリアリティ)及び個別課題を特定した上で、様々な取組みを進めている。サプライチェーンについては、当社事業において特にリスクの高い人権課題を優先的に取り組むべき重点課題として特定した。
重点課題
・過剰・不当な労働時間 ・賃金の不足・未払、生活資金
・パワーハラスメント ・外国人労働者の権利
救済へのアクセス
当社は、全社員を含む全てのステークホルダーがいつでも相談・通報ができる窓口を社内外に複数設置している。また、内部通報者に対する不利益な取扱いを禁止するとともに、匿名による通報を許容している。
<社内への教育>
当社グループでは全社員に向けてハラスメント防止に関するeラーニングを実施している。①パワーハラスメント、②セクシュアルハラスメント、③妊娠・出産・育児休業・介護休業に関するハラスメント、④ハラスメントの対処方法、⑤確認テストという内容で、グループ全体で90%の社員が受講している。また、2024年度は「パワーハラスメント防止研修」を当社の管理職層を対象に計15回開催している。ハラスメントの防止を必須の項目と位置付けており、人権週間におけるメールマガジンの配信など、社内教育を行っている。
④ ステークホルダーとの関係強化
当社は、ステークホルダーとより良好な関係を築くため、2025年3月に「マルチステークホルダー方針」を改定した。企業経営において、株主にとどまらず、従業員、取引先、顧客、債権者、地域社会をはじめとする多様なステークホルダーとの価値協創が重要になっていると認識している。
a お客様との関わり
当社は、1998年にCS推進室(現サステナビリティ推進部CS推進グループ)を、翌年全支店に「お客さま相談室」を設置した。“しあわせ品質”をお届けできるように組織連携を図り、お客様からの評価の向上に努めている。当社のCS(Customer Satisfaction)機能は、本社では経営戦略本部に置かれており、お客様の声が直接経営に反映されるよう組織設計をしている。また、本社・支店CS部門の社員全員を対象とした研修を2008年より毎年実施し、プロフェッショナルな人財育成に努めている。
社員に熊谷組のCS意識を浸透させ、「全員参加のCS」を実現するために、CSの取組みに対する社内表彰や講演会などを実施している。ここ数年では、顧客ロイヤルティの獲得のため、CX(Customer Experience)意識の社内浸透に取り組んでいる。
b 従業員との関わり
当社では、社員同士の親睦と福祉の増進及び会社と社員の意思の疎通を図り、会社の発展に寄与することを目的として、職員会を設置している。全社員から会社への要望事項を募り、職員会の支部代表者と社長が意見を交わす場を設ける等の活動を行っている。その成果として、社員からの要望が多かった福利厚生の項目に関する規程の改正につながった。
2024年度の施策としては、社内コミュニケーションの活性化やエンゲージメント向上を目的に、職員会主催のeスポーツ大会を開催した。本社と全支店、自宅や寮等を中継し、社員とその家族ら約400名がオンラインゲームを通じて親睦を深めた。開催後の意見交換会では実施アンケートをもとに今後の取組みについての新規施策案や方向性を話し合った。
c 株主・投資家との関わり
当社は、株主・投資家との建設的な対話に関する方針を含む「ディスクロージャー・ポリシー」(2024年3月制定)に基づき、経営及び事業活動等に関する情報を適時、適切かつ公平に開示するとともに、株主・投資家をはじめとしたステークホルダーとの建設的な対話に努めている。また、フェア・ディスクロージャーの観点から、決算情報及び適時開示情報の英文同時開示を実施している。2024年度は、オンラインツールを活用した国内外の株主・投資家との個別ミーティング・電話会議やスモールミーティング、決算説明会の開催や投資家カンファレンスへの参加など様々な手段で対話を実施した。また、株主・投資家との建設的な対話を促進するための体制整備・取組みとして、IR専任部署を強化するなど社内リソースの適切配分を実施し、その実施状況等についてコーポレートサイト並びにコーポレート・ガバナンス報告書にて開示した。
ESG取組方針の個別課題のひとつに「投資家との積極的対話」を掲げ、業績動向、経営戦略、株主還元などのほか、環境・社会課題やガバナンスへの取組み等について積極的に意見交換を行っている。対話を通じて把握した株主・投資家の意見や要望等については、取締役会メンバーや関係部門にフィードバックすることにより、株主還元、資本政策、投資戦略などの参考とし、企業価値向上に活かしている。
今後も株主・投資家の皆様に当社グループの持続的成長の確度をご理解いただき、適正な株主価値が形成されるよう、引き続き積極的にIR活動を推進していく。
d パートナー企業・取引先との関わり
当社は、健全な事業活動を推進するために「調達方針」及び「調達方針ガイドライン」を策定している。調達活動におけるガバナンスやコンプライアンスの向上を目指し、パートナー企業、取引先とともにバリューチェーン全体の付加価値向上に取り組んでいる。
専門工事会社を中心とした施工協力業者で組織された「熊栄協力会」は当社の協力会社872社で構成されている。「熊谷組と熊栄協力会会員相互が良きパートナーとして連携協力しながら、SDGsを意識した
QCDSE全般にわたり活動し、良好な職場環境づくりを推進する」という方針のもと活動している。2024年度より全国で青年部会を発足し、次世代の育成にも注力している。また、現場の要である技能者の技能と経験に応じ適正な評価や処遇を受けられるように、「建設キャリアアップシステム」の導入を推進している。
当社及び協力会社の安全・品質の向上、業務・作業の効率化、低コスト化などを目的として、「業務改善・創意工夫提案制度」がある。業務の改善、創意工夫、アイデアの提案を当社社員、協力会社社員から広く募集し、2024年度は81件の応募があった。優秀な提案は表彰するとともに当社と協力会社共通のデータベースに登録し、各本部・支店、作業所で採用され、安全、品質、環境、生産性の向上に役立てている。
e 地域社会との関わり
当社の社会貢献活動のプラットフォーム「熊谷組スマイルプロジェクト」は、マッチングギフトの仕組みを応用している。社会貢献活動に参加した社員数を集計し、年度ごとの累計人数に応じた社会貢献費を会社が拠出するものである。2024年度は全国147件の活動で延べ2,312名の社員が参加し、2024年度の社会貢献費として2,797万円を拠出した。拠出金は、当社の国際社会貢献活動であるKUMAGAI STAR PROJECT、自然災害発生時の義援金、社会課題に取り組む団体への支援などに充当している。
また、2025年に起きたミャンマー地震による被災地を支援するため、NPO等を通じて寄付を行った。
当社は、以下の団体を支援している。
・公益財団法人 日本対がん協会 ・認定NPO法人 全国こども食堂支援センター・むすびえ
・NPO法人 子育てひろば全国連絡協議会 ・一般社団法人 日本障がい者サッカー連盟
・公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン
(3)リスク管理
当社は、事業活動に伴うリスクの把握・低減及び機会の最大化に努めており、重要な事項については、個別案件毎にリスク・機会を抽出・評価のうえ、経営会議・取締役会にて意思決定を行っている。各事業部門においては、業務プロセスに内在するリスク・機会を抽出・評価のうえ、必要な対応策を検討し年度計画に反映している。この取組みの状況については四半期毎にモニタリングを実施し、経営会議体にて報告している。気候変動を含む環境リスク・機会に関しては、「サステナビリティ推進委員会」における報告・議論を経て、経営会議・取締役会にて報告・審議している。
(4)指標及び目標
① 気候変動
当社は、「(2)戦略 ① 環境保全」において記載した、気候変動リスクへの対応について、温室効果ガスの削減目標(スコープ1・2・3)を設定している。2050年までにカーボンニュートラルを達成することを目指し、2030年に向けた具体的な削減目標を定めた。スコープ1、2は2020年比で42%、スコープ3で25%削減する予定である。
熊谷組単体の温室効果ガス削減目標
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基準年2020年(2019年度実績) |
2023年度実績 |
2030年目標 |
2050年目標 |
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スコープ1+2 |
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2020年比 42%削減 |
カーボンニュートラル |
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スコープ3 |
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2020年比 25%削減 |
カーボンニュートラル |
※2024年度実績は現在算定中
2030年CO2排出削減目標達成に向けた優先実施施策
② 人的資本
当社は「(2)戦略 ② 人的資本」において記載した、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いている。当該指標に関する目標及び実績は以下のとおりである。
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事業における取組み・具体的行動 |
指標 |
3か年の目標 (2024年度~2026年度) |
2024年度の実績 |
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新卒採用活動 |
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各年度の検討 |
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従業員エンゲージメントの 向上 |
エンゲージメントレーティング (注)2 |
レーティング「BB」 |
B |
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国家資格の取得支援 |
一級土木施工管理技士 保有率 |
90%以上(各年度) |
92.8% |
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一級建築施工管理技士 保有率 |
1%以上/年UP |
(注)4 △0.3% |
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一級建築士保有率 |
1%以上/年UP |
(注)5 △0.8% |
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ICTの標準化による現場 管理の効率化 |
新規現場導入率 |
100%(各年度) |
98.7% |
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仕事とプライベートの両立等 |
休日取得 |
4週8休(作業所)(各年度) |
83.5% |
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業務の効率化・平準化への 取組み |
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30時間以下(各年度) |
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女性活躍推進行動計画 |
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7%以上 |
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子の出生に伴う男性の 休暇取得率 |
70%以上 |
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現場公開による担い手確保 |
現場・職場見学会の開催 |
100件以上(各年度) |
土木:105件 建築:227件 |
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従業員の健康管理 |
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100%(各年度) |
(注)3
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(注) 1 人的資本に関する「目標及び実績」は、当社グループ各社で会社規模や事業形態が異なるため、各社において実態に即した指標を設定している。そのため当該「指標及び目標」は単体の計数としている。
2 株式会社リンクアンドモチベーション「モチベーションクラウド」
3 2024年度の実績は現在集計中のため記載していない。
4 2023年度の保有率は87.2%、2024年度の保有率は86.9%である。
5 2023年度の保有率は56.0%、2024年度の保有率は55.2%である。
1 リスク管理の体制
当社は、業務遂行上のリスク発生の防止及び低減のために、2025年4月に社長を委員長とするリスクマネジメント委員会を設立した。本委員会は、リスクに対する統括責任の明確化を図り、各部門が抱えるリスク及びその対策を一元管理することを目的としており、企業活動における全社的なリスクマネジメントの強化を推進するものである。主な活動内容としては、事業における潜在的リスクに対する予防的措置や、顕在化したリスクへの対応策の検討及び指示を行うことや、モニタリング等に基づくリスクマネジメント報告の確認を通じて、リスクの把握と管理を徹底することである。
2 主要なリスク
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりである。ただし、当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、現時点では重要性が高くないと判断したリスクもあり、予見し難いリスクも存在し得る。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
(1) 建設投資の動向
当社グループの建設事業は、官公庁及び民間企業が主な顧客であるが、官公庁は財政状況や施策等、民間企業は経済環境や消費動向等により中長期的に建設投資の動向が変動する。我が国の建設投資は2011年度以降、増加傾向で推移しているが、縮小に向かった場合は、状況により競合他社との受注競争が激化し、受注高が減少するほか工事採算が低下する可能性がある。
当社グループは、建設市場の質的・量的変化に柔軟に対応できる企業体質を確立すべく、長期構想“2030年以降を見据えた経営方針”を定めるとともに、本方針に基づき策定した中期経営計画における各種施策に取り組んでいる。なお、長期構想及び中期経営計画については、「第2 事業の状況」の「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりである。
(2) 建設資材市況及び労務単価の変動
建設工事請負契約にあたり、建設資材及び労務単価等について適正価格での契約に努めているが、契約締結後に建設資材市況や労務単価が高騰する場合がある。当該コスト増加分について、公共工事においては契約条項により一定の工事代金の変更を請求できるが、民間工事においては発注者との協議となり、状況によりコスト増加に見合う工事代金の追加を獲得できない可能性がある。このため市況等の上昇局面では、予め単価上昇を織り込んで工事価格を見積もることや資材の調達を早期に行うなどの対応が必要となる。
(3) 建設技能労働者の不足
建設業界における技能労働者は、高齢化が進むとともに若年層の入職率・定着率が伸びず、減少傾向にある。中長期的に高齢者の大量離職が見込まれるなか、技術継承へ向けた将来の担い手の確保・育成が喫緊の課題となっている。今後、技能労働者の減少がさらに進んだ場合、他社との人財獲得競争が激化し労務費が高騰するとともに、人員を確保できないことに伴う施工能力の縮小により、受注高が減少する可能性がある。
当社グループは、専門工事会社を中心とした施工協力業者で組織された「熊栄協力会」と連携し、安定した施工体制を確立するとともに、技能労働者不足の解消及び優秀な人財の確保に向けた取組みを行っている。現在の建設業界の命題である「技能労働者給与水準の全産業労働者平均までの向上」を目指した労務単価の引上げを軸に、手当の支給を含む優良技能労務者認定制度の運用、能力や経験に応じた処遇を受けられる環境を整備するための建設キャリアアップシステムの導入などを進めているほか、施工現場における完全週休二日への移行といった処遇改善施策を推進している。
(4) 人財の確保
建設業界では、建設投資が増加基調となっている一方で、建設技術者の減少が課題となっており、当社グループにおいても、収益及び品質の向上のために優れた人財の確保と育成が急務であると認識している。その対応として、新卒者に加え施工管理経験がある人財の中途採用をジョブ・リターン制度の整備等により拡大するとともに、ダイバーシティ推進の取組みもあり、高齢者、女性及び外国人等を積極的に活用している。
また、建設工事の入札や施工管理においては、担当技術者に工種毎の施工経験や特定資格の保有を求められることがあり、適任者が不足した場合は受注機会を逸し、受注高の減少につながる可能性がある。すでに一部の工種についてその発注時期によっては担当者を確保出来ず、入札参加を断念するケースも発生している。このため将来的な案件を見据え、技術者に計画的に多様な施工経験を積ませているほか、分野別や階層別に社内研修を実施し、専門知識を修得させている。また、技術士や一級建築士等の公的資格について受験者を対象に社内講習や模試を実施するなど資格取得の支援、促進に努めている。
(5) 海外における事業展開
当社グループの海外事業は、現在アジア諸国において建設事業を中心に展開している。海外における事業は、進出国において政治、経済、社会情勢の著しい混乱が生じた場合や法規制が強化された場合等は、事業が遅延する又は遂行不能に陥る可能性がある。また、未成熟な法制度、社会制度、文化や商慣習の違い等により正当な工事代金の請求及び回収が困難となる場合や想定外のコストを負担するリスクが内在している。このため、当社グループは、各々の情勢等に精通した国・地域にのみ進出することとし、当社が請け負う建設工事については、原則として我が国ODA(政府開発援助)や日系企業による事業に限定している。
なお、海外事業においては、事業拠点の現地通貨や米ドル等による外貨建取引のほか、外貨建の資産、負債、収益、費用を一定の基準により円換算する。現在の当社グループの海外事業の規模では為替レートの変動による影響は小さいが、取引の収入と支出の通貨構成や入出金のタイミングを概ね一致させること、又は為替予約取引等を行うことにより為替リスクを軽減している。
(6) 建設事業における自然条件及び自然災害の影響
工事施工において、地質や地盤、天候等の自然条件に特殊性がある場合、事前にそれを把握できなかったことにより工法の変更や手戻りなどが生じ工事コストが増加する可能性がある。また、事業の特性として施工現場が地震や台風・豪雨等の自然災害に見舞われた場合、工事が中断するほか復旧に多大なコストと時間を要するなど著しい損害を被るおそれがある。
当社グループは、事前調査、工法検討等を徹底し、自然条件面における予期せぬ事象等により工事の採算が低下しないよう努めるとともに、自然災害に対しては、各種保険に加入するなど損失を極小化するよう対策を講じている。
(7) パンデミック
感染症が世界的に大流行した場合、工事中断や資機材の納入が滞ること等に伴う工程遅延や感染症対策に係るコストの発生などにより採算が低下することが見込まれ、また、民間企業を中心に設備投資が停滞することにより受注高が減少する可能性がある。
(8) 工事の施工不良
工事施工にあたっては、建設物の仕様や施工条件が多岐にわたり、また、想定を超えて外的要素から影響を受けることがある。このような状況のもと、施工不良の発生可能性を完全に排除することは困難であるため、是正費用に充てるべく一定金額を引当計上している。しかし、万が一、施工した建設物に重大な施工不良があった場合、引当額を上回る多大な修復費用や損害賠償責任が生じる可能性がある。また、当社グループの社会的信用が低下し、受注高の減少につながるおそれがある。
当社グループは、建設物の設計・施工にあたり、品質マネジメントシステムの適切な運用及び継続的な改善により、高品質な製品・サービスの提供に努めている。
(9) 建設事業における労働災害及び事故
建設事業は、作業内容や作業環境などの特性により、他の産業と比較して重篤度の高い労働災害が発生するおそれがあり、また、第三者に対し損害を与える事故が発生する可能性が高い。万が一、重大な労働災害もしくは事故が発生した場合、多大な補償費等の負担が生じるとともに、社会的信用が低下し、関係諸官庁等の工事入札において指名停止になるなど、受注高の減少につながる可能性がある。
当社グループは、労働災害及び事故への対策を最優先課題と位置付け、安全教育の実施、日常的な安全点検、施工部門と安全部門との連携強化、入念な施工計画の策定といった安全衛生マネジメントシステムの厳格な運用により労働災害及び事故の撲滅に努めている。
(10) 固定資産及び投資有価証券の減損
当社グループは、都市再生・再開発事業といった新事業創出への取組みの一環として不動産の取得を進めているが、経営環境の著しい悪化などにより保有資産の収益性が低下又は市場価格が下落した場合、固定資産の減損損失が発生するおそれがある。また、収益機会の獲得や関係強化を図るため顧客や提携先等の有価証券を保有しているが、投資先の業績が悪化又は市場価格が下落した場合も同様に減損損失が発生する可能性がある。
当社は、各種資産の評価方法と投融資活動に係るリスクを定量的に管理するための投融資基準を定め、財政的影響が大きい案件については、経営会議及び取締役会において経営指標の見通しや財務規律の維持の観点を踏まえて取得の検討を行っている。取得後は、採算性検証のためのモニタリングによって採算悪化が見込まれ、将来的な収益率等が目標とする基準値を上回る可能性が極めて低いと判断された場合、また有価証券については、保有が当社グループの事業遂行上有用ではないと判断された場合は売却等を検討するなど、損失の最小化に努めている。
(11) 顧客及び取引先の信用
建設事業において、工事着工後に発注者が信用不安や経営破綻などに陥った場合、売掛金や受取手形などの債権が回収不能となるおそれがある。また、施工協力業者等の取引先が同様な状況となった場合、工程が遅延し工事コストが増加する可能性がある。
当社グループは、顧客の信用については、会議体及び専門部署により、顧客の与信判定、契約内容の審査、債権保全方法の検討等を実施している。また、債権管理規程、工事契約締結に向けた与信限度額設定基準等の社内規程を整備し、与信管理の徹底に努めている。取引先の信用については、新規に取引を開始する場合、直近の財務諸表をもとに審査を実施している。また、取引高が一定の規模以上の施工協力業者に対しては、財務面の評価に加え、ヒアリング等による経営全般の評価を年1回実施している。
(12) コンプライアンス違反
建設事業の運営に際しては、建設業法、独占禁止法等、様々な法律により規制を受けている。これらの法的規制に違反した場合や社会的要請に反した行動等により、法令等による刑事罰、行政処分、損害賠償責任等が課せられるほか、顧客、株主、取引先等の会社を取り巻くステークホルダーからの信用失墜につながる。
当社グループではこれらのリスクを払拭するため、「行動指針」「コンプライアンス行動ルール」をはじめとする各種規程を定め、内部機能を中心にコンプライアンス体制を構築するとともに、経営から独立した組織として「法遵守監査委員会」を設け、外部有識者による評価・勧告体制を執っている。また、このほかコンプライアンス研修等の教育を通じ、全役職員に対するコンプライアンス意識の向上、周知徹底を図っている。
(13) 環境問題
世界的な人口増加と産業活動の急拡大によって生じる資源の枯渇や地球温暖化等の環境問題は、世界共通の解決すべき社会課題として認識されている。社会資本の整備を担う建設業においては、工事施工時等に排出される
CO2をはじめ建設廃棄物や建設発生土などによる環境への負荷を社会的責務として積極的に削減する必要があり、そのためには継続的に一定の対策費用が発生する。また、工事施工にあたっては様々な環境関連法令等の規制を受けているが、土壌汚染や水質汚染等の環境事故が発生した場合は、復旧費用や損害賠償金、補償金等の負担が生じるほか、当社グループの社会的信用が低下し、受注高の減少につながるおそれがある。
当社では、環境マネジメントシステムの適切な運用及び継続的な改善により、環境負荷の低減及びより良い環境の創出を図っている。また、「エコファーストの約束」においてCO2排出量の削減や、工事現場における混合廃棄物排出量の削減、グリーン購入対象資機材の購入など低炭素社会の構築や循環型社会の形成を推進するとともに、環境基準遵守のもと、環境事故の防止に努めている。
(14) 情報セキュリティ
当社グループにおいては、第三者による不正アクセスなどのサイバー攻撃により、設計、施工などの各種サービスを提供するにあたり取得した個人や顧客の情報、施工中物件の情報等が漏洩した場合には、信用の毀損による顧客の喪失や損害賠償等の損失が発生し、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
当社グループは、これらのリスクに対応するため情報セキュリティ基本方針と情報セキュリティ対策基準で構成する情報セキュリティポリシーを定め、重点的な管理を行うとともに、情報セキュリティインシデントの未然防止活動及び発生時の体制を強化するため、熊谷組グループCSIRT「KUMA-CSIRT」を2024年5月に設立した。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりである。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、雇用・所得環境や企業収益の改善が進むなか、個人消費は、物価上昇の影響はあるものの持ち直しの動きがみられ、設備投資もソフトウェア投資を中心に堅調に推移するなど、景気は緩やかながら回復基調を維持した。
建設業界においては、住宅投資は横ばいとなったものの、民間企業の建設投資は企業収益や業況感の改善が続くなかで、引き続き増加した。また、公共投資も関連予算の執行により底堅く推移しており、総じて良好な受注環境が持続した。しかし、資材費や労務費の高止まりがみられ、採算面では一部に厳しさが残った。
このような経営環境のもと、当社グループは2024年5月に策定した①建設事業の強化、②周辺事業の加速、③経営基盤の充実を基本方針とする『熊谷組グループ 中期経営計画(2024~2026年度)~持続的成長への新たな挑戦~』にグループ一丸となって取り組み、持続的成長への挑戦を続けているところである。
この結果、当社グループの当連結会計年度における財政状態及び経営成績は以下のとおりとなった。
a 財政状態
・資産
総資産は、前連結会計年度末に比べ46億円(1.0%)減少し、4,625億円となった。
流動資産は、前連結会計年度末に比べ120億円(3.3%)減少し、3,574億円となった。コマーシャル・ペーパーの償還及び配当金の支払等により、現金預金が199億円減少している。
固定資産は、前連結会計年度末に比べ73億円(7.5%)増加し、1,051億円となった。関係会社等への貸付により、長期貸付金が24億円増加している。
・負債
負債は、前連結会計年度末に比べ65億円(2.3%)減少し、2,807億円となった。
流動負債は、前連結会計年度末に比べ140億円(5.8%)減少し、2,293億円となった。コマーシャル・ペーパーが149億円、短期借入金が27億円減少している。
固定負債は、前連結会計年度末に比べ75億円(17.2%)増加し、513億円となった。長期借入金が75億円増加している。
・純資産
純資産は、前連結会計年度末に比べ18億円(1.0%)増加し、1,818億円となった。利益剰余金は、配当により56億円減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益93億円の計上により37億円増加している。なお、自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ0.8ポイント向上し、39.3%となっている。
b 経営成績
・売上高(完成工事高)
売上高は、増加していた期首手持ち工事の消化が進み、前連結会計年度に比べ553億円(12.5%)増加し、4,985億円となった。
なお、当社グループの事業内容は、建設事業とその他の事業に大別されるが、その他の事業に重要性がないため、連結損益計算書上は区分していない。
・売上総利益(完成工事総利益)
売上総利益は、売上高の増加並びに土木事業の売上総利益率(完成工事総利益率)の改善により、前連結会計年度に比べ22億円(6.2%)増加し、383億円となった。
・販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費は、研究開発費やDX関連費用の増加等により、前連結会計年度に比べ5億円(2.5%)増加し、240億円となった。
・営業利益
営業利益は、売上総利益の増加により、前連結会計年度に比べ16億円(13.0%)増加し、142億円となった。
・営業外損益
営業外収益は、受取利息及び受取配当金の増加等により、前連結会計年度に比べ7千万円増加し、14億円となった。
営業外費用は、有利子負債の期中平均残高の増加に伴う支払利息の増加及び投資事業組合運用損の増加等により、前連結会計年度に比べ3億円増加し、13億円となった。
・経常利益
これにより、経常利益は、前連結会計年度に比べ13億円(10.5%)増加し、144億円となった。
・特別損益
特別利益は、投資有価証券売却益5千万円など合計6千万円を計上した。
特別損失は、関係会社株式評価損3億円や損害賠償金2億円など合計6億円を計上した。
・法人税等
法人税、住民税及び事業税36億円、将来減算一時差異の減少等により法人税等調整額7億円を計上した。
・親会社株主に帰属する当期純利益
以上により、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ10億円(12.5%)増加し、93億円となった。
セグメントごとの経営成績(セグメント間取引消去前)は次のとおりである。
a 土木事業
受注高は、前連結会計年度比4.3%増の1,109億円であった。
売上高は、同5.0%増の1,051億円、営業利益は、同54.3%増の69億円となった。
b 建築事業
受注高は、前連結会計年度比0.3%減の2,683億円であった。
売上高は、同17.3%増の2,671億円、営業利益は、同60.2%減の8億円となった。
c 子会社
売上高は、前連結会計年度比8.5%増の1,358億円、営業利益は、同8.0%増の64億円となった。
なお、当該セグメントにおいては、受注生産形態をとっていない子会社もあるため受注実績を示すことはできない。
② キャッシュ・フローの状況
営業活動によるキャッシュ・フローは、82億円のプラス(前連結会計年度は169億円のプラス)となった。
投資活動によるキャッシュ・フローは、119億円のマイナス(前連結会計年度は107億円のマイナス)となった。
財務活動によるキャッシュ・フローは、164億円のマイナス(前連結会計年度は223億円のプラス)となった。
為替換算による増加を含め、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は前連結会計年度末に比べ199億円(28.4%)減少し、501億円となった。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社グループが営んでいる事業の大部分を占める建設事業では「生産」を定義することが困難であり、子会社が営んでいる事業には「受注」生産形態をとっていない事業もあるため、グループとしての生産実績及び受注実績を示すことはできない。また、建設事業では請負形態を取っているため「販売」という定義は実態にそぐわない。このため、生産、受注及び販売の実績については、可能な限り「① 財政状態及び経営成績の状況」において報告セグメントの種類に関連付けて記載している。
なお、参考のため、提出会社個別の事業の状況は次のとおりである。
a 受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高
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期別 |
区分 |
前期繰越 工事高 (百万円) |
当期受注 工事高 (百万円) |
計 (百万円) |
当期完成 工事高 (百万円) |
次期繰越 工事高 (百万円) |
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第87期
(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
土木工事 |
195,109 |
106,425 |
301,534 |
100,128 |
(201,406) 201,270 |
|
建築工事 |
339,733 |
269,163 |
608,896 |
227,799 |
(381,097) 381,142 |
|
|
計 |
534,842 |
375,589 |
910,431 |
327,927 |
(582,503) 582,413 |
|
|
第88期
(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
土木工事 |
201,270 |
110,971 |
312,242 |
105,107 |
(207,134) 206,822 |
|
建築工事 |
381,142 |
268,392 |
649,535 |
267,186 |
(382,349) 382,084 |
|
|
計 |
582,413 |
379,364 |
961,778 |
372,294 |
(589,484) 588,907 |
(注) 1 前期以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含む。
2 次期繰越工事高の下段表示額は、当事業年度末の外国為替相場に基づき外貨建工事の繰越工事高を修正したものであり、上段( )内は修正前である。
b 受注工事高の受注方法別比率
工事の受注方法は、特命と競争に大別される。
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期別 |
区分 |
特命(%) |
競争(%) |
計(%) |
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第87期 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
土木工事 |
18.4 |
81.6 |
100 |
|
建築工事 |
12.7 |
87.3 |
100 |
|
|
第88期 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
土木工事 |
28.7 |
71.3 |
100 |
|
建築工事 |
48.6 |
51.4 |
100 |
(注) 百分比は請負金額比である。
c 完成工事高
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期別 |
区分 |
官公庁 (百万円) |
民間 (百万円) |
合計 (百万円) |
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第87期 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
土木工事 |
55,426 |
44,702 |
100,128 |
|
建築工事 |
28,159 |
199,639 |
227,799 |
|
|
計 |
83,586 |
244,341 |
327,927 |
|
|
第88期 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
土木工事 |
62,947 |
42,160 |
105,107 |
|
建築工事 |
30,725 |
236,460 |
267,186 |
|
|
計 |
93,672 |
278,621 |
372,294 |
(注) 1 完成工事のうち主なものは次のとおりである。
第87期
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環境省 |
平成29年度中間貯蔵(大熊3工区)土壌貯蔵施設等工事 |
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北大阪急行電鉄株式会社 |
北大阪急行線の延伸事業のうち土木工事 |
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三井不動産レジデンシャル株式会社・野村不動産株式会社・三菱地所レジデンス株式会社・伊藤忠都市開発株式会社・東方地所株式会社・株式会社富士見地所・袖ヶ浦興業株式会社 |
(仮称)幕張新都心若葉住宅地区計画(B-3街区) |
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日鉄興和不動産株式会社、三菱地所レジデンス株式会社 |
(仮称)羽沢横浜国大駅前A地区 開発計画 |
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学校法人 東京女子学園 |
(仮称)東京女子学園中学校・高等学校建替え計画 |
第88期
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農林水産省 |
信濃川左岸流域農業水利事業 1号幹線用水路1号トンネル建設工事 |
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国土交通省 |
一般国道452号 芦別市 鏡トンネル工事 |
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三井不動産株式会社 |
(仮称)安城市大東町商業施設計画新築工事 |
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西新宿五丁目中央南地区市街地再開発組合 |
西新宿五丁目中央南地区第一種市街地再開発事業 施設建築物等新築工事 |
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アパホーム株式会社・アパマンション株式会社 |
(仮称)アパホテル&リゾート〈大阪難波駅タワー〉新築工事 |
2 第87期及び第88期ともに、完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
d 次期繰越工事高(2025年3月31日現在)
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区分 |
官公庁 (百万円) |
民間 (百万円) |
合計 (百万円) |
|
土木工事 |
88,301 |
118,520 |
206,822 |
|
建築工事 |
46,971 |
335,112 |
382,084 |
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計 |
135,273 |
453,633 |
588,907 |
(注) 次期繰越工事のうち主なものは次のとおりである。
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東日本高速道路株式会社 |
東京外かく環状道路 本線トンネル(南行)大泉南工事 |
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中日本高速道路株式会社 |
東名高速道路(特定更新等)酒匂川橋他2橋床版取替工事 |
|
東急不動産株式会社、京浜急行電鉄株式会社、第一生命保険株式会社 |
(仮称)北仲通北地区B-1地区計画新築工事 |
|
三井不動産レジデンシャル株式会社・野村不動産株式会社・三菱地所レジデンス株式会社・伊藤忠都市開発株式会社・東方地所株式会社・株式会社富士見地所・袖ヶ浦興業株式会社 |
(仮称)幕張新都心若葉住宅地区計画(B-4 街区―住宅棟) |
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三田駅前Cブロック地区市街地再開発組合 |
三田駅前Cブロック地区第一種市街地再開発事業 |
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
① 財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a 経営成績の分析
当社グループの売上高については、期首繰越工事高の増加等により前連結会計年度実績、期首計画値をともに上回った。
利益については、売上高の増加や土木事業の利益率改善があった一方で、建築事業においては低採算工事の影響等により利益率が低下し、営業利益・経常利益・親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度実績を上回ったものの、期首計画値を下回る結果となった。
自己資本比率は、有利子負債の返済による現金預金の減少等により総資産が減少したため、39.3%と前連結会計年度と比べ0.8ポイント向上した。ROEは、親会社株主に帰属する当期純利益が前連結会計年度を上回ったため、5.2%と前連結会計年度と比べ0.4ポイント向上した。
受注高は、土木事業の官庁分野が好調で受注を伸ばしたことなどにより前連結会計年度実績、期首計画値をともに上回った。
b セグメントごとの経営成績の分析
・土木事業
受注高は、震災復旧関連や高速道路関連を中心に大型工事を複数受注したことなどにより、前連結会計年度比4.3%増の1,109億円となった。
売上高は、期首繰越工事高の増加等により、同5.0%増の1,051億円となった。営業利益は、売上高の増加に加え、追加設計変更獲得などにより利益率が改善したため、同54.3%増の69億円となった。
・建築事業
受注高は、受注時粗利益の確保及び施工体制を考慮し、同0.3%減の2,683億円となった。
売上高は、期首繰越工事高の増加等により、同17.3%増の2,671億円となった。営業利益は、複数の大型工事において想定以上の物価上昇により採算が悪化した影響などにより、同60.2%減の8億円となった。
・子会社
売上高は、株式会社ガイアートにおける期首繰越工事高及び受注高の増加や華熊営造股份有限公司における大型工事の進捗などにより、同8.5%増の1,358億円となった。営業利益は、各社において利益率の改善が進んだことなどにより、同8.0%増の64億円となった。
c 中期経営計画の達成状況
『熊谷組グループ 中期経営計画(2024~2026年度)~持続的成長への新たな挑戦~』で掲げた指標の計画値及び経営戦略に対する達成状況は次のとおりである。
|
指標 |
2026年度(計画値) |
2024年度(実績値) |
差異 |
|
連結売上高 (百万円) |
500,000 |
498,581 |
△1,418 |
|
連結経常利益 (百万円) |
30,000 |
14,411 |
△15,588 |
|
ROE (%) |
10.0 |
5.2 |
△4.8 |
|
自己資本比率 (%) |
45.0 |
39.3 |
△5.7 |
|
配当性向 (%) |
40.0 |
59.7 |
19.7 |
基本方針1:建設事業の強化
■国内土木事業
・インフラ大更新分野
全国のダム、橋梁、道路、トンネル、水道などの社会基盤を整備する技術開発及び施工実績を着実に伸ばしている。
・再生可能エネルギー分野
再生可能エネルギー分野の取組みとして、水力・陸上風力については活発な需要に対応して着実に実績を積み上げている。洋上風力については、SEPの大規模投資を実施し受注に向け準備を整えている。
・防災・減災、国土強靭化分野
地震や豪雨で被害を受けた能登半島の逢坂トンネル、国道249号線、塚田川、輪島市農地復旧等の迅速な対応を実施している。また、逢坂トンネルは無人化施工で取り組み、安全・安心な施工を実現している。
・資源循環分野
能登半島における門前クリーンパークの復旧工事を施工し、また、新たに三重県や鹿児島県にて産業廃棄物処分場の施工を始めている。
■国内建築事業
・環境配慮型建築分野
建築物の施工・運用各段階での環境負荷を最小限に抑えることを目的としている。グリーン鋼材などの低炭素建材の使用、再生可能エネルギーの利用、廃棄物の削減、引渡後のエネルギー効率の向上などに取り組んでいる。
・各種プラント分野
生活基盤インフラである焼却場・火葬場等のプラントに加えて、輸出基準に適合した食肉処理施設の増設も見込まれている。現在、各施設で施工を行っており、今後これらの実績やノウハウを活かしていく。
・中大規模木造建築分野
当社の技術である「環境配慮型λ-WOODⅡ® 1.5時間・CLT 1,2時間 耐火床」を採用した木造と鉄骨造のハイブリッド構造のオフィスビル(「KiGi AKIHABARA」東京都千代田区)を受注した。
・市街地再開発分野
都心や地方都市などで再開発事業が増加傾向にあり、新規案件の事業参画を目指して積極的に取組みを進めている。
・データセンター分野
この分野はAI普及による成長が顕著で、東電不動産株式会社発注の柏崎レジリエンスセンター新築工事を受注し、施工を進めている。
■海外建設事業
・東南アジア地域におけるインフラ整備分野
インドネシア共和国のジャカルタ下水道整備工事の進捗率は約30%である。土木事業本部より2名の若手技術者を迎え、交通渋滞が激しいなかでの道路占有や、埋設物の移設が必要な状況でありながらも、当工事は順調に進行している。
・ベトナムにおける商業施設分野
土地の所有権に関する政府機関との承認手続き後、2025年2月末に起工式を迎えることができた。
・台湾における建築事業分野
建築事業本部より若手の技術者を迎え、台北駅前の超高層ビルや事務所ビル、住宅など、多くの大型案件が予定通り順調に進捗している。
基本方針2:周辺事業の加速
■不動産開発事業
・地域創生プロジェクト
福井県のかつやま恐竜の森(長尾山総合公園)再整備・管理運営事業(Park-PFI事業)は2025年4月よりホテル棟新築工事が着工した。2027年秋のホテル開業を目指している。
・飯田橋プロジェクト
下宮比町地区では、都市計画決定に向けて施設建築物の検討をしている。また、権利者へ再開発事業における税務などの勉強会や個別相談ヒアリングをするなど、具体的に事業を進めている。揚場町地区では、事業計画の説明会を始める。
■再生可能エネルギー事業
・保有SEP船を活用した洋上風力発電事業
一般海域における洋上風力発電の建設工事は、2027年頃から本格化する。当社を含むゼネコンとマリコンのコンソーシアム6社は建設工事で不可欠なSEPを共同保有し、洋上風力市場へ工事参入する。本SEPは洋上風力発電機の大型化を見据え改造中である。また、着床式、浮体式両フィールドでの洋上風力発電施設建設への活用が期待される。
・陸上風力発電
2024年度はEPCとして中泊風力、新岩屋ウィンドパーク、二枚田風力、土木工事として勇知風力等の工事を実施した。
・小水力発電
燃料調達が不要で安定的に供給できる小水力発電事業に取り組む。地元関係者の協力を得て複数個所の発電所を建設・運営することで、規模の拡大と効率的な運用を目指す。
・バイオマス発電
2024年9月、福島県の間伐材やバーク(樹皮)等を燃料とする飯舘みらい発電所(7.5MW)が営業運転を開始した。
■技術商品事業
・脱炭素バイオマス燃料の製造・販売事業
2023年より脱炭素バイオマス燃料「ブラックバークペレット(BBP)」の製造・販売事業に着手している。2025年2月には、BBP製造拠点となる「西条ペレット工場」が着工し、2026年10月より製造、販売を予定している。
・コッター式継手の販売事業
当社以外のゼネコン各社にコッター式継手を販売することで順調に売上げを伸ばし、今後は年間10,000組を超える安定した販売が見込まれている。さらに、品質管理アプリやプレキャスト壁高欄等の関連技術の外販も開始した。
■新事業創出・その他事業
・環境保全型ハイブリッド農業
2024年度実証実験においては独自藻類株による微細藻類の大量培養並びに完全閉鎖循環型アクアポニックス(陸上養殖+水耕栽培)の安定稼働を実現した。藻類培養×アクアポニックスの掛け合わせによる模倣不可能な付加価値を創出し、藻類を核としたスマート一次産業の実現を目指す。今後の事業化に向けた検証のため、当該ラボラトリーで天然地下水を利用して養殖したトラウトサーモン「SAGAアクポニサーモン」を試験販売した。同プロジェクトは社会に大きなインパクトと価値をもたらすことが評価され、2024年8月に経済誌「Forbes JAPAN」が発表した、「Xtrepreneur AWARD 2024」において「GX/カーボンニュートラル」部門を受賞した。
・再エネ電源供給&EMSパッケージ事業
再エネ電源の自社開発については継続的に取り組み中である。また、再エネ由来の電源供給とPPA・蓄電池等の活用による電力事業の検討を開始し、2025年2月に太陽光発電オンサイトPPA事業が稼働した。
・国内PPP/PFI事業
実績については竣工1件(周南地区衛生施設組合新斎場)、着工2件(八王子駅南口集いの拠点、かつやま恐竜の森)となった。これまで建設受注を主目的として実績を積み上げてきたが、今後は供給開始後も含めた事業全体の管理運営や資金調達について当社が主体となる取組みを強化する。
・道路トンネルMOM事業
現在、香港において4件の道路トンネルのMOM(Management,Operation and Maintenance)事業を行っており、今後さらに東南アジアにおけるインフラ維持管理業務の拡大を目指していく。
基本方針3:経営基盤の充実
■DX
・DX人財マネジメント
当社は、全社員を対象としたeラーニングによるITリテラシー教育を行っており、2024年度の受講率は91%である。2024度からDX高度人財育成に特化した教育プログラムを導入し、「自部署における業務改善・効率化を構想し、新たなデジタルツールを積極的に活用・周知できる人財」すなわちDXサポーター人財の育成教育(IT/DX基礎教育プログラム)を開始した。毎年各本部・支店毎で一定数のDXサポーター人財を選出し、基礎と業務に活かせる実践という2か年のカリキュラムを受講してもらうことで、DXサポーター人財を増やしていく計画である。
・施工管理の効率化
当社は、2023年度より全従業員を対象に、Azure基盤のOpenAI生成AIモデルを活用した「Kumagai Chat AI」を提供してきた。2024年12月には、ファイル読込、データ分析の回答機能を含めた大幅なバージョンアップを実施した。また、筑波大学の協力を得て生成AIに関するワークショップを実施し、当社参加メンバーは実際の業務に直結するようなユースケースを立案した。これを社内で公開し、業務の効率化を図っている。こうした施策により、社員に対し情報収集・調査の迅速化と高度化、アイデア創出と高品質な文章生成、プログラミング作業、そしてデータ分析といった多岐にわたる業務においてサポートをしている。
d 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況」の「3 事業等のリスク」に記載のとおりである。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a キャッシュ・フローの状況の分析
営業活動によるキャッシュ・フローは、工事未払金などの仕入債務や法人税等の支払いを上回る水準で売上債権の回収が進んだことなどにより、82億円のプラス(前連結会計年度は169億円のプラス)となった。
投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資や米国及びベトナムにおける不動産事業への投資等により、119億円のマイナス(前連結会計年度は107億円のマイナス)となった。
財務活動によるキャッシュ・フローは、コマーシャル・ペーパーの償還等により、164億円のマイナス(前連結会計年度は223億円のプラス)となった。
為替換算による増加を含め、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は前連結会計年度末に比べ199億円(28.4%)減少し、501億円となった。
b 資本の財源及び資金の流動性
・資本政策の基本方針
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保し、財務健全性を保つことを基本方針としている。当連結会計年度末において現金預金は501億円保有しており、自己資本比率も39.3%と一定水準を保っていることから、現状では財務健全性に大きな懸念はない。
短期運転資金は、自己資金、金融機関からの短期借入及びコマーシャル・ペーパーの発行を基本としており、設備投資に係る資金や長期運転資金は、自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としている。当連結会計年度末における流動比率は155.8%、固定長期適合率は45.1%と高い安全性を保っている。
・資金需要
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、建設事業に係る外注費や資機材費等の工事費、人件費を中心とした販売費及び一般管理費の営業費用である。大型工事における支出先行及び人員数の増加により営業費用に対する資金需要は増加傾向にある。また、中期経営計画に掲げている基本方針に基づき、周辺事業における確固たる収益源創出のための400億円規模の投資のほか、90億円規模の設備投資を計画している。
なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は421億円となっている。
・株主還元
2024年5月に策定した「中期経営計画(2024~2026年度)」では、適正かつ安定的に利益還元していくことを基本方針とし、連結配当性向40%目途を財務目標に掲げている。また、事業環境の変化や各事業戦略・投資の進捗に応じて、自己株式の取得を含め機動的に追加還元を検討する方針である。
・資金調達
当社グループは、資金調達の手段として金融機関からの借入及びコマーシャル・ペーパーの発行等を活用している。資金調達のより一層の安定化並びに効率化を図るため、シンジケートローン契約を締結しており、そのうち長期のターム・ローンの当連結会計年度末の契約総額は289億円、コミットメントラインの当連結会計年度末の契約総額は200億円(借入実行残高30億円)である。
安定的な資金調達手段を確保しており、突発的な資金需要の発生にも十分対処可能な状況である。
また、成長投資等の資金需要への対応にあたり、今後は財務規律を維持しつつ、資金調達手段の多様化を進めることなどにより調達コストの削減に努めていく。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度における資産、負債並びに収益、費用の金額に影響する見積り、判断及び仮定が必要となり、これらは継続した評価、過去の実績、経済等の事象、状況及びその他の要因に基づき算定を行っているが、本質的に不確実性を内包しており、実際の結果とは異なる場合がある。
当社グループの重要な会計方針のうち見積り、判断及び仮定による算定が含まれる主な項目は、貸倒引当金、完成工事補償引当金、工事損失引当金、偶発損失引当金、賞与引当金、株式給付引当金、退職給付費用、一定の期間にわたり収益を認識する方法(いわゆる旧工事進行基準)による収益認識、繰延税金資産の回収可能性等があり、当該見積り、判断及び仮定と実際の結果に重要な差異が生じた場合は、当社グループの連結財務諸表に影響を及ぼす可能性がある。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりである。
2024年4月1日前に締結された契約について、「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」附則第3条第4項により記載を省略している。
当社グループの研究開発活動は、企業業績に対して即効性のある技術、商品の開発、各種技術提案に直結した技術の開発、中長期的市場の変化を先取りした将来技術の研究、開発技術の現業展開と技術部門の特性を生かした技術営業、総合的技術力向上のための各種施策からなっており、社会経済状況の変化に対し機動的に対応できる体制をとっている。
当連結会計年度は、研究開発費として
当連結会計年度における主な研究開発活動は次のとおりである。
(1) 土木事業
① トンネル補修におけるサポートライニング工法用ダクタル板把持装置の開発
当社では、既設トンネルの覆工内巻補強工としてサポートライニング工法を展開している。当工法は、鋼製支保工と埋設型枠兼用UFCパネルを配置し、既設覆工との隙間に無収縮モルタル等を充填することで両者を一体化して補強構造を構築するものである。これらの設置作業は人力主体で行っているため、パネル1枚の大きさや重量にも自ずと制限が設けられ、工期短縮策における課題の一因となっていた。また、トンネル上部の施工では高い難易度や作業者の体力的負担といった施工環境への対策も求められていた。今回、株式会社アクティオと共同開発した機械は、汎用クレーンとバキューム式吸着器によるパネル把持機構を組み合わせたもので、従来よりも大きなパネルの採用やトンネル全周への対応といった施工の効率化が可能である。把持装置はサクションカップ4個を備え最大300kgの定格能力を有する。作業者は相番の高所作業車からリモコンで機械操作するため、安全で特段の熟練も要しない。実用化に向けた一連の検証では、サクションカップの吸着性能など要素技術の他、技術研究所施設内での実物大施工実験を重ねて施工性に問題ないことも確認してきた。今年度中には実際の施工現場への導入を予定しており、作業者の習熟など作業性の向上や必要な改良検討をさらに進め、安全で効率的な施工の実現と普及展開を図る計画である。
② 高精度水中測位システムとマシンガイダンスを統合した水中遠隔操作システム「AquaMarionette®(アクアマリオネット)」が完成
水中の無人化施工を目指し、音速自動補正機能を備えた高精度水中測位システムとマシンガイダンスを統合した水中バックホウの遠隔操作システム「AquaMarionette®(アクアマリオネット)」を開発した。このシステムは、狭隘な屋外実験水槽においても精度数cmの高精度な水中遠隔制御を実証した。近年、老朽化したインフラの更新や災害復旧のため、河川や海洋などでの精密な水中施工が求められている。しかし、高水圧や視界不良の条件下での作業は通常避けられるため、水中施工の効率化に特化した機械が必要である。そのため、水中遠隔操作が可能な制御系のハードウェア開発、施工機械の姿勢情報を提供するマシンガイダンスシステム、そして高精度に機械の位置を測定する水中測位システムが不可欠である。実証試験では、高精度水中測位システムから得られたデータとバックホウに装備されたセンサーによる姿勢データを統合した。3tクラスの小型水中バックホウを水深4.5mの屋外水槽の目視できない条件下で遠隔操作し、システムの優れた性能を確認した。この実証により、厳しい条件下でも高精度な水中遠隔施工が可能であり、通常の水域でも十分な施工能力を持つことが確認された。水中バックホウの遠隔操作化は、極東建設株式会社の協力で実現した。今後、「AquaMarionette®(アクアマリオネット)」は高水圧や視界不良の条件下においても潜水士なしでの施工が実現でき、河川・海洋・港湾・ダムなどでの高精度水中施工システムとしての活用が期待される。このシステムは水中施工の効率性や安全性を向上させ、新たなプロジェクトへの可能性を広げることを目指している。
③ 覆工コンクリート油圧式流量調整バルブの開発
覆工コンクリートは、トンネル中心を境に左右に配置した配管から、打設口を切り替えながら(段取り替え)コンクリートを交互に打設するのが一般的である。従来の打設方法では、段取り替えごとにコンクリートの供給を一時中断する。段取り替えは作業員が狭隘なセントルを移動するため、転倒や配管落下等の被災リスクに晒されるとともに、段取り替えに時間を要する場合、コールドジョイント等の品質低下を引き起こす。そこで、当社は岐阜工業株式会社と共同で、コンクリートの左右供給量を制御しながら、連続して同時打設が可能な油圧式流量調整バルブを開発した(特許出願中)。
流量調整バルブをセントルの主配管と副配管の間に配置したY字管先端にそれぞれ配置し、側壁からアーチまでの覆工コンクリートを同時連続で打設することが可能である。油圧式流量調整バルブは、シャッターバルブの開度でコンクリート供給量を制御するため、巻厚がばらつく左右のコンクリートを均等な打ち上り高さで管理することが可能である。シャッターバルブ開度をパラメータとした基礎実験では、開度ごとの実測値と理論値のばらつきが少なく、高い精度でコンクリート供給量を制御できることを実証した。今後は、基礎実験の知見を基にして、油圧式流量調整バルブと自動締固めシステム等の各種技術を組み合わせ、災害防止と作業効率向上を両立した、覆工コンクリート連続水平自動打設システムを確立し生産性向上を図る。
④ 半断面施工に適用可能な新型コッター式継手を開発~小型・軽量化により継手重量50%削減に成功~
当社と株式会社ガイアート、オリエンタル白石株式会社、ジオスター株式会社(以下、「開発4社」という)は、橋梁用「コッター床版工法」に従来用いてきたコッター式継手を改良した新型コッター式継手を開発した。この新型継手は、高速道路の床版取替工事における半断面施工にも適用が可能である。コッター床版工法は、プレキャスト床版同士の接合にコッター式継手を用いることで迅速な施工を実現する。従来工法で必要であった現場打ちコンクリートが不要となり、これに伴う作業を削減することで作業日数を約50%短縮し、作業人員を約60%削減することができる。また、床版面積の99%をプレキャスト化できるため、施工効率のみならず床版の耐久性も向上する。床版の接合作業は、ボルトを締め付けるだけの単純な作業となり、鉄筋工や型枠工等の熟練工を必要としない。さらに部分的な取り替えも容易であるため、メンテナンス性や災害時の復旧性にも優れている。新型継手は、従来継手の過剰な部位を特定し最適化することで、同等の性能を保ちながら全長を半分にし、重量を50%削減した。これにより、施工現場での作業性が向上し、継手製造費も大幅に低減され、コスト競争力が強化された。新型継手は、すでにNEXCO試験法442-2019により要求性能を満足することを確認しており、今後は量産体制を整え、本年度中の市場投入を予定している。開発4社は、今後も高速道路のリニューアルプロジェクトを中心に実績を積み重ね、全国の道路リニューアル工事における技術の進化に取り組む方針である。
⑤ Geo-MG®(ジオマシンガイダンス®)の開発
Geo-MG®(ジオマシンガイダンス®)は、3次元地質・土質モデルをマシンガイダンスシステムに組み込むことで、地質分布に応じた適切な地山掘削を可能にし、正確かつ合理的な掘削作業を実現するシステムである。開発の背景には、建設工事で副次的に発生する建設発生土の有効活用が求められるなかで、地質境界に沿って正確に掘削・分別し、適合材料と不適合材料の混入を防ぐ必要性がある。しかし、地中の状態は目視できずオペレータの経験に頼る部分が大きかったため、掘削中に地質境界へ重機を誘導し、効率的な分別を可能にするシステムを開発した。このシステムを活用して、熊本県農林水産部発注の大切畑ダム災害復旧工事において、その有効性を確認した。今後、このシステムを活用することで、掘削地山の地質ごとの分別が容易になり、盛土材料の質の向上や建設発生土の有効利用率の向上を図る。
⑥ 軌道装置接近警報システムの開発
当社は、株式会社アクティオと共同で、トンネル施工時における軌道装置内の安全性向上を目指し、人物検知による「軌道装置接近警報システム」を開発した。このシステムは、脱着可能なカメラと警報出力機構をユニット化し、AIを用いて軌道内の人物検知を行うものであり、軌道装置の編成長に影響を受けることなく利用できる。当システムは、無線カメラユニットと監視モニターユニット間で映像を無線伝送し、人物検知処理は監視ユニット側のメインPCで行う。カメラユニットの映像データを基にAIによる人物検知を行い、検知結果に応じて警報器を作動させるものである。また、軌道装置の後押し運転時には、オペレータの視界確保にも貢献する。開発に先立ち2つの要素実験を行いシステムの確認を行った。1つ目は、シールド坑内におけるカメラ映像伝送の適合性について、内径2.55mのシールド坑内で伝送実験を行った。結果は、障害物のない直線では290mまで伝送が可能であり、見通しの無い急曲線を挟んだ場合でも186mの伝送距離が確認され適用可能と判断した。2つ目は、AIによる人物検知の検証で、画像フレームにタグ付けした教師データを作成し、軌条内にいる人のみを検知できるように学習させ、実運用を想定した試行試験を行った。結果は、シールド坑内での走行時における画像が乱れることはなく、人物検知が手摺の内外で識別されており、システムの有効性が確認された。今後は、現場開始時からシステムを導入して安全性の向上を図る。特にバッテリー機関車の後押し走行時におけるオペレータへの安全運転サポートが期待される。また、バッテリー機関車との連携により、坑内自動走行が可能となるよう開発を進める。
(2) 建築事業
① CADデータからBIMモデルを生成するシステム「CABTrans」を開発
CADデータからBIMモデルを生成するシステム「CABTrans」を燈株式会社と共同開発した。近年、日建連発行のロードマップや国土交通省のガイドラインなどで、施工BIMやフロントローディングの重要性が示されている。当社は2021年から施工請負金額500百万円以上の新築工事で施工BIMを活用しており、簡易的なBIMモデルを作成し、施工検討を行っているが、多くは設計図を参照し人力で入力している。この作業を自動化し、作業時間短縮によるコストダウンや鉄筋情報などのモデル品質の向上、作成時期の前倒しによるフロントローディングの加速などを期待して本システムを開発した。
「CABTrans」は大きく2つのモジュールに分かれており、燈株式会社が開発した、CADデータから情報を取得し、構造化されたCSVデータを出力するモジュール「D-CSV」と、当社が担当した、CSVを読み込み、CSVからRhino-Grasshopper(注1)を経由してArchicad(注2)上にBIMモデルを生成するモジュールである。この2つのモジュールにより、従来のモデル全体の作成時間と比べて、20~30%程度の削減をすることが期待できる。また、リードタイム短縮により早期のBIM対応が可能となる。
今後は、実際の案件に適用することで効果測定を行うとともに、意匠図も含めた対応図面種類の拡充、読み取り精度の向上を行っていく予定である。また、Grasshopper部分をDynamo(注3)による処理に置き換えることで、Revit(注4)への対応も検討を行っている。
(注)1 Rhino-Grasshopper:Robert McNeel & Associates社製3Dソフトウェア「Rhinoceros」上で動作するビジュアルプログラミングツール
2 Archicad:Graphisoft社製BIMモデリングツール
3 Dynamo:Revit上で動作するビジュアルプログラミングツール
4 Revit:Autodesk社製BIMモデリングツール
② 木質耐火部材「環境配慮型λ-WOODⅡ®」が3時間耐火構造の国土交通大臣認定を取得
木材と被覆材の分別廃棄を可能とした木質耐火部材の、環境配慮型λ-WOODⅡ®(ラムダウッド・ツー)について、柱・梁・床・壁の1~3時間の耐火構造の国土交通大臣認定を取得した。新たに柱・梁3時間及び床・壁1,2時間の耐火認定を取得したことにより、耐火要件上は15階以上の全ての耐火建築物の主要構造部に木造を適用することが可能となった。なお、今回大臣認定を取得した1,2時間耐火のCLT(注)床及び1.5時間耐火の集成材梁は、地上9階建てオフィスビル「(仮称)秋葉原木造オフィスビル計画」にて初採用予定である。
環境配慮型λ-WOODⅡ®の構造は、芯材の木材を石膏ボードの耐火被覆層で被覆した木質耐火部材である。1つ目の特徴は、芯材(木材)とその周囲を耐火被覆する石膏ボードの解体分離が可能な仕様であり、接着剤を一切使用しない留付材のみで固定し、解体時には容易に木材と石膏ボードを分離することを可能にした。これは木材と石膏ボードの再資源化を可能にするとともに、廃棄コストの低減にも寄与する。2つ目の特徴は、表面材の自由性であり、耐火被覆材(石膏ボード)の外周部に張る表面材は、木材のほか、様々な仕様を選択できる。3つ目の特徴は、耐火被覆層の構成を簡素化したことであり、λ-WOODⅡ®では、被覆材を21mmの強化石膏ボードに統一し、現場管理の手間を低減した。一例として、3時間耐火の梁の耐火被覆層は、従来のλ-WOODでは8層だが、λ-WOODⅡは4層に簡素化した。
今後は、主要構造部に木材を適用した15階以上の耐火建築物に積極的に取り組み、普及に向けたさらなる技術開発を進める。
(注)直交集成板(Cross Laminated Timberの略)
③ 品確法に適応した環境配慮型ハーフプレキャスト床板を開発
住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下、品確法)の劣化等級3(注1)を満足する環境配慮型ハーフプレキャスト床板を、株式会社旭ダンケと共同開発した。中・高層マンションの床への適用を目的に、実際の生産ラインでの試験施工を行い、現行製品と同等の品質が確保されることを確認した。
建築業界で最も広く使われる建材の一つはコンクリートである。このコンクリートの原材料の一つであるセメントの製造過程では、多くの二酸化炭素が排出されることから、環境負荷低減と持続可能性を目指したコンクリート技術が多く開発されている。ハーフプレキャスト床板の低炭素化は、使用するコンクリートを構成するセメントの一部を高炉スラグ微粉末(注2)に置換する環境配慮コンクリート(CELBIC(注3))の製造技術を参考にしている。
本開発製品の特長は、①JASS10(プレキャスト鉄筋コンクリート工事)の基準を満足し、品確法劣化等級3に適応した製品である。②現行製品と同等の品質性能を確保している。③CO₂排出量を現行製品(コンクリート材料のみ)と比較して、約19%削減できる。④本開発製品は、N認定(注4)を取得した工場で製造している。
環境配慮型ハーフプレキャスト床板は、直近では自社物件への適用を積極的に行う予定であるが、他社案件についても積極的に展開・適用し、販売することを検討している。今後は、適用対象の範囲を拡大するため、様々なプレキャスト部材を開発し、さらなるCO₂削減に向けた検討や社会ニーズに応えるべく環境ラベルの取得などの技術開発を進めていく。
(注)1 品確法は、住宅性能表示制度や新築住宅の10年保証などについてまとめた法律である。住宅性能表示制度によって定められた劣化対策等級のランクは3等級で表され、等級が高いほど建物の耐久性が上がる。等級3は通常想定されている条件のもと、約75~90年間大規模な改修工事をせずに使えるように対策されている。
2 高炉スラグ微粉末は、製鉄所で発生する副産物で、製造における二酸化炭素の排出量がセメントの1/20以下となる。
3 CELBICは、青木あすなろ建設株式会社、株式会社淺沼組、株式会社安藤・間、株式会社奥村組、株式会社鴻池組、五洋建設株式会社、株式会社錢高組、鉄建建設株式会社、東急建設株式会社、東洋建設株式会社、株式会社長谷工コーポレーション、矢作建設工業株式会社と当社の13社で開発した。
4 一般社団法人プレハブ建築協会におけるPC部材品質認定制度。
④ 20℃封緘養生で材齢28日圧縮強度150N/mm²以上が得られるプレミックス製常温硬化型超高強度グラウト材を開発
20℃封緘養生(注1)において材齢(注2)28日圧縮強度が150N/mm²以上となる常温硬化型の超高強度プレミックスグラウト材を株式会社フローリックと共同開発した。
近年、建設材料は機能向上が求められており、特に自然災害増大や長寿命化に対応する高強度化や高耐久化への要求は高く、超高強度コンクリート等の開発が行われている。セメント系の材料の高強度化に必要な水結合材比の極小化は、十分な流動性確保に相反し、また、高強度の確保には高温給熱養生(注3)の必要な場合もあり、汎用性のある製品は少ない。
今般、流動性確保により充填性を担保し、常温硬化において高強度を確保する配合を検討し、さらにプレミックス化を行い、汎用的かつ安定的に品質を確保できるグラウト材を開発した。これはセメントにシリカフューム、膨張材などの混和材料及び細骨材をプレミックスしたもので、普通セメント又は早強セメントを使用する2配合を用意した。水結合材比はそれぞれ16.0%及び17.0%とし、特殊高性能減水剤を使用して練り混ぜ、剥落防止材にポリプロピレン繊維を添加している。用途としては、高強度コンクリートの接合部や、高強度を要する狭い間隙の充填等であり、給熱養生を行わずに確実な充填と高強度の品質を得ることができる。開発したグラウト材の特徴は、①フロー値(JHS 313)は350mm程度、②空気量は消泡剤を使用して3.5%以下に調整、③圧縮強度は20℃封緘養生で、普通セメント配合では材齢7日120N/mm²、材齢28日160N/mm²。早強セメント配合では材齢7日150N/mm²、材齢28日180N/mm²である。
今後は適用箇所に応じた性能配合や効率的な練混ぜ方法の検討を行う。また、土木学会の設計・施工指針(案)を参考にした材料特性及び耐久性評価を実施し、第三者試験機関から最終的な配合の試験結果を得て外販を検討する。
(注)1 コンクリート表面からの水分の出入りがない状態に保って行う供試体の養生
2 コンクリートを打ち込んでからの経過日数
3 コンクリート周囲表面又は、コンクリート内部から熱量を補給して一定の温度(高温)に保温して養生する方法
⑤ 木材を耐火被覆として利用した鉄骨部材「ドレスウッド」で柱の1.5時間耐火大臣認定を取得~木材利用の拡大に寄与できる新たな耐火技術を開発~
木材と生体溶解性繊維(AESウール)の断熱材で耐火被覆を施した鉄骨部材「ドレスウッド」を株式会社ホルツストラと共同開発し、柱の1.5時間耐火構造の国土交通大臣認定を取得した。
近年、脱炭素社会に向けた建築物での木材利用が注目され、鉄骨造やRC造においても木材の積極的活用が期待されている。今回開発した「ドレスウッド」は、鉄骨部材にAESウールの断熱材と木材で耐火被覆を施した。木材部分は火災時には炭化しながらゆっくり燃えるため、鉄骨部材への熱伝達を遅らせる効果を持つ。また、軽量で高断熱のAESウールを組み合わせることで耐火被覆全体の厚みを抑えた。木材厚は最小30mm、断熱材を合わせた正味被覆厚は最小60mmとなり、スリムな部材寸法を実現した。さらに、木材は多様な樹種を選択できるため、顧客や設計者のニーズに応じた材料選択が可能なほか、木材あらわしにより室内空間に木質感をもたらし、ぬくもりや親しみやすさを演出する仕上げ材として機能する。
本部材は大臣認定の取得により、建物の最上階から数えて9層までの範囲に使用することが可能となった。現在、地上9階建てオフィスビルにて初採用される予定である。今後も実物件への積極的な採用に取り組むほか、梁の耐火構造の開発や、より長時間の耐火部材の開発を計画している。
当社は、建築物の木造化や木質化を通じた持続可能な社会の実現のために、さらなる取り組みを進める予定である。
(3) 子会社
株式会社ガイアート
① 多機能型縦溝粗面舗装工法(フル・ファンクション・ペーブ)の高耐久化の検討
アスファルトメーカーと共同で、すべり止め効果や凍結抑制効果の高い多機能型粗面舗装用の高耐久化改質アスファルトを開発し、2024年12月に、軽井沢町の同社が管理運営を行っている有料道路“白糸ハイランドウェイ”にて試験施工を実施した。現在、その効果や耐久性についての検証を行っており、優位性が確認でき次第、国土交通省や地方公共団体等への技術提案をしていく。
② 速硬型樹脂モルタル補修材(ダッシュペーブE)の空港補修用への改良
速硬型樹脂モルタル補修材(ダッシュペーブE)は、最適な粒度に調整された5mmトップの骨材と特殊樹脂バインダーを3リッター容量分手練り混合し補修箇所に充填するキット化した同社製品であり、混合から約2分で車両の通行に耐える強度となる。今般、空港における補修材として大量に使用したいとの要望があり、遅延剤添加により30分間施工が可能なワーカビリティを確保できるものに改良した。今後、空港メンテナンス維持への展開を図っていく。
③ モバブルー「カーボンニュートラルタイプ」の開発
モバブルーは、藻類の活着促進や多様な海洋生物の生息場形成を目的とした生物育成ブロックであり、福井県敦賀湾において藻場形成や多種の海洋生物の繁殖実績を有している。今般、さらなる自然共生型ブルーインフラ(ネイチャーポジティブ)を目指し、モバブルーの材料にスラグ等を用いた新たな「カーボンニュートラルタイプ」を開発した。今後、沖縄県で試験施工を行い、沖縄固有のサンゴ類やリュウキュウスガモなどの着床基盤としての有効性及びブルーカーボン生態系としての機能性を検証していく。また、港湾空港技術研究所や民間研究機関と連携した効果検証を継続し、全国展開に向けた提案活動を行っていく。
当連結会計年度は、既存施設の保守、設備の取得及び更新等を行い、その総額は
なお、設備投資等の金額は、事業セグメントに配分していない。
(1)提出会社
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2025年3月31日現在 |
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会社名 事業所名 (所在地) |
セグメントの名称 |
帳簿価額(百万円) |
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|||||
|
建物・ |
機械、運搬具及び工具器具備品 |
土地 |
リース |
合計 |
従業員数 (人)
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|||
|
面積:㎡ |
金額 |
|||||||
|
東京本社 (東京都新宿区) |
土木事業 建築事業 |
1,827 |
1,111 |
53,635 (1,287) |
5,072 |
89 |
8,101 |
656 |
|
首都圏支店 (東京都新宿区) |
土木事業 建築事業 |
1 |
24 |
- |
- |
- |
26 |
415 |
|
関西支店 (大阪市西区) |
土木事業 建築事業 |
71 |
20 |
- |
- |
- |
92 |
326 |
(2)国内子会社
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2025年3月31日現在 |
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会社名 事業所名 (所在地) |
セグメントの名称 |
帳簿価額(百万円) |
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建物・ |
機械、運搬具及び工具器具備品 |
土地 |
リース |
合計 |
従業員数 (人)
|
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|
面積:㎡ |
金額 |
|||||||
|
㈱ガイアート 本社及び支店 (東京都新宿区) |
子会社 |
2,874 |
725 |
195,964 (114,190) |
4,909 |
178 |
8,687 |
777 |
(3)在外子会社
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2025年3月31日現在 |
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会社名 事業所名 (所在地) |
セグメントの名称 |
帳簿価額(百万円) |
|
|||||
|
建物・ |
機械、運搬具及び工具器具備品 |
土地 |
リース |
合計 |
従業員数 (人)
|
|||
|
面積:㎡ |
金額 |
|||||||
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華熊営造(股) 本社 (台湾台北市) |
子会社 |
21 |
- |
42 |
15 |
- |
36 |
429 |
(注) 1 帳簿価額には建設仮勘定を含まない。
2 上記主要な設備に係る土地及び建物の一部を連結会社以外から賃借している。年間賃借料は1,022百万円であり、土地の面積については( )内に外書きで示している。
継続的に既存施設の保守、工事用機械の更新等の投資を予定しているが、特記すべき設備の新設及び除却等の計画はない。