当連結会計年度における世界経済は、先進国は緩やかに回復したが、中国の経済減速や資源価格の下落による一部新興国の経済悪化により、全体的には成長の伸びが低下する状況となった。
我が国経済においては、政府、日銀による経済・金融政策を背景に、雇用・所得環境は改善し民間設備投資は増加したものの、先行きに対する不透明感から個人消費が停滞するなど、本格的な景気回復には至らなかった。
国内建設市場については、公共投資は減少したものの、製造業を中心とする民間需要の高まりから建設投資全体では底堅さを維持した中で、労務費や資材費の動向が落ち着くなど、市場環境に改善がみられた。
こうした中、当社グループは、当連結会計年度から「中期経営計画(2015~2017年度)」をスタートさせ、中核である当社建設事業を再生・強化する取り組みを重点的に推し進めるとともに、当社グループの強みを活かせる事業領域の拡充と経営基盤の確立に計画的に取り組んできた。その結果、当連結会計年度における当社グループの連結業績は、次のとおりとなった。
建設事業受注高は、当社の建築事業と海外関係会社の受注が好調に推移したことを主因に、前連結会計年度比21.8%増の1兆7,958億円(前連結会計年度は1兆4,748億円)となった。なお、当社の受注高は、開発事業等を含めて同3.6%増の1兆2,368億円(前連結会計年度は1兆1,938億円)となった。
売上高は、前連結会計年度と同水準で推移し、前連結会計年度比2.9%増の1兆7,427億円(前連結会計年度は1兆6,936億円)となった。
利益面では、当社の建設事業の利益率改善により売上総利益が増加したことを主因に、営業利益は前連結会計年度比777.0%増の1,110億円(前連結会計年度は126億円)となり、経常利益は同430.7%増の1,133億円(前連結会計年度は213億円)となった。
親会社株主に帰属する当期純利益は、減損損失を特別損失に計上したものの、前連結会計年度比377.7%増の723億円(前連結会計年度は151億円)となった。
(注) 「第2 事業の状況」における各事項の記載については、消費税等抜きの金額を表示している。
セグメントの業績は次のとおりである。(セグメントの業績については、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載している。)
(当社における建設事業のうち土木工事に関する事業)
完成工事高は、手持工事の順調な進捗により、前連結会計年度比11.4%増の3,079億円(前連結会計年度は2,764億円)となった。
営業損益は、完成工事総利益率が大幅に改善したことから、288億円の利益(前連結会計年度は155億円の損失)となった。
(当社における建設事業のうち建築工事に関する事業)
完成工事高は、前連結会計年度と概ね同水準で推移し、前連結会計年度比5.5%増の8,240億円(前連結会計年度は7,808億円)となった。
営業損益は、完成工事総利益率が大幅に改善したことから、574億円の利益(前連結会計年度は234億円の損失)となった。
③ 開発事業等
(当社における都市開発、地域開発など不動産開発全般に関する事業及び意匠・構造設計、その他設計、エンジニアリング全般の事業)
当連結会計年度は物件売却が少なかったことから、売上高は前連結会計年度比59.3%減の340億円(前連結会計年度は837億円)となり、営業利益は同96.7%減の6億円(前連結会計年度は209億円)となった。
④ 国内関係会社
(当社の国内関係会社が行っている事業であり、主に日本国内における建設資機材の販売、専門工事の請負、総合リース業、ビル賃貸
事業等)
売上高は、前連結会計年度と同水準で推移し、前連結会計年度比0.5%減の3,646億円(前連結会計年度は3,664億円)となった。
営業利益は、前連結会計年度と概ね同水準で推移し、前連結会計年度比7.9%増の206億円(前連結会計年度は191億円)となった。
(当社の海外関係会社が行っている事業であり、米国、欧州、アジアなどの海外地域における建設事業、開発事業等)
売上高は、前連結会計年度と概ね同水準で推移し、前連結会計年度比8.2%増の3,679億円(前連結会計年度は3,401億円)となった。
営業利益は、前連結会計年度に開発物件の売却があった反動により、前連結会計年度比32.8%減の75億円(前連結会計年度は111億円)となった。
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、363億円の収入超過(前連結会計年度は592億円の収入超過)となった。これは、税金等調整前当期純利益1,085億円に減価償却費195億円等の調整を加味した収入に加えて、未成工事受入金及び開発事業等受入金の増加529億円の収入があった一方で、売上債権の増加475億円、たな卸資産(販売用不動産、未成工事支出金、開発事業支出金及びその他のたな卸資産)の増加348億円及び仕入債務の減少202億円の支出があったこと等によるものである。
投資活動によるキャッシュ・フローは、278億円の支出超過(前連結会計年度は83億円の収入超過)となった。これは、有形固定資産の取得による支出306億円があったこと等によるものである。
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金、長期借入金、コマーシャル・ペーパー及び社債の資金調達と返済の収支が59億円の支出超過となったことに加えて、配当金の支払額57億円の支出等により、131億円の支出超過(前連結会計年度は707億円の支出超過)となった。
これらにより、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末から77億円減少し、2,348億円(前連結会計年度末は2,425億円)となった。
当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため、また、受注高について当社グループ各社の受注概念が異なるため、「生産の状況」及び「受注の状況」は記載していない。
セグメントの名称 | 前連結会計年度 (自 平成26年4月1日 至 平成27年3月31日) | 当連結会計年度 (自 平成27年4月1日 至 平成28年3月31日) | 増減(△)率 | |||||
土木事業 | (百万円) | 276,430 | ( | 16.3%) | 307,964 | ( | 17.7%) | 11.4 |
建築事業 | (百万円) | 776,838 | ( | 45.9%) | 822,635 | ( | 47.2%) | 5.9 |
開発事業等 | (百万円) | 80,983 | ( | 4.8%) | 32,767 | ( | 1.9%) | △59.5 |
国内関係会社 | (百万円) | 219,288 | ( | 12.9%) | 211,391 | ( | 12.1%) | △3.6 |
海外関係会社 | (百万円) | 340,117 | ( | 20.1%) | 367,941 | ( | 21.1%) | 8.2 |
合計 | (百万円) | 1,693,658 | ( | 100 %) | 1,742,700 | ( | 100 %) | 2.9 |
(注) 1 売上実績においては、「外部顧客への売上高」について記載している。
2 前連結会計年度及び当連結会計年度ともに売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
〔参考〕提出会社単独の受注高及び売上高の状況
期別 | 種類別 | 期首繰越高 | 当期受注高 | 計 | 当期売上高 | 期末繰越高 | ||
前事業 | 建 | 建築工事 | 951,342 | 742,538 | 1,693,880 | 780,841 | 913,039 | |
自 | 至 | 土木工事 | 479,250 | 339,908 | 819,158 | 276,430 | 542,727 | |
計 | 1,430,592 | 1,082,446 | 2,513,038 | 1,057,271 | 1,455,767 | |||
開発事業等 | 17,265 | 111,367 | 128,632 | 83,742 | 44,890 | |||
合計 | 1,447,857 | 1,193,813 | 2,641,671 | 1,141,014 | 1,500,657 | |||
当事業 | 建 | 建築工事 | 913,039 | 902,092 | 1,815,132 | 824,097 | 991,034 | |
自 | 至 | 土木工事 | 542,727 | 285,967 | 828,695 | 307,964 | 520,730 | |
計 | 1,455,767 | 1,188,060 | 2,643,827 | 1,132,062 | 1,511,765 | |||
開発事業等 | 44,890 | 48,812 | 93,702 | 34,085 | 59,617 | |||
合計 | 1,500,657 | 1,236,872 | 2,737,529 | 1,166,147 | 1,571,382 | |||
(注) 1 前事業年度以前に受注したもので、契約の更改により請負金額に変更があるものについては、当期受注高
にその増減額を含む。したがって、当期売上高にもかかる増減額が含まれる。
2 期末繰越高は、(期首繰越高+当期受注高-当期売上高)である。
期別 | 区分 | 国内 | 海外 | 計 | |
官公庁 | 民間 | (百万円) | (百万円) | ||
前事業年度 (自 平成26年4月1日 至 平成27年3月31日) | 建築工事 | 98,968 | 643,567 | 2 | 742,538 |
土木工事 | 210,123 | 129,455 | 329 | 339,908 | |
計 | 309,092 | 773,023 | 331 | 1,082,446 | |
当事業年度 (自 平成27年4月1日 至 平成28年3月31日) | 建築工事 | 89,967 | 812,120 | 4 | 902,092 |
土木工事 | 178,917 | 111,767 | △4,717 | 285,967 | |
計 | 268,885 | 923,887 | △4,712 | 1,188,060 | |
期別 | 区分 | 特命(%) | 競争(%) | 計(%) | |||
前事業年度 (自 平成26年4月1日 至 平成27年3月31日) | 建築工事 | 59.6 |
| 40.4 |
| 100 |
|
土木工事 | 23.2 |
| 76.8 |
| 100 |
| |
当事業年度 (自 平成27年4月1日 至 平成28年3月31日) | 建築工事 | 51.0 |
| 49.0 |
| 100 |
|
土木工事 | 30.1 |
| 69.9 |
| 100 |
| |
(注) 百分比は請負金額比である。
期別 | 区分 | 国内 | 海外 | 計 | |
官公庁 | 民間 | (百万円) | (百万円) | ||
前事業年度 (自 平成26年4月1日 至 平成27年3月31日) | 建築工事 | 99,619 | 681,219 | 2 | 780,841 |
土木工事 | 164,669 | 126,849 | △15,087 | 276,430 | |
計 | 264,289 | 808,068 | △15,085 | 1,057,271 | |
当事業年度 (自 平成27年4月1日 至 平成28年3月31日) | 建築工事 | 125,443 | 698,648 | 4 | 824,097 |
土木工事 | 173,121 | 127,649 | 7,194 | 307,964 | |
計 | 298,564 | 826,297 | 7,199 | 1,132,062 | |
(注) 1 前事業年度及び当事業年度ともに完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
2 当事業年度の完成工事のうち主なものは、次のとおりである。
発注者 | 工事名称 |
○ 三菱地所㈱、JXホールディングス㈱、 | 大手門タワー・JXビル新築工事 |
○ 二子玉川東第二地区市街地再開発組合 | 二子玉川東第二地区第一種市街地再開発事業に係る |
○ (独)水資源機構 | 武蔵水路中流部改築工事 |
○ 茨城県厚生農業協同組合連合会 | 総合病院土浦協同病院移転新築工事 |
○ 環境省 | 平成25年度富岡町除染等工事(その1) |
○ 石巻市 | 石巻市水産物地方卸売市場石巻売場建設事業 |
○ アステラス ファーマ テック㈱ | 焼津技術センター5号棟建設工事 |
○ 中日本高速道路㈱ | 第二東名高速道路 牧平工事 |
区分 | 国内 | 海外 | 計 | |
官公庁 | 民間 | (百万円) | (百万円) | |
建築工事 | 157,368 | 833,666 | ― | 991,034 |
土木工事 | 342,569 | 125,229 | 52,931 | 520,730 |
計 | 499,937 | 958,896 | 52,931 | 1,511,765 |
(注) 繰越工事のうち主なものは、次のとおりである。
発注者 | 工事名称 |
○ アルジェリア公共事業省高速道路公団 | 東西高速道路東工区建設工事(アルジェリア) |
○ 三井不動産㈱ | (仮称)新日比谷プロジェクト新築工事 |
○ ㈱西武プロパティーズ | (仮称)紀尾井町計画オフィス・ホテル棟新築工事 |
○ 日本橋二丁目地区市街地再開発組合 | 日本橋二丁目地区第一種市街地再開発事業(C・D街区) |
○ 東日本高速道路㈱ | 東京外かく環状道路 本線トンネル(南行)東名北工事 |
○ 銀座六丁目10地区市街地再開発組合 | 銀座六丁目10地区第一種市街地再開発事業 |
○ 勝どき五丁目地区市街地再開発組合 | 勝どき五丁目地区第一種市街地再開発事業 |
○ 東北電力㈱ | 女川原子力発電所防潮堤かさ上げ工事 |
当社グループは「中期経営計画(2015~2017年度)」の実現に向けて、計画に掲げた施策を着実に推進していく。
すなわち、当社建設事業については、リスクを総合的に勘案して工事を受注する方針を堅持しつつ、今後の繁忙に備えて、全社的な見地からの社員配置と協力会社との協働によって施工体制を確実に構築するとともに、省力化技術の開発やICTの活用などによる生産性の向上に取り組むことにより、収益の維持・向上を図る。
当社グループの強みを活かせる事業領域の強化・拡大に向けて、国内開発事業については、事業ポートフォリオを考慮した優良プロジェクトの創出やノンアセットビジネスの推進に取り組む。海外の建設・開発事業については、既存事業の深耕に加えて、新たな地域の市場開拓と新規開発プロジェクトを推進するための事業基盤を整備することにより、着実な成長を目指す。建設事業の上流・下流分野については、エンジニアリングと環境分野を中心に上流段階からのプロジェクトへの参画や、リニューアル分野の深耕、インフラの維持・更新に取り組み、また、グループ会社と連携して施設の運営管理等に対応することにより、付加価値の向上と収益源の多様化を目指す。
これらの施策を推進するために、当社グループの事業を担う人材の一層の育成に取り組み、環境の変化に対応できる多様な人材を確保するとともに、技術力の底上げとノウハウの継承を図る。また、グループ会社の連携強化や事業戦略に即した技術開発を促進することに加えて、財務体質の改善・強化にも引き続き留意し、成長に向けたグループ経営基盤を確立していく。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、主として以下のようなものがある。
なお、文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において判断したものである。
当社グループにおいては、これらの事業を取り巻く様々なリスクや不確定要因等に対して、その予防や分散、リスクヘッジ等を実施することにより、企業活動への影響について最大限の軽減を図っている。
想定を上回る建設需要の減少や主要資材価格等の急激な上昇、不動産市場における需給状況や価格の大幅な変動等、建設事業・開発事業等に係る著しい環境変化が生じた場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
長期大型工事において、主要資材価格の急激な上昇等により、想定外に建設コストが増加した場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
金利水準の急激な上昇、為替相場の大幅な変動等が生じた場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
販売用不動産、事業用不動産及び有価証券等の保有資産の時価が著しく下落した場合又は収益性が著しく低下した場合等には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
当社グループでは、米国・欧州・アジアをはじめとした世界各国での事業展開を図っており、当該進出国の政治・経済情勢、法制度等に著しい変化が生じた場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
PFI事業の推進にあたり、長期に亘る運営期間の中で、事業環境に著しい変化が生じた場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
当社グループでは、設計、施工をはじめとする様々なサービスを提供しているが、万が一、重大な瑕疵が発生した場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
発注者、協力会社、共同施工会社等の取引先が信用不安に陥った場合には、資金の回収不能や施工遅延等により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
当連結会計年度末において計上している繰延税金資産については、今後の利益(課税所得)をもって全額回収可能と考えているが、制度面の変更等によっては、一部取崩しを求められる可能性がある。
当社グループの属する建設業界は、建設業法、建築基準法、宅地建物取引業法、国土利用計画法、都市計画法、独占禁止法等により法的規制を受けている。そのため、上記法律の改廃や新たな法的規制の新設、適用基準の変更等によっては、業績等に影響を及ぼす可能性がある。なお、当社グループに対する訴訟等について、当社グループ側の主張・予測と相違する結果となった場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
特記事項なし。
当社グループは、多様化する社会及び顧客のニーズに対応し、受注並びに生産への貢献を目的に、建設事業の品質及び生産性向上のための技術をはじめとして、将来的なニーズを先取りする技術まで幅広い課題に関する研究開発活動を大学、公共機関や他企業との共同研究も推進しながら、効率的に実施している。
当連結会計年度における研究開発費の総額は78億円であり、主な成果は次のとおりである。なお、当社は研究開発活動を土木事業、建築事業のセグメントごとに区分していないため建設事業として記載している。
建物用制震ダンパーとして、世界初となる振動エネルギー回生システムを搭載した新世代制震オイルダンパー「HiDAX※-R(Revolution)」を開発した。本ダンパーは、自動車のブレーキ制御等で用いられているエネルギー回生システムの原理を初めて建物に応用したもので、地震による建物の振動エネルギーを一時的に補助タンクに蓄え、ダンパーの制震効率を高めるアシスト力として利用することにより、従来型装置の限界を大幅に超えた世界最高の制震効率を達成した。なお、本技術は、日刊工業新聞社が主催する「日本産業技術大賞」において、「文部科学大臣賞」を受賞した。
ドローンによる写真測量を利用して高精度な3次元図面を短時間で作成し、土量管理及び工事の進捗管理に利用するシステムを㈱リカノスと共同で開発した。本システムにより、空撮からデータ処理までの一連の作業において、ドローンやカメラ等の機器の選定、作業方法や使用ソフトの最適化を図ることで高精度な空撮測量が可能となった。本システムを大規模造成工事に適用したところ、誤差±6cm以下まで精度が向上し、測定時間や費用の大幅な削減が可能であることが確認できた。
建物内の無線LAN環境導入と運用コストの削減を実現するWi-Fiアンテナケーブル(WBLCX:Wireless Broadband Leaky Coaxial Cable)の縦敷設技術を㈱フジクラと共同で実用化した。建物を新築する際に無線LAN環境を構築する事例が増加しているが、本技術は、Wi-Fiアンテナケーブルを建設工事中にパイプシャフトなどの縦貫通孔に敷設し、無線アクセスポイントの配置を工夫しながらその数を大幅に削減するもので、初期導入コストだけでなく、保守経費などの維持管理コストも削減可能となった。
長大トンネルにおいて有用な地質等の前方探査方法である超長尺コントロールボーリング調査において、これまでは把握が困難であった削孔先端部の湧水圧と口元湧水量(*1)をボーリング削孔と同時に連続的に計測するシステム「スイリモ※(水(すい)リサーチ・モニター)」を開発した。これにより、切羽前方にある湧水区間の状況をこれまで以上に正確に把握し、本掘削の前に適切な湧水対策工を検討・選択できるため、より安全に工事を行うことが可能となった。
*1:口元湧水量:ボーリング削孔を開始した場所(口元)で計測される湧水量
近年、重力式コンクリートダムの建設工事は、RCD(Roller Compacted Dam-concrete)工法が主流となり、施工の高速化が進んでいる。当社は、(一財)ダム技術センターによって開発された、打設速度の速い内部コンクリートを打設速度の遅い外部コンクリートよりも先行して施工することで全体の打設速度を向上させる「巡航RCD工法」を、福岡県五ケ山ダム堤体建設工事に初めて全面的に採用するとともに、本工法の更なる高速化を実現する打設技術を開発した。これにより、「巡航RCD工法」を適用する範囲について、工期の約18%短縮を実現した。
福島第一原子力発電所の海水配管トレンチ(*2)の内部を充填するため、長距離水中流動充填材「HiloTM(High leveling for long distance)(ヒーロー)」を東京電力ホールディングス㈱、東京パワーテクノロジー㈱と共同で開発した。「HiloTM」は、水中100mの距離を流動させても材料分離や品質の低下が生じない特殊な材料であり、本材料を内部充填工事に適用することで、新たに打設孔を設けることなく、既存設備を利用した打設作業を行うことが可能となった。これにより、作業に伴う被ばく線量を最小限に抑えつつ、海水配管トレンチ内に滞留していた約1万トンの高濃度汚染水を除去することに成功した。なお、本技術を適用した工事について、内閣総理大臣より感謝状を受領した。
*2:海水配管トレンチ:配管やケーブルを収納している地下トンネル
福島第一原子力発電所事故に伴い広域に拡散した放射能汚染に対して、順次、除染が行われている。除染により発生した除去土壌を減容化するためには、草木や根などを選別・除去する必要があり、その際に用いる選別補助材として、生石灰等の従来品よりも高機能な「泥DRY※(デイドライ)」を開発した。これにより、粘性が高く団粒化した除去土壌を低粘性の細粒に素早く改質することが可能となり、選別作業効率が格段に向上した。
当社技術研究所本館「研究棟」において、2015年8月にLEED-EBOM(*3)の最高ランクであるプラチナ認証を取得した。本研究棟は、当社のZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)実現に向けたリーディングプロジェクトと位置付けられ、2011年11月の建物運用開始以来、当社が開発した様々な技術を適用して、エネルギー効率の向上に努めており、2014年度の一次エネルギー消費量は、オフィス基準値より約52%の削減を実現した。
*3:LEED(Leadership in Energy and Environmental Design)は、米国USGBC(U.S. Green Building Council)により運営され、世界各国に普及している建築物環境性能評価システムであり、LEED-EBOM(=LEED for Existing Buildings: Operations and Maintenance)はこの中で、既存ビルの運用・管理について、その評価・認証を行うもの。
今後増加が予想される洋上風力発電施設を建設するための海上作業構台「Kプラットフォーム コンボTM」と、これを利用した洋上風車組立工法や基礎の施工法、風車の急速施工法を開発した。「Kプラットフォーム コンボTM」は、日本国内の洋上ウインドファーム計画地として想定される港湾区域内での建設条件に合わせた作業構台であり、基礎の構築から風車の組立、メンテナンス、最終的な撤去作業までを、用途によりアタッチメントを取り換えることで対応可能である。
「蛇カゴ(*4)」を用いて、人力によって組立て可能な簡易型の魚道を開発した。この魚道を鹿児島県高尾野川のコンクリート製の堰(せき)に設置したところ、アユの遡上が観測され、魚道として機能することが確認された。今後、この「組立式蛇カゴ魚道」をアユ以外の生物にも適用させていくことにより、水域生物の生育を図るほか、自然の恵みを利用した地域振興や自然と共生した国土づくりに貢献する。
*4:「蛇カゴ」: カゴ状の構造物で、内部に自然石、砕石などを詰めたもの。
高耐久性舗装を開発し、試験施工を実施した。今後、試験施工箇所の性能を評価した上で、実工事に順次適用していく予定である。また、低騒音性と遮水性の両方の特長を併せ持つ「ハイブリッドコンクリート舗装」や施工合理化技術である「転圧管理システム(ICT施工)」の機能向上等について、引続き研究開発を進めている。
地球環境に優しいノンフロン冷媒のCO2気液混合流体を活用した地盤凍結工法を開発した。CO2冷媒を使用する本工法は、従来工法に比べ必要な冷媒量が大幅に少ないため、設備の小型化、電力消費量の削減(従来工法から40~50%減)が可能となった。また、冷媒の粘性が低いことから、従来よりも小型軽量の配管を使用することができるため、作業効率が向上し、工期短縮(同30%減)も可能となった。
(開発事業等及び海外関係会社)
研究開発活動は特段行われていない。
(注) 工法等に「※」が付されているものは、当社の登録商標である。また、「TM」が付されているものは当社の商標である。
当社グループにおける財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は、以下のとおりである。
なお、文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において判断したものである。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されているが、この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されている。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っているが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なることがある。
当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高は、建設事業は増加したものの、開発事業等の減少により、前連結会計年度と同水準で推移した。
利益面では、当社の建設事業の利益率改善により売上総利益が増加したことを主因に、営業利益、経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益がいずれも増益となった。
「中期経営計画(2015~2017年度)」において、平成30年3月期の経営数値目標として掲げる売上高1兆7,500億円程度、経常利益650億円以上、有利子負債3,700億円以下、ROE8.0%以上の達成を目指して、当社建設事業の再生・強化、当社グループの強みを活かせる事業領域の拡充及び経営基盤の確立に向けた取り組みを推進する方針である。
当連結会計年度末の手許資金(現金及び現金同等物)の残高は、前連結会計年度末に比べ77億円減少し、2,348億円(前連結会計年度末は2,425億円)となった。
営業活動によるキャッシュ・フローは、363億円の収入超過(前連結会計年度は592億円の収入超過)となった。これは、税金等調整前当期純利益1,085億円に減価償却費195億円等の調整を加味した収入に加えて、未成工事受入金及び開発事業等受入金の増加529億円の収入があった一方で、売上債権の増加475億円、たな卸資産(販売用不動産、未成工事支出金、開発事業支出金及びその他のたな卸資産)の増加348億円及び仕入債務の減少202億円の支出があったこと等によるものである。
投資活動によるキャッシュ・フローは、278億円の支出超過(前連結会計年度は83億円の収入超過)となった。これは、有形固定資産の取得による支出306億円があったこと等によるものである。
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金、長期借入金、コマーシャル・ペーパー及び社債の資金調達と返済の収支が59億円の支出超過となったことに加えて、配当金の支払額57億円の支出等により、131億円の支出超過(前連結会計年度は707億円の支出超過)となった。
なお、当社においては、緊急時の資金調達手段の確保等を目的として、総額1,500億円のコミットメントライン契約を締結している。
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末比475億円増加し、1兆8,867億円(前連結会計年度末は1兆8,392億円)となった。これは、受取手形・完成工事未収入金等の増加432億円等によるものである。
負債合計は、前連結会計年度末比104億円増加し、1兆4,127億円(前連結会計年度末は1兆4,023億円)となった。これは、未成工事受入金の増加506億円があった一方で、支払手形・工事未払金等の減少225億円及び繰延税金負債の減少162億円があったこと等によるものである。なお、当連結会計年度末の有利子負債残高※は、3,785億円(前連結会計年度末は3,850億円)となった。
純資産合計は、株主資本3,519億円、その他の包括利益累計額1,193億円、非支配株主持分27億円を合わせて、前連結会計年度末比370億円増加の4,740億円(前連結会計年度末は4,369億円)となった。
また、自己資本比率は、前連結会計年度末比1.4ポイント好転し、25.0%(前連結会計年度末は23.6%)となった。
(注) ※短期借入金、コマーシャル・ペーパー、社債(1年内償還予定の社債を含む)及び長期借入金の合計額
今後の我が国経済については、世界経済や金融市場の先行きに不透明感はあるものの、設備投資や個人消費の活性化を目的とする各種政策の効果により、次第に景気回復が本格化していくと期待される。
国内建設市場においては、民間の建設需要は堅調に推移すると見込まれる一方で、工事量の増加と施工の集中に伴って資機材・労務の需給が逼迫し、コストの上昇が懸念されることから、業績の維持・向上を実現するためには、適正な受注判断と施工体制の確保に一層の企業努力を要する経営環境になるものと考えられる。
こうした中、当社グループは「中期経営計画(2015~2017年度)」の実現に向けて、計画に掲げた施策を着実に推進していく。