当連結会計年度における世界経済は、英国のEU離脱問題や米国の政権交代等によって先行きに対する不透明感が高まったが、経済への影響は限定的なものに留まり、全体として緩やかに成長した。
我が国経済については、個人消費は足踏み状態が続いたものの、雇用・所得環境は改善傾向にあり、また、民間設備投資は年度後半に円安が進行したこと等により持ち直しの動きとなるなど、景気は緩やかな回復基調となった。
国内建設市場においては、建設投資は首都圏を中心とする大規模再開発や交通インフラ整備等の需要に支えられて公共・民間ともに底堅さを維持し、労務需給は引き続き安定的に推移した。
こうした中、当社グループは持続的な成長と企業価値の向上を実現するため、前連結会計年度に策定した「中期経営計画(2015~2017年度)」に基づき、当社建設事業の再生・強化に向けた取り組みを集中的に推し進めるとともに、当社グループの強みを活かせる事業領域の拡充と経営基盤の確立に向けて取り組んできた。
その結果、当連結会計年度における当社グループの連結業績は、次のとおりとなった。
建設事業受注高は、前連結会計年度と同水準で推移し、前連結会計年度比3.8%減の1兆7,283億円(前連結会計年度は1兆7,958億円)となった。なお、当社の受注高は、開発事業等を含めて同9.1%増の1兆3,499億円(前連結会計年度は1兆2,368億円)となった。
売上高は、前連結会計年度と同水準で推移し、前連結会計年度比4.5%増の1兆8,218億円(前連結会計年度は1兆7,427億円)となった。
利益については、建設事業の利益率向上と開発事業等の好調な推移により売上総利益が増加したことを主因に、営業利益は前連結会計年度比39.9%増の1,553億円(前連結会計年度は1,110億円)となり、経常利益は同44.2%増の1,634億円(前連結会計年度は1,133億円)となった。
親会社株主に帰属する当期純利益は、特別損益が改善したこともあり、前連結会計年度比45.0%増の1,048億円(前連結会計年度は723億円)となった。
(注) 「第2 事業の状況」における各事項の記載については、消費税等抜きの金額を表示している。
セグメントの業績は次のとおりである。(セグメントの業績については、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載している。)
(当社における建設事業のうち土木工事に関する事業)
完成工事高は、前連結会計年度と同水準で推移し、前連結会計年度比3.6%減の2,968億円(前連結会計年度は3,079億円)となった。
営業利益は、完成工事総利益率が向上したことから、前連結会計年度比24.8%増の359億円(前連結会計年度は288億円)となった。
(当社における建設事業のうち建築工事に関する事業)
完成工事高は、前連結会計年度と同水準で推移し、前連結会計年度比1.3%増の8,351億円(前連結会計年度は8,240億円)となった。
営業利益は、完成工事総利益率が向上したことを主因に、前連結会計年度比36.9%増の786億円(前連結会計年度は574億円)となった。
③ 開発事業等
(当社における都市開発、地域開発など不動産開発全般に関する事業及び意匠・構造設計、その他設計、エンジニアリング全般の事業)
販売物件の引渡しがあったことを主因に、売上高は前連結会計年度比110.8%増の718億円(前連結会計年度は340億円)、営業利益は同14倍超の98億円(前連結会計年度は6億円)となった。
④ 国内関係会社
(当社の国内関係会社が行っている事業であり、主に日本国内における建設資機材の販売、専門工事の請負、総合リース業、ビル賃貸
事業等)
売上高は、前連結会計年度と同水準で推移し、前連結会計年度比0.9%減の3,611億円(前連結会計年度は3,646億円)となった。
営業利益は、前連結会計年度と概ね同水準で推移し、前連結会計年度比5.1%減の195億円(前連結会計年度は206億円)となった。
(当社の海外関係会社が行っている事業であり、米国、欧州、アジアなどの海外地域における建設事業、開発事業等)
売上高は、前連結会計年度と概ね同水準で推移し、前連結会計年度比9.0%増の4,009億円(前連結会計年度は3,679億円)となった。
営業利益は、売上総利益率が向上したことも加わり、前連結会計年度比55.7%増の116億円(前連結会計年度は75億円)となった。
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、1,875億円の収入超過(前連結会計年度は363億円の収入超過)となった。これは、税金等調整前当期純利益1,621億円に減価償却費193億円等の調整を加味した収入に加えて、未成工事受入金及び開発事業等受入金の増加542億円の収入があった一方で、法人税等の支払額449億円及び工事損失引当金の減少316億円の支出があったこと等によるものである。
投資活動によるキャッシュ・フローは、319億円の支出超過(前連結会計年度は278億円の支出超過)となった。これは、有形固定資産の取得による支出250億円があったこと等によるものである。
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金、長期借入金、コマーシャル・ペーパー及び社債の資金調達と返済の収支が25億円の支出超過となったことに加えて、配当金の支払額166億円の支出等により、205億円の支出超過(前連結会計年度は131億円の支出超過)となった。
これらにより、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末から1,326億円増加し、3,674億円(前連結会計年度末は2,348億円)となった。
当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため、また、受注高について当社グループ各社の受注概念が異なるため、「生産の状況」及び「受注の状況」は記載していない。
|
セグメントの名称 |
前連結会計年度 (自 平成27年4月1日 至 平成28年3月31日) |
当連結会計年度 (自 平成28年4月1日 至 平成29年3月31日) |
増減(△)率 |
|||||
|
土木事業 |
(百万円) |
307,964 |
( |
17.7%) |
296,857 |
( |
16.3%) |
△3.6 |
|
建築事業 |
(百万円) |
822,635 |
( |
47.2%) |
830,107 |
( |
45.6%) |
0.9 |
|
開発事業等 |
(百万円) |
32,767 |
( |
1.9%) |
69,869 |
( |
3.8%) |
113.2 |
|
国内関係会社 |
(百万円) |
211,391 |
( |
12.1%) |
223,999 |
( |
12.3%) |
6.0 |
|
海外関係会社 |
(百万円) |
367,941 |
( |
21.1%) |
400,971 |
( |
22.0%) |
9.0 |
|
合計 |
(百万円) |
1,742,700 |
( |
100 %) |
1,821,805 |
( |
100 %) |
4.5 |
(注) 1 売上実績においては、「外部顧客への売上高」について記載している。
2 前連結会計年度及び当連結会計年度ともに売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
〔参考〕提出会社単独の受注高及び売上高の状況
|
期別 |
種類別 |
期首繰越高 |
当期受注高 |
計 |
当期売上高 |
期末繰越高 |
||
|
前事業 |
建 |
建築工事 |
913,039 |
902,092 |
1,815,132 |
824,097 |
991,034 |
|
|
自 |
至 |
土木工事 |
542,727 |
285,967 |
828,695 |
307,964 |
520,730 |
|
|
計 |
1,455,767 |
1,188,060 |
2,643,827 |
1,132,062 |
1,511,765 |
|||
|
開発事業等 |
44,890 |
48,812 |
93,702 |
34,085 |
59,617 |
|||
|
合計 |
1,500,657 |
1,236,872 |
2,737,529 |
1,166,147 |
1,571,382 |
|||
|
当事業 |
建 |
建築工事 |
991,034 |
940,273 |
1,931,308 |
835,149 |
1,096,158 |
|
|
自 |
至 |
土木工事 |
520,730 |
364,311 |
885,042 |
296,857 |
588,184 |
|
|
計 |
1,511,765 |
1,304,585 |
2,816,350 |
1,132,007 |
1,684,343 |
|||
|
開発事業等 |
59,617 |
45,379 |
104,997 |
71,838 |
33,159 |
|||
|
合計 |
1,571,382 |
1,349,965 |
2,921,348 |
1,203,845 |
1,717,502 |
|||
(注) 1 前事業年度以前に受注したもので、契約の更改により請負金額に変更があるものについては、当期受注高
にその増減額を含む。したがって、当期売上高にもかかる増減額が含まれる。
2 期末繰越高は、(期首繰越高+当期受注高-当期売上高)である。
|
期別 |
区分 |
国内 |
海外 |
計 |
|
|
官公庁 |
民間 |
(百万円) |
(百万円) |
||
|
前事業年度 (自 平成27年4月1日 至 平成28年3月31日) |
建築工事 |
89,967 |
812,120 |
4 |
902,092 |
|
土木工事 |
178,917 |
111,767 |
△4,717 |
285,967 |
|
|
計 |
268,885 |
923,887 |
△4,712 |
1,188,060 |
|
|
当事業年度 (自 平成28年4月1日 至 平成29年3月31日) |
建築工事 |
101,054 |
839,219 |
― |
940,273 |
|
土木工事 |
273,550 |
116,472 |
△25,711 |
364,311 |
|
|
計 |
374,604 |
955,692 |
△25,711 |
1,304,585 |
|
建設工事の受注方法は、特命と競争に大別される。
|
期別 |
区分 |
特命(%) |
競争(%) |
計(%) |
|||
|
前事業年度 (自 平成27年4月1日 至 平成28年3月31日) |
建築工事 |
51.0 |
|
49.0 |
|
100 |
|
|
土木工事 |
30.1 |
|
69.9 |
|
100 |
|
|
|
当事業年度 (自 平成28年4月1日 至 平成29年3月31日) |
建築工事 |
65.0 |
|
35.0 |
|
100 |
|
|
土木工事 |
20.9 |
|
79.1 |
|
100 |
|
|
(注) 百分比は請負金額比である。
|
期別 |
区分 |
国内 |
海外 |
計 |
|
|
官公庁 |
民間 |
(百万円) |
(百万円) |
||
|
前事業年度 (自 平成27年4月1日 至 平成28年3月31日) |
建築工事 |
125,443 |
698,648 |
4 |
824,097 |
|
土木工事 |
173,121 |
127,649 |
7,194 |
307,964 |
|
|
計 |
298,564 |
826,297 |
7,199 |
1,132,062 |
|
|
当事業年度 (自 平成28年4月1日 至 平成29年3月31日) |
建築工事 |
105,959 |
729,190 |
― |
835,149 |
|
土木工事 |
179,449 |
116,646 |
761 |
296,857 |
|
|
計 |
285,409 |
845,836 |
761 |
1,132,007 |
|
(注) 1 前事業年度及び当事業年度ともに完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
2 当事業年度の完成工事のうち主なものは、次のとおりである。
|
発注者 |
工事名称 |
|
○ ㈱西武プロパティーズ |
東京ガーデンテラス紀尾井町新築工事 |
|
○ ㈱ジャパンディスプレイ |
白山工場新築工事 |
|
○ 勝どき五丁目地区市街地再開発組合 |
勝どき ザ・タワー他新築工事 |
|
○ 国際石油開発帝石㈱ |
富山ライン建設工事(A-4、B工区) |
|
○ 日本通運㈱ |
Tokyo C-NEX新築工事 |
|
○ イオンモール㈱ |
イオンモール長久手新築工事 |
|
○ 三菱地所レジデンス㈱ |
ザ・パークハウス 晴海タワーズ ティアロレジデンス |
|
○ 中部電力㈱ |
浜岡原子力発電所防波壁設置工事(西工区) |
|
区分 |
国内 |
海外 |
計 |
|
|
官公庁 |
民間 |
(百万円) |
(百万円) |
|
|
建築工事 |
152,462 |
943,696 |
― |
1,096,158 |
|
土木工事 |
436,670 |
125,056 |
26,457 |
588,184 |
|
計 |
589,133 |
1,068,752 |
26,457 |
1,684,343 |
(注) 繰越工事のうち主なものは、次のとおりである。
|
発注者 |
工事名称 |
|
○ 三井不動産㈱ |
(仮称)新日比谷プロジェクト新築工事 |
|
○ 日本橋室町三丁目地区市街地再開発組合 |
日本橋室町三丁目地区第一種市街地再開発事業A地区新築工事 |
|
○ 日本橋二丁目地区市街地再開発組合 |
日本橋二丁目地区第一種市街地再開発事業(C・D街区) |
|
○ 東日本高速道路㈱ |
東京外かく環状道路 本線トンネル(南行)東名北工事 |
|
○ 銀座六丁目10地区市街地再開発組合 |
銀座六丁目10地区第一種市街地再開発事業 |
|
○ 東北電力㈱ |
女川原子力発電所防潮堤かさ上げ工事 |
|
○ 東日本高速道路㈱ |
東京外環自動車道 市川中工事 |
|
○ 武蔵小山パルム駅前地区市街地再開発組合 |
武蔵小山パルム駅前地区第一種市街地再開発事業 |
当社グループにおける経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりである。
なお、文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において判断したものである。
当社グループでは、経営理念として「全社一体となって、科学的合理主義と人道主義に基づく創造的な進歩と発展を図り、社業の発展を通じて社会に貢献する。」ことを掲げ、さらに、企業経営の根幹を成す品質・安全衛生・環境に関する基本方針として「関係法令をはじめとする社会的な要求事項に対応できる適正で効果的なマネジメントシステムを確立・改善することにより、生産活動を効率的に推進するとともに、顧客や社会からの信頼に応える。」ことを定めている。
こうした方針に基づく取り組みを通して、より高い収益力と企業価値の向上を目指すとともに、社業の永続的発展により株主、顧客をはじめ広く関係者の負託に応え、将来に亘りより豊かな社会の実現に貢献していく。
前連結会計年度に策定した「中期経営計画(2015~2017年度)」において、平成30年3月期に売上高1兆7,500億円程度、経常利益650億円以上、有利子負債3,700億円以下、ROE8.0%以上とする業績目標を掲げている。
なお、中期経営計画の最終年度となる平成30年3月期の業績予想(平成29年5月12日公表)は、売上高1兆8,300億円、経常利益1,200億円、有利子負債3,700億円としている。
我が国経済については、海外の政治・経済の先行きに不透明感はあるものの、政府・日銀による各種政策の実施が下支えとなって個人消費や民間設備投資が改善し、景気は緩やかに回復していくと期待している。
国内建設市場においては、建設投資は公共・民間ともに堅調に推移する見通しであるが、今後、大規模再開発ビルや東京オリンピック・パラリンピック関連施設などの施工時期が重なることに伴う繁忙により、建設コストが高騰する懸念があることから、施工体制の確保、生産性の向上等に一層の企業努力を要する経営環境になると考えている。
こうした中、当社グループは、今後予想される繁忙期に対する備えと中長期的な視点から、事業環境の変化に対応できる事業体制の確立に向けて、「中期経営計画(2015~2017年度)」に掲げた施策を一層推進していく。
すなわち、国内建設事業については、全社的な見地による受注判断と施工体制の構築を徹底しながら、ICT活用を含めた省力化・自動化技術の開発や協力会社と一体となった業務改善等による生産性の向上を図り、技術力とコスト競争力の強化に努めていく。
国内開発事業については、バランスのとれた資産構成による安定的な利益確保を目指して、優良プロジェクトの創出とノンアセットビジネスの推進に取り組んでいく。
海外の建設・開発事業については、既存事業の深耕に加えて、現地企業の買収・提携等を通じた新たな顧客や事業分野などの開拓による建設受注の機会多様化を図るとともに、開発事業の収益安定化に向けて既存・新規プロジェクトへの効果的な投資・運営を推進し、着実な成長を目指す。
建設事業の上流・下流分野については、エンジニアリング・環境分野等の得意技術を活かした上流段階からのプロジェクトへの参画や、リニューアル分野の深耕、インフラの維持・更新に取り組むほか、施設の運営管理等にグループ会社と連携して対応することにより、付加価値の向上と収益源の多様化を図る。
これらの施策を推進するために、財務体質の改善・強化に引き続き留意しながら、持続的な成長に向けてグループ経営基盤を確立していく。グループ会社の連携強化や事業戦略に即した技術開発を一層促進することに加えて、次世代の担い手確保を見据え、社員と協力会社の双方にとって魅力的な職場環境の実現を目指す「鹿島働き方改革」に挑戦するとともに、当社グループの事業を担う人材の育成に長期的視点から取り組んでいく。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、主として以下のようなものがある。
なお、文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において判断したものである。
当社グループにおいては、これらの事業を取り巻く様々なリスクや不確定要因等に対して、その予防や分散、リスクヘッジ等を実施することにより、企業活動への影響について最大限の軽減を図っている。
想定を上回る建設需要の減少や主要資材価格等の急激な上昇、不動産市場における需給状況や価格の大幅な変動等、建設事業・開発事業等に係る著しい環境変化が生じた場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
長期大型工事において、主要資材価格の急激な上昇等により、想定外に建設コストが増加した場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
金利水準の急激な上昇、為替相場の大幅な変動等が生じた場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
販売用不動産、事業用不動産及び有価証券等の保有資産の時価が著しく下落した場合又は収益性が著しく低下した場合等には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
当社グループでは、米国・欧州・アジアをはじめとした世界各国での事業展開を図っており、当該進出国の政治・経済情勢、法制度等に著しい変化が生じた場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
PFI事業の推進にあたり、長期に亘る運営期間の中で、事業環境に著しい変化が生じた場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
当社グループでは、設計、施工をはじめとする様々なサービスを提供しているが、万が一、重大な瑕疵が発生した場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
発注者、協力会社、共同施工会社等の取引先が信用不安に陥った場合には、資金の回収不能や施工遅延等により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
当連結会計年度末において計上している繰延税金資産については、今後の利益(課税所得)をもって全額回収可能と考えているが、制度面の変更等によっては、一部取崩しを求められる可能性がある。
当社グループの属する建設業界は、建設業法、建築基準法、宅地建物取引業法、国土利用計画法、都市計画法、独占禁止法等により法的規制を受けている。そのため、上記法律の改廃や新たな法的規制の新設、適用基準の変更等によっては、業績等に影響を及ぼす可能性がある。なお、当社グループに対する訴訟等について、当社グループ側の主張・予測と相違する結果となった場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
特記事項なし。
当社グループは、多様化する社会及び顧客のニーズに対応し、受注並びに生産への貢献を目的に、建設事業の品質及び生産性向上のための技術をはじめとして、将来的なニーズを先取りする技術まで幅広い課題に関する研究開発活動を大学、公共機関や他企業との共同研究も推進しながら、効率的に実施している。
当連結会計年度における研究開発費の総額は82億円であり、主な成果は次のとおりである。なお、当社は研究開発活動を土木事業、建築事業のセグメントごとに区分していないため建設事業として記載している。
近く予想される溶接技能工不足や将来的な溶接技能工の高齢化への対策として、建築工事において「汎用可搬型溶接ロボット」を有効に活用するための手法を㈱横河ブリッジと共同で開発し、複数工事の鉄骨溶接作業に適用して良好な結果を得た。また、今後、全国の建築工事へ溶接ロボットによる施工を迅速に普及・展開させるとともに、施工品質を保証する体制を鹿島グループ全体で確立するため、グループ会社である鹿島クレス㈱に溶接事業部を発足させ、同社の社員を溶接ロボットのオペレータとして育成する取り組みを開始した。
熟練技能者の減少への対応や土木工事全般の生産性及び安全性の向上を目指し、建設機械の自動化技術による次世代の建設生産システム「A4CSEL※(クワッドアクセル※)」の高度化に取り組んでおり、今般、㈱小松製作所と共同で大分川ダム堤体盛立工事において自動ダンプトラックの導入試験を行い、盛立部におけるダンプトラックの運搬・荷下ろし作業の自動化に成功した。既に開発している自動振動ローラと自動ブルドーザを組み合わせることで、ダム工事や造成工事において大きな比率を占める複数の建設機械による連携作業全体の自動化が可能であることを確認した。
病院の多床室(相部屋)に入院する患者個々に対して、睡眠に与える影響力の大きい「温熱」・「音」・「光」環境を最適化し、睡眠環境を向上する技術を構築した。本技術により、患者の睡眠環境を整え生体リズムを安定させることで療養環境が向上するだけでなく、夜間のナースコール呼出の減少により医療スタッフの業務負荷が軽減されることが期待できる。本技術の構築にあたり、東北大学大学院医学系研究科 尾崎教授と共同で多床室の環境特性と患者の睡眠状態の実態調査を実施するとともに、東京睡眠医学センター長・慶應義塾大学医学部睡眠医学講座 遠藤教授の監修のもとで被験者実験を実施した。
岩手県で施工中の国道45号唐丹第3トンネル工事において、掘削工事の高速化のため、さまざまな施工の合理化を図った結果、NATM(*1)による大断面トンネルとしては国内最高記録となる月進(月間掘削距離)270mを達成した。また、本トンネル工事では、山岳トンネルの効率的かつ高速な施工を目的として、ドリルジャンボ(発破用の爆薬の装填やロックボルトの孔を開けるための施工機械)の新しい削孔誘導システム「MOLEs(*2)(モールス)」を㈱演算工房と共同で開発し、初適用した。
*1:NATM:New Austrian Tunneling Method 地山自体の保持力を利用してトンネルを支保する工法
*2:MOLEs:Mograss Operate with Laser scanning Engine system
ドローンを使ったレーザ測量技術を㈱ニコン・トリンブル及びルーチェサーチ㈱と共同で実施し、大分川ダム建設工事において、日本で初めてドローンによるレーザ測量を行い、高密度・高精度の測量が可能であることを確認した。従来技術のドローンによる写真測量では、予め基準点を地表面に複数設置する必要があるが、本測量では地表面に向けてレーザを照射することで得られる距離と、機体に内蔵されたGNSS(*3)とジャイロセンサーにより機体の位置情報を得られるため、基準点の設置が不要となった。また、レーザは樹木の隙間を通り地表面まで到達するため、伐採・除根前に地山を計測することが可能である。
*3:GNSS:Global Navigation Satellite System(全球測位衛星システム) GPS、GLONASS、Galileo、準天頂衛星(QZSS)等の衛星測位システムの総称
光ファイバーを用いたひずみ計測技術を応用し、PC(プレストレストコンクリート)に使用するPCケーブルの張力を計測する技術を住友電工スチールワイヤー㈱及びヒエン電工㈱と共同で開発した。本計測技術を国道115号月舘高架橋上部工工事に適用し、PCケーブルの緊張作業時の張力並びに定着後や施工完了後の導入張力(コンクリートを圧縮する力)の分布を現場で高い精度で計測できることを確認した。本技術を適用することで、従来困難であったPCケーブルの張力管理を施工時から維持管理まで的確に行うことが可能となった。
既存超高層ビル「サンシャイン60」において、巨大地震が発生した際に予想される長周期地震動に対する安全性を一層高めることを目的として、新たに開発された変形制御ダンパ「S-Lockダンパ※」を含む3種類のダンパを組み合わせる日本初の工法による長周期地震動対策工事を実施した。「サンシャイン60」は既に新耐震設計基準により設計された建築物と同等以上の耐震性を有しているが、本対策により建物の安全性を更に確かなものとした。
東京電力福島第一原子力発電所における汚染水対策として、原子炉建屋群の周囲に水を通さない壁(陸側遮水壁)を造成することとなり、当社は遮水性や施工性に優れた凍土方式による遮水壁を提案し、2013年に採用された。2015年度末から凍土壁の造成を段階的に進めた結果、地下水位の変化から凍土壁が遮水壁として機能していることが確認された。遮水壁は造成後も長期にわたり安定して運用する必要があるため、地中の壁の健全性を温度で常時確認することができるモニタリングシステムや、万一、凍結管が損傷しても凍結管を容易に交換できる三重管構造など、様々な安全対策を構築した。
高い環境性能・品質・経済性を兼ね備えた新しい環境配慮型コンクリート「エコクリート※BLS(*4)」を開発した。建築物を構築する上で不可欠な材料であるセメントは製造過程で大量のCO2を排出することから、CO2排出量の少ない低炭素セメントを用いたコンクリートの使用が求められている。本コンクリートは、低炭素セメントである高炉セメントA種(*5)を改良し、製造時におけるCO2排出量を一般的なセメントより25%削減しながらも、高いひび割れ抵抗性と汎用性を兼ね備えるとともに、普通コンクリートと同レベルのコストを実現したものである。
*4:BLS:Blast-furnace slag(高炉スラグ)Low Shrinkage(低収縮)
*5:高炉スラグ含有率が5~30%のセメント
環境負荷が小さい土質改良材「泥CURE※(デイキュア)」を開発した。本土質改良材を岩手県で施工中の二級河川閉伊川筋藤原地区河川災害復旧(23災662号)水門土木工事に適用した結果、軟弱な河床堆積物が、24時間後には調査のための重機走行が可能な状態となった。本土質改良材は、重金属等の有害物質を含まず、中性~弱アルカリ性の複数の無機材料を組み合わせたものであり、生息する魚類等の生育環境への配慮が必要な水域での掘削・埋戻し作業に適用可能である。
舗装に関する新材料、新工法の開発
既存技術の適用性拡大に向け技術の改善及び拡充を図り、試験施工を実施した。今後は、試験施工箇所の性能を評価した上で、実工事に順次適用していく予定である。また、ICT(情報通信技術)を活用した「i-Pavement(舗装)対応技術」や低騒音性と遮水性の両方の特長を併せ持つ「ハイブリッドコンクリート舗装」等について、引続き研究開発を進めている。
新凍結工法「ICECRETE(アイスクリート)※工法」の実用化
フロン排出規制の国際的な枠組みへの対応が求められる中、自然冷媒であるCO2気液混合流体を活用した新凍結工法「ICECRETE(アイスクリート)※工法」を海底シールドトンネルの地中接続工事に初めて適用し、接続部の周辺土壌を事前に凍結させることで、シールド内への海水及び土砂の流入を防ぐことに成功した。新凍結工法では、液化したCO2を凍結管に循環させ気化潜熱で地盤から効率良く熱を奪うことにより、従来工法に比べ、冷媒量を大幅に削減することができるため、冷凍機、配管等の設備の小型化、省電力化が可能となった。また、設備の小型化により、シールド内の作業スペースが広がったことで、それまで段階的に行っていた作業を並行して進めることが可能となり、同工事の大幅な工期短縮に寄与した。
研究開発活動は特段行われていない。
(注) 工法等に「※」が付されているものは、当社及び関係会社の登録商標である。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されているが、この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されている。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っているが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なることがある。
当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高は、建設事業・開発事業等ともに増加し、増収となった。
利益については、建設事業の利益率向上と開発事業等の好調な推移により売上総利益が増加したことを主因に、営業利益、経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益がいずれも増益となった。
当連結会計年度末の手許資金(現金及び現金同等物)の残高は、前連結会計年度末に比べ1,326億円増加し、3,674億円(前連結会計年度末は2,348億円)となった。
営業活動によるキャッシュ・フローは、1,875億円の収入超過(前連結会計年度は363億円の収入超過)となった。これは、税金等調整前当期純利益1,621億円に減価償却費193億円等の調整を加味した収入に加えて、未成工事受入金及び開発事業等受入金の増加542億円の収入があった一方で、法人税等の支払額449億円及び工事損失引当金の減少316億円の支出があったこと等によるものである。
投資活動によるキャッシュ・フローは、319億円の支出超過(前連結会計年度は278億円の支出超過)となった。これは、有形固定資産の取得による支出250億円があったこと等によるものである。
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金、長期借入金、コマーシャル・ペーパー及び社債の資金調達と返済の収支が25億円の支出超過となったことに加えて、配当金の支払額166億円の支出等により、205億円の支出超過(前連結会計年度は131億円の支出超過)となった。
なお、当社においては、緊急時の資金調達手段の確保等を目的として、総額1,500億円のコミットメントライン契約を締結している。
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末比1,060億円増加し、1兆9,928億円(前連結会計年度末は1兆8,867億円)となった。これは、現金預金の増加1,321億円等によるものである。
負債合計は、前連結会計年度末比275億円増加し、1兆4,402億円(前連結会計年度末は1兆4,127億円)となった。これは、未成工事受入金の増加549億円があった一方で、工事損失引当金の減少316億円があったこと等によるものである。なお、当連結会計年度末の有利子負債残高※は、3,729億円(前連結会計年度末は3,785億円)となった。
純資産合計は、株主資本4,400億円、その他の包括利益累計額1,084億円、非支配株主持分40億円を合わせて、前連結会計年度末比785億円増加の5,525億円(前連結会計年度末は4,740億円)となった。
また、自己資本比率は、前連結会計年度末比2.5ポイント好転し、27.5%(前連結会計年度末は25.0%)となった。
(注) ※短期借入金、コマーシャル・ペーパー、社債(1年内償還予定の社債を含む)及び長期借入金の合計額