当社グループにおける経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりである。
なお、文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において判断したものである。
当社グループは、経営理念として「全社一体となって、科学的合理主義と人道主義に基づく創造的な進歩と発展を図り、社業の発展を通じて社会に貢献する。」ことを掲げ、さらに、企業経営の根幹を成す品質・安全衛生・環境に関する基本方針として「関係法令をはじめとする社会的な要求事項に対応できる適正で効果的なマネジメントシステムを確立・改善することにより、生産活動を効率的に推進するとともに、顧客や社会からの信頼に応える。」ことを定めている。
こうした方針に基づく取り組みを通して、より高い収益力と企業価値の向上を目指すとともに、社業の永続的発展により株主、顧客をはじめ広く関係者の負託に応え、将来に亘りより豊かな社会の実現に貢献していく。
当連結会計年度における世界経済は、政治・経済面において不確実な状況が継続する中、貿易や投資の力強さを背景に、景気の好転が多くの国や地域に広がった。我が国経済については、外需等の下支えにより企業収益が高水準を維持し、民間設備投資の増加や雇用情勢の改善などによる景気の緩やかな回復が続いた。国内建設市場においては、建設投資は再開発事業や生産施設等の需要が堅調に推移し、建設コストの上昇は限定的範囲に留まったことから、引き続き安定した環境となった。
今後の我が国経済については、世界経済の先行きは不透明であるものの、内需の回復に支えられた緩やかな成長が持続すると期待している。国内建設市場においては、建設投資は首都圏を中心に当面は堅調に推移する見通しであるが、大規模再開発ビルや東京オリンピック・パラリンピック関連施設などの多くの工事が本格的な繁忙期を迎えることから、建設コストが高騰する懸念がある。また、長期的には少子高齢化や生産年齢人口の減少など、国内建設市場を取り巻く環境は変化していくと考えている。
このような見通しの中、当社グループは経営課題への対処とESGの観点を踏まえた持続可能な成長の実現に向けて「鹿島グループ中期経営計画(2018~2020)」(平成30年5月15日公表)をスタートした。「①次世代建設生産システムの構築、②社会・顧客にとって価値ある建設・サービスの提供、③成長に向けたグループ経営基盤の確立」の基本方針に基づいた諸施策を実行していく。
国内建設事業については、機械化やICT等の活用により生産性向上を図ることに加えて戦略的なR&Dを推進するとともに、建設業の将来的な担い手確保に向けた魅力ある労働環境を整備して、人と技術の両面から高い競争力を有する次世代建設生産システムの構築を目指す。また、グループ一体となって有望市場への対応を強化し、建設事業の上流のエンジニアリングや設計、下流の施設運営・管理、維持・修繕などの当社グループの強みである建設周辺分野の取り組みを一層推し進めることにより、収益源の多様化を図る。
国内開発事業については、収益力の強化に向けて、短期に資金回収する販売物件と安定収益を生む賃貸物件のバランスを重視して優良プロジェクトの積極的な創出を図るとともに、不動産マネジメントなどの関連事業にグループ会社と連携して取り組む。
海外事業については、建設と開発のノウハウを活かした事業展開により収益拡大を目指す。現地企業との業務提携やM&A等を通じて新たな市場や事業領域を開拓することに加えて、地域ごとの特色を踏まえた開発事業を一層推進するとともに、現地法人間の連携や事業間の協働を促進する。
さらに、市場の変化や事業領域の拡大に対応するためグループ経営基盤を整備する。特にコンプライアンスとリスク管理に関しては、企業活動の根底となる最重要課題と認識し、法令遵守、品質及び安全等の様々なリスクへの対応を強化する。また、働き方改革を通じて建設業の魅力向上に努め、環境変化に柔軟に適応できる多様な人材の育成と人事諸制度の整備に取り組むとともに、地球環境や防災減災等の社会課題への取り組みを強化する。
なお、平成30年3月に当社及び当社社員1名が、東海旅客鉄道株式会社が発注する中央新幹線に係る建設工事の独占禁止法違反容疑により起訴された。長年にわたり法令遵守のための諸施策を講じてきたが、このような事態に至ったことは誠に遺憾である。起訴内容を精査した上で、当社として主張すべき点については公判の場で主張していくが、起訴された事実を重く受け止め、役員・従業員一同、コンプライアンスの更なる徹底を図り信頼の回復に努める。
「鹿島グループ中期経営計画(2018~2020)」の最終年度である平成33年3月期の目標を売上高2兆1,500億円程度、親会社株主に帰属する当期純利益800億円以上、ROE10.0%以上とし、施策および投資の成果等により、中長期的に親会社株主に帰属する当期純利益1,000億円以上を目指す。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、主として以下のようなものがある。
なお、文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において判断したものである。
当社グループにおいては、これらの事業を取り巻く様々なリスクや不確定要因等に対して、その予防や分散、リスクヘッジ等を実施することにより、企業活動への影響について最大限の軽減を図っている。
想定を上回る建設需要の減少や主要資材価格等の急激な上昇、不動産市場における需給状況や価格の大幅な変動等、建設事業・開発事業等に係る著しい環境変化が生じた場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
長期大型工事において、主要資材価格の急激な上昇等により、想定外に建設コストが増加した場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
金利水準の急激な上昇、為替相場の大幅な変動等が生じた場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
販売用不動産、事業用不動産及び有価証券等の保有資産の時価が著しく下落した場合又は収益性が著しく低下した場合等には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
当社グループでは、米国・欧州・アジア・大洋州等の諸外国において事業展開を図っており、当該進出国の政治・経済情勢、法制度等に著しい変化が生じた場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
PFI事業の推進にあたり、長期に亘る運営期間の中で、事業環境に著しい変化が生じた場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
当社グループでは、設計、施工をはじめとする様々なサービスを提供しているが、万が一、重大な瑕疵が発生した場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
発注者、協力会社、共同施工会社等の取引先が信用不安に陥った場合には、資金の回収不能や施工遅延等により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
当連結会計年度末において計上している繰延税金資産については、今後の利益(課税所得)をもって全額回収可能と考えているが、制度面の変更等によっては、一部取崩しを求められる可能性がある。
当社グループの属する建設業界は、建設業法、建築基準法、宅地建物取引業法、国土利用計画法、都市計画法、独占禁止法等により法的規制を受けている。そのため、上記法律の改廃や新たな法的規制の制定、適用基準の変更等によっては、業績等に影響を及ぼす可能性がある。なお、当社グループに対する訴訟等について、当社グループ側の主張・予測と相違する結果となった場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりである。
(注)「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」における各事項の記載については、消費税等抜きの金額を表示している。
売上高は、前連結会計年度と同水準で推移し、前連結会計年度比0.5%増の1兆8,306億円(前連結会計年度は1兆8,218億円)となった。
利益については、建設事業の総利益率が向上したことを主因に、営業利益は前連結会計年度比1.9%増の1,583億円(前連結会計年度は1,553億円)、経常利益は同10.0%増の1,797億円(同1,634億円)、親会社株主に帰属する当期純利益は同20.9%増の1,267億円(同1,048億円)となった。
セグメントごとの経営成績は次のとおりである。(セグメントの経営成績については、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載している。)
(当社における建設事業のうち土木工事に関する事業)
完成工事高は、国内・海外ともに増加し、前連結会計年度比23.5%増の3,665億円(前連結会計年度は2,968億円)となった。
営業利益は、完成工事総利益率の向上も加わり、前連結会計年度比59.5%増の574億円(前連結会計年度は359億円)となった。
(当社における建設事業のうち建築工事に関する事業)
完成工事高は、前連結会計年度と概ね同水準で推移し、前連結会計年度比9.9%減の7,526億円(前連結会計年度は8,351億円)となった。
営業利益は、前連結会計年度と概ね同水準で推移し、前連結会計年度比9.8%減の709億円(前連結会計年度は786億円)となった。
(当社における都市開発、地域開発など不動産開発全般に関する事業及び意匠・構造設計、その他設計、エンジニアリング全般の事業)
前連結会計年度のような大型販売物件の計上がなかったことを主因に、売上高は前連結会計年度比36.1%減の459億円(前連結会計年度は718億円)、営業利益は同30.7%減の68億円(同98億円)となった。
(当社の国内関係会社が行っている事業であり、主に日本国内における建設資機材の販売、専門工事の請負、総合リース業、ビル賃貸
事業等)
売上高は、前連結会計年度と同水準で推移し、前連結会計年度比0.8%増の3,639億円(前連結会計年度は3,611億円)となった。
営業利益は、売上総利益率の低下を主因に、前連結会計年度比16.8%減の162億円(前連結会計年度は195億円)となった。
(当社の海外関係会社が行っている事業であり、米国、欧州、アジア、大洋州などの海外地域における建設事業、開発事業等)
売上高は、前連結会計年度と概ね同水準で推移し、前連結会計年度比9.0%増の4,371億円(前連結会計年度は4,009億円)となった。
営業利益は、売上総利益率の低下と販管費の増加により、前連結会計年度比85.6%減の16億円(前連結会計年度は116億円)となった。
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末比813億円増加し、2兆741億円(前連結会計年度末は1兆9,928億円)となった。これは、保有株式等の時価上昇による含み益の増加を主因とする投資有価証券の増加297億円、長期貸付金の増加251億円及び現金預金の増加204億円等によるものである。
負債合計は、前連結会計年度末比358億円減少し、1兆4,043億円(前連結会計年度末は1兆4,402億円)となった。これは、有利子負債残高※の減少280億円及び未成工事受入金の減少227億円等によるものである。なお、当連結会計年度末の有利子負債残高は、3,448億円(前連結会計年度末は3,729億円)となった。
純資産合計は、株主資本5,443億円、その他の包括利益累計額1,216億円、非支配株主持分37億円を合わせて、前連結会計年度末比1,172億円増加の6,697億円(前連結会計年度末は5,525億円)となった。
また、自己資本比率は、前連結会計年度末比4.6ポイント好転し、32.1%(前連結会計年度末は27.5%)となった。
(注) ※短期借入金、コマーシャル・ペーパー、社債(1年内償還予定の社債を含む)及び長期借入金の合計額
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、1,204億円の収入超過(前連結会計年度は1,875億円の収入超過)となった。これは、税金等調整前当期純利益1,776億円に減価償却費193億円等の調整を加味した収入があった一方で、法人税等の支払額480億円及び未成工事受入金及び開発事業等受入金の減少252億円の支出があったこと等によるものである。
投資活動によるキャッシュ・フローは、473億円の支出超過(前連結会計年度は319億円の支出超過)となった。これは、貸付けよる支出298億円及び有形固定資産の取得による支出127億円があったこと等によるものである。
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金、長期借入金、コマーシャル・ペーパー及び社債の資金調達と返済の収支が277億円の支出超過となったことに加えて、配当金の支払額238億円の支出等により、530億円の支出超過(前連結会計年度は205億円の支出超過)となった。
これらにより、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末から218億円増加し、3,893億円(前連結会計年度末は3,674億円)となった。
当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため、また、受注高について当社グループ各社の受注概念が異なるため、「生産の実績」及び「受注の実績」は記載していない。
|
セグメントの名称 |
前連結会計年度 (自 平成28年4月1日 至 平成29年3月31日) |
当連結会計年度 (自 平成29年4月1日 至 平成30年3月31日) |
増減(△)率 |
|||||||
|
土木事業 |
(百万円) |
296,857 |
( |
16.3 |
%) |
366,588 |
( |
20.0 |
%) |
23.5 |
|
建築事業 |
(百万円) |
830,107 |
( |
45.6 |
%) |
750,343 |
( |
41.0 |
%) |
△9.6 |
|
開発事業等 |
(百万円) |
69,869 |
( |
3.8 |
%) |
43,457 |
( |
2.4 |
%) |
△37.8 |
|
国内関係会社 |
(百万円) |
223,999 |
( |
12.3 |
%) |
233,124 |
( |
12.7 |
%) |
4.1 |
|
海外関係会社 |
(百万円) |
400,971 |
( |
22.0 |
%) |
437,112 |
( |
23.9 |
%) |
9.0 |
|
合計 |
(百万円) |
1,821,805 |
( |
100 |
%) |
1,830,625 |
( |
100 |
%) |
0.5 |
(注) 1 売上実績においては、「外部顧客への売上高」について記載している。
2 前連結会計年度及び当連結会計年度ともに売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
|
期別 |
種類別 |
期首繰越高 |
当期受注高 |
計 |
当期売上高 |
期末繰越高 |
||
|
前事業 |
建 |
建築工事 |
991,034 |
940,273 |
1,931,308 |
835,149 |
1,096,158 |
|
|
自 |
至 |
土木工事 |
520,730 |
364,311 |
885,042 |
296,857 |
588,184 |
|
|
計 |
1,511,765 |
1,304,585 |
2,816,350 |
1,132,007 |
1,684,343 |
|||
|
開発事業等 |
59,617 |
45,379 |
104,997 |
71,838 |
33,159 |
|||
|
合計 |
1,571,382 |
1,349,965 |
2,921,348 |
1,203,845 |
1,717,502 |
|||
|
当事業 |
建 |
建築工事 |
1,096,158 |
845,356 |
1,941,515 |
752,677 |
1,188,837 |
|
|
自 |
至 |
土木工事 |
588,184 |
303,221 |
891,406 |
366,588 |
524,817 |
|
|
計 |
1,684,343 |
1,148,577 |
2,832,921 |
1,119,266 |
1,713,655 |
|||
|
開発事業等 |
33,159 |
51,507 |
84,666 |
45,909 |
38,757 |
|||
|
合計 |
1,717,502 |
1,200,085 |
2,917,587 |
1,165,175 |
1,752,412 |
|||
(注) 1 前事業年度以前に受注したもので、契約の更改により請負金額に変更があるものについては、当期受注高
にその増減額を含む。したがって、当期売上高にもかかる増減額が含まれる。
2 期末繰越高は、(期首繰越高+当期受注高-当期売上高)である。
|
期別 |
区分 |
国内 |
海外 |
計 |
|
|
官公庁 |
民間 |
(百万円) |
(百万円) |
||
|
前事業年度 (自 平成28年4月1日 至 平成29年3月31日) |
建築工事 |
101,054 |
839,219 |
- |
940,273 |
|
土木工事 |
273,550 |
116,472 |
△25,711 |
364,311 |
|
|
計 |
374,604 |
955,692 |
△25,711 |
1,304,585 |
|
|
当事業年度 (自 平成29年4月1日 至 平成30年3月31日) |
建築工事 |
83,582 |
761,774 |
- |
845,356 |
|
土木工事 |
171,198 |
130,254 |
1,768 |
303,221 |
|
|
計 |
254,780 |
892,028 |
1,768 |
1,148,577 |
|
建設工事の受注方法は、特命と競争に大別される。
|
期別 |
区分 |
特命(%) |
競争(%) |
計(%) |
|||
|
前事業年度 (自 平成28年4月1日 至 平成29年3月31日) |
建築工事 |
65.0 |
|
35.0 |
|
100 |
|
|
土木工事 |
20.9 |
|
79.1 |
|
100 |
|
|
|
当事業年度 (自 平成29年4月1日 至 平成30年3月31日) |
建築工事 |
47.1 |
|
52.9 |
|
100 |
|
|
土木工事 |
28.6 |
|
71.4 |
|
100 |
|
|
(注) 百分比は請負金額比である。
|
期別 |
区分 |
国内 |
海外 |
計 |
|
|
官公庁 |
民間 |
(百万円) |
(百万円) |
||
|
前事業年度 (自 平成28年4月1日 至 平成29年3月31日) |
建築工事 |
105,959 |
729,190 |
- |
835,149 |
|
土木工事 |
179,449 |
116,646 |
761 |
296,857 |
|
|
計 |
285,409 |
845,836 |
761 |
1,132,007 |
|
|
当事業年度 (自 平成29年4月1日 至 平成30年3月31日) |
建築工事 |
92,915 |
659,761 |
- |
752,677 |
|
土木工事 |
249,880 |
93,109 |
23,598 |
366,588 |
|
|
計 |
342,795 |
752,871 |
23,598 |
1,119,266 |
|
(注) 1 前事業年度及び当事業年度ともに完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
2 当事業年度の完成工事のうち主なものは、次のとおりである。
|
発注者 |
工事名称 |
|
○ 三井不動産㈱ |
東京ミッドタウン日比谷新築工事 |
|
○ 銀座六丁目10地区市街地再開発組合 |
GINZA SIX 新築工事 |
|
○ リゾートトラスト㈱ |
芦屋ベイコート倶楽部新築工事 |
|
○ グリーンアセットインベストメント 特定目的会社 |
日比谷パークフロント新築工事 |
|
○ 積水ハウス㈱ |
御園座タワー新築工事 |
|
○ ㈱ヘルスケア・ジャパン |
(仮称)サンシティタワー神戸新築工事 |
|
○ 東日本旅客鉄道㈱ |
横浜北線交差部新設工事 |
|
○ 西日本高速道路㈱ |
新名神高速道路 箕面トンネル西工事 |
|
区分 |
国内 |
海外 |
計 |
|
|
官公庁 |
民間 |
(百万円) |
(百万円) |
|
|
建築工事 |
143,129 |
1,045,708 |
- |
1,188,837 |
|
土木工事 |
357,989 |
162,200 |
4,627 |
524,817 |
|
計 |
501,118 |
1,207,908 |
4,627 |
1,713,655 |
(注) 繰越工事のうち主なものは、次のとおりである。
|
発注者 |
工事名称 |
|
○ 三井物産㈱、三井不動産㈱ |
(仮称)OH-1計画新築工事 |
|
○ ㈱アルベログランデ |
(仮称)竹芝地区開発計画(業務棟)新築工事 |
|
○ 日本橋室町三丁目地区市街地再開発組合 |
日本橋室町三丁目地区第一種市街地再開発事業A地区新築工事 |
|
○ 日本橋二丁目地区市街地再開発組合 |
日本橋二丁目地区第一種市街地再開発事業(C・D街区) 新築工事 |
|
○ 東日本高速道路㈱ |
東京外かく環状道路 本線トンネル(南行)東名北工事 |
|
○ 三井不動産レジデンシャル㈱、丸紅㈱ |
ザ・タワー横浜北仲 新築工事 |
|
○ 東日本高速道路㈱ |
横浜環状南線 公田笠間トンネル工事 |
|
○ 東京建物㈱、㈱サンケイビル |
(仮称)豊島プロジェクトA棟・B棟新築工事 |
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されているが、この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されている。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っているが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なることがある。
当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高は前連結会計年度と同水準となり、建設事業の総利益率が向上したことを主因に、営業利益、経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益はいずれも増益となった。前連結会計年度を上回る利益を確保することができたのは、これまで継続してきた生産性向上と原価低減に向けた取り組みの成果に加え、建設コストの安定的な推移や過年度に計上した海外土木工事の総損失額の減少等の要因が寄与した結果と考えている。
経営成績に重要な影響を与える主な要因は、建設需要や建設コストの急激な変動等の事業環境の変化である。当連結会計年度における事業環境は安定的に推移したと考えているが、今後については、短期的には首都圏における大規模工事の施工集中により建設コストが高騰する懸念があり、中長期的には国内の少子高齢化や生産年齢人口の減少、建設投資の質・量の変化、海外における経済隆盛地域の変動などを予測している。
このような環境において、当社グループは、持続可能な成長を実現するため、新たに策定した「鹿島グループ中期経営計画(2018~2020)」に基づく諸施策を推進する。資本の財源及び資金の流動性については、営業キャッシュ・フローと開発物件の売却収入を主な原資として、国内・海外の不動産開発やR&D等への投資を積極的に実施する。
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりである。
(当社における建設事業のうち土木工事に関する事業)
完成工事高は国内・海外ともに増加し、営業利益は増益となった。増益となったのは、完成工事高が増加したことに加えて、国内工事の総利益率が追加変更契約の獲得や原価低減により高水準となったこと、過年度に計上した海外工事の総損失額が減少したこと等によるものである。
(当社における建設事業のうち建築工事に関する事業)
完成工事高と営業利益はともに前連結会計年度と概ね同水準となった。建設コストが安定的に推移した中、受注前のフロントローディングを徹底するとともに、受注後も最適な施工方法を追求して生産性向上と原価低減に取り組んできた成果等により、引き続き高水準の利益を確保することができたと考えている。
(当社における都市開発、地域開発など不動産開発全般に関する事業及び意匠・構造設計、その他設計、エンジニアリング全般の事業)
売上高と営業利益はともに前連結会計年度を下回った。これは、前連結会計年度のような大型販売物件の計上がなかったことが主因である。
(当社の国内関係会社が行っている事業であり、主に日本国内における建設資機材の販売、専門工事の請負、総合リース業、ビル賃貸
事業等)
売上高は前連結会計年度と同水準となり、営業利益は減益となった。売上総利益率の低下を主因に減益となったものの、当連結会計年度においても高水準の利益を確保することができたと考えている。
(当社の海外関係会社が行っている事業であり、米国、欧州、アジア、大洋州などの海外地域における建設事業、開発事業等)
売上高は前連結会計年度と概ね同水準となり、営業利益は減益となった。当連結会計年度は売上総利益率の低下と販管費の増加により減益となったが、海外の建設・開発事業は当社グループの強みを活かせる事業領域であることから、着実な収益拡大に向けた施策及び投資を引き続き推進する。
特記事項なし。
当社グループは、多様化する社会及び顧客のニーズに対応し、受注並びに生産への貢献を目的に、建設事業の品質及び生産性向上のための技術をはじめとして、将来的なニーズを先取りする技術まで幅広い課題に関する研究開発活動を大学、公共機関や他企業との共同研究も推進しながら、効率的に実施している。
当連結会計年度における研究開発費の総額は103億円であり、主な成果は次のとおりである。なお、当社は研究開発活動を土木事業、建築事業のセグメントごとに区分していないため建設事業として記載している。
近年、人が室内空間全体から感じる明るさの印象(明るさ感)に着目した光環境の評価手法が広く用いられるようになっているが、従来の手法では室内空間から目に入ってくる光の量の平均から明るさ感を求めていたため、評価結果と実際の明るさ感にズレが生じていた。そこで、当社は明るさ感が視野内の輝度の「対比」の影響を受けることに着目して、光環境を評価する新手法を開発し、人の感覚により近い明るさ感の評価と室内空間の明暗の制御によるきめ細かな光環境デザインを可能にした。
都市部の再開発工事においては、既存建物の基礎や杭を解体する必要があるが、地下の狭あいな場所での非効率的な作業や騒音、振動等による周辺環境への影響が課題であった。そこで、2011年に開発した微少発破による建物基礎の解体工法である「鹿島MB工法※」をより深い場所まで一度に発破できるように改良した「パイルMB工法※」を国立研究開発法人産業技術総合研究所、カヤク・ジャパン㈱と共同で開発した。これにより、従来の約5~6倍の深さまで一度に発破することが可能となり、都内再開発工事の大型既存杭解体工事に適用した結果、騒音・振動の低減、解体工期の削減に大きな効果があることを確認した。
軟弱な地盤に建物を構築する場合には、杭を硬質な支持層に確実に到達させる必要があり、敷地の地盤状況を正確に把握することが不可欠である。当社では、複雑な地盤を正確に把握するための独自装置として、地盤調査車「GEO-EXPLORER※」(ジオ・エクスプローラー)を1994年に開発し継続的に運用を進めてきた。昨今の支持層確認ニーズの高まりを踏まえ、不整地や狭小地への適用性を高めるため、本装置の主要機能を引継ぎ大幅に小型化した小型地盤調査車「miniGeo※」(ミニジオ)を新たに開発し、運用を開始した。
コンクリート構造物における配筋検査は、鉄筋径を区別するマーキングや鉄筋の間隔を示すスケールスタッフの設置など検査前の準備作業に多くの手間がかかり、省力化が強く望まれていたため、日本電気㈱、オリンパス㈱と共同でステレオカメラ(*1)とタブレット端末を連動させた自動配筋検査システムを開発した。本システムの適用により、配筋した検査対象を撮影するだけで、鉄筋径、間隔、本数の自動計測が瞬時にできるため、配筋検査の大幅な省力化の実現とヒューマンエラーのない確実な検査の実施が可能となった。
*1:立体写真撮影用のカメラ。対象物を異なる方向から同時に撮影することにより、その奥行き方向の情報も記録できる。
山岳トンネル工事において、切羽(トンネルにおける掘削面)から100m程度先までの地質等を調査する中尺ボーリングを活用して、切羽前方の湧水区間の水圧を連続的にモニタリングするシステム「中尺「スイリモ※」(中尺ボーリング版 水(すい)リサーチ・モニター)」を鉱研工業㈱と共同で開発した。湧水圧の変動を正確に把握することで適切な対策を事前に検討することができるようになったため、トンネル掘削における安全性の向上と工程遅延リスクの低減が期待できる。
建設業では、将来的な熟練作業員不足が懸念される中、現場作業の省力化による生産性の向上が課題となっている。そこで、都市部の道路トンネルなどを開削工法により構築するにあたり、現場作業を低減するプレキャスト化のメリットを活かしつつ、コストは従来工法と同等としながらも大幅な省力化と工程短縮を実現する「スーパーリング※工法」を開発した。本工法のコストは従来の場所打ちコンクリートによるボックスカルバートと同等ながら、現場での作業員数を約90%削減するとともに、躯体構築の工程も約50%短縮を可能とした。
当社は複雑化する都市部の地下空間構築のため、矩形シールド・推進工法「VERSATILE BOX※工法」のラインナップの充実に向けて開発を行っている。高速道路出口ランプ部の構築においては、非開削工法の密閉型矩形シールドマシン「アポロカッター※」を用いてさまざまな安全対策と切羽の厳格な土圧管理を実施し、地表面への影響を最小限に抑えながら掘削を行った。また、地下連絡通路の構築においては、密閉型矩形シールド「EX-MAC(*2)(イー・マック)」を用いて、伸縮カッターに連動して動く土圧変動抑制装置を左右2箇所に装備することで、泥土圧を安定させ、都心の地下で安全な掘進を実施した。
*2:EX-MAC:EXcavation Method of Adjustable Cutter
一般的な下地材とボード類により構成される吊り天井は、概ね10kg/㎡以上の重量があり、また固く割れやすい面材を用いると、大きな地震による破壊・脱落によって人的被害が発生するおそれがある。そこで、脱落しにくい軽量な吊り天井を実現することにより、安全性・生産性・経済性の向上を目指した「セーフティ・ダイア※‐K」を開発した。高く広い天井にも適用可能であり、超軽量、かつ脱落しにくい構造により、地震時にも重大な人的被害の回避が期待できる。
2010年の土壌汚染対策法改正により、環境基準値を超過する自然由来の重金属含有土も法律の適用範囲となり、シールド工事において重金属を含む地盤を掘削する場合も土壌汚染への対応が求められている。そこで、砒素等の重金属に汚染された土壌を現場で磁気分離処理して浄化する技術「M(エム)・トロン※」を泥土圧・流体圧送シールド工事で適用し、砒素汚染掘削土砂(泥水性状)の連続浄化に成功した。また、そこで得た知見から、汚染泥水の発生量が膨大な大断面シールド工事においても連続浄化を可能とする処理フローを開発した。
舗装に関する新技術の開発
既存技術の適用性拡大のため、ヒートスティック工法を用いた薄層凍結抑制舗装を開発し、実路において、凍結抑制効果と共用性を確認した。また、生産性向上を目指しICT(情報通信技術)を活用した「i-Pavement(舗装)対応技術」等について、引続き研究開発を進めている。加えて、重機災害防止に向け、人や障害物を感知すると自動的にブレーキが作動する舗装用重機自動ブレーキアシスト装置を開発し、良好な試験結果を得た。
高強度耐久グラウトの開発
地震による液状化現象対策の一つとして薬液注入工法が有効である。薬液注入工法でレベル2地震動による液状化現象を抑止することを目指し、 耐久グラウト「エコリヨン※」を従来強度(qu=50~100kN/㎡(*3))の2倍程度となる高強度配合を開発した。この高強度配合を用いて模擬地盤に実物大の薬液注入を行い、従来と同等の施工方法によっても目標とする高強度の改良体を造成できることを確認した。今後、地震動の大きさに応じた対策工法として、従来の薬液注入による低強度改良と高圧噴射撹拌工法による高強度改良に加えて、その中間領域への適用を提案していく方針である。
*3:qu:室内試験で土のせん断強さを求める方法の一つである一軸圧縮試験から得られる圧縮強さ。土に対して水平方向から力を加えない状態で鉛直方向に圧縮したときに抵抗する最大値の応力。
研究開発活動は特段行われていない。
(注) 工法等に「※」が付されているものは、当社及び関係会社の登録商標である。