当社グループにおける経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り当連結会計年度末現在において判断したものであり、また、様々な要素により異なる結果となる可能性がある。
当社グループは、経営理念として「全社一体となって、科学的合理主義と人道主義に基づく創造的な進歩と発展を図り、社業の発展を通じて社会に貢献する。」ことを掲げ、さらに、企業経営の根幹を成す品質・安全衛生・環境に関する基本方針として「関係法令をはじめとする社会的な要求事項に対応できる適正で効果的なマネジメントシステムを確立・改善することにより、生産活動を効率的に推進するとともに、顧客や社会からの信頼に応える。」ことを定めている。
こうした方針に基づく取り組みを通して、より高い収益力と企業価値の向上を目指すとともに、社業の永続的発展により株主、顧客をはじめ広く関係者の負託に応え、将来に亘りより豊かな社会の実現に貢献していく。
当連結会計年度における世界経済は、全体としては成長基調を維持したものの、年度後半から通商問題の影響が徐々に顕在化したことなどにより、一部の国・地域において景気の減速がみられ、先行きに対する懸念は強まる状況となった。我が国経済は、国内における相次ぐ自然災害や通商問題の影響から輸出の鈍化や生産の一部に弱さがみられたが、企業収益の改善を背景とする設備投資の増加と良好な雇用・所得環境に支えられた個人消費の持ち直しにより緩やかな景気回復が続いた。国内建設市場においては、製造業を中心とする機能高度化・省力化に向けた設備投資や都心の大規模再開発事業等により建設需要は堅調に推移し、施工量の増加に伴い一部の資材や労務が不足する状況がみられたものの、建設コストへの影響は限定的な範囲にとどまった。
今後の我が国経済については、先行き不透明な世界経済の動向などを注視する必要はあるものの、堅調な企業収益と政府の各種政策が下支えとなって設備投資と個人消費が改善し、緩やかな成長が続くと期待している。国内建設市場においては、資機材や労務の需給逼迫による建設コストの高騰を懸念しているが、技術革新の進展などを背景とする底堅い民間建設需要に加えて、国土強靭化に関連した公共投資の増加等により、建設投資は当面堅調に推移する見通しである。また、中長期的には、社会・顧客ニーズの多様化・高度化や建設投資の量的・質的変容などの様々な要素が経営環境に変化をもたらすと考えている。
このような経営環境の中、当連結会計年度にスタートした「鹿島グループ中期経営計画(2018~2020)」は、足元の施工量増加に適切に対応し安定した利益を確保するとともに、ESGの観点を重視した施策を積極的に推進し、国連が採択したSDGsなども踏まえ事業を通じた社会課題の解決に取り組み、持続可能な成長の実現を目指すことをテーマとしており、今後も基本方針である「①次世代建設生産システムの構築、②社会・顧客にとって価値ある建設・サービスの提供、③成長に向けたグループ経営基盤の確立」に基づいた諸施策を積極的に推進していく。
国内建設事業(土木事業・建築事業)については、今後も続くと予想する繁忙と将来の技能労働者不足に対応するため、ICT・AI等最新技術を活用した生産性向上と生産能力の増強に向けた取り組みを加速すると同時に、次世代の担い手確保に繋がる働き方改革を推進し、人と技術の両面から高い競争力を有する次世代建設生産システムの構築を目指す。
国内開発事業については、開発中プロジェクトの着実な推進と新規優良プロジェクトの創出に向けた活動により、安定的な収益基盤の構築を目指す。また、短期に資金を回収する販売事業への積極的な取り組みや不動産運営・マネジメント分野における収益機会の拡大により、国内開発事業全体の収益力を強化していく。
国内関係会社については、当社グループの収益力強化を図るため、需給逼迫職種の直傭化などにより国内建設事業における生産機能を補完することに加え、グループ内の連携を一層強化し、建設事業の上流の企画・調査やエンジニアリング・設計から下流の施設運営・管理、維持・修繕までを一貫して対応できる体制の構築に取り組む。
海外関係会社については、建設と開発の機能・ノウハウを併せ持つ強みを活かした事業展開により収益拡大を目指す。現地企業との連携やM&A等を通じて新市場や成長地域への事業領域拡大を図るとともに、地域ごとのリスク・特性を的確に把握し、それぞれの市場に合わせた事業を推進する。
さらに、コンプライアンスについては、すべてに優先する最重要事項であることを改めて強く認識し、コンプライアンス・リスク管理体制のより一層の強化と既存ルールの見直しを実施している。今後二度と法令違反を疑われることのないよう、グループをあげてコンプライアンスの更なる徹底を図る。また、世界の最先端技術の探索と導入に本格的に取り組むなどR&Dを戦略的に推進するとともに、多様な人材の確保・育成を進め、市場や環境の変化に柔軟に対応し、事業領域の拡大と収益源の多様化を支えるグループ経営基盤の確立を目指す。
「鹿島グループ中期経営計画(2018~2020)」の最終年度である2021年3月期の目標を売上高2兆1,500億円程度、親会社株主に帰属する当期純利益800億円以上、ROE10.0%以上とし、施策及び投資の成果等により、中長期的に親会社株主に帰属する当期純利益1,000億円以上を目指す。
また、2020年3月期の業績予想(2019年5月15日公表)は下記のとおりである。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、主として以下のようなものがある。
なお、文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において判断したものである。
当社グループにおいては、これらの事業を取り巻く様々なリスクや不確定要因等に対して、その予防や分散、リスクヘッジ等を実施することにより、企業活動への影響について最大限の軽減を図っている。
想定を上回る建設需要の減少や主要資材価格等の急激な上昇、不動産市場における需給状況や価格の大幅な変動等、建設事業・開発事業等に係る著しい環境変化が生じた場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
長期大型工事において、主要資材価格の急激な上昇等により、想定外に建設コストが増加した場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
金利水準の急激な上昇、為替相場の大幅な変動等が生じた場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
販売用不動産、事業用不動産及び有価証券等の保有資産の時価が著しく下落した場合又は収益性が著しく低下した場合等には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
当社グループでは、北米・欧州・アジア・大洋州等の諸外国において事業展開を図っており、当該進出国の政治・経済情勢、法制度等に著しい変化が生じた場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
PFI事業の推進にあたり、長期に亘る運営期間の中で、事業環境に著しい変化が生じた場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
当社グループでは、設計、施工をはじめとする様々なサービスを提供しているが、万が一、重大な瑕疵が発生した場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
発注者、協力会社、共同施工会社等の取引先が信用不安に陥った場合には、資金の回収不能や施工遅延等により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
当連結会計年度末において計上している繰延税金資産については、今後の利益(課税所得)をもって全額回収可能と考えているが、制度面の変更等によっては、一部取崩しを求められる可能性がある。
当社グループの属する建設業界は、建設業法、建築基準法、宅地建物取引業法、国土利用計画法、都市計画法、独占禁止法等により法的規制を受けている。そのため、上記法律の改廃や新たな法的規制の制定、適用基準の変更等によっては、業績等に影響を及ぼす可能性がある。なお、当社グループに対する訴訟等について、当社グループ側の主張・予測と相違する結果となった場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりである。
(注)「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」における各事項の記載については、消費税等抜きの金額を表示している。
売上高は、建築事業における増加を主因に、前連結会計年度比7.8%増の1兆9,742億円(前連結会計年度は1兆8,306億円)となった。
利益については、土木事業における売上総利益減少を主因に、営業利益は前連結会計年度比9.9%減の1,426億円(前連結会計年度は1,583億円)、経常利益は同9.4%減の1,629億円(同1,797億円)となった。親会社株主に帰属する当期純利益は、連結子会社である鹿島道路株式会社において独占禁止法関連損失引当金繰入額を計上したことから特別損益が悪化し、同13.4%減の1,098億円(同1,267億円)となった。
セグメントごとの経営成績は次のとおりである。(セグメントの経営成績については、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載している。)
(当社における建設事業のうち土木工事に関する事業)
完成工事高は、前連結会計年度が国内・海外ともに高い水準であったことから、前連結会計年度比17.9%減の3,010億円(前連結会計年度は3,665億円)となった。
営業利益は、完成工事高の減少を主因に、前連結会計年度比38.6%減の352億円(前連結会計年度は574億円)となった。
(当社における建設事業のうち建築工事に関する事業)
完成工事高は、豊富な手持ち工事の施工が着実に進捗したことから、前連結会計年度比23.3%増の9,280億円(前連結会計年度は7,526億円)となった。
営業利益は、完成工事高の増加により、前連結会計年度比12.3%増の796億円(前連結会計年度は709億円)となった。
(当社における不動産開発全般に関する事業及び意匠・構造設計、その他設計、エンジニアリング全般の事業)
売上高は、販売用不動産の売却を主因に、前連結会計年度比11.5%増の512億円(前連結会計年度は459億円)となった。
営業利益は、不動産開発に関する事業の売上総利益は増加したものの、設計、エンジニアリングに関する事業の売上総利益が減少したことを主因に、前連結会計年度比20.7%減の54億円(前連結会計年度は68億円)となった。
(当社の国内関係会社が行っている事業であり、主に日本国内における建設資機材の販売、専門工事の請負、総合リース業、ビル賃貸
事業等)
売上高は、建設事業と資機材販売の増加により、前連結会計年度比7.1%増の3,896億円(前連結会計年度は3,639億円)となった。
営業利益は、前連結会計年度と同水準で推移し、前連結会計年度比1.4%増の165億円(前連結会計年度は162億円)となった。
(当社の海外関係会社が行っている事業であり、北米、欧州、アジア、大洋州などの海外地域における建設事業、開発事業等)
売上高は、前連結会計年度と同水準で推移し、前連結会計年度比4.3%増の4,559億円(前連結会計年度は4,371億円)となった。
営業利益は、建設事業、開発事業等ともに売上総利益率が改善したことを主因に、前連結会計年度比272.4%増の62億円(前連結会計年度は16億円)となった。
「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)を当連結会計年度の期首から適用しており、財政状態の状況については、当該会計基準を遡って適用した後の数値で前連結会計年度末との比較・分析を行っている。
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末比399億円増加し、2兆911億円(前連結会計年度末は2兆512億円)となった。これは、受取手形・完成工事未収入金等の増加752億円及び保有株式等の時価上昇による含み益の増加を主因とする投資有価証券の増加317億円等があった一方で、現金預金の減少718億円があったこと等によるものである。
負債合計は、前連結会計年度末比471億円減少し、1兆3,342億円(前連結会計年度末は1兆3,814億円)となった。これは、有利子負債残高※の減少461億円等によるものである。なお、当連結会計年度末の有利子負債残高は、2,987億円(前連結会計年度末は3,448億円)となった。
純資産合計は、株主資本6,251億円、その他の包括利益累計額1,281億円、非支配株主持分36億円を合わせて、前連結会計年度末比871億円増加の7,569億円(前連結会計年度末は6,697億円)となった。
また、自己資本比率は、前連結会計年度末比3.5ポイント好転し、36.0%(前連結会計年度末は32.5%)となった。
(注) ※短期借入金、コマーシャル・ペーパー、社債(1年内償還予定の社債を含む)及び長期借入金の合計額
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、303億円の収入超過(前連結会計年度は1,204億円の収入超過)となった。これは、税金等調整前当期純利益1,574億円に減価償却費191億円等の調整を加味した収入があった一方で、売上債権の増加793億円及び法人税等の支払額508億円の支出があったこと等によるものである。
投資活動によるキャッシュ・フローは、253億円の支出超過(前連結会計年度は473億円の支出超過)となった。これは、有形固定資産の取得による支出234億円、投資有価証券の取得による支出156億円及び貸付けによる支出120億円があった一方で、有形固定資産の売却による収入225億円があったこと等によるものである。
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金、長期借入金、コマーシャル・ペーパー及び社債の資金調達と返済の収支が446億円の支出超過となったことに加えて、配当金の支払額269億円の支出等により、750億円の支出超過(前連結会計年度は530億円の支出超過)となった。
これらにより、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末から738億円減少し、3,154億円(前連結会計年度末は3,893億円)となった。
当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため、また、受注高について当社グループ各社の受注概念が異なるため、「生産の実績」及び「受注の実績」は記載していない。
(注) 1 売上実績においては、「外部顧客への売上高」について記載している。
2 前連結会計年度及び当連結会計年度ともに売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
(注) 1 前事業年度以前に受注したもので、契約の更改により請負金額に変更があるものについては、当期受注高
にその増減額を含む。したがって、当期売上高にもかかる増減額が含まれる。
2 期末繰越高は、(期首繰越高+当期受注高-当期売上高)である。
建設工事の受注方法は、特命と競争に大別される。
(注) 百分比は請負金額比である。
(注) 1 前事業年度及び当事業年度ともに完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
2 当事業年度の完成工事のうち主なものは、次のとおりである。
(注) 繰越工事のうち主なものは、次のとおりである。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されているが、この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されている。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っているが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なることがある。
当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高は、首都圏を中心とする大型建築工事の施工が本格化したことなどから、前連結会計年度と比較し増収となったものの、利益については、前連結会計年度における土木事業の売上総利益が一過性の要因により高水準であったことを主因に、営業利益、経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益はいずれも減益となった。業績予想との比較では、売上高は同水準であったが、生産性向上や施工合理化による原価低減に加え、建設コストが想定より安定的に推移したことや一部の工事の設計変更追加契約の獲得等により、土木事業、建築事業の完成工事総利益率(土木事業19.0%、建築事業12.5%)が、予想(土木事業15.7%、建築事業11.7%)を上回り、開発事業等、国内関係会社、海外関係会社の各セグメントも堅調であったことから、営業利益は業績予想を上回った。
経営成績に重要な影響を与える主な要因は、建設需要や建設コストの急激な変動等の事業環境の変化である。当連結会計年度における事業環境は堅調に推移したと考えているが、今後については、短期的には首都圏を中心とした大型工事の施工集中が継続することにより建設コストが高騰する懸念がある。また、中長期的には建設技能労働者の不足により、国内の建設産業が成り立たなくなる可能性があることから、次世代の担い手確保が重要な課題であると考えている。
資本の財源及び資金の流動性については、中長期的な経営環境の変化を見据え、当社グループの持続可能な成長の実現を目指す「鹿島グループ中期経営計画(2018~2020)」に基づき、営業キャッシュ・フローと開発物件の売却収入を主な原資として、国内・海外の不動産開発やR&D等への投資を積極的に実施している。また投資計画の実施に伴う資金需要に対しては、外部資金を弾力的に活用することも想定しており、連結有利子負債残高は4,000億円を上限としてコントロールしていく方針である。
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりである。
(当社における建設事業のうち土木工事に関する事業)
完成工事高は、前連結会計年度の完成工事高が一過性の要因により高水準であったことを主因に、国内・海外ともに減少した。営業利益の減益は完成工事高の減少が主因である。完成工事総利益率は、過年度に処理した海外工事の損失額減少等の押し上げ要因があった前連結会計年度と比較すると低下しているものの、当連結会計年度も高い水準の利益率を維持したと考えている。
(当社における建設事業のうち建築工事に関する事業)
首都圏の大型工事など豊富な手持ち工事の施工が着実に進捗したことから、完成工事高、営業利益ともに前連結会計年度を上回った。建設コストが想定よりも安定的に推移した中、受注前のフロントローディングの徹底と施工中における生産性向上の取り組みの成果等により、当連結会計年度も高水準の利益を確保したと考えている。
(当社における不動産開発全般に関する事業及び意匠・構造設計、その他設計、エンジニアリング全般の事業)
2018年6月から、当社の非連結子会社がアセットマネージャーとなる私募リート「鹿島プライベートリート投資法人」の運用が開始され、当連結会計年度に当社グループが保有する複数の資産を同投資法人に売却した。今後、同投資法人では運用資産規模の拡大を目指しており、当社グループにおける開発事業に関連するノンアセットビジネス等の収益機会の拡大と収益力の強化を図る方針である。
同投資法人への販売用不動産等の売却を主因に売上高は増収となり、不動産開発に関する事業の売上総利益は増加したものの、設計、エンジニアリングに関する事業の売上総利益が減少したことを主因に営業利益は減益となった。
(当社の国内関係会社が行っている事業であり、主に日本国内における建設資機材の販売、専門工事の請負、総合リース業、ビル賃貸
事業等)
首都圏の大型建築工事の施工本格化に伴う内装工事や資機材販売の増加、手持ちの道路舗装工事の進捗などにより、売上高は増収となった。営業利益については、売上総利益は増加したものの、業容拡大に向けた人員増等により販管費が増加したことから前連結会計年度と同水準となった。国内関係会社は安定した営業利益を継続して確保しつつ、逼迫職種の直傭化や多能工育成を進めるなど、国内建設事業における当社グループの生産能力の増強に貢献するとともに、建設事業の上流、下流分野への取り組みを強化している。
(当社の海外関係会社が行っている事業であり、北米、欧州、アジア、大洋州などの海外地域における建設事業、開発事業等)
建設事業、開発事業等がともに前連結会計年度を上回る売上高及び売上総利益率を確保したことから、M&Aを主因とした販管費の増加を吸収し、営業利益は大幅な増益となった。海外における建設と開発の連携をさらに強化するとともに、開発事業に対する投資を積極的に推進し、海外関係会社の収益拡大に取り組んでいる。
特記事項なし。
当社グループは、多様化する社会及び顧客のニーズに対応し、受注や生産への貢献を目的に、建設事業の生産性及び品質向上のための技術開発を進めている。さらに、近年のIoTやAIの急速な技術革新がもたらす建設業のビジネスモデルの転換や、国連が採択したSDGsの実現、地球環境改善等の社会課題解決に資する研究開発を中長期的な課題として取り組んでおり、大学、公共機関や他企業との共同研究も推進しながら、効率的に実施している。
当連結会計年度における研究開発費の総額は
生産性、安全性の向上に大きく貢献することを目的に開発を進めている次世代建設生産システム「A4CSEL※」(クワッドアクセル※)は、建設機械を自動運転させて作業を行う、全く新たなコンセプトによる建設施工システムである。これまでに3種類の建設機械を自動化し、実工事に導入してきた。2018年には小石原川ダム本体建設工事(福岡県朝倉市)において、コア材の盛立作業を7台の自動化建機を用いて全自動で実施した。次期適用予定の台形CSGダム(*1)建設工事では、20台以上の自動化建機を導入し、現場の「工場化」を発展させていく計画である。
*1:現地発生土材とセメント・水を混合した材料であるCSG(Cemented Sand and Gravel)を用いて造る台形形状のダム。
山岳トンネル工事の掘削は、事前の地質調査から得られた情報をもとに切羽で地山状況を直接確認しながら慎重に進める必要があるため、IoT技術を活用しリアルタイムに地質を評価するシステム「スマート「切羽ウォッチャー※」」を開発した。本システムを岩手県のトンネル工事に適用し、コンピュータジャンボの穿孔データを地球統計学手法により解析して得られる前方地質の予測結果や、デジタルカメラで撮影した切羽の画像データの解析により得られる剥落危険度の評価結果を現場の切羽でリアルタイムに確認できることを検証した。なお、本技術は2018年度土木学会賞(技術開発賞)及び2018年度岩の力学連合会賞(技術賞)を受賞した。
建設就業者不足への対応や働き方改革の実現に向けて、建築工事に関わるあらゆる生産プロセスの変革を推進し、生産性向上を目指す「鹿島スマート生産ビジョン」を策定した。その第一段階として、愛知県名古屋市の「(仮称)鹿島伏見ビル新築工事」をパイロット現場として選定し、施工ロボット技術の他に疲労軽減アシストスーツや顔認証入退場管理システム等のICTを活用した技術・システムを集中的に適用し、その効果を測定しつつ、実現に向けた実証を進めた。
「鹿島スマート生産ビジョン」の実現に向けて実証を進めている前述のパイロット現場において、「作業の半分はロボットと」をコアコンセプトに、柱の全周溶接と梁の上向溶接に汎用可搬型溶接ロボットを本格的に適用した。これには鹿島クレス㈱と協働で溶接ロボットの運用体制を構築するとともに、高品質な溶接を実現するために柱全周溶接の四隅(曲線部)の溶接処理や梁の上向溶接における溶接金属の垂れ等の高度な技術的課題を克服しながら、トータルな技術・施工システムを構築することで対応した。これにより、柱10箇所、梁585箇所の溶接作業を溶接ロボットにて安全かつ高品質に完了した。
⑤ ハイブリッド耐火被覆工法の開発
「鹿島スマート生産ビジョン」で目指す耐火被覆ロボットの実用化に向け、鹿島フィット㈱及び㈱万象ホールディングスと共同で鉄骨造建物の耐火被覆工事に「巻付け」と「吹付け」の2通りの工法を併用するハイブリッド耐火被覆工法を開発し、1時間耐火から3時間耐火までの国土交通大臣認定を取得するとともに、都内の建築工事において、梁の耐火被覆作業の試適用を行った。本工法の採用により、下フランジは人手による巻付け、ウェブと上フランジはロボットによる吹付けといった作業分担が可能となり、耐火被覆吹付ロボットの実用化に向け大きく前進した。
「美(うつく)シール※」工法の生産性向上並びに品質確保を目的として、高撥水性特殊シート「美(うつく)シート※」を型枠材に自動で貼り付ける装置を開発した。本装置を用いることで、作業員1人で短時間に気泡やシワなく確実に貼り付けられ、本工法の大幅なコスト削減が可能となった。なお、本工法は2014年に積水成型工業㈱及び東京大学の石田哲也教授と共同で開発したもので、「美シート※」をあらかじめ貼り付けた型枠にコンクリートを打設することにより、コンクリート表面の気泡が大幅に低減されるとともに、型枠の取り外しの際には「美シート※」がコンクリート側に残置され、コンクリートの表面を一度も乾燥させることなく、湿潤状態を保つことを可能とする工法である。これにより、コンクリート表面が平滑かつ緻密な仕上がりとなり、コンクリートの高品質・高耐久化を実現した。
2011年より阪神高速道路㈱と共同で開発を進めていた「超高強度繊維補強コンクリート(UFC(*2))道路橋床版」を阪神高速道路15号堺線の玉出入路リニューアル工事(大阪市西成区)へ試験的に適用し、2018年11月12日に供用を開始した。高度成長期に建設された高速道路橋では、老朽化した鉄筋コンクリート床版を取り替えるリニューアル工事が進められており、近年の車両の大型化に伴って改訂された現行基準に従えば、重荷重に耐えられる疲労耐久性の高い床版への取り替えが求められる。そこで、非常に高い疲労耐久性をもつと同時に、床版の軽量化が可能なUFC床版を開発した。
*2:Ultra-high strength Fiber reinforced Concrete
水結合材比が15%程度、圧縮強度が150N/mm2以上で極めて緻密な鋼繊維補強コンクリート。
高水温による白化現象やオニヒトデによる食害、赤土流出等によるサンゴの衰退が問題となっている。そこで、沖縄県慶良間諸島海域のサンゴ礁において、サンゴが自然に着生し成長する人工基盤「コーラルネット※」を活用したサンゴ再生に向けた環境保全活動に取り組んでいる。また、上空と水中両方の撮影により、迅速かつ正確なサンゴのモニタリングが可能な水面浮体型ドローン「SWANS※(*3)」(スワンズ)を開発し、「コーラルネット※」を活用したサンゴ再生状況などのモニタリングを効率的に実施することを可能とした。
*3:System of Water and Aerial Nearshore Survey
② 環境配慮型コンクリートの開発と適用
これまで有効な手段がなく廃棄処分していた戻りコンクリート(*4)を原材料として再利用する環境配慮型コンクリート「「エコクリート※」R3(アールスリー)」を、2012年度から環境省環境研究総合推進費による研究助成を受け、三和石産㈱及び東海大学の笠井哲郎教授と共同で開発し、神奈川県の物件に大規模適用した。また、普通セメントの代わりに高炉スラグ微粉末を60~70%使用することで製造時のCO2排出量を60%程度低減する低炭素型コンクリート「ECMコンクリート※」(2014年に開発)を初めて土木構造物に適用した。なお、「ECMコンクリート※」を含む高炉スラグ微粉末を用いた環境配慮型(低炭素型)コンクリートは㈱竹中工務店と連名で2019年日本建築学会賞(技術)を受賞した。
*4:受け入れ検査に使用したものなど、やむを得ない理由から使用されず工場に戻される生コンクリート。
(国内関係会社)
舗装に関する新技術の開発
舗装路面の高耐久型補修材を開発し、市場への展開を進めている。また、2017年度に開発した舗装用重機自動ブレーキアシスト装置を搭載した重機を実工事に適用し、性能検証を行った。今後、作業員への警告システムの追加等、更なる機能向上を図る。
既存杭補強工法の開発
建築構造物の既存杭を活用する方策の一つとして、高圧噴射攪拌工法(*5)による既存杭補強工法を開発した。
本工法は、既存杭の周辺地盤に固化材料を注入し補強することで、建物の耐震性能を向上させるものである。上部構造を残したまま施工を行うことができるため、施設利用者の活動を妨げずに工事を行うことが可能となる。また、使用する機械が小さいため、狭隘な箇所での施工など、様々な現場条件に対応することが可能となる。
今後、さらなる実証実験と施工実績を重ね、病院、学校等の公共建築物や工場、倉庫等の生産施設等への適用を目指していく方針である。
*5:「2018年版 建築物のための改良地盤の設計及び品質管理指針」(国土交通省他監修、一般財団法人日本建築センター他発行)において、高圧噴射攪拌工法が新たに採用された。これにより、高圧噴射攪拌工法の建築分野での利用が可能となった。
研究開発活動は特段行われていない。
(注) 工法等に「※」が付されているものは、当社及び関係会社の登録商標である。