当社グループにおける経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り当連結会計年度末現在において判断したものであり、また、様々な要素により異なる結果となる可能性がある。
当社グループは、経営理念として「全社一体となって、科学的合理主義と人道主義に基づく創造的な進歩と発展を図り、社業の発展を通じて社会に貢献する。」ことを掲げ、さらに、企業経営の根幹を成す品質・安全衛生・環境に関する基本方針として「関係法令をはじめとする社会的な要求事項に対応できる適正で効果的なマネジメントシステムを確立・改善することにより、生産活動を効率的に推進するとともに、顧客や社会からの信頼に応える。」ことを定めている。
こうした方針に基づく取り組みを通して、より高い収益力と企業価値の向上を目指すとともに、社業の永続的発展により株主、顧客をはじめ広く関係者の負託に応え、将来に亘りより豊かな社会の実現に貢献していく。
当連結会計年度における世界経済は、通商問題の長期化などから景気減速がみられ、年度終盤には新型コロナウイルス感染症の影響が急速に拡大した。
我が国経済については、内需を中心に底堅さを維持していたものの、感染症拡大によるインバウンド需要の縮小や経済活動の制限などによる個人消費や企業収益への影響は避けられず、不安要素を抱える状況となった。
国内建設市場においては、建設需要が公共・民間ともに底堅く推移し、感染症による当期中の生産活動の制限は限定的な範囲にとどまり、総じて安定した環境が継続した。
新型コロナウイルス感染症は世界規模で拡大し、日本国内でも全国に緊急事態宣言が発令される事態となった。当社グループでは、感染拡大の防止と顧客や協力会社並びに当社グループ社員の安全のため、国内外の事務所、建設現場を一時閉鎖するなどの措置を講じている。更なる感染拡大や長期化も懸念されるなど、先行き不透明な状況が続くと予想されるが、事態の推移を慎重に見極めつつ的確な判断と速やかな対策の実施により、グループを挙げて生産力の維持を図り、事業計画の確実な遂行を目指している。
今後の経営環境については、国内建設市場では、持続可能な社会の実現に必要な国土強靭化や低炭素社会への移行、技術革新などに対応する投資は底堅く推移すると見込んでおり、社会のニーズに的確に応えられる技術開発、技能労働者減少を見据えた施工体制の構築及び生産性の向上などが一層求められると考えている。また、海外においては、電子商取引(Eコマース)の進展に伴う流通倉庫市場の拡大等の動きが見られる。
このような経営環境の中、当社グループは、変化する状況や市場動向に的確に対応しつつ、引き続き「鹿島グループ中期経営計画(2018~2020)」に掲げる諸施策を積極的に推進するとともに、マテリアリティ(重要課題)への取り組みを通じて、経営目標達成と企業価値向上を目指している。
① 「鹿島グループ中期経営計画(2018~2020)」の推進
2018年度に策定した「鹿島グループ中期経営計画(2018~2020)」は、安定的な業績を確保しつつ、中長期的な経営環境の変化に備えて、更なる生産性向上、多様な収益源確保、経営基盤強化を図るため、これらに資する施策及び投資を積極的に実施することを計画している。
計画の概要と進捗状況は以下のとおりである。
a 基本方針
b 事業戦略
c 具体的な取り組み事例
(注) 「※」が付されているものは、当社及び関係会社の登録商標である。
d 投資計画
国内・海外開発事業への積極的な投資に加え、生産性の飛躍的向上に資するR&D投資や国内外におけるM&A等持続的成長投資に3年間で総額5,000億円の投資を計画。
投資にあたっては、資本コストを意識した投資効率測定とリスク管理を徹底しており、当連結会計年度末までの2年間に合計2,920億円の投資を実行している。
② 持続的な成長の実現に向けたマテリアリティ(重要課題)の特定
当社グループは、事業活動を通じた社会課題の解決に積極的に取り組んでいる。
当連結会計年度には、SDGsをはじめとした社会課題と事業活動の関連を確認・整理したうえで、社会・環境への影響度が大きく、かつ当社グループの企業価値向上や事業継続における重要度が高い課題を抽出し、7つのマテリアリティを特定した。
長期的かつグローバルな視野に立ち、これらの課題に真摯に取り組むことによって、社会とともに持続的に成長し信頼される企業グループを目指していく。

「鹿島グループ中期経営計画(2018~2020)」においては、最終年度である2021年3月期の経営目標を売上高2兆1,500億円程度、親会社株主に帰属する当期純利益800億円以上としており、株主資本コストを上回るROE10.0%以上を継続することを目標としている。また、中長期的には施策及び投資の成果等により、国内建設事業(土木事業、建築事業)において安定的な業績を維持するとともに、開発事業等、国内関係会社、海外関係会社の各セグメントにおける収益力強化により、親会社株主に帰属する当期純利益1,000億円以上を確保することを目指している。
2021年3月期の業績については、当社においては、建築大型工事の施工量が少ない時期に当たることに加え、新型コロナウイルス感染症の影響により、売上高の減少とそれに伴う利益の減少を一定程度見込んでいる。国内関係会社においても、事業内容によって感染症の影響が一部あるものと考えている。海外関係会社においては、感染症の影響が顕在化しており、建設事業について一定期間の現場閉鎖とそれに伴う経費増加、開発事業について運営施設の稼働率低下等が見られる。
こうした事業展開地域・事業内容ごとの感染症の影響を見込んだうえで、2021年3月期の業績予想を、2020年5月14日に下記のとおり公表している。中期経営計画の経営目標との比較において、売上高が計画を下回るのは、工事の大型化や設計施工方式の増加により計画策定時の想定と実際の施工のタイミングが異なったことに加え、国内外における感染症の影響が要因である。親会社株主に帰属する当期純利益は、感染症の影響により海外関係会社の業績は計画策定時の想定を下回るものの、国内建設事業の売上総利益率が想定を上回る見込みであることなどから、800億円を確保する予想としている。
セグメントごとの新型コロナウイルス感染症の影響(2021年3月期業績予想)
当社グループは、事業遂行上のリスクの発生を防止、低減するための活動を推進している。新規事業、開発投資などの「事業リスク」に関しては、専門委員会等が事業に係るリスクの把握と対策について審議を行っている。法令違反などの「業務リスク」に関しては、コンプライアンス・リスク管理委員会が当社グループのリスク管理体制の運用状況の把握、評価を行うとともに、リスク管理の方針及び重大リスク事案への対応などについて審議を行い、必要に応じて取締役会に報告している。
リスク管理活動の実効性を高めるためには、あらゆるリスクを網羅・検証した上で、重要度に応じた活動を推進することが有効であることから、毎年、発生頻度及び顕在化した際の影響度の両面から分析し、企業活動上、重点的な管理が必要とされる業務リスク事項をリスク管理重点課題として選定・展開し、予防的観点からのリスク管理を実施している。顕在化したリスク事案については、早期の報告を義務付け、組織的対応によるリスクの拡大防止と再発防止に努めるなど、PDCAサイクルに基づいた実効的なリスク管理活動を展開している。
本社のリスク所管部署の担当者によって構成するリスク管理連絡会議を定期的に開催し、当社グループに関するリスク顕在化事案や法令改正、社会動向、他社における事例、さらにはリスクマネジメントやリスクコミュニケーションの手法などの情報を報告・共有し、重要な情報については適宜コンプライアンス・リスク管理委員会に報告している。

事業リスクの把握と対策を審議する専門委員会(当報告書の提出日現在)
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりである。
なお、文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において判断したものである。
当社グループにおいては、これらの事業を取り巻く様々なリスクや不確定要因等に対して、その予防や分散、リスクヘッジ等を実施することにより、企業活動への影響について最大限の軽減を図っている。
景気悪化等による建設需要の大幅な減少や不動産市場の急激な縮小等、建設事業・開発事業等に係る著しい環境変化が生じた場合には、建設受注高の減少及び不動産販売・賃貸収入の減少等の影響を受ける可能性がある。
また、他の総合建設会社等との競争が激化し、当社グループが品質、コスト及びサービス内容等における競争力を維持できない場合、業績等が悪化する可能性がある。
建設工事においては、工事期間が長期に亘る中で資機材及び労務の調達を行う必要があることから、建設コストの変動の影響を受ける。主要資材価格や労務単価の急激な上昇等による想定外の建設コスト増加を請負契約工事金額に反映させることができない場合には、工事採算が悪化する可能性がある。
建設コストの変動による影響を抑えるため、早期調達及び多様な調達先の確保を図るとともに、発注者との契約に物価スライド条項を含める等の対策を実施している。
当社グループは、「鹿島グループ中期経営計画(2018~2020)」に定めた投資計画に基づき不動産開発投資、R&D投資及び持続的成長に向けた投資等を推進している。販売用不動産(当連結会計年度末の連結貸借対照表残高628億円)の収益性が低下した場合、賃貸等不動産(同1,985億円)及び投資有価証券(同3,096億円)等の保有資産の時価が著しく下落した場合には、評価損や減損損失等が発生する可能性がある。
開発事業資産については、案件毎に減損リスク等を把握し、その総量を連結自己資本と対比し一定の水準に収めて管理している。連結自己資本は、中期経営計画期間中の国内外開発事業資産の増加を考慮しても十分耐性を持つ財務基盤を維持できる水準を確保することとし、8,000億円程度を目安としている。また、個別案件の投資に当たっては、本社の専門委員会(開発運営委員会、海外開発プロジェクト運営委員会)等においてリスクの把握と対策を審議した上で、基準に則り取締役会や経営会議において審議している。
投資有価証券のうち政策的に保有する株式は、毎年度、全銘柄について、中長期的な視野に立った保有意義や資産効率等を検証した上で、取締役会にて審議し、保有意義の低下した銘柄は原則として売却している。
当社グループは、北米・欧州・アジア・大洋州等海外における建設事業及び開発事業を展開しており、中期経営計画に基づき海外新市場への展開、既存市場の領域拡大を推進していく方針である。当該進出国の政治・経済情勢、法制度、為替相場等に著しい変化が生じた場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
海外におけるM&Aや新市場への進出等に当たっては、本社の専門委員会(海外事業運営委員会)等においてリスクの把握と対策を審議した上で、基準に則り取締役会や経営会議において審議している。
また、テロ、暴動等が発生した場合に、社員・家族の安否確保を図り、現地支援を行うため、国際危機対策委員会を設置している。
建設業界においては、建設技能労働者が減少傾向にあり、十分な対策を取らなければ、施工体制の維持が困難になり、売上高の減少や労務調達コストの上昇による工事利益率の低下等の影響を受ける可能性がある。
当社グループは、中期経営計画に基づき、将来の施工体制を維持するため、社員だけでなく協力会社、技能労働者も含めた職場環境の改善を目指す「鹿島働き方改革」を推進している。生産性向上による更なる業務効率化を推進し、工期を遵守しつつ現場の「4週8閉所」に挑戦し労働条件の改善を図るとともに、技能労働者の処遇改善と収入の安定、職業としての魅力向上に向けた各種施策等を実施している。併せて、技能労働者の処遇改善に繋がる協力会社への支援策を実施している。また、担い手不足を補うため、自動化、省人化・ロボット化技術の開発を計画的に進めている。
当社グループは、建設業法、建築基準法をはじめ、労働安全衛生関係法令、環境関係法令、独占禁止法等、様々な法的規制の中で事業活動を行っている。そのため、法令等の改正や新たな法的規制の制定、適用基準の変更等があった場合、その内容次第では受注環境やコストへの影響等により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。また、当社グループにおいて法令等に違反する行為があった場合には,刑事・行政処分等による損失発生や事業上の制約、信用の毀損等の発生により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
これらのリスクへの対応として、関係法令等の制定・改正については、担当部署を通じてその内容と必要な対応を周知するとともに、コンプライアンス・マニュアルである「鹿島グループ 企業行動規範 実践の手引き」を策定、法令等の改正や社会情勢の変化も踏まえ適宜改訂し、全役員・従業員に周知している。また、コンプライアンス意識の更なる向上と定着を図るため、当社グループの役員及び従業員を対象としたeラーニングを用いた「鹿島グループ企業行動規範」に関する研修を継続的に実施しているほか、たとえば独占禁止法分野では、本社法務部が、独占禁止法遵守マニュアルの策定・改定、弁護士によるケーススタディを用いた研修会開催、本社及び各支店における談合防止体制の遵守状況の監査を実施するなど、各分野の担当部署が、規則・ガイドラインの策定、研修、監査等を実施し、適正な事業活動のより一層の推進を図っている。
当社グループが提供する設計、施工をはじめとする各種サービスにおいて、重大な品質事故、人身事故、環境事故等が発生した場合には、信用の毀損、損害賠償や施工遅延・再施工費用等の発生により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
品質・安全衛生・環境の確保は生産活動を支える前提条件であり企業存続の根幹であることから、基本方針並びに品質方針、安全衛生方針、環境方針を定め、関係法令をはじめとする社会的な要求事項に対応できる適正で効果的なマネジメントシステムにより生産活動を行っている。品質については、土木部門・建築部門それぞれでISO 9001の認証を受けており、海外関係会社は個々に必要な認証を受けている。また、安全を実現するため「建設業労働安全衛生マネジメントシステム(COHSMS)」に準拠した安全衛生管理を行うとともに、環境については、ISO 14001に準拠した環境マネジメントシステムを運用している。
当社グループは設計、施工をはじめとする各種サービスを提供するにあたり、建造物や顧客に関する情報、経営・技術・知的財産に関する情報、個人情報その他様々な情報を取り扱っている。このような情報が外部からの攻撃や従業員の過失等によって漏洩又は消失等した場合は、信用の毀損、損害賠償や復旧費用等の発生により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
これらのリスクに対応するため、当社グループでは情報セキュリティポリシーを定め、eラーニングを用いた教育、点検及び監査を行っている。
発注者、協力会社等の取引先が信用不安に陥った場合には、工事代金の回収不能や施工遅延等により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。特に、一契約の金額の大きい工事における工事代金が回収不能になった場合、その影響は大きい。
新規の営業案件に取り組むに当たっては、企業者の与信、資金計画並びに支払条件などを検証し、工事代金回収不能リスクの回避を図り対応している。新たな契約形態や工事代金の回収が竣工引き渡し後まで残る不利な支払条件を提示された場合等には、本社が関与しリスクの把握と対策を講ずるとともに、基準に則り経営会議において審議している。
協力会社と新たに取引を開始する際には、原則として財務状況等を審査したうえで工事下請負基本契約を締結している。また、重要な協力会社に対しては、定期的に訪問し財務状況を含めた経営状況の確認を実施している。
大規模地震、風水害等の大規模自然災害が発生した場合には、施工中工事への被害や施工遅延、自社所有建物への被害などにより、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
災害時の事業継続計画(BCP)を策定しており、首都直下地震や豪雨災害等を想定した実践的なBCP訓練を実施するなど、企業としての防災力、事業継続力の更なる向上に取り組んでいる。
パンデミック(感染症の大流行等)が発生した場合には、景気悪化による建設受注高の減少や工事中断による売上高の減少等、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
新型コロナウイルス感染症に対しては、感染予防と感染拡大防止を最優先としつつ、可能な限りの事業継続と被害最小化を図るため、危機対策本部を設置して対応している。情報収集とリスク想定を行い、国内外従業員への行動指示、協力会社への指導ほか必要な対策を実施している。新型コロナウイルス感染症による2020年3月期の業績への大きな影響はなかった。2021年3月期の業績予想については、業績等に影響を及ぼす期間を各事業地域や事業形態に基づいて判断し、一定程度の売上高の減少とそれに伴う利益の減少を見込んでいる。
2020年度リスク管理重点課題(業務リスク)
近年、気候変動により自然災害が激甚化する傾向にあり、気候変動に伴う物理的リスクとしては、台風や洪水等による施工中工事への被害や施工遅延、自社所有建物への被害等により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
災害時の事業継続計画(BCP)を策定し豪雨災害等を想定した実践的なBCP訓練の実施等により企業としての防災力、事業継続力の向上に取り組むことに加え、防災・減災及びBCP分野におけるR&Dを推進することにより、社会・顧客に対し関連サービスを提供するとともに、災害発生時には復旧・復興等に貢献することを目指している。
低炭素社会への移行リスクとしては、温室効果ガス排出量の上限規制による施工量の制限や炭素税の導入によるコスト増等により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
中期経営計画並びに2013年に策定した「鹿島環境ビジョン:トリプルZero2050」に基づき建設現場におけるCO2排出量削減等に継続的に取り組むことに加え、再生エネルギー、省エネルギー関連分野等における保有技術の活用や新たな技術の開発等により、低炭素社会への移行に対し事業を通じて貢献することを目指している。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりである。
(注)「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」における各事項の記載については、消費税等抜きの金額を表示している。
売上高は、建築事業、海外関係会社の増加を主因に、前連結会計年度比1.8%増の2兆107億円(前連結会計年度は1兆9,742億円)となった。
利益については、土木事業における売上総利益率低下や販管費の増加を主因に、営業利益は前連結会計年度比7.5%減の1,319億円(前連結会計年度は1,426億円)、経常利益は同10.0%減の1,466億円(同1,629億円)となった。親会社株主に帰属する当期純利益は特別損益の改善もあり、同6.0%減の1,032億円(同1,098億円)となった。
セグメントごとの経営成績は次のとおりである。(セグメントの経営成績については、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載している。)
(当社における建設事業のうち土木工事に関する事業)
売上高は、前連結会計年度と概ね同水準で推移し、前連結会計年度比4.3%減の2,880億円(前連結会計年度は3,010億円)となった。
営業利益は、売上総利益率の低下を主因に、前連結会計年度比51.2%減の171億円(前連結会計年度は352億円)となった。
(当社における建設事業のうち建築工事に関する事業)
売上高は、大型工事の施工が着実に進捗し、前連結会計年度比3.2%増の9,575億円(前連結会計年度は9,280億円)となった。
営業利益は、売上高の増加に加え売上総利益率も向上し、前連結会計年度比7.2%増の853億円(前連結会計年度は796億円)となった。
(当社における不動産開発全般に関する事業及び意匠・構造設計、その他設計、エンジニアリング全般の事業)
売上高は、不動産販売収入の増加を主因に、前連結会計年度比16.0%増の594億円(前連結会計年度は512億円)となった。
営業利益は、不動産販売事業、賃貸事業の売上総利益がともに増加したことを主因に、前連結会計年度比57.1%増の85億円(前連結会計年度は54億円)となった。
(当社の国内関係会社が行っている事業であり、主に日本国内における建設資機材の販売、専門工事の請負、総合リース業、ビル賃貸
事業等)
売上高は、前連結会計年度と同水準で推移し、前連結会計年度比0.9%増の3,931億円(前連結会計年度は3,896億円)となった。
営業利益は、建設事業の売上総利益増加を主因に、前連結会計年度比7.4%増の177億円(前連結会計年度は165億円)となった。
(当社の海外関係会社が行っている事業であり、北米、欧州、アジア、大洋州などの海外地域における建設事業、開発事業等)
売上高は、北米地域における増加を主因に、前連結会計年度比2.9%増の4,690億円(前連結会計年度は4,559億円)となった。
営業利益は、建設事業の売上総利益減少を主因に、前連結会計年度比27.8%減の45億円(前連結会計年度は62億円)となった。
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末比809億円増加し、2兆1,721億円(前連結会計年度末は2兆911億円)となった。これは、有形固定資産の増加593億円、受取手形・完成工事未収入金等の増加321億円及びたな卸資産(販売用不動産、未成工事支出金、開発事業支出金及びその他のたな卸資産)の増加305億円があった一方で、現金預金の減少596億円があったこと等によるものである。
負債合計は、前連結会計年度末比418億円増加し、1兆3,760億円(前連結会計年度末は1兆3,342億円)となった。これは、有利子負債残高※の増加281億円及び未成工事受入金の増加160億円等によるものである。なお、当連結会計年度末の有利子負債残高は、3,268億円(前連結会計年度末は2,987億円)となった。
純資産合計は、株主資本6,916億円、その他の包括利益累計額1,000億円、非支配株主持分42億円を合わせて、前連結会計年度末比390億円増加の7,960億円(前連結会計年度末は7,569億円)となった。
また、自己資本比率は、前連結会計年度末比0.5ポイント好転し、36.5%(前連結会計年度末は36.0%)となった。
(注) ※短期借入金、コマーシャル・ペーパー、社債(1年内償還予定の社債を含む)及び長期借入金の合計額
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、530億円の収入超過(前連結会計年度は303億円の収入超過)となった。これは、税金等調整前当期純利益1,496億円に減価償却費199億円等の調整を加味した収入があった一方で、法人税等の支払額366億円、売上債権の増加332億円及びたな卸資産(販売用不動産、未成工事支出金、開発事業支出金及びその他のたな卸資産)の増加310億円の支出があったこと等によるものである。
投資活動によるキャッシュ・フローは、1,018億円の支出超過(前連結会計年度は253億円の支出超過)となった。これは、有形固定資産の取得による支出811億円、貸付けによる支出166億円及び投資有価証券の取得による支出145億円があったこと等によるものである。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額263億円の支出に加えて、自己株式の取得による支出100億円があった一方で、短期借入金、長期借入金、コマーシャル・ペーパー及び社債による資金調達と返済の収支が288億円の収入超過となったこと等により、108億円の支出超過(前連結会計年度は750億円の支出超過)となった。
これらにより、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末から598億円減少し、2,556億円(前連結会計年度末は3,154億円)となった。
当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため、また、受注高について当社グループ各社の受注概念が異なるため、「生産の実績」及び「受注の実績」は記載していない。
(注) 1 売上実績においては、「外部顧客への売上高」について記載している。
2 前連結会計年度及び当連結会計年度ともに売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
(注) 1 前事業年度以前に受注したもので、契約の更改により請負金額に変更があるものについては、当期受注高
にその増減額を含む。したがって、当期売上高にもかかる増減額が含まれる。
2 期末繰越高は、(期首繰越高+当期受注高-当期売上高)である。
建設工事の受注方法は、特命と競争に大別される。
(注) 百分比は請負金額比である。
(注) 1 前事業年度及び当事業年度ともに完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
2 当事業年度の完成工事のうち主なものは、次のとおりである。
(注) 繰越工事のうち主なものは、次のとおりである。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
① 経営成績及び財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高については、当社建築事業において首都圏を中心とする手持ちの大型工事の施工が着実に進捗したことなどから、2002年3月期以来の2兆円を上回る水準となった。親会社株主に帰属する当期純利益については、前連結会計年度と比較し減益となったものの、当社の建築事業や開発事業等並びに国内関係会社の業績改善により、2017年3月期から4期連続で1,000億円以上の水準を確保した。ROEについては13.4%となり、「鹿島グループ中期経営計画(2018~2020)」の目標である10.0%を上回る水準を維持している。なお、新型コロナウイルス感染症による大きな影響はなかった。
業績予想との比較では、売上高は同水準、利益は予想を上回った。海外関係会社の一部の工事において損失が発生したものの、当社建築事業における追加変更の獲得や原価低減、開発事業等における投資案件の利益貢献、国内関係会社における建設事業の堅調な推移等により、営業利益、経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益は、業績予想を上回った。
財政状態については、資産合計が前連結会計年度末と比較し増加した。中期経営計画の投資計画に基づく賃貸事業用不動産の購入や国内外における設備の新設計画の推進などが主な要因である。連結自己資本は前連結会計年度末から385億円増加の7,917億円となった。不動産開発投資の拡張に伴い、景況の悪化などによる資産の減損リスク等が増加するため、それらに対する備えとして、当面の目安と考えている8,000億円に近い水準を確保した。連結有利子負債残高は3,268億円となり、前連結会計年度末残高を上回ったものの、D/Eレシオ(負債資本倍率)は0.41倍であり、財務の健全性を維持していると考えている。
経営成績に重要な影響を与える主な要因は、建設需要や建設コストの急激な変動等の事業環境の変化である。当連結会計年度における事業環境は堅調に推移したと考えているが、今後については、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う国内外の建設需要や建設コストの動向を注視していく必要がある。また、中長期的には建設技能労働者の減少に対応しつつ更なる業績向上を目指して、生産性向上や生産能力増強に繋がる技術開発を重点的に推進するとともに、協力会社と一体となった次世代の担い手確保に取り組んでいる。
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりである。
a 土木事業
(当社における建設事業のうち土木工事に関する事業)
売上高は、概ね前連結会計年度と同水準で推移した。官公庁工事が減少した一方で、エネルギー分野や鉄道など民間工事の売上高は増加傾向にある。営業利益の減益は、売上総利益率が前連結会計年度における19.0%から14.0%に低下したことが主因である。一部の工事における一過性の要因によるものであり、2021年3月期の売上総利益率は15.0%台への回復を見込んでいる。
SEP船(自己昇降式作業台船)を他社と共同して建造することを決定し、国内では初めてとなる商用洋上風力発電事業の実施に向けた「秋田港・能代港洋上風力発電施設建設工事」を受注、本格着工するなど、今後拡大が期待され、当社グループが有望市場と捉えている洋上風力発電市場への取り組みを強化している。
b 建築事業
(当社における建設事業のうち建築工事に関する事業)
受注前のフロントローディングの効果などにより、当連結会計年度に最盛期を迎えた大型工事の施工が着実に進捗したことなどから増収となった。売上総利益率についても前連結会計年度における12.5%を上回る13.2%となったことから、営業利益は増益となった。
当連結会計年度末の繰越工事高は高い水準を維持しているものの、2021年3月期は次の大型案件の施工が本格的な段階を迎えるまでの一時的に施工量が減少する時期に当たると考えている。今後の繁忙期に備え、早期調達や調達先の多様化などを進め、資機材、労務の調達力を一層強化するとともに、ロボット化、遠隔管理、デジタルデータ活用を軸に生産性向上と生産能力増強を図っている。
近年、プロジェクトの早期段階から建設会社のノウハウが必要とされる傾向が続いており、当連結会計年度の建築工事受注高における設計施工比率は60%を超える高い水準となった。引き続き、顧客ニーズを的確に捉える設計施工提案力の強化に取り組んでいる。
c 開発事業等
(当社における不動産開発全般に関する事業及び意匠・構造設計、その他設計、エンジニアリング全般の事業)
当連結会計年度に販売中であったマンションの引渡しが進み、また、物件取得後にバリューアップした案件を売却した。加えて、関西圏の大型賃貸事業用不動産など、賃貸収益の確保及び鹿島グループのPM・BM業務創出に繋がる案件を取得したことから、不動産販売事業、賃貸事業ともに売上高、売上総利益が前連結会計年度と比較し増加した。
中期経営計画の投資計画に基づき推進中の案件は、2021年3月期以降順次完成し、業績に寄与していくと考えている。2022年3月期には大型施設の稼働開始を複数見込んでおり、2023年3月期から年間を通じて業績に寄与する見通しである。
d 国内関係会社
(当社の国内関係会社が行っている事業であり、主に日本国内における建設資機材の販売、専門工事の請負、総合リース業、ビル賃貸
事業等)
首都圏の大型建築工事の施工本格化に伴い内装工事や設備工事が増加するなど建設事業が順調に推移したことを主因に増収増益となった。
国内関係会社は、不足懸念のある職種の直傭化や多能工育成を進めるなど、国内建設事業における当社グループの生産能力の増強に貢献するとともに、建設事業の上流、下流分野への取り組みを強化している。その中でも下流分野に当たる建物管理業務は成長分野であると考えており、建物の施工段階から管理・運用段階へのデータ連携、ICTの高度活用などにより業容拡大を図っている。
e 海外関係会社
(当社の海外関係会社が行っている事業であり、北米、欧州、アジア、大洋州などの海外地域における建設事業、開発事業等)
北米地域における手持ち工事の着実な進捗と複数の開発案件の販売を主因として、売上高は増収となったが、大洋州地域の一部の工事における損益悪化などから建設事業の売上総利益が減少したことに加え、販管費が増加したことから営業利益は減益となった。
海外の不動産開発事業は、地域ごとの特性を踏まえた事業を展開している。北米地域では、販売により早期に資金の回収を目指す短期回転型の事業を中心に展開している。主力の流通倉庫開発事業に関しては、新型コロナウイルス感染症が拡大する状況においても、電子商取引(Eコマース)の進展に伴い市場活性化の動きが見られ、順調に進捗している。アジア地域においては、安定収益を生む優良賃貸案件の創出に向けて、ミャンマーにおけるヤンキン地区複合開発プロジェクト等の新設計画を推進している。欧州地域では、安定収益源である英国・アイルランドにおけるPFI・PPP事業の強化、中欧を中心とする流通倉庫開発事業の推進に加え、当連結会計年度にポーランドにおいて学生寮を開発・運営する最大手企業を買収し、景気に影響されにくい民間学生寮市場に参入するなど、収益源の多様化を図っている。
なお、2021年3月期業績予想におけるセグメントごとの新型コロナウイルス感染症の影響については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4) 目標とする経営指標」に記載している。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは当連結会計年度において、国内建設事業を中心に創出した営業キャッシュ・フロー、現金及び現金同等物の取り崩し及び有利子負債の増加等を主な原資として、賃貸事業用不動産の購入など中期経営計画に基づく成長投資を積極的に実施した。また、株主還元に関しては、配当性向20~30%を目安とした安定的な配当に加え、株主還元の拡充並びに資本効率の向上を図るため自己株式取得(100億円)を実施した。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ598億円減少し、2,556億円となったが、工事施工中の一時的な立替資金の発生などの備えとして月商程度の水準は確保しており、懸念はないと考えている。また、コミットメントラインを設定する等、安定的な資金運営のために多様な手段を備えており、不測の事態に対する資金調達にも懸念はない。
今後も国内建設事業を中心に営業キャッシュ・フローを確保するとともに、開発事業資産の計画的な売却を進め、それらを主な原資とした新たな不動産開発投資やR&D投資及びM&Aなどの持続的な成長に資する投資を実施していく方針である。株主還元については、安定的な配当に努めるとともに、業績、財務状況及び経営環境を勘案した株主還元を行うことを基本方針としている。
有利子負債については、財政状態の安定性・健全性を維持するため、今後も増加抑制を基調とするが、投資計画の実施に伴う資金需要に対しては、資本効率も勘案し外部資金を弾力的に活用することも想定しており、中期経営計画においては、連結有利子負債残高は4,000億円を上限としてコントロールしていく方針としている。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されているが、この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されている。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っているが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なることがある。
完成工事高の計上は、期末までの進捗部分について成果の確実性が認められる工事については工事進行基準(工事の進捗度の見積りは原価比例法)を、その他の工事については工事完成基準を適用し、当連結会計年度に係る完成工事高1兆7,911億円のうち1兆6,601億円を工事進行基準の適用により収益認識している。
工事進行基準の適用にあたっては、工事原価総額を基礎として期末までの実際発生原価額に応じた工事進捗度に工事収益総額を乗じて完成工事高を算定している。経営者は、工事収益総額、工事原価総額及び工事進捗度の見積りに際して、事業環境の状況等も踏まえた合理的な予測・判断を行っていると考えているが、一定の不確実性が伴うことから、各期の完成工事高に影響を及ぼす可能性がある。
特記事項なし。
当社グループは、多様化する社会及び顧客のニーズに対応し、受注や生産への貢献を目的に、建設事業の生産性及び品質向上のための技術開発を進めている。さらに、近年のIoTやAIの急速な技術革新がもたらす建設業のビジネスモデルの転換や、国連が採択したSDGsの実現、地球環境改善等の社会課題解決に資する研究開発を中長期的な課題として取り組んでおり、大学、公共機関や他企業との共同研究も推進しながら、効率的に実施している。
当連結会計年度における研究開発費の総額は
当社と㈱竹中工務店(以下、竹中工務店)は、建設業界全体の生産性及び魅力向上に向け、ロボット施工・IoT分野における基本合意書を締結し、技術連携を進めることとした。「建設RX(*1)プロジェクト」チームを立ち上げており、「機械遠隔操作システム」や「場内搬送管理システム」を共同開発している。また、開発済み技術の相互利用にも着手しており、当社が開発した「溶接ロボット」や竹中工務店が開発した「清掃ロボット」を両社の現場で活用していく。今後の技術開発においても、本合意書に基づき積極的に協働を進めるとともに、こうした取組みを広く業界全体に働きかけていくことにより、建設業が抱える諸課題の解決に尽力していく。
*1:ロボティクス トランスフォーメーション
デジタル変革(DX)になぞらえ、ロボット変革(Robotics Transformation)の意。
当社は、ソフトバンクロボティクス㈱並びにソフトバンク㈱の協力のもと、最先端のロボット技術を保有するBoston Dynamics社の四足歩行型ロボット「Spot」(スポット)を用いた実証実験を神奈川県のトンネル現場で実施した。その後、トンネル内の路盤などでも不自由なく歩行できるよう改良された「Spot」を、世界に先駆けて土木工事現場で活用することを目指し、2019年12月に導入した。今後はトンネル現場をはじめ様々な土木工事への活用を図る。これからも「Spot」をはじめとするロボット技術の導入を積極的に推進し、建設業界の更なる生産性や安全性の向上を図り、業務の効率化を目指す。
土木分野のコンクリート工事において、アジテータ車から荷卸しされるコンクリートの全量を連続的にモニタリングし、その動画像から施工性の良否をリアルタイムで判定するシステムを開発した。本システムにより、施工性の悪いコンクリートを確実に排除し、配管閉塞などの施工不良を未然に防止する。また、既存技術である連続RI水分計と組み合わせて用いることで、強度や耐久性も連続してモニタリングし、少人数で総合的な品質管理、コンクリート構造物の品質確保を実現する。
当社は、建物の企画・設計から施工、竣工後の維持管理・運営までの各情報を全てデジタル化し、それらを仮想空間上にリアルタイムに再現する「デジタルツイン」を推進しており、当社のBIM推進モデルプロジェクトであるオービック御堂筋ビル新築工事(大阪市中央区)において、各フェーズにおける建物データの連携を可能にするBIMによる「デジタルツイン」を実現した。今後はBIMデータの利活用範囲をさらに拡大し、建築プロジェクトにおける様々な業務の効率化を図っていくとともに、建物オーナーや利用者の利便性・快適性と、建物資産価値のより一層の向上に寄与していく。
当社は、㈱構造計画研究所が提供する「力学系理論を用いた河川の水位予測システム」を、工事の安全及び施工管理に必要な情報を提供できるようにカスタマイズし、施工中の大河津分水路新第二床固改築Ⅰ期工事(新潟県長岡市)に適用した。本システムは、測定地点の6時間後の水位を予測するもので、2019年10月より本工事に適用し、取得した測定地点の予測と実測水位を比較した結果、その有用性が確認できた。各種作業の実施や継続の可否、避難の要否の判断に非常に有益であることから、今後、他の河川内工事等への適用を進め、工事の安全及び施工管理の更なる向上を図っていく。
当社と鹿島建物総合管理㈱は、日本マイクロソフト㈱と連携し、建物管理プラットフォーム「鹿島スマートBM※」(Kajima Smart Building Management)を開発、サービスの提供を開始した。空調や照明などの稼働状況、温度や照度などの室内環境並びにエネルギー消費量など、建物に関する様々なデータをIoTを活用してマイクロソフトのクラウドプラットフォーム(Microsoft Azure)に蓄積しAIを用いて分析することで、設備の最適調整や省エネルギー支援によるランニングコストの削減、機器の異常や故障の早期把握などを実現する。2019年度中に国内の既存建物に適用しており、今後更なる展開を進めていく。
(3) 社会課題取組み強化(インフラ、耐震環境)
① 安価で高速施工を可能にする「スマート床版更新(SDR(*2))システムTM」を開発
道路橋床版更新工事に伴う交通規制等によるソーシャルロスの大幅な低減を可能にする新しい床版更新システム「スマート床版更新(SDR)システムTM」を開発した。本システムを適用することで、既設床版の撤去、鋼桁上フランジの錆などを除去するケレン作業、高さ調整工、新設床版の架設を同時並行で進めることができ、標準的な施工方法と比較し、床版取替工程を約1/3に短縮することが可能となる。また、新たに開発した軽量な床版撤去機及び架設機を適用することで、交通規制範囲の最小化、並びに近接する交通や周辺施設に対する高い安全性の確保が可能となる。さらには、工事現場の近傍に設置したプレキャスト工場で床版を製作することにより、2割程度の工事費低減が見込まれる。実工事への適用に向け、本システムを積極的に提案していく。
*2:Smart Deck Renewal
② 中低層建物用TMD(*3)「D3SKY※-c」(ディースカイシー)を既存ビルの制震改修工事に初適用
*3:Tuned Mass Damper
建物に設置した錘が揺れることによって、地震や風に対する建物の振動を抑制する制震装置。
③ 環境DNA(*4)技術を用いたホタルの調査手法を開発
微量な環境DNAを検出し、小型で発見しづらい水中のホタル幼虫の生息状況を調査する手法を開発した。独自に開発したPCRプライマー(*5)を用いて、通常は成虫の飛翔を目視で数えて把握するホタルの生息状況を生化学分析で行うことにより、これまで困難であった水中生活期のホタルの幼虫のモニタリングが可能となる。また、調査自体がもたらす人為的な影響を最小限に抑える環境に優しい手法であり、広範囲かつ幅広い動植物を対象とする網羅的な生物モニタリングにも応用できる。これらの技術を発展させ、当社が施工するグリーンインフラの品質確保や、地域の環境保全ニーズに対するソリューションに積極的に貢献できるよう、今後も研究を進めていく。
*4:生物の生息環境(水中や土中等)に生物が放出したDNA。
*5:目的のDNAを判別する目印の働きをする合成DNA。
(国内関係会社)
舗装に関する新技術の開発
品質管理システムの確立
高圧噴射攪拌工法(ジェットグラウト工法)において、施工中にリアルタイムで品質管理を行うことが可能となる品質管理システムを開発した。
同工法における地盤改良の品質は、従来は造成した改良体の固化後にコアを採取し評価していたが、セメント系固化材の固化後では品質不良が発見されても再施工は困難であるため、施工中にリアルタイムで改良体の品質を測定する管理技術が求められていた。
本システムは、従来の既存技術のACI(*6)のデータと施工中に自動で収集した排泥の性状データを評価、統合し、リアルタイムにモニター上へ表示するとともに、改良体の品質不良が予測された場合に現場作業者へ警告を行うシステムである。
これにより、改良体の品質不良低減はもとより、同社の工法の更なる信頼性向上を図り、他の高圧噴射攪拌工法との差別化を行い市場競争力の強化を目指す。
なお、2019年度には実用可能な装置が完成したため、今後実工事での検証を進め、更に予測精度を上げることにより、改良体の品質不良の低減につなげていくこととする。
*6:Acoustic Column Inspector 音響改良径判定
研究開発活動は特段行われていない。
(注) 工法等に「※」が付されているものは、当社の登録商標である。また、「TM」が付されているものは当社の商標である。