当社グループにおける経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り当連結会計年度末現在において判断したものであり、また、様々な要素により異なる結果となる可能性がある。
当社グループは、経営理念として「全社一体となって、科学的合理主義と人道主義に基づく創造的な進歩と発展を図り、社業の発展を通じて社会に貢献する。」ことを掲げ、さらに、企業経営の根幹を成す安全衛生・環境・品質に関する基本方針として「関係法令をはじめとする社会的な要求事項に対応できる適正で効果的なマネジメントシステムを確立・改善することにより、生産活動を効率的に推進するとともに、顧客や社会からの信頼に応える。」ことを定めている。
こうした方針に基づく取り組みを通して、より高い収益力と企業価値の向上を目指すとともに、社業の永続的発展により株主、顧客をはじめ広く関係者の負託に応え、将来に亘りより豊かな社会の実現に貢献していく。
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、企業活動や個人消費が抑制され急速に悪化した。各国・地域における経済対策の効果等により、年度後半に向けて経済活動の水準は次第に高まったが、感染症が再び拡大し景気が停滞する局面もみられ、本格的な回復基調には至っていない。
我が国経済についても、感染拡大防止と社会経済活動の両立を図るため様々な対策が講じられているものの、感染症は依然として収束が見通せず、景気動向は先行き不透明な状態が継続している。
国内建設市場においては、労務、資機材の調達コストは総じて安定的に推移した。建設需要に関しては、公共投資が堅調に推移する一方で、民間設備投資は景気動向を踏まえた企業の慎重な投資姿勢により減少傾向が続き、競争環境は厳しさを増している。
今後の経済動向については、新型コロナウイルス感染症の収束状況に依るところが大きく、ワクチンの早期普及に期待がかかるものの、不確実性の高い状況が当面継続すると考えている。また、産業構造や人々の生活・行動、価値観の変容など社会・経済の変化のスピードは、感染症の影響により加速していると認識している。
建設市場においても、経済の回復に伴って国内外における民間設備投資再開の動きが拡がることを期待しているが、感染症拡大前の水準に戻るには一定の期間が必要であり、厳しい競争環境が継続する可能性があると見込んでいる。一方、脱炭素化やデジタル化など社会課題解決につながる需要については、今後世界的に拡大していくと見込んでおり、重点的な対応が一層求められると考えている。
このような経営環境の中、当社グループは、目指す方向性を明確にした「ビジョン」を作成し、現在、直面している課題への対応とともに、未来に向けた投資を重視した「鹿島グループ中期経営計画(2021~2023)-未来につなぐ投資-」(2021年5月14日公表)をスタートした。
① ビジョンの作成
不確実性が増し、変化が加速する経営環境において、当社グループが持続的に成長するためには、多様な人材を呼び込み、外部リソースと連携しながら価値を共創することが重要であると考えている。この認識のもと、今般、当社グループが目指す方向性を広くグループ内外と共有するため、ビジョンを作成した。

ビジョンには、過去に対する敬意と未来への挑戦という2つの意を込めている。また、ビジョンの実現に向け大切にしたい価値観は、当社グループを木に見立て、いかに大きく成長させるかという視点に基づいている。新たに作成したビジョンのもと、人と技術を重視するDNAをベースに、たゆまぬ変革と挑戦によって成長機会を捉え、社会からの要請に応えるとともに、長期的な企業価値向上を目指す。
② 「鹿島グループ中期経営計画(2021~2023)-未来につなぐ投資-」の推進
新たな中期経営計画は、「経営理念」、「ビジョン」に加え、社会とともに持続的に成長していくための重要課題である「マテリアリティ」と結びついている。「①中核事業の一層の強化、②新たな価値創出への挑戦、③成長・変革に向けた経営基盤整備とESG推進」を3つの柱とし、それぞれにおいて、2030年にありたい姿を定めた。この実現に向けて、これまでの施策を継続発展させるとともに、新たな施策や戦略的な投資を推進する。
a 計画全体像(2030年にありたい姿と主要施策)

b 主要施策の概要
1)中核事業の一層の強化
当社グループの中核事業である建設事業、開発事業において、ソフト・ハード、デジタル・リアルの技術を活用して、収益力と生産体制の強化を目指す。建設事業においては、成長領域を見据えた提案力、設計施工力、エンジニアリング力の強化により、競争力を高めるとともに、これまでも構築を進めてきた次世代建設生産システムの更なる進化に取り組み、生産性向上を図る。また、グループの連携を深め、建設の上流から下流までの全てのフェーズにおいて価値を提供できるバリューチェーンを拡充していく。
開発事業においては、社会・顧客の新しいニーズに適応した事業の企画、ポートフォリオの多様化に取り組み、積極的な投資と同時に売却による回収を進め、効率性の高い投資サイクルの確立を目指す。
日本、北米、アジア、欧州、大洋州の5極体制をさらに発展させ、建設事業、開発事業のシナジー(相乗効果)をグローバルに発揮していく。
2)新たな価値創出への挑戦
環境・エネルギー、スマートシティ・スマートソサエティ、インフラ運営など有望分野における社会課題解決型ビジネスの収益源化を目指す。シンガポール、シリコンバレーなどとのグローバルネットワークを活かした異業種・ベンチャー企業との提携を推進するとともに、新たに設定した戦略的投資枠を活用し、積極的に新ビジネスの探索・創出を図っていく。また、未来社会構想チームの組成など、フロンティア領域に挑戦するための体制づくりに取り組んでいく。
3)成長・変革に向けた経営基盤整備とESG推進
環境と経済が両立する持続可能な社会の実現に向けて、「鹿島環境ビジョン:トリプルZero2050」の活動を加速し、2050年のカーボンニュートラルを目指すとともに、資源循環、生物多様性を含め、環境に対し総合的に配慮した事業活動を展開していく。
次世代の担い手確保に向けては、建設技能労働者の処遇改善や協力会社における採用・育成の支援を継続すると同時に、重層下請構造の改革に取り組み、サプライチェーンの維持・強化を図る。
コンプライアンスの徹底をグループをあげて一層推進するとともに、多様な人材が多様な働き方を実践できる体制の構築、世界最先端の技術と結びついたR&DやDX(デジタルトランスフォーメーション)の戦略的な推進により、これからの成長、変革を支えるグループ経営基盤の確立を目指す。
c 投資計画
「未来につなぐ投資」を重点項目と位置づけ、総額8,000億円の投資を計画している。生産性向上や担い手確保、強みを持つ国内外の開発事業への投資に加え、新たに戦略的投資枠を設定し、社会課題解決型ビジネスやグローバルなオープンイノベーションの推進など、将来の飛躍に向けた様々な取り組みと新たな事業創出に挑戦する。
投資にあたっては、効率性、成果を重視し、ROIC(投下資本利益率)によるモニタリングを実施する。
d 財務施策・株主還元
財務施策としては、8,000億円の投資計画を実施するにあたり、事業ポートフォリオ・資産構成の最適化を目指す。また、成長投資への充当原資として、政策保有株式を3年間で300億円以上売却するとともに、財務健全性を維持したうえで、投資効率向上のため有利子負債を活用していく方針である。
株主還元については、配当性向30%を目安とした配当に努めるとともに、業績、財務状況及び経営環境を勘案し、自己株式の取得など機動的な株主還元を行うことを基本方針とする。
③ 持続的な成長の実現に向けたマテリアリティ(重要課題)
当社グループは、SDGsをはじめとした社会課題と事業活動の関連を確認・整理したうえで、社会・環境への影響度が大きく、かつ当社グループの企業価値向上や事業継続における重要度が高い課題を抽出し、7つのマテリアリティを特定している。新型コロナウイルス感染症の拡大や脱炭素に向けた動きの加速など社会環境の大きな変化を踏まえ、一部を見直した。マテリアリティへの取り組みを通じて、社会課題解決と企業価値向上の両立を目指す。
a マテリアリティの変更項目と変更理由
1)「新たなニーズに応える機能的な都市・地域・産業基盤の構築」
(変更前:「新たなニーズに応える機能的な都市・産業基盤の構築」)
中期経営計画において有望分野として掲げているスマートソサエティの構築などを含めて、価値観・行動様式の変化に伴い多様化するニーズに応えていく必要があるという観点から変更した。
2)「脱炭素社会移行への積極的な貢献」
(変更前:「低炭素社会移行への積極的な貢献」)
日本政府が2050年カーボンニュートラルを宣言するなど、世界的に脱炭素を目指す動きが活発化している中で、当社グループとしても、「鹿島環境ビジョン:トリプルZero2050」を見直し、2050年カーボンニュートラルを目指すとともに、自社の事業活動と顧客の事業活動支援の両面から脱炭素社会構築に向けた取り組みを推進する必要があるという観点から変更した。
3)その他の変更
見直し後のマテリアリティ及び中期経営計画に掲げる施策等に合わせて、推進する具体的な取り組みと、取り組みの方向性を示す解説を更新した。
b マテリアリティと関連するSDGs

c マテリアリティと中期経営計画主要施策の関係

(4) 目標とする経営指標
2022年3月期は、引き続き新型コロナウイルス感染症の拡大防止と関係者の安全確保を最優先事項とした事業継続に努める。業績に関しては、国内において、競争環境が厳しくなっていることや、土木事業、建築事業ともに竣工を迎える大型工事が少ないことによる影響を見込んでいる。また、海外においては、感染症の影響により減少した東南アジア地域の売上高や利益が、時間を要しつつ段階的に回復することを見込んでいる。
このような国内外の状況を勘案し、2022年3月期の業績予想を、2021年5月14日に下記のとおり公表している。
また、「鹿島グループ中期経営計画(2021~2023)-未来につなぐ投資-」においては、新型コロナウイルス感染症の影響が続く厳しい経営環境の中、国内建設事業の利益水準を維持・向上させながら、国内・海外開発事業の投資と売却による回収を進め、最終年度である2024年3月期の経営目標を売上高2兆2,500億円程度、親会社株主に帰属する当期純利益950億円以上としている。また、2025年3月期から2027年3月期の期間においては、海外関係会社の業績が感染症拡大前の水準に回復するとともに、事業領域拡大や新たな価値創出に向けた「未来につなぐ投資」の成果が徐々に現れ、安定的に親会社株主に帰属する当期純利益1,000億円以上を計上できる体制を構築することを目指し、2031年3月期には1,300~1,500億円以上の水準を目指している。ROEについては、2022年3月期は一旦低下する可能性があるものの、早期に10%を上回る水準への回復を目指す。
当社グループは、事業遂行上のリスクの発生を防止、低減するための活動を推進している。新規事業、開発投資などの「事業リスク」に関しては、専門委員会等が事業に係るリスクの把握と対策について審議を行っている。法令違反などの「業務リスク」に関しては、コンプライアンス・リスク管理委員会が当社グループのリスク管理体制の運用状況の把握、評価を行うとともに、リスク管理の方針及び重大リスク事案への対応などについて審議を行い、必要に応じて取締役会に報告している。
リスク管理活動の実効性を高めるためには、あらゆるリスクを網羅・検証した上で、重要度に応じた活動を推進することが有効であることから、毎年、発生頻度及び顕在化した際の影響度の両面から分析し、企業活動上、重点的な管理が必要とされる業務リスク事項をリスク管理重点課題として選定・展開し、予防的観点からのリスク管理を実施している。顕在化したリスク事案については、早期の報告を義務付け、組織的対応によるリスクの拡大防止と再発防止に努めるなど、PDCAサイクルに基づいた実効的なリスク管理活動を展開している。
本社のリスク所管部署の担当者によって構成するリスク管理連絡会議を定期的に開催し、当社グループに関するリスク顕在化事案や法令改正、社会動向、他社における事例、さらにはリスクマネジメントやリスクコミュニケーションの手法などの情報を報告・共有し、重要な情報については適宜コンプライアンス・リスク管理委員会に報告している。

事業リスクの把握と対策を審議する専門委員会(当報告書の提出日現在)
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりである。
なお、文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において判断したものである。
当社グループにおいては、これらの事業を取り巻く様々なリスクや不確定要因等に対して、その予防や分散、リスクヘッジ等を実施することにより、企業活動への影響について最大限の軽減を図っている。
景気悪化等による建設需要の大幅な減少や不動産市場の急激な縮小等、建設事業・開発事業等に係る著しい環境変化が生じた場合には、建設受注高の減少及び不動産販売・賃貸収入の減少等の影響を受ける可能性がある。
また、他の総合建設会社等との競争が激化し、当社グループが品質、コスト及びサービス内容等における競争力を維持できない場合、業績等が悪化する可能性がある。
変化する状況や市場動向を踏まえ策定した「鹿島グループ中期経営計画(2021~2023)-未来につなぐ投資-」に掲げる諸施策を推進することにより、経営目標の達成と企業価値の向上を目指している。
建設工事においては、工事期間が長期に亘る中で資機材及び労務の調達を行う必要があることから、建設コストの変動の影響を受ける。主要資材価格や労務単価の急激な上昇等による想定外の建設コスト増加を請負契約工事金額に反映させることができない場合には、工事採算が悪化する可能性がある。
建設コストの変動による影響を抑えるため、早期調達及び多様な調達先の確保を図るとともに、発注者との契約に物価スライド条項を含める等の対策を実施している。
当社グループは、中期経営計画に定めた投資計画に基づき不動産開発投資、R&D・デジタル投資及び戦略的投資等を推進している。販売用不動産(当連結会計年度末の連結貸借対照表残高782億円)の収益性が低下した場合、賃貸等不動産(同2,263億円)及び投資有価証券(同3,503億円)等の保有資産の時価が著しく下落した場合には、評価損や減損損失等が発生する可能性がある。
開発事業資産については、案件毎に減損リスク等を把握し、その総量を連結自己資本と対比し一定の水準に収めて管理している。連結自己資本は、中期経営計画期間中の国内外開発事業資産の増加を考慮しても十分耐性を持つ財務基盤を維持できる水準を確保している。また、個別案件の投資に当たっては、本社の専門委員会(開発運営委員会、海外開発プロジェクト運営委員会)等においてリスクの把握と対策を審議した上で、基準に則り取締役会や経営会議において審議している。
投資有価証券のうち政策的に保有する株式は、毎年度、全銘柄について、中長期的な視野に立った保有意義や資産効率等を検証した上で、取締役会にて審議し、保有意義の低下した銘柄は原則として売却している。中期経営計画期間においては、政策保有株式を300億円以上売却する方針としている。
当社グループは、北米・欧州・アジア・大洋州等海外における建設事業及び開発事業を展開しており、中期経営計画に基づき、人材面での更なるローカル化、業務・資本提携による各国事業基盤の拡充等を推進していく方針である。進出国の政治・経済情勢、法制度、為替相場等に著しい変化が生じた場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
海外におけるM&Aや新市場への進出等に当たっては、本社の専門委員会(海外事業運営委員会)等においてリスクの把握と対策を審議した上で、基準に則り取締役会や経営会議において審議している。
また、テロ、暴動等が発生した場合に、社員・家族の安否確保を図り、現地支援を行うため、国際危機対策委員会を設置している。
建設業界においては、建設技能労働者が減少傾向にあり、十分な対策を取らなければ、施工体制の維持が困難になり、売上高の減少や労務調達コストの上昇による工事利益率の低下等の影響を受ける可能性がある。
当社グループは、将来の施工体制を維持するため、中期経営計画に基づき、生産性向上による更なる業務効率化を推進し、工期を遵守しつつ現場の「4週8閉所」に挑戦し労働条件の改善を図るとともに、原則二次下請までに限定した施工体制の実現をはじめとした環境整備、技能労働者の処遇改善と収入の安定等、職業としての魅力向上に向けた各種施策を実施している。併せて、技能労働者の処遇改善に繋がる協力会社への支援策を実施している。また、担い手不足を補うため、自動化、省人化・ロボット化技術の開発を計画的に進めている。
当社グループは、建設業法、建築基準法をはじめ、労働安全衛生関係法令、環境関係法令、独占禁止法等、様々な法的規制の中で事業活動を行っている。そのため、法令等の改正や新たな法的規制の制定、適用基準の変更等があった場合、その内容次第では受注環境やコストへの影響等により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。また、当社グループにおいて法令等に違反する行為があった場合には、刑事・行政処分等による損失発生や事業上の制約、信用の毀損等の発生により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
これらのリスクへの対応として、関係法令等の制定・改正については、担当部署を通じてその内容と必要な対応を周知するとともに、コンプライアンス・マニュアルである「鹿島グループ 企業行動規範 実践の手引き」を策定、法令等の改正や社会情勢の変化も踏まえ適宜改訂し、全役員・従業員に周知している。また、コンプライアンス意識の更なる向上と定着を図るため、当社グループの役員及び従業員を対象としたeラーニングを用いた「鹿島グループ企業行動規範」に関する研修を継続的に実施しているほか、たとえば独占禁止法分野では、本社法務部が、独占禁止法遵守マニュアルの策定・改定、弁護士によるケーススタディを用いた研修会開催、本社及び各支店における談合防止体制の遵守状況の監査を実施するなど、各分野の担当部署が、規則・ガイドラインの策定、研修、監査等を実施し、適正な事業活動のより一層の推進を図っている。
当社グループが提供する設計、施工をはじめとする各種サービスにおいて、重大な人身事故、環境事故、品質事故等が発生した場合には、信用の毀損、損害賠償や施工遅延・再施工費用等の発生により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
安全衛生・環境・品質の確保は生産活動を支える前提条件であり企業存続の根幹であることから、基本方針並びに安全衛生方針、環境方針、品質方針を定め、関係法令をはじめとする社会的な要求事項に対応できる適正で効果的なマネジメントシステムにより生産活動を行っている。安全を実現するため「建設業労働安全衛生マネジメントシステム(COHSMS)」に準拠した安全衛生管理を行うとともに、環境については、ISO 14001に準拠した環境マネジメントシステムを運用している。また、品質については、土木部門・建築部門それぞれでISO 9001の認証を受けており、海外関係会社は個々に必要な認証を受けている。
当社グループは設計、施工をはじめとする各種サービスを提供するにあたり、建造物や顧客に関する情報、経営・技術・知的財産に関する情報、個人情報その他様々な情報を取り扱っている。このような情報が外部からの攻撃や従業員の過失等によって漏洩又は消失等した場合は、信用の毀損、損害賠償や復旧費用等の発生により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
これらのリスクに対応するため、当社グループでは情報セキュリティポリシーを定め、eラーニングを用いた教育、点検及び監査を行っている。
発注者、協力会社等の取引先が信用不安に陥った場合には、工事代金の回収不能や施工遅延等により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。特に、一契約の金額の大きい工事における工事代金が回収不能になった場合、その影響は大きい。
新規の営業案件に取り組むに当たっては、企業者の与信、資金計画並びに支払条件などを検証し、工事代金回収不能リスクの回避を図り対応している。新たな契約形態や工事代金の回収が竣工引き渡し後まで残る不利な支払条件を提示された場合等には、本社が関与しリスクの把握と対策を講じるとともに、基準に則り経営会議において審議している。
協力会社と新たに取引を開始する際には、原則として財務状況等を審査したうえで工事下請負基本契約を締結している。また、重要な協力会社に対しては、定期的に訪問し財務状況を含めた経営状況の確認を実施している。
大規模地震、風水害等の大規模自然災害が発生した場合には、施工中工事への被害や施工遅延、自社所有建物への被害などにより、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
災害時の事業継続計画(BCP)を策定しており、首都直下地震や豪雨災害等を想定した実践的なBCP訓練を実施するなど、企業としての防災力、事業継続力の更なる向上に取り組んでいる。
パンデミック(感染症の大流行等)が発生した場合には、景気悪化による建設受注高の減少や工事中断による売上高の減少等、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
新型コロナウイルス感染症に対しては、感染予防と感染拡大防止を最優先としつつ、可能な限りの事業継続と被害最小化を図るため、情報収集とリスク想定を行い、国内外従業員への行動指示、テレワーク環境の整備推進、協力会社への指導ほか必要な対策を実施している。
2021年3月期業績への感染症の影響に関しては、国内建築事業における計画の延期や競争環境の激化など受注面での影響を受け、また海外では東南アジア地域において工事中断と再開後の生産性低下、ホテル等運営施設の稼働率低下等の影響があったが、全体としては予想よりも軽微にとどまった。2022年3月期の業績予想については、建築事業における競争環境に厳しさを増していることや、東南アジアにおける業績回復には時間を要することなどによる利益の減少を見込んでいる。
2021年度リスク管理重点課題(業務リスク)
近年、気候変動により自然災害が激甚化する傾向にあり、気候変動に伴う物理的リスクとしては、台風や洪水等による施工中工事への被害や施工遅延、自社所有建物への被害等により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
災害時の事業継続計画(BCP)を策定し豪雨災害等を想定した実践的なBCP訓練の実施等により企業としての防災力、事業継続力の向上に取り組むことに加え、防災・減災及びBCP分野におけるR&Dを推進することにより、社会・顧客に対し関連サービスを提供するとともに、災害発生時には復旧・復興等に貢献することを目指している。
脱炭素社会への移行リスクとしては、温室効果ガス排出量の上限規制による施工量の制限や炭素税の導入によるコスト増等により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
中期経営計画及び「鹿島環境ビジョン:トリプルZero2050」に基づき、建設現場等におけるCO2排出量削減とカーボン・オフセットのための投資に計画的に取り組むことに加え、再生可能エネルギー、省エネルギー関連分野等における保有技術の活用や新たな技術の開発等により、脱炭素社会への移行に対し事業を通じて貢献することを目指している。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりである。
(注)「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」における各事項の記載については、消費税等抜きの金額を表示している。
売上高は、当社建築事業売上高の減少を主因に、前連結会計年度比5.2%減の1兆9,071億円(前連結会計年度は2兆107億円)となった。
利益については、当社建築事業の売上総利益の減少が影響し、営業利益は前連結会計年度比3.6%減の1,272億円(前連結会計年度は1,319億円)、経常利益は同4.7%減の1,397億円(同1,466億円)、親会社株主に帰属する当期純利益は同4.6%減の985億円(同1,032億円)となった。
セグメントごとの経営成績は次のとおりである。(セグメントの経営成績については、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載している。)
(当社における建設事業のうち土木工事に関する事業)
売上高は、豊富な繰越工事の施工が着実に進捗し、前連結会計年度比16.2%増の3,347億円(前連結会計年度は2,880億円)となった。
営業利益は、売上高増加に加えて、売上総利益率が向上したことから、前連結会計年度比73.6%増の298億円(前連結会計年度は171億円)となった。
(当社における建設事業のうち建築工事に関する事業)
売上高は、大型工事の施工量が少ない時期に当たることなどから、前連結会計年度比18.3%減の7,822億円(前連結会計年度は9,575億円)となった。
営業利益は、売上高減少を主因に、前連結会計年度比32.2%減の578億円(前連結会計年度は853億円)となった。
(当社における不動産開発全般に関する事業及び意匠・構造設計、その他設計、エンジニアリング全般の事業)
大型物件を引き渡すなど不動産販売事業が好調に推移し、売上高は前連結会計年度比22.1%増の725億円(前連結会計年度は594億円)、営業利益は同104.6%増の174億円(同85億円)となった。
(当社の国内関係会社が行っている事業であり、主に日本国内における建設資機材の販売、専門工事の請負、総合リース業、ビル賃貸
事業等)
売上高、営業利益ともに前連結会計年度と概ね同水準で推移し、売上高は前連結会計年度比3.8%減の3,780億円(前連結会計年度は3,931億円)、営業利益は同3.6%減の171億円(同177億円)となった。
(当社の海外関係会社が行っている事業であり、北米、欧州、アジア、大洋州などの海外地域における建設事業、開発事業等)
新型コロナウイルス感染症の影響による東南アジア地域の売上高及び営業利益の減少を、北米地域を中心に補い、売上高は前連結会計年度比4.3%増の4,891億円(前連結会計年度は4,690億円)、営業利益は同51.2%増の68億円(同45億円)となった。
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末比73億円減少し、2兆1,648億円(前連結会計年度末は2兆1,721億円)となった。これは、受取手形・完成工事未収入金等の減少1,319億円があった一方で、現金預金の増加446億円、保有株式等の時価上昇による含み益の増加を主因とする投資有価証券の増加407億円及びたな卸資産(販売用不動産、未成工事支出金、開発事業支出金及びその他のたな卸資産)の増加345億円があったこと等によるものである。
負債合計は、前連結会計年度末比960億円減少し、1兆2,800億円(前連結会計年度末は1兆3,760億円)となった。これは、支払手形・工事未払金等の減少750億円、未成工事受入金の減少159億円及び有利子負債残高※の減少98億円があったこと等によるものである。なお、有利子負債残高は、3,170億円(前連結会計年度末は3,268億円)となった。
純資産合計は、株主資本7,526億円、その他の包括利益累計額1,221億円、非支配株主持分99億円を合わせて、前連結会計年度末比887億円増加の8,848億円(前連結会計年度末は7,960億円)となった。
また、自己資本比率は、前連結会計年度末比3.9ポイント好転し、40.4%(前連結会計年度末は36.5%)となった。
(注) ※短期借入金、コマーシャル・ペーパー、社債(1年内償還予定の社債を含む)及び長期借入金の合計額
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、1,530億円の収入超過(前連結会計年度は530億円の収入超過)となった。これは、税金等調整前当期純利益1,452億円に減価償却費190億円等の調整を加味した収入に加えて、売上債権の減少1,286億円の収入があった一方で、仕入債務の減少721億円、法人税等の支払額503億円及びたな卸資産(販売用不動産、未成工事支出金、開発事業支出金及びその他のたな卸資産)の増加411億円の支出があったこと等によるものである。
投資活動によるキャッシュ・フローは、654億円の支出超過(前連結会計年度は1,018億円の支出超過)となった。これは、有形固定資産の取得による支出463億円、貸付けによる支出354億円及び投資有価証券の取得による支出133億円があった一方で、貸付金の回収による収入260億円及び投資有価証券の売却等による収入103億円があったこと等によるものである。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額256億円の支出及び自己株式の取得による支出100億円に加えて、短期借入金、長期借入金、コマーシャル・ペーパー及び社債による資金調達と返済の収支が71億円の支出超過となったこと等により、391億円の支出超過(前連結会計年度は108億円の支出超過)となった。
これらにより、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末から453億円増加し、3,009億円(前連結会計年度末は2,556億円)となった。
当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため、また、受注高について当社グループ各社の受注概念が異なるため、「生産の実績」及び「受注の実績」は記載していない。
(注) 1 売上実績においては、「外部顧客への売上高」について記載している。
2 前連結会計年度及び当連結会計年度ともに売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
(注) 1 前事業年度以前に受注したもので、契約の更改により請負金額に変更があるものについては、当期受注高
にその増減額を含む。したがって、当期売上高にもかかる増減額が含まれる。
2 期末繰越高は、(期首繰越高+当期受注高-当期売上高)である。
建設工事の受注方法は、特命と競争に大別される。
(注) 百分比は請負金額比である。
(注) 1 前事業年度及び当事業年度ともに完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
2 当事業年度の完成工事のうち主なものは、次のとおりである。
e 繰越工事高(2021年3月31日現在)
(注) 繰越工事のうち主なものは、次のとおりである。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り当連結会計年度末現在において判断したものである。
① 経営成績及び財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは2018年に「①次世代建設生産システムの構築、②社会・顧客にとって価値ある建設・サービスの提供、③成長に向けたグループ経営基盤の確立」を基本方針とする「鹿島グループ中期経営計画(2018~2020)」を策定し、短期的な経営課題に対応して安定的な利益を確保することを目指すとともに、中長期的な経営課題を見据えた施策や投資を積極的に推進した。その結果、3年連続で経営目標を達成し、将来の成長に向けた布石となる投資も着実に実行することができた。また、ESGに関する重点項目としていた環境・エネルギー課題への取組み、生産性向上と就労環境改善及びコンプライアンス・リスク管理体制の整備などについては、一定の成果を得ているが、今後も継続して取り組んでいく必要があると考えている。
「鹿島グループ中期経営計画(2018~2020)」経営数値目標達成状況
「鹿島グループ中期経営計画(2018~2020)」投資計画達成状況
当連結会計年度における新型コロナウイルス感染症の影響に関しては、国内建設事業(土木事業・建築事業)においては、2020年4月下旬から5月6日までの期間、建設現場を一時閉鎖するなどの措置を講じたが、その後は感染症対策を徹底しつつ施工を継続している。開発事業等においては、販売事業、賃貸事業ともに大きな影響はなかった。国内関係会社は、運営するホテル等の稼働率低下が見られたが、建設系の関係会社への影響は限定的なものにとどまった。海外関係会社については、東南アジア地域における影響が大きく、公的規制に伴う工事中断や再開後の生産性低下、ホテル等運営施設の稼働率低下等が継続した。一方、北米や欧州における建設事業への影響は軽微であり、電子商取引の進展に伴い流通倉庫開発事業は堅調に推移した。
業績予想との比較では、感染症の業績への影響が全体として予想よりも軽微にとどまったことなどから、売上高は業績予想と同水準となり、営業利益、経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益は業績予想を上回った。
当連結会計年度の経営成績(連結業績予想との対比) (単位:百万円)
財政状態については、資産合計は前連結会計年度末と概ね同水準となった。建設事業における売上債権(受取手形・完成工事未収入金等)が減少した一方で、計画に基づき積極的に推進している国内外の不動産開発投資に伴い開発事業資産(販売用不動産、開発事業支出金及び有形固定資産など)が増加した。投資有価証券については、政策保有株式の中長期的な縮減に向けて、一部の保有株式を売却したものの、時価上昇による含み益増加を主因に増加した。連結自己資本は前連結会計年度末から830億円増加の8,748億円となり、当面の目安としていた8,000億円台に到達した。連結有利子負債残高は前連結会計年度末残高を下回る3,170億円となり、D/Eレシオ(負債資本倍率)は0.36倍となった。総じて財務の健全性は十分に維持できていると考えている。
経営成績に重要な影響を与える主な要因は、建設需要や建設コストの急激な変動等の事業環境の変化である。当連結会計年度においては、建設コストは安定的に推移したと考えているが、建設需要に関しては、特に建築事業において、新型コロナウイルス感染症の影響による民間設備投資の減少傾向と先行きの不透明感から競争環境は厳しさを増している。
今後については、ワクチンの普及などにより新型コロナウイルス感染症が収束し、民間設備投資の持ち直しが進むことを期待しているが、感染症の影響が完全に払しょくされるまでには時間を要し、厳しい競争環境が継続する可能性がある。建設コストについても大型工事を中心に業界全体の施工量が増加し、資材・労務ともに需給がひっ迫する可能性があると考えている。
こうした状況の中、経営成績を維持向上させていくために、再生可能エネルギー市場や物流施設、データセンターを含むデジタル関連投資などの成長領域を見据えたR&Dや設計施工力、エンジニアリング力の一層の強化に取り組んでいる。また、中長期的な建設技能労働者の減少に備え、生産性向上と次世代の担い手確保に向けた施策を同時に推し進めるとともに、早期調達、集中調達、海外調達等の調達手法多様化を進めるなど、全体コストの上昇を抑制するための施策に取り組んでいる。
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりである。
a 土木事業
(当社における建設事業のうち土木工事に関する事業)
売上高は、道路工事やエネルギー関連工事を中心に、豊富な繰越工事の施工が着実に進捗し増収となった。営業利益の増益は、売上高の増加に加え、売上総利益率が前連結会計年度における14.0%から15.5%に改善したことが要因である。
土木における建設需要は、激甚化する自然災害やインフラ老朽化に対する国土強靭化に加えて、脱炭素化に向けた再生可能エネルギー市場の拡大により今後も堅調に推移すると考えている。成長領域である洋上・陸上風力発電施設やインフラ更新分野については、専門組織を設置するとともに、関係会社との協働体制の強化に取り組んでいる。また、脱炭素社会への移行に寄与するCO2吸収コンクリート(CO2-SUICOM)の社会実装・事業化に向けた取り組みを、グループ内だけでなく外部と連携しながら推進している。
b 建築事業
(当社における建設事業のうち建築工事に関する事業)
当連結会計年度は、大型案件の施工量が一時的に減少する時期に当たり、売上高は減収となった。新型コロナウイルス感染症拡大や緊急事態宣言の影響により、一部の工事の受注時期及び着工時期が遅れたことも要因の一つと考えている。2022年3月期の売上高は、大型工事の施工が本格化するため、9,000億円台への回復を見込んでいる。
営業利益は売上高減少を主因に減益となった。売上総利益率については、前連結会計年度における13.2%を下回ったものの、12.7%と高い水準を維持したと考えている。一方、新型コロナウイルス感染症の影響による民間設備投資の減少傾向と先行きの不透明感から競争環境は厳しさを増しており、建築工事の受注時採算は前連結会計年度と比較して低下している。2022年3月期の売上総利益率は、こうした状況に加えて、竣工を迎える大型工事が少ないことを踏まえ、10%台を予想している。
当連結会計年度の建築工事受注高における設計施工比率が70%を超えるなど、近年、プロジェクトの早期段階から建設会社のノウハウが必要とされる傾向が続いている。多様化する顧客ニーズを的確に捉える提案力の強化とともに、建物の企画・設計から施工、竣工後の維持管理・運営までの全てのフェーズにおける情報をデジタル化し、仮想空間上にリアルタイムに再現するBIMを活用した「デジタルツイン」をグループ全体で推進し、設計施工案件への対応力強化と利益率向上を図っている。
c 開発事業等
(当社における不動産開発全般に関する事業及び意匠・構造設計、その他設計、エンジニアリング全般の事業)
当連結会計年度は、大型物件の引渡しに加え、販売中であったマンションの引渡しや保有するオフィスビルの持分の一部を売却するなど、不動産販売事業が好調に推移したことから、売上高、営業利益が前連結会計年度と比較し増加した。賃貸事業についても、オフィスの中長期契約がベースとなっていることから、新型コロナウイルス感染症による大きな影響はなく、業績は堅調であった。
2022年3月期は、売却予定案件が少ないため減収減益を見込んでいるが、投資計画に基づき推進中である大型開発プロジェクトの稼働開始や売却予定案件の増加により、2023年3月期以降の回復を見込んでいる。
d 国内関係会社
(当社の国内関係会社が行っている事業であり、主に日本国内における建設資機材の販売、専門工事の請負、総合リース業、ビル賃貸
事業等)
新型コロナウイルス感染症の拡大により、ホテルやゴルフ場などの運営施設の稼働率が低下し、建物管理物件の営繕工事が減少するなどの影響があったものの、総じて堅調であった建設系関係会社が補い、当連結会計年度の国内関係会社全体の売上高、営業利益は、前連結会計年度と概ね同水準となった。今後、ゴルフ場の稼働率は回復基調となる見通しであるものの、ホテルの稼働率低下は長期化すると予想している。建物管理業については、当連結会計年度後半から回復傾向となっており、建物の設計・施工段階から管理・運用段階へのデータ連携やICTの高度活用に注力し、業容拡大を目指している。
なお、2022年3月期から「収益認識に関する会計基準」を適用することに伴い、一部の関係会社における建設資機材等の販売のうち、代理人取引に該当するものについては、手数料部分のみを売上高として認識することとなり、国内関係会社の売上高を減少させる要因となる。ただし、当該取引においてはグループ内取引が過半を占めるため、連結業績への大きな影響はないと考えている。
e 海外関係会社
(当社の海外関係会社が行っている事業であり、北米、欧州、アジア、大洋州などの海外地域における建設事業、開発事業等)
海外関係会社においては、地域ごとに新型コロナウイルス感染症の影響が異なり、北米地域や欧州地域の建設事業への影響は限定的である一方、東南アジア地域については、複数の国において公的規制に伴う工事中断や再開後の生産性低下等の影響があった。また、開発事業等に関しても、欧米の流通倉庫開発事業は電子商取引の進展などにより市場活性化の動きが見られ、堅調に推移したものの、東南アジア地域においてはホテル等運営施設の稼働率低下の影響が長期化した。海外関係会社全体としては、東南アジア地域の減少を、北米地域を中心とした他の地域が補い、感染症の影響を受けながらも、前連結会計年度を上回る売上高及び営業利益を確保した。東南アジア地域においては、感染症の収束に伴い、2022年3月期の後半から段階的な業績改善が進み、2024年3月期頃までには感染症拡大前の業績水準に回復すると見込んでいる。
海外の不動産開発事業は、地域ごとの特性を踏まえた事業を展開している。北米地域では、流通倉庫開発事業を中心に、投資、売却、再投資のサイクルを拡大成長させるとともに、賃貸集合住宅開発事業を育成するなど収益源の多様化を図っている。東南アジア地域においては、感染症の影響を見極めつつ、既存のプロジェクトへの投資を継続することに加え、ベトナムやシンガポールなどで新規投資機会を探り、安定収益を生む優良賃貸案件の創出と収益力回復・向上を目指している。欧州地域では、流通倉庫、学生寮、賃貸住宅、PFIなどバランスの取れた資産ポートフォリオを意識した投資を進めている。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは当連結会計年度において、国内建設事業を中心に創出した営業キャッシュ・フローを主な原資として、投資計画に基づく国内外の不動産開発投資を積極的に実施した。また、株主還元に関しては、配当に加え、株主還元の拡充並びに資本効率の向上を図るため自己株式取得(100億円)を実施した。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ453億円増加し3,009億円となった。当連結会計年度は堅調な業績に加え、完成工事未収入金など売上債権の回収が進んだこともあり、営業キャッシュ・フローの収入が、不動産開発投資及び株主還元の実施、有利子負債の返済などによる支出を上回り現金及び現金同等物の残高が増加した。工事施工中の一時的な立替資金が発生する可能性があるなど、今後の建設事業の資金需要の予測は難しいが、現金及び現金同等物の残高は月商程度の水準を上回っており、懸念はないと考えている。また、コミットメントラインを設定する等、安定的な資金運営に向けた多様な資金調達手段を備えている。
「鹿島グループ中期経営計画(2021~2023)-未来につなぐ投資-」(2021年5月14日公表)において計画している国内外の不動産開発投資やR&D・デジタル投資、M&A等の戦略的投資など総額8,000億円の投資の原資として、今後も国内建設事業を中心に営業キャッシュ・フローの確保に努めるとともに、開発事業資産の計画的な売却や中長期的な政策保有株式の縮減を進める方針である。株主還元については、連結自己資本が8,000億円台に到達したこと、中期経営計画において今後の利益伸長を見通していることを踏まえ、配当性向の目安を30%に改めるとともに、業績、財務状況及び経営環境を勘案した自己株式の取得など機動的な株主還元を行うことを基本方針とする。
有利子負債については、増加する開発事業資産などに対するリスク耐性を備えた財務健全性を維持するため、今後も増加抑制を基調とするが、投資計画の実施に伴う資金需要に対しては、投資効率向上のため有利子負債の活用を柔軟に判断していく方針である。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されているが、この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されている。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っているが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なることがある。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載している。
特記事項なし。
当社グループは、多様化する社会及び顧客のニーズに対応し、受注や生産への貢献を目的に、建設事業の生産性及び品質向上のための技術開発を進めている。さらに、近年のIoTやAIの急速な技術革新がもたらす建設業のビジネスモデルの転換や、国連が採択したSDGsの実現、地球環境改善等の社会課題解決に資する研究開発を中長期的な課題として取り組んでおり、大学、公共機関や他企業との共同研究も推進しながら、効率的に実施している。
当連結会計年度における研究開発費の総額は
当社は、㈱Preferred Networksと共同で、建設現場で使用するロボットが現場内を自律移動するためのシステム「iNohTM」(アイノー)を開発した。本システムを搭載することで、GNSS(全球測位衛星システム)や人による事前設定がなくても、各種ロボットがリアルタイムに自己位置や周辺環境を認識し、日々刻々と状況が変化する現場内を安全かつ確実に移動できるようになる。また、「iNohTM」を初搭載したAI清掃ロボット「raccoonTM」(ラクーン)を開発し、首都圏の現場に導入を開始した。
今後、「iNohTM」を巡回や資材搬送などを担う各種ロボットに実装することで、建設現場へのロボット導入をさらに促進していく。
当社は、ピクシーダストテクノロジーズ㈱と共同で、「鹿島スマート生産※」で活用するデジタルツイン基盤「鹿島ミラードコンストラクション※」(Kajima Mirrored Construction、以下KMC)を構築した。併せて、KMCを用いて施工の進捗状況を部材単位で数値化・可視化するプログラムを開発し、運用を開始した。
KMCはクラウド上のデータベースで、着工前に作成するBIMと施工中の建設現場に設置したセンサ・デバイスから取得する空間データを一元管理する。当社は、KMCを東京都内のプロジェクトに導入し、レーザスキャナーやToFセンサ(*1)、Webカメラによる空間データの継続取得を開始しており、取得した空間データには撮影時刻(タイムスタンプ)が付与され、日々変化する建設現場を映し出すデジタルツイン・データとして、施工管理の効率化、遠隔管理、自動搬送ロボットの運用に活用していく。
*1:Time of Flightセンサ
センサからパルス投光されたレーザがセンサ内の受光素子に戻ってくるまでの時間を計測し、その時間を距離に換算する測定センサ
当社は、岐阜工業㈱及び㈱シンテックと共同で、従来に無い革新的な打設配管システムを開発し、トンネルの覆工コンクリート打設を完全に自動化することに成功した。
本システムは、覆工用高流動コンクリートを用いることで締固め作業を不要とし、またコンクリートポンプ車の圧送信号と配管の切替えをリンクさせることで打込み作業も不要としたことにより、人の手を全く介さずに、打上がり高さを自動で調整しながら、全断面で左右均等にコンクリートを吹上げ打設する。
これにより省人化、省力化を図り、安定したコンクリート品質を確保するとともに、従来工法と同等のコストを実現した。
当社は、中日本高速道路㈱と共同で、超高性能繊維補強セメント系複合材料(UHPFRC)を用いた道路橋床版のリニューアル工法を開発した。
本工法は、鋼繊維を多量に混入したUHPFRCを現場で製造・打設して補強・補修を行い、薄層でありながら、高耐久な床版を構築するものである。UHPFRCは超高強度であるため、コンクリート床版・鋼床版のどちらのリニューアルにおいても、床版の厚さの増加を最小限に抑えることができる。そのため、道路橋床版自体の重量を減らすことができ、橋梁下部工の補強が不要となる。
超高強度かつ耐久性に優れたUHPFRCを用いた現場打ち施工による補修・補強技術は、高速道路のリニューアルに大きく寄与することが期待されることから、今後は実工事への適用に向けた準備を進めていく。
*2:Ultra High Performance Fiber Reinforced cement-based Composites
水結合材比が15%程度で極めて緻密なセメント系材料を繊維で補強したもの
当社は、ニューブレクス㈱と共同で、これまでにない革新的な計測技術により光ファイバ上に生じたわずかなひずみ変化を検知できる管理システムを開発し、ケーソン沈設工事に適用した。他の技術では見ることのできない躯体内部全体のひずみ分布を、網羅的にリアルタイムでモニタリングし、地盤摩擦などケーソン沈設時のトラブルの予兆を捉え、高品質で周辺環境に優しい施工を実現した。
わずかなひずみ変化もピンポイントかつ瞬時に捉えられる同システムは広く展開が可能であり、本設・仮設を問わず様々な工種における施工管理へ積極的に活用していく。さらに、光ファイバを残置することにより、長年にわたり構造物の維持管理に活用できることから、インフラのライフサイクル全般での当技術の普及を目指す。
当社は、建設現場における資機材の位置や稼働状況、人の位置やバイタル情報等をリアルタイムに3次元で表示するリアルタイム現場管理システム「3D K-Field※」を、当社など9社が出資する羽田みらい開発㈱が運営する大規模複合施設「HANEDA INNOVATION CITY※(*4)」(東京都大田区)の施設運営ツールとして導入した。本システムを施設のデジタルツインとして活用し、各施設や自律走行バスの混雑状況並びに施設管理スタッフやサービスロボットの稼働状況を把握することで、来場者の満足度の向上や合理的な施設管理・運営を目指す。なお、本システムの導入に際しては、当社の関係会社である㈱One Teamがシステムのカスタマイズと各種センサの取付等を担当した。
*3:当社、マルティスープ㈱及びアジアクエスト㈱の共同開発
*4:当社の関係会社である羽田みらい開発㈱の登録商標
(3) 社会課題取組み強化(インフラ、耐震環境)
① 飛沫感染対策に「富岳」による室内環境シミュレーションを活用
新型コロナウイルスの脅威が続く中、当社は、室内に漂う飛沫の動きをコンピューター上で予測・見える化し、空調・換気、衝立などによる気流制御を駆使して、ウイルス感染のリスクを低減するための研究・開発を進めている。さらに部屋の広さや建材・家具に適したアドバイス・計画立案で接触感染を防ぐ除菌コンサル、レイアウト診断など多様な感染対応策の提供も行っている。当社は、2002年のSARS(重症急性呼吸器症候群)、2009年の新型インフルエンザの流行を契機に、いち早く飛沫に着目した研究をスタートし、2020年4月からは、国立研究開発法人理化学研究所を中心とした、世界最高性能のスーパーコンピュータ「富岳」を利用した新型コロナ対策に貢献するプロジェクトに建設会社として唯一参画している。
② CO2吸収コンクリート「CO2-SUICOM※(*5,6)」(シーオーツースイコム)を開発・実用化
当社は、中国電力㈱及びデンカ㈱と共同で、硬化の過程でCO2を吸い込み、カーボンネガティブ(CO2排出量がゼロ未満)を実現する革新的なCO2吸収コンクリート「CO2-SUICOM※」を世界で初めて開発・実用化した。「CO2-SUICOM※」は、セメントの半分以上を産業副産物に置き換えるとともに、産業廃棄物を原料とする特殊な混和材(γ-C2S)の配合により産業活動で排出されるCO2をコンクリート中に大量に固定することができる。
地球温暖化防止に向けてCO2削減が急務となっている中、2020年12月に経済産業省が策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」では「CO2-SUICOM※」が戦略技術として取り上げられており、普及・展開に大きな期待が寄せられている。
現在、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO)の委託を受け、「CO2-SUICOM※」の適用範囲を拡大するための開発を進めており、社会課題の解決に向けての検討をさらに加速させていく。
*5:CO2-Storage Utilization Infrastructure by COncrete Materials
*6:当社、中国電力㈱及びデンカ㈱の登録商標
③ 分散ファンによる省エネ空調システム「OCTPUSTM(*7)」(オクトパス)を開発
当社は、ダイキン工業㈱と共同で、分散ファンによる最適風量制御空調システム「OCTPUSTM」を開発し、本システムをみなとみらい21中央地区58街区(横浜市西区)で当社が他社と共同で開発を進めるオフィスビル「横濱ゲートタワー※」に初導入した。本システムは、大規模なオフィスビルなどで採用されるセントラル空調方式において、空調ゾーン毎にファン付風量制御装置を設置、空調機と連携させることで空調風量制御を最適化し、省エネルギーを実現する。
今後、オフィスビルなどの空調システムとして「OCTPUSTM」を積極的に提案し、建物運用エネルギーの削減を図っていくほか、IoTセンサとの組み合わせによるウェルネス空間への展開も検討していく。
*7:Optimal Controlled Terminal fan Powered Unit System
(国内関係会社)
舗装に関する新技術の開発
舗装現場のDX化、CO2排出抑制技術、建機の自動化等ICTを用いた省力化、省人化技術、重機の安全性向上技術等について、研究開発を進めている。舗装現場のDX化の第一ステップとして、トンネル内などの電波不感区域でデジタル通信を可能とする、PLC(*8)技術を用いた通信網構築技術を開発した。今後は、実工事への展開を図る。
*8:Power Line Communication
土壌汚染対策遮水壁の開発
施工機械の小型化とこれに対応した特殊材料の開発により、土壌汚染対策に適した遮水壁を造成する工法を開発した。
従来の土壌汚染対策は、汚染土をセメント系遮水壁で囲い込むことで汚染物質の流出を防ぐことや汚染土そのものを掘削除去することが主流であったが、遮水壁の造成や掘削除去には大型機械が必要であり、汚染土直上にある工場等の稼働停止または解体撤去が必要となるなど、施工上の制約が多く、土壌汚染対策実施の足かせとなっていた。
本工法は、施工機械の小型化により、狭隘な場所での施工並びに工場等の稼働を止めることなく対策工事を行うことを可能とするものである。また、小型施工機での造成用に新たに開発した特殊材料は、地盤変位に追随できる柔軟性を持つため、地震等の外力に対しても遮水壁の性能を維持することが可能となる。さらに、この特殊材料には鉄粉等の浄化材を混入させることができるため、遮水壁の造成と土壌汚染の原位置浄化を同じ機械で行うことで費用対効果の高い施工も可能となる。
本技術は、土壌汚染の封じ込めと原位置浄化の適用範囲を拡大し、従来は施工が難しかった厳しい条件下での土壌汚染対策に特に有効と考えられる。今後、実工事での実績を積み、多様な地盤への適用を含めた開発をさらに進めていく。
研究開発活動は特段行われていない。
(注) 工法等に「※」が付されているものは、当社及び関係会社の登録商標である。また、「TM」が付されているものは当社の商標である。