当社グループにおける経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り当連結会計年度末現在において判断したものであり、また、様々な要素により異なる結果となる可能性がある。
当社グループは、経営理念として「全社一体となって、科学的合理主義と人道主義に基づく創造的な進歩と発展を図り、社業の発展を通じて社会に貢献する。」ことを掲げ、さらに、企業経営の根幹を成す安全衛生・環境・品質に関する基本方針として「関係法令をはじめとする社会的な要求事項に対応できる適正で効果的なマネジメントシステムを確立・改善することにより、生産活動を効率的に推進するとともに、顧客や社会からの信頼に応える。」ことを定めている。
こうした方針に基づく取り組みを通して、より高い収益力と企業価値の向上を目指すとともに、社業の永続的発展により株主、顧客をはじめ広く関係者の負託に応え、将来に亘りより豊かな社会の実現に貢献していく。
当社グループを取り巻く経営環境は、近年、産業構造や人々の生活・行動、価値観の変容に加え、地球規模での気候変動と脱炭素化、デジタル化の進展などにより、急速に変化している。昨今の新型コロナウイルス感染症の拡大は、世界全体に著しい影響を及ぼし、社会・経済・技術の変化のスピードを加速させている。
こうした経営環境において、当社グループが持続的に成長するためには、多様な人材を呼び込み、外部リソースと連携しながら価値を共創することが重要と考えている。この認識のもと、当社グループが目指す方向性を広くグループ内外と共有するため、ビジョンを定めている。
ビジョンは、目指す方向性を文章で表現した「ステートメント」とそれを実現するうえで「大切にしたい価値観」から構成されており、過去に対する敬意と未来への挑戦という2つの意を込めている。また、大切にしたい価値観は、当社グループを木に見立て、いかに大きく成長させるかという視点に基づいている。

当社グループは、SDGsをはじめとした社会課題と事業活動の関連を確認・整理したうえで、社会・環境への影響度が大きく、かつ当社グループの企業価値向上や事業継続における重要度が高い課題を抽出し、7つのマテリアリティを特定している。マテリアリティに取り組むことを通じて、社会課題解決と企業価値向上の両立を目指していく。
マテリアリティと関連するSDGs

(4) 経営環境
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症の拡大と鎮静化が繰り返される中、一時的に停滞する局面もみられたが、全体としては欧米を中心に回復基調となった。一方で、ウクライナ情勢などの地政学的リスクにより先行きの不透明感は高まっている。
我が国経済については、感染防止対策と社会経済活動の両立が図られ、輸出や生産などに持ち直しの動きがみられたものの、感染症は依然として景気回復に向けたリスク要因となっている。
国内建設市場においては、企業の投資意欲が次第に高まったことに加え、公共投資が底堅く推移したことから、建設需要は増加傾向となったが、受注競争の厳しさは継続している。建設コストに関しては、鉄鋼や石油製品等の資材価格が上昇する状況が続いている。
今後の世界経済において、新型コロナウイルス感染症の影響が収束する時期を見通すことは困難であるものの、感染症対策の効果による各種制限の緩和に加え、脱炭素社会への移行などサステナビリティ課題解決に向けた投資の拡大により、経済の活性化が進展することを期待している。しかしながら、ウクライナ情勢などの地政学的リスクが高まる中、資源価格の上昇や金融市場の変動などが経済に与える影響を注視する必要があると考えている。
建設市場においても、国内外における建設投資の回復傾向が継続することが期待され、特にデジタル化や再生可能エネルギーなどに関連する需要は高まりをみせている。一方で、資機材の価格が一段と上昇することが懸念され、調達面での対策が必要となっている。また、国内においては、次世代の担い手確保の観点から、協力会社を含む建設業従事者の処遇改善と働き方改革、並びに生産性向上を一層推進していくことが求められている。
このような経営環境の中、当連結会計年度を開始年度とする「鹿島グループ中期経営計画(2021~2023)-未来につなぐ投資-」に基づき、直面する課題に対応して、業績の維持向上を図るとともに、中長期的な成長に向けた投資を実施している。
中期経営計画の概要と取り組み状況については以下のとおりである。
① 中期経営計画の位置づけ
「鹿島グループ中期経営計画(2021~2023)-未来につなぐ投資-」は、「経営理念」に加え、「ビジョン」、「マテリアリティ(重要課題)」と結びついている。

② 計画全体像(2030年にありたい姿と主要施策)
「鹿島グループ中期経営計画(2021~2023)-未来につなぐ投資-」は、中長期的目標である「2030年にありたい姿」を念頭に置き、「①中核事業の一層の強化、②新たな価値創出への挑戦、③成長・変革に向けた経営基盤整備とESG推進」を3つの柱として、厳しい経営環境においても、業績を維持・向上させながら、中長期的な成長に向けた投資を実施し、当社グループの将来にわたる発展につなげる計画としている。

③ 主要施策の取り組み状況
1)中核事業の一層の強化
建設事業においては、成長領域を見据えた提案力、設計施工力、エンジニアリング力の強化を進め、重点分野である再開発事業や生産・物流施設等において大型工事を受注している。また、自動化施工等の技術開発とデジタル化の推進により、次世代建設生産システムを進化させ、生産性の更なる向上を図っている。設計段階からデジタル化を進めることにより施工との連携を強め、顧客ニーズへの対応力を高めるとともに、設計仕様・数量の早期確定を図り迅速な調達につなげるなど、資材価格の上昇対策にも注力している。
開発事業においては、米国や欧州を中心に投資の成果が業績に貢献しはじめている。国内外の景気動向を見極め、リスク管理を徹底した投資と回収を計画的に進めることにより、効率性の高い投資サイクルを継続していく。
引き続き、国内外において、中核事業である建設事業、開発事業の相乗効果を高めるとともに、事業展開地域間の連携・補完により、建設事業及び開発事業に関わるあらゆるフェーズにおいて持続的に価値を提供できるバリューチェーンの構築を図っていく。
2)新たな価値創出への挑戦
建設や街づくりの知見・データを活用するとともに、オープンイノベーションや投資を通じた異業種・ベンチャー企業との提携により、環境・エネルギー、スマートシティ・スマートソサエティ、インフラ運営など有望分野での事業展開を進めている。
また、オープンイノベーションと新たなビジネスの創出を更に進めるため、技術開発に積極的なシンガポールにおいて、先進的技術を研究・開発するための新拠点「The GEAR」(2023年完成予定)を建設中である。
3)成長・変革に向けた経営基盤整備とESG推進
全ての企業行動の根底となるコンプライアンスを最重要課題と認識し、サプライチェーン全体において、法令遵守、品質及び安全等の様々なリスクへの対応を強化している。
次世代の担い手確保に関しては、技能労働者の処遇改善と安全・品質管理の強化につながる重層下請構造改革に挑戦するとともに、協力会社の人材育成を目的として「鹿島パートナーカレッジ」を開設した。また、当社グループの持続的な成長を担う多様な人材を確保・育成するための新しい研修施設「KX-LAB」の開設や、生産性を高められる柔軟な働き方・職場環境の整備を進めている。
2050年のカーボンニュートラル実現に向けては、資源循環、生物多様性も含めた環境・エネルギー課題の解決を目指す「鹿島環境ビジョン:トリプルZero2050」に基づく活動を積極的に推進していく。
④ 投資計画の進捗状況
3年間の中期経営計画期間中に、総額8,000億円の投資と開発事業における3,600億円の売却による回収を計画しており、当連結会計年度は総額2,520億円の投資、1,070億円の回収を行った。中核事業の強化とともに、新たな価値創出に向けた成長投資を継続的に推進していく。
(6) 目標とする経営指標
2023年3月期は、新型コロナウイルス感染症の状況やウクライナ情勢などを慎重に見定めつつ、リスク管理を徹底した事業展開に努めていく。業績に関しては、国内外において売上高の増加を見込むものの、経済動向の先行きが不透明であることから、資機材価格の上昇などのリスク要因を利益面で見込んでいる。海外事業については、引き続き北米を中心とした流通倉庫開発事業などにおける物件売却が業績に貢献すると見込むとともに、東南アジアにおける業績が、感染症による影響の軽減に伴い、時間を要しつつも段階的に回復に向かうと見通している。
このような国内外の状況を勘案し、2023年3月期の業績予想を、2022年5月13日に下記のとおり公表している。
また、「鹿島グループ中期経営計画(2021~2023)-未来につなぐ投資-」においては、最終年度である2024年3月期の経営目標を売上高2兆2,500億円程度、親会社株主に帰属する当期純利益950億円以上としている。また、2025年3月期から2027年3月期の期間においては、東南アジアにおける業績が感染症拡大前の水準に回復するとともに、事業領域拡大や新たな価値創出に向けた「未来につなぐ投資」の成果が徐々に現れ、安定的に親会社株主に帰属する当期純利益1,000億円以上を計上できる体制を構築することを目指し、2031年3月期には1,300~1,500億円以上の水準を目指している。
当社グループは、事業遂行上のリスクの発生を防止、低減するための活動を推進している。新規事業、開発投資などの「事業リスク」に関しては、専門委員会等が事業に係るリスクの把握と対策について審議を行っている。法令違反などの「業務リスク」に関しては、コンプライアンス・リスク管理委員会が当社グループにおけるリスク管理体制の運用状況の把握、評価を行うとともに、リスク管理の方針及び重大リスク事案への対応などについて審議を行い、必要に応じて取締役会に報告している。
リスク管理活動の実効性を高めるためには、あらゆるリスクを網羅・検証した上で、重要度に応じた活動を推進することが有効であることから、毎年、発生頻度及び顕在化した際の影響度の両面から分析し、企業活動上、重点的な管理が必要とされる業務リスク事項をリスク管理重点課題として選定・展開し、予防的観点からのリスク管理を実施している。顕在化したリスク事案については、早期の報告を義務付け、組織的対応によるリスクの拡大防止と再発防止に努めるなど、PDCAサイクルに基づいた実効的なリスク管理活動を展開している。
本社のリスク所管部署の担当者によって構成するリスク管理連絡会議を定期的に開催し、当社グループに関するリスク顕在化事案や法令改正、社会動向、他社における事例、さらにはリスクマネジメントやリスクコミュニケーションの手法などの情報を報告・共有し、重要な情報については適宜コンプライアンス・リスク管理委員会に報告している。

事業リスクの把握と対策を審議する専門委員会(当報告書の提出日現在)
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりである。
なお、文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において判断したものである。
当社グループにおいては、これらの事業を取り巻く様々なリスクや不確定要因等に対して、その予防や分散、リスクヘッジ等を実施することにより、企業活動への影響について最大限の軽減を図っている。
景気悪化等による建設需要の大幅な減少や不動産市場の急激な縮小等、建設事業・開発事業等に係る著しい環境変化が生じた場合には、建設受注高の減少及び不動産販売・賃貸収入の減少等の影響を受ける可能性がある。
また、他の総合建設会社等との競争が激化し、当社グループが品質、コスト及びサービス内容等における競争力を維持できない場合、業績等が悪化する可能性がある。
変化する状況や市場動向を踏まえ策定した「鹿島グループ中期経営計画(2021~2023)-未来につなぐ投資-」に掲げる諸施策を推進することにより、経営目標の達成と企業価値の向上を目指している。
建設工事においては、工事期間が長期に亘る中で資機材及び労務の調達を行う必要があることから、建設コストの変動の影響を受ける。主要資材価格や労務単価の急激な上昇等による想定外の建設コスト増加を請負契約工事金額に反映させることができない場合には、工事採算が悪化する可能性がある。
建設コストの変動による影響を抑えるため、早期調達及び多様な調達先の確保を図るとともに、発注者との契約に物価スライド条項を含める等の対策を実施している。
当社グループは、中期経営計画に定めた投資計画に基づき不動産開発投資、R&D・デジタル投資及び戦略的投資等を推進している。販売用不動産(当連結会計年度末の連結貸借対照表残高740億円)の収益性が低下した場合、賃貸等不動産(同2,192億円)及び投資有価証券(同3,558億円)等の保有資産の時価が著しく下落した場合には、評価損や減損損失等が発生する可能性がある。
開発事業資産については、案件毎に価値下落リスク等を把握し、その総量を連結自己資本と対比し一定の水準に収める管理を実施している。連結自己資本は、中期経営計画期間中の国内外開発事業資産の増加を考慮しても十分耐性を持つ財務基盤を維持できる水準を確保している。また、個別案件の投資に当たっては、本社の専門委員会(開発運営委員会、海外開発プロジェクト運営委員会)等においてリスクの把握と対策を審議した上で、基準に則り取締役会や経営会議において審議している。
投資有価証券のうち政策的に保有する株式は、毎年度、全銘柄について、中長期的な視野に立った保有意義や資産効率等を検証した上で、取締役会にて審議し、保有意義の低下した銘柄は原則として売却している。中期経営計画期間においては、政策保有株式を300億円以上売却する方針としている。
当社グループは、北米・欧州・アジア・大洋州等海外における建設事業及び開発事業を展開しており、中期経営計画に基づき、人材面での更なるローカル化、業務・資本提携による各国事業基盤の拡充等を推進していく方針である。進出国の政治・経済情勢、法制度、為替相場等に著しい変化が生じた場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
海外におけるM&Aや新市場への進出等に当たっては、本社の専門委員会(海外事業運営委員会)等においてリスクの把握と対策を審議した上で、基準に則り取締役会や経営会議において審議している。
また、テロ、暴動等が発生した場合に、社員・家族の安否確保を図り、現地支援を行うため、国際危機対策委員会を設置している。
建設業界においては、建設技能労働者が減少傾向にあり、十分な対策を取らなければ、施工体制の維持が困難になり、売上高の減少や労務調達コストの上昇による工事利益率の低下等の影響を受ける可能性がある。
当社グループは、将来の施工体制を維持するため、中期経営計画に基づき、生産性向上による更なる業務効率化を推進し、工期を遵守しつつ現場の「4週8閉所」に挑戦し労働条件の改善を図るとともに、原則二次下請までに限定した施工体制の実現をはじめとした環境整備、技能労働者の処遇改善と収入の安定等、職業としての魅力向上に向けた各種施策を実施している。併せて、技能労働者の処遇改善に繋がる協力会社への支援策を実施している。また、担い手不足を補うため、自動化、省人化・ロボット化技術の開発を計画的に進めている。
当社グループは、建設業法、建築基準法をはじめ、労働安全衛生関係法令、環境関係法令、独占禁止法等、様々な法的規制の中で事業活動を行っている。そのため、法令等の改正や新たな法的規制の制定、適用基準の変更等があった場合、その内容次第では受注環境やコストへの影響等により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。また、当社グループにおいて法令等に違反する行為があった場合には、刑事・行政処分等による損失発生や事業上の制約、信用の毀損等の発生により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
これらのリスクへの対応として、関係法令等の制定・改正については、担当部署を通じてその内容と必要な対応を周知するとともに、コンプライアンス・マニュアルである「鹿島グループ 企業行動規範 実践の手引き」を策定、法令等の改正や社会情勢の変化も踏まえ適宜改訂し、全役員・従業員に周知している。また、コンプライアンス意識の更なる向上と定着を図るため、当社グループの役員及び従業員を対象としたeラーニングを用いた「鹿島グループ企業行動規範」に関する研修を継続的に実施しているほか、たとえば独占禁止法分野では、本社法務部が、独占禁止法遵守マニュアルの策定・改定、弁護士によるケーススタディを用いた研修会開催、本社及び各支店における談合防止体制の遵守状況の監査を実施するなど、各分野の担当部署が、規則・ガイドラインの策定、研修、監査等を実施し、適正な事業活動のより一層の推進を図っている。
当社グループが提供する設計、施工をはじめとする各種サービスにおいて、重大な人身事故、環境事故、品質事故等が発生した場合には、信用の毀損、損害賠償や施工遅延・再施工費用等の発生により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
安全衛生・環境・品質の確保は生産活動を支える前提条件であり企業存続の根幹であることから、基本方針並びに安全衛生方針、環境方針、品質方針を定め、関係法令をはじめとする社会的な要求事項に対応できる適正で効果的なマネジメントシステムにより生産活動を行っている。安全を実現するため「建設業労働安全衛生マネジメントシステム(COHSMS)」に準拠した安全衛生管理を行うとともに、環境については、ISO 14001に準拠した環境マネジメントシステムを運用している。また、品質については、土木部門・建築部門それぞれでISO 9001の認証を受けており、海外関係会社は個々に必要な認証を受けている。
当社グループは設計、施工をはじめとする各種サービスを提供するにあたり、建造物や顧客に関する情報、経営・技術・知的財産に関する情報、個人情報その他様々な情報を取り扱っている。このような情報が外部からの攻撃や従業員の過失等によって漏洩又は消失等した場合は、信用の毀損、損害賠償や復旧費用等の発生により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
これらのリスクに対応するため、当社グループでは情報セキュリティポリシーを定め、重点的なリスク管理を実施している。サイバー攻撃を想定した訓練を実施し組織的な対応力向上に取り組んでいるほか、当社グループの役員及び従業員を対象としたeラーニングを用いた教育、点検及び監査並びに協力会社に対する啓発活動を行っている。
発注者、協力会社等の取引先が信用不安に陥った場合には、工事代金の回収不能や施工遅延等により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。特に、一契約の金額の大きい工事における工事代金が回収不能になった場合、その影響は大きい。
新規の営業案件に取り組むに当たっては、企業者の与信、資金計画並びに支払条件などを検証し、工事代金回収不能リスクの回避を図り対応している。新たな契約形態や工事代金の回収が竣工引き渡し後まで残る不利な支払条件を提示された場合等には、本社が関与しリスクの把握と対策を講じるとともに、基準に則り経営会議において審議している。
協力会社と新たに取引を開始する際には、原則として財務状況等を審査したうえで工事下請負基本契約を締結している。また、重要な協力会社に対しては、定期的に訪問し財務状況を含めた経営状況の確認を実施している。
大規模地震、風水害等の大規模自然災害が発生した場合には、施工中工事への被害や施工遅延、自社所有建物への被害などにより、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
災害時の事業継続計画(BCP)を策定しており、首都直下地震や豪雨災害等を想定した実践的なBCP訓練を実施するなど、企業としての防災力、事業継続力の更なる向上に取り組んでいる。
パンデミック(感染症の大流行等)が発生した場合には、景気悪化による建設受注高の減少や工事中断による売上高の減少等、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
新型コロナウイルス感染症に対しては、引き続き、感染予防と感染拡大防止を最優先としつつ、事業継続と被害最小化を図るため、情報収集とリスク想定を行い、国内外従業員への行動指示、テレワーク環境の整備推進、協力会社への指導ほか必要な対策を実施している。
2022年3月期業績への新型コロナウイルス感染症の影響に関しては、東南アジアにおいて資機材・作業員の供給不足による工事進捗の低下やホテル等運営施設の稼働率低下等の影響が長期化しているが、その他の地域における影響は軽微であった。
2023年3月期の業績予想は、東南アジアにおける業績が、感染症による影響の軽減に伴い、時間を要しつつも段階的に回復に向かうと見通しているが、国内外における資機材価格の上昇の影響によるリスクを織り込んだことなどにより、前年度比減益の予想としている。
2022年度リスク管理重点課題(業務リスク)
近年、気候変動により自然災害が激甚化する傾向にあり、気候変動に伴う物理的リスクとしては、台風や洪水等による施工中工事への被害や施工遅延、自社所有建物への被害等により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
災害時の事業継続計画(BCP)を策定し豪雨災害等を想定した実践的なBCP訓練の実施等により企業としての防災力、事業継続力の向上に取り組むことに加え、防災・減災及びBCP分野におけるR&Dを推進することにより、社会・顧客に対し関連サービスを提供するとともに、災害発生時には復旧・復興等に貢献することを目指している。
脱炭素社会への移行リスクとしては、温室効果ガス排出量の上限規制による施工量の制限や炭素税の導入によるコスト増等により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
中期経営計画及び「鹿島環境ビジョン:トリプルZero2050」に基づき、建設現場等におけるCO2排出量削減とカーボン・オフセットのための投資に計画的に取り組むことに加え、再生可能エネルギー、省エネルギー関連分野等における保有技術の活用や新たな技術の開発等により、脱炭素社会への移行に対し事業を通じて貢献することを目指している。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりである。
売上高は、当社建築事業及び海外関係会社の売上高が増加し、前連結会計年度比9.0%増の2兆796億円(前連結会計年度は1兆9,071億円)となった。
利益については、海外関係会社の売上総利益は増加したものの、当社売上総利益の減少及び販管費の増加などにより、営業利益は前連結会計年度比3.1%減の1,233億円(前連結会計年度は1,272億円)となった。経常利益は、開発事業に係る営業外収益の増加などが加わり、同8.9%増の1,521億円(同1,397億円)となった。特別損益は、政策保有株式(上場株式)の売却(16銘柄148億円)等により投資有価証券売却益を計上した一方で、ミャンマーにおけるヤンキン地区複合開発に関する減損損失を計上し、親会社株主に帰属する当期純利益は同5.4%増の1,038億円(同985億円)となった。
セグメントごとの経営成績は次のとおりである。(セグメントの経営成績については、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載している。)
(当社における建設事業のうち土木工事に関する事業)
売上高は、大きく進捗した大型工事が少ないことなどから、前連結会計年度比18.8%減の2,718億円(前連結会計年度は3,347億円)となった。
営業利益は、売上総利益率は向上したものの、売上高減少を主因に、前連結会計年度比34.1%減の196億円(前連結会計年度は298億円)となった。
(当社における建設事業のうち建築工事に関する事業)
売上高は、手持ちの大型工事の施工が着実に進捗したことなどから、前連結会計年度比17.7%増の9,206億円(前連結会計年度は7,822億円)となった。
営業利益は、大型竣工工事が少ないことなどから売上総利益率が前連結会計年度を下回ったことを主因に、前連結会計年度比13.4%減の501億円(前連結会計年度は578億円)となった。
(当社における不動産開発全般に関する事業及び意匠・構造設計、その他設計、エンジニアリング全般の事業)
前連結会計年度は不動産販売事業における大型物件の引渡しがあり、売上高、営業利益ともに高い水準であったことから、売上高は前連結会計年度比27.7%減の524億円(前連結会計年度は725億円)、営業利益は同35.3%減の112億円(同174億円)となった。
(当社の国内関係会社が行っている事業であり、主に日本国内における建設資機材の販売、専門工事の請負、総合リース業、ビル賃貸
事業等)
売上高は、「収益認識に関する会計基準」等の適用に伴い、建設資機材販売等における代理人取引について純額で収益を認識する方法に変更したことを主因に、前連結会計年度比16.4%減の3,161億円(前連結会計年度は3,780億円)となった。
営業利益は、建設事業の売上総利益減少を主因に、前連結会計年度比4.8%減の162億円(前連結会計年度は171億円)となった。
(当社の海外関係会社が行っている事業であり、北米、欧州、アジア、大洋州などの海外地域における建設事業、開発事業等)
売上高は、北米、欧州において建設事業、開発事業等ともに増加したことを主因に、前連結会計年度比27.6%増の6,239億円(前連結会計年度は4,891億円)となった。
営業利益は、北米における開発事業等の売上総利益が大幅に向上したことなどから、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する東南アジアの営業損失を補い、前連結会計年度比285.5%増の264億円(前連結会計年度は68億円)となった。
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末比1,729億円増加し、2兆3,377億円(前連結会計年度末は2兆1,648億円)となった。これは、受取手形・完成工事未収入金等の増加1,244億円及び棚卸資産(販売用不動産、未成工事支出金、開発事業支出金及びその他の棚卸資産)の増加174億円があった一方で、現金預金の減少343億円があったこと等によるものである。
負債合計は、前連結会計年度末比1,041億円増加し、1兆3,841億円(前連結会計年度末は1兆2,800億円)となった。これは、支払手形・工事未払金等の増加563億円及び有利子負債残高※の増加428億円があったこと等によるものである。なお、有利子負債残高は、3,599億円(前連結会計年度末は3,170億円)となった。
純資産合計は、株主資本8,091億円、その他の包括利益累計額1,365億円、非支配株主持分78億円を合わせて、前連結会計年度末比687億円増加の9,535億円(前連結会計年度末は8,848億円)となった。
また、自己資本比率は、前連結会計年度末比0.1ポイント好転し、40.5%(前連結会計年度末は40.4%)となった。
(注) ※短期借入金、コマーシャル・ペーパー、社債(1年内償還予定の社債を含む)及び長期借入金の合計額
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、302億円の収入超過(前連結会計年度は1,530億円の収入超過)となった。これは、税金等調整前当期純利益1,503億円に減価償却費226億円等の調整を加味した収入に加えて、仕入債務の増加615億円の収入があった一方で、売上債権の増加687億円、棚卸資産(販売用不動産、未成工事支出金、開発事業支出金及びその他の棚卸資産)の増加628億円及び法人税等の支払額540億円の支出があったこと等によるものである。
投資活動によるキャッシュ・フローは、511億円の支出超過(前連結会計年度は654億円の支出超過)となった。これは、有形固定資産の取得による支出494億円、貸付けによる支出220億円及び投資有価証券の取得による支出127億円があった一方で、貸付金の回収による収入225億円及び投資有価証券の売却等による収入215億円があったこと等によるものである。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額281億円の支出及び自己株式の取得による支出200億円があった一方で、短期借入金、長期借入金、コマーシャル・ペーパー及び社債による資金調達と返済の収支が304億円の収入超過となったこと等により、209億円の支出超過(前連結会計年度は391億円の支出超過)となった。
これらにより、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末から332億円減少し、2,677億円(前連結会計年度末は3,009億円)となった。
当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため、また、受注高について当社グループ各社の受注概念が異なるため、「生産の実績」及び「受注の実績」は記載していない。
(注) 1 売上実績においては、「外部顧客への売上高」について記載している。
2 前連結会計年度及び当連結会計年度ともに売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
(注) 1 前事業年度以前に受注したもので、契約の更改により請負金額に変更があるものについては、当期受注高
にその増減額を含む。したがって、当期売上高にもかかる増減額が含まれる。
2 期末繰越高は、(期首繰越高+当期受注高-当期売上高)である。
3 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当事業年度の期首から適用
しており、当事業年度の期首繰越高については、当該会計基準等を適用した後の数値となっている。
建設工事の受注方法は、特命と競争に大別される。
(注) 百分比は請負金額比である。
(注) 1 前事業年度及び当事業年度ともに完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
2 当事業年度の完成工事のうち主なものは、次のとおりである。
e 繰越工事高(2022年3月31日現在)
(注) 繰越工事のうち主なものは、次のとおりである。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り当連結会計年度末現在において判断したものである。
① 経営成績及び財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績は、海外関係会社における北米、欧州の流通倉庫開発事業などによる利益貢献に加え、国内建設事業(土木事業・建築事業)の着実な利益確保等により、前連結会計年度比増収増益となり、2020年3月期以来2年ぶりに、売上高は2兆円を超え、親会社株主に帰属する当期純利益は1,000億円を上回る水準となった。海外関係会社の業績向上は、従前から取り組んできた事業基盤の構築と戦略的な投資の成果が現れたものと考えている。
新型コロナウイルス感染症の影響に関しては、国内においては、関係会社が運営するホテルの稼働率が低水準で推移したものの、建設事業や開発事業(不動産販売事業、賃貸事業)への大きな影響はなかった。海外については、東南アジアにおいて資機材や作業員の供給不足等による工事進捗への影響やホテル等運営施設の稼働率低下が長期化しているものの、北米や欧州における影響は軽微であった。
業績予想との比較では、売上高は業績予想と同水準となり、営業利益、経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益は業績予想を上回った。
当連結会計年度の経営成績(連結業績予想との対比) (単位:百万円)
財政状態については、当連結会計年度末の資産合計が前連結会計年度末比1,729億円増加し、2兆3,377億円となった。建設事業における売上債権(受取手形・完成工事未収入金等)が売上高の増加等に伴って増加し、計画に基づく国内外の不動産開発投資の進捗により、開発事業資産(開発事業支出金及び有形固定資産など)も増加している。投資有価証券については、政策保有株式の中長期的な縮減に向けて、保有する上場株式の一部(16銘柄)を売却したものの、中核事業の強化や新たな価値創出に向けたベンチャー企業等への出資・資本提携などにより増加した。連結自己資本は前連結会計年度末から708億円増加の9,457億円、自己資本比率は40.5%となり、ともに過去最高水準となっている。連結有利子負債残高は前連結会計年度末から428億円増加し、3,599億円となっているものの、D/Eレシオ(負債資本倍率)は0.38倍であり、財務の健全性は十分に維持できていると考えている。
経営成績に重要な影響を与える主な要因は、建設事業及び開発事業における需要やコストの急激な変動等の事業環境の変化である。当連結会計年度においては、国内建設需要は、堅調な公共投資に加え、企業の投資意欲の高まりにより民間設備投資が増加傾向となったが、大型工事を中心に受注競争の厳しさは継続している。海外における建設需要は、経済活動が回復に向かっている欧米では堅調に推移し、東南アジアにおいても投資再開の動きが見え始めている。コストに関しては、資機材価格が上昇する状況が続き、ウクライナ情勢等の影響により、その動きが加速している。
今後については、建設需要の回復基調が継続するとともに、国内における受注競争が次第に落ち着きを見せることが期待されるが、新型コロナウイルス感染症の状況を引き続き注視するとともに、ウクライナ情勢などの地政学的リスクが高まる中、資源価格の上昇や金融市場の変動などが事業環境に与える影響を見極めつつ、リスク管理を徹底した事業を展開していく必要があると考えている。また、国内においては、中長期的に建設技能労働者が減少していく可能性があることから、次世代の担い手確保に向けた施策を進めると同時に、ICTツールなどの活用に伴う施工の自動化、デジタル化、遠隔管理化などによる生産性向上の取り組みを推進していく方針である。
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりである。
a 土木事業
(当社における建設事業のうち土木工事に関する事業)
売上高は、大きく進捗した大型工事が少ないことに加え、設計から関与し着工までに時間を要する案件が多いことから、施工量が少ない時期となり減収となった。この傾向は2023年3月期においても継続すると考えているが、その後は早期に3,000億円台へ回復させることを目指している。売上総利益率は、工事終盤の案件を中心として損益改善が進んだことから、前連結会計年度における15.5%から16.5%に改善したが、減収の影響が大きく、営業利益は減益となった。
土木事業における建設需要は、風力発電などのエネルギー分野への需要の拡大やインフラ更新などの国土強靭化に関連した公共投資により、今後も堅調に推移すると考えている。成長領域である洋上・陸上風力発電施設に関しては、工事を施工することにより得られた知見やデータを蓄積し、今後の案件獲得に向けた体制を整備している。また、当連結会計年度に有料道路熱海ビーチライン運営事業を取得し、インフラ更新や維持管理分野の強化を目指すとともに、環境配慮型技術の実証・実装の場としても活用していく方針である。
b 建築事業
(当社における建設事業のうち建築工事に関する事業)
売上高は、1兆2,000億円を超える豊富な期首繰越高の施工が、大型工事を中心に着実に進捗したこと等から増収となった。2023年3月期の売上高については、大型工事の施工が本格化していることから、更なる増加を見込んでいる。
当連結会計年度は、竣工を迎える大型工事が少ないことに加え、受注競争やコスト面で厳しい状況が継続したものの、早期調達等のコスト上昇対策や生産性向上の取り組みなどにより、10%を超える売上総利益率(10.3%)を確保した。2023年3月期については、初期段階の工事を中心に資機材価格上昇などのリスク要因を織り込み、売上総利益率は8.5%を見込んでいる。
建築事業は、資機材価格上昇の影響を大きく受けるため、価格動向に留意した見積作成に加えて、早期調達や集約発注などに努め、予測不能な資機材価格高騰に対しては、発注者に請負金額の変更や設計変更等への理解を求め、影響の最小化を図っている。
c 開発事業等
(当社における不動産開発全般に関する事業及び意匠・構造設計、その他設計、エンジニアリング全般の事業)
開発事業等の売上高及び営業利益は、不動産販売事業における大型物件の引渡しがあった前連結会計年度と比較すると減少したものの、計画通りにオフィスビルの持分売却を実現するなど、不動産販売事業、賃貸事業ともに堅調に推移したと考えている。
当連結会計年度において、開発を推進してきた「横濱ゲートタワー」や「博多コネクタ」が完成した。両プロジェクトともにオフィスは満室稼働しており、今後の業績貢献を見込んでいる。国内開発事業においては、今後も優良資産を積み上げ、賃貸事業の収益を拡大するとともに、市況や業績動向に応じた最適なタイミングで売却を図り、更なる成長を目指していく。
d 国内関係会社
(当社の国内関係会社が行っている事業であり、主に日本国内における建設資機材の販売、専門工事の請負、総合リース業、ビル賃貸事業等)
当連結会計年度から「収益認識に関する会計基準」等を適用したことに伴い、一部の関係会社における建設資機材等の販売のうち、代理人取引に該当するものについて、純額で収益を認識する方法に変更していることを主因に、国内関係会社の売上高は減収となった。ただし、当該代理人取引は主にグループ内における取引であるため、連結売上高への大きな影響はなかった。
利益面では、建設事業における売上総利益率低下や原材料高騰による合材販売事業の採算低下などがみられたものの、建物管理事業やリース事業を担う関係会社の業績が改善するなど、全体としては堅調に推移した。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響により低下していたゴルフ場の稼働率は、感染拡大前の水準に回復しつつある。ホテルについても稼働率回復の動きが見え始めたものの、以前の水準に戻るには時間が必要な状況である。
e 海外関係会社
(当社の海外関係会社が行っている事業であり、北米、欧州、アジア、大洋州などの海外地域における建設事業、開発事業等)
当連結会計年度における海外関係会社の売上高及び営業利益は過去最高水準となった。売上高については、新型コロナウイルス感染症の影響が軽微であった北米や欧州において、建設事業、開発事業等がともに増加したことが主因であるが、特に、北米の開発事業等の売上高が、好調な流通倉庫開発事業における物件売却により、大幅に伸長した。営業利益においても北米の開発事業等の貢献が大きく、感染症の影響が長期化する東南アジアにおける営業損失を補い、前連結会計年度の実績を大幅に上回る結果となった。
流通倉庫開発事業は、事業用地の取得から建設、テナント誘致、運営、売却まで当社グループが一貫して関与することが可能であり、成長分野として位置付け、北米、欧州において積極的に推進しているが、当連結会計年度において、北米17件、欧州5件の物件を売却した。また、継続的な業績貢献を目的として、事業採算性とリスクを見極めつつ、北米27件、欧州10件の新規流通倉庫開発に着手している。今後、流通倉庫に加え、事業展開地域の市場特性に合わせて、住宅、ホテル、学生寮、オフィスなど幅広い分野への投資を実施していく方針である。
なお、ミャンマーにおける「ヤンキン地区複合開発」については、同国における政変発生以降、建設工事を中断していたが、当社グループ社員や技能労働者の安全、品質の確保、投下資金の回収可能性の観点から工事を再開できる条件が整わないと判断したことにより完成時期などが不確定となったことから、当連結会計年度において当該資産の帳簿価額の全額を減額し、減損損失として特別損失に計上している。
2023年3月期については、当連結会計年度における建設受注高が高水準であったことなどから、売上高は更に増加する見通しである。東南アジアにおいては、感染症の影響が軽減されることにより、業績が段階的に回復に向かうと見込んでおり、北米の流通倉庫開発事業を中心とした開発事業等の利益貢献も続く見通しであることから、営業利益は高い水準を維持すると見込んでいる。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは当連結会計年度において、国内建設事業や北米流通倉庫開発事業における物件売却などにより創出したキャッシュに加え、政策保有株式の売却や有利子負債の増加、現金及び現金同等物の取り崩し等を原資として、投資計画に基づく国内外の不動産開発投資やM&A・資本提携などの戦略的投資を積極的に実施した。また、配当に加え、機動的な株主還元として、合計200億円の自己株式取得を実施し、株主還元を拡充させている。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ332億円減少し2,677億円となった。当連結会計年度は前連結会計年度を上回る利益を計上し、有利子負債による資金調達も増加したものの、不動産開発投資や戦略的投資並びに株主還元の実施などによる支出が上回り、現金及び現金同等物の残高が減少した。今後の建設事業における資金需要は、工事施工中に一時的な立替資金が発生する可能性があるなど、予測が難しい状況であるが、現金及び現金同等物の残高は月商程度の水準を上回っており、懸念はないと考えている。また、コミットメントラインを設定する等、安定的な資金運営に向けた多様な資金調達手段を備えている。
「鹿島グループ中期経営計画(2021~2023)-未来につなぐ投資-」の投資計画に基づき推進している国内外の不動産開発投資やR&D・デジタル投資、M&A等の戦略的投資などの原資として、今後も国内外における建設事業の収益力を高め、キャッシュの創出に努めるとともに、開発事業資産の計画的な売却や中長期的な政策保有株式の縮減を進めていく方針である。株主還元については、配当性向の目安を30%とするとともに、業績、財務状況及び経営環境を勘案した自己株式の取得など機動的な株主還元を行うことを基本方針としている。
また、投資計画の実施に伴う資金需要に対しては、投資効率の向上に向けて、金利動向を見極めながら弾力的に外部資金を活用しているため、2023年3月末の連結有利子負債残高は5,000億円に増加する見通しであるものの、拡大する開発事業資産などに対するリスク耐性を備えた財務健全性は維持していく方針である。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されているが、この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されている。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っているが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なることがある。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載している。
特記事項なし。
当社グループは、近年の社会環境の大きな変化を踏まえ、社会課題解決と企業価値向上の両立を目指して技術開発を進めている。中期経営計画(2018~2020)において重点的に取り組んだ生産性向上・生産能力増強に繋がる技術開発は、デジタル建設生産システムの構築を目指す新たなフェーズに入った。さらに、長く使い続けられる社会インフラや、「鹿島環境ビジョン:トリプルゼロ2050」の実現等、社会課題解決と新たな価値創造に資する研究開発を中長期的な課題として取り組んでおり、大学、公共機関や他企業との共同研究も推進しながら、効率的に実施している。
当連結会計年度における研究開発費の総額は
当社は、阪神高速道路㈱と共同で、UFC道路橋床版を阪神高速12号守口線本線の床版取替工事(大阪市北区)に適用した。UFC道路橋床版を適用した高速道路本線の床版取替工事は国内で初めてであり、旋回可能な専用架設機により、作業の効率化を図ることで、通行止め期間を大幅に短縮した。
本工事で得られた高速道路本線における床版取替工事の知見を活かし、高度成長期に建設され老朽化が進行している床版の大規模リニューアル工事に向けた検討を進め、技術の更なる向上を図っていく。
*1:Ultra-high strength Fiber reinforced Concrete(超高強度繊維補強コンクリート)
当社は、四国横断自動車道吉野川大橋工事(徳島県徳島市)において、架設前のセグメント形状を3次元デジタルカメラにより全方向から計測し、架設線形を高精度に予測する出来形管理を実施した。本工事は、プレキャストセグメント橋として世界最長規模の張出し架設長を有するが、この技術により、架設途中での線形修正なしに施工することが可能となり、生産性の大幅な向上に繋がった。
今後、本工事で活用した3次元デジタルカメラによる出来形管理を、プレキャスト部材を活用した様々な工種に展開することも検討し、更なる生産性と品質の向上に繋げていく。
当社は、工場で製作する各種部材の製作・運搬・施工の各フェーズにおける進捗予定と実績を、BIMデータと連携して管理する進捗管理システム「BIMLOGI※」を開発した。本システムの活用により、日々刻々と変化する工事の進捗状況を、リアルタイムに把握し関係者間で共有し、工事の手戻りや手待ちの発生を減らすことができる。
都内の大型建築現場において、本システムによる進捗管理を実証し、所期の効果を得たことから、今後、本システムを既開発の各種現場管理ツールと連携し、より合理的な現場管理を目指す。さらには、本システムをCO2排出量算定ツールとしても活用することで、現場毎のCO2排出量の把握と削減に取り組み、脱炭素社会への移行に積極的に貢献していく。
④ 「KTドーム※」工法を実工事に適用
当社は、ドーム・テクノロジー社との技術提携により、多様なドーム型構造体の構築が可能な「KTドーム※」工法を開発した。本工法は、工場製作したドーム型のポリ塩化ビニル膜に空気を送り込んで膨らませ、これを型枠として内側からコンクリートを吹き付けることで躯体を構築していくものであり、施工中に天候の影響を受けにくいため、工期の短縮や建設コストの低減が可能となる。
2020年3月に、当社の西湘実験フィールド(神奈川県小田原市)において、国内で初めて本工法によるドーム型事務所棟を建設した実績を踏まえ、2021年6月に、本工法を貯蔵サイロ建設工事(山口県周南市)に適用した。今後、本工法の活用範囲を広げ、アリーナなど様々な用途の建物に展開していく。
当社は、建設会社45社とともに、建設業界全体の生産性及び魅力向上をより一層強力に推進することを目的に、建設施工ロボット・IoT分野での技術連携に関する「建設RX(*2)コンソーシアム※(*3)」を設立した。
本技術連携の対象は、施工関連技術のうち、ロボット・IoTアプリ等に関する共同研究開発であり、新規開発、改良、実用化及び技術開発に伴う技術の実施許諾を含む。我が国の建設業界を担う企業及びこれに協力・支援する企業が、各々の自主性を尊重しつつ、施工に活用するロボットやIoTアプリ等の開発と利用の推進について協働することで、技術開発のコスト削減、リスクの分散、開発期間の短縮を図り、それらの普及を加速させていく。
*2:Robotics Transformation
*3:幹事会社である当社、清水建設㈱及び㈱竹中工務店の商標
当社は、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)と、月面での無人による有人拠点建設を目指して、2016年より遠隔操作と自動制御の協調による遠隔施工システムの実現に向けた共同研究を進めてきた。2019年3月に当社の西湘実験フィールドにおいて自動化建設機械による実験を行い、その成果を基に、2021年3月に更なる発展型として、遠隔からの建設機械の操作及び自動運転による施工実験を共同で行った。その結果、JAXA相模原キャンパス(神奈川県相模原市)から1,000km以上離れたJAXA種子島宇宙センター衛星系エリア新設道路等整備工事(鹿児島県南種子町)の建設機械を遠隔で操作し、さらに相模原からの指令により自動運転に切り替えた上で作業を行い、高い精度での施工が可能であることを確認した。
当社は、技術研究所本館研究棟(東京都調布市)において、「WELL Building Standard(*4)」(WELL認証)の最高ランクであるプラチナ及び感染症の流行時やその他緊急事態における施設の健康安全性を評価するWELL Health-Safety Rating(WELL健康安全性評価)を取得した。WELL認証は人間の健康に焦点を置いた国際的な環境評価システムであり、特に、当社が開発した五感に訴えるウェルネス空間「そと部屋※」は先進的な取り組みとして高い評価を受けた。
今回の認証及び評価取得を通じて蓄積されたナレッジをベースに、今後、建物利用者の快適性、知的生産性、健康面、安全性に配慮した空間の実現を積極的に提案していく。
*4:International WELL Building Institute PBCの登録商標
当社は、国立研究開発法人理化学研究所(以下、理化学研究所)を中心とした、スーパーコンピュータ「富岳」を活用した新型コロナウイルス対策プロジェクト「室内環境におけるウイルス飛沫感染の予測とその対策」(代表者:理化学研究所/神戸大学 坪倉教授)に参画しており、同プロジェクトが2021年ゴードン・ベル賞COVID-19研究特別賞を受賞した。本賞は、計算科学分野で権威のある賞の一つで、スーパーコンピュータによる高性能並列計算を科学技術分野へ適用することに関してイノベーションの功績が最も顕著と認められた研究に与えられる。
当社は、2002年のSARS(重症急性呼吸器症候群)以来の感染症の流行を受けて、2011年より室内環境におけるウイルス飛沫シミュレーションの研究開発を行っており、独自に開発したプログラム及び自社保有の計算サーバーや可視化実験装置を用いて、飛沫感染に対する建築計画及び設備計画上のノウハウを蓄積している。こうした知見を活かし、様々な室内環境の計算モデルの作成と境界条件設定などの室内環境シミュレーションや結果に対する検証、感染リスク低減策の提案を行っている。
*5:理化学研究所の登録商標
当社は、関係会社の㈱アバンアソシエイツ、㈱イー・アール・エス及び㈱カジマアイシーティと共同で、地方自治体の公共施設アセットマネジメントを支援する分析システム「KCITY-M※」を開発した。本システムは、各種のオープンデータやGIS(地理情報システム)を用いて、地域防災や将来人口・まちづくり、施設のマネジメントに資する分析サービスを提供するものである。さらに、総合分析として評価指標の重みづけを自治体の状況に応じて調整しつつ、全体最適の視点に立って、施設の総合的な特性や想定される対策の優先順位を見える化して提供する。
今後、本システムを活用して、公共施設の維持・再編や防災・BCP対策等、地方自治体への支援サービスを展開し、地域社会の課題解決に貢献していく。
(3) 成長・変革に向けた経営基盤整備とESG推進
① NEDO(*6)グリーンイノベーション基金事業「CO2を用いたコンクリート等製造技術開発プロジェクト」に参画
当社は、NEDOの「CO2を用いたコンクリート等製造技術開発プロジェクト」のコンクリート分野の開発項目について、デンカ㈱及び㈱竹中工務店と共同でコンソーシアム(民間企業44社、10大学及び1研究機関による)を構成して提案を行い、2022年1月24日に採択された。
本研究開発においては、高いレベルで汎用性のあるカーボンネガティブコンクリートを実現するとともに、施工技術の開発、品質評価技術を確立することで、実社会への本格的な普及を目指す。併せて、今回の技術開発で取り組む積極的なコンクリートへのCO2固定化により、脱炭素から「活炭素」へのステージ移行をさらに推し進め、温室効果ガス削減という社会課題解決に貢献していく。
*6:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
② NEDOグリーンイノベーション基金事業「洋上風力発電の低コスト化プロジェクト」に参画
当社は、日立造船㈱と共同で、NEDOの「浮体式基礎製造・設置低コスト化技術開発」事業を開始した。本事業では、「洋上風力発電のセミサブ型ハイブリッド浮体の量産化・低コスト化」をテーマに、浮体式基礎の最適化、浮体式基礎の量産化及びハイブリッド係留システムについて、研究開発を行うものである。
本研究開発においては、双方がこれまで培ってきた技術力を融合し、その成果を将来の社会実装、さらにはカーボンニュートラル社会の実現に繋げられるよう取り組んでいく。
③ 多様な再エネ熱を熱源としたヒートポンプシステムの実証試験を開始
当社は、ゼネラルヒートポンプ工業㈱と共同で、NEDOの「再生可能エネルギー熱利用にかかるコスト低減技術開発」事業において、㈱豊田自動織機 大府工場(愛知県大府市)に「SSHP※(*7)」(天空熱源ヒートポンプ)システムを設置し、実証試験を開始した。本実証では上流(設計段階)から下流(運用段階)に係るコンソーシアム体制を構築することで、導入コスト低減に向けた各要素技術開発と緊密に連携する。
同施設での運転とモニタリングを通じてデータを収集し、システムの最適化によるコスト削減目標の実現とCO2削減を目指す。
*7:Sky Source Heat Pump
(国内関係会社)
舗装に関する新技術の開発
舗装現場のDX化、CO2排出抑制技術、建機の自動化等ICTを用いた省力化、省人化技術、重機の安全性向上技術等について、研究開発を進めている。
舗装現場のDX化として、アスファルト混合物の運搬状況と温度及び転圧回数をリアルタイムに確認・管理できるシステム、KSSL(*8)を開発し、実工事に適用した。また、構造物更新技術として、接着剤を用いて従来技術より高品質となるコンクリート床版拡幅技術を開発した。
*8:Kajima Smart Site Link
環境実験室の新設とその成果
土壌汚染対策のための環境技術の更なる向上を目指し、関連技術の開発速度を速めることを目的として環境実験室を新設した。本実験室は、二重床構造により汚染物質の漏洩確認を可能としたほか、床面の浸透防止塗装や排ガス・廃水処理装置を完備することで、汚染物質取り扱いの安全性を高めた。また、リアルタイムPCR分析機、ガスクロマトグラフ質量分析計及びX線分析装置付電子顕微鏡の導入により、土壌汚染対策工事に必要な汚染物質分解微生物の遺伝子解析及び土壌汚染対象物質となる有機・無機の有害物質の分析が可能となった。
これらの設備を用いることで、解析・分析データの蓄積が飛躍的に増え、長年の課題であった微生物分解技術を用いた土壌浄化工法の設計手法を確立し、その結果、既存の環境技術である「バイオジェット※」工法の精度向上や適用範囲の拡大が可能となったほか、新規の研究開発を大きく進展させることができた。
今後も環境技術の更なる向上のため、内製化により蓄積されるデータを基に既存技術を深化させていくとともに、新たな技術開発を進めていく。
研究開発活動は特段行われていない。
(注) 工法等に「※」が付されているものは、当社及び関係会社の登録商標である。