当社グループにおける経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り当連結会計年度末現在において判断したものであり、また、様々な要素により異なる結果となる可能性がある。
当社グループは、経営理念として「全社一体となって、科学的合理主義と人道主義に基づく創造的な進歩と発展を図り、社業の発展を通じて社会に貢献する。」ことを掲げ、さらに、企業経営の根幹を成す安全衛生・環境・品質に関する基本方針として「関係法令をはじめとする社会的な要求事項に対応できる適正で効果的なマネジメントシステムを確立・改善することにより、生産活動を効率的に推進するとともに、顧客や社会からの信頼に応える。」ことを定めている。
こうした方針に基づく取り組みを通して、より高い収益力と企業価値の向上を目指すとともに、社業の永続的発展により株主、顧客をはじめ広く関係者の負託に応え、将来に亘りより豊かな社会の実現に貢献していく。
当社グループを取り巻く経営環境は、近年、産業構造や人々の生活・行動、価値観の変容に加え、地球規模での気候変動と脱炭素化、デジタル化の進展などにより、急速に変化している。昨今の新型コロナウイルス感染症の拡大は、世界全体に著しい影響を及ぼし、社会・経済・技術の変化のスピードを加速させている。
こうした経営環境において、当社グループが持続的に成長するためには、多様な人材を呼び込み、外部リソースと連携しながら価値を共創することが重要と考えている。この認識のもと、当社グループが目指す方向性を広くグループ内外と共有するため、ビジョンを定めている。
ビジョンは、目指す方向性を文章で表現した「ステートメント」とそれを実現するうえで「大切にしたい価値観」から構成されており、過去に対する敬意と未来への挑戦という2つの意を込めている。また、大切にしたい価値観は、当社グループを木に見立て、いかに大きく成長させるかという視点に基づいている。

当社グループは、SDGsをはじめとした社会課題と事業活動の関連を確認・整理したうえで、社会・環境への影響度が大きく、かつ当社グループの企業価値向上や事業継続における重要度が高い課題を抽出し、7つのマテリアリティを特定している。マテリアリティに取り組むことを通じて、社会課題解決と企業価値向上の両立を目指していく。
マテリアリティと関連するSDGs

(4) 経営環境
当連結会計年度における世界経済は、多くの国や地域において新型コロナウイルス感染症対策としての各種制限が緩和され、社会・経済活動の正常化に向けた動きが進んだものの、ウクライナ情勢等の地政学的リスクの高まりや、欧米を中心とするインフレ及び金利上昇の影響により、成長のペースに鈍化や停滞が見られた。我が国経済については、感染症の動向に応じて、一進一退の状況が続いたが、感染症の景気への影響は弱まっており、サービス消費を中心に個人消費が持ち直すなど、緩やかな回復基調となった。
国内建設市場においては、公共投資が堅実に推移したことに加え、製造業、非製造業ともに企業の設備投資が着実に進み、建設需要は増加傾向となった。建設コストに関しては、資機材費が総じて高い価格水準に留まるとともに、労務費にも上昇の傾向が見られた。
今後の世界経済において、先行きに対する不透明感は依然として高い状況が続く見通しである。一方で、行動制限のない社会環境の定着による経済活性化に加え、脱炭素化などのサステナビリティ課題に対応する投資が更に拡大していくことが期待される。そのため、今後は、経済動向や社会的な要請・ニーズの変化を的確に見極めて、事業を推進していくことが重要であると考えている。
建設市場においては、国内における堅調な建設需要が当面は継続する見通しであり、デジタル化や次世代技術関連など中長期視点の建設投資は、国内・海外ともに増加している。資機材費や労務費などのコスト上昇に対応しつつ、良質な建設、開発関連サービスを提供すると同時に、持続可能な建設業の観点から、建設業従事者の処遇改善と働き方改革、並びに生産性向上の推進が求められている。
<「鹿島グループ中期経営計画(2021~2023)-未来につなぐ投資-」の推進>
このような経営環境の中、2024年3月期を最終年度とする「鹿島グループ中期経営計画(2021~2023)-未来につなぐ投資-」を着実に推進し、業績向上と持続的な成長を図っている。
中期経営計画の概要と取り組み状況については以下のとおりである。
① 中期経営計画の位置づけ
「鹿島グループ中期経営計画(2021~2023)-未来につなぐ投資-」は、「経営理念」に加え、「ビジョン」、「マテリアリティ(重要課題)」と結びついている。

② 計画全体像(2030年にありたい姿と主要施策)
「鹿島グループ中期経営計画(2021~2023)-未来につなぐ投資-」は、中長期的目標である「2030年にありたい姿」を念頭に置き、「①中核事業の一層の強化、②新たな価値創出への挑戦、③成長・変革に向けた経営基盤整備とESG推進」を3つの柱として、厳しい経営環境においても、業績を維持・向上させながら、中長期的な成長に向けた投資を実施し、当社グループの将来にわたる発展につなげる計画としている。

③ 主要施策の取り組み状況
1)中核事業の一層の強化
建設事業では、生産施設などの重点分野において、提案力、設計・エンジニアリング力強化の成果により、複数の大型工事を受注している。また、秋田県において大規模洋上風力発電施設を完成させ、知見やノウハウを獲得するなど、需要拡大が見込まれる領域における競争力の強化を図っている。加えて、自動化施工等の技術開発の推進や個々の人材が持つ「経験知」や「暗黙知」などを体系的にデジタル化することにより、生産性向上と業務効率化に注力している。
開発事業においては、国内外における開発物件の計画的な売却が業績に貢献している。今後もリスク管理を徹底しつつ、多様なアセットへの投資を進めると同時に、適時の売却により、効率性の高い投資サイクルを確立していく。建設技術と不動産開発ノウハウを掛け合わせた事業を国内外で展開することにより、建設バリューチェーンの上流から下流に至る全てのフェーズにおける機能と収益力を強化し、持続的な利益成長を目指している。
2)新たな価値創出への挑戦
国内外においてM&Aや外部企業等とのコンソーシアムを活用し、環境、エネルギー分野など社会課題解決につながる取り組みを進めている。また、新たな技術の創出に向けて、ベンチャー企業との提携を推進した。
シンガポールでは、建設を進めていた「The GEAR」が完成した。日本や米国シリコンバレーなどとのグローバルネットワークの活用やオープンイノベーションにより、先進的技術の開発と新ビジネスの創出を推進する拠点としていく。
3)成長・変革に向けた経営基盤整備とESG推進
持続的な成長を実現するためには、当社グループだけでなくサプライチェーン全体におけるコンプライアンスの徹底が重要であると認識し、法令遵守、社会的責任への適切な対応に加え、安全、環境、品質等に関する様々なリスクの管理を強化している。
強靭なサプライチェーンの構築に向けて、重層下請構造改革などを推進し、技能労働者の処遇改善と次世代の担い手確保を図っている。また、当社グループの国内外における事業展開を担う人材の確保のため、多様な人材が活躍できる職場環境を整備するとともに、実務体験型研修施設「鹿島テクニカルセンター」を開設するなど人材育成施設の拡充を進めている。
CO2排出量削減に関しては、自社排出及びサプライチェーン排出の双方で2050年度のカーボンニュートラル(100%削減)を目指す新たな目標を設定し、SBT(温室効果ガス排出削減目標に関する国際認証)認定を申請した。工事中のCO2排出量の削減、省エネ技術・環境配慮型材料の開発、エネルギーの効率的なマネジメントなどを積極的に推進していく。
④ 投資計画の進捗状況
3年間の中期経営計画期間中に、総額8,000億円の投資と開発事業における3,600億円の売却による回収を計画している。当連結会計年度は総額3,730億円の投資と1,010億円の回収を行った。為替変動の影響等もあり、海外開発事業投資は計画を上回るペースとなっているが、これまでの投資が着実に利益貢献し始めている。また、開発事業における売却による回収は、国内、海外ともに2024年3月期に拡大する見通しである。投資の原資としては、建設・開発事業等により創出した資金に加え、有利子負債及び政策保有株式の売却による回収資金も活用し、効率性を重視した事業ポートフォリオの構築と資産構成の最適化を図っている。
<市場評価に関する課題>
① 現状評価と課題
当社取締役会においては、かねて資本収益性や市場評価についての現状分析と評価を行っている。
近年、ROEは継続して10%以上を達成し、資本コストを上回る資本収益性を確保しているが、株式市場から十分な評価を得られていない。当社グループの成長性を株式市場に適切に伝え、市場評価を向上させることが課題と認識している。
② 今後の取り組み
当社グループは、中期経営計画に基づき、持続的な成長に向けた施策や投資を推進しており、今後もこの取り組みを継続、強化していく。また、各事業における成長戦略の明確化に加え、環境問題への対応や人的資本などに関する情報開示を充実させ、投資家等との対話を積極的に実施することにより、市場評価の向上を図っていく。株主還元については、成長投資とのバランスを考慮しつつ、更なる充実を検討していく。
(6) 目標とする経営指標
「鹿島グループ中期経営計画(2021~2023)-未来につなぐ投資-」においては、最終年度である2024年3月期の経営目標を売上高2兆2,500億円程度、親会社株主に帰属する当期純利益950億円以上としている。また、2025年3月期から2027年3月期の期間においては、安定的に親会社株主に帰属する当期純利益1,000億円以上を計上できる体制を構築することを目指し、2031年3月期には1,300~1,500億円以上の水準を目指している。
2024年3月期の国内建設事業は、建設コスト上昇の影響には引き続き留意が必要であるものの、土木事業、建築事業ともに豊富な手持ち工事の施工が着実に進み、利益面においても、生産性向上や原価低減に向けた取り組みにより、竣工を迎える工事を中心に損益が改善していくことを見込んでいる。特に建築事業の売上総利益率が改善し、当連結会計年度の実績を上回ると見通している。また、国内開発事業では、複数物件の売却による売上、利益の増加を見込んでいる。海外事業については、東南アジアでは業績回復の動きが続く見通しである。米国や欧州においては、不透明な事業環境が続くと見込まれるが、リスク管理と必要な対策を徹底しつつ、着実に業績を確保していく方針である。
こうした見通しを反映した結果、2024年3月期の業績予想を、2023年5月15日に下記のとおり公表している。
中期経営計画の経営目標との比較において、売上高が計画を上回るのは、当社建築事業に加え、海外関係会社の売上高が拡大したことが要因である。親会社株主に帰属する当期純利益については、厳しい受注競争が続き、資機材価格など建設コストが上昇する事業環境の中、国内建設事業における採算性を重視した受注活動と工期やコスト、品質に関わるリスク管理を徹底した施工体制により、売上総利益を維持向上させることができたこと、また、国内・海外開発事業において、従前から戦略的に推進してきた投資の成果が表れ始め、収益力が着実に高まったことにより、経営目標の達成を見込んでいる。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
「全社一体となって、科学的合理主義と人道主義に基づく創造的な進歩と発展を図り、社業の発展を通じて社会に貢献する。」という経営理念のもと、SDGsをはじめとした社会・環境問題に対応し、持続的に成長できる企業グループを目指すことを、サステナビリティの基本的な考え方としている。
また、社会課題と事業活動の関係を整理し、社会課題解決と当社グループの持続的成長を両立させるための「マテリアリティ(重要課題)」として7項目を特定している。(マテリアリティの詳細については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)鹿島グループのマテリアリティ(重要課題)」に記載している。)
なお、毎年発行している統合報告書にて、サステナビリティについての取組み内容の詳細を記載している。
<鹿島統合報告書> https://www.kajima.co.jp/sustainability/report/index-j.html
(1) サステナビリティ全般(ガバナンスとリスク管理)
2022年5月に、グループ全体のESG経営へのコミットメントを高め、企業価値を向上させることを目的として「サステナビリティ委員会」を新設し、環境関連(E)や人材の多様性確保、人権尊重、サプライチェーンマネジメント(S)など、サステナビリティに関する取組み方針の検討・意思決定とモニタリング、推進体制を明確化(G)している。
サステナビリティ委員会は、社長を委員長とし、委員は関係する執行役員などで構成され、サステナビリティに関する取組み方針の検討・意思決定とモニタリングの機能を担い、定期的に取締役会に報告している。サステナビリティ委員会での議論を踏まえ、当社内及び国内外のグループ会社と連携し、ESG経営の更なる推進を図っている。
サステナビリティ関連を含めたリスク管理については、社長が委員長を務める「コンプライアンス・リスク管理委員会」において、あらゆるリスクを網羅・検証した上で、重要度に応じた活動を推進している。(リスク管理の詳細については、
サステナビリティ委員会
2022年度開催実績
開催回数:4回
取締役会報告回数:2回
主なテーマ:・CO2排出量削減目標の見直し
・人的資本、ダイバーシティ
・担い手(建設技能労働者)の確保

(2) 個別テーマ
① 人的資本
経営理念に謳っている「人道主義」に基づく家族的な社風が、伝統的に当社の競争力の源泉の一つであり、社員と会社が互いにWin-Winとなる企業風土を構築するうえでも重要と捉えている。
中期経営計画において、2030年にありたい姿として「多様な人材が集う自由闊達な組織」と定義するとともに、2023年度末に向け「成長・変革を担う人づくり・仕組みづくり」を推進することを掲げている。多様な人材を確保し、多様な働き方を支え、社員の挑戦を促す仕組みづくりを進めつつ、グループマネジメント体制の改善など、ガバナンス強化を積極的に図っている。

当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針、社内環境整備に関する方針、及び当該各方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績は、以下のとおりである。
人材育成
当社グループは、人と技術を軸に、社会と顧客の期待に応え続けることができる高度な専門人材と、その専門人材を束ねるマネジメント人材の育成に積極的に取り組んでいる。中期経営計画で掲げる「新たな価値創出への挑戦」を加速させるため、社員一人ひとりが、高い専門性に加え、ビジネスやマネジメントの教養・スキルをバランスよく習得し、継続的に高めることができるように研修体系の構築を進めている。社員一人ひとりの成長が、当社グループの持続的な成長とビジネス領域の拡大に寄与する取組みを推進している。
ダイバーシティ&インクルージョン
性別や国籍、宗教の違いや障がいの有無など多様なバックグラウンドと個性を持つ人材がその能力を最大限に発揮できる環境をつくることは、イノベーションを推進するうえで重要である。
近年は特に、様々なライフイベントを迎えても安心して働き、活躍し続けられるよう、育児フレックス制度の拡充など、仕事と育児の両立支援に向けた各種制度を充実させている。
当社は、新卒採用(総合職)における女性社員の比率を20%以上とすることを目標としており、2022年度は22.9%となっている。2014年に設定した女性管理職と女性技術者数を「2014年度から5年で倍増、10年で3倍増させる」という目標に対し、前者は2021年度に前倒しで達成、後者も順調に推移している。
(女性管理職・女性技術者数の推移) 各年度4月1日時点
また当社は、男性社員の育児休業・育児目的休暇取得について、2023~2025年度の間で合計取得率を50%以上とすることを目標とし、出生時育児休業(産後パパ育休)制度の新設や、育児休業の分割取得など、制度拡充を進めている。
(男性社員の育児休業・育児目的休暇取得率の推移)
② 気候変動関連(TCFD提言に沿った開示)
「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明し、気候変動課題をグループの主要リスクとして管理するガバナンス体制を構築している。また、気候変動によるリスクと機会を特定したうえでその影響を明確化し、目標設定のもと取組みを強化している。
当社グループのCO2排出量(原単位)削減目標
当社グループのCO2排出量実績(2021年度)
当社グループは、事業遂行上のリスクの発生を防止、低減するための活動を推進している。新規事業、開発投資などの「事業リスク」に関しては、専門委員会等が事業に係るリスクの把握と対策について審議を行っている。法令違反などの「業務リスク」に関しては、コンプライアンス・リスク管理委員会が当社グループにおけるリスク管理体制の運用状況の把握、評価を行うとともに、リスク管理の方針及び重大リスク事案への対応などについて審議を行い、必要に応じて取締役会に報告している。
リスク管理活動の実効性を高めるためには、あらゆるリスクを網羅・検証した上で、重要度に応じた活動を推進することが有効であることから、毎年、発生頻度及び顕在化した際の影響度の両面から分析し、企業活動上、重点的な管理が必要とされる業務リスク事項をリスク管理重点課題として選定・展開し、予防的観点からのリスク管理を実施している。顕在化したリスク事案については、早期の報告を義務付け、組織的対応によるリスクの拡大防止と再発防止に努めるなど、PDCAサイクルに基づいた実効的なリスク管理活動を展開している。
本社のリスク所管部署の担当者によって構成するリスク管理連絡会議を定期的に開催し、当社グループに関するリスク顕在化事案や法令改正、社会動向、他社における事例、さらにはリスクマネジメントやリスクコミュニケーションの手法などの情報を報告・共有し、重要な情報については適宜コンプライアンス・リスク管理委員会に報告している。

事業リスクの把握と対策を審議する専門委員会
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりである。
なお、文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において判断したものである。
当社グループにおいては、これらの事業を取り巻く様々なリスクや不確定要因等に対して、その予防や分散、リスクヘッジ等を実施することにより、企業活動への影響について最大限の軽減を図っている。
景気悪化等による建設需要の大幅な減少や不動産市場の急激な縮小等、建設事業・開発事業等に係る著しい環境変化が生じた場合には、建設受注高の減少及び不動産販売・賃貸収入の減少等の影響を受ける可能性がある。
また、他の総合建設会社等との競争が激化し、当社グループが品質、コスト及びサービス内容等における競争力を維持できない場合、業績等が悪化する可能性がある。
変化する状況や市場動向を踏まえ策定した「鹿島グループ中期経営計画(2021~2023)-未来につなぐ投資-」に掲げる諸施策を推進することにより、経営目標の達成と企業価値の向上を目指している。
建設工事においては、工事期間が長期に亘る中で資機材及び労務の調達を行う必要があることから、建設コストの変動の影響を受ける。主要資材価格や労務単価の急激な上昇等による想定外の建設コスト増加を請負契約工事金額に反映させることができない場合には、工事採算が悪化する可能性がある。
建設コストの変動による影響を抑えるため、早期調達及び多様な調達先の確保を図るとともに、発注者との契約に物価スライド条項を含める等の対策を実施している。
当社グループは、中期経営計画に定めた投資計画に基づき不動産開発投資、R&D・デジタル投資及び戦略的投資等を推進している。販売用不動産(当連結会計年度末の連結貸借対照表残高1,447億円)の収益性が低下した場合、賃貸等不動産(同2,523億円)及び投資有価証券(同3,561億円)等の保有資産の時価が著しく下落した場合には、評価損や減損損失等が発生する可能性がある。
開発事業資産については、案件毎に価値下落リスク等を把握し、その総量を連結自己資本と対比し一定の水準に収める管理を実施している。連結自己資本は、中期経営計画期間中の国内外開発事業資産の増加を考慮しても十分耐性を持つ財務基盤を維持できる水準を確保している。また、個別案件の投資に当たっては、本社の専門委員会(開発運営委員会、海外開発プロジェクト運営委員会)等においてリスクの把握と対策を審議した上で、基準に則り取締役会や経営会議において審議している。
投資有価証券のうち政策的に保有する株式は、毎年度、全銘柄について、中長期的な視野に立った保有意義や資産効率等を検証した上で、取締役会にて審議し、保有意義の低下した銘柄は原則として売却している。中期経営計画期間においては、政策保有株式を300億円以上売却する方針としている。
当社グループは、北米・欧州・アジア・大洋州等海外における建設事業及び開発事業を展開しており、中期経営計画に基づき、人材面での更なるローカル化、業務・資本提携による各国事業基盤の拡充等を推進していく方針である。進出国の政治・経済情勢、法制度、為替相場等に著しい変化が生じた場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
海外におけるM&Aや新市場への進出等に当たっては、本社の専門委員会(海外事業運営委員会)等においてリスクの把握と対策を審議した上で、基準に則り取締役会や経営会議において審議している。
また、テロ、暴動等が発生した場合に、社員・家族の安否確保を図り、現地支援を行うため、国際危機対策委員会を設置している。
建設業界においては、建設技能労働者が減少傾向にあり、十分な対策を取らなければ、施工体制の維持が困難になり、売上高の減少や労務調達コストの上昇による工事利益率の低下等の影響を受ける可能性がある。
当社グループは、将来の施工体制を維持するため、中期経営計画に基づき、生産性向上による更なる業務効率化を推進し、工期を遵守しつつ現場の「4週8閉所」に挑戦し労働条件の改善を図るとともに、原則二次下請までに限定した施工体制の実現をはじめとした環境整備、技能労働者の処遇改善と収入の安定等、職業としての魅力向上に向けた各種施策を実施している。併せて、技能労働者の処遇改善に繋がる協力会社への支援策を実施している。また、担い手不足を補うため、自動化、省人化・ロボット化技術の開発を計画的に進めている。
当社グループは、建設業法、建築基準法をはじめ、労働安全衛生関係法令、環境関係法令、独占禁止法等、様々な法的規制の中で事業活動を行っている。そのため、法令等の改正や新たな法的規制の制定、適用基準の変更等があった場合、その内容次第では受注環境やコストへの影響等により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。また、当社グループにおいて法令等に違反する行為があった場合には、刑事・行政処分等による損失発生や事業上の制約、信用の毀損等の発生により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
これらのリスクへの対応として、関係法令等の制定・改正については、担当部署を通じてその内容を周知し必要な対応を実施している。例えば、2024年4月から建設業に時間外労働の上限規制が適用されることについては、働き方改革、デジタル化による業務効率化や質の向上、業務内容に応じた集約化、アウトソーシングなどを進めるとともに、人員配置など施工体制の十分な検討と必要な工期を考慮した見積の提出に努めている。
また、コンプライアンス・マニュアルである「鹿島グループ 企業行動規範 実践の手引き」を策定、法令等の改正や社会情勢の変化も踏まえ適宜改訂し、全役員・従業員に周知している。加えて、コンプライアンス意識の更なる向上と定着を図るため、当社グループの役員及び従業員を対象としたeラーニングを用いた「鹿島グループ企業行動規範」に関する研修を継続的に実施しているほか、各分野の担当部署が、規則・ガイドラインの策定、研修、監査等を実施し、適正な事業活動のより一層の推進を図っている。
当社グループが提供する設計、施工をはじめとする各種サービスにおいて、重大な人身事故、環境事故、品質事故等が発生した場合には、信用の毀損、損害賠償や施工遅延・再施工費用等の発生により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
安全衛生・環境・品質の確保は生産活動を支える前提条件であり企業存続の根幹であることから、基本方針並びに安全衛生方針、環境方針、品質方針を定め、関係法令をはじめとする社会的な要求事項に対応できる適正で効果的なマネジメントシステムにより生産活動を行っている。安全を実現するため「建設業労働安全衛生マネジメントシステム(COHSMS)」に準拠した安全衛生管理を行うとともに、環境については、ISO 14001に準拠した環境マネジメントシステムを運用している。また、品質については、土木部門・建築部門それぞれでISO 9001の認証を受けており、海外関係会社は個々に必要な認証を受けている。
当社グループは設計、施工をはじめとする各種サービスを提供するにあたり、建造物や顧客に関する情報、経営・技術・知的財産に関する情報、個人情報その他様々な情報を取り扱っている。このような情報が外部からの攻撃や従業員の過失等によって漏洩又は消失等した場合は、信用の毀損、損害賠償や復旧費用等の発生により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
これらのリスクに対応するため、当社グループでは情報セキュリティポリシーを定め、重点的なリスク管理を実施している。サイバー攻撃を想定した訓練を実施し組織的な対応力向上に取り組んでいるほか、当社グループの役員及び従業員を対象としたeラーニングを用いた教育、点検及び監査並びに協力会社に対する啓発活動を行っている。
発注者、協力会社等の取引先が信用不安に陥った場合には、工事代金の回収不能や施工遅延等により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。特に、一契約の金額の大きい工事における工事代金が回収不能になった場合、その影響は大きい。
新規の営業案件に取り組むに当たっては、企業者の与信、資金計画並びに支払条件などを検証し、工事代金回収不能リスクの回避を図り対応している。新たな契約形態や工事代金の回収が竣工引き渡し後まで残る不利な支払条件を提示された場合等には、本社が関与しリスクの把握と対策を講じるとともに、基準に則り経営会議において審議している。
協力会社と新たに取引を開始する際には、原則として財務状況等を審査したうえで工事下請負基本契約を締結している。また、重要な協力会社に対しては、定期的に訪問し財務状況を含めた経営状況の確認を実施している。
大規模地震、風水害等の大規模自然災害が発生した場合には、施工中工事への被害や施工遅延、自社所有建物への被害などにより、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
災害時の事業継続計画(BCP)を策定しており、首都直下地震や豪雨災害等を想定した実践的なBCP訓練を実施するなど、企業としての防災力、事業継続力の更なる向上に取り組んでいる。
パンデミック(感染症の大流行等)が発生した場合には、景気悪化による建設受注高の減少や工事中断による売上高の減少等、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
新型コロナウイルス感染症に対しては、感染予防と感染拡大防止を最優先としつつ、事業継続と被害最小化を図るため、情報収集とリスク想定を行い、国内外従業員や協力会社に対して必要な対策を指導している。
2023年度リスク管理重点課題(業務リスク)
気候変動に伴う物理的リスクとしては、台風や洪水等による施工中工事への被害や施工遅延、自社所有建物への被害等により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
災害時の事業継続計画(BCP)を策定し豪雨災害等を想定した実践的なBCP訓練の実施等により企業としての防災力、事業継続力の向上に取り組むことに加え、防災・減災及びBCP分野におけるR&Dを推進することにより、社会・顧客に対し関連サービスを提供するとともに、災害発生時には復旧・復興等に貢献することを目指している。
脱炭素社会への移行リスクとしては、温室効果ガス排出量の上限規制による施工量の制限や炭素税の導入によるコスト増等により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
中期経営計画及び「鹿島環境ビジョン:トリプルZero2050」に基づき、建設現場等におけるCO2排出量削減とカーボン・オフセットのための投資に計画的に取り組むことに加え、再生可能エネルギー、省エネルギー関連分野等における保有技術の活用や新たな技術の開発等により、脱炭素社会への移行に対し事業を通じて貢献することを目指している。(気候変動リスクの詳細については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)個別テーマ ②気候変動関連(TCFD提言に沿った開示)」に記載している。)
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりである。
売上高は、当社建設事業売上高及び海外関係会社売上高の増加を主因に、前連結会計年度比15.0%増の2兆3,915億円(前連結会計年度は2兆796億円)となった。
利益については、当社建設事業や国内関係会社、海外関係会社における売上総利益の増加が、研究開発費などの販管費増加を補い、営業利益は前連結会計年度比0.1%増の1,235億円(前連結会計年度は1,233億円)となった。経常利益は、営業外収益の増加等により同3.0%増の1,567億円(同1,521億円)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、特別損益が改善したことから、同7.6%増の1,117億円(同1,038億円)となった。なお、当連結会計年度において政策保有株式を売却(17銘柄100億円)しており、投資有価証券売却益などを特別利益に計上している。
セグメントごとの経営成績は次のとおりである。(セグメントの経営成績については、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載している。)
(当社における建設事業のうち土木工事に関する事業)
売上高は、大型工事を中心に施工が着実に進捗したことから、前連結会計年度比11.0%増の3,016億円(前連結会計年度は2,718億円)となった。
営業利益は、売上高増加に加え、売上総利益率が向上したことから、前連結会計年度比48.9%増の293億円(前連結会計年度は196億円)となった。
(当社における建設事業のうち建築工事に関する事業)
売上高は、当期受注工事を含め大型工事の施工が順調であったことから、前連結会計年度比18.0%増の1兆862億円(前連結会計年度は9,206億円)となった。
営業利益は、売上高増加の効果があったものの、資機材価格上昇の影響等により売上総利益率が前連結会計年度と比べ低下したことを主因に、前連結会計年度比6.8%減の466億円(前連結会計年度は501億円)となった。
(当社における不動産開発全般に関する事業及び意匠・構造設計、その他設計、エンジニアリング全般の事業)
不動産賃貸事業は堅調であったものの、当連結会計年度は不動産販売案件が少なかったことを主因に、売上高は前連結会計年度比14.2%減の449億円(前連結会計年度は524億円)、営業利益は同36.3%減の71億円(同112億円)となった。なお、国内開発事業資産(固定資産)等を計画的に売却しており、固定資産売却益49億円を特別利益に計上している。
(当社の国内関係会社が行っている事業であり、主に日本国内における建設資機材の販売、専門工事の請負、総合リース業、ビル賃貸
事業等)
建設事業、開発事業等ともに売上高及び売上総利益が増加し、売上高は前連結会計年度比11.5%増の3,526億円(前連結会計年度は3,161億円)となり、営業利益は同6.9%増の174億円(同162億円)となった。
(当社の海外関係会社が行っている事業であり、北米、欧州、アジア、大洋州などの海外地域における建設事業、開発事業等)
売上高は、為替変動の影響もあり全ての地域において増加し、前連結会計年度比18.5%増の7,392億円(前連結会計年度は6,239億円)となった。
営業利益は、建設事業、開発事業等ともに堅調に推移したものの、北米や欧州において高い水準であった前連結会計年度実績を下回り、前連結会計年度比14.1%減の227億円(前連結会計年度は264億円)となった。
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末比4,319億円増加し、2兆7,697億円(前連結会計年度末は2兆3,377億円)となった。これは、受取手形・完成工事未収入金等の増加1,730億円、棚卸資産(販売用不動産、未成工事支出金、開発事業支出金及びその他の棚卸資産)の増加1,583億円及び有形固定資産の増加509億円があったこと等によるものである。
負債合計は、前連結会計年度末比3,243億円増加し、1兆7,085億円(前連結会計年度末は1兆3,841億円)となった。これは、有利子負債残高※の増加1,778億円、支払手形・工事未払金等の増加1,019億円及び未成工事受入金の増加257億円があったこと等によるものである。なお、有利子負債残高は、5,377億円(前連結会計年度末は3,599億円)となった。
純資産合計は、株主資本8,814億円、その他の包括利益累計額1,710億円、非支配株主持分87億円を合わせて、前連結会計年度末比1,075億円増加の1兆611億円(前連結会計年度末は9,535億円)となった。
また、自己資本比率は、前連結会計年度末比2.5ポイント悪化し、38.0%(前連結会計年度末は40.5%)となった。
(注) ※短期借入金、コマーシャル・ペーパー、社債(1年内償還予定の社債を含む)及び長期借入金の合計額
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、291億円の支出超過(前連結会計年度は302億円の収入超過)となった。これは、税金等調整前当期純利益1,672億円に減価償却費247億円等の調整を加味した収入に加えて、仕入債務の増加879億円及び未成工事受入金及び開発事業等受入金の増加230億円の収入があった一方で、売上債権の増加1,546億円、棚卸資産(販売用不動産、未成工事支出金、開発事業支出金及びその他の棚卸資産)の増加1,406億円及び法人税等の支払額543億円の支出があったこと等によるものである。
投資活動によるキャッシュ・フローは、817億円の支出超過(前連結会計年度は511億円の支出超過)となった。これは、有形固定資産の取得による支出607億円、貸付けによる支出276億円、投資有価証券の取得による支出222億円及び無形固定資産の取得による支出162億円があった一方で、投資有価証券の売却等による収入260億円及び有形固定資産の売却による収入118億円があったこと等によるものである。
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金、長期借入金、コマーシャル・ペーパー及び社債による資金調達と返済の収支が1,574億円の収入超過となった一方で、配当金の支払額295億円及び自己株式の取得による支出100億円があったこと等により、1,118億円の収入超過(前連結会計年度は209億円の支出超過)となった。
これらにより、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末から145億円増加し、2,822億円(前連結会計年度末は2,677億円)となった。
当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため、また、受注高について当社グループ各社の受注概念が異なるため、「生産の実績」及び「受注の実績」は記載していない。
(注) 1 売上実績においては、「外部顧客への売上高」について記載している。
2 前連結会計年度及び当連結会計年度ともに売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
(注) 1 前事業年度以前に受注したもので、契約の更改により請負金額に変更があるものについては、当期受注高
にその増減額を含む。したがって、当期売上高にもかかる増減額が含まれる。
2 期末繰越高は、(期首繰越高+当期受注高-当期売上高)である。
建設工事の受注方法は、特命と競争に大別される。
(注) 百分比は請負金額比である。
(注) 1 前事業年度及び当事業年度ともに完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
2 当事業年度の完成工事のうち主なものは、次のとおりである。
e 繰越工事高(2023年3月31日現在)
(注) 繰越工事のうち主なものは、次のとおりである。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り当連結会計年度末現在において判断したものである。
① 経営成績及び財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績は、国内建設事業(土木事業・建築事業)の着実な利益確保に加え、北米の流通倉庫開発事業を中心とする海外関係会社の貢献等により、2期連続で前連結会計年度比増収増益となり、ROE(自己資本利益率)は11.2%となった。売上高(2兆3,915億円)は過去最高、親会社株主に帰属する当期純利益(1,117億円)は過去2番目の水準である。連結業績に貢献した海外関係会社の業績について、売上高、親会社株主に帰属する当期純利益ともに過去最高水準になるなど、従前から進めてきた戦略的な投資の成果が継続的に現れている。
業績予想との比較では、売上高は業績予想と同水準となり、営業利益、経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益は業績予想を上回った。
当連結会計年度の経営成績(連結業績予想との対比) (単位:百万円)
財政状態については、当連結会計年度末の資産合計が前連結会計年度末比4,319億円増加し、2兆7,697億円となった。建設事業における売上債権(受取手形・完成工事未収入金等)が売上高の増加等に伴って増加し、計画に基づく国内外の不動産開発投資の進捗により、開発事業資産(販売用不動産、開発事業支出金及び有形固定資産など)も増加している。投資有価証券については、政策保有株式の中長期的な縮減に向けて、保有する株式の一部(17銘柄100億円)を売却したものの、海外開発事業推進に伴う出資や為替変動に伴う外貨換算増などにより増加した。なお、計画に掲げた政策保有株式の縮減目標(前連結会計年度から3年間で総額300億円以上の売却)に対しては、当連結会計年度までの2年間で累計249億円を売却しており順調に進捗している。連結自己資本は、1,000億円を上回る親会社株主に帰属する当期純利益の計上等に伴い前連結会計年度末から1,067億円増加の1兆524億円、自己資本比率は38.0%となった。連結有利子負債残高は、海外の不動産開発投資において外部資金を活用したことなどにより前連結会計年度末から1,778億円増加し、5,377億円となったものの、D/Eレシオ(負債資本倍率)は0.51倍であり、財務の健全性は十分に維持できていると考えている。
経営成績に重要な影響を与える主な要因は、国内外の建設事業及び開発事業における需要やコストの急激な変動等の事業環境の変化である。当連結会計年度においては、国内建設需要は、堅調な公共投資に加え、民間企業の旺盛な設備投資意欲により高い水準を維持した。受注競争は主に大型工事において厳しさが続いているものの、全体としては高水準の建設需要を背景に緩和の兆しが見られた。海外における建設需要は、欧米では製造業を中心に底堅く推移し、東南アジアでは経済活動の正常化が一段と進んだことにより回復傾向が続いた。コストに関しては、国内外ともに資機材価格は総じて高い価格水準に留まっており、労務費にも上昇の傾向が見られるため、動向に注視した適切な対応が必要と考えている。
今後については、国内建設事業は、堅調な建設需要が継続し、受注競争が落ち着くことが期待される。また、受注高の増加により、施工が繁忙な状態になると予想されるため、工期遵守や品質保全、着実な利益確保に資する適切な施工体制の確保に取り組むとともに、2024年度から適用される時間外労働上限規制などへの備えとして、ICTツール等を積極的に活用した施工の自動化、デジタル化、遠隔管理化などによる生産性向上やノンコア業務のアウトソーシングなどを推進していく。また、長期的には建設技能労働者が減少していく見通しであることから、賃金・休暇面での処遇改善やデジタル技術活用による建設業の魅力向上など次世代の担い手確保に向けた施策に取り組んでいる。海外事業においては、ウクライナ情勢等の地政学的リスクの高まりや、欧米を中心とするインフレ及び金利上昇などが事業環境に与える影響を見極めつつ、リスク管理を徹底した事業展開を進めていく。
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりである。
a 土木事業
(当社における建設事業のうち土木工事に関する事業)
売上高は、大型工事を中心に施工が着実に進捗したことなどから増収となり、3,000億円台に回復した。売上総利益率は、当連結会計年度に竣工を迎えた工事の損益改善や複数工事における追加収入等により、前連結会計年度における16.5%から18.0%に改善した。営業利益は、増収の効果も重なり増益となった。
土木事業における建設需要は、インフラ更新などの国土強靭化に関連した分野や風力発電などのエネルギー分野における需要の拡大により、今後も堅調に推移すると考えている。
b 建築事業
(当社における建設事業のうち建築工事に関する事業)
売上高は、1兆2,000億円に迫る豊富な期首繰越高に加えて、生産施設など当連結会計年度に受注した大型工事の施工が順調に進捗したこと等から増収となり、1兆円を上回った。売上総利益率は、資機材価格上昇の影響などにより、前連結会計年度における10.3%から8.5%に低下したものの、早期調達等のコスト上昇対策や生産性向上の取り組みなどにより、期首に予想した売上総利益率を確保した。2024年3月期の売上総利益率については、竣工を迎える複数の大型工事の損益改善などを見込み、9.7%までの回復を予想している。
大型工事を中心に厳しい競争環境が継続しているが、建設コストの価格動向に留意した見積作成に加えて、働き方改革を踏まえた適正工期や適切な施工体制の確保に努めるとともに、技術力や提案力を軸とした受注活動により、採算性の維持・向上を図っていく。
c 開発事業等
(当社における不動産開発全般に関する事業及び意匠・構造設計、その他設計、エンジニアリング全般の事業)
開発事業等の売上高及び営業利益は、不動産販売案件が少なかったことを主因に、前連結会計年度と比較すると減少した。不動産賃貸事業については、前連結会計年度に完成した「横濱ゲートタワー」など当社が保有する賃貸ビルは総じて高い稼働率を維持しており、堅調に推移した。
2024年3月期は、複数のオフィスや分譲マンションなどの売却を計画しているため、当連結会計年度の売上高及び営業利益を大きく上回る見通しである。中期経営計画に基づき推進している国内不動産開発投資の成果として、今後も複数のプロジェクトが完成し、不動産賃貸事業の収益力は着実に高まると考えている。また、市況を見極めた最適なタイミングでの売却を進めていく。
d 国内関係会社
(当社の国内関係会社が行っている事業であり、主に日本国内における建設資機材の販売、専門工事の請負、総合リース業、ビル賃貸事業等)
当連結会計年度における国内関係会社の売上高及び営業利益は、前連結会計年度を上回った。売上高は、建設事業における順調な工事進捗と資機材販売の増加を主因に増収となり、営業利益は、原材料高騰による合材販売事業の採算低下が見られたものの、建設事業における増収効果や建物リース物件の売却益などにより増益となった。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響により低迷していたゴルフ場の稼働率は、感染拡大前の水準を上回り、ホテルの稼働率についても観光需要の回復に伴って上昇している。
2024年3月期は、建設事業が堅調であると見込むとともに、開発系国内関係会社が保有する不動産開発物件の売却を計画している。合材販売事業においても、原材料高騰について顧客への価格転嫁が進むことから収益改善を見込んでいる。
e 海外関係会社
(当社の海外関係会社が行っている事業であり、北米、欧州、アジア、大洋州などの海外地域における建設事業、開発事業等)
当連結会計年度における海外関係会社の売上高は、外貨換算増の影響もあり、過去最高水準となった。建設事業は、東南アジアにおける新型コロナウイルス感染症対策の緩和に伴う工事進捗ペースの回復などにより大幅に伸長したものの、開発事業等は、北米における流通倉庫開発事業の物件売却数が減少したことを主因に微減となった。営業利益は、建設事業、開発事業等ともに堅調に推移したものの、高水準であった前連結会計年度と比較すると減少した。
海外関係会社の開発事業は、事業展開地域の市場特性に合わせて、倉庫、住宅、オフィス、ホテル、学生寮など幅広い分野への投資を実施している。北米では、流通倉庫開発事業を中心に積極的な展開を進めており、当連結会計年度においては、10件を物件売却し、13件の新規開発に着手している。今後も、事業採算性とリスクを見極めつつ、物件売却と新規開発を進めていく方針である。東南アジアでは、ホテルやオフィスなど複合開発による長期保有型ビジネスを中心に展開しており、当連結会計年度においては、経済活動が再開したことに伴い、運営しているホテルの稼働率や客室単価などが回復している。欧州においては、市場拡大が見込まれる再生可能エネルギー施設開発に取り組んでおり、関連技術や知見を保有する企業の持分を取得するなど、事業拡充と強化を図っている。従前からの戦略的な投資の成果により、海外開発事業は高い収益性を実現していると考えている。
2024年3月期については、東南アジアにおける業績回復などを主因に、売上高の増加を予想している。利益面では、欧米における景気不透明感などを踏まえて、特に開発事業において、売却益などを慎重に見込んでいる。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは当連結会計年度において、資機材価格が上昇した中でも、国内建設事業で着実な利益を確保するとともに、北米流通倉庫開発事業における物件売却などによりキャッシュを創出した。これに加え、政策保有株式の売却や有利子負債の増加等を原資として、投資計画に基づく国内外の不動産開発投資や人材育成施設及び技術開発・オープンイノベーション拠点の建設など当社グループの経営基盤強化に繋がる投資を積極的に実施した。また、配当に加え、機動的な株主還元として、100億円の自己株式取得を実施し、株主還元を拡充している。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ145億円増加し2,822億円となった。当連結会計年度は、完成工事未収入金など売上債権の増加や開発投資に伴う開発事業支出金及び有形固定資産の増加等により、営業キャッシュ・フローと投資キャッシュ・フローはともに支出超過となったが、サステナビリティ・リンク・ボンドなどのサステナブルファイナンスも含めた有利子負債による資金調達が支出を上回り、現金及び現金同等物の残高が増加した。今後の建設事業における資金需要の予測は難しいものの、2024年3月期については大型工事の完成に伴う売上債権の回収により建設事業収支の改善を見込んでいる。なお、現金及び現金同等物の残高は月商程度の水準を上回っているとともに、コミットメントラインを設定する等、安定的な資金運営に向けた多様な資金調達手段を備えていることから、資金面に懸念はないと考えている。
「鹿島グループ中期経営計画(2021~2023)-未来につなぐ投資-」の投資計画に基づき推進している国内外の不動産開発投資やR&D・デジタル投資、M&A等の戦略的投資などの原資として、今後も国内外における建設事業の収益力を高め、資金の創出に努めるとともに、開発事業資産の計画的な売却や中長期的な政策保有株式の縮減を進めていく方針である。株主還元については、配当性向の目安を30%とするとともに、業績、財務状況及び経営環境を勘案した自己株式の取得など機動的な株主還元を行うことを基本方針としている。
また、投資計画の実施に伴う資金需要に対しては、投資効率の向上に向けて、金利動向を見極めながら弾力的に外部資金を活用しているため、2024年3月末の連結有利子負債残高は6,300億円に増加する見通しであるものの、拡大する開発事業資産などに対するリスク耐性を備えた財務健全性は維持していく方針である。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されているが、この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されている。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っているが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なることがある。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載している。
特記事項なし。
当社グループは、中期経営計画に基づき、建設生産システムの自動化・デジタル化やバリューチェーンの拡充による中核事業の一層の強化とともに、社会課題解決型ビジネスやオープンイノベーションによる新たな価値創出への挑戦を目指して技術開発を進めている。
当連結会計年度における研究開発費の総額は
当社は、岐阜工業㈱及び㈱シンテックと共同で、「全自動トンネル覆工コンクリート打設システム」を開発し、新名神高速道路大津大石トンネル工事(滋賀県大津市)に初導入した。本システムは、2020年に開発した締固めが不要な覆工用高流動コンクリートによる完全自動打設システムを、軽微な締固めが必要な中流動覆工コンクリートにも対応できるよう進化させたものである。これにより、中流動覆工コンクリートにおいても全自動高速打設が可能となり、省力化による生産性向上及び品質向上を実現した。
当社は、道路橋床版更新工事に伴う交通規制等によるソーシャルロスの大幅な低減を可能にする「スマート床版更新(SDR)システム※」の開発を進めており、今般、幅員方向分割(2車線道路の場合1車線規制)取替を対象とした「幅員方向分割SDRシステム」を開発した。SDRシステムは、床版取替に関わる4つの作業(既設床版の撤去、主桁ケレン、高さ調整及び新設床版の搬入・架設)を同時に並行して行う「移動式工場」を実現した施工システムで、標準的な工法と比べ、工期の大幅な短縮を実現する。
*1:Smart Deck Renewal
当社は、成瀬ダム堤体打設工事(秋田県雄勝郡東成瀬村)において、堤体のCSG(*2)の打設に、当社が開発した多数の自動化建設機械を同時に自律運転させる次世代建設生産システム「A4CSEL※」(クワッドアクセル)を導入した。これにより自動化建設機械よる大量高速施工を実現し、2022年10月には、ダム工事における国内最高記録となる月間打設量27.1万m3を達成した。これまでの最高記録は、1960年8月の黒部(黒四)ダム工事の14.73万m3であり今回その記録を大幅に更新した。
*2:Cemented Sand and Gravel
現地発生材(石や砂れき)とセメント、水を混合してつくる材料
④ 恵比寿ガーデンプレイスタワーの制震工事が完了
当社は、サッポロ不動産開発㈱が運営する恵比寿ガーデンプレイスタワー(東京都渋谷区)の屋上に、当社が開発したTMD(*3)型制震装置「D3SKY※-L」(ディースカイエル)を設置する制震リニューアル工事を完了した。この装置の設置により、長周期地震動を含む大地震から中規模地震まで、建物の揺れ幅や揺れを強く感じる時間が大幅に低減される。今般設置した「D3SKY※-L」は、多段積層ゴム式の大地震対応の大型TMDであり、専用開発の積層ゴムを用いて装置高さを低く抑えるとともに、TMDを3基連結した構造にすることで大幅な省スペース化を実現した。
*3:Tuned Mass Damper
揺れの周期を調整した錘が動くことにより建物の揺れを止める制震装置
当社は、国立研究開発法人理化学研究所(以下、理化学研究所)、豊橋技術科学大学、京都工芸繊維大学及びダイキン工業㈱と共同で参画しているプロジェクト「スパコン「富岳」による新型コロナ飛沫感染リスク評価のデジタルトランスフォーメーションと社会実装」(代表者:理化学研究所/神戸大学 坪倉教授)が、内閣府主催の第5回日本オープンイノベーション大賞文部科学大臣賞を受賞した。当社は、このプロジェクトに建設会社として唯一参画している。今回、産学連携体制で飛沫・エアロゾル感染リスク評価を具現化したこと及びパンデミック初期から感染リスク評価と感染拡大抑止対策を提案してきた社会的な意義、更に最先端科学の成果を実社会に組み入れ目に見える成果を上げた事例として高く評価され、受賞に至った。
当社は、自動車専用有料道路の熱海ビーチライン(静岡県熱海市)において、一定の区間を走行する車両の位置や速度を、道路上に敷設した光ファイバでリアルタイムに把握する実証試験を初めて行った。具体的には、ケーブル状の光ファイバセンサを車道と路肩の区画線上に設置し、高性能の光ファイバ計測器を用いて道路に生じる振動を計測した。その結果、同区間を走行する全ての車両の位置や速度などのデータが精密かつリアルタイムに取得でき、道路管理ツールとして活用可能であることを実証した。
当社は、近年、激甚化・頻発化する水災害に対して、企業の水災害を想定したBCPを支援するトータルエンジニアリングサービスを実現するためのシステムを開発し、サービスの提供を開始した。本サービスはリスク評価、対策立案、対策工事及び運用支援から構成されており、当社グループが有する技術力を結集して合理的な対策を提供し、水災害を想定した顧客にとって最適なBCPをサポートするものである。本サービスは、既設・新設の個別施設に加え、広域なスマートシティの計画にも適用可能である。
当社は、PC床版とCLT(*4)パネルを用いた新たなユニット化工法「フライングボックス工法※」を開発した。本工法は、現場敷地内の屋内地上部でPC床版にCLTパネルの壁と天井を組み立て、内装まで仕上げた後に揚重して所定の位置に取り付けるものである。在来工法に比べ、天候の影響を受けないため計画的に安定した施工が可能であり、仕上材等の揚重回数が大幅に減少するため生産性が向上する。また、作業の多くが地上部となるため安全性の向上にも繋がる。今般、当社の研修施設「鹿島テクニカルセンター」(横浜市鶴見区)に適用し、その有効性を確認した。
*4:Cross Laminated Timber
ひき板を繊維方向が直交するように積層接着した木質系材料
当社は、超高層ビルの新たな解体工法「鹿島スラッシュカット工法※」を開発し、世界貿易センタービルディング既存本館解体工事(東京都港区)に適用した。本工法は、工期の短縮に加え、超高層ビルの解体工事に欠かせない強風・地震対策や第三者災害リスクの排除に寄与するとともに、騒音の大幅な低減や施工中のCO2排出量の削減など環境にもやさしい工法である。世界貿易センタービルディングの既存本館は最高高さ162mの超高層ビルであり、解体された建物としては国内最高である。
(3) 成長・変革に向けた経営基盤整備とESG推進
① カーボンネガティブを実現するコンクリートを用いた「CUCO※(*5,6)-SUICOM型枠」(クーコスイコム型枠)を実工事に初適用
当社は、デンカ㈱及び㈱竹中工務店と共同で、コンソーシアム「CUCO※」の幹事会社として、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「グリーンイノベーション基金事業/CO2を用いたコンクリート等製造技術開発プロジェクト」を推進している。今般、その最初の研究開発成果として、製造過程におけるCO2排出量が実質ゼロ以下となるカーボンネガティブコンクリートを用いた埋設型枠「CUCO※-SUICOM型枠」を国土交通省発注の放水路トンネル工事に適用し、一般的な高強度パネル使用時に比べ、CO2排出量677kg/m3の削減と実質排出量△62kg/m3のカーボンネガティブを実現した。
*5:Carbon Utilized Concrete
*6:当社、デンカ㈱及び㈱竹中工務店の登録商標
② 環境配慮型コンクリートの適用により181t-CO2のJ-クレジットを取得
当社は、2022年3月にコンクリートの製造・運搬に関わるCO2排出量を、ブロックチェーン技術により見える化するプラットフォームを開発した。同年5月、本プラットフォームを初めて活用し、国が運営するJ-クレジット制度(*7)において181t-CO2のクレジット(J-クレジット)を取得した。J-クレジットは、当社の単身寮「ドーミー南長崎アネックス」(東京都豊島区)において、通常のコンクリートよりもセメントの使用量が少ない環境配慮型コンクリートの「ECMコンクリート※(*8)」及び「エコクリート※BLS」を使用し、コンクリートの製造・運搬に関わるCO2排出量の削減によって取得した。
*7:省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用によるCO2等の排出削減量や、適切な森林管理によるCO2等の吸収量をクレジットとして国が認証する制度
*8:当社及び㈱竹中工務店の登録商標
③ 生物多様性や雨水の貯留・浸透に貢献する総合的なソリューションを提供
当社は、建物の屋上、壁面及び外構の緑化技術を最大限に活用した、生物多様性や雨水の貯留・浸透に貢献する総合的なソリューションの提供を開始した。本ソリューションは、今回新たに開発した外構緑地システム「DEWレインガーデン※」と、既存技術を改良した屋上緑化システム「エバクールガーデン※」及び壁面緑化システム「緑彩マルチパネル※.RT」を組み合わせたものである。今般、当社の研修施設「鹿島テクニカルセンター」(横浜市鶴見区)にこれら3つの技術を初めて同時に採用した。
④ 消失が危惧される地域固有の大型海藻類を再生・保全
当社は、近年、全国の沿岸域で深刻な問題となっている藻場衰退の解決に向けて、各地域に生育する固有の大型海藻類を年間を通じて生産できる技術を開発した。本技術は、大型海藻の種に相当する配偶体を少量の保存液に長期間保存し、随時、大量に増やして海藻の苗を生産するものである。当社技術研究所の葉山水域環境実験場(神奈川県三浦郡葉山町)では、人工漁礁に本技術を適用した現地試験で、大型海藻アラメの順調な生長を確認した。本技術は、脱炭素社会に向けたブルーカーボン(*9)創出やネイチャーポジティブ(*10)への貢献として注目されている。
*9:海藻などの海中植物が吸収・貯蔵した炭素のことで、CO2吸収源のひとつ
*10:生物多様性の減少傾向を食い止め、回復に向かわせること
(国内関係会社)
舗装に関する新技術の開発
舗装建設機械の自動化等ICTを用いた省力化・省人化技術、CO2排出抑制技術、舗装現場のDX化及び重機の安全性向上技術等について、研究開発を進めている。
舗装建設機械の自動化として、自動運転ローラを開発した。本ローラは事前に設定した経路を自動的に往復走行するものであり、周囲に走行目標物がない場合や曲線部においても適正なパターン(往復距離及びラップ幅)での転圧が可能となった。
また、カーボンニュートラルの実現に向けて、リサイクル素材を100%使用した安定処理路盤材を開発した。これは、高炉スラグ微粉末及び刺激剤を用いたものであり、セメントを用いた従来の製造方法と比較して約77%のCO2排出削減が可能となった。
高圧噴射撹拌工法の外部認証取得
地盤改良用の高圧噴射撹拌工法である「ジェットクリート※」工法が、国土交通省が運営する新技術情報提供システム(以下、NETIS)の活用促進技術に指定された。活用促進技術とは、国土交通省各地方整備局等の新技術活用評価会議において全国的に普及することが有益と判断された技術であり、例えば入札時に指定技術を提案した場合には、他の技術と比較して高評価が得られるものである。なお、高圧噴射撹拌工法が地盤条件等の適用範囲を限定せずに指定されたのは現行のNETIS制度では初めてである。
また、建築基礎用の高圧噴射撹拌工法である「エコタイト※-S」工法について、一般財団法人日本建築総合試験所による審査の結果、建築技術性能証明の適用範囲拡大が認められた。本工法による地盤改良体の築造において、従来の円形断面形状の改良体に加え、扇形及び矩形断面形状の改良体についても性能が証明されたことで、施工の自由度が高まった。
外部認証の取得によって、両工法の信頼性が向上したことから、今後、更に積極的に提案していく。
研究開発活動は特段行われていない。
(注) 工法等に「※」が付されているものは、当社及び関係会社の登録商標である。