文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 日本国土開発グループの経営の基本方針
当社グループは経営理念として「わが社はもっと豊かな社会づくりに貢献する」を掲げています。この理念は、1991年4月に創立40周年を機に策定したもので、当時は「社会が直面している問題の解決とより良い社会の構築、快適環境の創造を通じ、ゆとりある社会づくりを目指す」、この想いを経営理念に込めました。30年以上経った今もこの想いは変わらず、SDGs達成を目標に取り入れる等、当社グループは全てのステークホルダーに対して「豊かな社会づくり」とは何かを考えてきました。
2022年7月から当社グループは、2030年までの長期ビジョンとして「社会課題を解決する『先端の建設企業』」を目指すべき姿と位置づけ、立ち向かう社会課題として「気候変動問題」「2030年問題」を設定し、脱炭素社会の実現や人口減少による担い手不足などの諸問題に対して当社グループが持つノウハウや知見を生かし、社会課題の解決に貢献できるよう取り組んでいます。
(2) 経営環境及び対処すべき課題
①「中期経営計画2024」の振り返り
2023年5月期からの3カ年経営計画である「中期経営計画2024」において、土木・建築事業が2024年5月期に大幅損失を計上し、2024年7月に中期経営計画の計数目標の見直し(最終年度ROE10%水準→5%水準、営業利益110億円→40億円に修正)を行いました。
最終年度である2025年5月期に、前年度の損失計上を受け、土木・建築事業で受注審査の厳格化、管理・施工体制強化などを実施しました。その成果もあり、建築事業が回復基調に転じ計画を超える利益を計上、関連事業の販売用不動産の一部売却によるフロー収益や太陽光発電を中心としたエネルギー事業のストック収益などが貢献し、黒字化を達成しました。
一方、土木事業は3期連続の大幅損失計上となり、回復が遅れています。その結果、前中期経営計画における見直し後の財務目標においても計画未達(ROE2.0%、営業利益23億円)となりました。
非財務目標については、脱炭素の取り組みにおいて2050年のカーボンニュートラルの目標であるSBTイニシアチブの「SBTネットゼロ」目標の認定取得したほか、健康経営では「健康経営銘柄2025」(通算4回目)に選定されるなど、先進的な取り組みを実施することができました。
②外部環境認識
海外経済においては、米国政権による各国への通商政策は不確定要素であり、地政学的リスクなどによる原材料・エネルギー価格の高騰や金融・資本市場の変動などの影響は先行き不透明となっています。国内経済は、雇用・所得環境の改善もあり、回復傾向が続いていましたが、海外経済の減速により、国内企業の収益なども下押しされ、成長ペースは鈍化が見込まれます。
国内建設市場は堅調に推移しており、脱炭素化関連投資、国土強靭化計画による公共投資が見込まれるものの、資材・労務費の高騰、少子化に伴う住宅建設投資減などもあり、収益性の低下も考慮に入れる必要があります。また、担い手不足が深刻化しており、人財の確保・育成に関連する人的資本の活用が求められるほか、労働時間削減や生産性向上につながるAI(人工知能)やICT(情報通信技術)などのDX(Digital Transformation)は加速すると見込まれます。一方、南海トラフ地震、首都直下型地震などの発生確率が高まっており、被災地の復旧復興に貢献する建設業の果たす役割は大きいと認識しています。
以上の外部環境認識、前中期経営計画で果たせなかった目標に対する経営課題などに対応するため、2028年5月期を最終年度とする3カ年経営計画「中期経営計画2027」を策定しました。
③日本国土開発の目指す姿
我々が目指す姿は、経営理念である「わが社はもっと豊かな社会づくりに貢献する」を実現することです。そのため、「気候変動問題」「2030年問題」を立ち向かう社会課題に掲げ、それらを解決する『先端の建設企業』となることを長期ビジョンとしています。“豊かな社会づくり”への貢献を目指し、経済的価値と社会的価値の相互作用により、企業価値向上を図るサステナビリティ経営を推進するため、マテリアリティ(重要課題)の刷新を実施した上で、新中期経営計画を策定しました。

④「中期経営計画2027」のミッション
「中期経営計画2027」では、ミッションとして「持続的に利益を生み出す経営基盤を再構築し、『成長軌道への回帰』を実現する」を掲げました。これは前中期経営計画の財務目標が未達となり、我々が2030年までを見据えて計画していた“成長軌道”について、この3カ年で再び元の軌道に戻すため、持続的に利益を生み出す経営基盤を再構築することを最大の目的とします。中期経営計画の最終年度における計数目標は、ROE(自己資本利益率)8.0%、営業利益90億円とし、3カ年で投資総額740億円を実施する方針です。

⑤各事業の取り組み
<土木事業>
土木事業は、適正利益を確保した受注活動と施工管理体制強化により、事業体質を改善し、強みを活かした事業に注力して「持続的な安定事業への回帰」を目指していきます。「インフラリニューアル」「防災減災」「復興」への取り組みに注力し、“インフラソリューション”で社会課題解決に貢献します。
<建築事業>
建築事業は、エリア別に注力マーケットを確立し、適正利益を確保できる受注活動を展開、品質管理を中心とした現場管理を徹底し、「安定事業から成長事業への脱皮」を目指していきます。設計・施工の品質向上はもちろん、積算・購買力強化に努め、当社グループのみならずお客様の収益力向上を図るとともに、竣工引き渡し後の管理維持も手掛け、お客様に寄り添う“建物のトータルサポーター”を目指します。
<関連事業>
関連事業は、投資・回収のバランスを意識した堅実投資でストック収益を伸ばし、開発不動産の適時売却によるフロー収益を積み重ねることで利益の拡大を図っていきます。
不動産事業は、優良収益不動産の取得やアセットタイプの拡充、土地区画整理事業などを進めていくほか、新分野への挑戦を進めていきます。
エネルギー事業は、自社開発案件の累計発電容量を2030年までに現在の127MWから200MWへの拡大を進めていきます。既存案件のバリューアップや屋根置き太陽光発電に取り組むこと、新分野への挑戦として蓄電池事業への参入なども加えて、長期安定適格太陽光発電事業者の認定を目指していきます。
<新規事業>
新規事業については、「地域課題解決パートナー」として、日本全国の地域経済・地域社会への貢献、地域再興資源の創出支援を推進し、社会課題であるインフラリニューアルへの参入、気候変動問題に対応する再生可能エネルギーの普及に貢献していきます。
⑥DX戦略
前中期経営計画においては、企業活動のあらゆる業務のDXを目指し、経営・業務システム、AI・RPAの導入、ICTを活用した測量や自動化施工、BIM/CIMの活用などを推進してきました。今後、これらのシステムやツールを導入・活用し、生産性向上、省人化、提供価値の最大化を目指していきます。そのためにも全社員のDX活用人財化、全社のDX活用体制の構築を進めるべく、人財と組織の変革の両輪で建設DXを実践していきます。
⑦財務戦略と投資計画
財務戦略として、財務健全性の観点から「中期経営計画2027」期間中は自己資本比率40%以上、D/Eレシオ0.7倍以下を堅持してく方針です。自己資本は2024年5月期の大幅損失前の水準(790億円程度)を念頭に、最終年度は720億円の確保を目指していきます。
投資計画については、前中期経営計画において、キャッシュ・フローの不足から投資計画が未達となったことも踏まえ、新中期経営計画では収益力強化と事業基盤拡充に向け、有利子負債を戦略的に活用し、成長分野である関連事業(不動産事業、エネルギー事業)を中心に積極的な投資を実施する方針です。3カ年で740億円の投資を計画しています。

⑧株主還元
配当政策では、前中期経営計画において安定した株主還元を実施するために導入した「DOE(株主資本配当率)」を継続して採用します。収益力の回復を前提に「DOE2.5 ~ 3.5%」を配当方針とし、最終年度まで順次引き上げを目指します。

⑨市場評価と資本収益性改善への取り組み
ここ数年の営業利益率とROEの低下、業績悪化による株価の下落などから、当社のPBR(株価純資産倍率)は1倍を下回って推移しています。2025年5月期から「市場評価と資本収益性の改善」に向けた取り組みとして、ROE改善と、PER(株価収益率)向上を目指し、安定性・収益性・将来性・関係性の観点から取り組みを実行しており、今後もPBRの向上に努めていきます。

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、今後の環境変化など様々な要因により大きく異なる可能性があります。
日本国土開発グループは、経営理念である「わが社はもっと豊かな社会づくりに貢献する」を実現するために、当社と社会の持続可能な存続・成長を目指し、サステナビリティ経営を推進しています。当社グループは、経済的価値と社会的価値において、それぞれの財務・非財務目標の達成に取り組み、その相互作用によって、企業価値の向上に努めていくことを経営方針としています。
また、2030年までの長期ビジョンとして「社会課題を解決する『先端の建設企業』」を掲げ、立ち向かう社会課題として「気候変動問題」「2030年問題」を設定し、脱炭素社会の実現や人口減少による担い手不足などの諸問題に対して当社が持つノウハウや知見を生かし、社会課題の解決に貢献できるよう取り組んでいます。また、このほどマテリアリティ(重要課題)の改定を実施しました。

(1)サステナビリティ共通
<ガバナンス>

サステナビリティ経営本部は当社グループにおける経済的価値と社会的価値を同時に高めるという観点から、戦略立案などを行い、経営会議にて協議し、取締役会での決議を行う体制となっています。具体的なガバナンス体制は下記のとおりです。
①取締役会
・経営会議(執行役員会議)から上申されたサステナビリティ課題に関する戦略、マテリアリティ、KPIなどの項目に関して決議し、年2回報告を受け、取り組み状況を監督し、必要な改善指示を行う
②経営会議
・サステナビリティ課題に関する戦略、マテリアリティ、KPIなどの項目に関して協議し、インシデントについても取締役会へ上申する
・四半期ごとに計画、活動、指標及び目標をレビューする
・上記項目について取締役会へ報告し、監督を受ける
③サステナビリティ経営本部
・サステナビリティ課題について、方針や目標、計画策定、各施策の進捗状況のモニタリング、実績評価や改善指示など、サステナビリティに関する戦略全般を管理する
・各担当部門及びグループ会社に提言を行い、グループ全体での取り組みを推進する
・ステークホルダーとの対話を実施し、最新の知見を共有して各種方針や計画に反映する
・戦略部は財務目標、サステナビリティ推進室は非財務目標の戦略立案・進捗管理を担う
④各担当部門
・各施策の進捗状況をサステナビリティ経営本部へ年4回報告し、管理・評価を受ける
・サステナビリティ課題について、各担当部門に関する方針や目標、計画の策定、各施策の進捗状況のモニタリング、実績評価や改善指示などを実施し、管理する
・サステナビリティ経営本部が設定した計画や目標に基づき、具体的な活動を推進する
当社のサステナビリティ経営本部が主体となり、各事業本部と連携してサステナビリティ関連のリスクと機会を網羅的に抽出し評価・識別します。評価・識別は、事業への影響度の観点で実施し、重要なリスクと機会を特定しており、特定したリスクについては、当社リスク管理規程に基づき管理しています。
<マテリアリティ>
2021年10月に当社グループで初めてマテリアリティ(重要課題)を特定しました。当時はSDGsの達成と、ESG経営の実践を主軸に非財務目標を中心としたマテリアリティでした。2023年に策定したサステナビリティ経営方針に則り、事業活動を含めた財務目標と非財務目標の達成を推進するため、このたびマテリアリティの見直しを行いました。
マテリアリティ特定プロセスについては、各本部の主要メンバーで構成されるプロジェクトチームを設置し、検討課題の把握・抽出を行い、重要性の高い課題を抽出し、経営層へのヒアリングなども実施しました。
■課題抽出とマテリアリティの特定

検討課題の把握・抽出において、87の課題を抽出。この課題に対して、ステークホルダーにとっての重要性、自社事業における重要性を検証し、より重要性の高い課題をマテリアリティとして特定しました。
■マテリアリティの詳細

(2)個別テーマ
(2)-1 人的資本・多様性
当社グループは、目標とする『先端の建設企業』を実現するため、「働き方改革」と「働きがい改革」を両輪として進めることで、従業員が持つ個性や能力が十分に発揮され、「誇りと働きがい」を持って、社員が主体的に業務に取り組むエンゲージメントを向上させることにより、人的資本の最大化を目指します。エンゲージメントの向上については、人財育成、ダイバーシティ&インクルージョンの推進、健康経営、女性活躍を中心とした人財戦略の各種施策の中で醸成を促します。
<目指す姿>
当社グループでは、個々の社員が有する個性や能力が十分に発揮され、誇りと働きがいを持ち、主体的に業務に取り組む魅力的な職場環境づくりを進めていきます。当社グループは、経営環境の変化に柔軟に対応できる強い人財が集まった組織力で勝負する一体感のある経営を目指します。
<課題認識>
我が国では、少子高齢化に伴う生産労働人口の減少は社会課題になっており、人手不足が一段と進むことが予測されます。このような環境の中で、当社グループが持続的に成長するためには、人財の確保・育成を基礎とした組織力の強化が重要課題であると認識しています。
この課題に対応するため、自身の仕事に責任と誇りを持つプロフェッショナルな社員の育成と、それぞれが持つ個性や能力を最大化できるリーダーの育成の両輪が不可欠であると考えます。
これにより柔軟で強い組織となることで一体感が生まれ、働きがいを感じられる魅力ある会社として成長できると認識しています。
<戦略>
当社の人財戦略は、重点課題として「多様な人財が誇りと働きがいをもって成長・活躍できる職場づくり」を掲げ、「採用」「定着」「育成」を3本柱とし、人的資本活用に関する施策を実行する事を方針として定めております。
そこで、「働き方改革」に加えて、「働きがい改革」を実践していきます。従業員エンゲージメントの向上を図るため、働きやすい職場環境づくり、DXを活用した生産性向上・労働時間の削減、適正な給与水準を確保し、モチベーションのアップに取り組みます。そして、社員一人ひとりにキャリアパスをイメージしてもらい、さらなる成長機会を提供するため、資格取得支援やリスキリング制度などの充実を図ります。

<健康経営の推進>
日本国土開発は、ダイバーシティ&インクルージョン(多様性と受容)の活動として、従業員一人ひとりの心と体の健康づくりを推進し、安全で働きやすく、働きがいのある職場づくりを目指し、経営トップ自ら健康管理最高責任者(CHO)となり、2018年9月に「健康経営宣言」を制定しました。会社、健康保険組合、従業員組織であるコミュニケーション協議会が密に連携を取りながら実施しています。経済産業省と東京証券取引所が主催する「健康経営銘柄」に通算4回(2020年、2021年、2023年、2025年)選定されているほか、経済産業省と日本健康会議が共同で進める「健康経営優良法人~ホワイト500~」に2020年から毎年選定(6年連続)されています。
■健康経営推進体制

(2)-2 気候変動問題への取組(TCFD提言に沿った気候変動問題の情報開示)
<目指す姿>
省エネや再エネ利用などの脱炭素に向けた自社グループの取り組みを継続的に進めていきます。また、世界的な脱炭素ビジネスの拡大を機会と捉え、当社グループが保有する再生可能エネルギー事業の拡大や、脱炭素に資する環境技術の開発、業務提携などによる独自の強みづくりに積極的に取り組むことで、脱炭素ビジネスの担い手として事業を拡大・成長させながら、2050年のカーボンニュートラルの実現を目指します。
<課題認識>
世界人口の増加や世界経済の発展、便利さを追求した生活習慣の拡充などに伴い、自然環境の破壊や汚染、資源の過剰な利用が進み、地球環境は深刻な危機に直面しています。なかでも、人間活動に起因する温室効果ガス(Green House Gas以下、GHG)の排出量増加により地球温暖化が進み、世界各地で異常気象による災害が頻発・激甚化し、人々の生活や経済活動を脅かしています。
これらの気候変動問題は、夏季の労働力の低下や熱中症リスクで現場を運営できない可能性に加え、異常気象に伴う災害による工期への影響など、当社グループの事業にも大きな影響を及ぼすことから、看過できない問題です。
建設業のCO2排出量は、国内全体の4割を占めるとも言われ、当社グループはこれまで培ってきた環境技術やノウハウと、太陽光発電を中心にした再生可能エネルギーを活用し、ステークホルダーと連携しながら主体的に気候変動問題の解決に取り組みます。
<リスクと機会>
当社グループにおいて想定されるリスクと機会は下記のとおりです。
■想定されるリスク(影響度大のみ記載)

■想定される機会(影響度大のみ記載)

<移行計画>
当社グループでは、Scope1,2に比べてScope3の排出量が非常に大きく、その大半はカテゴリー1とカテゴリー11が占めています。カテゴリー1は調達する建設資材の製造における排出、カテゴリー11は施工した建物の使用時における排出が該当します。当社グループのScope1,2の排出源は、土木事業・建築事業における施工時の排出及びオフィスからの排出が大半を占めています。Scope1,2は「重機の低炭素化」「生産性の向上」「協力会社との協働」「省エネ推進や再エネ導入」により、Scope3は「建材の低炭素化」「原材料の使用量削減」「ZEBや再エネの推進」「地域脱炭素推進」などにより、バリューチェーン全体の排出量削減に取り組んでいきます。
■事業活動におけるScope1,2,3の実績

※2024年度(2025年5月期)のCO2排出量は速報値を記載しており、改めて確定数値を開示する予定
<温室効果ガス(GHG)排出量削減に関する目標>
当社グループでは、2023年2月に当社の2030年度までのCO2排出量削減目標が、SBTi※1から「パリ協定における『産業革命前と比較して気温上昇を1.5℃未満に抑える水準と整合した目標』」の認定を取得しました。また、2024年11月には、SBTiよりGHG排出量削減に関する目標において2050年にネットゼロエミッションを実現する「SBTネットゼロ※2」の認定を取得しました。
※1 SBTi:産業革命前からの気温上昇を2℃未満に抑えるため、企業による科学的根拠に基づいた温室効果ガスの排出削減目標達成を推進することを目的として設立されたイニシアチブ
※2 ネットゼロ基準:産業革命前からの気温上昇を1.5℃以内に抑え、2050年までのネットゼロ(大気中への温室効果ガス排出量が正味ゼロの状態)を達成する目標を設定するための標準化された基準
■Scope1,2,3の推移と目標

(3)指標と目標
2025年7月に策定した2026年5月期からの3カ年経営計画である「中期経営計画2027」の期間中に達成する働きがい、働き方、健康経営、女性活躍、安全衛生、企業統治、環境などの非財務目標は下記のとおりです。

※エンゲージメントスコア:㈱アトラエが提供するエンゲージメント解析ツール「Wevox」を利用。2024年度の同規模の建設・不動産ベンチマークスコアは64.0pt
※建設技術系資格:1級建築士、1級土木施工管理技士、1級建築施工管理技士などの資格
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 事業環境について
①建設市場の動向
国内外の景気後退や国及び地方公共団体の公共投資予算の削減等により、建設市場が著しく縮小した場合や今後競合他社との競争が激化し、民間工事における受注価格が下落する場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
このリスクに対応するため、建設事業においては、ICT施工やDX戦略による省力化技術の確立により、市場の縮小にも柔軟に対応できる事業体質の構築に取り組んでおります。不動産開発事業・再生可能エネルギー事業を主とする関連事業による安定収益の拡大にも引き続き注力しており、直近3ヵ年においては当社利益の中核となっております。また、今後のさらなる市況の変化に備え新規事業への投資も強化しており、持続的な成長を可能とする収益基盤の変革を推進してまいります。
②人材確保に係るリスク
建設業界においては、建設技術者・技能労働者の高齢化が進み、計画的な人員確保の重要性が高まってきております。当社グループでは、計画的な人員確保に向けて「採用」「定着」「育成」の強化に努めておりますが、需給関係の急激な逼迫により人員確保が困難となった場合には、受注機会の喪失や納期遅延等の問題が発生する恐れがあり、業績に影響を与える可能性があります。
このリスクに対応するため、特に技能労働者の地位向上への取り組みとしてキャリアアップシステムの推進、優良職長認定制度、褒章につながる国土交通省の建設マスターへの推薦を行っております。また、DX化や独自の機械力を活用したICT施工による省人化、省力化施工によって施工効率の向上に挑戦してまいります。さらに、成果に見合った報酬が得られる人事制度の構築や労働環境の改善等の「働き方改革」に加え、タレントマネジメントの実施やエンゲージメントの向上等の「働きがい改革」を推進しており、優秀な人財の確保を採用市場でアピールしてまいります。
当社グループでは、ダイバーシティ&インクルージョンの活動として、経営トップ自らが健康管理最高責任者(CHO)となり、2018年9月に「健康経営宣言」を制定しています。この活動推進に対して、経済産業省及び東京証券取引所が主催する「健康経営銘柄」に4度選定されています。健康経営銘柄は従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる上場企業を選定するもので、建設業では最多となっております。また、上場企業に限らず大規模法人のうち保険者と連携して優良な健康経営を実践している法人として、経済産業省と日本健康会議が共同で進める「健康経営優良法人~ホワイト500~」にも6年連続で選定されております。今後もさらに従業員の健康増進に向けた活動を推進してまいります。
③労務単価及び資材価格の高騰
建設工事の施工は長期間に及ぶものが多いことから、契約期間中に想定外に労務単価や工事用資材の価格が高騰する可能性があります。単価の高騰分について請負金額に反映できない場合には、業績に影響を与える可能性があります。
このリスクに対応するため、労務状況の常時確認や主要資材の市場価格調査を行い、資材・労務価格等の急激な変動に対しては先行調達や代替工法の提案等により対応しております。また、特に大きな影響が及ぶ可能性のある建築事業では、予め物価スライドに関して契約条項に盛り込むことを原則とすることで、資材価格の急騰等に対応してまいります。
(2) 取引先の信用リスクについて
景気の減速や建設市場の縮小などにより、発注者、協力会社、共同施工会社の信用不安などが顕在化した場合、資金の回収不能や施工遅延を引き起こし、業績に影響を及ぼす可能性があります。
このリスクに対応するため、案件採択にあたっては、施主の信用調査を実施後、その内容について審査委員会で審議を行い、経営会議(大口のものについては取締役会)への結果報告を経て承認する手続きとしており、与信判定に応じた工事代金の受領・支払などの取引条件の確保に取り組んでおります。
(3) 施工物の瑕疵について
継続的な施工教育の実施や、ISOなどの品質管理手法を活用した施工管理の徹底により、品質管理には万全を期しておりますが、万一施工物に関する重大な瑕疵があった場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
このリスクに対応するため、本支店の管理体制の大幅な見直しを行い、施工支援や技術指導を行う部署を新設し、業務プロセスの見直しや管理基準の平準化を図っています。さらに、重点管理現場を中心に工程進捗・原価進捗のモニタリングを強化しています。
(4) 建設活動に伴う事故について
建設事業は、作業環境や作業方法の特性から危険を伴うことも多く、他の産業に比べ事故発生率が高くなっております。人身や施工物などに関わる重大な事故が発生した場合、業績や企業評価に影響を及ぼす可能性があります。
このリスクに対応するため、工事着手にあたり施工計画を策定し、安全な作業環境を整え施工しております。また、徹底した安全教育の実施、危険予知活動や安全パトロールなどの災害を撲滅するための活動を実施しております。事業部門とは独立した社長直轄の安全衛生管理室が各現場へ安全パトロールを実施するとともに、過去事例や他社事例に基づき教育を行うなど、指導・監督の下、安全管理には十分に配慮された体制で施工を行っております。また、すべての工事において、建設工事保険、賠償責任保険等の付保によるリスクヘッジも行っております。
(5) 資産保有リスクについて
営業活動の必要性から、投資有価証券・事業用不動産等の資産を保有しておりますが、時価が著しく低下した場合、評価損や減損損失の計上等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。
このリスクに対応するため、事業用資産については、案件毎に定期的に減損リスク等を把握し、投資有価証券については、個別銘柄ごとに、株式保有に伴うコストやリスク、営業上の便益等の経済合理性を総合的に勘案のうえ、保有意義を見直し、取締役会にて保有の適否を検証しております。
(6) 関連事業に係るリスクについて
①不動産開発
当社グループは関連事業として主力事業である土木事業及び建築事業とは求められるノウハウが異なる不動産開発事業を展開しております。当該事業に係るプロジェクトは事業期間が長期間にわたることから、事業環境に著しい変化が生じた場合や開発が想定どおりに進捗しない場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
このリスクに対応するため、不動産開発事業は、関係部署による事前協議を行った上で、決裁基準に応じて経営会議・取締役会で厳格に判断を下しており、計画段階から着手後にかけて、常に事業リスクや環境変化の兆候を把握することに努め、適時適切に事業計画の点検と見直しを実施しております。
②太陽光発電
太陽光パネルの発電効率低下のリスクについては、適切なメンテナンス、モニタリングを実施する対策を取っておりますが、自然災害や事故等の原因で、発電所修復のための休業中に発電量が予定より大幅に減少した場合は、業績に影響を及ぼす可能性があります。
このリスクに対応するため、自然災害や事故等の原因による施設等の被害に関しては、各種保険に加入することでリスクの軽減を図っております。
(7) 海外事業に伴うリスクについて
海外工事について、予期しない法律、規制、政策の変更、テロ紛争、伝染病等が発生した場合や、経済情勢の変化に伴う工事の縮小、延期等が行われた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、外貨建ての資産・負債を有しているため、為替レートの変動により為替差損が発生した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
このリスクに対応するため、進出国の的確な情勢把握に努めており、テロ紛争・伝染病等の対応については、「海外緊急事態対応マニュアル」に基づき、役職員及び家族の安全を第一に捉え、進出国のリスク状況に応じては本邦への緊急搬送サービスや現地での適切な医療体制の確保の充実を図るなど危機管理体制の一層の強化に努めております。また、為替変動リスクに対応するため、予測しがたい急激な為替の変動に備え、必要に応じ為替予約などを通じ外貨建資産に対しヘッジを実施するなど、可能な限りリスクの回避をしております。
(8) 法的規制について
建設事業の遂行は、建設業法、建築基準法、宅地建物取引業法、国土利用計画法、都市計画法、独占禁止法等により多数の法的規制を受けております。当社グループの各社では、特定建設業許可、一級建築士事務所登録、宅地建物取引業の許認可等を受けております。現時点において、当該許認可等の取消となる事由に抵触する事象は発生しておりませんが、将来、何らかの理由により、当該許認可等が取消され又はそれらの更新が認められない場合、もしくはこれらの法律等の改廃又は新たな法的規制の新設、適用基準の変更によっては、業績に影響を及ぼす可能性があります。
このリスクに対応するため、常に建設業法をはじめとした各種関連法令の制定改廃動向を予め把握するとともに、役職員及び専門工事業者に対して法令遵守の啓発活動及び遵守状況のモニタリングを実施しております。
(9) 大規模災害に関するリスクについて
地震等の天災、人災等が発生したことにより、事業継続に深刻な支障をきたした場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
このリスクに対応するため、ゼネコンとしての社会的使命を果たすため、「事業継続計画」を策定しております。R&D拠点であるつくば未来センターと社員寮を、本社機能の代替拠点に設定し、臨機応変に対応できる体制を整えております。また、基幹システムはクラウドサービスを利用しております。サーバー群は停電、耐震性に優れたデータセンターに設置されており、データ保全もサービス内で実施されております。
なお、震災時の社員安否の確認には、「事業継続計画」に基づき「安否確認サービス」を利用し、状況を的確に把握した上で、災害時に迅速な事業活動が行えるよう準備をしております。今後さらに災害時の情報共有を簡便且つ的確に実施できる仕組み、サービスを導入すべく取り組んでまいります。
(10) 情報セキュリティリスクについて
サイバー攻撃、不正アクセス、コンピューターウィルスの侵入等による情報流出、重要データの破壊、改ざん、システム停止等が生じた場合には、信用が低下し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
このリスクに対応するため、当社グループでは、「情報セキュリティ基本方針」の定めに従い、「情報セキュリティ基本規程」を基に情報セキュリティ全般に関して、適切な情報管理を徹底するよう努めております。また、各要領・マニュアルに基づいた「社員教育」を徹底し、全社の推進レベルの向上を図ることで、浸透したテレワーク体制にも対応を図っております。
(11) 訴訟等に関するリスクについて
国内外の事業等に関連しての訴訟、紛争、その他法的手続きにおいて、当社グループの主張や予測と相違する結果となった場合は、業績に影響を及ぼす可能性があります。
このリスクに対応するため、訴訟等につきましては、顧問弁護士等外部の専門家と緊密に連携し対応できる体制を構築しております。
(12) 工事における一定の期間にわたり収益を認識する方法について
当社グループは、一定の期間にわたり収益を認識する方法を適用しております。工事進捗度の見積りは、見積総原価に対する発生原価の割合をもって行い、工事請負総額に工事進捗度を乗じて完成工事高を算出しております。
工事案件ごとに継続的に見積総原価や予定工事期間の見直しを実施する等適切な原価管理に取り組んでおりますが、それらの見直しが必要になった場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
このリスクに対応するため、現場の予算を基に、徹底した原価管理を行い、適宜決算に反映するようにしております。
(13) 気候変動リスクについて
気候変動により自然災害が激甚化傾向にあり、気候変動に伴う物理的リスクとして、施行中工事への被害や施工遅延、自社所有物件への被害等により、事業の継続性に影響を及ぼす可能性があります。
また、脱炭素社会への移行リスクとして、炭素税の導入や、工事施工に係る各種法規制の強化に伴う大幅な建設コストの増加により、業績等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、このような気候変動に伴う事業への影響を重要な経営課題の一つと捉え、2021年10月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言への賛同を表明しており、2030年度までのCO2排出削減目標(いずれも2020年度比でScope1,2:42%削減、Scope3:25%削減)を設定しているほか、2050年におけるCO2排出量の実質ゼロに向けたネットゼロエミッションの実現を目標に掲げています。気候変動問題への取組につきまして、「サステナビリティに関する考え方及び取組」に詳細を記載しておりますので、そちらをご確認ください。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当連結会計年度における我が国経済は、雇用・所得環境の改善に加え、各種政策の効果もあり、景気は緩やかな回復傾向が続きました。一方で、海外景気の下振れや、米国の今後の政策動向、金融資本市場の変動等、引き続き 状況を注視していく必要があります。
建設業界においては、公共投資の底堅い推移や、民間設備投資の持ち直しの動きにより、建設投資全体としては 堅調に推移しております。しかしながら、コスト面では建設資材価格の高止まりや労務需給の逼迫等により、厳し い事業環境が続いております。
このような状況の中、当社グループの経営成績は以下のとおりとなりました。
当連結会計年度の経営成績については、売上高は123,349百万円(前連結会計年度比9.1%減)、売上総利益は12,193百万円(前連結会計年度は541百万円の売上総損失)、営業利益は2,318百万円(前連結会計年度は9,404百万円の営業損失)となりました。また、経常利益は1,945百万円(前連結会計年度は9,343百万円の経常損失)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,332百万円(前連結会計年度は7,191百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。(セグメントの経営成績については、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載しており、セグメント利益又は損失は、連結損益計算書の営業利益と調整を行っております。)
(土木事業)
土木事業においては、売上高は37,727百万円(前連結会計年度比7.1%減)となり、利益面では、工事代金の回収懸念に対する貸倒引当金を計上したこと、大型工事において突貫工事等による工事費の増加を見込んだこと、及び連結子会社における大型下請工事で追加契約協議の難航に伴い損失を計上したことにより、セグメント損失4,550百万円(前連結会計年度は6,294百万円のセグメント損失)となりました。
建築事業においては、売上高は74,628百万円(前連結会計年度比15.4%減)であり、利益面は、選別受注を進めてきたことに加えて、不採算現場が竣工したことで案件の入れ替えが進み利益率が改善したためセグメント利益2,582百万円(前連結会計年度は3,612百万円のセグメント損失)となりました。
関連事業においては、販売用不動産等の売却により、売上高は12,772百万円(前連結会計年度比82.2%増)、セグメント利益は5,905百万円(前連結会計年度比187.2%増)となりました。
地域ごとの業績は次のとおりであります。
日本国内での売上高は113,009百万円であり、営業利益は2,078百万円となりました。
アジアにおける売上高は10,339百万円であり、営業利益は239百万円となりました。
(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
(注) 売上実績においては、「外部顧客への売上高」について記載しております。
なお、参考のため、提出会社個別の事業の状況は次のとおりであります。
提出会社の受注高(契約高)及び売上高の状況
(注) 1.前事業年度以前に受注したもので、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注高にその増減額を含んでおります。従って、当期売上高にも係る増減額が含まれております。また、前事業年度以前に外貨建で受注したもので、当事業年度中の為替相場により請負金額に変更のあるものについても同様に処理しております。
2.当期受注高のうち海外工事の割合は前事業年度15.7%、当事業年度9.9%であります。そのうち主なものは次のとおりであります。
当事業年度 請負金額10億円以上の主なもの
② 受注工事高の受注方法別比率
工事の受注方法は、特命と競争に大別されます。
(注) 百分比は請負金額比であります。
(注) 1.海外工事の国別割合は以下のとおりであります。
2.完成工事のうち主なものは、次のとおりであります。
前事業年度 請負金額10億円以上の主なもの
当事業年度 請負金額10億円以上の主なもの
3.売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の売上高及びその割合は、次のとおりであります。
前事業年度
該当事項はありません。
当事業年度
該当事項はありません。
④ 繰越高(2025年5月31日現在)
繰越工事のうち請負金額10億円以上の主なもの
資産は、機械、運搬具及び工具器具備品10,524百万円、受取手形・完成工事未収入金等10,146百万円、現金預金3,810百万円などの減少要因が、販売用発電設備14,989百万円、販売用不動産6,436百万円などの増加要因を上回ったことにより、前連結会計年度末比5,027百万円減の140,649百万円となりました。
②負債の部
負債は、長期借入金5,617百万円、支払手形・工事未払金等4,205百万円などの減少要因が、短期借入金5,809百万円、未成工事受入金2,869百万円などの増加要因を上回ったことにより、前連結会計年度末比2,866百万円減の74,219百万円となりました。
③純資産の部
純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益1,332百万円の計上及び配当金1,815百万円の支払いなどの結果、前連結会計年度末比2,161百万円減の66,429百万円となりました。なお、自己資本比率は、前連結会計年度末比0.1ポイント増の47.1%となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権の減少10,157百万円、未成工事受入金の増加2,869百万円等の収入要因が、販売用不動産の増加6,344百万円、仕入債務の減少4,205百万円等の支出要因を上回り、3,793百万円の収入超過(前連結会計年度は1,263百万円の支出超過)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出4,087百万円等の支出要因が、投資有価証券の売却及び償還による収入277百万円等の収入要因を上回り、3,876百万円の支出超過(前連結会計年度は1,471百万円の収入超過)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出13,512百万円等の支出要因が、短期借入金の純増額7,869百万円等の収入要因を上回り、3,788百万円の支出超過(前連結会計年度は2,092百万円の支出超過)となりました。
以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、18,136百万円(前連結会計年度末は21,947百万円)となりました。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、工事の完成に要する外注費等の工事費や人件費等の販売費及び一般管理費等の営業費用によるものであります。また、投資を目的とした資金需要は設備投資等によるものであります。
これらの資金は、自己資金及び金融機関等からの借入により調達しており、当連結会計年度において、短期借入金及び長期借入金13,704百万円を調達しております。
当社グループは運転資金の効率的な調達を行うため、当連結会計年度末においては、8,900百万円の当座貸越契約、13,100百万円のコミットメントライン契約及び3,000百万円のリボルビング・クレジット・ファシリティ契約を締結しております。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積り及び判断が行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されております。これらの見積り等については、継続して評価し、事象の変化等により必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なる場合があります。
当社グループが連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち,重要なものは以下のとおりであります。
(一定の期間にわたり収益を認識する方法による収益認識)
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(固定資産の減損)
当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、資産のグルーピングを行い、収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。
固定資産の回収可能価額については、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件をもとに減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定を実施しておりますが、市況の変動などにより、これらの前提条件に変更が生じた場合、減損処理が必要となり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(財務制限条項が付された借入金契約)
当社が締結している財務制限条項が付された借入金契約の契約に関する内容等は、以下のとおりです。なお、財務上の特約の内容につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (連結貸借対照表関係)」に記載しているため、記載を省略しております。
当社グループの研究開発は、自動化・省力化、DXなど生産性を向上する差別化技術及び現場施工に密着した技術に積極的に取り組んでいることが特徴であります。
当連結会計年度の研究開発費は
(1) マシナリー×ICT(Information and Communication Technology)による土工の高速化・省力化技術の開発
土工事における省力化、生産性の向上を目的として、建設機械におけるICT活用の標準化はもとより、建設機械施工の自動化に取り組んでおります。また、高速走行が可能なスクレーパを技術導入することで工期短縮、省人化と同時に温室効果ガスの削減を図っております。工事の進捗管理にUAV(Unmanned Aerial Vehicle)を導入し3次元地形データを作成することで最適な運土計画を立案するとともに、台風・豪雨時等の土砂災害リスクをリアルタイムに評価し対策に反映させております。さらに、土量や土質性状の管理にAI/ICTを用いた評価手法を導入することによって、省人化や品質向上に関する開発を大学等との共同研究により進めております。また、国土交通省が掲げるi-construction2.0の実現に向け、土工事に関する様々な情報の数値化を図ることで、最適な土工事を実現する施工管理システムの開発を行っております。
(2) 回転式破砕混合工法(ツイスター工法)の改良品質の高度化と適用性拡大
適用性拡大を目的とした自走型土質改良機を開発し、国土交通省が進める緊急治水対策プロジェクトにおいて、本機械の特徴である自走機能を活かし、河川敷内で出水期の施工を行っています。また、自走型としたことで改良ヤードを小さくすることが可能となり、令和6年能登半島地震の災害復旧工事において、十分な改良ヤードが確保できない港湾の護岸改良工事に適用され、稼働を開始します。さらに、土質性状に応じた破砕混合メカニズムについて、大学等と共同研究を実施し、不良土改良技術の高度化を進めています。
改質土の更なる高品質化とオペレーションの自動化を目的として、土の供給性能向上を目指した供給機の開発を行っており、今後は土量の計測技術を組み合わせた自動制御の開発を進める予定です。
リニューアル技術では、独自技術である機能性吸着材と国土開発工業㈱のエポキシ樹脂コンクリート補修製品を混和した、塩分吸着性能及び防錆性能を有する「ハイブリッドエポキシ樹脂」のNETIS登録が完了しております。ひび割れ注入・断面修復工法への適用を目的とした検証試験を実施し、その効果についてモニタリングを行っております。また、本機能性吸着材の性能を活用した他材料への適用についても検討を開始しております。
独自の地盤改良技術である動圧密工法は、ICTを活用した施工・品質管理の高度化、省人化を進めており、静的地盤圧縮工法のリフューズプレス工法とともに現場条件に合わせた最終処分場の減容化技術として他社との差別化を図っております。
(5) 機能性吸着材
環境分野等への応用を目的に、機能性吸着材の技術開発を実施しております。世界の水問題の解決を目標に、途上国でも持続可能な機能性材料を用いた井戸水砒素処理技術の開発を進め、バングラデシュ人民共和国での現地実証試験を行っております。独立行政法人国際協力機構(JICA)の「中小企業・SDGs・ビジネス支援事業」において、「『JaPani』システムの活用による安心安全な飲料水を提供可能にする分散型地方給水事業」がビジネス化実証事業として採択されており、開発途上国の課題解決に貢献し得るビジネスの開始を目指しております。
(6) 福島エコクリート株式会社
福島エコクリートは福島県浜通りの復興を目的とした「福島イノベーション・コースト構想」の実践企業に位置付けられており、SDGs実践の観点から地元産業副産物の「地産地消」、カーボンニュートラル時代への貢献を目指した技術開発に取り組んでおります。具体的には、次世代の石炭火力発電方式として期待されている石炭ガス化複合発電(IGCC)から発生するスラグ(CGS)、バイオマス灰の活用検討を行う他、石炭灰を主原料とした人工砕石(以下、ORクリート)をブルーカーボン領域の環境修復材分野として活用する試みの一環として、福島県松川浦において、アサリ生育促進の検討を行っております。また、福島県浜通りに広く分布する高含水比の不良土砂(ゆな土)とORクリートとを混合することで、盛土材に適用な可能な良質な混合土を製造する研究開発を、地元の日本大学工学部と実施しております。さらに、早急な再生利用が望まれている中間貯蔵除去土のうち、8000㏃以下のものにORクリートを混合して盛土材として利活用する検討を、JCOAL(カーボンフロンティア機構)が設置したWG委員会の中で取り組んでおります。
土木領域以外では、双葉郡浪江町に進出した「F-REI(福島国際研究教育機構)」の委託事業として、東京大学、理化学研究所等と、石炭灰からラジウム(226Ra)を抽出し、抽出したラジウムから癌の治療薬であるアクチウム(225Ac)を製造する技術検証も行っており、今後もカーボンネガティブエミッションの観点から、石炭灰の有効活用に関する新たな技術開発への取組も積極的に実施する予定です。
施工省力化・合理化技術
物流施設におけるコストトップランナーとなるべく、工事の省力化並びに合理化を図るための工法として高強度ステンレスによる鋼製型枠の開発、PCaユニット化、プレストレスの検討、防火区画化壁のユニット化、無足場工法による施工及び機械化施工の検討を実施しております。今後、大型物流倉庫の案件に適用し生産性向上を目指しております。
BIMを利用した支援技術
BIM(Building Information Modeling)の活用を進め、施工の省力化並びに品質向上を図っております。設備・建築総合モデルでの早期検証を確立し、案件でのフロントローディングを実施しております。また、構造モデルの積算活用を実施しており、業者選定時の査定業務の省力化及び利益率の向上を図ります。今後も業務効率を改善し、質の高い施工管理を目指しております。
省エネ技術の実用化
省エネシステムの手法と再生可能エネルギーをセットとした再生エネ100%スキームを営業革新の一手として展開、生産工場への適用を図っております。また、オフィスビルや物流施設に対してはZEB(Net Zero Energy Building)の実現に向けた取り組みを進めております。
配筋検査システムの開発
当社を含めたゼネコン21社と共同開発契約を結び「配筋検査システム」の開発に取り組んでおります。この配筋検査システムは、AI(人工知能)を活用した鉄筋認識に関する技術により適切な配筋施工の実施を支援するシステムで、施工管理者の熟練度によらない効率的かつ正確な配筋検査を可能とし、鉄筋検査の業務時間削減へつなげます。今後も現場試行を継続的に実施し、より汎用性の高い機能の開発を引き続き進めてまいります。
研究開発活動は特段行われておりません。