(注)百万円未満の端数を切捨てて表示している。
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
当期については、価格転嫁の進展や円安などの影響により、企業収益に改善の動きがみられた。建設業界においても、建設コストの高止まり等、一部厳しさは残るものの、好調な業績を背景に企業の投資意欲は底堅く、建設需要は堅調に推移している。
このような景況下、当期における当社グループの連結業績については、期首予想を上回り、完成工事高は7,050億5千8百万円(前期比7.7%増)、営業利益は609億7千9百万円(前期比42.9%増)、経常利益は645億4千6百万円(前期比40.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は472億5千万円(前期比40.8%増)となり、前期比で増収・増益、完成工事高及び全ての利益について、創業以来最高値となる実績を確保することができた。旺盛な建設需要、建設コストの価格転嫁の広がり、とりわけ「担い手三法改正」をはじめとする業界全体で「適正工期・適正金額の確保」に向けた動きが進むなかで、お客さまのご理解はもとより、当社グループにおいても、適正工期の確保や生産性の向上、現場管理業務への支援、そしてエリアを越えてきんでん全体で連携した施工体制を構築することで、現場・お客さまに真摯に向き合い、対応してきたことが、このような業績に結びついたと考えている。
2021年に策定した中期経営計画『Sustainable Growth 2026 ~人、心、そして未来へ~』も4年が経過した。当社グループの持続的成長・発展に向け、2026年度成長Vision「連結7,000億円規模の経営」のもと、地域密着・事業拡大に向けた「事業戦略」をはじめ、「環境戦略」「人財・働き方戦略」「コーポレート戦略」により、事業基盤の整備・拡大や労働・職場環境の整備等を進めてきた。これらの取り組みの結果、成長指標「売上高7,000億円程度・営業利益500億円程度」を2年前倒しで達成することができた。
計画開始からの4年間を振り返ると、他社に先駆けて「人的資本」を重視し、当社の強み・最も大切な経営資源である「人」を中心とした中期経営計画を基本として、人と心を経営の根幹に置き、新きんでん学園や首都圏新事業所をはじめ、人財を軸とした成長投資を進めてきた。また、資本政策の推進により、株価・企業価値も大きく高まった。今期の業績は、グループ全体が一丸となって事業基盤整備等に取り組み、そしてお客さまニーズにお応えしてきたことの成果であると考えている。
2025年度からの中期経営計画については、このように成長指標は達成したものの、中期経営計画の目的はあくまで「当社グループの持続的な成長と発展」である。2025年度以降も、この事業規模を維持していく、そして将来さらに伸ばしていく、そのために必要となる事業基盤の整備・拡充に引き続き注力していく。今年4月には株式会社北弘電社を新たな仲間として当社グループに迎え入れた。今後、更なる地域密着の深化・事業拡大を進めていく。また、財務面においては、今年1月にアップデートした資本政策に基づき、資本効率向上に取り組んでいく。さらに、ガバナンス改革・強化として、経営執行役員制度を導入し、監督と執行の役割を明確化し、ガバナンスを高めながら、意思決定スピードをさらに高めていく。
2025年度の建設市場は、今期に引き続き高水準で推移することが期待されるが、その一方で、建設コスト高騰や米国の関税政策等による投資抑制にも注視が必要な状況である。しかしながら当社は、引き続き、お客さまニーズにしっかりとお応えしながら、更なる高みを目指して取り組んでいく。そして、あらゆるステークホルダーと向き合い、価値を共創していくことで、持続的な成長・発展を目指していく。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
(1)中期経営計画の推進によるサステナビリティへの取り組み
当社グループにおけるサステナビリティに関する考え方は、企業理念のもと「環境に優しい、持続可能な、より良い社会」の実現への貢献に向けて、これからも「社会のインフラを支える企業」として持続的成長・発展していくことであり、そのために、2021年4月に「目指すべき経営の方向性」「目指す会社像」を設定した上で、その実現に向けて中期経営計画『Sustainable Growth 2026 ~人、心、そして未来へ~』を策定し、取り組みを進めている。
最も大切な経営資源は人財であるとの考えのもと、人と心を経営の根幹におき、長期的な視点に立ち、人財を中心とした事業基盤の整備・強化を進め、「事業戦略」「環境戦略」「人財・働き方戦略」「コーポレート戦略」を展開し、成長指標として『2026年度成長Vision:連結7,000億円規模の経営』を掲げ、持続的成長・発展に向けた取り組みを続けている。当社グループの持続的な事業運営上のリスクとなり得る要因や課題等については、ESG・SDGsの観点を踏まえたマテリアリティ(重点課題)とし、それらも踏まえたアクションプランを策定・実践している。戦略・課題毎に責任役員を定め、定期的なモニタリングや経営陣への報告プロセスを含め、PDCAサイクルをまわすことで、中期経営計画の実効性の確保及び向上を図っている。
(2)気候変動への取り組み
当社グループは、中期経営計画「環境戦略」において、事業活動におけるエネルギー使用抑制等、カーボンニュートラルに取り組んでおり、その一環としてTCFD提言への賛同を表明し、提言に基づく情報開示を行っている。
① ガバナンス
・当社グループにおける気候変動を含む事業活動に伴うリスクを適切なレベルに管理し、持続的な成長を実現するために、社長が任命した役員を委員長とした「リスク管理委員会」を設置している。
・リスク管理委員会は、リスクに関する事項を把握、評価し、必要に応じて業務執行箇所に対して改善指導を行っている。取締役会は、リスク管理委員会でのリスク管理状況について定期的に報告を受け、監督している。
・なお、当社では中期経営計画に基づき、カーボンニュートラル達成に向けての対策計画の策定・推進を目的として、社長が任命した役員を委員長とした「カーボンニュートラル推進委員会」を設置しており、カーボンニュートラル達成への進捗状況については、取締役会へ定期的に報告している。
② 戦略
シナリオの設定
・国際エネルギー機関(IEA)および、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)などを参照し、今世紀末までに産業革命以前と比較し世界の平均気温上昇が「1.5℃」と「4℃」の2つのシナリオにおける2050年の社会を想定し、各シナリオにおけるリスクと機会の分析を行った。
・「1.5℃シナリオ」・・・気候変動に対し厳しい対策が取られ、2100年時点において、産業革命時期比の気温上昇が1.5℃程度に抑制されるシナリオ
・「4℃シナリオ」 ・・・気候変動への厳格な対策が取られず、2100年時点において、産業革命時期比で4℃程度気温が上昇するシナリオ
・気候変動に関連する物理的リスク、移行リスクを適切に選定し、企業としての対策を策定することで、レジリエンスを高めていく一方、事業機会を特定し戦略的に取り組んでいる。ZEBをはじめとした建物の省エネ化に関わる工事需要拡大、再生可能エネルギー関連工事需要の拡大を移行リスク・機会として特定している。また、自然災害や気温上昇による労働環境や生産性への影響を物理リスク、災害に備えたインフラや建物のレジリエンスの必要性の高まりを事業機会として特定している。
|
シナリオ分析結果(1.5℃シナリオ) |
|||||
|
シナ |
|
気候関連事象 |
当社への影響 |
当社としての対応 |
|
|
1.5 |
リスク |
温室効果ガス排出抑制に関する規制強化 |
CO₂排出量の削減要請が高まる中で、当社の削減目標を達成できないこと |
中/長期 |
・事業所への環境関連投資(太陽光パネル設置、省エネ機器導入等)の推進 ・車両のEV化の推進 ・グループ会社が所有する風力発電所の活用促進(環境付加価値証書の活用) ・再生可能エネルギー由来の電力購入 |
|
顧客からの、環境に配慮した施工に対する要求の高度化 |
中/長期 |
・環境に配慮した低炭素資材・再生資材の調達推進 ・環境負荷の少ない新技術、新工法の開発 |
|||
|
ステークホルダーの環境意識向上や情報開示要求強化 |
当社のCO₂削減活動・情報開示対応不十分によるレピュテーションリスク |
中/長期 |
・目標達成に向けた具体的施策の確実な実施と、ステークホルダーへの適切な情報開示 |
||
|
機会 |
再生可能エネルギーの利用拡大 |
再生可能エネルギー関連工事需要の増加 |
中/長期 |
・風力、太陽光、バイオマス等、関連工事需要の増加に対応できる組織・体制の強化 ・当社の優位性を高めるための再生可能エネルギー関連工事に関する技術開発の促進、技術力の向上 |
|
|
建物の省エネ化 |
省エネ関連工事需要の増加 |
短/中期 |
・エネルギーマネジメントなど省エネに繋がる提案メニューの充実 ・顧客の持続可能な省エネ化に向けて、積極的な提案活動の実施 |
||
|
非化石燃料の |
化石燃料の電化促進に伴うインフラ工事(充電ステーションなど)需要の増加 |
中/長期 |
・新たな社会インフラに対応できる技術開発の促進、技術力の向上 |
||
|
シナリオ分析結果(4℃シナリオ) |
|||||
|
シナ |
|
気候関連事象 |
当社への影響 |
当社としての対応 |
|
|
4℃ |
リスク |
自然災害の激甚化 |
台風や水害等の自然災害被害による当社事業所機能の停止 |
中/長期 |
・当社事業継続確保に向けた確実なBCP対応 |
|
社会インフラやお客様の建物等の被害に対する緊急対応の増加 |
中/長期 |
・災害発生時に柔軟な対応ができる体制の維持 |
|||
|
気温上昇 |
酷暑期の現場作業における熱中症発生リスクの増大 |
短/中期 |
・暑熱対策の徹底による熱中症の未然防止 |
||
|
作業環境悪化による現場における作業効率の低下 |
短/中期 |
・作業者の疲労度軽減や作業安全に寄与する新工法、新工具の開発 ・施工効率向上に向けた工事部材のプレハブ化・ユニット化の推進 |
|||
|
機会 |
国土強靭化政策の |
防災・減災に向けた社会インフラの強靭化関連工事需要の増加 |
中/長期 |
・社会インフラ強靭化関連工事需要の増加に対応できる施工体制の構築 |
|
|
防災・減災に向けた建物のメンテナンス・リニューアル工事需要の増加 |
中/長期 |
・顧客のBCP対応に向けた技術開発の促進、技術力の向上 ・メンテナンス・リニューアル工事需要の増加に対応できる組織・体制の構築 |
|||
③ リスク管理
・当社グループの気候変動を含む事業活動に伴うリスクについては、業務執行箇所が自律的に管理することを基本とし、組織横断的リスク状況の監視及び全社的対応のために設置されたリスク管理委員会が、リスクを統括的に管理している。
・具体的には、各業務執行箇所がリスクを認識した上で、その影響度、発生可能性の観点から重要性を評価し、必要な対策を実施するとともに、対策後に評価を行い改善していく一連のプロセスを確立している。
・なお、リスク管理委員会は、適宜カーボンニュートラル推進委員会と連携し、必要な情報の共有を図っている。
④ 指標及び目標
・当社グループは、カーボンニュートラル推進委員会において、CO₂排出量を分析した上で、カーボンニュートラル達成に向けての対策計画を策定、推進している。
・地球温暖化対策推進法の遵守、当社の企業理念、中期経営計画に沿った環境戦略といった観点から、CO₂排出量削減への取組みは必須と考えている。その取組みに実効性を持たせるため、当社は、Scope1、2 の2030年度における削減目標を設定している。具体的には、2030年度にCO₂排出量2020年度比50%削減を目指す。
|
当社のCO₂削減目標 |
|
|
|
目標年 |
対象 |
削減率 |
|
2030年度 |
きんでん単体 Scope1、2 |
2020年度比 50% |
|
当社のCO₂削減実績 |
|
|
|
(単位:t-CO₂) |
|
|
|
2020年度 |
2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
2030年度 |
|
Scope1 |
|
|
|
|
- |
|
Scope2 |
|
|
|
|
- |
|
CO₂排出量 |
|
|
|
|
14,287 |
|
削減率 |
- |
△2.1% |
10.2% |
11.3% |
50% |
(3)人的資本
当社グループにおいて、最も大切な経営資源は人財であるとの考えのもと、人的資本の持続的な価値向上を図り、更なる成長・発展に向け、中期経営計画「人財・働き方戦略」に取り組んでいる。ダイバーシティ&インクルージョンを進め、多様な人財が活き活きと働き、その能力を最大限に発揮できるように、労働環境・職場環境の整備、エンゲージメント・モチベーション向上を図るとともに、生産性向上を含めた働き方改革を進めている。
① 戦略
<ダイバーシティ&インクルージョン>
・女性・外国人・高齢者・障がい者・中途採用等の多様な能力、価値観、発想を持った人財を活用することで、多様化、複雑化する顧客ニーズへの対応や業務の効率化を推進し、更なる企業価値向上、持続的成長・発展を目指している。性別、年齢、国籍、障がいの有無を問わず適性ある人財の採用や高齢者の継続雇用を積極的に行っており、社内における昇格・昇進等の処遇についても中途採用等による区別はなく、多様性の確保を進めている。
<人財育成>
・「企業の持続的成長・発展を支え、社会に貢献できる人財を育成する」の基本方針の下、長期的な視点に立ち、強固な事業基盤を継続、成長・発展させていくために、「必ずやり遂げる精神」を持つプロ集団を目指し、体系的な教育カリキュラムを策定し人財育成を実践している。
・また、未来を担う人財を確保・育成するための教育インフラ投資として、基幹教育施設「きんでん学園」を移転・建替えする計画を進めており、お客様から支持される「きんでんブランド」のさらなる確立に努め、社会インフラを支える企業として持続的成長・発展を目指している。
<社内環境整備>
・高い技術力を持った人財が活き活きと働けるように、人権意識の高い、ハラスメントがない風通しの良い職場整備を継続するとともに、やりがい・働きがい醸成に向け、エンゲージメント・サーベイの実施と1on1ミーティングをはじめとする様々な取り組みにより、コミュニケーション・相互理解を促進することで、更なるエンゲージメント・モチベーションの向上を目指している。
・また、「健康経営ビジョン」を策定し、従業員が心身ともに健康であり続け、一人ひとりがより活力を持って働けることが会社の持続的成長の源であるとの考えに立ち、2022年10月に「健康経営」を宣言した。引き続き、健康意識を高め行動変容につながるような健康維持・増進施策を実施していく。
・ハード面においても、人財を軸とした成長投資による事業基盤の整備・強化を行っており、快適性・機能性を備え、仕事がしやすく、社会の流れや変化にも対応できる、より快適な職場環境を実現するため、目指す事業所(あるべき姿)コンセプトを策定し、事業所リニューアル等を積極的に進めている。
② 指標及び目標
・ダイバーシティ&インクルージョンへの取り組みにおいて、特に女性の活躍推進に向け、女性技術職の採用人員を増やすとともに、女性の個性と能力が発揮できるステージを提供し、また仕事と育児等の両立を引き続き支援することにより、男女の勤続年数の差異が少ない状態を維持していく。
・従業員一人ひとりが活き活きと働き、その能力が最大限に発揮できるよう、定期健康診断及び再検査対象者の完全受診を維持し、疾病予防と早期発見に取り組む。
|
指 標 |
目 標 |
実 績 (当連結会計年度) |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりである。
当社グループは、リスクの管理体制を「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載のとおり整備し、リスク管理機能の強化を図っている。
なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社グループが判断したものである。
(1)経済状況
当社グループの営業収入のうち、重要な部分を占める電気設備工事の需要は、当社グループが受注している地域及び各国の経済状況の影響を受ける。当社グループでは「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、中期経営計画『Sustainable Growth 2026 ~人、心、そして未来へ~』を策定し、当社財産である「人と心」を経営の根幹に置き、人財を中心とした事業基盤の整備・強化を進めつつ、SDGs・ESGの観点も踏まえた「事業戦略」及び「環境戦略」「人財・働き方戦略」「コーポレート戦略」を展開している。
① 民間工事の価格競争の激化
受注における最大の要素が価格となっており、熾烈な価格競争が行われている。建設需要が低迷・縮小を続けた場合、価格競争がより一層熾烈化し、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性が生じることになる。
② 政府、自治体等官公庁の方針による建設投資抑制
政府、自治体等の建設投資抑制方針により、官公庁からの発注工事が減少した場合、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性が生じることになる。
③ 海外における経済情勢、法令・規則等の変更
当社グループは、海外のインフラ設備を中心とする海外工事にも積極的に進出している。海外工事においては、当該国の経済情勢の変化や法令・規則等に変更があった場合、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性が生じることになる。
④ 資材費及び外注費の高騰
予想以上の急激な為替変動等による資材価格及び外注労務単価の高騰は、工事の採算性を低下させることもあり、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性が生じることになる。
⑤ 関西電力グループの設備投資抑制
当社グループは、大口得意先である関西電力グループから配電工事・電力工事等を受注して施工を行っている。そのために施工員、工事用車両、機械器具、事業所等を保有しており固定的に費用が生じている。今後、設備投資が抑制されると、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性が生じることになる。
(2)得意先の倒産等による不良債権の発生
当社グループは、得意先と契約を締結して、契約条項に基づいて工事を施工し、入金を受けている。与信管理を強化しているが、得意先に倒産等があった場合、不良債権が発生することが予想され、多額の不良債権が発生すれば、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性が生じることになる。
(3)大規模自然災害及び感染症の発生
大規模自然災害や感染症の大流行により、当社グループの設備(社屋、車両、工事機材等)や従業員が被害を受けたり、あるいは経済・社会が混乱した場合、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性が生じることになる。
(4)機密情報の漏洩
当社グループは、事業活動を通じて得意先情報や個人情報等の機密情報を保有している。各情報の取扱いについては、法令等に則り適切に管理し、また情報セキュリティ確保に向けたシステムの構築及び従業員の意識向上に取り組んでいるが、外部からのサイバー攻撃等により機密情報が漏洩した場合、社会的信用の低下や損害賠償の発生等により、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性が生じることになる。
(5)気候変動
気候変動を含む環境課題への対応を重要な経営課題の一つと認識し、2022年5月にTCFD提言への賛同を表明するとともに、「TCFDの枠組みに基づく情報開示」の中で気候変動に関連するリスクを特定しているが、これらのリスクが顕在化した場合、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性が生じることになる。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりである。
①財政状態及び経営成績の状況
ア)経営成績
当社グループの完成工事高は、前連結会計年度に比べ505億4千2百万円増加し、7,050億5千8百万円(前期比7.7%増)となった。昨年度の豊富な受注を背景に、期首手持工事高が前期を上回る状況でスタートし、当期の受注も引き続き堅調に推移し、工事進捗も順調に推移したことにより、当社及び国内・海外子会社共に完成工事高は増加した。
完成工事総利益は、前連結会計年度に比べ252億2千2百万円増加し、1,328億3百万円(前期比23.4%増)となった。完成工事高が増加したことに加え、採算性の向上、及び原価低減努力の結果などによる。
販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ69億1千9百万円増加し、718億2千3百万円(前期比10.7%増)となった。ベースアップ等による人件費の増加、DX関連の情報システム関連費用が増加したことなどによる。
営業利益は、前連結会計年度に比べ183億2百万円増加し、609億7千9百万円(前期比42.9%増)となった。
経常利益は、前連結会計年度に比べ185億6千4百万円増加し、645億4千6百万円(前期比40.4%増)となった。
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ136億9千7百万円増加し、472億5千万円(前期比40.8%増)となった。
完成工事高及び各利益は、前連結会計年度を上回った。
イ)財政状態
(資産)
流動資産は、前連結会計年度末と比べ214億3千9百万円増加し、5,036億5千6百万円(前年度末比4.4%増)となった。
固定資産は、前連結会計年度末と比べ156億3千3百万円減少し、3,180億3千7百万円(前年度末比4.7%減)となった。株式売却や株価下落に伴う投資有価証券等の減少が主な要因である。
これらの結果、総資産は、前連結会計年度末に比べ58億6百万円増加し、8,216億9千3百万円(前年度末比0.7%増)となった。
(負債)
流動負債は、前連結会計年度末と比べ28億9千2百万円減少し、2,024億5千7百万円(前年度末比1.4%減)となった。
固定負債は、前連結会計年度末と比べ169億8千5百万円減少し、194億9千7百万円(前年度末比46.6%減)となった。退職給付に係る負債の減少が主な要因である。
これらの結果、負債合計は、前連結会計年度末に比べ198億7千8百万円減少し、2,219億5千5百万円(前年度末比8.2%減)となった。
(純資産)
株主資本は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上や剰余金の配当、自己株式取得の結果、前連結会計年度末と比べ226億5千3百万円増加し、5,289億1千7百万円となった。その他の包括利益累計額は、その他有価証券評価差額金の減少や退職給付に係る調整累計額の増加等により、前連結会計年度末と比べ30億9千4百万円増加し、701億2千6百万円となった。
また、非支配株主持分は6億9千4百万円となった。
これらの結果、純資産は、前連結会計年度末に比べ256億8千5百万円増加し、5,997億3千8百万円(前年度末比4.5%増)となった。なお、自己資本比率は、前連結会計年度末より2.6ポイント上昇し、72.9%となった。
②キャッシュ・フローの状況
営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等の支払等があったものの、税金等調整前当期純利益の計上等により、245億4千5百万円のプラス(前期は385億2千万円のプラス)となった。
投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の取得等があったものの、有価証券及び投資有価証券の売却及び償還等により、36億5百万円のプラス(前期は221億7千9百万円のマイナス)となった。
財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得や配当金の支払等により、249億7千6百万円のマイナス(前期は159億7千8百万円のマイナス)となった。
以上の結果、現金及び現金同等物は、前連結会計年度末より41億4千4百万円増加(前期は10億4千万円増加)し、1,846億6千2百万円となった。
③生産、受注及び販売の実績
当社グループが営んでいる事業の大部分を占める設備工事業(建設事業)では生産実績を定義することが困難であり、設備工事業(建設事業)においては請負形態をとっているため販売実績という定義は実態にそぐわない。
なお、当社グループにおける受注及び販売の実績の大部分を提出会社が占めているため、提出会社個別の状況を参考のため記載すると、次のとおりである。
設備工事業(建設事業)における受注工事高及び完成工事高の状況
a.受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高
|
期別 |
工事種別 |
前期繰越 工事高 (百万円) |
当期受注 工事高 (百万円) |
計 (百万円) |
当期完成 工事高 (百万円) |
次期繰越 工事高 (百万円)
|
|
第110期 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
配電工事 |
14,301 |
72,957 |
87,258 |
73,969 |
13,289 |
|
一般電気工事 |
339,134 |
368,922 |
708,056 |
372,944 |
335,112 |
|
|
情報通信工事 |
23,924 |
44,715 |
68,639 |
52,032 |
16,607 |
|
|
環境関連工事 |
39,513 |
52,097 |
91,611 |
41,421 |
50,189 |
|
|
電力その他工事 |
31,526 |
21,723 |
53,250 |
19,586 |
33,664 |
|
|
計 |
448,400 |
560,416 |
1,008,816 |
559,954 |
448,862 |
|
|
第111期 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
配電工事 |
13,289 |
78,384 |
91,673 |
77,150 |
14,523 |
|
一般電気工事 |
335,112 |
421,762 |
756,874 |
404,667 |
352,206 |
|
|
情報通信工事 |
16,607 |
43,810 |
60,418 |
44,594 |
15,823 |
|
|
環境関連工事 |
50,189 |
49,618 |
99,808 |
49,186 |
50,621 |
|
|
電力その他工事 |
33,664 |
25,585 |
59,249 |
20,319 |
38,929 |
|
|
計 |
448,862 |
619,160 |
1,068,023 |
595,918 |
472,105 |
(注)1 前期以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含む。したがって、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれる。
2 次期繰越工事高は(前期繰越工事高+当期受注工事高-当期完成工事高)である。
b.受注工事高の受注方法別比率
工事の受注方法は、特命と競争並びに関西電力株式会社または関西電力送配電株式会社との配電関係工事請負契約によるものに大別される。
|
期別 |
特命 |
競争 |
請負契約 |
計 |
|||||
|
(百万円) |
(%) |
(百万円) |
(%) |
(百万円) |
(%) |
(百万円) |
(%) |
||
|
第110期 |
(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
246,498 |
43.9 |
244,131 |
43.6 |
69,787 |
12.5 |
560,416 |
100.0 |
|
第111期 |
(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
264,237 |
42.7 |
279,950 |
45.2 |
74,972 |
12.1 |
619,160 |
100.0 |
c.完成工事高
|
期別 |
得意先 |
完成工事高 |
||
|
(百万円) |
(%) |
|||
|
第110期 |
(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
関西電力株式会社(注) |
81,542 |
14.5 |
|
株式会社大林組 |
61,681 |
11.0 |
||
|
官公庁 |
16,073 |
2.9 |
||
|
一般民間会社 |
400,656 |
71.6 |
||
|
計 |
559,954 |
100.0 |
||
|
第111期 |
(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
関西電力株式会社(注) |
85,302 |
14.3 |
|
株式会社大林組 |
67,641 |
11.4 |
||
|
官公庁 |
15,731 |
2.6 |
||
|
一般民間会社 |
427,242 |
71.7 |
||
|
計 |
595,918 |
100.0 |
||
(注)関西電力株式会社には関西電力送配電株式会社を含む。
また、第110期及び第111期の完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先は、関西電力株式会社及び株式会社大林組のみである。
〇第110期完成工事のうち5億円以上の主なもの
|
注文者 |
工事名 |
工事場所 |
|
日本銀行 |
日本銀行金沢支店営業所新築電気設備工事 |
石川県 |
|
鹿島建設㈱ |
JASM新築工事のうちCUP棟電気設備工事 |
熊本県 |
|
㈱大林組 |
京都競馬場整備に伴う電気設備工事(スタンド工区) |
京都府 |
|
清水建設㈱ |
(仮称)大阪医誠会国際総合病院新築に伴う電気設備工事(北棟) |
大阪府 |
|
juwi自然電力㈱ |
パシフィコ・エナジー三田メガソーラー発電所自営線工事一式 |
兵庫県 |
〇第111期完成工事のうち5億円以上の主なもの
|
注文者 |
工事名 |
工事場所 |
|
大成建設㈱ |
虎ノ門2丁目地区(再)特定業務代行施設建築物建設工事(電気設備工事) |
東京都 |
|
㈱竹中工務店 |
NHK放送センター建替に伴う電気設備工事 |
東京都 |
|
法務省 |
大阪医療刑務所新営(電気設備)工事 |
大阪府 |
|
㈱大林組 |
うめきた2期区域開発事業のうち南街区賃貸棟建設に伴う電気設備工事 |
大阪府 |
|
関西電力送配電㈱ |
須原大井線№31~№40(木曽幹線併架)改良工事・これに伴う除却工事 |
長野県 |
d.手持工事高(2025年3月31日現在)
|
得意先 |
手持工事高 |
|
|
(百万円) |
(%) |
|
|
関西電力株式会社 |
28,223 |
6.0 |
|
官公庁 |
29,428 |
6.2 |
|
一般民間会社 |
414,452 |
87.8 |
|
計 |
472,105 |
100.0 |
(注)関西電力株式会社には関西電力送配電株式会社を含む。
〇手持工事のうち5億円以上の主なもの
|
注文者 |
工事名 |
工事場所 |
完成予定年月 |
|
国土交通省 |
新たな国立公文書館・憲政記念館新築(R6)電気設備工事 |
東京都 |
2029年3月 |
|
鹿島建設㈱ |
世界貿易センタービルディング新本館・ターミナル新築電気設備工事 |
東京都 |
2027年3月 |
|
最高裁判所 |
大阪高地簡裁庁舎電気設備改修工事 |
大阪府 |
2028年3月 |
|
㈱大林組 |
(仮称)GSユアサ横江工場建設電気設備工事 |
滋賀県 |
2026年9月 |
|
関西電力送配電㈱ |
若狭幹線改良工事(第一期)2工区ならびに除却工事 |
滋賀県 |
2027年1月 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績は、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりである。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因としては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであり、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載している各要因が、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があると認識している。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの資本政策については、下記のとおりである。
資本政策について ~株主資本コストを上回るROEの確保~
当社の財務ポリシー「安定した財務基盤」を堅持しつつ、中期経営計画に基づき、当社の持続的成長・発展に必要となる「人財を軸とした成長投資」を実行することで、“きんでんブランドの向上”、中長期的なReturnの成長を図り、また、配当水準の段階的向上等のEquityの効率化により、株主資本コストを上回るROEを確保する。
当社グループの資金需要のうち主なものは材料費、外注費等の施工に係る工事原価、販売費及び一般管理費等の営業経費である。また、投資を目的とした資金需要のうち主なものは設備投資等である。当連結会計年度の固定資産の取得による支出額は134億8千3百万円であり、その主なものは、首都圏新事業所に関する支出や、建物、工事用車両及び機械・工具の購入等であった。
今後の投資については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の「きんでんグループ中期経営計画」に記載のとおり、利益創出能力の強化のため、事業基盤投資(首都圏新事業所800億円規模)、教育インフラ投資(新教育関連施設400億円規模)、成長領域への投資(事業出資・M&A等200億円規模)など、当社の持続的成長・発展に必要となる「人財を軸とした人財投資」を実行する方針である。
株主還元については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の「きんでんグループ中期経営計画」に記載のとおり、配当水準の段階的向上(2023~2026年度の総額において配当性向40%を目安)及び財務状況等に応じた更なる株主還元強化(機動的な自己株式取得)(2023~2026年度の総額において総還元性向50~60%を目安)を実行し、株主還元強化による自己資本の効率化を進めていく。当政策に基づく当連結会計年度の年間配当金は、1株当たり90円を予定しており、連結配当性向は38.1%、配当金総額は179億4千万円となる見込みである。また、当連結会計年度の自己株式取得額は、80億2百万円となり、連結総還元性向は、54.9%となった。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、主に自己資金及び営業活動によるキャッシュ・フローを基本としている。当連結会計年度においては、営業活動によるキャッシュ・フローは245億4千5百万円の資金増加となり、当連結会計年度末の現金及び現金同等物残高は1,846億6千2百万円となった。この現金及び現金同等物は、主に普通預金、定期預金及び有価証券(譲渡性預金)であり、流動性及び安全性を確保している。
また、当連結会計年度末の株主資本は、5,289億1千7百万円となり、前連結会計年度末と比較し、226億5千3百万円増加した。自己資本比率については、前連結会計年度末より2.6ポイント上昇し72.9%となった。
以上のような資金及び資本の状況から、現時点において当社グループは、円滑に事業活動する上で必要な資金の流動性及び財務の健全性を確保していると認識している。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであり、中期経営計画の成長指標である「売上高7,000億円程度・営業利益500億円程度」を2年前倒しで達成したものの、中期経営計画の目的はあくまで「当社グループの持続的な成長と発展」である。2025年度以降も、この事業規模を維持していく、そして将来さらに伸ばしていく、そのために必要となる事業基盤の整備・拡充に引き続き注力していく。そして、あらゆるステークホルダーと向き合い、価値を創造することで、持続的な成長・発展を目指していく。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容については、当社の報告セグメントは設備工事業(建設事業)のみであり、当社グループにおける受注及び販売の実績の大部分を提出会社が占めているため、参考として、提出会社個別の事業の状況について記載する。
(個別の完成工事高)
完成工事高は、前期より359億6千4百万円増加し、5,959億1千8百万円(前期比6.4%増)となった。
得意先別は、関西電力㈱(関西電力送配電㈱を含む)が前期より37億6千万円増加し853億2百万円(前期比4.6%増)、関西電力グループが前期より3億8千1百万円減少し161億1千7百万円(前期比2.3%減)となり、一般得意先は前期より325億8千5百万円増加し4,944億9千7百万円(前期比7.1%増)となった。
工事種別は、配電工事が前期より31億8千万円増加し771億5千万円(前期比4.3%増)、一般電気工事が前期より317億2千2百万円増加し4,046億6千7百万円(前期比8.5%増)、情報通信工事が前期より74億3千7百万円減少し445億9千4百万円(前期比14.3%減)、環境関連工事が前期より77億6千5百万円増加し491億8千6百万円(前期比18.7%増)、電力その他工事が前期より7億3千3百万円増加し203億1千9百万円(前期比3.7%増)となった。配電工事の増加の主な要因は、関西電力送配電㈱の工事量が増加したこと、一般電気工事の増加の主な要因は、工場等が増加したこと、情報通信工事の減少の主な要因は、携帯電話関連やCATV設備等が減少したこと、環境関連工事の増加の主な要因は、工場等が増加したこと、電力その他工事の増加の主な要因は、架空送電工事等が増加したことによる。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりである。
当社は、2025年2月28日開催の取締役会の決議に基づき、2025年4月1日付で、三菱電機株式会社から株式会社北弘電社の発行済株式の全てを取得し、連結子会社とした。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりである。
当社グループにおいては、社会並びに顧客の複雑化、多様化するニーズに対応するとともに、安全、高品質、効率的施工の実現のために、工法・工具の改善から新技術の研究まで幅広い技術・技能の研究開発活動を行っている。
当連結会計年度における研究開発費は
当連結会計年度における当社グループの研究開発活動の主な結果は、次のとおりである。
(設備工事業)
(1)プラントサイン照明システム
従来、危険物などを製造するプラント現場においては、点検が必要な場所は図面と現地の機器番号を頼りに確認しており、直感的にわかりにくいものであった。
そこで、保守員がより確認しやすいよう、デジタル技術を用いて照明器具により視覚的にアピールする「プラントサイン照明システム」を開発した。
このシステムでは、白色LEDによる照明をベースに、赤色LED・橙色LEDを点滅させて、危険な場所が視覚的にわかる他、災害時には照明を避難方向へ流れるように順次点灯させて、人を誘導することができる。
さらに、当社の監視制御システム(フェイシャス)と連動することで、設備や装置の異常への早期対応、タブレット等のモバイル端末からの照明操作、遠隔監視を実現した。
(2)77kV CVケーブル外導削り器電動回転ユニット
従来、77kVのCVケーブル終端接続箱(※1)の組立工程では、CVケーブルを外部半導電層(※2)まで削り取った状態で切削工具を挿入し、刃体の深さを調整しつつ回転させながら、ミリ単位の規定寸法に外部半導電層や絶縁層を手動で切削していた。環境条件に応じて切削する長さが異なるが、約1.2~1.7mの切削作業は最短でも30分程度は必要であった。高所である送電鉄塔上で長時間行う精緻な作業は、精神的かつ身体的負担が大きく、作業の電動化が強く望まれていた。
そこで、「77kV CVケーブル外導削り器電動回転ユニット」を開発した。長年現場で使われ、作業性および施工品質共に実績がある切削工具に、今回開発した回転ユニットを組み合わせ、市販の充電式ドライバドリルを活用することで、切削作業の電動化を実現した。
結果、開発した工具は施工品質を担保したまま、作業時間の30%程度を削減することができ、身体的負担の軽減を実現した。
※1 架空送電線や変電所の母線(主回路となる導体)などをケーブルと接続するケーブル端末装置の総称
※2 ケーブル内部の絶縁体を覆う層で、電界の方向を均一にして耐電圧特性を高める役割を果たす
(特 徴)
・充電式ドライバドリルで回転速度の調整が可能で、操作が容易
・手動と電動を使い分け規定の寸法通りに削り取りが可能
・電動回転ユニットを碍管設置架台の下部に通して規定の削り取りが可能
(仕 様)
・サイズ:[W]214mm×[D]325mm×[H]157mm
・重 量:約3,205g