文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社は、「高い技術をもって、社業の発展を図り、健全な経営により社会的責任を果たす。」を社是に掲げ、着実な経営計画により競争に打ち勝ち、誠実な施工で永い信用を築くことにより、皆様の信頼と期待にお応えし、皆様と共に発展して行くことを経営理念に据えております。
当期における我が国経済は、個人消費の一部に足踏みが残るものの、雇用・所得環境の改善や設備投資の持ち直しの動きがみられるなど、緩やかに回復が続きました。一方、物価上昇の継続、米国の政策動向、金融資本市場の変動等により、景気の先行きは不透明な状況が続いております。
建設市場においては、資機材価格の高騰や労務費上昇の影響は依然として注視する必要があるものの、公共投資については堅調に推移しており、2021~2025年度までの「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」および今後も見込まれる防災・減災対策、防衛力強化に伴う安全保障関係のインフラ整備等により、将来的にも堅調な市場の成長が期待できる状況にあります。
(3)中長期的な会社の経営戦略並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、長期ビジョン〈TOA2030〉の実現に向け、事業戦略と人材戦略の融合を基本方針とした「中期経営計画(2023~2025年度)」に基づき、各事業部門において下記重点施策を掲げ、事業目標の達成を目指してまいります。
本中期経営計画を着実に推進していくことで、事業拡大を推進する組織作りと人材成長の両立による企業価値を持続的に向上させるサイクルを構築し、さらに、部門間の連携強化により組織力の最大化、新規事業を含めた新たなビジネスモデルへの果敢な挑戦により、長期ビジョン「社会を支え、人と世界をつなぎ、未来を創る」の実現を達成し、社会的責任を果たしてまいります。
これらの計画を着実に実行していくことにより、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図ってまいります。
なお、次期は「中期経営計画(2023~2025年度)」の最終年度であることから、期中において新たな中期経営計画を策定し公表する予定です。
◆長期ビジョン〈TOA2030〉
社会を支え、人と世界をつなぎ、未来を創る
◆中期経営計画(2023~2025年度)の基本方針
長期ビジョンを実現する事業戦略と人材戦略の融合
●各事業部門の重点施策(抜粋)
(経営企画本部)
・IR活動の強化
・ESG課題のキャッチアップ
・デジタル化推進による生産性の向上と働き方改革の達成
・脱炭素社会の取組み加速
・高度なガバナンス体制とコンプライアンス精神による安全で高品質な社会資本の提供
(国内土木事業)
・保有作業船の戦略的活用の推進
・ECI対応や企画提案力の強化
・技術力継承・リスク対応力の強化
・防衛、米軍の事業量拡大
・国土強靱化への取り組みや老朽化した港湾インフラの維持・更新
・陸上工事の技術継承強化
(国内建築事業)
・得意分野(倉庫物流、住宅、福祉、PFI)強化と優良顧客の継続維持
・臨海部に強みを持つ土木の顧客情報を生かした工場等での能力発揮
・BIMをプラットフォームとして活用した生産性向上
・オフィス、医療福祉分野の取り組み強化
・地方都市部の再開発、PPP/PFI事業への土建協業
・カーボンニュートラルの推進に向けた検討実施
(海外事業)
・ODA案件以外にも拡大し、一層の多工種化を推進
・現地建設会社との協業
・ナショナルスタッフの活躍による組織力の一層の強化
・現地資本工事・建築工事拡大に向けた現地法人の設立
・PPP、設計施工、バイヤーズクレジット活用
(管理部門)
・資本政策の検討
・ダイバーシティ&インクルージョンの実現
・計画的なプロフェッショナル人材の確保と育成
・長期的な人材の活躍を後押し
・人的資本経営の質・量双方の課題解決に向けた諸施策
なお、前連結会計年度において、当社の連結子会社である信幸建設株式会社の複数の従業員が、当該会社の外注先である取引業者と共謀して、架空・水増し工事代金等を支払った上で、その代金の一部を従業員らが自らに還流し着服していたことが判明いたしました。社内調査委員会の調査結果及び再発防止に向けた提言を真摯に受け止め、再発防止策を検討・策定し、2023年12月21日に公表いたしました。
当社及び信幸建設は再発防止策を着実に実施しており、当社としてその他の連結子会社のガバナンスのモニタリングも強化しております。
今後、決して不正行為を繰り返さないよう内部統制システムやコンプライアンス体制を一層強化するとともに、当社グループの役員・社員が一丸となって、再発防止策の具体的な施策に取り組んでまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、今後の環境変化により実際の結果と大きく異なる可能性があります。
(1)サステナビリティ全般に関する基本方針と取組
当社グループは、「Blue Green(青い海と青い空、そして緑あふれる街)」「Resilience Smart(安全・安心な街、そして快適な都市環境を整備)」「Well-being Social-Responsibility(社会から信頼され、社員からも愛される企業へ)」を「私たちが創るサステナブルな未来」として描き、その実現に向けて下記のESG経営基本方針をサステナビリティの基本的な考え方としております。
<ESG経営基本方針>
当社グループは、E(環境)・S(社会)・G(ガバナンス)に関する社会的責任を果たし、持続的な企業価値向上を実現するためのESG経営を推進し、SDGsに貢献してまいります。
当社グループの全社的なESG活動の推進のため、「ESG委員会」を設置しております。委員会は社長を委員長とし、副社長2名、本部長6名、常勤監査等委員である取締役、監査等委員である社外取締役1名で構成されます。「ESG委員会」は年2回開催され、ESG活動に関する基本的な方針や具体的な行動計画の立案、活動実績のレビュー、施策等を審議しております。委員会の審議結果は取締役会に報告されるとともに、重要決定事項は事業部門(支店を含む)およびグループ会社に伝達され、グループ一体でのガバナンス体系を構築しております。

※2025年6月27日開催予定の定時株主総会の議案(決議事項)として、「取締役(監査等委員であるものを除く)5名選任の件」及び「監査等委員である取締役4名選任の件」を提案しており、当該議案が承認可決された場合の体制図であります。
当社グループでは、リスクマネジメント体制図に示すように、3つのラインからなるリスク管理体制を構築しております。第1線では、本社・支店各主管部署、グループ会社が、年1回見直されるリスク一覧を基に、期首に主管するリスク項目への対応策を立案し、リスク管理を遂行しております。第2線では、グループ全体のリスクを網羅的に把握するリスクマネジメント小委員会が、グループ内のリスク対応状況や外部環境情報などを基に、ESG委員会に報告・改善案などを提案するほか、第1線のリスク管理を支援しております。ESG委員会では、当社グループのリスク管理に関する方針、体制を審議しております。また、リスク一覧の見直しや対策指示などを行い、状況を取締役会に報告しております。さらに、第3線の内部監査室は、第1線と第2線から独立した立場から、適正なリスク管理が遂行されるよう連携し、取組み状況を取締役会に報告しております。

Ⅲ.戦略
■中期経営計画(2023~2025年度)
当社グループは、長期ビジョン<TOA2030>「社会を支え、人と世界をつなぎ、未来を創る」を実現するため、中期経営計画(2023~2025年度)において事業戦略と人材戦略の融合を基本方針としました。これにより、事業拡大を推進する組織作りと人材成長(育成)の両立を図ってまいります。
高度なガバナンス体制とコンプライアンス精神を根底に置き、環境・人権・パートナーシップそれぞれの価値を重視し、社員を含むすべてのステークホルダーの幸福度を高めるために、ESG経営を更に深化させ、社会資本整備を通じてサステナブルな社会に貢献してまいります。
■重要課題(マテリアリティ)
当社は、社会(ステークホルダー)にとっての重要度・関心度と、当社経営にとっての重要度を考慮して年1回見直しております。2024年度においては、環境課題を改めて整理し、同年に策定した当社グループの環境行動規範と呼応する形とし、また社会やガバナンスの重要課題についても粒度をそろえ、5つの重要課題を特定しております。中期経営計画や行動計画との連動を図り、さらにSDGsとの関連を踏まえて課題解決に取り組み、持続可能な社会の実現を目指しております。

Ⅳ.指標及び目標
当社では、重要課題(マテリアリティ)の解決に向けた重要指標(KPI)と目標を設定しております。重要課題に紐づけて設定した重要指標の目標達成状況を毎年度確認し、結果に応じてアクションプランや重要指標、達成目標を見直すなど、PDCAサイクルによる継続的な改善を行っております。
<統合報告書> https://www.toa-const.co.jp/esg/report.html
※2025年8月発行の「統合報告書2025」でより詳細なサステナビリティ情報開示を行う予定であります。
(2)気候変動への取組(TCFD提言に沿った気候変動関連の情報開示)
気候変動問題は世界的に取り組まなくてはならない喫緊の課題であり、なかでも建設業が果たすべき役割は非常に重要であると考えております。当社では、TCFD提言に沿った気候関連の情報開示を拡充し、企業価値の向上を図りながら、事業を通じて社会の持続可能な発展に貢献してまいります。
Ⅰ.ガバナンス
気候変動に関するガバナンスは、当社グループのESG経営に関する基本方針に組み込まれております。詳細については「(1)サステナビリティ全般に関する基本方針と取組 Ⅰ.ガバナンス」を参照ください。
Ⅱ.戦略
TCFD提言に基づき、当社グループにおけるリスクおよび機会を特定・評価し、気候関連問題が事業に与える影響を把握するため、短期・中期・長期のすべての視点を踏まえてシナリオ分析を実施しております。なお、シナリオ分析にあたり、以下の代表的なシナリオを採用しております。
■気候関連の主なリスクおよび機会と対応策
(1.5℃または4℃のいずれかのシナリオで影響度を「大」と評価したリスク・機会のみ記載)
本シナリオ分析の結果に基づき、具体的な対応策として、施工段階でのCO2排出量低減、建築物のZEB/ZEH化の推進、洋上風力発電事業への参画に向けた取組み、インフラの防災・減災やリニューアルに資する技術開発などに戦略的に取り組み、財務への負の影響を抑制するとともに、事業機会の最大化に努めております。
Ⅲ.リスク管理
気候変動に関する主なリスクは、当社グループのESG経営におけるリスクとして管理しております。詳細については「(1)サステナビリティ全般に関する基本方針と取組 Ⅱ.リスク管理」を参照ください。
Ⅳ.指標及び目標
当社はESGに関する取組みにおける重要指標(KPI)を策定しその状況をモニタリングしております。重要指標(KPI)の一つとして、今後の気候関連リスク・機会の影響を鑑みて、温室効果ガスの排出総量(Scope 1+2、Scope 3)を指標とし、SBTに基づいた削減目標を策定しております。また、Scope 1+2について、2050年度までに実質排出ゼロとする目標を設定しております。温室効果ガスの排出総量は、気候関連のリスク・機会の影響を受ける直接的なパラメーターとして管理し、具体的な削減対応を進めてまいります。
■指標/目標(排出総量)
※該当箇所の目標は、SBTのWB2℃目標としてSBTiに認定されております。(2022年9月)
■温室効果ガス排出量実績値
当社グループの温室効果ガス排出量(Scope1,2,3)の集計結果は下表のとおりです。
※Scope 1,2,1+2の1千t-CO2未満、Scope 3の10千t-CO2未満は切り捨てて表示しております。また、2024年度のScope 3は、現在データ集計及び算出中であります。
(3)人的資本政策
Ⅰ.ガバナンス
人材戦略に関する重要事項については、取締役会の監督の下、権限委任された社長がトップを務める経営会議において、具体的な課題や施策に関する審議と決定、進捗確認を行っております。また、事業規模と要員構成のシミュレーション、IT人材や外国籍社員の採用など、部署間の事前協議が必要なテーマに関しては、部署横断で情報を共有し議論しております。
取締役および執行役員の指名・報酬に関しては、取締役会の諮問機関として指名報酬委員会を設置しております。選任手続き、報酬決定手続きの公平性・透明性・客観性を確保するため、社外取締役を委員長とし、5名の委員のうち過半数を社外取締役が占める当委員会で審議し、取締役会に対して提案・提言を行っております。
Ⅱ.戦略
当社は、長期ビジョン<TOA2030>において「社会を支え、人と世界をつなぎ、未来を創る」を掲げております。その実現には、社員一人ひとりが多様な専門性を持ち、社会課題に挑戦し続けることが不可欠であることから、長期ビジョン達成のための行動指針を定めるとともに、「人材育成基本方針」及び「職場環境整備方針」に基づいた取組みを行っております。なお、連結子会社においても、ESG経営基本方針に基づいて多様な人材の育成と活躍推進に取り組んでおりますが、具体的な数値目標を設定していない等、当社グループにおける記載が困難なことから、本項の指標・目標については提出会社のものを記載しております。
■長期ビジョンを達成するための行動指針
当社は、長期ビジョン<TOA2030>を達成するため、社員の行動指針を策定しております。この指針は「しなやかさ」「自分らしさ」「俊敏さ」「一歩先へ」の4つの要素から成り立っております。
・しなやかに!:世の中の変化に対して、過去にとらわれない柔軟さを持ち続けます。
・自分らしく!:自分のなりたい姿を見つけ、実現するために志を持って行動します。
・俊敏に! :時代の流れに瞬時に反応し、すばやく決断・行動します。
・一歩先へ! :今よりも明日をより良いものにするために、日々挑戦し続けます。
この行動指針に沿って、各種人事施策を策定・実行しております。
■中期経営計画を支える人材戦略
2030年の目指す姿に向け、中期経営計画(2023~2025年度)では、「部門間の連携強化による組織力の最大化」及び「新規事業を含めた新たなビジネスモデルへの挑戦」が不可欠であるととらえ、これらを実現するために事業戦略と人材戦略の融合を図っております。また持続的な企業価値向上の基盤として「働きがいのある職場」「ダイバーシティ推進」「事業部門ごとの採用・育成権限の強化」を重要テーマとして挙げ、人材育成基本方針、職場環境整備方針に基づき、次代を担う多様な人材の確保と成長を実感できる育成環境の整備を進めております。
■人材育成基本方針
・性別や国籍、年齢などの属性にとらわれない多様性と包摂を備え、従来の画一な人材育成とは異なる、個人の適性や能力に応じたセミオーダー型の人材育成を目指します。
・当社の将来の事業環境、事業ポートフォリオなどを想定した、計画的なプロフェッショナル人材の確保、育成を行います。
・多様な価値観を受け入れる組織文化、職場環境を構築し、個々のリスキリングなどを通じて、ライフサイクル全体を通じた長期的な人材の活躍を後押しします。
<具体的な取組み及び指標・目標>
当社では人材育成基本方針に基づき、以下の重点項目に沿った施策を進めております。
①計画的かつ長期的な要員計画
当社は2030年度にグループ全体社員数2,210人以上(2024年度末時点で2,052人)を目標としております。全従業員が対象のリクルーター制度、インターンシップの強化、退職後に得た知識や経験を活かして再び当社で活躍してもらうための「カムバック採用」などを通じ、新卒及びキャリア採用を計画的・安定的に行ってまいります。
※新卒総合職は2025年4月1日時点で104人が入社しております。
②多様性、協調性、自発性が存在する組織文化の醸成
多様な属性を持った社員が、互いに理解し認め合い、それぞれの知識と経験を掛け合わせることで生まれるイノベーションが企業価値を高めると考えております。そのために多様な人材の計画的な採用と、能力を発揮できる環境整備に取り組んでおります。
a.女性の活躍推進
当社では課長以上の役職に就くことのできる職位を「準幹部職」「幹部職」としておりますが、2030年度までに女性の準幹部職および幹部職に30人以上(2024年度末実績11人)を登用することを目指しております。建設業は歴史的に女性の就業者数が少なく、当社においても2024年度末現在、女性総合職(地域限定総合職を含む)比率は11.2%にとどまっております。女性の採用数拡大を図るとともに、リーダーシップ研修等の施策を通じ、人材プールの充足を進めております。また主に定型的な業務を担う一般職従業員に対し、地域限定総合職制度を2024年度から導入しております。これまでに約9割の一般職が総合職に転換しております。今後、ジョブローテーションや教育の機会を増やし、より高いレベルの業務で活躍できるように支援をしてまいります。
多様な人材の活躍推進に向けた意識啓発を目的とし、2024年度は管理職層の一部にアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)に気づき、対処するための研修を行っております。今後も受講対象を拡大して実施し、多様な人材が活躍できる企業風土を醸成してまいります。
b.多様な人材の採用と登用
知と経験のダイバーシティを実現するため、外国籍社員やキャリア採用、障害者の採用・登用にも積極的に取り組んでおります。国際事業本部では、日本語能力に関係なく外国籍社員が活躍できるよう、国内の職場でも日本語と英語の併記を標準としております。また将来的に国内部門での勤務や幹部職への昇進を見据え、日本語教育も提供しております。
フィリピンにおいてエンジニアの日本語習得を支援する取組みも2024年度から開始しております。現地で日本語教育を実施した後に、当社とエンジニア双方の合意により日本に招聘し、契約社員として雇用するもので、日本国内の建設工事現場で活躍してもらうことを期待しております。
※障害者雇用率は、障害者雇用促進法に基づき各事業年度6月1日時点のものを表示しております。
c.シニア社員の活躍推進
定年を迎えた後も働きたいと希望する従業員に対して、雇用を継続し、シニア社員として活躍できる機会を提供しております。直近3年間は約9割の従業員が雇用を継続し、多くのシニア社員が定年後も豊富な経験を活かして働いております。
③若手従業員を中心とした早期プロフェッショナル化
若手技術職員にとって一つの目標である現場所長としての業務遂行能力を早期に身につけるため、2024年度からスキルマップを導入しております。土木技術者は158項目、建築技術者は238項目からなる独自のスキル項目を作成し、必要なスキルを明確化しております。若手従業員と上司が対話しながら習得度合いを確認し、不足しているスキルを可視化したうえで、自発的な習得につなげてまいります。
④組織人としての役割を果たすためのスキル向上
変化の激しい時代には、社員一人ひとりが多様な専門性を持ち、社会課題に挑戦し続けていくことが不可欠です。絶えず学び、成長を続ける人材を育成する仕組みの構築に取り組んでおります。
a.経営人材の育成
次世代を担う人材の育成は、当社の持続的な成長と新たな価値創造のために非常に重要なテーマであると認識し、経営人材育成計画の再整備を進めております。2024年度には準幹部職・幹部職に昇格する際の階層別研修の内容を一新し、課題解決のスキルや組織ビジョンを考える力を育むプログラムを取り入れております。今後はより長期にわたって専門的な経営スキルを学ぶ選抜型研修の実施も計画しており、これらを継続していくことで、経営人材プールの充足を図ってまいります。
b.リスキル/リカレント教育の機会提供
教育を通した育成については、仕事を通じて日常業務の知識・技術を習得するOJTをベースに、新入社員研修、階層別研修、職能別研修を柱とした社内教育研修を行っております。また社員の自律的な成長に向けた取組みを会社として支援することを目的に、リスキル/リカレント教育の機会を整備、提供しております。2024年度は55歳以上の従業員を対象としたキャリア支援研修を新たに実施しました。自身の経験で培ったキャリア資産を整理し、シニア期以降も会社の成長に貢献するための意欲醸成につなげてまいります。
■職場環境整備方針
~社会から信頼され、社員からも愛される企業へ~
当社は活き活きと誇りをもって働ける職場環境づくりとして、会社のあるべき姿を「人が集まる会社」と定め、社員の幸福度を向上させるとともに、関わるすべての人が幸せになる環境整備に取り組んでおります。また、こうした活動を通し、社会から信頼される企業となり、社会的責任を果たしてまいります。
<具体的な取組み及び指標・目標>
当社では職場環境整備方針を実現するため、以下の重点項目に沿った施策を進めております。
①社員エンゲージメント
社員個人の幸せと会社の幸せが連動し、ともに成長していける仕組みを構築することが組織力を高め、企業価値の向上につながると考えております。そのためには社員が企業理念に共感し、やりがいのある仕事を通して成長し続けられること、仕事へのモチベーションを維持できることが重要であります。これらを定期的に調査・分析することで、人事施策に反映してまいります。
2024年度から社員が職場や身の回りにおいて感じることのできる幸福度を測定する「幸福度診断」を開始するとともに、ワークショップ等を通じて、仕事を通じた幸せエピソードを共有する場を設けました。今後も診断を継続するとともに、幸福度向上に向けた取組みを広げてまいります。
また、当社の持続的な成長と社員のイノベーション創出力を高めるべく、2022年度に導入した社員提案制度「チャレンジNext」についても、提案内容の実践に対するサポートを行い、社員の推進力や実行力の向上に資する人材育成を促進してまいります。
②安心して働ける働きがいのある職場
社員が心身ともに健康で、ワークライフバランスを保ちながら充実感をもって働くことが企業価値向上の大きな要素であるとの考えに基づき、多様な働き方の実現や働き方改革を進めております。
a.心理的安全性の向上
当社は働き方改革の一環として、社内における心理的安全性の浸透を目指し、職場懇談会の充実やカエル会議(チームで目指す「ありたい姿」を設定し、その達成に向けた課題を抽出し、改善案を策定・実行する会議)の実施、管理職層を対象に上司・同僚・部下が多面的にフィードバックを行う「360度フィードバック」、上司と部下が定期的にペアで対話する「TOAダイアログ」等の施策を実施しております。社員同士のオープンなコミュニケーションを通じて、安心して働ける環境整備を促進してまいります。
b.多様な働き方の推進
多様な属性を持つ社員が、ワークライフバランスを保ちながら、いきいきと働ける環境を目指し、テレワークを中心とした労働時間と勤務場所の柔軟化や、育児・介護等における仕事と生活の両立ができる環境づくりを推進しております。男性の育休取得についても、育休中の一定期間を有給としているほか、育休を取得した社員が在籍する職場に対し「育休職場お祝い手当」を支給し、育休中のサポートに報いるとともに、育休を取得しやすい企業風土の醸成を推進しております。
■健康経営
従業員が心豊かに活躍する企業として社会へ貢献し続けるため、社員とその家族の健康維持・増進を推進しております。
<具体的な取組み>
①メンタルヘルス
部下を持つ上司を対象にラインケア(上司が部下の心の健康状態を把握し、ケアをする)研修を開催し、メンタルヘルスの理解を深め、社員の心の健康を維持するとともにチームとしてのパフォーマンスの向上に役立てております。また新入社員研修におけるセルフケアやレジリエンス(精神的回復力)の講義を通じて、社員自らが主体的に健康を保つことを意識づけております。
②健康課題に関する情報共有
産業医による健康セミナーを定期的に開催しております。「アンガーマネジメント(怒りの感情と上手に付き合う方法)」や「睡眠」など身近な健康に関わるテーマを取り上げ、社員が心身ともに健康を維持・増進できるよう情報共有を行っております。
③女性の健康
「女性の健康相談窓口」を開設し、毎日24時間、スマートフォンから医師に無料相談できる体制を整えております。また、女性の健康に関する動画を配信し、女性自身の健康増進だけでなく、職場全体での女性の健康に関する理解の向上に努めております。
Ⅲ.リスク管理
人材の確保におけるリスクは、当社グループのESG経営におけるリスクとして管理しております。詳細については「
Ⅳ.指標及び目標
「多様な人材の育成と活躍推進」をマテリアリティとして掲げ、以下のKPIを設定しております。なお、連結子会社においても、ESG経営基本方針に基づいて多様な人材の育成と活躍推進に取り組んでおりますが、具体的な数値目標を設定していない等、当社グループにおける記載が困難なことから提出会社のもののみを記載しております。
※女性総合職には地域限定総合職を含んでおります。
※準幹部職・幹部職は課長職以上の役職に就くことのできる職位をさしております。
人的資本データシート(提出会社)
※各指標の数値は、障害者雇用率を除いて各事業年度末日現在のものを表示しております。
※当社においては、当社就業規則に基づき、正社員を「従業員」と定義しております。これに対して、正社員含め当社と直接雇用関係にある者を「社員」として定義しております。
※臨時従業員を除く社員数(期末)・平均年齢・平均勤続年数に係る各指標においては、人的資本経営の観点から当社から社外への出向者を含み、他社から当社への出向者を除いております。これにより、「第1 企業の概況 5 従業員の状況」に記載の数値とは差異があります。
※障害者雇用率は、障害者雇用促進法に基づき各事業年度6月1日時点のものを表示しております。
※育児休業平均取得日数は、厚生労働省が推奨する方法により当該年度に育児休業を終了し復帰した社員の平均取得日数を記載しております。2023年度においては育児休業を取得した女性社員はいたものの、同年度中に復職しなかったことから、日数の表示をしておりません。
当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには、以下のようなものがあります。当社はこれらリスク発生の可能性を認識した上で、発生の予防及び発生した場合の対応に万全を期す方針であります。なお、文中における将来に関する事項は、当社グループが判断したものであります。
当社グループは、組織横断的なリスクの特定や対応状況については、リスク管理規程に基づき、代表取締役社長を委員長とするESG委員会が定期的に対応を見直し、その状況や対応内容を取締役会に報告する体制をとっております。なお、業務執行に係るリスク管理の詳細は、「第2 事業の状況 2.サステナビリティに関する考え方及び取組(1)サステナビリティ全般に関する基本方針と取組 Ⅱ.リスク管理」に記載しております。
(1)建設市場の変動リスク
当社グループの売上高の主要部分を占める国内建設事業につきましては、我が国の公共事業投資並びに民間設備投資の動向によって、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、競争力が高い事業領域の成長を加速させるとともに、事業領域の多様化にも取り組んでおります。
(2)建設資材価格の変動リスク
建設資材価格などの高騰により工事採算が悪化した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、調達先との取引関係を強化し、常に市場の最新情報を入手し正確な原価把握を徹底することや早期購買などにより、資材価格高騰などによる影響を最小限に抑えられるよう努めております。
(3)海外事業のリスク
当社グループは、世界各国にて建設事業を行っておりますが、その施工場所における政情の変化、経済状況の変化、予期せぬ法令・規制の変更等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、受注前に予め現地や専門家等の意見を十分に収集するなどし、リスク評価を行っております。また海外事業に関する為替変動リスクにつきましては、外貨建工事代金収入に対応させて原価支払いを外貨建としたり、必要に応じ為替予約などを通じへッジしております。ただし、そのリスクをすべて排除することは不可能であり、為替変動等により業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)施工品質リスク
工事の品質管理には万全を期しておりますが、契約不適合責任及び製造物責任による損害賠償が発生した場合は、当社グループの業績及び社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは施工検討会で事前に品質上の課題を確認し、そこで抽出された課題に対し適切に施工しているか施工中にパトロールによって確認し、竣工時に社内検査を行い不適合発生防止に努めております。
(5)信用リスク
建設工事は契約から完成引渡しまで長期にわたり、また一件当たりの請負金額が大きく、一般的に工事目的物の引渡し時に多額の工事代金が支払われるため、発注者の信用リスクが生じた場合には、資金回収不能などにより当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、協力業者が信用不安に陥った場合、工事の進行に影響を受ける可能性があります。当社グループは、危機管理マニュアルの運用を徹底するとともに、企業調査の実施や日々の情報収集等により与信管理を行っております。
(6)人材マネジメントにおけるリスク
近年の少子高齢化による労働人口の減少により、十分な人材の確保が出来ない場合や事業活動に必要な技術力を維持できない場合には、売上高の減少など当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、将来の事業規模に応じた計画的な新卒及びキャリア採用を行い、担い手確保の強化を行っております。また、ICTの積極的な導入による効率化など働き方改革を推進しつつ、個人の適性・能力の伸長に応じたセミオーダー型の育成体系で多様なニーズに対応した人材の育成を行ってまいります。さらに、社員の幸福と成長が、企業の持続的な成長につながっていくと考えられることから、社員のエンゲージメントを定期的に調査・分析し、人事施策や環境整備に反映してまいります。
(7)資産の時価下落リスク
当社グループの保有する不動産・有価証券の時価の下落により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。保有する資産は時価評価等を通じてモニタリングしており、遊休不動産で将来活用の見込みがない場合は売却に向けた検討を進めるなどしております。また政策保有株式は、年に一度、保有目的及び経済的合理性等を検証し、保有効果が薄れたと判断した場合は適宜売却に向けた手続きを進めております。
(8)災害・事故の発生
工事施工にあたっては事故防止に万全を期しておりますが、予期せぬ要因から事故や労働災害が発生する可能性があります。この場合、損害賠償や指名停止などによる受注機会の減少により業績に影響が及ぶ可能性があります。当社グループは、安全衛生管理計画書の周知・徹底及び安全教育、安全パトロールの強化により、事故や労働災害の防止に努めております。
(9)自然災害・パンデミック
大規模な自然災害等により、事業の継続が困難になり当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、大規模災害時における事業継続マニュアルを策定し、災害時における優先すべき重要業務と必要な対応事項を予め定め、初動対応・復旧活動を行い事業の早期再開を図ってまいります。また、新型コロナウイルス等の感染症拡大時には、時差通勤やテレワーク及び感染予防対策により、社員及び協力業者等の健康管理を徹底し事業継続を図ってまいります。
(10)法令違反リスク
当社グループは、建設業法、労働安全衛生法、労働基準法、独占禁止法、海洋汚染防止法ほか、様々な法的規制を受けて事業活動を行っており、それらに違反する行為があった場合には、当社グループの業績及び社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、従業員への法令遵守教育を適宜行い、業務における法令違反の防止に努めております。
(11)情報セキュリティリスク
当社グループは、外部からのサイバー攻撃や従業員の過失等により顧客情報や個人情報等の機密情報が漏洩又は消失した場合には、社会的信用の失墜、損害賠償、復旧費用の発生などにより当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループはシステ厶的な防御態勢に万全を期すと共に、情報セキュリティポリシーを策定し、e-learningや迷惑メール訓練等、社員への情報セキュリティ教育を継続的に実施し、情報漏洩の防止に努めております。また、万が一情報漏洩が発覚した場合に迅速に対応するための情報漏洩対策チー厶を社内に設置し、被害を最小限に留める体制を構築しております。
(12)環境課題リスク
気候変動による自然災害の甚大化や、温室効果ガスの排出量に応じた企業の負担増加が見込まれるなど、環境課題による影響が拡大する傾向にあります。環境課題リスクへの対応については、グローバルリスクとしての動向や国の施策なども注視しつつ、ESG委員会において基本的な方針や具体的な行動計画の立案、活動実績のレビュー、施策等を審議し、取締役会への報告を経て、重要決定事項は各事業部門(支店を含む)とグループ会社に伝達される体制を構築しております。また、環境課題については、リスクだけでなく機会としても捉え、専門部署を中心に事業へ展開してまいります。
(13)人権リスク
当社グループは、役員・社員一人ひとりがお互いの多様性・人格・個性を尊重し、人種・宗教・国籍・年齢・性別・性的指向・性自認・出身地・障がいの有無・身体的特徴などを理由とした差別、ハラスメントなど人権を侵害するあらゆる行為の禁止、また、あらゆる形態の児童労働、強制労働、人身取引への加担、外国人労働者などへの人権の侵害の禁止を徹底しております。万が一、人権侵害が発生した場合には、社会的信用の低下など影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、人権基本方針を策定し、事業活動やサプライチェーンにおける人権への顕在的または潜在的な負の影響を特定し、それを予防・軽減し、情報発信する「人権デュー・デリジェンス」の仕組みを継続的に構築してまいります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度の当社グループの連結業績につきましては、売上高は330,472百万円(前連結会計年度比16.4%増)、営業利益は20,621百万円(前連結会計年度比19.7%増)、経常利益は20,073百万円(前連結会計年度比20.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は14,908百万円(前連結会計年度比41.8%増)となりました。
また、当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末と比較して26,002百万円増加し、298,939百万円となりました。
負債は、前連結会計年度末と比較して14,829百万円増加し、191,065百万円となりました。
純資産は、前連結会計年度末と比較して11,173百万円増加し、107,873百万円となりました。
当社グループのセグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
(国内土木事業)
海上土木分野を中心に、港湾・鉄道・道路などのインフラ・社会資本の整備に継続的に取り組んでおります。当連結会計年度の売上高は大型案件を中心に手持工事が進捗し、141,096百万円(前連結会計年度比2.6%増)となりました。セグメント利益(営業利益)は、売上高の増加や高採算案件が堅調に推移したこと等により13,186百万円(前連結会計年度比0.5%減)となりました。
なお、当社個別の受注高については、前期に大型案件の受注があったこと等により、141,864百万円(前連結会計年度比9.7%減)となりました。
(国内建築事業)
物流施設を中心とした特命案件・企画提案案件・設計施工案件の受注拡大に取り組んでおります。当連結会計年度の売上高は、大型案件を中心に手持工事が進捗し、110,365百万円(前連結会計年度比31.4%増)となりました。セグメント利益(営業利益)は売上高の増加のほか、高採算案件の堅調な推移や全体的に利益率が改善したこと等により、6,421百万円(前連結会計年度比42.5%増)となりました。
なお、当社個別の受注高については、当期は手持工事を優先的に施工することから92,362百万円(前連結会計年度比22.4%減)となりましたが、当社が得意とする物流施設分野以外にも医療・福祉分野等の案件を獲得し、事業領域の拡大を図りました。
(海外事業)
東南アジアを中心にアフリカ・南アジアなどにおいて、海上土木工事などに取り組んでおります。当連結会計年度の売上高は大型案件を中心に手持工事が進捗し、65,737百万円(前連結会計年度比35.5%増)となりました。セグメント利益(営業利益)は一部の不採算案件の影響はあるものの、売上高の増加や高採算案件が堅調に推移したこと等により4,230百万円(前連結会計年度比237.0%増)となりました。
なお、当社個別の受注高については、東南アジアおよび南アジアで複数の大型案件を獲得したこと等により、119,548百万円(前連結会計年度比56.2%増)となりました。
(その他)
当連結会計年度の売上高は13,272百万円(前連結会計年度比3.8%減)、セグメント利益(営業利益)は2,115百万円(前連結会計年度比32.1%減)となりました。
当連結会計年度におきましては、営業活動によるキャッシュ・フローは、14,255百万円の資金減少(前連結会計年度は39,350百万円の資金増加)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却等により、93百万円の資金増加(前連結会計年度は2,639百万円の資金減少)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは社債の発行等による増加があったもののコマーシャル・ペーパーの減少等により、1,250百万円の資金減少(前連結会計年度は8,493百万円の資金減少)となりました。以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ15,460百万円減少し、41,583百万円となりました。
③生産、受注及び販売の実績
当社グループが営んでいる事業の大部分を占める建設事業及び不動産事業では「生産」を定義することが困難であり、建設事業におきましては請負形態をとっているため「販売」という定義は実態にそぐいません。
また、当社グループとしての受注高、繰越高を正確に把握することも困難なため、記載可能な情報を「経営成績等の状況の概要」におきましてセグメントの業績に関連付けて記載しております。
なお、参考のため当社単独の事業の状況は次のとおりであります。
(注) 1 前期以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額に変更あるものにつきましては、当期受注高にその増減額を含めております。したがって当期売上高にもかかる増減額が含まれております。
2 次期繰越高の施工高は支出金により手持工事等の施工高を推定したものです。
3 当期施工高は、不動産等を除き(当期売上高+次期繰越施工高-前期繰越施工高)に一致します。
工事の受注方法は特命と競争に大別されます。
(注) 百分比は請負金額比であります。
(注) 1 完成工事のうち、主なものは、次のとおりであります。
第134期の主なもの
第135期の主なもの
2 売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の売上高及びその割合は、次のとおりであります。
第134期
第135期
d. 手持工事高(2025年3月31日現在)
手持工事のうち主なものは次のとおりであります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(財政状態の分析)
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末と比較して26,002百万円増加し、298,939百万円となりました。これは、主に現金預金が減少した一方、受取手形・完成工事未収入金等が増加したことによるものです。
負債は、前連結会計年度末と比較して14,829百万円増加し、191,065百万円となりました。これは、主に預り金、電子記録債務が増加したことに加え、社債(サステナビリティ・リンク・ボンド)を発行したことによるものです。
純資産は、前連結会計年度末と比較して11,173百万円増加し、107,873百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上で利益剰余金が増加したことによるものです。なお、自己資本比率は35.6%と、前連結会計年度末と比較して0.6ポイント増加しております。また、ROE(自己資本利益率)は14.7%と3.3ポイント増加しました。
当連結会計年度の売上高については、国内土木事業、国内建築事業、海外事業それぞれにおいて大型案件を中心に手持工事が進捗し増収となり、総じて、前連結会計年度に比べ46,619百万円(16.4%)増収の330,472百万円となりました。
営業利益は、国内土木事業は売上高の増加や高採算案件が堅調に推移したものの若干の減益、国内建築事業は売上高の増加のほか高採算案件の堅調な推移や全体的に利益率が改善したこと等による増益、海外事業は一部の不採算案件の影響はあるものの売上高の増加や高採算案件が堅調に推移したこと等により増益となり、総じて、前連結会計年度に比べ3,390百万円(19.7%)増益の20,621百万円となりました。
経常利益は、営業利益の増加に伴い、前連結会計年度に比べ3,443百万円(20.7%)増益の20,073百万円となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、経常利益の増加や投資有価証券売却益の計上などにより、前連結会計年度に比べ4,391百万円(41.8%)増益の14,908百万円となりました。
「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」を参照ください。
当社グループは、将来の事業活動に必要な資金を確保し、適切な流動性を維持することを財務の基本方針としております。資金需要の主なものは、工事原価、販売費及び一般管理費などの運転資金及び設備投資資金であります。
その資金の原資は、自己資金、営業キャッシュ・フロー、金融機関からの借入及び社債・コマーシャル・ペーパーの発行等による収入であります。
また、運転資金の効率的な調達を行うため、複数の金融機関とコミットメントライン(特定融資枠)契約を締結しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結貸借対照表関係)」に記載のとおりであります。
更に、当社グループ内の資金の効率性を高めるため、一部の子会社を含めたグループ間のキャッシュマネジメントシステムを特定の金融機関と構築しております。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表作成にあたっては、過去の実績や現在の状況に基づき合理的と考えられる見積りによっている部分があり、実際の結果がこれらの見積りと異なる場合があります。個々の項目については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しておりますが、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
特記事項はありません。
当社グループにおきましては、4つのマテリアリティ(重要課題)を掲げて、研究開発を推進しております。
●4つのマテリアリティ(重要課題)
Blue・Green(ブルー・グリーン)‐地球温暖化対策・低炭素社会の構築、自然環境保全・再生・創出
Life-cycle(ライフサイクル) ‐維持・長寿命化、3Rの実践
Digital・Smart(デジタル・スマート)‐品質・安全・生産性の向上、ウエルネスの向上
Resilience(レジリエンス) ‐防災・減災、強靱化、安心・安全の提供
当連結会計年度における研究開発費は
(国内土木事業・国内建築事業及び海外事業)
港湾の防波堤や岸壁の構築には、「ケーソン」と呼ばれる大型のコンクリート製躯体が多く用いられます。ケーソンは、陸上や船舶のドックで製作された後、大型の起重機船で吊り下げる形や海上に浮かべる形で設置場所まで運搬されます。このうち、海上に浮かべた状態のケーソンは「浮遊ケーソン」と呼ばれ、タグボート(曳船)で曳航されます。曳航中は波浪の影響を強く受け、特に外洋では波の周期によっては、ケーソン動揺と波浪の共振が起こり、「ロール(Roll)」および「ピッチ(Pitch)」の回転運動が増大します。その結果、施工時に人の身長を超えるほどの端部動揺が発生することもあります。これにより、作業員の転落リスクやワイヤーの破断による事故、さらにはケーソン下端の接触による捨石基礎や構造物自体の損傷リスクが生じます。これらの問題は、据付精度や施工可否(稼働率)にも影響を与えるため、効果的な動揺低減策の導入が求められていました。そこで、ケーソンの動揺を低減することを目的に「減揺タンク工法」を開発しました。
「減揺タンク工法」は、ケーソン上に直方体のタンク(減揺タンク)を設置し、タンク内の水の動きを利用して浮遊ケーソンのロールおよびピッチを抑制する技術です。ケーソンの動揺と減揺タンク内の水の動きの位相差により、動揺を減衰させるモーメントを発生させます。特に波浪の周期とケーソンの動揺が共振する際に大きな効果を持ち、動揺の半減が見込まれます。減揺タンクの設計に必要な数値解析技術を開発し、効果の定量予測も可能となりました。本工法の導入により、施工の安全性向上、生産性の向上が期待されます。
多くの一般船舶が行き交う海上で工事を行う際には、工事用船舶の運航状況や周辺を航行する一般船舶の動静を注視し、安全航行に努めることが重要です。当社は、GNSS、船舶自動識別装置(AIS)、船舶レーダー等を使用し、周辺海域に存在する船舶の位置および動静情報を自動入手し、工事関係者に展開することで、海上工事の安全確保に寄与してきました。しかしながら、船舶情報を入手する上で、船舶レーダーは航行安全上、特に必要な500m以内の近距離における船舶の検知には不向きであることが課題でした。そこで、AI画像認識技術を用いて船舶を自動検知する機能を取り入れた船舶運航監視システム「COS-NAVI:Construction On the Sea NAVIgation system」を開発しました。
「COS-NAVI」は、AI画像認識技術を利用し、カメラで撮影した映像内の船舶をAIで検知するとともに、検知した船舶の位置情報を取得します。また、検知した船舶を自動追尾し、継続的に位置情報を取得することで、画面上に船舶の位置を表示するシステムです。本技術の活用により、操船者による船舶の見落としを予防し、海上作業時の運航管理の安全性と生産性の向上を図ることが可能となります。
なお、本技術は、国土交通省が提供する新技術情報提供システム(NETIS)に登録されました。
港湾工事においては、作業員が水中に転落する事故が起こることがあります。水中転落(落水)は、その瞬間を目撃する以外は、現場を巡回する職員の目視や作業員の不在によって発生を把握していました。港湾工事に従事する作業員は、万が一の水中転落に備えてライフジャケットを着用していますが、事故の発生から救助までに要する時間により、生存確率は大きく変化するため、救命のためには早期の発見と救助が必要不可欠です。そのため、誰がいつ、どこで水中転落したのかを早期に把握し、迅速な救助活動に繋げることを目的に「広域通信型 落水者救援支援システム」を開発しました。
「広域通信型 落水者救援支援システム」は、水上(港湾、河川等)作業において、作業員の落水を検知し、関係者へ通知するとともに、落水者の位置を追跡する安全管理システムです。落水を検知すると信号を発信するセンサーと、位置情報を取得するGNSS端末を作業員に携帯させることで、落水事故の発生を瞬時に検知するとともに、作業員の位置がシステム画面上に常時表示されるため、早期発見と迅速な救助活動を支援することができます。また、LPWA(Low-Power Wide Area Network:省電力広域ネットワーク)規格のGNSSを採用することにより、携帯電話が圏外となる場所でも作業員の位置を把握することが可能です。
なお、本技術は、国土交通省が提供する新技術情報提供システム(NETIS)に登録されました。
南海トラフ地震や首都圏直下型地震の発生リスクが逼迫する中、優先事業の継続自体を目的とした防災対策(=BCP防災)の必要性が提唱されておりますが、対策コストや施設の利用制限等の課題から民間企業を中心に対策の遅れが目立っております。実際に、臨海部の港湾施設・工場・商業施設など広大な用地を有する施設全域に液状化対策を実施することは、上記課題に照らして現実的ではなく、BCP防災対策を推進する観点からも、安価でコンパクトな資機材を用いて短期間に施工可能な対策工法が選択肢として望まれています。そこで当社を含めたDEPP工法研究会の会員6社と(国研)海上・港湾・航空技術研究所と共同で、人工排水材を用いて表層地盤のボイリング(噴砂)現象を抑制し、地震被害を最小限に防ぐ新たな耐震対策工法である「ボイリング被害抑止工法(SBDS工法:Sand Boil Damage Suppression Method)」を開発しました。
SBDS工法は、対象地盤に有効打設長3~5mの短尺の人工排水材を打設することにより表層地盤部の排水性を高め、中・深層の液状化を許容しつつも、表層に伝播する過剰間隙水圧を速やかに吸収し、地盤の不均質性などで局所的に強まる上向き浸透流を防ぐことでボイリングの発生を抑止します。対策範囲以深では液状化を許容するため、一定の地表面沈下は生じますが、交通荷重や上載荷重に対する地盤支持力を確保し、施設機能の健全性を維持することができます。従来の液状化対策とは異なる発想による地震時のボイリング発生を抑止できる低コストの地震対策工法として、BCP防災の推進を後押していきます。
(その他)