第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

(1) 会社の経営の基本方針

当社は、「堅実経営と誠実施工を信条に、社会から必要とされ続ける企業として、社業の発展を通じ広く社会に貢献する」ことを経営理念に掲げ、時代の趨勢、経営環境の変化に柔軟かつ迅速に対応して経営基盤の強化を図り、株主の期待に応え、ひいては社会に貢献することを基本方針としています。

当社グループでは、すべての事業活動においてこれらを踏まえ、ステークホルダーに信頼・満足・安心を提供していくことを目指しています。

 

(2) 中長期的な会社の経営戦略及び目標とする経営指標

① 2030年に向けたビジョン

建設市場においては、防災・減災対策、インフラ長寿命化、PPP/PFI事業の拡大、DXの推進や脱炭素に向けた投資など一定の需要が見込まれるものの、中長期的には、地政学的リスクによる景気への影響に加え、新設の建設投資の抑制、物価上昇による建設コストのさらなる高騰、技能労働者不足の深刻化が懸念されるなど、経営環境は一層厳しさを増すことが予想されます。

このような環境認識のもと、今後も長期的に事業を継続し、社会の持続的な発展に貢献するため、将来のありたい姿を示した「2030年に向けたビジョン」の実現に向け、様々な取り組みを展開しています。

 


 

② 中期経営計画

「2030年に向けたビジョン」の実現を見据えた第2のステップである「中期経営計画(2022~2024年度)」において、事業戦略の基本方針として掲げる「企業価値の向上」「事業領域の拡大」及び「人的資源の活用」に基づく取り組みを推進しています。


 

同計画の概要については、次のとおりです。

 


 


 

 


 

 


 

 


 

 

なお、「2030年に向けたビジョン」及び「中期経営計画(2022~2024年度)」の詳細については、当社ウェブサイトに掲載しています。

 

・2030年に向けたビジョン

https://www.okumuragumi.co.jp/corporate/vision/

・中期経営計画(2022~2024年度)

https://www.okumuragumi.co.jp/corporate/plan/

 

(3) 経営環境及び対処すべき課題

わが国経済の先行きは、さらなる物価の上昇や海外景気の下振れによる影響が懸念されますが、社会経済活動の活性化が進むことに伴い、内需を中心に回復基調を辿ることが期待されています。建設業界においては、建設投資は堅調さを維持することが見込まれる一方、総じて高い水準で推移している資材価格の動向が不透明であるなど、楽観できない事業環境が続くものと思われます。

当社グループにおいては、社会のニーズの変化を見据えた事業・サービスを展開するとともにESG/SDGsに関わる取り組みを一体的に推進するなど、確かな技術と誠実な事業運営により社会の信頼に応え、成長し続ける企業グループを目指す所存であり、将来のありたい姿を示す「2030年に向けたビジョン」の実現を見据えた第2のステップである「中期経営計画(2022~2024年度)」に掲げた事業戦略の基本方針に基づく取り組みを推進しています。

具体的には、継続的な「企業価値の向上」に向け、業務プロセスの抜本的な見直しといった全社的な構造改革やDX・戦略的な技術開発の推進など、生産性及び技術優位性の向上、並びにESG/SDGsへの取り組み強化を図っています。また、「事業領域の拡大」に関しては、脱炭素社会の実現に貢献する再生可能エネルギー事業として、北海道と福島県においてバイオマス発電所の営業運転を開始するなど、新規事業及び不動産事業のさらなる拡大や海外事業基盤の構築を進めており、「人的資源の活用」に関しては、社員のワークライフバランス実現のため社内制度の充実を図るなど、働き方改革を推進するほか、多様な人材が活躍できる環境の整備及び教育の強化に取り組んでいます。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

当社グループは、これまでの歴史の中で、『「堅実経営」と「誠実施工」を信条に、社会から必要とされ続ける企業として、社業の発展を通じ広く社会に貢献する』という経営理念を受け継いできており、その経営理念を基礎としながら、将来のありたい姿を示す「2030年に向けたビジョン」の実現を目指して、事業活動を推進しています。当社グループが描いているビジョンは、SDGsが目指す「持続可能な共生社会の実現」と目的を一つにするものと捉えており、事業活動による価値創造がSDGsへの貢献に繋がるものと考えています。

サステナビリティを巡る課題への対応については、重要な経営課題であると認識しており、「人と地球に優しい環境の創造と保全」を基本理念に、環境汚染の予防、環境負荷の低減及び環境の保全に努めるとともに、働き方改革を推進し多様な人材が活躍できる環境の構築を図るなど、「持続可能な社会の実現」に向けた取り組みを進めています。

 

①ガバナンス

当社グループでは、ESG/SDGsに関連する課題等について審議し、戦略的な取り組みを推進する組織として、ESG/SDGs推進委員会を設置しています。

また、建設業界においては長時間労働の是正や週休2日の実現等が喫緊の課題となっており、働き方改革を横断的かつ可及的速やかに推進するための専門委員会として、働き方改革推進委員会を設置しています。

両委員会は、いずれも代表取締役社長を委員長、各本部組織の長及び東日本・西日本支社長を委員として構成し、その審議結果等については、必要に応じて取締役会に付議・報告することとするなど、取締役会による監視が適切に図られる体制としています。

 

②戦略

[気候関連を含めたESG/SDGsに関する方針等]

「2℃以下シナリオ」及び「4℃シナリオ」に基づく検討(シナリオ分析)により、気候関連等のリスク及び機会が組織に及ぼす影響を分析しています。

・2℃以下シナリオ:世界の平均気温の上昇を産業革命前より2℃を十分に下回る水準を保ち、1.5℃に抑える努力を継続することを想定したシナリオ

・4℃ シ ナ リ オ:世界の平均気温が産業革命前より4℃程度上昇することを想定したシナリオ

 

具体的には、気候関連を含めたESG/SDGsに関わるリスクと機会、それらが顕在化した場合のインパクトを分析し、その発生可能性と影響度の2軸により、それぞれのシナリオにおける重要度を評価のうえESG/SDGsに関わる当社グループの課題を抽出しています。

同分析の結果、気候変動に関連したマテリアリティ(重要課題)として「レジリエントなインフラ整備への貢献」及び「環境に配慮した事業の推進」を特定したほか、事業活動の根幹となる「働き方改革の推進」についてもESG/SDGsに関わる当社グループのマテリアリティ(重要課題)として特定しており、これらの課題解決に向けた方策を中期経営計画における各部門の施策等に反映することで、事業活動とESG/SDGsに関わる取り組みを一体的に推進しています。

 

ESG

SDGs

ESG/SDGsに関わる

リスクと機会

リスクと機会が

顕在化した場合

のインパクト

※1

2℃以下

シナリオ

重要度

※2

4℃

シナリオ

重要度

※2

リスクと機会

のタイプ

発現時期

ESG/SDGsに関わる

当社グループの課題

※3

E


 

 

気候変動にともなう

異常気象や地震、台風

などによる大規模災害の

頻発・激甚化

インフラの破損による生活および産業基盤の劣化、保有資産に

対する損害

4

5

物理的リスク(急性)/

移行リスク(法規制・市場)

短・中・長期

レジリエントな

インフラ整備への

貢献

E


気候変動にともなう

気温上昇や環境に

配慮しない開発による

自然環境の破壊

生態系の破壊や水源の汚染、企業評価の悪化による受注の減少

4

5

物理的リスク(急性・慢性)/移行リスク(法規制・評判)

短・中・長期

環境に配慮した

事業の推進

E


気候変動にともなう

炭素税(カーボンプライシング)の導入による

材料・外注費の高騰

建設コストの増額に

ともなう収益力の低下

4

3

移行リスク
(法規制・市場)

短・中・長期

脱炭素化の推進★

E


建設資材に含まれる

天然資源の浪費

天然資源の減少にともなう持続可能性の減退

3

3

移行リスク(市場)

中・長期

リサイクルによる

資源の有効活用

S


危険をともなう労働環境

労働者の

モチベーションの低下

3

3

物理的リスク(急性)/

移行リスク(市場)

短・中期

安心安全な労働環境

S


空き家や空き店舗、

老朽建物の増加

治安・衛生環境の悪化や建物倒壊による

災害、保有不動産の

賃貸収入の減少

3

3

物理的リスク(慢性)/

移行リスク(市場)

中・長期

不動産ストックの

有効活用

S


労働環境における

多様性の欠如

女性をはじめとする

多様な人材の流出、

雇用機会の損失

3

3

物理的リスク(急性)/
移行リスク(市場)

短・中期

ダイバーシティ経営

の推進

E・S


気候変動にともなう

気温上昇による労働環境

の悪化

熱中症リスクの増大、労働生産性の低下に

ともなう建設コスト

の増額

3

4

物理的リスク(慢性)/
移行リスク(市場)

短・中・長期

機械化・省力化・

効率化の推進★

E


 

気候変動への対策となる建築物の省エネルギー化需要の増加

建築物の

省エネルギー化の進展

4

3

製品とサービス、市場

短・中・長期

建築物の

省エネルギー設計★

S


ICTの発展と

建設技術への応用

ICTによる建設技術

の向上

3

3

製品とサービス、市場

短・中・長期

ICTによる技術力と

生産性の向上

S・G


高品質インフラの

需要の高まり

長寿命なインフラ

の整備

3

3

製品とサービス、

レジリエンス

中・長期

施工品質の確保・高度化

E


気候変動への対策となるクリーンエネルギー需要の高まり

CO2排出量の少ない

発電方式の普及

4

3

製品とサービス、

エネルギー源、市場

短・中・長期

再生可能エネルギー事業の推進★

S・G


地域社会・企業との連携の促進

地域社会・企業との

パートナーシップ

によるシナジーの発揮

3

3

製品とサービス、市場

短・中・長期

地域社会・企業

との連携

S


業務効率化による

長時間労働の削減

建設業の魅力の向上と従業員の健康増進

4

4

製品とサービス

短・中期

働き方改革の推進

S


働き方の多様化と

雇用流動化の進行

多様な働き方の実現

3

3

製品とサービス

短・中期

ディーセントワーク

の推進

 

※1 リスクに関しては負のインパクト、機会に関しては正のインパクトを記載しています。

※2 発生可能性と影響度の2軸で重要度を評価しました。1~5の5段階で評価し、5が最も重要度が高いことを示しています(5:極めて高い、4:高い、3:中程度、2:低い、1:極めて低い)。

※3 ESG/SDGsに関わる当社グループのマテリアリティ(重要課題)は太字下線で示しています。また、★印は気候変動に関連した課題を示しています。

 

[人的資本に関する方針等]

当社グループでは「中期経営計画(2022~2024年度)」において、事業戦略の基本方針として「人的資源の活用」を掲げており、多様な人材が個々の能力を最大限に発揮し、すべての社員が生き生きと活躍できる職場づくりを推進するため、「人材育成方針」「社内環境整備方針」を策定のうえ、それら方針に基づく取り組みを進めています。

 

(人材育成方針)

当社グループが持続的に成長し続けていくためには、経営理念を体現できる人材の育成が不可欠であることから、堅実に、誠実に、信頼関係を大切に、自ら率先して行動する、成長意欲にあふれた人材を育成することに注力しています。

 

 

具体的には、職務遂行能力に応じた階層別の研修や専門的知識の習得を目的とした職種別の研修などを計画的かつ積極的に実施するとともに、業務成績や発現された能力の評価に基づく適正な処遇への反映や評価結果のフィードバックを通じた指導・教育を行うことにより、人的対応力の強化を図っています。

また、DXを推進し、さらなる生産性の向上を実現するため、専門人材の確保・育成に注力するとともに、全社的なITリテラシー向上のための教育にも取り組んでいきます。

さらには、2023年4月から、中長期的な業績の向上及び企業価値の増大への従業員の貢献意欲や士気を高めることを目的に、従業員に対するインセンティブ・プランの一環として「従業員向け株式給付信託」制度を導入しています。

 

(社内環境整備方針)

当社グループでは、関係するすべての人とともに豊かさを分かち合い成長し続ける企業でありたいとの思いから、「2030年に向けたビジョン」の一つに「人を活かし、人を大切にする、社員が誇れる企業へ」を掲げています。

これらを実現するためにも、安全で働きがいのある環境を確保し、個性・創造性を大切にする企業風土を醸成することにより、女性をはじめとする多様な人材が個々の能力を最大限に発揮し、すべての社員が生き生きと活躍できる職場づくりに努めています。

 

 

具体的には、働き方改革を推進し、多様な人材が活躍できる職場環境を整備することにより、従業員の働きがいの向上に繋がる人材投資に取り組んでいきます。

その一環として女性活躍推進にも取り組んでおり、女性社員の積極的採用、育成を行うとともに、育児と仕事の両立を支援する制度の充実等を通じて女性社員が安心して働ける環境整備を進めることにより、女性の指導的立場での活躍を着実に推進します。

また、社員の健康づくりを積極的に支援しており、まずは社員が心身ともに健康で、さらには個性や能力を最大限に発揮することができる環境を整えることにより、社員一人ひとりのウェルビーイングの実現を目指しています。

 

③リスク管理

当社グループでは、サステナビリティを巡る課題の解決に向けた方策を中期経営計画に反映することで、事業活動とESG/SDGsに関わる取り組みを一体的に推進することとしており、ESG/SDGsに関する課題等については、ESG/SDGs推進委員会及び働き方改革推進委員会において、分析・識別・評価・管理のうえ、各部門の施策に反映させることにしています。

 

④指標と目標

[気候関連の対応に関する指標と目標]

当社グループでは、「②戦略」において記載した、気候関連のリスク及び機会を評価・管理する際に使用する指標と目標を「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的な会社の経営戦略及び目標とする経営指標 ②中期経営計画」に記載のとおり、「中期経営計画(2022~2024年度)」における非財務目標として設定しています。

また、長期的な指標と目標として、温室効果ガス(GHG)排出削減目標を次のとおり設定しています。なお、同目標は2023年1月にSBT認定を取得しています。

 

※SBT(Science Based Targets):パリ協定(世界の気温上昇を産業革命前より2℃を十分に下回る水準を保ち、1.5℃に抑える努力を継続するもの)が要求する水準と整合した、5~15年先を目標年として企業が設定する「温室効果ガス排出削減目標」のこと。

 

指 標

2030年度目標削減率(排出総量)

Scope1 + Scope2

25%(2020年度比)

Scope3

13%(2020年度比)

 

 

(注)1 Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出

Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用にともなう間接排出

Scope3:Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)

2 (参考)2020年度排出総量実績 Scope1+2:41,466.13 t-CO2 Scope3:1,180,258.95 t-CO2

2022年度排出総量実績 Scope1+2:54,122.45 t-CO2 Scope3:1,243,914.93 t-CO2

3 SBT事務局の審査の結果、第85期(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)有価証券報告書に記載した目標値(審査中であったもの)を変更しています。

 

[人的資本に関する指標と目標]

当社グループでは、「②戦略」において記載した、人材育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標と目標を設定しています。

 

指 標

実 績(2022年度)

目 標(2024年度)

採用者に占める女性割合

 20.1%

 20.0%

管理職に占める女性労働者の割合

  3.7%

  5.0%

男性労働者の育児休業取得率

 93.8%

  100%

工事所の4週8閉所実施率

土木 43.0%

建築 28.2%

土木 90.0%以上

建築 75.0%以上

健康経営優良法人(ホワイト500)

の認定

認 定

認 定

 

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりで、当社グループはこれらのリスクに対して適切な管理を行い、業績等への影響の回避を図っています。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

① 建設投資の動向

事業環境の変化を見据え、事業戦略に基づき事業領域の拡大を目指すなど、強固な収益基盤の構築に努めていますが、事業ポートフォリオに占める建設事業の割合が大きいため、財政政策の変更による公共投資の縮減や国内外の景気後退等による民間設備投資の縮小など、受注環境が著しく悪化し受注競争が激化した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

② 資材価格及び労務費の変動

主要資材価格及び労務費の動向を常時注視し、大きな価格変動が見込まれる際には契約時期を調整する等により適正な価格での調達に努めていますが、原材料や原油価格の高騰、建設技能労働者の不足、需給バランスの偏り等により資材価格或いは労務費が高騰し、コスト増加分を請負代金に反映することが困難な場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

③ 契約不適合責任

品質マネジメントシステムの運用により、施工案件の品質管理の徹底に努めており、品質トラブル及び顧客クレーム発生時には原因調査や是正を迅速に行っていますが、設計、施工等のサイクルにおいて、万一、重大な欠陥が発生した場合には、企業評価の悪化や契約不適合責任に基づく損害賠償金の支払い等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

④ 労働災害等

労働安全衛生マネジメントシステムの運用により、事業所及び建設現場において安全衛生パトロールを実施する等、安全衛生管理には万全を期しており、災害発生時には原因調査や是正を迅速に行っていますが、万一、重大事故や労働災害が発生した場合には、企業評価の悪化や関係官庁からの行政処分等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

⑤ 取引先の信用リスク

顧客及び協力会社についての信用調査を慎重かつ徹底的に行いリスク回避に努めていますが、万一、取引先が信用不安に陥った場合には、債権の回収不能や施工遅延による追加費用の発生等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

⑥ 保有資産の価格、収益性の変動リスク

事業戦略に基づき、事業領域の拡大のため不動産事業の強化を図っており、不動産取得に際しては採算性等に関する十分な検討を行っていますが、国内外の景気動向や金利動向、不動産市況に著しい変化が生じた場合には、保有不動産の時価の著しい低下等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、取引関係の維持・強化等を目的として保有している有価証券等については、保有に伴う便益・リスクや企業価値向上に資するか等を定期的に精査し、縮減する等見直しを行っていますが、時価が著しく下落した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

⑦ PFI事業等のリスク

PFI事業等の期間が長期にわたる事業においては、事業内容、採算性等を精査し参入の可否を慎重に判断していますが、経済動向、法的規制の変更、利用者減少等の市況の変化など、事業環境に著しい変化が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

⑧ 海外事業に伴うリスク

事業戦略に基づき、事業領域の拡大のため海外事業基盤の構築を図っており、海外事業への取り組みに際しては、詳細な現地調査による情報収集に努めるとともに、為替リスクを回避するため、資金需要に応じた調達方法やヘッジ手段を検討していますが、進出国における政治・経済情勢・法制度や為替相場等に著しい変化が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨ 新規事業展開のリスク

事業戦略に基づき、事業領域の拡大のため新規事業への参入を図っており、再生可能エネルギー事業等の新規事業への取り組みに際しては、事業性、将来性等に関する十分な検討を行っていますが、予期しない政治・経済情勢、市場の急激な変化等により、事業環境に著しい変化が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

⑩ 法的規制等

コンプライアンスの徹底を経営上の重要課題と位置づけ、役職員へのコンプライアンス教育を実施するほか、コンプライアンス委員会、談合防止専門委員会を設置し、法的規制の遵守徹底を図っていますが、万一、法令違反が発生した場合には、社会的信用を著しく損ねるとともに、関係官庁からの行政処分や公共発注機関からの指名停止処分等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

⑪ 自然災害・気候変動等

大規模な自然災害等が発生した場合においても、事業活動を継続ないしは速やかに復旧し、必要な体制を構築できるよう事業継続計画(BCP)を整備していますが、地震、津波、風水害等の大規模自然災害や感染症の世界的流行が発生し、当社グループの従業員や保有資産に対する損害のほか、事業環境の悪化或いはその懸念が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

なお、気候変動に関するリスク及び対応等については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおりです。

⑫ 情報管理

情報セキュリティ体制を構築し、サーバやパソコンの設置及びネットワークの維持管理等、情報システム全般について管理するとともに、事業活動を通じて得た顧客の機密情報について、細心の注意を払って管理していますが、万一、情報漏洩が発生した場合には、顧客や社会からの信用喪失や、損害賠償金の支払い等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

 (1) 経営成績

当連結会計年度のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症に対する行動制限の緩和等により社会経済活動は正常化に向け進展しましたが、世界情勢の悪化等に起因する物価の高騰が続いたことなどから、回復のペースは緩慢なものにとどまりました。そのような中、建設業界においては、民間の設備投資意欲の高まり等を背景に建設投資は堅調に推移したものの、資材価格高騰の影響を受けるなど、予断を許さない事業環境が続きました。

当社グループにおいては、売上高は、前年同期に比べ2.9%増加した249,442百万円となり、売上総利益は、売上高が増加したこと等により、同0.5%増加した32,001百万円となりました。営業利益は、販売費及び一般管理費の増加により、同6.3%減少した11,847百万円、経常利益は同7.9%減少した12,908百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同10.2%減少した11,261百万円となりました。

(売上高)

土木事業及び建築事業の売上高が前年同期に比べそれぞれ4.3%、2.0%増加したため、売上高合計は同2.9%増加した249,442百万円となりました。

(売上総利益)

土木事業の売上総利益が前年同期に比べ0.9%減少しましたが、建築事業の売上総利益が同3.4%増加したため、売上総利益合計は同0.5%増加した32,001百万円となりました。

(販売費及び一般管理費)

調査研究費やICT関連費用が増加したことや、コロナ禍の反動により出張旅費が増加したこと等により、前年同期に比べ962百万円増加した20,153百万円となりました。

(営業損益)

営業利益は、売上総利益が増加したものの、販売費及び一般管理費の増加により、前年同期に比べ6.3%減少した11,847百万円となりました。

(営業外損益)

為替差益の減少等により営業外収益が前年同期に比べ136百万円減少したことや、連結子会社の支払利息の増加等により営業外費用が同167百万円増加したことにより、営業外収支の黒字は同303百万円減少した1,061百万円となりました。

(経常損益)

経常利益は、営業利益の減少及び営業外収支の悪化により、前年同期に比べ7.9%減少した12,908百万円となりました。

(特別損益)

投資有価証券売却益が減少したことにより特別利益が前年同期に比べ126百万円減少したことや、固定資産除却損が増加したこと等により特別損失が同636百万円増加したことにより、特別損益の黒字は同762百万円減少した2,427百万円となりました。

(法人税等)

法人税、住民税及び事業税が前年同期に比べ468百万円増加、法人税等調整額が同864百万円減少し、法人税等は同395百万円減少した4,792百万円となりました。

(親会社株主に帰属する当期純損益)

以上により、親会社株主に帰属する当期純利益は前年同期に比べ10.2%減少した11,261百万円となりました。

 

 

「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しているとおり、当社グループは、2022年度を初年度とする「中期経営計画(2022~2024年度)」を策定しており、計画初年度である当連結会計年度の経営成績を、同計画における計画最終年度の主要数値目標と比較すると、次のとおりです。

 

連結経営成績

 

実績
(2023年3月期)

数値目標
 (2025年3月期)

売上高

2,494億円

2,800億円

営業利益(営業利益率)

118億円(4.7%)

190億円(6.8%)

経常利益(経常利益率)

129億円(5.2%)

200億円(7.1%)

ROE

6.6%

8.0%以上

 

「中期経営計画(2022~2024年度)」に掲げた事業戦略の基本方針に基づき、業務プロセスの抜本的な見直しといった全社的な構造改革やDX・戦略的な技術開発の推進など、生産性及び技術優位性の向上、並びにESG/SDGsへの取り組み強化を通じた「企業価値の向上」、脱炭素社会の実現に貢献する再生可能エネルギー事業として、北海道と福島県においてバイオマス発電所の営業運転を開始するなど、新規事業及び不動産事業のさらなる拡大や海外事業基盤の構築による「事業領域の拡大」、社員のワークライフバランス実現のため社内制度の充実を図るなど、働き方改革を推進するほか、多様な人材が活躍できる環境の整備及び教育の強化など、「人的資源の活用」を進めることにより、数値目標の達成を目指していきます。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。

 (土木事業)

売上高は前年同期に比べ4.3%増加した97,286百万円、営業利益は、前年同期に大幅に損益改善した工事が複数あった反動等により同8.1%減少した8,771百万円となりました。

 (建築事業)

売上高は前年同期に比べ2.0%増加した139,362百万円、営業利益は、売上高が増加したこと等により同45.4%増加した673百万円となりました。

 (投資開発事業)

売上高は再生可能エネルギーによる発電・売電事業を開始したこと等により前年同期に比べ67.7%増加した8,116百万円、営業利益は発電施設引渡しにかかる経費や減価償却費の発生等により同11.4%減少した1,871百万円となりました。

 (その他)

売上高は前年同期に比べ39.4%減少した4,677百万円、営業利益は同45.6%増加した614百万円となりました。

 

生産、受注及び販売の実績は次のとおりです。

 ① 受注実績

セグメントの名称

前連結会計年度
(自 2021年4月1日
 至 2022年3月31日)
(百万円)

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

(百万円)

 土木事業

96,937

87,869

(9.4%減)

 建築事業

126,764

192,047

(51.5%増)

      計

223,701

279,916

(25.1%増)

 

 

 ② 売上実績

セグメントの名称

前連結会計年度
(自 2021年4月1日
 至 2022年3月31日)
(百万円)

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

(百万円)

 土木事業

93,306

97,286

(4.3%増)

 建築事業

136,599

139,362

(2.0%増)

 投資開発事業

4,838

8,116

(67.7%増)

 その他

7,713

4,677

(39.4%減)

      計

242,458

249,442

(2.9%増)

 

(注) 1 当社グループにおいては、土木事業、建築事業以外での受注及び生産は僅少なため、受注実績については、土木事業、建築事業のみ記載しています。

2 当社グループが営んでいる事業の大部分を占める土木事業、建築事業では、生産実績を定義することが
困難なため、「生産の状況」は記載していません。

3 受注実績、売上実績については、セグメント間の取引を相殺消去して記載しています。

4 売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はありません。

 

なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりです。

建設事業における受注工事高及び完成工事高の実績

 ① 受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高

 

期別

区分

前期繰越
工事高
(百万円)

当期受注
工事高
(百万円)


(百万円)

当期完成
工事高
(百万円)

次期繰越
工事高
(百万円)

前事業年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

土木工事

196,838

96,937

293,775

93,306

200,468

建築工事

164,226

126,765

290,991

136,600

154,390

361,064

223,702

584,767

229,907

354,859

当事業年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

土木工事

200,468

87,869

288,338

97,286

191,051

建築工事

154,390

192,047

346,438

139,362

207,075

354,859

279,916

634,776

236,649

398,127

 

(注) 1 前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高に
その増減額を含みます。したがって、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれます。

2 次期繰越工事高は(前期繰越工事高+当期受注工事高-当期完成工事高)です。

 

 

 ② 受注工事高の受注方法別比率

工事の受注方法は、特命と競争に大別されます。

 

期別

区分

特命(%)

競争(%)

計(%)

前事業年度

(自 2021年4月1日

 至 2022年3月31日)

土木工事

26.3

73.7

100

建築工事

32.1

67.9

100

当事業年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

土木工事

24.3

75.7

100

建築工事

19.5

80.5

100

 

(注) 百分比は請負金額比です。

 

 ③ 完成工事高

 

期別

区分

官公庁(百万円)

民間(百万円)

計(百万円)

前事業年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

土木工事

65,111

28,195

93,306

建築工事

34,205

102,394

136,600

99,316

130,590

229,907

当事業年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

土木工事

71,027

26,259

97,286

建築工事

28,004

111,358

139,362

99,031

137,617

236,649

 

(注) 1 完成工事のうち主なものは、次のとおりです。

前事業年度

(株)流山綜合開発

GLP流山Ⅷプロジェクト

流山市

(仮称)流山市立おおぐろの森中学校新築工事

独立行政法人鉄道建設・
運輸施設整備支援機構

北陸新幹線、小松駅高架橋他

(株)南都興産

重阪最終処分場拡張工事

地方独立行政法人くらて病院

地方独立行政法人くらて病院新築工事

 

当事業年度

日鉄パイプライン

&エンジニアリング(株)

富津千葉高圧幹線 建設工事

アパホーム(株)・
アパマンション(株)

アパホテル&リゾート六本木駅東新築工事

独立行政法人鉄道建設・
運輸施設整備支援機構

北陸新幹線、新北陸トンネル(田尻)

多治見駅南地区市街地
再開発組合

多治見駅南地区第一種市街地再開発事業
施設建築物新築工事

八幡市

八幡市新本庁舎整備事業建設工事

 

2 前事業年度及び当事業年度ともに完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はありません。

 

 

 ④ 次期繰越工事高(2023年3月31日現在)

 

区分

官公庁(百万円)

民間(百万円)

計(百万円)

土木工事

124,581

66,469

191,051

建築工事

46,003

161,071

207,075

170,585

227,541

398,127

 

(注) 次期繰越工事のうち主なものは、次のとおりです。

環境省

平成28年度から平成32年度までの特定廃棄物埋立処分事業に係る詰替・搬出工事

2024年3月完成予定

流山綜合開発特定目的会社

GLP ALFALINK

流山5&6プロジェクト

2023年12月完成予定

東京都

千代田幹線その2工事

2024年10月完成予定

東海旅客鉄道(株)

中央新幹線神奈川県駅新設

2027年3月完成予定

社会福祉法人恩賜財団済生会

福岡県済生会八幡総合病院新築工事

2024年8月完成予定

 

 

 (2) 財政状態

当連結会計年度末の資産合計は343,727百万円、負債合計は170,511百万円、純資産合計は173,215百万円となりました。また、当社グループの自己資本比率は50.0%(前連結会計年度末は50.2%)となりました。

   (資産)

流動資産は、受取手形・完成工事未収入金等が減少しましたが、現金預金、有価証券が増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ6,840百万円増加した198,855百万円となりました。
 固定資産は、建設仮勘定が減少しましたが、建物・構築物や機械、運搬具及び工具器具備品が増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ4,538百万円増加した144,872百万円となりました。
 この結果、資産合計は、前連結会計年度末に比べ11,379百万円増加した343,727百万円となりました。

   (負債)

流動負債は、預り金が減少しましたが、その他(未払金、未払消費税)が増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ2,237百万円増加した129,048百万円となりました。
 固定負債は、ノンリコース借入金が増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ3,351百万円増加した41,463百万円となりました。
 この結果、負債合計は、前連結会計年度末に比べ5,588百万円増加した170,511百万円となりました。

   (純資産)

純資産合計は、配当金の支払い等により利益剰余金が減少しましたが、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したこと等により、前連結会計年度末に比べ5,790百万円増加した173,215百万円となりました。

 

 (3) キャッシュ・フロー

当連結会計年度のキャッシュ・フローについては、財務活動により1,571百万円減少しましたが、営業活動により17,900百万円、投資活動により772百万円それぞれ増加したことにより、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ17,170百万円増加した48,792百万円となりました。

  (営業活動によるキャッシュ・フロー)

税金等調整前当期純利益の計上等により、17,900百万円の資金増加となりました。(前連結会計年度は、18,289百万円の資金増加)

   (投資活動によるキャッシュ・フロー)

有形及び無形固定資産の取得等により資金が減少しましたが、有価証券及び投資有価証券の売却及び償還等により、772百万円の資金増加となりました。(前連結会計年度は、2,754百万円の資金減少)

   (財務活動によるキャッシュ・フロー)

ノンリコース借入等により資金が増加しましたが、配当金の支払い等により、1,571百万円の資金減少となりました。(前連結会計年度は、4,209百万円の資金減少)

 

キャッシュ・フロー指標のトレンドは以下のとおりです。

 

前連結会計年度
(2022年3月31日)

当連結会計年度
(2023年3月31日)

自己資本比率(%)

50.2

50.0

時価ベースの自己資本比率(%)

32.9

33.5

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(%)

194.9

222.5

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

65.8

47.7

 

(注) キャッシュ・フロー指標のトレンドの計算式及び算出に利用した数字のベースについては次のとおりで
   す。

自己資本比率

自己資本/総資産

時価ベースの
自己資本比率

株式時価総額/総資産

※株式時価総額=期末株価終値×(発行済株式数-自己株式数)

キャッシュ・フロー
対有利子負債比率

有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・
カバレッジ・レシオ

営業キャッシュ・フロー/利払い

 

有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対
象としています。

営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フロー
を使用しています。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使
用しています。

 

   (資本の財源及び資金の流動性に係る情報)

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、工事の完成に要する外注費等の工事費や人件費等の販売費及び一般管理費等の営業費用によるものです。

また、「中期経営計画(2022~2024年度)」では「企業価値の向上」「事業領域の拡大」「人的資源の活用」を事業戦略の基本方針としており、これらに戦略的に投資することとしています。

上記の資金需要に対し、自己資金の活用及び金融機関からの借入(ノンリコース借入を含む)を基本として必要資金の調達を行う方針です。

なお、当社グループは運転資金の効率的かつ機動的な調達を行うため、取引銀行3行と総額80億円のコミットメントライン契約を締結しており、緊急の資金需要等の流動性リスクに備えています。

 

 (4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いていますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しています。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

特記すべき事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、建設構造物の更なる品質や安全性の向上、さらには脱炭素社会の実現など多様化する社会のニーズに柔軟に対応すべく、建設に関する技術の研究開発を推進しているなか、2022年4月1日に新設した技術本部を拡充し、将来的な事業領域の拡大を見据え、ロボットやエネルギー関連技術、ビッグデータの活用、生物多様性に配慮した技術など、新たな分野についても積極的に研究開発を進めていきます。

当社グループの当連結会計年度における研究開発に要した費用の総額は1,771百万円です。

セグメントごとの研究開発活動について示すと次のとおりです。

 

 (土木事業)

土木事業では、顧客ニーズに対応した、施工の高度化や持続可能な社会の実現に寄与する技術などの研究開発を進めています。また、自然災害への対応や社会インフラの維持更新に関わる技術などの開発にも取り組んでいます。

(1) マスコンクリートのパイプクーリング制御システム「ひえたくん®」をNETIS登録

マスコンクリート(部材断面の大きなコンクリート)の温度ひび割れを抑制するパイプクーリング(コンクリート内部に配置したパイプに水を循環させ、コンクリートを冷却する工法)の効果を高めるため、㈱アクティオと共同で開発したクーリング水の流量・流方向を自動制御するシステムを「ひえたくん®」と命名し、NETIS(国土交通省の新技術情報提供システム)に登録しました。

本システムは、コンクリート温度を管理目標値に漸近するようにクーリング水の流量を自動調整するとともに、クーリングパイプの入口側と出口側のコンクリート温度差が小さくなるようにクーリング水の流方向を自動で切り替えることで、セメントの水和熱によるコンクリートの温度ひび割れを防止するものです。クーリング状況は、WEBモニタリングシステムにより遠方から確認することが可能で、コンクリートの温度管理業務の省力化も図れます。

今後は、温度ひび割れの発生が想定されるコンクリート構造物の品質向上及び省力化に寄与するシステムとして普及・展開していきます。

 

(2) 地盤改良施工状況・動態観測可視化システム「施工影響XRウォッチャー」を開発

地盤改良工事における施工状況及び地盤変状状況をリアルタイムで監視する可視化システム「施工影響XRウォッチャー」を開発しました(XR: 仮想空間画像処理技術)。

本システムは、地盤改良の施工位置や進捗状況などの施工情報をリアルタイムで3次元的に可視化することができます。また、周辺に取り付けた沈下計等の動態観測情報を集約することで、地盤の異変を即座に把握でき、監視業務の効率化や異常事態への迅速な対応が可能となります。

今後は、現場適用により本システムの機能向上を図り、施工の安全性向上に寄与するシステムとして展開していきます。

 

(3) 災害廃棄物の推定システムの開発及び最適な処理方法の検討に着手

豪雨や地震など大規模災害時における復旧作業では、災害廃棄物の迅速な処理が社会的課題となっており、自治体は被害状況などから統計的に災害廃棄物の量を予測し、処理実行計画の立案・更新をしています。しかし、災害廃棄物は、個々の災害の特性によって発生量や種類、発生箇所などが大きく異なり、正確に予測することが困難であるため、処理実行計画の策定が遅れ、処理効率の低下や復旧・復興の遅れを招くことが危惧されています。そこで、災害廃棄物の量と種類を迅速かつ正確に推定する計測システムの開発及び災害特性に応じた災害廃棄物の最適な処理方法の検討に着手しました。災害廃棄物の推定については、非可視光領域の波長を検知可能な「ハイパースペクトルカメラ」を用いた手法の確立を目指し、災害特性に応じた最適な処理方法については、土砂を分別する実験を通じて、含水率や粘性等の特性に応じた最適な分別方法の検証を進めています。

今後も、計測システムの開発及び最適な処理方法の検討を継続し、刻一刻と変化する災害廃棄物の仮置場の状況や効率的・効果的な処理方法を迅速に処理実行計画へフィードバックし、災害からの早期復旧・復興、資源循環型社会の形成に貢献していきます。

 

 (建築事業)

建築事業では、建築物の資産価値を維持し安全性を確保する免震・制振技術や、快適性を高める室内環境技術、SDGs達成にも貢献する省エネ・省資源・環境配慮技術などの開発、さらに企画・設計・施工の各フェーズにおける合理化などに取り組んでいます。

(1) より大きな引抜き抵抗力を評価できる場所打ちコンクリート拡底杭工法を開発

より大きな引抜き抵抗力を評価できる場所打ちコンクリート拡底杭工法「奥村・丸五式引抜き抵抗杭工法(OMR/B-2)」を丸五基礎工業㈱と共同で開発し、(一財)ベターリビングの評定(CBL FP020-21号)を取得しました。

本工法は、これまで考慮されなかった拡底部側面の傾斜による引抜き抵抗力を評価できるため、従来工法よりも杭の軸径部のスリム化や、杭長の短縮が可能となります。これにより、掘削土量や打設するコンクリート量、施工時に使用する安定液量などを削減でき、コストや地球環境への負荷の低減に繋がります。

今後は、超高層建物や高さに対して幅が狭い中層建物などの合理的な杭工法として積極的に適用していきます。

 

(2) 「コンクリート散水養生 自動認識ロボット」を開発

コンクリートの散水養生における乾湿状況を自動で認識できる「コンクリート散水養生 自動認識ロボット」を、ユアサ商事㈱と共同で開発し、実用化に向けた実証試験を行いました。

コンクリート打設後の散水養生は、コンクリートの強度や仕上がりを左右するため、乾湿状況の管理が非常に重要です。しかし、適切な湿潤状態を維持するには目視による常時確認が必要で、大変な労力がかかるうえ、養生期間において湿潤状態が維持されていることを定量的に自動記録する技術の開発も進んでいないことから、効率的な湿潤養生管理を実現する技術の開発に着手しました。

「コンクリート散水養生 自動認識ロボット」は、桐生電子開発(同)と共同開発した光学センサ(特許出願中)を搭載しており、コンクリート表面の乾湿状況を定量評価し自動認識することで、コンクリート打設後の湿潤養生管理を適切に行うとともに、点検・記録作業の省人化を可能とします。

今後は、建設現場に即した操作性や耐久性の向上、自動散水設備との連携及びロボットの小型化等の改良を進め、2024年度からの一般販売(ユアサ商事による)を目指します。

 

(3) 「音環境プレゼンテーションシステム」に工事騒音評価機能を追加

建物計画時に設計仕様の音環境を一般の方にもわかりやすく体感してもらうことを目的に開発した、完成建物の音環境をクラウド上で計算して再現し、試聴することができる「音環境プレゼンテーションシステム」に工事騒音評価機能を追加しました。適用可能な音域を工事騒音で問題となりやすい重低音域の周波数まで拡充するとともに、複数の工事騒音や暗騒音の影響を考慮した試聴音を再生できるよう改良しました。

今後は、設計案件だけでなく、施工案件にも積極的に活用していきます。

 

 (投資開発事業)

研究開発活動は特段行われていません。

 

 (その他)

研究開発活動は特段行われていません。