文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 会社の経営の基本方針
当社は、「堅実経営と誠実施工を信条に、社会から必要とされ続ける企業として、社業の発展を通じ広く社会に貢献する」ことを経営理念に掲げ、時代の趨勢、経営環境の変化に柔軟かつ迅速に対応して経営基盤の強化を図り、株主の期待に応え、ひいては社会に貢献することを基本方針としています。
当社グループでは、すべての事業活動においてこれらを踏まえ、ステークホルダーに信頼・満足・安心を提供していくことを目指しています。
(2) 中長期的な会社の経営戦略及び目標とする経営指標
① 2030年に向けたビジョン
建設市場においては、防災・減災対策、インフラ長寿命化、PPP/PFI事業の拡大、DXの推進や脱炭素に向けた投資など一定の需要が見込まれるものの、中長期的には、地政学的リスクによる景気への影響に加え、新設の建設投資の抑制、技能労働者不足の深刻化、物価や賃金の上昇による建設コストのさらなる高騰など、経営環境は一層厳しさを増すことも予想されます。
このような環境認識のもと、今後も長期的に事業を継続し、社会の持続的な発展に貢献するため、将来のありたい姿を示した「2030年に向けたビジョン」の実現を目指し、様々な取り組みを展開しています。
「2030年に向けたビジョン」は、当社グループの将来のありたい姿を示しており、未来に向かって事業を力強く推進し、堅実な成長軌道を描き続けるための全社員が共有する道標と捉えています。「2030年に向けたビジョン」の実現を目指して、ステークホルダーの皆さまに信頼される経営に取り組んでいきます。

② 中期経営計画
将来のありたい姿を示す「2030年に向けたビジョン」の実現を見据えた第3のステップとして、2025年5月に「中期経営計画(2025~2027年度)」を策定しました。






なお、「2030年に向けたビジョン」及び「中期経営計画(2025~2027年度)」の詳細については、当社ウェブサイトに掲載しています。
・2030年に向けたビジョン
https://www.okumuragumi.co.jp/corporate/vision/
・中期経営計画(2025~2027年度)
https://www.okumuragumi.co.jp/corporate/plan/
(3) 経営環境及び対処すべき課題
わが国経済の先行きは、雇用・所得環境の改善等を背景に緩やかな回復基調を辿ることが期待されていますが、物価上昇や諸外国の政策動向の影響が景気の下押しリスクとなるなど、予断を許さない状況が続くものと思われます。
建設業界においては、建設投資は引き続き堅調に推移することが見込まれますが、建設コストの上昇が懸念されるなど、楽観できない事業環境が続くものと思われます。
当社グループにおいては、今後も中長期的な成長を通じて社会の持続的な発展に貢献する所存であり、将来のありたい姿を示す「2030年に向けたビジョン」の実現を見据えた第3のステップとして、「中期経営計画(2025~2027年度)」を策定しています。
同計画においては、中長期的な業績の拡大に向け、「持続的な成長に向けた経営基盤の強化」を図ることとしており、建設事業の収益力・技術力の向上を中心とした「企業価値の向上」に取り組むとともに、建設事業に依存しない安定的な収益基盤の構築に向けた「事業領域の拡大」を推進していきます。
また、事業推進に欠かすことができない人材の確保及び多様な人材が活躍しその能力を最大限に発揮できる環境整備に取り組むとともに、企業の持続的な成長を牽引する人材の育成に努めるなど、「人的資源の活用」により社員が誇れる企業を目指していきます。
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
当社グループは、これまでの歴史の中で、『「堅実経営」と「誠実施工」を信条に、社会から必要とされ続ける企業として、社業の発展を通じ広く社会に貢献する』という経営理念を受け継いできており、その経営理念を基礎としながら、将来のありたい姿を示す「2030年に向けたビジョン」の実現を目指して、事業活動を推進しています。当社グループが描いているビジョンは、SDGsが目指す「持続可能な共生社会の実現」と目的を一つにするものと捉えており、事業活動による価値創造がSDGsへの貢献に繋がるものと考えています。
①ガバナンス
当社グループでは、ESG/SDGsに関連する課題等について審議し、戦略的な取り組みを推進する組織として、ESG/SDGs推進委員会を設置しています。
同委員会は、代表取締役社長を委員長、各本部組織の長及び東日本・西日本支社長を委員として構成し、その審議結果等については、必要に応じて取締役会に付議・報告することとするなど、取締役会による監督が適切に行われる体制としています。
②戦略
当社グループでは、気候関連を含めたサステナビリティ課題への対応が重要な経営課題であるとの認識のもと、ESG/SDGsに関わるリスクと機会、それらが顕在化した場合のインパクトを分析し、その発生可能性と影響度の2軸により、ESG/SDGsに関わる課題を抽出しており、気候変動に関する課題については、上記に加えTCFD提言に基づくシナリオにおける重要度も評価したうえで課題を抽出しています。
ESG/SDGs推進委員会においては、それら課題の重要度を分析した結果、ESG/SDGsに関わる当社グループのマテリアリティ(重要課題)として、「環境に配慮した事業の推進」を特定したほか、事業活動の根幹となる「持続可能な社会インフラへの貢献」、「ウェルビーイングを実現する職場づくり」、「コーポレート・ガバナンスの強化」を特定しており、マテリアリティ(重要課題)を中心に、関連する課題の解決に向けた取り組みを推進することにしています。
また、これら課題解決に向けた方策を中期経営計画における各部門の施策等に反映することで、事業活動とESG/SDGsに関わる取り組みを一体的に推進できるようにしています。
[ESG/SDGsに関わる当社グループのマテリアリティ(重要課題)等]
※1 リスクに関しては負のインパクト、機会に関しては正のインパクトを記載しています。
※2 発生可能性と影響度の2軸で重要度を評価しております。1~5の5段階で評価し、5が最も重要度が高いことを示しています
(5:極めて高い、4:高い、3:中程度、2:低い、1:極めて低い)。
※3 ESG/SDGsに関わる当社グループのマテリアリティ(重要課題)は太字下線で示し、語頭の数字は各マテリアリティとの関連性を示しています。
★印は、気候変動に関連した課題を示しています。
※4 「2℃以下シナリオ」及び「4℃シナリオ」に基づく検討(シナリオ分析)により、気候関連のリスク及び機会が組織に及ぼす影響を分析し、発生可能性と影響度の2軸で重要度を評価しました。
<気候変動に関する方針等>
当社グループは、「人と地球に優しい環境の創造と保全」を基本理念に掲げ、環境汚染の予防、環境負荷の低減及び環境の保全に努めています。
当社グループでは、「2℃以下シナリオ」及び「4℃シナリオ」に基づく検討(シナリオ分析)により、気候関連のリスク及び機会が組織に及ぼす影響を分析しており、気候変動に関連する課題は、前述の「ESG/SDGsに関わる当社グループのマテリアリティ(重要課題)等」内で★印で示しているとおりです。
・2℃以下シナリオ:世界の平均気温の上昇を産業革命前より2℃を十分に下回る水準を保ち、1.5℃に抑える努力を継続することを想定したシナリオ
・4℃ シ ナ リ オ:世界の平均気温が産業革命前より4℃程度上昇することを想定したシナリオ
同分析の結果や課題等を踏まえ、中期経営計画(2025~2027年度)においては、気候変動に係る非財務目標として、「施工段階・オフィスにおけるCO2排出量」「建設混合廃棄物の建築新築工事延床面積あたりの排出原単位」「設計施工案件のZEB化提案率」を指標として設定しています。
これら目標達成に向けて、省エネルギー性に配慮した工法及び建設機械・車両の採用、施工の効率化に資する技術開発に加え、再生可能エネルギー由来電力の使用や環境配慮型燃料の活用等を推進することで、脱炭素社会の実現に貢献していきます。
なお、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを強化するため、中期経営計画と併せて環境計画を策定しており、環境計画で定める一部目標を中期経営計画における非財務目標と一致させることで、環境に配慮した事業活動を中期経営計画と一体的に推進する体制としています。
<人的資本に関する方針等>
当社グループでは「中期経営計画(2025~2027年度)」において、事業戦略の基本方針として「人的資源の活用」を掲げており、多様な人材が個々の能力を最大限に発揮し、すべての社員が生き生きと活躍できる職場づくりを推進するため、「人材育成方針」「社内環境整備方針」を策定のうえ、それら方針に基づく取り組みを進めています。
[人材育成方針]
具体的には、職務遂行能力に応じて実施する階層別研修や、職種ごとに求められる専門的知識の習得を目的とした職種別研修、安全衛生管理に関する知識を体系的に学び判断力・指導力をみがく安全衛生教育などの定期的な教育に加え、全職員のDXリテラシー向上教育やコンプライアンス研修等を随時実施するなど人材育成を計画的かつ積極的に行うとともに、資格取得費用の助成などを通じて職員の自発的なスキルアップも積極的に支援しています。
また、職員の定年年齢を60歳から65歳に延長し、60歳以降も引き続き活躍できる体制を整えるとともに、当社の財産であるベテラン職員の知識・経験・技術を若手職員・中堅職員に伝承することに注力しており、職場内研修(OJT)等を通じて当社の「堅実・誠実」のDNAを受け継ぐ人材を育成しています。
このほか、初任給の引き上げやベースアップの実施、業務成績や能力を適正に処遇へ反映する人事評価制度の改定など、エンゲージメント向上の取り組みを進めるとともに、従業員に対するインセンティブ・プランの一環として「従業員向け株式給付信託」を導入するなど、中長期的な業績の向上及び企業価値の増大への従業員の貢献意欲や士気を高める取り組みを進めています。
[社内環境整備方針]
具体的には、働き方改革を推進し、多様な人材が活躍できる職場環境を整備することにより、従業員の働きがいの向上に繋がる人材投資に取り組んでいきます。
その一環として女性活躍推進にも取り組んでおり、女性社員の積極的採用、育成を行うとともに、育児と仕事の両立を支援する制度の充実等を通じて女性社員が安心して働ける環境整備を進めることにより、女性の指導的立場での活躍を着実に推進します。
また、社員の健康づくりを積極的に支援しており、2025年1月より就業時間中の禁煙と全常設事業所の喫煙所を廃止する取り組みを行うなど、まずは社員が心身ともに健康で、さらには個性や能力を最大限に発揮することができる環境を整えることにより、社員一人ひとりのウェルビーイングの実現を目指しています。
なお、2023年10月には、多様な人材が能力を最大限に発揮できることを志向した新オフィス「クロスイノベーションセンター」を東京丸の内に開設しており、同オフィスは「CASBEE-ウェルネスオフィス認証」で最高位となる「Sランク」を取得しています。
※CASBEE-ウェルネスオフィス認証とは、建物利用者の健康性、快適性の維持・増進を支援する建物の仕様、性能、取り組みを評価するツールです。
③リスク管理
当社グループでは、ESG/SDGs推進委員会において、ESG/SDGsに関する課題等の分析・識別・評価を行い、事業環境や社会情勢、課題に対する各種取り組み状況等に合わせ、マテリアリティ(重要課題)を含む課題を適宜見直すなど、関連するリスクを総合的に管理しています。また、マテリアリティ(重要課題)を中心に、関連する課題の解決に向けた方策を中期経営計画に反映することで、事業活動とESG/SDGsに関わる取り組みを一体的に推進する体制とし、解決に向けた方策の実効性を高めています。
④指標と目標
<気候変動に関する指標と目標>
当社グループでは、「②戦略」において記載した、気候変動に関連するリスク及び機会を評価・管理する際に使用する指標と目標を次のとおり、「中期経営計画(2025~2027年度)」における非財務目標として設定しています。
※「施工段階・オフィスにおけるCO2排出量」については、中期経営計画(2025~2027年度)における主要目標として設定しています。
また、長期的な指標と目標として、温室効果ガス(GHG)排出削減目標を次のとおり設定しています。なお、同目標は2023年1月にSBT認定を取得しています。
※SBT(Science Based Targets):パリ協定(世界の気温上昇を産業革命前より2℃を十分に下回る水準を保ち、1.5℃に抑える努力を継続するもの)が要求する水準と整合した、5~15年先を目標年として企業が設定する「温室効果ガス排出削減目標」のこと。
(注)1 Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出
Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
Scope3:Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
2 (参考)2020年度排出総量実績 Scope1+2:41,466.13 t-CO2 Scope3:1,180,258.95 t-CO2
2024年度排出総量実績 Scope1+2:49,123.28 t-CO2 Scope3:1,586,008.79 t-CO2
<人的資本に関する指標と目標>
当社グループでは、「②戦略」において記載した、人的資本に関する指標と目標を次のとおり、「中期経営計画(2025~2027年度)」における非財務目標として設定しています。
※1 「新卒3年以内の離職率」「管理職に占める女性比率」については、中期経営計画(2025~2027年度)における主要目標として設定しています。
※2 該当事業年度末日の翌日(4月1日)時点
※3 該当事業年度に育児休業等を取得した男性労働者数 ÷ 該当事業年度に配偶者が出産した男性労働者数
(注)上記のほか「健康経営優良法人(ホワイト500)の認定」の継続的な取得を定性的な目標として設定し、社員エンゲージメントの向上や人材確保をはじめ、「人的資源の活用」に資する各種取り組みを推進しています。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、次のとおりで、当社グループはこれらのリスクに対して適切な管理を行い、業績等への影響の回避を図っています。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
① 建設投資の動向
事業環境の変化を見据え、事業戦略に基づき事業領域の拡大を目指すなど、強固な収益基盤の構築に努めていますが、事業ポートフォリオに占める建設事業の割合が大きいため、財政政策の変更による公共投資の縮減や国内外の景気後退等による民間設備投資の縮小など、受注環境が著しく悪化し受注競争が激化した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
主要資材価格及び労務費の動向を常時注視し、大きな価格変動が見込まれる際には契約時期を調整する等により適正な価格での調達に努めていますが、原材料や原油価格の高騰、建設技能労働者の不足、需給バランスの偏り等により資材価格或いは労務費が高騰し、コスト増加分を請負代金に反映することが困難な場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
品質マネジメントシステムの運用により、施工案件の品質管理の徹底に努めており、品質トラブル及び顧客クレーム発生時には原因調査や是正を迅速に行っていますが、設計、施工等のサイクルにおいて、万一、重大な欠陥が発生した場合には、企業評価の悪化や契約不適合責任に基づく損害賠償金の支払い等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。
労働安全衛生マネジメントシステムの運用により、事業所及び建設現場において安全衛生パトロールを実施する等、安全衛生管理には万全を期しており、災害発生時には原因調査や是正を迅速に行っていますが、万一、重大事故や労働災害が発生した場合には、企業評価の悪化や関係官庁からの行政処分等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。
顧客及び協力会社についての信用調査を慎重かつ徹底的に行いリスク回避に努めていますが、万一、取引先が信用不安に陥った場合には、債権の回収不能や施工遅延による追加費用の発生等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。
事業戦略に基づき、事業領域の拡大のため不動産事業の強化を図っており、不動産取得に際しては採算性等に関する十分な検討を行っていますが、国内外の景気動向や金利動向、不動産市況に著しい変化が生じた場合には、保有不動産の時価の著しい低下等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、取引関係の維持・強化等を目的として保有している有価証券等については、保有に伴う便益・リスクや企業価値向上に資するか等を定期的に精査し、縮減する等見直しを行っていますが、時価が著しく下落した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
PFI事業等の期間が長期にわたる事業においては、事業内容、採算性等を精査し参入の可否を慎重に判断していますが、経済動向、法的規制の変更、利用者減少等の市況の変化など、事業環境に著しい変化が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
事業戦略に基づき、事業領域の拡大のため海外事業基盤の構築を図っており、海外事業への取り組みに際しては、詳細な現地調査による情報収集に努めるとともに、為替リスクを回避するため、資金需要に応じた調達方法やヘッジ手段を検討していますが、進出国における政治・経済情勢・法制度や為替相場等に著しい変化が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑨ 新規事業展開のリスク
事業戦略に基づき、事業領域の拡大のため新規事業への参入を図っており、再生可能エネルギー事業等の新規事業への取り組みに際しては、事業性、将来性等に関する十分な検討を行っていますが、予期しない政治・経済情勢、為替相場等の市場の急激な変化等により、事業環境に著しい変化が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
コンプライアンスの徹底を経営上の重要課題と位置づけ、役職員へのコンプライアンス教育を実施するほか、コンプライアンス委員会、談合防止専門委員会を設置し、法的規制の遵守徹底を図っていますが、万一、法令違反が発生した場合には、社会的信用を著しく損ねるとともに、関係官庁からの行政処分や公共発注機関からの指名停止処分等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。
大規模な自然災害等が発生した場合においても、事業活動を継続ないしは速やかに復旧し、必要な体制を構築できるよう事業継続計画(BCP)を整備していますが、地震、津波、風水害等の大規模自然災害や感染症の世界的流行が発生し、当社グループの従業員や保有資産に対する損害のほか、事業環境の悪化或いはその懸念が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、気候変動に関するリスク及び対応等については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおりです。
情報システムの安定稼働のため、システム基盤はクラウド環境を利用し、アクセス制御、バックアップなどの取り組みを行っていますが、不正アクセス等のサイバー攻撃の被害にあった場合には、システム障害が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、顧客の機密情報及び個人情報を保全するため、情報セキュリティ体制と社内規程を整備し、教育・訓練を通じて役職員のセキュリティ意識を高める取り組みも行っていますが、サイバー攻撃やパソコン・スマートデバイスの紛失・盗難などによる情報漏洩が発生した場合には、顧客や社会からの信用失墜や損害賠償金の支払い等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。
計画的な新卒採用と積極的な中途採用により多様な人材を確保するとともに、働き方改革の推進によるワークライフバランスの向上や人事制度の充実による処遇改善等を進めることで職員のエンゲージメントを高め離職防止に努めていますが、職員が計画通りに採用できない若しくは離職が増加することにより人員の確保が計画通りに進まない場合、適切な人員配置が出来ず、事業規模の拡大を妨げる、または事業規模の縮小を余儀なくされるなど、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(社内調査委員会の調査結果とその影響)
当社は、2024年10月24日付の「社内調査委員会の設置に関するお知らせ」で公表しましたとおり、当社が受注した工事において生じた費用を、当該工事で計上せず別の工事に計上(原価の付替え)した不適切な原価管理(以下、「本事案」という。)が行われていたことが判明したため、事実確認、類似事案の有無の確認、原因究明及び再発防止策の策定等を目的として、外部有識者を中心メンバーとする社内調査委員会を設置し、調査等を進めて参りました。
2025年1月15日付の「社内調査委員会の調査報告書の受領及び再発防止策の策定等に関するお知らせ」で公表しましたとおり、社内調査委員会から2025年1月15日付で調査報告書を受領しました。当社としましては、社内調査委員会が認定した事実と原因分析に基づいた再発防止策の提言を真摯に受け止め、同日開催の取締役会において再発防止策を決議し、併せて、経営責任を明確にするために、役員報酬の減額を決定しております。
なお、本事案の過去の連結財務諸表に与える影響は軽微であるため、過年度の有価証券報告書、四半期報告書及び内部統制報告書の訂正は行わないこととしております。当連結会計年度の連結財務諸表に与える影響額については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (追加情報) 2 不適切な原価管理の影響について」をご覧ください。
当社といたしましては、このたびの事態を厳粛に受け止め、再発防止策を着実に実行するとともに、役職員に対する指導・教育を通じ、コンプライアンスの一層の強化を図ることで、株主の皆様をはじめとするステークホルダーの皆様からの信頼回復に努めて参ります。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
当連結会計年度のわが国経済は、雇用・所得環境の改善が進む中、設備投資の持ち直しやインバウンド需要の増加がみられるなど緩やかな回復が続きました。
建設業界においては、建設投資は公共、民間ともに堅調に推移したものの、資機材価格の高止まりや労務需給の逼迫等が建設コストの上昇圧力となるなど、厳しい事業環境に置かれました。
当社グループにおいては、建築事業における前期からの繰越工事が順調に進捗したこと等により、売上高は、前期に比べ3.5%増加した298,222百万円となりました。
建築事業の売上総利益は、売上高が増加したことに加え、大型で高採算の工事が竣工したこと等により前期に比べ増加した一方で、土木事業の同利益は、特定の国内大型工事が建設資機材価格や労務費の高騰等により見積総原価が増大し、損益改善の見通しが立たないため多額の工事損失引当金を計上したこと等が影響し、前期に比べ減少となりました。また、2024年7月に連結子会社である石狩バイオエナジー(同)の発電施設において爆発事故が発生し、商業運転を停止したことや発電施設の維持管理のための費用が増大したこと等により、投資開発事業等の売上総利益が前期に比べ大幅に減少し、当社グループの営業利益は同29.0%減少した9,731百万円となりました。営業外費用には、同社が燃料調達取引に係る為替相場の変動リスクをヘッジするために締結した為替予約契約の時価評価損を計上したこと等により、経常利益は同40.0%減少した8,926百万円、特別損失には、同社が保有する固定資産の帳簿価額を将来の回収可能見込額まで切下げる減損損失を計上したこと等により、親会社株主に帰属する当期純利益は同78.2%減少した2,722百万円となりました。
今回の爆発事故に関連して特別損失に計上した同社の減損損失は、「固定資産の減損に係る会計基準」における為替予約から生じるキャッシュ・フローの解釈について、会計監査人である有限責任監査法人トーマツと慎重に協議を重ねた結果、計上するとの結論に至ったものです。
同社は事故発生後に外部専門家を招いた事故調査委員会を設置し、事故の原因調査・分析を実施、再発防止策を取りまとめ、現在は再稼働に向けて取り組んでいるところです。同社の事業は長期的には採算がとれる事業であると考えており、再稼働後は、今回の減損損失計上による減価償却費の減少によって営業利益は大幅に改善し、当社グループの業績を押し上げていくものと見込んでいます。
(売上高)
土木事業の売上高が前期に比べ4.0%減少しましたが、建築事業の売上高が同12.3%増加したため、売上高合計は同3.5%増加した298,222百万円となりました。
(売上総利益)
建築事業の売上総利益が前期に比べ48.4%増加しましたが、土木事業及び投資開発事業等の売上総利益がそれぞれ同31.1%、90.1%減少したため、売上総利益合計は同10.0%減少した31,688百万円となりました。
(販売費及び一般管理費)
租税公課や地代家賃が増加したこと等により、前期に比べ472百万円増加した21,956百万円となりました。
(営業損益)
営業利益は、売上総利益が減少したことや、販売費及び一般管理費が増加したことにより、前期に比べ29.0%減少した9,731百万円となりました。
(営業外損益)
前期に為替差益を計上したことの反動等により営業外収益が前期に比べ135百万円減少したことや、石狩バイオエナジー(同)における為替予約評価損の計上等により営業外費用が同1,839百万円増加したことにより、営業外収支は前期の1,170百万円の黒字から804百万円の赤字に転じました。
(経常損益)
経常利益は、営業利益の減少及び営業外収支の悪化により、前期に比べ40.0%減少した8,926百万円となりました。
(特別損益)
石狩バイオエナジー(同)における減損損失の計上等により特別損失が前期に比べ13,354百万円増加したこと等により、特別損益は前期の3,293百万円の黒字から10,353百万円の赤字に転じました。
(法人税等)
法人税、住民税及び事業税が前期に比べ812百万円減少、法人税等調整額が同76百万円減少し、法人税等は同889百万円減少した5,118百万円となりました。
(親会社株主に帰属する当期純損益)
以上により、親会社株主に帰属する当期純利益は前期に比べ78.2%減少した2,722百万円となりました。
2022年度を初年度として策定しました「中期経営計画(2022~2024年度)」の計画最終年度である当連結会計年度の経営成績を、同計画における主要数値目標と比較すると、次のとおりです。
売上高については、工事受注が堅調に推移したことに加え、手持ち工事を順調に消化したことから、目標を達成することができました。
利益面については、建設事業を中心とした業務効率化やDX推進による生産性向上のほか、安定的な人材確保、従業員のモチベーション向上に繋がる各種制度の充実に取り組むなど、収益基盤の強化は着実に進んでいるものの、2024年度における特定国内大型土木工事の損失計上や連結子会社である石狩バイオエナジー(同)の発電施設が爆発事故により商業運転を停止したこと等により、営業利益及び経常利益目標は未達となりました。
ROEについては、着実な株主還元政策の実施や政策保有株式の縮減など資本効率の向上に取り組んだものの、営業利益、経常利益目標の未達に加え、連結子会社である石狩バイオエナジー(同)での多額の特別損失(減損損失)の計上等により、目標未達となりました。
なお、2025年度を初年度とする「中期経営計画(2025~2027年度)」の数値目標については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しています。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
(土木事業)
売上高は前期に比べ4.0%減少した99,024百万円、前期からの繰越工事は全般的に追加工事の獲得等により採算が向上したものの、特定の国内大型工事で多額の損失を計上したことから、営業利益は同50.6%減少した4,722百万円となりました。
(建築事業)
前期からの繰越工事が概ね計画どおりに進捗したことから、売上高は前期に比べ12.3%増加した185,551百万円、大型の高採算工事が竣工したことに加え、全般的に追加工事の獲得や原価低減により採算が向上したこと等から、営業利益は同624.3%増加した6,623百万円となりました。
(投資開発事業)
売上高は前期に比べ44.6%減少した7,875百万円、営業損失は2,109百万円(前期は2,605百万円の営業利益)となりました。営業利益の減少は、連結子会社である石狩バイオエナジー(同)の商業運転停止に伴う売上高の減少、爆発事故の原因究明のための調査費用や発電施設の維持管理費用等の発生等によるものです。
(その他)
売上高は前期に比べ3.2%増加した5,771百万円、営業利益は同25.9%減少した455百万円となりました。
生産、受注及び販売の実績は次のとおりです。
② 売上実績
(注) 1 当社グループにおいては、土木事業、建築事業以外での受注及び生産は僅少なため、受注実績については、土木事業、建築事業のみ記載しています。
2 当社グループが営んでいる事業の大部分を占める土木事業、建築事業では、生産実績を定義することが
困難なため、「生産の実績」は記載していません。
3 受注実績、売上実績については、セグメント間の取引を相殺消去して記載しています。
4 売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はありません。
なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりです。
建設事業における受注工事高及び完成工事高の実績
(注) 1 前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高に
その増減額を含みます。したがって、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれます。
2 次期繰越工事高は(前期繰越工事高+当期受注工事高-当期完成工事高)です。
工事の受注方法は、特命と競争に大別されます。
(注) 百分比は請負金額比です。
(注) 1 完成工事のうち主なものは、次のとおりです。
前事業年度
当事業年度
2 完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりです。
前事業年度
該当する相手先はありません。
当事業年度
④ 次期繰越工事高(2025年3月31日現在)
(注) 次期繰越工事のうち主なものは、次のとおりです。
(2) 財政状態
当連結会計年度末の資産合計は393,466百万円、負債合計は221,010百万円、純資産合計は172,455百万円となりました。また、当社グループの自己資本比率は45.1%(前連結会計年度末は49.0%)となりました。
流動資産は、現金預金が減少しましたが、受取手形・完成工事未収入金等が増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ20,717百万円増加した241,135百万円となりました。
固定資産は、機械、運搬具及び工具器具備品、投資有価証券が減少したこと等により、前連結会計年度末に比べ12,001百万円減少した152,330百万円となりました。
この結果、資産合計は、前連結会計年度末に比べ8,716百万円増加した393,466百万円となりました。
流動負債は、短期借入金が増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ28,599百万円増加した174,967百万円となりました。
固定負債は、繰延税金負債が増加しましたが、ノンリコース借入金が減少したこと等により、前連結会計年度末に比べ765百万円減少した46,043百万円となりました。
この結果、負債合計は、前連結会計年度末に比べ27,833百万円増加した221,010百万円となりました。
純資産合計は、配当金の支払い等により利益剰余金が減少したことや、その他投資有価証券評価差額金が減少したこと等により、前連結会計年度末に比べ19,117百万円減少した172,455百万円となりました。
当連結会計年度のキャッシュ・フローについては、財務活動により12,070百万円増加しましたが、営業活動により11,828百万円、投資活動により1,492百万円それぞれ減少したことにより、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ1,477百万円減少した27,440百万円となりました。
売上債権の増加等により、11,828百万円の資金減少となりました。(前連結会計年度は、17,139百万円の資金減少)
有価証券及び投資有価証券の売却及び償還等により資金が増加しましたが、有形及び無形固定資産の取得等により、1,492百万円の資金減少となりました。(前連結会計年度は、1,458百万円の資金増加)
配当金の支払い等により資金が減少しましたが、借入金の増加等により、12,070百万円の資金増加となりました。(前連結会計年度は、4,304百万円の資金減少)
キャッシュ・フロー指標のトレンドは以下のとおりです。
(注)1 キャッシュ・フロー指標のトレンドの計算式及び算出に利用した数字のベースについては次のとおりで
す。
有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対
象としています。
営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フロー
を使用しています。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使
用しています。
2 前連結会計年度及び当連結会計年度のキャッシュ・フロー対有利子負債比率及びインタレスト・カバ
レッジ・レシオについては、営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスのため記載していません。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、工事の完成に要する外注費等の工事費や人件費等の販売費及び一般管理費等の営業費用によるものです。
また、「中期経営計画(2025~2027年度)」では「企業価値の向上」「事業領域の拡大」「人的資源の活用」を事業戦略の基本方針としており、これらに戦略的に投資することとしています。
上記の資金需要に対し、自己資金の活用及び金融機関からの借入(ノンリコース借入を含む)を基本として必要資金の調達を行う方針です。
なお、当社グループは運転資金の効率的かつ機動的な調達を行うため、取引銀行3行と総額80億円のコミットメントライン契約を締結しており、緊急の資金需要等の流動性リスクに備えています。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いていますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しています。
2024年4月1日前に締結された金銭消費貸借契約については、「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」附則第3条第4項により記載を省略しています。
当社グループは、建設構造物の品質や安全性の向上、さらには脱炭素社会の実現など多様化する社会のニーズに柔軟に対応すべく、建設に関する技術の研究開発を推進しています。2023年10月に開設したクロスイノベーションセンター(通称:クロスアイ)を拠点に、研究開発の促進に加え、ベンチャー企業等との交流による新技術の開拓を積極的に進めています。
当社グループの当連結会計年度における研究開発に要した費用の総額は
セグメントごとの研究開発活動について示すと次のとおりです。
(1) プレキャストPC床版の新しい継手工法「Zスパイラル®工法」を開発
プレキャストPC床版を、矩形状のスパイラル筋「Zスパイラル筋」を用いて接合する継手工法「Zスパイラル®工法」を昭和コンクリート工業㈱と共同で開発しました。
近年、高速道路の老朽化対策として床版取替を行う大規模更新工事が多く発注されており、施工性の向上が求められていました。
本工法は、床版取替工事の標準工法であるループ継手と同じループ筋にZスパイラル筋、せん断キーを組み合わせ、早強コンクリートを充填して一体化させるシンプルな構造です。本工法で接合したプレキャストPC床版は、床版の疲労耐久性を評価する輪荷重走行試験により、耐用年数100年相当を有することを確認しました。
標準工法では、ループ筋内に橋軸直角方向鉄筋を通す作業に多くの時間と労力を要しますが、本工法は、Zスパイラル筋をループ筋の上部から挿入し、ループ筋に結束固定するだけでよいため、配筋作業時間を大幅に短縮できるうえ、橋軸直角方向鉄筋を通すための足場の設置や作業ヤードの確保が不要となります。
実物大の床版試験体を用いた施工性確認試験により、接合部の配筋にかかる作業時間をループ継手工法に比べ約75%短縮できることを確認しました。
今後は、高速道路の床版取替工事に本工法を積極的に提案し、普及・展開を図っていきます。
(2) 「山岳トンネルの覆工コンクリート自動打設システム」を開発
山岳トンネルにおける覆工コンクリート施工の省人化・省力化を目的に、コンクリートの圧送と締固め作業を自動化する「自動打設システム」を北陸鋼産㈱と共同で開発しました。
本システムは、当社が開発した「高速打設システム」と「圧力計による打設高さ検知システム」を組み合わせ、これに圧送ポンプ機のリモコン端子と型枠バイブレータの制御盤を接続し、あらかじめ設定したコンクリートの打上がり高さに応じたポンプの圧送速度、ポンプと型枠バイブレータの稼働・停止を自動制御するものです。これにより、覆工コンクリートの打設が、打設口の切替え作業を除き自動化され、打設作業における省人化と、技能労働者の経験や感覚に頼らない施工が実現します。
当社技術研究所において、実大規模の移動式型枠に中流動コンクリートを用いた施工実験を行い、本システムの実用性を確認しました。バイブレータの稼働のタイミングや作動時間をコンクリートの打上がり高さの計測値に基づき定量的に制御し、脱型後の表面観察や表面透気係数試験等で品質が確保されていることを確認しました。
今後は、現場での施工結果をフィードバックして技術のブラッシュアップを図るとともに、移動式型枠の設置や養生などの作業を含めた自動化に取り組み、山岳トンネル工事のさらなる生産性向上を目指します。
(3) 「有機フッ素化合物(PFAS)による地下水・土壌汚染浄化技術」を開発
人体への有害性が指摘されている有機フッ素化合物(以下、「PFAS」)について、超強力酸化触媒を用いて浄化する技術を名古屋大学と共同で開発しました。
多くの産業分野で利用されているPFASは自然界でほぼ分解されず、人体や環境中に長く残る特性を持っています。現在、国内での検出事例が報道されるなど汚染問題が顕在化しています。
本技術は、名古屋大学物質科学国際研究センター/大学院理学研究科の山田泰之准教授・大学院理学研究科の田中健太郎教授のグループが開発した超強力酸化触媒「金属錯体担持カーボン触媒」を用いてPFASを酸化分解するものです。
今回、同大学研究グループとの共同研究により、カーボン触媒のさらなる高活性化に成功し、水溶液中で様々なPFASが酸化分解可能であることを確認しました。さらに本技術を用いれば、汚染された河川水からPFASの一種であるPFOA(ペルフルオロオクタン酸)を99%以上吸着により除去しつつ、その一部を分解できることがわかりました。
今後は、触媒にさらなる改良を加えるとともに、本技術をPFASにより汚染された地下水・土壌の浄化工事等に適用し、環境修復・保全の観点から社会に貢献していきます。
建築事業では、建築物を地震から守り安全・安心を提供する免震技術や、快適性を高める室内環境技術、SDGs達成にも貢献する省エネ・省資源・環境配慮技術などの開発、さらには企画・設計・施工の各フェーズにおける合理化などに取り組んでいます。
(1) 巨大地震にも対応できる「性能可変オイルダンパー(VOD®)」を実適用
東北大学、(有)シズメテックと共同開発した「性能可変オイルダンパー(VOD®)」を既存免震建物である当社名古屋支店に設置しました。
免震建物にVOD®を適用することで、中大地震時には免震効果を維持しつつ、巨大地震時には減衰力(自身のエネルギーを吸収し揺れを小さくする力)が増加し、免震層の擁壁への衝突を回避します。
当社名古屋支店は、国土交通省通知「超高層建築物等における南海トラフ沿いの巨大地震による長周期地震動対策について」に記載のある「設計時に構造計算に用いた地震動の大きさを上回る可能性が高い地域」にあり、巨大地震時には建物が免震層の擁壁に衝突するおそれがありました。この対策として、既設の従来型ダンパーをVOD®に全数交換する改修工事を行いました。
このVOD®の開発・実建物への適用が評価され、「第26回日本免震構造協会賞 技術賞」を受賞しました。
今後は、長周期地震動作用時に擁壁への衝突が危惧される既存の免震建物のほか、従来よりも免震クリアランスを抑えることで建築面積を拡大できる狭小敷地の免震建物にも本技術を適用していきます。
鉄骨造(以下、S造)の建築物において、基礎梁をS造の梁として既製杭と接合する「鉄骨基礎梁工法」を開発し、(一財)日本建築総合試験所の建築技術性能証明(GBRC性能証明 第24-20号)を取得しました(特許出願中)。
本工法は、杭を埋め込んだ下部フーチングと、上部構造の柱と基礎梁の接合部を巻き込んだ上部フーチングを直列的に結合することが特長です。これにより、基礎梁をRC造の梁とした場合と比べて、基礎梁重量の減少による杭径等の縮小に伴う杭工事費の削減や、鉄筋・型枠・コンクリートなどの躯体数量の減少に伴う施工の省力化と工期短縮が期待できます。
今後は、大型物流倉庫や店舗の設計施工案件などで積極的に提案していきます。
研究開発活動は特段行われていません。
研究開発活動は特段行われていません。