当期におけるわが国経済は、企業収益の改善に加え、輸出や設備投資の回復、個人消費も徐々に持ち直してきており、緩やかな回復基調にあります。今後も平成28年度第2次補正予算による公共投資を中心とした景気押し上げ効果もあり、引き続き緩やかな景気回復が続くと思われますが、資源価格の上昇や個人消費の伸びの鈍化、海外景気の不安要因などもあり、予断を許さない状況と思われます。
国内建設市場におきましては、補正予算による公共工事の上積みに加え、首都圏を中心としたインフラの整備や再開発事業などの活発な民間投資もあって、建設需要は底堅く推移しました。こうした強含みの建設投資は暫く期待できる環境にはありますが、今後は一段と建設技能労働者の不足感が強まる上、資材コストの上昇なども懸念されることから、従来以上に環境の変化に応じた慎重な判断と対応が必要になると思われます。
このような状況下、「中期経営計画2016-2018」の初年度である当期の業績は以下のとおりとなりました。
まず、連結売上高は、建設業界全体の良好な市場環境もあり、順調に積み上げることができましたが、大型工事の竣工が続いた前年度比では、完成工事高が110億円減少したため、4,039億円となりました。
次に、利益面につきましては、労務費や原材料費が強弱入り混じった動きを示したものの、概ね安定した水準であったことから、土木部門は引き続き高い利益水準を維持することができました。また、建築部門も生産効率の改善やコスト削減努力もあって、採算性が大幅に改善し、全体としても完成工事総利益率を大きく改善することができました。
この結果、営業利益は279億円(前年度比46億円増加)、経常利益は262億円(前年度比44億円増加)となり、前年度に続き合併後最高益を更新することができました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は170億円(前年度比71億円増加)となりました。
土木部門・建築部門それぞれのセグメント業績は以下のとおりです。なお、部門ごとのデータは、内部売上高、または振替高を含めて記載しています。
(土木部門)
売上高は、前年度比1.4%減の1,641億円となりましたが、完成工事総利益は高い利益水準を維持し、前年度比5.9%増の225億円となりました。
(建築部門)
売上高は、前年度比3.4%減の2,403億円となりましたが、完成工事総利益は工事採算性の改善により、前年度比30.1%増の238億円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益254億円の計上があったものの、売上債権の増加、仕入債務の減少、法人税等の支払等により39億円の資金の減少(前期は107億円の資金の増加)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形及び無形固定資産の取得等により16億円の資金の減少(前期は8億円の資金の増加)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の増加等により78億円の資金の増加(前期は22億円の資金の増加)となりました。
以上の結果、現金及び現金同等物の期末残高は598億円(前期末比21億円の資金の増加)となりました。
当社グループが営んでいる事業の大部分を占める建設事業では生産実績を定義することが困難であるため、「生産の状況」は記載していません。また、連結子会社においては受注生産形態をとっていない事業もあることから、報告セグメントごとに受注規模を金額あるいは数量で示すことはしていません。
よって、受注及び販売の状況については、可能な限り「7 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」において報告セグメントの種類に関連付けて記載しています。
なお、参考のため提出会社個別の建設事業の状況は次のとおりです。
建設事業における受注工事高及び完成工事高の状況
|
期別 |
区分 |
前期繰越 |
当期受注 |
計 |
当期完成 |
次期繰越 |
|
前事業年度 (自平成27年4月1日 至平成28年3月31日) |
土木工事 |
230,958 |
122,579 |
353,537 |
123,130 |
230,407 |
|
建築工事 |
201,078 |
229,418 |
430,497 |
197,651 |
232,845 |
|
|
計 |
432,037 |
351,997 |
784,034 |
320,781 |
463,253 |
|
|
当事業年度 (自平成28年4月1日 至平成29年3月31日) |
土木工事 |
230,407 |
119,176 |
349,584 |
119,664 |
229,920 |
|
建築工事 |
232,845 |
211,378 |
444,224 |
186,038 |
258,185 |
|
|
計 |
463,253 |
330,555 |
793,808 |
305,702 |
488,106 |
(注)1 前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含みます。したがって、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれます。
2 次期繰越工事高は(前期繰越工事高+当期受注工事高-当期完成工事高)です。
|
期別 |
区分 |
国内 |
海外 |
計 |
||
|
官公庁 |
民間 |
(A) |
(A)/(B) |
|||
|
前事業年度 (自平成27年4月1日 至平成28年3月31日) |
土木工事 |
76,235 |
25,838 |
20,505 |
16.7 |
122,579 |
|
建築工事 |
12,113 |
208,187 |
9,117 |
4.0 |
229,418 |
|
|
計 |
88,348 |
234,026 |
29,623 |
8.4 |
351,997 |
|
|
当事業年度 (自平成28年4月1日 至平成29年3月31日) |
土木工事 |
89,615 |
13,776 |
15,785 |
13.2 |
119,176 |
|
建築工事 |
6,471 |
201,552 |
3,353 |
1.6 |
211,378 |
|
|
計 |
96,087 |
215,328 |
19,138 |
5.8 |
330,555 |
|
工事受注方法は、特命と競争に大別されます。
|
期別 |
区分 |
特命(%) |
競争(%) |
計(%) |
|
前事業年度 (自平成27年4月1日 至平成28年3月31日) |
土木工事 |
34.4 |
65.6 |
100 |
|
建築工事 |
38.9 |
61.1 |
100 |
|
|
当事業年度 (自平成28年4月1日 至平成29年3月31日) |
土木工事 |
29.1 |
70.9 |
100 |
|
建築工事 |
54.0 |
46.0 |
100 |
(注) 百分比は請負金額比です。
|
期別 |
区分 |
国内 |
海外 |
計 |
||
|
官公庁 |
民間 |
(A) |
(A)/(B) |
|||
|
前事業年度 (自平成27年4月1日 至平成28年3月31日) |
土木工事 |
84,480 |
17,094 |
21,555 |
17.5 |
123,130 |
|
建築工事 |
5,075 |
181,985 |
10,591 |
5.4 |
197,651 |
|
|
計 |
89,555 |
199,079 |
32,146 |
10.0 |
320,781 |
|
|
当事業年度 (自平成28年4月1日 至平成29年3月31日) |
土木工事 |
80,658 |
21,403 |
17,602 |
14.7 |
119,664 |
|
建築工事 |
7,127 |
173,923 |
4,987 |
2.7 |
186,038 |
|
|
計 |
87,785 |
195,327 |
22,590 |
7.4 |
305,702 |
|
(注)1 海外工事の地域別割合は、次のとおりです。
|
地域 |
前事業年度 (%) |
当事業年度 (%) |
|
|
アジア |
96.2 |
87.3 |
|
|
その他 |
3.8 |
12.7 |
|
|
計 |
100 |
100 |
|
2 完成工事のうち主なものは、次のとおりです。
前事業年度
|
区分 |
発 注 者 |
工 事 名 称 |
|
土木工事 |
カンボジア王国 公共事業・交通省 |
ネアックルン橋梁建設工事 |
|
国土交通省 |
近畿自動車道紀勢線 黒崎トンネル工事 |
|
|
宮城県 南三陸町 |
平成25年度 防災集団移転促進事業(清水団地) |
|
|
建築工事 |
愛媛県 新居浜市 |
新居浜市総合文化施設建設工事 |
|
住友不動産株式会社 |
(仮称)晴海三丁目西地区A2・A3街区計画新築 |
|
|
日野自動車株式会社 |
日野自動車株式会社古河工場 キャブ工場 |
当事業年度
|
区分 |
発 注 者 |
工 事 名 称 |
|
土木工事 |
西日本高速道路株式会社 |
新名神高速道路 武庫川橋工事 |
|
鉄道建設・運輸施設整備支援機構 |
つくばエクスプレス線、車両基地入出庫線複線化 |
|
|
岡山県 津山市 |
小田中浄水場更新事業 |
|
|
建築工事 |
ヒラツカ特定目的会社 |
(仮称)ららぽーと平塚新築工事 |
|
住友不動産株式会社 |
(仮称)草加松原団地 A・B街区計画新築工事 |
|
|
学校法人芝浦工業大学 |
(仮称)芝浦工業大学附属豊洲中学高等学校建設工事 |
3 前事業年度及び当事業年度ともに完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はありません。
|
区分 |
国内 |
海外 |
計 |
|
||
|
官公庁 |
民間 |
(A) |
(A)/(B) |
|
||
|
土木工事 |
176,305 |
18,981 |
34,633 |
15.1 |
229,920 |
|
|
建築工事 |
11,506 |
241,692 |
4,987 |
1.9 |
258,185 |
|
|
計 |
187,812 |
260,673 |
39,620 |
8.1 |
488,106 |
|
(注) 次期繰越工事のうち主なものは、次のとおりです。
|
区分 |
発 注 者 |
工 事 名 称 |
|
土木工事 |
東京センチュリーリース株式会社 |
京都・伏見メガソーラー発電所建設工事 |
|
ベトナム高速道路公社 |
南北高速道路建設工事(ベンルック-ロンタイン区間)パッケージJ3 |
|
|
宮城県 |
鹿折川河川外災害復旧工事(その3) |
|
|
建築工事 |
住友不動産株式会社 |
(仮称)芝公園一丁目ビル計画新築工事 |
|
東京建物株式会社 |
(仮称)八丁堀プロジェクト |
|
|
国土交通省 |
那覇空港事務所管制塔新築工事 |
当社グループにおける経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 会社の経営の基本方針
当社の経営理念は以下のとおりです。
|
【経営理念】 |
|
○ 顧客満足の追求 |
|
高い技術力と豊かな創造力の向上に努め、顧客そして社会のニーズと信頼に応えて、高品質な建設作品とサービスを提供します。 |
|
○ 株主価値の増大 |
|
徹底した効率経営と安定した収益力により、事業の継続的発展を実現し、企業価値=株主価値の増大に努めます。 |
|
○ 社員活力の尊重 |
|
社員の個性と能力が遺憾なく発揮でき、働き甲斐のある、開かれた闊達な会社を創ります。 |
|
○ 社会性の重視 |
|
公正な企業活動を行い、社会から信頼される健全な企業市民を目指します。 |
|
○ 地球環境への貢献 |
|
人と地球に優しい建設企業の在り方を常に求め、生活環境と自然の調和を大切に考えます。 |
当社は、自らの事業活動を通じて全てのステークホルダーに安心・安全を提供することを「企業の社会的責任(CSR)」と認識し、その実現に向けた基本指針として本経営理念を策定しています。
(2) 会社の対処すべき課題
① 当社施工の横浜市所在マンションにおける杭工事不具合の件につきましては、平成28年9月に区分所有者の集会において建物の区分所有等に関する法律に基づく全棟の建替え決議がなされました。今後とも、当社は、建替組合様、売主様やご関係の皆様と必要に応じ協議を持ち、適宜適切に対応してまいります。
② 当社グループの三井住建道路株式会社及び同社関係者は、東日本大震災に係る舗装災害復旧工事の入札に関する独占禁止法違反に関し、平成28年11月、それぞれ罰金及び懲役(執行猶予付き)の判決を受けるとともに、同社は、同年12月、営業停止処分を受けました。当社といたしましては、同社のコンプライアンス体制、リスク管理体制の構築を指導・支援するとともに、同社を含めた当社グループの内部統制の更なる強化に努めております。
③ 当社は、農林水産省東北農政局が発注した土木一式工事の入札につき、独占禁止法違反の疑いがあるとして、平成29年4月に公正取引委員会の立入検査を受けました。本件につきましては、公正取引委員会の調査に引き続き全面的に協力してまいります。当社は、かねてより、会社を挙げてかかる不正行為の根絶に取り組んでおります。
当社グループでは、長期的な視野にたったグループビジョンを策定し、その実現のために取り組む長期経営方針を定めています。
「中期経営計画2016-2018」では、杭工事の品質不具合の発生を教訓として、信頼の回復を第一に、全社一丸となって企業価値の向上に取り組んでいます。
① グループビジョン
|
○グループビジョン |
|
経営、技術、社員のそれぞれの側面から「ありたい姿」として |
|
□ 安定した収益力を確保し、持続的に成長する企業グループ |
|
□ 当社ならではの技術とサービスにより、社会的な課題に挑戦する企業グループ |
|
□ 信義と誠実を重んじ、社会建設への参画という誇りを持って、国内外に活躍の場を広げる企業グループ |
ビジョン実現のための長期経営方針は以下のとおりです。
|
○長期経営方針 |
|
・ものづくりの力の向上………………………技術開発の強化や生産システム改革によるものづくりの力の向上 |
|
・魅力ある企業づくり…………………………人材の確保、育成、活力向上を通じた魅力ある企業づくり |
|
・建設事業の競争力・収益力の強化…………国内土木、国内建築、海外の事業3本柱の競争力・収益力の強化 |
|
・環境変化に対応した収益基盤の重層化……新規・新領域事業の推進による収益基盤の重層化 |
|
・CSR経営の推進……………………………社会的責任を持って事業を遂行するというCSR経営の推進 |
② 「中期経営計画2016-2018」の概要
「信頼の回復と企業価値の向上」をテーマに、長期経営方針のうち「ものづくりの力の向上」と「魅力ある企業づくり」を計画期間中に重点的に取り組む「フォーカステーマ」といたしました。また、分野別に事業戦略を定め、諸施策を強力に推進し、業績目標の達成を目指します。
○ フォーカステーマ
・「生産システムの改革」
品質に対する信頼の回復が最重要課題であるとの認識のもと、品質の確保をはじめ、担い手の確保・生産性の向上など構造的な課題に対しても、生産システムの解決すべきテーマとして取り組む
・「人材の確保・育成・活力の向上」
会社の根幹である「人」については、人員の逼迫や高齢化の進行などの課題に対して、人材の確保と育成に努め、活力の溢れる魅力ある企業づくりを実現する
|
○ 数値計画(連結) |
|
2018年度 ・売上高 4,400億円規模 ・営業利益率 5%以上 |
|
・自己資本比率 20%以上 ・配当性向 20%以上 |
2018年度(計画最終年度)の数値計画(連結)に対する進捗状況は以下のとおりとなりました。
前期実績 当期実績
売上高 4,150億円 4,039億円
営業利益率 5.6% 6.9%
自己資本比率 14.3% 18.8%
配当性向 16.4% 14.3%
今後の経営環境としましては、補正予算による公共投資を中心とした景気押し上げ効果もあり、景気は引き続き緩やかな回復基調が続くものと予想されます。
建設業界におきましては、補正予算による公共投資に加え、首都圏を中心としたインフラ整備・再開発事業などの民間投資によって、建設投資は引き続き底堅く推移することが期待されています。
当社グループは、「中期経営計画」に総力を挙げて取り組み、信頼の回復と企業価値の向上に努めてまいります。
当社グループの将来の経営成績、財政状態及び株価等、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項の判断時点は当連結会計年度末現在です。
当社グループにおいては、これらの事業を取り巻く様々な事項に対するリスク管理を実施し、企業活動への影響を極力軽微に抑えるよう努めています。
(1) 建設投資の動向
公共投資、企業の設備投資、民間住宅投資等の建設投資動向に左右され、受注工事高が増減し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 海外事業のリスク
当社グループでは、海外でも特にアジア地域を中心に建設工事を行っていますが、その国の政情の変化、経済情勢の変動、現地法規制の不測の変更、為替相場の大幅な変動等が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 市場金利の変動
金利水準の急激な上昇が生じた場合には、支払利息の増加等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 資産保有リスク
当社グループは事業推進に伴い、工事代債権、事業用不動産、貸付金等の各種資産を保有しています。取引先の信用不安や、資産価値の著しい下落等が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 原材料等コスト変動
建設物の着工から完成までは長期間に及ぶものが多く、工事施工期間中の原材料等コスト変動による利益への影響が考えられます。
(6) 法的規制等
当社グループは事業推進にあたり、建設業法、建築基準法、環境関連法規等、多数の法的規制を受けています。また、海外においても、各国における事業許可等をはじめとして国内同様に法的規制の適用を受けています。特に、建設工事を行うにあたっては、各種法規制に基づく許認可等の取得が多岐にわたり、これらの法的規制が変更され、当社グループの営業活動に大きな制約が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 事故の発生
建設事業は、作業環境や作業方法の特性から危険を伴うことが多く、他の産業に比べ事故発生率が高くなっています。安全管理を徹底していますが、労働災害事故が発生した場合には、建設業法の監督処分や、自治体等各発注機関の指名停止措置の対象となるとともに、損害賠償等により業績に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 瑕疵の発生
建設物の施工にあたっては、品質管理を徹底していますが、万一、当社が施工した建設物に大規模な瑕疵が存在した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 工事着手の遅延
建設工事の遂行にあたっては、自然環境や、周辺の住環境等に影響を及ぼすことがあります。通常は、各自治体や、近隣住民の同意を得た上で工事に着手していますが、周辺環境に大きな影響を及ぼす場合には、着工までの交渉が長期にわたることが考えられます。かかる場合には、当初見込んでいた着工時期が大幅に遅れるおそれがあり、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(10)訴訟リスク
当社グループは事業推進にあたり、瑕疵担保責任、製造物責任、特許、独占禁止法等に関する訴訟を提起される可能性があり、訴訟の動向によっては業績に影響を及ぼす可能性があります。
(11)情報管理
当社グループでは、建設工事等の事業活動を通じて得た顧客の機密情報について、細心の注意を払って管理していますが、万一、情報漏洩が発生した場合には、顧客や社会からの信用を失うとともに、取引の停止や、損害賠償等により業績に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度において、経営上の重要な契約等はありません。
当社グループでは、技術の信頼、受注の拡大、利益の向上を目指して、顧客ニーズに応える技術開発をタイムリーに推進することを技術開発の基本方針とし、技術本部、土木本部、建築本部、事業開発推進本部を中心として、技術開発を積極的に進めてきました。
当連結会計年度の技術開発に要した費用の総額は、1,657百万円です。なお、当該費用については、セグメントに共通する費用を区分することが困難であるため、総額のみを記載しています。
当連結会計年度における主な技術開発成果は次のとおりです。
(1) 橋梁3次元モデル作成システム
PC橋梁の3次元モデルを効率良く高い精度で作成することを目的として、設計段階で使用する線形データと断面形状データを用いて3次元モデルを自動作成する作図システムを開発し、橋梁上部工工事に適用しました。本システムで作成した3次元モデルは正確な座標で作図されており、現地の地形と構造物を重ね合わせた全体モデルが作成できます。また、PC鋼材や配水管など、PC橋を構成する各部材を自動的に3次元化できるため、施工計画の検討や部材間の干渉チェックを迅速かつ確実に行うことができます。本システムで作成した3次元モデルを各種ICT技術に組み合わせ、橋梁の設計・施工管理・維持管理における当社独自のトータル建設マネジメントシステム(DCM)において積極的に活用し、更なる橋梁建設の効率化と品質向上を目指していきます。
(2) 「AR-表面仕上げ管理システム」を開発
ステレオ写真計測技術とAR(Augmented Reality:拡張現実)技術を用いて、床版コンクリート表面の仕上げ高さ管理を行う「AR-表面仕上げ管理システム」を開発し、実用化しました。上方から撮影した写真を画像解析し、数分で、精度よく現状のコンクリート仕上げ高さのコンター図(写真計測結果と計画高との差を色分け表示)を作成し、タブレット端末に現場映像と重ね合わせて表示させ「見える化」するシステムです。全体の仕上がり状態が一目で分かり、その場で作業員への仕上げの修正指示、仕上げ状態の再確認を行うことで、仕上げ面の平坦性を向上させるシステムとなっています。本システムを土木・建築分野の多くの現場に適用拡大を図るとともに、ステレオ撮影方法の省力化や計測処理の高速化などのシステム改良に取り組んでいきます。
(3) SLAM技術を利用した設備スリーブ位置管理システムを開発
自己位置の推定と周辺のマッピングを同時に行って位置を測定するSLAM技術(※1)を利用した設備スリーブ位置管理システム(特許出願中)の開発を九州大学と共同で着手し、実証実験において本技術による効果を確認しました。今回開発した位置管理システムは、建物のコンクリート躯体(壁や梁など)に設ける設備配管用の貫通孔用筒(設備スリーブ)の取り付け位置確認作業を、SLAM技術を利用し迅速に行うものです。従来の計測手法では1時間以上要していた作業が、本システムでは撮影・測定から結果が得られるまで1~2分程度で済み、かつ従来と同等の精度であることを確認しました。今後、実現場で検証を行い、実用化に向けた開発を進めていきます。(※1)SLAM = Simultaneous Localization and Mapping
(4) 「インテリジェントパイプクーリングシステム」を開発・適用
コンクリート構造物の温度ひび割れ対策のひとつである「パイプクーリング」において、実際の施工状況に応じて通水温度を自動制御する「インテリジェントパイプクーリングシステム」を開発しました。本システムは、東北地方における大型水門工事のコンクリート壁(カーテンウォール)の施工で適用し、その実用性が確認されました。同システムは、温度ひび割れ対策を必要とする全てのコンクリート構造物において、より確実なひび割れ制御が期待でき、管理の省力化も図れます。当社では、コンクリート構造物の更なる高品質化を目指し、システムの汎用化と高機能化に取り組んでいきます。
(5) 超低収縮・低環境負荷型・設計基準強度200N/mm2コンクリートを実物件に適用
産業副産物を使用することでCO2排出量を削減しつつ、高強度で流動性が高く、さらに自己収縮を大幅に低減した超高強度コンクリート(設計基準強度Fc:200N/mm2)を開発し、超高層タワーマンション2棟それぞれの地下階柱に適用しました。開発した新しいコンクリートは、プレキャスト工場で高強度コンクリート製造時に行ってきた加熱養生が不要であり、部材を断熱材で被覆して養生することで十分な強度が得られるため、CO2排出量も低減されます。今後は、製造性・経済性を追求し、より高品質で高耐久かつ低環境負荷な土木・建築構造物として積極的に提案していきます。
(6) 端部を拡径加工した鉄筋を用いるTrunc-head(トランクヘッド)工法を開発
鉄筋端部を鍛造により円錐台形状に加工した定着機構付き鉄筋を、プレキャスト部材の接合部で使用するTrunc-head工法を片山チエン株式会社と共同開発しました(特許出願中、意匠登録(登録第1551641号))。プレキャストPC床版の接合等にTrunc-head工法を用いることで、現場にて一体化する際の接合部の鉄筋組立作業が容易になり、コンクリートも充填しやすくなるため、施工の効率化と品質の向上を実現しました。新設のプレキャストPC床版工事に加え、今後見込まれる大規模インフラ更新事業における老朽化した床版の取替え工事等への適用に向けて取り組みを進めていきます。
(7) 逆T形の基礎梁工法「Liber-T工法」を開発
基礎梁の下部を部分的に拡幅し、逆T形断面とする基礎梁工法「Liber-T工法」(特許出願中)を開発しました。本工法は、鉄筋が密に交錯しがちな柱-基礎梁-杭接合部において、基礎梁下端主筋の配筋位置の自由度を高めることによって、施工性を向上させ、コンクリートの打設を確実にするものです。本工法は、採用案件にて構造性能評価を取得し、マンション工事に初適用しました。基礎躯体は、地上躯体に比べて部材形状が大きいことなどから、工法の選択肢が比較的少ない部位とされていますが、今後も高品質と高生産性に寄与する工法メニューの拡充に向け、基礎構造の技術開発を推進していく所存です。
当社グループにおける財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成にあたっては、連結会計年度末における資産・負債並びに連結会計年度の収益・費用の数値に影響を与える見積り及び判断が行われています。これらの見積り及び判断については、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っていますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果はこれらと異なることがあります。
まず、連結売上高は、建設業界全体の良好な市場環境もあり、順調に積み上げることができましたが、大型工事の竣工が続いた前年度比では、完成工事高が110億円減少したため、4,039億円となりました。
次に、利益面につきましては、労務費や原材料費が強弱入り混じった動きを示したものの、概ね安定した水準であったことから、土木部門は引き続き高い利益水準を維持することができました。また、建築部門も生産効率の改善やコスト削減努力もあって、採算性が大幅に改善し、全体としても完成工事総利益率を大きく改善することができました。
この結果、営業利益は279億円(前年度比46億円増加)、経常利益は262億円(前年度比44億円増加)となり、前年度に続き合併後最高益を更新することができました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は170億円(前年度比71億円増加)となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益254億円の計上があったものの、売上債権の増加、仕入債務の減少、法人税等の支払等により39億円の資金の減少(前期は107億円の資金の増加)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形及び無形固定資産の取得等により16億円の資金の減少(前期は8億円の資金の増加)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の増加等により78億円の資金の増加(前期は22億円の資金の増加)となりました。
以上の結果、現金及び現金同等物の期末残高は598億円(前期末比21億円の資金の増加)となりました。
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べて85億円増加し、3,022億円となりました。主な要因は、受取手形・完成工事未収入金等の増加によるものです。
負債合計は、前連結会計年度末に比べて66億円減少し、2,389億円となりました。主な要因は、支払手形・工事未払金等の減少によるものです。
以上の結果、純資産合計は、前連結会計年度末に比べて151億円増加し、632億円となりました。なお、当連結会計年度末の自己資本比率は、前連結会計年度末の14.3%比4.5ポイント改善の18.8%です。
杭工事不具合の件(3.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)会社の対処すべき課題 ①に記載。)について、当社は、建替組合様、売主様やご関係の皆様と必要に応じ協議を持ち、適宜適切に対応してまいりますが、関係者間の協議次第では、今後連結業績に影響を与える可能性があります。
「第2 事業の状況」における各事項の記載については、消費税及び地方消費税抜きの金額で表示しています。また、本文中の億円単位の表示は単位未満四捨五入とし、それ以外の金額の表示は表示単位未満切捨てにより表示しています。