第2 【事業の状況】

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

我が国の経済は、一部に足踏みが残るものの、緩やかに改善しており、先行きについては雇用・所得環境が改善する下で各種政策の効果もあり、緩やかな回復が続くことが期待される一方、インフレ・金利動向のみならず、米国の通商政策、緊迫化する国際情勢、それらに伴う国内経済への影響についても注視していく必要があります。建設業界においては、安定した建設需要に支えられている一方、資材・労務費の高騰、時間外労働の上限規制の適用による働き方改革への対応、建設技能労働者や設備業者等の減少・後継者不足といった構造的な問題、脱炭素への取り組みなど課題は多く、また、上場企業に向けられた社会や投資家からの要請についても真摯に向き合っていく必要があります。

2024年度のマンション市場においては、新規供給戸数は首都圏、近畿圏共に3年連続で前年度を下回り、首都圏では2万2,239戸、近畿圏は1万5,711戸となりました。2025年度の新規供給戸数については、再開発物件や大規模物件の発売が予定されていることから、首都圏は前年度を上回り、近畿圏では前年度並みで推移すると思われます。また、首都圏、近畿圏共にマンション価格の上昇傾向が継続し、2024年度の平均価格は首都圏では8,135万円と過去最高値となり、近畿圏でも5,065万円と1991年度(5,464万円)以来の高水準が続いています。

2024年度の販売状況は、物価やマンション価格の上昇に対し、変動型住宅ローン金利の低位継続、賃上げによる購入マインドの下支えなどにより底堅く進捗しました。2025年度は、不確実性が高まる景気や金融政策の動向について、これまで以上に注視していく必要があります。

中期経営計画「HASEKO Next Stage Plan(略称:NS計画)」の最終年となる2025年3月期において連結経常利益は834億円となりました。NS計画全体を振り返ると、コロナ禍という急激な環境変化に見舞われ、一時的な落ち込みはあったものの、建設関連事業においては当社の土地情報収集力や商品企画力、施工品質や工期遵守に対する姿勢、効率的な生産体制等についてお客様や事業主様から評価をいただき、施工中工事高は右肩上がりで増加しました。一方、資材・労務費の高騰等の影響を受け、完成工事総利益率は低下しました。不動産関連事業・サービス関連事業においては各社の業績が好調に推移したことで、着実に利益を積み重ねることができました。物価上昇を上回る賃金アップを念頭にした処遇改善による人件費上昇を吸収しながら、計画数値である2025年3月期の連結子会社経常利益300億円以上、5期合計連結経常利益4,000億円を達成し、また年間配当額の下限を80円(2025年3月期は配当85円)とすることで、株主還元の充実も行ってまいりました。

サステナビリティに関する取り組みとしては、長谷工グループ気候変動対応方針において温室効果ガスの排出量削減目標を設定し、SBT(Science Based Targets)イニシアチブより認定を受けております。2023年5月には当社建設現場の使用電力100%再生可能エネルギー化を実現し、2025年末には、当社グループ全ての建設現場の使用電力も再生可能エネルギー化する予定です。その他にも環境配慮型コンクリートなど環境負荷を低減する施工技術の開発・導入や、自社開発分譲マンション・自社保有賃貸マンションのZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)化、マンションの木造化・木質化の推進など、当社グループ全体で企業価値向上を目指しながら、持続可能な社会の実現に貢献しております。また、人権尊重の考え方を明確にするとともに、企業として人権尊重に対する責任を果たしていくため、2022年1月に策定した「長谷工グループ人権方針」に基づき、グループ内での浸透を図るとともに、サプライチェーンも含めた人権デュー・ディリジェンスを継続的に実施しております。さらに、多様な人々の活躍については、2023年4月に当社内にD&I推進室を立ち上げ、これまでの女性活躍の取り組みを継続して進めていくとともに、「個性活躍」をキーワードとして、多くの社員が働きがいをもって生き生きと活躍できる環境づくり・環境整備にも取り組んでおります。社会課題の解決に取り組みつつ、将来の成長に向けた取り組み、成長戦略投資も実施してまいります。

なお、当社の連結子会社である㈱長谷工リフォームが、大規模修繕工事の受注に関し、独占禁止法違反の疑いがあるとして、2025年3月、公正取引委員会による立入検査を受けました。当社といたしましては、この事実を厳粛に受け止め、公正取引委員会の調査に全面的に協力しております。

 

 

長谷工グループ 企業理念・ありたい姿・中期経営計画における基本方針・行動指針

 

■企業理念

都市と人間の最適な生活環境を創造し、社会に貢献する。

 

■ありたい姿

環境に配慮した、安全で安心な「住まい」と豊かで快適な「暮らし」を国内外に提供し続ける。

 

■中期経営計画における基本方針

「住まい」と「暮らし」のリーディングカンパニーとして、持続的な成長と企業価値向上を実現する。

 

■行動指針

あらゆるステークホルダーの期待に応えるため、自信と誇りを持ち、総合力と行動力で進化し続ける。

E・S・Gすべての観点から社会的責任を全うすることで、事業活動そのものを通じて持続可能な社会の実現に貢献する。

 

 

中期経営計画概要

・計画名称 長谷工グループ中期経営計画(HASEKO Evolution Plan)

      ~次なる進化へ向けて~

・計画期間 2026年3月期~2031年3月期

 

■ありたい姿の実現に向けた事業戦略

①建設関連事業の更なる伸長と深化

・持続的な生産体制の構築

・施工領域の拡大

・修繕・メンテナンス工事業の拡充

②不動産関連事業の拡充と質的向上

・資本効率向上への取り組み

・商品開発力による差別化

・新たな領域への拡大と挑戦

③管理運営事業の成長

・新たな管理手法や居住者サービスの開発

・DX推進による業務改革

・シニア向けサービスの拡充

④海外事業の収益化

・将来の国内マーケット縮小に備え、収益の柱の一つに育てる

・各国の住宅事情に合わせて、建設・不動産・管理運営の各事業から最適な分野の進出を検討

⑤新たな領域への挑戦

・生産機能と商材の拡充

・社会課題解決型ビジネスへの取り組み

・新規事業創出に向けた土壌づくり

 

 

■経営基盤強化

①財務戦略

・資本コストを意識しながら、持続的な成長に向けた積極投資を継続

・負債と資本を適切にコントロールし、安定的な株主還元を実施(総還元性向50%程度)

・6か年合計ネット投資額 4,000億円

・国内不動産 1,200億円

・海外不動産 400億円

・建設関連・R&D 1,000億円

・DX関連 400億円

・新規事業、M&A等 1,000億円

・D/Eレシオ1.0倍以下を意識しつつ、有利子負債を活用

②技術開発の強化

・木質化の推進

・ストック分野、リノベーション技術

・災害激甚化への対策

③DXの加速

・設計施工情報のデジタル化とAI活用

・グループデータ共有基盤の構築と活用

・持続的成長に向けた人材育成とチャレンジ領域

④サステナビリティへの取り組みの深化

・気候変動対応

・温室効果ガス(CO2)排出削減計画の策定・実行

・建設作業所やオフィス等における取り組み

・低炭素施工や脱炭素住宅の拡大に向けた取り組み

・人的資本経営の充実

・要員確保、組織力強化

・働き方改革・D&I・健康経営

・処遇・人事制度

・人材育成・キャリア形成

・人権の尊重

・人権デュー・ディリジェンス

・増加する外国人労働者への配慮

・サプライチェーン・マネジメント

・CSR調達ガイドライン

⑤コーポレート機能の強化

・コーポレートガバナンスの更なる強化

・ステークホルダーとのコミュニケーション強化

・管理部門の生産性向上と機能強化

 

 

■経営目標・株主還元方針

<経営目標>

2028年3月期 連結経常利益 1,000億円以上

2031年3月期 連結経常利益 1,300億円以上

安定的に1,000億円以上を計上できる収益基盤の確立

ROE 10%を上回る水準を維持し、2031年3月期までに13%程度を目指す

 

<株主還元方針>

6期合計の総還元性向50%程度

計画期間内における累進配当の実施

必要に応じ、機動的な自己株式の取得

 

■持続的な企業価値向上に向けて

①市場評価向上への取り組み

・成長戦略投資

・安定的な株主還元の実施

・サステナビリティへの取り組みの深化

・ステークホルダーとのコミュニケーション強化

②ROE向上への取り組み 

・収益力の向上 

・資本効率の向上

③非財務KPI設定(気候変動対応、人的資本、人権の尊重、サプライチェーン・マネジメント)

 

※なお、将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において判断したものであり、その達成を保証するものではありません。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 (1) サステナビリティの基本方針とマテリアリティ

当社グループでは、2025年度にスタートしたグループ中期経営計画「HASEKO Evolution Plan」において、「経営基盤強化」の5項目のうちの1つとして、「(4)サステナビリティへの取組みの深化」を掲げています。当該取組みにおいては、最重要マテリアリティ(後述)に沿って、「気候変動対応」「人的資本経営の充実」「人権の尊重」「サプライチェーン・マネジメント」の4課題につき、それぞれ具体的な取り組み方針を明確にするとともに、「非財務KPI」としていくつかの数値目標を設定しています。それらも含めた複数のマテリアリティに紐づけたサステナビリティ行動計画に則った活動を、グループ全体で推進しております。
 当社グループにおけるサステナビリティの基本方針に関する詳細な情報は、当社ウェブサイト
(URL:https://www.haseko.co.jp/hc/csr/feature.html)をご参照ください。

 

≪HASEKO Evolution Plan;基本方針≫

 


 

≪当社グループのマテリアリティ≫


 

≪HASEKO Evolution Planにおける非財務KPI≫


 

 (2) サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

当社グループではサステナビリティの実現に向けて、次表におけるマネジメント体制の運用を通じて、サステナビリティ活動の組織的な推進を図っております。かかる状況下、当社社長が委員長となる「サステナビリティ委員会」は取締役会の監督下にあり、定期的な報告を行うこととしております。また、委員会の下部組織として、「サステナビリティ推進会議」を設置し、脱炭素やエネルギー・環境技術などの環境施策も含め、グループ全体でのサステナビリティ活動の推進・浸透に取り組んでいます。

 

≪サステナビリティマネジメント(ガバナンス)体制≫

 


 

当社グループのリスク管理に関する事項は、当社社長を委員長とするリスク統括委員会(以下当委員会)で取り扱っております。当委員会は、四半期に1回の開催に加えて、重大リスク発生時には必要に応じて臨時で開催することとしており、リスク管理に関する社内規程やリスク予防計画等の策定及び改廃について検討、決定するほか、リスク管理に関する推進方針及び具体策等の討議決定が行われております。サステナビリティに関するリスクについても当委員会に共有し、グループ全体のリスク管理体制の中で検討・管理しております。
 

≪リスク管理体制≫


 

 (3) 重要なサステナビリティ項目

当社グループでは、前述のとおり、優先的に取り組むべき課題をマテリアリティとして特定し、サステナビリティを推進する上での指針としております。マテリアリティとして特定された課題のうち、中期経営計画でも触れられている以下4課題を最重要マテリアリティに設定しております。

① 人的資本(ダイバーシティ&インクルージョン・人材育成)

② 気候変動への対応

③ 人権の尊重

④ サプライチェーン・マネジメント

各項目に係る当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。

 

 

① 人的資本(ダイバーシティ&インクルージョン・人材育成)

(人的資本に関する考え方・取組み)

当社グループの総合力を支えているのは、グループ社員や協力会社の社員であり、それら社員の持つノウハウや経験、新たな価値を生み出す知恵や活力こそが「人的資本」であると考えております。あらゆる社員が活躍できる環境づくりを通して、社員一人ひとりが成長機会に挑戦する勇気を後押しし、都市に最適な住まい・暮らしを提供する新たな価値創造を目指します。

 

(Ⅰ)ガバナンス

当社グループでは、中期経営計画に基づく人事計画を策定し、その進捗や課題について人事担当役員が取締役会に報告・協議することで、経営戦略と人材戦略の整合性を確保しています。

人的資本に関する取組は人事担当役員が統括し、採用・育成・D&I推進、評価・報酬制度、健康経営などの施策を一体的に推進しています。これにより、人的資本の最大化と企業価値の持続的向上を目指し、グループ全体で一貫した取組を実施してまいります。

 

(Ⅱ)戦略

2025年度にスタートしたグループ中期経営計画「HASEKO Evolution Plan」においては、これを実現するための人事戦略も刷新し、以下の「目指す姿」に向け取り組みを推進しています。

<目指す姿>

・経営計画の着実な遂行と、新規事業やDXの推進を可能にする厚みのある人材・組織作り。

・組織と社員が生産性とエンゲージメントの向上を追求し、多様な社員が健康で活き活きと活躍できる企業グループへ。

・高成果=高処遇を実現することで社員の目標意欲を喚起。常に能力を最大限に発揮して、中長期的に成長する企業グループへ。

・グループの社員一人ひとりがキャリアを通して成長し、変化にしなやかに対応しながら個と組織の力が最大発揮されている状態。

 

 

これらの施策は、社員のエンゲージメント向上やイノベーションの創出を促進し、企業の競争力強化と中長期的な企業価値の向上につながるものです。当社グループは今後も、人的資本への戦略的投資を通じて、社会課題の解決と企業の持続的成長の両立を目指してまいります。


 

1.グループ経営基盤と強固な人員・組織体制の追求

As is

・新卒・中途採用の拡大と退職率の改善により安定した受注・生産体制を確保し、経営計画の目標達成に貢献。

・一方で、グループ各社の採用、特に技術系人材の採用が依然として厳しい状況。

・アルムナイ採用・リファラル採用の導入、多様なバックグラウンドを持つ人材(外国籍人材・留学生・高専卒など)の発掘を推進。

To be

経営計画の着実な遂行と、新規事業やDXの推進を可能にする厚みのある人材・組織作りを目指す。

・中期経営計画達成に向けた受注・生産体制のさらなる強化。

・キャリア採用による専門人材の拡充。

・既存社員に対し多様な教育プログラム(DX教育・グローバル人材育成 等)を提供、新たな事業領域の開拓を担う人材確保・育成を推進。

 

 


2.多様な人材が健康に安心して働きやすい環境づくり

(a)働きやすい環境づくり

As is

・全社的な働き方改革を推進及び労働環境整備に注力し、主に建設作業所員の4週8休100%取得等を目標に、休日取得・労働時間削減を経営と一体となり推進。

・協力会社と一体となり、安全管理・HASEKOバリューアップ活動を継続推進。

To be

組織と社員が生産性とエンゲージメントの向上を追求し、多様な社員が健康で活き活きと活躍できる企業グループを目指す。

・社員個々の勤務状況・コンディションの可視化、労働時間管理の進化。

・業務特性や社員の状況を踏まえた中でのアウトプットの量・質を向上させる働き方の推進。

・全社的なDX推進、MOSt(モス)活動による働き方改革の継続。

・労災事故撲滅への取組み徹底、安全管理・バリューアップ活動の更なる強化。

 

(イ)生産性向上に向けた働き方改革

2027年度建設作業所の4週8閉所100%達成を目標に、年間108日の閉所計画を設定、個人でも年間104日休日取得を強力に推進。2024年度は、個人4週8休(104日以上)達成率は83.9%(昨年比+3pt)。全社的な時間外労働も改善傾向(昨年比当社▲4.3時間・当社グループ▲1.9時間)です。

経営会議での毎月の労働時間管理はもとより、モバイルワーク・時差出勤・フレックスタイム・変形労働時間等、各種制度の運用に加え、業務改善や労働時間短縮・休日取得を目的とした自主活動(MOSt活動)による生成AI活用講習や、仕事の節目に休日取得や定時帰宅を推奨する「マイ・インターバル」取得推進等、全社的に職域に応じた働き方改革を進めております。

 

作業所員4週8休

時間外労働

年休取得率

(うち計画的取得率)

当社

83.9%

28.0時間

68.6%

98.0%

グループ

19.1時間

72.2%

97.9%

 

「MOSt活動」の概要・具体的な推進等に関する詳細な情報は、当社ウェブサイト

(URL:https://www.haseko.co.jp/hc/csr/employee/human_resources.html#anc_3)の「働きやすい環境づくり」をご参照ください。

 

(ロ)安全で衛生的な労働環境の実現に向けて

労災事故撲滅への取組み徹底と安全で快適な職場づくりに継続して取組んでいます。当社建設作業所では、「安全衛生管理計画」を定め、「労働者の生命、健康を守る」の基本理念のもと、各作業所における事故・災害の撲滅を目指し、安全をすべての作業に優先させ、社会に貢献できる会社を目標とし、「死亡・重大事故災害“ゼロ”」及び「労働災害度数率0.60以下」、「労働災害強度率0.01以下」を掲げて活動をしております。

「中央安全衛生委員会」等、安全衛生推進体制を含めた詳細な情報は、当社ウェブサイト

(URL:https://www.haseko.co.jp/hc/csr/employee/occupational_safety.html#anc_1)の「安全で衛生的な労働環境の実現に向けて」をご参照ください。

指標

目標

実績(当連結会計年度)

死亡・重大事故災害

0件 (注)

1件

労働災害度数率

0.60以下 (注)

0.28

労働災害強度率

0.01以下 (注)

0.26

 

(注)当社の目標

 

(ハ)協力会社との関係構築

当社では、設計、建設、技術推進部門に加え、約300の主力協力会社からなる組織「建栄会」が「四位一体」となって、高精度のマンションづくりを担っています。四半世紀以上に亘る固い協力関係で結ばれた品質管理体制は他社にない強みです。

建栄会との協力の下、「責任施工範囲の明確化」、「労務省力化及び作業効率化」、「長谷工ブランドの向上」を目的に高品質なマンションを提供する為の「HASEKOバリューアップ活動」を行っています。現在は、先端技術の活用による業務効率化や、更なる生産性向上への取組み等を推進。WEB開催した「バリューアップ拡大勉強会」には、協力会組織を中心に約2,800名が参加しました。活動成果は、年1回開催される「バリューアップ活動報告会」にて成果発表をしています。

 

(b)多様な社員が活躍できる環境づくり

As is

・多様な人材が個性を発揮しながら活躍できる働きやすい環境づくりに向けて、諸施策の実行と役職員の意識改革に尽力。

・建設関連事業では女性が少なく、管理職候補層が限られているため、採用時の男女比率に目標を設定し、計画的に推進。

・育児や介護がキャリアの妨げにならない環境づくりを通して、男女に限らずあらゆる社員が個々の能力を最大限発揮できる環境・制度作りを推進。

To be

「働きがい」と「働きやすさ」の実現を目指す。

・「個性活躍」が進むような風土作りとして、管理職に向けたD&I研修を実施や社内ポータルサイト等を通じた、情報発信を積極的に実施。

・またその取組の結果をサーベイ等で確認し、継続的な改善を推進。

 

 

(イ)女性の活躍推進

当社グループでは管理運営事業を中心に多くの女性社員が活躍しており、建設業を営む当社においても積極的な女性採用を目標に掲げるとともに、女性が永く継続就業できる環境を整備する事で、女性社員比率は連結で33.3%となっております。

経営幹部層においては、2023年当社にてグループ初となる女性社内取締役が誕生、今期も新たに女性執行役員が1名就任しました。グループ連結では15名の女性役員がおります。

当社における女性積極採用層が管理職へなるにはもう少し時間を要しますが、引き続き育児・介護がキャリアの妨げとならない環境づくりや、育成をさらに充実・強化していくことで女性管理職比率の向上を目指してまいります。また経営者養成講座といった社内研修に女性社員を積極的に抜擢し、こうしたことを契機に、女性幹部社員の役員への育成・意識付を図り、役員登用を推進してまいります。

 



2024年度、当社は女性活躍推進法に基づく優良企業として「えるぼし認定」の三つ星を取得し、長谷工リフォームも同認定の二つ星を取得いたしました。

 

 

(ロ)多様な人材の活躍

当社グループ並びに協力会社には多様なバックグラウンドを持つ社員が働いています。これらの人材が能力を最大限発揮できる環境や制度作りを推進してまいります。

 

<多様な人材の活躍を支える主な制度・取組一覧>


女性活躍等、D&I推進に向けた取組みに関する詳細な情報は、当社ウェブサイト

(URL:https://www.haseko.co.jp/hc/csr/employee/human_resources.html#anc_1)の「多様な人々の活躍」をご参照ください。

 

(c)健康経営の推進

As is

・「長谷工版健康経営」の基盤構築の推進。

・健康経営の推進体制を整備し、全社的な健康経営推進方針の下、企業内診療所・健康推進室・健康保険組合が密に連携しながらハイリスクフォローとポピュレーションアプローチを展開、施策のブラッシュアップも継続。

・健康経営のノウハウが蓄積、健康に対する社員の意識が向上。

To be

「健康企業の実現」を目指す。

・社員および組織の「業務パフォーマンス(生産性)」や「エンゲージメント」向上に寄与する健康経営の追求・実践。

 

「役職員の健康なくして成果なし」をスローガンに「健康HASEKO元気PLAN」と銘打って役職員の健康づくりにつながる諸施策を進めております。

当社社長による「長谷工グループ健康宣言」の下、「グループ健康経営推進委員会」を設置のうえ、制度・施策については長谷工グループの健康推進機関である㈱長谷工ウェルセンターが中心となり、企業内診療所での健康診断、保健指導、健康セミナーの企画・運営、ストレスチェック、刊行物による定期的健康情報の発信など社員の健康支援に注力しています。独自性の高い制度としては、45歳及び50歳以上の社員を対象に

PET-CT検査費用を全額会社負担しており、癌の早期発見に高い効果が現れています。また、コラボヘルスの柱として特定保健指導「長谷工ヘルスチャレンジ」を展開しており、この成果はメタボ該当率の低下等具体的な健康データに現れております。


 

 

こうした取組みの結果、当社とその関係会社は、経済産業省と日本健康会議が主催する「健康経営優良法人2025(大規模法人部門(ホワイト500))」に認定されております。

※健康経営の推進体制


健康経営に関する詳細な情報は、当社ウェブサイト 

(URL:https://www.haseko.co.jp/hc/csr/employee/occupational_safety.html#anc_2)の「健康経営の推進」をご参照ください。

 

3.業績・成果・中長期的な成長への貢献に相応しい処遇

As is

・人材獲得競争が激化する中、将来を担う人材の確保・定着を促進するため、4年間にわたり初任給と全体の処遇水準の引き上げを実施。

To be

高成果=高処遇を実現することで社員の目標意欲を喚起。常に能力を最大限に発揮して、中長期的に成長する企業グループを目指す。

・グループ全体で各社の業態・収益力に応じた魅力ある賃金水準の確立。

・採用競争力、人材定着度の向上により、更なる事業領域の拡大や新規事業への人材強化を図る。

 

[大卒初任給推移(長谷工コーポレーション)]

単位:千円


4.個人の成長に繋がる学びとチャレンジを後押し

As is

・人材の育成やキャリア開発など様々な学びの場を提供。

・自律人材の育成とキャリア開発、持続的成長を見据えた次世代の経営者・役職者及び実務リーダー層の育成、新たな戦略を実現する人材の育成という観点でイノベーティブ人材・グローバル人材の養成、DX教育等幅広く展開。

To be

グループの社員一人ひとりがキャリアを通して成長し、変化にしなやかに対応しながら個と組織の力が最大発揮されている状態を目指す。

・キャリア実現に向けた自発的な能力開発を後押しし、グループの社員一人ひとりがキャリアを通して成長。変化にしなやかに対応しながら個と組織の力が最大発揮されている状態で、経験と知の融合による新たな価値創造を目指し尽力する。

 

 


当社グループの人材育成に関する詳細な情報は、当社ウェブサイト

(URL:https://www.haseko.co.jp/hc/csr/employee/educational.html)の「人材育成・技術継承」をご参照ください。

 

[実施内容(ポイント)]

経営者養成講座

・選抜により早期に経営者としてのマインド・スキル醸成を図る。

・新任常務研修・新任執行役員研修は、異業種の参加者間で意見交換する要素を取り入れたプログラムへ変更し、経営者に必要な幅広い視野と高い視座を養成する。

役職者教育

・高まり続ける社会からの要請への対応等で役職者の役割が増大している中、マネジメント・D&Iについての学びを通して、多様な人材が個性を大切にしながら活躍できる環境づくりを後押しする。

自律人材育成プログラム・キャリア開発

・入社後10年間で「自ら考え行動し未来を切り拓くことが可能な」人材を育成する。

・将来の長谷工グループを担う若手・中堅社員の職場定着を重要課題と捉え、ブラザーシスター(教育担当)・ネクスター(メンター)・人事の3方面からフォローする。

・増加するキャリア入社者のスムーズな受け入れ・早期定着に向けた施策を整備する。

DX・イノベーティブ・グローバル人材教育

・グループ全体でDX・イノベーションを推し進めるため、求めるスキル水準を定めてDX推進人材の育成と組織全体をボトムアップする。

・英語教育を通して海外事業強化を担うグローバル人材に厚みをもたせる。

実務教育

・新中期経営計画達成の鍵となる若手社員の早期戦力化・早期育成。実務知識を強化するカリキュラムを会社別・部門別に実施。

・特に主要資格の早期取得は、上司・部下のコミュニケーションに加えて手厚くサポート。

全社員向け教育

・長谷工ビジネスカレッジは、自らの実務遂行能力の向上や将来に向けた知識・スキルを習得するプログラム。「自ら学び、学びあう風土づくり」で変革の時代に対応していく。

 

 

[人材育成に関する教育投資(長谷工コーポレーション)]


 

※2021年度の研修費用が前年比で減少している要因は
コロナ禍で会場での研修をオンラインへ切替えたため。

 

 

 

[主要資格合格率(2024年度)]

・特に主要資格の早期取得については、会社から様々なバックアップを行い、グループ全体での取得促進をしております。

 

※宅地建物取引士は新入社員の結果

試験合格率

 

宅地建物
取引士

一級建築士

 1級建築施工
管理技士

当社

91.4%

40.9%

88.6%

グループ全社

87.0%

38.7%

81.2%

 

 

 

[キャリア実現を後押しする仕組み]


①社員一人ひとりのキャリア実現に向けて開かれた機会を提供する

・キャリアを考える機会とその実現を支援する仕組みづくりを進め、変化することに前向きな風土を醸成

・選抜・抜擢人事や公募等を組み合わせ、健全な新陳代謝を図りながら組織と個を活性化する

②一人ひとりの特性・志向を把握、組織のニーズを結び付ける

・組織・役割に応じて求められる能力・適性とスキル・経験を整理

・個人のキャリア目標達成に向けた自発的な取組みを、周囲からも働きかけ支援する

学び・成長する意欲から生み出される成果と貢献に応える

・スキルと経験の可視化、学びのプラットフォームを拡張し積極的な能力開発に繋げる

・加速する環境変化と攻めの事業戦略に対応するリスキリングの機会を提供する

 

 

 

 

(Ⅲ)リスク管理

継続的な企業成長を実現させていく為には、多様な人材を安定して採用し、定着させていくことが重要であると考えております。そのため、労働市場の人材流動性が高まる中、計画通りの採用数及び多様な優秀人材の獲得が進まなくなること、社員の離職により組織力が低下することがリスクと捉えております。女性社員の離職率改善を目指し、離職率3%以下という目標を立て、D&I推進室の下、女性活躍推進施策や働きやすい環境整備を強化しております。また、労働時間や職場環境等を理由とした社員の「傷病による欠勤(アブセンティーイズム)」や「健康上の理由による業務パフォーマンスの低下(プレゼンティーイズム)」などもリスクと捉えております。

上記ガバナンス体制及び職制をベースとした適切な労働時間管理、自己申告やヒアリング等を通した職場環境及び社員一人ひとりの把握、また業務を通じた働きがいの実感、社員のキャリア志向を捉えた配置活用、適切な評価制度の運用を通じた処遇の実現等により、社員が前向きに活躍しやすい環境を整えることで、リスク低減に努めております。

 

(Ⅳ)指標及び目標

当社グループは、「(Ⅱ)戦略」で記載した各施策において、それぞれに対応する指標を設定し着実に取り組みを進めてまいります。各指標に関する目標および実績については、次のとおりであります。

 

1.グループ経営基盤と強固な人員・組織体制の追求

指標

目標

実績(当連結会計年度)

新卒採用計画達成率

100

81.5

正社員離職率

5.0

5.1

 

 

2.多様な人材が健康に安心して働きやすい環境づくり

(a)働きやすい環境づくり

指標

目標

実績(当連結会計年度)

4週8閉所実施率

100(注)

30.4

4週8休(年間104日休日)実施率

100(注)

83.9

死亡・重大事故災害

0(注)

1

労働災害度数率

0.60以下(注)

0.28

労働災害強度率

0.01以下(注)

0.26

 

(注)当社の目標

 

(b)多様な社員が活躍できる環境づくり

指標

目標

実績(当連結会計年度)

新卒採用における女性採用比率

30

36.5

女性社員比率

30以上

33.3

女性管理職比率

12

10.6

男性労働者の育児参加制度利用率
(育児休業と配偶者出産休暇の取得率)

100

81.1

男性労働者の育児休業取得率

50

59.4

障がい者雇用率

2.5

2.48

 

 

(c)健康経営の推進

指標

目標

実績(当連結会計年度)

健康診断受診率

100

100

ストレスチェック受検率

100

99.3

特定保健指導の対象となる割合

15以下

16.4

特定保健指導実施率

55

55.6

健康経営優良法人の認定取得

ホワイト500認定取得

ホワイト500認定取得

 

 

3.個人の成長に繋がる学びとチャレンジを後押し

指標

目標

実績(当連結会計年度)

主要資格保有率 ※

100

82.2

長谷工ビジネスカレッジ受講率

30

12.4

 

※主要資格とは以下の資格を指します。

宅地建物取引士、一級建築士、1級建築施工管理技士、管理業務主任者、賃貸不動産経営管理士

1級管工事施工管理技士、1級電気工事施工管理技士、1級土木施工管理技士、

インテリアコーディネーター、マンションリフォームマネジャー

 

 ② 気候変動への対応(TCFD提言に沿った気候変動関連の情報開示)

当社グループは、『「住まい」と「暮らし」のリーディングカンパニーとして持続的な成長と企業価値向上を実現する』ことを基本方針とし、「都市と人間の最適な生活環境を創造し、社会に貢献する。」ことを目指しております。一方で、近年、気候変動による自然災害の頻発・激甚化が、私たちの住まいや暮らしの安全・安心にとって脅威となりつつあります。

かかる状況を踏まえ、当社グループは、気候変動への対応を重要な経営課題の一つと捉え、2021年12月に気候変動対応方針「HASEKO ZERO-Emission」を策定・発表すると同時に、TCFD提言に賛同いたしました。

「HASEKO ZERO-Emission」に関する詳細な情報は、当社ウェブサイト
(URL:https://www.haseko.co.jp/hc/csr/environment/climate.html)をご参照ください。

 

 (Ⅰ)ガバナンス

気候変動に関するガバナンスは、当社グループのサステナビリティマネジメント体制に含まれております。詳しくは「(2)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理」をご参照ください。

 

(Ⅱ)戦略
(リスクと機会を特定するプロセス)

当社グループは、サステナビリティ推進会議の下に気候変動対応に係る全社横断的なワーキンググループ(以下、WG)を設置し、気候関連のリスクと機会の特定、影響度の分析及び対応に係る検討を行っております。

検討結果は、サステナビリティ委員会にて、分析の妥当性や追加対応の必要性等につき審議のうえ承認し、取締役会に報告することとしております。

 

(対象セクター/地域、財務計画への影響)

グループの全事業を対象に分析を行っております。また、財務への影響については、定性的な分析に加えて、一部可能なものについては定量的な影響額の算出を行っております。

 

(シナリオの説明、短期・中期・長期の視野)

分析に当たっては以下の2つのシナリオを設定し、影響の検討を行いました。


*1 IEA :International Energy Agency(国際エネルギー機関)

*2 IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change(気候変動に関する政府間パネル)

また、短期、中期(2030年まで)、長期(2050年まで)の視点で検討を行いました。

 

(重要な影響を与える気候関連の課題、レジリエンス)

分析の結果、脱炭素社会への移行に伴う炭素税の導入や各種規制強化による建設原価の上昇、夏季平均気温の上昇に伴う労務不足及び気象災害の頻発・激甚化に伴う建設工事の遅延を重要なリスクとして特定いたしました。

一方で、ZEHや災害に強い住宅の需要拡大が、新築・リニューアル工事の受注機会拡大等につながる可能性があると分析しております。

また、分析結果の更新の都度、特定したリスク・機会に対する取り組み状況を整理し、その十分性や追加施策の必要性について検討を行っております。その結果、下表「対応策」に記載のとおり、CO2排出削減の推進、機械化等による作業効率化の推進、関連する各種技術開発等に取り組んでいるところです。これらの取り組みを着実に進めることにより、リスクの影響最小化、機会の影響最大化を図り、長谷工グループのレジリエンスを高めてまいります。

なお、重要なリスクと機会及びその影響度と対応についての詳細は、次表をご覧ください。

 

(リスクと機会)

※「影響度」は2030年度における影響を評価したものです。

 


 

(対応策)

前表の「リスクと機会」に対する対応策は、次表のとおりです。

 


 

(Ⅲ)リスク管理

気候変動関連リスクについては、全社横断的なWGを設け、気候変動リスクの洗い出し、事業への影響度の分析を行っています。WGで分析されたリスクは、サステナビリティ委員会で審議され、取締役会に報告される体制となっております。

 

(Ⅳ)指標及び目標

当社グループは、気候関連問題が経営に及ぼす影響を評価・管理するため、温室効果ガス(CO2)総排出量を指標として削減目標を設定しております。なお、2030年度目標について、SBT*3の認定を取得いたしました。


*3 SBT :Science Based Targets(科学的根拠に基づく目標)

*4 Scope1:燃料の燃焼等による直接排出

*5 Scope2:電気の使用等による間接排出

*6 Scope3:事業者の活動に関連するサプライチェーン排出

※2020・2021・2022・2023年度の実績及び算定方法に関する詳細な情報は、当社ウェブサイト
(URL:https://www.haseko.co.jp/hc/csr/esg/)をご参照ください。

 (CO2総排出量は、GHGプロトコルに従い算定しております。)

 

 

 また、当該目標の達成に向けて、以下の目標も設定しております。

・建設現場で使用する電力の100%再エネ化(2025年までに実現)

・オフィス等で使用する電力の100%再エネ化(2026年度に実現)

・スコープ2 ゼロの実現(2026年度に実現)

・H-BAコンクリート(環境配慮型コンクリート)採用件数50%以上(2030年までに実現)

・自社グループが主体となって開発するマンションの ZEH-M Oriented化(2022年度設計着手 分以降、全件)

・グループ施工物件のZEH-M Oriented化100%(2030年度)

 

 ≪CO2排出量実績≫       

 (単位:t-CO2)

 

2022年度

2023年度

2024年度

スコープ1 直接排出(燃料使用等)

34,486

52,224

45,571

スコープ2 間接排出(電気使用等)

18,302

8,349

4,766

スコープ3 サプライチェーン排出

5,629,382

5,294,469

5,685,999

合計

5,682,170

5,355,042

5,736,336

(注1)当社及び主要連結子会社の25社を対象に算定

(注2)原則として、電気・燃料の使用量や活動量のデータに環境省等が公表している排出係数(排出原単位)を乗じて算出

 

 

なお、当社グループでは、CO2排出量(スコープ1、スコープ2、スコープ3)について、透明性と正確性を確保するため、一般財団法人日本品質保証機構(JQA)による第三者検証を受けています(2022・2023年度分)。

今後も第三者検証を有効に活用し、継続的に精度向上に取り組んでまいります。

 

 

 ③ 人権の尊重

当社グループでは、「長谷工グループ行動規範」の中で「人権の尊重」を明文化しております。また、人権尊重を図る取組みを深化させるため、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に沿って、2022年1月に「長谷工グループ人権方針」を策定いたしました。グループの社員一人ひとりが人権に対して理解を深め、常に高い意識を持って業務にあたることができるようグループ内での浸透を図るとともに、協力会社等のサプライチェーンに対しても、人権を尊重した事業活動を要請いたします。また、人権デュー・ディリジェンス(以下、人権DD)の取組み等を通じて、人権に配慮した経営に努めてまいります。

「長谷工グループ行動規範」に関する詳細な情報は、当社ウェブサイト
(URL:https://www.haseko.co.jp/hc/csr/pdf/code_of_conduct_2.pdf)、

「長谷工グループ人権方針」に関する詳細な情報は、当社ウェブサイト
(URL:https://www.haseko.co.jp/hc/csr/pdf/human_rights.pdf)をご参照ください。

 

(Ⅰ)ガバナンス

人権に関するガバナンスは、当社グループのサステナビリティマネジメント体制に含まれております。詳しくは「(2)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理」をご参照ください。

 

(Ⅱ)リスク管理

人権に関するリスクは、人権DDによって把握・特定の上、予防・軽減策を講じてまいります。その状況は、リスク統括委員会に報告されるとともに、サステナビリティ委員会、経営会議、取締役会にも適宜報告されます。

当社グループの人権におけるリスク管理に関する詳細な情報は当社ウェブサイト

(URL:https://www.haseko.co.jp/hc/csr/governance/human_rights.html)をご参照ください。

 

(人権デュー・ディリジェンスの取組み状況)

「長谷工グループ人権方針」の策定に伴い、現在、人権DDの取組みを進めております。人権DDは、事業活動に関連して発生しうる人権侵害のリスクを洗い出し、評価、特定したうえで、予防・軽減措置を講じ、その効果を確認してPDCAを回すことにより、人権尊重の取組みの実効性を高めていく継続的なプロセスであります。このプロセスについては、単年度のみならず、毎年度継続してPDCAサイクルを回してまいります。

 


 

●対応すべき人権課題の特定

 当社の経営管理部門及び協力会社との窓口である建設部門にて「人権WG」を組成し、グループの事業活動に関連して発生しうる人権侵害のリスクを洗い出し、深刻度と発生可能性の観点から評価を行うとともに、関連する部門やグループ会社の対応状況等につき確認し、2022年10月に優先的に対応すべき人権課題を特定いたしました。なお、2024年2月には、人権課題の特定以降に実施した予防・軽減策の状況や、事業内容・事業環境の変化等を踏まえ、人権WGにおいて、人権課題見直しの要否を検討しましたが、見直しは不要と判断しております。以後、見直し不要の判断を継続しておりますが、今後も、必要に応じ見直し要否を判断してまいります。

 

  ■特定した人権課題

 


 

●予防・軽減策の検討・実施

特定した人権課題の多くは、従来から展開している「リスク予防活動」の中で、「全社共通リスク」あるいは「部門固有リスク」として認識し、対策を講じてきているものとなります。このため、2024年度の「リスク予防活動」では、2023年度に引き続き、特定した人権課題の周知を図るとともに、各部署が洗い出したリスクのうち人権課題に該当するものを特定することにより、自部署に潜在的に存在する人権課題を各部署において確認する作業を実施いたしました。今後、確認結果を元に、追加対策の要否については検討していく方針です。

一方、特定した人権課題の一部には、従来はグループの課題としての認識が薄く、実態が十分に把握できていないものもありました。このため、こうした人権課題への対応としては、その実態を把握し且つ繰り返し対応を促すため、協力会社に対して各種アンケートを実施してきました。2024年度も、サステナブル調達ガイドラインの遵守状況を確認する「自主点検表」アンケート(「④サプライチェーン・マネジメント」をご参照ください。)により、外国人技能実習生の処遇等をはじめとした協力会社における人権関連の課題の有無を確認しております。また、建設現場で働く協力会社の外国人労働者が増加している状況を踏まえ、2024年度から、外国人労働者とエンゲージメントを行う「グローバル・ワーカーズ・ミーティング」を開始しました。業務面に限らない悩み等を確認のうえ、解決・改善を図ることにより、働き易い環境づくりを目指しております。

 

●人権DDの取組み体制

人権DDへの取組み状況等については、当社社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」に報告し、レビューを受けております。

実務的な対応については、これまで、経営管理部門及び建設部門にて組成した人権WGが中心となって進めてきましたが、人権に関する認識の浸透状況も踏まえ、2025年度からは、特定した人権課題毎に主担当部署を明確にしたうえで、各部署における予防・軽減策の実施状況や実施結果をサステナビリティ推進部にて取りまとめ、PDCAを回していく体制としております。

■人権WGの概要

◆構成部署:サステナビリティ推進部、リスク管理部、人事部、人材開発部、建設企画部

(いずれも、当社の部署)

◆メンバー:構成部署の担当役員、部長、チーフ等

◆責 任 者:サステナビリティ推進担当役員

 

 ④ サプライチェーン・マネジメント

当社グループは、サプライチェーン全体で社会的責任を果たすための取組みを進めており、そのために「長谷工グループサステナブル調達ガイドライン(旧「長谷工グループCSR調達ガイドライン」)」を制定しております。グループ各社が資材や労務の調達を行う際に当ガイドラインを遵守するとともに、取引先(サプライヤーに限らず、請負業者、代理業者等、全ての取引先を含みます)にも当ガイドラインを遵守した事業活動をお願いすることにより、社会の要請に応えてまいります。なお、主要取引先については、当ガイドラインに対する同意書を取得しております。また、それ以外の取引先も含めて、当ガイドラインの遵守要請を明確化するため、取引に関する契約書への条項追加に取り組んでおります。

「長谷工グループサステナブル調達ガイドライン」に関する詳細な情報は、当社ウェブサイト
 (URL:https://www.haseko.co.jp/hc/csr/pdf/sutainable_guidelines_02.pdf)をご参照ください。

 

(Ⅰ)ガバナンス

サプライチェーン・マネジメントに関するガバナンスは、当社グループのサステナビリティマネジメント体制に含まれております。詳しくは「(2)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理」をご参照ください。

 

(Ⅱ)リスク管理

サプライチェーン・マネジメントに関するリスクについては、人権や環境に関するものが多く、それぞれのテーマの中で、リスクの把握や対応を行っており、その状況は、サステナビリティ委員会、経営会議、取締役会にも適宜報告いたします。その他リスクについては、サステナビリティ委員会で審議、対応されます。

なお、取引先における「長谷工グループサステナブル調達ガイドライン(旧「長谷工グループCSR調達ガイドライン」)」の遵守状況を確認するため、2022年度から毎年、自主点検表によるアンケートを実施し、概ね適切な対応が行われていることを確認しております。

 

■「長谷工グループCSR調達ガイドライン(現「長谷工グループサステナブル調達ガイドライン」)自主点検表の概要(2024年度)

対象 ※

建栄会、建翔会、親和会、住優会、輝翔会の会員全社

実施時期

2024年6月~8月

内容

「長谷工グループCSR調達ガイドライン(現「長谷工グループサステナブル調達ガイドライン」)」の各項目の遵守状況について、取引先企業の自主点検結果を回答いただくもの

 

※各会は、以下のグループ会社の協力会社の組織。

◆建栄会:㈱長谷工コーポレーション ◆建翔会:不二建設㈱ ◆親和会:㈱細田工務店

◆住優会:㈱長谷工リフォーム ◆輝翔会:㈱長谷工コミュニティ

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの業績及び財政状態は、今後起こり得る様々な要因により影響を受ける可能性がありますが、事業等のリスクについては、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項について記載しております。当社グループは、これらの他にも様々なリスクがありうることを認識し、それらを可能な限り防止、分散あるいは回避するよう努めておりますが、当社グループの支配の及ばない外部要因や必ずしも現時点にて具現化する可能性が高くないと見られる事項等の発生により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

なお、文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 分譲マンションに関わる事業への依存

当社グループは、首都圏、近畿圏及び東海圏での分譲マンションに関わる事業をコアとしており、中でも分譲マンション建設事業に対する依存度が高くなっております。従って、受注高やその他の分譲マンション関連事業の取引高は、分譲マンションの新規供給量や販売状況、分譲マンション建設用地の供給、取引先デベロッパーの事業規模、住宅関連政策、住宅にかかる税制及び金利等の動向によっては大きく変動することになり、これらの変動が業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社は、土地情報収集力や分譲マンション事業に関するプロジェクトマネジメント力を背景として、土地持込による受注を主たるビジネスモデルとしておりますが、このビジネスモデルにより今後も引き続き競争優位に立ち、市場シェアや収益性の維持、拡大が図れるという保証はありません。

そのため、当社グループでは安定収益源の底上げを図るべく、建設関連事業、不動産関連事業、管理運営事業それぞれの事業領域や事業エリアの拡大に取り組むことで、収益基盤の強化と収益構造の変化を目指しています。

(2) 建設市場の動向

当社は、建設資材・労務等の確保を本社機能部門による集中購買体制にて実施しており、将来の着工時期の予測を踏まえた運用や全体調達によるコスト競争力の強化に努めておりますが、建設業全般の業績の動向によりマンション建設の分野に対する参入が増え、同業他社との価格競争が激化した場合や、建設資材・労務等の急激な高騰及び調達難、協力業者等の確保状況による生産能力の低下等が生じた場合、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 法的規制、行政規制等

当社グループが事業を行う上で遵守すべき法令・規則等は多岐に渡っており、建築基準法、建設業法、宅地建物取引業法、建築士法といった事業に直接関係する法令のみならず、会社法、金融商品取引法といった事業に直接関係はしないものの重要な法令等があります。当社グループにおきましては、役職員がこれらの法令等を遵守することができるよう啓蒙を適宜実施しておりますが、これらの法令等を遵守できなかった場合、又はこれらの法令等が当社グループの予測し得ない内容に改廃もしくは新設された場合、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

特に、建築基準法等のマンション建設における法的規制の改廃もしくは新設、又は建築確認・検査の厳格化等により、事業計画の大幅な変更、建設工事の着工の遅延又は中止等が発生した場合、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、国内外の事業遂行にあたり、当社グループに対する訴訟等について、当社グループ側の主張・予測と相違する結果となった場合には、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

なお、当社の連結子会社である㈱長谷工リフォームが、大規模修繕工事の受注に関し、独占禁止法違反の疑いがあるとして、2025年3月、公正取引委員会による立入検査を受けました。当社といたしましては、この事実を厳粛に受け止め、公正取引委員会の調査に全面的に協力しております。

 

(4) 周辺住民との関係

建設工事着工に際しましては、周辺住民に対する事業計画等の説明を実施しておりますが、反対運動及びそれに伴う訴訟等により、事業計画の大幅な変更、建設工事の着工の遅延又は中止等が発生した場合、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(5) 契約不適合責任

建設部門・設計部門・技術推進部門に主力協力会社を加えた四位一体での品質向上活動への取組みにより、施工品質の維持向上には万全を期しておりますが、引当金の計上額を上回る負担の発生や、保険等でカバーできない損害賠償が発生した場合、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(6) 建設事業における事故等

当社グループは、安全教育の実施、点検パトロール等、工事事故・品質事故・災害を撲滅するために安全管理・施工管理を徹底し、また、工事着手にあたり入念な施工計画の立案等、安全な作業環境を整え施工を行っておりますが、万が一、重大な工事事故・品質事故・労働災害等が発生した場合、社会的信用を失うとともに、企業イメージを損ない、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(7) 取引先の信用リスク

建設業においては、一つの取引における請負金額が大きく、多くの場合工事代金の支払いは分割であり、目的物の引渡し時及び引渡し後に多額の支払が行われる傾向があります。当社グループでは取引先の信用力と信用額の管理を行っておりますが、工事代金の受領前に取引先が信用不安に陥った場合は、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(8) 保有不動産

当社グループは、営業活動上の必要性から不動産を保有しておりますが、事業の分散あるいはリスク管理の観点から、不動産の投資分野毎の投資上限を定めた投資計画をもとに取得を行っております。しかしながら、不動産には時価の変動リスクがあるとともに、一般的に流動性が高くないため売却時における需給関係によっては相場価格により売却できない場合があります。

棚卸不動産については当社グループが開発ノウハウを持つ分譲住宅を中心とした投資を行っておりますが、事業計画の進捗次第では予定している回収額に満たない場合や様々な要因により計画を中止せざるを得ない場合があります。また、固定資産については当社グループが開発・運営のノウハウを持つ賃貸マンションを中心とした投資を行っておりますが、賃貸条件や事業収支の悪化が生じる等、予定しているキャッシュ・フローが得られなくなる場合があります。これらの場合には評価損失・減損損失・売却損失等が発生し、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(9) 企業買収等

当社グループは、事業拡大や収益基盤の強化を目的に企業買収等を実施することがありますが、実施にあたっては、その重要性に応じ第三者の専門家による対象企業並びに事業環境等の調査を客観的かつ詳細に行い、その調査報告も参考に決定しております。しかしながら、買収等の対象事業を当社グループの経営戦略に沿って統合できない場合や、既存事業及び買収等の対象事業について効率的な経営資源の活用を行うことができなかった場合、また、急激な市況変化が生じた場合には、当初想定していた効果が得られないことにより、のれんの減損の発生等、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(10)事業エリアの偏重

当社グループは、事業拡大や収益基盤の強化を目的に地方主要都市を中心とした事業エリアの拡大に取組んでおりますが、会社の経営資源の多くは首都圏・近畿圏・東海圏に集中しております。このため、将来、首都圏・近畿圏・東海圏並びにその周辺において、地震、暴風雨、洪水その他の天災、感染症、事故、火災、その他の人災等が発生し、工期の遅延、消費者の購買意欲の減退、所有資産の毀損等があった場合には、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)海外事業におけるリスク

海外での事業活動では、社会慣行の違い、法令・規制の予期せぬ変更、経済・為替の変動、政治・軍事、地政学等に関するリスクが存在し、これらに関した問題が発生した場合には、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、事業活動実績の少ない地域における新規事業の判断は、第三者の専門家等による多面的な評価を参考に取組みの判断を行うなど、社内におけるリスクコントロールの向上にも努めております。

(12)オペレーショナルリスク

当社グループが業務を遂行するにあたり、役職員による不正行為、不適切な行為、事務処理のミス、労務管理上の問題等の各種オペレーショナルリスクの発生が考えられます。当社グループはリスク管理規程を定め、オペレーショナルリスクも含めた事業遂行に関わる様々なリスクについて管理し、それらのリスクに対応することによって、グループの経営方針の実現を阻害するリスク要因を可能な限り低減させ、コントロールするよう努めておりますが、上記のようなオペレーショナルリスクが発生した場合、社会的信用を失うとともに、企業イメージを損ない、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(13)個人情報等の管理

当社グループは、住宅購入顧客並びに購入検討顧客や管理受託マンションの居住者等、多くの個人情報を保有しております。また、営業・購買情報等、多くのデータをクラウド管理しています。個人情報保護法に従って、個人情報の取扱いに関するルール(基本方針・規程・細則)を、マイナンバー(社会保障・税番号)制度への対応のため、マイナンバー関連規程(基本方針・規程)を設け、体制整備を行っております。また、個人情報以外の情報の取扱いについても、各部個別にセキュリティポリシー(基本方針・対策基準・実施手順)を順次整備する等、情報管理を徹底し万全を期しておりますが、クラウド及びサーバーのトラブルによる情報流出や犯罪行為等による情報漏洩が発生する可能性があります。その場合、社会的信用を失うとともに、企業イメージを損ない、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(14)資金調達及び金利動向等

当社グループは、借入や社債発行による資金調達を行っており、一部の借入については金利変動リスクに対応するために金利の固定化を実施しておりますが、金利等の市場環境の変化、あるいは当社に対する格付の引下げ等の信用力低下により資金調達コストが増加し、当社グループの業績及び財務内容に影響を与える可能性があります。

また、金融機関からの新規借入や社債発行にあたっては同様の条件により行えるという保証はなく、当社グループが金融機関から借入や社債発行による調達を適時に行えない場合には、当社グループの資金調達に影響を及ぼす可能性があります。

当社は、事業上必要な資金調達について、主に金融機関との間で協調融資方式によるタームローン、及びコミットメントライン契約の借入契約を締結しております。これらの借入契約には、自己資本の維持と経常利益の確保の2項目に関して財務制限条項が付加されており、それに抵触した場合には、多数貸付人の意思結集に基づく請求により期限の利益を喪失する可能性があり、約定の返済期限より前に残元本及び利息等を返済する義務が発生する可能性があります。

(15)株式市場の動向

当社グループは、市場性のある株式を保有しておりますが、株式市場が下落し、保有株式の価値が大幅に下落した場合には、当社グループの財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

影響を限定的にするために、株式の保有残高について連結純資産に対して一定程度を目安とすることとしております。

 

(16)中期経営計画について

当社グループは、2026年3月期をスタートとする中期経営計画「HASEKO Evolution Plan」において、「建設関連事業」、「不動産関連事業」、「管理運営事業」の3つの輪を強化し、新たな事業領域を含めた収益基盤を確立させる為の積極的な成長戦略投資や株主還元の拡充を進めるとともに、E・S・Gすべての観点から社会的責任を全うすることで、事業活動そのものを通じて持続可能な社会の実現に貢献することを公表しております。

計画内容の策定にあたっては、取締役会にて事業の課題や方向性等について充分な検討を重ねてきましたが、当社グループの業績は、経済環境等様々な要因の影響を受ける可能性があるため、目標値を達成できるという保証はなく、計画している事業上、財務上の効果が得られない可能性があります。

また、当社グループは収益基盤強化のため建設関連事業、不動産関連事業、管理運営事業それぞれの事業領域や事業エリアの拡大などグループ事業展開の強化も計画しておりますが、予期せぬ経済情勢の変化、あるいはマーケットの急激な変化等により、事業展開が予定通りに実行できず、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(17)気候変動リスク

脱炭素社会への移行リスクとしては、炭素税の導入や各種規制強化により建設コストや物件開発コストが上昇し、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、物理的リスクとして、夏季平均気温の上昇に伴う建設現場や物件開発工事現場の生産性低下や、気象災害の頻発・激甚化に伴う建設工事の遅延発生、保有物件被災に伴う復旧コスト発生のケースで、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

かかる気候変動に関するリスクも踏まえ、当社グループは、2021年12月に「長谷工グループ気候変動対応方針 ~HASEKO ZERO-Emission~」を制定し、同方針に従い、再生可能エネルギーの導入拡大、環境配慮型資材の活用促進、低炭素施工や脱炭素住宅に係る技術開発等により、温室効果ガス排出量の削減に取り組んでいます。また、機械化やIT活用による建設現場の作業効率化、気候の影響を受けにくい施工方法の研究等により、物理的リスクの影響緩和に取り組んでいます。加えて、施工中物件を含む関連物件・施設の被災に迅速に対応するための災害時BCP(事業継続計画)体制の高度化や災害に強いマンションづくりにも注力しております。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」といいます。)の状況の概要、並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 経営成績

当連結会計年度における国内経済は、一部に足踏みが残るものの、緩やかに改善しました。先行きについては雇用・所得環境が改善する下で各種政策の効果もあり、緩やかな回復が続くことが期待される一方、インフレ・金利動向のみならず、米国の通商政策、緊迫化する国際情勢、それらに伴う国内経済への影響についても注視していく必要があります。

2024年度のマンションの新規供給戸数は首都圏で2万2,239戸(前期比17.0%減)、近畿圏で1万5,711戸(同0.5%減)となりました。供給件数と戸数の絞り込みが続き、首都圏・近畿圏共に3年連続で前年度を下回りました。供給商品の内容をみると、首都圏・近畿圏共に分譲単価・平均価格の上昇が継続しています。首都圏の分譲単価は1,230千円/㎡(同6.9%増)、平均価格は8,135万円(同7.5%増)と、4年連続で過去最高値を更新しました。近畿圏では分譲単価は894千円/㎡(同7.2%増)、平均価格は5,065万円(同2.6%増)となり、分譲単価は4年連続で過去最高値を更新しました。販売状況は、首都圏においては時間をかけた販売姿勢の強まりから、初月販売率は66.8%(同3.1ポイント減)となり、年度末の分譲中戸数は6,116戸(同8.0%増)と増加しました。近畿圏では初月販売率は74.6%(同1.1ポイント増)、年度末の分譲中戸数は2,597戸(同5.8%減)と減少し、販売は順調に推移しました。

このような中、中期経営計画「HASEKO Next Stage Plan(略称:NS計画)」の最終年となる当連結会計年度につきましては、資材・労務費の高騰等の影響を受け、完成工事総利益率は低下しましたが、不動産関連事業・サービス関連事業において各社が着実に利益を積み重ねた結果、連結経常利益は期初予想であった800億円を上回り、834億円となりました。

当連結会計年度における業績は、完成工事高の増加及び不動産の取扱量増加により売上高は1兆1,774億円(同7.6%増)、販売費及び一般管理費の増加により営業利益は847億円同1.2%減)、経常利益は834億円同0.1%増)、海外関連事業において特別損失として減損損失、投資有価証券評価損及び訴訟損失引当金繰入額を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は345億円同38.5%減)の増収減益となりました。営業利益率は7.2%(同0.6ポイント減)、経常利益率は7.1%(同0.5ポイント減)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

  (単位:億円)

 

建設関連事業

不動産関連事業

サービス関連事業

海外関連事業

売上高

7,967

(+202)

1,747

(+465)

2,764

(+88)

35

(+25)

営業利益

535

(△44)

240

(+48)

181

(△11)

△57

(△8)

 

( )内は前期比増減額

 

 

(建設関連事業)

建築工事では、当社の土地情報収集力や商品企画力、施工品質や工期遵守に対する姿勢、効率的な生産体制等について事業主から評価を頂いている一方、受注時採算の悪化及び資材・労務費の高騰等により、当期の完成工事総利益率は低下いたしました。

当社における分譲マンション新築工事の受注は、首都圏で200戸以上の大規模物件21件を含む65件、近畿圏・東海圏で200戸以上の大規模物件8件を含む22件、合計で87件となりました。また、分譲マンション以外の工事として、賃貸マンション等5件を受注いたしました。

当社の完成工事につきましては、賃貸マンション等15件を含む計111件が竣工いたしました。

当セグメントにおいては、当社における完成工事高の増加により売上高は7,967億円(前期比2.6%増)、完成工事総利益率の低下により営業利益は535億円(同7.6%減)の増収減益となりました。

 

(不動産関連事業)

分譲マンションの新規引渡しが減少した一方、その他の不動産取扱量が増加したことにより、当セグメントにおいては、売上高は1,747億円(前期比36.3%増)、営業利益は240億円(同24.9%増)の増収増益となりました。

 

(サービス関連事業)

大規模修繕工事及びインテリアリフォームでは、期初受注残の不足により売上高は減少しましたが、コスト抑制により粗利率が改善され、利益は横ばいとなりました。

賃貸マンション運営管理・社宅管理代行では、新規受託の順調な推移や継続的な受託により、運営管理戸数は両事業合計194,222戸(前期末比1.6%増)となりました。

新築マンションの販売受託では、期中の契約が堅調に推移し引渡戸数は増加しました。

不動産流通仲介では、仲介の取扱件数・リノベーション事業の販売戸数ともに増加しました。

分譲マンション管理では、新規受託が堅調に推移し管理戸数は443,331戸(同1.5%増)となりました。

シニアサービスでは、有料老人ホーム・高齢者向け住宅の入居が進捗したことにより、稼働数は2,717戸(同6.6%増)となりました。

当セグメントにおいては、売上高は2,764億円(前期比3.3%増)、営業利益は181億円(同5.8%減)の増収減益となりました。

 

(海外関連事業)

ハワイ州オアフ島において、商業施設の運営及び新規の戸建分譲事業の開発を進めております。

当セグメントにおいては、売上高は35億円(前期は売上高10億円)、営業損失は57億円(前期は営業損失49億円)となりました。

 

 

生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。

 

a.受注実績

セグメントの名称

区分

前連結会計年度
(自 2023年4月1日
 至 2024年3月31日)
(百万円)

当連結会計年度
(自 2024年4月1日
 至 2025年3月31日)
(百万円)

建設関連事業

建設工事等

522,788

568,597

( 8.8%増)

設計監理

15,770

15,145

( 4.0%減)

538,558

583,743

( 8.4%増)

不動産関連事業

不動産分譲等

サービス関連事業

大規模修繕・
内装工事等

62,351

68,699

(10.2%増)

海外関連事業

建設工事等

合計

600,909

652,442

( 8.6%増)

 

(注) 1 当連結企業集団では建設関連事業における建設工事等及び設計監理、サービス関連事業における大規模修繕・内装工事等及び海外関連事業における建設工事等以外の受注実績を把握することが困難であるため記載しておりません。

2 セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

b.売上実績

セグメントの名称

前連結会計年度
(自 2023年4月1日
 至 2024年3月31日)
(百万円)

当連結会計年度
(自 2024年4月1日
 至 2025年3月31日)
(百万円)

建設関連事業

710,034

735,141

3.5%増)

不動産関連事業

127,684

174,252

( 36.5%増)

サービス関連事業

255,696

264,494

3.4%増)

海外関連事業

1,007

3,466

(244.2%増)

合計

1,094,421

1,177,353

7.6%増)

 

(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

 

c.建設関連事業の状況

売上実績

区分

前連結会計年度
(自 2023年4月1日
 至 2024年3月31日)
(百万円)

当連結会計年度
(自 2024年4月1日
 至 2025年3月31日)
(百万円)

建設工事等

480,379

533,232

(11.0%増)

設計監理

11,776

14,250

(21.0%増)

不動産販売等

217,764

187,543

(13.9%減)

その他

115

116

( 0.8%増)

外部顧客への売上高

710,034

735,141

( 3.5%増)

 

 

 

d.不動産関連事業の状況

区分

前連結会計年度
(自 2023年4月1日
 至 2024年3月31日)

当連結会計年度
(自 2024年4月1日
 至 2025年3月31日)

 

数量

稼働数

売上実績
(百万円)

数量

稼働数

売上実績
(百万円)

不動産分譲等

 

 

118,463

 

 

165,721

(39.9%増)

不動産賃貸

5,122戸

4,545戸

9,221

4,700戸

3,608戸

8,531

( 7.5%減)

外部顧客への売上高

 

 

127,684

 

 

174,252

(36.5%増)

 

(注) 数量及び稼働数は連結会計年度末現在で表示しております。

 

e.サービス関連事業の状況

区分

前連結会計年度
(自 2023年4月1日
 至 2024年3月31日)

当連結会計年度
(自 2024年4月1日
 至 2025年3月31日)

 

数量

稼働数

売上実績
(百万円)

数量

稼働数

売上実績
(百万円)

 大規模修繕・内装工事等

 

 

66,439

 

 

65,917

 ( 0.8%減)

 マンション建物管理

436,798

(5,619棟)

70,441

443,331

(5,667棟)

72,962

( 3.6%増)

 マンション賃貸管理等

180,537

 

184,035戸

 

分譲マンション販売受託

流通仲介・リノベーション等

 

 

87,058

 

 

91,959

( 5.6%増)

不動産賃貸

7,682

7,401

12,306

7,575

7,280

12,499

( 1.6%増)

シニアサービス

2,994

2,549

15,635

2,992

2,717戸

17,209

(10.1%増)

その他

 

 

3,817

 

 

3,949

( 3.5%増)

外部顧客への売上高

 

 

255,696

 

 

264,494

( 3.4%増)

 

(注) 数量及び稼働数は連結会計年度末現在で表示しております。

 

 

f.海外関連事業の状況

売上実績

区分

前連結会計年度
(自 2023年4月1日
 至 2024年3月31日)
(百万円)

当連結会計年度
(自 2024年4月1日
 至 2025年3月31日)
(百万円)

商業施設運営・戸建分譲事業等

1,007

3,466

(244.2%増)

外部顧客への売上高

1,007

3,466

(244.2%増)

 

 

 

なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりであります。

建設工事等及び設計監理の状況

① 受注高、売上高、繰越高及び施工高

期別

区分

前期

繰越高

(百万円)

当期

受注高

(百万円)

(百万円)

当期

売上高

(百万円)

次期繰越高

当期

施工高

(百万円)

手持高

(百万円)

うち施工高

比率

(%)

金額

(百万円)

前事業年度

(自 2023年4月1日

2024年3月31日)

民間分譲

マンション

569,200

432,080

1,001,281

375,861

625,420

0

1,279

376,146

賃貸マンション・社宅等

82,884

57,285

140,169

59,656

80,513

0

70

59,601

住宅計

652,084

489,366

1,141,450

435,517

705,934

0

1,349

435,747

非住宅

8,689

4,546

13,235

9,803

3,431

1

35

9,631

その他

11,562

18,857

30,419

14,733

15,685

6

981

13,887

工事計

672,335

512,768

1,185,103

460,053

725,050

0

2,365

459,264

業務受託

5,627

6,792

12,418

7,482

4,936

建設工事等計

677,962

519,560

1,197,522

467,535

729,986

設計監理

13,650

17,382

31,033

13,149

17,884

合計

691,612

536,942

1,228,554

480,685

747,870

当事業年度

(自 2024年4月1日

2025年3月31日)

民間分譲

マンション

624,610

533,742

1,158,352

448,515

709,837

0

890

448,125

賃貸マンション・社宅等

81,323

15,471

96,795

56,692

40,102

0

31

56,654

住宅計

705,934

549,213

1,255,147

505,207

749,940

0

921

504,779

非住宅

3,431

6,559

9,990

3,111

6,879

0

5

3,081

その他

15,685

9,648

25,333

16,694

8,639

2

182

15,895

工事計

725,050

565,421

1,290,471

525,013

765,458

0

1,107

523,756

業務受託

4,936

5,102

10,038

5,662

4,376

建設工事等計

729,986

570,522

1,300,509

530,674

769,834

設計監理

17,884

16,110

33,993

15,429

18,564

合計

747,870

586,632

1,334,502

546,104

788,398

 

(注) 1  前事業年度以前に受注したもので、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注高にその増減額を含んでおります。従って、当期売上高にもかかる増減額が含まれております。

2 次期繰越高の施工高は、支出金により手持高の施工高を推定したものであります。

3 当期施工高は(当期売上高+次期繰越施工高-前期繰越施工高)に一致します。

 

 

② 受注工事高の受注方法別比率

工事受注方法は、特命と競争に大別されます。

期別

特命(%)

競争(%)

計(%)

前事業年度
(自 2023年4月1日
 至 2024年3月31日)

78.3

21.7

100

当事業年度
(自 2024年4月1日
 至 2025年3月31日)

73.8

26.2

100

 

(注) 百分比は請負金額比であります。

 

 

③ 売上高

期別

区分

官公庁

(百万円)

民間

(百万円)

(百万円)

前事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

民間分譲マンション

375,861

375,861

賃貸マンション・

社宅等

15,794

43,861

59,656

住宅計

15,794

419,722

435,517

非住宅

9,803

9,803

その他

207

14,526

14,733

工事計

16,001

444,052

460,053

業務受託

227

7,256

7,482

建設工事等計

16,228

451,307

467,535

設計監理

136

13,013

13,149

合計

16,364

464,320

480,685

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

民間分譲マンション

448,515

448,515

賃貸マンション・

社宅等

8,476

48,216

56,692

住宅計

8,476

496,731

505,207

非住宅

3,111

3,111

その他

1,394

15,300

16,694

工事計

9,870

515,142

525,013

業務受託

25

5,637

5,662

建設工事等計

9,895

520,780

530,674

設計監理

134

15,295

15,429

合計

10,029

536,075

546,104

 

(注) 1  完成工事のうち主なものは、次のとおりであります。

 

前事業年度

総合地所㈱、名鉄都市開発㈱、

京阪電鉄不動産㈱、大和ハウス工業㈱、

三交不動産㈱、住友商事㈱

NAGOYA the TOWER

新築工事

近鉄不動産㈱、大和ハウス工業㈱、

名鉄都市開発㈱、九州旅客鉄道㈱、総合地所㈱

ローレルタワー堺筋本町

新築工事

石神井公園団地マンション建替組合

Brillia City 石神井公園

ATLAS

新築工事

野村不動産㈱

プラウドシティ豊田多摩平の森

新築工事

イトーピア浜離宮マンション建替組合

Brillia Tower 浜離宮

新築工事

 

 

当事業年度

三井不動産レジデンシャル㈱

パークウェルステイト湘南藤沢SST

新築工事

関電不動産開発㈱、住友不動産㈱

㈱長谷工不動産、アートプランニング㈱

シエリアシティ大津におの浜

新築工事

大和ハウス工業㈱

ロイヤルパークス品川

新築工事

向原第二住宅団地マンション建替組合

プラウドシティ小竹向原

新築工事

野村不動産㈱、㈱コスモスイニシア

ミハマシティ検見川浜Ⅱ街区

新築工事

 

 

2  完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は次のとおりであります。

 

前事業年度

なし

 

 

当事業年度

なし

 

 

 

 

 

④ 手持高(2025年3月31日現在)

区分

官公庁

(百万円)

民間

(百万円)

(百万円)

民間分譲マンション

709,837

709,837

賃貸マンション・社宅等

12,275

27,828

40,102

住宅計

12,275

737,665

749,940

非住宅

6,879

6,879

その他

1,573

7,066

8,639

工事計

13,847

751,611

765,458

業務受託

83

4,293

4,376

建設工事等計

13,930

755,904

769,834

設計監理

18,564

18,564

合計

13,930

774,468

788,398

 

(注) 期末手持工事のうち主なものは、次のとおりであります。

 

住友不動産㈱

シティータワー千住大橋

新築工事

2025年7月完成予定

西日本鉄道㈱、三菱地所レジデンス㈱

大林新星和不動産㈱、大和地所レジデンス㈱

静岡鉄道㈱、総合地所㈱

ガーデングランデ横浜戸塚

新築工事

2025年9月完成予定

大和ハウス工業㈱

(仮称)江東区有明1丁目新築工事

新築工事

2026年1月完成予定

阪急阪神不動産㈱、西日本鉄道㈱

総合地所㈱

ジオ板橋浮間舟渡

新築工事

2026年3月完成予定

大和ハウス工業㈱、西日本鉄道㈱

㈱NIPPO、総合地所㈱、ミサワホーム㈱

プレミスト京都 松ケ崎

新築工事

2026年3月完成予定

 

 

 

(2) 財政状態

当連結会計年度末における連結総資産は、建築受注用地及びマンション分譲事業等への資金投下に伴い販売用不動産及び不動産事業支出金が増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ140億円増加し、1兆3,652億円となりました。

連結総負債は、借入金を調達した一方で、仕入債務が減少したこと等により、前連結会計年度末に比べ68億円減少し、8,332億円となりました。

連結純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益を計上し利益剰余金が増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ208億円増加し、5,320億円となりました。

以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末の37.8%に対し、39.0%となりました。

 

セグメントごとの資産は、次のとおりであります。

(単位:億円)

 

建設関連事業

不動産関連事業

サービス関連事業

海外関連事業

セグメント資産

3,904

(+71)

5,212

(+367)

3,105

(+367)

1,218

(+38)

 

( )内は前期末比

 

(建設関連事業)

建設関連事業において、当連結会計年度末における資産は、建築受注用地への資金投下に伴い販売用不動産が増加したこと等により前連結会計年度末に比べ71億円増加し、3,904億円となりました。

 

(不動産関連事業)

不動産関連事業において、当連結会計年度末における資産は、分譲マンションの仕入が順調に進捗し不動産事業支出金及び販売用不動産が増加したこと等により前連結会計年度末に比べ367億円増加し、5,212億円となりました。

 

(サービス関連事業)

サービス関連事業において、当連結会計年度末における資産は、預り金の増加に伴い現金預金が増加したこと等により前連結会計年度末に比べ367億円増加し、3,105億円となりました。

 

(海外関連事業)

海外関連事業において、当連結会計年度末における資産は、出資に伴う投資有価証券の増加等により前連結会計年度末に比べ38億円増加し、1,218億円となりました。

 

 

(3) キャッシュ・フロー

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の1,150億円の収入超過と比較して1,111億円減少し、39億円の収入超過となりました。これは主に、仕入債務や受入金の減少に伴う資金減少313億円(前連結会計年度は498億円の資金増加)によるものであります。

投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の398億円の支出超過と比較して74億円増加し、325億円の支出超過となりました。これは主に、投資有価証券の売却等による資金増加43億円(前連結会計年度は5億円の資金増加)によるものであります。

財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の8億円の支出超過と比較して198億円減少し、205億円の支出超過となりました。これは主に、借入金・社債の調達及び返済に伴う資金増加50億円(前連結会計年度は235億円の資金増加)によるものであります。

以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末の2,835億円より477億円減少し、2,358億円となりました。

 

当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、次のとおりであります。

当社グループの資金需要のうち主なものは、建設事業にかかる運転資金、建築受注を目的とする短期的な不動産取得、分譲用不動産等の仕入れ、賃貸用不動産及び海外事業への投資などの支出であります。これらの資金需要に対して、事業活動から生じる利益及び借入金・社債により調達した資金を充当する方針であります。

当連結会計年度におきましては、期限の到来等により100億円の長期借入金の返済を行っておりますが、コミットメントラインの実行により150億円の調達を行っており、社債を含む借入金残高は50億円増加し4,200億円となりました。

また、当社は運転資金の安定的かつ機動的な調達を行うため取引金融機関と1,000億円のコミットメントライン契約を締結しており、現金預金とあわせて十分な流動性を確保しています。

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されておりますが、この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値にその結果が反映されております。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は異なることがあります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5 【重要な契約等】

当社は、財務上の特約が付された金銭消費貸借契約を締結いたしました。

契約に関する内容等は以下のとおりであります。

なお、2024年4月1日前に締結された金銭消費貸借契約については、「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」附則第3条第4項により記載を省略しております。

 

(1) 契約締結日

2025年3月31日

 

(2) 金銭消費貸借契約の相手方の属性

都市銀行等

 

(3) 金銭消費貸借契約に係る債務の期末残高及び弁済期限並びに当該債務に付された担保の内容

①当該債務の期末残高

2025年4月に実行予定のため、当期末の残高はありません。

②当該債務の最終弁済期限

2040年4月27日

③当該債務に付された担保の内容

当該債務に付された担保はありません。

 

(4) 財務上の特約の内容

①各年度の決算期及び第2四半期の末日における連結の貸借対照表における純資産の部から「新株予約権」、「繰延ヘッジ損益」及び「非支配株主持分」を除いた金額を590億円以上に維持する。

②各年度の決算期及び第2四半期の末日における単体の貸借対照表における純資産の部から「新株予約権」及び「繰延ヘッジ損益」を除いた金額を590億円以上に維持する。

③各年度の決算期における連結の損益計算書に示される経常損益を2期連続して損失としない。

④各年度の決算期における単体の損益計算書に示される経常損益を2期連続して損失としない。

 

 

6 【研究開発活動】

当社の研究開発活動は、集合住宅におけるフローとストックの両分野に軸足を置き、長谷工版BIMをはじめとするデジタル技術を積極的に採用しながら、安全・安心、快適・健康、品質・性能、生産性向上等のテーマに取り組むとともに受注の拡大や利益の向上、及び、将来的な事業分野の拡大に寄与する研究・技術開発を目指しております。

活動にあたっては、研究・技術開発のスピードアップと採用促進を図るため、当社の技術研究所を拠点としながら、大学・研究機関等との共同研究・開発を進めるとともに、当社技術推進部門・設計部門・建設部門・価値創生部門等社内各部門及び当社グループ各社との連携・強化に努めております。

活動内容としては、①生産技術開発、②ストック開発、③環境技術開発、④そのために必要な基礎的な研究開発、以上の4つに重点を置きながら、特に工業化対応、木質化や省CO2材料等の環境対応、ストック改修対応など、社会環境や顧客ニーズの変化に即した集合住宅関連技術の開発・商品化に注力しております。

当連結会計年度における研究開発費は、4,209百万円であり、主な研究・技術開発の成果は次のとおりであります。なお、当該費用につきましては、セグメントに共通する費用を区分することが困難であるため、総額のみを記載しております。

 

(建設関連事業)

(1) 中高層及び超高層RC造集合住宅を対象とした技術の開発

建設技能労働者の高齢化と労働者不足の懸念に対し、中高層及び超高層の集合住宅等を対象に、生産性向上や品質向上を目的とした工業化・ICT活用等の技術開発を推進しております。特に、単純作業など、ロボット等に置き換えることが可能な作業について、機械による施工補助の検討を行っております。また、気候変動に対応した脱炭素に関する技術開発にも注力しております。

① 中高層RC造集合住宅:

生産技術開発分野として、業務及び生産プロセスの合理化に向けたBIMの導入・活用検討において、長谷工独自のBIMツールの開発や業務ワークフロー改善等による、設計・施工まで一貫した「長谷工版BIM」の環境整備を強力に推進しております。各種施工図の自動作成、根伐土量算出、コンクリート数量算出、仮設足場材自動拾いなどを実現しております。また、BIM連携による鉄筋、型枠加工図の効率化、各種製作図の効率化を行っております。

CO2の排出量を削減する長谷工式環境配慮型コンクリートの「H-BAコンクリート」では、国土交通大臣による特別評価方法認定を取得することで住宅性能表示を適用するマンションをはじめ広く採用をしています。また、長期優良住宅法に適用するための第三者機関での証明を取得いたしました。物流倉庫への採用を見据えた膨張材の使用など適用を拡大しております。採用実績として、「大阪・関西万博パビリオン」、「ブランシエスタ目黒区中央町」(東京都目黒区、地上7階、101戸、下層RC造+上層4階木造・RC造のハイブリッド構造)、「ザ・パークハウスひばりが丘」(東京都西東京市、地上15階、140戸、他社事業で初の全面採用)等が竣工しており、累計施工量は10万㎥を超えました。

商品開発分野として、住宅としての基本的で本質的な性能確保といった根幹は踏襲しつつ、住まいを最適な空間に“Fit”させることが可能な「Be-Fit」を、「ルネ松戸みのり台」(千葉県松戸市、地上12階、173戸)、「ブランシエラ川崎大島」(川崎市川崎区、地上6階、104戸)の2物件に先行して導入いたしました。

② 超高層RC造集合住宅:

超高層RC造集合住宅建築に関する更なる技術のレベルアップとして、Fc150級プレキャスト部材や鋼繊維補強高強度コンクリート(SFRC)の活用研究、超高層に対応したパーティション等の各種外装部材の開発に取り組んでおります。

(2) 非住宅を対象とした技術の開発

競争と連携のネットワークを構築するため、多様な研究機関、企業等の幅広い結集を図り、研究開発の共通基盤(プラットフォーム)の確立を目指している「建築研究開発コンソーシアム」などに継続参画し、物流・データセンター等の鉄骨構造関連技術の開発に取り組んでおります。

施工実績として、連結子会社である不二建設と共同で施工した大阪・関西万博のパビリオンを竣工・引渡しました。

 

(3) 研究開発の新分野への展開

木造関連技術に関しては、当社研究施設「長谷工テクニカルセンター」の敷地内に建設した音響実験棟において、木造の界壁・外壁の遮音性能試験、並びに、軸組床の床衝撃音試験等を実施し、性能を満たす仕様を開発しました。開発した技術を「ブランシエスタ目黒区中央町」(東京都目黒区、地上7階、101戸、下層RC造+上層4階木造・RC造のハイブリッド構造)で採用しました。

(4) 建設産業廃棄物削減対応

これまで当社では、段ボール古紙や木くずにおける循環型マテリアルリサイクルシステムの構築、また、廃プラスチック類のサーマルリサイクルシステムの構築をしてまいりました。

当社作業所から発生した木質系廃棄物をバイオマス燃料として再利用し、発電施設で発電された再生可能エネルギーを作業所の仮設電力として使用する取り組みを進めております。今後も、更に環境に配慮した循環型社会の実現に向けた取り組みを推進してまいります。

(5) ICT・IoT等のデジタル技術や先端技術の積極活用

「住まい情報と暮らし情報のプラットフォーム」(HASEKO BIM & LIM Cloud)の構築に向け、各種パートナー企業、大学や研究機関と連携し、顔認証システム、センサー、AIやロボットなどICT活用に本格的に取り組んでおります。2025年3月末までに新築賃貸マンション10物件、シニア施設2物件、リノベーション賃貸マンション1物件にICTを導入、稼働しております。加えて、既存分譲マンション「サウスオールシティ」(堺市西区、地上19階、791戸、2009年竣工)においては大規模修繕工事のICT化に伴い居住者向けICTサービス導入を既築マンションで初導入しております。ご入居者様のご利用状況・ご意見等を参考にしながら改善を図り、集合住宅の提供価値向上を継続検討いたします。その他、シニア施設スタッフの業務改善を目的としたICT導入によるグループ企業の支援や、コンピューターOSの権威であられる東洋大学INIADの坂村学部長と共創した実験住戸の制作など、外部機関・企業との協業も含め多岐にわたる取組みを行っております。

 

(サービス関連事業)

(1) 既築集合住宅を対象とした技術の開発

拡大する国内ストック市場における既築集合住宅向け「ストックビジネス」の技術基盤づくりを目指しております。共用部では「建物の延命化・耐震化の工法」、「居住者の負担を軽減できる工法」、「騒音・振動を低減する工法」の開発等、専有部では「住まいの機能の維持やグレードアップの提案」を進める等、継続的にストック・リフォーム分野における研究・技術開発を行っております。

また、今後増加が見込まれる大規模修繕工事適齢期超高層案件において、居住者の負担を軽減するため、工期を短縮する工法などの検討を進めております。

(2) ICT技術を活用した顧客サービス開発

マンションにおける暮らしの付加価値向上を目指して、マンション住棟内のセンシング情報の見える化をICT導入により実現する取組みのほか、隣接する大型商業施設とのWebサービスによる情報連携の取組みを、サウスオールシティ(堺市西区、地上19階、791戸)で行なっております。

また、「グループIT投資戦略プロジェクト(名称:FITプロジェクト)」でのテーマとして、自主管理マンションを対象とした管理組合向けの新たな運営サービスの社会実証を行なったほか、生活質向上に向けてマンション入居者向けに立地周辺のサービス事業者との連携を促すWebサービス実現のための開発と社会実証に取り組みました。 
 また、当社グループ内の各種システムやデータを横断的に連携・分析・外部連携するための「グループ情報連携基盤」について、機能拡張を含めた各種開発に取り組み、運用を開始しました。

 この他、竣工後のマンション管理業務の効率化や大規模修繕時の作業効率化、シニア関連事業における生産性向上にも取り組んでおります。

 

なお、子会社においては、研究開発活動は行われておりません。

建設関連事業及びサービス関連事業以外の事業においては、研究開発活動は行われておりません。