当連結会計年度における我が国経済は、個人消費に足踏みがみられるものの、設備投資の増加や雇用情勢の改善など、各種政策の効果もあり、景気は緩やかに回復しました。一方で、世界経済においては、世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行きが懸念されるなど、依然として先行き不透明な状況が続いたことにより、我が国経済・物価への影響を十分に注視する必要がありました。
当社グループの主要事業であります建設事業におきましては、公共投資、民間投資ともに底堅く推移したものの、建設コスト高止まりの影響により、厳しい事業環境が続きました。
(1)経営理念
「顧客第一」「創造と開拓」「共生」「自己責任」の経営理念の下、社員が自己に誇りと責任を持ち、誠実に行動し、常に未来に向けて創造の精神と開拓する姿勢を持ち、企業として適正利潤を求めながら、総合力の発揮により、社会のそれぞれの地域に寄与し、その地域社会から真に信頼される良い会社であること、社員にとって夢のある会社であり続けることを目指します。
(2)目標とする経営指標
当社は、中期経営計画(2023-27年度)におきまして、下記の数値目標を掲げております。
目標策定に際し、事業規模の拡大は追わず、利益最優先の計画としています。
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2027年度数値目標(連結) |
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売上高 |
1,500億円 |
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営業利益 |
90億円 |
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RОE |
8.0%以上 |
(3)経営環境
①防災・減災事業ニーズの高まり
防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策により、防災・減災事業ニーズの高まりが想定されます。
特に、気候変動に伴うゲリラ豪雨は増加傾向にあり、首都圏をはじめ都市部での雨水処理能力が追いついていない状況により、都市機能を失わないための雨水対策として、当社が長年にわたり培ってきたシールド工法、ニューマチックケーソン工法を使用した地下貯留施設のニーズが今後増えていくと思われます。
②変化を求められる行政の事業形態
社会資本の維持管理・更新費等が増大している中、官民連携事業が推進され、公共事業の変革が余儀なくされると考えております。
③建設人材不足の深刻化
建設業就業者の減少と高齢化に伴い、労働者の処遇改善、働き方改革の推進、生産性の向上が求められると考えております。
④労働環境の変化
時間外労働上限規制の施行や働き方の多様化が求められる中、時間外労働時間の管理、就業規則等の整備が必要と考えております。
⑤DX化の推進
生産性向上に向けたデジタル化の推進やシステムの構築が必要であると考えております。
⑥サステナブルな建設業への動き
安全・安心、持続可能で誰一人取り残さない社会の実現・構築への貢献が求められる中、CO2排出量の削減や環境関連技術の開発に取り組む必要があると考えております。
⑦求められる企業価値向上への取組
資本コストや株価を意識した経営が求められる中、中期経営計画に掲げた施策の実行や業績の回復に注力したいと考えております。
(4)中長期的な会社の経営戦略
当社は、2023年5月に策定した「中期経営計画(2023-27年度)」に継続的に取り組むこととしています。
「より変化に対応できる企業」「より価値を生み出せる企業」への変革に取り組み、経営理念に立ち返り、“社会から真に信頼される良い会社”“社員にとって夢のある会社”でありつづける持続可能性を追求することとしています。
「価値」を生みだす事業戦略と「人」に特化した人材戦略及び、これらの実現に向けた投資戦略の枠組みを策定し、機動的に取り組みます。
また、「人的資本経営の強化」「事業構造の変革」を基本方針として、それらを実現する投資戦略により目標の実現を目指します。
①人的資本経営の強化
サステナブルな建設業と「より価値を生み出せる企業への変革」の実現に向け、「エンゲージメント強化」「DX・研究開発の促進」「人材育成」の3つの領域で人的資本経営を実践・強化して参ります。
②事業構造の変革
当社を取り巻く外部環境・内部環境を踏まえて、下記の領域で事業戦略を策定しております。
(1)基幹事業
・土木事業
当社の得意技術であるシールド・ニューマチックケーソン工事において、国内事業占有率50%以上を目標とします。また、維持修繕事業についての取組を強化します。
・建築事業
産業関連事業領域(環境・生産・流通)、生活関連事業の均衡維持(住宅・医療福祉・商業)、PFI等公共事業領域の3つの領域を軸として、目標達成に取り組みます。
(2)新領域事業
・PPP事業
前中期経営計画から踏襲する戦略であるPPP事業については、麻生グループとの協業により、確かな取り組みにして参ります。
・不動産開発事業
物流施設・シニア住宅等の開発事業、パートナー企業との協業事業拡大に取り組みます。
・ESG関連事業
再生エネルギー、食糧関連、環境保全他ESGに寄与する新領域事業に取り組みます。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①人的資本経営の強化
「エンゲージメント強化」「人材育成」「DX・研究開発の推進」を柱とし、作業現場の人員配置計画を見直し、「4週8休」を実現するとともに、罰則付き時間外労働上限規制を遵守する施工体制を構築しています。さらに、DX・研究開発の推進、従業員エンゲージメントを向上させる等により、企業価値及び生産性の向上を図ります。
②財務戦略
戦略投資として、中期経営計画期間中(2023年度から2027年度)に200億円を様々な投資に充てます。
(1)事業領域拡大関連:140億円
・不動産開発事業・維持修繕事業・PPP事業
・М&A(先行技術保有企業、人材獲得)
(2)経営基盤強化関連:60億円
・人材投資
・研究開発(シールド・ニューマチックケーソンなど)・DX
③技術伝承
技術を伝承していくために、「得意技術の深化と進化」、「新分野への応用と新技術への挑戦」、「IT技術との融合」を柱として、社員の能力開発、教育・育成に努めます。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)ガバナンス
当社グループは、サステナビリティ関連のリスク及び機会を監視し、管理するためのガバナンスの過程、及び手続は下記のとおりです。
サステナビリティを巡る課題に関し、中長期的な企業価値向上の観点から、部門横断的な情報及び意見交換を行い、経営会議へ付議・報告すべき事項の事前検討を行う機関として、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会を設置しております。
サステナビリティ委員会は、サステナビリティを巡る課題対応の必要性、対応の方針・方策、方策の実施状況及び情報開示に関する検討を行います。
(2)戦略
当社グループは、サステナビリティを巡る課題への対応について、「環境」「社会」「ガバナンス」の観点から取り組んでいます。
①「環境」
・気候変動の緩和と適応への取り組み
・資源循環型経済への移行に関する取り組み
②「社会」
・人権、雇用、労働慣行に対する取り組み( 安全成績、休日・時間外労働、エンゲージメント)
③「ガバナンス」
・実効的なコーポレートガバナンスの実現
・あらゆる形態の腐敗の防止
当社グループにおける、人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針
(人材の育成に関する方針)
社内に、異なる経験・技能・属性を反映した多様な視点や価値観が存在することは、会社の持続的な成長を確保する上での強みとなり得るとの認識に基づき、社内における女性の活躍促進を含む多様性の確保を推進してまいります。
企業の成長が従業員の成長や働きがいを高める、従業員の成長や働きがいを高めることは企業価値を高めるとの認識に基づき、従業員と企業の成長の方向性が連動し、互いに貢献し合える関係の構築に取り組みます。
(社内環境整備に関する方針)
雇用の門戸を拡げ、適時・適切な人事ローテーション制度により機会均等を、適切・公正な人事制度の再構築により働きがいの向上を図り、だれもが挑戦し、活躍できる環境を整備いたします。
(3)リスク管理
当社グループが、サステナビリティ関連のリスク及び機会を識別し、評価し、管理するための過程は、(1)ガバナンスと同様です。サステナビリティ関連のリスクは、他のリスクとも比較され、総合的リスク管理上、他の事業審査・契約審査等同様、経営会議での審議を経て、取締役会で決定されます。
(4)指標及び目標
当社グループのサステナビリティ関連で重要性を判断した上で取り組んでいる項目・目標及び指標は下記のとおりです。実績を評価・管理するために用いております。
|
項 目 |
目 標 |
指 標 |
2023年度実績 |
|
|
環境 |
気候変動 |
CO2排出量の削減 |
(Scope1・2)前年度 CO2総排出量 26,627(t-CO2)以下 |
|
|
社会 |
人権の尊重 雇用・労働慣行 |
「4週8休」の確保 |
「4週8休」の完全確保 |
90.7% |
|
エンゲージメントの向上 |
回答率:95%以上 スコア:前年度 42.7以上 |
回答率:97.5% スコア: 41.5 (2023年4月~9月集計) |
||
|
死亡・重大災害の防止 |
発生件数:0件 |
2 件 |
||
|
ガバナンス |
腐敗防止 |
あらゆる形態の不正・腐敗の防止 |
発生件数:0件 |
社内規定に抵触する案件 2 件を確認、是正 |
(注)エンゲージメント:企業と従業員の相互理解・相思相愛度合い
また、当社グループの内の当社及び1社は、上記「(2)戦略」において記載した、人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。
①提出会社
|
指標 |
目標 |
実績(当連結会計年度) |
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2026年 3月までに産業平均値(建設業)以上 |
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②連結子会社
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名称 |
指標 |
目標 |
実績(当連結会計年度) |
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㈱森本組 |
管理職に占める女性労働者の割合 |
- |
0.9% |
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男性労働者の育児休業取得率 |
15%(期間1週間) |
75.0%(期間の指定なし) |
|
|
新卒採用者に占める女性総合職の割合 |
20%以上 |
7.6% |
詳細は、「
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
1.建設業を取り巻く環境の変化によるリスク
(1) 事業環境の変化
公共工事費の大幅な削減、国内外の景気後退等による建設需要の大幅な縮小等、建設業に係る著しい環境変化が生じた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 公共工事低入札に伴う完成工事総利益の減少
今後も公共工事の入札における他社との競合が継続して激化し、低入札が繰り返されることになれば、事業利益の大きな割合を占める官庁工事総利益に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 労務費・資機材費の高騰
労務費及び主要な資材費が上昇することによる建設コストの増加により利益が減少する可能性があります。
(4) 取引先等の信用リスク
取引先の業績等の悪化により工事代金の未回収や工事の遅延等が発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。取引先等の信用リスクの対応として、情報収集、与信管理及び債権保全に努めております。
(5) 海外工事に伴う為替差損の発生、想定外のカントリーリスクの発生
海外工事に関し、為替の変動による損失が発生する可能性があります。また、事前の想定を超えるカントリーリスクの発生による損失が発生する可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。海外工事に伴う為替差損の発生、想定外のカントリーリスクの対応として、進出国の適度な分散によりリスクを軽減しております。
2.人材確保についてのリスク
公共事業批判の風潮や建設業という業種に対するイメージから優秀な人材の確保が困難になる恐れがあります。人材確保についてのリスクの対応として、建設技術者・技能労働者不足が深刻化しないように、社員の能力開発、教育・育成及び技術伝承に力をいれ、待遇改善策としては作業所の4週8休の実施及び時間外労働の削減などの「働き方改革」を推進させ、労働環境の改善による人材確保に努めております。
3.法規制等に関するリスク
工事施工に伴い、第三者事故や労働災害を発生させた場合等、建設業法、労働安全衛生法上の罰則及び工事発注機関からの指名停止措置などが重複して行われ、工事受注機会を逃す可能性があります。
4.瑕疵の発生によるリスク
完成マンション戸数の増大、及び住宅の品質確保の促進等に関する法律による瑕疵担保期間の長期化等により、補修費用が増加する可能性があります。
5.訴訟等のリスク
現在係争中や訴訟中の案件において、当社グループの主張に対する判断が予測と異なる結果となった場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
6.自然災害等のリスク
地震、津波、風水被害等の自然災害や感染症の大流行が発生した場合には、従業員や保有資産に損害を受け、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、重大な事故が発生した場合にも同様に影響を及ぼす可能性があります。
7.資産保有によるリスク
当社グループは、事業用及び賃貸用不動産としての不動産並びに有価証券等を所有しておりますが、時価の変動等により減損処理の必要性が生じた場合は、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
8.投資開発事業のリスク
不動産市場の急激な縮小や競争環境の激化など、投資開発分野の事業環境に著しい変化が発生した場合には、事業計画の変更等による採算性の悪化など、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
①経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、個人消費に足踏みがみられるものの、設備投資の増加や雇用情勢の改善など、各種政策の効果もあり、景気は緩やかに回復しました。一方で、世界経済においては、世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行きが懸念されるなど、依然として先行き不透明な状況が続いたことにより、我が国経済・物価への影響を十分に注視する必要がありました。
当社グループの主要事業であります建設事業におきましては、公共投資、民間投資ともに底堅く推移したものの、建設コスト高止まりの影響により、厳しい事業環境が続きました。
このような情勢下におきまして、当社グループを挙げて営業活動を行いました結果、連結受注高においては146,380百万円(前期比4.8%減)となりました。うち、当社受注工事高においては、土木工事で47,199百万円(前期比19.4%減)、建築工事で53,310百万円(前期比15.8%減)、合計100,510百万円(前期比17.5%減)となりました。なお、官民別比率は、官公庁工事57.8%、民間工事42.2%であります。
また、連結売上高においては163,222百万円(前期比4.6%増)となりました。うち、当社完成工事高においては、土木工事で53,288百万円(前期比6.8%減)、建築工事で68,502百万円(前期比17.0%増)、合計121,791百万円(前期比5.3%増)となりました。なお、官民別比率は、官公庁工事41.7%、民間工事58.3%であります。
利益面におきましては、連結で経常利益1,259百万円(前期比75.1%減)、親会社株主に帰属する当期純損失2,072百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益2,914百万円)という結果になりました。うち、当社の経常利益で136百万円(前期比94.5%減)、当期純損失で2,163百万円(前期は当期純利益1,415百万円)という結果になりました。
セグメント別の業績は次のとおりであります。
土木事業においては、売上高は73,573百万円(前期比3.8%減)、営業損失346百万円(前期は営業利益3,798百万円)となりました。
建築事業においては、売上高は85,385百万円(前期比12.6%増)、営業利益353百万円(前期比58.9%減)とな りました。
その他の事業においては、売上高は4,662百万円(前期比6.7%増)、営業利益470百万円(前期比22.0%増)と なりました。
②財政状態の分析
当連結会計年度末の資産の部は、前連結会計年度末に比べ、受取手形・完成工事未収入金等が1,005百万円、電子記録債権が5,463百万円、建物・構築物が1,203百万円、投資有価証券が2,784百万円増加しましたが、現金預金が10,540百万円、立替金が1,471百万円、建設仮勘定が1,070百万円減少し、貸倒引当金が2,285百万円増加したこと等により、資産合計は5,278百万円減少した165,081百万円となりました。
負債の部は、前連結会計年度末に比べ、電子記録債務が1,470百万円、短期借入金が6,000百万円、工事損失引当金が2,135百万円増加しましたが、支払手形・工事未払金等が2,043百万円、未払法人税等が1,632百万円、未払消費税等が1,995百万円、未成工事受入金が4,178百万円減少したこと等により、負債合計は1,019百万円減少した96,161百万円となりました。
純資産の部は前連結会計年度末に比べ、資本剰余金が20,699百万円、その他有価証券評価差額金が1,997百万円増加しましたが、資本金が20,736百万円、利益剰余金が6,145百万円減少したこと等により4,259百万円減少した68,919百万円となり、自己資本比率は40.9%となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローにつきましては、営業活動により11,536百万円減少し、投資活動により 996百万円減少し、財務活動により1,725百万円増加し、この結果、現金及び現金同等物は10,501百万円の減少とな り、当連結会計年度末残高17,523百万円(前期比37.5%減)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は、11,536百万円(前期は12,856百万円の獲得)となりました。これは主に、貸倒引当金の増加2,285百万円、工事損失引当金の増加2,135百万円等による資金の増加、売上債権の増加6,467百万円、未成工事受入金の減少4,178百万円、その他の負債の減少2,637百万円、法人税等の支払額3,145百万円等による資金の減少があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、996百万円(前期は758百万円の獲得)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出1,579百万円等による資金の減少があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果獲得した資金は、1,725百万円(前期は5,431百万円の使用)となりました。これは主に、配当金の支払額4,071百万円等による資金の減少、短期借入金の増加6,000百万円等による資金の増加があったことによるものです。
④生産、受注及び売上の実績
a.受注実績
|
セグメントの名称 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) (百万円) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) (百万円) |
|
土木事業 |
71,438 |
75,049 |
|
建築事業 |
81,917 |
70,841 |
|
その他の事業 |
472 |
489 |
|
合計 |
153,828 |
146,380 |
b.売上実績
|
セグメントの名称 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) (百万円) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) (百万円) |
|
土木事業 |
76,500 |
73,573 |
|
建築事業 |
75,845 |
85,372 |
|
その他の事業 |
3,704 |
4,276 |
|
合計 |
156,050 |
163,222 |
(注)1.当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため、「生産の状況」は記載しておりません。
2.当連結会計年度において売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はありません。
なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりであります。
建設業における受注工事高及び施工高の状況
① 受注工事高、完成工事高、繰越工事高及び施工高
第74期(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
|
工事別 |
期首 繰越工事高 (百万円) |
期中 受注工事高 (百万円) |
計 (百万円) |
期中 完成工事高 (百万円) |
期末繰越工事高 |
期中施工高 (百万円) |
||
|
手持工事高 (百万円) |
うち施工高 (百万円) |
|||||||
|
|
|
|
|
|
|
% |
|
|
|
土木 |
144,208 |
58,578 |
202,787 |
57,166 |
145,621 |
0.9 |
1,379 |
57,475 |
|
建築 |
81,253 |
63,276 |
144,529 |
58,542 |
85,987 |
0.3 |
243 |
58,429 |
|
計 |
225,461 |
121,855 |
347,317 |
115,708 |
231,608 |
0.7 |
1,622 |
115,904 |
第75期(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)
|
工事別 |
期首 繰越工事高 (百万円) |
期中 受注工事高 (百万円) |
計 (百万円) |
期中 完成工事高 (百万円) |
期末繰越工事高 |
期中施工高 (百万円) |
||
|
手持工事高 (百万円) |
うち施工高 (百万円) |
|||||||
|
|
|
|
|
|
|
% |
|
|
|
土木 |
145,621 |
47,199 |
192,820 |
53,288 |
139,532 |
0.5 |
656 |
52,565 |
|
建築 |
85,987 |
53,310 |
139,297 |
68,502 |
70,794 |
0.5 |
319 |
68,578 |
|
計 |
231,608 |
100,510 |
332,118 |
121,791 |
210,327 |
0.5 |
975 |
121,143 |
(注)1.前期以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、期中受注工事高にその増減額を含めております。したがって、期中完成工事高にもかかる増減額が含まれております。
2.期末繰越工事高の施工高は、支出金により手持工事高の施工高を推定したものであります。
3.期中施工高は(期中完成工事高+期末繰越施工高-期首繰越施工高)に一致します。
4.提出会社の不動産事業の売上高は、建築の「期中完成工事高」に含めて記載しており、それぞれ第74期は974百万円、第75期は615百万円が含まれております。
5.土木工事及び建築工事の期中受注工事高のうち海外工事の割合は74期はそれぞれ1.9%、-%、第75期はそれぞれ11.5%、-%であります。
6.期中受注工事高のうち海外工事の請負金額10億円以上の主なものは、次のとおりであります。
|
第74期 |
該当ありません |
|
|
第75期 |
該当ありません |
|
② 受注工事高の受注方法別比率
工事の受注方法は、特命と競争に大別されます。
|
期別 |
区分 |
特命(%) |
競争(%) |
計(%) |
|
|
第74期 |
(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
土木工事 |
2.6 |
97.4 |
100.0 |
|
建築工事 |
48.5 |
51.5 |
100.0 |
||
|
第75期 |
(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
土木工事 |
4.7 |
95.3 |
100.0 |
|
建築工事 |
21.3 |
78.7 |
100.0 |
||
(注) 百分比は請負金額比であります。
③ 完成工事高
|
期別 |
区分 |
国内 |
海外 |
計 (B) (百万円) |
|||
|
官公庁 (百万円) |
民間 (百万円) |
(A) (百万円) |
(A)/(B) (%) |
||||
|
第74期 |
(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
土木工事 |
39,503 |
7,956 |
9,706 |
17.0 |
57,166 |
|
建築工事 |
5,749 |
52,793 |
- |
- |
58,542 |
||
|
計 |
45,252 |
60,749 |
9,706 |
8.4 |
115,708 |
||
|
第75期 |
(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
土木工事 |
37,726 |
6,731 |
8,830 |
16.6 |
53,288 |
|
建築工事 |
4,267 |
64,234 |
- |
- |
68,502 |
||
|
計 |
41,993 |
70,966 |
8,830 |
7.3 |
121,791 |
||
(注)1.海外工事の地域別割合は、次のとおりであります。
|
地域 |
第74期(%) |
第75期(%) |
|
東南アジア |
46.0 |
68.1 |
|
アフリカ |
54.0 |
31.9 |
|
計 |
100.0 |
100.0 |
2.完成工事のうち主なものは次のとおりであります。
第74期 請負金額10億円以上の主なもの
|
国土交通省 東北地方整備局 |
国道7号 今泉第一トンネル工事 |
|
東京都下水道局 |
千川増強幹線工事 |
|
兵庫県企業庁猪名川広域水道事務所 |
三田西宮連絡管送水菅布設工事(山口工区) |
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日鉄興和不動産㈱ |
(仮称)LOGIFRONT浦安新築工事 |
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㈱日本エスコン・三菱地所レジデンス㈱共同企業体 |
港区白金4丁目計画新築工事 |
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ケミカルグラウト㈱ |
ケミカルグラウト㈱技術センター(第二期工場棟)新築工事 |
第75期 請負金額10億円以上の主なもの
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東京都下水道局 |
江東幹線その3工事 |
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国土交通省 近畿地方整備局 |
有田海南道路5号トンネル冷水地区工事 |
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日本下水道事業団 東日本本部 |
石巻市不動沢排水ポンプ場復興建設工事その2 |
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MIRARTHホールディングス㈱ |
(仮称)レーベン天神計画新築工事 |
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東急不動産㈱ |
(仮称)新宿区新宿六丁目計画新築工事 |
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㈱アイセン |
㈱アイセン新倉庫計画 |
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マダガスカル共和国 国土整備公共事業省 |
国道2号線(アンタナナリボ-トアマシナ間)におけるマングル橋及び アンツァパザナ橋改修計画 |
3.完成工事高総額に対する割合が100分10以上の相手先はありません。
4.提出会社の不動産事業の売上高は、建築工事の「国内」の「民間」に含めて記載しており、それぞれ第74期は974百万円、第75期は615百万円が含まれています。
④ 手持工事高(2024年3月31日現在)
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区分 |
国内 |
海外 |
計 (B) (百万円) |
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官公庁(百万円) |
民間(百万円) |
(A) (百万円) |
(A)/(B) (%) |
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土木工事 |
83,256 |
30,340 |
25,935 |
18.6 |
139,532 |
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建築工事 |
19,213 |
51,581 |
- |
- |
70,794 |
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計 |
102,469 |
81,922 |
25,935 |
12.3 |
210,327 |
(注)手持工事のうち請負金額10億円以上の主なものは、次のとおりであります。
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大阪市 |
豊崎~茶屋町幹線下水管渠築造工事(その2) |
2027年3月完成予定 |
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福岡市 水道事業管理者 |
乙金浄水場整備工事 |
2025年3月完成予定 |
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ひたちなか市 |
大島第2幹線管きょ布設工事(R5国補公下雨第3号) |
2026年2月完成予定 |
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㈱日本エスコン・中電不動産㈱ |
(仮称)吹田市藤白台5丁目(マンションB棟)新築工事 |
2026年2月完成予定 |
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須恵町外二ヶ町清掃施設組合 |
次期ごみ処理施設整備・運営事業 建設工事 |
2028年3月完成予定 |
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野田特定目的会社 |
(仮称)野田物流施設計画新築工事 |
2024年8月完成予定 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の財政状態及び経営成績について、2023年度の計画に対する達成状況は以下のとおりであります。
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指標 |
2023年度(計画) |
2023年度(実績) |
2023年度(計画比) |
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受注高 |
137,000百万円 |
146,380百万円 |
9,380百万円増(6.8%増) |
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売上高 |
166,000百万円 |
163,222百万円 |
2,777百万円減(1.7%減) |
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営業利益率 |
3.5% |
0.3% |
3.2ポイント減 |
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ROE(自己資本利益率) |
- |
△3.0% |
- |
受注高につきましては、土木事業において治水等を目的とするシールド工事等や河川の橋脚工事をはじめとするニューマチックケーソン工事を受注したことにより、対計画比を上回る結果となりました。建築事業においても、廃棄物処理施設といった環境関連事業に係る建設工事を複数受注したことにより、対計画比を上回る結果となりました。また、中期経営計画の重点項目である土木事業における「維持修繕事業」では、既設水門の耐震補強工事の新規受注や前年度までに受注した高規格道路の耐震補強工事、浄水処理施設等の整備工事の設計変更等を受注しております。建築事業における「産業関連事業」においては、前述の廃棄物処理施設や大型物流施設等を受注しております。
売上高につきましては、土木事業において、大型工事の進捗の遅れが影響したため、対計画を下回る結果となりました。建築事業においては、前年度までに受注した工事において設計変更等が獲得できたことにより対計画を上回る結果となりました。
営業利益率は、工事の進捗遅れに伴う売上高が減少したことに加え、国内における特定の土木造成工事において工事原価の増加が見込まれたこと、特定の建築工事において設備業者の逼迫による突貫費用が発生したこと、また、海外における特定の土木工事において採算の悪化が見込まれたことから、対計画を下回る結果となりました。
中期経営計画では、「人的資本経営の強化」「事業構造の変革」を基本方針とし、事業の拡大は追わず利益重視の選別受注の徹底、グループシナジーを創出し2027年度までに売上高1,500億円、営業利益90億円、ROE8.0%以上の達成を目指しております。
当連結会計年度における売上高は163,222百万円(計画比1.7%減)、営業利益率は0.3%(計画比3.2ポイント減少)、ROEは△3.0%(前連結会計年度は4.0%)であり、自己資本の充実と安定配当の維持、及び手元資金の有効活用をして、中期経営計画(2023-27年度)の目標を達成すべくグループ全体で取り組みます。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資本金の流動性に係る情報
当連結会計年度のキャッシュ・フローにつきましては、営業活動により11,536百万円減少し、投資活動により996百万円減少し、財務活動により1,725百万円増加し、この結果、現金及び現金同等物は10,501百万円の減少となり、当連結会計年度末残高は17,523百万円(前期比37.5%減)となりました。
当社グループの財務戦略については、建設事業が主力事業であることから、工事代金の回収及び借入金を主体に資金を調達しております。また、中期経営計画では戦略投資として借入金及び資産の売却を原資とした事業領域拡大関連に140億円、手元資金を原資として経営基盤強化関連に60億円、総額200億円の投資を実施する計画としております。今後も「財務体質の更なる強化」を図る方針であります。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
特に、一定の期間にわたり収益を認識する方法の適用及び工事損失引当金の計上については工事原価総額に重要な会計上の見積りが必要となります。当該見積り及び仮定の不確実性の内容がその変動により経営成績等に生じる影響などは、「第5経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しています。
一定の期間にわたり収益を認識する方法の適用及び工事損失引当金の計上において考慮される工事原価総額の見積りは以下のような高い不確実性を伴います。
・工事契約の完了に必要となる全ての施工内容が特定され、必要と判断された見積工事原価が工事原価総額の見積りに含まれているか否かの判断
・工事の進行途上における当事者間の新たな合意による工事契約の変更、工事着手後の工事の状況の変化による作業内容の変更及び直近の工事原価総額の見積りの見直し時に顕在化していなかった事象の発生等が、適時に合理的に工事原価総額の見積りに反映されているかの判断
該当事項はありません。
当社の研究開発につきましては、建設費の低減と安全性の向上に加え、DX化やカーボンニュートラルへの取組を強化することで受注の拡大を目指すべく、土木部門におきましては、独自技術の自動化・自律化、デジタル技術の活用、環境負荷低減、リニューアルによる構造物の機能維持と性能強化に関する開発を積極的に進めております。具体的には、施工の無人化・遠隔化、計測・管理技術の高度化、掘削の効率化、浚渫土の減容化、橋脚耐震補強関連などの研究に取り組んでおります。また、建築部門におきましては、CO2の削減と固定、森林資源循環に寄与する建築の木構造・木質化技術の開発の強化、DXの推進・BIM一貫体制導入や、省エネ技術などの研究に取り組んでおります。
当連結会計年度における研究開発費の総額は
(土木事業)
1.New DREAM工法の開発
大豊式ニューマチックケーソン工法に多機能型ケーソン掘削機、掘削機メンテナンスシステム、大気圧エレベーター、DHENOXシステム(ヘリウム混合ガスシステム)、遠隔地耐力試験装置等を組み合わせ主要高気圧作業の100%無人化施工を可能とするNew DREAM工法を開発しました。10基のニューマチックケーソン工事に適用され橋梁基礎、道路・鉄道トンネルの立坑、雨水貯留施設等、大深度・大断面の地下構造物の建造に貢献しています。今後、掘削自動化の実現に取り組むことにより独自技術としてのさらなる進化を目指しております。
2.ニューマチックケーソン掘削シミュレータの開発
コンピュータグラフィックを駆使してサイバー空間にニューマチックケーソン掘削作業室と掘削機を再現し、実機と同様の感覚での遠隔掘削操作の体験を可能とするニューマチックケーソン掘削シミュレータを開発しました。本シミュレータは、開発中のニューマチックケーソン自動掘削や長距離遠隔操作の技術開発で必要となるデジタルベースの掘削機を利用して開発したもので、パソコン及び掘削機操作レバー等の周辺機器で構成し、職員・作業員の教育訓練の他、一般の方向けの体験等に活用しています。一般の方向けの活用では、よりニューマチックケーソン工法に親しみをもっていただくための配慮として同工法に関するクイズやゲームなども搭載しており、全国各地の建設技術展やニューマチックケーソン現場で大いに活躍しています。
3.ニューマチックケーソン工法の高度施工管理技術の開発
ニューマチックケーソン工法の適用範囲が拡大する中、大断面・大深度への対応は元より、構造物の高規格化へも対応しつつ効率的に施工を進めることが強く求められております。このような状況の下、施工精度向上及び施工管理の効率化を図るためリアルタイムの自動姿勢計測システム、高気圧作業室内の掘削面形状計測システム、高気圧作業従事者を対象とする減圧管理システムを開発しました。これらのシステムは、高度計測技術に当社開発のソフトを組み込みデータ処理するものであり、現場での試験運用を経て本格運用の段階に至っております。特に、減圧管理システムについては、最新の仕様ではAIによる顔認証機能を追加装備するなどの改良も行っており、既に28基のニューマチックケーソン工事に適用され、施工管理の効率化に多大な貢献をなし得ております。近年、i–constructionの推進に伴う生産性向上や施工管理技術の高度化は喫緊の課題となっており、今後もニューマチックケーソン工事分野への新技術の導入を積極的に図り、施工管理技術の大幅な向上に資するシステム開発を継続します。
4.ニューマチックケーソン自動掘削技術の開発
ニューマチックケーソン工事の掘削作業は夜間や高気圧下で行うことも多く、働き方改革・生産性向上の観点からも自動化が強く求められています。ニューマチックケーソン自動掘削技術は、上述1から3の技術をベースに、さらなる自動化技術を開発・導入し、ニューマチックケーソン函内の掘削及び地上への排土に係わる一連の作業の自動化を図るものです。開発は、ステップ1:沈下掘削に影響しない掘削(盤下げ掘削)の自動化と、ステップ2:沈下掘削自動化の2段階で行うものであり、ステップ1から順次実用化を図っていきます。ステップ1については、既に現場実用ベル開発段階に到達しており、早期の本格実用化を目指してニューマチックケーソン実現場に開発フィールドを移し、現場実証実験等を実施していきます。
5.ニューマチックケーソン減圧管理プログラムの開発
ニューマチックケーソン工法が大深度化する中、高気圧作業従事者が大気圧に帰還する際の安全な減圧方法に関する計算プログラムを専門医とタイアップして自社開発しました。本プログラムを使用することにより、ニューマチックケーソンの多種多様な条件下における高気圧作業の安全な減圧工程が、迅速かつ確実に算定可能となり、大深度のニューマチックケーソンを施工する際などの安全性確保と健康管理の徹底を図ります。2015年度の運用開始から現在に至るまで52基のニューマチックケーソン工事に採用し、この間、プログラムの改良も重ね、高気圧作業従事者の減圧症予防に多大な貢献をしています。
6.ニューマチックケーソン健康管理アプリの開発
ニューマチックケーソン工法の高気圧作業従事者の健康状態を迅速・的確に把握し、健康状態に応じた注意喚起、及び健康データのデータベース化などを実現するニューマチックケーソン健康管理アプリを開発しました。本アプリの使用により、近年のニューマチックケーソンの大深度化と、ベテラン技術者の確保が難しい状況下においても現場管理者の経験に過度に依存しない高気圧作業従事者の健康状態の判断と継続・連続的な把握、さらに、健康管理に関する書類作成業務の排除などが可能となります。高気圧作業の実施においては、現場管理者が高気圧作業計画をアプリ上で作成し、併せて高気圧作業従事者が無線通信の健康測定器具で健康状態を測定・送信することにより、加圧~高気圧作業~減圧の各プロセスの健康管理とデータ蓄積が自動的に行われ、高気圧作業従事者の確実な健康管理と管理業務の簡素化・効率化が図られています。
7.ニューマチックケーソン硬質地盤掘削システムの開発
ニューマチックケーソン工法の大深度化・大断面化に加え近年では岩盤硬質地盤への適用が増加する中、岩盤硬質地盤の効率的掘削を可能とする硬質地盤掘削システムを開発しました。本システムは、当社保有掘削機DREAMⅡに装着可能なリッパバケットなどの特殊掘削バケットなどから構成し、岩盤硬質地盤の掘削効率の大幅向上を実現します。本システムは、礫岩地盤に沈設した掘削断面積3,360㎡、掘削深度GL-36.3mの石巻中央排水ポンプ場のニューマチックケーソン工事に採用し沈下掘削の沈設に大きな貢献を果たしました。なお、当工事は23年度土木学会技術賞を受賞しております。今後、硬質地盤条件下に施工される大断面大深度の雨水貯留池、ポンプ場や立坑などでの採用が一層期待されます。
8.シールドⅤR(仮想現実)体験システムの開発
ヘッドマウントディスプレイを装着してⅤRコンテンツを起動するだけで本物さながらのシールド工法を体験することが可能なシールドⅤR(仮想現実)体験システムを開発しました。本システムは、開発中であるシールド統合管理システムの技術開発で必要となるデジタル技術を利用して開発したもので、実物大のシールドマシンを体感したり架空の工事現場のシールド掘削状況を体験したりすることが可能です。シールド工法を紹介する動画「空間を生む」と併せ、職員向けの教材としてだけではなく、全国各地の建設技術展やシールド現場見学会における一般の方向けの体験等に活用されています。
9.シールド統合管理システムの開発
シールド工事の品質向上と合理的な施工管理の実現を図るシールド統合管理システムの開発に取り組んでいます。本システムは、IT・ICTなどの先端技術を積極導入してシールド掘削切羽の施工管理を総合的、且つ合理的に行う施工管理・支援システムであり、経験の浅い若年技術者も含め、高度で安定したな品質・施工管理を標準的に実現します。システムは、測量結果をCAD上に自動作図・出力する掘進管理支援システム、より適正な切羽圧力の設定と地盤の応力状態をリアルタイムで見える化する切羽圧力管理システム、セグメント組立状況を3次元で自動計測・表示可能なセグメント計測システムで構成し、既に掘進管理システムは現場に投入を果たし、また、その他の技術についても急ピッチに開発を進めています。なお、本システムは現状3つの要素システム・技術で構成しますが、今後、シールド関連で開発する技術についても取り込み・融合を図り、より総合的なシステムとして構築していく予定です。
10.浚渫土処理工法(DRESドレス工法)の開発
港湾、河川、湖沼等の高含水の浚渫土を効率的に脱水・分級してリサイクルできるシステムを開発しました。本工法は、田子の浦港で浚渫土の減容化に採用され、また、新門司の築堤材製作工事では日本最大規模の処理システムで稼働するなど、浚渫土処理累計は約113万m3に上り、港湾の維持や環境影響の低減に貢献しています。特に田子の浦港では、高濃度ダイオキシン類の浚渫土中間処理にも採用され、環境負荷の低減やコスト縮減に貢献しており、今後さらに湖沼、港湾等での活躍が期待されます。
11.鋼製函体締切工法の開発
既設橋脚の水中部を鋼製函体で仮締切し、ドライな状態で高品質な橋脚耐震補強を安全に行うことのできる鋼製函体締切工法を民間4社で共同開発しました。本工法に用いる函体は、浮力を利用して曳航沈設が可能なため、桁下空間の制限を受けず、フーチング上に設置できます。これまでに河川内の橋脚耐震補強に採用され、当社施工分として完了工事が5件あります。
また、本工法の派生工法として狭隘な場所や浅水深による作業制限がさらに緩和でき、大幅な工費の低減を可能とする当社独自開発の「複合壁体締切(RECC)工法」と「カプセル壁体締切工法」も併せて開発しており、前者は8基、後者は4基の施工実績を有します。今後、同様な施工条件下の工事への採用が見込まれ、安全・安心社会の構築に貢献することが期待されます。
12.遠赤外線触媒還元処理システムの開発
現在、最終処分場の残余量がひっ迫してきており、新たな最終処分場の建設も進んでおりません。その対策として、ゴミ焼却施設から排出される焼却灰を減容化・再資源化を目的に「遠赤外線触媒還元処理システム」を開発しております。遠赤外線触媒還元炉のセラミック壁を加熱し、遠赤外線が発生。遠赤外線と焼却灰由来の触媒との相乗効果により化学反応が促進され、焼却灰の結晶体を分解し、硫化物化します。これにより焼却灰に含まれる有害物質重金属が安定化・不溶化し、有害物質が無害化され、2/3の減容化が実現します。また、生成物から資源化物の製造も可能となります。環境保全の面からCO2の発生は大幅に削減されます。また、この装置を用いての放射線濃度の高い除去土壌の放射線濃度低減も確認されています。これらの効果を確認するために遠赤外線還元炉装置の実験機を作製し、実証実験を行い、システムの構築を確立していきます。
(建築事業)
1.木構造・木質化技術の開発
地球温暖化防止にはCO2の削減とともに、CO2の吸収源を確保することが重要です。吸収源の大部分は森林ですが、日本では、人工林の高齢化とともに森林吸収量は減少傾向にあり、現在飽和状態の森林資源を活用し植林する、循環サイクルを加速させることが必要です。そのため国を挙げて木材の積極利用、都市の木造化が推奨されております。また、木材はCO2を固定化することができる第二の森林ともいわれております。木造は鉄骨造やコンクリート造に比べ、建設に伴うCO2排出量が約6割と少なく、建物が蓄える炭素量は4倍であり、建築の木造化は2050年のカーボンニュートラルに向けた重要な手段であり、優先的に取組む必要があります。
当社における木質材料の活用及び木構造の技術開発に関しましては、茨城県阿見町の技術研究所で試験施工した木構造技術(大断面集成材のラーメン構造と鉄筋コンクリート造を組み合わせた、立面ハイブリッド工法や、鉄筋コンクリート造架構に組み込んだCLT耐震壁、配筋付き製材型枠)を更に発展させております。
CLT耐震壁(RCWSw工法)に関しては産学共同研究による実物モデル架構による加力試験や要素試験を実施して、新たな設計法(特許取得済)を開発し、大阪の鉄筋コンクリート造ワンルームマンションの耐震壁に初めてCLTを採用しました。また、中央機材センターの新工場建設プロジェクトでは、鉄骨柱と木質トラス梁を併用したハイブリッド構造を採用し、設計法・施工法を検証しました。引き続き、RCWSw工法の汎用化のため適用範囲拡大の研究や、中大規模木造建築の構造パターンごとの試設計を行い、木造木質化を推進します。
2.DXの推進・BIMモデルによる生産システムの変革
DXの取組みとして、品質・安全管理における生産性向上や効率化のためのITツールの導入や支援ソフトの導入により業務改善を推進しております。業務を置き換えるだけでなく、課題を解決する為、関連企業との協業によるシステム開発を行うと共に、技術者の育成を進めております。
BIM(Building Information Modeling)は、原則設計施工の案件で採用し、コミュニケーションの向上、図面間の整合確認、問題点をフロントローディングにより抽出し改善するなど、着実に成果が出てきており、BIMの技術情報を水平展開し、更なる活用の加速と技術者育成を進め、生産システムの変革を図ります。
3.省エネルギー設計技術の研究
建築物に関連するCO2の排出量は非常に多く、建築物の省エネルギー化は大変重要であります。技術研究所では省エネ設計技術を研究し、ZEB Ready(ZEBとは、ネット・ゼロ・エネルギー・ビルの略で、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロとすることを目指した建物)を取得しており、オフィスビルでのZEB実績を活かし、新工場建設プロジェクトでZEB Readyを取得しました。また、大阪のワンルームマンションでは、ZEH-M Oriented(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス マンション オリエンテッド)を取得しております。今後もZEB、ZEHを設計提案し、採用数を増やしていくことを目指します。
4.免震・制震工法の開発
各種用途の建築物への免震工法の適用は定着しており、当社でも関東近郊、東海、関西、九州地区等、集合住宅を中心とした多くの実績があります。最近では、首都直下型・南海トラフ等の巨大地震の発生が懸念される中、防災拠点の耐震化や企業のBCP(企業継続計画)対策のひとつとして重要視されております。
免震工法では、基礎免震による共同住宅や中間免震の高層ホテル、杭頭免震でのPC圧着関節工法による大型物流倉庫、免震タワーマンションなどに取り組んでおります。また、制震工法につきましては、超高層住宅での「摩擦ダンパー工法」や、官庁物件における「アンボンドブレース工法」の適用を通じて多くのノウハウを蓄積しており、関連技術を総合的に活用し、免震・制震分野へ継続的に取組んでいきます。
5.杭・基礎関連技術の開発
当社では、引抜き抵抗力に優れるなどの特徴を持つ中間及び先端に拡径部を有する場所打ちコンクリート杭 工法「Me-A工法」を共同開発し、一般財団法人ベターリビングより一般評定を取得しております。本工法は、アースドリル工法を用いて、杭軸部の中間及び先端に節状の拡径部(節)を設けて、建物を支える力を増大させた場所打ちコンクリート杭を造成する工法であり、この拡径部は地震の時に建物を転倒させようとする力に抵抗するため、杭の引抜き抵抗としても有効に働きます。従来の杭より短く、もしくは杭軸部を細くすることが可能になり、杭の工事費を低減できます。これまでに、東京及び大阪の11物件(126本)で採用されております。
また、阪神・淡路大震災における杭頭破壊の事例を契機に、杭頭の損傷を制御する研究・開発が行われるようになり、多くの関連技術が実用化されるようになってきました。当社でも「CTP(杭頭半固定接合)工法」の導入を図り、杭性能の向上とともにコストダウンにも有効なツールとして検討を進めてきた結果、これまでに4件(62本)の高層集合住宅で採用しております。両工法は汎用性に優れており、今後も全国への積極的な展開を進めていきます。
(その他の事業)
研究開発活動は特段行っておりません。