第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

       文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものである。

 

   (1) 経営の基本方針

当社グループは国土づくりを通じて社会に貢献し続けるという使命をステークホルダーの皆様に広くご理解いただき、それに向けた価値観、目標を当社グループ内で共有するため、以下の通り経営理念を定めている。

  <経営理念>

       Mission (使 命): 豊かで安全・安心な国土づくりに貢献します

         Value   (価値観): あらゆる変化を進化に換えて未来に向かって歩み続けます

        Vision  (目 標): 世代を超えて生き続ける独自の技術を提供します 

 

また、この経営理念を実現すべく、「土木、地盤改良、ブロックの3事業が協調し、海に陸に、持続的な成長を目指します」を経営方針としている。

 

   (2) 経営環境及び対処すべき課題

国内の景気は、雇用・所得環境の改善や政府による各種政策の効果に支えられ、緩やかな回復が続くことが期待されるが、物価上昇、海外経済の動向、金融資本市場の変動など、景気を下押しする要因には引き続き留意が必要となる。

また、建設業界において、公共建設投資については、国土強靭化計画の推進や防災・減災対策、インフラの維持・更新投資などを背景に底堅い需要が継続するものと見込まれ、民間投資については、設備投資意欲と慎重姿勢が併存している状況にある。引き続き、建設資材価格や労務費の高止まり、人手不足といった構造的な課題は継続するものと予想される。

このような状況の下、当社グループは、2027年度に「売上高800億円以上、営業利益率5%以上」の目標を掲げた長期計画の最終段階となる「収穫・実現」のフェーズと位置付けた「中期経営計画(2024~2026年度)」に取組んでいる。この中期経営計画の基本方針・目標と初年度となる当期の結果は以下のとおりである。

 

  (3) 目標とする経営指標

     <長期目標>

 

2017年度

2027年度

売上高

(既存分野)

628億円

800億円

(新規分野)

+α

営業利益率

 

5.9%

5.0%以上

 

 

   ◆前中期経営計画の成長・拡大に引き続き、更なる経営資源への投資、収益基盤の多様化に取り組む。

 


 

<中期経営計画(2024~2026年度)の概要と経営目標>

 ○基本方針

基本方針①

新規事業の創出と事業領域の拡大

建設産業のライフサイクル・長期化を踏まえ、事業ポートフォリオマネジメントの高度化から、事業領域の拡大、新規事業の創出を目指す。

 

 

基本方針②

経営理念を基盤としたESG(環境・社会・ガバナンス)経営の実践

経営理念に基づき新たに制定した「サステナビリティに関する基本方針」に沿って、優先的に取り組む重点施策(マテリアリティ)を特定。各施策でKPIを設定・管理しESG経営を実践する体制を構築する。

(サステナビリティ基本方針)

不動テトラグループは経営理念に基づき、さまざまな社会基盤の整備を通じて豊かで安心・安全な国土づくりを促進し、持続可能な社会の実現を目指します

 

 

基本方針③

資本コストを意識した経営の実践

事業成長の実現に資する財務戦略・資本戦略を実行。資本コストを意識し、事業ポートフォリオの高度化を図るなど持続的成長を追求することで、最終年次の2026年度にはROE9.0%の達成を目指す。

 

 

基本方針④

人的資本経営の推進

従業員の働きやすさ(ウェルビーイング)、働きがい(エンゲージメント)を追求し、魅力ある会社、選ばれる会社の実現。

人材採用、人材育成、最適配置を通じて、人的資本の最大化、企業価値の向上を目指す。

 

 

○経営目標(連結ベース)

 

 

 

 

 

項目

目標

2024年度実績

 

 

 

①業績目標

3ヵ年累計営業利益

120億円以上

31億77百万円

 

 

 

②資本効率目標

2026年度 自己資本当期純利益率(ROE)

9%以上

6.6%

 

 

 

③株主還元目標

配当性向

40%程度

60円以上

41.3%

60円

 

 

 

 

 

○全社数値目標(連結ベース)

 

(単位:億円)

 

前中期経営計画実績
 (3ヵ年累計)

新中期経営計画

実績

計画

2024年度

2025年度

2026年度

2024年度

2025年度

受注高

2,071

750

765

775

723

745

売上高

2,052

715

745

780

696

780

営業利益

96

30

42

48

32

40

営業利益率

4.7%

4.2%

5.6%

6.2%

4.6%

5.1%

ROE

6.3~7.1%

6%

8%

9%

6.6%

7.6%

 

 

 

       ○セグメント別の事業方針と戦略

事業

セグメント
 

新中期経営計画(2024~2026年度)

事業方針

事業戦略

土木事業

新たな挑戦へのリ・スタート

~成長路線に向けた事業基盤の強化~

 

①事業規模拡大

・既存領域における差別化戦略

・リニューアル事業への積極的参画

・環境関連事業の強化(研究開発・調査・設計・施工体制整備)

②積極的成長投資

・自社独自技術の開発促進(差別化戦略)

・環境性能及び作業性能の高い作業船新造による他社との差別化

・業務提携、M&A及び関連会社との連携強化を積極的に推進

③生産性向上

・DXソリューションの積極的取り組み

・生産性と安全性を向上させるための新技術導入

・社員の意識改革による時間管理の最適化

④人的投資

・施工要員の確保と離職率低減

・人材育成・教育研修の充実

・中堅・若手技術者の育成強化(早期戦力化)

地盤改良事業

・必要な経営資源への投資と展開による事業の持続的発展

・社会課題解決による存在意義向上と地盤を礎とした新たな領域の拡大

①民間事業の拡大

・民間事業への重点営業

・改善/開発された工法(リソイルProなど)による営業展開

・グループ会社(愛知ベース工業等)との連携強化による建築市場の拡大

②成長市場への展開と事業領域の拡大

・新たに開発する工法による市場の創出

・エネルギー関連施設など拡大市場への売込み強化

・バイオマス混合CPによるカーボンニュートラル市場への事業展開

③海外事業の安定化

・AGIとの連携強化によるアメリカでの受注拡大

・アジアでのローカル人材の育成による体制強化

④社内体制・システムの効率化

・ICT技術による業務効率化、DXの推進など

ブロック事業

・安定的黒字化を目指した事業の再構築

・既存事業にとらわれない各種施策や新規事業への取り組み

①事業モデルの変換と収益源の確保

・3Dプリンタなどをベースとした事業の模索(製品・施工)

・環境配慮型コンクリートなどをベースとした事業の模索(材料)

・他企業との業務提携の拡大・促進、洋上風力発電事業への参画

②分野別シェアの維持・拡大

・ICT技術を活用した老朽化対策需要の取込

・高波浪領域での競争力強化、河川・砂防市場でのシェアアップ

・防衛関連プロジェクトへの参画

・海外展開(ライセンス事業の拡充・ODA案件の取込)

③収益力の向上

・市場規模に見合う型枠保有適正化

 -事業規模に即した適正な要員体制、設備投資水準

 -物価高を反映した適正な賃貸料の追求(賃料アップ)

④ESG経営を意識した企業価値向上

・施策:ブルーカーボン・グリーンインフラ関連事業への取組推進

 (産学共同事業への参画、民間企業・漁協等との協業)

 

以上のように、長期目標及び新中期経営計画を実現するため、様々な課題への対応と持続的成長に向けて掲げた方針に取り組み、投資と株主還元を両立させながら、更なる企業価値の向上を目指していく。

 

なお、当連結会計年度において、当社に勤務する複数名の従業員が、一部の取引において複数年にわたり特定の協力業者に対し、水増しまたは架空発注を行い、その水増しまたは架空発注額の一部を従業員が自らに還流させ着服するほか、一部をプールさせたうえで、当社が受注する別工事の工事資機材代金に充てるよう依頼していた等の事案が発覚し、当社と利害関係を有しない外部専門家2名(弁護士1名、公認会計士1名)及び当社の独立社外取締役監査等委員(弁護士)をメンバーとする社内調査委員会を設置し調査を進めた。その結果、2025年3月31日付適時開示「社内調査委員会の調査報告書受領及び再発防止策等に関するお知らせ」のとおり、社内調査委員会の調査結果や提言を踏まえて再発防止策を策定した。

当社としては、再発防止策を計画的かつ着実に実行し、継続的にモニタリングすることにより、全社に浸透させるとともに、当社グループの役員・社員が一丸となって企業文化や組織風土の改革と内部統制システムやコンプライアンス体制の一層の強化に取組む。

再発防止策の詳細は、後掲の「当社従業員による架空発注等の事案に関する再発防止策」に記載している。

 

(4) 事業上及び財務上の対処すべき課題

(当社従業員による架空発注等の事案に関する再発防止策)

当社は、2025年2月7日付「当社従業員による架空発注等に関するお知らせ」において公表した、当社従業員による架空発注等の事案について、2025年3月31日付「社内調査委員会の調査報告書受領及び再発防止策等に関するお知らせ」において当社の再発防止策の概要について公表し、既に取り組みを進めているところであるが、今般、再び不正・不適切会計を発生させないことを目的に、内部統制システムの強化とコンプライアンスの徹底に向け、計画的、組織的に各種施策を実行し社内に浸透させるため、以下のとおり、再発防止詳細実行計画を策定した。

役員・社員一人ひとりが、各種施策に取り組むことを通じコンプライアンスを実践することにより、社会からの信頼回復と企業価値の向上に努める。

 

1.企業文化・風土の改革 

以下、①から④の施策は、速やかに実行するものとし、⑤の施策は、今回不正事案に限らず、これを機として、全社的な意見を吸い上げ、企業風土・文化を含めて様々な観点から改善・定着させる施策として実施する

 

① 社長及び各事業本部長は、全社及び各事業本部の役員、社員に向けて、本事案の理解と断固として不正を許さない旨を強く宣言する

[具体施策]

・社長談話会において定期的にコンプライアンスに係る談話を行う

・各事業本部の本部長による自部門内における各部の拠店合同会議等において、自ら直接、コンプライアンスの重要性について講じることによりコンプライアンス意識を浸透させる

・社長、事業本部長および事業本部工事部長は、積極的に現場職員と直接対話することにより不正を許さない姿勢を示し、コンプライアンス意識を浸透させる

 

② 各地区間等における人員配置等の見直しや人事交流などによる、組織の固定化の防止と活性化

[具体施策]

・地盤事業本部工事部における東京地区を中心として全国的に人材交流を計画的に行い、癒着を防止し組織を活性化する

 

③ 従前の事業運営上の慣習等を払拭する観点からの原価管理、購買のルール等の改善と浸透、及び心理的安全性や風通しの良い職場環境の確立を目的とした教育研修の実施

[具体施策]

・再発防止策として策定した、新たな原価管理、購買のルール等の説明会及び管理職や作業所長向けの心理的安全性等に係る教育研修を実施し、新たなルールを浸透させ、従業員エンゲージメントを向上させる

 

④ 行動規範及びその手引き並びにコンプライアンスマニュアル等の見直しと、本事案の発生事実、発生原因及び再発防止策に係る教育研修の実施

[具体施策]

・行動規範(3−2 適正な調達方針と生産体制の確立、3−4 適正な会計処理、財務の信頼性の確保等)を見直し、コンプライアンス行動基準において会計・税務に係る行動基準を追加する

・拠店作業所長会等において、本事案の発生事実、原因及び再発防止策に係る教育研修を実施し、コンプライアンス意識を醸成する

 

⑤ 風土・業務改革委員会の設置による、社内の意見等の取り込みと、再発防止策に基づく各種施策の実行、フォローを通じた企業・職業倫理の浸透と風通しの良い組織風土の醸成

[具体施策]

・社長は、風土・業務改革委員会の設置と活動の展開に併せ、本社幹部、拠店長に対し、改革・刷新に向けて全社をあげて強力に推進する旨を宣言する

・再発防止詳細実行計画のモニタリングとフォローアップを行い評価、改善し、定期的に取締役会へ報告する

・風土・業務改革委員会による社内アンケートのとりまとめと検討結果(全社的業務改善案と企業風土改革案骨子等)を策定し、取締役会に報告・付議するとともに、その展開についてフォローアップを行う

 

2.業務処理統制環境の強化

① 納品書の保存のルール化と、請求内容と納品書のチェックによる統制強化

[具体施策]

・「納品書」が法定保存文書であることの再認識を徹底し、「納品書」が取引の実在性を証する書面であることを明確化する

・内部統制 3 点セット「建設事業 支払処理(作業所決済)」において、「請求内訳書」と「納品書」の突合による確認を「キーコントロール」と位置づける

 

② 支払承認時における『取引の実在性』に係るサンプリングチェックのルール化

[具体施策]

・「請求内訳書」と「納品書」の突合を内部統制監査の調査対象とする

・内部統制監査の一環として、「(3)内部監査によるチェック体制の強化」に記載の監査部による監査手続きを行う

・当該チェックの過程において取引先に対し調査や納品書の提出を要求したにもかかわらず、正当な理由なく応じない取引先については、次回以降の取引を停止するなどの必要な措置を講じる

 

③ 購買プロセス、請求書処理プロセス、原価管理プロセス等における、部課長の権限とその行使及びそのチェック体制の見直し

[具体施策]

・土木事業、地盤事業に係る「個別工事管理の進め方」(受注前、受注後、施工中、竣工時の実行予算の在り方)について、その運用も含め必要な見直しを行い、審査会の実効性と原価管理プロセスの適正性をさらに向上させる

・購買管理規定に関し、購買プロセスにおける不正の防止、コンプライアンスの徹底の観点から、発注手続きの緩和措置、雑資機材の調達に係る通信販売事業者の利用を推奨、取引先審査範囲の拡大、取引停止基準の設定など必要な見直しを行う

・「個別工事管理の進め方」、購買管理規定の重要な改定については、経営会議の付議事項とし、ガバナンスによる監督を強める

 

④ 費目の付替と交際費、経費の取り扱いに係る正規の手続、ルールの文書化と浸透

[具体施策]

・工事原価としての経費費目について、適正なあり方について明確化し、周知徹底する

・「交際費」の取扱いについて、本部及び拠店従事者と工事従事者の費用処理区分を厳格に行うことを含め、「交際費予算計上の在り方」や「社内慰労の飲食代等の在り方」を見直し、正規の手続を明確化する

 

⑤ その他

[具体施策]

・メールの改ざん等の防止措置の期間を順次1年から5年に拡大し、役員、社員のメールへの監視、モニタリングを強化する

 

3.内部監査によるチェック体制の強化

① 一人所長の工事現場を内部監査部門の監査対象とするモニタリングの強化

[具体施策]

・監査部が指定したサンプルを事業部門により確認する

当該サンプル確認は、地盤・土木各部門間でのクロスチェック(一部)を実施する

・事業部門で実施したサンプルを監査部により再確認する

・監査部独自にサンプル確認を行う サンプルの確認に併せて、監査部が指定した納品物について予め現物の画像を提出させる

・拠店往査時の確認内容を充実させる(現場監査での請求書と納品書の突合等)

・非通知監査を適宜実施する

 

② 監査部門の社員の監査の能力、スキルの継続的な向上

[具体施策]

・実査による不正を見抜くための眼力を向上させる

・拠店往査時において、コンプライアンスに関し実務者へ直接指導する

・各種講習会への参加により、他社事例を含めた知識をアップデートする

 

4.内部通報制度の周知徹底

① 経営トップによる内部通報制度の意義や安全性、信頼性と制度の利用についての定期的な発信

[具体施策]

・内部通報制度の意義や安全性を社長談話会の内容とし、利用を促進する

・内部通報制度の継続的な周知と制度利用対象者への説明(不利益処分の禁止、厳格な秘匿性を含む)を実施する

 

② 内部通報制度の継続的な周知と制度利用対象者への説明の実施

[具体施策]

・拠店等の作業所長会等に併せた、同制度の説明会の開催を実施する

・利用喚起ポスターの作成と拠点、作業所等への掲示を行う

 

③ 管理職以外を対象に定期的なコンプライアンスアンケートの実施とそれを基にした内部通報制度の補完および実効性の検証

[具体施策]

・定期的な役員・社員向けコンプライアンスアンケートによる疑義事案のモニタリングと適法かつ適切なヒヤリングを行う

・同コンプライアンスアンケートに内部通報制度の利用上の改善点等の検証と必要に応じた制度の見直しを行う

 

5.教育研修

① 工事部門の社員に向けた、本事案等の不正に対応した具体的な事例に基づく教育研修の制度化と受講管理の徹底及び習熟度の確認

 

② 上記(2)業務処理統制環境の整備の面の施策で文書化した、正規の手続きの浸透に向けた教育研修の実施

 

[具体施策]

・上記(1)企業文化・風土の改革の施策における拠店所長会での教育研修の他、工事部門および営業部門の全社員に対し、当該研修を行う

・入口教育として、工事部門における入社2年目研修において当該研修を行う

・教育研修アプリケーションを利用した受講履歴管理とアンケートにより習熟度を確認する

・各事業本部(工事部門を有する)は、当該研修の教材等を用いて、定期的に年次・階層に捕らわれない研修を実施する

・従前から行われているコンプライアンス、会計・税務に関する階層別教育をさらに拡充する

 

6.協力業者対応

① 協力業者に対する、当社社員による不適切な要求に対する拒絶の要請と内部通報制度の積極的な利用の喚起

 

② 安全衛生協力会の組織の枠組みを通じた、本事案や内部通報制度の利用等に係る教育研修の実施と適正取引全般の要請 

[具体施策]

・安全衛生協力会を通じた要請と内部通報制度のリーフレット等の取引先へ配布を行う

・安全衛生協力会の安全大会等において、不適切な要求に対する拒絶要請と事案や内部通報制度に係る説明(不利益処分の禁止、厳格な秘匿性を含む)を実施する

・CSR 調達ガイドラインを策定し、安全衛生協力会の安全大会等において施行に際して説明を行う

・社内調査委員会による外部(取引先)アンケートを実施した会社を対象として、要請先を抽出し、面談その他の方法により、不正な取引の拒絶要請を行う

・取引停止基準の周知徹底とそれを可能とする協力会社との取引契約の見直しを行う

・電子契約システムによる注文書発行時に内部通報制度のアナウンスを行う

 

③ 協力業者に向けた定期的なサンプリングによるコンプライアンスアンケートの実施

[具体施策]

・本件不正の調査スコープ等を参考として協力業者を絞り込みサンプリングのうえ、定期的にコンプライアンスアンケートを実施しリスク管理委員会へ報告するとともに、必要に応じ調査対応等を適切に行う

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりである。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。

また、指標、目標は各連結子会社の規模や制度が異なるため、連結グループにおける記載が困難であることから提出会社単体の記載としている。

 

 (1)  サステナビリティに関する考え方

①基本方針とマテリアリティ

当社は経営理念に基づき、さまざまな社会基盤の整備を通じて豊かで安全・安心な国土づくりに貢献し、持続可能な社会の実現を目指すことを、サステナビリティの基本的な考えとしている。

また、社会課題と事業活動を整理し、社会課題解決と当社の持続的成長を両立させるための「マテリアリティ(重要課題)」として6項目を特定している。

  ・持続可能な社会の実現

  ・安全・安心な国土づくり

  ・地域の発展・活性化への貢献

  ・あらゆる人々の活躍の推進

  ・企業経営の健全性と効率性の向上

  ・倫理的行動の徹底

②ガバナンス

このようなサステナビリティに関する重要事項は、取締役や各本部長を委員としたサステナビリティ委員会を設置し、審議・検討を行っている。当委員会では、サステナブル経営の基本方針の策定やESGに関するリスクと機会の識別・評価、重要課題(マテリアリティ)の特定とその監視・測定及び分析評価を実施し、審議された内容は、取締役会に答申のうえ、同会にて審議・決定することとしている。  


③リスク管理

取締役会によって決定された重要課題(マテリアリティ)や特定されたリスクに対し、サステナビリティ委員会をはじめとする各種委員会が連携し、具体的な管理および緩和策を推進する。

 

(2)  気候変動に関する取組

 ①取組方針

当社は、SDGsがめざす持続可能な社会の形成には環境課題への対応が重要な経営課題と捉えており、その課題への取組みを通じてESG経営を推進している。

なかでも気候変動は、水害・土砂災害の増大を招いており、当社の使命からも、重要なテーマであると考えている。このため、気候変動リスク及び機会が及ぼす影響を評価し経営戦略に統合することが、当社の企業価 値向上に資するものと考え、TCFD提言に則った情報開示を進めている。

 

 ②ガバナンス

  サステナビリティに関する考え方で示した通り、サステナビリティ委員会を設置し、審議・検討を行っている。

 

 ③戦略

当社では、気候変動によるリスクと機会の特定及び、事業への影響度と対応策に関する考察・分析にあたり、IPCCやIEAが公表する各種シナリオを参考に、4℃シナリオと2℃未満シナリオの2つを設定している。

 

(4℃シナリオ)

化石燃料需要の成行き的な拡大などを背景に、軽油・重油をはじめとしたエネルギー価格の上昇を予測しているほか、風水害の拡大による直接的な被害の最大被害額や屋外作業の作業効率低下や熱中症リスクの拡大も想定されることから、2℃未満シナリオと比較して2倍以上の財務的な被害を予測している。ただし、気象災害をはじめとした自然災害の被害緩和・回避・防止を目的とした関連工事はより拡大することが見込まれる。

(2℃未満シナリオ)

脱炭素化に向けたカーボンプライシングの影響が、新たな事業運営コストとして財務的なインパクトとなることを予測しているほか、サプライチェーンではカーボンプライシングによる影響が製品の販売価格に上乗せされることで原材料コスト増が想定される。一方、再生可能エネルギー需要の拡大から再生可能エネルギー施設の工事が増加することが見込まれ、関連工事への積極的な参画が事業機会となり得ると考えている。

 

・気候変動関連のリスクと機会

  (リスク)

分類

影響要因

特定した具体的影響

4℃

シナリオ

2℃未満

シナリオ

現在の取り組み例

移行リスク

炭素税の導入や

法規制

炭素税の導入による事業運営コストの増加

自家消費型太陽光発電導入

(研究所・機械センター)

温室効果ガス排出量削減に伴う設備投資等の支出増加

資材やエネルギーの価格変動

石油需要の変化や炭素税の導入による原材料価格の高騰

自家消費型太陽光発電導入(研究所・機械センター)

化石燃料・電力価格などエネルギー価格の高騰

CO2削減に向けた技術開発の取り組み

物理的リスク

気象災害の激甚化(洪水・高潮)

被災による直接的な損害の発生

東京機械センターにおいて自然災害に備えるための耐震化・水害対策等の実施

サプライヤーの被災による原材料供給の停止

台風や豪雨・豪雪による工期の遅延や対応コストの発生

平均気温の上昇

熱中症危険の増大と生産性の低下

ICT活用による新技術開発

極端な気象パターン変容による工期の遅延

 

 

  (機会)

分類

特定した具体的影響

4℃

シナリオ

2℃未満

シナリオ

現在の取り組み例

エネルギー源

再生可能エネルギー関連工事の増加

再生可能エネルギー関連工事への取り組み

製品・サービス

環境配慮型工法の需要増加

環境配慮型工法の開発

環境配慮型工法事例:モールエコジェット工法/ネガティブエミッション技術

市場

洪水や高潮被害に対する防災・減災を目的とした工事の増加

総合技術研究所における新技術開発・取り組み

 

 

  ④リスク管理

気候関連リスクについては、品質環境委員会と連携し、サステナビリティ委員会が識別し、ESGに関わる様々なリスクと統合的に評価している。また、同委員会の答申を受けて取締役会が重要課題(マテリアリティ)を決定し、特定されたリスクや重要課題の管理については、同委員会をはじめとする各種委員会で、リスクの管理・緩和に取り組む方針である。

 

 

 ⑤指標と目標

 当社ではCO2排出量を指標とした目標の設定と進捗の管理に取り組んでいる。

※Scope1+2を2030年度で2020年度比30%のCO2排出量の原単位削減(t-CO2/億円)、2050年までに実質ゼロとす

ることを目指し、※Scope3では 2030年度で2020年度比10%のCO2排出量の原単位削減(t-CO2/億円)を目指し活動を継続している。

CO2削減目標

指標

基準年

目標年

目標

Scope1・2削減率

2020年

2030年

▲30.0%

2050年

▲100.0%

Scope3  削減率

2020年

2030年

▲10.0%

 

   Scope1:自社事業から直接的に排出されるCO2排出

   Scope2:他社から供給された電気、熱、蒸気の使用に伴う間接排出

   Scope3:Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)

 

 (3)  人的資本・多様性に関する取組

 ①ガバナンス

当社の人的資本・多様性に関する課題については、サステナビリティに関する重要事項として、サステナビリティ委員会での審議の対象としており、持続的な企業価値の向上には、人的資本への投資や多様性の推進が重要と認識し、様々な取り組みを行っている。

 

 ②リスク管理

人的資本リスクについては、サステナビリティ委員会が識別・評価することとしている。サステナビリティ委員会において、各部門・関係会社から報告された内容を、ESGに関わる様々なリスクと統合的に評価している。サステナビリティ委員会で審議された内容は、取締役会に付議・答申のうえ、取締役会が重要課題(マテリアリティ)を決定し、特定されたリスクや重要課題の管理については、サステナビリティ委員会と必要に応じてリスク管理委員会で、リスクの管理・緩和に取り組む方針である。

 既に行っている取り組みの概要、成果(提出会社の状況)について以下に示す。

尚、当社の取り組みが連結グループに属する全ての企業において行われてはいないことから、当社以外の連結グループに属する企業の実績については記載を省略している。

 

 ○人材の確保

少子高齢化が進む中、建設業にとって人材確保は中長期的な最重要課題であり、当社においても、特に40歳前後の中堅世代が不足しているという課題を解消し、次世代の人材を確保する観点で、中途採用を含め、中長期的な社員の採用目標を掲げ、継続的に人材の確保を積極的に行っている。

 

直近の採用者数は以下のとおりである。

分類

年度

技術系

事務系

技能系

新規定期採用者数

2025年4月入社

26名

5名

2名

33名

2024年4月入社

19名

4名

0名

23名

中途採用者数

2024年度入社

10名

2名

0名

12名

 

 

 

  ○多様性の推進

当社は、性別や国籍に関係なく、個々人の適性、能力、経験を重視した人材採用を行っている。また、社会環境の変化や社員のニーズに対応した人事制度の改正を行うとともに、多様な働き方を実現するための支援制度を拡充している。人事部内に設置していた「働き方改革推進課」を発展的に改編し「ウェルビーイング推進課」として、ダイバーシティー推進に取組んでいる。

   このなかで特に女性の活躍に力を入れており、2021年4月に「えるぼし」の3つ星の認定を受けている。

※「えるぼし」

女性活躍推進法における一般事業主行動計画の策定・届出を行った事業主のうち、女性の活躍推進に関する状況が優良である等の一定の要件を満たした場合に厚生労働省から認定される。

評価基準を満たす項目数に応じて3段階あり、当社は5つの項目全てを満たしており、3段階目(3つ星)認定を受けている。

 

 当社は以下の目標を掲げ女性活躍を推進している。

目標①

新卒総合職採用において女性採用者に占める技術系の割合を40%以上とする。

目標②

管理職及びリーダー層の女性の人数を現行(2021年度末)の1.3倍以上とする。

目標③

男女を問わず、多様な働き方を実現するための支援制度を拡充する。

 

(注)1.女性活躍推進法に基づき、行動計画、計画期間2023年4月1日~2025年3月31日の策定・届出を行い、取組みを進めている。

2.新たな行動計画として計画期間2025年4月1日~2028年3月31日の策定・届出を行い、自社の女性の活躍に関する状況について「女性の活躍推進企業データベース」で公表している。

 

 その他多様性の推進に関する2024年度の人材データは以下のとおりである。

多様性に関する数値(2024年度)

新規定期採用に占める女性労働者の割合

20.0

男性労働者の育児休暇取得率

110.0

女性管理職の割合

4.4

従業員に占める中途採用労働者の割合

28.5

 

※男性労働者の育児休暇取得率に関する補足説明

本数値は、育児・介護休業法に基づく算出方法(分母:雇用する男性労働者のうち、2024年度中に子供が生まれた者、分子:2024年度中に育児休業を取得した者)によるものである。前年度以前に生まれ、2024年度に育児休業を取得する者が含まれるため、取得率が100%を超えることがある。

なお、女性労働者で子供が生まれた者は全員、育児休業を取得している。

 

  ○人材の育成

当社は、豊富な知識と経験、高度な技術を持つ「人財」の育成に力を入れ、個々人が最大限の力を発揮できるような環境整備を進めており、全社員のマネジメントスキル向上を目的として、各階層に応じた継続的な教育研修を行っている。

 

  ○働き方改革への取組

当社は、生産性向上と時間外労働削減の両立、社員の健康増進の課題について労使一体となり取り組み、社員の働きやすさ、働きがい・満足度を高め、魅力ある会社・職場づくりを目指している。

このため、2020年度に「働き方改革推進課」(現ウェルビーイング推進課)を設置し、時間外労働時間の上限規制適用を視野に建設現場を中心とした働き方改革推進に取り組んできている。

また、ワークライフバランスの実現に向けた取り組みにも力を注ぎ、育児や介護などを行う従業員が安心して働き、仕事との両立ができるよう様々な支援制度を設けている。

 

働き方改革推進に関するデータの推移は以下のとおりである。

項目

2022年度

2023年度

2024年度

有給休暇取得率※

60.9%

62.0%

56.2

一人当たりの年平均総労働時間

2,036時間

2,063時間

2,022時間

※当該年度に付与された有給休暇の取得率

 

 

  ○健康経営

当社は、2021年8月に健康経営宣言を行い、2022年3月以降「健康経営優良法人」の認定を受けており、生活習慣病などの疾病予防のための運動指導など、社員の健康増進に関わる様々な取り組みを行っている。

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの事業に係るリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主な事項は、以下のようなものがある。
 これらはリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努めていく。
 なお、文中における将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものである。

(1) 市場及び事業に関するリスク

  ①建設市場の変動

当社グループは社会資本の整備・維持に係る事業を主なターゲットとしており、政府建設投資の規模やその重点投資分野の変動または、政府及び地方公共団体等の発注内容や発注時期の変動等により、業績に影響を及ぼす可能性がある。

このため、常に将来の需要動向をリサーチし、顧客のニーズ等への対応に注力することでシェアの拡大を図るとともに、必要に応じて人材・設備などの経営資源の適正配分を行うこととしている。また、得意とする「防災・減災」分野に加えて「維持補修」分野など今後有望視される市場への参入など、事業領域の拡大にも努めている。

 

  ②少子高齢化の進展等による担い手不足

少子高齢化が想定を超え進行しており、建設業界への就労人口の減少が一層深刻化していくことが予想されるなか、十分な担い手を確保できない場合には事業活動に支障をきたし、業績に影響を及ぼす可能性がある。

このため、中長期的な視点に立って経営・事業を支える人材を計画的に獲得するため新卒採用、中途採用を強化している。併せて、働き方改革をはじめ、多様な働き方に対応する制度などの充実を進め、「働きやすい」、「働きがいがあり・魅力のある安心して働くことができる会社」を目指し、人材の確保と離職防止対策としている。また、社員教育の充実を継続して検討し、一層の充実を図っている。(前記「2.サステナビリティに関する考え方及び取組」(3)人的資本・多様性に関する取組 参照)

また各事業部門においては、ICTの開発・利用促進を通じて担い手不足への対応も同時に進めている。

 

③建設資材・労務費等の価格変動・調達困難

建設資材価格・労務費等の急激な高騰により、工事原価の上昇を招く可能性があるが、これを請負代金に反映することが困難な場合には、業績に影響を及ぼす可能性がある。

このため、購買部門が工事の受注検討や施工計画の段階から参画し、適正な調達価格で安定した調達を図ることができるよう努めている。

 

  ④取引先の信用不安

当社グループは国及び地方自治体等から発注される公共事業を主なターゲットとしているが、受注形態(元請・下請区分)により契約先の顧客は50%強が民間建設会社となる。

従って、これらの会社が信用不安に陥り、債権の回収遅延や貸倒れが発生した場合には、業績に影響を及ぼす可能性がある。また、顧客のみならず協力業者や共同施工会社が信用不安に陥った場合にも、施工進捗の遅れや共同企業体メンバーからの出資債権の未回収、債務の負担から、業績に影響を及ぼす可能性がある。

このため、取引先の与信管理については、日常的には信用情報を収集し、受注にあたっては信用調査機関からの調査書を基に社内審査を徹底するとともに、ケースに応じて債権に保証を付保する等の手段を講じ、信用リスクの回避に努めている。

 

  ⑤製品の欠陥

品質管理には万全を期しているが、工事目的及び商品について契約不適合責任などにより多額の損害賠償請求等を受けた場合には、業績に影響を及ぼす可能性がある。

このため、品質マネジメントシステムにより事業活動における営業、設計、購買、施工の各段階で継続的改善を図るとともに、工法別作業マニュアルに基づき、工事現場での品質管理を徹底している。また、内部監査部門が適宜監査を実施することにより契約不適合発生の防止に努めている。

 

 

 

(2) 金融・政治・経済に関するリスク

  ①資金調達及び為替変動

金融危機が発生したり、急激な市場変動により業績が悪化した場合には、資金の調達に支障が出たり、調達コストが上昇し、業績に影響を及ぼす可能性がある。

このため、複数年度にわたるコミットメントライン契約を結ぶことなどにより、上記リスクが発生した場合でも、適正な手元流動性を確保し、財政状況の健全化を維持できるよう努めている。

また、海外取引から発生する為替変動リスクに対しては必要に応じて為替予約等によりリスクの低減に努めている。

 

   ②海外事業

当社グループは、主に東南アジア及び米国で事業を展開しているが、現地の政治・経済情勢、法規制に著しい変化が生じた場合や戦争・紛争・テロが発生した場合には、業績に影響を及ぼす可能性がある。

このため、危険度が高いとされている国、地域の工事の受注については、予め、リスクの評価・分析を行い、受注を決定している。

また、受注後においては、海外危機管理マニュアルに基づき、現地での医療リスクの回避やテロ・災害時の緊急避難体制について、危機管理会社への委託や海外安否確認システムを導入するなどにより、有事に備えた体制を構築し、社員ほか現地での従事者の安全を図っている。

 

(3) 事故・災害・環境問題に関するリスク

  ①事故及び災害

一般的に建設現場は、特定の期間に多様な会社の人材や機械が混在しながら作業するという特性から、他の産業に比べて事故及び災害の発生率が高いというリスクがあり、重大な事故及び災害が発生した場合には、工事の中断、発注官公庁からの指名停止等の行政処分に加えて社会的な評価の低下にもつながり、業績に影響を及ぼす可能性がある。

このため、安全部門が中心となり、安全週間等の運動、各拠点の安全衛生大会、本社幹部パトロール等、定期的な安全衛生環境活動の実施をはじめ、若手の段階から安全衛生教育・啓蒙活動を継続的に実施し、事故及び災害の発生防止に努めている。

 

  ②自然災害

大規模な自然災害の発生により施工中の工事目的物が被災し、その修復や作業中断による工期の延長等により相応の費用が発生した場合や、社会インフラや会社施設に甚大な被害が及び長期にわたり事業が中断した場合には、業績に影響を及ぼす可能性がある。

このため、後者に対しては事業継続計画を策定し、国からの災害時の基礎的事業継続力評価の認定を受けるとともに、非常時に事業の早期復旧を可能とする体制を整備し、定期的な訓練、備蓄や諸施設の耐震化、社内情報の外部データセンターへの保管などを行い、有事への備えを進めている。

 

③気候変動

脱炭素社会への移行に向けて、工事施工時に排出される温室効果ガス排出量の規制や炭素税が導入された場合、事業活動の抑制によるコスト増加等の業績への影響や、気候変動の物理的影響として、平均気温の上昇、気象災害の頻発、激甚化が継続した場合、事業活動に影響を及ぼす可能性がある。

このため、CO2排出量を2050年までに実質ゼロにすることを目指し、CO2削減に向けた技術開発、環境配慮船舶の建造・改造、省燃費運転の励行や燃費効率の高い建機・省エネ機器の採用及び、資機材の運搬距離の短縮・運搬方法の改善、施工工法の変更等に取り組んでいる。

またオフィス活動においても、自社保有施設を中心に使用電力について再生可能エネルギーを利用した電力へと移行する取組みを進めている。

なお、当社は、2023年2月に気候関連財務情報開示タスクフォース(以下TCFD)への賛同を表明し、気候変動課題への対応についてTCFDの提言に則った開示を行っている。

(前記「2.サステナビリティに関する考え方及び取組」(2)気候変動に関する取組参照)

 

  ④感染症等

感染症(パンデミック)が発生し事業活動に制限を受ける事態となった場合には、受注の減少、工事進捗の遅れ、コスト上昇などにより業績に影響を及ぼす可能性がある。

当社グループでは、新型コロナウイルス等の感染症に対して、政府等のガイドライン運用はもちろん、自社の集団感染防止マニュアルを策定、運用し感染拡大を防止する体制を整備している。

工事現場を除くオフィス勤務者については、在宅勤務、時差出勤の推進など、感染リスク低減による社員の安全を確保しつつ事業を継続する体制としている。

また、工事現場においては、協力会社を含めた社員の安全を確保しつつ施工を継続する体制としているが、施工中の現場内で感染症が発生した場合には現場が長期にわたり中断するなどの影響を受けることから、感染症対策の徹底を図った施工体制としている。

 

(4) 法的規制及び法令違反等に関するリスク

当社グループの事業は、建設業法、労働安全衛生法等多数の法的規制を受けているが、これらの法律の改廃、法的規制の新設、適用基準の変更等がなされた場合、業績に影響を及ぼす可能性がある。

このため、関係部署による法改正等の動向をモニタリングし、事前に法改正等に向けた対応方針の策定と当社グループとサプライチェーンへの具体策の展開に向けた体制を整備している。

また、法令等の改廃に伴う各種要領やマニュアルの整備と定期的な見直しを行い、説明会等を通じ当社グループ及び協力会社への浸透を図っている。万一これらの法令等に違反する事態が発生した場合は、業績に影響を及ぼす可能性がある。

このため、法令遵守と企業倫理の追求を経営の最重要課題の一つと位置づけ、コンプライアンス体制の充実を図るとともに、関係法令の遵守と意識の向上を目的とした研修会を継続的に実施し、コンプライアンスマニュアルを作成、配布するなどにより教育、啓蒙活動を拡充している。また、当社グループ及び当社の協力会社の役員及び社員並びにこれらであった者を対象とした、外部窓口を有した実効性のある企業倫理ヘルプラインを設置し、法令遵守と企業倫理に関する通報、相談を適切に受付けることにより、法令等違反行為の早期発見と是正を図ることができる体制を整備している。

 

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものである。

 

(1) 財政状態の状況

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末と比べて8,901百万円増加し、64,148百万円となった。主に売上債権(受取手形・完成工事未収入金等)や設備投資による有形固定資産が増加したことなどによる

負債合計は、前連結会計年度末と比べて7,495百万円増加し、29,473百万円となった。主に仕入債務(電子記録債務は減少したものの、短期借入金や契約負債が増加したことなどによる。

純資産合計は、剰余金の配当により減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が増加したことで前連結会計年度末と比べて1,406百万円増加し、34,675百万円となった。

この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末と比べて6.1ポイント減少し、53.3%(前連結会計年度末59.4%)となった。当社は持続的な成長と経営の安定性を保つ観点から、成長投資や突発的なリスクへの備えとして、適正な株主資本の水準を維持することとしている。

 

(2) 経営成績の状況

 ①事業全体の状況

当期のわが国経済は、雇用・所得環境の改善や設備投資の持ち直しなど内需の一部に持ち直しの動きが見られるものの、全体として緩やかな回復にとどまっている。一方で、米国の通商政策による不透明感に加え、海外経済の一部での足踏みや中国経済の動向などが、わが国経済を下押しするリスクとなっており、依然として先行きに対する警戒が必要な状況が続いている。

建設業界においては、公共建設投資は、政府投資の増加が見込まれるなど、引き続き底堅く推移しており、民間建設投資は、企業の好調な業績や設備投資の持ち直しを背景に、堅調に推移している。 
 供給面では、建設資材価格等に落ち着きが見られるものの、人手不足や労務費の上昇に伴う建設コストの高止まりが続いており、収益面への影響には引き続き注意が必要となる。

当社グループの業績については、期首手持ち受注高は72,236百万円(前期比1.7%増)、受注高が72,276百万円(前期比4.5%増)と増加、売上高は69,557百万円前期比2.4%増)と増収となり、営業利益は3,177百万円前期比19.6%増)と増益となった。

経常利益は3,366百万円前期比14.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は2,202百万円前期比9.6%増)とそれぞれ増益となった。

 

②セグメント情報に記載された区分ごとの状況 

  (土木事業)

受注高は、28,655百万円前期比4.7%増)と増加し、売上高は、進捗遅れのあった大型工事の稼働が本格化し28,384百万円前期比9.1%増)と増収となった。利益面では、前期に採算悪化した工事の影響は残るものの559百万円セグメント利益(前期1,496百万円のセグメント損失)となった。

 

  (地盤改良事業)

受注高は、受注環境が良好な状況にあり、41,834百万円前期比8.5%増)と増加し、売上高は、下期の高稼働もあり、39,283百万円前期比0.3%増)と増収となった。利益面では、手持ち工事の採算性は良好を維持するものの、保有機械の修繕費が増加したこともあり、3,395百万円のセグメント利益(前期比16.4%減)となった。

 

  (ブロック事業)

受注高は、前期にあった大型案件向け型枠賃貸、商品販売の減少により、2,278百万円前期比42.5%減)と減少、売上高は、2,647百万円前期比23.4%減)と減収となった。利益面では、主力の型枠賃貸の減収が影響し、63百万円のセグメント利益(前期比11.2%減)となった。

 

 

  ③受注高・売上高・営業利益又は営業損失(△)

 

(単位:百万円)

年 度 別

前連結会計年度

当連結会計年度

 

2023年4月1日

2024年4月1日

比 較 増 減

2024年3月31日

2025年3月31日

 

期首手持ち

受注高

土木事業

55,120

56,477

1,357

地盤改良事業

16,338

15,763

△574

ブロック事業

169

677

509

全社計

71,023

72,236

1,212

受注高

土木事業

27,374

28,655

1,281

地盤改良事業

38,563

41,834

3,271

ブロック事業

3,962

2,278

△1,683

全社計

69,191

72,276

3,085

売上高

土木事業

26,017

28,384

2,367

地盤改良事業

39,149

39,283

134

ブロック事業

3,453

2,647

△806

全社計

67,947

69,557

1,609

営業利益又は営業損失(△)

土木事業

△1,496

559

2,055

地盤改良事業

4,060

3,395

△664

ブロック事業

70

63

△8

全社計

2,656

3,177

521

次期繰越

受注高

土木事業

56,477

56,748

271

地盤改良事業

15,752

18,315

2,563

ブロック事業

677

309

△368

全社計

72,267

74,955

2,688

 

※1 全社計には3セグメント以外のその他事業及び連結調整が含まれるため、3セグメントの合算値と全社計は一致していない。

  2 当連結会計年度前に外貨建てで受注した海外工事で、当連結会計年度中の為替変動により、外貨額を円貨に換算した金額が増減した場合については、期首手持ち受注高に反映している。

 3 受注高、売上高については、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載している。

 4 売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の売上高及びその割合は次のとおりである。   

相  手  先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

国土交通省

8,550

12.6

7,797

11.2

 

 

 

(3) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権及び契約資産の増加があったものの、税金等調整前当期純利益や減価償却費の計上などにより621百万円の収入超過(前連結会計年度は7,065百万円の収入超過)となった。

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得などにより6,500百万円の支出超過(前連結会計年度は3,626百万円の支出超過)となった。

財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払による減少があったものの、長期借入金や短期借入金の増加などにより5,334百万円の収入超過(前連結会計年度は2,256百万円の支出超過)となった。

以上より、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末と比べて576百万円減少し、10,379百万円となった。

 

(4) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの資金需要のうち主なものは、土木事業での工事資金や地盤改良及びブロック事業での船舶・機械、ブロック型枠等の設備投資資金である。これらの財源は自己資金及び金融機関からの借入により調達している。
  工事資金に対しては、工事立替金を対象とした特殊当座貸越契約や将来の成長投資や突発的なリスクへの備えとして、複数の金融機関とシンジケーション方式のコミットメントライン契約を締結しており、手元流動性と合わせて十分な資金の流動性を確保している。
 

(5) 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。

この連結財務諸表作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積り及び判断が行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されている。

重要な会計方針については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載している。

また、見積りにあたっては過去の経験やその時点の状況に応じて妥当と考えられる様々な要素に基づき行っているが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なることがある。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載している。

 

 

5 【重要な契約等】

当社は、財務上の特約が付された金銭消費貸借契約を締結している。

当該契約の内容等は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」の(連結貸借対照表関係)に記載しているため、記載を省略している。

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、各事業における独自の技術とノウハウを有する分野を中心に、研究開発活動を行っている。
 なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は882百万円である。

セグメントごとの内訳は、土木事業126百万円、地盤改良事業408百万円、ブロック事業35百万円、共通313百万円である。

 

(1) 総合技術研究所

総合技術研究所は,当期に事業本部から独立した組織として再編された。各事業に直結した研究・開発を効率的かつ効果的に実施する研究開発室(第一,第二,第三研究開発グループ)並びに新たな事業の探索を担う技術戦略室(技術戦略グループ,知的財産戦略グループ)が設けられた。

研究開発室においては,主に各事業本部より委託された研究テーマを遂行し,技術戦略室においては,研究開発全体の戦略立案および新規事業に係る企画・開発を行っている。

当連結会計年度は,事業本部から委託された計24テーマの研究開発を進めるとともに,対外論文を20編執筆し,特許出願を10件行った。

地域連携を深める一環として,研究所が位置する土浦市の小学校に出前事業に赴いた。また,土浦市と災害協定を結び,災害時に被災者をペット同伴で受け入れることとした。

 

(2) 土木事業

当分野では、環境修復技術及び土木施工技術について研究開発活動を行っている。

 

①環境修復技術

ふっ素汚染土壌の原位置対策として、反応性を高めた不溶化剤の開発に取り組んでいる。あわせて、当社の独自技術である土壌還元法の改善に向けて、対象となるVOCs(揮発性有機化合物)の分解が長期間にわたって有効に働く徐放性栄養剤(一部に食品廃棄物を含む)の開発も進めている。また、今後の大規模な市場展開が見込まれる自然由来の重金属(砒素、ふっ素、鉛)を含む汚染土壌に対する処理技術の開発を継続的に進めている。さらに、全国的に問題となっている有機フッ素化合物PFASPFOSPFOA)についても、汚染地下水および土壌の浄化技術の開発に取り組んでいる。

②土木施工技術

国土交通省が推進するi-Constructionとデジタルトランスフォーメーションに対応し、ICT施工の研究開発とデジタルデータの活用を推進している。海上施工分野においては、浚渫工、基礎工、消波工に対応するICT施工支援システムを開発し、新たに建造した浚渫兼起重機船(押航式)「FT400」に搭載した。さらに、同船にはAI航行支援システムと接舷支援システムを開発・搭載し、安全性と生産性の向上を図っている。陸上施工分野では、盛土の締固め機械に関する自律制御・協調制御、並びに自動操縦等のプロジェクトに参画し、施工における生産性や品質の向上、そしてデータ連携の自動化に取り組んでいる。また、3Dレーザー測量やフォトグラメトリにより取得した3次元点群データを出来形管理や水中構造物の点検に活用する手法の開発を進めるとともに、LiDARによる3Dレーザー測量の効率化にも注力している。

 

(3) 地盤改良事業

当分野では、砂杭系や固化処理系等の地盤改良工法について、ICTを活用した生産性向上や環境対策などの付加価値向上、コスト削減による競争力強化、さらにカーボンニュートラルといった時代のニーズに応じた視点から研究開発活動を行っている。

具体的には、総合技術研究所内に整備した多目的試験フィールドや材料化学実験棟などを活用し、種々の工法開発を進めている。

ICTを活用した地盤改良技術の実用化と施工管理の効率化に向けた取り組みを継続している。自動打設システム「GeoPilot-AutoPile®(ジオパイロット・オートパイル)」については、これまでの開発成果が評価され、第26回国土技術開発賞を受賞したほか、国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)にも登録された。今後は、現場でのさらなる活用に向けて、機能や運用面の改善を進めていく。また、小型地盤改良機の遠隔操作技術については、4月のプレス発表後に実際の施工現場での運用を行い、関係機関を招いた見学会も実施するなど、導入に向けた取り組みを進めている。さらに、リアルタイム施工管理システム「Visios®(ビジオス)-3D」では、画面構成の見直しや操作性の向上に加え、機能の拡充を図ることで、現場での活用の幅を広げている。これらの取り組みを通じて、施工現場における作業の省力化や品質の安定化を目指し、今後も現場ニーズに応じた技術開発を進めていく。

液状化対策として実績の多いサンドコンパクションパイル(SCP)工法を進化させた、バイオマス混合材料をSCP工法の中詰め材料に適用するバイオマスCP®工法を開発した。この工法は、空気中のCO2を吸収した竹をチップ化して中詰め材料に適用することで、砂地盤の液状化対策と炭素貯留、さらに放置竹林の問題を同時に解決できることが期待される。本工法は、地盤改良と同時に地中に炭素を貯蔵する「ネガティブエミッション技術」として第32回地球環境大賞「奨励賞」を受賞した。今後は、本工法の事業化に向けた取組みを進めていく。

脱炭素社会の実現に向けた新たな地盤改良工法の開発を進めている。砂杭系の工法では②で紹介したバイオマスCP®工法に加え、建設現場で発生する土(建設発生土)を地盤改良工事に活用する技術「リソイルPro®工法」を開発し全国展開を進めている。この工法は、新たな材料供給システムを装備することで、建設発生土を改質せずに地盤改良材として利用できる範囲を拡大した。従来の機械と比較してCO2排出量を最大約50%削減し、トータルコストを最大約30%低減できるほか、材料や発生土の運搬・処分に関わる環境負荷や自然材料の採掘による環境負荷も低減できる。また固化処理系の工法においては、製造時のCO2排出量が多いセメントについて、現場での使用量を削減する技術開発にも着手している。

 

(4) ブロック事業

当分野では、全国的に既設ブロックの老朽化が進んでいること、および最近の激甚災害への新たな対応として、ドローン等で撮影したデータを用いた消波ブロックの効率的な維持管理方法の検討を行ってきたが、79期は、デジタル技術の活用により消波工の維持管理における一連のプロセスを効率的に実施することを目指し、「消波工維持管理デジタルシステム」の構築および高度化を推し進めた。また、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みとして、環境配慮型コンクリート技術の開発およびブルーカーボン生態系の創出へ向けた技術開発を行っている。

    ①ICT技術を活用した消波工維持管理デジタルシステムの構築・高度化

 VRなどを用いたブロック据付シミュレーションの機能を拡張し、現実に近いワイヤーによる据付を再現可能とするとともに、要素技術の深化、統合を行った。据付シミュレーションは、当社ブロックの技術提案に活用しており、最近ではこのシミュレーションにより定めた個々の据付ブロックの重心の座標を発注図書に記載した据付工事が発注されるようになってきている。

カーボンニュートラルの実現に向けた取り組み

 脱炭素社会の実現に向けて、地域で発生する副産物を有効利用した低炭素材料やCCU材料を用いたコンクリートのブロックへの適用開発を実施している。また、CO2の削減方策として「ブルーカーボン」に注目し、藻類の生長に必要な栄養塩を供給する素材の改良・開発、魚類等による食害から海藻を護る食害防御材の開発、製品化、当社ブロック製品に着生した海藻類を調査し、ブロック単体または群体としてのCO2固定量を明らかにする取り組みを行っている。更に、「資源あふれる豊かで持続可能な瀬戸内海創生拠点」、「大阪・関西万博会場周辺海域におけるブルーカーボン生態系の創出」、「カルシア浅場における藻場造成促進方法の実証研究」などのブルーカーボンに関わるプロジェクトに参画した。第80期以降も継続して調査研究を行う。