第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)会社の経営の基本方針

 当社グループは創業以来、「新たな価値に挑戦し、創造し続ける」の経営理念のもと、常に時代の最先端技術に挑戦し建設業にあって特殊土木という独自の企業分野を創造してまいりました。これからも引き続き、新たな事業領域への挑戦や新技術の開発などを通じ、人々が安心して生活することができる国土の形成に尽力してまいります。

 また同時に、株主やお客さま、社員をはじめ全てのステークホルダーの皆さまから信頼される企業であり続けるために誠実で健全な企業経営に努めてまいります。

 

(2)目標とする経営指標

 当社グループは2025年5月14日に2025年度を初年度とする中期経営計画「Raito2027」を公表いたしました。本計画の最終年度である2027年度における経営数値目標は以下のとおりです。

 

〔目標とする経営指標〕

 

実績:2024年度(連結)

目標:2027年度(連結)

売上高

1,214億円

1,350億円

営業利益

128億円

155億円

ROE

11.1%

12.5%以上

DOE

5.2%

6.0%以上

配当性向

46.7%

50%以上

※ROE(自己資本純利益率)=親会社株主に帰属する当期純利益/((期首自己資本+期末自己資本)/2)

※DOE(株主資本配当率)=配当性向×ROE

 

(3)企業集団の対処すべき課題

 当社グループを取り巻く事業環境については、短期的には、当社のコア事業と親和性の高い「防災・減災」や「国土強靱化」を中心とした政府の建設投資が堅調に推移すると見込まれており、引き続き良好な受注環境が続くものと予想されます。一方で、中長期的には財政制約や人口減少を背景に、国内建設市場の縮小や競争の激化といったリスクも想定されます。

このような経営環境の変化に柔軟かつ的確に対応するため、当社は中期経営計画「Raito2027」を策定いたしました。

① 中長期ビジョン

 本計画の策定にあたっては、当社グループの経営理念である「新たな価値に挑戦し、創造し続ける」のもと、企業としてさらなる挑戦と成長を果たすべく、創業100周年を見据えた中長期ビジョンを定めました。

 中長期ビジョン「サステナブルな社会実現に向けて、人と技術の力で世界に貢献する」に掲げるとおり、当社が有する人財と技術の力を結集し、顧客および社会に対して持続的な価値提供を行うことを目指してまいります。

② 中期経営計画の基本方針

 中期経営計画「Raito2027」では、「技術×信頼×人財で、次世代の成長へ」を基本方針として掲げております。4つの重点テーマを軸に、コア事業である建設事業の深化に加え、将来を見据えた成長投資の推進と経営基盤の強化に取り組み、持続的な成長を支える体制の構築を図ってまいります。

 

③ 重点テーマ

 当社は中長期ビジョンの実現に向け、経営環境の変化を踏まえつつ、以下の4つの重点テーマを成長戦略の柱として定めております。

ⅰ)防災・減災分野におけるブランド力の確立と社会課題の解決

 当社が長年にわたり培ってきた防災・減災分野における実績と知見をもとに、業界のトップランナーとしてのブランドを確立し、事業活動を通じて社会課題の解決に貢献してまいります。

ⅱ)特殊土木分野における国内外でのプレゼンス拡大

 特殊土木分野における高度な技術力とノウハウを活かし、新技術の開発や難易度の高い工事への対応力を強化するとともに、国内外市場における存在感のさらなる向上を図ります。

ⅲ)成長分野および人財への積極的な投資

 将来の持続的成長に向け、成長分野への投資を加速するとともに、企業価値の源泉である人財への育成・確保を強化し、組織力の一層の向上を目指します。

ⅳ)成長投資と株主還元の両立

 積極的な成長投資とともに、最適な資本構成を追求し、持続的な株主還元の実現に努めることで、企業価値の中長期的な向上を図ってまいります。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループは「新たな価値に挑戦し、創造し続ける」の経営理念のもと、優れた技術・工法・サービスを通じて社会の課題を解決し、サステナブルな社会の構築に貢献することで、社会から必要とされる企業グループを目指しております。

 気候変動の進行や資源枯渇など様々な課題を抱える社会の一員として、事業を通じた環境保全の取り組みを始めとした事業の成長と社会への貢献を両立させる活動を行っております。

 文中の将来に関する事項は、当社グループが有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。

 

(1)ガバナンス

 当社では、サステナビリティへの取り組みを推進し、適切な情報共有や進捗管理を行うためのガバナンス体制を構築しております。サステナビリティ経営を推進する諸施策の立案・実施を行うサステナビリティ戦略部を設置し、取締役会や各種会議体と密接に連携することでサステナビリティ全般に対する管理・監督を行います。

 

a.サステナビリティ関連のリスク及び機会を評価・管理する上での経営者の役割

 サステナビリティに関わる基本方針や重要事項は代表取締役社長を議長とする経営会議において審議、決定されております。また、経営会議に報告・提案されたサステナビリティに関連するリスク及び機会の影響と対応について審議を行い、評価します。

 

b.サステナビリティ関連のリスク及び機会についての、取締役会による監視体制

 サステナビリティに関わる基本方針や重要事項、活動状況等について取締役会に適宜報告することにより取締役会の監督が適切に図られるよう体制を整えております。また、経営会議からサステナビリティに関連するリスク及び機会の影響と管理の状況、対応について報告を受け、監督を行います。

 

サステナビリティに関する体制は以下の図に示すとおりです。

 

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(2)戦略

 (サステナビリティ全般に関する開示)

 当社は、サステナビリティに関する取り組みが事業にとって重要な課題であると認識し、主要なビジネスである建設業を対象として、リスク及び機会を短期から長期の視点で特定し、その影響を評価しております。さらに、社会と当社が持続的に成長するための重要課題としてマテリアリティを特定しており、関連したリスク及び機会を特定し、その影響を評価しております。

 気候変動関連の代表的なリスクとしては「炭素税導入によるコストの増加」を想定しております。再生可能エネルギーの活用により施工時及び自社オフィスからのCO2排出量を削減することで対応していきます。気候変動関連の代表的な機会としては「防災・減災、国土強靭化のためのインフラ建設やメンテナンス、建物リニューアル工事の増加」を見込んでおります。インフラ建設や整備事業の営業活動を強化することで対応していきます。

 2026年3月期よりスタートする中期経営計画「Raito2027」では、基本方針として「技術×信頼×人財で、次世代の成長へ」を掲げています。この方針のもと、人財や成長分野への積極的な投資、DXや技術開発の推進を通じて、当社グループの持続的成長を支える成長投資を進めてまいります。

 また、「防災・減災分野のブランド力の確立と社会課題解決への貢献」を四大重点テーマの一つに掲げており、独自技術を活用した持続可能な社会の構築に貢献するとともに、社会課題の解決を通じた持続的成長を目指しております。

 さらに、中期経営計画においては、事業戦略を支える経営基盤の強化施策の一つとして「サステナビリティへの取り組み」を掲げております。6つのマテリアリティに対応する具体的施策および取り組む活動を定め、事業活動を通じた持続可能な社会の実現と、当社の持続的成長の両立を図ってまいります。

 なお、「サステナビリティへの取り組み」における施策は、以下のとおりです。

マテリアリティ

施策

中計期間の取り組み

持続可能な

環境配慮型社会の形成

・事業活動による環境負荷の低減

・GHG排出量の一層の削減

・環境に配慮した技術開発

・SBT認定取得

 

・産業廃棄物排出量の削減

安全・安心を支える

強靭な社会インフラの構築

・災害復旧で社会に貢献

・インフラの長寿命化に向けた補修工事の推進

・社会インフラ整備

 

・災害発生後の復旧・復興の推進

品質の確保と

技術革新の追求

・お客様の視点に立った技術の提供

・省人化・自動化技術の開発

・建設業の課題への対応技術の開発

・DXによる品質管理システム強化

・品質管理体制の強化

 

労働安全衛生管理の徹底

・労働安全衛生の管理

・多様な人財に向けた安全教育の推進

・リスクアセスメントの実施

・安全パトロールのさらなる充実

多様な人財の育成と

働きがいのある魅力的な

労働環境の実現

・人財の育成と活躍推進

・人財交流の活性化とエンゲージメント向上

・働きやすい労働環境の整備

 

・多様な人財の活躍推進

人権尊重と

公正な事業活動の推進

・人権の尊重

・サプライチェーンを含めた人権尊重への取り組み強化

・コンプライアンス推進

・リスクマネジメントの強化

・コンプライアンス教育の一層の充実

・ガバナンスの強化

 

 

 

 (人的資本に関する開示)

 当社グループは、「ライト工業グループ行動規範」において人権に対する基本的な考え方を示しているほか、当社グループにおける人権の尊重に関する考え方を明確にした「ライト工業グループ人権方針」を策定しております。

 また、社会と当社が持続的に成長するためのマテリアリティのうちの一つとして「多様な人財の育成と働きがいのある魅力的な労働環境の実現」を掲げており、優秀な人財の確保・育成による組織力の向上やダイバーシティの推進による新たな価値の創造を企業としての成長に向けた機会と捉え、様々な取り組みを行っております。

 

a.社内環境整備方針

 中核人材の登用等における多様性を確保するため、性別や国籍、中途採用者等の区別なく平等な教育機会の提供と公正公平な評価のもと、優秀な人材を積極的に管理職へ登用しております。

 また、人的資本戦略において『持続的成長のための「有為な人財の確保・育成、環境整備」』を基本方針とし、採用方針、育成・教育、評価と異動、女性活躍推進、健康経営の推進について定めております。女性活躍推進については、意欲・能力の高い女性の管理職昇進を後押しするため、女性の管理職者数をKPIとして設定しており、「(4)指標及び目標」に記載しております。

 

b.人材育成方針

 国籍・人種・性別などに関わらず、多様な価値観と広い視点で物事をとらえ、グローバルに活躍できる人材を育成するため、従業員の能力開発支援に取り組んでおります。

 これまで特に力を入れてきた資格取得支援に加え、今後は、現場や社員の意見なども踏まえ、育成・教育の方針を見直し、階層別研修に加え、必要とされるタイミングに合わせた教育についても行ってまいります。特に、経営戦略において力を入れている領域に関する教育を強化し、必要に応じ、外部との連携にさらに力を入れていきます。

 

 今後も経営理念に基づき「新たな価値に挑戦し、創造し続ける」企業としてあり続けるために多様な人材がその能力を最大限に発揮し、いきいきと活躍できる職場環境づくりに積極的に取り組んでまいります。

 

(3)リスク管理

 当社は、サステナビリティに関連するリスク及び機会を適切に識別・評価し管理することが重要であると認識しております。健全な財務構造や収益構造を維持し、サステナビリティに関連するリスクのような中長期で顕在化しうるリスクも適切にマネジメントすることで、企業価値の持続的な向上を図ります。

 サステナビリティへの取り組みを経営戦略と一体的に進めるために新設されたサステナビリティ戦略部は、サステナビリティに関連するリスク及び機会を特定・評価するプロセス、特定した影響を管理する仕組み、組織全体のリスク管理の中に統合する仕組みを含め、サステナビリティに関する企画・立案を行い、経営会議に報告・提案するとともに、全社的なサステナビリティに関連するリスクへの対応を推進します。また、特定したリスクの影響について、必要に応じて危機管理委員会へ報告・提言を行うことで、サステナビリティに関連するリスクの影響を全社リスクに統合する役割を担っております。

 経営会議は、報告・提案されたサステナビリティに関連するリスク及び機会の影響と対応について審議を行い、評価します。さらに、特定したリスクの最小化に向けた方針・戦略の策定、計画・予算・目標等への反映など、適応していくための審議・調整を行います。経営会議で審議・調整したリスク管理の状況と対応については、その他の審議事項とともに、必要に応じて取締役会に報告されます。

 危機管理委員会は、各リスク管理所管部署からの報告・提案を評価し、全社リスクの把握と適切な対応を審議し、経営会議に報告しておりますが、サステナビリティに関連するリスクの影響についての報告・提案があった場合も同様に、全社的なリスク管理の観点から適切な対応を決定します。

 取締役会は、経営会議からサステナビリティに関連するリスク管理の状況と対応について報告を受け、監督を行います。

 

 

機関・組織

機能・役割

取締役会

・サステナビリティに関連するリスクの管理の状況と対応について経営会議より報告を受け、監督を行う。

経営会議

・報告、提案されたサステナビリティに関連するリスク及び機会の影響と対応について審議を行い、評価する。

・識別されたリスクの最小化に向けた方針、戦略を策定し、計画や目標等への反映など、適応していくために審議・調整を行う。

・リスク管理の状況と対応、計画や目標等の進捗状況を取締役会に報告する。

危機管理委員会

・全社的なリスク管理の観点から適切な対応を決定し、経営会議に報告する。

サステナビリティ戦略部

・サステナビリティに関連するリスク及び機会を特定・評価するプロセスを企画し、経営会議に報告する。

・特定したリスクの影響を管理する仕組み、組織全体のリスク管理の中に統合する仕組みを企画し、経営会議に報告する。

・全社的なサステナビリティに関連するリスクへの対応を推進する。

・特定したリスクの影響について、必要に応じて危機管理委員会へ報告する。

 

 

(4)指標及び目標

 (サステナビリティ全般に関する開示)

 当社は、サステナビリティを重視した経営を行っており、事業活動に関わる様々な課題の中から、ステークホルダーにとって重要であると同時に、SDGsをはじめとした社会課題の解決と当社の持続的な成長を両立させるための重要な課題として2022年に6つのマテリアリティを特定しました。

 

当社のマテリアリティ

1. 持続可能な環境配慮型社会の形成

2. 安全・安心を支える強靭な社会インフラの構築

3. 品質の確保と技術革新の追求

4. 労働安全衛生管理の徹底

5. 多様な人財の育成と働きがいのある魅力的な労働環境の実現

6. 人権尊重と公正な事業活動の推進

 

 これらのマテリアリティのそれぞれに関して、事業活動における取り組みについてのKPIを策定し、KPIによるモニタリングとレビューを適宜行っております。

 気候変動関連の具体的なKPIとしては、以下の項目を設定しております。

1. 施工高あたりのCO2排出量削減率(2014年3月期比)

2. 環境修復工事の施工高

 施工高あたりのCO2排出量削減率(2014年3月期比)は、2030年3月期に50%削減を目標としております。環境修復工事の2025年3月期施工高は1,284百万円(連結)となっております。

 

 (人的資本に関する開示)

 マテリアリティの一つである「多様な人財の育成と働きがいのある魅力的な労働環境の実現」に向けて人財の確保・育成に向けた各種施策を行っており、施策の進捗を評価するために人的資本に関する方針と取り組みに係るKPIを策定し、モニタリングとレビューを適宜行っております。

 具体的なKPIとしては、以下の項目を設定しております。

1. 女性管理職社員数

2. 技術系女性社員比率

3. 作業所の4週8閉所実施率

4. 男性の育児休業等と育児目的休暇の取得率

5. 入社5年後離職率

 女性管理職社員数は15人以上を目標としており、2025年3月期の女性管理職社員数は18人(提出会社※)となっております。

 また、男性の育児休業等と育児目的休暇の取得率の実績(提出会社※)については『第1 企業の概況 5 従業員の状況』にて記載しております。

 

 今後も、KPIについては施策の内容に応じて定期的に見直しを行い、適切な内容を設定するとともに、組織全体として従業員とともに成長していく風土を築く活動を積極的に推進してまいります。

 

※当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われてはいないため、連結グループにおける記載が困難です。このため、実績及び目標は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

 

3【事業等のリスク】

 投資者の投資判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項および当社グループの経営戦略に関連する重要な潜在的リスクを以下に記載しております。ただし、これらは当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、記載された事項以外の予見しがたいリスクも存在します。また、本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は本有価証券報告書提出日現在において判断したものです。

(1)外部環境に関するリスク

① 国内公共事業の削減による官公庁発注工事の減少

 当社グループの事業量は、全体の約7割程度を国内公共事業に依存しているため、国および地方自治体の公共事業予算の動向に影響を受けます。当社グループは、民間発注工事への営業活動の強化や海外事業を伸長することで、国および地方自治体等による公共投資予算削減によるリスクの軽減を図ってまいりますが、一般に想定される規模を超えて削減された場合には、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

② 競争環境の激化

 当社グループを取り巻く受注環境は、大都市部での再開発事業や政府による防災・減災対策などを中心に良好な状況が続いております。その一方で、中長期的には財政的な制約や人口の減少を背景として、主たるターゲット市場である国内建設市場は縮小傾向で推移し、今後競争環境が激化する可能性があります。このような状況に備え、今後も引き続き顧客ニーズ等への対応に注力し、付加価値の創造とシェアの拡大を図ってまいりますが、これらの取り組みが想定通りの成果をあげられない場合や、革新的・画期的な技術・工法を展開する競合他社や新規参入者の出現、過度の価格競争が起こった場合には、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

③ 建設技能労働者の慢性的不足

 建設業全体に関わるリスクとして、少子高齢化に伴う建設技能労働者の不足があげられます。このような状況のもと当社グループは、将来を見据え、建設技能労働者の慢性的な不足に対応するために、生産性向上を可能とするための省人化技術の開発や新規入職者の増加に向けた取り組みに注力しております。しかしながら、現時点では将来的な建設技能労働者の不足を完全に克服できる保証はありません。建設技能労働者の不足と、それに起因する生産能力の減退や労務単価の急激な上昇が生じた場合には、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2)事業拡大に伴うリスク

① M&A(買収)を含む直接的事業投資

 当社グループは、2025年度を初年度とする中期経営計画「Raito2027」において、「技術×信頼×人財で、次世代の成長へ」を基本方針として掲げており、その一環としてM&A(買収)を含む国内外への直接的事業投資等の成長投資を積極的に行ってまいります。これらの投資は当社グループの持続的成長に資するとともに、将来においても安定的かつ更なる利益貢献をするものと考えておりますが、かかる投資が期待されるリターンをもたらすという保証はありません。特にM&A(買収)を行う際には、対象企業の財務や税務、法務などについて詳細なデューデリジェンスを行い、可能な限りM&A(買収)によるリスクを回避するように努めますが、M&A(買収)後に偶発債務の発生や未認識債務が判明する可能性もあり、リスクを完全に取り除くことは困難です。その他にも、M&A(買収)に伴いのれんを計上した場合、対象会社の業績の悪化等により減損の兆候が生じ、その将来的な効果である回収可能価額がのれんの帳簿価額を下回る場合には、のれんの減損処理を行う必要があるなど、M&A(買収)後に起こり得るリスクは複数存在します。それらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、合弁事業や業務提携の展開においても、パートナーとなる対象企業について、業績や財政状態等についての詳細な調査に加えて、将来の事業契約やシナジー効果について事前に議論することによって可能な限りリスクを回避するように努めてまいりますが、合弁事業開始後または業務提携後に双方の経営方針に相違が生じ、意図していたシナジー効果が得られないといった可能性も否定できません。この場合においても、投資金の回収が困難となる可能性や当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

② 海外事業の伸長

 当社グループは、海外市場において内部成長とM&A戦略の両面を通じて、中長期的に海外事業の拡大を図っております。米国や東南アジアを主として複数の国で事業を展開していることから、各国の政治・経済・社会情勢などの変化に起因する予期せぬカントリーリスクが発生した場合、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(3)人財に関するリスク

 当社グループの事業運営上、施工管理に関連して法律上要求される国家資格などの各種資格を有していることに加え、土木工事・建築工事分野において高い専門性を有する人財が欠かせません。引き続き、優秀な人財の確保・育成に努めてまいりますが、人財獲得の競争環境は今後ますます激化していくものと予想されます。また、業務に必要な資格を取得するまでに、ある程度の期間を要することから、想定する施工管理人員の確保ができない場合や高い専門性を有する優秀な人財が社外に流出した場合には、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(4)施工品質に関するリスク

 当社グループは、品質マネジメントシステムの運用や各現場での施工段階における自主的な確認検査の実施など施工品質には万全を期しておりますが、重大な瑕疵による損害賠償請求等を受けた場合には、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(5)労働災害および事故の発生に関するリスク

 当社グループは、安全衛生管理計画を策定し、安全教育や現場パトロールなど災害防止活動に注力しておりますが、万一、労働災害や公衆災害など重大な事故が発生した場合、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(6)法的規制・訴訟に関するリスク

① 法的規制の新設・変更

 当社グループは、建設業法及び建築基準法をはじめとする様々な法的規制の中で事業を行っております。これらの規制の新設または変更があった場合、その内容によっては、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

② 訴訟リスク

 当社グループは、事業活動に関して各種の訴訟に巻き込まれるおそれがあり、これらが当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。訴訟の結果が、当社グループにとって望ましくない結果になった場合には、引当金の計上や損害賠償請求を受けるなど、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(7)自然災害等に関するリスク

 大規模な自然災害や紛争、テロ攻撃、感染症の拡大(パンデミック)等が発生した場合、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクに備え、事業継続計画(BCP)等の有事の際の対応策を策定しておりますが、想定を超える規模の災害等が発生した場合には、事業の運営に著しく支障をきたす可能性があります。

(8)情報セキュリティに関するリスク

 当社グループは、事業活動を通じて個人情報、技術情報などの機密情報を取り扱っており、役職員の情報機器や可搬媒体等の紛失・盗難、情報機器のマルウェア感染、または外部からのサイバー攻撃によって、情報漏洩や業務停滞などを引き起こす可能性があり、結果的に社会的な信用低下、損害賠償の発生、当社グループの業績低下等のリスクがあります。これらのリスクに対応するために、情報セキュリティポリシー・セキュリティ諸規程の整備や、高度なセキュリティソリューション導入・情報機器の暗号化などの技術的対策、役職員向けの情報セキュリティ教育などの啓蒙活動を実施しております。さらにサイバーセキュリティ経営ガイドライン(経済産業省・IPA発行)に基づいた監査及び対策を推進しており、万が一被害が発生した場合は、予め定めている危機管理体制・手順に沿って迅速な対応を図ります。

 

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度におけるわが国経済は、一部に足踏みが見られるものの、雇用・所得環境や企業収益の改善を背景に緩やかな回復が続きました。一方で、円安基調の継続や物価上昇、米国の関税政策転換による世界経済の減速など、わが国の景気を下押しするリスクもあり、先行きについては依然不透明な状況が続いております。

 建設業界においては、堅調な企業収益を背景に、設備投資を中心とした民間非住宅建設投資が堅調に推移しています。また、防災・減災、国土強靭化及び将来を見据えたインフラ老朽化対策を主軸とする政府建設投資も高水準で推移しており、引き続き良好な受注環境が続いています。

 このような状況のもと、当社グループの経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.経営成績

 当連結会計年度の経営成績は、受注高につきましては、当社専業土木分野及び建築分野ともに前年を上回り堅調に推移したことにより、1,319億1千万円(前期比4.2%増)となりました。

 売上高は、当社及び米国子会社において施工高が増加したことにより、1,214億5千7百万円(前期比3.5%増)となりました。

 利益面では、売上高の増加に加え、連結子会社において採算性が向上したことにより、売上総利益は250億9千7百万円(前期比8.1%増)となりました。

 営業利益、経常利益につきましては、売上総利益が増加したことにより、各々、128億1千1百万円(前期比13.9%増)、131億6千9百万円(前期比13.4%増)となりました。

 親会社株主に帰属する当期純利益は、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」における当社方針に基づき、賃貸等不動産や政策保有株式の一部を売却したことにより、99億1千9百万円(前期比21.2%増)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

「建設事業」

 建設事業の受注高は、1,319億1千万円(前期比4.2%増)、売上高は1,211億7千万円(前期比3.5%増)となりました。

 

 また、主な工事種目別の状況は下記のとおりであります。

 

① 斜面・法面対策工事

 受注高は、能登半島地震の応急復旧工事の受注が増加したことにより、403億1千万円(前期比10.3%増)となりました。

 売上高は、能登半島地震の応急復旧工事の売上が増加したことにより、347億6百万円(前期比2.3%増)となりました。

 

② 基礎・地盤改良工事

 受注高は、道路分野における大型地盤改良工事の受注の反動減により、532億9千3百万円(前期比5.3%減)となりました。

 売上高は、米国子会社において前期に受注した大型地盤改良工事の施工が順調に進捗したことにより、524億8千7百万円(前期比4.8%増)となりました。

③ 補修・補強工事

 受注高は、高速道路会社発注の橋梁補修工事を複数件受注したことにより、96億8千5百万円(前期比21.1%増)となりました。

 売上高は、前期に受注した国土交通省発注の橋梁補修工事の売上が増加したことにより、96億5千6百万円(前期比12.7%増)となりました。

 

④ 環境修復工事

 受注高は、民間発注の土壌汚染対策工事の受注が増加したことにより、21億8千8百万円(前期比171.9%増)となりました。

 売上高は、前期に受注した民間発注の土壌汚染対策工事の売上が減少したことにより、12億8千4百万円(前期比49.6%減)となりました。

 

⑤ 建築工事

 受注高は、首都圏におけるマンション建築工事の受注が増加したことにより、214億2千6百万円(前期比19.1%増)となりました。

 売上高は、連結子会社においてマンション建築工事の売上が減少したことにより、164億6千3百万円(前期比0.0%減)となりました。

 

⑥ 一般土木・その他工事

 受注高は、連結子会社において一般土木工事の受注が減少したことにより、50億6百万円(前期比27.9%減)となりました。

 売上高は、連結子会社において一般土木工事の売上が増加したことにより、65億7千2百万円(前期比21.6%増)となりました。

 

「その他」

 その他の売上高は、2億8千6百万円(前期比6.0%減)となりました。

 なお、「その他」の区分は報告セグメントに含まれない事業セグメントであり、商品・資材販売事業、リース事業及び訪問介護事業等を含んでおります。事業の性質上、受注生産は行っておりません。

 

b.財政状態
 当連結会計年度の資産につきましては、前連結会計年度末に比べ22億3千7百万円減少し、1,222億9百万円となりました。負債につきましては、前連結会計年度末に比べ1億8千2百万円増加し、335億3千4百万円となりました。その結果、純資産につきましては、前連結会計年度末に比べ24億1千9百万円減少し、886億7千4百万円となりました。

 

c.キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物は、株主還元や資本効率の向上を目的とした自己株式の取得を行ったことにより、前連結会計年度に比べ39億8千6百万円減少し、309億4千7百万円となりました。

 

(2)生産、受注及び販売の実績

 

a.受注実績

セグメントの名称

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

受注高

(百万円)

次期繰越工事高

(百万円)

受注高

(百万円)

次期繰越工事高

(百万円)

建設事業

 

126,568

76,455

131,910

87,195

斜面・法面対策工事

 

36,535

16,111

40,310

21,920

基礎・地盤改良工事

 

56,297

32,618

53,293

33,290

補修・補強工事

 

7,999

7,112

9,685

7,336

環境修復工事

 

804

713

2,188

1,617

一般土木工事

 

5,576

3,233

3,601

1,649

建築工事

 

17,988

16,082

21,426

21,044

その他工事

 

1,366

584

1,405

336

合計

126,568

76,455

131,910

87,195

 (注)当社グループでは、建設事業以外は受注生産を行っておりません。

 

b.売上実績

セグメントの名称

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

構成比(%)

建設事業

 

117,019

99.7

121,170

99.8

斜面・法面対策工事

 

33,922

28.9

34,706

28.6

基礎・地盤改良工事

 

50,103

42.7

52,487

43.2

補修・補強工事

 

8,571

7.3

9,656

8.0

環境修復工事

 

2,550

2.2

1,284

1.1

一般土木工事

 

4,138

3.5

4,980

4.1

建築工事

 

16,469

14.0

16,463

13.6

その他工事

 

1,264

1.1

1,592

1.3

その他

305

0.3

286

0.2

合計

117,324

100.0

121,457

100.0

 (注)1 セグメント間での取引については相殺消去しております。

2 当社グループでは、生産実績を定義することが困難であるため「生産の状況」は記載しておりません。

 

 なお、参考のため提出会社単独の事業の状況は次のとおりであります。

建設事業における受注工事高及び施工高の状況

① 受注工事高、完成工事高、繰越工事高及び施工高

期別

工種別

前期繰越工事高

(百万円)

当期受注工事高

(百万円)

(百万円)

当期完成工事高

(百万円)

次期繰越工事高

当期施工高

(百万円)

手持工事高(百万円)

うち施工高

(%、百万円)

前事業年度

 

自2023年4月1日

至2024年3月31日

斜面・法面対策工事

11,681

32,578

44,260

29,918

14,341

1.0

145

29,714

基礎・地盤改良工事

19,145

45,129

64,274

40,659

23,614

0.8

196

40,746

補修・補強工事

7,455

7,528

14,984

8,091

6,893

1.5

100

8,043

環境修復工事

2,458

804

3,263

2,550

713

△1.8

△12

2,515

一般土木工事

613

1,294

1,908

1,236

671

8.0

53

1,270

建築工事

13,461

15,545

29,006

14,524

14,482

0.0

0

14,503

その他工事

375

1,260

1,635

1,085

550

36.8

202

1,160

合計

55,190

104,143

159,333

98,065

61,267

1.1

686

97,953

当事業年度

 

自2024年4月1日

至2025年3月31日

斜面・法面対策工事

14,585

36,250

50,835

30,796

20,038

1.6

327

30,940

基礎・地盤改良工事

23,479

43,761

67,241

42,637

24,603

1.1

277

42,642

補修・補強工事

7,088

9,174

16,262

9,036

7,225

1.0

70

9,003

環境修復工事

713

2,188

2,902

1,284

1,617

△0.8

△13

1,284

一般土木工事

395

568

963

850

113

31.9

36

844

建築工事

14,482

18,804

33,287

15,158

18,128

△0.2

△30

15,127

その他工事

523

1,342

1,866

1,539

326

19.3

62

1,505

合計

61,267

112,090

173,358

101,304

72,053

1.0

731

101,349

 (注)1 前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含みます。したがって、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれます。

2 次期繰越工事高の施工高は、手持工事高の工事進捗部分であります。

3 次期繰越工事高は(前期繰越工事高+当期受注工事高-当期完成工事高)に一致しております。

4 前期繰越工事高は、期中に工種の変更が生じた場合、工種分類を組替えております。したがって、総額に変更はありませんが、前期末時点の内訳と異なる場合があります。

 

 

② 売上高

期別

区分

官公庁(百万円)

民間(百万円)

合計(百万円)

 

 

前事業年度

 

自2023年

4月1日

至2024年

3月31日

 

 

 

 

斜面・法面対策工事

24,376

5,542

29,918

基礎・地盤改良工事

33,346

7,312

40,659

補修・補強工事

6,760

1,331

8,091

環境修復工事

2,550

2,550

一般土木工事

1,036

199

1,236

建築工事

14,524

14,524

その他工事

1,056

28

1,085

66,576

31,489

98,065

 

 

当事業年度

 

自2024年

4月1日

至2025年

3月31日

 

 

 

 

斜面・法面対策工事

24,768

6,028

30,796

基礎・地盤改良工事

35,089

7,547

42,637

補修・補強工事

7,499

1,536

9,036

環境修復工事

1,284

1,284

一般土木工事

834

15

850

建築工事

566

14,592

15,158

その他工事

1,983

△443

1,539

70,743

30,561

101,304

 (注)1 官公庁には、当社が建設業者から下請として受注したものを含みます。

2 完成工事のうち主なものは、次のとおりであります。

前事業年度 請負金額    1,000百万円以上の主なもの。

(発注者)

 

(工事名)

中日本高速道路㈱

 

新湘南バイパス下町屋高架橋北耐震補強工事

中日本高速道路㈱

 

東名高速道路(特定更新等)静岡IC~焼津IC間小坂地区グラウンドアンカー補修工事

国土交通省

 

令和2年度福岡空港滑走路外地盤改良工事

中日本高速道路㈱

 

新名神高速道路 桑名管内のり面補強工事(2020年度)

MIRARTHホールディングス㈱

 

(仮称)レーベン府中若松町新築工事

 

当事業年度 請負金額         400百万円以上の主なもの。

(発注者)

 

(工事名)

中日本高速道路㈱

 

東名高速道路(特定更新等)大井松田IC~御殿場IC間(左ルート)切土のり面補強工事

中日本高速道路㈱

 

東名阪自動車道 四日市IC~亀山IC間コンクリート構造物補修工事(2022年度)

JR東海旅客鉄道㈱

 

中央新幹線名古屋駅(中央東工区)(2)

㈱コスモイニシア

 

(仮称)浦安当代島1丁目共同住宅新築工事

国土交通省

 

東北中央自動車道 大柳地区法面災害復旧工事

 

 

③ 手持工事高(2025年3月31日現在)

区分

官公庁(百万円)

民間(百万円)

合計(百万円)

斜面・法面対策工事

14,849

5,189

20,038

基礎・地盤改良工事

19,560

5,043

24,603

補修・補強工事

7,162

63

7,225

環境修復工事

1,617

1,617

一般土木工事

113

113

建築工事

101

18,027

18,128

その他工事

202

123

326

41,989

30,064

72,053

 (注)1 官公庁には、当社が建設業者から下請として受注したものを含みます。

2 手持工事の内請負金額500百万円以上の主なものは、次のとおりであります。

(発注者)

 

(工事名)

 

(完工予定年月)

シンガポール陸上交通庁

 

ノースサウスコリドー高速道路N109A工区地盤改良工事

 

 2026年3月

西日本高速道路㈱

 

新名神高速道路城陽工事に伴う地盤改良工事

 

 2025年10月

西日本高速道路㈱

 

令和4年度 山陽自動車道 広島高速道路事務所管内橋梁補修工事

 

 2025年9月

MIRARTHホールディングス㈱

 

(仮称)レーベン和光Ⅱ新築工事

 

 2026年1月

中日本高速道路㈱

 

新名神高速道路 四日市JCT~新四日市JCT間(下り線)切土のり面補強工事(2023年度)

 

 2025年11月

 

 

(3)経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 

a.重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際と異なる可能性があります。

 連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載の通りであります。

 

b.経営成績及び経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当連結会計年度は2022年度から2024年度までの3ヵ年にわたるライト工業グループ中期経営計画「Raito2024」の最終年度を迎えました。本計画における目標と実績は以下のとおりです。

 

●中期経営計画「Raito2024」(2022~2024年度)

経営数値目標値と最終年度実績

 

連結

目標

実績

達成率

売上高

1,200億円

1,214億円

101.2%

営業利益

135億円

128億円

94.9%

ROE

10.0%以上

11.1%

配当性向

35.0%以上

46.7%

 

また、当社グループは2025年5月14日に2025年度を初年度とする新中期経営計画「Raito2027」を公表しました。本計画の最終年度である2027年度における経営数値目標は以下のとおりです。

●新中期経営計画「Raito2027」(2025~2027年度)

最終年度の経営数値目標

 

2027年度目標値

連結

売上高

1,350億円

営業利益

155億円

ROE

12.5%以上

DOE

6.0%以上

配当性向

50.0%以上

 

 当連結会計年度の売上高は、1,214億円(前期比3.5%増)で過去最高の売上高を更新し、売上高は中期経営計画(2022~2024年度)の目標値である1,200億円を上回り達成することができました。達成の要因といたしましては、良好な受注環境を背景とした国内土木・建築分野の着実な成長と北米を中心とした海外事業の業績拡大が主な要因です。

 2025年度を初年度とする新中期経営計画「Raito2027」(以下、「新中期経営計画」)では、連結売上高1,350億円を新たな目標として掲げました。市場性のあるインフラ老朽化対策の補修・補強分野や建築リニューアル事業などに注力するとともに、法面や地盤改良といった当社コア事業においても、ICT・DX技術の積極導入により施工効率を高めることで更なる深化を目指し、補修・補強分野、建築設計分野及び海外現地企業など、当社の事業とシナジーのある企業をM&Aにより取り込むことで、人財確保と事業規模拡大を図っていきます。

 

 連結営業利益は、128億円(前期比13.9%増)となり、中期経営計画(2022~2024年度)の目標値である135億円に対して7億円下回り未達となりました。連結売上高は目標を上回って成長したものの、資機材価格・労務価格の高騰に対する価格転嫁が遅れたことや、ベースアップや調査研究費を中心に一般管理費が想定以上に増加したことなどにより、目標であった連結営業利益135億円を下回る結果となりました。

 新中期経営計画では、連結営業利益155億円を新たな目標としました。今後も資機材や労務費の高騰が続くと予想されますが、ICT・DXの活用による施工効率向上や、高付加価値案件の選別受注、コスト管理の徹底により、収益性の向上を図るとともに、建設コスト上昇にも柔軟に対応できる競争力ある施工体制の構築を目指してまいります。

 

 ROEにつきましては、中期経営計画(2022~2024年度)の目標値10.0%以上に対して11.1%の実績となり目標を達成することができました。剰余金の配当を継続的に増配し、また資本効率の向上のための自己株式取得を実施するなど積極的に施策を講じたことが要因であったと考えております。

 新中期経営計画ではROE12.5%以上を新たな目標としました。財務の安定性を確保しつつ、収益性の強化と総資産回転率の改善に努め、ROE12.5%以上の達成を目指します。

 

 配当性向につきましては、中期経営計画(2022~2024年度)の目標値35.0%以上に対して46.7%の実績となり目標を達成することができました。

 新中期経営計画では配当性向の目標を50.0%以上とし、加えて、新たな株主還元のKPIとしてDOEを採用し、6.0%以上を目標としております。当社グループでは、業績や経営環境を勘案したうえで、長期的かつ安定的な配当を継続して行うことを基本方針とし、累進的な配当を継続してまいります。内部留保金につきましては、持続的な成長と企業価値の向上資する研究開発や成長投資などに積極的に活用してまいります。

 

 今後も引き続き、全てのステークホルダーの皆さまの期待に応えるべく、『技術×信頼×人財で、次世代の成長へ』を基本方針とした中期経営計画「Raito2027」に掲げる各種施策を着実に実行し、持続的な企業価値の向上に努めてまいります。

 

c.財政状態

 当連結会計年度の資産につきましては、前期比で22億3千7百万円減少し、1,222億9百万円となりました。このうち、流動資産は前期比で30億7千1百万円減少し、784億1千1百万円となりました。これは主に、売上債権の回収に伴う電子記録債権の減少及び有価証券の売却によるものです。また、固定資産は前期比で8億3千4百万円増加し、437億9千8百万円となりました。これは主に、社屋建替に伴う建物・構築物の増加によるものです。

 負債につきましては、前期比で1億8千2百万円増加し、335億3千4百万円となりました。このうち、流動負債は前期比で4億8千8百万円減少し、317億2千1百万円となりました。これは主に、未成工事受入金が減少したことによるものです。固定負債は前期比で6億7千万円増加し、18億1千3百万円となりました。

 純資産につきましては、前期比で24億1千9百万円減少し、886億7千4百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益99億1千9百万円を計上したこと、株主配当金の支払い及び自己株式の取得によるものです。以上の結果、当連結会計年度における自己資本比率は前期比で0.6ポイント減少し、71.9%となりました。今後も中期経営計画「Raito2027」経営・財務・投資戦略に基づき、会社の成長を支える強固な経営基盤を確立し、事業運営を行ってまいります。

 

d.キャッシュ・フロー

営業活動によるキャッシュ・フローは、103億5千4百万円の収入超過(前年同期は145億8千6百万円の収入超過)となりました。これは主に、法人税等の支払額(35億4千5百万円)による支出を、税金等調整前当期純利益(139億6千9百万円)による収入が上回ったことによるものであります。

投資活動によるキャッシュ・フローは、18億9千6百万円の支出超過(前年同期は42億5千2百万円の支出超過)となりました。これは主に、有形固定資産の売却による収入(12億8千3百万円)及び投資有価証券の売却による収入(10億9千8百万円)を、有形固定資産の取得による支出(47億1千9百万円)が上回ったことによるものであります。

財務活動によるキャッシュ・フローは、123億9千9百万円の支出超過(前年同期は53億2千9百万円の支出超過)となりました。これは主に、配当金の支払額(47億5千2百万円)及び自己株式の取得による支出(77億6千万円)による支出によるものであります。

 以上により、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末比39億8千6百万円減少し、309億4千7百万円となりました。

 

(参考) キャッシュ・フロー関連指標の推移

 

2022年3月

2023年3月

2024年3月

2025年3月

自己資本比率

69.7%

68.7%

72.5%

71.9%

時価ベースの自己資本比率

85.5%

77.9%

78.6%

89.7%

債務償還年数

0.10年

0.36年

0.10年

0.14年

インタレスト・カバレッジ・レシオ

291倍

93倍

119倍

100倍

自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

債務償還年数:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

※各指標は、いずれも連結ベースの財務諸表により計算しております。

※株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。

※有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を使用しております。

※営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。

  また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息支払額を使用しております。

 

e.資本の財源及び資金の流動性

 (1)財務戦略についての基本的な考え方

 中期経営計画「Raito2027」では、国土強靭化基本計画の推進やインフラ予防保全により、短期的には堅調に推移すると見込んでおります。そのようななか、当社グループはこれまでに構築した強固な財務基盤を有効活用していく方針であります。

(2)資金需要について

 当社グループの資金需要は、営業活動では建設事業に関する材料費、協力業者への外注費、従業員への人件費などがあります。投資活動では主に施工機械の購入や成長投資、財務活動では株主還元を目的とした株主配当金及び自己株式の取得があります。

 (3)キャッシュアロケーションについての考え方

 「持続的成長を支える成長投資と最適資本構成の実現」という方針のもと、獲得したキャッシュフローのうち、半分は事業の非連続成長の実現、既存事業の高付加価値化を目的とする成長投資に充当する方針です。
 残りについては最適資本構成の実現を図るため、株主還元に充当していく方針です。
 なお、負債活用に関しては、投資効率の評価、金利水準等を考慮したうえで実施してまいります。

 (4)資金調達について

 中期経営計画期間の3年間で360億円の営業キャッシュフローの獲得を見込んでおり、営業活動からキャッシュフローを生み出す能力があると考えております。さらに、期間内において、「成長への負債活用」として最大100億円の借入を想定しており、当社グループの事業活動を継続するために将来必要な運転資金及び成長投資資金を確保することは可能と考えております。

 

5【重要な契約等】

該当事項はありません。

6【研究開発活動】

研究開発は、市場動向、事業領域の拡大並びに各事業分野の問題点の解決等に対応するため幅広く取り組んでおり、異業種・同業種・大学および国土交通省・(公財)鉄道総合技術研究所等の研究機関との共同開発も積極的に行っております。

なお、当連結会計年度の研究開発費は872百万円であり、主な研究開発事項は次のとおりであります。

 

(1)斜面・のり面対策技術

① CO2排出量削減に資するのり面削孔機の開発

環境保全の取り組みの一環としてCO2排出量の削減を目的としたのり面削孔機「クリーンドリルGX」を開発しました。現場に導入した結果、従来機と比較して約60%のCO2排出量削減が確認されました。今後は、省人化施工を見据え、削孔ガイダンス機能の追加を含む改良を計画しております。

 

② 吊り下げ式リモートノズルシステムの開発

異常気象や地震による自然災害の発生時には、斜面崩落に起因する二次災害の懸念から、作業員が施工箇所へ立ち入れない状況が想定されます。このような現場において、遠隔操作による吹付作業を可能とする「吊り下げ式リモートノズルシステム」を開発しました。試験ヤードでの実証試験を経て、建設現場への試験導入を開始しており、今後も更なる改善・改良を進めていく予定です。

 

(2)地盤改良技術

① 薬液注入工事のトータル管理システムの開発

薬液注入工事における「計画」「施工」「管理」の各工程を一元的に管理可能とする自動注入制御システムを開発しました。本システムでは、クラウドを通じてポンプの稼働状況や施工中の注入量・圧力などをリアルタイムで監視・管理できるほか、3Dモデルによる注入状況の可視化も可能です。また、遠隔操作によるトラブル対応も可能となり、現場への移動にかかるコストや時間の大幅な削減に寄与しています。

 

② セメントスラリー吐出量自動制御システムの改良・開発

地盤改良工事において、掘削・撹拌速度に応じてセメントスラリーの吐出量を自動的に最適化する「セメントスラリー吐出量自動制御システム(ACS)」に、作業データの自動転送機能を追加し、現場での実証試験を実施しております。本システムの導入により、改良体の品質向上、材料ロスの低減に伴うコストおよびCO2排出量の削減、生産性の向上に加え、書類整理に係る業務負荷の軽減が期待されます。

 

なお、子会社においては、研究開発活動は特段行われておりません。