第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

 (1) 経営の基本方針

①三機工業グループ経営理念

当社グループは、「三機工業グループ経営理念」を掲げ、社会における当社グループの存在意義と役員・従業員のあるべき姿を総合的に表現しております。当社グループではこれを「三機スタンダード」と呼んで社内外への浸透を図っております。

三機工業グループ経営理念

(三機スタンダード)

 

エンジニアリングをつうじて快適環境を創造し

広く社会の発展に貢献する

 

技術と英知を磨き、顧客満足の向上に努める

コミュニケーションを重視し、相互に尊重する

社会の一員であることを意識し、行動する

 

 

②超長期ビジョン

当社グループは、超長期ビジョンとして2050年の姿「選ばれ続ける三機へ!」を掲げています。5つのマテリアリティ(重要課題)に注力したサステナビリティ経営の推進により、環境・社会価値の向上と企業価値(経済価値)の向上を両立させるCSV(Creating Shared Values:共有価値の創造)を実現します。

 


 

経営ビジョン及び中期経営計画

当社グループは、創立100周年を迎えた2025年度を新たな出発点と位置づけ、2030年度までの期間を対象とする経営ビジョン“MIRAI 2030”及び2027年度までの3ヵ年を対象とする中期経営計画2027を策定いたしました。

新たな経営ビジョン“MIRAI 2030”では、「人に快適を。地球に最適を。」をテーマに環境・社会価値の向上と企業価値(経済価値)の向上の両立を目指し、2050年の超長期ビジョン「選ばれ続ける三機へ!」の実現に繋げていきます。

中期経営計画2027は、経営ビジョン“MIRAI 2030”に向けた飛躍のための土台作り期間と位置付けており、「深化と共創」を重点テーマに掲げ、以下のとおり重点戦略を定めております。

 


 

また、中期経営計画2027における経営目標値は以下のとおりです。

・2027年度経営目標

 

2027年度

売上高

3,000億円

営業利益

300億円

営業利益率

10.0%

1株当たり当期純利益(EPS)(※1)

430円以上

 

 

・2025年度から2027年度の期間経営目標

 

2025年度~2027年度

自己資本当期純利益率(ROE)(※1)

16.0%以上

成長投資(※2)

500億円程度

配当方針

純資産配当率(DOE)5.0%以上

自己株式取得(※2)

400万株程度

 

(※1)EPS、ROEは政策保有株式の売却益を除く

(※2)計画期間中の累計

 

エンジニアリング企業である当社が保有する様々な技術を磨き続け、施工の効率化・省人化・省力化を進めるなど、既存事業を「深化」させていきます。また、協力会社からスタートアップ企業にいたるまでの多様なパートナーと「共創」し、『選ばれ続ける三機へ!』としてステークホルダーの皆様との共存共栄を目指していきます。

 

(2) 経営環境及び対処すべき課題等

経営環境については、脱炭素化の動き、少子高齢化、働き方改革、AI技術の急速な進展等、大きく環境が変化していると認識しております。これらの環境変化に対応すべく、「省エネルギー・創エネルギー事業」、「自動化・省人化事業」、長時間労働の解消など働きやすい環境づくりを目的とした当社独自の働き方改革である「スマイル・プロジェクト」を推進してまいります。

当連結会計年度の主な取り組みと今後の課題は次のとおりであります。

 

①グループ全体

(E)事業活動を通じた地球環境課題解決

・脱炭素社会実現に向けた技術開発や省エネルギーに貢献する製品の拡販

・当社独自の寄付制度「SANKI YOUエコ貢献ポイント」強化

・環境省「生物多様性のための30by30アライアンス」の継続参加

・CDP「気候変動Aリスト(最高評価)」に3年連続で選定

・SBT(※)認定の取得

※国際イニシアチブ「SBTi」が認定する「パリ協定の水準(世界の気温上昇を産業革命前比1.5℃に抑える水準)を満たす温室効果ガス削減目標」

・タイ王国の工業団地における省エネ型排水処理施設(DHSシステム)導入調査事業が経済産業省の令和5年度補正「グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金」に採択

・COP29ジャパン・パビリオン内セミナーにおいて当社技術を紹介

(S)働き方改革、コミュニケーション向上、文化・スポーツ支援の積極実施

・当社独自の働き方改革「スマイル・プロジェクト」の継続

・2024年度に入社した社員の初任給並びに従業員の給与水準引き上げ

・「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)」に3年連続認定

・次世代育成と地域社会貢献として、小学生向けに身近な化学や環境保全に関する出前授業の実施

・6言語版安全衛生手帳で多様な人材に対応した安全衛生教育を推進

・優秀な人材の確保・定着に向けた取り組みとして「アルムナイネットワーク」の運用及び「奨学金代理返還制度」を導入

・社会貢献活動として「こころの劇場」に特別協賛及び運営ボランティアに参加

(G)三機工業コーポレートガバナンス・ガイドラインに基づく取り組み継続

・東証プライム市場に求められる一段高いガバナンス水準に到達・維持

・国内子会社5社でBCMS(※)の運用継続

 ※BCMS:事業継続マネジメントシステム

 

②事業別

・建築設備事業

大都市圏での大型再開発事業及び半導体、EV電池、バイオ医薬関連などの産業空調分野の民間投資が活発で、市場は堅調に推移したことから、前年を上回る繰越受注を確保しました。その一方で、機器類納期の長期化は改善傾向にあるものの、依然として資機材価格と労務費の上昇、技術者不足は継続しております。また、案件の大型化が進んでおりますが、工程が長期間にわたる大型工事に関しては、計画工期の変更や施工中物件の工程遅れも見られ、労務費・資機材価格高騰等のリスクと併せて、影響を軽減することが課題となります。

・機械システム事業

2024年問題などの人手不足を背景とした自動化・省人化ニーズは製造業・非製造業ともに底堅く、これを取り込むべく将来の成長が見込める二次電池、医療・医薬、物流分野に注力しました。電池の検査装置の輸出案件が出件するなど、明るい兆しが見えてきております。

 

・環境システム事業

社会インフラとしての上下水処理施設、廃棄物処理施設への公共投資は前年並みの水準で推移していますが、脱炭素社会に向けた省エネルギーニーズが高いことから、省エネルギー性能の高い製品の拡販、並びにDBO(※)方式による温室効果ガス排出量削減を主体とした事業提案を行っております。また、海外市場においても、エアロウイング(省エネ型散気装置)の販売が好調なことを受け、国内外で設備投資を積極的に進め、事業拡大を図ってまいります。

※DBO(Design Build Operate):設計・建設と運営・維持管理を民間事業者に一括発注する手法

 

また、東京証券取引所からの「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請につきましては、当社取締役会における資本収益性や市場評価についての現状分析をもとに、2025年度から始める中期経営計画2027において、企業価値向上に資する経営資源の適切な配分の方針を策定いたしました。

2024年度のROEは16.3%となり、2024年度の属する前中期経営計画である“Century 2025”Phase3に掲げたROE目標値の8%以上を大幅に上回る結果となりました。また、PBR(株価純資産倍率)も安定して1倍超の水準となっております。

一方、昨今の金利上昇により、当社が認識している株主資本コストは、従来の6~7%から現時点では7~8%に上昇しております。中期経営計画2027では、エクイティスプレッドを意識し、ROE・EPSの持続的な向上により企業価値の更なる増大を目指してまいります。

 

当社グループは、超長期ビジョンで掲げる「選ばれ続ける三機へ!」を実現するため、新たに「人に快適を。地球に最適を。」をスローガンに掲げ、2つの課題を同時に解決することでサステナビリティ社会へ貢献するために、新技術の開発、コーポレートガバナンスの一層の強化に取り組み、コンプライアンスの徹底を土台として、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向け鋭意努力を重ねてまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 (1) サステナビリティに関する考え方

当社グループは、サステナビリティ経営を推進し、環境・社会への貢献と収益確保を両立させて、長期にわたり持続可能な発展を続けていくため、経営理念をもとにしたサステナビリティ方針を定めております。

 

サステナビリティ方針

 

「エンジニアリングをつうじて快適環境を創造し、広く社会の発展に貢献する」ことにより、強靭な経営基盤と持続可能な社会の実現を目指します

 

 

また、当社グループのサステナビリティを実現するための重要課題であるマテリアリティを特定しております。

様々な視点から抽出した課題を「環境・社会価値の向上」と「企業価値の向上」の両面から評価し、優先順位の高いものをグループ化して5つのマテリアリティとしております。このマテリアリティをもとに各施策を立案し、取り組みを進めております。

 

三機工業グループのマテリアリティ(重要課題)

 

①脱炭素社会への貢献

②働く仲間の幸福の追求

③エンジニアリングを活かした快適環境の構築

④新たな社会価値の創造

⑤安定した収益と経営基盤の強化

 

 

(ⅰ)ガバナンス

当社グループは、サステナビリティ課題全般について対応するため、代表取締役社長を委員長とし常勤取締役をメンバーとするサステナビリティ委員会を設置しております。

サステナビリティ委員会では、サステナビリティ経営を実現するための重要課題・施策を審議・決定しております。委員会の審議・決定内容については、経営会議、取締役会に報告され、監督を受けております。また、事業・経営戦略への影響が大きい課題については、重要性に応じて経営会議、取締役会へ付議され、決定・承認されております。

委員会の下部組織として設けた各部門の実務担当者からなるサステナビリティ推進会議では、委員会の審議・決定事項のグループ全体への周知や具体的なサステナビリティ推進活動の討議・推進や進捗確認を行っております。

 

 

<サステナビリティ推進体制>


 

(ⅱ)リスク管理

当社グループは、事業運営におけるリスクを把握し、リスクの顕在化を未然に防止するとともに、顕在化した場合の損失を極小化することを目的に、「リスク管理委員会」を設置しております。

リスク管理委員会では、当社グループの事業に影響を与えるリスクを洗い出し、影響度や頻度等を可能な限り定量的に評価し、優先順位や担当部署及び対応方針、コントロールの内容を定め、具体的な対応策の進捗・効果のモニタリングとレビューを行っております。委員会の審議・決定内容については、重要度に応じてサステナビリティ委員会、経営会議、取締役会に付議され、決定・承認後、グループ全体へ展開されております。

気候変動関連リスクおよび機会については、サステナビリティ委員会で影響度評価を行うとともに「リスク管理委員会」及び「「サステナビリティ推進会議」と連携し対応策の進捗等を管理しております。

 

 (2) 重要なサステナビリティ項目

気候変動関連

当社グループは、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同し、提言に基づく気候関連情報の開示を実施しております。

(ⅰ)戦略

当社グループは、特定したマテリアリティの中でも「脱炭素社会への貢献」を最優先課題と位置づけ、リスクと機会の両面から気候変動問題に取り組んでおります。

気候変動が事業に与える中・長期的なインパクトを把握するためにシナリオ分析を実施し、抽出したリスクと機会については、経営ビジョン“MIRAI 2030”及び「中期経営計画2027」に盛り込み、経営計画と一体化させて取り組みを進めております。

<シナリオ分析>

分析においては、2100年時点において産業革命時に比べ世界の平均気温上昇が1.5℃に抑制されることを想定した1.5℃シナリオと、4℃程度上昇する4℃シナリオを採用し、各シナリオにおいて政策や市場動向の変化による移行リスクと、災害などによる物理リスクを推測しました。

各シナリオに対して、当社グループに対するリスク・機会を特定し、財務インパクトを評価して、その影響度を大・中・小の3段階で表現しております。

 


※1国際エネルギー機関(International Energy Agency)の略称。エネルギー安全保障の確保を目標に掲げるOECD(経済協力開発機構)の下部の国際機関であり、エネルギー政策全般をカバーしている。

※2気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)の略称で、気候変化、影響、適応及び緩和方策に関し、包括的な評価を行うことを目的として、1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)により設立された組織。

 

 

リスクと機会


 

 

(ⅱ)指標と目標

当社グループは、温室効果ガス排出量を最も重要な気候変動関連指標としております。「SANKIカーボンニュートラル宣言」にあるとおり、Scope1,2においては2030年、Scope1,2,3においては2050年のカーボンニュートラル達成を長期目標としております。また、経営ビジョン“MIRAI 2030”においては、2030年にScope3の25%削減(2020年度比)を掲げて「脱炭素社会への貢献」を推進しております。

 

SANKIカーボンニュートラル宣言

 

三機工業グループは、世界が直面する気候変動問題に真摯に取り組み、グループ自らの温室効果ガス排出量(Scope1,2)においては2030年までに、サプライチェーンを含む温室効果ガス排出量(Scope1,2,3)においては2050年までにカーボンニュートラルを目指します

 

 

三機工業グループ温室効果ガス排出量


 

人的資本関連

(ⅰ)人財戦略

[人財育成方針]

当社グループは技術(スキル)を有する従業員が事業競争力や企業価値の源泉であり、最大の財産と考えています。当社は、経営理念「エンジニアリングをつうじて快適環境を創造し広く社会の発展に貢献する」を実現させるための「人財育成方針」と「求める人財像」を定め、従業員が切磋琢磨し、社会人としての成長も実感できる教育・研修体系を整備してまいります。

従業員一人ひとりのキャリア形成においては個性や特性を十分に考慮しつつ、各自が最大限に能力を発揮できるよう適正配置を行い、業務経験を通じて成長の機会を得られるようにしております。

 

 

人財育成方針

 

社会の一員であることを自覚し、エンジニアリングをつうじて快適環境を創造し広く社会の発展に貢献できる「三機らしい」人財を育成する

 

求める人財像

 

・知識や知見を持ち思考を通じて「知恵」を生み出せる人財

・コミュニケーション力が豊かな人財

・社会性を持ち、自ら積極的に行動できる人財

 

 

 

また、2025年度に策定した新たな経営ビジョン“MIRAI 2030”においては人財戦略のスローガンを

Communication!   Challenge!!  Change!!!  対話し、踏み出し、成長し続ける

 

とし、経営戦略を実行するために取り組む重点テーマを「人財戦略の3つの骨子(基本方針)」と定めました。

さらに、経営戦略実行のために獲得が必要な対応力を特定し、「変化に対応できる力」の向上を目指します。

 


 

 

[社内環境整備方針]

マテリアリティの一つである「働く仲間の幸福の追求」を目指し、従業員一人ひとりが働きがいを持ち、働き続けることができる環境を整備しております。

従業員の期待度と満足度を測る企業価値向上KPIとして、「エンゲージメントスコア」を設定しております。本指標は、株式会社リンクアンドモチベーションのモチベーションクラウドを利用し、会社の目指す姿や方向性に対する、従業員の理解・共感の度合いを偏差値(標準スコア50.0)で算出したものです。

2024年度に実施した「エンゲージメントサーベイ」により、当社の強みと課題点が明らかになりましたので、強みは積極的に伸ばしていき、課題点に対しては背景を分析し対策を講じてまいります。

 

 

(ⅱ)指標と目標

当社グループでは、上記「(ⅰ)人財戦略」については内閣官房が示す「人的資本可視化指針(7分野19項目)」の項目を用いております。

本来、この7分野19項目全てに目標及び実績を開示するべきですが、優先順位を付け、順次目標及び実績を開示してまいります。

なお、開示する目標及び実績は原則定量的な数値といたしますが、数値化できない項目については定性的な目標といたします。

当社グループでは、上記「(ⅰ)人財戦略」において記載した、人財育成方針及び社内環境整備方針に係る指標については、関連する指標のデータ管理と、具体的な取り組み実績を記載しております。ただし、連結グループに属する全ての会社で同様の管理や取り組みが行われていないため、各指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

 

[人財の獲得]

〇採用

採用市場を踏まえたうえで、経営ビジョン“MIRAI 2030”に基づいた要員計画を作成し、積極的な採用活動を行っております。新卒採用においては当社で活躍している従業員の特性分析を行い、「採用要件」を定め、優秀な学生の確保に努めております。

キャリア採用においてはキャリア採用希望者からの応募に加え、「ダイレクトスカウティング」、「高度人財登用制度」、「キャリアリターン制度」を導入しており、2025年度からは従業員が自身の知人等を採用候補者として会社に紹介する「リファラル採用制度」、「キャリアリターン制度」への応募を容易とすることを目的に「アルムナイネットワーク」を構築し、即戦力となる人財の確保に努めております。

(単位:名)

 

2024年度

2023年度

2022年度

新卒採用人数(計画数)

91(90)

51(100)

89(90)

キャリア採用人数(計画数)

14(10)

8( 28)

6(10)

 

*新卒採用は翌4月入社の人数を示しております。

 

経営ビジョン“MIRAI 2030”において、持続的な成長を図る上での企業価値向上KPIとして、2027年度末までに従業員数を2,900名(連結)とする目標を新たに定めました。

 

指標

目標(2028年3月

実績(2025年3月)

従業員数(連結)

2,900

2,653

 

 

[人財の成長・育成]

〇リーダーシップ

管理職のリーダーシップ醸成に向け、その発揮を期待する部長・課長を対象に就任時及び定期的な教育・研修を対面・オンライン・動画配信等の方法で行っております。

〇スキル・経験

今後、「人財育成方針」で定めた人財像に求められるスキルの特定を行い、スキルマップの作成及びタレントマネジメントシステムを用いた保有スキルの可視化を行ってまいります。

経営ビジョン“MIRAI 2030”において、持続的な成長を図る上での企業価値向上KPIとして、当社が定める業務上必要とする資格の取得数を従業員のスキルの習得状況を測る指標として、2027年度末までに2024年度比10%伸長させる目標を定めました。

指標

目標(2028年3月

実績(2025年3月)

資格数

3,575

3,250

 

 

 

〇若手の積極登用

管理職層においては「早期登用制度」を整備し次世代を担う若い世代の積極的な登用を行っております。

具体的な指標は次のとおりです。

指標

目標(2026年4月

実績(2025年4月)

役職者の平均年齢

課長45.8歳、部長50.2歳、統括部長53.5歳

課長46.9歳、部長52.6歳、統括部長54.6歳

 

 

[人財の維持]

〇維持

建設業界においては短期的・中長期的な視点においても人手不足が顕著であり、当社においても重要な経営課題と考えております。

積極的な採用活動を行っている一方、人財の流出を防止するため従業員の処遇改善(ベースアップ、各種手当の増額)を行っております。

また、高年齢者の就業の機会を確保するために、2022年度から定年年齢を60歳から65歳に引き上げ、再雇用制度を見直し、最長70歳まで就業可能な制度を整備しております。これにより、知識や経験豊富な従業員から若手従業員への技術継承を円滑に行っていくとともに、人手不足の解消を図ってまいります。

[2024年度 離職者数・離職率(自己都合退職に限る)]

男性・女性別 離職者数・離職率

 

全体

~20代

30代

40代

50代

60代

男性

離職者数(名)

19

10

3

2

4

0

離職率(%)

1.0%

2.3%

0.8%

0.6%

0.7%

0.0%

女性

離職者数(名)

6

3

2

1

0

0

離職率(%)

1.7%

3.4%

2.0%

1.4%

0.0%

0.0%

全体

離職者数(名)

25

13

5

3

4

0

離職率(%)

1.1%

2.5%

1.1%

0.7%

0.7%

0.0%

 

 

職種別 離職者数・離職率

 

全体

~20代

30代

40代

50代

60代

総合職

離職者数(名)

23

12

5

2

4

0

離職率(%)

1.2%

2.5%

1.2%

0.6%

0.7%

0.0%

業務職

離職者数(名)

2

1

0

1

0

0

離職率(%)

1.0%

2.5%

0.0%

1.8%

0.0%

0.0%

全体

離職者数(名)

25

13

5

3

4

0

離職率(%)

1.1%

2.5%

1.1%

0.7%

0.7%

0.0%

 

 

入社年度別 新卒入社後3年以内の離職者数・離職率

 

2022年度

2021年度

2020年度

離職者数(名)

8

16

9

離職率(%)

9.6%

16.8%

10.2%

 

 

 

〇ダイバーシティ推進

2022年に当社グループのマテリアリティの1つに「働く仲間の幸福の追求」と定め、その具体策としてダイバーシティの推進を行っております。

ダイバーシティの推進にあたっては年齢、性別、国籍、宗教、障がいの有無等によらず、多様な人財が互いを認め合い尊重し、違いを活かして最大限能力を発揮できる職場環境を目指しております。

指標

目標(2026年4月

実績(2025年4月)

女性従業員比率

16.4%

15.8%

女性管理職比率

3.0%

2.4%

外国籍従業員比率

1.7%

1.1%

 

(注) 女性管理職比率につきましては、「第1 企業の概況 5 従業員の状況(4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」にも記載しております。

 

エンゲージメント

サステナビリティ経営のマテリアリティに掲げている「働く仲間の幸福の追求」を測る指標として2023年度にエンゲージメントサーベイを実施し、エンゲージメントスコアは「51.3」でした。今後はさらに高い水準を目指し、2025年度までにエンゲージメントスコアを「55.0」とすることを目標としておりましたが、経営ビジョン“MIRAI 2030”において持続的な成長を図る上での企業価値向上KPIとして、新たに2027年度までにエンゲージメントスコアを 「57.0」とする目標に変更しました。この目標を達成するため、会社と従業員のコミュニケーションを密に図るなどの取り組みを継続的に実施し、「従業員から選ばれ続ける会社」を目指してまいります。

指標

目標(2027年度

実績(2024年度)

実績(2023年度)

エンゲージメントスコア

57.0

54.0

51.3

 

 

育児休業

育児と仕事の両立支援の様々な施策を展開しています。従業員がライフイベントに合わせて柔軟な働き方ができるよう、一部には法律を上回る制度を整備(育児特別休暇)し、啓発活動を行っております。

 

2024年度

2023年度

2022年度

男性

女性

合計

男性

女性

合計

男性

女性

合計

育児休業(名)

42

14

56

37

12

49

6

12

18

育児特別休暇含む(名)

51

14

65

45

12

57

25

12

37

育児休業取得率

58.3%

100%

65.1%

74.0%

100%

79.0%

10.7%

100%

26.5%

育児特別休暇含む

70.0%

100%

75.6%

90.0%

100%

91.9%

44.6%

100%

54.4%

育児休業復職率

100%

100%

100%

100%

83.3%

95.7%

100%

100%

100%

 

※2022年度は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(2015年法律第64号)に基づく育児休業取得率のみを公表していましたが、2023年度からは「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(1991年法律第76号)に基づく、会社独自の休暇を含めた数値もあわせて公表しております。

指標

目標(2025年度)

実績(2024年度)

育児休業取得率

男性100%、女性100%

男性58.3%、女性100%

育児休業取得率(育児特別休暇含む)

男性70.0%、女性100%

 

(注) 男性の育児休業取得率につきましては、「第1 企業の概況 5 従業員の状況(4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」にも記載しております。

 

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの事業運営に影響を与える可能性のあるリスクを統合的に把握し、リスクの顕在化を未然に防止するとともに、顕在化した場合の損失を極小化することを目的に、「リスク管理委員会」を中心としたリスクマネジメント体制を構築しています。

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項につき、重大な影響を及ぼす可能性のある主なリスクには、以下のようなものがあります。リスク項目及びカテゴリーの記載にあたっては、影響度及び顕在化の可能性から判断し、優先順位が高いものから、その具体的な内容と対策を記載しています。

なお、記載内容には、将来の予想に関する事項も含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 設備工事事業共通(建築設備事業、機械システム事業、環境システム事業)

リスク項目

カテゴリー

内容

対策

人財確保に関するリスク

人財・労務

大幅な採用計画の未達や離職率の増加があった場合には、業績に影響を及ぼす可能性がある

・新卒社員の初任給ならびに従業員の給与水準引き上げ

・認知度向上

・働き甲斐のある職場環境構築による従業員エンゲージメントの向上

 

 

協力会社の技術者が減少し、施工に必要な人数の確保ができない場合、業績に影響を及ぼす可能性がある

・協力会社との信頼関係強化

・三機テクノセンターを活用した協力会社教育

・新規協力会社の探索

・施工の自動化、省力化

労働関連法令に関するリスク

人財・労務

建設業における労働時間上限規制適用開始に伴い、延べ労働時間が低下することで、対応可能工事量が低減し、業績に影響を及ぼす可能性がある

BIMなどのICTの活用

による設計及び施工の効率

資機材の調達・納期及び労務費に関するリスク

経済・市場

・為替変動やエネルギー価格の上昇等により、資機材価格及び労務費が急激に高騰しそれを請負金額に反映させることが困難な場合には業績に影響を及ぼす可能性がある

・資機材納入遅延により全体工期が遅れ、客先業務に支障を来し、信用・信頼を失うことにより、業績に影響を及ぼす可能性がある

・受注前:物価上昇に対する請負金額の見直しを契約に取り入れる交渉

・受注後:早期発注と原価圧縮の工夫

・納期情報を常に更新し、水平展開を図る

施工中の事故及び災害に関するリスク

技術・競争

工事施工中の事故や災害の発生に伴い、業績に影響を及ぼす可能性がある

・工事の安全衛生管理の徹底

・品質リスクアセスメントを活用したトラブル未然防止

・不測の事態に備えて工事賠償責任保険に加入

不採算工事に関するリスク

技術・競争

工事途中での設計変更や、工程遅れなどによる設備工程の圧迫や作業員の増員、手直し工事等による想定外の追加原価により不採算工事が発生した場合には、業績に影響を及ぼす可能性がある

定期的に工事進捗管理を行うことによるリスクの早期把握及び対策の徹底

米国関税政策に関するリスク

経済・市場

米国政府による関税政策の変更により、顧客の設備投資動向の変化や資機材価格が上昇した場合は、業績に影響を及ぼす可能性がある

・顧客の設備投資動向及び資機材価格のモニタリング強化

・資機材の多様な供給源確保

技術開発に関するリスク

技術・競争

主に脱炭素化のための省エネに関する最新技術の導入需要が高まっているため、新技術の開発・導入や体制の構築遅れ等が発生し、既存の技術が陳腐化した場合は、業績に影響を及ぼす可能性がある

・省エネに関する積極的な技術開発投資の実施

・技術開発要員の増強や開発体制の連携強化

 

海外事業に関するリスク

法令

現地法令・規制及び当局による監督・規制の内容の認識不足により、行政指導や罰金の対象になる可能性がある

・現地スタッフへの教育推進

・現地情報の的確な収集分析

・「海外危機管理マニュアル」の検証/更新の検討

 

地政学・海外

戦争・テロの発生やその国の政情悪化、経済状況の変動、予期しない法律・規制の変更等があった場合には、業績に影響を及ぼす可能性がある

 

 

 

(2) 建築設備事業

リスク項目

カテゴリー

内容

対策

計画案件の過多及び物件の大型化に伴う要員計画に関するリスク

人財・労務

・半導体や自動車、データセンター関連の計画が続出、大都市圏の再開発が増加。施工要員の配置や、協力会社の確保が困難になり事業遂行に影響を及ぼす可能性がある

・物件の大型化に伴い、工期が長期化し、物価上昇、施工対象地域での要員確保や投資計画の変更による要員計画への影響が高まり、業績に影響を及ぼす可能性がある

・施工管理計画のフロントローディングによる施工の合理化

・施工要員と協力会社工事量を踏まえた事業活動

・大型物件と特殊物件に対応するためエンジニアリング推進本部及び設計本部を設置し、全社横断的な体制を構築

・工期及び物価上昇リスクを含めた契約内容の検討

 

 

(3) 機械システム事業

リスク項目

カテゴリー

内容

対策

競争力低下に関するリスク

技術・競争

同業他社との競争が激しく、価格競争に陥る等により業績に影響を及ぼす可能性がある

・大和プロダクトセンターの生産工程を見直し、合理化

・新製品の投入

 

 

(4) 環境システム事業

リスク項目

カテゴリー

内容

対策

市場環境変化に関するリスク

技術・競争

地方自治体の財政悪化を背景として、価格競争が激化する可能性がある

・LCE事業の展開(※)

・価格優位性のある商品を核とした受注

長期事業に伴う価格変動に関するリスク

経済・市場

DBO案件は、長期にわたる運営維持管理を伴うため、著しい物価上昇等予期しない事象が発生した場合には、業績に影響を及ぼす可能性がある

物価スライド条項等を契約に取り入れる交渉及び事業運営のモニタリング徹底

 

※ライフサイクルエンジニアリング(Life Cycle Engineering)事業の略称。新築、保守・メンテナンス、リニューアル、建替えといった建築物のライフサイクル全体を通じてサービスを提供する当社グループの事業コンセプト

 

(5) 不動産事業

リスク項目

カテゴリー

内容

対策

保有物件及び景気動向等外部環境に関するリスク

経済・市場

建物や設備の老朽化・陳腐化による、テナント入居率の低下や景気動向等に伴う賃貸料相場の急激な下落が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性がある

・テナントの入居状況のモニタリング

・テナントニーズの早期把握

・テナント与信に係わるモニタリング精度の向上

・環境や災害対応他、テナントニーズに対応した設備導入等、物件の付加価値向上のための投資

 

 

 

(6) 当社グループ共通リスク

リスク項目

カテゴリー

内容

対策

法令違反に関するリスク

法令

建設業法、独占禁止法、労働基準法等の法令違反に対する行政処分等により事業活動に制限を受ける可能性がある

・行動規範、行動指針の浸透

・企業倫理研修の継続実施

過重労働に関するリスク

人財・労務

長時間労働等により、従業員の健康被害が発生した場合、人的資本が毀損されることで、事業遂行に影響を及ぼす可能性がある

・適正な人員配置の実施

・業務効率化の推進

・緻密な労務管理の実施

人権に関するリスク

人財・労務

当社グループ及びサプライチェーンにおける人権侵害が起きた場合に、取引停止や株価の下落、罰金の支払、訴訟の提起が発生し、業績に影響を及ぼす可能性がある

人権方針に基づく人権デューデリジェンスの実施および教育

データセキュリティに関するリスク

IT

サイバー攻撃等により個人情報、顧客名簿、施工図面(顧客機密情報)等の流出により損害を被る可能性がある

・不正アクセス対策の強化

・情報セキュリティに関するeラーニングの実施

・不審メールなどへの啓蒙教育

・協力会社への情報セキュリティ対策状況確認の継続実施

訴訟等に関するリスク

法令

事業活動において契約不適合責任、製造物責任、特許、契約上の債権債務等に関する訴訟提起及びその他の法的な請求をされる可能性がある

・契約締結前の法務部門によるチェックの徹底

・品質リスクの抽出とプロセスごとの品質管理の徹底

・トラブル関係情報の早期把握及び対策の徹底

株式相場の変動に関するリスク

財務

・保有する株式の時価が下落し、資産が減少するとともに損失が発生する可能性がある

・株価の下落により退職給付年金資産・信託資産が減少し、積立不足が発生する可能性がある

・2028年3月末までに政策保有株式を連結純資産の20%未満とすることを目標に、2024年3月末時点から上場株式の銘柄数、金額ともに50%以上削減

・退職給付年金資産・信託資産の運用状況のモニタリング及び体制の強化

戦争・テロ・自然災害に関するリスク

地政学・海外

戦争・テロ・地震や台風等の大規模な自然災害が発生した場合には、事業の継続が困難となり、業績に影響を及ぼす可能性がある

BCP体制の強化及びBCPを計画的に見直し有効に機能させる「事業継続マネジメントシステム(BCMS)」の継続運用

気候変動に関するリスク

経済・市場

気候変動リスクの内容及びその対策については、「2. サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)重要なサステナビリティ項目 ①気候変動関連」に記載のとおりであります

 

顧客の信用に関するリスク

財務

顧客の倒産等によって債権が回収不能となり、損失が発生し、業績に影響を及ぼす可能性がある

・顧客の与信・回収状況に係わるモニタリング精度の向上

・与信リスクの高い特定の顧客に対する綿密な債権管理

金利の変動に関するリスク

財務

・金利変動等により退職給付年金資産・信託資産が減少し、積立不足が発生する可能性がある

・金利上昇により、資金調達コストが増加する可能性がある

・年金資産・信託資産の運用状況のモニタリング及び体制の強化

・退職給付債務増加の抑制

・割引率及び期待運用収益率の定期的な見直し

・代金回収の早期化促進による借入金増大抑制

感染症流行に関するリスク

人財・労務

感染症の大規模流行に伴い、当社グループ及び協力会社従業員等関係者に多数の罹患者が発生した場合や、移動・外出他、種々の制限が継続した場合、事業遂行に影響を及ぼす可能性がある

・感染症拡大に対応できる社内体制の整備

・平常時からテレワーク等の行動制限対応を習熟

・感染防止対策に必要となる衛生用品の常時備蓄

 

 

 

リスク項目

カテゴリー

内容

対策

業績の季節変動に関するリスク

財務

年度末にかけて工事の完成が集中することや工事進捗が急進する傾向にあるため、それに伴い、資金需要が大きく変動する可能性がある

・資金繰り予想精度の向上

・業績の進捗管理の徹底

システム障害に関するリスク

IT

コンピュータウイルス感染、不正アクセス等により、社内システムが停止し、業務が継続できない可能性がある

セキュリティ対策ソフト(EDRソフト)を導入し、専門業者による常時監視を実施

デジタル競争に関するリスク

IT

生成AIを始めとした、デジタル技術の導入遅れが原因で、業務プロセスの最適化が遂行されないことにより、競争力が失われ、業績に影響を及ぼす可能性がある

・生成AIサービスの導入及び利用方法の教育を実施

・経済産業省「DX認定事業者」に認定

・デジタル改革推進部を設置

・デジタル人財の育成、強化を目的とし、独自の「三機ITパスポート」の受検を実施

AI利用に関するリスク

IT

生成AIの不適切な利用により、情報漏洩、著作権侵害、不正なデータ収集等が行われ、ステークホルダーからの信頼を損ない、業績に影響を及ぼす可能性がある

「情報セキュリティ対策ガイドライン」に生成AI利用時の注意点を追加し、全社員にeラーニングによる教育を実施

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度は、2025年4月に創立100周年を迎えるにあたり、長期ビジョン“Centur2025”の最終フェーズである4カ年の中期経営計画“Century 2025”Phase3の3年目において、前期に引き続きPhase1の「質」を高める取り組み及びPhase2の「信頼」を高める取り組みを継続しつつ、社会のサステナビリティへの貢献や働き方改革、次世代に向けた投資など新たな施策を実施し、「選ばれ続ける企業」を目指してまいりました。さらに、SBT(Science Based Targets)認定の取得等、脱炭素社会への貢献に取り組むと共に、当社独自の働き方改革である「スマイル・プロジェクト」の推進により、当社グループが掲げる重要課題の一つである「働く仲間の幸福の追求」を実現してまいりました。

その結果、当連結会計年度における当社グループの財政状態及び経営成績は次のとおりとなりました。

(財政状態)

(単位:百万円)

 

2023年度末
(前連結会計年度末)

2024年度末

(当連結会計年度末)

増減

増減率

主な増減要因

流動資産

131,564

138,834

7,269

5.5%

売上債権の回収により現金預金が増加した一方で、時価の下落及び政策保有株式の売却により投資有価証券が減少

固定資産

70,596

62,005

△8,591

△12.2%

総資産

202,161

200,839

△1,321

△0.7%

流動負債

81,597

82,283

685

0.8%

投資有価証券の減少に伴い繰延税金負債が減少

固定負債

15,941

12,175

△3,766

△23.6%

負債計

97,539

94,458

△3,080

△3.2%

純資産

104,621

106,380

1,759

1.7%

親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が増加した一方で、時価の下落及び政策保有株式の売却によりその他有価証券評価差額金が減少

 

 

(経営成績)

(単位:百万円)

 

2023年度

2024年度

増減

増減率

主な増減要因

受注高

232,396

264,965

32,568

14.0%

次項<主要セグメント別経営成績>に記載のとおりであります。

次期繰越受注高

198,902

210,731

11,828

5.9%

売上高

221,920

253,136

31,215

14.1%

売上総利益

34,642

47,495

12,852

37.1%

(率)

(15.6%)

(18.8%)

(3.2%)

 

営業利益

11,586

21,893

10,306

88.9%

(率)

(5.2%)

(8.6%)

(3.4%)

 

経常利益

12,750

23,071

10,320

80.9%

(率)

(5.7%)

(9.1%)

(3.4%)

 

親会社株主に帰属する当期純利益

8,951

17,203

8,252

92.2%

(率)

(4.0%)

(6.8%)

(2.8%)

 

 

(注)各利益項目の率は、売上高に対する利益率を表しております。

 

<主要セグメント別経営成績>

 

〇建築設備事業

(単位:百万円)

ビル空調衛生、主に工場向けの空調設備を中心とする産業空調、電気設備及びファシリティシステムに関する事業等で構成されております。

受注高は、ビル空調衛生、電気設備の大型工事を受注したこと等により増加いたしました。売上高及びセグメント利益は、前期から繰り越した大型工事の工事進捗及び利益率改善等により増収増益となりました。

 

2023年度

2024年度

増減

増減率

受注高

183,606

218,590

34,983

19.1%

売上高

182,545

208,981

26,436

14.5%

セグメント利益

11,876

20,548

8,672

73.0%

 

 

 

 

 

 

 

〇機械システム事業

(単位:百万円)

主に搬送システム及び搬送機器に関する製造販売事業で構成されております。

売上高は前年同期と比較して増加し、セグメント損失は改善しました。

 

2023年度

2024年度

増減

増減率

受注高

11,242

10,933

△309

△2.8%

売上高

10,591

10,934

342

3.2%

セグメント利益(△は損失)

△946

△614

332

 

 

 

 

 

 

 

〇環境システム事業

(単位:百万円)

主に官公庁発注の上下水道施設及び廃棄物処理施設に関する事業で構成されております。

受注高は、前年同期に大型の廃棄物処理施設を受注したことによる反動等で減少いたしました。売上高及びセグメント利益は、前期から繰り越した大型工事の工事進捗及び利益率改善等により増収増益となりました。

 

2023年度

2024年度

増減

増減率

受注高

35,383

33,396

△1,987

△5.6%

売上高

26,415

31,300

4,885

18.5%

セグメント利益

979

1,787

808

82.5%

 

 

 

〇不動産事業

(単位:百万円)

主に保有不動産の賃貸業務と建物管理にかかわる事業を行っております。

テナント賃貸収入が増加し、増収増益となりました。

 

2023年度

2024年度

増減

増減率

受注高

2,482

2,592

109

4.4%

売上高

2,482

2,592

109

4.4%

セグメント利益

866

905

38

4.4%

 

 

 

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末におけるキャッシュ・フロー(C/F)の状況は次のとおりであります。

(単位:百万円)

 

2023年度

2024年度

当期C/Fの増減要因

現金及び現金同等物期首残高

24,949

23,500

 

営業活動C/F

1,285

29,725

税金等調整前当期純利益の計上及び売上債権の回収が進んだこと等により増加

投資活動C/F

3,174

1,897

主に有価証券の償還及び投資有価証券の売却により増加

財務活動C/F

△6,069

△11,398

主に財務・資本政策に基づく配当金の支払い及び自己株式の取得により減少

現金及び現金同等物に係る換算差額など

159

123

 

現金及び現金同等物期末残高

23,500

43,848

 

 

 

 

③ 生産、受注及び販売の実績

当社グループが営んでいる事業の大部分を占める設備工事事業では生産実績を定義することが困難であり、また請負形態をとっているため販売実績という定義は実態にそぐいません。

また、当社グループにおいては設備工事事業以外では受注生産形態をとっておりません。

よって受注及び販売の状況については、可能な限り「① 財政状態及び経営成績の状況」において報告セグメントの種類に関連付けて記載しております。

なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりであります。

受注高及び売上高の状況

a.受注高、売上高及び繰越高

期別

部門別

前期繰越高
(百万円)

当期受注高
(百万円)


(百万円)

当期売上高
(百万円)

次期繰越高
(百万円)

前事業年度

(自2023年4月1日

2024年3月31日)

設備
工事
事業

建築
設備

ビ  ル
空調衛生

64,868

46,624

111,492

55,195

56,296

産業空調

50,594

87,605

138,200

76,264

61,936

電  気

20,849

25,369

46,218

27,314

18,904

ファシリティ
システム

4,406

13,668

18,074

13,911

4,163

140,718

173,267

313,986

172,685

141,301

プラ
ント
設備

機  械
システム

6,657

10,244

16,902

9,803

7,098

環  境
システム

23,377

17,591

40,969

12,115

28,854

30,035

27,836

57,871

21,918

35,952

170,754

201,104

371,858

194,604

177,253

不動産事業

2,479

2,479

2,479

合計

170,754

203,583

374,338

197,084

177,253

当事業年度

(自2024年4月1日

2025年3月31日)

設備
工事
事業

建築
設備

ビ  ル
空調衛生

56,296

60,009

116,306

65,545

50,760

産業空調

61,936

90,658

152,595

87,663

64,931

電  気

18,904

39,804

58,709

30,183

28,526

ファシリティ
システム

4,163

13,650

17,813

12,614

5,199

141,301

204,122

345,424

196,006

149,417

プラ
ント
設備

機  械
システム

7,098

10,281

17,380

10,245

7,134

環  境
システム

28,854

19,824

48,678

15,959

32,718

35,952

30,106

66,058

26,205

39,853

177,253

234,229

411,483

222,211

189,271

不動産事業

2,539

2,539

2,539

合計

177,253

236,768

414,022

224,750

189,271

 

(注) 1 前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注高にその増減額を含んでおります。したがって、当期売上高にもかかる増減額が含まれております。

2 次期繰越高は(前期繰越高+当期受注高-当期売上高)に一致しております。

 

b.受注工事高

期別

区分

官公庁(百万円)

民間(百万円)

計(百万円)

前事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

建築設備

5,526

167,741

173,267

プラント設備

10,967

16,869

27,836

16,493

184,611

201,104

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

建築設備

11,873

192,249

204,122

プラント設備

19,573

10,533

30,106

31,446

202,783

234,229

 

 

     受注方法は、特命と競争に大別されます。これを受注金額比で示すと次のとおりであります。

 

期別

区分

特命(%)

競争(%)

計(%)

前事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

建築設備

58.4

41.6

100

プラント設備

16.1

83.9

100

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

建築設備

66.8

33.2

100

プラント設備

9.9

90.1

100

 

 

c.完成工事高

期別

区分

官公庁(百万円)

民間(百万円)

計(百万円)

前事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

建築設備

11,687

160,998

172,685

プラント設備

11,779

10,139

21,918

23,466

171,138

194,604

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

建築設備

7,567

188,439

196,006

プラント設備

14,167

12,038

26,205

21,734

200,477

222,211

 

(注) 1 完成工事のうち主なものは、次のとおりであります。

 前事業年度完成工事のうち請負金額10億円以上の主なもの

㈱竹中工務店

 

下山Ⅳ期施設建設工事 3号館

埼玉県企業局

 

大久保浄水場西部系3B掻寄機更新工事

国立研究開発法人 理化学研究所

 

国立研究開発法人理化学研究所脳科学中央研究棟改修

3期機械設備工事

㈱大林組

 

株式会社豊田自動織機石浜工場E02工場新築工事

㈱竹中工務店

 

茨木市民会館跡地エリア整備事業

 

 当事業年度完成工事のうち請負金額10億円以上の主なもの

㈱大林組 共同企業体

 

トヨタ自動車株式会社 明知1C 電池工場建設工事

双葉地方広域市町村圏組合

 

双葉地方広域市町村圏組合 南部衛生センター
焼却施設整備工事

キオクシア㈱

 

キオクシア岩手株式会社新管理棟第1期機械設備工事

㈱フジタ

 

北里新M号館新築及びインフラ改修工事

鹿島建設㈱

 

アーバンネット御堂筋ビル

 

     2 前事業年度及び当事業年度ともに完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はありません。

 

 d.次期繰越工事高(2025年3月31日現在)

区分

官公庁(百万円)

民間(百万円)

計(百万円)

建築設備

10,730

138,687

149,417

プラント設備

23,863

15,990

39,853

34,593

154,678

189,271

 

  次期繰越工事のうち請負金額10億円以上の主なものは、次のとおりであります。

㈱大林組 共同企業体

 

トヨタ自動車株式会社 明知次世代電池工場

 

<2026年8月完成予定>

㈱大林組

 

(仮称)GSユアサ横江工場建設工事

 

<2027年9月完成予定>

清水建設㈱

 

日本橋一丁目中地区第一種市街地再開発

 

<2026年9月完成予定>

名寄地区衛生施設事務組合

 

(仮称)名寄地区一般廃棄物中間処理施設

建設工事

 

<2027年3月完成予定>

鹿島建設㈱

 

トヨタスポーツセンター第一体育館改築

 

<2028年7月完成予定>

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

   ① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(財政状態)

(単位:億円)

 

2022年度末

2023年度末

連結会計年度末)

2024年度末

(当連結会計年度末)

増減

総資産

1,723

2,021

2,008

△13

純資産

909

1,046

1,063

17

自己資本

907

1,044

1,062

17

自己資本比率

52.6%

51.7%

52.9%

1.2%

 

 前連結会計年度との主な増減要因については「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

なお、当社グループは次項「(経営成績)」に記載のとおり、中期経営計画“Century2025” Phase3で策定、開示した財務・資本政策に則り、資本効率の向上に取り組んでまいりました。

当連結会計年度においては、自己株式の取得や、積極的な株主還元(増配)など資本効率の向上に努めてまいりました。

 

(経営成績)

前連結会計年度との主な増減要因については「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

(単位:億円)

 

2022年度

2023年度

2024年度

増減

売上高

1,908

2,219

2,531

312

売上総利益

270

346

474

128

(率)

(14.2%)

(15.6%)

(18.8%)

(3.2%)

経常利益

62

127

230

103

(率)

(3.3%)

(5.7%)

(9.1%)

(3.4%)

 

(注)各利益項目の率は、売上高に対する利益率を表しております。

 

当期は次の施策を実施してまいりました。

○セグメント別の施策

<建築設備事業>

・半導体やEV電池、バイオ医薬等の将来性の高い分野へ注力

・テナント工事や改修工事等で長期的な業績貢献が見込める都市再開発案件に参画

・エンジニアリング推進本部を設置し、物件の大型化と特殊物件に対応する全社横断的な体制を構築

・建築設備専用CAD「Rebro(レブロ)」の自動作図機能の共同開発に着手

・自動風量計測ロボット技術の多用途展開

・マイナス80℃露点クラスの極低湿度環境試験室を三機テクノセンター内に構築

・オフィスデザイン業務を効率化するアプリケーションの開発に着手

<機械システム事業>

・2024年度グッドデザイン賞を受賞した自動仕分けシステム「メリス・ビアンカ®」を積極展開

・「ブランチボール」(3方向分岐装置)を発展させた「BBソータ™」(仕分装置)を開発し、展示会へ出展

<環境システム事業>

・エアロウイング(省エネ型散気装置)の生産拡大のため、海外工場の機能アップに加えて、生産設備増強を国

内で推進

・廃棄物処理施設の更新需要を見据えた、M&Aによる事業拡大の推進(2025年5月1日 株式譲渡契約締結)

 

上記施策のほか、次の全社的な施策を実施いたしました。

 ・原価管理の徹底(内部統制プロセスの徹底)

・協力会社との関係強化 
 三機スーパーマイスター制度の実施
 三機ベストパートナー制度の実施

 

 

また、“Century2025”Phase3の目標及び当連結会計年度の実績は以下のとおりであります。

Phase3最終年度(2025年度)の目標と2024年度の結果

(単位:億円)

 

Phase3最終年度
 (目標)

 2024年度
 (実績)

売上高

2,200

2,531

売上総利益

360

474

(率)

(16.5%)

(18.8%)

経常利益

120

230

(率)

(5.5%)

(9.1%)

 

(注)各利益項目の率は、売上高に対する利益率を表しております。

 

Phase3期間中の目標と結果

 

期間中の目標

実績

2022年度

2023年度

2024年度

経常利益率

5.0%以上

3.3%

5.7%

9.1%

配当性向

50%以上

87.4%

51.3%

50.6%

配当

年70円以上/株

年75円/株

年85円/株

年165円/株

自己株式取得

500万株程度(※2)

計画期間累計 433万株取得

ROE(※1)

8.0%以上

5.1%

9.2%

16.3%

成長投資

200億円程度(※2)

計画期間累計 107億円

 

※1 ROE=自己資本当期純利益率

※2 計画期間中の累計

 

 2024年度の成果

・Phase3最終年度の目標である売上高2,200億円、売上総利益360億円、経常利益120億円を上回り、1年前倒しで

 目標値を達成

 また、ROEも増益により16.3%となり、目標値を達成
  ・年間配当金は、中期経営計画目標値70円以上に対して165円に増配
 ・自己株式は、計画値の87%を取得(Phase3期間中の累計)
 ・成長投資は、人的投資、IT投資、省エネ設備投資等に107億円を実施

 

 ② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、資金需要のうち主なものは、工事費や人件費等の販売費及び一般管理費等の支払によるものであります。運転資金等の必要資金については、内部資金又は借入により資金調達することとしております。

 

 

 ③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

この連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の報告数値及び報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを行わなければなりません。すなわち、貸倒引当金、完成工事補償引当金等各種引当金及び法人税等、並びに履行義務を充足するにつれて一定期間にわたり収益を認識する方法を適用した工事の予定利益率等に関する見積り及び判断に対して、継続して評価を行っております。

当社グループは建設業を営んでおり、収益計上の殆どを履行義務を充足するにつれて一定期間にわたり収益を認識する方法により計上しております。そのため、同方法に基づき適正に計上することは当社グループにとって重要なプロセスであると認識しております。当社グループでは、同方法に基づき個々の工事契約について契約の締結状況、予定原価の見直し、工事進捗に応じた原価計上がされているかを精査のうえ、会計処理を行っております。これら手続きは標準的なプロセスとして整備・運用し、当連結会計年度においても適正な手続きを経て連結財務諸表に反映しております。

なお、見積り及び判断・評価については、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づき行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。

 

 

5 【重要な契約等】

(1) 提出会社における主な販売契約

 

相手会社名

国名

契約製品

契約の内容

契約期間

アルファ・ラバル株式会社

日本

遠心分離機及びスターチ製造技術

販売権の許諾

自 2009年10月
至 2025年12月

 

 

 

(2) 提出会社における主な技術受入契約

 

相手会社名

国名

契約製品

技術提携の内容

対価

契約期間

エフ・エル・スミス

A/S社

米国

化学鉱山水処理用機械装置及びプラント

技術的知識の提供

工場裸渡売値に対する一定料率のロイヤルティ

自 1988年1月
至 2026年1月

シュティーフェル・ホールディング社

スイス

水冷火格子焼却システム

特許再実施権の許諾
技術的知識の提供

プラントの年間ごみ処理量1トン当たりに対する一定額のロイヤルティ

自 2015年5月
至 2028年5月

 

 

 

(3) 連結子会社における主な販売契約

 

相手会社名

国名

契約製品

契約の内容

契約期間

日本アバイア株式会社

日本

構内電話交換機システム製品群(PBX/米国アバイア社製)

販売権の許諾

自 2019年10月
至 2025年9月

 

 

 

6 【研究開発活動】

当社の研究開発活動は、建築設備セグメントにおいては、居住環境・生産環境・高度情報処理システムに関する技術開発を行っております。具体的には空調・換気・給排水衛生・電気・情報などの分野を対象としております。また、プラント設備セグメントにおいては、機械システム事業(搬送システム・機器などの産業設備)と環境システム事業(上下水処理・廃棄物処理などの環境保全技術)に関する技術開発も行っております。

これらの事業領域を基盤として、快適環境の創造やサステナビリティ、カーボンニュートラルの実現に向けた脱炭素技術、省エネルギー技術の研究開発を進めております。さらに、既存保有技術の高度化と改良、DXを活用した業務プロセス変革と生産性向上に関する開発も積極的に推進しております。

また、子会社においては、特記すべき重要な研究開発活動は行われておりません。

当連結会計年度における研究開発費は2,089百万円であります。なお、研究開発費は主に全社的な研究開発部門に係る費用であり、当部門は複数のセグメントにわたって横断的に活動しております。このため、セグメント別の研究開発費を明確に区分することが困難であるため、研究開発費は総額で記載しております。

主な研究開発成果は以下のとおりであります。

 

(建築設備事業)

(1) クリーンルーム向け広範囲対応温度成層型BroDOUPTM(ブロードアップ)を開発

当社総合研修・研究施設「三機テクノセンター」内に、既に市場導入しているクリーンルーム向け空調システム「DOUP®」の適用範囲を広げ、大規模クリーンルームにも対応可能とした広範囲対応温度成層型「BroDOUPTM(ブロードアップ)」を構築しました。

この空調システムは、クリーンルーム内にクリーンユニットを設置し、冷風を床上高さ0mから2m程度の範囲に供給します。コアンダ効果(流体が壁面に沿って流れる効果)により、冷風を床面水平方向に流動させ、温度成層を形成しながら、ISOクラス6~7の清浄エリアを広範囲に形成します。クリーンユニットの配置にはバリエーションがあり、天吊り型と床置き型の両方を展開いたします。

既に関連特許を6件取得しており、本設備を用いて開発を進めると同時に、積極的に営業展開を進めてまいります。

(2) マイナス80℃露点クラスの極低湿度環境試験室の構築

当社総合研修・研究施設「三機テクノセンター」内に、極低湿度環境試験室を構築し2025年5月から本格運用を開始しました。

当社ではこれまで、マイナス80℃露点クラスの極低湿度環境設備の構築実績がありませんでしたが、本施設を活用して施工・運用の経験を積み、空調方式やダクト構成など除湿機周辺の固有技術の開発と評価を行います。これにより、極低湿度環境の運用における省エネ技術の獲得を進めてまいります。

本極低湿度環境試験室の活用により当社独自技術を確立し、次世代電池の開発・製造を推し進めている自動車業界を筆頭に極低湿度環境を必要とする顧客への営業活動を展開してまいります。

 

(機械システム事業)

(1) 樹脂ケースストックシステムの開発

自動車業界では、部品保管の需要が増加しており、これに対応したケース保管・仕分システムを開発しました。入出庫用クレーンは、コンベヤ式・簡易フォーク式などフレキシブルに対応でき、高精度な位置決めを実現しています。フリーローラコンベヤを採用したことでコンパクトかつ保管効率に優れ、低コストで拡張性のある保管を可能にしました。また、出庫口を複数設置することができるため、ケースをピッキング仕分けする機能も有しております。今後、半導体・医療などの他分野への展開も期待できます。

(2) 移動台車管理システム(RCS)の開発

AGVなどのマテリアルハンドリング機器はレイアウト・搬送能力に応じた最適な配車が求められます。当社のメリス・ビアンカ®においては、物流センター向け以外に製造現場の工程間搬送に使用されることも想定し、独自の管理システムを開発しました。一般に移載ステーションや走行ルートにはレイアウトによって制約があり、導入案件ごとにAGVがスムーズに動くようなソフトウェアを作りこむ必要がありました。最適なルート選択、さらに交差点走行などの優先順位や回避機能などを搭載することにより改善され、ユーザーにとって採用しやすい管理システムを開発することができました。多様な充電方法や移載方法の選択に加え、将来の機能拡張を想定したシステムとなっております。あらゆるレイアウトに対応できることから、顧客の求めるシステムに応えることができ、導入の拡大が期待できます。

 

(3) 空港手荷物自動整列装置

空港手荷物ハンドリングの効率向上に寄与する自動整列装置を開発しました。コンベヤ上を流れる手荷物をステレオカメラで自動撮影し、寸法・形状を測定、そのデータを元に手荷物を自動回転させ、搬送方向を揃えて下流へ搬送します。手荷物の向きを一定に揃えることにより、一時保管ストレージラインの格納効率を大きく向上させることにつながり、将来的にはコンテナへの手荷物自動積み込みをする際の整列装置としての展開が期待される装置です。

 

(環境システム事業)

省エネ型水処理装置の開発

自治体が所有・管理する施設のうち、電力消費量の高い施設の1つが下水処理施設と言われており、2050年カーボンニュートラルの実現に向けてさらなる省エネルギー化が必要です。また、国内の下水処理施設では、施設の統廃合などによる既存施設の能力増強が求められるケースも増えてきております。

当社は、省エネルギー性や処理能力に優れた新たな排水処理法として、MABRの研究開発を進めており、OxyMem社と独占販売契約を締結しました。MABRは中空糸膜を束ねたモジュールで、曝気が不要で酸素供給に必要な送風動力が削減できるため省エネルギー性に優れ、既設の反応タンクに設置することで処理能力を増強することが可能です。

当社はMABRを活用した実証試験を下水処理施設で実施しており、今後、普及展開に努めてまいります。

※MABR(Membrane Aerated Biofilm Reactor):ガス透過膜を微生物担持体かつ酸素供給体とした生物膜反

 応器

 

(不動産事業)

研究開発活動は特段行われておりません。