文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 経営の基本方針
①三機工業グループ経営理念
当社グループは、「三機工業グループ経営理念」を掲げ、社会における当社グループの存在意義と役員・従業員のあるべき姿を総合的に表現しております。当社グループではこれを「三機スタンダード」と呼んで社内外への浸透を図っております。
②超長期ビジョン
当社グループは、超長期ビジョンとして2050年の姿「選ばれ続ける三機へ!」を掲げています。5つのマテリアリティ(重要課題)に注力したサステナビリティ経営の推進により、環境・社会価値の向上と企業価値(経済価値)の向上を両立させるCSV(Creating Shared Values:共有価値の創造)を実現します。

③経営ビジョン及び中期経営計画
当社グループは、創立100周年を迎えた2025年度を新たな出発点と位置づけ、2030年度までの期間を対象とする経営ビジョン“MIRAI 2030”及び2027年度までの3ヵ年を対象とする中期経営計画2027を策定いたしました。
新たな経営ビジョン“MIRAI 2030”では、「人に快適を。地球に最適を。」をテーマに環境・社会価値の向上と企業価値(経済価値)の向上の両立を目指し、2050年の超長期ビジョン「選ばれ続ける三機へ!」の実現に繋げていきます。
中期経営計画2027は、経営ビジョン“MIRAI 2030”に向けた飛躍のための土台作り期間と位置付けており、「深化と共創」を重点テーマに掲げ、以下のとおり重点戦略を定めております。

また、中期経営計画2027における経営目標値は以下のとおりです。
・2027年度経営目標
・2025年度から2027年度の期間経営目標
(※1)EPS、ROEは政策保有株式の売却益を除く
(※2)計画期間中の累計
エンジニアリング企業である当社が保有する様々な技術を磨き続け、施工の効率化・省人化・省力化を進めるなど、既存事業を「深化」させていきます。また、協力会社からスタートアップ企業にいたるまでの多様なパートナーと「共創」し、『選ばれ続ける三機へ!』としてステークホルダーの皆様との共存共栄を目指していきます。
(2) 経営環境及び対処すべき課題等
経営環境については、脱炭素化の動き、少子高齢化、働き方改革、AI技術の急速な進展等、大きく環境が変化していると認識しております。これらの環境変化に対応すべく、「省エネルギー・創エネルギー事業」、「自動化・省人化事業」、長時間労働の解消など働きやすい環境づくりを目的とした当社独自の働き方改革である「スマイル・プロジェクト」を推進してまいります。
当連結会計年度の主な取り組みと今後の課題は次のとおりであります。
①グループ全体
(E)事業活動を通じた地球環境課題解決
・脱炭素社会実現に向けた技術開発や省エネルギーに貢献する製品の拡販
・当社独自の寄付制度「SANKI YOUエコ貢献ポイント」強化
・環境省「生物多様性のための30by30アライアンス」の継続参加
・CDP「気候変動Aリスト(最高評価)」に3年連続で選定
・SBT(※)認定の取得
※国際イニシアチブ「SBTi」が認定する「パリ協定の水準(世界の気温上昇を産業革命前比1.5℃に抑える水準)を満たす温室効果ガス削減目標」
・タイ王国の工業団地における省エネ型排水処理施設(DHSシステム)導入調査事業が経済産業省の令和5年度補正「グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金」に採択
・COP29ジャパン・パビリオン内セミナーにおいて当社技術を紹介
(S)働き方改革、コミュニケーション向上、文化・スポーツ支援の積極実施
・当社独自の働き方改革「スマイル・プロジェクト」の継続
・2024年度に入社した社員の初任給並びに従業員の給与水準引き上げ
・「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)」に3年連続認定
・次世代育成と地域社会貢献として、小学生向けに身近な化学や環境保全に関する出前授業の実施
・6言語版安全衛生手帳で多様な人材に対応した安全衛生教育を推進
・優秀な人材の確保・定着に向けた取り組みとして「アルムナイネットワーク」の運用及び「奨学金代理返還制度」を導入
・社会貢献活動として「こころの劇場」に特別協賛及び運営ボランティアに参加
(G)三機工業コーポレートガバナンス・ガイドラインに基づく取り組み継続
・東証プライム市場に求められる一段高いガバナンス水準に到達・維持
・国内子会社5社でBCMS(※)の運用継続
※BCMS:事業継続マネジメントシステム
②事業別
・建築設備事業
大都市圏での大型再開発事業及び半導体、EV電池、バイオ医薬関連などの産業空調分野の民間投資が活発で、市場は堅調に推移したことから、前年を上回る繰越受注を確保しました。その一方で、機器類納期の長期化は改善傾向にあるものの、依然として資機材価格と労務費の上昇、技術者不足は継続しております。また、案件の大型化が進んでおりますが、工程が長期間にわたる大型工事に関しては、計画工期の変更や施工中物件の工程遅れも見られ、労務費・資機材価格高騰等のリスクと併せて、影響を軽減することが課題となります。
・機械システム事業
2024年問題などの人手不足を背景とした自動化・省人化ニーズは製造業・非製造業ともに底堅く、これを取り込むべく将来の成長が見込める二次電池、医療・医薬、物流分野に注力しました。電池の検査装置の輸出案件が出件するなど、明るい兆しが見えてきております。
・環境システム事業
社会インフラとしての上下水処理施設、廃棄物処理施設への公共投資は前年並みの水準で推移していますが、脱炭素社会に向けた省エネルギーニーズが高いことから、省エネルギー性能の高い製品の拡販、並びにDBO(※)方式による温室効果ガス排出量削減を主体とした事業提案を行っております。また、海外市場においても、エアロウイング(省エネ型散気装置)の販売が好調なことを受け、国内外で設備投資を積極的に進め、事業拡大を図ってまいります。
※DBO(Design Build Operate):設計・建設と運営・維持管理を民間事業者に一括発注する手法
また、東京証券取引所からの「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請につきましては、当社取締役会における資本収益性や市場評価についての現状分析をもとに、2025年度から始める中期経営計画2027において、企業価値向上に資する経営資源の適切な配分の方針を策定いたしました。
2024年度のROEは16.3%となり、2024年度の属する前中期経営計画である“Century 2025”Phase3に掲げたROE目標値の8%以上を大幅に上回る結果となりました。また、PBR(株価純資産倍率)も安定して1倍超の水準となっております。
一方、昨今の金利上昇により、当社が認識している株主資本コストは、従来の6~7%から現時点では7~8%に上昇しております。中期経営計画2027では、エクイティスプレッドを意識し、ROE・EPSの持続的な向上により企業価値の更なる増大を目指してまいります。
当社グループは、超長期ビジョンで掲げる「選ばれ続ける三機へ!」を実現するため、新たに「人に快適を。地球に最適を。」をスローガンに掲げ、2つの課題を同時に解決することでサステナビリティ社会へ貢献するために、新技術の開発、コーポレートガバナンスの一層の強化に取り組み、コンプライアンスの徹底を土台として、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向け鋭意努力を重ねてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) サステナビリティに関する考え方
当社グループは、サステナビリティ経営を推進し、環境・社会への貢献と収益確保を両立させて、長期にわたり持続可能な発展を続けていくため、経営理念をもとにしたサステナビリティ方針を定めております。
また、当社グループのサステナビリティを実現するための重要課題であるマテリアリティを特定しております。
様々な視点から抽出した課題を「環境・社会価値の向上」と「企業価値の向上」の両面から評価し、優先順位の高いものをグループ化して5つのマテリアリティとしております。このマテリアリティをもとに各施策を立案し、取り組みを進めております。
(ⅰ)ガバナンス
当社グループは、サステナビリティ課題全般について対応するため、代表取締役社長を委員長とし常勤取締役をメンバーとするサステナビリティ委員会を設置しております。
サステナビリティ委員会では、サステナビリティ経営を実現するための重要課題・施策を審議・決定しております。委員会の審議・決定内容については、経営会議、取締役会に報告され、監督を受けております。また、事業・経営戦略への影響が大きい課題については、重要性に応じて経営会議、取締役会へ付議され、決定・承認されております。
委員会の下部組織として設けた各部門の実務担当者からなるサステナビリティ推進会議では、委員会の審議・決定事項のグループ全体への周知や具体的なサステナビリティ推進活動の討議・推進や進捗確認を行っております。
<サステナビリティ推進体制>

(ⅱ)リスク管理
当社グループは、事業運営におけるリスクを把握し、リスクの顕在化を未然に防止するとともに、顕在化した場合の損失を極小化することを目的に、「リスク管理委員会」を設置しております。
リスク管理委員会では、当社グループの事業に影響を与えるリスクを洗い出し、影響度や頻度等を可能な限り定量的に評価し、優先順位や担当部署及び対応方針、コントロールの内容を定め、具体的な対応策の進捗・効果のモニタリングとレビューを行っております。委員会の審議・決定内容については、重要度に応じてサステナビリティ委員会、経営会議、取締役会に付議され、決定・承認後、グループ全体へ展開されております。
気候変動関連リスクおよび機会については、サステナビリティ委員会で影響度評価を行うとともに「リスク管理委員会」及び「「サステナビリティ推進会議」と連携し対応策の進捗等を管理しております。
(2) 重要なサステナビリティ項目
① 気候変動関連
当社グループは、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同し、提言に基づく気候関連情報の開示を実施しております。
(ⅰ)戦略
当社グループは、特定したマテリアリティの中でも「脱炭素社会への貢献」を最優先課題と位置づけ、リスクと機会の両面から気候変動問題に取り組んでおります。
気候変動が事業に与える中・長期的なインパクトを把握するためにシナリオ分析を実施し、抽出したリスクと機会については、経営ビジョン“MIRAI 2030”及び「中期経営計画2027」に盛り込み、経営計画と一体化させて取り組みを進めております。
<シナリオ分析>
分析においては、2100年時点において産業革命時に比べ世界の平均気温上昇が1.5℃に抑制されることを想定した1.5℃シナリオと、4℃程度上昇する4℃シナリオを採用し、各シナリオにおいて政策や市場動向の変化による移行リスクと、災害などによる物理リスクを推測しました。
各シナリオに対して、当社グループに対するリスク・機会を特定し、財務インパクトを評価して、その影響度を大・中・小の3段階で表現しております。

※1国際エネルギー機関(International Energy Agency)の略称。エネルギー安全保障の確保を目標に掲げるOECD(経済協力開発機構)の下部の国際機関であり、エネルギー政策全般をカバーしている。
※2気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)の略称で、気候変化、影響、適応及び緩和方策に関し、包括的な評価を行うことを目的として、1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)により設立された組織。
<リスクと機会>

(ⅱ)指標と目標
当社グループは、温室効果ガス排出量を最も重要な気候変動関連指標としております。「SANKIカーボンニュートラル宣言」にあるとおり、Scope1,2においては2030年、Scope1,2,3においては2050年のカーボンニュートラル達成を長期目標としております。また、経営ビジョン“MIRAI 2030”においては、2030年にScope3の25%削減(2020年度比)を掲げて「脱炭素社会への貢献」を推進しております。
<三機工業グループ温室効果ガス排出量>

② 人的資本関連
(ⅰ)人財戦略
[人財育成方針]
当社グループは技術(スキル)を有する従業員が事業競争力や企業価値の源泉であり、最大の財産と考えています。当社は、経営理念「エンジニアリングをつうじて快適環境を創造し広く社会の発展に貢献する」を実現させるための「人財育成方針」と「求める人財像」を定め、従業員が切磋琢磨し、社会人としての成長も実感できる教育・研修体系を整備してまいります。
従業員一人ひとりのキャリア形成においては個性や特性を十分に考慮しつつ、各自が最大限に能力を発揮できるよう適正配置を行い、業務経験を通じて成長の機会を得られるようにしております。
また、2025年度に策定した新たな経営ビジョン“MIRAI 2030”においては人財戦略のスローガンを
とし、経営戦略を実行するために取り組む重点テーマを「人財戦略の3つの骨子(基本方針)」と定めました。
さらに、経営戦略実行のために獲得が必要な対応力を特定し、「変化に対応できる力」の向上を目指します。
[社内環境整備方針]
マテリアリティの一つである「働く仲間の幸福の追求」を目指し、従業員一人ひとりが働きがいを持ち、働き続けることができる環境を整備しております。
従業員の期待度と満足度を測る企業価値向上KPIとして、「エンゲージメントスコア」を設定しております。本指標は、株式会社リンクアンドモチベーションのモチベーションクラウドを利用し、会社の目指す姿や方向性に対する、従業員の理解・共感の度合いを偏差値(標準スコア50.0)で算出したものです。
2024年度に実施した「エンゲージメントサーベイ」により、当社の強みと課題点が明らかになりましたので、強みは積極的に伸ばしていき、課題点に対しては背景を分析し対策を講じてまいります。
(ⅱ)指標と目標
当社グループでは、上記「(ⅰ)人財戦略」については内閣官房が示す「人的資本可視化指針(7分野19項目)」の項目を用いております。
本来、この7分野19項目全てに目標及び実績を開示するべきですが、優先順位を付け、順次目標及び実績を開示してまいります。
なお、開示する目標及び実績は原則定量的な数値といたしますが、数値化できない項目については定性的な目標といたします。
当社グループでは、上記「(ⅰ)人財戦略」において記載した、人財育成方針及び社内環境整備方針に係る指標については、関連する指標のデータ管理と、具体的な取り組み実績を記載しております。ただし、連結グループに属する全ての会社で同様の管理や取り組みが行われていないため、各指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。
[人財の獲得]
〇採用
採用市場を踏まえたうえで、経営ビジョン“MIRAI 2030”に基づいた要員計画を作成し、積極的な採用活動を行っております。新卒採用においては当社で活躍している従業員の特性分析を行い、「採用要件」を定め、優秀な学生の確保に努めております。
キャリア採用においてはキャリア採用希望者からの応募に加え、「ダイレクトスカウティング」、「高度人財登用制度」、「キャリアリターン制度」を導入しており、2025年度からは従業員が自身の知人等を採用候補者として会社に紹介する「リファラル採用制度」、「キャリアリターン制度」への応募を容易とすることを目的に「アルムナイネットワーク」を構築し、即戦力となる人財の確保に努めております。
(単位:名)
*新卒採用は翌4月入社の人数を示しております。
経営ビジョン“MIRAI 2030”において、持続的な成長を図る上での企業価値向上KPIとして、2027年度末までに従業員数を2,900名(連結)とする目標を新たに定めました。
[人財の成長・育成]
〇リーダーシップ
管理職のリーダーシップ醸成に向け、その発揮を期待する部長・課長を対象に就任時及び定期的な教育・研修を対面・オンライン・動画配信等の方法で行っております。
〇スキル・経験
今後、「人財育成方針」で定めた人財像に求められるスキルの特定を行い、スキルマップの作成及びタレントマネジメントシステムを用いた保有スキルの可視化を行ってまいります。
経営ビジョン“MIRAI 2030”において、持続的な成長を図る上での企業価値向上KPIとして、当社が定める業務上必要とする資格の取得数を従業員のスキルの習得状況を測る指標として、2027年度末までに2024年度比10%伸長させる目標を定めました。
〇若手の積極登用
管理職層においては「早期登用制度」を整備し次世代を担う若い世代の積極的な登用を行っております。
具体的な指標は次のとおりです。
[人財の維持]
〇維持
建設業界においては短期的・中長期的な視点においても人手不足が顕著であり、当社においても重要な経営課題と考えております。
積極的な採用活動を行っている一方、人財の流出を防止するため従業員の処遇改善(ベースアップ、各種手当の増額)を行っております。
また、高年齢者の就業の機会を確保するために、2022年度から定年年齢を60歳から65歳に引き上げ、再雇用制度を見直し、最長70歳まで就業可能な制度を整備しております。これにより、知識や経験豊富な従業員から若手従業員への技術継承を円滑に行っていくとともに、人手不足の解消を図ってまいります。
[2024年度 離職者数・離職率(自己都合退職に限る)]
男性・女性別 離職者数・離職率
職種別 離職者数・離職率
入社年度別 新卒入社後3年以内の離職者数・離職率
〇ダイバーシティ推進
2022年に当社グループのマテリアリティの1つに「働く仲間の幸福の追求」と定め、その具体策としてダイバーシティの推進を行っております。
ダイバーシティの推進にあたっては年齢、性別、国籍、宗教、障がいの有無等によらず、多様な人財が互いを認め合い尊重し、違いを活かして最大限能力を発揮できる職場環境を目指しております。
(注) 女性管理職比率につきましては、「
〇エンゲージメント
サステナビリティ経営のマテリアリティに掲げている「働く仲間の幸福の追求」を測る指標として2023年度にエンゲージメントサーベイを実施し、エンゲージメントスコアは「51.3」でした。今後はさらに高い水準を目指し、2025年度までにエンゲージメントスコアを「55.0」とすることを目標としておりましたが、経営ビジョン“MIRAI 2030”において持続的な成長を図る上での企業価値向上KPIとして、新たに2027年度までにエンゲージメントスコアを 「57.0」とする目標に変更しました。この目標を達成するため、会社と従業員のコミュニケーションを密に図るなどの取り組みを継続的に実施し、「従業員から選ばれ続ける会社」を目指してまいります。
〇育児休業
育児と仕事の両立支援の様々な施策を展開しています。従業員がライフイベントに合わせて柔軟な働き方ができるよう、一部には法律を上回る制度を整備(育児特別休暇)し、啓発活動を行っております。
※2022年度は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(2015年法律第64号)に基づく育児休業取得率のみを公表していましたが、2023年度からは「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(1991年法律第76号)に基づく、会社独自の休暇を含めた数値もあわせて公表しております。
(注) 男性の育児休業取得率につきましては、「
当社グループの事業運営に影響を与える可能性のあるリスクを統合的に把握し、リスクの顕在化を未然に防止するとともに、顕在化した場合の損失を極小化することを目的に、「リスク管理委員会」を中心としたリスクマネジメント体制を構築しています。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項につき、重大な影響を及ぼす可能性のある主なリスクには、以下のようなものがあります。リスク項目及びカテゴリーの記載にあたっては、影響度及び顕在化の可能性から判断し、優先順位が高いものから、その具体的な内容と対策を記載しています。
なお、記載内容には、将来の予想に関する事項も含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 設備工事事業共通(建築設備事業、機械システム事業、環境システム事業)
(2) 建築設備事業
(3) 機械システム事業
(4) 環境システム事業
※ライフサイクルエンジニアリング(Life Cycle Engineering)事業の略称。新築、保守・メンテナンス、リニューアル、建替えといった建築物のライフサイクル全体を通じてサービスを提供する当社グループの事業コンセプト
(5) 不動産事業
(6) 当社グループ共通リスク
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度は、2025年4月に創立100周年を迎えるにあたり、長期ビジョン“Centur2025”の最終フェーズである4カ年の中期経営計画“Century 2025”Phase3の3年目において、前期に引き続きPhase1の「質」を高める取り組み及びPhase2の「信頼」を高める取り組みを継続しつつ、社会のサステナビリティへの貢献や働き方改革、次世代に向けた投資など新たな施策を実施し、「選ばれ続ける企業」を目指してまいりました。さらに、SBT(Science Based Targets)認定の取得等、脱炭素社会への貢献に取り組むと共に、当社独自の働き方改革である「スマイル・プロジェクト」の推進により、当社グループが掲げる重要課題の一つである「働く仲間の幸福の追求」を実現してまいりました。
その結果、当連結会計年度における当社グループの財政状態及び経営成績は次のとおりとなりました。
(財政状態)
(経営成績)
(注)各利益項目の率は、売上高に対する利益率を表しております。
<主要セグメント別経営成績>
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末におけるキャッシュ・フロー(C/F)の状況は次のとおりであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社グループが営んでいる事業の大部分を占める設備工事事業では生産実績を定義することが困難であり、また請負形態をとっているため販売実績という定義は実態にそぐいません。
また、当社グループにおいては設備工事事業以外では受注生産形態をとっておりません。
よって受注及び販売の状況については、可能な限り「① 財政状態及び経営成績の状況」において報告セグメントの種類に関連付けて記載しております。
なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりであります。
受注高及び売上高の状況
a.受注高、売上高及び繰越高
(注) 1 前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注高にその増減額を含んでおります。したがって、当期売上高にもかかる増減額が含まれております。
2 次期繰越高は(前期繰越高+当期受注高-当期売上高)に一致しております。
受注方法は、特命と競争に大別されます。これを受注金額比で示すと次のとおりであります。
(注) 1 完成工事のうち主なものは、次のとおりであります。
前事業年度完成工事のうち請負金額10億円以上の主なもの
当事業年度完成工事のうち請負金額10億円以上の主なもの
2 前事業年度及び当事業年度ともに完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はありません。
次期繰越工事のうち請負金額10億円以上の主なものは、次のとおりであります。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(財政状態)
前連結会計年度との主な増減要因については「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
なお、当社グループは次項「(経営成績)」に記載のとおり、中期経営計画“Century2025” Phase3で策定、開示した財務・資本政策に則り、資本効率の向上に取り組んでまいりました。
当連結会計年度においては、自己株式の取得や、積極的な株主還元(増配)など資本効率の向上に努めてまいりました。
(経営成績)
前連結会計年度との主な増減要因については「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
(注)各利益項目の率は、売上高に対する利益率を表しております。
当期は次の施策を実施してまいりました。
○セグメント別の施策
<建築設備事業>
・半導体やEV電池、バイオ医薬等の将来性の高い分野へ注力
・テナント工事や改修工事等で長期的な業績貢献が見込める都市再開発案件に参画
・エンジニアリング推進本部を設置し、物件の大型化と特殊物件に対応する全社横断的な体制を構築
・建築設備専用CAD「Rebro(レブロ)」の自動作図機能の共同開発に着手
・自動風量計測ロボット技術の多用途展開
・マイナス80℃露点クラスの極低湿度環境試験室を三機テクノセンター内に構築
・オフィスデザイン業務を効率化するアプリケーションの開発に着手
<機械システム事業>
・2024年度グッドデザイン賞を受賞した自動仕分けシステム「メリス・ビアンカ®」を積極展開
・「ブランチボール」(3方向分岐装置)を発展させた「BBソータ™」(仕分装置)を開発し、展示会へ出展
<環境システム事業>
・エアロウイング(省エネ型散気装置)の生産拡大のため、海外工場の機能アップに加えて、生産設備増強を国
内で推進
・廃棄物処理施設の更新需要を見据えた、M&Aによる事業拡大の推進(2025年5月1日 株式譲渡契約締結)
上記施策のほか、次の全社的な施策を実施いたしました。
・原価管理の徹底(内部統制プロセスの徹底)
・協力会社との関係強化
三機スーパーマイスター制度の実施
三機ベストパートナー制度の実施
また、“Century2025”Phase3の目標及び当連結会計年度の実績は以下のとおりであります。
Phase3最終年度(2025年度)の目標と2024年度の結果
(注)各利益項目の率は、売上高に対する利益率を表しております。
Phase3期間中の目標と結果
※1 ROE=自己資本当期純利益率
※2 計画期間中の累計
2024年度の成果
・Phase3最終年度の目標である売上高2,200億円、売上総利益360億円、経常利益120億円を上回り、1年前倒しで
目標値を達成
また、ROEも増益により16.3%となり、目標値を達成
・年間配当金は、中期経営計画目標値70円以上に対して165円に増配
・自己株式は、計画値の87%を取得(Phase3期間中の累計)
・成長投資は、人的投資、IT投資、省エネ設備投資等に107億円を実施
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、資金需要のうち主なものは、工事費や人件費等の販売費及び一般管理費等の支払によるものであります。運転資金等の必要資金については、内部資金又は借入により資金調達することとしております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
この連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の報告数値及び報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを行わなければなりません。すなわち、貸倒引当金、完成工事補償引当金等各種引当金及び法人税等、並びに履行義務を充足するにつれて一定期間にわたり収益を認識する方法を適用した工事の予定利益率等に関する見積り及び判断に対して、継続して評価を行っております。
当社グループは建設業を営んでおり、収益計上の殆どを履行義務を充足するにつれて一定期間にわたり収益を認識する方法により計上しております。そのため、同方法に基づき適正に計上することは当社グループにとって重要なプロセスであると認識しております。当社グループでは、同方法に基づき個々の工事契約について契約の締結状況、予定原価の見直し、工事進捗に応じた原価計上がされているかを精査のうえ、会計処理を行っております。これら手続きは標準的なプロセスとして整備・運用し、当連結会計年度においても適正な手続きを経て連結財務諸表に反映しております。
なお、見積り及び判断・評価については、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づき行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。
当社の研究開発活動は、建築設備セグメントにおいては、居住環境・生産環境・高度情報処理システムに関する技術開発を行っております。具体的には空調・換気・給排水衛生・電気・情報などの分野を対象としております。また、プラント設備セグメントにおいては、機械システム事業(搬送システム・機器などの産業設備)と環境システム事業(上下水処理・廃棄物処理などの環境保全技術)に関する技術開発も行っております。
これらの事業領域を基盤として、快適環境の創造やサステナビリティ、カーボンニュートラルの実現に向けた脱炭素技術、省エネルギー技術の研究開発を進めております。さらに、既存保有技術の高度化と改良、DXを活用した業務プロセス変革と生産性向上に関する開発も積極的に推進しております。
また、子会社においては、特記すべき重要な研究開発活動は行われておりません。
当連結会計年度における研究開発費は
主な研究開発成果は以下のとおりであります。
(建築設備事業)
(1) クリーンルーム向け広範囲対応温度成層型BroDOUPTM(ブロードアップ)を開発
当社総合研修・研究施設「三機テクノセンター」内に、既に市場導入しているクリーンルーム向け空調システム「DOUP®」の適用範囲を広げ、大規模クリーンルームにも対応可能とした広範囲対応温度成層型「BroDOUPTM(ブロードアップ)」を構築しました。
この空調システムは、クリーンルーム内にクリーンユニットを設置し、冷風を床上高さ0mから2m程度の範囲に供給します。コアンダ効果(流体が壁面に沿って流れる効果)により、冷風を床面水平方向に流動させ、温度成層を形成しながら、ISOクラス6~7の清浄エリアを広範囲に形成します。クリーンユニットの配置にはバリエーションがあり、天吊り型と床置き型の両方を展開いたします。
既に関連特許を6件取得しており、本設備を用いて開発を進めると同時に、積極的に営業展開を進めてまいります。
(2) マイナス80℃露点クラスの極低湿度環境試験室の構築
当社総合研修・研究施設「三機テクノセンター」内に、極低湿度環境試験室を構築し2025年5月から本格運用を開始しました。
当社ではこれまで、マイナス80℃露点クラスの極低湿度環境設備の構築実績がありませんでしたが、本施設を活用して施工・運用の経験を積み、空調方式やダクト構成など除湿機周辺の固有技術の開発と評価を行います。これにより、極低湿度環境の運用における省エネ技術の獲得を進めてまいります。
本極低湿度環境試験室の活用により当社独自技術を確立し、次世代電池の開発・製造を推し進めている自動車業界を筆頭に極低湿度環境を必要とする顧客への営業活動を展開してまいります。
(機械システム事業)
(1) 樹脂ケースストックシステムの開発
自動車業界では、部品保管の需要が増加しており、これに対応したケース保管・仕分システムを開発しました。入出庫用クレーンは、コンベヤ式・簡易フォーク式などフレキシブルに対応でき、高精度な位置決めを実現しています。フリーローラコンベヤを採用したことでコンパクトかつ保管効率に優れ、低コストで拡張性のある保管を可能にしました。また、出庫口を複数設置することができるため、ケースをピッキング仕分けする機能も有しております。今後、半導体・医療などの他分野への展開も期待できます。
(2) 移動台車管理システム(RCS)の開発
AGVなどのマテリアルハンドリング機器はレイアウト・搬送能力に応じた最適な配車が求められます。当社のメリス・ビアンカ®においては、物流センター向け以外に製造現場の工程間搬送に使用されることも想定し、独自の管理システムを開発しました。一般に移載ステーションや走行ルートにはレイアウトによって制約があり、導入案件ごとにAGVがスムーズに動くようなソフトウェアを作りこむ必要がありました。最適なルート選択、さらに交差点走行などの優先順位や回避機能などを搭載することにより改善され、ユーザーにとって採用しやすい管理システムを開発することができました。多様な充電方法や移載方法の選択に加え、将来の機能拡張を想定したシステムとなっております。あらゆるレイアウトに対応できることから、顧客の求めるシステムに応えることができ、導入の拡大が期待できます。
(3) 空港手荷物自動整列装置
空港手荷物ハンドリングの効率向上に寄与する自動整列装置を開発しました。コンベヤ上を流れる手荷物をステレオカメラで自動撮影し、寸法・形状を測定、そのデータを元に手荷物を自動回転させ、搬送方向を揃えて下流へ搬送します。手荷物の向きを一定に揃えることにより、一時保管ストレージラインの格納効率を大きく向上させることにつながり、将来的にはコンテナへの手荷物自動積み込みをする際の整列装置としての展開が期待される装置です。
(環境システム事業)
省エネ型水処理装置の開発
自治体が所有・管理する施設のうち、電力消費量の高い施設の1つが下水処理施設と言われており、2050年カーボンニュートラルの実現に向けてさらなる省エネルギー化が必要です。また、国内の下水処理施設では、施設の統廃合などによる既存施設の能力増強が求められるケースも増えてきております。
当社は、省エネルギー性や処理能力に優れた新たな排水処理法として、MABR※の研究開発を進めており、OxyMem社と独占販売契約を締結しました。MABRは中空糸膜を束ねたモジュールで、曝気が不要で酸素供給に必要な送風動力が削減できるため省エネルギー性に優れ、既設の反応タンクに設置することで処理能力を増強することが可能です。
当社はMABRを活用した実証試験を下水処理施設で実施しており、今後、普及展開に努めてまいります。
※MABR(Membrane Aerated Biofilm Reactor):ガス透過膜を微生物担持体かつ酸素供給体とした生物膜反
応器
(不動産事業)
研究開発活動は特段行われておりません。