第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。

(経営方針)

当社グループは「熱技術」を核として、エネルギーの有効活用や地球環境の保全などの社会的要請に的確に応えるとともに、情報・通信の高機能化など先端分野にも新しい価値を創造し、公正な企業活動を行い社会の発展に貢献することを、企業活動の基本理念としております。

また、株主や取引先、従業員などのすべてのステークホルダーの期待と信頼に応えるべく、確固たる事業基盤を確立し、収益力ある安定した企業体質を形成していくことが経営の基本方針であります。

 

(経営環境及び対処すべき課題)

当社グループはものづくりに不可欠な「熱技術」を社会のニーズに合わせて進化させ、カーボンニュートラルに資するべく水素やアンモニア燃焼などの技術開発と積極的な提案を行なうとともに、納入設備のライフサイクルに合わせたメンテナンス体制の更なる拡充を進めてまいります。

また、中長期においても当社グループを取り巻く社会・経済環境は急激かつ大幅に変化することが予想されます。このような経営環境の下、2022年5月に発表した中期経営計画(「Chugai Ro Break Through(CBT)2022-2026」)の経営ビジョン2026「自ら変革し、カーボンニュートラル技術で未来をひらく!」に邁進すべく、3つの重要戦略:(1)カーボンニュートラルを中心に新市場の創出、(2)既存商品のニーズ適合ブラッシュアップで拡販と利益向上、(3)働きがいのある職場作り、に基づき計画を実行してまいります。

具体的施策として、堺事業所内に2023年11月に完成しました新研究所「熱技術創造センター」をフル活用して、研究開発部門への設備・人材投資をすることで、新市場の創出が可能な土壌作りを行ないます。また、業務効率化に資するシステム投資として、従来よりネットワークを大幅に強化した設計支援システムを導入し、労働時間の短縮を図り、より働きがいのある環境を整え、熱技術を取り扱う工業炉メーカとして社会的使命である「2050年カーボンニュートラル」へ貢献する先進企業を目指してまいります。

さらには、コーポレートガバナンス・コードの原則を踏まえ、企業統治体制・経営の透明性・効率性の改善を図り、企業価値の向上や連結経営基盤の強化に努め、株主の皆様への還元拡充にも努めてまいりたいと存じます。

また、中期経営計画(2022年度~2026年度)において、ROE10%以上、総還元性向50%以上、税引後営業利益(NOPAT)60%の配当性向を財務目標の一つとして掲げ、経営基盤の強化と事業収益の拡大に向けた取組みを実行してまいります。

事業投資においては、資本コストを意識しながら最適な経営判断を行うとともに、株主還元の拡充や資本効率の拡充を図るため、適正かつ安定的な配当政策や自己株式の取得・償却などを実行してまいります。

 

当社グループの目標とする経営指標は以下のとおりです。

 

経営指標(連結ベース)

2026年3月期目標値

2027年3月期目標値

受注高(百万円)

37,800

42,000

売上高(百万円)

37,500

41,500

営業利益(百万円)

3,000

3,620

売上高営業利益率(%)

8.0

8.7

自己資本利益率(ROE)(%)

9.7

10.0

 

   (注) 2027年3月期は、中期経営計画の最終年度になります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティ方針は、経営理念として掲げている「熱技術を核として新しい価値を創造し、これを通じて社会に貢献するとともに企業の繁栄と社員の幸福を実現する」と同義と考え、当社グループの強みを活かした事業活動を通じて、カーボンニュートラルを中心とした新市場の創出や既存商品のより一層のブラッシュアップ、さらには社内における働きがいのある職場作りといった取り組みに積極的に挑戦しています。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

当社はリスクと考えられる重要課題につきまして、社長を議長とした取締役会メンバー等で構成される「リスクマネジメント委員会」で審議・決定しております。さらにESG、SDGsへの取り組み及び気候変動問題への対応を経営の主軸に据えるべく中期経営計画を推進する「事業進捗確認会議」と連携し、二酸化炭素(CO2)排出削減などについて経営による主導的な管理のもと、サステナビリティ推進に関して事業横断的に取り組みを進めています。

当社として取り組むべき重要な社会課題を特定し、当社グループの価値観、中期経営計画の各戦略と紐付けることで、SDGsの目標に貢献し、かつ当社グループの発展につなげる施策を着実に進めてまいります。

 

(2)戦略

日本政府の「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」に基づき、温暖化への対応を成長の機会と捉えて、グリーン成長戦略を推進してまいります。化石燃料を熱源とする工業炉の需要減少、自動車EV化に伴う部品点数の減少等、工業炉業界全体として影響が見込まれますが、その一方で車載用モータ、電池などのEVに関係する部品や、水素・アンモニア燃焼、電化のニーズが高まるなか、リジェネバーナ、酸素富化燃焼機器等、省エネ型燃焼機器及び設備改修に対する設備投資も当面の間継続することが見込まれます。さらに、中長期的には石炭火力発電のアンモニア専焼バーナによるカーボンニュートラル化を目指した開発も進めてまいります。

当社が得意とする熱技術を核とした顧客ニーズに適合した技術・サービスを提供することにより、工場の効率化や環境負荷の低減に貢献することが出来ると考えております。加えて、当社が開発した水素・アンモニア燃焼、電化をはじめとするカーボンニュートラル技術やサービスを提供することで、顧客のCO2排出削減に大きく貢献することを目指します。
 当社においては、事業継続の最大の危機をもたらすと考えられる南海トラフ巨大地震と津波、台風・豪雨による風水害ならびに大規模感染症を想定し、顧客への影響を最小化する事業継続計画(BCP)を推進し、リスクの低減に努めてまいります。

想定されるリスク

影響

移行リスク

脱炭素化に伴う原料等の高騰

コスト増加

炭素税等の導入や環境に関する法令等の対応

事業コストの増加

自動車のEV化(部品点数の減少)

市場の縮小

石油、LNG等化石燃料を熱源とした工業炉需要の減少

工業炉市場の縮小

物理リスク

南海トラフ巨大地震と津波、台風、豪雨による風水害ならびに大規模感染症

堺事業所の稼働停止

 

 

想定される機会

影響(必要な対応)

車載モータ、電池等EV関連部品の需要増加

販売拡大(関連新規顧客の開拓)

省エネ型工業炉・設備への需要の増加

販売拡大(既存製品の新規改造と応用展開)

水素燃焼、アンモニア燃焼技術への需要の高まり

販売拡大(対応技術/製品の開発)

石炭火力発電のアンモニア燃焼によるカーボンニュートラル化への需要

販売拡大(対応技術/製品の開発)

 

 

 

人材の育成及び社内環境整備に関しては、当社では多様な発想や視点、そして価値観を持った人材の採用を重視しております。性別、国籍、キャリアにおいて幅広く優秀な人材を積極的に受け入れ、これらの人材がより活躍できる人事制度や職場環境を整備してまいります。業種柄、これまで管理職を含む女性社員の割合は低かったものの、今後多様性の確保は極めて重要ととらえ、女性の新卒採用割合を増やし、社員全体における女性社員割合を増やしてまいります。また、在籍女性社員からの積極的な管理職登用を行っていき、加えて外国人管理職の比率についても今後向上を目指してまいります。

 

(3)リスク管理

リスクマネジメント委員会と事業進捗確認会議において、当社のリスクを選定した上で、発生の抑止に対して取り組んでおります。また、その内容および結果は、適宜に取締役会への報告を行っております。
 この仕組みによってグループ全体を統括するリスク管理体制のもと、重大事態をはじめとするリスク発生の回避、およびリスク発生時の損害の最小化を可能にする組織づくりに努めております。加えて気候変動リスクは今後中長期的にさらに広がることが予想されるものと認識したうえで、経営計画への反映や管理方法の検討を図っております。

 

 

(4)指標及び目標、実績

<中外炉工業脱炭素ビジョン2050>
 当社は、サプライチェーン排出量の中でも、「当社の製品の使用」の部分が大きいことから、当社基準による2050年に向けた脱炭素目標を設定しました。パリ協定における日本の削減目標基準となる2013年の当社の製品からのCO2排出量は約1千2百万トンであり、日本全体の排出量のおおよそ1%に相当します。
 これを2050年までに実質ゼロにする目標を設定しています。排出量をゼロにすることは不可能ですが、当社既存商品以外でのCO2削減も含め、2050年にはカーボンニュートラルを達成することを目標としています。
 具体的には、Scope3カテゴリー11に類する形式で脱炭素関連製品の拡販によって実現する削減貢献量を当社独自に算出し、2030年に25%削減、2050年に100%以上削減することを目標としてカーボンニュートラル実現に向けて積極的に取り組んでおります。Scope1およびScope2のCO2排出量につきましても、毎期、算出し、モニタリングしております。

 

 当社製品からのCO2排出量(推計)

 

CO2排出量

(万t/年)

排出削減量

(万t/年)

削減率

(%)

2013年度CO2排出量

1,200

削減目標:2030年度

900

△300

△25.0

削減実績:2024年度

982

△218

△18.2

 

 (注) CO2排出削減量は、設備能力及び稼働率に基づく排出量増減も加味している。

     (経産省発表製造工業生産能力指数、稼働率指数に基づき算出)

 

 Scope1およびScope2のCO2排出量                                                            (t-CO2)

年度

2021年度

2022年度

2023年度

2024年度

Scope1(注1)

496

596

547

660

Scope2

(注2)

マーケット基準

1,248

1,037

1,147

1,446

ロケーション基準

1,480

1,472

1,367

1,524

 

      (注)1 自社が直接排出したCO2排出量。都市ガスは「ガス事業者別排出係数一覧」の当時のバージョンを

        もとに算定。軽油、ガソリンは環境省、経済産業省「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガ

        ス排出等の算定のための排出原単位データベース」の当時のバージョンをもとに算定。灯油は環境

        省「算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧」をもとに算定。プロパン、ブタンは

        日本LPガス協会「プロパン、ブタン、LPガスのCO2排出原単位に係るガイドライン」をもとに算定。

 (注)2 他社から購入したエネルギー(当社においては電力)の使用に伴う間接的CO2排出量。環境省

          「電気事業者別排出係数一覧」の当時のバージョンをもとに算定。

 

また、当社では多様な発想や視点、そして価値観を持った人材の採用を重視しております。女性管理職比率、外国人管理職比率、中途入社管理職比率の目標を設定し、管理職層の多様性確保を実現してまいります。

 

<多様性の確保の自主的かつ測定可能な目標、実績>
       項目      実績      目標           達成時期
   女性管理職比率       2.7%     5.0%以上
   外国人管理職比率    12.6%     10.0%以上           2026年3月末
   中途入社管理職比率  37.8%         30.0%以上             
    (注)1 管理職は労基法上の管理監督者に該当し、部長相当クラス、課長相当クラスの合計。

     2 管理職比率は国内・海外グループ会社への出向者を含めた数値にて算出。
         3 現状は2025年3月末時点の実績。

 

<多様性の確保に向けた人材採用・育成方針、社内環境整備方針と取組内容>

 多様性の確保のために、性別・年齢・国籍および原籍等を問わず優秀な人材の採用を行っております。現在のところ、女性管理職比率が低くなっておりますが、目標とする5%に向け、引き続き取り組みを進めてまいります。人材育成に関しましては、一人一人の担当業務の権限範囲を広く与えることで、責任感を育成し、より成長できる社内環境となっております。


方針①:多様性を重視した採用と女性従業員のキャリア形成支援
・新卒・中途を両輪とする採用活動の継続
・新人事制度による一般職社員の総合職への移行及び移行女性社員に対するキャリア研修実施

障害者雇用の促進

 

方針②:チャレンジする多様な人材の育成、積極登用、職場環境整備
・新人事制度によるチャレンジする人材を優遇する評価制度、優秀な社員の積極的な管理職登用
男性の育児休暇取得の促進

・中途社員への研修制度の充実

・管理職を含めた従業員との面談実施

・継続雇用年齢の引上げ(65歳→70歳)によるシニアの活躍支援

・多様な人材が柔軟に働きやすい環境の整備(在宅勤務制度、サテライトオフィスの設置)

 
方針③:社内環境整備

当社は福利厚生の充実・活用に力を入れる企業・団体・自治体を表彰する制度である、優良福利厚生法人ハタラクエール2024 ミッドサイズ法人部門において「優良福利厚生法人」に選出されました。2022年、2023年における推進法人受賞に続き3期連続となります。

当該賞は、優れた福利厚生を実施する法人、およびこれから福利厚生の充実を図ろうとする意欲ある法人を表彰・認証するものとなっております。引き続き福利厚生の充実を図り、働きやすい職場環境の整備を継続してまいります。

 

<人的資本への取組内容>

 当社は、働きがいのある職場を重要な指標の一つとしております。すべての社員に働きがいを感じてもらうために各種表彰規程を設け、業務内外において功績を挙げた社員に対し、毎年表彰を行っております。また、自己啓発講座の受講を推進しており、2003年からの講座の受講者数は延べ1,980名となりました。資格を取得した社員に対しては難度に応じた奨励金と昇格ポイントの付与を行っており、奨励金の取得者数は延べ855名となりました。これらの制度を通じて、社員のより一層のスキル向上と人的資本の強化に取り組んでおります。また、寮の新設や給与面においても市場動向を常に反映しており、働きがいのある職場環境づくりを進めております。

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には以下のようなものがあります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経済情勢について

当社グループの主要な製品である生産設備に対する需要は、国内外の経済情勢、特に設備投資動向の影響を受けます。また、米国の相互関税発動により、国家間のサプライチェーンが大きく変動する可能性があります。従って、これらの動向により、当社グループの関連する市場における景気後退、特に設備投資意欲の減退は当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(2) 為替相場の変動について

当社グループの海外売上比率は、2023年3月期24.5%、2024年3月期16.7%、2025年3月期26.0%と推移しております。為替変動の影響を抑制するため、円建て契約の割合を増やすほか、現地調達の比率の増加や、為替予約によるリスクヘッジ等を行っておりますが、これにより当該リスクを完全に回避できる保証はなく、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(3) 品質問題による業績への影響について

当社グループは1997年に品質マネジメントシステムの国際規格ISO9001を取得し、品質確保を経営の最重要事項の一つとして掲げております。しかしながら一般的に、顧客仕様に基づいた製品の開発、設計あるいは製造上の契約不適合による製品品質に関わるリスクを、将来にわたって全て排除することは難しいものと認識しております。製造物責任等につきましては、保険付保によるリスクヘッジを行っておりますが、顧客からの訴訟等により高額の賠償請求を受けた場合には、十分なカバーができないケースも想定されます。これらに伴う当社グループ製品への信用低下、取引停止等も含め、当社グループの経営成績は品質問題の影響を受ける可能性があります。

 

(4)中国等海外への事業展開について

当社グループでは、中国、台湾、タイ、インドネシア、メキシコに拠点を構えており、製品の輸出入や現地における販売、生産など国際的な事業活動を行っております。これらの活動に関するリスクとして、海外における予期しない法律や規制の変更、産業基盤の脆弱性、感染症の流行、治安の悪化やテロ、戦争その他の要因による社会的または政治的混乱等の発生が考えられます。当社グループでは取引にあたり、各国の経済・社会情勢の変動を注視するとともに、取引先の状況等調査しつつ、受注活動を行っておりますが、これらの事象が顕在化することによって、当社グループの業績および財務状況に影響を受ける可能性があります。

 

(5) 法的規制等について

当社グループの事業は、事業を展開する各国において、事業・投資の許可、国家安全保障等による輸出制限などの政府規制の適用を受けるとともに、通商、独占禁止、環境・リサイクル関連の法的規制を受けております。万が一これらの規制を遵守できなかった場合、当社グループの活動が制限される可能性があります。

 

(6) 資材価格等の上昇について

当社グループの事業は、顧客仕様に基づく生産設備の設計・製作・施工がその大半を占めております。事業の性格上、見積・受注から引渡しまでに長期間を要する場合もあり、設備の製作・施工に要する資材・下請工事費用等について、需給のバランスから価格が高騰し、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは購入先の多様化、資材発注の早期化、業者との協力関係構築などにより、リスクの低減に努めております。

 

(7) 株価の下落について

当社グループは、投資有価証券として日本企業の時価のある上場株式を保有していますが、株価の下落により、保有株式の評価損の計上が必要となる可能性があります。また、その他有価証券評価差額金の減少が当社グループの純資産に影響を与える可能性があります。

 

 

(8) 災害及び感染症について

当社グループは、地震、津波、洪水、火災等の災害や感染症の発生などに対して、損害の発生及び拡大を防ぐため、防災設備の整備や点検、訓練、感染症の未然防止などに努めるとともに、事業継続計画(BCP)を策定し、安否確認システムを導入するなどの対策を講じておりますが、こうした災害による人的・物的被害により、当社グループの事業活動が影響を受ける可能性があります。また、発生する損害額が損害保険等によって十分にカバーされる保証はありません。

 

(9) 与信リスクについて

当社グループは、取引先の与信管理については、情報収集や社内規定に沿った受注前審査を徹底するとともに、必要に応じ保険を付保するなど、リスク回避に努めておりますが、不測の事態により取引先が信用不安に陥った場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 情報セキュリティへの脅威について

当社グループは、事業の遂行に必要な取引先情報の他、技術・営業・その他事業に関する秘密情報を保有しており、ITシステムを利用した基幹業務を行っていることから、コンピュータウイルスの感染や外部からの不正アクセス、サイバー攻撃など不測の事態により、システム障害や秘密情報の漏洩・滅失等が発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、情報セキュリティにかかる管理規定を整備し、在宅勤務時は専用パソコン貸与によるVPN(仮想専用線)接続で通信の安全性を確保、ファイアウォールの設置など予防措置を図るとともに、定期的な対応訓練や監査を実施して、リスクの回避、影響の最小化に努めております。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)経営成績の状況の概要及び分析・検討内容

当連結会計年度におけるわが国経済は、世界的なインフレと金利の上昇、為替の変動などによる景気の下振れリスクに加え、米国の今後の政策動向、ウクライナや中東などをめぐる世界情勢の長期化により、先行き不透明な状況が続いております。

一方で、雇用や所得環境の改善、旺盛なインバウンド需要に支えられ、緩やかな景気の回復が継続しております。また、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けた政府の成長戦略を背景にした、脱炭素化への設備投資が堅調に推移しました。

このような事業環境の中、当社グループは豊富なエンジニアリングノウハウを活かし、水素やアンモニア燃料の熱処理プロセスへの適用や、熱処理プロセスの電化など、カーボンニュートラルに貢献する技術提案を積極的に行うと共に、EVおよびHV向け電池・モーターなどの主要部品製造プロセス用の熱処理設備や、半導体関連の機能材熱処理設備に関して、当社独自の技術に基づいた営業活動を継続して実施しました。

さらに、産業界におけるカーボンニュートラルやデジタルトランスフォーメーション(DX)などのニーズに応えるため、最新鋭の研究施設「熱技術創造センター」を有効活用し、研究開発力の強化と社内外での共同開発を活性化してまいりました。これにより、顧客ニーズの多様化や製品ライフサイクルの変化に迅速に対応しております。

その結果、受注面につきましては、国内鉄鋼向け省エネ型焼鈍設備や連続亜鉛メッキライン、排ガス処理設備、機能材火炎内処理設備、次世代電池関連製造装置、航空機関連素材熱処理設備などの成約を得て、受注高は前期比101.8%39,477百万円と増加しました。

売上面につきましては、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンイノベーション基金事業/製造分野における熱プロセスの脱炭素化」案件や、海外向け脱炭素型大型ステンレス光輝焼鈍設備、国内向け半導体・電子部品熱処理炉、インフラ整備用部材焼鈍炉、排ガス処理設備などの工事が順調に進捗し、売上高は前期比123.8%36,247百万円と増加しました。

利益面につきましては、受注済案件の工事が進捗・完成する中で、新たな案件に関しては計画的な値上げを実施いたしました。また、当社製品はオーダーメイドが主という性質上、顧客への訴求力が高く、結果として価格転嫁を進める要因となりました。そして、仕入先や部材種別の適切な見直しによって、調達コストの削減も適ったことから、営業利益は前期比185.2%2,735百万円、経常利益は前期比175.1%3,003百万円と増加しました。また、政策保有株式について、資本効率の観点から保有メリットが希薄した銘柄は縮減するという方針に基づき、保有する株式の一部を売却したことに伴う売却益により、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比136.5%2,998百万円と増加しました。

当社グループは、東京証券取引所が勧める「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応企業価値向上に向けた取り組み」を継続的に実施しております。具体的には、事業計画の達成により、収益基盤の強化を図るとともに、株主還元方針の見直しを定期的に行うことで、株主価値の向上に努めています。また、財務の健全化を推進することで、経営の安定性を確保し、新たな成長への基盤を構築し、さらにコーポレートガバナンスの強化により透明性と信頼性の向上を図り、ステークホルダーとの関係を一層強化してまいります。加えて、サステナビリティ経営の推進と脱炭素目標の引き上げにより、環境保全への責任を果たし、社会的価値の創出に寄与するとともに、開発業務の促進を通じて、革新的な製品やサービスの創出を加速させ、競争力の強化を目指します。これらの取組により、企業価値向上をより推し進めてまいります。

 
(熱処理事業)

受注面では、国内向け次世代電池関連製造装置や機能材熱処理炉、航空機関連素材熱処理設備、蓄熱式排ガス処理装置、自動車向けアルミ部品熱処理設備などの成約を得て、受注高は18,319百万円(前期比96.8%)となりました。

売上面では、半導体関連の機能材熱処理炉や国内自動車向け無酸化熱処理設備、浸炭炉などの工事が進捗し、売上高は18,590百万円(前期比133.6%)と増加しました。

(プラント事業)

受注面では、国内鉄鋼向け省エネ型連続焼鈍設備や連続亜鉛メッキライン、排ガス処理設備、機能材火炎内処理設備などの成約を得て、受注高は18,320百万円(前期比131.3%)と増加しました。

売上面では、海外向け脱炭素型大型ステンレス光輝焼鈍設備や国内鉄鋼向け省エネ型加熱炉などの工事が進捗し、売上高は11,522百万円(前期比102.8%)と増加しました。

(開発事業)

受注面では、カーボンニュートラルに向けた試験設備や電子部品向け精密塗工装置などの成約を得ましたが、前年にNEDOの「グリーンイノベーション基金事業/製造分野における熱プロセスの脱炭素化」案件の成約があったため、受注高は692百万円(前期比19.6%)に留まりました。

売上面では、NEDO案件や水素系ガス加熱装置、次世代電池向け精密塗工装置などの工事が順調に進捗し、売上高は2,376百万円(前期比125.3%)と増加しました。

 (その他)

受注面では、海外子会社において、中国向けモータコア焼鈍炉や自動車部品焼鈍・焼準炉などの成約を得て、受注高は6,711百万円(前期比114.6%)と増加しました。

売上面では、中国向けモータコア焼鈍炉や自動車部品焼鈍・焼準炉、真空熱処理炉などを納入し、売上高は8,173百万円(前期比149.7%)と増加しました。

 

受注高、売上高、営業利益、売上高営業利益率、自己資本利益率(ROE)の期初目標に対する実績は以下のとおりです。

 

 

2025年3月期実績

期初目標

達成度(%)

受注高(百万円)

39,477

39,000

101.2

売上高(百万円)

36,247

37,600

96.4

営業利益(百万円)

2,735

2,570

106.4

売上高営業利益率(%)

7.5

6.8

110.3

自己資本利益率(%)

10.7

8.3

128.9

 

 

(2)財政状態の状況の概要及び分析・検討内容

資産合計は、現金及び預金、投資有価証券の減少などにより、前期末比127百万円減少48,736百万円となりました。
 負債合計は、短期借入金の減少などにより、前期末比967百万円減少20,127百万円となりました。
 純資産合計は、利益剰余金の増加などにより、前期末比840百万円増加28,609百万円となり、自己資本比率は58.1%となりました。

 

(3)キャッシュ・フローの状況の概要及び分析・検討内容

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

売上債権及び契約資産の増加により、3,696百万円の資金の減少となりました。(前期は891百万円の減少

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

有形固定資産の取得による支出はあったものの、投資有価証券の売却により、654百万円の資金が増加しました。(前期は550百万円の増加

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

短期借入金の減少により、2,701百万円の資金が減少しました。(前期は2,451百万円の増加

(資本の財源及び資金の流動性)

当社グループの運転資金及び設備・投融資資金は、主に営業活動によるキャッシュ・フローを財源とし、必要に応じ、金融機関からの借入を行うこととしております。また、資金の流動性を確保するため、取引金融機関と当座貸越契約を締結しております。

 

(4)生産、受注及び販売の状況

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

熱処理事業

18,590

133.6

プラント事業

11,522

102.8

開発事業

2,376

125.3

その他

8,173

149.7

相殺消去

△4,415

138.3

合計

36,247

123.8

 

(注) 金額は売上高により表示しております。

 

b.受注状況

当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

熱処理事業

18,319

96.8

14,435

98.2

プラント事業

18,320

131.3

19,423

153.9

開発事業

692

19.6

1,554

48.0

その他

6,711

114.6

3,612

76.2

相殺消去

△4,567

131.7

△1,202

120.5

合計

39,477

101.8

37,824

110.2

 

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

熱処理事業

18,590

133.6

プラント事業

11,522

102.8

開発事業

2,376

125.3

その他

8,173

149.7

相殺消去

△4,415

138.3

合計

36,247

123.8

 

(注)主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

 

相手先

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

JFEスチール㈱

3,211

11.0

1,254

3.5

 

 

(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5 【重要な契約等】

当社が技術援助契約を締結している主なものは、次のとおりであります。

(1) 技術供与

 

契約先

内容

契約期間

(米国)
Surface Combustion, Inc.

一体化カテナリ型焼鈍炉の技術

自 1990年9月
至 1997年9月
以後は、1年毎自動延長

(韓国)
Hanwha Corporation/Machinery

工業炉、雰囲気ガス発生機及び蓄熱式脱臭装置に関する技術

自 2018年1月
至 2019年12月
以後は、2年毎自動延長

 

(注) 1 上記についてはロイヤルティとして売上高の一定率を受けとっております。

2 上記のうち、契約期間が自動延長とあるものは、各契約とも契約満了日前一定の日前に当事者の一方が終結通知を他方に提出しなければ延長されます。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、熱技術を核として、カーボンニュートラル、高機能材料、資源循環(ゼロエミッション)などの社会的要請を的確に捉え、新しい価値を創造し、社会に貢献することを企業理念として、熱処理事業、プラント事業、開発事業の3分野において研究開発を進めています。

当社を取り巻く外部環境の変化や多様化は著しく、その潮流は今後、ますます激化することが予想されます。その潮流に迅速に対応し、顧客の満足する技術、商品を創出すべく、開発事業の中核を担う『商品開発部』『コンバーテック部』『GXプロジェクト室』は、それぞれの専門性を活かし活動を行ってまいりました。

『商品開発部』は2019年4月に発足した新規事業創出を担う部門で、熱技術を活かした商品開発を推進しています。市場ニーズの調査や外部コンサルとの連携を通じてアイデアを抽出・評価し、技術課題や市場性の検証を繰り返しながら開発を進行。マーケティングと開発を連動させ、新たな価値の創出に取り組んでいます。

『コンバーテック部』は精密塗布装置の開発・設計を行い、主にディスプレーパネルや電池、半導体などの先端産業向けの製造プロセスを支えています。「RSコータ™」などの革新的な装置を提供し、製品の精度と効率向上に貢献。テスト対応から設計、製作、現地での据付・試運転までを一貫して担当し、お客様のニーズに応じた柔軟な対応をしています。

『GXプロジェクト室』は、水素やアンモニアを燃料とする新たな燃焼技術の開発とともに新しい電熱技術の開発を進めています。この取り組みにより、工業炉の脱炭素化を実現し、カーボンニュートラル社会への貢献を目指しています。また、NEDOのグリーンイノベーション基金事業にも採択され、技術革新を通じて持続可能な社会の実現をサポートしています。

当社は、2025年4月1日付で開発本部を新設し、これまで独立していたこれら3部門を同本部の傘下に統合しました。この組織再編の目的は、開発機能の一体化を図り、部門間の連携強化と開発スピードの向上、技術シナジーの最大化を目指すことにあります。各部門が一体となることで、より柔軟かつ機動的な開発体制を構築し、今後の事業成長に向けた開発力の強化と持続可能な社会の実現に向けた技術革新を一層推進していきます。

また2023年11月に堺事業所内に開設された「熱技術創造センター」は、当社の研究開発機能を統合・強化するための最先端の拠点であり、カーボンニュートラルや脱炭素化、EV化といった社会的課題に対応し、熱技術の革新と新たな価値創造を目指しています。施設は主に、次世代燃料(水素やアンモニア)を用いた脱炭素・省エネ燃焼技術を開発する「燃焼ゾーン」、先端材料の熱処理技術を研究する「機能材ゾーン」、社内外の共同研究・開発を促進する「共創スペース」の3つのゾーンで構成されています。また、熱技術創造センターはGXプロジェクト室が中心となって進めているNEDOのグリーンイノベーション基金事業にも活用され、脱炭素技術の開発を推進しています。このセンターを通じて、当社は持続可能な社会の実現に向けた技術革新を加速させ、企業の社会的責任を果たす取り組みを強化しています。

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は1,198百万円であります。各分野での研究開発のトピックスを下記に記載します

 

(1) 熱処理事業

CO₂を排出しない電気自動車や燃料電池車向けの高機能材料・機能部品事業領域分野だけでなく、次世代の二次電池として期待される全固体電池向けの製造装置についても開発を進めており、開発段階~連続処理装置のプロセス提案に向けて継続して取り組んでおります。

また、自動車業界の製造プロセスで必要とされる金型の長寿命化ニーズに対しては、ガス窒化、ガス軟窒化をはじめ、浸窒焼入、チタン窒化処理が可能なだけでなく、雰囲気ガス発生に伴うエネルギーを40%削減(当社比)、アンモニアガス使用量を30%削減可能な多目的窒化炉を開発し、お客様のニーズにお応えできるよう取り組んでおります。

(2) プラント事業

加熱炉のCO₂排出量削減や省エネルギーだけでなく、高品質を実現するために、炉内温度分布の改善や、圧延機の効率向上に貢献する鋼材の傾斜加熱など、炉内温度を自在に制御する技術の開発に取り組んでいます。その一環として、拡散燃焼方式で燃焼するリジェネバーナに火炎長可変機構を設けたバーナおよび制御システムを開発しました。

さらに、火炎を利用した高温加熱による粉体の球状化試験にも継続して取り組んでおり、国内およびアジアを中心に成長が著しい機能材料分野での製造プロセス開発と用途拡大を目指しています。

また、2016年から取り組んでいる水素燃焼技術では、汎用的なHSGBバーナに加え、間接加熱型のラジアントチューブ式水素バーナ、自動車塗装乾燥炉用水素バーナ、パッケージ型水素バーナなどの水素バーナのラインナップ拡充に向けた開発を継続しています。昨年度には水素リジェネバーナの開発を完了しました。

さらには、2025年2月には、トヨタ自動車株式会社様(以下、トヨタ様)より、従来のLPガスを水素に置き換えた水素燃焼式アフターバーナ炉に関して、「トヨタ技術開発最優秀賞」を受賞しました。この賞は、トヨタ様の商品力向上に大きな成果を上げたサプライヤーに贈られる最上位の評価です。

(3) 開発事業

・カーボンニュートラル

日本の産業におけるCO₂排出量の約3割は製造業から発生しており、特に金属を加熱する熱プロセスで用いられる工業炉が大きな割合を占めています。このため、製造業における熱プロセスのカーボンニュートラル化は急務です。特に工業炉には燃焼炉と電気炉の2種類があり、燃焼炉ではCO₂を排出しない代替燃料(アンモニアや水素など)の利用が課題となっています。一方、電気炉はCO₂を排出しない利点がありますが、燃焼炉から電気炉に転換する際には、特別高圧電力契約や受電設備の設置といった課題があります。これらを踏まえ、燃焼炉の選択肢を確立しつつ、電気炉の小型化・省エネルギー化を進めることが重要です。

このような背景を受け、経済産業省が策定した研究開発・社会実装計画に基づき、NEDOが2023年度に公募した「製造分野における熱プロセスの脱炭素化」プロジェクトが始まりました。当社は、1独法、12の国立大学法人、1大学法人、19の企業が参加するコンソーシアム「脱炭素産業熱システム技術研究組合」の一員として採択され、大型炉開発グループとして、製鉄所における鉄鋼加熱炉や大型連続焼鈍炉への技術実装を目指しています。この取り組みでは、アンモニア燃焼技術、水素燃焼技術、電熱加熱技術の開発を進めています。燃焼技術の開発においては、昨秋からバーナ燃焼試験を開始し、順調に試験が進んでいます。また、電熱加熱技術に関しても、今春に試験装置が完成し、鋼板の温度分布の均一化や効率向上を目指した試験を行っています。今後は、組合員である各大学や当社の設備ユーザーと連携・協力し、技術開発を円滑に進め、中規模実証試験・評価ステージに向けた技術開発を推進していきます。

鉄鋼業界や非鉄金属製錬業界では、鉱石の煆焼や還元工程で多量の化石燃料を使用しており、CO₂排出が課題となっています。現在主流のロータリーキルンに代わって、省スペースでハンドリング性に優れた回転炉床炉を活用し、マイクロ波加熱による還元・処理技術の開発に取り組んでいます。この技術の開発を進めるため、マイクロ波化学株式会社様との戦略的提携を結び、両社でエネルギー消費とCO₂排出削減に貢献する新たな炉の設計・製造を行っています。

・精密塗工装置

人工知能(AI)、データセンター、自動車の自動運転支援システム、ビッグデータ、5G、6Gといった高速・大容量通信技術に必要となる次世代半導体実装関連技術や、全固体電池、ペロブスカイト型太陽電池などの次世代電池の製造プロセス用設備に関する商品開発を継続的に推進しており、当社の技術をさまざまな用途に広げていくことを目指しています。

特に車載用二次電池業界においては、異形状の枠形状にも対応する精密塗布装置を提供しています。従来のように基材全面に塗布し、使用部分を打ち抜く方法から、必要な部分にだけ塗布する方式に切り替えることで、使用する高価な塗布液や廃棄物、工程を大幅に削減できます。このサステナブルな塗布装置「RSコータ™」の販売を拡大し、さらに市場の多様なニーズに応えるべく開発を進めています。

・ゼロエミッション

近年、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸:メッキ処理剤、泡消火薬剤用)やPFOA(ペルフルオロオクタン酸:撥水剤、界面活性剤用)などの有機フッ素化合物(PFAS)の無害化に向けた技術開発への関心が高まっております。当社は株式会社鴻池組様と共同で、環境省が2022年9月に策定した「PFOS及びPFOA含有廃棄物の処理に関する技術的留意事項」を遵守しつつ、従来の処理方法に比べて環境負荷を低減する新たな分解処理技術を開発いたしました。

本技術では、粉末状の活性炭にPFASを吸着させ、その後、水素燃焼式過熱水蒸気発生技術を用いて熱分解を行います。実証実験は完了し、開発成果を公表したことにより、現在では水質・ガス・土壌浄化など、他分野への応用が進展しています。

また、資源循環の観点では、鉄鋼電炉から排出される製鋼ダストのリサイクルに注力しています。当社は、メッキ鋼板に含まれる亜鉛などの有価金属の回収を通じて資源の循環利用を推進し、工場外への廃棄物排出を削減するゼロエミッションの実現を目指しています。この取り組みの一環として、電炉ダストリサイクル設備の技術開発に注力するとともに、業界内への営業活動および情報発信を強化してまいりました。現在、お客様との共同実証活動はほぼ完了しており、商用機1号機の受注に向けて最終段階に進んでいます。