当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 創業理念・経営方針
当社グループは、創業理念であります「和の精神」、「誠意・熱意・創意」の下、「『仕事が仕事を生む」の信念の下、誠実なモノづくりに専心します。
・社会の安全・安心・快適の増進に貢献します。
・技術力・知力・感性を磨きます。
・現場・現物・現人主義を貫きます。
・堅実経営に徹します。
(2) 見通し
次期の見通しにつきましては、建設投資については引き続き底堅く推移するものと予想されるものの、建設資材の価格高騰や労務需給の逼迫、国際情勢の悪化等に伴う企業の設備投資意欲の減退などについて引き続き注視が必要です。
このような状況下で、当社は2024年度を初年度とする新たな中期3ヵ年計画をスタートさせました。創業140年を迎える2032年に向けて「顧客・協力会社、株主、社員の満足度向上、および地球環境・社会への貢献に邁進する企業」とした長期ビジョンを掲げ、これからの3ヵ年で注力することとして6つのテーマを選定いたしました。それぞれのテーマにKPIを定め、3ヵ年で計画を達成できるよう、着実に遂行してまいります。詳細につきましては、2024年5月14日に公表いたしました「「中期3ヵ年計画(2024~2026年度)」の策定に関するお知らせ」および、下記をご参照ください。
(3) 中期3ヵ年計画及びエコフレンドリーASANUMA21
当社グループは2024年度を初年度とする中期3ヵ年計画(2024~2026年度)を策定しました。中期3ヵ年計画では、3年間で注力することとして『6つのテーマ』を掲げ、それぞれにKPIを設定いたしました。これら6つのテーマに基づく施策を着実に実行し、全社一丸となって計画を達成して参る所存です。詳細につきましては、2024年5月14日に公表いたしました「「中期3ヵ年計画(2024~2026年度)」の策定に関するお知らせ」をご参照ください。
また、2010年度より全社的な地球温暖化防止対策としてスタートさせた「エコフレンドリーASANUMA21」では、持続可能な社会の実現に向け、長期目標を見据えたCO2削減目標の設定をしており、サステナビリティ推進委員会では、TCFD提言への取り組み等のサステナビリティ活動を推進しています。そして、英国で設立された国際的な環境非営利団体であるCDP「カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(Carbon Disclosure Project)」の気候変動質問書に対し、2023年度も昨年度に引き続き回答し「B」(2022年度は「B-」)スコア評価を得ました。更なる高評価を得られるよう、様々な取り組みを強化していきます。
また、2024年3月には、パリ協定に基づく温室効果ガスの排出削減目標SBT(Science Based Targets)を認定する機関「SBTイニシアチブ」にコミットメントレターを提出し、SBT認定の取得を目指すことを表明いたしました。SBTイニシアチブは、企業が掲げる温室効果ガスの削減目標が、パリ協定の「地球の気温上昇を産業革命前と比べて 1.5℃未満に抑える」という目標達成に必要な水準を満たす場合、その削減目標を「パリ協定と科学的に整合している目標(SBT)」として認定します。本コミットメントでは2年以内に削減目標を策定することを表明しております。
① 中期3ヵ年計画(2024年度~2026年度)
A 6つのテーマとKPI(重要達成度指標)
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テーマ |
目的 |
財務・非財務KPI |
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1 |
国内コア事業の強化 |
建築・土木事業のより戦略的・効率的な展開を図る |
顧客満足度スコア※1 80点以上(直近2期平均) |
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2 |
リニューアル事業の強化 |
前中期3ヵ年計画にて旗揚げ・強化した国内・海外リニューアル事業のレベルアップ |
連結営業利益における リニューアル営業利益 40%以上 |
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3 |
人材の獲得・確保・育成 |
より活力ある組織となるために |
エンゲージメントスコア 70点以上※2 |
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4 |
DX推進 |
快適・効率的な業務の実現 |
労働1時間あたりの売上総利益※3 6,000円以上 |
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5 |
ガバナンス・コンプライアンス・リスク管理の強化 |
全てのステークホルダーに安心していただくために |
重大な法令違反件数 0件 死亡災害 0件 |
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6 |
環境・社会への貢献 |
自然・社会の一員として |
CO2排出量削減率※4 スコープ1+2 △75% (1990年度対比) スコープ3カテゴリ11 △8% (2021年度対比) |
※1:竣工時に受領する顧客満足度アンケートの回答及び工事成績評定を点数化
※2:全社員を対象としたストレスチェックにおけるエンゲージメントに関わる質問項目に対し、
4段階中上位2つを回答した割合を点数化(スコア70点は当該割合が70%以上)
※3:売上総利益(連結)÷全社員の労働時間(個別)
※4:スコープ1・2は1990年度対比の削減率、スコープ3カテゴリ11は2021年度比の削減率。
2030年度・2050年度目標達成に向けた指標。
B 主な経営指標
中期3ヵ年計画の最終年度である2026年度の目標を、売上高1,510億円、営業利益64億円、親会社株主に帰属する当期純利益49億円とし、2026年度における営業利益率を4.2%、自己資本利益率(ROE)は10.0%とします。
C 株主還元
効果的な投資への資金を確保しつつ、前中期3ヵ年計画での配当基準である「配当性向70%以上」を維持し、更に、株式を購入しやすい環境とすべく、株式分割(5分割)の実施と中間配当制度の導入を予定しております。配当額については、本中期3ヵ年計画の最終年度の2026年度に212.5円(株式分割前数値)を計画しております。
② エコフレンドリーASANUMA21
A 長期ビジョン
2050年を見据えたCO2排出量削減目標を設定
B 基本方針
・脱炭素化の推進 ~脱炭素社会の実現に向けて~
・資源の循環 ~循環型社会の実現に向けて~
・自然・社会との共生 ~自然・社会との共生をめざして~
③ 直近の経営環境について
当連結会計年度における我が国の経済は、新型コロナウイルス感染症の法的位置付けが5類感染症に移行されたことにより経済活動はほぼ正常に戻ってきております。他方で、円安の影響や、混迷するウクライナ・中東情勢など地政学的リスクによる世界経済への影響も不安視され、先行きは不透明な状況が続いております。
当社グループの主たる事業である建設業界におきましては、公共建設投資は、前年度並みの規模で公共事業関係費が確保されていることに加え、2022年度補正予算において、「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」をはじめとした公共事業関係費が確保されており、堅調に推移しております。民間建設投資につきましては、企業の工場や物流施設等への設備投資意欲は引き続き堅調ですが、建設コストの上昇などから新規工事着工に足踏みする様子も窺えます。
次期の見通しにつきましては、建設投資については引き続き底堅く推移するものと予想されるものの、建設資材の価格高騰や労務受給の逼迫、国際情勢の悪化に伴う企業の設備投資意欲の減退などについて引き続き注視が必要です。
当社グループは、創業理念である「和の精神」「誠意・熱意・創意」の下、経営方針である『「仕事が仕事を生む」の信念の下、誠実なモノづくりに専心します。』に沿って、環境と社会のさまざまな課題の解決に向けて取り組むことにより、持続可能な社会の実現と持続的な企業の成長を目指し、サステナビリティ基本方針を定めております。
(1)サステナビリティ基本方針
① お客さまに対する責任
顧客に対して、商品・サービスに関する適切な情報提供、誠実なコミュニケーションを行い、満足と信頼を獲得することに努めます。品質・環境・安全衛生方針に則り、お客様の要望に応え、満足して頂ける製品・サービスを提供します。
② 人権の尊重
企業活動を通じて性別、信条などをはじめ、各国・地域の文化・慣習も含めた人権の尊重を推し進めます。企業の社会的責任として多様な人材が活躍できるよう、また健康と安全にも配慮した環境を整えることは最重要課題であり、国際的な人権規範に則って人権尊重への取り組みを進めてまいります。
③ 人材育成
国籍、性別、信条などを理由とした雇用や処遇について、いかなる差別や不当な取り扱いを行いません。また、多様な人材が個々の能力を十分に発揮できる人事処遇を行い、個性を尊重した人材育成に努めてまいります。
④ 地域社会への貢献
社会貢献基本方針に則り、社会の一員として社会のあるべきかたちの実現のため、社員一人一人が社会的責任を自覚し、積極的に社会貢献活動を推進していきます。
⑤ 地球環境
企業活動における環境への負荷の軽減はもとより、地球温暖化対策、循環型社会の構築、生物多様性の保全などに積極的に取り組むとともに省エネルギーに努めてまいります。
⑥ 公正な事業活動(コンプライアンス)
コンプライアンス宣言に則り、法令・企業倫理・淺沼組企業行動規範・その他の社内ルールを遵守し、「誠意ある行動と適正な事業活動」に努めてまいります。
⑦ 社会からの信頼
「誠実なモノづくりに専心し、社会の安全・安心・快適の増進に寄与する」という企業理念の実践が社会的使命であり、それを淺沼組企業行動規範に則り、果たしてまいります。
(2)ガバナンス
当社グループでは、サステナブルな課題に対し、中長期的な視点で協議・検討し、経営会議に答申することを目的として、サステナビリティ推進委員会を設置しております。
① 取締役会による監督体制
取締役会は、毎年1回、サステナビリティ推進委員会より取組状況や目標の進捗状況の報告を受けモニタリングします。また、新たに設定した施策や目標を監督します。
② サステナビリティに関する経営者の役割
サステナビリティに関する事項は、代表取締役社長が統括し、また、サステナビリティ推進委員会の委員長として、サステナビリティに関する課題への対応を統括します。
③ サステナビリティ推進委員会の役割
本委員会は、次の事項を決議または審議し、事案によって経営会議に答申します。
・当社グループのサステナビリティ推進に関する方針・戦略・計画・施策の審議および答申
・機関決定されたサステナビリティ推進に関する施策等の社内通知
・当社グループにおけるサステナビリティ推進の実績評価および報告
・その他サステナビリティ推進に関する重要事項の検討
(3)リスク管理
サステナビリティ推進委員会では、事業におけるサステナビリティに関連するリスクおよび機会の識別、評価、管理を行っています。
① サステナビリティに関連するリスクを識別、評価するプロセス
サステナビリティ項目によって、サステナビリティ推進委員会の委員から担当委員を選定し、その担当委員がリスクの特定を行い、サステナビリティ推進委員会に報告します。サステナビリティ推進委員会は、識別されたリスクについてその重要度を評価し、対応策や目標を検討・策定します。
② サステナビリティに関連するリスクを管理するプロセス
決定された施策や目標について、サステナビリティ推進委員会は担当委員から定期的に進捗の報告を受け、管理します。
(4)TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への対応
① ガバナンス
② 戦略
TCFD提言への賛同を機に気候変動による事業活動への影響をTCFDの提言に基づき、リスクおよび機会を特定し、評価の上、気候関連の問題が事業に与える影響を中長期的な視点でシナリオ分析を実施しました。
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リスク/機会 項目 |
シナリオ |
淺沼組の対応 |
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4℃ |
1.5℃ |
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炭素税導入・炭素価格の上昇による建設コストの増大 |
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− − − |
「エコフレンドリーASANUMA21」の推進 ① 脱炭素化の推進 ② 資源の循環 ③ 自然と社会との共生 |
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GHG排出目標の厳格化による追加コストの増加 |
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− − |
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ESG・SDGs活動に対するステークホルダーの評価の厳格化 |
− |
− − |
ESG・SDGs活動の取り組みと広報の強化 |
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施主の要求内容・評価項目の変化への対応競争の激化 |
− |
− − |
「ReQuality」リニューアルブランド戦略の推進 「Good Cycle Service」(新たなライフサイクルサポートサービス)の拡充 |
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省エネ・脱炭素化技術の普及、促進速度の増幅による技術開発競争の激化 |
− |
− − |
「ReQuality」の一環でのZEB・WELL認証の取得 |
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気候変動に対応する環境配慮型・長寿命化型関連の建物や平均気温の上昇による室内環境の快適性に関する需要の増加 |
+ |
++ |
環境配慮型提案力の強化 「ReQuality」の一環での「室内環境シミュレーション技術」「地震モニタリングシステム」等の活用促進 |
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平均気温の上昇による労働環境の悪化影響の増大 |
− − |
− |
独自技術である「Ai-MAP SYSTEM」の高度化と特許取得や事業化に向けた取り組みの強化 |
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異常気象の激甚化に起因する対策コストの増加 |
− − |
− |
防災・減災、国土強靭化関連事業への取り組みの強化 |
|
自然災害からの復興のための防災・減災、国土強靭化関連の建設需要の増加 |
++ |
+ |
耐震技術の拡充と免震・制振技術の高度化による万全なBCP(事業継続計画)の確立 |
③ リスク管理
サステナビリティ推進委員会にて事業における気候変動関連リスクおよび機会の特定および評価を行っています。また、各事案については経営会議にて審議し、重要課題を特定の上、社内へリスクおよび機会の浸透を図っています。
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リスク/機会 項目 |
事業への影響 |
評価 |
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移 行 リ ス ク |
政策 規制 |
炭素税の導入・ 炭素価格の上昇 |
・炭素税導入や炭素価格の上昇により、建設コストが増加する |
大 |
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政策 規制 |
GHG排出目標の厳格化 |
・目標値達成のためのさまざまな追加コストの増加により、管理費が上昇する |
大 |
|
|
市場 |
施主の要求内容・ 評価項目の変化 |
・脱炭素化に関する施工実績、提案内容の高度化への対応の後れにより、競争力が低下する |
大 |
|
|
技術 |
省エネ・脱炭素化技術の 普及、促進速度の増幅 |
・技術開発の後れや開発コストの増加により、競争力が低下する |
大 |
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評判 |
ESG・SDGs活動に対するステークホルダーの評価の厳格化 |
・ESG、SDGs活動の低評価により、企業評価が低下する |
大 |
|
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物 理 リ ス ク |
慢性 |
平均気温の上昇 |
・労働環境の悪化により、業務効率・生産性が低下する ・労働環境改善のさまざまな追加対策により、管理費および建設コストが増加する |
大 |
|
急性 |
異常気象の激甚化 |
・降雨・強風等に起因する工期遅延等対策(サプライチェーンの分断による調達資材の確保対策コスト含む)の増加により、建設コストが増加する |
大 |
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|
|
|
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移 行 機 会 |
政策 規制 |
脱炭素建物への 社会制度、規制の強化 |
・脱炭素関連認証(ZEB・WELL等)の取得による他社との差別化により、競争力が向上する |
中 |
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市場 技術 |
省エネビル、既存建物 長寿命化の需要の拡大 |
・市場のニーズへの的確な対応(新築におけるZEB対応、リニューアル事業における長寿命化技術の提案力向上等)による付加価値向上により、競争力が向上する ・脱炭素建物の提供によるエネルギー費用の削減効果により、競争力(顧客からの信頼度)が向上する |
大 |
|
|
評判 |
環境課題への取り組みに対するステークホルダーの評価の向上 |
・CO2排出削減企業に対する高評価により、企業価値が向上する ・環境配慮技術の開発による他社との差別化が進み、企業価値が向上する |
中 |
|
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物 理 機 会 |
慢性 |
平均気温の上昇 |
・気候変動に貢献する環境配慮型関連の建物需要が増加する ・室内環境の快適性に関する需要増加により、保有技術の活用が進み、競争力が向上する |
大 |
|
急性 |
異常気象の激甚化 |
・自然災害からの復興のための防災・減災、国土強靭化関連の建設需要が増加する |
大 |
|
④ 指標及び目標
「エコフレンドリーASANUMA21」の下、気候変動関連の中長期的目標を策定し、事業活動における脱炭素化の取り組みを推進しています。スコープ1+2の2030年度、2050年度目標については2023年8月に、より高い目標へと変更いたしました。
※1:完工高1億円当たりの排出量
(5)人的資本
サステナビリティ基本方針で掲げています人権の尊重、人材育成を踏まえ、人権方針も定めており、人的資本に関する「戦略」と「指標及び目標」については次のとおりであります。
① 戦略
当社グループは中長期的な企業価値の向上に向けた人材戦略の重要性に鑑み、多様性の確保に向けた人材育成方針として、雇用や処遇について、国籍・性別・信条などによるいかなる差別や不当な取扱いを行わず、多様な人材が個々の能力を十分に発揮できる人事処遇を行い、個性を尊重した人材育成に努めております。また、社内環境整備方針として、多様な人材が個々の能力を十分に発揮することができるよう、柔軟な働き方やワークライフバランスのとれた働き方が実現できる制度を整備するとともに、その制度を十分に生かせるよう、社員意識や社内風土の醸成に資する研修制度の充実を図っております。
② 指標及び目標
当社グループは、女性・外国人・中途採用者の管理職への登用など中核人材の登用における多様性の確保のため、次期中期3ヵ年計画が完了する2029年度末において、女性総合職に占める女性の管理職の割合については6%、中途採用者に占める中途採用者の管理職の割合については現状と同水準以上を維持、外国人総合職に占める外国人の管理職の割合については3%とする指標を用いています。当社グループでは、一定の職能等級到達者を管理職としておりますが、2024年3月末現在、女性総合職に占める女性の管理職の割合は4.65%、中途採用者に占める中途採用者の管理職の割合は45.98%であります。(外国人の管理職の該当はありません。)
投資者の投資判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、次のようなものがあります。ただし、これらは当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、記載された事項以外の予見し難いリスクも存在します。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループにおいては建設事業を中心とする事業の内容に鑑み、次のようなリスクが存在しております。
(1) 国内外情勢や経済動向等の外部経営環境に関わるリスク
① 外部経営環境に関わるリスク
当社グループは、日本、グアム及び東南アジアで建設事業を展開しており、工事需要は、各国の政治動向、経済動向、天災または悪天候、テロや地域紛争、戦争、疫病の発生・蔓延等により大幅に減少する可能性があります。
また、当社グループの取引は、取引ごとの請負代金が大きく、工事の着工から完成引渡しまでの期間が長期に亘るため、工事代金の受領前に取引先の競争環境や事業環境が大幅に変化し、信用不安が生じた場合、当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。
② 競争環境に関わるリスク
当社グループは、国内及び海外において、施工品質及び請負金額に関して激しい競争に直面しております。国内では、既存の建設会社との競争に加え、設備会社やプラント会社との競争、海外では、各国及び日本の海外子会社との競争が激化しております。上述のように、現在の当社グループの競争環境や事業環境が大幅に変化した場合、当社グループの経営に影響を及ぼす可能性があります。
③ PFI事業に関わるリスク
当社グループは、その他の事業としてPFI事業を行っていますが、運営期間が最長2036年までと長期に亘っております。事業運営の間に上述のように、競争環境や事業環境が大幅に変化した場合、当社グループの経営に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 市況変動に関わるリスク
① 資材調達価格等に関わるリスク
当社グループの建設事業は、各工事業者、資材業者等の協力会社の提供するサービスに一定程度依存しており、協力会社と共に、主要資材価格や労務価格が高騰した場合、当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。
② 為替変動に関わるリスク
当社グループは、日本国外においても事業を展開しており、外貨建により、収益の一部を受領し、費用の一部を支払っております。これら為替変動による収支変動を軽減する目的で、収入で得た外貨は外貨建の支出に充当することを基本としておりますが、当社連結財務諸表において海外工事の外貨建ての財務諸表金額は日本円に換算されるため、当社連結財務諸表は日本円と各通貨間の為替相場変動の影響を受けます。為替相場の変動により、当社グループの事業、財務状況及び業績に影響が及ぶ可能性があります。
③ 資金・金融市場に関わるリスク
当社グループは、建設工事の施工時に多額の立替を必要としており、その資金需要に応じる為に金融機関や市場からの資金調達を行う可能性があります。当社グループの資金調達能力や資金調達コストについては、資金・金融市場の動向や当社グループの信用力の変動等により、資金調達の制約や資金調達コストの上昇を招く可能性があります。
(3) 災害に関わるリスク
当社グループの事業地は日本全国及び海外に亘り、かつ屋外が主であり、各地域によりそれぞれの特性があります。そのため、各地域において大規模な震災や台風、火山の噴火等が発生した場合もしくは当該施工現場において火災や水害、テロ攻撃等の災害が発生し、工事の遅延や追加費用が発生した場合、当社グループの経営に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(4) 安全品質環境に関わるリスク
① 安全に関わるリスク
当社グループでは、施工中の安全性の確保のため、日々様々な取組みを実施しておりますが、事故を発生させてしまった場合、当社グループの施工の安全性に対する顧客の信頼及び社会的評価が失墜するだけでなく、死傷した作業員や第三者への補償等に対応しなければならないことから、当社グループの業績に極めて深刻な影響を与える可能性があります。なお、施工事故に伴う各種損害の軽減、並びに被災者への確実な賠償を行う目的で、現在業界水準と同程度の補償額・補償範囲の損害賠償保険に加入しております。
② 品質に関わるリスク
当社グループでは、施工物件の品質性の確保のため、日々様々な取組みを実施しておりますが、施工後の物件に契約不適合が発生した場合、当社グループの施工の品質性に対する顧客の信頼及び社会的評価が失墜するだけでなく、契約不適合責任による顧客や第三者への補償等に対応しなければならないことから、当社グループの業績に極めて深刻な影響を与える可能性があります。
(5) 法的規制・訴訟に関わるリスク
当社グループの事業は、様々な側面において、国際的な規制並びに政府及び地方自治体レベルの法令及び規則に基づく規制に服しております。これらの規制の変化等により、当社グループの事業がさらに規制され、また、大幅な費用の増加が必要となる可能性があります。
① 法的規制に関わるリスク
当社グループの事業は、建設業法、建築基準法、国土利用計画法、都市計画法、宅地建物取引業法、品質確保法、建設リサイクル法、産業廃棄物法、独占禁止法その他諸外国の類似の法令等の定めに基づき事業を行っておりますが、これらに変更が生じた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、コンプライアンス体制の充実を図っておりますが、これらの法令に違反した場合、行政処分などにより、業績、事業運営に影響を及ぼす可能性があります。
② 訴訟に関わるリスク
当社グループは事業活動に関して各種の訴訟に巻き込まれるおそれがあり、係争中の事案においては、当社グループの主張や予測と相違する結果となった場合には、追加的な支出や引当金の計上により業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6) IT(情報システム)、顧客情報の取り扱いに関わるリスク
当社グループは、業務の多くを情報システムに依存しております。コンピュータ・プログラムの不具合やコンピュータ・ウイルス等のサイバー攻撃によって情報システムに様々な障害が生じた場合には、重要なデータの喪失に加えて、建設施工に支障が生じる等、当社グループの経営に影響を及ぼす可能性があります。また、情報システムを支える電力、通信回線等のインフラに大規模な障害が発生した場合、当社グループの業務に重大な支障をきたす可能性があります。
また、当社グループが保有する個人情報が取り扱い不備または不正アクセス等により漏洩した場合には、当社グループの事業、またはシステムに対する社会的評価が傷つけられ、顧客及び市場の信頼が低下して、当社グループの事業、財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 人材・労務に関わるリスク
当社グループの事業運営には、各取引の施工、運営に関連して法律上要求される国家資格を始めとする各種の資格や技能を有する人材の確保が必要ですが、当社グループの従業員がその業務に必要なこれらの資格や技能を取得するまでには相応の期間を要することから、当社グループが想定する人員体制を必要な時期に確保できない場合には、当社グループの事業運営が影響を受ける可能性があります。
また、当社グループの従業員は労働組合に所属しておりますが、当社グループの従業員による集団的なストライキ等の労働争議が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 新型感染症拡大に関するリスクについて
新型感染症が拡大した場合の当社グループへの影響につきましては、国内外における経済活動の制約等から以下のリスクが想定されます
① 新型感染症の収束が長引くことに伴う経済活動の減速・停滞により、建設投資の先送りや中止・抑制など建設需要が落ち込むことにより、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
② 感染拡大が収まらない場合、経済活動の制約措置が講じられ、建設中の工事物件の施工停止等に伴う完成工事高の減少や工事原価の増加により完成工事粗利益が減少し、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 経済活動の停滞により、協力会社において業績悪化や事業継続に支障が発生した場合、施工労務者不足等、当社グループにおける施工能力が低下することにより当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 世界的な経済活動の停滞によるサプライチェーンの混乱により建設資材の調達に支障が出ることで、調達価格の上昇や工事進捗の遅延等が発生し、工事原価が膨らむことにより当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国の経済は、新型コロナウイルス感染症の法的位置付けが5類感染症に移行されたことにより経済活動はほぼ正常に戻ってきております。他方で、円安の影響や、混迷するウクライナ・中東情勢など地政学的リスクによる世界経済への影響も不安視され、先行きは不透明な状況が続いております。
このような状況の中、当社グループは[淺沼組らしさ(独自性)を深耕させ「変化に挑戦」]を基本方針に掲げる「中期3ヵ年計画(2021年度~2023年度)」の最終年度の総仕上げとして、さまざまな施策に取り組んでまいりました。「人間にも地球にも良い循環をつくる」ことを目指したリニューアル事業ブランド『ReQuality』の立ち上げもその1つで、そのコンセプトに沿った淺沼組独自の環境配慮型リニューアル技術を活かした「GOOD CYCLE BUILDING」の第1弾として改修を行った名古屋支店は、2021年度の竣工から国内外で多くの賞を受賞しており、2023年度は、第33回BELCA賞表彰建築物(ベストリフォーム部門)に選定されるなど、引き続き高い評価を得ております。
サステナビリティ活動としては、2010年度より地球温暖化防止対策としてスタートさせた「エコフレンドリーASANUMA21」では、「脱炭素化の推進、資源の循環、自然・社会との共生」を基本方針とし、2023年度より、自社の事業活動で生じるCO2排出量の削減目標(スコープ1・2)に加え、顧客に引渡した建築物の使用時に生じるCO2排出量(スコープ3カテゴリ11)についても削減目標を定めました。また、サステナビリティ推進委員会では、英国で設立された国際的な環境非営利団体であるCDP「カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(Carbon Disclosure Project)」の気候変動質問書に対し、2023年度も昨年度に引き続き回答し「B」スコア評価と、2022年度よりも高い評価を獲得。更なる高評価を得られるよう、様々な取り組みを強化してまいります。
その他の施策においても着実に取り組んでいくことで様々な社会変化に対応し、新技術開発による人材不足対策をはじめとした生産性の向上、既存技術の洗練や新領域へも挑戦し、多様に変化する経営環境の下、経営課題をしっかりと捉え、全役職員一丸となってさらなる企業価値向上を目指してまいります。
当社グループにおきましては、当連結会計年度の受注高は1,773億6千6百万円となり、前連結会計年度比22.5%の増加となりました。
売上高につきましては、1,526億7千6百万円となり、前連結会計年度比5.7%の増加となりました。
損益に関しましては、売上総利益につきましては、141億4千9百万円(前年同期比6.5%減)となりました。また、営業利益及び経常利益につきましては、それぞれ、営業利益40億5千7百万円(前年同期比28.7%減)、経常利益43億6百万円(前年同期比27.2%減)となり、親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、46億7千万円(前年同期比11.2%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
(建 築)
受注高は1,521億2千3百万円(前年同期比24.6%増)、売上高は1,289億6千1百万円(前年同期比10.7%増)となり、セグメント利益は106億1百万円(前年同期比1.9%増)となりました。
(土 木)
受注高は252億4千3百万円(前年同期比11.3%増)、売上高は204億5千3百万円(前年同期比19.2%減)となり、セグメント利益は25億5千9百万円(前年同期比35.3%減)となりました。
また、「その他」の事業につきましては、売上高32億6千1百万円(前年同期比21.8%増)、セグメント利益7億5千万円(前年同期比35.6%増)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金の減少は31億6千9百万円(前連結会計年度は13億5千4百万円の資金の増加)となりました。これは主に売上債権の増加及び、その他に含まれる未払消費税等の減少によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金の増加は26億4千9百万円(前連結会計年度は9億3千4百万円の資金の増加)となりました。これは主に有形固定資産の売却による収入によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金の増加は14億1千万円(前連結会計年度は36億6千1百万円の資金の減少)となりました。これは主に短期借入金の増加によるものであります。
以上の結果、当連結会計年度における現金及び現金同等物は、12億3千4百万円増加し、当連結会計年度末には130億3千1百万円(前連結会計年度比10.5%の増加)となりました。
③ 生産、受注及び売上の状況
a.受注実績
|
セグメントの名称 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) (百万円) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) (百万円) |
|
建 築 |
122,065 |
152,123 |
|
土 木 |
22,678 |
25,243 |
|
合計 |
144,743 |
177,366 |
(注) 当社グループでは建設事業以外では受注生産を行っておりません。
b.売上実績
|
セグメントの名称 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) (百万円) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) (百万円) |
|
建 築 |
116,456 |
128,961 |
|
土 木 |
25,301 |
20,453 |
|
その他 |
2,678 |
3,261 |
|
合計 |
144,436 |
152,676 |
(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の状況」は記載しておりません。
3 売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はありません。
なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりであります。
建設事業における受注工事高及び完成工事高の状況
a.受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高
|
期別 |
区分 |
前期繰越 工事高 (百万円) |
当期受注 工事高 (百万円) |
計 (百万円) |
当期完成 工事高 (百万円) |
次期繰越 工事高 (百万円) |
|
前事業年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
建築工事 |
113,180 |
113,277 |
226,458 |
106,972 |
119,486 |
|
土木工事 |
32,918 |
22,666 |
55,584 |
25,275 |
30,309 |
|
|
計 |
146,099 |
135,943 |
282,043 |
132,247 |
149,795 |
|
|
当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
建築工事 |
119,486 |
146,168 |
265,654 |
121,979 |
143,675 |
|
土木工事 |
30,309 |
22,224 |
52,534 |
19,757 |
32,776 |
|
|
計 |
149,795 |
168,393 |
318,188 |
141,737 |
176,451 |
(注)1 前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含んでおります。したがって、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれております。
2 次期繰越工事高は(前期繰越工事高+当期受注工事高-当期完成工事高)であります。
b.受注工事高の受注方法別比率
工事受注方法は、特命と競争に大別されます。
|
期別 |
区分 |
特命 (%) |
競争 (%) |
計 (%) |
|
前事業年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
建築工事 |
40.8 |
59.2 |
100.0 |
|
土木工事 |
29.9 |
70.1 |
100.0 |
|
|
当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
建築工事 |
57.8 |
42.2 |
100.0 |
|
土木工事 |
18.0 |
82.0 |
100.0 |
(注) 百分比は請負金額比であります。
c.完成工事高
|
期別 |
区分 |
官公庁 (百万円) |
民間 (百万円) |
計 (百万円) |
|
前事業年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
建築工事 |
18,442 |
88,529 |
106,972 |
|
土木工事 |
16,752 |
8,522 |
25,275 |
|
|
計 |
35,195 |
97,052 |
132,247 |
|
|
当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
建築工事 |
15,974 |
106,004 |
121,979 |
|
土木工事 |
12,000 |
7,757 |
19,757 |
|
|
計 |
27,974 |
113,762 |
141,737 |
(注)1 完成工事高のうち請負金額10億円以上の主なものは、次のとおりであります。
前事業年度
|
センコー株式会社 |
(仮称)センコー(株)湾岸弥富PDセンター新築工事 |
|
セキスイハイム東海株式会社 |
(仮称)タワー・ザ・ファースト名古屋伏見新築工事 |
|
エヌ・ティ・ティ都市開発株式会社 積水ハウス株式会社 |
(仮称)大阪市中央区内本町2丁目計画 新築工事 |
|
備後漬物株式会社 |
(仮称)備後漬物関東工場新築工事 |
|
東急住宅リース株式会社 |
(仮称)四谷プロジェクト新築工事 |
当事業年度
|
丸徳産業株式会社 |
(仮称)丸徳産業(株)稲沢第一物流センター新築工事 |
|
能瀬精工株式会社 |
(仮称)能瀬精工株式会社 奈良第二工場新築工事 |
|
大阪市高速電気軌道株式会社 |
(仮称)Osaka Metro なんばビル プロジェクト |
|
積水ハウス株式会社 |
(仮称)上野二丁目ホテル計画 新築工事 |
2 前事業年度及び当事業年度ともに完成工事高総額に対する割合が、100分の10以上の相手先はありません。
d.次期繰越工事高(2024年3月31日現在)
|
区分 |
官公庁 (百万円) |
民間 (百万円) |
計 (百万円) |
|
建築工事 |
19,345 |
124,330 |
143,675 |
|
土木工事 |
19,207 |
13,569 |
32,776 |
|
計 |
38,552 |
137,899 |
176,451 |
(注) 次期繰越工事のうち請負金額10億円以上の主なものは、次のとおりであります。
|
住友不動産株式会社 |
(仮称)桜新町計画新築工事 |
2026年6月完成予定 |
|
東急アルス本郷建替組合 |
(仮称)東急アルス本郷建替え計画新築工事 |
2025年10月完成予定 |
|
株式会社SUBARU |
(矢)5トリム再構築工事(仮称) |
2024年9月完成予定 |
|
株式会社SUBARU |
新37棟建設工事 |
2025年1月完成予定 |
|
西部ガス都市開発株式会社 |
(仮称)香椎照葉4丁目賃貸マンション 新築工事 |
2025年5月完成予定 |
|
関西高速鉄道株式会社 |
なにわ筋線西本町駅部土木工事 |
2028年3月完成予定 |
|
西日本高速道路株式会社 |
京滋バイパス 吹前高架橋他3橋耐震補強工事 |
2026年10月完成予定 |
|
西日本高速道路株式会社 |
名神高速道路 蔵人高架橋他7橋耐震補強工事 |
2027年9月完成予定 |
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(経営成績)
当連結会計年度における経済環境につきましては、コロナ禍を乗り越え緩やかな回復基調となりました。ただし、企業の業況や収益に改善が窺える一方で、その好調さが必ずしも十分に賃金や投資に回っておらず、内需は力強さを欠いており、個人消費の持続的な回復に課題を残しています。また、先行きのリスク要因をみると世界経済の下振れリスク等には注意が必要な状況であります。
国内建設市場において民間は引き続き回復基調にあり、官庁でも国土強靭化をはじめとした公共事業関係費が確保されていることから堅調に推移しました。
そのような環境の中、当社グループにおける受注活動につきましては、官庁工事、民間工事ともに受注を伸ばし、前期比増の1,773億6千6百万円となり、計画値である1,447億円を約326億円上回ることができました。
売上高につきましては、提出会社においては工事が順調に進捗したこと、海外子会社が堅調に推移したことにより、計画値を108億7千6百万円上回る1,526億7千6百万円となりました。
損益に関しましては、売上総利益が141億4千9百万円となり、計画値を1億9千9百万円上回りました。営業利益および経常利益はそれぞれ40億5千7百万円、43億6百万円となり、営業利益は計画値を4千2百万円下回り、経常利益は計画値を3億3千6百万円上回りました。親会社株主に帰属する当期純利益は計画値を1億3千7百万円上回る46億7千万円となりました。業績数値につきましては、ほぼ計画通りという結果となりました。
なお、自己資本利益率(ROE)は前連結会計年度比0.5ポイント増の10.2%となり、計画値を上回ることができました。
(セグメントごとの経営成績)
建築部門の経営成績は、受注高が前連結会計年度比24.6%増の1,521億2千3百万円となり、計画値を344億2千3百万円上回りました。これは国内民間工事で大型物件の受注が相次いだことが主な要因です。
売上高につきましては、前連結会計年度比10.7%増の1,289億6千1百万円となり、計画値からは103億6千1百万円上回りました。これは、国内において大型工事が順調に進捗したことによります。セグメント利益は前連結会計年度比1.9%増の106億1百万円となりました。これは海外子会社が好調に推移したことなどによります。
土木部門の経営成績は、受注高が前連結会計年度比11.3%増の252億4千3百万円となりましたが、計画値を17億5千6百万円下回りました。これは指名停止処分の影響が長引き官庁工事の受注が伸び悩んだことによります。
売上高につきましては、前連結会計年度比19.2%減の204億5千3百万円となり、計画値からは15億4千6百万円下回りました。これは、前連結会計年度からの官庁工事の受注高減少により、当連結会計年度への繰越工事高が減少したことによるものです。セグメント利益は前連結会計年度比35.3%減の25億5千9百万円となりました。これは前述のとおり売上高の減少に起因するものです。
(財政状態)
当連結会計年度末における財政状態は、資産合計が1,012億5千1百万円となり、前連結会計年度比82億1千6百万円の増加となりました。これは売上の増加により受取手形・完成工事未収入金等が36億1千4百万円増加したこと等によるものです。
負債合計は、525億4千5百万円となり、前連結会計年度比41億7千8百万円の増加となりました。これは主に短期借入金が50億円増加したこと等によります。
純資産合計は、487億5百万円となり、前連結会計年度比40億3千8百万円の増加となりました。これは親会社株主に帰属する当期純利益の計上や配当金の支払などの結果、利益剰余金が15億7千9百万円増加したこと等によるものです。
この結果、連結自己資本比率は47.0%となり、前連結会計年度末から0.3ポイント減少しました。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、12億3千4百万円増加し、当連結会計年度末では130億3千1百万円となりました。これは主に売上債権の増加及びその他に含まれる未払消費税等が減少したこと等により営業活動によるキャッシュ・フローが31億6千9百万円の減少となった一方、有形固定資産の売却等により投資活動によるキャッシュ・フローが26億4千9百万円の増加、短期借入金の新規借入等により財務活動によるキャッシュ・フローが14億1千万円増加したことによるものです。
当社グループにおける主な資金需要は、建設事業における工事施工に要する工事費、販売費及び一般管理費ならびに技術開発・ICT関連の設備投資や新領域関連の投資資金です。
運転資金については、金融機関からの借入金及び社債の発行により調達しており、設備投資資金等については、内部留保等の自己資金でまかなっております。
当社は中期3ヵ年計画において、資金投入計画と共に株主還元計画を打ち出しており、競争力の維持・強化のための成長投資と株主還元のバランスを取る方針としております。株主配当につきましては、中期3ヵ年計画において連結配当性向を70%以上としており、2024年3月期の配当は1株当たり203円、連結配当性向70.0%としました。また、次期の配当につきましては、新中期3ヵ年計画(2024年度~2026年度)において引き続き連結配当性向70%以上を維持する計画としております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に準拠して作成しておりますが、この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われており、資産・負債や収益・費用の金額にその結果が反映されております。
これらの見積りにつきましては、過去の実績等を踏まえながら継続して評価し、必要に応じ見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果はこれらの見積りと異なることがあります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
特記事項はありません。
当社グループは、創業理念である「和の精神」「誠意・熱意・創意」の下、「仕事が仕事を生む」の企業精神に則り、誠実なモノづくりに専心し、社会の安全・安心・快適の増進に寄与することを基本理念として、変化する社会やお客様のニーズに対応できる技術開発を、技術研究所を拠点に推進しております。
研究開発活動としては、免震及び制震技術などの高品質・高性能な構造物を構築する技術、ストック活用のためのReQualityブランド化に資するリニューアル技術、ICTやIoTを活用した施工改善・生産性向上に資する技術などに主として注力しております。
当連結会計年度における研究開発費の総額は
(建築及び土木)
[高品質・高性能な構造物を実現する技術]
(1) 大型物流施設等を対象としたエネルギー法を用いた制振構造の設計手法
エネルギー法とは、制振構造に適した比較的新しい構造設計手法です。大型物流施設など制振構造において、設計期間の短縮に加え、鉄骨量の削減効果が期待できます。当連結会計年度では、仮想建物を対象とした制振構造の試設計をエネルギー法により実施し、日本ERIによる構造性能評価を取得するとともに、エネルギー法による構造設計の社内体制を確立いたしました。翌連結会計年度では、設計部門と技術研究所が協働して設計技術力を強化し設計フローの合理化を進めるとともに社内体制を強化し、大型物流施設を中心に合理的な設計手法を確立し新規受注に繋げたいと考えております。
(2) 鉄骨造の合理化工法開発
物流施設をはじめとした建築物への鉄骨造の採用が拡大しており、その競争力の強化には鋼材量、加工量、特殊材料等の省力化が課題となっております。当連結会計年度では、床スラブの補剛効果を利用する「横座屈補剛工法」について8物件、柱幅の異なる箇所の合理化を行う「シンプルダイア工法(異幅柱接合部工法)」について5物件が採用されました。さらに、シンプルダイア工法については適用範囲の拡大に向けた検討も行っており、翌連結会計年度においても引き続き、シンプルダイア工法の適用範囲拡大に向けて構造実験及び数値解析による検討を進め、建築技術性能証明の取得を目指してまいります。
(3) 鉄筋コンクリート造壁・床のひび割れ誘発目地工法「CCB工法」の展開
当社では、鉄筋コンクリート造の壁や床に不可避な乾燥収縮によるひび割れを壁や床に設けた目地内で確実に誘発させ、高品質な壁や床を築造する「CCB工法」を開発してまいりました。当連結会計年度では10物件に採用されております。また、前連結会計年度において、一般財団法人 日本建築総合試験所の建設材料技術性能証明を取得した「PRS目地充填工法」についても、当連結会計年度では5物件に採用されました。翌連結会計年度では、実物件への適用をさらに拡大させるとともに、新たな合理化技術「床CCB-NAC工法」の一般財団法人 日本建築総合試験所の建築技術性能証明の取得を目指してまいります。
(4) 環境配慮型コンクリートの開発と適用
環境配慮型コンクリートには低炭素性と資源循環性の2種類があります。当社では、CO2排出量を最大70%程度まで削減した低炭素性のものと、高炉スラグ微粉末やフライアッシュを使用した資源循環性のものとの両方の環境配慮型コンクリートを開発しており、当連結会計年度では3作業所にて、二酸化炭素排出量を約50%削減したJISマーク品の環境配慮型コンクリート(BB+FA)を適用いたしました。今後も環境経営に資する取組みとして積極的に展開を図ってまいります。さらに前連結会計年度からNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)グリーンイノベーション基金事業にも再委託先として参画し、二酸化炭素を吸収・固定するカーボンプールコンクリートの開発を推進し、脱炭素社会への貢献を目指してまいります。
[ストック活用のためのリニューアル技術]
(5) 環境配慮型リニューアルReQualityの推進
「人間にも地球にも良い循環をつくる」をかかげて取組むリニューアル事業『ReQuality』のフラッグシップのプロジェクトであった淺沼組名古屋支店改修プロジェクト(2021年9月完成)は、グッドデザイン賞・ベスト100 (主催 :公益財団法人日本デザイン振興会)など多くの賞を受賞したことにより、当連結会計年度では10物件に当社独自のADVANCE技術が採用されました。また、新たな土活用技術として立体木摺土壁を開発(特許出願中)し、展示会への出展とともに実店舗施設の内装材としても採用されております。翌連結会計年度では環境配慮型リニューアルReQualityに資する技術、自然素材の活用技術に関する技術開発をさらに進化させ、リニューアル事業の更なる受注拡大に繋げたいと考えております。
(6) 既存不適格鉄骨造建物の耐震診断・改修手法の開発
既存不適格の鉄骨造建物は耐震性能が極めて乏しいために改修工事まで議論が進まず、放置された建物が数多く残されていることが社会的な課題となっています。当社では、本課題に対してリニューアル事業の一環として取り組み、既存不適格の鉄骨造建物を対象として、低コストかつ省スペースの制振技術を利用した耐震改修工法の開発を進めております。当連結会計年度では、制振装置について要素実験を実施し、基本性能の確認と性能改善のための開発を行いました。引き続き、翌連結会計年度では実大柱梁フレーム架構を用いた構造実験による検証、およびFEM解析による検討を進め、第三者機関による構造性能評価の取得を目指してまいります。
(7) 鉄筋コンクリート構造物の劣化診断システムと寿命予測技術
当社独自の劣化診断システムである「透気試験複合法(仕上げをした鉄筋コンクリート構造物においてダブルチャンバー法とドリル削孔法を併用し、仕上げの劣化を加味して構造物の耐久性を定量的に評価する調査診断手法)」を開発しており、当連結会計年度には3物件に適用いたしました。この手法はコンクリート構造体に大きな傷をつけずに供用中の建物でも居ながらの調査が可能となります。調査結果から得られる劣化度や所有者の意向に応じて、最適かつ合理的な無駄のない補修方法の提案が可能となります。翌連結会計年度の早期には、(一財)日本建築総合試験所の建設材料技術性能証明が取得できます。改修工事において劣化診断システムを採用し、建物の寿命予測と共に合理的な改修方法を提案することで、リニューアル工事の受注に繋げたいと考えております。
[施工改善・生産性向上に資する技術]
(8) ICTを用いた品質・生産性向上のための開発
AI(人工知能)を利用した配筋自主検査システムは、当連結会計年度において配筋自主検査システム実用機の試行を繰り返し、現場での実験検証を行いました。その結果、壁・床に加えて、柱・梁の検知精度の向上が確認できました。翌連結会計年度では本開発をさらに深化させると共に、現場での実用化を目指してまいります。建設現場での生産性・安全性の向上、コスト削減等を実現するため、ロボティクストランスフォーメーション(ロボット変革)の推進を図るべく設立された「建設RXコンソーシアム」に当社も参画しております。当連結会計年度では自動搬送ロボットの現場試行結果の情報共有を行い、建築ロボット活用のためのガイドラインを制定するなど、生産性向上に向けた取組みを継続しております。また、BIMモデルを活用した若手社員向けの体験型施工管理教育システム「現場トレーナー」は、当連結会計年度においてサブスクリプションによる他社へのサービスを開始いたしました。翌連結会計年度では当社内での活用をさらに深化させ、アップデートや新しいコンテンツの追加を目指してまいります。
また、「その他」の事業においては、研究開発活動は特段行われておりません。