本項においては、将来に関する事項が含まれているが、当該事項は2025年3月末現在において判断したものである。
当社グループは、「快適な環境づくりを通して社会に貢献します。」「技術力で未来に挑戦し、新しい価値を創造します。」「人をいかし、人を育てる人間尊重の企業をめざします。」を企業理念の柱に掲げ、電気、空気調和、冷暖房、給排水、情報通信などの設計・施工を営む総合設備業として、社会的使命を果たすと同時に、お客さまや地域社会とともに発展し続ける企業であることを経営の基本としている。
また、これらの事業に関連する環境、エネルギー効率化、リニューアルなどの分野についても、一層の技術開発の促進と品質の向上に努め、お客さまの信頼と期待に応えると同時に、新規分野・新規市場への積極的な事業展開を図ることで、社会構造の変化に適宜適切に対応しながら、企業価値の向上をめざしている。
当社グループでは、企業理念を柱として、将来のメガトレンドを視野に、創立100周年(2044年)にかけて想定される社会環境の中で、当社のビジネス機会や展開にも注視しながら長期ビジョンを策定し、持続可能な社会づくりに向けて私たちが果たす役割〈3つの貢献〉やビジョン実現に向けた基本姿勢を具体的に定めている。
この「長期ビジョン」を九電工“イズム”として浸透させ、継承しつつ、時代の進化や当社グループを取り巻く環境の変化に応じて、その内容をブラッシュアップさせていく予定である。


〔2025-2029年度 中期経営計画〕
当社グループは、前中期経営計画の成果を検証、分析し、継続して取り組むべき課題を整理したうえで、企業理念に基づいた長期的な戦略の過程で2029年度までに達成すべき目標として本中期経営計画を策定している。
本中期経営計画では、2044年(創立100周年)に向けてのトップメッセージとして、「新たなステージ」「未来への投資」「質の改善」の『3つの想い』を込めて策定し、「Challenge & Grow 2029 ~新たなステージに向かって未来に挑戦~」をテーマに掲げ、現在の様々な問題や課題に打ち勝ち、当社グループとして継続的な成長と発展を目指していく。
『新たなステージ』
前中期経営計画はテーマとして『持続的な成長を実現するための経営基盤の確立』を掲げ3つの改革「施工戦力」「生産性」「ガバナンス」に取り組み、好調な建設需要の後押しもあり、売上高・経常利益共に過去最高を更新した。
これから2044年(創立100周年)に向かって成長を加速させ、『新たなステージ』に向かっていく為には、当社グループ全体の成長が必要であり、当社グループ内の様々な経営資源の活用を最大化することで持続的な成長を目指していく。
また、2025年4月28日に公表のとおり、創立100周年に向けて、2025年10月より「株式会社クラフティア」に社名変更を行う予定である。これは「新たなステージに立つ」という社員の想いが詰まった新社名である。決定にあたっては若手・中堅社員の想いを最大限に尊重した。
当社は配電線工事や電気工事だけではなく、空調管工事もサブコン内でトップクラスの売上高に成長してきている。更には、関東と関西の売上高シェアも30%を超え、近年は工事収益以外の安定収益確保に向けたストックビジネスにも注力している。
この様な業容拡大に向けた事業展開と社名が合わなくなってきたこともあり、創立80周年と本社移転の節目もあり社名変更を決断した。
『未来への投資』
この好調な建設需要はしばらくは続くとみているが、建設業界的に慢性的な人手不足が課題としてあり、当社においても解決に向けた生産性向上が喫緊の課題である。
そのため、業務効率化に向けた建設DXや業務改革、人財教育を始めとした人的資本経営、将来の安定収入確保にも力を入れなければならず、『未来への投資』が必要と考えている。
持続的な成長に向かって、社員・成長事業・新たな価値創造・安定収益確保・M&A・環境等へ積極的に投資することにより、設備工事業をメイン事業としながらも、多角的に利益確保が出来る企業体制を構築していく。
『質の改善』
当社グループ全体で更なる企業価値向上に向けた取り組みを実行し、売上高を目標として掲げず、利益の向上にこだわり、社員の処遇改善、株主還元の強化など、すべてのステークホルダーの期待に応えられるよう、『質の改善』を図っていく。
利益・品質・ガバナンス・社員の能力・社員の処遇・資本効率等を向上させることにより、企業価値創造の基盤をより強固なものにして、持続的な企業価値向上を目指していく。


(2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
今後の建設業界においては、民間の都市再開発や半導体関連施設、物流施設など、建設投資は底堅く推移するものと想定される一方で、不安定な国際情勢は米国における相互関税政策などで不透明感を増している。また、国内においても為替相場の変動、物価高騰、労働需給の逼迫、更には米国の関税政策は国内企業の設備投資計画にも大きな影響を及ぼす可能性もあり、注視が必要な状況である。
当社グループにおいては、このような状況下で始まる中期経営計画ではこれまでの技術力強化を始めとした取り組みを深化させていくとともに、持続的な成長を支える人的資本経営、将来の安定収益確保に向けた投資戦略も強化していく。
中期経営計画の初年度となる2025年度の経営基本方針のテーマについては、「Challenge2025 ~技術の深化と成長への投資~」とし、中期経営計画の「財務目標」「非財務目標」の達成に向けて特に重点的に取り組む項目として掲げている『11の取組施策』と『5つの投資戦略』を実践し、当社グループの成長へと繋げていく。

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループの経営上の目標を判断するための客観的な指標(KPI)は、経常利益、投下資本利益率(ROIC)、投資総額、株主還元であり、2029年度の目標値を、経常利益600億円、投下資本利益率(ROIC)10%以上とし、中期経営計画期間中の投資総額2,000億円、配当性向40%目安(累進配当)としている。
2025年4月28日に発表した次期の業績の見通しについては、売上高4,900億円、経常利益475億円としている。
なお、当該数値は、有価証券報告書提出日現在において予測できる事情等を基礎とした次期の業績の見通しであり、その達成を保証するものではない。




文中の将来に関する事項は、当社グループが有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性がある。
当社グループは、企業理念と長期ビジョンに基づき、地球環境や社会、経済などに配慮しながら長期的な視点で企業価値の向上により一層注力していくため、サステナビリティ基本方針及びマテリアリティ(重要課題)を制定した。
今後、当社グループは、サステナビリティ基本方針のもと、マテリアリティ(重要課題)について計画的かつ積極的な取り組みを推進し、持続可能な社会づくりに貢献していく。




気候変動を含むサステナビリティに関するリスクの識別と評価、並びにリスクへの対応策の検討は、サステナビリティ経営推進室が中心となり、組織横断的な議論を経て、サステナビリティ推進委員会で審議している。
サステナビリティ推進委員会で審議した内容は、必要に応じて経営執行会議、取締役会への付議・報告を行っている。
(3) 人的資本・多様性に関する戦略
当社は、「人をいかし、人を育てる人間尊重の企業をめざします。」という企業理念に基づき、もっとも重要な経営資源である「人財」の育成に関する方針を明確にし、全従業員への浸透を図るため、「人財育成憲章」を制定している。人は「財(たから)」であるとの信念に基づき、会社の発展と従業員一人ひとりの働きがいや自己実現のための能力向上を図り、教育の成果を発揮する場を提供することで、従業員のさらなる成長と会社の発展を目指す。
中期経営計画における経営戦略の過程において、企業価値を高めていくためには、「人的資本経営基本方針」のもとで、人財を確保・育成するとともに、社員が働きがいを感じながら働くことができる環境の構築が必要であり、これに関連する施策と人財への投資を実施していく。
また、当社は「社員の健康」を重要な経営資源の一つと捉え、社員の「健康第一」という意識の向上と自発的な健康増進活動を支援するため、「九電工 健康経営宣言」を策定し、組織一丸となって「安心して働ける環境」「明るく快適な職場づくり」の実現と、家族を含めた健康の維持向上に取り組んでいる。今般、当社の健康経営に関する取り組みが評価され、日本健康会議から「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)」として認定されている。
加えて、職務に対して熱意ある従業員を増やし、そのような従業員が思う存分に挑戦し“力”を発揮できる職場を作ることによって、収益性や生産性の向上と離職の抑制に繋げるために、エンゲージメントの向上に取り組んでおり、エンゲージメントサーベイを実施している。
また、経営環境が大きく変化する中で、当社グループが新たな価値を生み出し、競争力を高め、持続的な成長を続けるためには、異なる考え方や多様な視点を加えることが必要であり、ダイバーシティの推進が不可欠であると考え、2021年7月に「ダイバーシティ推進準備室(現ダイバーシティ推進室)」を設置し、取り組みを行っている。企業理念・行動憲章を基本とした「目指す姿」を定めたうえで、ダイバーシティを推進し、SDGsの達成に貢献していく。



(4) 人的資本・多様性に関する指標と目標
(注) 連結会社ベースでの統一した開示が困難である場合、当社グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載している。
(5) 環境経営の推進(TCFD提言に基づく取り組み)
当社は、企業理念や長期ビジョンのもと、省エネルギーやクリーンエネルギーに関連する施設や災害に強いインフラ設備の施工など、総合設備工事会社としての技術力を生かして、サステナビリティをめぐる様々な社会課題の解決に取り組んでいる。
また、当社は、気候変動を含む環境問題への対応を、マテリアリティ(重要課題)の一つとして認識し、2021年12月に環境経営に関する中長期目標を設定するとともに、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同している。
気候変動を含む環境問題への対応に関する「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」については、
当社グループは、経営環境の激しい変化に伴うリスクの多様化・複雑化に対応するため、想定できるリスクを事前に把握・管理し、対策を講じ、リスク発生の未然防止と顕在化した場合の損失の最小化を図る目的から、全社的リスク管理の整備を行っている。そのリスクマネジメントプロセスに則り、経営成績、財政状況に影響を及ぼす可能性のあるリスクとして会議体で議論された主なリスクとして以下のようなものがある。
なお、文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものである。
当社グループにおいては、これらのリスクの発生確率とその業績に与える影響度を認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の適切かつ迅速な対応に努める所存である。
以下の事項は当社グループが事業を継続するうえで、予想される主なリスクを具体的に例示したものであり、これらに限定されるものではない。











(1) 経営成績
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりである。
当連結会計年度の建設業界は、都市再開発や企業の設備投資を背景とした堅調な需要が継続する一方で、時間外労働上限規制の遵守に伴う施工力不足や物価の上昇、とりわけ人件費の高騰が懸念される中で推移した。
当社グループにおいても、過去最大規模の仕掛工事量を抱える中、施工要員の確保と長時間労働を生じさせない最適な要員体制の確立が重要であり、これらを直面する最大の課題と認識してきた。
このような環境認識を踏まえ当社グループは、中期経営計画の最終年度である2024年度の経営基本方針のテーマについては、2023年度の「新しい時代に向けた生産性の向上」を引き継ぎ、その最重要取り組みを「働き方改革の加速」から「働きがいのある働き方改革へ」と改称したうえで、中期経営計画の重点課題の解決に向け、着実に取り組みを推進してきた。
このような事業運営の結果、当連結会計年度の業績は、以下のとおりとなった。
〔連結業績〕
営業利益は、前年同期から3,371百万円増加し、41,388百万円、経常利益は、2,071百万円増加し、44,434百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は、865百万円増加し、28,883百万円となった。
事業の種類別セグメントの業績は、次のとおりである。
工事受注高は、都市再開発や半導体工場、物流施設などの旺盛な設備投資に裏打ちされた堅調な需要に対処すべく、営業・技術の連携による要員調整を徹底し、最適要員配置を踏まえた計画的な受注活動を進めた結果、前連結会計年度と比べ11,248百万円増加(2.6%増)し、452,113百万円となった。
売上高は、前年度以前に受注した大型案件の工事が進捗し、1,750百万円増加(0.4%増)し、454,373百万円となった。
また、セグメント利益(営業利益)については、大型案件の工事の進捗に伴う売上高の増加並びに工事利益率の向上により、前連結会計年度と比べ3,285百万円増加(9.5%増)し、37,993百万円となった。
宇久島メガソーラープロジェクトの海底ケーブル敷設については、京セラや当社が中心として設立した発電事業者が、海底ケーブル敷設許可申請書に、関係者との協議状況や外部専門家の分析による港湾計画への影響を記した上申書を添付したものを行政機関に提出し、その後、行政プロセスに則り協議を適切に進めている。なお、海底ケーブル敷設に係る許可・申請のうち、宇久島沿岸の一部については、長崎県からの許可を取得済みである。
発電事業の事業性については、当初2023年度を予定していた発電開始時期の遅れを挽回すべく、京セラや当社を中心に、収益・コストの両面から改善に向けた施策を検討している。パネルの発電効率の向上など技術的な施策による発電量の増加に加え、市場価格に補助金(プレミアム)が上乗せされるFIP制度への転換や発電事業者が発電した再生可能エネルギー由来の電気を直接需要家へ供給するコーポレートPPAなどの制度利用、卒FIT電源の活用による収益性の改善と事業期間の延長を目指している。資金調達については、レンダーと2025年度中のプロジェクトファイナンスの組成に向けた検討を行っている。工事の進捗については、工事全体の約7割のウエイトを占める宇久島島内の工事を、地区ごとに分割し同時並行的に本格的な施工を進めており、現時点では、2026年度中の完成を目指している。
工事の採算性については、2025年3月末時点で改めて見直しを行い、コロナの影響等で工程が遅延したことによる、部材の保管料や資機材・人件費のアップを考慮したうえで、利益水準を引き下げているが、採算性が向上するよう努力する。今後は、発電事業の事業性を踏まえつつ、工事価格の増額を発電事業者と協議していく。なお、当社の発電事業者に対する工事未収入金等については、発電事業者の資金調達の都度回収される見込みである。
売上高は、材料及び機器の販売事業や環境分析・測定事業が増加したことなどから、前連結会計年度と比べ3,147百万円増加(19.1%増)し、19,580百万円となった。
また、セグメント利益(営業利益)については、処遇改善等による販売費及び一般管理費の増加に伴い、前連結会計年度と比べ199百万円減少(6.2%減)し、3,040百万円となった。
流動資産は、シンジケートローンの返済や仕入債務の決済等による現金・預金の減少などにより、前連結会計年度末と比べ25,149百万円減少し、299,268百万円となった。
固定資産は、投資有価証券の取得による増加などにより、前連結会計年度末と比べ10,337百万円増加し、189,203百万円となった。
これらの結果、資産合計は前連結会計年度末と比べ14,812百万円減少し、488,472百万円となった。
流動負債は、シンジケートローンの返済による短期借入金の減少並びに仕入債務の決済による電子記録債務の減少などにより、前連結会計年度末と比べ47,997百万円減少し、147,529百万円となった。
固定負債は、長期借入金の増加などにより、前連結会計年度末と比べ12,158百万円増加し、28,789百万円となった。
これらの結果、負債合計は、前連結会計年度末と比べ35,839百万円減少し、176,319百万円となった。
純資産合計は、配当金の支払いがあったものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加などにより、前連結会計年度末と比べ21,027百万円増加し、312,152百万円となった。
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ、24,151百万円減少し、70,437百万円となった。
営業活動の結果増加した資金は、8,656百万円(前連結会計年度比35,313百万円の収入額の減少)となった。
これは、主に仕入債務の減少や法人税等の支払を、税金等調整前当期純利益の計上や売上債権の減少及び未成工事受入金の増加額が上回ったことによるものである。
投資活動の結果支出した資金は、8,910百万円(前連結会計年度比6,595百万円の支出額の増加)となった。
これは、主に投資有価証券の取得によるものである。
財務活動の結果支出した資金は、24,552百万円(前連結会計年度比13,519百万円の支出額の増加)となった。
これは、主に配当金の支払や長期借入金の返済による支出が、長期借入金の調達による収入を上回ったことによるものである。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
過去最大規模の仕掛工事量、最適要員体制の構築、時間外労働上限規制といった直面する重要課題を解決すべく、経営基本方針のテーマと最重要取り組みを「新しい時代に向けた生産性の向上(働きがいのある働き方改革へ)」と定め、グループを挙げて取り組んできた。
また、かつてないスピードで変化する環境に対応していくためには、中期経営計画のロードマップで定めた再生可能エネルギー事業やDXを始めとした取り組みを進捗させつつ、環境経営やCSV経営を経営戦略として浸透させる必要があると認識し、中期経営計画に掲げる改革・課題に、「サステナビリティ経営の推進」「大型プロジェクト件名における進捗管理の徹底」を追加し、それぞれ具体的な施策を定め実行した。


具体的には、サステナビリティ経営推進室の組織を強化し、人的資本経営に関する基本方針の立案・推進、人的資本に関する情報の収集・発信・調査及び研究するための体制を構築した。また、昨年度に設置した働き方改革推進室では、現場従業員を中心に、長時間労働に対する意識改革を図るとともに、事務職を大型現場や事業所の技術部門に配置することで、施工管理者の業務負担を低減するための体制構築を進めた。加えて、DX推進プロジェクトの加速や施工関連業務の間接部門への業務移管を実施した。一方で、技術職従業員の採用数の確保や、若年技術職従業員の離職対策については、奨学金返還支援制度の導入を実行し、個別面談を通じた悩みや課題の共有スキームの構築など様々な取り組みを講じている。
この他にも、全社横断的な情報セキュリティ対策を推進し、平時からセキュリティ対応を行う体制を強化するため、サイバーセキュリティ室を設置した。現代社会において増加傾向にあるシステムのウイルス感染や不正アクセス等のサイバーリスクの発生防止と顕在化した場合の損失の最小化に向けた取り組みを進めている。
また、拡大し多様化する再生可能エネルギー事業に関して、事業戦略の構築やリスクを回避し、サステナブルなストックビジネスを拡大するためにアセットマネジメント部を設置し、当社グループが保有する再エネアセットの管理体制を強化した。
当連結会計年度の営業利益は、大型案件の工事の進捗に伴う売上高の増加並びに工事利益率の向上により、増益となった。
設備工事業の売上高の増加は、堅調な受注環境を反映した高水準の受注実績と過去最大規模の仕掛工事の進捗が主な要因である。
設備工事業の利益率向上については、竣工を迎えた大型案件の利益率改善を中心に、過年度に受注した採算性が良好な案件の工事が進捗したことなどが主な要因であると分析している。
一方で、材料費の価格上昇に対しては、㈱Q-mastと連携し早期に資材発注を行うなどその影響の抑制に努めている。また、営業・技術が一体となったフロントローディングの実施やタイムリーな追加工事の交渉に加え、コストダウン専門部隊である技術管理部による図面や原価見積りの検討など利益率改善のための様々な施策を実施している。なお、足元の大型案件の受注時点での想定利益率については、材料費・人件費の高騰を反映した価格交渉の推進により、過年度と比較し向上してきている。
販売管理費の増加は、主に、処遇改善による人件費の増加や生産性向上に向けたDX投資に伴うものである。
総売上実績に対する割合が100分の10以上の相手先別の売上実績及びその割合は、次のとおりである。
(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去している。
2 当社グループでは設備工事業以外は受注生産を行っていない。
3 当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の状況」は記載していない。
なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりである。
設備工事業における受注工事高及び完成工事高の状況
〇 受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高
(注) 1 前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含む。
2 次期繰越工事高は(前期繰越工事高+当期受注工事高-当期完成工事高)である。
工事の受注方法は、特命と競争並びに九州電力送配電㈱との委託契約によるものに大別される。
(注) 百分比は請負金額比である。
(注) 1 九州電力グループとは、九州電力㈱、九州電力送配電㈱及び㈱九電送配サービスのことである。
2 完成工事のうち主なものは、次のとおりである。
前事業年度 請負金額 10億円以上の主なもの
当事業年度 請負金額 10億円以上の主なもの
3 完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりである。
〇 次期繰越工事高(2025年3月31日現在)
次期繰越工事のうち請負金額 10億円以上の主なものは、次のとおりである。
営業活動によるキャッシュ・フローについて
当連結会計年度における営業キャッシュ・フローは、8,656百万円となり、前連結会計年度に比べ、35,313百万円の収入額の減少となった。事業規模の拡大及び施工案件の大型化に伴い、運転資本は増加する傾向にあるが、日頃よりこまめな出来高請求を行うことに加え、毎月末に長期未収金の確認を行うなど貸倒れリスクの低減に努めている。また、全社で集金に取り組む集金強調期間を年2回設けるなど、キャッシュ・フロー経営の浸透を図っている。
投資活動によるキャッシュ・フローについて
当社グループは、中期経営計画の経営指標としてROICを採用し、加重平均資本コストを意識した投資を行っている。当連結会計年度における設備投資等の概要については「第3 設備の状況 1 設備投資等の概要」に、設備の新設、除却等の計画については「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載している。なお、設備工事業に係る通常の維持更新投資については、年間50億円程度を想定している。
また、再生可能エネルギー発電事業を行うSPCへの出資を行っている。
財務活動によるキャッシュ・フローについて
設備工事業に関する運転資金は、300億円程度を想定していたが、宇久島メガソーラープロジェクトの動向や事業規模の拡大に伴い、増加傾向にある。一方で、ウクライナ、中東情勢、トランプ米政権の関税政策など不確実性の増大に備えるため、手元流動性の確保に努めている。
加えて、再生可能エネルギーや脱炭素などESGへの取り組みをはじめとした投融資を主な使途とした社債発行登録を行っている。今後も、調達コストを勘案しながら、機動的に資金使途に応じた資金調達を遂行していく。
業容拡大やリスク対応に伴う棚卸資産や運転資金の回転率の低下に対しては、営業債権の回収率改善や事業外資産の見直しを行うことで対処し、営業活動及び投資活動のキャッシュ・フローを通じたROICの改善を図っていく。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に準拠して作成されている。この連結財務諸表作成に際し、当社グループ経営陣は、決算日における資産・負債の数値及び報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える様々な要因・仮定に対し、継続して可能な限り正確な見積りと適正な評価を行っている。
なお、見積り、判断及び評価は、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づき行っているが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる可能性がある。
当社グループの会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 4 会計方針に関する事項」に記載している。個別の取引や経済事象に会計方針を適用するに当たり、現在及び将来の財政状態及び経営成績に大きな影響を与えると想定される事項は以下のとおりである。
宇久島メガソーラーについては、顧客と工事請負契約を締結しているが、当社グループは、当該契約を、財又はサービスの支配を一定期間にわたって顧客に移転するものと判断し、当連結会計年度末における見積総原価(工事原価総額)に対する発生原価の割合を、履行義務の充足に係る進捗度とし、その収益を認識している。ただし、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積もることができなくなった場合において、発生する費用を回収することが見込まれるとき、あるいは、「3 事業等のリスク」に記載のとおり、コストの上昇や予期しない工事進捗の遅れにより工事原価総額が増加した場合において、不可抗力条項や保険の付保にもかかわらずその影響を工事請負契約に十分に反映できないときは、採算性が低下するリスクがある。
該当事項なし。
(設備工事業)
当社グループにおける研究開発活動は、主に「技術開発部」を拠点とし、先進的な技術や業務ツール等を全社に先駆けて検証・導入していく役割と、現場での技術的問題を解決し社内に展開する役割を担っている。
また、持続可能な社会への貢献と目標達成に向けた未来社会におけるイノベーション創出、企業価値向上、業務効率化のため、産学共同による技術創出を目指している。
なお、当連結会計年度における研究開発費は
配電技術分野では、九州電力送配電㈱の配電線設備における建設・保守作業を、より「安全」、「高品質」かつ「効率的」に行うための車両・機械・工具の開発、改良及び様々な工法の開発、改善を行っている。
なお、配電技術分野における研究開発費は31百万円である。
電気技術分野では、クラウドモバイルカメラ、3Dレーザースキャナ、デジタルツインなどのICT・IT技術を積極的に活用し、現場の省力化・効率化を推進している。特に、360°カメラや高精度スキャナを用いたリアリティキャプチャーにより、現場業務の分担や施工計画の高度化が可能となり、リモート環境での迅速な意思決定にも貢献している。
研究開発では、大学との連携を通じて、多様な社会課題に対応する技術創出を進めている。中でも、現在、九州大学と締結している「組織対応型連携契約」に基づく共同開発では、システム情報科学研究院の倉爪 亮教授と共に、スワームロボット(小型群ロボット)による照度測定システムを開発した。複数台で連携しながら自律的に照度を測定するこの技術は、従来比で約20%の省力化を実現し、人材不足解消や作業負担軽減に大きな可能性を示している。今後は、照度分布図の自動生成やデータ出力機能の実装を進め、実現場への展開を目指す。
また、森林資源量の解析においても、2024年9月に株式会社スカイマティクスと連携し、ドローン・衛星画像・AIを組み合わせた広域解析技術を開発した。樹種や幹材積の高精度な推定を可能にし、木質バイオマス資源の効率的な管理に寄与している。今後も産学連携・先端技術の融合によって、持続可能な社会の実現と企業価値の向上に向けた技術開発を目指す。
なお、電気技術分野における研究開発費は179百万円である。
空調管技術分野では、空気の流れや温度分布を可視化する熱・気流シミュレーションを活用し、空調機の最適設計や施工の妥当性検証を行っている。事務所ビルにおける室内環境の快適性や、データセンターにおけるサーバーラック周辺の熱除去効率、空調吹出温度・風量の最適化など、建物用途に応じた高度な検討を通じて、省エネ性と快適性の両立を実現している。また、3D-CADやBIMと連携することで、設計段階から関係者間での合意形成を促進し、工事の円滑化と施工品質のさらなる向上を図っている。
さらに、令和5年度『省エネ大賞』省エネルギーセンター会長賞を受賞した、当社の「熱負荷予測とデジタルツインで最適化する空調熱源制御AI」は、大規模施設における空調熱源設備の運転をAIが自動で最適化するシステムであり、従来属人化していた技術からの脱却と、最大13%のCOP向上を実現した。現在は、個別空調方式にも対応したAI制御システムの開発を進めており、さらなる省エネとCO₂削減が期待される。
また、東京大学と当社を含めた民間企業9社が協力し、『スマートビルシステム社会連携講座』を開設した。ビルシステムのスマート化によるエネルギー最適化や再生可能エネルギー活用の高度化を目指し、社会課題の解決に貢献する高度人材の育成と技術開発を進めている。
加えて、当社グループが運営する木質バイオマス発電所では、燃焼灰の肥料化に加え、「日本早生桐」や「ソルガム」といった新燃料の育成にも注力しており、宮崎大学や鹿児島工業専門高等学校と連携して、地域循環型の資源活用と脱炭素社会の実現に取り組んでいる。
なお、空調管技術分野における研究開発費は134百万円である。
子会社における研究開発活動は特段行われていない。
(その他)
研究開発活動は特段行われていない。