第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは価値とあり方を言語化したパーパス「人と知と技術で、可能性に満ちた“余白”を、ともに。」と大切にすべき価値観・行動指針を定めたバリューズで構成する経営理念を制定しております。

当社グループはこの経営理念のもと、お客さまやその先の社会に向け当社グループらしい「事業的価値」「社会的価値」を提供することで、更なる成長と豊かな世界の実現を目指してまいります。

 

(2) 経営環境、中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題について 

①   経営環境

当社グループを取り巻く環境はサステナビリティ意識の高まりや、ICTによる事業変革・社会課題解決の期待の高まりなど目まぐるしく変化しております。そのような中、当社グループは「最新技術への挑戦」と「成長領域の見極め」をしながら、社会のサステナビリティを担う企業活動にこれまで以上に取り組んでいくことが必要不可欠になっております。

このような考えのもと、当社グループがこの先もステークホルダーの皆さまから選ばれ続ける企業であるために、どのような姿になっている必要があるのかを考え、長期ビジョンを策定いたしました。

 

②   長期ビジョン

2032年5月の創業100周年に向け、ありたい姿を「Growth Navigator」と定め、「成長をナビゲートし、ともに創りあげる集団」への変革を目指して3つの活動軸で取り組みを進めてまいります。今後の営みにより提供価値とポジションを高め、営業利益100億円、売上高1,500億円に挑戦いたします。

 


 

事業の成長に向け、成長領域と新領域に比重を置いたポートフォリオへの変革をポイントに、経営資源へのアプローチを大きく変えてまいります。特に、M&Aや資本業務提携を視野に入れた新技術の取り込みや、人への投資を攻めに転じ、新領域の拡大に注力いたします。

また、これまで以上にESG視点を強く持った「社会課題」起点のビジネスに挑戦し、社会的インパクトを生み出す企業へと成長を遂げてまいります。

 


 

③   中期経営計画「Transformation 2026」

長期ビジョン達成に向け、2026年3月期までを「リソースをシフトし成長事業を軌道に乗せる」1stステージと位置づけ、中期経営計画「Transformation 2026」を策定いたしました。事業戦略とそれを支える財務戦略・経営基盤強化の施策を実行してまいります。

 


 

中期経営計画の2年目にあたる当期の進捗は以下の通りです。

 

ⅰ)事業戦略

利益率が高く市場成長も見込める成長領域を6つ特定し、その領域拡大に向けマーケティング強化やOTセキュリティ領域を対象にした新サービスリリース等を実行いたしました。その結果、当期において成長領域の売上高が123億円(前期比3%増)となりました。

既存領域につきましては、良質な商談の獲得やお客さまへの提供価格の見直し等のプライシングマネジメントに加え、開発プロセスの標準化と生成AI活用、営業部門の生産性向上に注力いたしました。その結果として、機器ビジネス、開発・構築ビジネス、保守サービスの利益率改善といった効果があり、原価率の低減を実現いたしました。また、Windows10のサポート終了に伴うパソコンの更新特需を確実に取り込むことにも成功しております。

更なる成長を目指し検討を進めているM&Aや業務提携につきましては、AI等の先端領域と既存領域の両面で対象を絞り込み、具体的な案件を検討いたしました。当期はM&Aの実行には至らなかったものの、業務提携はダイワボウ情報システム株式会社を始めとした多くの企業と実施いたしました。

 

ⅱ)財務戦略

ROE10%以上の確保を目指し、資本コストを意識した財務運営、バランスシートの最適化を通じた資金の創出、キャピタルアロケーションの最適化に努めてまいりました。

財務運営につきましては、投資のハードルレートを7%に設定するとともに、企業価値向上に向けた資本コスト経営の実践を目的に立ち上げた予算委員会において、予算の管理や投資の検証を実施いたしました。

当期末のROEは11.3%と目標の10%を上回った一方、資本負債構成は改善の余地があるため、M&Aを含む投資や株主還元の強化を検討してまいります。

なお、当社グループは、株主のみなさまに対する利益還元を重要政策の一つとして認識し、2024年3月期より配当方針を変更し、連結配当性向40%を目安としております。当期についてはこの配当方針に基づき1株当たり年間配当金を99円といたしました。詳細については「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載のとおりであります。

 

ⅲ)経営基盤強化

当社グループの成長の源である人材のパフォーマンスやエンゲージメントを高めることを目的に、事業戦略に沿った人材の育成、多様な人材が自ら挑戦・活躍できる文化の醸成、初任給引き上げやベースアップ等の待遇改善を実施いたしました。また、ガバナンスの更なる高度化を目指し、グループガバナンスの強化や取締役会の実効性向上に向けた取り組みを実施いたしました。この他、投資家のみなさまとの建設的な対話頻度の増加を目指しIR活動を強化いたしました。

加えて、実効性のあるサステナビリティ推進のため、マテリアリティに対するKPI・活動指標を定めました。 なお、人材育成及びサステナビリティ向上の取り組みについての詳細については「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおりであります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2025年3月31日)現在において当社グループが判断したものであります。

当社グループはこれまでも事業を通じた社会貢献に取り組んでまいりましたが、社会や環境が大きく変化する中、当社の価値とあり方を定めた「パーパス」を体現することが社会及び自らのサステナビリティへの寄与に繋がるとの認識から「サステナビリティ基本方針」を掲げ、活動を推進しております。

 

 (サステナビリティ基本方針)

私たちは「パーパスの体現」を通して、持続可能な社会の実現に寄与します

 1. 「人と知と技術を育む環境を整備し、社会への提供価値を追求します

 2. 社会課題の解決を通して、可能性に満ちた余白”を創出します

 3. 責任ある企業行動を通して、ステークホルダーとともに社会へ貢献します

 

 

(1)サステナビリティ

①ガバナンス

(推進体制)

当社グループは経営主導によって、気候変動や人的資本等のサステナビリティ活動を推進するため、「サステナビリティ経営委員会」及び「サステナビリティ推進委員会」を設置しています。また、社会へ持続的に価値提供を行うための重要テーマであるマテリアリティに沿って、各種施策の検討、推進を担うプロジェクトを組成しています。

当社グループのサステナビリティに関するガバナンス体制、会議体の開催状況は以下の通りです。

 

(ガバナンス体制)


 

(会議体の開催状況)

会議体名

実施時期

会議の内容

取締役会

2024年7月

各マテリアリティに対するKPIの審議

経営会議

2024年6月

2024年12月

サステナビリティ活動全般の進捗報告

サステナビリティ活動全般の進捗報告

サステナビリティ経営委員会

2024年7月

2025年1月

活動進捗及びKPIの議論

活動進捗及びグループ推進の方向性の議論

サステナビリティ推進委員会

2024年4月

2024年7月

2024年10月

2024年12月

新マテリアリティに沿った年間活動計画の共有

各マテリアリティに対するKPI案の妥当性及び整合性の検証

グループ取り組み方針案の検討

グループ各社推進体制の共有/外部指標を基にした活動振り返り

 

 

②リスク管理

当社グループではサステナビリティに関連するリスク及び機会を以下のプロセスで識別、評価しマテリアリティを特定しております。時代の変化に合わせ取り組みの実効性を高めるため、当社グループでは2024年4月にマテリアリティの再特定を行いました。また、マテリアリティに対してKPIを設定し進捗を管理しております。

 

(マテリアリティの特定方法)


(マテリアリティ)

1.事業を通した社会への価値創出

2.「人」の成長と活性化

3.「知」「技術」の発展と発揮

4.地球環境と社会への寄与

5.健全な経営基盤の強化

 

③戦略

当社グループではマテリアリティに沿って、プロジェクトを組成し、それぞれが以下の目的・意義のもと取り組んでおります。

 

マテリアリティ1 事業を通した社会への価値創出

プロジェクト

目的・意義

取り組み

事業推進

事業で生み出す社会価値の可視化及び向上と、従業員の意識醸成を通したサステナビリティの推進

事業を通したサステナビリティ推進を

加速させるための各種情報整理・発信や

意識醸成に向けた各種企画の進行

 

 

マテリアリティ2 「人」の成長と活性化

プロジェクト

目的・意義

取り組み

組織・人材開発

「リーダー人材育成」、「多様なプロ人材育成」、「自律的に社内外に働きかけるチームづくり」の3本柱を方針とした、組織と個人の活性化

採用・配置・制度等の組織からのアプローチと、人材開発プログラムを軸とした個へのアプローチを組み合わせた推進

ダイバーシティー&インクルージョン

多様なバリュークリエイターを生み出す環境をつくり、育成するとともに、挑戦・活躍し続ける文化の醸成

多様なバリュークリエイターが活躍する企業を目指した、制度整備と文化醸成

健康経営

習慣・からだ・こころ・意識・無意識へのアプローチを通じ、人的資本の基礎である健康を支えること

従業員とご家族をはじめとするステークホルダーの「心身ともに健康」を維持・増進する活動の推進

安全衛生

労働災害に対するリスク管理及び予防対策

職場における事故や労働災害の発生予防を目指した自主的な安全衛生活動の推進

ワークスタイル

ディーセントワークの実現による、従業員の幸福・満足度向上及び、自律性・生産性の促進

働き方・働く場の見直し・アップデートによる、常に進化し続けるオフィス/環境の整備

理念浸透

経営理念(パーパス&バリューズ)の浸透を通した従業員のエンゲージメント向上と、社会への提供価値拡大

従業員に対する、経営理念の自分ごと化や行動変容に繋がる施策の企画・展開及び継続化

 

 

マテリアリティ3 「知」「技術」の発展と発揮

プロジェクト

目的・意義

取り組み

新技術の

社内実践

新技術の社内実践を通じて「知」と「技術」を培うことによる、お客さまへの価値提供及び自社の効率・パフォーマンスの向上

ワーキンググループメンバーを中心に新技術の社内実践を行い、「知」と「技術」を培うことによる、社内における新技術活用の推進・支援

お客さま・

パートナーとの

共創

ツヅキグループが保有する「知」と「技術」を活用し、お客さまやパートナーとの共創による新価値創造及び社会課題解決

共創の仲間づくりやお客さまやパートナーとの協働検討を行い、実証実験を進めながらサービス創出を目指した活動推進

サービス品質と

信頼性向上

提供サービスに対しプロジェクト品質向上サイクルの適用を通した、お客さまからの信頼に足る品質及び信頼性向上

「しくみ(品質フレームワーク)」と「活動(プロジェクト監視活動)」を掛け合わせたプロジェクト品質向上サイクルの提供

 

 

マテリアリィ4 地球環境と社会への寄与

プロジェクト

目的・意義

取り組み

環境

マネジメント

事業活動における社会・環境・天然資源への悪影響を最小限に抑えることによる、持続可能な社会実現への貢献

事業活動における環境負荷の管理及び、特に「気候変動」を中心にした環境負荷軽減のための活動実施

社会貢献

企業主体での環境・社会貢献実施及び、従業員主体の活動支援による、従業員の関心と貢献実感の向上

企業主体の活動企画・進行及び、

従業員主体の活動を支援する環境整備による、環境・社会貢献活動の推進

 

 

マテリアリティ5 健全な経営基盤の強化

プロジェクト

目的・意義

取り組み

コーポレート・

ガバナンス

経営の公正性、公平性、透明性、遵法性を高めることによる、社会的責任の遂行と継続的な企業価値の向上

戦略実現を支えるガバナンスの強化と適時・適切な情報開示や投資家の皆さまとの対話の充実

コンプライ

アンス

コンプライアンス推進体制の維持・強化を図り、強固な経営基盤を築き、社会的信頼を確保することによる、企業価値向上及び社会への貢献

コンプライアンス研修、意識調査等の活動を通じた、コンプライアンス意識の浸透と実践しやすい環境作り

リスク

マネジメント

ロス(損失)となるような事態を極力発生させない、あるいは発生してもロスを最小にすることによるツヅキグループの事業継続、ひいては持続的成長への貢献

リスク事象の早期把握に資するための、グループ内リスクメール運用、内部通報制度や社外窓口の設置等

情報

セキュリティ

・情報セキュリティ規定の整備、情報漏洩や不正アクセスに対する防御体制の強化

・JISQ15001に準拠した個人情報保護マネジメントシステムの策定と、適切な運用

・情報資源及び個人情報の適切な管理を目的に社内規定を策定したうえで見直しを実施

・個人情報の適切な取り扱いを含む定期的な情報セキュリティ研修の実施

人権の支持と

保護

事業活動を通じた人権尊重の社会実現への寄与及び人権尊重の責任遂行

人権方針を定め、人権尊重に係る従業員の啓発と人権リスクを低減するプロセスの導入及び定着化に向けた取り組みの実施

持続可能なサプライチェーンの構築

ガイドラインに基づいた適切な調達活動の徹底及び、調達パートナーへのガイドライン遵守の要求

・調達ガイドラインの制定と、サプライチェーン全体における遵守

・サステナブル商材の積極的な取り扱いの推進

 

 

 

④指標及び目標

マテリアリティ1 事業を通した社会への価値創出

プロジェクト

KPI

対象範囲

達成年度

目標値

当事業年度実績

事業推進

注力分野の社会課題解決に
資するサービス売上高

グループ

2026年3月まで

163億円

123億円

提供サービスにおける
クラウドサービス伸長率

提出会社

2026年3月まで

2023年3月より

30

2023年3月より

18%増

業務で経済的価値/社会的価値を
両立している実感を持つ従業員

グループ

2026年3月まで

60

38.6

 

 

 

 

 

 

 

マテリアリティ2 「人」の成長と活性化

プロジェクト

KPI

対象範囲

達成年度

目標値

当事業年度実績

組織・

人材開発

ワークエンゲージメント

(2)人的資本 指標及び目標 をご参照ください

TLF(経営人材育成プログラム)
受講者数

DX人材育成

ダイバーシティー&インクルージョン

従業員に占める女性割合

(2)人的資本 ②指標及び目標 をご参照ください

男性育児休業取得者のうち、
育児休業取得期間1か月以上の従業員

提出会社

2026年3月まで

50以上

77.1

男性育児休業取得率

提出会社

2027年3月まで

50以上

85.7

女性育児休業取得率

提出会社

2027年3月まで

90以上

114.3

健康経営

健康診断受診率

提出会社

毎年

100

100

安全衛生

ストレスチェック受検率

提出会社

毎年

90以上

95.3

ワーク

スタイル

ワークスタイル・ワークプレイス
支持度

提出会社

2026年3月まで

85以上

90.4

働く環境の魅力度

提出会社

2026年3月まで

85以上

86.0

理念浸透

経営理念・企業活動への共感

提出会社

2026年3月まで

85

72.7

自身の行動と経営理念との
紐づき実感

提出会社

2026年3月まで

70

54.1

働く仲間の行動と経営理念との
紐づき実感

提出会社

2026年3月まで

60

47.6

 

 

マテリアリティ3 「知」「技術」の発展と発揮

プロジェクト

KPI

対象範囲

達成年度

目標値

当事業年度実績

新技術の社内実践

サービス企画・開発支援

提出会社

毎年

5

5

社内研修活動数

提出会社

毎年

3

3

お客さま・パートナーとの共創

共創プロジェクト

提出会社

毎年

4

5

サービス創出

提出会社

毎年

1

1

サービス品質と信頼性向上

プロジェクト監視活動の実施率

提出会社

毎年

100

100

お客さまシステムの安心安全を守るためのサイバー攻撃に対する訓練の実施回数

提出会社

毎年

1

1

 

 

マテリアリティ4 地球環境と社会への寄与

プロジェクト

KPI

対象範囲

達成年度

目標値

当事業年度実績

環境

マネジメント

CO2排出量(Scope1+2)の低減

グループ

2026年3月まで

1,346t-CO2

1,395t-CO2

環境・

社会貢献

環境・社会貢献活動の柱となる企画の起案・実行

提出会社

2026年3月まで

10

7

環境・社会貢献への高い意識があると自覚している従業員

提出会社

2026年3月まで

80

67.5

環境・社会貢献イベントに参加している従業員

提出会社

2026年3月まで

70

47.1

社会に貢献できた実感を得ている従業員

提出会社

2026年3月まで

60

35.3

 

 

マテリアリティ5 健全な経営基盤の強化

プロジェクト

KPI

対象範囲

達成年度

目標値

当事業年度実績

人権の支持と保護

従業員向けeラーニングの実施

提出会社

毎年

1回実施

受講率100

1回

受講率100

 

 

 

(2)人的資本

①戦略

当社はお客さまに寄り添い、多様なご要望に応えるだけでなく、市場のニーズを再確認し、様々な角度から新たな価値創造を行い、社会課題を解決し続けることを目指しています。そのためには個性にあふれ、高い専門性も持った従業員が混ざり合うことで、新たなアイデアやイノベーションを生み出すことが重要であると考えています。こういった人材を育てるため、人事戦略の柱を「組織と個人の活性化にこだわる」と定め、以下の側面から活動を強化してまいります。

ⅰ) 人事施策

個性あふれる多様な人材を採用するため、合同説明会の活用、大学/研修室訪問、リファラル採用など様々なアプローチで採用活動を展開します。

ⅱ) 組織開発

サステナビリティ推進調査などの実施による定量的な組織状態の分析とともに、従業員の声を拾い、定性的なアプローチも行い、各職場のアクションテイキングによる組織のエンゲージメント向上活動に取り組んでいます。

ⅲ) 人材開発

従業員一人ひとりの個性や専門性を尊重し、成長を支援するための研修プログラムやキャリア開発支援を提供します。自律的なキャリア設計を促進し、従業員が主体的にスキルを磨き、成長できる環境を整備します。

 

(人材育成方針)

当社の人材育成方針は「キャリア自律」を中心に据え、従業員一人ひとりが自らのキャリアを主体的に設計し、成長していくことを支援するため、以下の3本柱を基本方針としています。

a)リーダー人材育成

・リーダーシップを発揮できる人材を育成するため、自己申告制度や各研修への参加を手上げ方式にするなど自律的な行動を促し、キャリア自律を支援します。

b)プロ人材育成

・高度専門人材の採用を進めるとともに、専門性の高いプロフェッショナル人材を育成するため、各部門と連携し、最先端の専門的スキルを学べる研修を整備しています。

c)自律的なコミュニティ活動の支援

・従業員が自律的にコミュニティに参加できるようコミュニティ活動の支援を行っています。

 

(社内環境整備方針)

リーダー人材と多様なプロ人材が自ら挑戦できる土台作りと、多様な人材の活躍を支援する環境を整備します。これまでに健康経営やワークスタイル変革、ディーセントワークの推進、手挙げ式で集まったメンバーを中心に活動する風土改革及びダイバーシティー&インクルージョンの推進を行ってきました。今後は、以下の方針に基づき、さらに整備・改善を進めていきます。

a)健康経営

・定期健康診断の受診率向上

 従業員全員が定期的に健康診断を受けることを奨励し、病気等の早期発見・予防を促進します。

・メンタルヘルス対策

ストレスチェックを定期的に実施し、高ストレス者に対して専門家によるカウンセリングを提供します。

b)ワークスタイル変革

・従業員が自分のライフスタイルに合わせて勤務時間を柔軟に設定できるフレックス勤務を導入しています。リモートワークを奨励し、必要なICT環境を整備します。

・オフィス環境の改善:フリーアドレスの導入やリフレッシュスペースの設置により、従業員が働きやすい環境を提供します。

 

c)ディーセントワークの推進

・公正な労働条件の確保と働きやすい職場環境の整備を進めます。

・従業員のワークライフバランスを重視し、長時間労働の削減を図ります。

d)風土改革及びダイバーシティー&インクルージョンの推進

・多様なバックグラウンドを持つ従業員が活躍できる環境を整備し、ダイバーシティーを推進します。

・従業員一人ひとりが自らの意見を発信しやすい風土を醸成し、イノベーションを促進します。

 

②指標及び目標

「人的資本」について、以下の指標を設定し、目標達成に向けた取り組みを推進しております。

なお、上記「①戦略」に記載した、人材の多様性の確保を含む「人材育成方針」及び「社内環境整備方針」にかかる指標については、提出会社においては関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、グループに属するすべての会社では行われていないため、連結での記載が一部困難であります。このため、一部指標に関する目標及び実績はグループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

(連結)

指標

2026年3月期

目標

当事業年度

実績

前事業年度

実績

TLF(*1)受講者数

65

45

43名

エンゲージメント

3.20
 (6.0点満点中)

3.05

(6.0点満点中)

3.02点

(6.0点満点中)

(エンゲージメントを高める健康経営の取り組み)

当社は2016年から、従業員とその家族をはじめとするステークホルダーの「心身ともに健康」を維持・増進することを目的として健康経営を推進してまいりました

2019年からは代表取締役社長を委員長とする健康経営委員会を設立し、全国のオフィス、グループ会社、健康保険組合、産業医、医療機関などと連携しながら活動を展開しております。

・具体的な取り組み

健康経営によって良化を目指す指標群と健康投資を紐づけた健康経営戦略マップに基づき、従業員の健康状態や生活習慣の改善、生産性の向上を目指した取り組みを推進

 

(エンゲージメントを高めるグループ全体の取り組み)

 当社は提出会社従業員のエンゲージメント向上を目指すとともに、グループ5社中4社において従業員エンゲージメントがグループ平均(3.05点)を下回っていることを重要な課題と認識し、改善に向けた取り組みを実施しております。

・具体的な取り組み

ワークショップ実施:グループ各社の社長を含む取締役が集まり、エンゲージメントに対する理解を深め、定量・定性の観点から各社の課題整理を行うワークショップを実施

ノウハウ共有:規模や地域性の異なる各社が実施する取り組みから得られたノウハウをグループ全体で共有することで施策を効果的に推進

 

*1 TLF…次世代経営人材育成研修『Tsuzuki Leaders Forum』

 

 

 

 

(提出会社のみ)

指標

2026年3月期

目標

当事業年度

実績

前事業年度

実績

高度DX人材(*1)

15

8

7名

DXアソシエイト認定者数(*2)

240

278

239名

DX検定™ 認定者(*2)

500

560

409名

正社員に占める女性割合

15.5

14.9

13.8%

総合職に占める女性割合

13.5

12.9

11.8%

管理職に占める女性割合

5.0

4.4

2.6%

*1 高度DX人材…社内認定資格『TCP-DX』(認定条件:当社指定の外部資格保有かつDXアソシエイト認定者)

*2 DX検定™…「DX人材」として必要なICT先端技術及びビジネスのトレンドを幅広く問う検定

DXアソシエイト…社内認定資格(認定条件:DX検定™の受検、記述試験を通じたスキル判定)

当事業年度において全執行役員及び全管理職にDX検定™の受検を奨励した結果、認定レベル以上のスコア取得者が大幅に増加しました。DX検定™はDXアソシエイト認定条件であり、当該認定者数の増加に寄与しております。目標値を達成した後も、引き続き施策を継続することでDX人材育成に取り組んでまいります。

 

(注) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異についての実績は、「第1 企業の状況 5 従業員の状況 (4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載しております。

 

(3)気候変動への対応

当社では、クラウド、仮想化、AI、IoTといった技術を活用して、社会・環境・天然資源への悪影響を最小限に抑え、地球環境へ配慮したICTサービスを提供し、自社における環境負荷軽減についても積極的に取り組んでいます。

当社は、気候関連の情報開示の重要性を認識し、中長期的な温室効果ガス排出量削減目標を設定するとともに、金融安定理事会が設置した「気候関連財務情報開示タスクフォース(以下「TCFD」という。)」による提言への賛同を表明しています。

TCFDが推奨するフレームワークに基づいた情報は以下の通りです。

 

①ガバナンス

気候変動に関するガバナンスは(1)①ガバナンスに記載したサステナビリティに関する推進体制に記載の通りです。

 

②リスク管理

気候変動のリスクと機会を特定・評価・管理する仕組みは以下の通りです。

・気候変動に関する事項を所管する環境推進委員会は、気候変動に関連したリスクと機会の特定・評価を行います。とりわけ重要な内容については適切な対応を検討し、環境管理責任者よりサステナビリティ推進委員会に報告・提言をします。

・サステナビリティ推進委員会は、報告・提言された気候変動の影響と対応について、必要に応じサステナビリティ経営委員会での議論を経て、経営会議へ報告します。

・経営会議は、報告内容について具体的な取り組みを含む全社的施策について協議し、決議事項は取締役会へ報告します。

・取締役会は、経営会議において決議された施策の指導・監督を行います。

・サステナビリティ推進委員会は、施策についてのKPIを設定し、進捗管理を行います。

 

③戦略

気候変動に関するシナリオを参照し、当社における気候変動に関するリスクと機会を特定しました。

・参照シナリオ下における当社事業環境

4℃シナリオ

社会的に気候変動に関する施策、規制等が進まず、平均気温が大きく上昇している。規制対応へのコストが少ない。平均気温の大幅な上昇に伴い、気象災害が頻発、激甚化している。災害対策へのコスト増加が大きい。

 

1.5℃シナリオ

社会的に気候変動に関する対策、規制等が進み、平均気温の上昇が小さい。規制対応へのコスト増加が大きい。平均気温の上昇に伴い、気象災害が増加している。災害対策へのコスト増加が小さい。

・リスクと機会

当社における気候変動に関するリスクと機会は以下の通り

 

参照した主な気候変動に関するシナリオ

機関名

資料名

4℃

シナリオ

1.5℃シナリオ

国際エネルギー機関(International Energy Agency)

The Net‐Zero Emissions by 2050 Scenario

-

NZE(The Net‐Zero Emissions by 2050 Scenario)

環境省

日本のNDC(国が決定する貢献)

-

NDCシナリオ

IPCC

第6次評価報告書

SSP5-8.5

-

 

 

区分

種類

リスク・

機会項目

事業インパクト

影響要素

財務影響(注1)

対応策

シナリオ

期間

(注3)

移行

リスク

政策規制

環境配慮企業からの優先購入

環境配慮企業からの優先購入が増え、顧客の製品等購入先選定より漏れることによる売上機会の喪失

売上減少


・気候変動対応についての情報開示の充実
・CO2排出量削減目標達成に向けた施策の検討及び実施

1.5℃

短期

移行

リスク

政策規制

炭素税導入

炭素税導入に伴う自社の炭素税負担や、仕入れ商品に炭素税が転嫁されることによる費用の増加

費用増加

2030年

:約8,742千円
2050年

:約15,611千円 (注2)

・CO2排出量削減目標達成に向けた施策の検討及び実施

1.5℃

中期

移行

リスク

政策規制

クレジット購入

温室効果ガス削減目標達成のため、証書等を購入することによる費用の増加

費用増加


・事務所の使用電力削減等の証書

・クレジット購入に頼らないCO2排出量削減施策の実施

1.5℃

長期

物理リスク

急性

気象災害の激甚化

取引先工場の被災、交通網の寸断による商品配送遅延による売上機会の喪失

売上減少


・BCP対策の拡充

4℃

中期

機会

製品/

サービス

気象災害の激甚化

災害対策のためのシステム導入、ネットワーク強化に伴う売上の増加

売上増加


・BCP関連、防災関連のITソリューションの開発、販促

4℃

中期

機会

製品/

サービス

炭素税導入

炭素税導入によるシステム更改による売上機会の創出

売上増加


・税務関連のITソリューションの開発、販促 

1.5℃

中期

機会

製品/

サービス

省エネの促進

低炭素商品・サービスの開発・拡大

売上増加


・省エネルギー製品の販促 

1.5℃

中期

 

(注)1 財務影響の尺度は以下の通り


財務への影響が非常に大きいと想定される


財務への影響が大きいと想定される


財務への影響が想定される

 

2 2030年度及び2050年度時点想定の炭素税導入による財務影響を記載。なお、仕入れ商品へ炭素税が転嫁されることによる費用の増加は含まない

算出方法:想定される炭素税×2024年度における都築電気単体Scope1+2排出実績

炭素税は、NZE(1.4℃)シナリオパラメータ値を参照

2030年時点:140USD/t-CO2

2050年時点:250USD/t-CO2

3 短期:0~3年、中期:3~10年、長期:10年以上

 

④環境マネジメントに関する指標及び目標

Scope1+2の温室効果ガス排出量を指標及び目標に定めております。

(連結)

指標

2026年3月期

目標

2031年3月期

目標

2051年3月期

目標

当事業年度

実績

温室効果ガス排出量

1,346 t-CO2

(2014年

3月期比

▲39.8%)

1,118 t-CO2

(2014年

3月期比

▲50.0%)

0 t-CO2

1,395 t-CO2

(2014年

3月期比

▲37.6%)

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの経営成績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす様々なリスクの中で、重要なリスクとして認識しているものは以下に記載の通りであります。これらのリスクに対して、モニタリングとリスクの低減に努めておりますが、全てのリスクを完全に回避するものではありません。

なお、本文の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2025年3月31日)現在において当社グループが判断したものであります。

リスク分類

リスク概要

対応策

事業環境・事業戦略等に関するリスク

・事業環境に関するリスク

情報サービス業界においては、急速な技術革新に伴うDX対応といったお客さまニーズの変化や異業種からの新規参入等による競争激化など、迅速な対応が常に求められております。当社グループがこれらへの対応に遅れ、お客さまに提供している技術やノウハウ等の競争力が低下した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

最新の技術動向や高度化するお客さまのニーズを的確に把握することに努め、成長する領域に注力することで競争力の強化を図っております。また、当社グループの総合力によりお客さまの課題を解決することで、競合他社との差別化を図るとともに、提供するソリューションの陳腐化を防ぎ、競争優位性の向上に取り組んでおります。

・特定取引先への依存に関するリスク

当社グループは、富士通株式会社と経営上の重要な契約を締結し、お客さまに製品・サービス提供をしております。同社の経営方針の変更等により製品・サービスの提供方法や仕入条件の変更等が行われた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

富士通株式会社との連携を密にして、同社の経営方針、パートナー戦略、動向変化等に適宜必要な対応を講じるよう努めております。また、同社への依存度を低減させるために、競争力のある仕入先との取引拡大や取扱い製品・サービスラインナップの拡充及びAI、IoT、クラウド型コンタクトセンターといった成長分野における独自ビジネスの拡販等を通じて、環境変化に強い事業基盤の構築に取り組んでおります。

・ソフトウエア資産に関するリスク

業務の効率化や有効なコミュニケーションツールなど、課題を解決するために開発したソフトウエア等を無形固定資産として維持管理しております。しかしながら、急速な環境変化や技術革新により新たなサービスが普及することでソフトウエアが陳腐化し、収益性が大きく低下する場合、資産価値について見直す必要があります。状況によっては減損の対象となり、業績に影響を及ぼす可能性があります。

技術革新や新たなニーズの変化に対応すべく、最新情報の把握や分析に取り組み、ソフトウエア等の改善を進めております。

また、こうした重要なソフトウエア投資の決定及び価値評価の見直しについては、予算委員会にて、定期的に市場動向、投下資本の回収実現性等を総合的に検討したうえで行っております。

 

 

リスク分類

リスク概要

対応策

外部環境等に関するリスク

大地震等の自然災害や感染症の流行等が発生した場合、事務所等の物的損害や人的被害等の直接的な被害に加え、社会インフラの毀損、サプライチェーンの停滞、サービスの提供遅滞等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

事業継続計画(BCP)を策定し、緊急事態発生時における災害対策本部設置体制の整備等によりリスク低減に努めております。

また、従業員の安全確認・確保のため、安否確認システムや緊急連絡網の導入を行うとともに、在宅勤務や分散勤務等の事業継続に向けた環境整備に努めております。

情報セキュリティに関するリスク

・情報紛失・漏洩に関するリスク

当社グループはお客さまの秘密情報や個人情報など様々な重要情報を取り扱っており、サイバー攻撃や不正アクセス等による情報の紛失、毀損、漏洩等が発生した場合には、当社グループへの損害賠償請求や社会的信用の失墜等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

情報セキュリティ統括責任者を運営責任者とする情報管理体制を整備しております。また、情報セキュリティに関する全従業員研修やサイバーセキュリティ対策強化訓練の定期実施、情報セキュリティに関する遵守事項の全部門内での自己点検と内部監査による定期監査、ウイルス対策ソフト導入やソフトウエア更新による脆弱性解消等、さまざまなセキュリティ対策を講じることで安全性の確保に努めております。

・提供システム等に対するサイバー攻撃に関するリスク

当社グループは多くのお客さまにシステムや通信インフラ等を提供しており、これらがサイバー攻撃により何らかのダメージを受けた場合には、当社グループへの損害賠償請求又は改修費用の負担の発生により業績に影響を及ぼす可能性があります。

サイバー攻撃対策指図書やガイドライン等のセキュリティ対策指図書を制定するとともに、従業員研修やお客さまシステムでインシデントが発生した場合の対応訓練を定期的に実施するなど、さまざまなリスク低減策を講じております。

信用リスク

当社グループのお客さまに財務状況の悪化や経営破綻等が生じた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

与信管理規程に基づき、取引先ごとに回収条件・与信限度額を設定し、定期的に企業動向を調査し、与信額の見直しを行っております。

また、回収遅延や信用不安が発生した場合は、債権回収管理基準に基づき、個別に債権回収、条件変更、担保・督促等の債権保全策を講じ、貸倒れリスクの低減に努めております。

 

 

リスク分類

リスク概要

対応策

人材に関するリスク

当社グループが求める優秀な人材の確保や育成が予定通りに進まない場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

新卒採用、キャリア採用の手法見直し、女性の積極採用などを強化するとともに、人材育成プログラムを通じたDX人材の育成、パフォーマンス重視型の人事制度への見直し、社内風土改革、健康経営優良法人の認定取得、えるぼし認定取得など様々な人的資本を高める施策を通じて労働環境の整備や自律的なキャリア支援を図り、従業員のエンゲージメント向上に努めております。

開発・構築案件に関するリスク

システム開発やネットワーク構築等に係る受注案件では、仕様確定に関する不備、プロジェクト体制の問題、技術的な検証不足等の様々な想定外の事象の発生により、プロジェクトが予定された範囲、予算、納期及び品質で実施できず追加対応に伴うコストが増大する場合があります。そのような事態が生じた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

商談に至る前の商談審査会や見積り作成時の見積審査会といった審査会を開催することにより、リスクの明確化と対応策の検討及び開発工程管理や成果物等の品質管理の徹底に努めております。

また、進行中のプロジェクトに関しても、状況把握のため、定期的な会議を開催することで、問題の早期発見・対策に取り組むとともに、プロジェクトから独立した部門がリスクの評価分析及びその結果に基づくプロジェクトの遂行に関する助言、勧告等を行っております。

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要及び経営者による状況の分析

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2025年3月31日)現在において判断したものであります。

 

① 経営成績の状況

当期における我が国経済は、雇用・所得環境の改善等のもとで緩やかな回復が続きましたが、物価上昇の継続が個人消費に及ぼす影響やアメリカの政策動向による影響等が、我が国の景気を下押しするリスクとなる状況が継続しました。

当社グループの属する情報・通信サービス産業については、企業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の加速や生成AI技術の進展等によりマーケットの拡大傾向が継続しております。

このような環境のもと、当社グループは2032年に向けた長期ビジョン(10年後のありたい姿)を「Growth Navigator(成長をナビゲートし、ともに創りあげる集団)」と定め、お客さまの成長を先導する存在として選ばれ続ける企業であるべく、その達成に向けた3か年の中期経営計画「Transformation 2026」を実行中です。中期経営計画では「成長領域へのリソースシフト」により稼ぐ力を高めることを主軸に、「資本コストを意識した経営」や「人的資本の強化」なども一体的に進めることで、さらなる企業価値向上の実現を目指しています。当期においては本計画にもとづき、ダイワボウ情報システム株式会社との業務提携契約の締結や、クラウドPBXサービス「TCloud for Voice」やクラウド型動態管理・配送管理サービス「TCloud for SCM」の機能強化等を実行しました。

中期経営計画の2年目となる当期の業績は売上高98,263百万円(前期比21.3%減)、営業利益6,481百万円(同0.6%増)、経常利益6,596百万円(同1.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益4,764百万円(同13.0%減)となりました。

当社グループは、前期に実施した電子デバイス事業の売却により情報ネットワークソリューションサービス事業の単一セグメントに移行しています。このため、受注高及び売上高につきましては、セキュリティやコンタクトセンターシステムをはじめとした「成長6領域」のサービス及びネットワーク構築等が伸長したものの、電子デバイス事業売却の影響に加え、大型特需案件剥落にともなう機器ビジネスの減少により前期を下回る結果となりました。利益面につきましては、プライシングマネジメント等による売上増と原価低減及び電子デバイス事業分の販売費及び一般管理費減少により、営業利益、経常利益については3期連続で過去最高益を更新しました。親会社株主に帰属する当期純利益は前期に経営資源の有効活用及び資産効率の向上を目的に、当社及び連結子会社が保有する固定資産を譲渡し特別利益1,854百万円を計上したため前期を下回りました。

なお、情報ネットワークソリューションサービス事業における各財務指標の前期比は、受注高6.4%増、売上高4.2%減、営業利益9.4%増であります。

 

当連結会計年度におけるビジネスモデル別の業績は次のとおりです。

 

〔ビジネスモデル別実績〕

機器   :Windows10のサポート終了にともなうPC更新需要を確実にとらえ、金融業、建設業等のお客さまへのモバイルワークシステム導入が伸長しましたが、売上においては大型特需案件が剥落した影響を受けたため、受注高40,143百万円(前期比5.5%増)・売上高40,320百万円(同10.3%減)となりました。

開発・構築:第3四半期に続き製造業や不動産業のお客さまへのネットワーク構築案件が好調に推移したことに加え、多くのシステム開発案件を獲得したため、受注高16,277百万円(前期比19.7%増)・売上高15,310百万円(同3.5%増)となりました。

サービス :機器ビジネスの売上減少により機器の保守料が前期を下回ったものの、中期経営計画で注力する「成長6領域」の業績がセキュリティ及びコンタクトセンターシステムを中心に堅調に推移しました。また、クラウド利用料等の月額サービスが伸長したため、受注高44,194百万円(前期比3.0%増)・売上高42,632百万円(同0.4%減となりました。

 

② 仕入、受注及び販売の状況

ⅰ) 仕入実績

当連結会計年度における仕入実績を示すと、次のとおりであります。

セグメント

仕入高(百万円)

前期比(%)

情報ネットワークソリューションサービス

28,849

92.8

 

(注)  金額は、仕入価格によっております。

 

ⅱ) 受注実績

当連結会計年度における受注実績をビジネスモデルごとに示すと、次のとおりであります。

セグメント

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

情報ネットワークソリューションサービス

100,615

106.4

20,246

113.1

 

機器

40,143

105.5

10,391

98.3

開発・構築

16,277

119.7

4,451

127.8

サービス

44,194

103.0

5,404

140.6

 

 

ⅲ) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をビジネスモデルごとに示すと、次のとおりであります。

セグメント

販売高(百万円)

前期比(%)

情報ネットワークソリューションサービス

98,263

95.8

 

機器

40,320

89.7

開発・構築

15,310

103.5

サービス

42,632

99.6

 

(注)  主要な販売先につきましては、全ての相手先について、販売実績が合計の100分の10未満のため記載を省略しております。

 

③ 財政状態の状況

当連結会計年度末の資産につきましては、前連結会計年度末と比較して1,003百万円減少し、80,063百万円となりました。この主な減少要因は、棚卸資産の減少1,047百万円、繰延税金資産の減少783百万円、主な増加要因は、その他の無形固定資産の増加484百万円によるものであります。

負債につきましては、前連結会計年度末と比較して4,768百万円減少し、35,433百万円となりました。この主な減少要因は、その他の流動負債の減少1,738百万円、未払法人税等の減少1,077百万円、退職給付に係る負債の減少1,064百万円によるものであります。

純資産につきましては、前連結会計年度末と比較して3,764百万円増加し、44,629百万円となり、自己資本比率は55.2%(前連結会計年度末は49.8%)となりました。この主な増加要因は、親会社株主に帰属する当期純利益4,764百万円の計上によるものであり、主な減少要因は、剰余金の配当1,821百万円に伴う利益剰余金の減少によるものであります。

 

 

④ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度におけるキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローが3,407百万円の収入、投資活動によるキャッシュ・フローが792百万円の支出、財務活動によるキャッシュ・フローが2,595百万円の支出となりました。

この結果、現金及び現金同等物は前連結会計年度末に比較し19百万円増加し、38,703百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは3,407百万円の収入(前期は4,954百万円の収入前期比31.2%減)となりました。この主な収入の要因は、税金等調整前当期純利益の計上6,848百万円であり、主な支出の要因は、法人税等の支払額2,358百万円、退職給付に係る負債及び資産の減少額1,230百万円であります。

前期との比較では、1,546百万円収入が減少しております。この主な減少要因は、未払消費税等の変動による減少額1,933百万円(当期は998百万円の減少に対して、前期は935百万円の増加)、その他の負債の変動による減少額1,642百万円(当期は616百万円の減少に対して、前期は1,025百万円の増加)であり、主な増加要因は、退職給付に係る負債及び資産の変動による増加額2,904百万円(当期は1,230百万円の減少に対して、前期は4,134百万円の減少)であります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは792百万円の支出(前期は15,466百万円の収入)となりました。この主な支出の要因は、無形固定資産の取得による支出1,026百万円であり、主な収入の要因は、投資有価証券の売却による収入314百万円であります。

前期との比較では、16,258百万円収入が減少しております。この主な減少要因は、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入の減少額8,542百万円(当期は計上なしに対して、前期は8,542百万円の収入)、有形固定資産の売却による収入の減少額3,900百万円(当期は33百万円の収入に対して、前期は3,934百万円の収入)、貸付金の回収による収入の減少額3,001百万円(当期は5百万円の収入に対して、前期は3,006百万円の収入)であります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは2,595百万円の支出(前期は2,613百万円の支出前期比0.7%減)となりました。この主な支出の要因は、配当金の支払額1,821百万円、リース債務の返済による支出642百万円であります。

前期との比較では、17百万円支出が減少しております。この主な減少要因は、リース債務の返済による支出の減少額297百万円(当期は642百万円の支出に対して、前期は939百万円の支出)、自己株式の取得による支出の減少額274百万円(当期は0百万円の支出に対して、前期は275百万円の支出)であり、主な増加要因は、配当金の支払の増加額441百万円(当期は1,821百万円の支払に対して、前期は1,379百万円の支払)であります。

 

キャッシュ・フロー関連指標の推移

 

2022年3月

2023年3月

2024年3月

2025年3月

自己資本比率(%)

41.5

42.0

49.8

55.2

時価ベースの自己資本比率(%)

33.1

33.7

51.9

51.2

キャッシュ・フロー対有利子
負債比率(年)

2.3

2.6

2.1

2.8

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

42.5

37.2

54.5

38.6

 

(注) 自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い

※ いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

※ 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。

※ キャッシュ・フローは営業キャッシュ・フローを使用しております。

※ 有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としています。

 

⑤ 資本の財源及び資金の流動性について

(資金需要の動向及び資本の財源)

当社の主な資金需要は、運転資金、成長のための投資資金となっております。資金の源泉は主に営業活動によるキャッシュ・フローとしておりますが、必要に応じて短期借入及び長期借入にて調達しております。なお、借入れに関しては、当社の資金需要や借入残高、金利情勢などを総合的に勘案し、財務の安定性を確保すべく最適な手段を選択しております。

資金配分については、財務の健全性を維持しつつ投資の強化と株主還元の充実を図る方針であります。当社の配当政策につきましては、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載のとおりであります。

子会社については、当社からの資金調達、一部の子会社では金融機関からの借入れを資金の財源としております。

 

<配当金の推移>

 


 

⑥ 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

当社経営陣は、連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の報告数値及び偶発債務の開示、並びに報告期間における収入・費用に影響を与える見積り及び仮定設定を行わなければなりません。経営陣は見積り及び判断に対して、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき継続して評価を行っております。しかし、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果とは異なる場合があります。

また、当社グループでは、特に以下の重要な会計方針が、当社の連結財務諸表の作成において使用される判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。

なお、期末時点で入手可能な情報を基に検証を行っております。

ⅰ) 貸倒引当金

当社グループは、お客さまの支払不能時及び貸付金等の回収懸念時に発生する損失の見積額について、貸倒引当金を計上しております。一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しております。

ⅱ) 棚卸資産

当社グループは、仕掛品については個別法による原価法(貸借対照表価額については収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定)を、商品及び製品・原材料及び貯蔵品については先入先出法による原価法(貸借対照表価額については収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定)を採用しております。

ⅲ) 受注損失引当金

システム開発やネットワーク構築等に係る受注案件については、仕様確定に関する不備、プロジェクト体制の問題、技術的な検証不足等の様々な想定外の事象が発生し、プロジェクトが予定された範囲、予算、納期及び品質で実施できなかった場合は、損失等のリスク発生の可能性があります。将来に損失が発生する可能性が高いと見込まれ、かつ当該損失額を合理的に見積ることが可能なものについては、受注損失に備えるため、将来の損失見積額を受注損失引当金として計上することとなります。なお、実際の損失額が見積りと異なった場合、翌連結会計年度の連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。

ⅳ) 繰延税金資産

当社グループは、繰延税金資産の回収可能性に関する判断においては、「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第26号 2018年2月16日改正)に基づき、当社及び連結子会社各社を過去3年及び当期の課税所得や税務上の繰越欠損金発生状況、経営環境の著しい変化の有無等により企業を5つの分類に区分しております。会社分類については、連結会計年度末における各社の状況に基づき、毎期見直しております。繰延税金資産については、実現(回収)可能性が高いと考えられる金額へ減額するために評価性引当額を計上しております。評価性引当額の必要性を評価するに当たっては、将来の課税所得及び、慎重かつ実現可能性の高い継続的な税務計画を検討しますが、繰延税金資産の全部又は一部を将来実現(回収)できないと判断した場合、その判断を行った会計年度に繰延税金資産の調整額を費用として計上いたします。

2025年3月31日現在、繰延税金資産に対して総額で136百万円の評価性引当金を計上しています。

 

ⅴ) 退職給付制度

当社の退職給付制度は退職一時金、確定給付企業年金及び確定拠出型年金を採用しており、一部の連結子会社においては、簡便法による処理を行っております。確定給付型退職給付制度の退職給付費用及び債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。これらの前提条件には割引率、将来の報酬水準、退職率、直近の統計数値に基づいて算出される死亡率及び年金資産の長期期待運用収益率などが含まれます。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼします。なお、長期期待運用収益率は年金資産の配分と、年金資産を構成する多様な資産からの現在及び将来期待される長期の収益率を考慮しております。年金資産の長期運用利回りは前連結会計年度において2.3%、当連結会計年度において2.1%であります。また、長期期待運用収益率は債券32%、株式25%、生保一般勘定0%及びその他資産43%の資産構成を前提として算定しております。退職給付債務の残高、使用している割引率等については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(退職給付関係)」をご参照ください。

ⅵ) 開発・構築案件に係る一定の期間にわたり認識する収益

当社グループは開発・構築案件(ただし、工期がごく短い案件を除く)について、財又はサービスに対する支配が顧客に一定の期間にわたり移転する場合には、財又はサービスを顧客に移転する履行義務を充足するにつれて、一定の期間にわたり収益を認識しております。履行義務の充足に係る進捗度の測定は、当連結会計年度末までに発生した原価が、予想される原価総額に占める割合に基づいて行っております。
 原価総額の見積りについて、契約の履行に必要となるすべての作業内容に関して想定される原価を含めて算定しております。また、当事者間の新たな合意による契約の変更、作業方法の見直し等、作業開始後の状況の変化による作業内容の変更について、適時・適切に見積りを行い、原価総額に反映しております。なお、仕様確定に関する不備、プロジェクト体制の問題、技術的な検証不足等の様々な想定外の事象により、作業工数や範囲が変更となる可能性を有しております。このため、当該見積りについては、不確実性を伴うものであり、想定していなかった原価の発生等により、実際に生じた金額が見積りと異なった場合には、翌連結会計年度以降の連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります

 

 

5 【重要な契約等】

(提出会社)

2025年3月31日現在、以下の経営上の重要な契約を締結しております。

相手方の名称

相手方の
所在地

契約名

契約内容

契約期間

富士通㈱

日本

富士通グループ販売

パートナー契約

富士通グループ製品(機器、プログラム・プロダクト、保守、サービス、コンサルティング等)の取扱いに関する契約

2024年9月1日から
2025年3月31日まで
以降1年毎の自動更新

 

2024年4月1日前に締結された㈱麻生との業務提携契約については、「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」附則第3条第4項により記載を省略しております。

 

6 【研究開発活動】

当社グループでは、持続的な成長を実現するために最新技術の習得、新たなサービスの研究開発、市場動向に関する情報収集に継続的に取り組んでおります。当連結会計年度にはAIやクラウド等に関する技術の習得、新たな特定市場DXサービス(業種特化型ソフトウエア)の開発、生成AIを活用したビジネスの研究等を実施いたしました。

これらの取り組みによる当連結会計年度における研究開発費の総額は159百万円となりました。なお、研究開発費には資産計上分は含まれておりません。設備投資の総額は、641百万円であります。