第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

当社グループは、近年「エネルギー」と「エコロジー」の豊かな共存こそが企業に課せられた重要なテーマといわれるなかで、「顧客の創造と信頼の確保」、「社会への貢献」、「未来への挑戦」の3つの経営理念に基づき、コア事業である断熱工事・技術を通じてエネルギーの有効利用に貢献するとともに、事業領域の拡大を図り、燃焼技術を基礎としたボイラの製造・据付、クリーンルーム内装工事、冷凍冷蔵低温設備工事及び環境関連工事等に取組んでおります。

こうしたなかで、当社グループの技術力は多業種にわたるユーザーから高い信頼を得るとともに、地球規模の課題である省エネルギーや環境保全を推進することで、企業としての社会的責任を果たすために尽力しております。

 

(2)経営戦略等

当社グループは、企業が国内労働人口の減少に伴うビジネスモデルの変革や地球温暖化への対応を進めるなか、将来の当社としてのあるべき姿を見据えて、2024年4月から中期経営計画(2024年度~2026年度)を新たにスタートさせました。本計画は、「未来の躍進に繋げる投資」を基本方針として、サステナビリティ経営の確立を目指す一方、企業風土の醸成、当社グループ内の意識改革を図り、脱炭素社会に向けた新たなビジネスチャンスを創出するため、三つの重点施策を掲げております。

 

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①収益基盤の持続的な強化

 既存事業であるプラントのメンテナンス工事と新規建設案件のさらなる受注拡大のためには新規顧客の開拓およびシェアアップは必要不可欠であり、営業・工事・技術部門が顧客からの信頼を得ることで既存事業の深化・進化を図り、収益基盤の強化に努めてまいります。

 

②持続的な成長戦略の展開

 当社グループの主要顧客であるわが国の素材産業は、設備の運転最適化と保全効率化ならびに再生可能エネルギーやカーボンニュートラルへの対応を進めており、当社が将来に亘って持続的な成長を遂げていくため、これらに対応するとともに事業ポートフォリオの再構築を行ってまいります。同時に、断熱以外の業際分野にも取り組んでいくことで事業の多角化を図ってまいります。また、世界的なエネルギー需要の高まりを背景とした海外市場においても積極的な受注活動を展開してまいります。

③経営基盤の強化

 事業環境が劇的に変化していくなか、経営基盤を強化するためにはデジタル化やグローバル化、顧客ニーズの多様化などに適応できるよう、タイムリーな経営戦略の策定、組織体制の整備と人材育成、財務・リスク管理を恒常的に見直していくことが必要となります。引き続き、経営の透明化・効率化・最適化を推進してまいります。

 

 当社グループは、新たな事業環境下においても常に一歩先をリードするべく挑戦し、経営環境の変化が厳しい中でも持続的に成長できる収益基盤を確立できるように取り組んでまいります。

 

(3)経営環境

 当社グループの事業を取り巻く経営環境は、建設工事事業におきましては、老朽化設備の維持・更新を中心とした設備投資をはじめ、再生可能エネルギー、CCS(二酸化炭素回収・貯留)、合成メタン、既存設備の温室効果ガス削減に向けての投資が期待されます。また、海外領域では、エネルギー需要の増大によって中長期的にプラント市場が拡大していくことが見込まれることから、今後も顧客の受注動向を注視していく必要があります。

 ボイラ事業におきましては、設備増強投資や既存ボイラの更新投資は継続しており、バイオマス発電も地産地消型の小規模発電設備の需要は増加してくるものと思われます。

 今後の経営環境につきましては、景気は緩やかな回復が続くことが期待されますが、米国における今後の政策動向や 金融資本市場の変動等、国内外の経済に影響を与えうる不確定な要素も多く、先行きは不透明な状況が続くことが見込まれます。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 上記の経営環境を踏まえ、当社グループは、2024年度に開始した中期経営計画(2024年度~2026年度)の2026年度目標数値の達成に向けて、「未来の躍進に繋げる投資」の基本方針のもと、「改革、スピード&チャレンジ」の行動指針をグループ全体に浸透させ、脱炭素案件の獲得に向けた情報の収集及び情報の共有を図り、将来的なエネルギー源となる水素・アンモニアに係る防熱技術・工法の開発等、未来に向けた持続的成長戦略を展開してまいります。また、ESG課題に取り組みながらサステナビリティ経営を実践するとともに、より強固なコーポレート・ガバナンス体制の構築ならびにコンプライアンスを徹底し、ステークホルダーの皆様のご期待にお応えできるよう企業価値の向上に邁進する所存です。

 セグメント別の対処すべき課題は、以下のとおりであります。

①建設工事事業

 主要な事業対象である石油・石油化学分野における設備投資の伸び悩みや国内マーケットの縮小、価格競争の熾烈化などにより、引き続き厳しい事業環境となるものと予想されます。海外では環境負荷が比較的少ないエネルギー源である天然ガスの需要が引き続き高いと想定され、産油・産ガス諸国におけるプラントの新設や既設プラントの増設・改造計画の進展が期待されます。

 当社グループでは、海外工事の受注獲得に注力し、国内においても顧客企業の設備投資動向が不透明な中、メンテナンス工事等を基礎にして周辺事業と合わせて着実な積み上げにより収益基盤の盤石化を図ってまいります。

②ボイラ事業

 近年増加している自然災害による事故等により、社会が求めるエネルギーのニーズが安定供給と安全確保にシフトしており、特に自然エネルギーを活用した再生可能エネルギー発電事業に注目が高まっております。その中でも、バイオマス発電については、原燃料の需給バランス不均衡が懸念されるものの、低炭素化や未利用資源の有効活用、地域産業の振興等への寄与が期待され、その需要は当面根強くあると考えられます。

 当社グループでは、バイオマス発電や産業用ボイラの新設工事受注に注力するとともに、業績の基盤を補完するメンテナンス工事を安定的継続的に確保するとともに、調達チャネルを多様化し、コスト競争力の強化を図ってまいります。

 なお、従来の主力製造拠点であった京都工場を閉鎖・売却し、新たに中部事業所(亀山工場)へと生産拠点を移しました。

 

(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、売上高、営業利益、経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益を、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等として用いており、各指標等の状況は次のとおりであります。

当連結会計年度

 

(単位:百万円)

指標

2024年5月公表

年度計画

実績

増減

対予想比増減

売上高

58,000

66,283

8,283

14.3%

営業利益

7,200

10,613

3,413

47.4%

経常利益

7,450

11,235

3,785

50.8%

親会社株主に帰属する当期純利益

5,200

8,454

3,254

62.6%

 なお、経営指標については各種のものがあり、それぞれが企業の健全性、収益性、効率性等の一面を示すものとして有効であることは承知しておりますが、経営に当たっては特定の指標に限定せず、総合的な判断が必要であると考えております。

 

(6)経営者の問題認識と今後の方針について

 当社グループを取り巻く主要関連市場におきましては、熾烈な受注競争に加えて建設業全般に見られる労働力不足の問題や調達価格の上昇など、今後も厳しい事業環境は続くものと思われますが、世界的に脱炭素社会に向けた取り組みは本格化しており、関連投資の需要により、新たな収益確保の機会が期待されます。

 このような情勢に対処するため、中期経営計画に基づき脱炭素社会に向けた技術力・施工能力の向上、企業として持続的に成長していくための事業戦略の構築及び業界におけるシェアアップや新規顧客の創出に努めてまいります。

 また、持続的にコーポレート・ガバナンス体制を強化し、サステナビリティ課題に対して取り組みながらコンプライアンスの浸透ならびにリスク・マネジメントを徹底し、経営諸施策を着実に遂行し企業価値をより高めるために取り組んでまいります。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ経営の考え方・推進体制

 当社グループは、事業を通じて社会に貢献することを経営理念としており、持続可能な社会の実現と中長期的な企業価値の向上に向けて、サステナビリティが重要な経営課題であると認識しております。

 

 [ガバナンス]

 当社グループ全体の人的資本、気候変動リスクをはじめとするサステナビリティ課題について、サステナビリティ委員会で基本方針や基本計画の決定、取組の検討や審議を行っています。サステナビリティ委員会は代表取締役社長を委員長として、取締役や執行役員、専門知見を有する委員から構成され、必要に応じて開催し定期的に取締役会へ報告及び提言を行っています。

 

取締役会

 報告・提言↑↓指示

サステナビリティ委員会

   委員長:代表取締役社長

   構成メンバー:取締役

       執行役員ほか、専門知見を有する委員

 

 [リスク管理]

 当社グループでは、気候変動をはじめとするサステナビリティに関するリスク管理については、業務を執行する取締役が各業務執行部門で発生する損失の危険に関する「リスク管理規程」に基づき、グループ全体のリスクを網羅的かつ統括的に管理し、管理体制を明確化し、必要に応じて各リスク委員会を設置し、問題点の把握と改善措置を実施しております。さらに、各部門から取締役会へ報告された重大課題については代表取締役若しくは代表取締役が指名する取締役を本部長とする対策本部を設置し、情報の収集・リスクの評価・優先順位・対応策など総括的に管理を行います。また、必要に応じて顧問弁護士等第三者の助言を受け、損害の拡大を防止し、これを最小限に止める体制を整えております。

 

(2)人的資本

 当社グループは、経営環境が目まぐるしく変化するなか、成長を持続し競争力を強化していくためには、従業員一人ひとりが自身の力量を高めて常に挑戦を続けることが必要であると考えています。当社グループの3つの経営理念である「顧客の創造と信頼の確保」「社会への貢献」「未来への挑戦」を体現する人材の育成を目指してまいります。

 

 ①人材育成

 当社グループは、顧客と社会から継続的な信頼を確保することができる工事・技術部門の専門人材とマネジメント人材の育成に取り組んでまいりたいと考えております。中期経営計画2024-2026の基本方針である「未来の躍進に繋げる投資」を実現するために、従業員の一人ひとりが工事・技術に関する高い専門性はもとより、ビジネスやマネジメントの知識・スキルを偏りなく習得し、人としての持続的な成長を支援する研修体制の構築を進めてまいります。

 人材育成の取組としては、OJTを軸としながら従業員の経験に応じた各々の職種に関する専門的な知識を学ぶ機会を定期的に提供するだけでなく、資格取得等にかかる研修・セミナーへの参加を奨励しています。今後はビジネススキルに加えて、人権、コンプライアンスなどの知識習得の機会を提供するためにeラーニングなどの手法を検討してまいります。

 

 ②ダイバーシティ&インクルージョン

 国籍や性別、障がいの有無など多様な人材の個性や能力に応じて活躍できる環境をつくることは、事業を創造するうえで重要です。当社グループでは、人生の様々な節目節目でも従業員が安心して働き続けられるよう、育児・介護休業等に関する規程において育児短時間勤務制度など仕事と育児の両立支援に向けた制度を導入しています。また、新卒採用における女性比率が低い状況で推移している結果、管理職に占める女性労働者の割合も低くなっており、男性労働者の育児休業取得者率についても低い状況です。当社の具体的な指標及び目標については、男性労働者の育児休業取得率を2026年3月までに10%(2025年3月期実績33.3%)、採用した労働者に占める女性労働者の割合を2026年3月までに20%(2025年3月期実績7.1%)として設定しております。なお、現時点では多様性の確保に向けた人材育成方針・社内環境整備方針の公表にいたっていませんが、今後も継続して検討してまいります。

 

 ③従業員の健康増進

 当社グループは従業員の心と身体の健康を重要な経営資源と考えています。従業員がいきいきと仕事に取組、安全で働きやすい環境づくりを進めるとともに、従業員とその家族のウェルビーイング実現に向けた環境整備に努めることを支援してまいります。定期健康診断の実施とそれに伴う二次検査・治療の勧奨を行っていますが、今後も従業員の健康増進に向けた活動を行ってまいります。また、産業医の指導のもと安全衛生委員会を定期的に開催し、調査・審議を行い、その結果をそれぞれの営業拠点に展開する体制を更に整えてまいります。

 勤怠システムによる就業管理とノー残業デー活動を徹底し、従業員が仕事以外に自由に使える時間の増加を目指します。事業拠点における取組状況を把握し、業務の質を落とすことなく効率的な新しい働き方へと変革を目指してまいります。職場環境の改善を目標として、老朽化した営業拠点の更新投資を今後も継続してまいります。

 

(3)環境

 当社グループは、気候変動を含む環境問題への対応を重要な経営課題の一つとして認識しています。2022年12月には「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明し、気候変動をリスクとして管理するガバナンス体制を構築しています。

 

 [戦略]

 当社グループでは、気候変動によるリスクと機会を特定し定性、定量の両面で評価するために国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)から公表されているシナリオを用いTCFDのフレームワークに沿ってシナリオ分析を行いました。具体的には、Rcp8.5やIEA Stated Policies Scenarioなどの産業革命時期から2100年頃までに約4℃平均気温が上昇する4℃シナリオとRcp2.6やIEA Net Zero Emission by 2050 などといった産業革命時期から2100年頃までに1.5~2℃平均気温が上昇する2℃未満シナリオを用い、2つの世界観を想定し分析を行いました。また、分析では2030年時点の当社グループへの影響を想定しています。

 4℃シナリオでは、脱炭素社会へ移行せず、政策や規制の強化なども行われないとされていますが、豪雨や台風の頻発といった異常気象の激甚化や平均気温の上昇などの物理的リスクの高まりが想定されています。このシナリオにおいて、当社グループへ最も大きな影響を及ぼすリスク項目としては、洪水や高潮などによる拠点の被災を想定しています。対する2℃未満シナリオでは、脱炭素社会へ向けて政策や規制の強化が行われるとされており、それに伴い炭素税の導入や再生可能エネルギーの普及など移行リスクの高まりが想定されます。このシナリオにおいて、当社グループへ最も大きな影響を及ぼすリスク項目としては、炭素税導入による操業コストの増加を想定しています。

 一方、2℃未満シナリオにおいてはリスクだけでなく複数の機会を特定し、定性的または定量的に評価しました。当社グループが保有する高い保温・保冷技術を背景に再生可能エネルギー関連の施工受注機会の増大が見込まれます。受注の獲得に向け、日々技術開発や施工能力の向上に努めております。

 

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 [指標及び目標]

 当社グループでは、気候変動課題が経営に及ぼす影響を評価し管理するため、温室効果ガスの一種である二酸化炭素(CO2)の排出量を指標とし2019年を基準年としています。

 国際的な目標である2050年カーボンニュートラルに貢献すべく、太陽光発電やハイブリッドカーの導入等による CO2排出量の削減に向けた取組や再生可能エネルギー関連事業の推進に努めてまいります。当社グループが保有する事務所などの建築物を改修する際には省エネ設備や太陽光発電の導入などを積極的に検討しZEB(Net Zero Energy Building)化を推進しております。

 なお、具体的な指標及び目標の公表にいたっていませんが、今後も継続して検討してまいります。

 

 

2019年度

 

 

2022年度

2023年度

Scope1

12,317(tCO2)

 

Scope1

9,953(tCO2)

8,635(tCO2)

Scope2

3,635(tCO2)

 

Scope2

2,746(tCO2)

2,583(tCO2)

 対象範囲は国内拠点としています。

 

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。当社は、「リスク管理規程」に基づきリスク管理体制を明確化し、グループ全体のリスクを網羅的・統括的に管理しております。また、必要に応じて各リスク委員会を設置し、緊急時には対策本部の設置を行う等、リスクを最小限に止める体制を整備しております。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)当社グループに関連する需要市場の急激な変動

 当社グループが形成する各セグメント及び各事業領域は、幅広い需要分野に支えられていますが、収益基盤である国内需要分野の経済状況、統廃合、製造拠点の海外移転等により、需要が長期に停滞、減少傾向が続くと、業績に悪影響を与える可能性があります。

 

(2)完成工事補償のリスク

 海外工事、大型工事等について、引渡しを完了した工事に係る瑕疵担保の費用が大きく発生した場合には、業績及び財務状況に悪影響を与える可能性があります。

 

(3)海外事業に伴うリスク

 当社グループの海外事業はアジア地域を中心に展開しており、テロや政情悪化、予期しない法律・規制の変更、市況の悪化、JV等のパートナー企業の経営状況等によって業績に悪影響を与える可能性があります。

 

(4)為替及び金利の変動リスク

 急激な為替相場の変動または金利の上昇により、業績に悪影響を与える可能性があります。

 

(5)顧客に対する信用リスク

 当社グループが多額の債権を有する顧客が財務上の問題に直面した場合には、業績及び財務状況に悪影響を与える可能性があります。

 

(6)会計基準に係る見積りリスク等

 収益認識については、請負工事契約に基づく工事収益総額に対応する工事原価総額及び工事進捗度を合理的に見積り認識しております。工事原価総額の見積りの算定は、工程の遅れや当初想定していなかった事象の発生等、工事施工に係る状況変化に伴い、見直しの必要性が生じることがあります。将来の状況の変化により見積りと実績が乖離した場合は、収益の金額に影響を与える可能性があります。

 有形固定資産については、主に事業用の土地、建物、機械及び装置等を保有しておりますが、事業環境が著しく変動した場合、時価の下落や設備等の遊休化、稼働率の低下等により、減損損失を計上する可能性があります。

 繰延税金資産については、税効果会計における回収可能性を見積って計上しておりますが、想定している業績計画を下回った場合、繰延税金資産の取り崩しを行う可能性があります。

 投資不動産及び有価証券については、時価の下落により、減損損失を計上する可能性があります。

 退職給付債務については、年金資産の運用状況等により、費用処理額が増加する可能性があります。

 上記いずれの場合におきましても、業績に悪影響を与える可能性があります。

 

(7)不採算工事の発生に対するリスク

 工事施工段階での想定外の追加原価等により不採算工事が発生した場合には、業績及び財務状況に悪影響を与える可能性があります。

 

(8)災害等の発生等によるリスク

 想定外の災害や感染症の流行などにより、当社グループや主要取引先の事業活動に支障をきたす事態が発生した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)法的規制等によるリスク

 コンプライアンスの徹底を経営上の重要課題と位置づけ、役職員へのコンプライアンス教育を実施するほか、コンプライアンス委員会を設置し、法的規制の遵守徹底を図っていますが、万一、法令違反が発生した場合には、社会的信用を著しく損ねるとともに、関係官庁からの行政処分等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)情報漏洩によるリスク

 情報セキュリティ体制を構築し、サーバーやパソコンの設置及びネットワークの維持管理等、情報システム全般について管理・保全するとともに、事業活動を通じて得た顧客の機密情報について、細心の注意を払って管理していますが、万一、情報漏洩が発生した場合には、顧客や社会からの信用喪失や、損害賠償金の支払い等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

 当社グループの当連結会計年度の受注高は、国内外の建設工事事業にて受注活動が順調に推移し、62,271百万円(前年同期比7.4%増)の計上となりました。

 売上高は、建設工事事業、ボイラ事業ともにメンテナンス工事や大口工事の進捗が堅調に推移し、66,283百万円(同9.8%増)の計上となりました。

 なお、利益面につきましては、売上高の増加に加え、主に建設工事分野の収支が工事完成に伴い改善されたこと等により、営業利益は10,613百万円(前年同期比31.6%増)、経常利益は11,235百万円(同31.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は8,454百万円(同35.4%増)の計上となりました。

 

 セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。

(建設工事事業)

 国内メンテナンス工事や国内外の大口工事が堅調に推移したことにより、売上高は58,944百万円(前年同期比10.3%増)の計上となりました。セグメント利益は、売上高の増加に加え、メンテナンス工事や大口工事案件の完成に伴う収支改善等により10,102百万円(同32.5%増)の計上となりました。

(ボイラ事業)

 国内大型案件、メンテナンス工事ともに堅調に推移し、売上高は7,338百万円(前年同期比5.9%増)の計上となりました。セグメント利益は、売上高の増加により499百万円(同16.2%増)の計上となりました。

 

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末と比べ4,151百万円増加し、88,583百万円となりました。

 当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末と比べ1,186百万円減少し、19,377百万円となりました。

 当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末と比べ5,338百万円増加し、69,206百万円となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末と比べ、2,078百万円増加して33,449百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。

1. 営業活動によるキャッシュ・フロー

 営業活動による資金は、6,937百万円の増加(前年同期は7,126百万円の増加)となりました。

 主な増加要因は、税金等調整前当期純利益11,855百万円、売上債権の減少額846百万円であり、主な減少要因は、法人税等の支払額2,337百万円、契約負債の減少額2,049百万円であります。

2. 投資活動によるキャッシュ・フロー

 投資活動による資金は、500百万円の減少(前年同期は1,889百万円の減少)となりました。

 主な増加要因は、有形固定資産の売却による収入549百万円、貸付金の回収による収入389百万円、定期預金の払戻による収入307百万円であり、主な減少要因は、有形固定資産の取得による支出2,000百万円であります。

3. 財務活動によるキャッシュ・フロー

 財務活動による資金は、4,692百万円の減少(前年同期は3,088百万円の減少)となりました。

 主な減少要因は、配当金の支払額3,028百万円、自己株式の取得による支出1,714百万円であります。

 

③生産、受注及び販売の状況

1. 受注実績

セグメントの名称

前連結会計年度

当連結会計年度

前年同期比

自 2023年4月1日

至 2024年3月31日

自 2024年4月1日

至 2025年3月31日

建設工事事業(百万円)

52,015

56,778

9.2%

ボイラ事業(百万円)

5,939

5,493

△7.5%

合計(百万円)

57,955

62,271

7.4%

 

2. 売上実績

セグメントの名称

前連結会計年度

当連結会計年度

前年同期比

自 2023年4月1日

至 2024年3月31日

自 2024年4月1日

至 2025年3月31日

建設工事事業(百万円)

53,449

58,944

10.3%

ボイラ事業(百万円)

6,927

7,338

5.9%

合計(百万円)

60,377

66,283

9.8%

 (注)当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の状況」は記載しておりません。

 

なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりであります。

建設事業における受注工事高及び完成工事高の状況

a.受注工事高、完成工事高及び繰越工事高

期別

区分

前期繰越工事高

(百万円)

当期受注工事高

(百万円)

(百万円)

当期完成工事高

(百万円)

次期繰越工事高

(百万円)

前事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

施工

11,192

40,883

52,076

37,961

14,114

販売

792

673

1,466

1,143

323

11,985

41,557

53,542

39,105

14,437

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

施工

14,114

41,698

55,812

45,273

10,539

販売

323

765

1,088

585

503

14,437

42,463

56,901

45,858

11,042

 (注)1.前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額が含まれております。したがって当期完成工事高にもかかる増減額が含まれております。

2.次期繰越工事高は(前期繰越工事高+当期受注工事高-当期完成工事高)であります。

3.当期受注工事高のうち海外工事の割合は、前事業年度0.7%、当事業年度0.3%であります。

 

b.受注工事高の受注方法別比率

工事の受注方法は、特命と競争に大別されます。

期別

区分

特命(%)

競争(%)

合計(%)

前事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

施工

42.6

57.4

100.0

販売

100.0

100.0

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

施工

42.5

57.5

100.0

販売

100.0

100.0

 (注)百分比は請負金額比であります。

 

c.完成工事高

期別

区分

国内

海外

合計

(B)

(百万円)

官公庁

(百万円)

民間

(百万円)

(A)

(百万円)

(A/B)

(%)

前事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

施工

37,872

89

0.2

37,961

販売

0

921

221

19.3

1,143

0

38,794

310

0.8

39,105

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

施工

11

45,186

74

0.2

45,273

販売

0

376

208

35.6

585

11

45,563

282

0.6

45,858

 (注)1.海外工事の地域別割合は、次のとおりであります。

地域

前事業年度(%)

当事業年度(%)

アジア

100.0

100.0

100.0

100.0

2.完成工事高の内で主なものは、次のとおりであります。

前事業年度

 

 東洋エンジニアリング(株)

新潟東港バイオマス発電所・保温工事

 東洋エンジニアリング(株)

唐津バイオマス発電所・建設保温耐火工事

当事業年度

 

 原電エンジニアリング(株)

日本原子力発電(株)東海第二発電所・建屋内足場設置工事

 日揮(株)

中外製薬(株)藤枝工場・FJ3プロジェクト建設工事

3.前事業年度及び当事業年度ともに完成工事高総額に対する割合が10%以上の相手先はありません。

 

d.次期繰越工事高(2025年3月31日現在)

区分

官公庁(百万円)

民間(百万円)

合計(百万円)

施工

10,539

10,539

販売

0

502

503

0

11,042

11,042

 (注)次期繰越工事高の内で主なものは、次のとおりであります。

川崎重工業(株)

神奈川県川崎市扇島・タンク保冷工事

(2025年5月完成予定)

川崎重工業(株)

県央県南広域環境組合・築炉工事

(2029年6月完成予定)

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績は次のとおりであります。

(財政状態)

 当連結会計年度末における総資産は、88,583百万円となり、前連結会計年度末と比べ4,151百万円増加いたしました。

 資産の部は、流動資産は61,236百万円となり、前連結会計年度末と比べ1,152百万円増加いたしました。主な要因は現金預金の増加1,868百万円、契約資産の増加394百万円、電子記録債権の減少1,095百万円であります。固定資産は27,347百万円となり、前連結会計年度末と比べ2,999百万円増加いたしました。主な要因は投資有価証券の増加1,484百万円、有形固定資産の増加1,459百万円であります。

 

 負債の部は、流動負債は14,631百万円となり、前連結会計年度末と比べ2,324百万円減少いたしました。主な要因は未払法人税等の増加686百万円、契約負債の減少2,049百万円、支払手形の減少676百万円、1年内返済予定の長期借入金の減少600百万円であります。固定負債は4,745百万円となり、前連結会計年度末と比べ1,138百万円増加いたしました。主な要因は、繰延税金負債の増加765百万円、長期借入金の増加600百万円であります。

 この結果、負債合計は19,377百万円となり、前連結会計年度末と比べ1,186百万円減少いたしました。

 

 純資産の部は69,206百万円となり、前連結会計年度末と比較して5,338百万円増加いたしました。主な要因は親会社株主に帰属する当期純利益の計上による増加8,454百万円、剰余金の配当による減少3,035百万円であります。

 この結果、自己資本比率は77.4%(前連結会計年度末は75.1%)となりました。

 

(経営成績)

 当連結会計年度は、2024年4月から新たにスタートさせた中期経営計画(2024年度~2026年度)の初年度にあたり、「未来の躍進に繋げる投資」の基本方針のもと、「改革、スピード&チャレンジ」の行動指針をグループ全体に浸透させ、収益力・競争力の強化及び事業領域拡大に向け経営資源を投入し、企業価値をより高めるために取り組んでまいりました。

1. 売上高

 当連結会計年度の売上高は、66,283百万円(同9.8%増)の計上となりました。

 セグメント別では、建設工事事業においては国内メンテナンス工事や国内外の大口工事が堅調に推移したことにより、売上高は58,944百万円(前年同期比 10.3%増)の計上となり、ボイラ事業においても国内大型案件、メンテナンス工事ともに堅調に推移し、売上高は7,338百万円(前年同期比5.9%増)の計上となりました。

2. 営業利益

 当連結会計年度の営業利益は、10,613百万円(前年同期比31.6%増)の計上となりました。

 セグメント別では、建設工事事業においては売上高の増加に加え、メンテナンス工事や大口工事案件の完成 に伴う収支改善等により10,102百万円(同32.5%増)の計上となり、ボイラ事業においては売上高の増加により499百万円(同16.2%増)の計上となりました。

3. 経常利益

 当連結会計年度の経常利益は、営業利益の増加に伴い11,235百万円(同31.4%増)の計上となりました。

4. 親会社株主に帰属する当期純利益

 当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、8,454百万円(同35.4%増)の計上となりました。

 

 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移

 

2021年3月期

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

自己資本比率(%)

78.3

78.1

76.2

75.1

77.4

時価ベースの自己資本比率(%)

57.7

48.3

49.7

75.9

69.5

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

0.2

0.1

0.2

0.1

0.1

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

1,070.1

1,647.7

919.4

1,495.9

1,197.9

(注)自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

※各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

※株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。

※有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。

※営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。

※利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

※営業キャッシュ・フローがマイナスとなった期につきましては、「キャッシュ・フロー対有利子負債比率」及び「インタレスト・カバレッジ・レシオ」を記載しておりません。

 

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは材料費・外注費等の工事原価、並びに販売費及び一般管理費等の営業費用であります。また、投資を目的とした資金需要の主なものは、設備投資等によるものであります。

 資金需要には基本的に自己資金及び銀行借入等にて対応しております。

 当連結会計年度末における有利子負債残高は975百万円であり、現金及び現金同等物の残高は33,449百万円であります。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 なお、その他の事項については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。

 

 

5【重要な契約等】

特記事項はありません。

 

 

6【研究開発活動】

 当社グループ(当社及び連結子会社)は、顧客のニーズに迅速に対応するため、材料・製品等の開発・改良から施工技術の開発まで、幅広く積極的に活動を行っております。

 現在、研究開発は、当社の中央研究所及び各技術部門を中心に、工事部門及び関連会社、協力会社と密接に連携し、開発期間のスピードアップを意識し、地球環境に配慮して推進しております。

 当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は211百万円であります。

 

(1)建設工事事業

 断熱・耐火・防音・防食等、幅広い事業分野に於いて、在来工法との差別化につながる工法開発を行っております。特に超低温保冷分野においてはこれまで積み上げてきた経験と実績を活用し、品質に優れた工法や材料の選定を行い、長期にわたり安心・安全に使用できる工法を開発できるように努めております。

 保冷工事関連では、主材料である硬質ウレタンフォームのノンフロン処方を確立し、自社工場で生産・製品化しております。

 当事業における研究開発費は204百万円であります。

 

・超低温液化ガス工事関連

 海外出荷基地、超低温液化ガス運搬船、国内受入基地における断熱等の幅広い分野の工事に関し、新材料の調査・新工法の開発及び開拓に取り組んでおります。

 液化ガス貯槽タンクにおいては、顧客のニーズに対応すべく、保冷構造の工法改良や断熱部材などの開拓・実証試験等の研究開発を行っております。

 

・その他

 高機能断熱材を応用した断熱材の改良や、防錆機能付き断熱材の開発並びに施工システムの開発分野におきましても研究開発を行っております。

 

(2)ボイラ事業

 ボイラ燃焼効率向上及び新たな施工方式(モジュール化)の開発に取り組み、コストダウンと工期短縮の実現を目指しております。

 また、従来の生産拠点であった京都工場を閉鎖・売却し、三重県亀山市において2024年5月に竣工、同年12月に稼働を開始した中部事業所(亀山工場)へ生産拠点を移行いたしました。これにより、生産能力の向上とさらなる研究開発活動への取り組みを進めてまいります。

 当事業における研究開発費は7百万円であります。