文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において、当社が判断したものであります。
当社は、「私たちは常に進化する強い意志を持ち、心一つにして一流に向かい羽ばたき続けます。」を企業スローガンとして掲げ、ガス・電気・水といった人々の暮らしや産業に欠かすことのできないライフラインを支えることによって、社会に安心と心地よさを提供し、豊かな未来のために貢献することを社会的使命としております。
その社会的使命を果たすために、協力会社も含めた企業集団として、確かな技術ときめ細かな感性でお客様の信頼にお応えし、お客様から選ばれ続けていただくこと、当社の社員が安心して働ける職場環境を提供し、「感じ・考え・自ら行動する」企業風土を醸成していくことを経営の基本方針としており、健全な経営を継続的に行ない、その利益を適正に還元することが社会的責任を果たすことであると考えております。
当社は、2025年度を初年度とする3か年の中期経営計画「Triple“S”」の最終年度となる2027年度に、売上高400億円以上、売上高経常利益率4.5%以上、ROE6.5%以上の達成を目指しております。
目標達成に向けては、対処すべき課題に対し、中長期的な経営戦略のもと、諸施策を確実に実践するべく取り組んでまいります。
2025年度は、資材価格の高止まりや労務単価の上昇などによる建設コストの増加や金利上昇の不透明感などが重しとなり、住宅着工戸数は2024年度と同水準に留まることが予想されております。一方で、企業の設備投資意欲が継続し、事務所や工場、倉庫等の非住宅分野は堅調に推移することが見込まれております。また、近年の気候変動の影響による気象災害の激甚化・頻発化、南海トラフ地震・首都直下地震の発生可能性の切迫を受け、2021年度より始まった「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」による防災・減災対策、予防保全型インフラメンテナンスへの転換に向けた老朽化対策が着実に推進されていくことが見込まれております。既築建物の維持管理・更新市場については、住宅分野における政府の省エネキャンペーンによる補助金政策等が寄与していることに加え、事務所などにおける省エネ対策や働きやすいオフィス環境等への関心の高まりなどにより堅調に推移することが見込まれております。
主要取引先の設備投資計画についてもほぼ横ばいで推移することが予測されており、当社を取り巻く事業環境は大きく変化することはないと予想されます。しかしながら、2025年度以降当社の売上・利益の大きな柱であるガス導管事業においては、新たな経年管取替工事が主流となり、その施工エリアには偏りが想定されることから、これまで以上に機動的な施工体制を強化することが重要となってきます。また、工事会社の新規参入により受注競争が変化する可能性があることも視野に入れた施策を展開していくことが必要となってきます。加えて、2025年問題の顕在化により、建設業界における就労者の高齢化と担い手不足が加速することが懸念されているほか、働き方改革に伴う労働時間の上限規制、材料価格や労務価格の上昇等、様々な課題が顕在化してきております。
2025年度は、新中期経営計画「Triple“S”」の初年度となります。社会課題解決へ向けて企業への期待が高まる中、前述の事業環境の変化に対応し、社会との共生を図るとともに、100年企業に向かって「SHINKA(進化・深化・新化)」し続けるために、引き続き、「サステナビリティ経営」を基本方針とし、「株主還元の強化」、「事業戦略」、「サステナビリティの推進」、「経営基盤強化」を推進してまいります。
「Triple“S”」では、前中期経営計画に引き続き、既存の事業領域に加えて、建物内の設備工事を担う建築設備事業を新たな中核事業の一つに育てあげ、一社依存度の低減を図ることを掲げております。長年、都市ガス供給網の整備などを主力事業としてきた当社は、「ガス工事に強い会社」というイメージが先行しておりますが、これまで培ってきた、エネルギー会社・ゼネコンから地域の工務店などといった幅広いお客様との信頼関係を生かしながら、給排水衛生設備や空調設備、給湯暖房、電気などを一括受注・施工できる体制を整備し、「ガス工事だけでなく、建物内の工事は全て任せられる総合設備工事会社」としての認知度を高め、幅広い顧客ニーズに対応しつつ、ライフラインを支えるという社会的使命を果たしてまいります。
一方で、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を強く意識し、株主還元を一層強化していくことも重要な経営課題であると認識しております。このほか、サステナビリティ基本方針を掲げ、地球環境の保全や、インフラメンテナンスの推進や心地よい住環境の実現に向けた体制の維持・整備といったマテリアリティにも取り組んでまいります。加えて、その他のマテリアリティとしては、エンゲージメント向上に向けた各種施策を展開していくことで人的資本の強化にも注力し、経営基盤を強化してまいります。
当社は、
(経営品質委員会におけるリスク管理プロセス)
①リスクの特定・棚卸し
②固有リスク評価(リスクをミニマイズするための統制活動を実施する前のリスク評価)
③統制活動の現状把握(特定されたリスクに対し、会社が実施している統制活動の内容)
④統制活動の有効性評価(統制活動の客観的な評価)
⑤残余リスク評価(統制活動を実施しても残る想定リスクの評価・課題の抽出)
⑥対応の優先度評価
⑦優先度の高いリスク項目に対する新たな統制策の立案と実施
⑧取締役会の承認
サステナビリティを巡る課題への対応は、当社にとってリスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であり、財務的な活動以外の分野においても、それが企業の持続的な発展のためには欠かせないものとの認識しており、サステナビリティ基本方針を掲げております。(2022年3月策定、5月公表)
このサステナビリティ基本方針に基づき、中期経営計画「STEP 2024」においてCSRの推進を重要施策の一つと位置づけております。経営品質委員会では、リスク管理プロセスの残余リスク評価において抽出された課題も含めて、ESGの観点から課題と取組を整理し、当社の事業運営における優先度と、社会や環境への影響度の観点からこれらの取組に関する重要度を審議し、この審議結果を踏まえ、ESGに関するマテリアリティを設定しております。
(経営品質委員会におけるESGに関するマテリアリティ設定プロセス)
①ESGの観点から課題と取組を整理
②重要度の審議
③ESGに関するマテリアリティの設定
④取締役会の承認
(ESGに関するマテリアリティの取組と指標および目標)
※ CO2排出量実績は、車両からの排出量と電気使用量からの排出量を算出し合算しております。直近の実績として2023年度実績を記載しており、2024年度実績を開示しておりません。これは、電気料金からの排出量の算出に際して、経済産業省および環境省が公表するCO2排出係数を用いており、現時点では2024年度のCO2排出計数が公表されていないためです。
サステナビリティ基本方針のもと、「事業戦略」、「CSRの推進」、「株主還元の強化」、「筋肉質な企業体質作り」、「経営基盤強化」の5つを重要施策とし、これらの実現のための人的資本に関する戦略として、事業戦略に合致する人材、経営基盤強化のための人材、経営幹部候補人材の確保に加え、人材の多様性の確保を設定しています。
また、当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針として、多様な働き方を実現(働きがいのある職場環境)するとともに、従業員の階層に応じて様々な研修を実施してまいります。
指標及び目標
■「多様な働き方を実現」に関する指標及び目標(2022年度~2024年度)
●男性主体業務への女性配員数の拡大
- 目標:2021/3 比40%増
- 実績:36人(達成率:200.0%)
●階層別研修開催回数(2022年度~2024年度)
- 目標:40回(3ヶ年累計)
- 実績:40回(達成率:100.0%)
当社は、社長を委員長とし、取締役・監査役(社外含む)、執行役員で構成される経営品質委員会を設置しております。経営品質委員会はコーポレート・ガバナンスの基本的な考え方を実現し、企業の社会的責任を果たし「経営品質」を向上することを目的として設置されており、委員会の下に各種会議体を設け、品質管理、内部統制、コンプライアンス、CSR調達、ガバナンスなどについて包括的に検討しております。
経営品質委員会(年2回開催)では、経営に重大な影響を与える可能性のあるリスクの棚卸およびそのリスクのモニタリングならびに統制活動等の審議を行っております。このうち、統制活動が不十分と判断されたものに対しては、執行部門に是正を求めております。
経営品質委員会における審議により、財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、将来に関する事項の記載が含まれておりますが、当事業年度末現在において判断したものであり、将来を含めた当社のリスク全般を網羅するものではありません。
① 受注環境の変化リスク
当社は東京ガス株式会社等ガス事業者を主要顧客とするガス工事事業を中核事業とし、建築設備事業、電設・土木事業も展開しており、様々な取引先から工事を受注しておりますが、中でも、主要顧客である東京ガスグループ(東京ガス株式会社、東京ガスネットワーク株式会社)の売上割合は約6割を占めております。当社は2022年度よりスタートした中期経営計画で「新築建物内の設備工事を担う建築設備事業を新たな中核事業とすべく、一括受注・施工体制の更なる整備を行う」ことにより、将来を見据えた事業ポートフォリオの構築と売上高の集中リスクの低減を図っております。また、四半期に一度、業務執行取締役、常勤監査役、執行役員、部長が出席する計画進捗会議において、業績進捗とともに、取引先の動向やエネルギー・原材料価格の高騰の影響など市場環境の変化を含め、確認しております。しかしながら、主要取引先の事業戦略の大幅な変更、少子高齢化による着工数減少による価格競争の激化、パンデミックや地政学的リスクの顕在化による供給網の混乱が想定を超えた場合には受注量の減少や資機材の供給不足、原材料価格の高騰が発生し、当社の事業展開、財政状態および経営成績が影響を受ける可能性があります。
② 戦略的投資の未回収リスク
当社は2022年度よりスタートした中期経営計画において「新築建物内の設備工事を担う建築設備事業を新たな中核事業とすべく、一括受注・施工体制の更なる整備を行う」こととしており、そのためにはM&Aの実施も選択肢の一つとしております。また、営業上の戦略や、老朽化等による職場環境の改善を目的とした土地建物の取得・事業所の移転、DXの推進に伴うシステム投資など、大規模な投資を行う場合があります。このような大規模な投資を実行する場合には、職務権限規程において職務権限決裁基準を定め、投資回収計画も含め、経営会議における審議と取締役会決議により、適切に判断・実行しております。また、投資実行後は計画進捗会議において投資回収計画の進捗確認および費用対効果の検証を行い、取締役会に報告することとしております。しかしながら、想定したシナジー効果や期待通りの成果をもたらさなかった場合には、当社の事業展開、財政状態および経営成績が影響を受ける可能性があります。
① 法的規制リスク
当社では、事業活動にあたり会社法、金融商品取引法、建設業法、民法、労働基準法などさまざまな法令の規制を受けております。法改正およびそれに伴う作業内容の改定に関しては、都度社員・協力会社への周知・教育を行っており、管理者の現場巡視において遵守状況を確認しております。また、法令、規則等の遵守状況については、会社法に則った業務・コンプライアンス監査や金融商品取引法に係る内部統制監査を毎年実施し、その結果について取締役会に報告する仕組みとなっております。しかしながら、社会情勢の厳格化による法的規制の急激な強化、法規制に関する認識不足に起因する法律違反が顕在化した場合、それに対応するための追加費用の増加や社会的信用の失墜などにより、当社の事業展開、財政状態および経営成績が影響を受ける可能性があります。
② 不採算工事の発生リスク
当社では、工事見積時および受注時に職務権限決裁基準で定めた金額に応じた決裁者による決裁を受けております。受注した物件については工種毎に一定のルールを設けて抽出した件名について、物件管理表を作成し現場の進捗と収支状況をチェックしているほか、毎月経理部において、一定のルールに従って抽出した不採算物件について調査し、役員に回覧するなど、不採算工事の早期把握と抑制に努めております。また、システム導入による営業部門と施工部門における情報共有および連携強化を図り、営業担当者と管理者による協議を経て適正価格での入札を推進しております。加えて、近年の原材料価格等の高騰に際しては、定期的な単価改定や、個別の件名に関しての発注者との協議の実施等により、不採算工事の発生抑制に努めております。しかしながら、受注環境の悪化に伴う競合他社との価格競争の激化や当初想定していた見積りからの乖離、工事の施工段階における想定外の原価等の発生や工期遅延に伴う損害に対する賠償金の支払い等により不採算工事が発生した場合は、当社の事業展開、財政状態および経営成績が影響を受ける可能性があります。
① 自然災害リスク
地震、大雨、洪水などの自然災害・異常気象やパンデミックが発生した場合、社員や所有建物・設備など事業継続のリソースに対する被害が発生し、事業活動が停止することなどにより、当社または取引先が被害を受ける可能性があります。当社は自然災害などの重大災害に備え、BCP(事業継続計画)を策定し、全役職員に周知するとともに、BCPに基づいた防災訓練の実施や必要物資の備蓄、拠点や関係会社との連携・情報共有などの対策を講じております。また、ライフラインを支える設備工事会社として、災害が発生した場合、二次災害の防止とライフラインの復旧のために社員・協力会社の職員が一定期間活動を行うために十分な現預金を確保するとともに、社員の安否を確認する安否確認システムの導入や建物・設備・システム等の耐震対策(データ等のバックアップを含む)を実施するなど各種災害に備えております。加えて、災害に対する都市の強靭性向上に寄与すべく、当社の事業であるライフラインのメンテナンスや耐震化工事を推進しております。しかしながら、全ての被害や影響を回避できるとは限らず、これに伴う役職員の被災、営業拠点の修復または代替のための費用発生等により、当社の事業展開、財政状態および経営成績が影響を受ける可能性があります。
② 組織力の低下リスク
当社は、中長期の事業展開を見据え、「求められる人材像」を定め、新卒だけではなく中途採用を強化するとともに、これまで男性主体であった職種、業務への女性の配置拡大など、多様性の確保も意識し、各部において育成計画や各種研修、資格取得支援等の充実化を図り、将来を担う優秀な人材の採用・育成に努めております。本人の希望と適性を踏まえたキャリアパスの選択や成果に応じたメリハリのある処遇の設定、適材適所な人材配置の実施、本人の希望と能力に応じた定年後再雇用制度の運用により、多機能人材の育成や働きがいのある職場作りに取り組んでおります。加えて、2023年9月にはエンゲージメントサーベイを導入し、業務に影響を与える指標の分析を行っております。また、管理職を対象とした弁護士によるハラスメント研修や、メンタルヘルス不調発生防止を目的に全従業員を対象とした体験カウンセリング(日本産業カウンセラー協会のカウンセラーによる職場の悩み等に関する相談体験)など、心の健康を含む健康経営施策を実施しております。さらに、従業員ならびに就職希望者にとってより魅力的な企業となるよう、従業員の労働環境の改善を図るために、働き方改革推進委員会において、長時間労働抑制に向けた施策の立案、実施に加えて、管理者が労務管理を正確に行うツールとして、勤怠システムを改善するなどのITを活用した環境整備を実施しております。また、2025年4月、従来の基幹システムを刷新いたしました。新システムを活用し、業務管理の見直し・高度化・効率化を目指してまいります。しかしながら、少子化の影響や景気拡大に伴う大手企業の採用数増加などにより、必要な人材を継続的に確保できなかった場合、ならびに人材の多機能化および働き方改革への対応が遅延した場合、当社の事業展開、財政状態および経営成績が影響を受ける可能性があります。
③ 施工力の確保リスク
当社では、受注した工事等を協力会社に発注しております。少子高齢化による人手不足、後継者難は建設業界に共通する難しい問題ですが、2022年度より協力会社を含めたCSR調達方針・ガイドラインおよび推進の枠組みを定め、アンケートやヒアリング等を行っており、2024年度の実施結果では、大きな問題は確認されませんでしたが、寄せられた要望や意見に基づき、当社の業務改善や、協力会社への経営指導・働き方改革を推進することで協力会社従業員の労働環境の改善を行い、魅力ある仕事となるよう可能な限りの支援策を講じてまいります。しかしながら、後継者難、経営状態の悪化、若年層の採用難や若年層の退職増加等により、主要な協力会社に不測の事態が発生した場合、施工能力が低下するなど、当社の事業展開、財政状態および経営成績が影響を受ける可能性があります。
④ 不良工事の発生リスク
ISO9001:2015規格で培ったノウハウを進化させ、当社独自に策定した品質管理システム(QP(Quality Plus)マネジメントシステム)に基づいて各部・拠点の事業所監査を行い、クレーム処理、是正処置、予防処置を実施するとともに、代表取締役を委員長とした品質マネジメント会議を設置し、品質の向上に取り組んでおります。また安全品質環境部を事務局としたリスクマネジメント会議や再発防止検討会において、予防策、事故の傾向分析、原因究明、再発防止策を検討しております。また、安全品質環境部における安全パトロールにおいて、この再発防止策が実施されているかを確認し、必要に応じて指導を行っております。加えて、業務・コンプライアンス監査を定期的に実施し、各部・各拠点において法令、規則等を遵守した業務遂行が行われているかチェックしております。しかしながら、工事施工上の問題、各種法令やルールの理解あるいは確認不足等に起因する品質の不備もしくは事故等が発生した場合、発注元や監督官庁からの工事施工資格や入札参加資格の停止、受注済み件名の発注取り消しといった処分を受けることにより、当社の事業展開、財政状態および経営成績が影響を受ける可能性があります。
⑤ 交通事故・労働災害の発生リスク
当社は、安全運転管理規程および安全衛生管理規程を定め、定例勉強会や再発防止策の教育を実施するとともに、本社においては、年4回、安全衛生中央委員会、拠点においては毎月安全衛生委員会を開催し、事故・災害事例の共有と再発防止策の共有に努めています。また、安全品質環境部を事務局としたリスクマネジメント会議や再発防止検討会において、予防策、事故の傾向分析、原因究明、再発防止策を検討しております。加えて、毎年10月に交通安全強調月間を開催し、安全運転意識を高めるとともに、事故惹起者への運転訓練や全車両へ通信型ドライブレコーダーの設置による運転状況の把握に努めているほか、年に1度、社員、協力会社を集めた安全大会を開催するなど安全管理活動の推進に努めております。しかしながら、予期せぬ事由による事故・災害の発生や基本作業の逸脱による重大事故等の発生による人的被害・物的被害・社会的信用の失墜などにより当社の事業展開、財政状態および経営成績が影響を受ける可能性があります。
⑥ コンプライアンスリスク
当社では、コンプライアンス規程を定め、各部門の長を委員としたコンプライアンス推進会議において定めた年度実施計画の基本方針に基づき、各部門で強化策を展開するとともに、2か月に1度、役員からのコンプライアンスメッセージの配信やコンプライアンスに関する研修等を実施することによって「協和日成グループ行動基準」の浸透とコンプライアンスマインドの継続的な高揚を図っております。特に、反社会的な勢力・団体との関係の遮断を「協和日成グループ行動基準」で明文化するとともに、本社地区特殊暴力防止対策協議会への加盟、本社・各拠点に不当要求防止責任者を選任し、反社会的な勢力・団体に関する情報の収集・管理や対応マニュアルの整備等、体制構築に向けての検討を行い、積極的に全社展開を推進しております。また、業務・コンプライアンス監査により、コンプライアンスを逸脱した業務遂行が行われていないかを確認しております。しかしながら、このような施策を講じてもコンプライアンス上のリスクは完全に回避できない可能性があり、法令・規則・関係マニュアル・企業倫理に反する行為等が発生した場合には、対応に要する直接的な費用に止まらず、社会的責任の発生等有形無形の損害が発生する可能性があります。
⑦ 情報セキュリティスリスク
当社では、情報管理規程、情報システム利用規程、個人情報管理規程、特定個人情報取扱規程といった各種規程を整備しており、セキュリティソフトの配備、PCデータ・記録媒体・メールの添付ファイル等の暗号化を行い、全社員を対象とした情報セキュリティ教育を実施するとともに、各組織における情報管理責任者のもとで情報システム運用を補佐するITリーダーを設置し、ITリーダーを通じた各種情報共有や各組織の要望に合わせたIT教育を行っております。また、日常的なサーバー監視や、内部統制のひとつであるIT統制監査、個人情報の保有状況・保管状況チェック等を通じて、情報セキュリティリスクの低減を図っております。また、2025年4月より、新基幹システムの稼働を開始いたしました。実稼働段階において想定し得ない不具合が発生する可能性もあり、モニタリングを強化しております。しかしながら、このような施策を講じても情報セキュリティリスクは完全に回避できない可能性があり、情報漏洩や情報システムの稼働停止が発生した場合には、対応に要する直接的な費用に止まらず、社会的責任の発生等有形無形の損害が発生する可能性があります。
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
当事業年度末における総資産は、前事業年度末の28,645百万円に比べて288百万円減少し、28,357百万円となりました。
(流動資産)
当事業年度末における流動資産は、前事業年度末の18,197百万円に比べて1,194百万円減少し、17,002百万円となりました。これは、完成工事未収入金及び契約資産が389百万円増加しましたが、現金及び預金が1,147百万円、電子記録債権が439百万円減少したことが、主な要因であります。
(固定資産)
当事業年度末における固定資産は、前事業年度末の10,448百万円に比べて906百万円増加し、11,355百万円となりました。
当事業年度末における固定資産のうち有形固定資産は、前事業年度末の6,237百万円に比べて76百万円減少し、6,160百万円となりました。これは、資産を一部取得したものの、減価償却、除却により減少したことが、主な要因であります。
無形固定資産は、前事業年度末の234百万円に比べて242百万円増加し、477百万円となりました。主な要因は基幹システムの構築に伴うソフトウェアの増加によるものです。
投資その他の資産は、前事業年度末の3,977百万円に比べて741百万円増加し、4,718百万円となりました。これは、新たな債権取得と、保有する株式の時価が上昇したことにより投資有価証券が785百万円増加したことが、主な要因であります。
当事業年度末における負債合計は、前事業年度末の9,848百万円に比べて360百万円減少し、9,487百万円となりました。
(流動負債)
当事業年度末における流動負債は、前事業年度末の9,395百万円に比べて454百万円減少し、8,940百万円となりました。これは、未払消費税等が197百万円増加しましたが、支払手形が289百万円、工事未払金が61百万円、未払金が57百万円、未払費用が148百万円、未成工事受入金が88百万円減少したことが、主な要因であります。
(固定負債)
当事業年度末における固定負債は、前事業年度末の453百万円に比べて94百万円増加し、547百万円となりました。主な要因は、株式給付引当金の増加によるものです。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は、前事業年度末の18,797百万円に比べて72百万円増加し、18,869百万円となりました。これは、配当金の支払い402百万円、自己株式の取得及び消却等により自己株式が213百万円増加しましたが、当期純利益を1,133百万円計上し、その他有価証券評価差額金が121百万円増加したことが、主な要因であります。
当事業年度におけるわが国の経済は、引き続き緩やかな回復基調で推移いたしました。個人消費は、物価高による実質賃金の低迷の影響により弱含みで推移しておりましたが、年度後半は所得環境の改善に伴い持ち直しの動きが見られることに加え、設備投資は、堅調な企業収益等を背景に持ち直しの動きが続いております。
一方で、通商政策などアメリカの政策動向による影響、地政学リスクの高まり等、海外を中心に景気に対する不確定要素が多く、加えて、物価上昇を背景とした消費者マインドの悪化による個人消費の落ち込みや、資機材価格の高騰、人手不足に伴う供給制約による企業収益の悪化が、企業の設備投資意欲低下に繋がる懸念もあるなど、先行きは不透明な状況が続いております。
このような状況の中、不動産・建設業界におきましては、2021年度より始まった「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」による、防災・減災対策、予防保全型インフラメンテナンスへの転換に向けた老朽化対策が堅調に推移いたしました。しかしながら、2024年の新設住宅着工戸数は、建設コストの高止まりなどが住宅需要を抑制し、前年を27,525戸下回る792,098戸と、2年連続の減少となりました。また、需要に対する慢性的な技術者不足は改善されておらず、建設資材の価格高騰に伴う建設コストの上昇も相まって工期の長期化やコスト増などにより、採算悪化や住宅取得マインドの悪化が懸念される状況が続いており、先行きを見通した柔軟な対応が一層重要となっております。
エネルギー業界におきましては、小売全面自由化以来、エネルギー事業者間の競争激化に伴い、電力・ガスともにコスト削減の動きが継続いたしました。当社が受注する主要取引先の政策転換や、当社も含めた工事会社に対する取引方針の見直しなども引き続き懸念されております。また、世界情勢がますます緊迫化する中で、エネルギーの安定供給や脱炭素化の実現などに向けて、グリーントランスフォーメーションが推進されております。これに伴って、再生エネルギーの活用や脱炭素化への投資が引き続き旺盛に推移しております。
このような経済環境のもと当社におきましては、リノベーション工事(排水管ライニング工事を含めた改修工事)や、東京都水道局関連工事、住宅等の給排水衛生設備工事が減少いたしましたが、東京ガスネットワーク株式会社における設備投資計画に基づく工事が好調に推移したことに加え、住宅等における給湯・暖房工事も好調に推移いたしました。また、工場施設関連の営繕工事においても大規模物件が多く完成いたしました。この結果、売上高は37,416百万円(前年同期比4.3%増)となりました。
利益面では、建築設備事業、電設・土木事業において利益率の高い物件の完成が多かったことにより、営業利益1,483百万円(同18.9%増)、経常利益1,674百万円(同14.6%増)、当期純利益1,133百万円(同6.7%増)となりました。
リノベーション工事において大型物件の完成が減少したことに加え、集合住宅等の給排水衛生設備工事において、物件規模が大きく、工期の長い物件を多く施工していることにより年度内完成物件が減少いたしましたが、集合住宅の給湯・暖房工事が好調に推移したことに加え、工場施設関連の営繕工事において取引先の好調な設備投資により大規模物件が完成いたしました。また、GHP工事やGHPメンテナンス事業も好調に推移いたしました。この結果、売上高は6,195百万円(前年同期比10.0%増)となりました。利益面につきましては、給排水衛生設備工事において高利益物件が完成したことにより経常利益62百万円(前事業年度は311百万円の経常損失)となりました。
なお、2025年度の期初手持工事高は6,007百万円(同3.1%増)となりました。企業の設備投資意欲が引き続き旺盛であり、工場における営繕工事は堅調に推移するものと見込んでおります。集合住宅等に関連した給排水衛生設備工事の受注は堅調と見込んでおりますが、工期が長い物件において進捗が低調に推移今後、工期の遅延が発生する懸念があるため、工程管理を徹底してまいります。また、既築建物のリフォーム・リノベーション市場も堅調に推移することが見込まれており、積算要員の増加や診断調査案件からの受注促進に努めてまいります。資材価格の高止まりや労務単価の上昇などが建設コストに与える影響については、引き続き適正な原価の把握に努めるとともに収支管理を徹底することに加え、業務の効率化を推進し、生産性の向上に努めてまいります。
LCS工事(戸建住宅の給排水設備工事)において、受注先における着工戸数の減少や工期の遅延の影響で当社の完成も減少いたしましたが、戸建住宅におけるハイブリッド給湯器などの環境商材の拡販により給湯・暖房工事や機器工事が好調に推移したことに加え、木造集合住宅および鉄筋集合住宅の増加により主力のガス設備工事も堅調に推移した結果、売上高は10,850百万円(前年同期比3.1%増)となりました。一方、利益面につきましては、主にガス設備工事において原価率の高い物件が多く完成したことにより、経常利益285百万円(同43.8%減)となりました。
なお、2025年度の期初手持工事高は3,767百万円(同16.6%増)となりました。住宅着工戸数が前年度と同水準で推移すると予想されていることに伴い、ガス設備工事や給湯・暖房工事は堅調に推移するものと見込んでおります。また、脱炭素社会へ向け、引き続き太陽光発電・蓄電池等の環境商材の需要が見込まれるほか、体制整備が順調に進んでいるLCS工事(戸建住宅における給排水設備工事)は堅調に推移し、電気工事も受注拡大を見込んでおります。ますます旺盛な工事量に対し、施工体制の効率化を推進し、品質向上に努めてまいります。なお、ガス設備事業は、環境商材を含む機器の拡販を見据え、より事業内容を明確化するため、2025年度よりセグメント名称を「ガス・機器設備事業」へと変更いたします。
東京ガスネットワーク株式会社や北海道ガス株式会社といった主要取引先における設備投資計画に基づく工事が好調に推移したことに加え、静岡ガス株式会社の設備投資計画に伴う工事においても大規模物件が多く完成いたしました。旺盛な工事需要に対し、部門間連携を密にして機動的な施工管理体制を強化したことにより、売上高は18,272百万円(前年同期比3.3%増)、経常利益1,190百万円(同3.0%増)となりました。
なお、2025年度の期初手持工事高は7,829百万円(同14.2%減)となりました。東京ガスネットワーク株式会社を始めとする各ガス事業者の設備投資計画は引き続き堅調に推移することが見込まれております。しかしながら、首都圏においては2025年度上期までにねずみ鋳鉄管取替工事を完遂予定であり、その後は新たな経年管取替工事が主流となり、その施工エリアには偏りが想定されることから、これまで以上に機動的な施工体制を強化することが重要となってきます。また、工事会社の新規参入により受注競争が変化する可能性があることも視野に入れた施策を展開していくことが必要となってきます。各工事における適正利益を確保するべく予算管理を徹底し、品質向上に努めてまいります。
東京都水道局関連工事において、他工事との工程調整等の関係で現場の稼働が断続的であった影響により完成が減少いたしましたが、民間土木工事や東京電力パワーグリッド株式会社の設備投資計画に伴う管路埋設工事において、大規模物件が完成いたしました。この結果、売上高は2,028百万円(前年同期比2.9%増)となりました。利益面につきましては、民間土木工事において高利益物件が完成したことにより、経常利益136百万円(前年同期比26.8%増)となりました。
なお、2025年度の期初手持工事高は620百万円(同27.5%減)となりました。東京電力パワーグリッド株式会社の設備投資計画に伴う管路埋設工事において新設や増設の需要が継続し、経年ケーブルの撤去工事も本格化することから、受注が堅調に推移することが見込まれております。加えて、イリゲーション工事(ゴルフ場の緑化散水設備およびクラブハウス等の設備工事)では、主要取引先における設備更新や新設の計画が見込まれているなど、堅調に推移することが見込まれております。管路埋設工事やケーブル保守に伴う工事は、発注者側の徹底したコスト管理施策が続くことが予想されますが、一層の収益確保に向け、綿密な工事計画と適切な要員配置による効率的な施工体制の整備を推進してまいります。
(現金及び現金同等物)
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、6,777百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度末の営業活動による資金は1,108百万円の収入(前年同期は1,371百万円の収入)となりました。主なプラス要因は、税引前当期純利益1,672百万円、減価償却費273百万円などであり、主なマイナス要因は、仕入債務の減少351百万円、法人税の支払額555百万円などであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度末の投資活動による資金は1,035百万円の支出(前年同期は713百万円の支出)となりました。主なプラス要因は投資有価証券の売却による収入900百万円であり、主なマイナス要因は有形固定資産の取得による支出164百万円、無形固定資産の取得による支出274百万円、投資有価証券の取得による支出1,510百万円などであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度末の財務活動による資金は1,221百万円の支出(前年同期は359百万円の支出)となりました。これは、自己株式の取得による支出804百万円、配当金の支払額401百万円などが主な要因であります。
(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)
資本の財源については、収益力及び資産効率の向上によることを基本としており、健全な財務基盤、営業活動で生み出されるキャッシュ・フローにより、通常に必要な運転資金及び設備投資資金を調達することが可能と考えております。資金の流動性については、活動に伴う資金の需要に応じた現金及び現金同等物の適正額を維持することとしております。また、突発的な資金需要に対しては、主要取引銀行と締結しているコミットメントライン契約を活用することで手許流動性を確保しております。なお、当事業年度末の借入実行残高はありません。
当社のキャッシュ・フロー指標のトレンドは下記のとおりであります。
(注)1 自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
2 キャッシュ・フローは営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。
3 株式時価総額は、自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
4 有利子負債は、貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に準拠して作成しております。この財務諸表の作成にあたり、決算日における資産、負債の報告数値及び報告期間における収入、費用の報告数値に影響を与える見積りを行わなければなりません。
経営陣は、貸倒債権、棚卸資産、投資、引当金、退職給付債務、繰延税金資産、資産除去債務、法人税等及び財務活動等に関する見積り及び判断に対して継続して評価を行っております。また、過去の実績や状況に応じて合理的だと考えられる見積りおよび判断を行いますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。
重要な会計上の見積りについては、第5 [経理の状況]1 [財務諸表等](1)[注記事項](重要な会計方針)」に記載しております。
建設業を営んでいる当社は、生産実績を定義することが困難であるため、「生産の状況」は記載しておりません。
受注高、売上高、繰越高及び施工高
(注) 1 前期以前に受注した工事で契約の更改により請負額に変更のあるものについては、当期受注工事高にその増減額を含みます。従って、当期売上高にも当該増減額が含まれています。
2 次期繰越高の施工高は手持工事高における支出金により推定したものです。
3 セグメント間取引については、相殺消去しております。
4 その他の売上は、工材販売手数料等であります。
5 主な相手先別の売上実績及び割合
6 上記のほか売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はありません。
該当事項はありません。
該当事項はありません。