第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営の基本方針

当社グループは、「総合設備工事業者として常に新たな価値の創造に挑戦し、より良い地球環境の実現と社会の発展に貢献する」という経営理念の下、「①顧客第一の理念を通じて経営環境の変化に対応する、②コンプライアンスの精神に則った企業経営を行う、③安全・品質の確保と環境保全に貢献する企業活動を行う、④各戦略・各施策の相互連携により企業目標を達成する」という4つの経営方針を掲げ、顧客のニーズを先取りした技術とサービスを提供することにより、企業価値の向上に努めております。

また、産業構造の変化を的確にとらえ、スピードと実行力のある企業経営を行うことにより活力ある企業を目指しております。

 

(2)目標とする経営指標

当社グループは、2021年度を初年度とする3カ年の中期経営計画「Stage2030 Phase1《整えるステージ》」において、最終年度の2023年度(2024年3月期)に、経営成績として完成工事高200,000百万円、営業利益10,000百万円を目指しております。目標とする財務指標はROE8.0%以上、配当性向30.0%以上としております。また投資計画として、3年累計で20,000百万円を目指しております。

 

(3)経営環境及び優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループは、2021年度より2029年度の9年間を対象とした長期ビジョン「Stage2030 総合設備工事から『空間価値創造』企業へ」、並びにフェーズ1にあたる2021年度より2023年度までの3年間の中期経営計画「整えるステージ」を策定しました。

長期ビジョンで目指す『空間価値創造』企業とは、社会やお客様が本質的、潜在的に求めている「価値」のある「空間」を「創造」し、満足を提供していく企業です。私たちは持続可能な社会の実現に貢献し、未来が求める「空間」の「価値」を「創造」し続けるため、総合設備工事の枠を超えて事業領域を広げ、『空間価値創造』企業として、新たな「Stage」に向かいます。2030年におけるその姿を『Stage2030』とし、基本方針は「快適・最適な空間の提供」、「豊かで持続可能な社会への貢献」、「信頼される人と組織の深化」といたしました。

長期ビジョンを示すことで当社グループの目指す姿をステークホルダーの皆さまと共有し、変化の激しい時代においても、私たちの提供する価値を明確にして、確かな目標に向かいステージアップを着実に図ることを目指しています。

中期経営計画「整えるステージ」では、長期ビジョンで示す3つの基本方針である『快適・最適な空間の提供』『豊かで持続可能な社会への貢献』『信頼される人と組織の深化』を踏まえ、5つの事業戦略『基幹事業の拡大』『海外事業の強化』『技術力の強化』『新規事業の開拓』『事業基盤の強化』を定めています。それぞれに対応した具体的な施策を実行することを通じて、国内外の基盤整備を進めています。

なお、2023年3月28日及び4月26日に公表いたしました元従業員らによる特定の工事下請負業者との間の不適切な取引にかかる不正行為につきまして、株主の皆さまや、数多くのステークホルダーの皆さまには多大なご迷惑とご心配をおかけしておりますことを、心より深くお詫び申し上げます。当社は、社内調査委員会の調査結果及び再発防止に向けた提言を真摯に受け止め、再発防止策を検討・策定し、その概要を5月11日に公表いたしました。

今後、決して不正行為を繰り返さないよう、再発防止策を着実に実行するとともに、コンプライアンス経営の徹底を推進し、皆様の信頼回復に全力で取り組んでまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 当社は、持続可能な社会の実現に向けて、ESG・サステナビリティに関する事業戦略の立案及び取組について審議するサステナビリティ委員会(委員長:代表取締役社長)を取締役会傘下に設置しており、2022年度は7回開催しました。

 サステナビリティ委員会は、マテリアリティ(重要課題)への対応やサステナビリティに関するリスクと機会への取組状況について審議し、その結果を取締役会に報告・付議し、取締役会による監督を受ける体制となっています。気候変動、従業員の健康と安全、人権問題をはじめとしたサステナビリティを巡る課題への対応を目的に、サステナビリティ委員会の下部組織として部門横断で組織される作業部会「タスクフォース」を設置し、TCFD提言に沿った情報開示の拡充や時間外労働の削減、人権デュー・ディリジェンスなどに積極的に取組んでいます。

 

(2)戦略

 マテリアリティのなかでも、特にステークホルダーへの影響度が大きく、当社にとっても重要度が高い「脱炭素社会への貢献」「健康・安全に配慮した働きがいのある職場環境」については、「タスクフォース」を通じて積極的に課題解決に向けた取組を推進しています。

 

①[気候変動への対応]:マテリアリティ「脱炭素社会への貢献」

 気候変動への対応は、当社にとって重要な課題であることを認識しており、2021年度は、気候関連のリスク及び機会を短期から長期の視点で特定し、その影響を評価しました。2022年度は、2℃以下シナリオ等を用いて引き続き分析を実施し、気候変動による事業インパクトの試算及び対応策を検討しました。下表は、当社が認識している主な気候関連リスクと機会及びその対応策です。

 今後は、これらの気候関連リスクと機会の分析結果をもとに、マテリアリティとして特定した「脱炭素社会への貢献」に係る取組に反映していきます。

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シナリオ設定について

 

シナリオ

 シナリオ分析ではパリ協定の目的に合わせ地球の平均気温上昇を産業革命以前の水準から2の上昇又は1.5までに抑制する世界(+2以下の世界)となりゆきで進む世界(+4の世界)の2つの世界を設定しました
 +2以下の世界ではIEA WEOのNet Zero Emissions by 2050(NZE)シナリオやAnnounced Pledges Scenario (APS)IPCCのRCP2.6+4の世界ではIEA WEOのStated Policies Scenario(STEPS)IPCCのRCP8.5を参照しています

 

対象

 分析対象事業は国内事業としています当社の国内売上は全体の9割を占めています

 

時間軸

 短期を現在~3年以内中期を2030年まで(ダイダン長期ビジョンStage2030期間及びSDGs目標年)長期を2050年(2050年カーボンニュートラル)頃までと設定していますまた将来的な財務影響の時間軸については2030年時点を分析対象としています

 

気候関連リスクと機会一覧

 

主なリスク/機会

財務影響

対応策

(2030年)

+2°C

以下

+4°C

移行

炭素税の導入

(リスク)事業活動に伴うコストの増加及び施工コストが増加する

炭素税導入を想定しない

再生可能エネルギーの調達を拡げ、温室効果ガス排出量削減を促進

BIM・WEB会議・クラウド等のICTを活用したDX推進による事業活動のコスト低減

(機会)省エネルギー、再生可能エネルギー、ZEB等への需要が拡大し、受注機会が増加する

再生可能エネルギー及びZEB案件の営業を強化し、顧客へ環境負荷低減を提案

再生可能エネルギーを有効活用するための技術開発を推進

新築ビルの建設に対する規制の強化

(リスク)新築ビルに対する規制強化・認証制度・省エネルギー基準への対応不足により、受注機会を逸失する

新築ビルに対する規制強化・認証制度・省エネルギー基準への対応体制の見直し

カーボンニュートラル関連技術に資する研究開発を実施

炭素排出目標/政策強化(CO2排出枠規制等)

(リスク)目標達成に向けて、クレジットの購入や排出量取引に係るコストが増加するほか、排出目標未達となった場合、社会からの信用が低下する

自社オフィスの消費エネルギーの削減、営業車エコカー導入の推進、自社支店のZEB化、国内事業所における実質再生可能エネルギー由来電力への切替等によるScope1・2削減目標達成

再生可能エネルギーの促進に係る政策強化

(機会)再生可能エネルギーに関する政策の導入により、再生可能エネルギー施設の建設投資が拡大し、受注機会が増加する

(算出中)

再生可能エネルギーを有効活用するための技術開発を推進

 

 

主なリスク/機会

財務影響

対応策

(2030年)

+2°C

以下

+4°C

再生可能エネルギー・省エネルギー技術の普及

(リスク)省エネルギー技術・再生可能エネルギー技術への対応が遅れることで、競争力が低下し、受注機会が減少する

自社ZEBの運用ノウハウを活用した省エネルギー設備提案の推進

既存建物のZEB化への提案推進

(機会)省エネルギー、脱炭素技術の開発・普及への対応により、競争優位性を獲得し、受注機会が増加する

大学等と連携した共同研究等のオープンイノベーションの推進

エネルギーマネジメント関連技術の導入強化

(機会)エネルギーマネジメント技術への対応が進むことで、競争力が向上し受注機会が増加する

遠隔監視・制御システム開発等により、建物及び建物群のエネルギーマネジメントのためのソリューションサービスを展開

省エネルギービル(ZEBを含む)の需要拡大

(機会)ZEB、スマートシティ関連のニーズが顕在化することで、技術開発等の対応力強化を通じて、収益が拡大する

ZEB化技術・IoT技術を生かした提案により、設計・施工の両面からZEB案件を拡大

顧客行動の変化

(リスク)脱炭素社会に向けた産業構造や設備投資需要の変化に対し、対応が遅れることで受注機会が減少する

脱炭素社会に向けた技術動向、顧客の設備投資動向を捉えた営業企画の強化

エネフィス®で検証したZEBとウェルネスを実現する次世代オフィスの提案

(機会)省エネルギーと健康性・快適性・知的生産性の両立を可能とする当社の技術力により、受注機会が増加する

リモートワーク等も考慮したオフィス環境の「働きやすさ」に寄与する技術開発

リニューアル需要の増加

(機会)リニューアル需要が増加することにより、当社の設備診断技術が活用されるとともに、さらなる技術開発が促進され、受注機会が増加する

設備診断に基づく省エネルギー改修提案による提案価値の増大

既存建物ZEB化に関する技術開発を推進

次世代技術の普及

(機会)感染拡大の可能性が高まるなかで、感染対策のための換気や空調に関連する技術開発をさらに推進することにより、受注機会が増加する

(算出中)

医療施設向け感染対策ユニット(空気清浄・陰圧化ユニット)の販売増強

気流解析技術の活用拡大

 

 

主なリスク/機会

財務影響

対応策

(2030年)

+2°C

以下

+4°C

投資家・銀行の行動変化(ESG投資の拡大)

(リスク)脱炭素の取組に対する情報開示の不足により、金融市場からの評価と信頼が低下する

-

IR活動でのサステナビリティ情報発信と対話の強化

サステナビリティ情報の積極開示、気候関連イニシアティブへの積極対応、社外ステークホルダーとのエンゲージメントの実施

(機会)脱炭素社会に向けた取組や積極的な情報開示により、金融市場において評価と信頼を獲得する

「ダイダンの森」育成・整備活動の全国10箇所での協定締結と推進

顧客からの評判の変化

(リスク)脱炭素への取組に関して社会的評価が獲得できず、市場からの信頼を失い、受注機会が減少する

再生可能エネルギー電力ハイブリッド車・EV車等のエコカーへの転換促進

ZEBリーディング・オーナー、ZEBプランナーへの登録

エコチューニング事業者に認定

エネフィス®のBELS、LEED、CASBEE、DBJ Green Buildingの認証取得

(機会)脱炭素への取組や各種認定・認証の取得により、顧客からの信頼を獲得する

-

カーボンニュートラルに向けたイニシアティブへの積極的な参加

気象災害の頻発・激甚化(台風、豪雨等)

(リスク)豪雨や台風の頻発・激甚化による自社社屋への損害発生、ライフラインの停止、工事見合わせ等により、事業運営に伴うコストが増加する

エネフィス®を全国支店に普及させ、災害時の自社社屋への損害を軽減

BCP対応の強化、事業継続マネジメントシステムの構築・運用によるリスク軽減

BCP向け設備システム開発に向けた産学共同研究の推進

(夏季)平均気温の上昇

(リスク)平均気温上昇により、建設現場で働く人々の健康リスクが高まるほか、生産性の低下や技術者不足が発生する

空調服を導入し、熱中症防止対策を実施

施工現場でのDX推進、ロボット活用による生産性向上と労働時間抑制

(機会)冷房能力増強工事の需要が増大し、受注機会が増加する

BIM活用による建設現場の生産性向上のための体制整備

 

 

主なリスク/機会

財務影響

対応策

(2030年)

+2°C

以下

+4°C

降水パターンの変化

(リスク)ゲリラ豪雨が頻発することで、建設現場における浸水被害が発生し、工事遅延や復旧に伴うコストが増加する

サプライヤー、協力会社などサプライチェーンの連携強化

地域リスクに即したBCP計画作成と、事業継続マネジメントシステムの構築・運用

水害発生時の被害軽減に向けた備蓄品の準備

異常気象の常態化に伴う需要の変化

(機会)降雨減少による渇水等のため、水の再利用システム、節水技術への需要が拡大し、受注機会が増加する

(算出中)

顧客への節水対策の提案

水資源の有効活用に関する技術開発を推進

利益に関する影響度評価基準・・・(小:~1億円以下中:~10億円以下大:10億円超)

売上に関する影響度評価基準・・・(小:~20億円以下中:~200億円以下大:200億円超)

 

②[人的資本への対応]:マテリアリティ「健康・安全に配慮した働きがいのある職場環境」

 当社は、「ダイダングループサステナビリティ方針」及び「人権と労働に関する方針」に基づき、すべての人の人権と個性を尊重した企業風土の醸成や、一人ひとりの多様性を重視した経営を推進しています。マテリアリティとして特定した「健康・安全に配慮した働きがいのある職場環境」の実現のために、人材育成と環境整備の考え方を構築し、公平な労働機会の提供や労働環境の充実に向けた取組を進めています。

 

<人材育成への考え方>

 「『人』は最大の資産である」との考えのもと、人材育成を促進する企業風土を醸成して、企業目標達成に必要な知識、技能その他の能力向上と開発を図ることで、誠実で有能な建設産業人を指導育成することを人材育成の基本的な方針としています。

 教育研修は、職場内教育訓練(O.J.T)、職場外教育訓練(OFF.J.T)、自己啓発促進訓練(S.D)の三体系で行っています。

 

<環境整備の考え方>

 一人ひとりが能力を最大限に発揮できる健康で働きやすい職場環境を作るために、働き方改革を通じてワークライフバランスと適切な労働環境を実現し、社員の多様性を尊重して、能力に応じた雇用、能力開発、昇進の機会を公平に提供する制度を整備することを基本的な考えとしています。

 

(3)リスク管理

 当社は、事業に関するリスクを最小化するために、リスクマネジメント方針を策定し、代表取締役社長が主管するリスクマネジメント委員会を設置しています。気候変動の政策・規制、技術への対応の遅れ、情報開示不足等による「気候関連リスク」、情報の不正使用・外部への漏洩、情報システムの停止・誤作動等による「情報漏洩リスク」、法令等の不遵守、贈収賄を含む腐敗行為全般、契約違反、各種制度変更への不対応等による「法的リスク」などの主なリスクを発生頻度、脅威度等に基づき、総合的に判断して特定・評価しています。取締役会では、リスクマネジメント体制の整備・監督を行っており、リスクマネジメント委員会からの報告を受けるとともに、リスクマネジメントの実効性をモニタリングしています。

 また、サステナビリティ委員会において、「気候関連リスク」や「人材リスク」をはじめとしたサステナビリティ全般の課題に対する討議内容について、当社のリスクを管理するリスクマネジメント委員会と相互に情報共有することにより、リスクマネジメントプロセスにサステナビリティに関するリスクが適切に反映される体制を構築しています。

 

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※2023年4月1日より「経営企画室」を「経営企画本部」に改称し、

また、同年5月1日より営業本部長を委員に追加しております。

 

(4)指標及び目標

①[気候変動への対応]:マテリアリティ「脱炭素社会への貢献」

 当社は、マテリアリティのひとつとして「脱炭素社会への貢献」を特定しています。そのマテリアリティに基づき、気候関連リスクと機会を適切に評価するために、中長期の定量的な目標を策定したうえで、活動を推進しています。

 温室効果ガス排出量については、Scope1+2を2030年までに2013年度比で46%削減することを目標としています。2022年度の取組として、自社社屋のZEBへの建替え、実質再生可能エネルギー由来の電力への切り替え、及びハイブリッド車等エコカーの導入促進等により、54%削減し目標を前倒しで達成しました。今後の目標につきましては、引き続き検討してまいります。

 再生可能エネルギーの活用や脱炭素に貢献する施工・設計技術の研究・開発を通じて持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指します。

 

②[人的資本への対応]:マテリアリティ「健康・安全に配慮した働きがいのある職場環境」

 個性を尊重し、能力を発揮できる環境の構築を図るため、「健康・安全に配慮した働きがいのある職場環境」をマテリアリティとして特定し、従業員満足度、度数率・強度率を指標と目標にしています。

 従業員満足度については、2023年度の2.7以上を目指して、働き方改革の推進、健康情報提供サービス「Pep Up※」の活用推奨、社員研修や各種セミナーの充実等に取組んだ結果、2.50となり昨年度の2.52とほぼ同一となりました。引き続き、ワークライフバランスの向上を図るとともに、快適で働きがいのある職場環境の構築を進めていきます。

 度数率・強度率については、予防型安全管理の徹底、過重労働防止策の促進、健康保持・増進策の実践等に取組みましたが、双方ともに数値目標未達となりました。引き続き、労働安全衛生活動の継続的な改善、向上に努めます。

※Pep Up:社員と家族の一人ひとりに向けて健診結果・医療費・服薬記録などを表示し、それぞれに応じた健康記事を配信するWebサービス

 

 

マテリアリティ

KPI

目標値

2022年度実績

脱炭素化社会への貢献

Scope1+2の温室効果ガス排出量の削減

長期目標:2030年度

2013年度比46%削減

2013年度比54%削減

(2022年度2,901t-CO2)

(2013年度6,235t-CO2)

健康・安全に配慮した

働きがいのある職場環境

 

従業員満足度の向上

2023年度2.7以上(従業員アンケートによる回答_4点満点)

2.50

度数率

2022年度0.25

0.30

強度率

2022年度0.01

0.570

※Scope1+2については国内及び海外連結グループを対象範囲としています。

※従業員満足度及び度数率・強度率については国内単体を対象範囲としています。

 

3【事業等のリスク】

当社は、永続的に価値を提供し続けるために、リスクの顕在化を未然に防止し、また、顕在化したリスクを極小化するべくリスクマネジメント体制を構築しております。経済的損失及び社会的損失が発生した場合の経営への多大なる影響を想定し、報告及び対応のための管理手法、対策本部の設置に関する事項等について「リスクマネジメント規程」に定め、リスクマネジメント委員会を設置しております。

 

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しかしながら、当該体制の構築を強化し、規程の遵守を徹底した場合であっても、事業に影響を与えるリスクの顕在化を完全に払拭することはできないと考えております。これらのリスクについてはそれぞれ個別に対応策を講じているものの、著しい外部環境の変化が生じた場合には、当該リスクが顕在化する可能性があります。

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)資産リスク

資産管理の瑕疵等の結果、資産の毀損等により損失を被るリスクがあります。資産とは、有価証券等の金融資産、所有及び賃貸借中の土地・建物、建物に付随する設備、什器・備品等の有形資産、知財等の無形資産を指します。

当社規程に基づき、金融資産のモニタリング、有事の際の資産管理(BCP等)、弁護士との連携による知財等の紛争リスクを低減しておりますが、当該リスクが顕在化した場合には、保有資産の減損、紛争に伴う対応費用等が生じる可能性があります。

 

(2)オペレーショナルリスク

技術開発の遅れ、営業活動の不振等により競争力を失い、継続的な事業活動に影響を被るリスク、金利・為替等の様々な市場のリスクファクターの変動により保有する資産・負債(オフバランス資産・負債を含む)の価格が変動し損失を被るリスク(市場リスク)、市場の混乱等により必要とされる数量を妥当な水準で取引できないことにより損失を被るリスク(市場流動性リスク)があります。

当社規程に基づき、中長期的な研究開発計画の策定、全社的な視点での営業活動による営業情報の蓄積に努めておりますが、当該リスクが顕在化した場合には、受注工事高、完成工事高の減少、保有資産の減損等が生じる可能性があります。

(3)情報漏洩リスク

情報の喪失・改ざん・不正使用・外部への漏洩、並びに情報システムの破壊・停止・誤作動・不正使用等により損失を被るリスクがあります。

当社規程に基づき、ITに係る規程・マニュアルの整備、権限の設定、バックアップの作成、従業員のセキュリティ教育等を実施し、情報の「可用性」「完全性」「機密性」の確保に努めておりますが、当該リスクが顕在化した場合には、各対応費用、損害賠償の発生、世評の低下による受注工事高の減少等が生じる可能性があります。

 

(4)法的リスク

法令等の遵守状況が不十分であることにより損失を被るリスク(他のリスクに係るものを除く)、契約等の行為が予想された法律効果を発生するための検討や訴訟等への対応が不十分であることによる損失を被るリスク、贈収賄・癒着・横領等の腐敗行為への対応が不十分であることにより損失を被るリスク、各種制度変更への対応が不十分であることにより損失を被るリスクがあります。

当社規程に基づき、建設業法、独占禁止法、労働安全衛生法等の各法令の順守を徹底し、法令違反の抵触を防止しておりますが、当該リスクが顕在化した場合には、法的規制による行政処分等を受け、世評の低下や営業停止による受注工事高の減少、罰金、課徴金等による費用等が生じる可能性があります。

 

(5)自然災害リスク

台風、河川の氾濫、地震等の自然災害によって、当社の保有する有形資産の毀損や執務環境等の質の低下、役職員の安全等に損失を被るリスクがあります。

当社規程に基づき、大規模災害による混乱防止、役職員及びその家族の安全確保、顧客支援等を迅速に行う事業継続管理(BCM)を定めておりますが、当該リスクが顕在化した場合には、保有資産の減損、事業中断に伴う受注工事高、完成工事高の減少、各支援等による費用等が生じる可能性があります。

 

(6)海外リスク

海外における政治や社会、経済状況の変化に伴う損失や資金が回収できない状況、急激なインフレや通貨の急落、国債の債務不履行、政権交代による経済・通商政策の変更、戦争や内乱に伴う政治の不安定化、そのほか法制や税制の解釈・運用の相違、商慣行やマナーによる違い、外国企業に対する国民感情などによる損失を被るリスクがあります。

当社規程に基づき、海外赴任者に対して海外リスクについて必要な情報をタイムリーに伝達し注意喚起する体制を整えておりますが、当該リスクが顕在化した場合には、債権の回収不能、市況の悪化による受注工事高、完成工事高の減少、為替変動による為替差損等が生じる可能性があります。

 

(7)施工リスク

施工現場で担保すべき安全性、従業員教育等の欠如により、当社の施工物件の品質劣化により被るリスクがあります。

当社規程に基づき、施工担当者は工事の安全及び品質環境リスクを把握し、それらを施工管理目標として設定することで堅実な施工に努めておりますが、当該リスクが顕在化した場合には、工程の手戻りによる損益の悪化、契約不適合による対応費用の発生、顧客の資産を毀損したことによる損害賠償、債権の回収不能、世評の低下による受注工事高の減少等が発生する可能性があります。

 

(8)気候関連リスク

低炭素経済への移行に伴う政策・法規制の強化によるコスト増、エネルギー技術の対応に遅れることによる 機会喪失、脱炭素社会に向けた需要の変化への未対応、情報開示不足による当社に対する評価と信頼低下など のリスク、及び気候変動による気象災害の頻発や平均気温の上昇など物理的変化に関するリスクがあります。

当社規程に基づき、サステナビリティ委員会が気候関連リスクについて特定・評価し、その情報をリスクマネジメント委員会と共有していますが、当該リスクが顕在化した場合には、需要変化への対応が遅れることによる受注機会の減少、気象災害の頻発による当社社屋への損害や工事見合わせ等に伴う事業運営コストの増加及び平均気温の上昇による建設現場の従業員の生産性低下等が生じる可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当社グループに関する財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は、連結財務諸表に基づいて分析した内容であります。また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)経営成績等の状況及び分析・検討内容

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、新型コロナウイルス感染症の影響は残りましたが、感染対策と社会活動の両立をはかり、行動制限が緩和されたことで経済活動は正常化が進み、再開発案件や産業施設案件を中心に受注が好調に推移した結果、受注工事高が増加しました。

また、前期からの繰越工事及び期中の受注工事の増加に伴い完成工事高も増加となりました。

利益につきましては、資機材価格の高騰により完成工事総利益率は低下しましたが、完成工事高の増加を受け増加となりました。

これを受けまして、受注工事高は、前連結会計年度比22,669百万円増(12.3%)の206,337百万円となりました。

完成工事高は、前連結会計年度比23,032百万円増(14.1%)の185,961百万円となりました。

完成工事総利益は、前連結会計年度比1,900百万円増(9.2%)の22,624百万円となりました。

営業利益は、完成工事総利益の増加により、前連結会計年度比844百万円増(11.1%)の8,428百万円となりました。

経常利益は、営業利益の増加により前連結会計年度比1,193百万円増(14.7%)の9,288百万円となりました。

親会社株主に帰属する当期純利益は、特別利益として投資有価証券売却益551百万円等、特別損失として固定資産除却損16百万円を計上し、法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額及び非支配株主に帰属する当期純利益を加減した結果、前連結会計年度比848百万円増(14.7%)の6,626百万円となりました。

 

経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、「1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)目標とする経営指標」に記載しておりますとおり、当社グループは、2021年度を初年度とする3カ年の中期経営計画「Stage2030 Phase1《整えるステージ》」において、最終年度の2023年度に、連結業績として完成工事高200,000百万円、営業利益10,000百万円を目標としております。また、財務指標はROE8.0%以上、配当性向30.0%以上としております。

なお、2023年度の連結業績予想としては、完成工事高200,000百万円、営業利益8,500百万円、ROE7.7%、配当性向35.0%以上としております。

当社グループは、総合設備工事から『空間価値創造』企業のリーディンググループを目指しております。国内外の基盤を整備・強化し、ダイダングループとして拡大を図るため、連結売上高、連結営業利益を経営目標としております。本業である設計・施工の連結売上高と連結営業利益が、当社グループ拡大状況を示す特に重要な経営目標と考えております。また、資本効率と株主還元の向上を目的とし、ROE、配当性向もあわせて経営目標としております。

当連結会計年度、中期経営計画の最終年度目標、今期予想との比較は下記のとおりです。

 

指標等

2022年度

(実績)

2023年度

(中期経営計画)

2023年度

(今期予想)

連結売上高

(百万円)

185,961

200,000

200,000

連結営業利益

(百万円)

8,428

10,000

8,500

ROE

(%)

8.3

8.0以上

7.7

連結配当性向

(%)

32.3

30.0以上

35.0以上

 

(2)生産、受注及び販売の実績

当社グループが営んでいる事業である設備工事業では、生産実績を定義することが困難であります。

また、請負形態をとっているため、販売実績という定義は実態に即しておりません。

よって、受注及び完成工事の実績については「(1)経営成績等の状況及び分析・検討内容」において記載しております。

また、当社グループが営む事業の大半は提出会社によるものであるため、以下には提出会社の実績について記載しております。

 

受注工事高及び完成工事高の実績

① 受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高

期別

工事種別

前期繰越

工事高

(百万円)

当期受注

工事高

(百万円)

(百万円)

当期完成

工事高

(百万円)

次期繰越

工事高

(百万円)

第93期

自 2021年4月1日

至 2022年3月31日

電気工事

21,227

27,281

48,508

25,197

23,311

管工事

空調工事

85,812

116,094

201,907

97,174

104,732

水道衛生工事

35,220

38,149

73,369

38,755

34,614

小計

121,032

154,244

275,276

135,929

139,346

142,259

181,525

323,785

161,126

162,658

(うちリニューアル工事)

32,068

87,232

119,300

83,389

35,911

(うち産業施設工事)

39,559

73,764

113,324

68,748

44,575

(うち海外工事)

11,170

11,148

22,318

9,710

12,608

第94期

自 2022年4月1日

至 2023年3月31日

電気工事

23,311

27,013

50,325

32,023

18,301

管工事

空調工事

104,732

130,368

235,101

109,991

125,109

水道衛生工事

34,614

38,350

72,964

37,605

35,359

小計

139,346

168,719

308,066

147,596

160,469

162,658

195,732

358,391

179,619

178,771

(うちリニューアル工事)

35,911

75,815

111,726

79,232

32,493

(うち産業施設工事)

44,575

83,324

127,900

71,323

56,577

(うち海外工事)

12,608

12,268

24,876

13,059

11,817

  (注)1.前期以前に受注した工事で、契約の更改により請負金額に変更があるものについては、当期受注工事高にその増減額を含んでおります。したがって、当期完成工事高にも当該増減額が含まれております。

2.次期繰越工事高は(前期繰越工事高+当期受注工事高-当期完成工事高)に一致します。

 

② 受注工事高の受注方法別比率

 工事の受注方法は、特命と競争に大別されます。

期別

工事種別

特命(%)

競争(%)

計(%)

第93期

自 2021年4月1日

至 2022年3月31日

電気工事

50.4

49.6

100.0

管工事

空調工事

28.1

71.9

100.0

水道衛生工事

36.4

63.6

100.0

管工事計

30.2

69.8

100.0

第94期

自 2022年4月1日

至 2023年3月31日

電気工事

45.1

54.9

100.0

管工事

空調工事

34.1

65.9

100.0

水道衛生工事

29.3

70.7

100.0

管工事計

33.0

67.0

100.0

 (注)百分比は請負金額比であります。

 

③ 完成工事高

期別

工事種別

官公庁(百万円)

民間(百万円)

計(百万円)

第93期

自 2021年4月1日

至 2022年3月31日

電気工事

4,616

20,580

25,197

管工事

空調工事

13,075

84,099

97,174

水道衛生工事

4,207

34,547

38,755

小計

17,282

118,646

135,929

21,899

139,227

161,126

第94期

自 2022年4月1日

至 2023年3月31日

電気工事

5,895

26,127

32,023

管工事

空調工事

17,190

92,801

109,991

水道衛生工事

4,219

33,385

37,605

小計

21,409

126,186

147,596

27,305

152,314

179,619

(注)1.完成工事のうち主なものは次のとおりであります。

第93期の完成工事のうち請負金額10億円以上の主なもの

清水建設㈱

メブスク豊洲 空調・水道衛生工事

兵庫県

兵庫県立はりま姫路総合医療センター 水道衛生工事

大成建設㈱

Kurita Innovation Hub(クリタイノベーションハブ) 電気工事

戸田建設㈱

長崎大学高度感染症研究センター実験棟 空調工事

前田建設工業他JV

八代市新庁舎 空調・水道衛生工事

第94期の完成工事のうち請負金額10億円以上の主なもの

鹿島建設㈱

九段会館テラス 空調工事

大成・鵜沢建設JV

千葉市役所新庁舎 空調工事

大成建設㈱

イオンネクスト誉田CFC 空調・水道衛生工事

清水建設㈱

アーバンネット名古屋ネクスタビル 空調・水道衛生工事

㈱本間組

一正蒲鉾本社第二工場 空調・水道衛生工事

2.完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりで

  あります。

第93期

 ㈱大林組   22,170百万円 13.6%

第94期

 ㈱大林組   19,517百万円 10.9%

 清水建設㈱  18,270百万円 10.2%

 

④ 次期繰越工事高(2023年3月31日現在)

工事種別

官公庁(百万円)

民間(百万円)

計(百万円)

電気工事

4,844

13,457

18,301

管工事

空調工事

22,482

102,627

125,109

水道衛生工事

5,740

29,618

35,359

小計

28,223

132,246

160,469

33,067

145,703

178,771

(注)次期繰越工事のうち請負金額15億円以上の主なもの

国立大学法人大阪大学

大阪大学(吹田)医学部附属病院統合診療棟

電気・空調・水道衛生工事

2024年10月完成予定

㈱大林組

関西国際空港第1ターミナルビルリノベーション

空調・水道衛生工事

2026年10月完成予定

清水建設㈱

(仮称)芝浦一丁目計画第1期(S棟)

空調工事

2025年2月完成予定

大成建設㈱

春日・後楽園駅前再開発南街区

空調・水道衛生工事

2023年11月完成予定

CHINA CONSTRUCTION (SP) DEVELOPMENT

CO PTE LTD

シンガポール総合病院

電気工事

2023年12月完成予定

 

(3)財政状態

(資産)

当連結会計年度末における流動資産は、前連結会計年度末比3,273百万円増(3.1%)の108,120百万円となりました。主な要因は、現金及び預金の増加9,314百万円(58.0%)によるものです。固定資産は、前連結会計年度末比6,170百万円増(18.0%)の40,424百万円となりました。主な要因は、投資有価証券の増加2,953百万円(18.6%)及び有形固定資産の増加1,623百万円(27.5%)によるものです。

この結果、総資産は前連結会計年度末比9,444百万円増(6.8%)の148,544百万円となりました。

(負債)

当連結会計年度末における流動負債は、前連結会計年度末比4,049百万円増(7.0%)の61,532百万円となりました。主な要因は、その他の流動負債の増加3,165百万円(52.7%)によるものです。固定負債は前連結会計年度末比212百万円増(4.9%)の4,587百万円となりました。主な要因は、繰延税金負債の増加240百万円(10.0%)によるものです。

この結果、負債合計は前連結会計年度末比4,261百万円増(6.9%)の66,119百万円となりました。

(純資産)

当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末比5,182百万円増(6.7%)の82,424百万円となりました。主な要因は、利益剰余金の増加4,691百万円(7.3%)等によるものです。

この結果、自己資本比率は55.4%(前連結会計年度末は55.4%)となりました。

 

(4)キャッシュ・フローの状況並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末比9,310百万円増(58.1%)の25,348百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果、増加した資金は15,941百万円(前連結会計年度は11,718百万円の資金の減少)となりました。

主な要因は、売上債権の減少によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果、減少した資金は4,729百万円(前連結会計年度は873百万円の資金の減少)となりました。

主な要因は、関係会社株式の取得による支出によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果、減少した資金は2,218百万円(前連結会計年度は3,214百万円の資金の減少)となりました。

主な要因は、配当金の支払によるものです。

 

当社グループの資本の財源及び資金の流動性について

運転資金及び通常の設備投資資金につきましては、営業循環取引から生じる受取手形及び電子記録債権の決済、並びに完成工事未収入金の回収による資金を運転資金の基礎とし、必要に応じ金融機関から資金の借入れにより調達することとしております。なお、運転資金の効率的な調達を行うため、取引銀行3行と貸出コミットメントライン契約を締結しております。

運転資金需要のうち主なものは、工事原価、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。設備工事業の特性上、入金よりも支出が先行する傾向があり、大型工事については立替額が多額となるケースもあることから、借入による一定の資金余剰が必要となっております。

大規模な設備投資の計画が生じた場合につきましては、計画時点の資金の流動性などを鑑み、都度、調達方法を検討いたします。

当連結会計年度末における借入金(短期及び長期)の残高は3,622百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は25,348百万円となっております。

 

 

(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者はこれらの見積りについて過去の実績等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、第5〔経理の状況〕の連結財務諸表の〔注記事項〕(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)、重要な会計上の見積りは(重要な会計上の見積り)に記載しております。

 

 

 

5【経営上の重要な契約等】

特記事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当社は、高度化・多様化するお客さまのニーズに応え、サステナブルな社会の実現に貢献するための研究開発を推進しております。また、継続的な成長を目指し、総合設備工事業の枠にとらわれない事業創出に向けた研究開発にも取組んでおります。

当連結会計年度における研究開発の主な成果は以下のとおりです。子会社においては、研究開発活動は行われておりません。なお、研究開発費は1,174百万円でした。

 

(研究開発の内容)

(1)カーボンニュートラル社会の実現に貢献する研究

当社はCSV事業戦略のひとつとして、カーボンニュートラル社会を実現するZEB※1の普及に取組んでおります。

これまでに、自社ビルでZEB技術を検証するために「エネフィス九州」、「エネフィス四国」、「エネフィス北海道」を建設し、運用実態の評価を通じてZEB技術の有効性を研究してきました。2022年度は、これらの実績と数多くのZEB施工実績から得られたノウハウをもとに、新たな自社ビルとして「北陸支店」を建設しました。ZEBでありながらレジリエンス※2とWellness※3にも配慮しており、働きやすく地球にやさしい次世代の建物です。さらに現在は、施工プロセスからDXを駆使することで3つの脱(脱カーボン、脱ストレス、脱ルーチン)を実現し、新しい働き方を推進する現代的「OMOYA」(母屋)を目指した建物として新潟支店を建設中です。

ZEBやWellnessの具体的な実現手段として培った研究開発には、①自然の光と室内環境をシームレスに繋ぐクラウド型輝度制御システム、②執務者の知的生産活動を高めるバイオフィリックデザイン※4、③個々人の感じ方を全体空調にフィードバックするクリマチェア連動制御などがあります。

今後は、自社ZEBの評価・検証を通じて得られたノウハウをもとに、更にサステナブルな社会の実現に向けた技術開発も進めてまいります。また、これまでのカーボンニュートラル建築の設計・施工・評価に対する取組を、今後のZEB設計・施工に活用するだけでなく社内外へ広く発表することで、カーボンニュートラル社会の実現に貢献します。

 

※1 ZEB:net Zero Energy Buildingの略。建物で消費するエネルギーを再生可能エネルギーでまかなう建物。
正味の消費エネルギーがゼロとなる建物を『ZEB』(完全なZEB)と呼ぶ。

※2 レジリエンス:変化への適応性や事業回復性能に優れること。

※3 Wellness:建物利用者の健康性、快適性。

※4 バイオフィリックデザイン:建築環境における自然とのつながりの向上を図った空間デザインの手法。

 

(2)クラウド型監視制御システムの開発

当社は、クラウドコンピューティングにより監視制御ソフトウェアを提供するクラウド型監視制御システムを開発しております。また、このシステムを活用し当社が設備運用サポートを継続的に提供するサービス「リモビス®」の提供も開始しました。

2022年度は2件の新規受注があり、リモビスのサービスを開始しております。また、将来的にリモビスの活用が見込まれる分野の客先施設において、機能検証のためのPoC※5(概念検証)を1件実施しました。

クラウド型監視制御システム及びリモビスのサービスは、開発しながら顧客に活用していただき改善を繰り返すアジャイル型開発のプロセスを推進しております。したがって、今後もPoCや共同研究を実施し、得られた知見を基に更なる機能改良を継続して実施します。また、海外展開も視野に入れた多言語対応、AI※6による制御機能の搭載に向けた開発にも着手しております。

 

※5 PoC:Proof of Conceptの略。

新しい技術やアイデアが実現可能か、期待する効果が得られるかを検証するための簡易な試行。

※6 AI:Artificial Intelligenceの略。

これまで人間にしかできなかった知的行為を機械に代行させるためのアルゴリズム(人工知能)。

 

 

(3)DXによる現場の施工効率化に関する研究

現在、建設分野においてもDX化は日進月歩の状況にあり、工事工程管理や資機材管理などの管理業務の効率化に留まらず、工事作業の遠隔支援や工事完了後の品質確認なども効率化する技術が多く登場しています。当社は、これまでに全方位(360度)カメラを用いた現場状況の3次元記録手法(Construction Visualizer 4D)を開発し、施工現場で試用しながら、さらなる利用価値向上を図ってきました。

2022年度は、大学の協力を得て、3次元記録の測量精度の評価手法を開発しました。これにより、本技術によって作成した3次元モデルの品質を平準化できるようになりました。現在は、3次元の形状モデルの作成のみならず、計器類や調整弁などを認識する技術開発にも着手しています。

今後は、これまでに施工現場での試用を通じて得られた課題をもとに、さらなる測量精度の向上、機能の充実化を図り、現場業務のDX化に貢献します。

 

(4)再生医療分野向け独自技術開発

再生医療は、これまで治療が困難であった病気や怪我に対する新しい医療として注目されています。しかし、再生医療等製品の製造には品質管理や環境整備など多大なコストがかかるため、治療費が高額になり再生医療の普及を阻害する要因となっています。再生医療が普及するためには、有効性と安全性を確保したうえでコストを低減する必要があります。当社は、CSV事業創出の一環としてこの課題の解決に取組んでいます。

これまでに、設備設計で培った気流制御技術を生かし、低コストで使いやすい細胞調製施設や装置に関する研究を行ってきました。自社施設「セラボ殿町」に当社開発の「エアバリアブース®」を用いてまったく新しい構造の細胞調製施設を構築し、綿密な検証を実施してその結果が評価されました。これにより当施設を活用する関係会社が再生医療等製品の製造業許可を取得しました。この成果は関連施設の既成概念を脱した技術が認められたもので、この技術を活用することで再生医療等製品の製造効率を飛躍的に向上させることになります。引き続きモックアップによる開発と検証を行い、当施設の構造を広く活用できるように標準化を進めてまいります。

 

(5)超臨界二酸化炭素※7を用いた産業用ケミカルエアフィルタの再生に関する実用化開発

SDGsの達成に貢献する廃棄物削減の取組として、超臨界二酸化炭素を洗浄溶媒とする産業用ケミカルエアフィルタのリユース事業(フィルタ再生事業)に取組んでいます。この事業は、国内の半導体業界を中心に着実に再生数を増やしています。

半導体市場は国内外で増加傾向であり、半導体工場に欠かせないものであるフィルタ再生能力の強化は不可欠です。そこで、大学や研究機関との共同研究で得られた再生効率向上技術を反映した新プラントを増設し、海外への事業展開に着手しました。

今後は、新プラントを用いた共同研究成果の検証を進め、更なる再生効率向上に取組みます。また、超臨界二酸化炭素の制御ノウハウを生かした技術転用を見据え、異業種との連携を通じた様々な検証実験を進めていく予定です。

 

※7 超臨界二酸化炭素:加圧・加熱により、超臨界状態になった二酸化炭素。液体と気体の両方の性質を持つ超臨界二酸化炭素は

産業用ケミカルフィルタの洗浄に効果的。

 

(6)設備エンジニアリングに欠かせない設計・施工技術に関する研究

当社は建築設備に欠かせない光・空気・水に関する技術をコアとして、イノベーション力とエンジニアリング力を結集し、建物のライフサイクルを通した空間価値を提供しています。したがって、お客様のニーズにマッチした環境を提供し続けるためには、設備の設計・施工技術の向上が永遠の課題となっています。

データセンターをはじめとする大規模空調設備に対しては、CFD(Computational Fluid Dynamics)による気流シミュレーションを活用した最適化提案を実施しています。気流分布や温度分布を可視化して、設計要件を満たす設備条件を施工前にコンピュータ上で確認し、その結果に基づいて着実な施工を行っています。建築設備技術の高度化・多様化に伴い、CFDの研究はますます重要になっています。

また、空気や水を送るダクトや配管の品質確保にも取組んでいます。一例として、配管の防食については大学との共同研究やメーカーとの協議を通じて、腐食原因の究明からその対策方法の確立まで理論的な考察だけでなく製造工程の見直しなども含め、日々研究を進めています。