第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営の基本方針

当社グループは、「地球と社会と私たちの未来に、安全・快適・信頼の空間価値を届ける」という企業理念の下、「人材戦略を基盤とした人づくりの実現により企業価値を高める」という経営の方針を掲げ、当社グループの持続的な成長に向けて取り組んでおります。

 

(2)目標とする経営指標

当社グループは、2024年度を初年度とする3カ年の中期経営計画「Stage2030 Phase2《磨くステージ》」において、最終年度の2026年度(2027年3月期)に、経営成績として完成工事高270,000百万円、営業利益24,000百万円 ROE12%以上を目指しております。

 

(3)経営環境及び優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループは、2021年度より2029年度の9年間を対象とした長期ビジョン「Stage2030 総合設備工事から『空間価値創造』企業へ」を2021年3月に策定しました。

『空間価値創造』企業とは、社会やお客様が本質的、潜在的に求めている「価値」のある「空間」を「創造」し、満足を提供していく企業です。当社グループの目指す姿をステークホルダーの皆さまと共有することで、変化の激しい時代においても、私たちの提供する価値を明確にして、確かな目標に向かいステージアップを着実に図ることができると考えました。

 

長期ビジョンの第2フェーズにあたる2024年度より2026年度までの3年間の中期経営計画《磨くステージ》においては、計画初年度にあたる2025年3月期の好業績および受注環境等の変化を総合的に勘案し、2025年5月9日に最終年度2027年3月期の業績目標を上方修正いたしました。

人手不足の深刻化に伴う施工能力の制約に対して、社員の採用増や教育研修制度の充実等の人的資本投資に積極的に取り組むとともに、中期経営計画でお示しした空調衛生工事、電気工事、海外事業、再生医療事業の4つの注力事業領域で各施策を着実に実施していきます。

 

堅調な建設需要を背景に良好な受注環境は継続しており、受注時採算の改善が進んでいます。また資機材価格や人件費の上昇に伴う原価増加も、価格転嫁を通じて売上増加に寄与しています。一方、米国関税や為替の不透明感が高まっており、これらが市場に与える影響を慎重に注視していく必要があります。大型化が進む産業施設の設備計画に変化の兆候が見られる場合には、業績への影響を分析・精査して、迅速かつ的確に受注ポートフォリオを見直す等の対策を講じてまいります。

 

財務面については、2025年3月期の業容の大幅拡大に伴いROEが17.4%まで大幅に上昇しましたが、運転資本が拡大したことで自己資本比率は50%を下回りました。持続的な業容拡大を支えるため、資本効率と財務健全性のバランスを維持しつつ株主還元を図る適切な財務戦略の継続を図ります。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

 

<ダイダングループサステナビリティ方針>

 当社は、サステナビリティを巡る取り組みの基本的な方針として、「ダイダングループサステナビリティ方針」を策定しています。サステナビリティ方針は、企業理念・グループ行動基準に基づいた方針で、環境・社会・ガバナンスの個別方針の上位方針と位置づけています。この方針に基づき、ESG経営のさらなる推進とサステナブルな社会への貢献を目指しています。

 

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(1)ガバナンス

当社は、持続可能な社会の実現に向けて、サステナビリティに関する取組について審議するサステナビリティ委員会(委員長:代表取締役社長)を取締役会傘下に設置しており、2024年度は9回開催しました。

サステナビリティ委員会は、マテリアリティ(重要課題)への対応やサステナビリティに関するリスクと機会への取り組み状況について審議し、その結果を取締役会に報告・付議し、取締役会による監督を受ける体制となっています。また、サステナビリティ委員会の下に、気候変動、人的資本、人権問題、従業員の健康と安全をはじめとしたサステナビリティを巡る課題への対応を目的に、テーマ(会議体)ごとの推進部門を設置し、TCFD提言に沿った情報開示の拡充、時間外労働の削減、人材育成、人権デュー・ディリジェンスなどに積極的に取り組んでいます。

 

(2)リスク管理

当社は、事業に関するリスクを最小化するために、リスクマネジメント方針を策定し、代表取締役社長が主管するリスクマネジメント委員会を設置しています。気候変動の政策・規制、技術への対応の遅れ、情報開示不足等による「気候関連リスク」、情報の不正使用・外部への漏洩、情報システムの停止・誤作動等による「情報漏洩リスク・サイバーリスク」、法令等の不遵守、贈収賄を含む腐敗行為全般、契約違反、各種制度変更への不対応等による「法的リスク」などの主なリスクを発生頻度、脅威度等に基づき、総合的に判断して特定・評価しています。取締役会では、リスクマネジメント体制の整備・監督を行っており、リスクマネジメント委員会からの報告を受けるとともに、リスクマネジメントの実効性をモニタリングしています。

また、サステナビリティ委員会において、「気候関連リスク」や「人材リスク」をはじめとしたサステナビリティ全般の課題について、リスクマネジメント委員会と相互に情報共有することにより、リスクマネジメントプロセスにサステナビリティに関するリスクが適切に反映される体制を構築しています。

 

(3)戦略及び指標と目標

①気候変動への対応

(ア)戦略

気候変動への対応は、当社にとって重要な課題であることを認識しており、気候関連のリスク及び機会を短期から長期の視点で特定し、その影響を評価しています。1.5℃シナリオ等を用いて分析を実施し、気候変動による事業インパクトを試算し、その対応策を整理しています。「気候関連リスクと機会一覧」の表は、当社が認識している主な気候関連リスクと機会及びその対応策です。

今後は、これらの気候関連リスクと機会の分析結果をもとに、マテリアリティとして特定した「カーボンニュートラルへの貢献」に係る取り組みに反映していきます。

 

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シナリオ設定について

シナリオ分析では、パリ協定の目的に合わせ地球の平均気温上昇を産業革命以前の水準から1.5℃までに抑制する世界(+1.5℃の世界)と、なりゆきで進む世界(+4℃の世界)の2つの世界を設定しました。

+1.5℃の世界では、IEA WEOのNet Zero Emissions by 2050(NZE)シナリオやAnnounced Pledges Scenario(APS)、IPCCのRCP2.6、+4℃の世界では、IEA WEOのStated Policies Scenario(STEPS)、IPCCのRCP8.5を参照しています。

 

対象

分析対象事業は、国内事業としています。当社の国内売上は、連結売上高の9割程度を占めています。

 

時間軸

短期を現在~3年以内、中期を2030年3月期まで(ダイダン長期ビジョン「Stage2030」期間及びSDGs目標年)、長期を2050年(2050年カーボンニュートラル)頃までと設定しています。また、将来的な財務影響の評価は、2030年3月期時点を分析対象としています。

 

 

気候関連リスクと機会一覧

リスク分類

主なリスク

財務影響の評価

対応策

+1.5°C

+4°C

移行

政策・法規則

 

 

カーボンプライシング

炭素税の導入により、事業活動・施工に係る費用が増加

また、炭素クレジット購入等、排出量取引に係る費用が増加する

・実質再生可能エネルギー由来電力への切替

・自社のZEB化を含む、自社施設の消費エネルギーの削減

・エコカー導入の推進

・BIM・WEB会議・クラウド等のICTを活用したDX推進による事業活動のコスト低減

 

新築ビルの建設に対する規制の強化

新築ビルに対する規制強化・認証制度・省エネルギー基準への対応不足により、受注機会を逸失する

・新築ビルに対する規制強化・認証制度・省エネルギー基準への対応体制の見直し

技術

 

再生可能エネルギー・省エネルギー技術の普及

省エネルギー技術・再生可能エネルギー技術への対応が遅れることで、競争力が低下し、受注機会が減少する

・自社ZEBの運用ノウハウを活用した省エネルギー設備提案の推進

・大学等と連携した共同研究等のオープンイノベーションの推進

市場

 

 

顧客行動の変化

脱炭素社会に向けた産業構造や設備投資需要の変化に対し、対応が遅れることで受注機会が減少する

・脱炭素社会に向けた技術動向、顧客の設備投資動向を捉えた営業企画の強化

評判

 

投資家・株主の行動変化(ESG投資の拡大)

脱炭素の取り組みに対する情報開示の不足により、金融市場からの評価と信頼が低下する

-

-

・IR活動でのサステナビリティ情報発信と対話の強化

 

 

顧客からの評判の変化

脱炭素への取り組みに関して社会的評価が獲得できず、市場からの信頼を失い、受注機会が減少する

・ウェブサイト、統合報告書による積極的な情報発信

・カーボンニュートラルに向けたイニシアティブへの積極的な参加

・「ダイダンの森」育成・整備活動の推進

 

 

 

リスク分類

主なリスク

財務影響の評価

対応策

+1.5°C

+4°C

物理的リスク

急性リス

 

気象災害の頻発・激甚化(台風、豪雨等)

豪雨や台風の頻発・激甚化による、自社社屋への損害発生、ライフラインの停止、工事見合わせ等により、事業運営に伴うコストが増加する

・事業継続マネジメントシステムの運用によるリスク軽減

・自社のZEB化によるレジリエンス強化

慢性リスク

 

(夏季)平均気温の上昇

平均気温上昇により、建設現場で働く人々の健康リスクが高まるほか、生産性の低下や技術者不足が発生する

・空調服を導入し、熱中症防止対策を実施

・施工現場でのDX推進、ロボット活用による生産性向上と労働時間抑制

 

降水パターンの変化

ゲリラ豪雨が頻発することで、建設現場における浸水被害が発生し、工事遅延や復旧に伴うコストが増加する

・サプライヤー、協力会社などサプライチェーンの連携強化

 

機会分類

主な機会

財務影響の評価

対応策

+1.5°C

+4°C

資源の効率性・レジリエンス

省エネルギー・再生可能エネルギー技術の普及に伴う省エネルギービルやスマートシティ関連の需要拡大

ZEB化を始めとした省エネルギー・再生可能エネルギー技術への対応により、技術面の競争優位性を獲得し、売上が増加する

・省エネルギー改修提案、ZEB化技術・IoT技術を生かした提案により、再生可能エネルギー及びZEB案件の営業を強化

・再生可能エネルギーの有効活用やZEB化に関する技術開発を推進

 

エネルギーマネジメント関連技術の導入強化

エネルギーマネジメント技術への対応が進むことで、競争力が向上し受注機会が増加する

・遠隔監視・制御システム開発等により、建物及び建物群のエネルギーマネジメントのためのソリューションサービスを展開

製品/サ|ビス

 

再生可能エネルギーの促進に係る政策強化

再生可能エネルギーに関する政策の導入により、再生可能エネルギー施設の建設投資が拡大し、受注機会が増加する

・再生可能エネルギーを有効活用するための技術開発を推進

 

 

顧客行動の変化

省エネルギーと健康性・快適性・知的生産性の両立を可能とする当社の技術力により、受注機会が増加する

・自社のZEB化で検証したZEBとウェルネスを実現する次世代オフィスの提案

 

(夏季)平均気温の上昇

冷房能力増強工事の需要が増大し、受注機会が増加する

・冷房能力増強工事の提案強化

※移行リスクにおけるカーボンプライシングと物理リスクは利益への影響度を、それ以外のリスク及び機会は売上への影響度を評価しました。

・利益に関する影響度評価基準・・・(小:~1億円以下、中:~10億円以下、大:10億円超)

・売上に関する影響度評価基準・・・(小:~20億円以下、中:~200億円以下、大:200億円超)

(イ)指標と目標

当社は、マテリアリティのひとつとして「カーボンニュートラルへの貢献」を特定しています。そのマテリアリティに基づき、気候関連リスクと機会を適切に評価するために、中長期の定量的な目標を策定したうえで、活動を推進しています。

温室効果ガス排出量については、Scope1+2をSBTiより認定された2029年度(2030年3月期)までに2019年度比で49.1%削減することを目標としています。これまでに自社社屋のZEBへの建替え、実質再生可能エネルギー由来の電力への切り替え、及びハイブリッド車等エコカーの導入促進等の取り組みを行ってきました。今後も、太陽光発電の増設、オフィス電力の再生可能エネルギー化、プラグインハイブリッド車、バッテリー式電気自動車、水素自動車などへの切り替え、大阪本社のガス空調の脱炭素化を進めていきます。Scope3については、SBTiより認定された2029年度(2030年3月期)までにCATEGORY11を2019年度比で25.0%削減することを目標としています。建物運用段階のCO2削減に貢献するよう、設計提案の採用によるCATEGORY11の削減を推進しています。今後も、脱炭素化に向けた研究・開発や取引先等との積極的な対話を通じたバリューチェーン全体での温室効果ガス排出量削減を図っていきます。

 

マテリアリティ

KPI

目標

2023年度実績(参考)

2024年度実績

カーボンニュートラルへの貢献

Scope1+2の温室効果ガス排出量の削減(連結)

長期目標:2029年度

2019年度比49.1%削減

(2019年度4,002t-CO2)

2019年度比24.1%削減

(2023年度3,038t-CO2)

 

2019年度比14.6%削減

(2024年度3,416t-CO2)

 

Scope3の温室効果ガス排出量の削減(単体、CATEGORY11)

長期目標:2029年度

2019年度比25.0%削減

(2019年度1,977,386t-CO2)

2019年度比3.7%増加

(2023年度2,050,614t-CO2)

 

2019年度比19.6%削減

(2024年度1,590,778t-CO2)

 

 

②人的資本への対応

(ア)戦略

当社では、価値創造の源泉である人材を最も重要な経営資本として考えています。社員が意欲的に働ける組織風土を実現することを目指して「企業理念」と「共有する価値観」を明文化し、人材マネジメントの方針を策定しています。

ありたい企業の姿である「企業理念」を実現するために、会社と社員が大事にしたい「共有する価値観」から構成されるこの人材マネジメント方針に沿って、長期的な企業価値拡大に繋げてまいります。

 

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(イ)指標と目標

人的資本に関する取り組みのために、企業理念に基づき策定された中期経営計画とマテリアリティに連動する施策とKPIを設定しています。具体的には、働きがいと働きやすさを両立する組織風土の形成と、個人の力を引き出すための人材育成の両輪で進めていく考えです。前者では働き方改革を推進するとともに1on1ミーティング等のコミュニケーション施策を継続的に実施し、従業員が意欲的に仕事に取り組むことができる組織風土を実現します。後者では、採用数を増やし、適切な経験を積むための研修の質向上とローテーションを実施し、従業員がより活躍できる仕組みを構築します。加えて、健康経営戦略マップに基づく健康投資の実施やコンプライアンス・リスクセンスに関する教育・研修の定期的な実施など、企業基盤の強化に努めてまいります。障がい者雇用については、雇用支援サービス会社と連携し、雇用施設の開設と新規採用を推進してまいります。

2024年度の取り組みの結果として、健康経営優良法人 ホワイト500を前倒しで取得したものの、目標未達の項目もあり、2025年度はホワイト500を継続取得するとともに2026年度の目標達成に向けて取り組んでまいります。

なお、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組が行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

 

区分

KPI

2023年度実績

(参考)

2024年度実績

目標

備考

育成

従業員1人当たりの研修時間

58.97時間

49.06時間

モニタリング項目

エンゲージメント

従業員エンゲージメントスコア※1

61.0

63.0

65.1

2026年度到達目標

離職率

2.6%

2.7

モニタリング項目

ダイバーシティ

男性従業員の育児休業取得率

26.8%

33.3

50

2026年度到達目標

男性従業員1人当たりの育児休業取得日数※2

11.0日

21.0

モニタリング項目

女性従業員1人当たりの育児休業取得日数※2

259.0日

167.0

モニタリング項目

女性管理職比率※3

2.3%

3.4

3.5%

2024年度到達目標

障がい者雇用率※4

2.36%

2.42

2.5%

2024年度到達目標

健康・安全

健康経営優良法人 ホワイト500取得

取得

取得

2026年度到達目標

度数率※5

0.43

0.82

0.25

2024年度到達目標

強度率※6

0.012

0.052

0.010

2024年度到達目標

コンプライアンス

企業倫理誓約書の提出率

100%

100

100%

2024年度到達目標

コンプライアンス教育の受講率

97.1%

94.5

95%

2024年度到達目標

 

※1 従業員エンゲージメントスコアの目標値は、建設・不動産業界に属し、かつ従業員数が1,001~5,000人規模の企業における平均スコアを参考に設定しています。

※2 2024年度より育児休業取得日数の集計方法について見直しを行っており、2023年度の育児休業取得日数は変更後の集計方法に基づき記載しております。

※3 女性管理職比率における目標は、厚生労働省令第8条第1項第1号イ(4)に定める建設業の産業平均値です。(2025年6月末時点)

※4 障がい者雇用率における目標は、2025年度の法定雇用率です。実績は、障害者雇用状況報告書に記載の2024年6月1日現在の数値です。

※5 労働災害の発生頻度を示す指標で、一定の労働時間あたりにどれだけの労働災害が発生したかを表します。具体的には、100万労働時間あたりの災害件数で計算されます。

※6 労働災害によって損失した労働時間の割合を示す指標です。具体的には、1,000労働時間あたりの労働損失日数で計算されます。

 

3【事業等のリスク】

当社は、永続的に価値を提供し続けるために、リスクの顕在化を未然に防止し、また、顕在化したリスクを極小化するべくリスクマネジメント体制を構築しています。経済的損失及び社会的損失が発生した場合の経営への多大なる影響を想定し、報告及び対応のための管理手法、対策本部の設置に関する事項等について「リスクマネジメント規程」に定め、リスクマネジメント委員会を設置しています。

 

リスクマネジメント体制図(2025年6月27日現在)

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しかしながら、当該体制の構築を強化し、規程の遵守を徹底した場合であっても、事業に影響を与えるリスクの顕在化を完全に払拭することはできないと考えています。これらのリスクについてはそれぞれ個別に対応策を講じているものの、著しい外部環境の変化が生じた場合には、当該リスクが顕在化する可能性があります。

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。

 

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)市況変動リスク

国内外の経済環境の悪化による設備投資の減少等の市況の悪化や技術革新等の外部環境の変化によって、建設需要が著しく減少することにより、当社の受注環境が悪化し、継続的な事業環境に悪影響を被るリスクがあります。

当社規程に基づき、外部環境の変化のモニタリングや事業多角化によるリスクの低減に努めておりますが、当該リスクが顕在化した場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。

 

(2)施工リスク

①施工現場での安全環境の不整備や従業員教育等の欠如による労働災害の発生、施工物件の品質劣化及び施工中の重大な品質事故により被るリスクがあります。

当社規程に基づき、施工担当者は工事の安全衛生リスク及び品質環境リスクを把握し、それらを施工管理目標として設定することで堅実な施工に努めておりますが、当該リスクが顕在化した場合には、多額の損害賠償金の発生、工程の手戻りによる損益の悪化、契約不適合による対応費用の発生、社会的信用の失墜など、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。

 

②経済環境等の悪化による資機材・労務費の高騰並びにその影響による資機材の納期の長期化や納期遅延による施工の長期化リスクがあります。

当社規程に基づき、施工担当者はそれらのリスクを把握した上で施工計画の策定及び原価計算を行い、堅実な施工に努めておりますが、当該リスクが顕在化した場合には、工事原価の高騰及び契約不適合による対応費用の発生により、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。

 

③建設業界の技能労働者の高齢化、日本における少子高齢化の進行を一因とした若年層の入職者数の減少による施工体制の確保が困難になるリスクがあります。

当社規程に基づき、施工担当者はこれらのリスクを把握した上で堅実な施工体制の構築を行っています。また当社グループとして協力会社への人材採用活動の協力等を通じて当該リスクの減少に努めておりますが、当該リスクが顕在化した場合、施工体制の構築不備による工期の遅延により、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。

 

(3)人材リスク

関連会社を含む技術者採用計画の未達、人材流出及び退職による人材喪失、それらによって生じる在籍社員への負荷の増大並びに士気の低下により事業活動への支障ひいては事業継続性に影響を及ぼすリスクがあります。

当社規程に基づき、技術者人材の採用・育成及び定年年齢の引き上げやITツールの利用促進、業務の一部アウトソーシング体制の構築による生産性向上、積極的な経験者採用、地域限定正社員制度の導入により人材の確保・リスクの低減に努めておりますが、当該リスクが顕在化した場合、施工体制の構築が困難となるなど、当社の事業活動及び経営成績等に大きな影響を与え、事業継続に支障をきたす可能性があります。

 

(4)海外リスク

海外における政治や社会、経済状況の変化に伴う損失や資金が回収できない状況、急激なインフレや通貨の急落、国債の債務不履行、テロ・戦争や内乱に伴う政治の不安定化、予期しない法的規制の変更、政権交代による経済・通商政策の変更、法制や税制の解釈・運用の相違、契約社会など取引商習慣の違い、外国企業に対する国民感情、ナショナルスタッフの会社への帰属意識の違い、言語の違いによるミスコミュニケーション、地域特有の自然災害(大雨・洪水等)、犯罪への巻き込まれ、健康衛生環境等の違いによる健康被害(感染症・メンタルヘルス含む)などによる損失を被るリスクがあります。

当社規程に基づき、海外赴任者に対して赴任前研修や海外リスクについて必要な情報をタイムリーに伝達し注意喚起する体制を整えておりますが、当該リスクが顕在化した場合には、債権の回収不能、市況の悪化による受注工事高、完成工事高の減少、為替変動による為替差損等が生じる可能性があります。

 

(5)法的リスク

①法令等の遵守状況が不十分であることにより損失を被るリスク(他のリスクに係るものを除く)、契約等の行為が予想された法律効果を発生するための検討や訴訟等への対応が不十分であることによる損失を被るリスク、贈収賄・癒着・横領等の腐敗行為への対応が不十分であることにより損失を被るリスク、法規類の改廃や新たな規制が制定されたことによる、新たな義務の発生や費用負担の増加、権利等の制約を受けるリスクがあります。

当社規程に基づき、建設業法、独占禁止法、労働安全衛生法等の各法令の順守を徹底し、法令違反の抵触を防止しておりますが、当該リスクが顕在化した場合には、法的規制による行政処分等を受け、世評の低下や営業停止による受注工事高の減少、罰金、課徴金等による費用等が生じる可能性があります。

 

②2024年4月からの時間外労働の上限規制適用開始を受け、技術社員の労働時間減少に伴い設計・施工体制が構築できない場合、完成工事高、営業利益の減少により損失を被るリスクがあります。

当社規程に基づき、長時間労働の是正のためにプロジェクトを立ち上げ、技術社員の業務削減及び業務効率化による総労働時間の減少を進めておりますが、当該リスクが顕在化した場合には、法的処分を受けることによる世評の著しい悪化、施工能力の縮小により、当社グループの財政状態、経営成績、キャッシュ・フロー及び社員の就労意欲に影響を与える可能性があります。

 

(6)オペレーショナルリスク

技術開発の遅れ、営業活動の不振等により競争力を失い、継続的な事業活動に影響を被るリスク、金利・為替等の様々な市場のリスクファクターの変動により保有する資産・負債(オフバランス資産・負債を含む)の価格が変動し損失を被るリスク(市場リスク)、市場の混乱等により必要とされる数量を妥当な水準で取引できないことにより損失を被るリスク(市場流動性リスク)があります。

当社規程に基づき、中長期的な研究開発計画の策定、全社的な視点での営業活動による営業情報の蓄積に努めておりますが、当該リスクが顕在化した場合には、受注工事高、完成工事高の減少、保有資産の減損等が生じる可能性があります。

 

(7)情報漏洩サイバーリスク

①サイバー攻撃(標的型攻撃メール、マルウェアなど)を受けた場合、及び内部の人間による不正があった場合、個人情報及び取引先の秘密情報の喪失・改ざん・不正使用・外部への漏洩により損失を被るリスクがあります。

当社規程に基づき、個人情報及び取引先の秘密情報の管理に関する規程・マニュアルの整備、現場ごとの秘密保持契約の締結、作業者単位での秘密保持誓約書の提出及び教育を実施し、リスクの低減に努めておりますが、当該リスクが顕在化した場合には、各対応費用、損害賠償の発生、世評の低下による受注工事高の減少等が生じる可能性があります。

 

②サイバー攻撃(標的型攻撃メール、マルウェアなど)を受けた場合、及び内部の人間による不正があった場合、情報システムの破壊・停止・誤作動・不正使用等により損失を被るリスクがあります。

当社規程に基づき、ITに係る規程・マニュアルの整備、権限の設定、バックアップの作成、従業員のセキュリティ教育等を実施し、情報の「可用性」「完全性」「機密性」の確保に努めておりますが、当該リスクが顕在化した場合には、各対応費用、損害賠償の発生、世評の低下による受注工事高の減少等が生じる可能性があります。

 

(8)資産リスク

資産管理の瑕疵等の結果、資産の毀損等により損失を被るリスクがあります。資産とは、有価証券等の金融資産、所有及び賃貸借中の土地・建物、建物に付随する設備、什器・備品等の有形資産、知財等の無形資産を指します。

当社規程に基づき、金融資産のモニタリング、有事の際の資産管理(BCP等)、弁護士との連携による知財等の紛争リスクを低減しておりますが、当該リスクが顕在化した場合には、保有資産の減損、紛争に伴う対応費用等が生じる可能性があります。

 

(9)自然災害リスク

台風、河川の氾濫、地震等の自然災害によって、当社の保有する有形資産の毀損や執務環境等の質の低下、役職員の安全等に損失を被るリスクがあります。

当社規程に基づき、大規模災害による混乱防止、役職員及びその家族の安全確保、顧客支援等を迅速に行う事業継続管理(BCM)を定めておりますが、当該リスクが顕在化した場合には、保有資産の減損、事業中断に伴う受注工事高、完成工事高の減少、各支援等による費用等が生じる可能性があります。

 

(10)評判リスク

事実と異なる風説・風評の流布及び事実に係る当社の対応の不備の結果、当社に対する評判・評価が悪化し、当社の企業価値損失を被るリスクがあります。

当社規程に基づき、企業活動等における情報を適時かつ適切な方法で開示しています。また危機発生時には対策本部を設置し、報道機関等への対応については対策本部長が行うとしていますが、当該リスクが顕在化した場合には、受注工事高や採用人数の減少といった当社の企業活動の根幹に影響を及ぼすような被害が生じる可能性があります。

 

(11)信用リスク

信用供与先の財務状況の悪化、契約不履行等により、資産の価値が減少ないし消失し、損失を被るリスクがあります。

当社規程に基づき、取引の際には信用調査を行い、格付けの低い取引先については慎重に検討した上で取引を行っていますが、当該リスクが顕在化した場合には、工事代金の回収が困難となり、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。

(12)気候関連リスク

低炭素経済への移行に伴う政策・法規制の強化によるコスト増、エネルギー技術の対応に遅れることによる 機会喪失、脱炭素社会に向けた需要の変化への未対応、情報開示不足による当社に対する評価と信頼低下などのリスク、及び気候変動による気象災害の頻発や平均気温の上昇など物理的変化に関するリスクがあります。

当社規程に基づき、サステナビリティ委員会が気候関連リスクについて特定・評価し、その情報をリスクマネジメント委員会と共有していますが、当該リスクが顕在化した場合には、需要変化への対応が遅れることによる受注機会の減少、気象災害の頻発による当社社屋への損害や工事見合わせ等に伴う事業運営コストの増加及び平均気温の上昇による建設現場の従業員の生産性低下等が生じる可能性があります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当社グループに関する財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は、連結財務諸表に基づいて分析した内容であります。また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)経営成績等の状況及び分析・検討内容

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、わが国経済は、緩やかな景気回復がみられ、企業収益においても改善傾向を維持しており、工場、データセンター、医療関連施設などの受注が引き続き好調に推移した結果、受注工事高が増加しました。

また、前期からの繰越工事及び期中の受注工事の増加に伴い完成工事高も増加となりました。

利益につきましては、受注環境好転により採算性が改善した手持ち工事案件が順調に進捗し、完成工事総利益率及び完成工事高の増加を受け、増加となりました。

これを受けまして、受注工事高は、前連結会計年度比28,137百万円増(11.1%)の281,271百万円となりました。

完成工事高は、前連結会計年度比65,301百万円増(33.1%)の262,732百万円となりました。

完成工事総利益は、前連結会計年度比15,131百万円増(57.7%)の41,349百万円となりました。

営業利益は、完成工事総利益の増加により、前連結会計年度比12,159百万円増(111.8%)の23,037百万円となりました。

経常利益は、営業利益の増加により前連結会計年度比11,560百万円増(97.0%)の23,479百万円となりました。

親会社株主に帰属する当期純利益は、特別利益として投資有価証券売却益1,140百万円等を計上し、法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額及び非支配株主に帰属する当期純利益を加減した結果、前連結会計年度比8,356百万円増(92.0%)の17,443百万円となりました。

 

経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、「1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)目標とする経営指標」に記載しておりますとおり、当社グループは、2024年度を初年度とする3カ年の中期経営計画「Stage2030 Phase2《磨くステージ》」において、最終年度の2026年度に、連結業績として完成工事高270,000百万円、営業利益24,000百万円を目標としております。また、財務指標はROE12.0%以上、配当方針は配当性向40.0%以上かつDOE4.8%を下限としております。

なお、2025年度の連結業績予想としては、完成工事高260,000百万円、営業利益23,500百万円、ROE12.0%以上、配当性向40.0%以上としております 。

当社グループは、総合設備工事から『空間価値創造』企業のリーディンググループを目指しております。国内外の基盤を整備・強化し、ダイダングループとして拡大を図るため、連結売上高、連結営業利益を経営目標としております。本業である設計・施工の連結売上高と連結営業利益が、当社グループ拡大状況を示す特に重要な経営目標と考えております。また、資本効率と株主還元の向上を目的とし、ROE、配当性向、DOEもあわせて経営目標としております。

当連結会計年度、中期経営計画の最終年度目標、今期予想との比較は下記のとおりです。

 

指標等

2024年度

(実績)

2025年度

(今期予想)

2026年度

(中期経営計画)

連結売上高

(百万円)

262,732

260,000

270,000

連結営業利益

(百万円)

23,037

23,500

24,000

ROE

(%)

17.4

12.0以上

12.0以上

連結配当性向

(%)

40.1

40.0以上

40.0以上

 

(2)生産、受注及び販売の実績

当社グループが営んでいる事業である設備工事業では、生産実績を定義することが困難であります。

また、請負形態をとっているため、販売実績という定義は実態に即しておりません。

よって、受注及び完成工事の実績については「(1)経営成績等の状況及び分析・検討内容」において記載しております。

また、当社グループが営む事業の大半は提出会社によるものであるため、以下には提出会社の実績について記載しております。

 

受注工事高及び完成工事高の実績

① 受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高

期別

工事種別

前期繰越

工事高

(百万円)

当期受注

工事高

(百万円)

(百万円)

当期完成

工事高

(百万円)

次期繰越

工事高

(百万円)

第95期

自 2023年4月1日

至 2024年3月31日

空調衛生工事

160,469

202,647

363,117

157,700

205,416

電気工事

18,301

38,100

56,402

29,229

27,172

178,771

240,747

419,519

186,930

232,588

(リニューアル工事)

32,493

73,372

105,866

73,231

32,635

(産業施設工事)

56,577

137,389

193,967

78,377

115,590

(海外工事)

11,817

7,526

19,343

11,438

7,905

第96期

自 2024年4月1日

至 2025年3月31日

空調衛生工事

205,416

217,553

422,969

214,149

208,820

電気工事

27,172

34,918

62,091

34,532

27,559

232,588

252,471

485,060

248,681

236,379

(リニューアル工事)

32,635

94,394

127,030

77,716

49,313

(産業施設工事)

115,590

148,894

264,484

130,887

133,597

(海外工事)

7,905

13,221

21,126

7,410

13,716

  (注)1.前期以前に受注した工事で、契約の更改により請負金額に変更があるものについては、当期受注工事高にその増減額を含んでおります。したがって、当期完成工事高にも当該増減額が含まれております。

2.次期繰越工事高は(前期繰越工事高+当期受注工事高-当期完成工事高)に一致します。

 

② 受注工事高の受注方法別比率

 工事の受注方法は、特命と競争に大別されます。

期別

工事種別

特命(%)

競争(%)

計(%)

第95期

自 2023年4月1日

至 2024年3月31日

空調衛生工事

40.3

59.7

100.0

電気工事

36.2

63.8

100.0

第96期

自 2024年4月1日

至 2025年3月31日

空調衛生工事

46.4

53.6

100.0

電気工事

50.5

49.5

100.0

 (注)百分比は請負金額比であります。

 

③ 完成工事高

期別

工事種別

官公庁(百万円)

民間(百万円)

計(百万円)

第95期

自 2023年4月1日

至 2024年3月31日

空調衛生工事

19,099

138,601

157,700

電気工事

4,242

24,987

29,229

23,341

163,589

186,930

第96期

自 2024年4月1日

至 2025年3月31日

空調衛生工事

27,210

186,938

214,149

電気工事

4,489

30,042

34,532

31,700

216,980

248,681

(注)1.完成工事のうち主なものは次のとおりであります。

第95期の完成工事のうち請負金額10億円以上の主なもの

大成建設㈱

文京ガーデン ゲートタワー及び センターテラス

空調衛生工事

Resorts World at Sentosa Private Limited

リゾートワールドセントーサ第2地冷設備機械室(シンガポール)

空調衛生・電気工事

鹿島建設㈱

JASM FAB棟 空調衛生工事

竹中工務店他JV

JPタワー大阪 空調衛生工事

大林組・トヨタT&S建設共同企業体

プライムアースEVエナジー新居第二工場 空調衛生工事

第96期の完成工事のうち請負金額10億円以上の主なもの

CHINA CONSTRUCTION (SP) DEVELOPMENT CO P L

シンガポール総合病院 電気工事

日揮㈱

中外製薬後期開発および初期生産用合成原薬製造棟

空調衛生工事

大林組他JV

未来医療国際拠点(Nakanoshima Qross) 空調衛生工事

大林組他JV

グラングリーン大阪パークタワー 空調衛生工事

デジタル東京2特定目的

会社

NRT12データセンター実装 空調衛生工事

2.完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりで

  あります。

第95期

 清水建設㈱  19,788百万円 10.6%

 ㈱大林組   19,451百万円 10.4%

第96期

 ㈱大林組   33,462百万円 13.5%

 Rapidus㈱   25,125百万円 10.1%

 

④ 次期繰越工事高(2025年3月31日現在)

工事種別

官公庁(百万円)

民間(百万円)

計(百万円)

空調衛生工事

43,104

165,715

208,820

電気工事

4,302

23,257

27,559

47,406

188,972

236,379

(注)次期繰越工事のうち請負金額15億円以上の主なもの

Rapidus㈱

Rapidus IIM-1建設計画

空調衛生・電気工事

2026年3月完成予定

㈱大林組

関西国際空港第1ターミナルビルリノベーション

空調衛生工事

2026年10月完成予定

大成建設㈱

AGCライフサイエンス事業日本新拠点プロジェクト

空調衛生工事

2027年3月完成予定

DSO National Laboratories

国防科学機構生物科学安全研究所MCF棟

空調衛生・電気工事

2027年2月完成予定

SMFLみらいパートナーズ㈱

2025年日本国際博覧会 熱供給業務

空調衛生工事

2026年9月完成予定

 

 

(3)財政状態

(資産)

当連結会計年度末における流動資産は、前連結会計年度末比53,235百万円増(47.5%)の165,326百万円となりました。主な要因は、現金及び預金の増加29,064百万円(128.1%)、及び受取手形・完成工事未収入金等の増加15,845百万円(21.2%)によるものです。固定資産は、前連結会計年度末比1,520百万円増(3.1%)の49,982百万円となりました。主な要因は、無形固定資産に含まれる顧客関連資産の増加2,675百万円によるものです。

この結果、総資産は前連結会計年度末比54,755百万円増(34.1%)の215,309百万円となりました。

(負債)

当連結会計年度末における流動負債は、前連結会計年度末比39,628百万円増(65.1%)の100,523百万円となりました。主な要因は、短期借入金の増加20,138百万円(722.1%)によるものです。固定負債は前連結会計年度末比91百万円減(△1.6%)の5,578百万円となりました。主な要因は、繰延税金負債の減少270百万円

(△6.5%)によるものです。

この結果、負債合計は前連結会計年度末比39,536百万円増(59.4%)の106,102百万円となりました。

(純資産)

当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末比15,219百万円増(16.2%)の109,206百万円となりました。主な要因は、利益剰余金の増加13,143百万円(17.4%)等によるものです。

この結果、自己資本比率は49.7%(前連結会計年度末は58.4%)となりました。

 

(4)キャッシュ・フローの状況並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末比27,886百万円増(123.0%)の50,552百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果、増加した資金は12,402百万円(前連結会計年度は596百万円の資金の増加)となりました。

主な要因は、税金等調整前当期純利益の計上等の資金の増加要因が、その他の流動資産の増加等の資金の減少要因を上回ったことによるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果、減少した資金は832百万円(前連結会計年度は603百万円の資金の減少)となりました。

主な要因は、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果、増加した資金は16,044百万円(前連結会計年度は2,829百万円の資金の減少)となりました。

主な要因は、短期借入れによる収入によるものです。

 

当社グループの資本の財源及び資金の流動性について

運転資金及び通常の設備投資資金につきましては、営業循環取引から生じる受取手形及び電子記録債権の決済、並びに完成工事未収入金の回収による資金を運転資金の基礎とし、必要に応じ金融機関から資金の借入れにより調達することとしております。なお、運転資金の効率的な調達を行うため、貸出コミットメントライン契約を締結しております。

運転資金需要のうち主なものは、工事原価、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。設備工事業の特性上、入金よりも支出が先行する傾向があり、大型工事については立替額が多額となるケースもあることから、借入による一定の資金余剰が必要となっております。

大規模な設備投資の計画が生じた場合につきましては、計画時点の資金の流動性などを鑑み、都度、調達方法を検討いたします。

当連結会計年度末における借入金(短期及び長期)の残高は23,603百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は50,552百万円となっております。

 

(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者はこれらの見積りについて過去の実績等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、第5〔経理の状況〕の連結財務諸表の〔注記事項〕(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)、重要な会計上の見積りは(重要な会計上の見積り)に記載しております。

 

 

 

5【重要な契約等】

特記事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当社は、高度化・多様化するお客さまのニーズに応え、サステナブルな社会の実現に貢献するための研究開発を推進しております。また、継続的な成長を目指し、総合設備工事業の枠にとらわれない事業創出に向けた研究開発にも取り組んでおります。

当連結会計年度における研究開発の主な成果は以下のとおりです。子会社においては、研究開発活動は行われておりません。なお、研究開発費は1,467百万円でした。

なお、当社は単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

(研究開発の内容)

(1)カーボンニュートラル社会の実現に貢献する研究

当社はCSV事業戦略のひとつとして、カーボンニュートラル社会を実現するZEB※1の普及に取り組んでいます。

ZEB技術を磨き、時代と地域特性に合った設備提案ができるよう、これまでに自社の九州支社、四国支店、北海道支店、北陸支店、新潟支店をZEB化し、運用状況の検証と成果の公開を実施してきました。2024年3月に完成した新潟支店では水害等の自然災害に対する強靭性を評価頂き、不動産レジリエンス認証制度※2「ResReal(水害版)認証」において「GOLD」を取得しました。

また、北陸支店において空調立ち上げ時間の最適化を目的とし、クラウド型自動制御システム「リモビス®」にAI※3を搭載しました。これにより、従来よりも省エネルギーで快適なZEBとして運用することができています。

当社はZEB化のみならず働き易さや自然災害への強靭性など時代の要請に応える設計・施工プロセスから運用フェーズに至るまでのノウハウを蓄積しています。今後は、培ったノウハウを提案・設計・施工に活かし、カーボンニュートラル社会の実現に貢献します。

 

※1 ZEB:net Zero Energy Buildingの略。建物で消費するエネルギーを再生可能エネルギーでまかなう建物。

※2 不動産レジリエンス認証:自然災害に対する不動産のレジリエンスを定量化・可視化する認証制度。

※3 AI:Artificial Intelligenceの略。これまで人間にしかできなかった知的行為を機械に代行させるためのアルゴリズム(人工知能)

 

(2)材料視点による設備品質向上に向けた新たな取り組み

空調用冷温水を作り出す冷凍機には、熱交換用の銅コイルが使用されています。銅コイルの製造時に付着するカーボン被膜量が適切でない場合、比較的早く劣化・腐食することをこれまでの防食研究から見出すことができました。この課題に対処するため、冷凍機の製造時にカーボン被膜の量を検査することで、設備器材の品質維持と設備の寿命延長に貢献することが期待されます。

そこで、当社が主導して大学や企業に参加を呼びかけて研究部会を設立し、カーボン被膜の検査要領について実証を踏まえた文書を作成、規格化に取り組んでいます。今後は規格化された検査手順を普及させ、サプライチェーンと連携した業界全体の品質向上に貢献していく方針です。

また、空調用冷媒配管工事における接合作業時の効率化及び品質確保を目指し、局所窒素置換治具の開発を行っています。これまでは窒素ブローにおける作業性、及び配管内の酸化被膜防止のために使用される窒素量に問題があり、その省力化及び窒素使用量削減に伴う品質確保が求められていました。

そこで、この課題に対処するため窒素ブローに代わって局所的に窒素置換を行うことにより、冷媒配管溶接作業の効率化を図れるようになりました。また、局所窒素置換治具を使用し溶接した冷媒配管の品質は、従来の溶接方法と同等の品質を確保できます。今後も材料の品質向上、長寿命化を目指した材料視点での研究開発を進めてまいります。

 

(3)DXによる現場の施工効率化に関する研究

改修工事の計画は、現地の状況を正確に把握することから始まります。当社では改修現場の現地測量や施工の確認に対し、レーザー測量や写真測量を使った現場状況の3次元モデル構築技術の導入を進めています。複雑に入り組んだ熱源機器の配管やダクトを各所から撮影することでCAD図として構築可能です。例えば、短時間しか立ち入れない重要施設の機械室でも迅速にCAD図を作成でき、精密な機器更新計画の作成などにも有効活用が可能です。また、現場状況の3次元モデルを用いて、資機材の搬入過程や施工結果をアニメーション化することも可能で、お客さまとの工事計画の共有にも本モデルの有効性が発揮されています。

 

(4)再生医療分野向け独自技術開発

再生医療は、これまで治療が困難であった病気や怪我に対する新しい医療として注目されています。しかし、治療用細胞の開発や製造には多大なコストがかかるため、再生医療が手の届く医療として普及するにはまだ時間がかかります。再生医療の社会実装を早期に実現するためにCSV事業創出の一環として、設備(ハード)と運用支援(ソフト)を組み合わせた当社独自の開発技術やサービスの展開に取り組んでいます。

当社が得意とするエアバリア技術を採用した「セラボ殿町(川崎市殿町)」は、製造時の安全性と作業効率性及び運用コスト低減を両立した細胞培養加工施設(CPF※4)で、子会社のセラボヘルスケアサービス社が製造所として再生医療等製品製造業許可を取得し、治験薬の製造受託を開始しました。

また、これから治験薬製造を目指すアーリーフェーズの企業を対象とした小規模製造向けレンタルCPF「セラボ川崎」を殿町に整備しました。顧客ニーズが高い、運用支援や教育支援もセラボヘルスケアサービス社が合わせて提供いたします。開発から治験薬製造へのスムーズな移行を設備(ハード)と運用支援(ソフト)の両面から手厚くサポートすることで、再生医療業界の持続的な成長に貢献してまいります。

 

※4 CPF:Cell Processing Facilityの略。再生医療における細胞の調製に係る一連の工程を行うための施設。

 

(5)サステナブル社会実現に貢献する研究

当社はSDGsの達成に貢献する廃棄物削減の取り組みとして、超臨界二酸化炭素※5を洗浄媒体とする半導体産業用ケミカルエアフィルタの再生技術に関する研究開発を行い、その成果を活かしたフィルタ再生事業(リユース事業)に取り組んでいます。

また、超臨界二酸化炭素利用技術は様々な用途で利用できる可能性があり、当社はケミカルフィルタの再生で培った技術を他用途で利用するための検討も進めています。今後も、サステナブルな社会の実現に貢献する研究を推進します。

 

※5 超臨界二酸化炭素:加圧・加熱により、超臨界状態になった二酸化炭素。液体と気体の両方の性質を持つ超臨界二酸化炭素は産業用ケミカルフィルタの洗浄に効果的。

 

(6)設備品質と設備機能の向上に関する研究

当社は建築設備に欠かせない光・空気・水に関する技術をコアとして、イノベーション力とエンジニアリング力を結集し、建物のライフサイクルを通した空間価値を提供しています。時代と共に変わる顧客ニーズに応えて、高品質で機能性の高い建築設備を提供し続けるための技術開発は、永遠の命題となっています。

データセンター、クリーンルームのような特殊生産設備、音楽ホールや劇場のような大空間などに対しては、CFD(Computational Fluid Dynamics)による気流シミュレーションを活用した最適化提案を実施しています。気流分布や温度分布を可視化して、設計要件を満たす設備条件を施工前にコンピュータ上で確認し、その結果に基づいて着実な施工を行っています。建築設備技術の高度化・多様化に伴い、CFDの研究・活用はますます重要になっています。

また、設備の運転管理の省力化、設備運用の最適化によるエネルギー使用量低減に対する顧客ニーズは、以前に増して高まっています。そこで、設備の運転管理の効率化、エネルギー使用状況や設備稼働状況の見える化を可能とするリモビス®の導入提案を積極的に行うとともに、次世代のスマートビル実現に向けてリモビスの機能改良、設備運用におけるAIの活用に関する研究を推進しています。