第2【事業の状況】

 

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営の基本方針

 当社は、「わが社は誠実と創造をもって事にあたり 建設を通じ社会に貢献します」を社是に掲げ、「わが社は挑戦する企業体質のもと 人間と環境を大切にし 感動的価値の創造をめざします」を経営理念に据えております。

 また当社グループにおいては、グループ全体の総合力を結集して社会の発展に貢献していくことを目指しており、当社グループ全体の共通精神として、フクダグループスピリット「100年先も誠実」を掲げております。

 

(2) 経営環境

 今後のわが国経済は、物価上昇の高止まりから、個人消費、設備投資ともに緩やかな上昇が依然として続いておりましたが、大企業における賃上げ幅の平均は30年ぶりの高水準となり、また、中小企業においても、物価上昇に伴うコストの上昇を販売価格へ転嫁する動きが広がりを見せており、持続的な賃上げを基礎とし、物価上昇と賃金上昇の好循環が消費活動及び投資活動を後押しすることで、正常な経済活動に進むものと期待されます。

 建設業界におきましては、公共、民間建設投資ともにほぼ横ばいの水準で推移すると見られ、特に建築補修投資に

ついては今後も増加基調が続くものと見込まれます。しかし一方で、時間外労働の上限規制の猶予が2024年3月で終

了することから、いわゆる「2024年問題」が懸念されており、今後、これに伴う人手不足が急速に深刻化する恐れが

あります。そのため、適正な工期設定や労務管理、DXを利用した労働生産性の向上や省力化など、建設業界全体で労

働環境の改善に取り組んでいく必要があります。

 これに伴い、今後の当社グループを取り巻く事業環境は不透明感が払拭しきれない状況ではございますが、前年からの繰越工事高が堅調に推移していることや、建設業界における建設コストの価格転嫁が適正に行われ始めている状況を鑑み、来期の経営成績においては堅調に推移するものと見込んでおります。

 

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題として、当社は以下のものを掲げております。

 1.安定した受注量の確保と収益力の強化:営業深度を深め、現場での課題解決能力を高めることにより、安定した受注量を継続して確保しながら収益力の強化に取組む。

 2.安全・品質管理の徹底:「安全」「品質」はFUKUDAの信用。全社員が労災・施工不具合防止に責任を持って「誠実」に取組まなければならない。

 3.働きがいの向上と人材の充実・成長:担い手の確保に取組むとともに、社員一人ひとりが働きがいを持って自ら成長していかなければ持続的な成長はできない。

(4) 経営戦略等

 当社グループは、2016年2月に公表した10年ビジョン「長期ビジョン2025(100年の歴史の伝承と次の100年に向けた挑戦)」の最終フェーズとなる中期経営計画2025(2022年~2025年)の3年目となる今年度は、「一人ひとりの『成長』と『誠実さ』が更なる『質』の向上を目指す~持続的成長企業へ~」を経営スローガンに掲げ、重点実行項目として「数値目標の達成」、「労働災害・不具合防止の徹底」と「働き方改革の深化」、そして「人材の充実・育成」の4つの柱を確実に実行してまいります。

 また、建設業界全体の課題である働き方改革については、2024年の時間外労働の上限規制適用に対応すべく、ICTの導入や業務の効率化、生産性の向上を推し進め、労働環境の改善に取り組んでまいります。

 目まぐるしく変化する社会だからこそ、施策を確実に実行し、地域に根差し、地域を超えたバランスの取れた事業活動を通じて、サステナブルな成長を実現し、マルチ・ステークホルダーとの関係性を一層強化してまいります。

 

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(5) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループでは経営上の目標の達成状況を判断する指標として、企業の本業における業績能力を示す「売上高」及び「営業利益」、財政状態の健全性を示す「自己資本比率」、資本効率や収益性を示す「ROE(自己資本利益率)」を採用しており、環境の変化に対応出来る強固な経営基盤を築き、安定的な成長を持続していくことを目標としております。なお、中期経営計画最終年度に当たる2025年連結会計年度における計画値は、売上高1,850億円、営業利益84億円、自己資本比率50.0%、ROE(自己資本利益率)8.0%であります。

 

 

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2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次の通りであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般

(基本的な考え方)

 当社グループは、創業以来「誠実であること」の精神を受け継ぎ、長い歴史において建設を通じ、地域に根差し、地域を超えた企業集団として成長してきました。

 当社グループの筆頭である当社は、「わが社は挑戦する企業体質のもと人間と環境を大切にし、感動的価値の創造を目指します」を経営理念とし、まさにサステナビリティの考え方に沿った経営を目指しています。

 その思いをグループ全体で共有するため、2015年にフクダグループスピリット「100年先も誠実」を掲げています。全役職員が常に「誠実であること」、「地域の人々とのきずな」、「次の世代へつなぐこと」を心に刻み、「いのちと暮らしを守る」という使命を果たすべく、これからもサステナビリティ課題の解決に取組み、持続可能な社会の実現に貢献して参ります。

(基本方針)

お客様への誠実

・誰もが安心・安全に暮らせる建設物とサービスを提供して参ります。

・建設を通じ、顧客の要望に応え、感動的価値の創造を提供し続けることを常に心掛けます。

・事業活動を通じてお預かりした情報資産(お客さまの個人情報や取引情報)を適切かつ安全に管理し、各種脅威から保護することを誠実に努めます。

従業員への誠実

・従業員の安全かつ健康的な職場環境の提供に努めます。

・性別・経歴・国籍・障がい・年齢等に関係なく、多様性の確保に努めます。また、従業員の人権を尊重し、いかなる差別も行いません。

・従業員一人一人の成長を支援し、個性を尊重した人財育成に取組みます。

・公正かつ公平な評価を行います。

協力会社への誠実

・既存の取引関係や企業規模等を超えた連携により、共存共栄の構築に取組みます。

・質実共にサステナブルなモノづくりを目指します。

・公正かつ適正な取引を行います。

株主・投資家への誠実

・株主の利益のため、長期安定的な成長を通じた企業価値の向上を目指します。

・株主・投資家に対し、安定的な還元を目指します。

・株主・投資家に対して、適時かつ適正な情報開示を行います。

環境への誠実

・事業活動を通じ、地球環境保全に努め、地球温暖化の防止と生物多様性の保全に取組み、自然と人間の共存、文明と環境の両立の実現を目指します。

地域社会への誠実

・事業活動や社会貢献活動を通じて、地域社会の活性化に取組みます。

・地域の声に耳を傾け、地域の発展を願い、地域に愛される企業を目指します。

 

① ガバナンス

 当社グループは、サステナビリティ経営の強化機関として、執行役員経営企画部長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置いたしました。

 「サステナビリティ委員会」は、サステナビリティ全般に関連する方針、経営課題、戦略、施策の方向性について立案・審議・決議すると共に、重要なものは取締役会へ報告・答申を行います。取締役会はサステナビリティ委員会の報告・答申を受けながら、同委員会の監督を行います。

 また、「サステナビリティ委員会」が立案・決議した戦略や方向性を基に、各部署や組織、並びにグループ会社は具体的な施策を立て実行し、必要であればワーキンググループの組成も行うことにしております。

 

 

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② 戦略

 当社は、以下のマテリアリティを掲げており、サステナビリティを意識した事業活動を推進していきます。これらの実現に向けて、サステナビリティ委員会は、戦略を立案していく事にしております。

      《当社のマテリアリティ》

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③ リスク管理

 サステナビリティ委員会では環境分野、社会分野におけるサステナビリティに関連するリスク・機会の調査、評価、管理を行っています。同委員会では調査、識別したリスクについてその重要度を評価した上で、方針や戦略、施策の方向性を立案します。それをうけ、各担当部署や担当組織は具体的な施策を立て実行し、進捗状況についてはサステナビリティ委員会に定期的に報告を行います。

 なお、当社においては事業のあらゆるリスクの管理を行う「リスク管理委員会」も設けられており、サステナビリティ委員会は同委員会と情報共有を行う体制にしております。

 

 

(2)気候変動

① ガバナンス

 気候変動に関するガバナンスは、当社グループのサステナビリティ関連のガバナンス体制に含まれております。詳しくは「(1)サステナビリティ全般」をご参照ください。

 

② 戦略

 中長期的なリスクの一つとして「気候変動」を捉え、関連リスク及び機会を踏まえた戦略と組織の柔軟な対応力について検討するため、当社はIEA(国際エネルギー機関)やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)による気候変動シナリオ(1.5℃シナリオ及び4℃シナリオ)を参照し、2050年までの長期的な当社への影響を考察し、国内の土木・建築工事事業を対象としたシナリオ分析を実施しました。

    ※1.5℃シナリオ: IEA-NZE 等

    ※4℃シナリオ : IPCC-AR6(第6次評価報告書)-SSP5-8.5  等

 当社にとっての影響の大きさや発生の可能性の2軸からリスク・機会を抽出し、重要度を評価して重点となる項目を絞り込み、対応策を整理しています。今後も戦略としての柔軟な対応力を高めながら、事業計画等と連動させて脱炭素社会の実現に貢献していきます。

 

③ リスク管理

 気候変動リスクに関するワーキンググループを設置してシナリオ分析を実施しました。気候変動リスクの優先順位付けとして、可能性と影響度の観点から、重要度の高い項目に注力して取り組みます。

 今後は、「カーボンニュートラル委員会」で継続的に確認していきます。

 気候変動リスクの管理プロセスとして、「カーボンニュートラル委員会」を通じて、気候変動リスクに関する分析、対策の立案と推進、進捗管理等を実践していきます。

 「カーボンニュートラル委員会」で分析・検討された内容は「サステナビリティ委員会」に報告され、「サステナビリティ委員会」は「リスク管理委員会」や「コンプライアンス委員会」と情報共有を行いながら、サステナビリティに関するリスク管理を行い、取締役会に報告します。

 

④ 指標と目標

 当社では、気候関連問題が経営に及ぼす影響を評価・管理するため、温室効果ガス(CO2)の総排出量を指標として削減目標を設定しています。

(単位:t-CO2)

 

2023年度実績

2030年度目標

2050年度目標

Scope1

21,771

23年度比

▲30%削減

カーボンニュートラル

Scope2

2,707

 なお、連結子会社については、全ての会社が取り組んでおりませんので、当社グループにおける記載が困難でありますことから、上記は提出会社のみを記載しております。

 目標達成に向けた削減活動については、今後、社内での議論を通して確定・実施していきます。

 

≪気候変動に関する主なリスクと機会 及び 対応策(国内の土木・建築工事事業を対象に検討)≫

■ 移行リスク/機会

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■ 物理的リスク/機会

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(3)人的資本

※本項目の説明においては、会社の成長は社員一人ひとりの個性・能力の発揮に支えられており、社員をかけがえのない財産として考えていることから「人財」として表記しております。

 

① ガバナンス

 人的資本に関するガバナンスは、当社グループのサステナビリティ関連のガバナンス体制に含まれております。詳しくは「(1)サステナビリティ全般」をご参照ください。

 

② 戦略

 当社グループは2022年度を初年度とする「中期経営計画2025」の人財戦略に「人的資本の形成と活用を目指し、多様な人財の確保と社員一人ひとりの成長を促す」を掲げ、各社の各部門が緊密な連携を図りながら人的資本経営に取り組んでおります。

 当社グループは以下の「人材育成方針」、「社内環境整備方針」に基づき4つの重点施策を実行しています。

 

(人材育成方針)

 会社が持続的に成長し続けていくためには社員一人ひとりの成長が重要であり、その成長を促す為には人財の育成が必要不可欠です。当社グループは、自ら成長し、困難な状況でも諦めずに最後までやり遂げる自主性を持ち、「誠実」に先を見据えることができる人財の育成を目指しています。

(社内環境整備方針)

 社員は会社の成長を支える貴重な財産であり、多様な視点の価値観の尊重が会社の成長に寄与すると認識しております。当社グループは、社員の「健康」・「働きがい」・「安全」を追求し、多様な人財の魅力を最大限に引き出して、生き生きと働き続けられる環境の整備に取り組んでいます。

 

1.<担い手確保と育成のための積極投資>

・採用強化と離職防止

 当社では社是・経営理念を体現する社員の安定的確保を図るべく、新卒・キャリア採用の強化に努めています。また、効果的な離職防止策を講じています。

・研修体制の強化

 当社では定期的に階層別、職種別の研修を実施しており、社員それぞれが業務知識の向上を図り、高いパフォーマンスへと繋げられるように取り組んでいます。

・OJT

 当社では業務遂行に必要な知識・技能習得のため、日々の業務を通じたOJTを行っています。職能要件確認ツール等を活用して、評価者が目標設定からプロセスチェック、目標達成までをサポートしながら、きめ細やかな育成を行っています。

・自己啓発支援

 当社では社員の業務関連資格の早期取得を目指し、予備校授業料や通信教育費を手厚く補助しているほか、社内での試験直前対策講座の実施や合格者への奨励金制度を設けて、社員の自己啓発を積極的に後押ししております。

2.<人財の心と体を守る健康経営>

・健康経営の推進

 当社は「社員とその家族の健康は当社の重要な財産」と捉えて「健康経営」に注力しております。2023年には「健康経営優良法人」の認定を取得、今後の認定継続と社員の健康増進に資する更なる施策の充実を推進して参ります。

・働き方改革

 当社は建設業における長時間勤務等の労務課題解決に向けて2021年に「働き方改革取組委員会」を立ち上げ、労働時間の把握や時間外労働の削減に向けた取組を行っています。また、GWやお盆、年末年始の連続休暇の取得奨励等を通じて、休暇取得の増加促進を図っています。

 労働時間を適切に管理し、長時間労働を是正して休暇取得数を増やすことは、社員の健康リスクの排除、ひいてはワークライフバランスの向上に資するものと考えています。

 

3.<ダイバーシティ実現に向けた制度の充実>

 当社は、性別、年齢、国籍、身体状況にとらわれない多様な人財が互いに認め合い、活躍できる職場環境を重視しています。

 中でも「女性活躍推進」への取り組みは優先課題と認識しており、これまでの建設業のイメージを払拭し、女性がその能力を十分に発揮して、安心して長く働ける職場づくりに向けて各種制度の確立と労働環境の整備を進めています。

・基幹職転換制度

 一般職から総合職への転換制度を整備して積極的な登用を開始しており、当社の将来を担う多様な人財の確保を目指しています。

・女性技術者の採用強化

 採用活動において女性リクルーターが当社の魅力をアピールし、女性技術者の人財確保に努めています。

 

4.<働きがいを持てる人事制度の構築>

 社員一人ひとりが日々の業務に働きがいを感じ、意欲的に取り組むことのできる人事制度の構築に取り組んでいます。

・評価制度の運用見直し

 目標設定・期中・期末評価の各段階で評価者の面談によるフィードバックを徹底することで被評価者・評価者の双方が納得感のある評価制度の運用を目指しています。

・昇進昇格要件の見直し

 能力のある若手社員のやる気を引き出す為に、評価を適切に反映させるなど制度の見直しを進めています。

・給与体系、手当の見直し

 給与体系並びに各種手当について抜本的な見直しを進めています

 

③ リスク管理

 当社は、モニタリング及び情報収集を行いながら、人的資本に係るリスクを把握し、これを評価した結果、低減への可能性と影響度の観点から、重要度の高い項目から注力して改善を取組んでいきます。

 人的資本リスクの管理プロセスとして、当社人事部及び総務部、その他関連部署を通じて、人的資本リスクに関する分析、対策の立案と推進、進捗管理等を実践していきます。

 これら部署で分析・検討された内容は「サステナビリティ委員会」に報告され、「サステナビリティ委員会」は「リスク管理委員会」や「コンプライアンス委員会」と情報共有を行いながら、サステナビリティに関するリスク管理を行い、取締役会に報告します。

 

④ 指標及び目標

 人財の育成及び社内環境整備に関する方針に関する主な指標の内容、並びに当該指標を用いた目標及び実績については、以下の通りであります。

 なお、連結子会社については、一部の会社だけが具体的取組みを行っているため、当社グループにおける記載が困難であります。このため、以下の指標に関する目標及び実績は提出会社のみを記載しております。

項  目

2022年実績

2023年実績

2025年目標

管理職に占める

女性の労働者の割合

0.5%

0.5%

0.7%

男性労働者の

育児休業取得率

11.8%

35.3%

80%

人間ドック・健康診断

受診率

100%

100%

100%

ストレスチェック

高ストレス者割合

8.4%

9.9%

5.0%以下

一級土木施工管理技士

2次検定合格率

66.7%

50.0%

70%

一級建築士

設計製図試験合格率

25.0%

63.6%

50%

一級建築施工管理技士

2次検定合格率

33.3%

70.6%

60%

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)  建設投資の動向

 国及び地方公共団体の財政状態の変化により一層、公共建設投資が減少した場合や、国内外の経済情勢の変化に伴い民間建設投資が縮小した場合、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクへの対応策として、本支店長会議にて、建設事業における受注状況や案件量を毎月確認し、中長期的な市場動向も考慮しながら、適宜に必要とする対策に取り組んでおります。

 

(2)  開発事業の展開

 当社グループは、建設投資事業分野の変化に対応する施策の一つとして、十分な検討を踏まえたうえで開発事業を展開しておりますが、開発許認可の遅れや販売不振等の想定外の要因により事業が計画どおりに進展しない場合には、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクへの対応策として、事業リスクや環境変化の兆候を把握することに努め、計画どおりに進展しない場合は、適宜に事業計画の点検と見直しを実施することでリスクの低減を図っております。

 

(3)  信用リスク

 取引先が信用不安に陥った場合には、工事代金の全額回収が困難となることにより、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクへの対応策として、取引先の与信管理のみならず、継続的な情報収集や工事代金入金状況の管理も徹底することで、債権保全に努めております。

 

(4)  建設資材及び労務単価の価格変動

 建設工事のために調達している建設関連資材及び労務単価の急激な価格変動が生じた場合は、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクへの対応策として、工事請負契約の締結にあたって、労務賃金・建設物価の変動に基づく請負代金の変更に関する規定(スライド条項等)を採用するよう、発注者との協議に努めております。

 また、労務状況の確認や資材の市場価格調査を行いつつ、先行的に調達を行ったり代替工法案を提案して対応する場合もあります。

 

(5)  保有資産の価格・収益性の変動

 販売用不動産、事業用不動産及び投資有価証券等の保有資産の時価が著しく下落した場合、又は収益性が著しく低下した場合等には、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクへの対応策として、販売用不動産や事業用不動産については、毎期保有意義を再検証し、保有メリットが低いものと判断した場合は早期売却することでリスク低減を図っております。また投資有価証券については、毎期取締役会にて保有の是非について検証を行っており、保有の合理性があると判断された場合に限り保有することとしており、価格・収益性変動リスクの低減を図っております。

 

(6)  労働災害

 当社グループの売上高の9割以上は建設事業であり、重大な労働災害を起こした場合は、関係諸官庁から行政処分を受けることなどにより、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクへの対応策として、未然に防止するために様々な安全対策の徹底を図っており、定期的な現場安全パトロールや協力業者を含めた安全教育の実施等を行っております。

 

(7)  法的規制等

 当社グループの事業は、企業活動に関して、建設業法等さまざまな法的な規制を受けております。これらの法律の改廃や新設、適用基準の変更等、並びに法令違反により、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクへの対応策として、影響を及ぼす可能性のある法律の改廃や新設、適用基準の変更等については、適宜に対応しなければならない為、関連規程や規則を整備したり、各種会議体やイントラネット掲載等による社内周知、社内教育や研修を実施しております。

 また、法令違反については、コンプライアンス体制の充実を図っており、コンプライアンスマニュアルを作成し、配布やイントラネット掲載等による社内通知、研修による通達等を通じて役職員への周知を行っております。

 

(8)  訴訟等

 係争中の事案や将来の訴訟等において、当社グループの主張や予測と相違する結果となった場合は、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクへの対応策として、予測と相違する結果にならない為にも、顧問弁護士と連携しながら訴訟解決を目指して取り組む体制にしております。

 

(9)  施工等の瑕疵

 設計、施工などの各面で重大な瑕疵があった場合や、人身、施工物などに関わる重大な事故が発生した場合、当社グループの業績や企業評価に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクへの対応策として、当社は、施工難易度等の指標により、重点的に管理する工事を指定し監視しております。また、営業、設計、施工、アフターケアの各段階で顧客満足の向上に向けた生産活動に取組んでいますが、瑕疵が発生した場合は、各本支店に設置しているサービスセンターを中心に、営業、施工の各部門と連携して迅速に対応する体制を整えており、原因の特定、評価及び再発防止の徹底に努めております。

 

(10) 自然災害等

 大規模な自然災害等が発生した場合、従業員や保有資産に対する損害があるほか、施工中の工期遅延や追加費用の発生により、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクへの対応策として、事業活動を継続ないしは速やかに復旧し、必要な体制を構築できるよう事業継続計画(BCP)の整備や災害対策用備蓄品の確保を行っております。また、大規模な災害が生じた際の対応方法として災害行動マニュアルを配布、もしくはイントラネット掲載による社内周知を行っております。

 

(11) 繰延税金資産

 将来の課税所得等の見積りの変動や税率変更等の税制改正によって、繰延税金資産の取崩しが必要となった場合、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクへの対応策として、将来の課税所得については、経営環境の変化等を踏まえ適宜見直しを行っておりますが、繰延税金資産の回収可能性の評価にあたり、基準とした利益計画の実現可能性について慎重に検討を行い、合理的に見積った課税所得についてのみ繰延税金資産を計上することとしております。

 

(12) 人材確保

 少子高齢化及び「建設業」という業種イメージの影響により、建設業に携わる者の減少が顕著に生じており、優秀な人材の確保が困難になる恐れ、並びに人員不足による受注機会の損失が生じることにより、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクへの対応策として、建設技術者及び技能労働者不足の深刻化が進まないように、社員の教育・育成及び技術伝承に力を注ぐとともに、「働き方改革」を推進させることで労働環境の改善を高めることで人材確保に努めております。

 

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、コロナ禍からの脱却に伴う内需の拡大や、インバウンド需要の増加などを受け、一定の景況感の回復は見られたものの、ロシア・ウクライナ戦争の長期化や欧州経済の悪化、さらには米国金利の上昇や中東情勢の混乱など、多くの外的マイナス要因が重なったことから、為替の不安定化やサプライチェーンの脆弱化を招き、わが国における著しい円安や物価の上昇を引き起こしました。結果的に、期待されていた個人消費、設備投資ともに力強さに欠け、脱コロナを原動力とする景気回復は緩やかなものとなりました。

 建設業界におきましては、公共建設投資は防災・減災、国土強靱化を基礎とし、インフラの老朽化に対する維持・更新、及び予防保全型メンテナンスなどが積極的に実施されており、民間建設投資におきましても、政府の省エネキャンペーンによる補助金政策等から、快適な居住環境や省エネルギー対策への関心が高まり、既存建物の改装・改修を中心に堅調に推移しました。しかし、建設コストの高止まりは依然続いており、特に民間建設投資における新規建設物の着工件数は足踏み状態となっていることから、今後の業況は不透明感が払拭しきれない状況となっております。

 このような情勢のもと、当社グループを取り巻く環境は、長期間続いていたコロナ禍からほぼ脱却し、受注環境におきましては、公共、民間建設投資ともに既設建物の維持、改修工事等を中心として堅調に推移し、通期の受注高は連結予想を上回る結果となりました。また、前期の経営成績との比較では、建設資材価格の高騰や労務単価の上昇から、利益面において若干の減少は見られたものの、直近の通期連結業績予想との比較では、工事施工等が大きな遅延や中断も無く順調に図られたこと、さらには建設コスト上昇を見越した様々な合理化策が奏功したことで、各利益とも予想数値を上回る結果となりました。

 

 その結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

a.財政状態

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ23億円余増加の1,367億円余となりました。

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ5億円余増加の563億円余となりました。

当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ18億円余増加の803億円余となりました。

 

b.経営成績

当連結会計年度の経営成績におきまして、受注高は前年同期比1.4%増の1,723億円余、売上高は同5.1%増の1,622億円余となり、利益については、営業利益は前年同期比0.1%減の52億円余、経常利益は同0.5%増の54億円余、親会社株主に帰属する当期純利益は7.3%減の33億円余となりました。

 

 セグメント別の経営成績は次のとおりであります。

(建設事業)

 売上高は前年同期比5.8%増の1,594億円余となり、セグメント利益も前年同期比4.5%増の50億円余となりました。

(不動産事業)

 売上高は前年同期比27.0%減の22億円余となり、セグメント利益も前年同期比39.8%減の3億円余となりました。

(その他)

 売上高は前年同期比0.0%減の6億円余となり、セグメント利益も前年同期比2.2%減の4千万円余となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前年同期と比べて期首残高が増加しており、さらに増減額全体も12億円余増加しているため、前連結会計年度末から4.5%増加の294億円余となりました。

 

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と主たる要因は、次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 未成工事受入金は減少したものの、売上債権の回収による収入が増加したことや、仕入債務が増加したことから、営業活動によるキャッシュ・フローは74億円余の収入超過となりました(前年同期は、50億円余の収入超過)。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 有形固定資産の取得による支出が増加したことから、投資活動によるキャッシュ・フローは18億円余の支出超過となっております(前年同期は、11億円余の支出超過)。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 借入金の返済や、自己株式の取得による支出が増加したことから、財務活動によるキャッシュ・フローは43億円余の支出超過となりました(前年同期は、9億円余の収入超過)。

③生産、受注及び販売の実績

a.受注実績

セグメントの名称

前連結会計年度

(自2022年1月1日

  至2022年12月31日)

(百万円)

当連結会計年度

(自2023年1月1日

  至2023年12月31日)

(百万円)

建設事業

163,312

164,119( 0.5%増)

不動産事業

6,490

7,929(22.2%増)

報告セグメント計

169,802

172,049( 1.3%増)

その他

217

315(45.2%増)

合計

170,020

172,365( 1.4%増)

 (注) セグメント間取引については相殺消去しております。

b.売上実績

セグメントの名称

前連結会計年度

(自2022年1月1日

  至2022年12月31日)

(百万円)

当連結会計年度

(自2023年1月1日

  至2023年12月31日)

(百万円)

建設事業

150,746

159,448( 5.8%増)

不動産事業

2,959

2,141(27.7%減)

報告セグメント計

153,706

161,590( 5.1%増)

その他

652

652( 0.0%増)

合計

154,358

162,243( 5.1%増)

 (注) セグメント間取引については相殺消去しております。

なお、当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の実績」は記載しておりません。

なお、参考のため提出会社単独の状況は次のとおりであります。

 

受注高(契約高)及び施工高の実績

a.受注高、売上高、繰越高及び施工高

期別

種類別

前期繰越高

(百万円)

当期受注高

(百万円)

(百万円)

当期売上高

(百万円)

次期繰越高

当期施工高

(百万円)

手持高

(百万円)

うち施工高

(%)

(百万円)

第96期

(自2022年1月1日

至2022年12月31日)

建設事業

 

 

 

 

 

 

 

 

建築

58,707

73,340

132,047

61,442

70,605

0.3

182

61,311

土木

38,521

26,674

65,195

25,446

39,748

0.5

197

25,260

97,228

100,014

197,243

86,889

110,354

0.3

380

86,571

不動産事業

67

4,769

4,837

1,305

3,532

合計

97,296

104,784

202,080

88,194

113,886

第97期

(自2023年1月1日

至2023年12月31日)

建設事業

 

 

 

 

 

 

 

 

建築

70,605

76,474

147,079

72,307

74,771

0.3

249

72,374

土木

39,748

22,102

61,851

24,038

37,812

0.5

182

24,023

110,354

98,576

208,930

96,346

112,584

0.4

431

96,398

不動産事業

3,532

6,308

9,840

487

9,352

合計

113,886

104,884

218,770

96,834

121,936

 (注)1. 前期以前に受注したもので、契約の変更により契約金額の増減がある場合は、「当期受注高」にその増減額を含んでおります。

2. 「次期繰越高」の「うち施工高」は支出金により建設事業手持高の施工高を推定したものであります。

3. 「当期施工高」は(当期建設事業売上高+次期繰越施工高-前期繰越施工高)に一致しております。

 

b.受注工事高の受注方法別比率

工事の受注方法は、特命と競争に大別されます。

期別

区分

特命(%)

競争(%)

計(%)

第96期

(自 2022年1月1日

至 2022年12月31日)

建築工事

37.9

62.1

100

土木工事

31.4

68.6

100

第97期

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

建築工事

35.0

65.0

100

土木工事

23.0

77.0

100

 (注) 百分比は請負金額比であります。

c.売上高

期別

区分

官公庁(百万円)

民間(百万円)

合計(百万円)

第96期

(自 2022年1月1日

至 2022年12月31日)

建設事業

 

 

 

建築工事

2,717

58,724

61,442

土木工事

13,664

11,782

25,446

16,382

70,507

86,889

不動産事業

1,305

1,305

合計

16,382

71,812

88,194

第97期

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

建設事業

 

 

 

建築工事

2,073

70,234

72,307

土木工事

15,262

8,776

24,038

17,335

79,011

96,346

不動産事業

487

487

合計

17,335

79,498

96,834

 (注)1. 完成工事のうち主なものは、次のとおりであります。

第96期 請負金額10億円以上の主なもの

大和ハウス工業㈱

(仮称)流山おおたかの森B35街区商業プロジェクト新築工事

住友商事㈱

(仮称)元白川小学校跡地再開発計画新築工事

東京都下水道局

森ヶ崎水再生センター(西)水処理施設耐震補強及び合流改善施設建設工事

東京都水道局

多摩北部給水所(仮称)築造工事

第97期 請負金額30億円以上の主なもの

中部地方整備局

平成30年度 東海環状岐阜山県第一トンネル東地区工事

東芝エネルギーシステムズ㈱

那須メガソーラー発電所建設工事

新町街づくり㈱

青森市新町1丁目地区優良建築物等整備事業に伴う建築物新築工事

㈱新潟食品運輸

(仮称)株式会社新潟食品運輸 長岡北センター新築工事

 

2. 完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりであ
ります。

第96期

該当する相手先はありません。

第97期

該当する相手先はありません。

 

 

d.手持高(2023年12月31日現在)

区分

官公庁(百万円)

民間(百万円)

合計(百万円)

建設事業

 

 

 

建築工事

1,851

72,920

74,771

土木工事

14,770

23,042

37,812

16,621

95,962

112,584

不動産事業

9,352

9,352

合計

16,621

105,315

121,936

 手持工事のうち請負金額70億円以上の主なものは、次のとおりであります。

イオンモール㈱

(仮称)イオンモール仙台雨宮新築工事

2025年9月完成予定

㈱相鉄アーバンクリエイツ

(仮称)ゆめが丘大規模集客施設新築工事

2024年5月完成予定

北陸地方整備局

大河津分水路新第二床固改築1期工事

2024年12月完成予定

東京電力ホールディングス㈱

柏崎刈羽原子力発電所 特定重大事故等対処施設建屋新設工事(大湊側)

2028年11月完成予定

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.財政状態

 (資産合計)

 資産の部におきましては、流動資産では、売上債権の回収が順調に進んだことから現金預金が増加し、前連結会計年度末に比べ7億円余増加の998億円余となりました。固定資産では、当社グループ会社において自社保有建物の建替え工事が行われたことで、建物や建設仮勘定等の有形固定資産が増加し、さらに時価評価に伴う投資有価証券の増加などから、前連結会計年度末に比べて16億円余増加の369億円余となりました。以上により、資産合計は、前連結会計年度末に比べて23億円余増加の1,367億円余となりました。

 (負債合計)

 負債の部におきましては、返済による短期借入金の減少や未成工事受入金等が減少したものの、工事進捗により支払手形・工事未払金等が増加したことや、大型工事が完成したことに伴う未払消費税等の増加などから、前連結会計年度末に比べて5億円余増加の563億円余となりました。

 (純資産合計)

 純資産におきましては、前期分の配当金の支払いがあった一方で、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことにより利益剰余金が増加し、前連結会計年度末に比べて18億円余増加の803億円余となりました。

 

b.経営成績

(売上高)

 売上高におきましては、民間建築工事案件等を中心とした受注高が前年同期と比べて増加していたことや、工事進捗が順調に推移していることなどから、前年同期比5.1%増の1,622億円余となりました。

(営業利益)

 建設コストの上昇や、低採算工事の発生などが影響し、売上総利益は前年同期比1.4%減の149億円余となりました。販売費及び一般管理費は前年同期比で若干の減少は見られたものの、売上総利益の減少幅が大きかったことから、営業利益は前年同期比0.1%減の52億円余となりました。

(経常利益)

 受取配当金や受取利息、持分法による投資利益などの営業外収益の増加、並びに支払利息などの営業外費用の減少から、経常利益は前年同期比0.5%増の54億円余となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 減損損失や訴訟損失引当金繰入額などの特別損失の増加から税金等調整前当期純利益が減少し、前年同期と比べて7.3%減の33億円余となりました。

 

 また、当社グループの当連結会計年度の経営成績につきましては、長期間続いていたコロナ禍からほぼ脱却し、受注環境におきましては、公共、民間建設投資ともに既設建物の維持、改修工事等を中心として堅調に推移し、通期の受注高は連結予想を上回る結果となりました。また、直近では建設資材価格の高騰や労務単価の上昇から、利益面において若干の減少は見られたものの、通期の連結業績予想との比較では、工事施工等が大きな遅延や中断も無く順調に図られたこと、さらには建設コスト上昇を見越した様々な合理化策が奏功したことで、各利益とも予想数値を上回る結果となりました。

 

 経営成績に影響を与える大きな要因としては、建設コストの高止まりを受けての事業環境の変化、及び深刻な人手不足などが考えられます。当連結会計年度におきましては、ロシア・ウクライナ戦争を初めとした、多くの外的マイナス要因が、為替の不安定化やサプライチェーンの脆弱化を招き、わが国における著しい円安や物価の上昇を引き起こしました。一方で、物価上昇に伴うコストの上昇を販売価格へ転嫁する動きが広がりを見せており、今後のわが国経済は、持続的な賃上げを基礎とし、物価上昇と賃金上昇の好循環が消費活動及び投資活動を後押しすることで、正常な経済活動に進むものと期待されます。

 また、建設業界の人手不足に関しましては、適正な工期設定や労務管理、DXを利用した労働生産性の向上や省力化など、建設業界全体での「働き方改革」に向けた動きが活発化しております。

 このような環境のもと、当社グループは更なる企業価値追求のため、労働環境の改善や生産性の向上、ICT技術を利用した省力化などに取り組んでおり、今後も経営成績を向上し続けたいと考えております。

 

c.セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(建設事業)

 売上高は、民間建築工事案件等を中心とした受注高が前期と比べて増加したことや、工事進捗が順調に推移したことなどから、前年同期比5.8%増の1,594億円余となり、セグメント利益も売上高の増加が影響して、前年同期4.5%増の50億円余となりました。

 資産は、受取手形・完成工事未収入金等の減少などが影響し、前連結会計年度末に比べ8億円余減少の979億円余となりました。

(不動産事業)

 売上高は、不動産販売案件が大きく減少したことが影響して、前年同期比27.0%減の22億円余となり、セグメント利益も売上高の減少が影響して、前年同期比39.8%減の3億円余となりました。

 資産は、販売用不動産及び不動産事業支出金が増加したことから、前連結会計年度末に比べ17億円余増加の188億円余となりました。

(その他)

 売上高は、前年とそれほど変わらず、前年同期比0.0%減の6億円余となり、セグメント利益については、事業コストの上昇が影響して、前年同期比2.2%減の4千万円余となりました。

 資産は、現金預金の減少及び固定資産の償却が影響して、前連結会計年度末に比べ4千万円余減少の8億円余となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(キャッシュ・フローの状況)

 当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については、「(1)経営成績等の状況の概要②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

(資金需要)

 当社グループの事業活動における資金需要の主なものは、運転資金として、建設事業に係る材料費・労務費・外注費・経費と不動産事業に係る固定資産購入や賃貸事業運営費用、各事業についての一般管理費等があります。また設備資金としては、事業所拡大投資や機械装置の購入等があります。

(財務政策)

 当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用及び金融機関からの借入により資金調達を行っており、効率的な資金運用の観点から、適時に各社単位で資金計画書を作成・更新しながら、最小限の有利子負債になるよう管理しております。

 また、金融機関には充分な借入枠を有しており、当社グループの事業拡大、運営に必要な運転、設備資金の調達は今後も可能であると共に、グループ合計50億円のシンジケート方式によるコミットメントラインを設定しており、流動性の補完にも対応可能となっております。

(株主還元)

 株主還元については、安定かつ継続的に配当を実施することを目標としており、当連結会計年度においては純資産配当率1.2%、配当性向27.5%となっております。

 引き続き、安定的な配当に努めるとともに、業績、財務状況及び経営環境を勘案した株主還元を行っていく所存であります。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

④経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

2023年度の達成・進捗状況は以下のとおりです。

 個別業績予想において、売上高は民間建築工事等において工事進捗が順調に図られるものと予想していたものの、急激な建設資材価格の高騰により、見積総工事原価の増加及び採算面の悪化を招きました。これにより、第3四半期時点における業績見通しでは、売上高は計画値から上方に、利益は計画値から下方に修正いたしました。

 結果的に、個別の業績は計画値を下回る結果となったものの、子会社における業績が想定以上に好転したことから、連結業績はほぼ当初の計画値まで回復することとなりました。

 なお、連結における自己資本比率は、現金預金の増加から資産合計が増加したものの、工事進捗による仕入債務の増加や未成工事受入金の減少などによる負債合計の減少に伴い、前連結会計年度より増加の58.2%(前連結会計年度は57.9%)となり、ROE(自己資本利益率)は自己資本比率の増加に加え、親会社株に帰属する当期純利益が前連結会計年度より減少したことにより、前連結会計年度より0.5%減少の4.3%(前連結会計年度は4.8%)となりました。

 

指標

2023年度 連結経営指標

計画

修正

実績

計画比

修正計画比

売上高

161,000百万円

164,100百万円

162,243百万円

1,243百万円増

(0.8%増)

1,856百万円減

(1.1%減)

営業利益

5,200百万円

4,500百万円

5,205百万円

5百万円増

(0.1%増)

705百万円増

(15.7%増)

親会社株主に帰属する当期純利益

3,400百万円

3,000百万円

3,386百万円

13百万円減

(0.4%減)

386百万円増

(12.9%増)

自己資本比率

58.2%

ROE(自己資本利益率)

4.3%

 

指標

2023年度 個別経営指標

計画

修正

実績

計画比

修正計画比

売上高

94,260百万円

97,900百万円

96,834百万円

2,574百万円増

(2.7%増)

1,065百万円減

(1.1%減)

営業利益

3,122百万円

2,400百万円

2,416百万円

705百万円減

(22.6%減)

16百万円増

(0.7%増)

当期純利益

2,500百万円

2,000百万円

2,068百万円

431百万円減

(17.2%減)

68百万円増

(3.4%増)

(注)2023年度は中期経営計画の経過年であるため、2023年度(計画及び修正)の自己資本比率及びROEについては、公表しておりません。

 

5【経営上の重要な契約等】

 特記事項はありません。

 

 

 

6【研究開発活動】

 当社グループの研究開発活動は、「価値創造」の経営理念のもと、生産性向上・品質向上・自然環境の保全に加え、新たな分野への市場参入を目的とした新工法の実証実験等を中心に取り組んでおります。

 また、現場に密着した研究開発ニーズと独創的なアイディアの発掘を目的として、広く社員から意見を募り研究開発活動に反映させております。

 なお、当連結会計年度は研究開発費として、175百万円を投入しております。

 当連結会計年度の主な研究テーマは次のとおりであります。

 

  ( 建設事業 )
(1) 当社

① RCS構造に対する取り組み

 鉄筋コンクリート柱・鉄骨梁混合構造(RCS構造)は、剛性が高く、高い軸方向支持力を持つRC柱と軽量で曲げ耐力が高く、大スパンが可能な鉄骨梁とのハイブリッド構造であり、近年、大スパンかつ積載荷重の大きな倉庫等の用途でニーズが高まっております。本構造については、試設計やコスト検証などを行い、設計施工での採用に向けて、継続的な取り組みを行っております。

 

② BIMに対する取り組み

 BIMについては、従来からの複雑な形状の建物の取り合いや配筋の納まりの確認、施工ステップの3D化などの施工補助としての活用の他に、モデル現場を設定し、設計段階での活用にも着手いたしました。躯体モデル、意匠モデル、設備モデルをそれぞれ作成し、データを統合することで、干渉箇所や配管ルートの確認、位置変更の可否などを可視化、共有化して作業効率の向上を目指すとともに、BIMの活用のための社内ルールの見直しにも取り組んでおります。また、新たなソフトウェアの導入により、自動配筋や数量拾い、仮設オブジェクトによるより実用性の高い活用も開始いたしました。

 

③ 既存建築物の改修技術の研究

 既存建築物の耐震性向上や、耐久性改善等の長寿命化及びコンバート対応できるリニューアル技術を研究し、ストック価値を高める構・工法の開発を目指しております。

 

④ 建設RXコンソーシアムへの参画

建設RXコンソーシアムは、作業所における更なる高効率化や省人化を目指し、建設業界全体の生産性及び魅力の向上を推進するために、施工段階で必要となる、ロボット技術やIoT関連アプリケーションにおける技術連携を相互に公平な立場で進めることを目的として設立された団体で、現在、総合建設会社、レンタル会社、ロボット製造業者、ITベンダー、専門工事会社等の約240社以上の企業が参画しております。当社も作業所における生産性の効率化を図るべく、2023年にこの団体に参画いたしました。

 

⑤ トンネル施工技術

 トンネル施工の生産性向上に繋げるため、ICTを活用した技術開発を進めております。以前より開発してきたトンネル掘削時の動画を用いて地山の安定性を判定する「掘削動画AI」は、展示会出展を通じて社外へのアピールを継続しております。LPWA技術を用いて掘削作業を見える化し、業務改善を図る「サイクルタイム算出技術」は特許出願を果たしました。実現場での運用を継続し、実効性を向上させてまいります。トンネル資材の受発注管理とともに、在庫数量やロス率等をクラウド上で一元管理する「受発注管理システム」は、実現場での本格運用を開始いたしました。運用結果のフィードバックにより、さらなる業務効率の向上を図ってまいります。また、トンネル現場における電力消費量の見える化と、主要設備の最適運転により電力消費量を削減する「エネルギーマネジメントシステム」を開発し、実現場での本格運用を開始いたしました。カーボンニュートラルにも寄与することから、SDGsの実現に向けた第一歩としても取り組んでまいります。

 

⑥ 橋梁維持更新(吊足場)

 橋梁における維持管理及び補修においての作業床の敷設施工における作業員の安全性の向上、敷設の円滑化による作業効率の向上を目的とした吊足場を開発してまいりました。「フライングステージを用いたつり棚足場」の名称で、仮設工業会のシステム承認を取得いたしました。当期は、公共工事等における新技術活用システムNETISに登録いたしました(登録番号 SK-230007-A)。加えて、水平状態を保持して昇降する、降機構を具備した吊足場システムの特許を取得いたしました。展示会への出展・受注現場での実用を進め、橋梁維持更新工事に活用してまいります。

 

⑦ コンクリート構造物の延命化工法

 社会経済活動の基盤である土木コンクリート構造物は、高度経済成長期以降に集中的に整備されており、今後、建設から50年以上経過して劣化が進む割合が加速度的に増加することが予想されています。そこで、これらの土木コンクリート構造物を計画的に維持管理することを目的にした、劣化構造物の延命化工法の開発に取組んでおります。長岡工業高等専門学校と他2社との共同研究として取り組んでおり、助成を活用した実験計測が進み、一定の効果を確認できました。

 

⑧ デュアルシールド工法の自動測量システム

 当社はデュアルシールド工法で下水道トンネル工事を行っておりますが、施工精度を確保するために、毎日測量を行って精度確認をしていく必要があります。現状では、2人作業で測量を行っております。加えて、昼夜交代で工事を行う場合には、交代のために1現場で4人の測量人員を確保する必要があります。今後も多くの受注が見込まれることから、複数の工事を同時に行える体制を整えることが急務となっております。そこで、1人の技術者でひとつの工事を進められるようにすることを主目的に、この測量を自動で行えるシステムを開発しました。当期は開発2年目で、実稼働現場で試用検証を行い、実用可能であることを確認いたしました。この自動化システムの完成により、省人化の他、より短時間で必要な時期に測量確認ができることによって、シールド掘進機の適切な操作判断が行え、施工精度の向上に資することができます。

 

⑨ 地球温暖化防止技術・環境保全技術

 工事では多種多様な製品を調達し、燃料や電力を使用しております。再生可能エネルギーの活用に資する取り組みや、環境保全技術として工事における換気粉塵対策技術と騒音対策技術の向上への取り組みを継続しております。

 

⑩ i-Construction、CIMへの取組

 i-Constructionへの取り組みは、受注・契約条件としても必須となります。取り組むための機器・ソフトの運用と検証を進め、一般効率的な業務ツールとなるよう全社への展開を進め、より効率的な運用となる改善を進めております。

当期は、VR技術による現場確認、三次元設計データ作成と、マシンコントロールによる土砂掘削・構造物構築を行っております。

 

(2) 福田道路㈱

1.技術開発

① アスファルト舗装の長寿命化についての研究(NEXCO総研との共同研究)

 一昨年より、長寿命に資する路盤からの打換え工法をNEXCO総研と共同で検討し、本年は実路での試験施工を実施いたしました。今後、経過観察を行う予定であり、今後の評価の目安となる施工直後のたわみ量等のデータ取りを行いました。長寿命化に資する修繕工法の一つとして、引続き検討を進めて行く予定です。

 

② 寒冷地に適応したひびわれ抑制舗装の検討

 北海道開発局より「積雪寒冷地に対応した舗装技術」に関する技術募集があり、低温下でも曲げ性状が優れている舗装技術を提案いたしました。本年は、北海道にて試験施工を実施しており、今後5年間追跡調査を行う予定です。また、本技術はひび割れ抵抗性が優れていることから、寒冷地のみならず、一般地域でも舗装の長寿命化が期待できる技術であり、適用箇所の拡大に向けて検討を進めていく予定です。

 

③ CO2削減に向けた取り組み

 アスファルト合材製造時に発生するCO2を吸着する技術開発に取り組みました。本年は、実験用プラントを用いた予備実験を実施しており、各種のデータ取りを行っております。結果を確認の上、今後は実機での検証を行い、CO2削減効果を確認する予定です。

 

④ 「ファインPETシリーズ」の開発

 廃PETボトルを舗装用添加材として活用するファインPETシリーズは、昨年高耐久舗装として「ファインPET-S」をリリースしましたが、適用箇所が重交通箇所と限定されることから、本年は、汎用商品として適度な強度と耐水性に優れた「ファインPET-Eco」をリリースいたしました。環境に優しい工法として、南魚沼市道で採用されており、今後も普及が期待されております。

 

⑤ 「マルチファインアイ(画像損傷診断システム)」のシステム改良

 マルチファインアイは、AIを用いた舗装診断システムとして実績を積んでおりますが、わだち掘れ量における精度向上のため、深度カメラを用いたシステム改良に取り組みました。本年は、予備実験を行っており、今後テスト走行によるデータ取りと結果の評価を行います。また、ひび割れ、IRIも利便性や精度向上を目的に改良を計画しており、総合的なシステム改良に取り組む予定です。

 

⑥ 「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)」の取り組み

 SIPとは、省庁横断的な戦略的イノベーション創造プログラムであり、金沢工業大学を中心とした北陸SIPの一員として活動いたしました。開発目標は、地方自治体のインフラメンテナンスに資する日常点検と定期点検を融合した総合システムの構築であり、本年は複数の自治体を対象に、舗装の維持管理についての実情をヒアリングしております。今後は、ヒアリング結果を踏まえたシステムの試作版を構築する予定で、点検技術の精査・システムの構築と検証を5年計画で進めてまいります。

 

⑦ 開発技術の広報活動

 開発した技術のアピールと、新たな技術開発の促進を行うために、報文発表や技術フェアに参加して成果を広報しております。

 令和5年5月 インフラメンテナンス国民会議出展

 令和5年6月 EE東北出展

 令和5年9月 土木学会 全国大会参加 報文発表2編

 令和5年10月 世界道路会議 プラハ大会出展

 令和5年10月 けんせつフェア北陸出展

 令和5年11月 建設技術展関東出展

 令和5年11月 建設技術展近畿出展

 令和5年11月 ハイウェイテクノ出展

 令和5年12月 建設技術フェアIN中部出展

 

(3) ㈱興和

① ICT施工、BIM/CIMへの取組み

 2016年に国土交通省でi-Constructionが提唱されました。従前からドローン写真測量等、最新技術の習得に取り組み、ICT工種拡大、3Dデータを活用するBIM/CIMに備えてまいりました。2019年には、国土交通省の「建設現場の生産性を向上する革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト(PRISM)」に採択され、3D計測が非常に困難な自然斜面現場でのICT法面工の試行に取り組み、さらに2020年のICT法面工(吹付法枠工)の基準類制定を受け、国土交通省発注法面工事において全国に先駆けてICT施工を実施し、北陸地方整備局主催の現場見学会を開催するなど、技術力をPRしてまいりました。BIM/CIM関連では、国土交通省北陸地方整備局発注業務で3Dモデルを活用した取組みが評価され、地質調査業務では初めてとなる「令和2年度i-Construction大賞優秀賞」を受賞いたしました。2023年はLidar(光を用いたリモートセンシング技術)に着目し、更なる生産性向上・業務効率化を目指し、基準類の改定を提案いたしました。

 

② 集水井点検カメラ

 砂防関係施設のうち集水井工は、地すべり深層の地下水排除を目的とした重要施設ですが、従来の点検ではクレーンによる上蓋の取外しや昇降施設の設置、有毒ガスの排除や酸素の供給が必要であり、コストが過大となっておりました。そのため、経済的かつ安全・正確に立坑内の状況や機能の確認が可能な「立坑(集水井工)内の点検装置(集水井点検カメラ)」を開発し、2件の特許を取得いたしました。この技術により、これまで国土交通省の直轄地すべり防止区域及び新潟県所管の地すべり防止区域を中心に、800基超の集水井で、また県外においても岩手、山形、福島、群馬、宮崎で点検を行ってまいりました。この功績が認められ、2021年に砂防分野では初の快挙となる「第4回インフラメンテナンス大賞特別賞」を受賞しました。また受賞をきっかけに、弊社を中心としたコンサルタント業者4社で「集水井点検カメラ研究会」を立ち上げました。2023年度には、当技術がNETISに登録されたことを受け、今後全国的に認知が広まる事が期待されます。今後も現場からの意見を集約しながら改善・改良を進めるとともに、BIM/CIMの活用を念頭に置いた取組を進めることで、効率的且つ効果的な砂防関係施設点検の維持管理を目指してまいります。

 

③ 下水熱利用への取り組み

 下水熱は外気に比べて季節間の温度変化が少ない特長があり、都市部における未利用エネルギーとして注目されております。下水道管の底部に採熱管を設置して、熱を取り出す下水熱利用システムの開発に取り組んでおります。特に融雪分野では、融雪温度(循環水温度)が低くても融雪能力を発揮できることから、循環水温を昇温するヒートポンプ等を用いない融雪システムを開発し、2015年には新潟市のバスターミナルの歩道に融雪設備の施工を行いました。さらに2018年には国土交通省の「平成30年度下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)」に採択され、車道部に融雪システムを設置し実証研究を行いました。この成果は、国土技術政策総合研究所資料第1158号に導入ガイドライン(案)としてまとめられています。今後も融雪分野のトップランナーとして新潟県内外を問わず、また融雪分野にとどまらず下水熱利用システムの普及に貢献してまいります。

 

④ 長距離配管気水洗浄工法

 上・下水道、工業用水道、温泉送湯管等のパイプラインにおいて、管内面にスケール等が付着し、本来の通水能力が低下した場合、一般には洗浄治具を挿入したり、薬品や研磨剤などを用いたりして管内の洗浄を行いますが、特殊機械の使用や薬品等の大量使用と、廃棄によるコスト増大や洗浄後の薬品等の残留の懸念等の課題がありました。そこで従前より、水と圧縮空気しか使わず1.5km程度までの長距離配管を洗浄可能な本工法を開発し現場実証を続け、2015年にMade in 新潟新技術登録を行いました。本格的なインフラ維持管理の時代に突入し、安価で安全な本工法による洗浄工事の依頼も増えていく中、さらに国内の管更生工事業者等8社で「日本気水洗浄工法研究会」を2021年に立ち上げました。安全・安心な社会インフラを守るため、さらなる普及を目指してまいります。

 

⑤ 遠隔監視制御機器(ネットワークロガー)

 従前より、フィールドでの計測・監視技術で得た省電力の特長を生かした融雪施設の遠隔制御装置を販売しており、さらに下水道流域のマンホールポンプの運転状況や故障、マンホール内水位を管理事務所で監視できる遠隔監視制御装置を開発し、販売を行っております。最近では、光ファイバーや無線通信でのネットワークの構築のノウハウも生かしながら、北陸地整管内の一級河川等の樋門・水門監視にこれら機器の活用が広がっております。これら機器は、2005年からの累計で約1,400台の販売実績があり、今後も融雪や下水道、河川管理関係の他に、農場関係の揚水ポンプや道路排水ポンプ等に販売が見込まれております。

 

⑥ 消雪パイプノズル調整作業時の誘導ロボット

 雪国の冬期道路交通確保に必要な消雪パイプは、降雪シーズンを前に一斉にノズル調整作業を実施してその機能の維持を図っております。調整作業は数名の作業員が隊列を組み、消雪パイプに沿って移動しながら行いますが、車両の流れを止めずに行うため、隊列の前後に交通誘導員を配置し、矢印版や手旗で通行車両への注意喚起を行っております。しかしながら降雪前は繁忙期であることと、昨今の人手不足も相まって、交通誘導員の確保が課題となっております。現在開発中である台車型のロボットは隊列の前後に配置され、先導車は事前に機械学習されたデータをもとに、搭載されたカメラにより消雪ノズルをAIにより検知して、それに沿って自律走行を行います。また、後続車は最後尾の作業員をカメラで検知し追従します。先導・後続車共に矢印版や電光板を搭載し通行車両に注意喚起を促しつつ、衝突回避のためのソフト・ハード的な安全対策も装備しております。この開発は、労働力不足と作業員の安全確保に寄与でき、またAIカメラによる自動ノズル点検・台帳作成等にも発展できる可能性もあり、消雪パイプの維持管理の将来を見据えた有効な技術になり得ると考えております。

 

(4) ㈱レックス

 社会インフラのメンテナンス・老朽化対策や現場生産性向上をはじめとして、当社や建設業界が抱える課題や社会的ニーズを踏まえ、それらに資する新技術や新工法等の開発を進めております。

 

① 「ハイブリッド・塩害補強工法」の開発

 本工法は、塩害を受けた鉄筋コンクリート構造物の補修・補強工法であり、鉄筋腐食抑制効果を有するシラン系含浸材の塗布面に、炭素繊維シート補強材を接着可能とすることで、鉄筋腐食抑制と補強を両立させる技術です。従来技術においては、含浸材施工面への炭素繊維シートの施工は、付着性等の問題から不可能でした。そこで、材料メーカーとの共同研究により、付着性能及び施工性の問題をクリアする専用プライマーを開発し、2018年に新工法として上市致しました。

 本技術は、2019年にMade in新潟 新技術普及制度に登録(2019D102)、2021年3月には、特許(特許第6861190号)に登録されました。加えて、2022年11月には国土交通省のNETISにも登録(HR-220007-A)され、塩害が著しい北陸地域にマッチした新技術として今後の活用が見込まれます。

② 高輝度・LED矢印板「TWIN・VISION」の開発

 夜間道路工事用のLED矢印板の板面に高輝度反射シートを付加することで、従来品と比較し、あらゆる条件下において視認性・安全性の向上を図った新製品を開発致しました。矢印板全体の視認性が向上する他、故障やバッテリー切れ等によるLED消灯時でも視認性を保持することができます。また、高輝度反射シート面が損傷した際などには、容易に交換が可能となっております。

 本製品は、2021年9月にMade in 新潟新技術普及制度に登録(2021D105)され、当社のレンタル事業・販売部門を通じてユーザーに提供され、その高機能な面について好評を頂いております。

 

③ 蓄光コーンバーの開発

 工事現場等の規制材として、カラーコーンと併せて用いられるコーンバーの新製品を開発致しました。

コーンバー端部のリング部材に蓄光材料を混入することで、薄暮時にリング部が発光し、視認性・安全性が向上します。また、パイプ部材にポリカーボーネイトを採用することで、耐久性を確保しながら従来品よりも軽量化が図られ、作業性向上が期待できます。

 本製品は、2024年2月にMade in 新潟新技術普及制度に登録(2023D202)され、当社のレンタル事業・販売部門を通じてユーザーに提供され、類のない製品として採用されております。

 

④ 現場の生産性向上技術の開発

 現場の生産性向上や課題解決のため、DX等を活用した技術開発に取り組み始めております。コンクリート構造物補修工事における断面修復工の出来形(体積)測定の効率化や、区画線作業の自動化施工等の技術開発に向けて検討を行っております。

 

  ( 不動産事業及びその他 )

 研究開発活動は、特段行われておりません。