第2【事業の状況】

 

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営の基本方針

 当社は、「わが社は誠実と創造をもって事にあたり 建設を通じ社会に貢献します」を社是に掲げ、「わが社は挑戦する企業体質のもと 人間と環境を大切にし 感動的価値の創造をめざします」を経営理念に据えております。

 また当社グループにおいては、グループ全体の総合力を結集して社会の発展に貢献していくことを目指しており、当社グループ全体の共通精神として、フクダグループスピリット「100年先も誠実」を掲げております。

 

(2) 経営環境

 我が国における賃上げの機運は、2023年を起点に勢いを増し、2025年以降も高水準で推移していくものと思われます。しかし、中小企業においては元来人件費率が高いことから、賃上げの余力が徐々に縮小しつつあり、企業規模間の賃上げ格差が拡大していく可能性は否定できません。賃金と物価の好循環を安定した軌道に乗せていくためには、原材料費・労務費の上昇に見合った適正な価格転嫁のさらなる進展や、生産性向上によるコスト吸収の実現が必要不可欠となります。一方で世界情勢に目を向けると、米国のトランプ新大統領は輸入国に対し、一律で関税を賦課するいわゆる「米国第一主義」を掲げており、そのような関税政策が各国の貿易戦争にまで発展すれば、米国の物価上昇圧力を生むことはもとより、米国金利の上昇、並びに円安が急速に進み、輸入コスト上昇を受けて日本の物価高が再燃しかねません。そうなれば、サプライチェーンの再構築を余儀なくされ、あらゆるコストが増加することから、実質賃金のプラス転換は再び遠のいていくものと思われます。こうした米国の強硬姿勢は交渉の一環であるとする見方はあるものの、我が国を取り巻く世界情勢は今後も注視していく必要があります。

 建設業界におきましては、公共、民間建設投資ともに、2025年は前年と比較して総じて増加が見込まれ、特にオフィスや生産施設の省エネ対策や高付加価値化など、政府の補助金政策等に係る需要と供給は今後も堅調に推移していくものと思われます。また、2025年の大阪・関西万博を皮切りに、統合型リゾートの建設など、大型プロジェクトに伴う建設投資ニーズが今後も高まる一方で、我が国では超高齢化社会、いわゆる「2025年問題」に突入することから、建設業界における労働力人口の減少がより深刻化していくものと思われます。

 これに伴い、今後の当社グループを取り巻く事業環境は引き続き不透明感が払拭しきれない状況であり、来期の経営成績においては低調に推移するものと見込んでおります。

 

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題として、当社は以下のものを掲げております。

 1.バランスの取れた受注と収益力の回復:

  土木・建築のバランスを意識した受注量の確保、受注時利益のつくり込みによりコロナ前水準までの回復に取組む。

 2.安全・品質管理の徹底:

  「安全」「品質」はFUKUDAの信用。一人ひとりが当事者意識をもって、再発防止に取組まなければならない。

 3.働きがいの向上と人財の成長と充実:

  社員一人ひとりが生き生きと働き続けられる環境の整備、人財投資により継続的な能力開発に取組むことが必要。

(4) 経営戦略等

 当社グループは、2016年2月に公表した10年ビジョン「長期ビジョン2025(100年の歴史の伝承と次の100年に向けた挑戦)」の最終フェーズとなる中期経営計画2025(2022年~2025年)の最終年度となる今年度は、「一人ひとりが『誠実』と『創造力』で『付加価値』を~持続的成長企業へ~」を経営スローガンに掲げ、重点実行項目として「数値目標シナリオの達成」、「労働災害・不具合再発防止の徹底」と「働き方改革の定着」、そして「働きやすい環境づくりと人財育成の強化」の4つの柱を確実に実行してまいります。

 また、計画策定時に予想していた速さを超えて外部環境の変化は進んでおりますが、後述の中期経営計画の中で示している5つの基本方針は、当社が持続的に成長していくために一つも欠かすことのできないものです。

 目まぐるしく変化する社会だからこそ、施策を確実に実行し、地域に根差し、地域を超えてサステナブルな成長を実現し、『100年先も誠実』であり続けるために、積み残した課題に取り組み、本計画を一歩でも前に進めることで次の段階へ繋げてまいります。

 

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(5) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループでは経営上の目標の達成状況を判断する指標として、企業の本業における業績能力を示す「売上高」及び「営業利益」、財政状態の健全性を示す「自己資本比率」、資本効率や収益性を示す「ROE(自己資本利益率)」を採用しており、環境の変化に対応出来る強固な経営基盤を築き、安定的な成長を持続していくことを目標としております。なお、中期経営計画最終年度に当たる2025年連結会計年度における計画値は、売上高1,670億円、営業利益60億円、自己資本比率50.0%、ROE(自己資本利益率)8.0%であります。

 

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2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次の通りであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般

(基本的な考え方)

 当社グループは、創業以来「誠実であること」の精神を受け継ぎ、長い歴史において建設を通じ、地域に根差し、地域を超えた企業集団として成長してきました。

 当社グループの筆頭である当社は、「わが社は挑戦する企業体質のもと人間と環境を大切にし、感動的価値の創造を目指します」を経営理念とし、まさにサステナビリティの考え方に沿った経営を目指しています。

 その思いをグループ全体で共有するため、2015年にフクダグループスピリット「100年先も誠実」を掲げています。全役職員が常に「誠実であること」、「地域の人々とのきずな」、「次の世代へつなぐこと」を心に刻み、「いのちと暮らしを守る」という使命を果たすべく、これからもサステナビリティ課題の解決に取組み、持続可能な社会の実現に貢献して参ります。

(基本方針)

お客様への誠実

・誰もが安心・安全に暮らせる建設物とサービスを提供して参ります。

・建設を通じ、顧客の要望に応え、感動的価値の創造を提供し続けることを常に心掛けます。

・事業活動を通じてお預かりした情報資産(お客さまの個人情報や取引情報)を適切かつ安全に管理し、各種脅威から保護することを誠実に努めます。

従業員への誠実

・従業員の安全かつ健康的な職場環境の提供に努めます。

・性別・経歴・国籍・障がい・年齢等に関係なく、多様性の確保に努めます。また、従業員の人権を尊重し、いかなる差別も行いません。

・従業員一人ひとりの成長を支援し、個性を尊重した人財育成に取組みます。

・公正かつ公平な評価を行います。

協力会社への誠実

・既存の取引関係や企業規模等を超えた連携により、共存共栄の構築に取組みます。

・質実共にサステナブルなモノづくりを目指します。

・公正かつ適正な取引を行います。

株主・投資家への誠実

・株主の利益のため、長期安定的な成長を通じた企業価値の向上を目指します。

・株主・投資家に対し、安定的な還元を目指します。

・株主・投資家に対して、適時かつ適正な情報開示を行います。

環境への誠実

・事業活動を通じ、地球環境保全に努め、地球温暖化の防止と生物多様性の保全に取組み、自然と人間の共存、文明と環境の両立の実現を目指します。

地域社会への誠実

・事業活動や社会貢献活動を通じて、地域社会の活性化に取組みます。

・地域の声に耳を傾け、地域の発展を願い、地域に愛される企業を目指します。

 

① ガバナンス

 当社グループは、サステナビリティ経営の強化機関として、執行役員経営企画部長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置しております。

 「サステナビリティ委員会」は、サステナビリティ全般に関連する方針、経営課題、戦略、施策の方向性について立案・審議・決議すると共に、重要なものは取締役会へ報告・答申を行います。取締役会はサステナビリティ委員会の報告・答申を受けながら、同委員会の監督を行います。

 また、「サステナビリティ委員会」が立案・決議した戦略や方向性を基に、各部署や組織、並びにグループ会社は具体的な施策を立て実行し、必要であればワーキンググループの組成も行うことにしております。

 

 

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② 戦略

 当社は、以下のマテリアリティを掲げており、サステナビリティを意識した事業活動を推進していきます。これらの実現に向けて、サステナビリティ委員会は、戦略を立案していく事にしております。

      《当社のマテリアリティ》

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③ リスク管理

 サステナビリティ委員会では環境分野、社会分野におけるサステナビリティに関連するリスク・機会の調査、評価、管理を行っています。同委員会では調査、識別したリスクについてその重要度を評価した上で、方針や戦略、施策の方向性を立案します。それをうけ、各担当部署や担当組織は具体的な施策を立て実行し、進捗状況についてはサステナビリティ委員会に定期的に報告を行います。

 なお、当社においては事業のあらゆるリスクの管理を行う「リスク管理委員会」も設けられており、サステナビリティ委員会は同委員会と情報共有を行う体制にしております。

 

 

(2)気候変動

① ガバナンス

 気候変動に関するガバナンスは、当社グループのサステナビリティ関連のガバナンス体制に含まれております。詳しくは「(1)サステナビリティ全般」をご参照ください。

 

② 戦略

 中長期的なリスクの一つとして「気候変動」を捉え、関連リスク及び機会を踏まえた戦略と組織の柔軟な対応力について検討するため、当社はIEA(国際エネルギー機関)やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)による気候変動シナリオ(1.5℃シナリオ及び4℃シナリオ)を参照し、2050年までの長期的な当社への影響を考察し、国内の土木・建築工事事業を対象としたシナリオ分析を実施しております。

    ※1.5℃シナリオ: IEA-NZE 等

    ※4℃シナリオ : IPCC-AR6(第6次評価報告書)-SSP5-8.5  等

 当社にとっての影響の大きさや発生の可能性の2軸からリスク・機会を抽出し、重要度を評価して重点となる項目を絞り込み、対応策を整理しています。今後も戦略としての柔軟な対応力を高めながら、事業計画等と連動させて脱炭素社会の実現に貢献していきます。

 

③ リスク管理

 気候変動リスクの管理プロセスとして、全社横断的なメンバーで構成された「カーボンニュートラル委員会」において、気候変動リスクに関する分析、対策の立案と推進、進捗管理等を実施しております。気候変動リスクの優先順位付けとして、可能性と影響度の観点から、重要度の高い項目に注力して取り組みます。

 「カーボンニュートラル委員会」で分析・検討された内容は「サステナビリティ委員会」に報告され、「サステナビリティ委員会」は「リスク管理委員会」や「コンプライアンス委員会」と情報共有を行いながら、サステナビリティに関するリスク管理を行い、取締役会に報告します。

 

④ 指標と目標

 当社では、気候関連問題が経営に及ぼす影響を評価・管理するため、温室効果ガス(CO2)の総排出量を指標として削減目標を設定しています。

(単位:t-CO2)

 

2023年度実績

2024年度実績

2030年度目標

2050年度目標

Scope1

21,771

17,267

23年度比

▲30%削減

カーボンニュートラル

Scope2

2,707

3,797

 なお、連結子会社については、全ての会社が取り組んでおりませんので、当社グループにおける記載が困難であることから、上記は提出会社のみを記載しております。

 目標達成に向けた削減活動については、今後、社内での議論を通して確定・実施していきます。

 

≪気候変動に関する主なリスクと機会 及び 対応策(国内の土木・建築工事事業を対象に検討)≫

■ 移行リスク/機会

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■ 物理的リスク/機会

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(3)人的資本

※本項目の説明においては、会社の成長は社員一人ひとりの個性・能力の発揮に支えられており、社員をかけがえのない財産として考えていることから「人財」として表記しております。

 

① ガバナンス

 人的資本に関するガバナンスは、当社グループのサステナビリティ関連のガバナンス体制に含まれております。詳しくは「(1)サステナビリティ全般」をご参照ください。

 

② 戦略

 当社グループは2022年度を初年度とする「中期経営計画2025」の人財戦略に「人的資本の形成と活用を目指し、多様な人財の確保と社員一人ひとりの成長を促す」を掲げ、各社の各部門が緊密な連携を図りながら人的資本経営に取り組んでおります。

 当社グループは以下の「人材育成方針」、「社内環境整備方針」に基づき4つの重点施策を実行しています。

 

(人材育成方針)

 会社が持続的に成長し続けていくためには社員一人ひとりの成長が重要であり、その成長を促す為には人財の育成が必要不可欠です。当社グループは、自ら成長し、困難な状況でも諦めずに最後までやり遂げる自主性を持ち、「誠実」に先を見据えることができる人財の育成を目指しています。

(社内環境整備方針)

 社員は会社の成長を支える貴重な財産であり、多様な視点の価値観の尊重が会社の成長に寄与すると認識しております。当社グループは、社員の「健康」・「働きがい」・「安全」を追求し、多様な人財の魅力を最大限に引き出して、生き生きと働き続けられる環境の整備に取り組んでいます。

 

1.<担い手確保と育成のための積極投資>

・採用強化と離職防止

 当社では社是・経営理念を体現する社員の安定的確保を図るべく、新卒・キャリア採用の強化に努めています。また、効果的な離職防止策を講じています。

・研修体制の強化

 当社では定期的に階層別、職種別の研修を実施しており、社員それぞれが業務知識の向上を図り、高いパフォーマンスへと繋げられるように取り組んでいます。

・OJT

 当社では業務遂行に必要な知識・技能習得のため、日々の業務を通じたOJTを行っています。職能要件確認ツール等を活用して、評価者が目標設定からプロセスチェック、目標達成までをサポートしながら、きめ細やかな育成を行っています。

・自己啓発支援

 当社では社員の業務関連資格の早期取得を目指し、予備校授業料や通信教育費を手厚く補助しているほか、社内での試験直前対策講座の実施や合格者への奨励金制度を設けて、社員の自己啓発を積極的に後押ししております。

2.<人財の心と体を守る健康経営>

・健康経営の推進

 当社は「社員とその家族の健康は当社の重要な財産」と捉えて「健康経営」に注力しております。2023年には「健康経営優良法人」の認定を取得、今後の認定継続と社員の健康増進に資する更なる施策の充実を推進して参ります。

・働き方改革

 当社は建設業における長時間勤務等の労務課題解決に向けて2021年に「働き方改革取組委員会」を立ち上げ、労働時間の把握や時間外労働の削減に向けた取組を行っています。また、GWやお盆、年末年始の連続休暇の取得奨励等を通じて、休暇取得の増加促進を図っています。

 労働時間を適切に管理し、長時間労働を是正して休暇取得数を増やすことは、社員の健康リスクの排除、ひいてはワークライフバランスの向上に資するものと考えています。

 

3.<ダイバーシティ実現に向けた制度の充実>

 当社は、性別、年齢、国籍、身体状況にとらわれない多様な人財が互いに認め合い、活躍できる職場環境を重視しています。

 中でも「女性活躍推進」への取り組みは優先課題と認識しており、これまでの建設業のイメージを払拭し、女性がその能力を十分に発揮して、安心して長く働ける職場づくりに向けて各種制度の確立と労働環境の整備を進めています。

・基幹職転換制度

 一般職から総合職への転換制度を整備して積極的な登用を開始しており、当社の将来を担う多様な人財の確保を目指しています。

・女性技術者の採用強化

 採用活動において女性リクルーターが当社の魅力をアピールし、女性技術者の人財確保に努めています。

 

4.<働きがいを持てる人事制度の構築>

 社員一人ひとりが日々の業務に働きがいを感じ、意欲的に取り組むことのできる人事制度の構築に取り組んでいます。

・評価制度の運用見直し

 目標設定・期中・期末評価の各段階で評価者の面談によるフィードバックを徹底することで被評価者・評価者の双方が納得感のある評価制度の運用を目指しています。

・昇進昇格要件の見直し

 能力のある若手社員のやる気を引き出す為に、評価を適切に反映させるなど制度の見直しを進めています。

・給与体系、手当の見直し

 給与体系並びに各種手当について抜本的な見直しを進めています。

 

③ リスク管理

 当社は、モニタリング及び情報収集を行いながら、人的資本に係るリスクを把握し、これを評価した結果、低減への可能性と影響度の観点から、重要度の高い項目から注力して改善を取組んでいきます。

 人的資本リスクの管理プロセスとして、当社人事部及び総務部、その他関連部署を通じて、人的資本リスクに関する分析、対策の立案と推進、進捗管理等を実践していきます。

 これら部署で分析・検討された内容は「サステナビリティ委員会」に報告され、「サステナビリティ委員会」は「リスク管理委員会」や「コンプライアンス委員会」と情報共有を行いながら、サステナビリティに関するリスク管理を行い、取締役会に報告します。

 

④ 指標及び目標

 人財の育成及び社内環境整備に関する方針に関する主な指標の内容、並びに当該指標を用いた目標及び実績については、以下の通りであります。

 なお、連結子会社については、一部の会社だけが具体的取組みを行っているため、当社グループにおける記載が困難であります。このため、以下の指標に関する目標及び実績は提出会社のみを記載しております。

項  目

2022年実績

2023年実績

2024年実績

2025年目標

管理職に占める

女性の労働者の割合

0.5%

0.5%

0.6

0.7

男性労働者の

育児休業取得率

11.8%

35.3%

52.2

80

人間ドック・健康診断

受診率

100%

100%

100

100

ストレスチェック

高ストレス者割合

8.4%

9.9%

9.4

5.0%以下

一級土木施工管理技士

2次検定合格率

66.7%

50.0%

50.0

70

一級建築士

設計製図試験合格率

25.0%

63.6%

25.0

50

一級建築施工管理技士

2次検定合格率

33.3%

70.6%

56.5

60

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)  建設投資の動向

 国及び地方公共団体の財政状態の変化により一層、公共建設投資が減少した場合や、国内外の経済情勢の変化に伴い民間建設投資が縮小した場合、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクへの対応策として、本支店長会議にて、建設事業における受注状況や案件量を毎月確認し、中長期的な市場動向も考慮しながら、適宜に必要とする対策に取り組んでおります。

 

(2)  開発事業の展開

 当社グループは、建設投資事業分野の変化に対応する施策の一つとして、十分な検討を踏まえたうえで開発事業を展開しておりますが、開発許認可の遅れや販売不振等の想定外の要因により事業が計画どおりに進展しない場合には、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクへの対応策として、事業リスクや環境変化の兆候を把握することに努め、計画どおりに進展しない場合は、適宜に事業計画の点検と見直しを実施することでリスクの低減を図っております。

 

(3)  信用リスク

 取引先が信用不安に陥った場合には、工事代金の全額回収が困難となることにより、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクへの対応策として、取引先の与信管理のみならず、継続的な情報収集や工事代金入金状況の管理も徹底することで、債権保全に努めております。

 

(4)  建設資材及び労務単価の価格変動

 建設工事のために調達している建設関連資材及び労務単価の急激な価格変動が生じた場合は、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクへの対応策として、工事請負契約の締結にあたって、労務賃金・建設物価の変動に基づく請負代金の変更に関する規定(スライド条項等)を採用するよう、発注者との協議に努めております。

 また、労務状況の確認や資材の市場価格調査を行いつつ、先行的に調達を行ったり代替工法案を提案して対応する場合もあります。

 

(5)  保有資産の価格・収益性の変動

 販売用不動産、事業用不動産及び投資有価証券等の保有資産の時価が著しく下落した場合、又は収益性が著しく低下した場合等には、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクへの対応策として、販売用不動産や事業用不動産については、毎期保有意義を再検証し、保有メリットが低いものと判断した場合は早期売却することでリスク低減を図っております。また投資有価証券については、毎期取締役会にて保有の是非について検証を行っており、保有の合理性があると判断された場合に限り保有することとしており、価格・収益性変動リスクの低減を図っております。

 

(6)  労働災害

 当社グループの売上高の9割以上は建設事業であり、重大な労働災害を起こした場合は、関係諸官庁から行政処分を受けることなどにより、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクへの対応策として、未然に防止するために様々な安全対策の徹底を図っており、定期的な現場安全パトロールや協力業者を含めた安全教育の実施等を行っております。

 

(7)  法的規制等

 当社グループの事業は、企業活動に関して、建設業法等さまざまな法的な規制を受けております。これらの法律の改廃や新設、適用基準の変更等、並びに法令違反により、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクへの対応策として、影響を及ぼす可能性のある法律の改廃や新設、適用基準の変更等については、適宜に対応しなければならない為、関連規程や規則を整備したり、各種会議体やイントラネット掲載等による社内周知、社内教育や研修を実施しております。

 また、法令違反については、コンプライアンス体制の充実を図っており、コンプライアンスマニュアルを作成し、イントラネット掲載等による社内通知、研修による通達等を通じて役職員への周知を行っております。

 

(8)  訴訟等

 係争中の事案や将来の訴訟等において、当社グループの主張や予測と相違する結果となった場合は、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクへの対応策として、予測と相違する結果にならない為にも、顧問弁護士と連携しながら訴訟解決を目指して取り組む体制にしております。

 

(9)  施工等の瑕疵

 設計、施工などの各面で重大な瑕疵があった場合や、人身、施工物などに関わる重大な事故が発生した場合、当社グループの業績や企業評価に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクへの対応策として、当社は、施工難易度等の指標により、重点的に管理する工事を指定し監視しております。また、営業、設計、施工、アフターケアの各段階で顧客満足の向上に向けた生産活動に取組んでいますが、瑕疵が発生した場合は、各本支店に設置しているサービスセンターを中心に、営業、施工の各部門と連携して迅速に対応する体制を整えており、原因の特定、評価及び再発防止の徹底に努めております。

 

(10) 自然災害等

 大規模な自然災害等が発生した場合、従業員や保有資産に対する損害があるほか、施工中の工期遅延や追加費用の発生により、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクへの対応策として、事業活動を継続ないしは速やかに復旧し、必要な体制を構築できるよう事業継続計画(BCP)の整備や災害対策用備蓄品の確保を行っております。また、大規模な災害が生じた際の対応方法として災害行動マニュアルを配布、もしくはイントラネット掲載による社内周知を行っております。

 

(11) 人材確保

 少子高齢化及び「建設業」という業種イメージの影響により、建設業に携わる者の減少が顕著に生じており、優秀な人材の確保が困難になる恐れ、並びに人員不足による受注機会の損失が生じることにより、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクへの対応策として、建設技術者及び技能労働者不足の深刻化が進まないように、社員の教育・育成及び技術伝承に力を注ぐとともに、「働き方改革」を推進させることで労働環境の改善を高めることで人材確保に努めております。

 

(12) 情報セキュリティ

 近年、通信インフラの整備やデジタル技術の発展により、多くの情報を生産・処理・蓄積・伝達することが可能となった一方で、悪意ある外部者によるネットワークからの不正侵入や、コンピュータを不正かつ有害に動作させる意図で作成されたマルウェアへの感染、または社員の情報リテラシーの不足による不注意などにより、内部の重要情報が紛失、または外部に漏洩することで、金銭的損害や社会的信用の失墜などが発生し、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクへの対応策として、当社で利用するコンピュータやスマートフォン、タブレット等の通信機器については、全てセキュリティソフトがインストールされており、内部情報を脅かすマルウェア等の外部からの侵入をリアルタイムで監視し、防いでおります。また、情報セキュリティに関する社内研修や周知などを通して、社員の情報リテラシー向上に努めております。

 

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における我が国経済は、デフレ脱却に向けて着実に前進し始めております。特に、企業の賃上げは引き続き高い水準を維持しており、このような所得環境の改善から、個人消費は緩やかに持ち直しを見せております。また、脱炭素化投資や、労働生産性向上に向けたDX、省力化投資の拡大も追い風となり、今後の景況は内需主導のもと、堅調に推移していくものと思われます。一方で、米国のトランプ新大統領の就任のもと、保護主義的な貿易政策により、関税の引き上げを始めとした強硬な外交姿勢が、世界的なサプライチェーンの混乱を招きかねず、今後の我が国を含めた世界経済の不透明感は払拭し切れないものとなっております。

 建設業界におきましては、就業者数が年々減少していることに加え、業界全体の多くを占める高齢技能者が数年後の引退を控えていることから、人手不足への早急な対応が今後の大きな課題となっております。また、国を挙げた適正な価格転嫁への取り組みが奏功し、市場価格を反映した適正な請負代金の設定が業界全体でなされ始めているものの、建設コストは依然として上昇が続いており、労務・資材調達のための競争は激しさを増しております。

 このような情勢から、当社グループの受注環境におきましては、民間の大型案件の受注が先送りとなり、通期の受注高は連結予想を下回る結果となりました。一方で、経営成績におきましては、手持ち工事の中断や進捗の遅延が発生すること無く順調に進捗出来た点や、採算性の高い工事物件が完成したこと等により、売上高、並びに各利益とも通期業績予想を上回る結果となりました。

 

 その結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

a.財政状態

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ60億円余増加の1,428億円余となりました。

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ10億円余増加の574億円余となりました。

当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ50億円余増加の854億円余となりました。

 

b.経営成績

当連結会計年度の経営成績におきまして、受注高は前年同期比5.2%減の1,634億円余、売上高は同2.7%増の1,665億円余となり、利益については、営業利益は前年同期比47.3%増の76億円余、経常利益は同45.2%増の79億円余、親会社株主に帰属する当期純利益は同56.8%増の53億円余となりました。

 

 セグメント別の経営成績は次のとおりであります。

(建設事業)

 売上高は前年同期比0.6%増の1,604億円余となり、セグメント利益は前年同期比38.4%増の69億円余となりました。

(不動産事業)

 売上高は前年同期比153.9%増の56億円余となり、セグメント利益は前年同期比177.4%増の8億円余となりました。

(その他)

 売上高は前年同期比8.2%減の6億円余となり、セグメント利益は前年同期比28.3%減の3千万円余となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前年同期と比べて期首残高が増加しており、さらに増減額全体も12億円余増加しているため、前連結会計年度末から8.59%増加の319億円余となりました。

 

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と主たる要因は、次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローにおいては、売上債権の増加、並びに支払手形・工事未払金等の仕入債務の減少による支出などがあったものの、未成工事受入金の増加による収入が大きかったことから、58億円余の収入超過となりました(前年同期は、74億円余の収入超過)。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローにおいては、有形固定資産の取得に伴う支出が大きかったことから、19億円余の支出超過となりました(前年同期は、18億円余の支出超過)。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローにおいては、長期借入金の返済や配当金の支払いなどにより、13億円余の支出超過となりました(前年同期は、43億円余の支出超過)。

③生産、受注及び販売の実績

a.受注実績

セグメントの名称

前連結会計年度

(自2023年1月1日

  至2023年12月31日)

(百万円)

当連結会計年度

(自2024年1月1日

  至2024年12月31日)

(百万円)

建設事業

164,119

160,534( 2.2%減)

不動産事業

7,929

2,672(66.3%減)

報告セグメント計

172,049

163,207( 5.1%減)

その他

315

279(11.4%減)

合計

172,365

163,487( 5.2%減)

 (注) セグメント間取引については相殺消去しております。

b.売上実績

セグメントの名称

前連結会計年度

(自2023年1月1日

  至2023年12月31日)

(百万円)

当連結会計年度

(自2024年1月1日

  至2024年12月31日)

(百万円)

建設事業

159,448

160,406( 0.6%増)

不動産事業

2,141

5,583(160.8%増)

報告セグメント計

161,590

165,990( 2.7%増)

その他

652

599( 8.2%減)

合計

162,243

166,589( 2.7%増)

 (注) セグメント間取引については相殺消去しております。

なお、当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の実績」は記載しておりません。

なお、参考のため提出会社単独の状況は次のとおりであります。

 

受注高(契約高)及び施工高の実績

a.受注高、売上高、繰越高及び施工高

期別

種類別

前期繰越高

(百万円)

当期受注高

(百万円)

(百万円)

当期売上高

(百万円)

次期繰越高

当期施工高

(百万円)

手持高

(百万円)

うち施工高

(%)

(百万円)

第97期

(自2023年1月1日

至2023年12月31日)

建設事業

 

 

 

 

 

 

 

 

建築

70,605

76,474

147,079

72,307

74,771

0.3

249

72,374

土木

39,748

22,102

61,851

24,038

37,812

0.5

182

24,023

110,354

98,576

208,930

96,346

112,584

0.4

431

96,398

不動産事業

3,532

6,308

9,840

487

9,352

合計

113,886

104,884

218,770

96,834

121,936

第98期

(自2024年1月1日

至2024年12月31日)

建設事業

 

 

 

 

 

 

 

 

建築

74,771

72,885

147,656

70,197

77,459

0.4

309

70,257

土木

37,812

21,087

58,899

24,223

34,676

1.8

623

24,664

112,584

93,972

206,556

94,420

112,135

0.8

932

94,921

不動産事業

9,352

1,101

10,453

4,001

6,452

合計

121,936

95,073

217,010

98,422

118,588

 (注)1. 前期以前に受注したもので、契約の変更により契約金額の増減がある場合は、「当期受注高」にその増減額を含んでおります。

2. 「次期繰越高」の「うち施工高」は支出金により建設事業手持高の施工高を推定したものであります。

3. 「当期施工高」は(当期建設事業売上高+次期繰越施工高-前期繰越施工高)に一致しております。

 

b.受注工事高の受注方法別比率

工事の受注方法は、特命と競争に大別されます。

期別

区分

特命(%)

競争(%)

計(%)

第97期

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

建築工事

35.0

65.0

100

土木工事

23.0

77.0

100

第98期

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

建築工事

68.6

31.4

100

土木工事

34.9

65.1

100

 (注) 百分比は請負金額比であります。

c.売上高

期別

区分

官公庁(百万円)

民間(百万円)

合計(百万円)

第97期

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

建設事業

 

 

 

建築工事

2,073

70,234

72,307

土木工事

15,262

8,776

24,038

17,335

79,011

96,346

不動産事業

487

487

合計

17,335

79,498

96,834

第98期

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

建設事業

 

 

 

建築工事

1,070

69,126

70,197

土木工事

14,269

9,954

24,223

15,340

79,080

94,420

不動産事業

4,001

4,001

合計

15,340

83,082

98,422

 (注)1. 完成工事のうち主なものは、次のとおりであります。

第97期

中部地方整備局

平成30年度 東海環状岐阜山県第一トンネル東地区工事

東芝エネルギーシステムズ㈱

那須メガソーラー発電所建設工事

新町街づくり㈱

青森市新町1丁目地区優良建築物等整備事業に伴う建築物新築工事

㈱新潟食品運輸

(仮称)株式会社新潟食品運輸 長岡北センター新築工事

第98期

㈱相鉄アーバンクリエイツ

(仮称)ゆめが丘大規模集客施設新築工事

イオンモール㈱

レイクタウンアウトレット 増床活性化 建築・設備工事

船橋市

上長津川1号幹線管渠築造工事

東日本旅客鉄道㈱上信越建設プロジェクトマネジメントオフィス

上信工工29第16号 信越線新潟駅付近高架化笹口工区3

 

2. 完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりであ
ります。

第97期

該当する相手先はありません。

第98期

該当する相手先はありません。

 

 

d.手持高(2024年12月31日現在)

区分

官公庁(百万円)

民間(百万円)

合計(百万円)

建設事業

 

 

 

建築工事

2,631

74,827

77,459

土木工事

13,973

20,702

34,676

16,604

95,530

112,135

不動産事業

6,452

6,452

合計

16,604

101,983

118,588

 手持工事のうち主なものは、次のとおりであります。

大和ハウス工業㈱

(仮称)江東区有明1丁目計画新築工事(商業棟)

2026年3月完成予定

新潟機械㈱

新潟機械株式会社桃山工場新築工事

2025年6月完成予定

北関東防衛局

入間(5)給水施設等整備土木その他工事

2026年6月完成予定

東京都下水道局

空堀川上流雨水幹線取水人孔工事

2027年2月完成予定

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.財政状態

 (資産合計)

 資産の部におきましては、工事代金及び不動産の販売代金が計画通りに入金されたことで現金預金が増加したことや、工事進捗が順調に推移したことで受取手形・完成工事未収入金等が増加したことから、資産合計は、前連結会計年度末に比べて60億円余増加の1,428億円余となりました。

 (負債合計)

 負債の部におきましては、大型工事が完成したことに伴い支払手形・工事未払金等が減少したものの、工事進捗に伴い未成工事受入金等が増加したことから、負債合計は、前連結会計年度末に比べて10億円余増加の574億円余となりました。

 (純資産合計)

 純資産におきましては、前期分の配当金の支払いがあった一方で、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことにより利益剰余金が増加し、純資産合計は、前連結会計年度末に比べて50億円余増加の854億円余となりました。

 

b.経営成績

(売上高)

 不動産の販売事業、並びに前期から繰り越された大型民間建築工事等の進捗が順調に推移していることから、前年同期比2.7%増の1,665億円余となりました。

(営業利益)

 賃上げに伴う人件費の増加や、不動産販売に伴う販売費の増加により、販売費及び一般管理費は前年同期比で増加が見られたものの、手持ち工事が順調に進捗したことや、大型開発物件の引渡しにより不動産事業売上高が増加したことに伴う売上総利益の増加幅が大きかったことから、前年同期比47.3%増の76億円余となりました。

(経常利益)

 受取配当金の増加などにより、前年同期比45.2%増の79億円余となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 増益に伴い法人税、住民税及び事業税は増加したものの、減損損失が減少したことや、訴訟損失引当金戻入額を計上したことに伴う税金等調整前当期純利益の増加幅が大きかったことから、前年同期と比べて56.8%増の53億円余となりました。

 

 また、当社グループの当連結会計年度の受注環境におきましては、民間の大型案件の受注が先送りとなり、通期の受注高は連結予想を下回る結果となりました。一方で、経営成績におきましては、手持ち工事の中断や進捗の遅延が発生すること無く順調に進捗出来た点や、採算性の高い工事物件が完成したこと等により、売上高、並びに各利益とも通期業績予想を上回る結果となりました。

 

 経営成績に影響を与える主な要因としては、世界経済の動向を受けての事業環境の変化、及び深刻な人手不足などが考えられます。当連結会計年度におきましては、市場価格を反映した適正な請負代金の設定が業界全体でなされ始め、利益率等も改善傾向ではあったものの、今後の我が国を取り巻く環境の動向によっては、建設コストの上昇や人手不足がさらに深刻化し、経営成績へのマイナス要素となり得ることも否定できません。

 一方で、建設業界の人手不足に関しましては、適正な工期設定や労務管理、DXを利用した労働生産性の向上や省力化など、建設業界全体での「働き方改革」に向けた動きが活発化しております。

 このような環境のもと、当社グループは更なる企業価値追求のため、労働環境の改善や生産性の向上、ICT技術を利用した省力化などに取り組んでおり、今後も経営成績を向上し続けたいと考えております。

 

c.セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(建設事業)

 売上高は、前期から繰り越された大型民間建築工事等の進捗が順調に推移していることから、前年同期比0.6%増の1,604億円余となり、セグメント利益は、適正な価格転嫁が行われたことなどから、前年同期比38.4%増の69億円余となりました。

 資産は、工事代金が順調に回収されたことにより現金預金が増加したこと、及び売上債権が増加したことから、前連結会計年度末に比べ31億円余増加の1,010億円余となりました。

(不動産事業)

 売上高は、大型開発物件の引渡しにより、前年同期比153.9%増の56億円余となり、セグメント利益も売上高の増加により、前年同期比177.4%増の8億円余となりました。

 資産は、不動産事業支出金が減少したことから、前連結会計年度末に比べ14億円余減少の174億円余となりました。

(その他)

 売上高は、連結子会社の受託運営施設が改装に伴い一時休館したため、前年同期比8.2%減の6億円余となり、セグメント利益も売上高の減少により、前年同期比28.3%減の3千万円余となりました。

 資産は、現金預金の増加により、前連結会計年度末に比べ8千万円余増加の9億円余となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(キャッシュ・フローの状況)

 当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については、「(1)経営成績等の状況の概要②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

(資金需要)

 当社グループの事業活動における資金需要の主なものは、運転資金として、建設事業に係る材料費・労務費・外注費・経費と不動産事業に係る固定資産購入や賃貸事業運営費用、各事業についての一般管理費等があります。また設備資金としては、事業所拡大投資や機械装置の購入等があります。

(財務政策)

 当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用及び金融機関からの借入により資金調達を行っており、効率的な資金運用の観点から、適時に各社単位で資金計画書を作成・更新しながら、最小限の有利子負債になるよう管理しております。

 また、金融機関には充分な借入枠を有しており、当社グループの事業拡大、運営に必要な運転、設備資金の調達は今後も可能であると共に、グループ合計50億円のシンジケート方式によるコミットメントラインを設定しており、流動性の補完にも対応可能となっております。

(株主還元)

 株主還元については、安定かつ継続的に配当を実施することを目標としており、当連結会計年度においては純資産配当率2.0%、配当性向31.2%となっております。

 引き続き、安定的な配当に努めるとともに、業績、財務状況及び経営環境を勘案した株主還元を行っていく所存であります。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

④経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

2024年度の達成・進捗状況は以下のとおりです。

 連結業績予想において、売上高は、ほぼ計画値通りに推移し、計画比1億円余増加(0.1%増)となりました。

 営業利益は、売上総利益率の上昇に伴い、計画比18億円余増加(32.2%増)となりました。

 親会社株主に帰属する当期純利益は、増益に伴い法人税、住民税及び事業税は増加したものの、税金等調整前当期純利益の増加幅が大きかったことから、計画比14億円余増加(36.1%増)となりました。

 個別業績予想において、売上高は、受注高の減少が影響したことから若干の未達となり、計画比2億円余減少(0.2%減)となりました。

 営業利益は、売上総利益率の上昇に伴い、計画比4億円余増加(11.3%増)となりました。

 当期純利益は、受取配当金が想定以上に計上されたことにより利益の増加幅がさらに拡がり、計画比4億円余増加(17.3%増)となりました。

 なお、連結における自己資本比率は、現金預金の増加から資産合計が増加したものの、大幅な増益に伴う利益剰余金の増加に伴い、前連結会計年度より1.1ポイント増加の59.3%(前連結会計年度は58.2%)となり、ROE(自己資本利益率)は、親会社株主に帰属する当期純利益が前連結会計年度より増加したことにより、前連結会計年度より2.2ポイント増加の6.5%(前連結会計年度は4.3%)となりました。

 

指標

2024年度 連結経営指標

計画

実績

計画比

売上高

166,400百万円

166,589百万円

189百万円増( 0.1%増)

営業利益

5,800百万円

7,665百万円

1,865百万円増(32.2%増)

親会社株主に帰属する当期純利益

3,900百万円

5,309百万円

1,409百万円増(36.1%増)

自己資本比率

59.3%

ROE(自己資本利益率)

6.5%

 

指標

2024年度 個別経営指標

計画

実績

計画比

売上高

98,630百万円

98,422百万円

207百万円減( 0.2%減)

営業利益

3,585百万円

3,990百万円

405百万円増(11.3%増)

当期純利益

2,860百万円

3,353百万円

493百万円増(17.3%増)

(注)2024年度は中期経営計画の経過年であるため、2024年度(計画)の自己資本比率及びROEについては、公表しておりません。

 

5【経営上の重要な契約等】

 特記事項はありません。

 

 

 

6【研究開発活動】

 当社グループの研究開発活動は、「価値創造」の経営理念のもと、生産性向上・品質向上・自然環境の保全に加え、新たな分野への市場参入を目的とした新工法の実証実験等を中心に取り組んでおります。

 また、現場に密着した研究開発ニーズと独創的なアイディアの発掘を目的として、広く社員から意見を募り研究開発活動に反映させております。

 なお、当連結会計年度は研究開発費として、176百万円を投入しております。

 当連結会計年度の主な研究テーマは次のとおりであります。

 

  ( 建設事業 )
(1) 当社

① BIMに対する取り組み

 BIMについては、継続して取り組んでいる部分納まりの検討、施工ステップの可視化などの実績から、全国の拠点でBIMの活用が拡大しております。高度化する現場からの依頼を実現するため、作成するモデルの質を向上させるとともに、効率化のための社内ルール・標準化の見直しにも継続して取り組んでおります。また、昨年導入した新ソフトウェアを活用し、現場が必要としている施工BIMモデルを目指し、早期段階からの施工検討を進めることで業務支援の幅を広げております。

 

② 建設RXコンソーシアムへの参画

 建設RXコンソーシアムは、作業所におけるさらなる高効率化や省人化を目指し、建設業界全体の生産性及び魅力向上を推進するために、施工段階で必要となるロボット技術やIoT関連アプリケーションにおける技術連携を、相互に公平な立場で進めることを目的として設立された団体で、様々な分科会にて建設関連の生産性の向上を図るための取り組みが行われております。当社も2023年にこのコンソーシアムに入会し、分科会への参加を計画しております。

 

③ トンネル施工技術の展開

 トンネル施工の生産性向上に繋げるため、ICTを活用した技術開発を進めております。開発技術として、トンネル掘削時の動画を用いて地山の安定性を判定する「掘削動画AI」、LPWA技術を用いて掘削作業を見える化し業務改善を図る「サイクルタイム算出技術」、トンネル資材の受発注管理とともに在庫数量やロス率等をクラウド上で一元管理する「受発注管理システム」などがあります。

 当期は、トンネル現場における電力消費量の見える化と主要設備の最適運転により電力消費量を削減する「エネルギーマネジメントシステム」の実用検証と、「山岳トンネル用出来形見える化技術の開発」に関する方法比較検証を実現場で行い、成果を得ました。

 これらの開発技術は、実現場での運用を継続してフィードバックを行い、さらなる業務効率の向上を図ってまいります。

 

④ 橋梁維持更新(吊足場)の取組

 橋梁の点検管理及び補修工事においての作業床敷設作業の安全性の向上、円滑化による作業効率の向上を目的とした「フライングステージを用いたつり棚足場」を開発してまいりました。仮設工業会のシステム承認を取得し、公共工事等における新技術活用システムNETISに登録されております(SK-230007-A)。水平状態を保持して昇降する機構を具備した吊足場システムの特許も取得し、多様な使い方に対応できるものです。展示会への出展・受注現場での実用を進め、安全・効率的な橋梁維持更新工事となるよう取り組んでまいります。

 

⑤ コンクリート構造物の延命化工法の研究終了

 社会経済活動の基盤である土木コンクリート構造物は、高度経済成長期以降に集中的に整備されており、今後、建設から50年以上経過して劣化が進む割合が加速度的に増加することが予想されています。これらの土木コンクリート構造物を計画的に維持管理することを目的にした、劣化構造物の延命化工法の開発に取組みました。長岡工業高等専門学校と他2社との共同研究で、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の官民による若手研究者発掘支援事業共同研究フェーズからの助成を得た「交換可能な塩分吸着パネル接合によるRC構造物の持続的塩害抑制工法の開発」です。

 当期で終了し、NEDOに一定の効果を確認できたことを報告し、この具体実用先の紹介や検討を進めました。

 

⑥ デュアルシールド工法の自動測量システム「Dual-Shot」の試用

 当社はデュアルシールド工法で下水道トンネル工事を行っておりますが、施工精度を確保するために毎日測量を行って精度確認をしていく必要があります。これまでは、2人で測量を行っておりました。加えて昼夜交代で工事を行う場合には、交代のために1現場で4人の測量人員を確保する必要があります。これからも多くの受注が見込まれることから、複数の工事を同時に行える体制を整えることが急務となっておりました。そこで、1人の技術者で1つの工事を進められるようにすることを主目的に、この測量を自動で行えるシステム「Dual-Shot」を開発いたしました。

 当期は現場工事での試用を行い、操作の習熟と開発技術の検証改善を行いました。開発の目標であった省人化の他、より短時間で必要な時期に実用に叶う精度の測量ができることを確認しました。シールド掘進機の適切な操作判断が行え、施工精度の向上に資するよう実用を行ってまいります。

 

⑦ 建物解体工事での解体物落下振動・騒音低減技術

 当社は建物解体工事を行っておりますが、高層階からの解体破砕物の落下における振動・騒音の低減方策が必要と考えております。当期は、動的粘弾性モデルを用いた、解体破砕物落下における振動の改善効果の数値シミュレーションを実施し、検討している低減方法・防振材による振動レベル抑制効果を確認できました。今後、この数値シミュレーション結果を踏まえた方法の現場検証を行い、実用化を進めてまいります。

 

⑧ i-Construction、CIMへの取組

 i-Constructionへの取組は受注・契約条件として必須です。取組むための機器・ソフトの運用と検証を進め、一般効率的な業務ツールとなるよう全社への展開を進め、より効率的な運用となる改善を進めております。

 当期も三次元設計データの作成と活用、VR技術による現場確認、DX技術の活用、マシンコントロールによる土砂掘削・構造物構築を行ってまいります。

 

(2) 福田道路㈱

1.技術開発

① アスファルト舗装の長寿命化についての研究(NEXCO総研との共同研究)

 過年度より、NEXCO総研と共同で検討している長寿命に資する路盤からの打換え工法は、終日規制内で試験施工を実施し、一定の成果が得られました。次の段階として、日々規制での試験施工を検討するにあたり、本年は当社機械センターの敷地内にて、小型機械での削孔能力の確認や、セメントパイル形成の効率化と仮復旧方法に関する検討を行いました。

 

② カーボンニュートラルに向けた取り組み

 廃白土とは、精油処理の際発生する副産物で、油を含んでいる白土です。廃白土を廃棄物由来の燃料として、重油の代替活用ができないか検討を行いました。本年は、テストバーナーで実証実験を実施しました。今後の課題として、粉体燃料としての有効性・安全性の検討や焼却灰のリサイクルに関する検討を進める予定です。

 

③ 「マルチファインアイ(画像損傷診断システム)」のシステム改良

 マルチファインアイのわだち掘れ量の精度向上と、IRIの計測機能を付加したシステム改良に取り組みました。システムの試作版は完成しており、本年は、国土交通省が公募する舗装点検支援技術に応募して性能の評価を受けており、結果待ちの段階になっております。

 

④ 「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)」の取り組み

 SIPとは、省庁横断的な戦略的イノベーション創造プログラムであり、金沢工業大学を中心とした北陸SIPの一員として活動しました。5年計画で、舗装点検結果に加え、パトロール結果、苦情要望、工事記録などから効率的な補修計画支援システム構築を目指しており、本年は、桜川市と連携して路面性状を計測しており、プログラム構築に向けて課題を抽出しております。

 

⑤ 「ファインテープクリア」の開発

 ファインテープは、アスファルト舗装の継目に貼り付ける止水用テープであり、アスファルト舗装に馴染むように黒色となっております。一方、センタージョイントでは白線が設置されており、ファインテープを施工すると隠れてしまう課題がありました。ファインテープクリアは透明な止水用テープであり、施工後でも白線が識別できることを目的としております。本年は、視認性・滑り抵抗性・接着性の検証を行っており、試作品の作成を目指しております。

 

⑥ 開発技術の広報活動

 開発した技術のアピールと新たな技術開発の促進を行うために、報文発表や技術フェアーに参加して成果を普及しております。

2024年5月 インフラメンテナンス国民会議出展

2024年6月 EE東北出展

2024年11月 建設技術展関東出展

2024年11月 建設技術展近畿出展

2024年11月 ハイウェイテクノ出展

2024年12月 建設技術フェアーIN中部出展

(報文発表)

土木学会 舗装工学講演会 1編

土木学会 年次学術講演会 1編

 

(3) ㈱興和

① ICT施工、BIM/CIMへの取組み

 2016年に国土交通省でi-Constructionが提唱されました。従前からドローン写真測量等、最新技術の習得に取り組み、ICT工種拡大、3Dデータを活用するBIM/CIMに備えてまいりました。2019年には、国土交通省の「建設現場の生産性を向上する革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト(PRISM)」に採択された「小出維持管内防災工事施工現場における労働生産性の向上を図る技術の試行業務」において、3D計測が非常に困難な自然斜面現場でのICT法面工の試行に取り組みました。2020年に制定されたICT法面工(吹付法枠工)の基準に従い、同年、国土交通省発注法面工事において八木山現場でICT施工を実施し、北陸地方整備局主催の現場見学会を開催するなど、技術力をPRしてまいりました。

 BIM/CIM関連では、国土交通省北陸地方整備局発注業務で3Dモデルを活用した取り組みが評価され、地質調査業務では初めてとなる「令和2年度i-Construction大賞優秀賞」を受賞しました。2023年は国土交通省に対し、効率的な法枠の出来形管理手法としてiPhoneを活用した3次元計測手法を提案し、翌年の基準改定を実現するなど、3D計測の効率化を進めてまいりました。

 

② 集水井点検カメラ

 砂防関係施設のうち集水井工は、地すべり深層の地下水排除を目的とした重要施設ですが、従来の点検ではクレーンによる上蓋の取外しや昇降施設の設置、有毒ガスの排除や酸素の供給が必要であり、コストが過大となっておりました。そのため、経済的かつ安全・正確に立坑内の状況や機能の確認が可能な「立坑(集水井工)内の点検装置(集水井点検カメラ)」を開発し、2件の特許を取得いたしました。この技術により、これまで国土交通省の直轄地すべり防止区域及び新潟県所管の地すべり防止区域を中心に、900基超の集水井で、また県外においても岩手、山形、福島、群馬、高知、宮崎で点検を行ってまいりました。この功績が認められ、2021年に砂防分野では初の快挙となる「第4回インフラメンテナンス大賞特別賞」を受賞しました。また受賞をきっかけに、弊社を中心としたコンサルタント業者4社で「集水井点検カメラ研究会」を立ち上げました。2023年度には、当技術がNETISに登録されたことを受け、九州(熊本)でも当技術が採用され実施されております。

 

③ 廃材活用による緑化技術の開発

 農林水産省・国土交通省が下水汚泥や伐採木等の廃材を加工することで、資材として有効活用しようとする動きが活発化してきていることから、2023年に緑化試験棟を完成させ、緑化工における廃材利用技術の開発を進めております。伐採木等の活用については、2024年より伐採竹をチップにした土壌改良資材の緑化促進効果の研究をしております。吹付工法に使用する厚層基材の代替資材としての利用を想定し、竹チップの混合割合を変えながら植物の育成状況の違いの調査を開始しました。下水汚泥は鉱物資源を原料とする化学肥料に代わる肥料として、同年に緑化試験棟で緑化促進効果の調査を開始しました。伐採木は基盤材として、下水汚泥は肥料として有効活用できれば、運搬等にかかるCO2削減に寄与するものと考えられるため、今後も技術開発を通じて、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを推進してまいります。

 

④ 裁断芝保存法

 芝による緑化工には、種子からの育成や張芝がありますが、種子からの育成では種子の流亡リスクや大量の種子が必要であること、張芝は施工に時間がかかることと潅水が必要という弱点がありました。これらに対し、ほぐした芝をまいて芝生に育成する「芝生の直播被覆工法」(有限会社アイ・ピー・エムグリーンステージ)は、少ない資材で施工が可能で潅水不要であるという利点があります。この工法について、斜面に適用できる独自性を持った新工法として確立させるべく、裁断した芝の育成方法と長期保存方法の開発を進めております。長期保存については、袋の遮光性やもみ殻の使用による工夫を行い、18週間でも保存できる手法を確立し、2025年に有限会社アイ・ピー・エムグリーンステージと共同での特許出願を予定しております。裁断した芝の育成においては、雑木チップと竹チップ、及び下水汚泥肥料による育成促進効果も調べております。法面の緑化だけでなく、公園や河川敷の緑化での使用も検討しており、開発を継続していく計画です。

 

⑤ 消雪パイプノズル調整作業時の誘導ロボット

 雪国の冬期道路交通確保に必要な消雪パイプは、降雪シーズン前にノズル調整作業を実施して消雪機能の維持を行っております。ノズル調整作業は数名の作業員が隊列を組み、消雪パイプに沿って移動しながら行います。車両の流れを止めずに行うために、隊列の前後に交通誘導員を配置し、矢印版や手旗で通行車両への注意喚起を行っております。ノズル調整作業は、降雪前は繁忙期であることに加え、昨今の人手不足も相まって、交通誘導員の確保が課題となっております。そこで、誘導員の代わりとなる台車型の誘導ロボットの開発を行っております。誘導ロボットは隊列を先導する先導車と、隊列に付いていく後続車で構成されます。先導車は事前に機械学習されたデータをもとに、搭載されたカメラにより消雪ノズルをAIにより検知して、消雪パイプに沿って自律走行を行います。後続車は、最後尾の作業員をカメラで検知し追従します。先導車・後続車共に矢印版や電光板を搭載し、通行車両に注意喚起を促します。衝突回避のためのソフト・ハード的な安全対策も装備しております。誘導ロボットは、労働力不足と作業員の安全確保を目的として開発を進めておりますが、搭載カメラ画像を利用することで、ノズル劣化度をAI判定することにも活用できる可能性もあり、消雪パイプの維持管理の将来を見据えた有効な技術になり得ると考えております。

 

⑥ ノズル洗浄機の開発

 消雪パイプのノズル洗浄・調整作業に、ノズルに手持ハンマー等で振動を与えて詰まった砂などを排出させる工程があります。ノズルが路面にあることから、中腰やしゃがみ姿勢を取る必要があり、作業員の体への負担が大きいという課題がありました。そこで、立ったままノズル洗浄を行えるノズル洗浄機の開発を進めました。ノズル洗浄機は、ノズルを損傷させず適切な衝撃を与える振動子を電動ハンマーの先端部に取り付けたもので、人力よりも短時間でノズル洗浄できるものです。電動ハンマーには台車を取り付け、移動と施工を効率よく行えるように工夫しております。今後は現場投入に向けて、ノズル洗浄効果と作業時間の短縮効果の調査を計画しております。

 

⑦ AI積雪深制御

 積雪地域に広く普及している消雪パイプは、雪国の生活に無くてはならないインフラで、長年にわたり興和では、開発・施工・維持管理に取り組んでおります。消雪パイプの水源の多くは地下水に頼っており、地域によっては地下水位低下による散水不能、地盤沈下の進行が見られており、持続可能な地下水開発のためには、地下水の節水が必須な状況です。現在、広く普及している消雪パイプの制御方法は、降雪を検知して、降雪時に稼働する降雪検知制御です。雪が降っているときに散水されることから、雪が積もる前から稼働し、道路ユーザーの安心感が高い方法となっております。しかしながら、道路に積もる前に止むような短時間降雪でも散水してしまうことや、設計よりも弱い降雪でも散水してしまうことがあり、節水の余地が大きい制御方法です。これまで、降雪強度や気温を検知し、必要以上に散水しないように間欠運転や少量散水運転を行う制御を開発し、地下水の節水と節電に努めてまいりました。

 降雪検知制御の一方で、道路の積雪を検知して散水制御する積雪検知制御は、降雪検知制御よりも節水・節電効果が高いことが研究されてきましたが、道路上の積雪を安価に確実に検知するには技術的なハードルが降雪検知よりも高く、普及が進んでおりませんでした。そこで、道路画像から積雪をAIで判定して制御するAI積雪深制御の開発に取り組んでおります。道路上に積雪がない状態の画像を正常画像とし、それに対して残雪がある状況を異常な状態として認識するAIを使い、散水が必要な「異常な」状況を判定する制御方法です。2024年は、道路上に人や車両が写っていても、残雪がある状況を判定できるところまで開発が進みました。2025年には試作機を完成させ、試験運転をする計画です。

 

⑧ 節水ノズルの開発

 現行のノズルでは、道路へ均一に散水できないことによる雪の溶かし残しを減じるために、降雪量以上の消雪能力分の散水が必要で、熱量的には無駄な散水を行っている場合があります。特に幅員が狭い道路、交通量が少ない道路でこの傾向が強くなります。そこで、少ない散水量でなるべく均一に散水ができるノズルを開発し、必要な消雪能力分の散水量で済ませることで、地下水の節水を目指すノズルの開発を進めております。2023年度冬期に試作品による消雪効果確認を実施し、節水効果が見込まれたことから2024年7月に特許出願をいたしました。同年度冬期も改良を加えた上で消雪効果確認試験を実施する計画です。

 節水ノズルは、地下水の節水に加えて、ポンプ容量減少による節電効果が見込まれます。また、ノズル孔数が、現行の4孔に対して1~2孔になることから、ノズル洗浄作業の短縮効果も見込まれます。SDGsにマッチした開発であると考えております。

 

(4) ㈱レックス

 社会インフラのメンテナンス・老朽化対策や現場生産性向上など、建設業界が抱える課題や社会のニーズに対応した新技術や新工法等の開発を進めております。

 

① 「ハイブリッド・塩害補強工法」の開発

 本工法は、塩害を受けた鉄筋コンクリート構造物の補修・補強工法です。鉄筋腐食抑制効果を有するシラン系含浸材の塗布と補強用の炭素繊維シートの接着により、鉄筋腐食抑制と補強を同時に実現する技術です。従来工法では、含浸材と炭素繊維シートの付着性等の問題から組み合わせ施工は不可能でした。そこで、材料メーカーとの共同研究により、「付着性能及び施工性」の問題解決を目指した専用プライマーを開発し、2018年に新工法として上市しました。

 本技術は、2019年にMade in新潟 新技術普及制度に登録(2019D102)、2021年3月には、特許(特許第6861190号)に登録されました。加えて、2022年11月には国土交通省のNETISにも登録(HR-220007-A)され、塩害が著しい北陸地方などでの活用が期待されております。

 

② 高輝度・LED矢印板「TWIN・VISION」の開発

 夜間道路工事用のLED矢印板に高輝度反射シートを付加し、従来品と比較し、あらゆる条件下において視認性・安全性の向上を図った新製品を開発しました。矢印板全体の視認性が向上する他、バッテリー切れや故障等によるLED消灯時でも視認性低下を防ぎます。

 本製品は、2021年9月にMade in 新潟新技術普及制度に登録(2021D105)され、当社のレンタル事業・販売部門を通じてユーザーに提供され、その高機能な面について好評を頂いております。

 

③ 蓄光コーンバーの開発

 工事現場等で使用するカラーコーンと併せて用いるコーンバーに、新素材を使用した製品を開発しました。コーンバー端部のリング部材に蓄光材料を混入することで、薄暮時にリング部が発光し、視認性・安全性が向上します。また、パイプ部材にポリカーボネートを採用することで、耐久性を確保しながら従来品よりも軽量化を図り、作業性向上が期待できます。

 本製品は、2024年2月にMade in 新潟新技術普及制度に登録(2023D202)され、当社のレンタル事業・販売部門を通じてユーザーに提供され、類のない製品ということで活用されております。

 

④ 現場の生産性向上技術の開発

 現場の生産性向上を目指し、DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用した技術開発を行っております。コンクリート構造物補修工事において、断面修復工の出来形(体積)測定の効率化や区画線作業の自動化施工等の技術開発に向けて検討を行っております。

 

  ( 不動産事業及びその他 )

 研究開発活動は、特段行われておりません。